説明

駆動伝達装置及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、装置の大型化や部品点数の増加によるコストアップをすることなく、色ズレや濃度ムラの原因となる駆動伝達装置の回転変動を低減することである。
【解決手段】同軸上に径の異なる2つのギアを有する中間段ギア47と、中間段ギア47と第1噛み合い位置にて噛み合い中間段ギア47から駆動力が伝達されるドラム駆動ギア48と、中間段ギア47と第2噛み合い位置にて噛み合い中間段ギア47に駆動力を伝達するピニオン46と、を有し、感光体ドラムに駆動力を伝達する駆動ユニット103であって、前記第1噛み合い位置で発生する中間段ギア47のゲートピッチ累積誤差起因による速動変動が、前記第2噛み合い位置で発生するピニオン46の偏心起因による速度変動成分と定常的に相殺し合う関係になるように、前記ピニオン46の回転位相や前記中間段ギア47のゲート本数又はリブ本数に応じて前記各ギアを配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つ以上のギアから構成されるギア列を有し、回転体に駆動力を伝達する駆動伝達装置、及び前記駆動伝達装置を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像の形成を行うことができる電子写真方式の画像形成装置の需要が増大している。そして、(1)低ランニングコスト、(2)省スペース、(3)低電力、(4)高画質、(5)ハイスピード、(6)操作性の向上、の6項目が達成できるカラー画像形成装置の投入が期待されている。
【0003】
このような状況の中で、従来から(6)操作性を簡易にしながら、(5)ハイスピード化を図り、かつ、(4)高画質のカラー画像を提供することが可能な方式の画像形成装置が提案されている。例えば、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のプロセスカートリッジを用いて、感光体ドラムを4つ並列に並べて画像形成を行う、いわゆるタンデム方式(又は4ドラム方式)の画像形成装置である。
【0004】
この方式では、4色の画像形成を独立で行って1つのカラー画像を形成している。このため、各ドラムで作像される作像点が目標(理想)位置から位置ズレした場合、各色間の相対位置ズレが各色間の色ズレ(例えば、ブラック−シアン間の色ズレ)やピッチムラ(段状の濃度ムラ)となって実画像上に現れるという問題がある。
【0005】
特に各色の感光体ドラムに回転を伝達させる駆動伝達装置の駆動モータは、シャフトとロータとの同軸度、モータ位置決め部とシャフトとの同軸度等の振れによってモータ回転周期の速度ムラが発生しやすく目標(理想)位置からの位置ズレを引き起こし易い。
【0006】
更にギアの噛み合い周波数起因の騒音(耳障り音)を防止するために、前記駆動モータのシャフトに樹脂ギアを取り付けた構成のカラー画像形成装置が知られている。しかしながら、この構成では、樹脂ギアの累積ピッチ誤差等のギア精度及びシャフトと樹脂ギアとの同軸度等の振れによって、モータの回転周期の速度ムラがより発生し易い。このため、前述の構成であっても、実画像上にピッチムラ(段状の濃度ムラ)が発生してしまう可能性が高い。
【0007】
そこで、前述の色ズレや濃度ムラの原因となる駆動伝達装置の速度変動を低減させる技術が従来から提案されている。特開2000−330449号公報(以下、特許文献1という)には、4つの感光体ドラムを回転駆動伝達させるドラム駆動ギア軸上にそれぞれフライホイールを設け、慣性量を増大させて慣性効果によってドラムの速度変動を減少させる技術が開示されている。
【0008】
また、特開2000−162846号公報(以下、特許文献2という)では、4つの感光体ドラムを回転駆動伝達させるドラム駆動ギア軸上にそれぞれホイールとエンコーダからなる検出装置を設けている。そして、これら検出装置よりドラム駆動ギアの回転変動を検知し、その回転変動を打ち消す様な駆動信号によって感光体ドラムを回転駆動する駆動モータを回転させるフィードバック制御の技術が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2000−330449号公報
【特許文献2】特開2000−162846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1のような技術では、必要な慣性量によってフライホイールの大きさが増大する可能性があり、画像形成装置の小型化、省スペース化を考慮すると適用が困難である。特にタンデム型の4ドラム方式のカラー画像形成装置においては、フライホイールが各色分必要となるため、更に装置が大型化する可能性がある。
【0011】
また、上記特許文献2のような技術では、フライホイール方式ほどスペースを占有する可能性は小さいものの、部品点数が増加すると共に4つのドラム分の検出装置が必要となる。このため、コストアップは避けられず、特にローエンドの小型画像形成装置等には適用が困難である。
【0012】
そこで、本発明の目的は、装置の大型化や部品点数の増加によるコストアップをすることなく、色ズレや濃度ムラの原因となる駆動伝達装置の回転変動を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、同軸上に径の異なる2つのギアを有する中間ギアと、前記中間ギアと第1噛み合い位置にて噛み合い前記中間ギアから駆動力が伝達される下流ギアと、前記中間ギアと第2噛み合い位置にて噛み合い前記中間ギアに駆動力を伝達する上流ギアと、を有し、回転体に駆動力を伝達する駆動伝達装置であって、前記上流ギアと前記中間ギアとの減速比をN(Nは自然数)、且つ前記中間ギアのゲート本数を同じN(Nは自然数)として構成すると共に、前記上流ギアの累積ピッチ誤差をh1、前記上流ギアと噛み合う前記中間ギアの累積ピッチ誤差をh2、前記下流ギアと噛み合う前記中間ギアの累積ピッチ誤差をmh2(mは正の実数)、前記中間ギアの2つのギアの半径比をk:1(kは自然数)、前記第1噛み合い位置と前記第2噛み合い位置とが成す前記3つのギアの噛み合い角度をθとした場合、前記上流ギアの回転位相と前記中間ギアのゲート位置とに応じて、前記累積ピッチ誤差の関係が0<h2≦|h1/km|の場合は前記ギアの噛み合い角度がθ=π×(2i−1)/N1(iは自然数)の関係を満たすように、且つ前記累積ピッチ誤差の関係が|h1/km|≦h2の場合は前記ギアの噛み合い角度がθ=π×2i/N1を満たすように、前記各ギアを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記上流ギアの偏心起因による速度変動が、前記中間ギアのゲート周期の速度変動と相殺される為、前記下流ギア軸上の回転変動において、前記上流ギアの回転周期成分の速度変動を低減する事が出来る。これにより、装置の大型化や部品点数の増加によるコストアップをすることなく、回転体の回転ムラの原因となる駆動伝達装置の回転変動を低減することができる。
