説明

食品検査装置

【課題】 食品の品質評価を高精度で行うことができる食品検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 食品検査装置1の光源10から出力される近赤外光L1は、検査対象物40の照射位置P1に到達する。近赤外光L1が照射する検査対象物40の照射位置P1を含み、検査台30に平行な面を照射面Sとする。近赤外光L1が照射面Sに対して正反射した場合、正反射光は光路L2を進む。一方、照射位置P1にて拡散反射した光のうち、光路L3方向に散乱した光は、光路L3を進み、検出部20に到達する。このとき光源10及び検出部20は、検出部20と照射位置P1とを結ぶ直線、すなわち光路L3と、光源10から出力される近赤外光が正反射した場合の光路L2と、のなす角a1が45°以上となるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品からなる検査対象物に近赤外光を照射して得られる拡散反射光を測定し、その結果に基づいて検査対象物の品質を評価する食品検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の加工工程において、異物や異状の検出等の品質評価は食品の安全に対する消費者の関心の高まりなどに伴いますます重要なものとなっている。このため、異物や異状を検出する方法は種々検討されている。
【0003】
食品に含まれる異物を検査する方法としては、例えば、特許文献1のように可視光や近赤外光を食品に照射して、その反射光を検出する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−301690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の食品検査方法では、検査対象物に照射する可視光や近赤外光の種類や状態などによって、検査精度が大きく変化するという問題がある。例えば、光源の状態が適切である場合は、異物検査や成分分析を定量的に行うことができ、高精度での測定を行うことができる。しかしながら、光源が不適切な状態である場合には、ノイズ成分が増加するため、S/N比の悪化による誤識別や誤分析が発生し、必ずしも高い精度での検査を行うことができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、食品の品質評価を高精度で行うことができる食品検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る食品検査装置は、食品からなる検査対象物に近赤外光を照射して得られる拡散反射光を測定し、その結果に基づいて検査対象物の品質を評価する食品検査装置であって、近赤外光を出力する光源と、光源から出力された近赤外光のうち、検査対象物により拡散反射した光の拡散反射スペクトルを測定する検出部と、を有し、光源から出力された近赤外光が検査対象物の表面において正反射した場合の光路と、当該近赤外光が照射する検査対象物の表面と検出部とを結ぶ直線と、のなす角が45°以上であることを特徴とする。
【0007】
上記の食品検査装置のように、光源から出力された近赤外光が検査対象物の表面において正反射した場合の光路と、当該近赤外光が照射する検査対象物の表面と検出部とを結ぶ直線と、のなす角が45°以上である場合、食品に近赤外光が照射することにより発生する正反射光が検出部に入射することを防ぐことができる。したがって、検出部ではより精度の高い拡散反射光スペクトルを測定し、その結果を元に品質の評価を行うことができるため、より精度の高い品質評価を行うことができる。
【0008】
また上記の食品検査装置の場合、光源は、近赤外光を出力する各光源と当該近赤外光が照射する検査対象物の表面とを結ぶ直線と、当該近赤外光が照射する検査対象物の表面と検出部とを結ぶ直線とのなす角が各光源について等しく、当該近赤外光が照射する検査対象物の表面と検出器とを結ぶ直線のまわりに等間隔に設けられた複数の光源を有する態様をとることもできる。
【0009】
上記の態様をとることで、検査対象物の表面の形状等による拡散反射光の輝度ムラを抑制することができるため、食品の品質評価をより高精度で行うことができる。
【0010】
本発明に係る食品検査装置の異なる態様として、食品からなる検査対象物に近赤外光を照射して得られる拡散反射光を測定し、その結果に基づいて検査対象物の品質を評価する食品検査装置であって、近赤外光を出力する光源と、光源から出力された近赤外光のうち、検査対象物により拡散反射した光の拡散反射スペクトルを測定する検出部と、を有し、光源から出力された近赤外光が検査対象物を透過した場合の光路と、当該近赤外光が照射する検査対象物の表面と検出部とを結ぶ直線と、のなす角が45°以上であることも好ましい。
