説明

顕微鏡

【課題】ズーム機構を有し、ズーム時に開口絞りが光軸方向へ移動可能な顕微鏡を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのレンズ12a,12b,13a,13bを光軸方向へ移動して観察倍率を変更する変倍光学系10a,10bを有する顕微鏡1において、変倍光学系10a,10bの光路上に配置された開口絞り20a,20bと、開口絞り20a,20bを光軸方向へ移動させる移動機構9,19,25とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ズーム機構を有する顕微鏡において、開口絞りはレンズ群の間や外に配置されており、その位置は固定であった(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平11−95121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため上述のような従来の顕微鏡においては、開口絞りの位置を固定とすることを前提に光学設計を行わなければならず、これによってレンズの大きさや移動量に制限が生じ、延いては顕微鏡自体の大きさにも制限が生じてしまうという問題があった。
【0004】
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ズーム機構を有し、ズーム時に開口絞りが光軸方向へ移動可能な顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、
少なくとも1つのレンズを光軸方向へ移動して観察倍率を変更する変倍光学系を有する顕微鏡において、
前記変倍光学系の光路上に配置された開口絞りと、
前記開口絞りを光軸方向へ移動させる移動機構とを有することを特徴とする顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ズーム機構を有し、ズーム時に開口絞りが光軸方向へ移動可能な顕微鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態に係る顕微鏡を説明する。
はじめに、本発明の実施形態に係る顕微鏡の全体的な構成について説明する。
図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施形態に係る顕微鏡の外観を示す正面図及び側面図である。
図1(a)及び図1(b)に示すように本実施形態に係る顕微鏡1は、ズーム機構を有する実体顕微鏡であって、下方から順に、試料2を載置するベース3と、対物レンズ4と、ズーム本体5と、鏡筒6と、左右一対の接眼レンズ7a,7bとを有する。
【0008】
本実施形態において、ズーム本体5は、ベース3に固設された支柱3aに上下動可能に保持されており、後述の図2に示す左右一対の変倍レンズ系10a,10bを内蔵している。
また、鏡筒6は、ズーム本体5の変倍レンズ系10a,10bからの光をそれぞれ対応する接眼レンズ7a,7bへ導く不図示の折り曲げ光学系を内蔵している。
なお、対物レンズ4は、ズーム本体5の各変倍レンズ系10a,10bに対して共通に用いられるものである。
【0009】
斯かる構成の本実施形態に係る顕微鏡1では、ベース3に載置された試料2からの光は、対物レンズ4を介してズーム本体5内の各変倍レンズ系10a,10bへ入射する。そして、各変倍レンズ系10a,10bを経た光はそれぞれ、鏡筒6内の不図示の折り曲げ光学系を介して対応する接眼レンズ7a,7bへ導かれる。これにより観察者は、接眼レンズ7a,7bを介して試料2の拡大像を実体観察することが可能となる。
なお、ズーム本体5には、焦準ノブ8、ズームノブ9、及びダイヤル17が備えられており、観察者は各々を回転操作することで試料2への焦点合わせ、ズーム(観察倍率の変更)、及び後述する開口絞り20a,20bの絞り径の調節を行うことができる。
【0010】
次に、本発明の実施形態に係る顕微鏡1において最も特徴的なズーム本体5の構成について説明する。
図2、図3、及び図4はそれぞれ、本発明の実施形態に係る顕微鏡1におけるズーム本体5の構成を示す正面側断面図、側面側断面図、及び横断面図である。
図2〜図4に示すように本実施形態におけるズーム本体5内には、実質的に平行に並置された左右一対の変倍レンズ系10a,10bと、光軸方向(図2中の上下方向)へ延在した2本のシャフト18a,18bと、同じく上下方向へ延在したカム軸19とが備えられている。
【0011】
カム軸19は、ズームノブ9の回転動作が不図示の伝達機構を介して伝達されてカム軸19の軸中心を回転軸として回転する軸部材であって、その表面にはズーム時に後述する第2レンズ12a,12b、第3レンズ13a,13b、及び開口絞り20a,20bを上下動させるためのカム溝19a,19b,19cが形成されている。