【0015】
特に、画像形成装置において像担持体に駆動力を伝達する駆動伝達装置に本発明を適用した場合、前記上流ギアの偏心起因による速度変動が、前記中間ギアのゲート(又はリブ)周期の速度変動と相殺される。この為、実画像を形成する像担持体の軸上の回転変動において、前記上流ギアの回転周期成分の速度変動を低減する事ができ、実画像上に発生する色ズレやピッチムラ(段状の濃度ムラ)を低減する事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係るカラー画像形成装置の概略を示す断面図である。図1に示すカラー画像形成装置は、鉛直方向に並設された4個の感光体ドラム1(1a,1b,1c,1d)を備えている。像担持体としての感光体ドラム1は、後述する駆動ユニットから駆動力が伝達されて回転駆動される。それぞれの感光体ドラム1の周囲には、帯電手段2(2a,2b,2c,2d)、現像手段4(4a,4b,4c,4d)、クリーニング手段6(6a,6b,6c,6d)等が配設されている。ここで、帯電手段2は、感光体ドラム1表面を均一に帯電するためのものである。また、現像手段4は、静電潜像に現像剤(以下、トナーという)を付着させてトナー像として現像するためのものである。また、クリーニング手段6は、転写後の感光体ドラム1表面に残った転写残トナーを除去するものである。また図1において、3(3a,3b,3c,3d)は画像情報に基づいてレーザービームを照射し感光体ドラム1上の静電潜像を形成する露光手段である。また、5は感光体ドラム1上のトナー像を記録材に転写させる転写手段である。これらによって画像形成手段が構成されている。
【0018】
ここで、感光体ドラム1と帯電手段2、現像手段4、クリーニング手段6は一体的にカートリッジ化され、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジ7(7a,7b,7c,7d)を形成している。
【0019】
また、給送部8から給送された記録材は搬送ベルトで構成した搬送手段9によって前記画像形成手段へ搬送され、各色トナー像が順次転写されてカラー画像が記録される。その後、カラー画像が転写された記録材Sは、定着手段10で画像定着されて排出ローラ対12によって排出部13へ排出される。
【0020】
なお、両面記録の際は、定着手段10で記録材が定着されて排出ローラ対12によって排出される前に、排出ローラ対12を逆転することにより、両面搬送経路に搬送される(矢印A方向)。両面搬送経路に搬送された記録材は、給送部8のレジストローラ8cにより再び前記画像形成手段へ搬送される。
【0021】
図2はプロセスカートリッジを画像形成装置本体に装着して、プロセスカートリッジ内の感光体ドラム1が本体側板に位置決めされる様子を示した図である。プロセスカートリッジは、感光体ドラム1及び感光体ドラム1に作用するプロセス手段(帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段)を一体的にカートリッジ化したもので、ユーザー自身が画像形成装置本体に着脱可能となっている。画像形成装置本体内部には、プロセスカートリッジの着脱方向に沿ってガイドレール部(不図示)が設けてあり、ユーザーはこれに沿ってプロセスカートリッジを挿入する。この時、プロセスカートリッジ内の感光体ドラム1を回転支持する軸受部130,131の外周がそれぞれ本体右側板101及び本体左側板102のエッジ切り欠き部133及び134の端面133a,133b及び134a,134bに突き当たる。これによって画像形成装置本体に対して感光体ドラム1及びプロセスカートリッジが精度良く位置決め固定される。
【0022】
プロセスカートリッジの挿入方向右側には複数の感光体ドラム1を駆動する駆動ユニット103(図3参照)が画像形成装置本体の右側のフレーム(本体右側板)101の外側に位置決め、固定されている。
【0023】
図3は前記駆動ユニット103を説明する図である。駆動ユニット103は駆動フレーム104上にY,M,C,Bk各色の感光体ドラム1を駆動する駆動部103Y,103M,103C,103Bkがそれぞれ精度良く位置決め、固定されている。ここで、Yはイエロー,Mはマゼンタ,Cはシアン,Bkはブラックである。また、駆動ユニット103の各駆動部は、それぞれ駆動フレーム104に固定された駆動源としてのドラムモータ45を有する。更に、モータ45のモータ軸に固定された上流ギアとしてのピニオン46と、ピニオン46及びドラム駆動ギア48と噛み合い回転自在に支持された中間ギアとしての中間段ギア47と、下流ギアとしてのドラム駆動ギア48を有する。また、ドラム駆動ギア48を支持する軸受51と、ドラム駆動ギア48の先端部に形成された三角カップリング部52を有する。
【0024】
次に図4及び図5を用いて感光体ドラム1と駆動ユニット103との接続構成について説明する。
【0025】
ユーザーがプロセスカートリッジを画像形成装置本体に装着した後、記録材担持搬送ユニット(不図示)を感光体ドラム1に当接させる回転動作と連動して回転カム128が回転する。すると、回転カム128と接続する相手側回転カム129がドラム駆動ギア48と共にリターンバネ62の付勢力によって感光体ドラム1の軸方向にスラスト移動する。これによって、ドラム駆動ギア48の先端部に形成された三角カップリング凹部52が感光体ドラムユニット端部のドラムカップリング57に形成された三角カップリング凸部37と接続し、嵌合する。これによりドラム駆動ギア48は感光体ドラム1に対して位置決め、固定されると共に、ドラム駆動ギア48の軸線が感光体ドラム1に対して同一直線上に配置される。
【0026】
三角カップリング凹部52はねじれた正三角柱となる穴を有し、三角カップリング凸部37と軸方向に係脱される。三角カップリング凸部37と三角カップリン凹部52は嵌合時に、三角カップリング凸部37のねじれた正三角柱の稜線が三角カップリング凹部52のねじれた三角柱の面に接触する。これにより、三角カップリング凸部37と三角カップリング凹部52は調芯されて回転中心が一致する。また上記において、画像形成中のドラム駆動ギア48は三角カップリング凹部52の底面と三角カップリング凸部37の端面が突き当たることによってプロセスカートリッジ側へ最も移動した位置でスラスト位置が定められる。ドラム駆動ギア48はスラスト一が定められると共に、軸受51に沿ってリターンバネ62の付勢力に抗して後退可能に支持されている。
【0027】
また図6及び図7に示す様に、三角カップリング凹部52にはねじれた正三角柱となる穴の一辺52aにキー溝65が設けられており、三角カップリング凸部37の正三角柱の一辺37aに設けられた位相位置決めリブ66と嵌合する様に構成されてる。位相位置決めリブ66は三角カップリング凹部52の正三角柱穴の一辺52aの稜線と三角カップリング凸部37の正三角柱の一辺37aの面が必ず決まって接触するように、一回転一位相でのみ係脱できる様に構成されている。位相位置決めリブ66とキー溝65はその位相が一致するまでは、三角カップリング凸部37と三角カップリング凹部52は回転が始まっても互いに嵌合する事はない。