【0011】
上記の食品検査装置によれば、食品を透過した近赤外光が検出部に直接入射することを防ぐことができる。したがって、検出部ではより精度の高い拡散反射光スペクトルを測定することができるため、その結果に基づく食品の品質評価をより高精度で行うことができる。
【0012】
このとき、光源は、近赤外光を出力する各光源と当該近赤外光が照射する検査対象物の表面とを結ぶ直線と、当該近赤外光が照射する検査対象物の表面と検出部とを結ぶ直線を延長した線とのなす角が各光源について等しく、当該近赤外光が照射する検査対象物の表面と検出部とを結ぶ直線を延長した線のまわりに等間隔に設けられた複数の光源を有する態様をとることもできる。
【0013】
上記の態様をとることで、検査対象物の表面の形状等による拡散反射光の輝度ムラを抑制することができるため、食品の品質評価をより高精度で行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る食品検査装置は、光源から出力される前記近赤外光の強度を変調し、検出部において光源の強度変調の周期に同期して、光源から出力された近赤外光のうち、検査対象物により拡散反射した光の拡散反射スペクトルを測定する態様をとることが好ましい。
【0015】
光源から出力される近赤外光の強度の変調周期と同期して検出部において拡散反射光を検出する態様とすることで、光源から出力される近赤外光による拡散反射光以外の光を検出部において検出することを防ぐことができる。このため、検出部において拡散反射光をS/N比よく検出することができ、この結果を元により正確に検査対象物である食品の品質を評価することができる。
【0016】
また、光源と光源から出力される近赤外光が照射する検査対象物の表面との間、及び、検査対象物の表面と検出部との間に、互いに同一の方位の直線偏光の光を選択的に透過させる偏光板をそれぞれ備える態様をとることができる。
【0017】
同一方位の直線偏光の光を選択的に透過させる偏光板を配置することにより、本発明に係る食品検査装置の光源から出力される近赤外光が検査対象物を照射することにより発生する拡散反射光とは異なる光が検出部に入射することを防ぐことができる。したがって、より精度の高い評価を行うことができる。
【0018】
本発明に係る食品検査装置は、光源はハロゲンランプである態様をとることができる。また、この光源はスーパーコンティニウム光源であってもよい。
【0019】
光源をハロゲンランプとした場合、本発明に係る食品検査装置を安価で作成することができるため、より汎用性の高い食品検査装置が提供される。また、光源がスーパーコンティニウム光源である場合は、光源による加熱が軽減されることにより、加熱による劣化等が心配される食品についても本発明に係る食品検査装置を適用することができ、より広範囲で使用することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る食品検査装置は、光源が波長1000nm〜2500nmの光を出力するレーザ光源である態様をとることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、食品の品質評価を高精度で行うことができる食品検査装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(第1実施形態)
本発明に係る食品検査装置の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る食品検査装置1の構成を示す図である。図1に示される食品検査装置1は、検査台30上に配置された検査対象物50に近赤外光を照射し、その拡散反射光を検出部20で検出してその結果に基づき検査対象物50の品質を評価する装置であり、光源10と、検出部20と、検査台30と、を備える。
【0024】
光源10は、一定の波長帯域を有する近赤外光を、検査対象物50の表面の照射位置P1へ向けて照射する。光源10は、ハロゲンランプ等を用いることができる。また、種光源及び非線形媒質を備え、種光源から出射される光を非線形媒質に入力し、非線形媒質中における非線形光学効果によりスペクトルを広帯域に広げてスーパーコンティニウム(SC)光として出力するSC光源を光源10として用いることもできる。SC光源を光源10として用いた場合、ハロゲンランプと比較してSC光源による加熱が低減されるため、検査対象物50として加熱厳禁な食品等を用いることができる。さらに、光源10は出力する近赤外光の強度を変調する機能を有していることが好ましい。また、特定の波長帯域の近赤外光を出力するレーザ光源とすることもできる。
