説明

食品収納箱

【課題】人体に無害な成分のみを有効成分とし、その揮発成分を長時間吸入しても安全であり、さらに防カビ作用、害虫忌避作用が長期間持続され、しかも数年間にわたり長期保存しても使用可能な食品収納箱を提供する。
【解決手段】紙製箱体1の内面の全部あるいは一部に、クララ、ヨモギ、ドクダミ、ウワウルシ、桃、シソ、カミツレ、キハダ、花椒、乾姜、ヒノキおよび唐辛子のそれぞれの植物粉末2の有効成分量を配合した食用油を付着させたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生鮮食料品、例えば肉、魚、野菜、果物等のような短期保存する食品、穀物、例えば米、小麦、トウモロコシ、芋、豆等のような長期保存する食品のいずれにも適した食品収納箱に関すものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の食品収納箱としては、例えば図4に示したように、段ボール製の包装箱11の内周面全体に除菌剤12を塗布したものが存在する。この除菌剤12は、二酸化塩素の粉体を水で溶かし速乾性の米糊を混合して流動状としたものにしており、前記包装箱11の内周面側の原紙13にハケやローラーで塗布するとしている。そして、二酸化塩素粉末と水と米糊の割合は、二酸化塩素粉末30重量部と水50重量部と米糊20重量部としている(特許文献1)。
【特許文献1】実開平6−69186号公報(第3〜4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の食品収納箱に用いられている二酸化塩素粉体から発生する二酸化塩素ガスは、無味、無色、微臭で、人体に安全、無害といわれているが、数ppm以下の低濃度の場合であって、許容範囲を越えると人体に危険であることには相違ない。
【0004】
したがって、従来の食品収納箱では、発生する二酸化塩素ガスを低濃度に抑える必要があるが、上記したように二酸化塩素粉末と水と米糊との配合割合が、序菌作用の強さと人体への影響を考慮すると限定されたものになり、製造しにくいという問題点を有していた。
【0005】
さらに、従来の食品収納箱では、箱の製造中にも二酸化塩素粉体がガス化するため、その箱の製造に携わる作業者等が長時間にわたって吸入する場合には、その作業者の健康を害する虞れがあるという問題点を有していた。
【0006】
また、従来の食品収納箱では、箱の使用中にも二酸化塩素粉体がガス化するため、その箱中に商品を梱包する作業者等が長時間にわたって吸入する場合にも、その作業者の健康を害することもあるという問題点を有していた。
【0007】
さらに、従来の食品収納箱では、発生する二酸化塩素ガスは約3か月持続するとしているが、それ以上経過すると二酸化塩素粉体から二酸化塩素ガスが発生しきって、二酸化塩素ガスは発生しなくなり、序菌作用がまったく消失してしまうという問題点を有していた。
【0008】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決するものであり、人体に無害な成分のみを有効成分とし、その揮発成分を長時間吸入しても安全であり、さらに防カビ作用、害虫忌避作用が長期間持続され、しかも数年間にわたり長期保存しても使用可能な食品収納箱を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の食品収納箱は、紙製箱体1の内面の全部あるいは一部に、クララ、ヨモギ、ドクダミ、ウワウルシ、桃、シソ、カミツレ、キハダ、花椒、乾姜、ヒノキおよび唐辛子のそれぞれの植物粉末2の有効成分量を配合した食用油を付着させたものとしている。
【0010】
そして、この発明の食品収納箱は、前記食用油に塩化ナトリウムを有効成分量配合したものとしている。
【0011】
さらに、この発明の食品収納箱は、前記食用油に炭粉を有効成分量配合したものとしている。
【0012】
また、この発明の食品収納箱は、前記食用油にクエン酸を有効成分量配合したものとしている。
【0013】
さらに、この発明の食品収納箱は、前記食用油に塩化ナトリウム、炭粉およびクエン酸を有効成分量配合したものとしている。
【発明の効果】
【0014】