【0028】
位相位置決めリブ66とキー溝65の位相が合わず、三角カップリング凸部37と三角カップリング凹部52が接続しない状態では、三角カップリング凸部37の端面が三角カップリング凹部52の口部の縁を押し、リターンバネ62の付勢力に抗してドラム駆動ギア48を画像形成装置外側へ後退させる。そして、プロセスカートリッジ7の装着後、画像形成装置本体の前回転時に位相位置決めリブ66とキー溝65の位相が一致した時点で瞬時に接続する。
【0029】
以上示した様に、ドラム駆動ギア48と感光体ドラム1は、位相位置決めリブ66とキー溝65の位相が一致し、互いの三角カップリング凹部52と三角カップリング凸部37とが係合することによって初めて位置決め固定がなされる。この位置決め固定と共に、駆動源であるドラムモータ45による回転駆動力が三角カップリング凸部37に伝達される。
【0030】
また、図4、図5、図6に示す様に、ドラム駆動ギア48にはその回転位相が検知できる様に位相検知リブ72が設けられている。位相検知リブ72にはスリット幅の異なるスリット部72a及び72bが設けられており、別途画像形成装置本体に設置された検出部71がドラム駆動ギア48の回転中にスリット部72a及び72bの通過を検知する。これによって、ドラム駆動ギア48の回転位相が瞬時に検出される。そして、画像形成装置起動時における前回転停止時に、前述した検出部71によって、4色それぞれのドラム駆動ギア48の回転位相を検知する。そして印字時に各々のドラム駆動ギア48の回転位相が一致するように、あらかじめ所定の角度分ずらした位置でそれぞれのドラム駆動ギア48を停止させる様にモータ45の回転を制御する。これにより、次の印字ジョブが開始した際に4色それぞれの感光体ドラム1の回転位相は全くずれることなく、位相ズレ起因の副走査方向のドラム周期の色ズレが発生することはない。
【0031】
ここで、図8〜図30を用いて駆動伝達装置を構成する、前記ピニオン46、中間段ギア47、ドラム駆動ギア48のギア位相配置構成について説明する。
【0032】
図8に示す様に、前記駆動ユニット103内の前記感光体ドラム1を駆動するギア列の歯数は、それぞれのギアの回転周期が前記ドラム駆動ギア48の回転周期の整数分の1となる様に構成されている。具体的には、本実施形態では、前記ドラム駆動ギア48が128歯、前記中間段ギア47の大ギア47a及び小ギア47bがそれぞれ64歯および32歯、前記ピニオン46が16歯となっている。また、最上流に位置する前記ピニオン46と前記中間段ギア47との減速比は4であり、それぞれのギアは樹脂部材による射出成型によって製作されている。図9は前記ピニオン46の累積ピッチ誤差を示すグラフの例であり、約60μmの大きさを持った1回転周期のサインカーブにて近似的に表す事ができる。前記ピニオン46のギア端部には、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差の位相が管理できるようなマーキング150が、累積ピッチ誤差の最大値に相当する位置に設けられている。
【0033】
図8に示す様に、前記中間段ギア47の成型時に用いるゲート数は前記ピニオン46との減速比と同じ4点にて構成されていて、ゲート位置にはその位相が管理できるようなマーキング151が施されている。この4点のマーキング151は、中間段ギア47の各ギア47a,47bに施されている。具体的には、大ギア47aにはマーキング151a(うち1点は不図示)が、小ギア47bにはマーキング151bが施されている。図10は前記中間段ギア47の大ギア47aの累積ピッチ誤差を示すグラフの例である。通常、多点ゲートの射出成型によって成型されたギアは1回転周期の偏心成分とは別にゲートピッチの累積ピッチ誤差が発生する。型精度及び成型条件によってそのピッチ誤差精度の大小は変動するものの、型精度向上と成型条件の最適化にはコストアップと高度な技術が必要となるため、通常の射出成型ではゲートピッチの累積ピッチ誤差をゼロにすることは難しい。図11は前記中間段ギア47の小ギア47bの累積ピッチ誤差を示すグラフの例である。前記中間ギア47は4点ゲートであるため、図10及び図11では累積ピッチ誤差を約80μmの大きさを持った1回転周期のサインカーブと1/4周期のゲートピッチのサインカーブとの合成波にて近似的に表される。なお、各周期の振幅はギア精度によって様々であり、またギア外径によっても大小が異なってくるので、図10及び図11に示すグラフは本実施形態を説明する為に判り易く近似した累積ピッチ誤差の様子を示している。中間段ギア47のマーキング151が施された各ゲート位置は、累積ピッチ誤差曲線の山の位相と一致する。これは、成型時にゲートから流入する樹脂の圧力が各ゲート近傍と各ゲート間の中央部では異なる為に、型への転写性が変化して累積ピッチ誤差等のギア精度に影響を及ぼす為である。
【0034】
図12に示す様に、前記ピニオン46のマーキング位置150が前記中間段ギア47の大ギア47aとの噛み合い位置にある場合、噛み合い位置が上流側である前記ピニオン46の累積ピッチ誤差が大きくなる位相に相当する。このため、この噛み合い位置付近においては前記中間段ギア47は通常時よりも先へ先へと回転させられる事になり、前記中間段ギア47の回転位置誤差は回転方向に大きくなる。また、図13に示す様に前記中間段ギア47のマーキング位置(ゲート位置)151aが前記ピニオン46との噛み合い位置にある場合、噛み合い位置が下流側である前記中間段ギア47の大ギア47aの累積ピッチ誤差が大きくなる位相に相当する。このため、この噛み合い位置付近においては前記中間段ギア47は通常時よりも回転の進みが遅れて、前記中間段ギア47の回転位置誤差は反回転方向に大きくなる。同様に、図14に示す様に、前記中間段ギア47のマーキング位置151bが前記ドラム駆動ギア48との噛み合い位置にある場合、噛み合い位置が上流側である前記中間段ギア47の小ギア47bの累積ピッチ誤差が大きくなる位相に相当する。このため、この噛み合い位置付近においては前記ドラム駆動ギア48は通常時よりも先へ先へと回転させられる事になり、前記ドラム駆動ギア48の回転位置誤差は回転方向に大きくなる。この時、本実施形態における前記中間段ギア47の大小ギア歯数比は2である。このことから、図10及び図11に示す様に累積ピッチ誤差が同じ数値の場合(図10及び図11では80μm)、同じ累積ピッチ誤差による相手従動側ギアに及ぼす回転位置誤差の大きさは、前記小ギア47bが前記大ギア47aの2倍に相当する。
【0035】
