説明

顔色診断支援システム

【課題】撮影環境を一定にして顔色を用いた健康状態の判断の容易化を図ると共に、経験の十分でない医師が顔色を用いた健康状態の診断を行うことを可能にする。
【解決手段】基準物とカメラ部との間の距離を一定に調整する距離調整部と、光強度を一定に調整する照明調整部と、基準物と患者とを含む画像データを送信する通信インターフェース部と、画像データを受信する通信インターフェース部と、画像データ内の基準物のデータと、基準色味データ保存部内の基準データとの差分から、基準データと一致するようにデータを補正した後、顔色のデータと、過去映像データ保存部内の基準データとの差分から算出された指標値が閾値以上になった場合に警告を出力する音出力部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークを介してリアルタイム送信された画像データ内の患者の顔色の変化を判定して、医師による診断を支援する顔色診断支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者側と医師側とにテレビカメラを設置して、双方を撮影することによって双方のテレビ画面に他方の表情を映し出すことで患者の緊張を解き、医師が把握した患者のバイタルサインから、患者の病状の変化を把握して、患者に直接アドバイスを送ることを可能にした診療支援システムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、体温脈拍表示器と患者の容姿とをテレビ電話モニタカメラで撮影して、撮影した画像を電話回線を介して集中医療介護センタに送信して患者映像テレビに映し出させ、そのモニタ画像を医師が見て在宅患者の顔色、体温、脈拍、会話内容等を通じて担当医師が患者を診断する診断支援システムが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−089802号公報
【特許文献2】特開平10−137197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高齢化社会の急速な進展に伴い、例えば高齢者が何らかの疾患を罹患した場合や外傷を負った場合であっても、既存の医療機関内に高齢者のベッドを確保することが極めて困難になりつつある。
【0005】
また、医師の絶対数が慢性的に不足しているので、例えば僻地等においては、高齢者が医師による十分な診療を受けられない事態が発生する可能性がある。
【0006】
かかる事態を改善する手法としては、例えば前述した特許文献1乃至特許文献2に示すような患者の自宅等と、当該患者の自宅等から遠隔地にあり、当該患者の自宅等と通信ネットワークを介して接続された医療機関で、患者の自宅で撮影された画像データを、医療機関の医師が確認することによって医療を受ける機会を保障する手法が挙げられる。
【0007】
しかしながら、かかる手法では、患者の顔を撮影する際の撮影条件が異なった場合に、同じ顔色であっても、異なって見えてしまう可能性があるので、患者の顔色を見て患者の健康状態の診断を行う際に、医師が誤った判断をしてしまう可能性がある。
【0008】
また、かかる手法は、医師の技量、経験等が必要であるが、医師の絶対数が慢性的に不足しているので、経験の十分な医師がかかる顔色を用いた健康状態の診断に携わるとは限らない可能性がある。
そこで、本発明は、患者の撮影時に撮影環境を一定にして患者の顔色を用いた患者の健康状態の判断の容易化を図ると共に、経験の十分でない医師が顔色を用いた患者の健康状態の診断を行うことを可能にする顔色診断支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の骨子は、「基準物と前記撮像手段との間の距離を略一定の距離に調整すると共に、光強度を基準物を撮影可能な強度の範囲内の強度で略一定の強度に調整」する構成と、「補正後の画像データ内に含まれる患者の顔色のRGB成分と、顔色データ記憶手段に記憶された患者の顔色のRGB成分の基準データとから算出した差分に基づいて算出された補正後の画像内の患者の顔色の色味成分の変化に関する指標値が予め定められた閾値以上となった場合に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告を出力」する構成とにより、「患者の撮影時に撮影環境を一定にして患者の顔色を用いた患者の健康状態の判断の容易化を図ると共に、経験の十分でない医師が顔色を用いた患者の健康状態の診断を行うことを可能にする」という本願の発明に特有の顕著な効果を達成することにある。
【0010】
さて、以上のような本発明の骨子は、具体的には、以下のような手段を講じることにより実現される。
【0011】