【0025】
検出部20は、光源10から照射される近赤外光が検査対象物50の表面の照射位置P1に到達し、拡散反射された後に検出部20の配置される方向へ出力された光を拡散反射スペクトルとして検出する。検出部20としては、例えば、水銀、カドミウム及びテルルからなるMCT検出部、InGaAs検出部等を用いることができる。本実施形態において、検出部20は照射位置P1を含み検査台30に平行な面である照射面Sに対して垂直な位置に配置されている。
【0026】
なお、本実施形態において光源10が照射する近赤外光とは、波長範囲が800nm〜2500nmの光である。本実施形態では、1000nm〜2500nmの波長範囲で測定を行うことが好ましいが、この波長範囲は用途に応じて適宜変更することができる。
【0027】
ここで光源10から出射する近赤外光の波長範囲について、以下にさらに具体的に説明する。本実施形態に係る食品検査装置1における品質評価としては、検査対象物50に含まれる異物の検出と、検査対象物50の異状の検出とが考えられる。このうち、検査対象物50として用いられる食品において検出され得る異物としては、毛髪等の生体由来物の他、食品の加工工程に用いられる機材等に由来する金属等や食品の夾雑物等が挙げられる。これらの異物は、上記の波長範囲の近赤外光において吸収帯域を有するため、上記の波長範囲の近赤外光を検査対象物50へ照射することにより、これらの異物に由来する特定の吸収ピークを検出することができる。
【0028】
このほか、食品からなる検査対象物50の異状を検出する方法として、食品中に含まれる水分や糖分を測定する方法がある。例えば、糖分は波長1500nm付近と波長2100nm付近に吸収ピークを有するので、検査対象物50となる食品中に糖分が含まれる場合は、これらの波長の前後少なくとも100nmの範囲の近赤外光を照射し、拡散反射光を測定しその結果の分析を行うことで、食品中の糖分に由来するピークを検出することができる。糖分に由来するピークの位置や強度から、糖分の種類やその含有量を求めることができ、食品の品質の評価を行うことができる。また、例えば食品に含まれる水分については、波長1450nm付近に水の吸収ピークを有するので、検査対象物50へ波長1450nmの前後少なくとも100nmの範囲の近赤外光を照射して拡散反射光を測定し、その結果に含まれる波長1450nm付近のピークの高さから水分量を算出することができる。
【0029】
検査台30は、検査対象物50となる食品を配置する台である。この検査台30は、光源10から照射する近赤外光を透過する材料からなることが好ましい。
【0030】
続いて、光源10及び検出部20の配置について、図1を用いて説明する。光源10から出力される近赤外光L1は、検査対象物40の照射位置P1に到達する。近赤外光L1が照射する検査対象物40の照射位置P1を含み、検査台30に平行な面を照射面Sとする。近赤外光L1が照射面Sに対して正反射した場合、正反射光は光路L2を進む。一方、照射位置P1にて拡散反射した光のうち、光路L3方向に散乱した光は、光路L3を進み、検出部20に到達する。このとき光源10及び検出部20は、検出部20と照射位置P1とを結ぶ直線、すなわち光路L3と、光源10から出力される近赤外光が正反射した場合の光路L2と、のなす角a1が45°以上となるように配置される。
【0031】
一般的に、近赤外光の透過率が低い検査対象物に近赤外光を照射した場合、正反射光と拡散反射光とが発生する。本実施形態の食品検査装置1のように、拡散反射光を測定し、その結果に基づいて検査対象物の品質を評価する食品検査装置の場合、拡散反射光を適切に検出することが、評価精度を高めるための重要な要素となる。したがって、評価精度を高めるためには、検出部20に正反射光が入射することを防ぐ必要がある。
【0032】
本実施形態の食品検査装置1のように、光路L3と光路L2とのなす角a1が45°以上とすることによって、近赤外光の照射位置P1における検査対象物50の形状に凹凸があったとしても、検出部20への正反射光の入射を効果的に防ぐことができるため、食品検査装置1による品質評価を高精度で行うことができる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明に係る食品検査装置の第2実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係る食品検査装置2の構成を示す図である。食品検査装置2では、光源10が検査台30の下方から検査対象物50を照射している点が、第1実施形態に係る食品検査装置1と異なる点である。
