説明

音響計測用観測船及び音響計測システム

【課題】河川、湖沼、沿岸海洋、ダム等における浅瀬の測深、河床地形や水中構造物の三次元情報の取得や、河床底質情報の取得等を行うことのできる音響計測用観測船及びこの観測船を利用した音響計測システムを提供する。
【解決手段】浅瀬21を航行可能な船体1に支持フレーム2を設置し、これに支柱部材8a、8bを水平軸の回りに回転可能とするように支持して、支柱部材8a、8bを船体の外周側における直立状態から支持フレーム2上の倒伏状態に回転操作可能に構成し、支柱部材8a、8bには、下側にサイドスキャンソナー12を支持可能とすると共に、上側にはGPS測位装置10、トータルステーション11用の反射体9、三次元位置センサ13を支持可能とし、船体にサイドスキャンソナー12、GPS測位装置10、三次元位置センサ13のデータを記録する記録装置17を設置した音響計測用観測船と、それを利用した音響計測システムを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、河川、湖沼、沿岸海洋、ダム等における浅瀬の測深、河床地形や水中構造物の三次元情報の取得や、河床底質情報の取得等を行うことができる音響計測用観測船と、この音響計測用観測船を利用した音響計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼、沿岸海洋等の水深や底の三次元形状あるいは水中構築物を音響により計測するシステムとして、例えば、マルチビーム測深装置やサイドスキャンソナーを用いた音響計測システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、観測船の一方のサイドに取り付けられ、下側が水面下に垂下された状態の支柱の下端部に取り付けて水中に配置したマルチビーム測深ソナーと、船体の移動や揺動に対する計測位置の計測及び補正を行うための各種手段と、計測データ記録装置と、計測データの処理手段を備えた音響計測システムが記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、観測船の一方のサイドに取り付けられ、下側が水面下に垂下された状態の支柱の下端部に取り付けて水中に配置したサイドスキャンソナーと、船体の移動や揺動に対する計測位置の計測及び補正を行うための各種手段と、計測データ記録装置と、計測データの処理手段を備えた音響計測システムが記載されている。
【特許文献1】特開平10−325871号公報
【特許文献2】特開2001−74834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の従来の音響計測システムが計測対象とする水深は比較的深く、河川、湖沼、沿岸海洋、ダム等における浅瀬の測深、河床地形や水中構造物の三次元情報の取得や、河床底質情報の取得等を行うことができる音響計測システムが望まれている。
【0006】
例えば水深0.5mまでの極浅水域及び河川域での地形は複雑で、各種の構造物が存在することが多く、また、観測船の進入に係る制約と、極浅を計測可能な適当な観測船や計測システムがなかったこと等から、十分な地形計測が行われていない。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するべく創案されたもので、即ち、河川、湖沼、沿岸海洋、ダム等における浅瀬の測深、河床地形や水中構造物の三次元情報の取得や、河床底質情報の取得等を行うことのできる音響計測用観測船及びこの観測船を利用した音響計測システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明では、浅瀬を航行可能な船体に支持フレームを設置し、支柱部材を水平軸の回りに回転可能とするように支持フレームに支持して、支柱部材を、船体の外周側における直立状態から支持フレーム上の倒伏状態に回転操作可能に構成し、支柱部材には、下側にサイドスキャンソナーを支持可能とすると共に、上側にはGPS測位装置と、トータルステーション用の反射体と、三次元位置センサを支持可能とし、船体にサイドスキャンソナーと、GPS測位装置と、三次元位置センサのデータを記録する記録装置を設置した音響計測用観測船を提案する。
【0009】
また本発明では、上記の構成において、支持フレームを船体の船首側に設置した音響計測用観測船を提案する。
【0010】
また本発明では、上記の構成において、支柱部材は、その軸方向に沿って位置調節可能とするように、溝型案内支持部材に取り付ける構成とし、この溝型案内支持部材を、船体の進行方向に直交する水平軸の回りに回転可能とするように支持フレームに設けた回転軸に支持した音響計測用観測船を提案する。
【0011】
また本発明では、上記の構成において、船体をインフレータブルボート又は平底船として構成した音響計測用観測船を提案する。
【0012】
また本発明では、上記の構成において、反射体は、トータルステーションの構成に対応して、プリズム型トータルステーションのプリズムとしたり、ノンプリズム型トータルステーションのターゲットとした音響計測用観測船を提案する。
【0013】
また本発明では、以上の構成の音響計測用観測船と、この音響計測用観測船を見渡せる位置に設置する自動追尾型トータルステーションとから構成し、トータルステーション側に、その測位データの記録装置を設けた音響計測システムを提案する。
【0014】
また本発明では、上記の構成において、自動追尾型トータルステーション側に、時間同期用GPS測位装置を設けることを提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る音響計測用観測船では、下側にサイドスキャンソナーを取り付けると共に、上側にGPS測位装置と、トータルステーション用の反射体と、三次元位置センサを取り付けた支柱部材を、回転操作手段の操作により船体の外周側において直立状態とすることにより、サイドスキャンソナーを水中に位置させると共に、GPS測位装置と、トータルステーション用の反射体と、三次元位置センサを支柱部材の上側の所定の位置にもたらすことができ、この状態で観測船を予め計画した航路、即ち計画測線に沿って浅瀬を航行させることにより、航路に沿った計測データを時々刻々と収集して時系列データとして記録装置に記録することができる。
【0016】
観測船において収集し、記録装置に記録する計測データは、上述したように、サイドスキャンソナーによるサイドスキャンデータと、GPS測位装置による測位データと、三次元位置センサによる位置データであり、これらはGPS測位装置により得られるGPS時間に関連付けた時系列データとして記録する。
【0017】
このように記録装置に記録したデータのうちのGPS測位装置による測位データと三次元位置センサによる位置データにより、船体の位置と、その揺動等の動きを導出することができ、これらのデータと、支柱部材に設けられたサイドスキャンソナー、GPS測位装置及び三次元位置センサの予め設定された相対的位置関係に基づいて演算処理を行うことにより、観測船の航路に沿った時々刻々の浅瀬のサイドスキャンデータを、それらの計測位置と共に求めることができ、そしてこれらのデータに基づいて、浅瀬の測深、河床地形や水中構造物の三次元情報の取得や、河床底質情報の取得等を行うことができる。
【0018】
次に、回転操作手段を操作して支柱部材を支持フレーム上に倒伏状態とすることにより、支柱部材の下側に設けられたサイドスキャンソナーを上方に位置させることができるので、この状態において、観測船を岸側から計測対象の浅瀬に運んで浮かべたり、浅瀬に浮かんでいる観測船を岸側に運ぶ動作において、サイドスキャンソナーを損傷させたり、それが邪魔になったりすることがない。
【0019】
本発明において、支持フレームを船体の船首側に設置した場合には、計測時の航行においてサイドスキャンソナーの位置を船首に位置させることができるので、サイドスキャンソナーを計画測線に沿って移動させる運転操作を容易に、確実に行うことができると共に、船体の揺動に対しての影響も少ない。
【0020】
本発明において、支柱部材を、その軸方向に沿って位置調節可能とするように、溝型案内支持部材に取り付ける構成とした場合には、その位置調節によって、サイドスキャンソナーの水面からの距離を調節することができるので、サイドスキャンソナーの位置を水深等に応じて適切に調節することができる。
【0021】
本発明において、船体は、浅瀬を航行可能であれば、インフレータブルボートや平底船とすることができる。
【0022】
本発明では、以上に説明した音響計測用観測船と、この音響計測用観測船を見渡せる位置に設置する自動追尾型トータルステーションとから成る音響計測システムを構成することができ、この場合、トータルステーション側に、その測位データの記録装置を設ける。
【0023】
