説明

駆動力伝達装置及び画像形成装置

【課題】歯車の噛合い精度が良好であり、振動や回転変動の発生がない構造を廉価に達成する。
【解決手段】駆動力を発生する駆動力発生手段と、該駆動力により回転駆動される駆動歯車22と、駆動力発生手段からの駆動力を駆動歯車22に伝達する駆動軸23とを有する駆動ユニットと、駆動歯車22と噛み合って回転駆動する従動歯車31と、該従動歯車31を保持する従動軸32と、該従動軸32に固定された回転体とを有する従動ユニット3と、を備える駆動力伝達装置であって、駆動ユニットの駆動時における駆動軸23及び従動軸32の中心位置をそれぞれ点A及び点Bとし、線分ABが水平面となす角度をα、駆動歯車22の圧力角をβとした場合、線分ABの垂線に対して角度α−βだけ従動軸32の回転方向と反対方向に傾いた線上に、駆動ユニットの非駆動時の従動軸32の中心位置がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、FAXなどの画像形成に用いる駆動力伝達装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な機械に駆動力の伝達手段として歯車が採用されており、特に、コピー機、プリンター、FAXなどの画像形成装置に多数の歯車が用いられている。コピー機などのOA機器は、近年、高画質化・高速処理化が進み、それに伴い歯車などの駆動力伝達部品には高耐久性や高精度化が求められている。しかし、画像形成装置の高速処理化に伴い歯車をより高速回転させる必要が生じ、歯車同士が噛み合う際の振動や騒音の増大が問題となってきた。また、画像形成装置には、小型化や駆動モータの設置数の削減化の要求もあり、その要求を満足させるべく歯車の使用個数が増加しており、これも振動や騒音の増加の要因となっている。
また、画像形成装置は、消耗品の交換を容易にするためや、故障を発生し難くするために、ユニット化された現像装置や転写装置などを製品本体に装着する構成になっており、駆動モータで発生した駆動力は現像装置や転写装置などの従動ユニットへ伝達される必要があり、その駆動力伝達部品として歯車が用いられている。
【0003】
そして、駆動モータから各従動ユニットへ駆動力が伝達される際に、製品本体に対して従動ユニットが傾いて配置されていたり、歯車の軸芯ズレが発生していたり、又は従動ユニットが所定位置からずれて配置されていたりすると、歯車の噛合いにズレが生じ、駆動力の伝達を十分に行うことができなくなったり、軸の回転が不安定になったりするなどし、振動や回転変動の発生に繋がるという問題があった。
より具体的には、軸の回転が不安定になり回転変動が起こると、現像ローラと感光体との間隔が変わり、現像ローラや感光体の回転周期に応じたピッチ状の濃度ムラ、すなわちバンディングが画像に発生するという問題があった。また、振動が従動ユニットに伝播すると、レンズやミラーなどに振動が発生し、ビーム位置の変動を引き起こす。このビーム位置の変動もバンディングの要因となる。このように、製品本体からユニットに的確に駆動力を伝達することができなくなれば、高画質な画像形成を行うことができない。
【0004】
ところで、歯車の連結をスムーズに行う手段として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1では、ユニット挿入の際に本体側の歯車に対してユニット側の歯車の軸芯を外側にずらし、歯幅方向で重なり合う位置から軸芯を本体側の歯車の軸芯に近づけ係合させることで、軸と歯車のクリアランスやその前後の歯車とのバックラッシュを小さくし、回転変動や振動を少なくしている。
特許文献2では、歯車の歯面にかかるラジアル方向の力の作用線方向に沿って複数の位置決め手段を設けることにより、歯車噛合い時に発生するラジアル方向の力の影響を受けることなく、歯面の位置精度を保つことができ、振動や回転変動の発生を防止することができる。
特許文献3では、歯車をやま歯歯車とすることにより、スラスト力を受けることなく回転可能であり。ユニットと歯車との摺接を防止している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−304030号公報
【特許文献2】特開2000−147852号公報
【特許文献3】特開平8−160832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、装着位置とは平行でない位置において着脱可能なユニットがガイドされているため、回転軸が傾くことが懸念される。回転軸が傾いた状態で歯車の噛合わせを行うと振動や回転変動の発生を抑えることができない。また、歯車噛合い時に発生するラジアル力によっても、回転軸が傾くことが懸念される。