第1の発明は、基準物と患者とを被写体として同一画面で撮像する撮像手段と、基準物と患者とに光を照射する光源と、基準物と撮像手段との間の距離を測定する距離測定手段と、距離測定手段によって測定された略一定の距離に、基準物と撮像手段との間の距離を調整する距離調整手段と、距離調整手段により調整された状態で光源から照射される光の強度を測定する光強度測定手段と、光強度測定手段により測定された光強度を、基準物を撮影可能な強度の範囲内の強度で略一定の強度に調整する光強度調整手段と、撮像手段により撮像された画像データを、通信ネットワークを介してリアルタイム送信する送信手段とを有する送信端末装置と、基準物の画像データに含まれるRGB成分の基準データが記憶された基準データ記憶手段と、患者の過去の画像データに含まれる顔色のRGB成分の基準データが記憶された顔色データ記憶手段と、送信端末装置からリアルタイム送信された画像データを、通信ネットワークを介して受信する受信手段と、受信した画像データ内に含まれる基準物のRGB成分のデータを抽出するデータ抽出手段と、データ抽出手段により抽出されたRGB成分のデータと、前記基準データ記憶手段に記憶されたRGB成分の基準データとの差分を算出する差分算出手段と、差分算出手段により算出された差分を用いて、基準データ記憶手段に記憶されたRGB成分の基準データと一致するように画像データを補正するデータ補正手段と、データ補正手段により補正した後で、補正後の画像データ内に含まれる患者の顔色のRGB成分と、顔色データ記憶手段に記憶された患者の顔色のRGB成分の基準データとから算出した差分に基づいて、補正後の画像内の患者の顔色の色味成分の変化に関する指標値を算定する色味変化指標値算出手段と、色味変化指標値算出手段により算出された指標値が予め定められた閾値以上となった場合に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告を出力する警告出力手段とを有する受信端末装置とを備えた顔色診断支援システムである。
【0012】
これにより、基準物と撮像手段との間の距離が距離調整手段によって略一定の距離に調整され、距離調整手段により調整された状態で光源から照射される光の強度が光強度測定手段によって測定され、光強度測定手段により測定された光強度が、基準物を撮影可能な強度の範囲内の強度で略一定の強度に光強度調整手段によって調整された状態で撮像手段により撮像された画像データが、送信端末装置の送信手段によって通信ネットワークを介してリアルタイム送信され、送信端末装置からリアルタイム送信された画像データが、通信ネットワークを介して受信手段によって受信され、受信された画像データ内に含まれる基準物のRGB成分のデータがデータ抽出手段によって抽出され、データ抽出手段により抽出されたRGB成分のデータと、基準物の画像データに含まれるRGB成分の基準データが記憶された基準データ記憶手段に記憶されたRGB成分の基準データとの差分が差分算出手段によって算出され、差分算出手段により算出された差分を用いて、RGB成分の基準データと一致するように画像データがデータ補正手段によって補正され、データ補正手段により補正した後で、補正後の画像データ内に含まれる患者の顔色のRGB成分と、患者の過去の画像データに含まれる顔色のRGB成分の基準データが記憶された顔色データ記憶手段に記憶された患者の顔色のRGB成分の基準データとから算出された差分に基づいて、補正後の画像内の患者の顔色の色味成分の変化に関する指標値が色味変化指標値算出手段によって算定され、色味変化指標値算出手段により算出された指標値が予め定められた閾値以上となった場合に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告が警告出力手段によって出力されるので、患者の撮影時に撮影環境を一定にして患者の顔色を用いた患者の健康状態の判断の容易化を図ると共に、経験の十分でない医師が顔色を用いた患者の健康状態の診断を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、患者の撮影時に撮影環境を一定にして患者の顔色を用いた患者の健康状態の判断の容易化を図ると共に、経験の十分でない医師が顔色を用いた患者の健康状態の診断を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の形態に関し、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る顔色診断支援システム1の全体構成を示す模式図である。
【0016】
また、図2は、本実施の形態に係る顔色診断支援システム1を構成する送信端末装置1Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
更に、図3は、本実施の形態に係る顔色診断支援システム1を構成する受信端末装置1Bの構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