従って図8に示す様に、前記ピニオン46、前記中間段ギア47及び前記ドラム駆動ギア48の噛み合い位相を、前記ピニオン46マーキング位置150の180°反対位置と前記中間段ギア47の大ギア47aのマーキング位置151aと噛み合わせる。これと共に、前記中間段ギア47の小ギア47bのマーキング位置151bと前記ドラム駆動ギア48とを噛み合わせる。これにより、前記ドラマ駆動ギア48の軸上における前記ピニオン46の1回転周期の回転位置誤差を最小限に抑える事ができる。すなわち、図16に示す様に前記ピニオン46と前記大ギア47aとの第2噛み合い位置では、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の速度変動と前記大ギア47aのゲートピッチ累積誤差起因の速度変動の影響は強め合う。このため、前記中間段ギア47軸上では約70μm相当の前記大ギア47a上におけるピッチ円周誤差が発生する。また、前記ピニオン46の1回転周期と前記中間段ギア47のゲートピッチ周期が同一であるために、前記第2噛み合い位置においては両者の速度変動は定常的に強め合う。しかし、前記小ギア47bと前記ドラム駆動ギア48との第1噛み合い位置で発生する前記小ギア47bのゲートピッチ累積誤差起因の速動変動が、前述した第2噛み合い位置で発生した速度変動成分と定常的に相殺し合う関係にある。このため、図17に示す様に最下流ギアである前記ドラム駆動ギア48上における前記ピニオン46の1回転周期の速度変動は最小限に抑えられる。図18は図17の状態より前記中間段ギア47及び前記ドラム駆動ギア48の回転周期成分を除去して、前記ピニオン46の1回転成分のみの速度変動状態を、図9に示す前記ピニオン46単体の累積ピッチ誤差と比較したものである。図18に示すように、ここでは、前記ピニオン46単体の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差が約30μmになる。これに対して、前記ドラム駆動ギア48上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差は約10μmに低減された。
【0036】
なお、ここでは、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差を60μm、前記中間段ギア47のゲートピッチの累積ピッチ誤差を大ギア47a、小ギア47b共に80μmである場合を想定したが、これに限定されるものではない。仮に前記中間段ギア47のゲートピッチの累積ピッチ誤差が60μmであった場合には、前述した様な回転誤差の相殺効果によって、前記ドラム駆動ギア48上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差は約ゼロに低減させる事が可能となる。すなわち、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差と前記中間段ギア47のゲートピッチの累積ピッチ誤差との大小によって、前記ドラム駆動ギア48上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差の低減効果が異なってくることになる。
【0037】
そこで、前記ピニオン46の回転位相と、前記ピニオン46と前記中間段ギア47及び前記ドラム駆動ギア48の3つのギアの噛み合い角度と、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差及び前記中間段ギア47のゲートピッチの累積ピッチ誤差の数値との相互関係において、ある一定の関係を元にして各パラメータを一義的に決定する。これによって、最下流である前記ドラム駆動ギア48軸上における前記ピニオン46の1回転周期成分の速度変動を低減し、前記ピニオン46単体の累積ピッチ誤差よりも確実に小さくする事が可能となる。
【0038】
次に、前述した様な前記ピニオン46の1回転周期における速度変動の低減効果を実現可能にする具体的なギア列の構成について詳述する。
【0039】
先ず、図15に示す様に前記小ギア47bのマーキング位置が前記ドラム駆動ギア48との噛み合い位置にあり、且つ前記ピニオン46のマーキング位置が前記大ギア47aとの噛み合い位置に来る様に前記ピニオン46及び前記ドラム駆動ギア48を配置する。ここで、前記ピニオン46と前記中間段ギア47との減速比をN1、及び前記中間段ギア47のゲート数を同じN1(N1は自然数)とする。また、前記中間段ギア47と前記ドラム駆動ギア48との減速比をN2(N2は自然数)とする。また、前記ピニオン46と前記大ギア47aとの噛み合い位置(第2噛み合い位置)と前記小ギア47bと前記ドラム駆動ギア48との噛み合い位置(第1噛み合い位置)とが成す角度をθとする。更に、前記ピニオン46の1回転周期の累積ピッチ誤差をh1、前記大ギア47aのゲートピッチの累積ピッチ誤差をh2、前記小ギア47bのゲートピッチの累積ピッチ誤差をmh2(mは係数)とする。また、前記中間段ギア47の半径比をk:1(kは自然数)とする。
【0040】
この時、前記中間段ギア47のマーキング位置が前記ピニオン46との噛み合い位置に来る様に前記中間段ギア47を配置した場合、前記ドラム駆動ギア48軸上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、以下に示すピッチ円周誤差曲線P1,P2,P3のそれぞれの誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。すなわち、前記ドラム駆動ギア48の噛み合い位置がθ=π×2i/N1(iは自然数)で各ギア配置が表される場合において、前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、図19に示す様に前記ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P1、前記大ギア47aのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P2及び前記小ギア47bのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P3のそれぞれの誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。
【0041】
・ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P1=h1×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)
・大ギア47aの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P2=h2×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)
・小ギア47bの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P3=mh2×sin[N1×N2×θ]/2
