説明

飾り縫いミシン

【課題】飾り縫いミシンの縫い品質を向上させる。
【解決手段】複数の縫い針21,22を上下動させる針上下動機構と、各縫い針の針糸Tを引き上げる天秤51,52と、各縫い針を布より上位置で停止させるための上位置検出手段と、被縫製物の押さえと解放を切り換え可能な布押さえ44と、各縫い針の挿通部102と片持ちの針板爪101を有する針板100と、各縫い針の針糸に個々に糸張力を付与する糸調子機構30とを備え、糸調子機構から各縫い針までの針糸の間に設けられ、各針糸ごとに被縫製物の回転操作に応じた個々の糸繰り出し量で繰り出しを行う糸繰り出し機構60を備え、上位置検出が行われて縫い針が停止した時に、糸繰り出し機構による各針糸の繰り出しを行う制御手段80を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飾り縫いミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
飾り縫いミシンは、布送り方向に直交する方向に沿って並んだ複数の縫い針(例えば、2〜3本)により縫製が行われ、被縫製物である布の下側において縫い針の並び方向に沿ってルーパ糸が渡り、布の上側において縫い針の並び方向に沿って上飾り糸が渡るようにして縫い目が形成される。
そして、飾り縫いミシンの針板100には、各針の針落ち穴102の間に布送り方向F(下流側)に向かって延出された針板爪101が形成されており(図2参照)、縫い目の形成直後には、ルーパ糸が縫い針と縫い針との間で針板爪101を跨ぐように渡り、数針分の送りが行われるに従って針板爪101の先端部から外れるようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−186688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の飾り縫いミシンでは、角縫い等で縫いの方向を変える場合には、ミシンを一旦、縫い針が布よりも上位置となるように停止し、布押さえを上昇させ、各糸の糸調子機構を解放状態とした後に、布地の方向を回転させていた。この布地の回転により、複数の縫い針の次の針落ち位置が移動するので(図5(B)矢印d参照)、各縫い針について針糸の供給が必要となるが、布地の回転時には糸調子機構が解放されているため、必要なる針糸を糸供給源から容易に繰り出すことが可能となっていた。
しかしながら、布地の回転操作は手操作で行うので、糸調子機構が解放状態にある場合に繰り出し量が必要最小限となるように布地を回転させることは困難であった。
さらに、布地の回転の際には、上飾り糸が前述した針板爪101を跨いだ状態にあるため、布地の回転の前に、まず、布地を布送り方向にずらして上飾り糸を針板爪101から外す必要があった。このため、針糸が余分に繰り出されないように布地を回転させることは非常に困難となっていた。
その結果、布地の回転により針糸が余分に繰り出されてしまい、縫いの方向の変更後の縫い始めの縫い目は、糸締まりの不良を生じ易く、縫い品質の低下を生じるという問題があった。
【0005】
本発明は、飾り縫いミシンの縫い品質を向上させることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、布送り方向に交差する方向に沿って並んだ複数の縫い針を上下動させる針上下動機構と、前記各縫い針の針糸の引き上げを行う天秤と、前記各縫い針を布より上位置で停止させるための上位置検出手段と、縫製時の被縫製物を押さえると共に上昇により被縫製物を解放可能な布押さえと、前記各縫い針の挿通部と当該各挿通部の間に前記布送り方向下流側に向かって延出された片持ちの針板爪を有する針板と、前記各縫い針の針糸に個々に糸張力を付与する糸調子機構と、を備える飾り縫いミシンにおいて、
前記糸調子機構から前記各縫い針までの針糸の経路の途中に設けられ、縫いの方向を変えるための被縫製物の回転量に応じた糸繰出しを行うために前記各針糸ごとに個々の糸繰り出し量に調節可能であって、当該各糸繰り出し量で繰り出しを行う糸繰り出し機構を備え、前記上位置検出手段による検出が行われて前記縫い針が停止した時に、前記糸繰り出し機構による各針糸の繰り出しを行う制御手段を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記糸繰り出し機構は、布回転角部内側の針糸の繰り出し量よりも外側の針糸の繰出し量が多くなるように各針糸の繰り出し量を個別に調整するための調整部を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記布押さえを解放状態に切り換えるアクチュエータを備え、前記制御手段は、前記糸繰り出し機構による各針糸の繰り出しと連動して、前記アクチュエータに対して前記布押さえを解放状態に切り換える制御を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記糸調子機構は、糸張力を付与しない解放状態に切り換えるアクチュエータを備え、前記制御手段は、前記縫製の停止中であって、少なくとも前記糸繰り出し機構による各針糸の繰り出し以降について、前記アクチュエータに対して前記糸調子機構を非解放状態に維持する制御を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記制御手段は、前記糸繰り出し機構による各針糸の繰り出し中は、前記糸調子機構の糸張力を縫製時よりも低減させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、制御手段が縫い針の停止時に糸繰り出し機構による布の回転量に応じた各針糸の繰り出しを行うので、縫いの方向転換のために被縫製物を回転させる作業時に各縫い針の次の針落ち位置までの針糸を繰り出し可能とするために糸調子機構を解放状態とする必要がなく、このため、被縫製物の回転作業や針板爪からルーパ糸を引き抜くための作業による余分な針糸の繰り出しを行うことが回避され、縫いの方向転換直後の糸締まりの低下等の不良を抑制し、飾り縫いにおける縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【0012】
請求項2記載の発明は、糸繰り出し機構は、布回転角部内側の針糸の繰り出し量よりも外側の針糸の繰出し量が多くなるように各針糸の繰り出し量を個別に調整するための調整部を備えるので、被縫製物の方向転換作業において、内側と外側となるそれぞれの縫い針が分かっている場合に、事前に各縫い針の針落ち位置の変化量と各針糸の繰り出し量とをそれぞれ等しく設定することにより、被縫製物の方向転換作業に要する必要最小限の糸繰り出しを行うことができ、縫いの方向転換直後の糸締まりを良好として、飾り縫いにおける縫い品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明は、各針糸の繰り出しと連動して布押さえが解放状態に切り換えられるので、被縫製物の回転操作を容易に行うことができ、操作性が向上する。
【0014】
請求項4記載の発明は、被縫製物の回転操作のための縫製の停止中であって、少なくとも各針糸の繰り出し以降については、糸調子機構が非解放状態に維持されるので、被縫製物の回転操作の際に、余分な糸繰り出しを抑止し、縫いの方向転換直後の糸締まりを良好として、飾り縫いにおける縫い品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
なお、「少なくとも各針糸の繰り出し以降」なので、繰り出し中も糸調子機構を非解放状態に維持したまま、つまり、被縫製物の回転操作のための縫製の停止中は、ずっと糸調子機構を非解放状態に維持したままとしても良い。
【0015】
請求項5記載の発明は、被縫製物の回転操作のための縫製の停止中であって、各針糸の繰り出し中は、糸調子機構の糸張力を縫製時よりも低減させることにより、糸繰り出しを円滑に行うことができ、より適切な繰り出し量で糸繰り出しを行うことが可能となり、縫いの方向転換直後の糸締まりを良好として、飾り縫いにおける縫い品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】発明の実施形態である飾り縫いミシンの斜視図である。
【図2】飾り縫いミシンの針板の平面図である。
【図3】糸繰り出し機構を正面から見た動作説明図であり、図3(A)は待機状態、図3(B)は糸繰り出し状態を示している。
【図4】飾り縫いミシンの制御系を示すブロック図である。
【図5】図5(A)は二本の縫い針で飾り縫いの縫製を行い、図5(B)はその途中で縫い方向の方向転換を行う場合の針落ち位置を示す説明図である。
【図6】飾り縫いミシンの縫製動作中の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(ミシンの全体構成)
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本実施の形態に係る飾り縫いミシン10の全体構成を示す概略図である。図1は飾り縫いミシン10の斜視図である。