また、特許文献2に開示されている技術では画像形成装置の長時間の使用により、位置決め手段に負荷がかかることになり、位置決め手段の倒れや欠けが懸念される。また、ラジアル力は歯車の圧力角の影響により、噛合い位置における接線方向から圧力角度分傾いた方向に力が発生する。このため、ラジアル方向の作用線上で位置決めしても、実際には圧力角度分ずれた方向に力がかかるため、歯車の噛合い精度の低下を招く。
また、特許文献3では、スラスト方向の力を打ち消し合う、やま歯歯車を使用することを提案しているが、やま歯歯車は形状が複雑であるため、成型加工が困難であり十分な歯車の形状精度を確保することができないという問題がある。また、歯車の形状精度を確保するためには特殊な加工方法や材質にする必要があるなどコストの面の課題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、歯車の噛合い精度が良好であり、振動や回転変動の発生がない構造を廉価に達成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明の駆動力伝達装置は、駆動力を発生する駆動力発生手段と、該駆動力により回転駆動される駆動歯車と、前記駆動力発生手段からの駆動力を前記駆動歯車に伝達する駆動軸とを有する駆動ユニットと、前記駆動歯車と噛み合って回転駆動する従動歯車と、該従動歯車を保持する従動軸と、該従動軸に固定された回転体とを有する従動ユニットと、を備える駆動力伝達装置であって、前記駆動ユニットの駆動時における駆動軸及び従動軸の中心位置をそれぞれ点A及び点Bとし、線分ABが水平面となす角度をα、駆動歯車の圧力角をβとした場合、線分ABの垂線に対して角度α−βだけ従動軸の回転方向と反対方向に傾いた線上に、前記駆動ユニットの非駆動時の従動軸の中心位置があることを特徴とする。
また、本発明の駆動力伝達装置は、さらに、前記駆動軸を前記駆動ユニットに固定する固定部材を有することを特徴とする。
また、本発明の駆動力伝達装置は、さらに、前記固定部材は、線分ABの垂線に対して角度α−β傾いた方向に沿って配置されていることを特徴とする。
また、本発明の駆動力伝達装置は、さらに、前記駆動歯車及び従動歯車はハス歯歯車であり、前記駆動ユニットの駆動時の従動軸の径方向と、従動歯車の径方向との角度差をλとした場合、前記駆動軸は駆動ユニットに対して角度λ傾けて固定されていることを特徴とする。
また、本発明の駆動力伝達装置は、さらに、前記従動軸は前記駆動ユニットに形成された長穴に挿通され、線分ABの垂線に対して角度α−β傾いた方向に沿って前記長穴が配置されるように、駆動ユニットが組み立てられ、前記駆動ユニットの駆動時に従動軸が前記長穴の一端で移動が拘束された状態で、該従動軸の中心が点Bと一致することを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、上述のいずれかに記載の駆動力伝達装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記解決する手段としての駆動力伝達装置では、歯車の噛合い精度が良好であり、振動や回転変動の発生を抑止できる構造を廉価に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明の画像形成装置の構成を示す概略図である。
図1に示すように、画像形成装置本体の内部において、矢印方向に無端移動する中間転写体Tを備え、その中間転写体Tの下部張架面に、4個の画像形成ユニットL1Y、L1C、L1M、L1Kが配備されている。これら画像形成ユニットの番号に沿えたY、C、M、Kは、扱うトナーの色と対応させているもので、Yはイエロー、Cはシアン、Mはマゼンタ、Kはブラックを意味している。画像形成ユニットに備えられ、中間転写体Tとともに回転する感光体L2に対向して中間転写体Tの内側にR1Y、R1C、R1M、R1Kの転写ローラを沿えている。なお、被帯電体である感光体L2YからL2Kは同間隔で配置され、少なくとも画像形成時にはそれぞれ中間転写体Tとの張架部の一部と接触する。
図1において、画像形成装置の動作時に、不図示の駆動源により、矢印方向に回転するよう回転可能に支持された円筒状の感光体L2の周囲に、静電写真プロセスに従い帯電手段である帯電装置L3、現像装置L4、透明電極であるクリ−ニング部材L5、光源となる露光装置L6等の作像部材や中間転写体Tを介して転写ローラR1が配設されている。