【0034】
本実施形態に係る食品検査装置2において、光源10から照射位置P2へ向けて近赤外光L1が照射される。この照射位置P2は検査対象物50と検査台30とが接する面の近傍に設けられる。照射位置P2において拡散反射した近赤外光のうち、光路L6方向に進む光は、検出部20へ到達する。
【0035】
このとき、光源10及び検出部20は、検出部20と照射位置P2とを結ぶ直線である光路L6と、光源10から出力される近赤外光L1が検査対象物50中を透過した場合の光路L5と、のなす角a2が45°以上となるように配置される。角a2を45°以上とすることで、検査対象物50により拡散反射されずに透過した近赤外光が検出部20へ入射することを防ぐことができる。したがって、拡散反射光の測定による食品の品質評価の精度をより高めることができる。
【0036】
(第3実施形態)
本発明に係る食品検査装置の第3実施形態について説明する。図3は、本実施形態に係る食品検査装置3の構成を示す図である。食品検査装置3では、光源10と検査対象物50上の照射位置P3との間に偏光板41を備える点、及び、照射位置P3と検出部20との間に偏光板42を備える点が、第1実施形態に係る食品検査装置1と異なる点である。
【0037】
本実施形態に係る食品検査装置3に含まれる光源10と検出部20の配置は、第1実施形態と同様であり、検出部20と照射位置P3とを結ぶ直線である光路L3と、光源10から出力される近赤外光L1が照射面Sに対して正反射した場合の光路L2と、のなす角a1が45°以上となるように配置される。
【0038】
光源10と検査対象物50上の照射位置P3との間に配置される偏光板41と、照射位置P3と検出部20との間に配置される偏光板42は、同一方位の直線偏光の光を選択的に透過させる。
【0039】
したがって、光源10から出射した近赤外光L1は偏光板41により特定の方位の直線偏光の光のみが選択的に透過され、照射位置P3へ到達する。照射位置P3で光路L3方向に拡散反射した光のうち、偏光板41と同一方位の直線偏光の光のみが偏光板42で透過され、検出部20へ到達する。
【0040】
本実施形態に係る食品検査装置3では、光源10及び検出部20の配置を第1実施形態と同様にすることで、正反射光が検出部20へ入射することが抑制されるため、拡散反射光の測定精度が高くなり、食品の品質評価の精度をより高めることができる。
【0041】
さらに、食品検査装置3では、2枚の偏光板41及び42を、光源10と検査対象物50上の照射位置P3との間及び照射位置P3と検出部20との間に配置することで、光源10から照射された近赤外光の拡散反射光とは異なる光が検出部20へ到達することを抑制することができるため、拡散反射光の測定による食品の品質評価の精度をより高めることができる。
【0042】
以上、本発明における好適な実施形態を具体的に示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0043】
例えば、第3実施形態で配置した2枚の偏光板を、第2実施形態に適用することもできる。
【0044】
また、上記の第1〜第3実施形態に係る食品検査装置1〜3では、光源は一つであるが、複数個配置し、同一の照射位置へ向けて照射する態様としてもよい。例えば、第1実施形態に係る食品検査装置1に複数個の光源を配置する場合、近赤外光を出力する各光源と当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面とを結ぶ直線(図1の光源10の場合は光路L1である)と、照射位置と検出部とを結ぶ光路(図1では光路L3である)と、のなす角が、複数個の光源について互いに等しいことが好ましい。また、複数個の光源のうち、隣接する光源と照射位置とを結ぶ直線のなす角は、複数個の光源について互いに等しく、照射位置と検出部とを結ぶ直線(図1では光路L3である)の周囲に等間隔に配置されることが好ましい。また、第2実施形態に係る食品検査装置2に複数個の光源を配置する場合、近赤外光を出力する各光源と当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面とを結ぶ直線(図2の光源10の場合は光路L1である)と、照射位置と検出部とを結ぶ光路(図2では光路L6である)を延長した線と、のなす角が、複数個の光源について互いに等しいことが好ましい。また、複数個の光源のうち、隣接する光源と照射位置とを結ぶ直線のなす角は、複数個の光源について互いに等しく、照射位置と検出部とを結ぶ直線(図2では光路L6である)を延長した線の周囲に等間隔に配置されることが好ましい。上記のような態様をとる場合には、光源から照射される近赤外光による輝度ムラの発生が抑制されるため、検出部においてより拡散反射光をより高い精度で検出することができ、品質の評価をより正確に行うことができる。