本実施の形態に係る顔色診断支援システム1は、患者の自宅等に設置された送信端末装置1Aと、当該患者の自宅とは離れた遠隔地に存在する医療機関に設置された受信端末装置1Bとの間で、撮影条件を一定に保った状態で撮影された患者と患者の近傍に設置された基準物とが同一画面に含まれる画像データをリアルタイム送信し、当該送信された画像データに画像処理を行って、患者が健康な状態のときに撮影された顔の画像に含まれる顔色のデータと、前述した画像処理後の画像データに含まれる患者の顔色のデータとから患者の顔色の色味成分の変化を示すパラメータを算出して、算出した患者の顔色の色味成分の変化を示すパラメータが予め定められた閾値以上であるかによって、患者の顔色の変化から患者の健康状態を判定するシステムである。
【0019】
本実施の形態に係る顔色診断支援システム1では、送信端末装置1Aと患者との間の距離の調節を容易にすると共に、色の調整を容易にする観点から、赤(R)、緑(G)、青(B)の基準となる3色で着色された基準物を、患者の近傍に設置することを要する。
【0020】
本実施の形態に係る顔色診断支援システム1は、図1に示すように、送信端末装置1Aと、当該送信端末装置1Aと通信ネットワークNTを介して接続された受信端末装置1Bとから構成される。
【0021】
本実施の形態に係る送信端末装置1Aは、図2に示すように、距離測定部1A1と、受光部1A2と、フラッシュ部1A3と、カメラ部1A4と、撮影条件調整部1A5と、データ送信処理部1A6と、通信インターフェース部1A7とを備えている。
【0022】
撮影条件調整部1A5は、距離調整部1A51と、明度自動識別部1A52と、照明調整部1A53と、映像取り込み部1A54とを備えている。
【0023】
データ送信処理部は1A6、映像エンコード部1A61と、ネットワーク制御部1A62とを備えている。
【0024】
距離測定部1A1は、送信端末装置1A本体と基準物との間の距離を周知の手法で測定し、測定された距離のデータを距離調整部1A51に出力する。
【0025】
受光部1A2は、撮影環境下における照明光を取り込み、取り込んだ照明光を光電変換して、当該光電変換の結果、得られた電気信号を明度自動識別部1A52に出力する。
【0026】
フラッシュ部1A3は、基準物と患者とを撮影する際に、基準物と患者とを照明する。
【0027】
カメラ部1A4は、基準物と患者とを被写体として同一画面となるように撮像して、得られた基準物と患者とを同一画面内に含む画像データを映像取り込み部1A54に出力する。
【0028】
距離調整部1A51は、距離測定部1A1から出力された距離のデータを受け取り、受け取った距離が予め定められた距離と一致していない場合には、予め定められた距離と一致するように調整(固定)する。
【0029】
明度自動識別部1A52は、受光部1A2から出力された電気信号を受け取り、受け取った電気信号から撮影環境における明度に関するデータを算出する機能と、算出した明度のデータを照明調整部1A53に出力する機能とを有する。
【0030】
照明調整部1A53は、明度自動判別部1A52から出力された明度のデータを受け取り、明度自動識別部1A52により測定された光強度を、基準物と患者とを撮影可能な強度の範囲内の強度で略一定の強度に調整するようにフラッシュ部1A3を制御する。
【0031】
映像取り込み部1A54は、カメラ部1A4から出力された基準物と患者とを同一画面内に含む画像データを受け取り、受け取った画像データを映像エンコード部1A61に出力する。
【0032】
映像エンコード部1A61は、映像取り込み部1A54から出力された画像データを受け取り、受け取った画像データをエンコードして得られた符号化データを通信インターフェース1A7に出力する。
【0033】
ネットワーク制御部1A62は、映像エンコード部1A61によって符号化された符号化データを、通信ネットワークNTを介して受信端末装置1Bに送信する場合のフロー制御を行う。
【0034】
通信インターフェース部1A7は、映像エンコード部1A61から受け取った符号化データを、通信ネットワークNTを介して受信端末装置1Bに送信する。
【0035】
また、本実施の形態に係る受信端末装置1Bは、図3に示すように、通信インターフェース部1B1と、データ受信処理部1B2と、データ保存部1B3と、顔色判定処理部1B4と、映像出力部1B5と、音出力部1B6とを備えている。
【0036】
更に、データ受信処理部1B2は、映像デコード部1B21と、ネットワーク制御部1B22とを備えている。
【0037】
また、データ保存部1B3は、基準・色味データ保存部1B31と、過去映像データ保存部1B32とを備えている。
【0038】