感光体L2は、例えば直径30〜120mm程度のアルミニウム円筒表面に光導電性物質である有機感光層(OPC)を形成したものである。アモルファスシリコン(a−Si)層を形成した感光体L2も採用可能である。またベルト状の感光体L2も採用できる。
【0012】
露光装置L6は、各色毎の画像データ対応の光を、帯電装置L3で一様に帯電済みの各感光体L2の表面を走査し、静電潜像を形成する。露光装置はレーザ光とポリゴンミラーを用い、形成すべき画像データに応じて変調したビーム光によるレーザスキャン方式、又は発光素子としてLED(発光ダイオード)アレイと結像素子の方式を採用できる。
帯電装置L3としてローラ帯電方式のほかに、感光体L2に非接触のチャージ方式も採用できる。
本実施例の現像は、トナーとキャリヤからなるン二成分現像剤を採用している現像方式である。負荷電の感光体L2に対しレーザビームにより各感光体L2の表面に形成された色毎の静電潜像は、感光体L2の帯電極性と同極性(マイナス極性)の所定の色のトナーで現像され、可視像となる反転現像が行われる。現像装置L4の構成の詳細説明については省略する。複数のローラR6、R7、R8により支持されて矢印方向に走行する、中間転写体Tが、感光体L2Y、L2C、L2M、L2Kの上部に設けられている。この中間転写体Tは無端状で、各感光体L2の現像工程後の一部が接触するように張架、配置されている。また中間転写体Tの内周部には各感光体L2Y、L2C、L2M、L2Kに対向させて1次転写ローラR1Y、R1C、R1M、R1Kが設けられている。
中間転写体Tの外周部には、ローラR6に対向する位置にクリーニング装置L9が設けられている。このクリーニング装置L9は、中間転写体Tの表面に残留する不要なトナーや、紙粉などの異物を拭い去る。さらに、中間転写体Tの外周で、支持ローラの近傍には、2次転写ローラR5が設けてある。中間転写体Tと2次転写ローラR5の間に記録媒体(以下、用紙P)を通過させながら、2次転写ローラR5にバイアスを印加することで中間転写体Tが担持するトナー画像が用紙Pに転写される。2次転写ローラR5に印加される転写電流の極性は、トナーの極性と逆のプラス極性である。
【0013】
画像形成装置Lの下側には、用紙を供給可能に収納した給紙装置L8が配備されており、確実に一枚だけが搬送ローラR2によりレジストローラR3に送られる。さらに、2次転写ローラR5を通過した用紙は記録体の搬送方向下流に備えられた定着装置L10まで搬送される。
加熱手段を有する定着装置L10はローラ内部にヒータを備えるタイプ、加熱されるベルトを走行させるベルト定着装置、また加熱の方式に誘導加熱を採用した定着装置L10などが採用できる。定着装置L10は、フルカラーとモノクロ画像、あるいは片面か両面かにより定着条件を制御したり、用紙Pの種類に応じて最適な定着条件となるよう、不図示の制御手段により制御される。定着後の用紙Pは、排紙ローラR4により、画像形成装置Lの上部に設けた排紙スタック部に排紙、スタックさせる。
未使用のトナーが収納された各色のトナーカートリッジL7Y、L7C、L7M、L7Kが、着脱可能に感光体L2の上部の空間に収納される。図示しないモーノポンプやエアーポンプなどのトナー搬送手段により、各現像装置L4に必要に応じトナーを供給するようになっている。消耗の多いブラックトナー用のトナーカートリッジL7Kを、特に大容量としておくことも可能である。
【0014】
上記の構成においてフルカラー画像を形成する動作について説明する。
本実施の形態では画像形成装置Lの構成から中間転写体Tに担持させた画像を用紙Pに、転写する場合は記録するべきデータが複数の頁になるケースでも、排紙スタック部上で頁が揃うように画像が用紙Pの下面に形成される。
画像形成装置1を稼動させると、中間転写体Tに接触している画像形成ユニットL1における感光体L2Y、L2C、L2M、L2Kが回動する。まず、画像形成ユニットL1による画像形成から開始される。レーザとポリゴンミラー駆動の露光装置L6の作動により、イエロー用の画像データ対応の光が、帯電装置L3により一様帯電された感光体L2Yの表面に照射されて静電潜像が形成される。静電潜像は現像ローラによりイエロートナーで現像され、可視像となり、1次転写ローラR1の転写作用により感光体L2Yと同期して移動する中間転写体T上に静電的に1次転写される。このような潜像形成、現像、1次転写動作が感光体L2C、L2M、L2K側でもタイミングをとって順次同様に行われる。