【0045】
また、上記の第1〜第3実施形態に係る食品検査装置において、光源10と検出部20とを接続し、光源10からの近赤外光の出力と、検出部20における拡散反射光の検出とを同期させる態様としてもよい。この場合は、光源10から出力される近赤外光に由来する拡散反射光のみを検出部20において効率よく検出することができるため、より高精度の食品検査を行うことが可能となる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例と比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
以下では、図1に示す第1実施形態に係る食品検査装置1と同様の食品検査装置を用いて、異物を載置した食品を測定するとき、光源及び検出部の配置を変更することにより得られる拡散反射スペクトル形状の変化について説明する。
【0048】
食品検査装置について、光源としてハロゲンランプを、検出部として水銀、カドミウム及びテルルからなるMCT検出部を用いた。この光源及び検出部は、図1に示す食品検査装置1の角a1が後述のいずれかの値となるように配置した。このような装置を用いて、食品であるレーズン上に異物として毛髪を載せたものを検査対象物とし、食品の表面(食品)と、食品上に載せた異物の表面(異物)と、を照射位置として、波長範囲1000nm〜2100nmの近赤外光を照射した際の拡散反射スペクトルを測定した。上記の測定方法を用いて、実施例として角a1の値が50°、60°、70°及び80°となる場合について、食品と異物のそれぞれについて拡散反射スペクトルの測定を行った。また、比較例として、角a1の値が20°、30°及び40°となる場合についても、食品と異物のそれぞれについて拡散反射スペクトルの測定を行った。これらの測定により得られた拡散反射スペクトルについて、クベルカ−ムンク変換(Kubelka-Munk:KM変換)を行った後、吸収スペクトルを求め、さらにこの吸収スペクトルを2階微分することにより、KM吸光度2階微分スペクトルを得た。
【0049】
図4〜10は、上記で得られたKM吸光度2階微分スペクトルを示す。図4は角a1が20°の場合のKM吸光度2階微分スペクトルである。以降、図5は角a1が30°、図6は40°、図7は50°、図8は60°、図9は70°、図10は80°の場合を示す。
【0050】
図4〜図10に示すとおり、角a1が20°〜40°である図4〜図6のKM吸光度2階微分スペクトルと比較して、角a1が50°〜80°である図7〜図10のKM吸光度2階微分スペクトルでは、波長1430nm付近及び波長1930nm付近でのスペクトルの形状が食品と異物との間で異なることが確認された。
【0051】
図7〜図10の食品のKM吸光度2階微分スペクトルでは、波長1430nm付近及び波長1930nm付近においてスペクトル形状が大きく変わっており、正方向及び負方向の双方に大きなピークを有する。一方、異物のKM吸光度2階微分スペクトルでは、波長1430nm付近及び波長1930nm付近のどちらにおいてもスペクトルは小さな変動しか示していない。このように食品と異物との間でKM吸光度2階微分スペクトルの形状に変化があることが確認された。一方、角a1が20°〜40°である図4〜図6のKM吸光度2階微分スペクトルでは、上記の波長付近において食品のKM吸光度2階微分スペクトルと、異物のKM吸光度2階微分スペクトルとの間に大きな差異が見られなかった。このように、光源及び検出部が、角a1が20°〜40°となるような配置となっている場合、異物の有無を確認することができないということがわかった。
【0052】
したがって、上記の実施例によれば、角a1が45°以上となるように光源及び検出部を配置することにより、異物の検出を高い精度で行うことができるということがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態に係る食品検査装置1の構成を示す図である。
【図2】第2実施形態に係る食品検査装置2の構成を示す図である。
【図3】第3実施形態に係る食品検査装置3の構成を示す図である。
【図4】角a1が20°のときのKM吸光度2階微分スペクトルを示す図である。
【図5】角a1が30°のときのKM吸光度2階微分スペクトルを示す図である。
【図6】角a1が40°のときのKM吸光度2階微分スペクトルを示す図である。
【図7】角a1が50°のときのKM吸光度2階微分スペクトルを示す図である。