更に、顔色判定処理部1B4は、差分検査部1B41と、差分変化表示部1B42と、映像表示部1B43と、警告メッセージ表示部1B44と、警告音送出部1B45とを備えている。
【0039】
通信インターフェース部1B1は、送信端末装置1Aから通信ネットワークNTを介して送信された符号化データを受信し、受信した符号化データを映像デコード部1B21に出力する。
【0040】
映像デコード部1B21は、通信インターフェース部1B1から出力された符号化データを受け取り、受け取った符号化データをデコードして得られた画像データを差分検査部1B41に出力する。
【0041】
ネットワーク制御部1B22は、送信端末装置1Aから通信ネットワークNTを介して送信された符号化データを受信する場合のフロー制御を行う。
【0042】
基準・色味データ保存部1B31には、RGBに関する基準データと、色味成分に関する基準データとが記憶されている。
【0043】
映像データ保存部1B32には、特定の患者の過去の画像データ内の顔領域に含まれるRGBのデータが記憶されている。
【0044】
差分検査部1B41は、第1の画像データ書き込み機能、RGB成分抽出機能、基準データ読み出し機能、差分算出機能、デジタル補正機能、第2の画像データ書き込み機能、補正済み画像データ表示制御機能、顔RGBデータ読み出し機能、顔RGBデータ抽出機能、RGBのデータ差分算出機能、色成分有り領域データ表示制御機能、指標値算出機能、指標値変化表示制御機能、警告音出力命令出力機能、及び警告メッセージ表示制御機能を有する。
【0045】
第1の画像データ書き込み機能は、映像デコード部1B21から出力された画像データを受け取り、受け取った画像データを内蔵する図示しないデータバッファに記憶させる機能である。
【0046】
RGB成分抽出機能は、データバッファから画像データを読み出し、読み出した画像データ内に含まれる基準物のRGB成分のデータを抽出する機能である。
【0047】
基準データ読み出し機能は、RGBに関する基準データを基準・色味データ保存部1B31から読み出す機能である。
【0048】
差分算出機能は、前述したRGB成分抽出機能による抽出の結果、得られた画像データ内に含まれる基準物のRGB成分のデータと、基準データ読み出し機能によって基準・色味データ保存部1B31から読み出したRGBに関する基準データとの差分を算出する機能である。
【0049】
デジタル補正機能は、図示しない内蔵のデータバッファから画像データを読み出した後、RGBに関する基準データに適合するように、読み出した画像データをデジタル補正する機能である。
【0050】
第2の画像データ書き込み機能は、前述したデジタル補正機能によるデジタル補正の結果、得られた補正後の画像データを内蔵するデータバッファに記憶させる機能である。
【0051】
補正済み画像データ表示制御機能は、前述したデジタル補正機能によるデジタル補正の結果、得られた補正後の画像データを図示しない内蔵のデータバッファから読み出して映像表示部1B43の図示しない表示画面に表示させる機能である。
【0052】
顔RGBデータ読み出し機能は、患者の過去の画像データに含まれる顔色に関するRGBのデータを過去映像データ保存部1B32から読み出す機能である。
【0053】
顔RGBデータ抽出機能は、前述したデジタル補正機能によるデジタル補正の結果、得られた補正後の画像データをデータバッファから読み出した後、当該デジタル補正後の画像データ内から顔色に関するRBG成分を抽出する機能である。
【0054】
RGBのデータ差分算出機能は、前述した顔RGBデータ抽出機能によって抽出されたRGB成分と、前述した顔RGBデータ読み出し機能により読み出した患者の過去の画像データに含まれる顔色に関するRGBのデータとの差分を算出する機能である。
【0055】
色成分有り領域データ表示制御機能は、前述したRGBのデータ差分算出機能により算出された患者の顔の領域全体のデータに関し、何らかの色味成分の変化がある領域に関するデータを、差分変化表示部1B42の図示しない表示画面に表示させる機能である。
【0056】
指標値算出機能は、前述した色成分有り領域データ表示制御機能による表示の後、前述したRGBのデータ差分算出機能により算出された差分のデータから色味成分の変化の有無に関する指標値を算出する機能である。
【0057】
指標値変化表示制御機能は、前述した指標値算出機能により算出された指標値の変化を符号付き(±)の数値で、差分変化表示部1B42の図示しない表示画面に表示させる機能である。
【0058】
警告音出力命令出力機能は、前述した指標値算出機能により算出された色味成分の変化の有無に関する指標値が予め設定された閾値以上になった場合に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告音を出力するように、警告音送出部1B45に警告音出力命令を出力する機能である。