上記飾り縫いミシン10は、図1に示すように、全体形状がコ字状となる本体フレーム2を備え、当該本体フレーム2は、その下部に位置すると共に内部に後述するルーパ機構を格納するミシンベッド部2aと、ミシンベッド部2aの一端部から上方に立設されたミシン縦胴部2bと、ミシン縦胴部2bの上端部からミシンベッド部2aと同方向に延設されたミシンアーム部2cとを備えている。
ここで、以下の説明において、本体フレーム2のベッド部2aの長手方向に沿った方向をY軸方向とし、縦胴部2bの立設方向であってY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、Y軸方向とZ軸方向の双方に直交する方向をX軸方向とする。さらに、飾り縫いミシン10は、水平面上に設置した状態において、X軸方向及びY軸方向が水平面に沿った状態となり、Z軸方向が垂直上下動方向に沿った状態となる。そして、飾り縫いミシン10は、X軸方向に沿って布送りを行う。
【0018】
飾り縫いミシン10は、図1に示すように、下端部に二本の縫い針21,22をY軸方向(布送り方向に直交する方向)に沿って一列に並べて保持する針棒24を介して各縫い針21,22を上下動させる針上下動機構と、ミシンベッド部2aの針板100の下方において、針棒24の上下動に同期した単一のルーパ25の進退移動を行わせることで各縫い針21,22に通された各針糸Tのループにルーパ糸Lを挿通させるルーパ機構と、針板100の上方であって各縫い針21,22の針落ち位置の近傍でスプレッダ26の進退移動を行わせることで各縫い針21,22の並び方向に沿って上飾り糸Sを掛け渡した状態で縫い込ませるスプレッダ機構と、各々の糸供給源から繰り出される各針糸T,ルーパ糸L,上飾り糸Sに個別に所定の張力を付与する糸調子機構30と、糸調子機構30の下流側において各針糸Tに潤滑油を供給する糸潤滑手段41と、針棒24の上下動に同期して揺動する揺動天秤51によりループ形成後の各縫い針21,22を布地側から上方に引き上げる第一の天秤機構と、針棒24の上下動に同期して上下動を行う昇降天秤52によりループ形成後の各縫い針21,22を布地側から上方に引き上げる第二の天秤機構と、ミシンアーム部2cの先端下部に設けられ、各針糸Tを個別に挿通する糸穴を備える糸案内43と、下降して縫製時の被縫製物を押さえると共に上昇して被縫製物を解放可能な布押さえ44と、ミシンベッド部2aの上面であって針落ち位置に設けられた針板100と、糸調子機構30と揺動天秤51との間に配置され、各針糸Tの糸繰り出しを行う糸繰り出し機構60と、上記各構成の制御手段80とを備えている。
【0019】
(針上下動機構)
針上下動機構は、ミシンアーム部2cの先端側においてZ軸方向に沿った状態で同方向に往復可能に支持された針棒24と、ミシンアーム部2c内にY軸方向に沿って配設されたミシン主軸(図示略)の回転駆動力を往復上下動駆動力に変換して針棒24に付与する図示しないクランク機構とを備えている。
針棒24の下端部には、二つの縫い針21,22がY軸方向に沿って一列に並んで保持されており、これら各縫い針21,22は、ミシン縦胴部2bから遠方のものの方が先端の高さが低くなるように保持されている。即ち、縫い針21が低く、縫い針22が高く針棒24に保持されている。
なお、かかる針棒24の針留め24aを交換することにより二本以上の縫い針(例えば、三本)を保持することも可能である。
【0020】
(ルーパ機構)
ルーパ機構は、各縫い針21,22が下死点を通過して上昇する際に形成される各針糸Tのループに挿入されるルーパ25と、ミシンベッド部2a内でY軸方向に沿って配置されると共にミシン主軸に同期して回転する図示しない下軸と、ミシンベッド部2a内でY軸方向に沿って配置されると共にルーパ25を先端部で保持するルーパ軸27と、下軸の回転駆動力を同じ周波数のスラスト方向の往復駆動力に変換してルーパ軸27に付与する図示しない周知の伝達機構とを備えている。
上記ルーパ25は、各縫い針21,22の配列方向と一致するY軸方向に沿って延設されると共にその先端部がミシンベッド部2aの先端部側(ミシン縦胴部2bと反対側の方向)を向いてルーパ軸27の先端部に保持されている。そして、ルーパ軸27による前進移動により、縫い針22,縫い針21の順番で各針糸Tのループに挿入される。これにより、ルーパ25に沿ってその先端部まで案内されているルーパ糸Lが各針糸Tのループに挿入され、縫製が行われる。
【0021】
(スプレッダ機構)
スプレッダ機構は、先端部で上飾り糸Sが折り返されるように掛け渡されたスプレッダ26と、ミシン主軸のトルクを同じ周期の往復回動動力に変換してZ軸方向に沿ったスプレッダ26の基部に付与する図示しない周知の伝達機構とを備えている。