この発明の食品収納箱は、以上に述べたように構成されており、人体に無害な成分のみを有効成分としたので、その揮発成分を長時間吸入しても人体に安全であり、さらに防カビ作用、害虫忌避作用が長期間持続され、しかも数年間にわたり長期保存しても使用可能なものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の食品収納箱の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
この発明の食品収納箱は、コートボ−ル紙、ダンボール等の紙製箱体1としており、その内面の全部あるいは一部に、クララ、ヨモギ、ドクダミ、ウワウルシ、桃、シソ、カミツレ、キハダ、花椒、乾姜、ヒノキおよび唐辛子のそれぞれの植物粉末2の有効成分量を配合した食用油を付着させたものとしている。
【0017】
その結果、この発明の食品収納箱は、食用油に配合した植物粉末の揮発成分が徐々に揮発し、防カビ作用、害虫忌避作用を長期間持続させるものとなる。
【0018】
前記植物は、種類によって粉末とする部位が相違するが、その部位としては花、葉、茎、根、果実等が用いられる。クララは、マメ科の多年草で、主として根が用いられる。ヨモギは、キク科の多年草で、主として葉が用いられる。ドクダミは、ドクダミ科の多年草で、主として葉が用いられる。ウワウルシは、ツツジ科の常緑小低木で、主として葉が用いられる。桃は、バラ科の落葉小高木で、主として葉が用いられる。シソは、シソ科の一年草で、主として葉が用いられる。カミツレは、キク科の一年または多年草で、主として花、葉が用いられる。キハダは、ミカン科の落葉高木で、主として葉が用いられる。花椒は、ミカン科の落葉低木で、主として葉が用いられる。乾姜は、生姜(ショウガ科の多年草)の根茎の表面の皮を取り去り、蒸して乾燥させたもので、そのものを用いる。ヒノキは、ヒノキ科の常緑高木で、主として葉が用いられる。唐辛子は、ナス科の一年または多年草で、主として葉、果実が用いられる。これらの植物は、粉末として食用油に配合されるが、食用油との混和を良くするため、紙製箱体1の内面への付着具合を良くするために、微粉末または超微粉末として食用油に配合されるのが好ましい。なお、微粉末とは、その平均粉径が50μ〜数百μ以下を言い、超微粉末とは、その平均粉径が数μ〜50μ未満を言うものとする。
【0019】
前記食用油としては、常温で液状である融点の低い植物油とするのが好ましいが、融点の高い動物油であっても、植物油と動物油の混合油であってもよい。植物油としては、例えば、ナタネ油、ゴマ油、大豆油、コーン油、米ぬか油等が挙げられ、動物油としては魚油、肝油等が挙げられる。
【0020】
前記食用油をこの発明の食品収納箱に付着させるには、室温下で刷毛やローラーによって、手塗りまたは機械塗りする。塗布量としては、10〜20g/m2 程度が好ましい。なお、手塗りする場合に、その手塗り作業者が長時間にわたって植物粉末の揮発成分を吸入する場合にも、植物粉末が食用油に配合されているため、植物粉末の揮発成分は長期間にわたって徐々に揮発するので、作業者の健康を害する虞れはないものとなる。
【0021】
前記食用油に植物粉末の有効成分量を配合するには、食用油を100℃以下の温度に加温してから、この食用油に有効成分量の植物粉末を配合する。植物粉末の有効成分量は、その粉末の平均粉径などによっても相違するが、植物一種類につき1〜5重量%である。
【0022】
さらに、前記食用油には、塩化ナトリウム、炭粉およびクエン酸を有効成分量配合したものとすることができる。
【0023】
前記食用油に塩化ナトリウムを配合するには、食用油を100℃以下の温度に加温してから、前記植物粉末を配合する前に、この食用油に有効成分量の塩化ナトリウムを配合する。塩化ナトリウムの有効成分量は、1〜5重量%である。なお、この塩化ナトリウムの配合は、防カビ作用、害虫忌避作用を助長する。
【0024】
前記食用油に炭粉を配合するには、100℃以下の温度に加温した食用油に有効成分量の植物粉末を配合してから、またはその植物粉末の配合と同時に、この食用油に有効成分量の炭粉を配合する。炭粉の有効成分量は、1〜5重量%である。また、この炭粉は、食用油との混和を良くするため、紙製箱体1の内面への付着具合を良くするために、微粉末または超微粉末として食用油に配合されるのが好ましい。微粉末とは、その平均粉径が50μ〜数百μ以下を言い、超微粉末とは、その平均粉径が数μ〜50μ未満を言うものとする。なお、この炭粉の配合は、植物粉末を吸着させて保持し、徐々にその植物粉末の揮発成分を揮発させることになり、防カビ作用、害虫忌避作用を長期間持続させるのを助長する。