【0059】
警告メッセージ表示制御機能は、前述した指標値算出機能により算出された色味成分の変化の有無に関する指標値が予め設定された閾値以上になった場合に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告メッセージを警告メッセージ表示部1B44の図示しない表示画面に表示させる機能である。
【0060】
差分変化表示部1B42は、前述したRGBのデータ差分算出機能により算出された患者の顔の領域全体のデータに関し、何らかの色味成分の変化がある領域に関するデータを図示しない表示画面に表示する機能と、前述した指標値算出機能により算出された指標値の変化を符号付き(±)の数値で、図示しない表示画面に表示する機能とを有する。
【0061】
映像表示部1B43は、前述したデジタル補正機能によるデジタル補正の結果、得られた補正後の画像データを図示しない表示画面に表示する機能を有する。
【0062】
警告メッセージ表示部1B44は、前述した指標値算出機能により算出された色味成分の変化の有無に関する指標値が予め設定された閾値以上になった場合に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告メッセージを図示しない表示画面に表示する機能を有する。
【0063】
警告音送出部1B45は、前述した指標値算出機能により算出された色味成分の変化の有無に関する指標値が予め設定された閾値以上になった場合に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告音を出力するための警告音出力命令を警告音送出部から受け取ると、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告音を音出力部に出力させる。
【0064】
映像出力部1B5は、差分変化表示部1B42、映像表示部1B43、警告メッセージ表示部1B44に表示されたデータを図示しない外部に設けられたディスプレイ等に出力するための端子である。
【0065】
音出力部1B6は、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告音を出力するスピーカである。
【0066】
次に、以上のように構成された顔色診断支援システム1の実行処理に関し、図面を参照して説明する。
【0067】
図4は、本実施の形態に係る顔色診断支援システム1全体の実行処理を説明するためのフローチャートである。
【0068】
本実施の形態に係る顔色診断支援システム1は、図4に示すように、送信端末装置1Aの実行するデータ送信処理(STA)と、受信端末装置1Bの実行する顔色判定処理(STB)とを順次実行する。
(データ送信処理:STA)
【0069】
始めに、送信端末装置1Aの実行するデータ送信処理(STA)に関して説明する。
【0070】
工程A1では、距離調整部1A51は、周知の手法で距離測定部によって測定された送信端末装置1A本体と基準物との間の距離を受け取り、受け取った距離が予め定められた距離と一致していない場合には、予め定められた距離と一致するように送信端末装置1A本体と基準物との間の距離を調整(固定)する。
【0071】
工程A2では、照明調整部1A53は、明度自動判別部1A52から出力された明度のデータを受け取り、明度自動識別部1A52により測定された光強度を、基準物と患者とを撮影可能な強度の範囲内の強度で略一定の強度(照射レベル)に調整するようにフラッシュ部1A3を制御する。
【0072】
工程A3では、フラッシュ部1A3は、基準物と患者とを撮影する際に、光強度を、基準物と患者とを撮影可能な強度の範囲内の強度で略一定の強度(照射レベル)に調整するように基準物と患者とを照明する。
【0073】
工程A4では、カメラ部1A4は、基準物と患者とを被写体として同一画面となるように撮像する。
【0074】
工程A5では、映像エンコード部1A61は、映像取り込み部1A54から出力された画像データを受け取り、受け取った画像データをエンコードして得られた符号化データを通信インターフェース部1A7に出力する。
【0075】
工程A6では、通信インターフェース部1A7は、映像エンコード部1A61から受け取った符号化データを、通信ネットワークNTを介して受信端末装置1Bにリアルタイム送信する。
【0076】
以上のような一連の処理により、本実施の形態に係る顔色診断支援システム1を構成する送信端末装置1Aは、実行処理を終了する。
(顔色判定処理:STB)
【0077】
次に、受信端末装置1Bの実行する顔色判定処理(STB)に関して説明する。
【0078】
工程B1では、通信インターフェース部1B1は、送信端末装置1Aから通信ネットワークNTを介して送信された符号化データを受信し、受信した符号化データを映像デコード部1B21に出力する。