スプレッダ26の先端部はやや円弧状に湾曲しており、基端部を中心に往復揺動することにより先端部がおおむねY軸方向に沿って進退移動を行う。このスプレッダ26の先端部には、上飾り糸Sを引っかける切り欠きが形成されており、ミシンアーム部2cの先端下部において針棒24に隣接して垂下装備された飾り糸案内28からスプレッダ26の先端部の切り欠きを介して被縫製物に至る糸経路により上飾り糸Sのループを形成すると共に、スプレッダ26の先端部をおおむねY軸方向に沿わせて前進させることで上飾り糸Sのループの内側領域を縫い針21が針落ちを行うように案内し、針落ち後に後退移動することで上飾り糸Sを縫い針21,22の並び方向に沿って掛け渡す。スプレッダ26は、上記進退移動を各縫い針21,22の上下動周期に合わせて行うことで布地の上面に各縫い針21,22により蛇行するように縫い込まれる。
【0022】
(糸調子機構)
糸調子機構30は、ミシン縦胴部2bの側面に配設されると共に各縫い針21,22の各針糸Tと上飾り糸Sとルーパ糸Lに個別に対応して設けられた四つの糸調子31,32,34,35を備えている。なお、縫い針を3本として針糸を3本使用する場合を想定して、三番目の針糸の糸調子33をも備えている。各糸調子31〜35は、いずれも、糸を挟持するための一対の糸調子皿と、糸調子皿同士を圧接させる弾性体と、弾性体の圧接力を調節するつまみを備えている。かかる構成により各糸調子は、つまみで適正な圧接力に調節されつつ各糸を挟持することで繰り出し方向に抵抗力を付与し、各糸に適切な張力を発生させている。
また、この糸調子機構30には、図示は省略しているが、各糸調子31〜35の対をなす糸調子皿の間に強制的に押し込ませることで糸を解放させる解放爪部材と、解放爪部材に解放動作を付与するアクチュエータとしての糸解放ソレノイド36(図4参照)とを備えている。
【0023】
なお、ルーパ糸Lは、図示しない糸供給源から繰り出され、糸調子35に掛け渡されてミシンベッド部2aの内部を伝ってルーパ25まで導かれている。
また、上飾り糸Sは、図示しない糸供給源から繰り出され、糸調子34に掛け渡された後に、ミシンアーム部2cの基端部側の下部に設けられたルーパ糸ガイド38によりミシンアーム部2cの先端側に案内され、さらに、ミシンアーム部2cの先端部側面に設けられたルーパ糸調子37及び飾り糸案内28を介してスプレッダ26の先端部まで導かれている。
【0024】
(糸潤滑手段、糸案内等)
糸潤滑手段41は、ミシンアーム部2cの基端部側面に設けられ、糸調子機構30を通過した各針糸Tを通過させることでこれらに潤滑油を供給する構造となっている。
糸案内43は、ミシンアーム部2cの先端部側面下部に配置されている。そして、糸案内43は、二本の針糸Tが個別に通される糸通し穴が設けられている。なお、この糸案内43は、縫い針が三本使用される場合に対応して、三本の針糸を挿通させる三つの糸通し穴が形成されている。そして、これら三つの糸通し穴は、Y軸方向に沿って並んで形成されている。かかる糸案内43の各糸通し穴に通された針糸は、各縫い針21,22に導かれるようになっている。
【0025】
(第一の天秤機構)
第一及び第二の天秤機構は、ミシンアーム部2cの側面であって糸経路における糸調子機構30と糸案内43との間に配設されている。そして、この第一の天秤機構は、各針糸Tを個別に通す糸通し穴を備えた先端部を上下に揺動させる揺動天秤51と、揺動天秤51の基端部をX軸回りに軸支すると共にミシン主軸の回転駆動力をX軸回りの往復揺動動駆動力に変換して揺動天秤51に付与する図示しない周知の伝達機構とを備えている。
揺動天秤51は、縫い針を三本使用する場合にも対応可能となるように、その先端部にX軸方向に並んで三つの糸通し穴が形成されている。縫い針を二本とする場合には、これらの内の二つの糸通し穴が使用される。
そして、揺動天秤51の基端部を軸支する伝達機構がX軸回りの揺動駆動力を付与することから、先端部が円弧の軌跡を描きつつ上下動を行う。揺動天秤51の先端部の揺動角度は伝達機構により調節可能となっている。
【0026】
(第二の天秤機構)
第二の天秤機構は、ミシンアーム部2cの先端部上面に配設されており、針糸の糸経路について第一の天秤機構のすぐ下流側の配設されている。そして、この第二の天秤機構は、各針糸Tを個別に通す糸通し穴を備えた上端部を上下に揺動させる昇降天秤52と、ミシン主軸の回転駆動力をZ軸方向に沿った上下動駆動力に変換して昇降天秤52に付与する図示しない周知の伝達機構とを備えている。
昇降天秤52は、縫い針を三本使用する場合にも対応可能となるように、その先端部にX軸方向に並んで三つの糸通し穴が形成され、縫い針を二本とする場合には、これらの内の二つの糸通し穴が使用される。そして、揺動天秤51の各糸通し穴に通された各針糸が