すなわち、
P=P1+P2+P3
=h1×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)+h2×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)+mh2×sin[N1×N2×θ]/2
=(−h1+(km−1)h2)×sin[N1×N2×θ]/(2×k)
上式より、前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差は、|(−h1+(km−1)h2)|と成ることがわかる。
【0042】
上式より、前記大ギア47aのゲートピッチの累積ピッチ誤差h2を横軸にした場合の前記ドラム駆動ギア48上のピッチ円周誤差の推移を図20に示す。図20よりギア噛み合い位置がθ=π×2i/N1の場合に、前記ドラム駆動ギア48上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差を確実に低減できる前記大ギア47aのゲートピッチの累積ピッチ誤差h2の値の範囲は、
0<h2<|2×h1/(mk−1)|
である事が判る。
【0043】
次に、図21に示す様に前記中間段ギア47の2本のゲート位置の中間点が前記ピニオン46との噛み合い位置に来る様に前記中間段ギア47を配置した場合、前記ドラム駆動ギア48軸上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、以下に示すピッチ円周誤差曲線P1,P2,P3のそれぞれの誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。すなわち、前記ドラム駆動ギア48の噛み合い位置がθ=π×(2i−1)/N1(iは自然数)で各ギア配置が表される場合において、前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、図22に示す様に前記ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P1、前記大ギア47aのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P2及び前記小ギア47bのゲートピッチ累積誤差曲線P3のそれぞれの誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。
【0044】
・ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P1=h1×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)
・大ギア47aの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P2=h2×sin[N1×N2×θ]/(2×k)
・小ギア47bの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P3=mh2×sin[N1×N2×θ]/2
すなわち、
P=P1+P2+P3
=h1×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)+h2×sin[N1×N2×θ]/(2×k)+mh2×sin[N1×N2×θ]/2
=(−h1+(km+1)h2)×sin[N1×N2×θ+γ1]/(2×k)
ただしcos[γ1]=−h1/(h1+h2(km−1)(1/2)
上式より、前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差は、|(−h1+(km+1)h2)|と成ることがわかる。
【0045】
上式より、前記大ギア47aのゲートピッチの累積ピッチ誤差h2を横軸にした場合の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差の推移を図23に示す。図23よりギア噛み合い位置がθ=π×(2i−1)/N1の場合に、前記ドラム駆動ギア48上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差を確実に低減できる前記大ギア47aのゲートピッチの累積ピッチ誤差h2の値の範囲は、
0<h2<|2×h1/(mk+1)|
である事が判る。
【0046】
したがって、図20及び図23のグラフを統合した図24より、前記ドラム駆動ギア48の軸上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差を最も低減できる噛み合い位置θは、
0<h2≦|h1/km|の場合、θ=π×(2i−1)/N1…………(1)
|h1/km|≦h2の場合、θ=π×2i/N1…………(2)
で表されることがわかる。
【0047】
上述した様に、前記ピニオン46の回転位相と、前記ピニオン46と前記中間段ギア47及び前記ドラム駆動ギア48の3つのギアの噛み合い角度と、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差及び前記中間段ギア47のゲートピッチの累積ピッチ誤差の数値との相互関係において、前記(1)、(2)式の関係を満たす様に各ギアを配置してやる。これによって、前記ドラム駆動ギア48軸上における前記ピニオン46の1回転周期の速度変動を低減し、前記ピニオン46単体の累積ピッチ誤差よりも確実に小さくする事が可能となる。
【0048】
次に各ギアの位相合せ精度について詳述する。理想的には前述した様な相互関係によって各ギアのマーキング位置を確実に噛み合い位置に合せる事が望ましい。しかしながら、現実的にはギア組立て時の誤差やその他の制約等によって各ギアのマーキング位置と理想位置との間にある角度が発生する場合がある。この様な場合においても、他のギアが理想位置に配置されていれば、各ギアのマーキング位置と理想位置との間の角度ズレの大きさによっては、変わらず前述した低減効果を確保する事ができる。
【0049】
図25に示す様に、前記中間段ギア47及び前記ドラム駆動ギア48が理想位置に配置されていて、且つ前記ピニオン46の回転位相が理想位置より角度αずれた場合について詳述する。前記中間段ギア47のゲート位置が前記ピニオン46との噛み合い位置に来る様に前記中間段ギア47を配置した場合、前記ドラム駆動ギア48軸上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、以下に示すピッチ円周誤差曲線P1,P2,P3のそれぞれの誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。すなわち、前記ドラム駆動ギア48の噛み合い位置がθ=π×2i/N1(iは自然数)で各ギア配置が表される場合において、前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P1、前記大ギア47aのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P2及び前記小ギア47bのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P3のそれぞれの誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。