この音響計測システムでは、所定位置に設置した自動追尾型トータルステーションにより航行している観測船の支柱部材に取り付けた反射体を自動追尾しながら、その方位と距離を時々刻々と計測して、それらのデータを時系列データとして記録装置に記録する。
【0024】
この記録装置に記録された反射体の方位と距離のデータは、船体側の記録装置に記録されたサイドスキャンデータと、GPS測位装置による測位データと、三次元位置センサによる位置データと共に演算処理手段において演算処理することにより、例えば橋の下方を航行していてGPS測位装置による測位が行われなかった時点の測位データを、トータルステーション側の記録装置に記録されたデータにより代替させることができ、切れ目のない連続的なデータを得ることができる。
【0025】
本発明において、トータルステーション側に、時間同期用GPS測位装置を設けた構成では、船体側とトータルステーション側において記録した計測データの時系列データの時間を、GPS時間により同期させることができるので、上述したデータの代替処理をより正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明に係る音響計測用観測船及び音響計測システムの最良の形態を添付した図1〜図8を参照して説明する。まず、図1は全体構成を模式的に示す側面図、また図2、図4〜図8は観測船の拡大側面図、図3は観察船の要部を拡大した斜視図であり、図4〜図6では便宜的に回転軸を断面表示している。
【0027】
これらの図において、符号1は観測船の船体であり、この船体1はインフレータブルボートや平底船等のように、例えば本発明の音響計測システムが対象としている水深0.5mまでの浅瀬を良好に航行できるものを選択する。
【0028】
船体には、その船首側に支持フレーム2を設置している。そして支持フレーム2の船首端側には軸受装置3a,3bを設けて船体1の進行方向と直交する水平軸の回りに回転可能とするように回転軸4を設けている。一方側の軸受装置3bにはウォーム歯車(図示省略)が設けられていて、そのウォームホイール(図示省略)が回転軸4に接続され、またウォーム(図示省略)には回転操作軸5が接続されている。そして回転操作軸5の端部には操作ハンドル6が回転可能に支持されている。また符号7は溝型鋼等で構成した溝型案内支持部材であり、この溝型案内支持部材7の開口側の裏面側を上記回転軸に固定している。
【0029】
符号8は支柱部材であり、この実施の形態では、支柱部材8は上記溝型案内支持部材7の開口側に嵌合して摺動可能な角筒形状の支柱部材8aと、この支柱部材8aの上側に着脱可能に取り付ける細い支柱部材8bとから構成している。
【0030】
そして細い支柱部材8bの上端側にはプリズム9が設けられており、更にその上側にはGPS測位装置10が設けられている。上述したように、プリズム9は、後述するプリズム型トータルステーションの反射体として利用するものであり、トータルステーション11がノンプリズム型の場合には、適宜のターゲット(図示省略)を設けることができる。また支柱部材8bに取り付けるGPS測位装置10は、測位機能を内蔵しているものでも良いし、アンテナのみとして、測位機能は他所に構成することもできる。
【0031】
一方、角筒形状の支柱部材8aの下端にはサイドスキャンソナー12を取り付けており、この場合、サイドスキャンソナー12は支柱部材8aに対しての角度が調節可能に取り付けられている。更に支柱部材8aには、その上側に、三次元位置センサ13を載置支持するための支持板14を設けている。
【0032】
尚、サイドスキャンソナー12は例えば以下の諸元を有するものを用いる。
周波数:250kHz トランスデューサ:6個
3次元の最大探査距離:400m
計測レンジ幅:水深10〜13倍
分解能(横方向):5cm
ビーム幅:1°
パルス長:10msec〜50msec
発信間隔:〜25/sec
トランスデューサ取付角:水平方向から、下向きに20°
対象探知高さ:10cm
【0033】
三次元位置センサ13は例えば以下の諸元を有するものを用いる。
1.ジャイロスコープ性能
動的精度:±0.2° Secant
Latitude
0.1° rms(水面状態による)
静的精度 ±0.1° Secant
Latitude
0.05° rms(水面状態による)
ロール・ピッチ精度 0.01%
2.モーションセンサー性能
ヒーブ、サージ、スウェイ精度:5cm 又は 5%
ロール、ピッチ、ヨー精度:0.01°
【0034】