昇降天秤52の各糸通し穴に挿通されるようになっている。
このように、揺動天秤51の各糸通し穴から昇降天秤52の糸通し穴に針糸が渡るように糸経路を構成することにより、揺動天秤51と昇降天秤52のそれぞれの上死点及び下死点の位相を適宜調整することにより、これら二つの天秤機構の協働により、任意の位相で任意の糸引き上げ又は糸繰り出しを行うことができるようになっている。例えば、揺動天秤51が下死点となるタイミングで昇降天秤52が上死点となるように調整することで針糸の引き上げ量或いは繰り出し量が最大となり、揺動天秤51が上死点となるタイミングで昇降天秤52も上死点となるように調整することで針糸の引き上げ量或いは繰り出し量を最小とすることができる。
【0027】
(布押さえ)
布押さえ44は、針板100の上側において、支持棒44aの下端部に支持されており、当該支持棒44aは、ミシンアーム部2cの内部において、昇降可能に支持されている。また、布押さえ44は、図示しないバネにより支持棒44aを介して下方に押圧されており、針板100まで下降させると、針板100の上面の被縫製物を押圧保持することを可能としている。さらに、布押さえ44は、バネとは別に、支持棒44aを介して布押さえ44を昇降させるアクチュエータである押さえ上げソレノイド45(図4参照)を備えており、後述する操作ペダル4の前踏み操作により下降して被縫製物の押圧保持が可能となり、後踏み操作により上昇して被縫製物を解放することが可能となっている。
【0028】
(針板)
針板100の平面図を図2に示す。針板100は、図示を省略した布送り機構の送り歯が出没する複数の開口部103と、これら開口部103のほぼ中央に設けられた各縫い針21,22の挿通部としての針落ち穴102と、各針落ち穴102の間に布送り方向Fの下流側に向かって延出された片持ちの針板爪101とを備えている。
各開口部103と針落ち穴102とは、いずれも針板100を上下に貫通形成されている。そして、二つの針落ち穴102をつなぐように略U字状の切り欠きが形成されることで針板爪101が形成されている。かかる針板爪101は、その基端部(図2における下端部)が針板100に支持されており、先端部(図2における上端部)は片持ち梁のように自由端となっている。
飾り縫いでは、縫い針21,22が各針落ち穴102から針板100の下側まで到達して形成する針糸Tのループにルーパ糸Lのループが挿通されることで被縫製物の下側での縫い目形成を行う。つまり、ルーパ糸Lは、二本の縫い針21,22の並び方向に沿って縫い込まれることとなる。その結果、ルーパ糸Lは、縫い目の形成から数針の間は、針板100の下面側で針板爪101に対して跨った状態となり、縫いが進むに連れて針板爪101の先端部から針板100の上面側に抜けるようになっている。
【0029】
(糸繰り出し機構)
図3は糸繰り出し機構60を正面から見た動作説明図であり、図3(A)は待機状態、図3(B)は糸繰り出し状態を示している。
糸繰り出し機構60は、糸潤滑手段41から揺動天秤51の間を渡る各針糸Tに対して下方から当接して繰り出しを行う糸掛け部61aを一端部に備える梃子部材61と、梃子部材61の中間位置で軸支する支持部材62と、梃子部材61の他端部を押圧する糸繰り出しシリンダ63と、梃子部材61と揺動天秤51との間に配置され、各針糸Tごとの糸案内66を個別に高さ調節可能に支持する糸繰り出し量の調整部65とを備えている。
【0030】
梃子部材61は、その一端部が屈曲形成されて糸掛け部61aが形成されており、当該糸掛け部61aは、各針糸Tを一度に下方から引っ掛けることができるようになっている。また、梃子部材61の中間部は、X軸方向に沿った支軸により軸支され、これにより、梃子部材61の他端部が糸繰り出しシリンダ63により下方に押圧されると、糸掛け部61aを上方に回動させることができる。なお、梃子部材61は、その他端部が糸繰り出しシリンダのプランジャ側に常時圧接するように図示しないバネにより付勢されている。
糸繰り出しシリンダ63は、復動式のエアシリンダであり、そのプランジャを図3(A)に示す後退位置と図3(B)に示す前進位置とに切り換えることが可能である。
【0031】
調整部65は、針糸Tを三本使用する場合に備えて三本の糸案内66を備えているが、針糸Tを二本しか使用しない場合には当然糸案内も二本しか使用しない。各糸案内66は、支持台67によりX軸方向に沿って並んだ状態で保持され、支持台67は各糸案内66を上下方向に移動可能に支持し、その高さを調節することが可能となっている。なお、高さを調節された各糸案内66は、図示しない止めネジにより固定される。そして、各糸案内66の上端部にはY軸方向に沿った糸通し穴が貫通形成されており、この糸通し穴に各針糸Tが個別に挿通される。