変倍レンズ系10aは、下方から順に第1レンズ11aと第2レンズ12aと開口絞り20aと第3レンズ13aと第4レンズ14aとを有する。また同様に変倍レンズ系10bは、下方から順に第1レンズ11bと第2レンズ12bと開口絞り20bと第3レンズ13bと第4レンズ14bとを有する。
【0012】
各変倍レンズ系10a,10bにおける第2レンズ12a,12b及び第3レンズ13a,13bは、それぞれ第2レンズ保持板22及び第3レンズ保持板23に保持されている。そしてこれらの保持板22,23には2本のシャフト18a,18bが貫通しており、これによって光軸方向への移動を可能としながら光軸に対して垂直な方向への移動が禁止されている。また、各保持板22,23の側面には、それぞれガイドピン22a,23aが設けられており、カム軸19のカム溝19a,19cに嵌め込まれている。
【0013】
斯かる構成により、観察者がズームノブ9を回転操作するとカム軸19が回転し、これによって各保持板22,23のガイドピン22a,23aが対応するカム溝19a,19cによって光軸方向へ案内され、各保持板22,23が所定の移動軌跡で独立に上下動することとなる。したがって観察者は、ズームノブ9を回転操作することで第2レンズ12a,12b及び第3レンズ13a,13bを上下動させてズームの調節を行うことが可能となる。なお、第1レンズ11a,11b及び第4レンズ14a,14bは、それぞれズーム本体5の筐体5aに直接固定されており、ズーム時もその位置は固定である。
【0014】
変倍レンズ系10aにおける開口絞り20aは、光軸に対して垂直な方向へ延在した長方形状の絞り保持板25に設けられており、図4に示すリング形状の絞り蓋26aと、図5に示す8枚の絞り羽根27aとを有している。なお、図5(a)及び図5(b)は、本発明の実施形態に係る顕微鏡1における開口絞り20aの絞り径を大きくした様子及び小さくした様子を示す図である。
絞り保持板25には、上述した2本のシャフト18a,18bが貫通しており、上方から見て短手方向へ延びた切り欠き溝28aが中央部分に形成された長方形の板状部材である平板28が長手方向へスライド可能に備えられている。そしてこの絞り保持板25の側面にはガイドピン25aが設けられており、カム軸19のカム溝19bに嵌め込まれている。この構成により、観察者がズームノブ9を回転操作した際には、上述の第2レンズ12a,12b及び第3レンズ13a,13bと同様に、開口絞り20a,20bも所定の移動軌跡で上下動することとなる。以上のように本実施形態では、ズームノブ9、上述の不図示の伝達機構、カム軸19、第2レンズ保持板22、第3レンズ保持板23、及び絞り保持板25が、ズーム時に開口絞り20a,20bを第2レンズ12a,12b及び第3レンズ13a,13bに連動して光軸方向へ独立に移動させるための移動機構を構成している。
【0015】
絞り蓋26aには、等間隔で周方向へ延びた8つの長穴29aと変倍レンズ系10aの光軸に対して垂直な方向へ突出した突出部31aが形成されており、突出部31aの先端は平板28に対して軸32aを介して回動可能に連結されている。
8枚の絞り羽根27aは、図5に示すように円形の開口を形成するように絞り保持板25上に配置されており、それぞれの一端が絞り保持板25に対して不図示の軸で回動可能に固定されている。そして他端にはピン33aが設けられており、図4に示すように絞り蓋26aの長穴29aに挿入されている。
なお、変倍レンズ系10bにおける開口絞り20bの構成は、以上に述べた開口絞り20aの構成と同様であるため説明を省略する。
【0016】
このような構成の開口絞り20a,20bの絞り径の調節は、上述のように観察者がダイヤル17を回転操作することで行われる。ダイヤル17は、ズーム本体5内に設けられた回動軸36に回動可能に保持された半円形の板状部材であって、この回動軸36にはズーム本体5内へ延出したクランク37も回動可能に保持されている。なお、このクランク37とダイヤル17とはピン38によって連結されているため一体的に回動する。またクランク37は、ズーム本体5内において光軸方向へ延びたシャフト39を挟持しており、このシャフト39は絞り保持板25に備えられた平板28の切り欠き溝28aに対して、回動自在かつ光軸方向へのスライド自在に嵌め込まれている。ここで、クランク37のシャフト39の長さは、開口絞り20a,20bが上下動する際の移動量よりも大きく確保されている。
【0017】
斯かる構成の下、観察者がダイヤル17を回転操作すると、ダイヤル17とともにクランク37が軸36を中心に回動し、これによってクランク37のシャフト39は平板28を光軸に対して垂直な方向(図4中の上下方向)へスライドさせる。そしてこれにより平板28に連結された絞り蓋26a,26bが回動し、回動する絞り蓋26a,26bによって各絞り羽根27a,27bのピン33a,33bが長穴29a,29b内を移動しながら引っ張られ、各絞り羽根27a,27bが一様に開口の内側又は外側へ傾く。即ち、絞り羽根27a,27bで形成される開口の大きさが変化し、このようにして観察者はダイヤル17を回転操作することで開口絞り20a,20bの絞り径を調節することが可能となる。なお、このような絞り羽根27a,27b、長穴29a,29b、及びピン33a,33bによる開口動作については一般的なものである。