この結果、中間転写体T上には、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色トナー画像が、順次重なり合ったフルカラートナー画像として担持され、中間転写体Tとともに矢印の方向に移動される。同時に給紙装置L8のなかの給紙カセットから、記録に使われる用紙Pがその供給のための搬送ローラR2により繰り出され搬送される。用紙Pの先端がレジストローラR3タイミングをとってレジストローラR3が回転し、用紙Pを転写領域に搬送する。
【0015】
中間転写体T上のこのフルカラートナー画像は、中間転写体Tと同期して搬送される用紙Pの上面に、2次転写ローラR5による転写作用を受けて転写される。2次転写ローラR5に与えられるバイアスは、トナーの帯電極性と逆のプラス極性である。2次転写ローラR5にトナーと同極性のバイアスを印加して行うことも可能である。
その後、中間転写体Tの表面が、クリーニング装置L9によりクリーニングされる。また1次転写を終了した画像形成ユニットL1における感光体L2Y、L2C、L2M、L2Kの表面に残留するトナーは透明電極から印加された逆極性のバイアスと光源から透明電極を介して照射された光を受けて電荷注入され注入電荷と逆極性のバイアスを印加された回収ブラシにより、各感光体L2の表面から除去される。回収ブラシに回収されたトナーは作像終了後の一定のタイミングでブラシに回収時と逆のバイアスを印加することで感光体L2上に吐き出され、帯電装置L3を通過して現像装置L4に回収され再使用される。この時、帯電装置L3は感光体L2から離れていることが望ましい。
中間転写体Tに重ねられて担持されていたトナー画像が転写された用紙Pは、定着装置L10に向け移送される。用紙P上に重ねられていた各色のトナーが定着装置L10の熱による定着作用を受け、溶融、混色されて完全にカラー画像となる。制御手段で画像に応じて定着装置L10の使用する電力を最適に制御する場合もある。定着されたトナーも用紙上で完全に固着するまでは、搬送路のガイド部材等にこすられ、画像が欠落したり、乱れたりすることがあるので定着後の搬送にも注意が必要である。その後、排紙ローラR4により排紙スタック部に、画像面が下向きとなって排紙される。排紙スタック部では後の頁の記録物が順次上に重ねられるようにスタックされるので、頁順が揃う。
【0016】
〔第1実施形態〕
図2は、本発明の駆動力伝達装置の第1実施形態を模式的に示している。
図2に示すように、この駆動力伝達装置1は、駆動ユニット2と従動ユニット3とを備えている。これらのユニット2、3は不図示の製品本体にネジ止めなどにより固定されている。駆動ユニット2は、駆動力を発生する電気モータなどの駆動力発生手段21と、該駆動力により回転駆動される駆動歯車22と、駆動力発生手段21からの駆動力を駆動歯車22に伝達する駆動軸23と、を備えている。駆動歯車22には、第1実施形態では平歯車が用いられており、駆動軸23に固定されている。従動ユニット3は、駆動歯車22と噛み合って回転駆動する従動歯車31と、該従動歯車31を保持する従動軸32と、該従動軸32に固定された回転体33とを備えている。
そして、駆動力発生手段21で発生した駆動力は、駆動軸23を介して駆動歯車22に伝達される。この駆動歯車22には従動歯車31が噛み合っているため、駆動力は従動歯車31に伝達され、さらに従動軸32を介して回転体33に伝達される。
【0017】
この駆動力伝達装置1は、コピー機、プリンター、FAXなどの画像形成装置に適用される。この場合の回転体33は、現像ローラとなる。回転駆動力を発生する駆動力発生手段21は、不図示の電気回路により、回転数の設定が可能とされ、回転速度を自由に変化させることができる。
駆動歯車22及び従動歯車31には、多数の歯が歯車の周方向に沿って形成されており、歯数は歯車毎に任意に決められている。例えば、駆動歯車22の歯数を50歯とし、従動歯車31の歯数を100歯とすることができる。この場合、駆動歯車22が2回転すると、従動歯車31は1回転する。第1実施形態では、歯車同士を好適に噛み合わせるために、駆動歯車22と従動歯車31の歯の形状及び大きさは等しくされている。
図3は、駆動歯車22と従動歯車31とが噛み合った時の状態を示している。駆動歯車22と駆動軸23は同心円であり、従動歯車31と従動軸32も同心円である。もし同心円でない場合は、両歯車の軸に大きな負荷が加わり、回転変動が発生する。図3では、駆動ユニット2の駆動時における駆動軸23及び従動軸32の中心位置をそれぞれ点A及び点Bとし、線分ABが水平面となす角度をαとしている。
【0018】