この糸案内66は糸潤滑手段41から糸案内66に渡る針糸Tが、梃子部材61の糸掛け部61aの待機位置から糸繰り出し位置への位置変化により、糸掛け部61aにおける角度変化が大きい場合は糸繰り出し量が多くなり、角度変化が少ない場合には糸繰り出し量も少なくなる。
例えば、図3の場合では、一方の糸案内66は高位置に、他方の糸案内66は低位置に調節されている。高位置の糸案内66では、糸掛け部61aにおける角度変化が小さいことから糸繰り出し量は少なくなっている。また、低位置の糸案内66では、糸掛け部61aにおける角度変化が大きいことから糸繰り出し量は多くなっている。
このように、調整部65は、各糸案内66の高さ調節を行うことにより、糸繰り出し機構60による各針糸Tごとの糸繰り出し量を調節することを可能としている。
【0032】
(制御手段)
図4は飾り縫いミシン10の制御系を示すブロック図である。
図示のように、飾り縫いミシン10の制御手段80は、ミシンの縫製の駆動源となるミシンモータ3と、前述した布押さえ44の上下動の駆動源となる押さえ上げソレノイド45と、前述した糸繰り出しシリンダ63の動作を制御する電磁弁68と、縫製時の動作を操作入力するための操作ペダル4と、各縫い針が上位置(少なくとも全ての縫い針の先端部が布よりも上となる位置をいい、より具体的には、縫い針の上死点、又はその近傍であってやや通過した位相)であることを検出する上位置検出手段としての上位置センサ84とが接続されている。なお、実際には、ミシンモータ3、押さえ上げソレノイド45、電磁弁68についてはそれぞれ駆動回路を介して制御手段80に接続されているが、各駆動回路の図示は省略する。
制御手段80は、後述する縫製時の動作制御を実現するための制御プログラムが格納されたROM82と、制御プログラムを実行するCPU81と、制御プログラムの実行のための各処理の作業領域となるRAM83とを備えている。
【0033】
制御プログラムに基づいてCPU81が実行する制御について説明する。
前述の操作ペダル4は前踏みと二段階の後踏みとが可能であり、前踏みが行われると、CPU81は、ミシンモータ3を起動すると共に操作ペダル4の踏み込み量に応じた回転速度でミシンモータ4の駆動を実行する。
一方、操作ペダル4の一段階目の後踏みは、縫製中の縫い方向の方向転換作業を行うための途中停止の操作指示が割り付けられ、二段階目の後踏みは縫製終了時の操作指示が割り付けられている。
【0034】
ここで、操作ペダル4の一段階目の後踏みによる縫製中の縫い方向の方向転換作業とその制御について説明する。
図5は、二本の縫い針21,22で飾り縫いの縫製を行い、その途中で縫い方向の方向転換を行う場合の針落ち位置を示す説明図である。被縫製物の外縁に近い方の縫い針21の針落ち位置をTojとし、内側の縫い針22の針落ち位置をTijとする。また、jは進行する針数を示す(j=0,1,2,3,…)。
図5のように、例えば、縫い方向の方向転換が必要な被縫製物の角部に至るまでの各縫い針21,22の針落ち位置がTo1,Ti1からTo4,Ti4である場合、To4,Ti4の針落ちで縫製が一旦停止され、被縫製物が手作業で90°回転されて方向転換が行われる。そして、縫いの再開位置を縫い目の端部に合わせる場合、外側の縫い針21の再開後の最初の針落ち位置To5はTo4のすぐ近傍となるが、内側の縫い針22の再開後の最初の針落ち位置Ti5はTi4から矢印dだけ離れた位置となる。つまり、縫い方向の方向転換の際には、縫い針21については針糸Tがほとんど消費されないが、縫い針22については長さdだけ針糸Tが消費されることとなる。
従って、このような縫いが予定されている場合には、前述した糸繰り出し機構60の各縫い針21,22に対応する糸案内66、66のそれぞれを、事前に方向転換時の糸消費量に応じた繰り出し量となるように調節する。そして、CPU81は、操作ペダル4の一段階目の後踏みを検知した場合に、糸繰り出し機構60の糸繰り出しが行われるように糸繰り出しシリンダ63の電磁弁68を制御する。
なお、縫いの方向転換を行う場合の方向転換直後の針落ち位置は一例であって、上記To5及びTi5の位置に限定されるものではなく、それぞれ任意である。
【0035】