次に支柱部材8aには、横断方向の貫通孔15を等間隔で長さ方向に多数設けており、これらの貫通孔15に対応して溝型案内支持部材7の開口側の対向辺にも貫通孔(図示省略)を設けており、この貫通孔と支柱部材8aの貫通孔15を位置合わせした状態において、取付ボルト16を嵌合して、ナット(図示省略)により固定する構成としている。
【0035】
そして船体1には、サイドスキャンソナー12と、GPS測位装置10と、三次元位置センサ13のデータを記録する記録装置17を設置している。この記録装置17はコンピュータ装置により構成しており、このコンピュータ装置は、データの記録装置17としての機能の他、計測に附帯する各種の処理を行うように構成することができる。
【0036】
一方、図1において符号11はトータルステーションであり、このトータルステーション18は自動追尾プリズム型トータルステーションとしている。そしてこのトータルステーション11側には、測位データの記録装置18を設けると共に、時間同期用GPS測位装置19を設けている。この記録装置18もコンピュータ装置により構成しており、このコンピュータ装置も、測位データの記録装置としての機能の他、それらに附帯する各種の処理を行うように構成することができる。更に、符号20はGPS衛星を示すものである。
【0037】
尚、上述したように、トータルステーション11は、精度は若干低下するが、それを許容する場合にはノンプリズム型の構成とすることもでき、この場合は、船体1側のプリズム9に替えて、適宜のターゲットを用いることができる。
【0038】
以上の構成において、この実施の形態では、計測対象の浅瀬21の計測を行うに際して、その岸辺等に船体1を浮かべ、そして図1〜図3に示すように、回転操作手段としての操作ハンドル6を操作することにより回転軸4を回転させて、溝型案内支持部材7に取り付けられた支柱部材8aと、この支柱部材8aの上側に取り付けられた支柱部材8bを船体1の外周側において直立状態とする。
【0039】
この操作により、サイドスキャンソナー12を、水面から所定距離の水中に位置させることができると共に、支柱部材8bに取り付けられているGPS測位装置10と、トータルステーション11用の反射体としてのプリズム9を支柱部材8の上側の所定の位置にもたらすことができ、更に三次元位置センサ13を、支柱部材8aに設けた支持板14上に載置支持して、所定の位置にもたらすことができる。
【0040】
一方、計測対象の浅瀬21を見渡せる岸の適所を基準位置としてトータルステーション11、この場合、自動追尾プリズム型トータルステーションと記録装置18及び時間同期用GPS測位装置19を設置して、船体1の支柱部材8aに取り付けられたプリズム9を視準し、自動追尾による方位と距離の計測及び記録を開始する。
【0041】
この状態において、船体1を予め計画した航路、即ち計画測線に沿って浅瀬21を航行させることにより、航路に沿った計測データを時々刻々と収集して記録装置17に記録する。
【0042】
この実施の形態においては、計測時の航行においてサイドスキャンソナー12の位置を船体1の船首に位置させることができるので、サイドスキャンソナー12を計画測線に沿って移動させる運転操作を容易に、確実に行うことができると共に、船体1の揺動に対しての影響も少ない。
【0043】
一方、トータルステーション11においては、浅瀬21を航行しながら計測を行っている観測船の船体1の支柱部材8aに取り付けられたプリズム9を視準し、自動追尾して、その方位と距離を時々刻々と計測し、その計測データを時系列データとして記録装置18に記録する。この際、トータルステーション11側の記録装置18において記録したプリズム9の方位と距離の時系列データの時間と、船体1側の記録装置17に記録した時系列データの時間を合わせるために、トータルステーション11側では、時間同期用GPS測位装置19により得られるGPS時間を上記時系列データに関連付けて記録装置18に記録を行う。
【0044】
観測船において収集し、記録装置17に記録する計測データは、上述したように、サイドスキャンソナー12によるサイドスキャンデータと、GPS測位装置10による測位データと、三次元位置センサ13による位置データであり、これれらの計測データは、GPS測位装置10により得られるGPS時間に関連付けた時系列データとして記録装置17に記録する。
【0045】