【0025】
前記食用油にクエン酸を配合するには、100℃以下の温度に加温した食用油に有効成分量の植物粉末を配合してから、この食用油に有効成分量のクエン酸を配合する。クエン酸の有効成分量は、1〜5重量%である。また、前記食用油に炭粉を併せて配合する場合には、この炭粉を先に配合してから、最後にクエン酸を配合したものとする。なお、このクエン酸の配合は、防カビ作用、害虫忌避作用を助長する。
【0026】
次に、この発明の食品収納箱に付着させる食用油の処方例について説明する。
(処方例1)
ナタネ油1リットルを60〜70℃に加熱し、これにクララの根粉末10g、ヨモギの葉粉末10g、ドクダミの葉粉末10g、ウワウルシの葉粉末10g、桃の葉粉末10g、シソの葉粉末10g、カミツレの花粉末10g、キハダの葉粉末10g、花椒の葉粉末10g、乾姜の粉末10g、ヒノキの葉粉末10g、唐辛子の果実粉末10gを配合し10〜15分程度攪拌して混和し、自然冷却して、この発明の食品収納箱に付着させる食用油を得た。
(処方例2)
ナタネ油1リットルを60〜70℃に加熱し、これにクララの根粉末10g、ヨモギの葉粉末10g、ドクダミの葉粉末10g、ウワウルシの葉粉末10g、桃の葉粉末10g、シソの葉粉末10g、カミツレの花粉末10g、キハダの葉粉末10g、花椒の葉粉末10g、乾姜の粉末10g、ヒノキの葉粉末10g、唐辛子の果実粉末10g、備長炭粉末10gを配合し10〜15分程度攪拌して混和し、自然冷却して、この発明の食品収納箱に付着させる食用油を得た。
(処方例3)
ナタネ油1リットルを60〜70℃に加熱し、これに塩化ナトリウム30gを配合して、10〜15分程度攪拌して混和し、次にクララの根粉末10g、ヨモギの葉粉末10g、ドクダミの葉粉末10g、ウワウルシの葉粉末10g、桃の葉粉末10g、シソの葉粉末10g、カミツレの花粉末10g、キハダの葉粉末10g、花椒の葉粉末10g、乾姜の粉末10g、ヒノキの葉粉末10g、唐辛子の果実粉末10g、備長炭粉末10gを配合し10〜15分程度攪拌して混和し、さらにクエン酸30gを配合し10〜15分程度攪拌して混和し、自然冷却して、この発明の食品収納箱に付着させる食用油を得た。
(処方例4)
ナタネ油1リットルを60〜70℃に加熱し、これにクララの根粉末20g、ヨモギの葉粉末20g、ドクダミの葉粉末20g、ウワウルシの葉粉末20g、桃の葉粉末20g、シソの葉粉末20g、カミツレの花粉末20g、キハダの葉粉末20g、花椒の葉粉末20g、乾姜の粉末20g、ヒノキの葉粉末20g、唐辛子の果実粉末20gを配合し10〜15分程度攪拌して混和し、自然冷却して、この発明の食品収納箱に付着させる食用油を得た。
(処方例5)
ナタネ油1リットルを60〜70℃に加熱し、これにクララの根粉末20g、ヨモギの葉粉末20g、ドクダミの葉粉末20g、ウワウルシの葉粉末20g、桃の葉粉末20g、シソの葉粉末20g、カミツレの花粉末20g、キハダの葉粉末20g、花椒の葉粉末20g、乾姜の粉末20g、ヒノキの葉粉末20g、唐辛子の果実粉末20g、備長炭粉末20gを配合し10〜15分程度攪拌して混和し、自然冷却して、この発明の食品収納箱に付着させる食用油を得た。
(処方例6)
ナタネ油1リットルを60〜70℃に加熱し、これに塩化ナトリウム20gを配合して、10〜15分程度攪拌して混和し、次にクララの根粉末20g、ヨモギの葉粉末20g、ドクダミの葉粉末20g、ウワウルシの葉粉末20g、桃の葉粉末20g、シソの葉粉末20g、カミツレの花粉末20g、キハダの葉粉末20g、花椒の葉粉末20g、乾姜の粉末20g、ヒノキの葉粉末20g、唐辛子の果実粉末20g、備長炭粉末20gを配合し10〜15分程度攪拌して混和し、さらにクエン酸20gを配合し10〜15分程度攪拌して混和し、自然冷却して、この発明の食品収納箱に付着させる食用油を得た。
【0027】
次に、前記処方例の食用油を付着させたこの発明の食品収納箱の防カビ作用、害虫忌避作用についての試験結果を説明する。
(防カビ作用について)