【0079】
工程B2では、映像デコード部1B21は、通信インターフェース部1B1から出力された符号化データを受け取り、受け取った符号化データをデコードして得られた画像データを差分検査部1B41に出力する。
【0080】
工程B3では、差分検査部1B41は、図示しない内蔵のデータバッファから画像データを読み出し、読み出した画像データ内に含まれる基準物のRGB成分のデータを抽出する。
【0081】
工程B4では、差分検査部1B41は、RGBに関する基準データを基準・色味データ保存部1B31から読み出す。
【0082】
工程B5では、差分検査部1B41は、読み出した画像データ内から抽出された基準物のRGB成分のデータと基準・色味データ保存部1B31から読み出されたRGBに関する基準データとの差分を算出する。
【0083】
工程B6では、差分検査部1B41は、図示しない内蔵のデータバッファから画像データを読み出した後、RGBに関する基準データに適合するように、読み出した画像データをデジタル補正して得られた補正後の画像データを内蔵するデータバッファに記憶させた後、補正後の画像データをデータバッファから読み出して映像表示部1B43の図示しない表示画面に表示させる。
【0084】
工程B7では、差分検査部1B41は、患者の過去の画像データに含まれる顔色に関するRGBのデータを映像データ保存部1B32から読み出す。
【0085】
工程B8では、差分検査部1B41は、デジタル補正の結果、得られた補正後の画像データを図示しない内蔵のデータバッファから読み出した後、当該デジタル補正後の画像データ内から顔色に関するRBG成分を抽出し、抽出されたRGB成分と、前述した映像データ保存部1B32から読み出した患者の過去の画像データに含まれる顔色に関するRGBのデータとの差分を算出する。
【0086】
工程B9では、差分検査部1B41は、患者の顔の領域全体のデータに関し、何らかの色味成分の変化がある領域に関するデータを、差分変化表示部1B42の図示しない表示画面に表示させる。
【0087】
工程B10では、差分検査部1B41は、デジタル補正後の画像データ内から顔色に関するRBG成分が抽出されたRGB成分と、前述した過去映像データ保存部1B32から読み出した患者の過去の画像データに含まれる顔色に関するRGBのデータとの差分のデータから色味成分の変化の有無に関する指標値を算出し、算出された指標値の変化を符号付き(±)の数値で、差分変化表示部1B42の図示しない表示画面に表示させる。
【0088】
工程B11では、差分検査部1B41は、算出された色味成分の変化の有無に関する指標値が予め設定された閾値以上になった場合に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告音を出力するように、警告音送出部1B45に警告音出力命令を出力し、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告音を出力するための警告音出力命令を警告音送出部1B45から受け取った音出力部1B6が患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告音を音出力部1B6に出力させると共に、患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告メッセージを警告メッセージ表示部1B44の図示しない表示画面に表示させる。
【0089】
以上のような一連の処理により、本実施の形態に係る顔色診断支援システム1を構成する受信端末装置1Bは、実行処理を終了する。
【0090】
上述したように、本実施の形態に係る顔色診断支援システム1によれば、患者の撮影時に撮影環境を一定にして患者の顔色を用いた患者の健康状態の判断の容易化を図ると共に、経験の十分でない医師が顔色を用いた患者の健康状態の診断を行うことが可能になる。
【0091】
また、本実施の形態に係る顔色診断支援システム1によれば、遠隔地の患者の置かれた環境を一定にすることで、顔色の診断の支援を行うことが出来る。
【0092】
また、本実施の形態に係る顔色診断支援システム1によれば、経験の浅い医師に対する顔色による診断の支援をすることが出来る。
【0093】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階では本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。更に上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が生成され得る。例えば実施の形態に示される全構成要件からいくつかの要件が省略されることで発明が生成される場合には、その生成された発明を実施する段階では省略部分が周知慣用技術で補われるものである。