【図8】角a1が60°のときのKM吸光度2階微分スペクトルを示す図である。
【図9】角a1が70°のときのKM吸光度2階微分スペクトルを示す図である。
【図10】角a1が80°のときのKM吸光度2階微分スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1、2、3…食品検査装置、10…光源、20…検出部、30…検査台、41、42…偏光板、50…検査対象物。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品からなる検査対象物に近赤外光を照射して得られる拡散反射光を測定し、その結果に基づいて検査対象物の品質を評価する食品検査装置であって、
近赤外光を出力する光源と、
前記光源から出力された近赤外光のうち、検査対象物により拡散反射した光の拡散反射スペクトルを測定する検出部と、
を有し、
前記光源から出力された前記近赤外光が前記検査対象物の表面において正反射した場合の光路と、当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面と前記検出部とを結ぶ直線と、のなす角が45°以上である
ことを特徴とする食品検査装置。
【請求項2】
前記光源は、
近赤外光を出力する各光源と当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面とを結ぶ直線と、当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面と前記検出部とを結ぶ直線とのなす角が前記各光源について等しく、
当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面と前記検出部とを結ぶ直線のまわりに等間隔に設けられた複数の光源を有することを特徴とする請求項1記載の食品検査装置。
【請求項3】
食品からなる検査対象物に近赤外光を照射して得られる拡散反射光を測定し、その結果に基づいて検査対象物の品質を評価する食品検査装置であって、
近赤外光を出力する光源と、
前記光源から出力された近赤外光のうち、検査対象物により拡散反射した光の拡散反射スペクトルを測定する検出部と、
を有し、
前記光源から出力された前記近赤外光が前記検査対象物を透過した場合の光路と、当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面と前記検出部とを結ぶ直線と、のなす角が45°以上である
ことを特徴とする食品検査装置。
【請求項4】
前記光源は、
近赤外光を出力する各光源と当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面とを結ぶ直線と、当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面と前記検出部とを結ぶ直線を延長した線とのなす角が前記各光源について等しく、
当該近赤外光が照射する前記検査対象物の表面と前記検出部とを結ぶ直線を延長した線のまわりに等間隔に設けられた複数の光源を有することを特徴とする請求項3記載の食品検査装置。
【請求項5】
前記光源から出力される前記近赤外光の強度を変調し、
前記検出部において前記光源の強度変調の周期に同期して、前記光源から出力された前記近赤外光のうち、前記検査対象物により拡散反射した光の拡散反射スペクトルを測定することを特徴とする請求項1または3記載の食品検査装置。
【請求項6】
前記光源と前記光源から出力される前記近赤外光が照射する前記検査対象物の表面との間、及び、前記検査対象物の表面と前記検出部との間に、互いに同一の方位の直線偏光の光を選択的に透過させる偏光板をそれぞれ備えることを特徴とする請求項1または3記載の食品検査装置。
【請求項7】
前記光源はハロゲンランプであることを特徴とする請求項1または3記載の食品検査装置。
【請求項8】
前記光源はスーパーコンティニウム光源であることを特徴とする請求項1または3記載の食品検査装置。
【請求項9】
前記光源は波長1000nm〜2500nmの光を出力するレーザ光源であることを特徴とする請求項1または3記載の食品検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−168748(P2009−168748A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9557(P2008−9557)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】