処方例1〜6で得た食用油を内面に、塗布量として20g/m2 塗布した図1に示すようなケーキ箱A(箱体の内部寸法:横巾21cm、奥行9cm、高さ15cm)としたこの発明の食品収納箱、図2に示すようなケーキ箱B(箱体の内部寸法:横巾18cm、奥行9cm、高さ12cm)としたこの発明の食品収納箱の中にそれぞれショ−トケーキを入れて室温で5日間、放置しておいたが、何れの食品収納箱の中のショ−トケーキにもカビは発生しなかった。なお、前記処方例の食用油を付着させていない普通のケーキ箱(横巾21cm、奥行9cm、高さ15cm)の中にショ−トケーキを入れて同様に5日間、放置しておいたところ、そのケーキ箱の中のショ−トケーキにはカビが発生していた。
(防カビ作用について)
処方例1〜6で得た食用油を内面に、塗布量として20g/m2 塗布したミカン箱(箱体の内部寸法:横巾43cm、奥行33cm、高さ22cm)としたこの発明の食品収納箱の中にみかんを入れて室温で2ヵ月間、放置しておいたが、何れの食品収納箱の中のみかんにもカビは発生しなかった。なお、前記処方例の食用油を付着させていない普通のミカン箱(箱体の内部寸法:横巾43cm、奥行33cm、高さ22cm)の中にみかんを入れて同様に2ヵ月間、放置しておいたところ、そのミカン箱の中のみかんにはカビが発生していた。
(害虫忌避作用について)
処方例1〜6で得た食用油を内面に、塗布量として10g/m2 塗布した図3に示すような穀粒収納箱(箱体の内部寸法:横巾32cm、奥行11cm、高さ44cm)としたこの発明の食品収納箱の中に米穀粒を入れて室温で1年間、放置しておいたが、その食品収納箱の中の米穀粒には穀象虫が発生することはなかった。
【0028】
さらに、前記処方例の食用油を付着させたこの発明の食品収納箱の長期保存性についての試験結果を説明する。
【0029】
処方例1〜6で得た食用油を内面に、塗布量として20g/m2 塗布した図1に示すようなケーキ箱A(箱体の内部寸法:横巾21cm、奥行9cm、高さ15cm)としたこの発明の食品収納箱、図2に示すようなケーキ箱B(箱体の内部寸法:横巾18cm、奥行9cm、高さ12cm)としたこの発明の食品収納箱を、キッチンの戸棚に室温で2年間、保存しておいた。
【0030】
そして、キッチンの戸棚から前記ケーキ箱A、ケーキ箱Bを取り出し、それぞれのケーキ箱の中にショ−トケーキを入れて室温で5日間、放置しておいたが、何れのケーキ箱の中のショ−トケーキにもカビは発生しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の食品収納箱の一実施態様を示す一部切欠した斜視図である。
【図2】この発明の食品収納箱の他の実施態様を示す一部切欠した斜視図である。
【図3】この発明の食品収納箱のさらに他の実施態様を示す一部切欠した斜視図である。
【図4】従来の食品収納箱の一例を示す一部切欠した斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 紙製箱体
2 植物粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製箱体(1)の内面の全部あるいは一部に、クララ、ヨモギ、ドクダミ、ウワウルシ、桃、シソ、カミツレ、キハダ、花椒、乾姜、ヒノキおよび唐辛子のそれぞれの植物粉末(2)の有効成分量を配合した食用油を付着させたことを特徴とする食品収納箱。
【請求項2】
前記食用油に塩化ナトリウムを有効成分量配合したことを特徴とする請求項1記載の食品収納箱。
【請求項3】
前記食用油に炭粉を有効成分量配合したことを特徴とする請求項1記載の食品収納箱。
【請求項4】
前記食用油にクエン酸を有効成分量配合したことを特徴とする請求項1記載の食品収納箱。
【請求項5】
前記食用油に塩化ナトリウム、炭粉およびクエン酸を有効成分量配合したことを特徴とする請求項1記載の食品収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−265805(P2008−265805A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110577(P2007−110577)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(592218056)
【Fターム(参考)】