【0094】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが出来る。
【0095】
なお、ここでは、説明の簡略化を図る観点から、本発明のうち「システム」として表現された発明のみに関して説明を行ったが、これに限らず、本発明の要旨を変更しない範囲内で「方法」、及び「プログラム」等の任意のカテゴリーとして表現してもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施の形態に係る顔色診断支援システム1の全体構成を示す模式図である。
【図2】同実施の形態に係る顔色診断支援システム1を構成する送信端末装置1Aの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】同実施の形態に係る顔色診断支援システム1を構成する受信端末装置1Bの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】同実施の形態に係る顔色診断支援システム1全体の実行処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
1 顔色診断支援システム、1A 送信端末装置、NT 通信ネットワーク、1A1 距離測定部、1A2 受光部、1A3 フラッシュ部、1A4 カメラ部、1A5 撮影条件調整部、1A51 距離調整部、1A52 明度自動識別部、1A53 照明調整部、1A54 映像取り込み部、1A6 データ送信処理部、1A61 映像エンコード部、1A62 ネットワーク制御部、1A7 通信インターフェース部、1B 受信端末装置、1B1 通信インターフェース部、1B2 データ受信処理部、1B21 映像デコード部、1B22 ネットワーク制御部、1B3 データ保存部、1B31 基準・色味データ保存部、1B32 過去映像データ保存部、1B4 顔色判定処理部、1B41 差分検査部、1B42 差分変化表示部、1B43 映像表示部、1B44 警告メッセージ表示部、1B45 警告音送出部、1B5 映像出力部、1B6 音出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準物と患者とを被写体として同一画面で撮像する撮像手段と、前記基準物と患者とに光を照射する光源と、前記基準物と前記撮像手段との間の距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段によって測定された略一定の距離に、前記基準物と前記撮像手段との間の距離を調整する距離調整手段と、前記距離調整手段により調整された状態で前記光源から照射される光の強度を測定する光強度測定手段と、前記光強度測定手段により測定された光強度を、前記基準物を撮影可能な強度の範囲内の強度で略一定の強度に調整する光強度調整手段と、前記撮像手段により撮像された画像データを、通信ネットワークを介してリアルタイム送信する送信手段とを有する送信端末装置と、
前記基準物の画像データに含まれるRGB成分の基準データが記憶された基準データ記憶手段と、患者の過去の画像データに含まれる顔色のRGB成分の基準データが記憶された顔色データ記憶手段と、前記送信端末装置からリアルタイム送信された画像データを、通信ネットワークを介して受信する受信手段と、受信した画像データ内に含まれる前記基準物のRGB成分のデータを抽出するデータ抽出手段と、前記データ抽出手段により抽出されたRGB成分のデータと、前記基準データ記憶手段に記憶されたRGB成分の基準データとの差分を算出する差分算出手段と、前記差分算出手段により算出された差分を用いて、前記基準データ記憶手段に記憶されたRGB成分の基準データと一致するように前記画像データを補正するデータ補正手段と、前記データ補正手段により補正した後で、補正後の画像データ内に含まれる患者の顔色のRGB成分と、前記顔色データ記憶手段に記憶された患者の顔色のRGB成分の基準データとから算出した差分に基づいて、補正後の画像内の患者の顔色の色味成分の変化に関する指標値を算定する色味変化指標値算出手段と、前記色味変化指標値算出手段により算出された指標値が予め定められた閾値以上となった場合に、前記患者の健康状態に変化が発生したことを示す警告を出力する警告出力手段とを有する受信端末装置とを備えた顔色診断支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−285330(P2009−285330A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143276(P2008−143276)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】