【0050】
・ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P1=h1×sin[N1×N2×θ+π+α]/(2×k)
・大ギア47aの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P2=h2×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)
・小ギア47bの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P3=mh2×sin[N1×N2×θ]/2
すなわち、
P=P1+P2+P3
=h1×sin[N1×N2×θ+π+α]/(2×k)+h2×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)+mh2×sin[N1×N2×θ]/2
=(((−h1)+(km−1)×h2+2×(−h1)×(km−1)×h2×cos[α])(1/2))×sin[N1×N2×θ+γ2]/(2×k)
ただしcos[γ2]=−h1/(h1+h2(km+1)(1/2)
上式より、前記ピニオン46の回転位相が角度αずれた場合の前記ドラム駆動ギア48軸上におけるピッチ円周誤差は、
|(((−h1)+(km−1)×h2+2×(−h1)×(km−1)×h2×cos[α])(1/2))/k|………(3)
と成ることがわかる。
【0051】
上式より、前記ピニオン46の回転位相ズレ角度αを横軸にした場合の前記ドラム駆動ギア48上のピッチ円周誤差の推移を図26に示す。図26よりギア噛み合い位置がθ=π×2i/N1の場合に、前記ピニオン46の回転位相ズレが角度αの場合でも、ある範囲においては前記ドラム駆動ギア48上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差を確実に低減できる事がわかる。この低減効果を得られる角度αの範囲は、式(3)と(h1/k)との2つの交点間、つまり、
−h2×(km−1)/(2×h1)<cos[α]<h2×(km−1)/(2×h1)
である。
【0052】
次に前記中間段ギア47の2本のゲート位置の中間点が前記ピニオン46との噛み合い位置に来る様に前記中間段ギア47を配置した場合、前記ドラム駆動ギア48軸上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、以下に示すピッチ円周誤差曲線P1,P2,P3のそれぞれの誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。すなわち、前記ドラム駆動ギア48の噛み合い位置がθ=π×(2i−1)/N1(iは自然数)で各ギア配置が表される場合において、前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P1、前記大ギア47aのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P2及び前記小ギア47bのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P3のそれぞれの誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。
【0053】
・ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P1=h1×sin[N1×N2×θ+π+α]/(2×k)
・大ギア47aの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P2=h2×sin[N1×N2×θ]/(2×k)
・小ギア47bの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P3=mh2×sin[N1×N2×θ]/2
すなわち、
P=P1+P2+P3
=h1×sin[N1×N2×θ+π+α]/(2×k)+h2×sin[N1×N2×θ]/(2×k)+mh2×sin[N1×N2×θ]/2
=(((−h1)+(km+1)×h2+2×(−h1)×(km+1)×h2×cos[α])(1/2))×sin[N1×N2×θ+γ3]/(2×k)
ただしcos[γ3]=−h1/(h1+h2(km+1)(1/2)
上式より、前記ピニオン46の回転位相が角度αずれた場合の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差は、
|(((−h1)+(km+1)×h2+2×(−h1)×(km+1)×h2×cos[α])(1/2))/k|………(4)
と成ることがわかる。
【0054】
上式より、前記ピニオン46の回転位相ズレ角度αを横軸にした場合の前記ドラム駆動ギア48上のピッチ円周誤差の推移を図27に示す。図27よりギア噛み合い位置がθ=π×(2i−1)/N1の場合に、前記ピニオン46の回転位相ズレが角度αの場合でも、低減効果を得られる角度αの範囲は、式(4)と(h1/k)との2つの交点間、つまり、
−h2×(km+1)/(2×h1)<cos[α]<h2×(km+1)/(2×h1)
である。
【0055】
最後に、図28に示す様に前記中間段ギア47及び前記ドラム駆動ギア48が理想位置に配置されていて、且つ前記ピニオン46の回転位相が正しい位置にある場合で、前記ドラム駆動ギア48と前記ピニオン46の成す角度θが理想位置より角度φずれた状態について詳述する。前記ドラム駆動ギア48軸上におけるピッチ円周誤差曲線Pは、前記ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P1、前記大ギア47aのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P2及び前記小ギア47bのゲートピッチ累積誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線P3のそれぞれの誤差曲線の総和として近似して表す事ができる。
【0056】
・ピニオン46の累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P1=h1×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)