こうして観測船及びトータルステーション11において記録された時系列データは、記録装置17、18を構成するコンピュータ装置や、他のコンピュータ装置において演算処理して所定の情報を得る。
【0046】
即ち、GPS測位装置10による測位データと三次元位置センサ13による位置データにより、船体1の位置と、その揺動等の動きを導出することができ、これらのデータと、支柱部材8に設けられたサイドスキャンソナー12、GPS測位装置10及び三次元位置センサ13の予め設定された相対的位置関係に基づいて演算処理を行うことにより、観測船の航路に沿った時々刻々の浅瀬21のサイドスキャンデータを、それらの計測位置と共に求めることができ、そしてこれらのデータに基づいて、浅瀬の測深、河床地形や水中構造物の三次元情報の取得や、河床底質情報の取得等を行うことができる。
【0047】
この際、本発明では、サイドスキャンソナー12を用いているため、マルチビーム測深装置と比較して、1回の航行における計測可能な幅が広いので、広い計測対象域の計測データを、より少ない航行回数で効率的に収集することができる。
【0048】
次に、計測に際して、計測の対象とする浅瀬21が、橋架の下方であったり、急峻な山岳域のように、GPS測位装置10の上空が開けていない場所では、GPS測位装置10による測位が行われず、その場所の計測データの一部、即ち、GPS測位装置10に関する計測データが欠落してしまう。
【0049】
このように、観測船側の記録装置17に記録された時系列データにおいて、GPS測位装置10による測位が行われなかった時点の測位データは、トータルステーション11側の記録装置18に記録された、基準位置に対してのプリズム9の方位と距離の計測データにより代替させることができ、切れ目のない連続的な計測データを得ることができる。
【0050】
即ち、トータルステーション11側の記録装置18において記録したプリズム9の方位と距離の時系列データは、時間同期用GPS測位装置19により得られるGPS時間を関連付けて記録しているため、船体1側の記録装置17に記録した時系列データとの時間合わせを非常に容易に、正確に行うことができる。
【0051】
次に、観測船においては、回転操作手段としての操作ハンドル6により回転操作軸5を介して回転軸4を回転させると、図4の状態を経て図5に示すように、溝型案内支持部材7、そして支柱部材8aを傾けて支持フレーム2上に倒伏状態とすることができる。この状態においては支柱部材8aの下側に設けられたサイドスキャンソナー12を上方に位置させることができるので、この状態において、観測船の船体1を岸側から計測対象の浅瀬21に運んで浮かべたり、計測を終了して浅瀬21に浮かんでいる観測船の船体を岸側に運ぶ動作において、サイドスキャンソナー12を損傷させたり、それが邪魔になったりすることがない。
【0052】
またこの実施の形態においては、支柱部材8aを、その軸方向に沿って位置調節可能とするように、溝型案内支持部材7に取り付ける構成としているので、その位置調節によって、図8に示すように、サイドスキャンソナー12の水面からの距離を調節することができ、従ってサイドスキャンソナー12の位置を水深等に応じて適切に調節することができる。尚、サイドスキャンソナー12は図7に示すように、支柱部材8aに対して取り付ける角度を調節可能とすることにより、水中に位置させた際の姿勢を調節することができ、サイドスキャンソナー12の調節の自由度を高くすることができる。
【0053】
さらにこの実施の形態においては、支柱部材8は、図6に示すように、溝型案内支持部材7の開口側に嵌合して摺動可能な角筒形状の支柱部材8aと、この支柱部材8aの上側に着脱可能に取り付ける細い支柱部材8bとから構成しており、この細い支柱部材8bに、比較的軽量のGPS測位装置10とプリズム9を設置しているので、これらを高く位置させるために支柱部材8bを長く構成しても重量が軽くて取り扱いやすく、またGPS測位装置10とプリズム9を支持した状態で支柱部材8aに対して着脱自在とすることができ、計測前の準備と計測後の片付けを容易に行うことができる。一方、上述したGPS測位装置10やプリズム9と比較して重い三次元位置センサ13は、剛性の高い角筒形状の支柱部材8aに設けた支持板14に支持するので、安定に支持を行うことができる。
【0054】