CPU81による、糸繰り出し制御について説明すると、操作ペダル4の前踏みが解除され、一段目の後踏みが行われると、CPU81は、ミシンモータ3を停止し、布押さえ44が解放状態となるように押さえ上げソレノイド45を制御すると同時に、糸繰り出しシリンダ63のプランジャが突出してすぐに後退するように電磁弁68を制御する。これにより、布押さえ44が上昇した状態で、糸繰り出し機構60の梃子部材61は、各針糸Tをそれぞれの設定量で繰り出すと共に待機位置に戻る動作が行われる。なお、このとき、糸調子機構30の各糸調子の糸解放動作は実行されない。これにより、針板100の針板爪101からルーパ糸Lを引き抜いて布地を90°回転させる作業を行っても、余分な針糸が繰り出されることはない。
【0036】
また、操作ペダル4の二段階目の後踏みが行われた場合には、CPU81は、ミシンモータ3を停止し、布押さえ44が解放状態となるように押さえ上げソレノイド45を制御する。これと共に、CPU81は、糸調子機構30の糸調子解放ソレノイド36を駆動させて全ての糸の解放を行う。これにより、被縫製物が布押さえ44から解放され、各糸も解放されるので、被縫製物を引き出すことが可能となる。
【0037】
(ミシンの動作説明)
以下、上記構成からなる飾り縫いミシン10の縫製時の動作制御を図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、CPU81は、操作ペダル4の前踏みの入力待ちを行い(ステップS1)、前踏みが行われると、ミシンモータ3の駆動を開始させる(ステップS2)。そして、踏み込み量に応じた速度でミシンモータ3の回転を行う。
次いで、CPU81は、操作ペダル4の一段目の後踏みの入力の判定を行い(ステップS3)、入力がない場合にはステップS7に処理を進める。一方、一段目の後踏みが検出されると、縫いの方向転換のための途中停止としての制御を実行する。即ち、ミシンモータ3の駆動を停止させる(ステップS4)。このとき、上位置センサ84により、縫い針が上位置となるようにミシンモータ3の停止が行われる。
さらに、CPU81は、押さえ上げソレノイド45を作動させて布押さえ44を引き上げることにより被縫製物を解放する(ステップS5)。また、これと同時に、電磁弁68を制御して糸繰り出しシリンダ63のプランジャを突出させ後退するように往復移動させる(ステップS6)。これにより、各針糸Tは、調整部65の各糸案内66の調節に応じた糸繰り出し量で糸供給源側から繰り出しが行われる。即ち、被縫製物を回転させたときに各縫い針21,22ごとに次の針落ち位置までの距離に応じた糸繰り出しが行われる。なお、この糸繰り出し動作は、ミシンの上停止後に行われることから、各天秤51,52により被縫製物側からの針糸の引き上げが完了した状態にあるため、被縫製物側からはこれ以上の針糸の引き上げが行われることはなく、糸調子機構30の各糸調子31〜35は未解放状態だが、糸供給源側から針糸の繰り出しが行われることとなる。
この際、ミシンのオペレータは、ルーパ糸を針板爪101から引き抜いて被縫製物を方向転換させる作業を実行する。
【0038】
次いで、ステップS7では、CPU81は、操作ペダル4の二段目の後踏みの入力の判定を行い、入力がない場合にはステップS1に処理を戻して再び前踏みの判定を行う。一方、二段目の後踏みが検出されると、縫いの終了のための処理を実行する。即ち、ミシンモータ3の駆動を停止させる(ステップS8)。このときも上位置となるようにミシンモータ3の停止が行われる。
さらに、CPU81は、押さえ上げソレノイド45を作動させて布押さえ44を引き上げることにより被縫製物を解放し(ステップS9)、これと同時に、糸調子解放ソレノイド36を作動させて全糸調子31〜35を解放する(ステップS10)。これにより、被縫製物を針板100の上から取り外すことができ、縫製が終了する。
【0039】
(実施形態の効果)
飾り縫いミシン10は、制御手段80が操作ペダル4の一段目の後踏みによる縫製の停止時に糸繰り出し機構60による各針糸Tの繰り出しを行い、その停止中は、糸調子機構30が縫製時と同じ糸張力を付与する状態が維持されるので、被縫製物の回転作業や針板爪101からルーパ糸を引き抜くための作業による余分な針糸Tの繰り出しを行うことが回避され、縫いの方向転換直後の糸締まりの低下等の不良を抑制し、飾り縫いにおける縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【0040】
また、糸繰り出し機構60は調整部65を備え、各針糸の繰り出し量を個別に調整することができるので、被縫製物の方向転換作業における各縫い針21,22の針落ち位置の変化量と各針糸の繰り出し量とをそれぞれ等しく設定することにより、被縫製物の方向転換作業に要する必要最小限の糸繰り出しを行うことができ、縫いの方向転換直後の糸締まりを良好として、飾り縫いにおける縫い品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