・大ギア47aの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P2=h2×sin[N1×N2×θ+π+N2×φ]/(2×k)
・小ギア47bの累積ピッチ誤差起因の前記ドラム駆動ギア48上におけるピッチ円周誤差曲線
P3=mh2×sin[N1×N2×θ]/2
すなわち、
P=P1+P2+P3
=h1×sin[N1×N2×θ+π]/(2×k)+h2×sin[N1×N2×θ+π+N2×φ]/(2×k)+mh2×sin[N1×N2×θ]/2
=((−h1+h2×km)+(−h2)+2×(−h1+h2×km)×(−h2)×cos[N2×φ])(1/2))×sin[N1×N2×θ+γ4]/(2×k)
ただしcos[γ4]=−h1/(2×h1−h1×h2+h2×k×m(1/2)
上式より、前記ドラム駆動ギア48と前記ピニオン46の成す角度θが理想位置より角度φずれた場合の前記ドラム駆動ギア48軸上におけるピッチ円周誤差は、
|((−h1+h2×km)+(−h2)+2×(−h1+h2×km)×(−h2)×cos[N2×φ])(1/2))/k|………(5)
と成ることがわかる。
【0057】
上式より、前記ドラム駆動ギア48と前記ピニオン46の成す角度θが理想位置より角度φずれた場合の前記ドラム駆動ギア48軸上のピッチ円周誤差の推移を図29に示す(横軸は角度φ)。図29より前記ドラム駆動ギア48と前記ピニオン46の成す角度θが理想位置より角度φずれた場合でも、ある範囲においては前記ドラム駆動ギア48軸上における前記ピニオン46の1回転周期のピッチ円周誤差を確実に低減できる事がわかる。
【0058】
低減効果を得られる角度φの範囲は、式(5)と(h1/k)との2つの交点間、つまり
−(−2×h1×km+h2(k×m+1))/(−2×h1+2×h2×km)<cos[N2×φ]<(−2×h1×km+h2(k×m+1))/(−2×h1+2×h2×km)
である。
【0059】
この時、前記大ギア47aのゲートピッチの累積ピッチ誤差h2の値の範囲が|h1/(km+1)|≦h2<|h1/(km−1)|の場合は、前記ドラム駆動ギア48と前記ピニオン46の成す角度θは全ての範囲において低減効果がある。ただし、あくまでも前記中間段ギア47及び前記ドラム駆動ギア48が理想位置に配置されていて且つ前記ピニオン46の回転位相が正しい位置にある事が前提条件となる。
【0060】
この様に、前述した要領で各ギアの位相配置を決定してやれば、前記ピニオン46の偏心起因による速度変動が、前記中間段ギア47のゲート周期の速度変動と相殺される為、前記ドラム駆動ギア48軸上における速度変動を低減させる事ができる。この時、理想位置より各ギアの位相配置が多少ずれた場合においても、前述した範囲の角度ズレ内においては同様に低減効果を発揮させることができる。これにより、装置の大型化や部品点数の増加によるコストアップをすることなく、感光体ドラムの回転ムラの原因となる駆動伝達装置の回転変動を低減することができ、実画像上に発生する色ズレやピッチムラ(段状の濃度ムラ)を低減する事が可能となる。
【0061】
なお、上述した実施形態では、前記中間段ギア47のゲート数をNとした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図30に示す様に前記中間段ギア47の有するリブ153a,153bの本数をNとし、且つ、上述した実施形態と同様の要領で各ギアの位相配置を決定してやればよい。この構成によっても、上述した実施形態と同様に、前記ピニオン46の偏心起因による速度変動が、前記中間段ギア47のリブ周期の速度変動と相殺される為、前記ドラム駆動ギア48の軸上における速度変動を低減させる事ができる。この時、理想位置より各ギアの位相配置が多少ずれた場合においても、前述した範囲の角度ズレ内においては同様に低減効果を発揮させることができる。
【0062】
また上述した実施形態では、画像形成手段を4つ使用しているが、この使用個数は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
【0063】
また上述した実施形態では、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジとして、感光体ドラムと、該感光体ドラムに作用するプロセス手段としての帯電手段,現像手段,クリーニング手段を一体に有するプロセスカートリッジを例示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、感光体ドラムの他に、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうち、いずれか1つを一体に有するプロセスカートリッジであっても良い。
【0064】
更に上述した実施形態では、感光体ドラムを含むプロセスカートリッジが画像形成装置本体に対して着脱自在な構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば各構成部材がそれぞれ独立して組み込まれた画像形成装置、或いは各構成部材がそれぞれ独立して着脱可能な画像形成装置であっても良い。
【0065】
また上述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。更に上述した実施形態では、画像形成装置として、記録材担持体を使用し、該記録材担持体に担持された記録材に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、中間転写体を使用し、該中間転写体に各色のトナー像を順次重ねて転写し、該中間転写体に担持されたトナー像を記録材に一括して転写する画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、前述したギア配置によって構成された駆動伝達装置を、感光体ドラムだけでなく、記録材担持体もしくは中間転写体などの他の像担持体を回転駆動するための駆動部位に必要に応じて設けても良い。この構成によっても、前記上流ギアの偏心起因による速度変動が、前記中間ギアのゲート(又はリブ)周期の速度変動と相殺される為、前記像担持体の軸上の回転変動において、前記上流ギア回転周期成分の速度変動を低減する事ができる。これにより、実画像上に発生する色ズレ(例えば、ブラック−シアン間の色ズレ)やピッチムラ(段状の濃度ムラ)レベルを低減する事が可能となる。
【0067】
また、上述した実施形態では、回転体として、画像形成装置における像担持体を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、画像形成装置に限らず、回転体の回転ムラに起因する不具合を解消するために、その回転体に駆動力を伝達する駆動伝達装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】画像形成装置の全体構成を示す縦断面図