【0018】
ここで、上述のように本実施形態では、クランク37と平板28との連結を、開口絞り20a,20bが上下動する際の移動量よりも大きな長さのシャフト39を平板28の切り欠き溝28aに嵌め込むことで行っている。このため、ズームによって開口絞り20a,20bが上下動する際に、平板28はシャフト39が切り欠き溝28aに嵌まり込んだ状態を維持しながらシャフト39上をスライドすることができる。この構成によって観察者は、開口絞り20a,20bの上下方向位置にかかわらずダイヤル17を回転操作して絞り径の調節を行うことができる。また言い換えれば、ズーム本体5におけるダイヤル17の設置場所を一箇所に固定することができる。
以上のように本実施形態では、ダイヤル17、シャフト39を備えたクランク37、平板28を備えた絞り保持板25、絞り羽根27a,27b、絞り蓋26a,26bが、開口絞り20a,20bの上下方向位置にかかわらず絞り径を調節するための調節機構を構成している。
【0019】
以上に述べた本実施形態によれば、ズーム機構を有し、ズーム時に開口絞り20a,20bが光軸方向へ移動可能な顕微鏡1を実現することができる。このため、上述のような従来の顕微鏡において問題となっていたレンズの大きさや移動量の制限が解消され、光学設計の自由度の向上を実現することができる。そしてこれにより、顕微鏡1自体の小型化を達成することもできる。
なお、上述のように本実施形態において開口絞り20a,20bは、第2レンズ12a,12bと第3レンズ13a,13bとの間の光路上に配置されているが、これに限られず変倍レンズ系10a,10bにおけるその他の光路上に配置することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る顕微鏡の外観を示す正面図及び側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る顕微鏡におけるズーム本体の構成を示す正面側断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る顕微鏡におけるズーム本体の構成を示す側面側断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る顕微鏡におけるズーム本体の構成を示す横断面図である。
【図5】(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る顕微鏡における開口絞りの絞り径を大きくした様子及び小さくした様子を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 顕微鏡
2 試料
4 対物レンズ
5 ズーム本体
6 鏡筒
7a,7b 接眼レンズ
9 ズームノブ
10a,10b 変倍レンズ系
17 ダイヤル
19 カム軸
20a,20b 開口絞り
25 絞り保持板
26a,26b 絞り蓋
27a,27b 絞り羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのレンズを光軸方向へ移動して観察倍率を変更する変倍光学系を有する顕微鏡において、
前記変倍光学系の光路上に配置された開口絞りと、
前記開口絞りを光軸方向へ移動させる移動機構とを有することを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記移動機構の移動のための回転操作部材と、
前記回転操作部材の回転動作を直線動作へ変換する変換部材と、
前記開口絞りを保持しており、前記直線動作が伝達されることで光軸方向へ移動する絞り保持部材と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記少なくとも1つのレンズを保持し、前記直線動作が伝達されることで光軸方向へ移動するレンズ保持部材をさらに有していることを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記開口絞りの絞り径を調節するための調節機構をさらに有していることを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記調節機構は、
前記開口絞りの絞り径を調節する操作部材と、
前記操作部材に対して光軸方向へスライド可能に連結されており、前記操作部材の動作を前記開口絞りへ伝達して前記絞り径を変更するための伝達部材と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−39066(P2010−39066A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199854(P2008−199854)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】