尚、支柱部材8aに対しての支柱部材8bの取付方法は、支柱部材8bの下端側部分を支柱部材8aに沿わせた状態で複数の締め付けベルトで締め付けて取り付ける方法や、支柱部材8aの上側に支柱部材8bの下端側部分の嵌合部と締め付け部を設ける構成等、適宜に構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上述したとおり本発明に係る音響計測用観測船及びそれを利用した音響計測システムは、河川、湖沼、沿岸海洋、ダム等における浅瀬の測深、河床地形や水中構造物の三次元情報の取得や、河床底質情報の取得等を、効率的に、従って低コストで行うことができるのであるが、その用途としては、浅瀬に限らず、浅瀬以外の水域において利用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る観測船を用いた音響計測システムの全体構成を模式的に示す側面図である。
【図2】観測船の拡大側面図である。
【図3】観測船の要部斜視図である。
【図4】観測船の他の局面の拡大側面図である。
【図5】観測船の更に他の局面の拡大側面図である。
【図6】観測船の更に他の局面の拡大側面図である。
【図7】観測船の更に他の局面の拡大側面図である。
【図8】観測船の更に他の局面の拡大側面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 船体
2 支持フレーム
3a,3b 軸受装置
4 回転軸
5 回転操作軸
6 操作ハンドル
7 溝型案内支持部材
8 支柱部材
8a 角筒形状の支柱部材
8b 細い支柱部材
9 プリズム
10 GPS測位装置
11 トータルステーション(自動追尾プリズム型トータルステーション)
12 サイドスキャンソナー
13 三次元位置センサ
14 支持板
15 貫通孔
16 取付ボルト
17、18 記録装置(パーソナルコンピュータ装置)
19 時間同期用GPS測位装置
20 GPS衛星
21 浅瀬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浅瀬を航行可能な船体に支持フレームを設置し、支柱部材を水平軸の回りに回転可能とするように支持フレームに支持して、支柱部材を、船体の外周側における直立状態から支持フレーム上の倒伏状態に回転操作可能に構成し、支柱部材には、下側にサイドスキャンソナーを支持可能とすると共に、上側にはGPS測位装置と、トータルステーション用の反射体と、三次元位置センサを支持可能とし、船体にサイドスキャンソナーと、GPS測位装置と、三次元位置センサのデータを記録する記録装置を設置したことを特徴とする音響計測用観測船。
【請求項2】
支持フレームを船体の船首側に設置したことを特徴とする請求項1に記載の音響計測用観測船。
【請求項3】
支柱部材は、その軸方向に沿って位置調節可能とするように、溝型案内支持部材に取り付ける構成とし、この溝型案内支持部材を、船体の進行方向に直交する水平軸の回りに回転可能とするように支持フレームに設けた回転軸に支持したことを特徴とする請求項1又は2に記載の音響計測用観測船。
【請求項4】
船体がインフレータブルボートであることを特徴とする請求項1〜3までのいずれか1項に記載の音響計測用観測船。
【請求項5】
船体が平底船であることを特徴とする請求項1〜3までのいずれか1項に記載の音響計測用観測船。
【請求項6】
反射体がプリズム型トータルステーションのプリズムであることを特徴とする請求項1〜5までのいずれか1項に記載の音響計測用観測船。
【請求項7】
反射体がノンプリズム型トータルステーションのターゲットであることを特徴とする請求項1〜5までのいずれか1項に記載の音響計測用観測船。
【請求項8】
請求項1〜7までのいずれか1項に記載の音響計測用観測船と、この音響計測用観測船を見渡せる位置に設置する自動追尾型トータルステーションとから構成し、トータルステーション側に、その測位データの記録装置を設けたことを特徴とする音響計測システム。
【請求項9】
自動追尾型トータルステーション側に、時間同期用GPS測位装置を設けたことを特徴とする請求項8に記載の音響計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−30340(P2010−30340A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191996(P2008−191996)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(505378714)株式会社アーク・ジオ・サポート (4)
【Fターム(参考)】