【図2】画像形成装置の構成を説明する斜視図
【図3】画像形成装置における駆動ユニットの構成を示すユニット構成図
【図4】画像形成装置における駆動ユニットと感光体ドラムの接続形態を説明する構成図
【図5】画像形成装置における駆動ユニットと感光体ドラムの接続形態を説明する構成図
【図6】画像形成装置における駆動ユニットのカップリング形状を示す斜視図
【図7】画像形成装置における像担持体ユニットのカップリング形状を示す斜視図
【図8】画像形成装置における駆動ギア列構成を一例を説明する構成図
【図9】画像形成装置におけるピニオンギアの累積ピッチ誤差を説明するグラフ
【図10】画像形成装置における中間段ギア(大ギア)の累積ピッチ誤差を説明するグラフ
【図11】画像形成装置における中間段ギア(小ギア)の累積ピッチ誤差を説明するグラフ
【図12】画像形成装置における駆動ギア列構成を説明する構成図
【図13】画像形成装置における駆動ギア列構成を説明する構成図
【図14】画像形成装置における駆動ギア列構成を説明する構成図
【図15】画像形成装置における駆動ギア列構成を説明する構成図
【図16】画像形成装置における中間段ギア軸上の速度変動を説明するグラフ
【図17】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上の速度変動を説明するグラフ
【図18】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図19】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図20】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図21】画像形成装置における駆動ギア列構成を説明する構成図
【図22】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図23】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図24】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図25】画像形成装置における駆動ギア列構成を説明する構成図
【図26】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図27】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図28】画像形成装置における駆動ギア列構成を説明する構成図
【図29】画像形成装置における感光体ドラムギア軸上における速度変動の低減効果を説明するグラフ
【図30】画像形成装置における駆動ギア列構成を他例を説明する構成図
【符号の説明】
【0069】
1 …感光体ドラム(回転体)
45 …モータ(駆動源)
46 …ピニオン(上流ギア)
47 …中間段ギア(中間ギア)
47a …大ギア
47b …小ギア
48 …ドラム駆動ギア(下流ギア)
103 …駆動ユニット
150 …マーキング
151,151a,151b …マーキング(ゲート)
153a,153b …リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に径の異なる2つのギアを有する中間ギアと、前記中間ギアと第1噛み合い位置にて噛み合い前記中間ギアから駆動力が伝達される下流ギアと、前記中間ギアと第2噛み合い位置にて噛み合い前記中間ギアに駆動力を伝達する上流ギアと、を有し、回転体に駆動力を伝達する駆動伝達装置であって、
前記上流ギアと前記中間ギアとの減速比をN(Nは自然数)、且つ前記中間ギアのゲート本数又はリブ本数を同じN(Nは自然数)として構成すると共に、
前記上流ギアの累積ピッチ誤差をh1、前記上流ギアと噛み合う前記中間ギアの累積ピッチ誤差をh2、前記下流ギアと噛み合う前記中間ギアの累積ピッチ誤差をmh2(mは正の実数)、前記中間ギアの2つのギアの半径比をk:1(kは自然数)、前記第1噛み合い位置と前記第2噛み合い位置とが成す前記3つのギアの噛み合い角度をθとした場合、
前記上流ギアの回転位相と前記中間ギアのゲート位置とに応じて、前記累積ピッチ誤差の関係が0<h2≦|h1/km|の場合は前記ギアの噛み合い角度がθ=π×(2i−1)/N1(iは自然数)の関係を満たすように、且つ前記累積ピッチ誤差の関係が|h1/km|≦h2の場合は前記ギアの噛み合い角度がθ=π×2i/N1を満たすように、前記各ギアを配置したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記第2噛み合い位置に対する前記上流ギアの回転位相ズレの角度がαである場合は、前記ギアの噛み合い角度がθ=π×2i/N1の場合には、前記角度αの範囲が、−h2×(km−1)/(2×h1)<cos[α]<h2×(km−1)/(2×h1)を満たし、前記ギアの噛み合い角度がθ=π×(2i−1)/N1の場合には、前記角度αの範囲は、−h2×(km+1)/(2×h1)<cos[α]<h2×(km+1)/(2×h1)であることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記第1噛み合い位置と前記第2噛み合い位置とが成す前記3つのギアの噛み合い角度が前記噛み合い角度θより角度φずれた場合は、前記角度φの範囲が、−(−2h1km+h2(k×m+1))/(−2×h1+2×h2×km)<cos[N2φ]<(−2×h1×km+h2(k×m+1))/(−2×h1+2×h2×km)であることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
回転体を用いて記録材に画像を形成する画像形成装置であって、前記回転体のうち、実画像の形成に関わる回転体に駆動力を伝達する駆動伝達装置として、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図30】
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【図19】
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【図22】
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【図29】
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【公開番号】特開2007−178591(P2007−178591A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375319(P2005−375319)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】