また、各針糸Tの繰り出しと連動して布押さえが解放状態に切り換えられるので、被縫製物の回転操作を容易に行うことができ、操作性が向上する。
【0041】
(その他)
なお、飾り縫いミシン10の糸繰り出し機構60により糸繰り出し時(糸繰り出しシリンダ68の駆動中のみ)には、糸調子解放ソレノイド36を制御して、糸解放状態としても良い。また、各糸調子31〜35に糸張力の制御が可能なアクチュエータを搭載し、糸繰り出し時にのみ糸張力を縫製時よりも低減する制御を行っても良い。
【0042】
また、糸調子機構30は、アクチュエータではなく、手動解放式としてもよい。その場合には、操作ペダル4の後踏みを一段階のみとして、縫製の一時停止と縫製の終了による停止とを区別せず、後踏みが行われたときには、糸繰り出しと布押さえ44の解放とを行うようにしても良い。その場合、縫製の終了時にも糸繰り出しが行われることとなるが、被縫製物は縫製の終了により除去されるので、縫い品質や次の縫製作業に影響が生じるものではない。
【0043】
また、縫い針は2本に限定されず、より多くとも良い。例えば、3本使用する場合には、針留め44aを縫い針が3本保持可能なものに交換し、針板100を針板爪101が二つ形成されたものに交換すればよい。つまり、針板には、略U字状の切り欠きではなく略W字状の切り欠きが形成されたものが使用される。
【符号の説明】
【0044】
10 飾り縫いミシン
21,22 縫い針
30 糸調子機構
36 糸調子解放ソレノイド(アクチュエータ)
44 布押さえ
45 押さえ上げソレノイド(アクチュエータ)
51 揺動天秤
52 昇降天秤
60 糸繰り出し機構
65 調整部
80 制御手段
100 針板
101 針板爪
102 針落ち穴(挿通部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布送り方向に交差する方向に沿って並んだ複数の縫い針を上下動させる針上下動機構と、
前記各縫い針の針糸の引き上げを行う天秤と、前記各縫い針を布より上位置で停止させるための上位置検出手段と、
縫製時の被縫製物を押さえると共に上昇により被縫製物を解放可能な布押さえと、
前記各縫い針の挿通部と当該各挿通部の間に前記布送り方向下流側に向かって延出された片持ちの針板爪を有する針板と、
前記各縫い針の針糸に個々に糸張力を付与する糸調子機構と、
を備える飾り縫いミシンにおいて、
前記糸調子機構から前記各縫い針までの針糸の経路の途中に設けられ、縫いの方向を変えるための被縫製物の回転量に応じた糸繰出しを行うために前記各針糸ごとに個々の糸繰り出し量に調節可能であって、当該各糸繰り出し量で繰り出しを行う糸繰り出し機構を備え、
前記上位置検出手段による検出が行われて前記縫い針が停止した時に、前記糸繰り出し機構による各針糸の繰り出しを行う制御手段を備えることを特徴とする飾り縫いミシン。
【請求項2】
前記糸繰り出し機構は、布回転角部内側の針糸の繰り出し量よりも外側の針糸の繰出し量が多くなるように各針糸の繰り出し量を個別に調整するための調整部を備えることを特徴とする請求項1記載の飾り縫いミシン。
【請求項3】
前記布押さえを解放状態に切り換えるアクチュエータを備え、
前記制御手段は、前記糸繰り出し機構による各針糸の繰り出しと連動して、前記アクチュエータに対して前記布押さえを解放状態に切り換える制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の飾り縫いミシン。
【請求項4】
前記糸調子機構は、糸張力を付与しない解放状態に切り換えるアクチュエータを備え、
前記制御手段は、前記縫製の停止中であって、少なくとも前記糸繰り出し機構による各針糸の繰り出し以降について、前記アクチュエータに対して前記糸調子機構を非解放状態に維持する制御を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の飾り縫いミシン。
【請求項5】
前記制御手段は、前記糸繰り出し機構による各針糸の繰り出し中は、前記糸調子機構の糸張力を縫製時よりも低減させることを特徴とする請求項4記載の飾り縫いミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−263976(P2010−263976A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116174(P2009−116174)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】