駆動歯車22の回転駆動力を受けるには従動歯車31の歯の接触面は、駆動歯車22の径方向に沿うことが理想であるが、歯車の歯の形状には、図4に示すように、圧力角βがあるために理想の駆動力伝達を行うことができない。実際の回転時には、図5に示すように、従動歯車31は円形状の歯車の接線方向に対して角度α−β傾いた方向に力Fを受けることになる。また、駆動歯車22は反力F’を受けることになる。
このように駆動歯車22及び従動歯車31に力が加わるため、駆動軸23と従動軸32にも力が加わるが、ここでは簡略化して、図6に示すように、歯車を剛体と考え、歯車22、31に加わった力がそのまま軸23、32に加わると仮定する。そうすると、回転駆動時の従動歯車31の位置は力Fにより理想位置からずれるため、歯車の噛合い状態にズレを生じ、十分な駆動力伝達が困難になり、振動や騒音、回転変動などの要因となる。コピー機、プリンター、FAXなどの画像形成装置では、回転体33は現像ローラに該当するので、回転駆動時に現像ローラの軸が傾くことになる。すると、感光体との平行関係を保つことができなくなり、十分な現像機能を発揮することができず、画像には左右差のある濃度ムラが発生する。
【0019】
そこで、本発明では、駆動ユニット2の駆動時において、図7に示すように、線分ABの垂線に対して角度α−βだけ従動軸32の回転方向に傾いた線上に、駆動ユニット2の非駆動時の従動軸32の中心位置がある。このように、従動軸32の中心位置を点Cに予め移動させておくことで、駆動ユニット2の駆動時に、従動軸32の中心位置が最適な位置、すなわち点Bに移動し、両歯車22、31を理想の位置で噛み合わせることができ、歯車の噛合い精度が良好であり、振動や騒音、回転変動などを抑止した駆動力伝達を達成することができる。また、予め、従動歯車31の位置を変更させておくだけでよいので、廉価である。
【0020】
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の駆動力伝達装置の第2実施形態を模式的に示している。
この第2実施形態は、第1実施形態と比べて、駆動ユニット2の駆動軸23を固定部材24で固定した点で異なる。固定部材24としては、L字形の高剛性の部材が用いられる。例えば、ステンレスやアルミニウム合金を用いることができる。
このL字形の固定部材24の長辺側の面が、駆動軸23の端面と当接しており、駆動軸23に反力F’が加わっても変形しないようにされている。なお、駆動軸23の端面を押圧すると、回転駆動が抑制されるので、固定部材24の組付けには、寸法的に十分に留意する必要がある。
このような構成にすることで、簡単な構成で駆動軸23の変形が抑止され、振動や回転変動を抑制することができる。
【0021】
〔第3実施形態〕
図9は、本発明の駆動力伝達装置の第3実施形態を模式的に示している。
この第3実施形態は、第2実施形態と比べて、固定部材の形状が相違する点で異なる。第2実施形態ではL字形の固定部材24を用いたが、第3実施形態では棒状の固定部材24Aが駆動ユニット2の底面と側面とを結ぶように取り付けられ、トラス構造を形成している。また、固定部材24Aの傾きは、線分ABの垂線に対して角度α−β傾いた方向に沿って配置されている。
このように配置すると、駆動ユニット2の駆動時に、駆動歯車22に加わる反力F’の方向と固定部材24Aの長手方向とが同方向を向くため、固定部材24Aの撓みを抑止することができ、反力F’の影響による軸ズレを確実に防止することができる。なお、固定部材24Aの形状は、角材や丸棒、筒体など、種々の形状を採用することができる。
【0022】
〔第4実施形態〕
図10ないし図13は、本発明の駆動力伝達装置の第4実施形態を説明するための図である。
この第4実施形態は、第1実施形態と比べて、歯車の形状が相違する点で異なる。第1実施形態では、駆動歯車22及び従動歯車31として、平歯車を用いた例について説明したが、第4実施形態の駆動歯車22A及び従動歯車31Aではハス歯歯車が用いられている。ハス歯歯車は平歯車と比べて伝達効率が高いが、歯が斜めに配置されているので、スラスト方向に沿った力が発生し、軸と歯車とが相互に摺動することがある。
【0023】
図10は、ハス歯歯車を噛み合わせた時の力の発生方向について示している。従動歯車31Aのハス歯は、ネジレ角がγである。ここで歯面にかかる力をFaとした場合、ネジレ角γにより歯車には軸のスラスト方向にFasinγの力が加わる。図11に示すように、駆動歯車22Aの駆動軸23の中心位置である点Aと、従動歯車31Aの従動軸32の中心位置である点Bとを結ぶ線分ABが、水平面に対して角度αの傾きを持つ場合には、従動歯車31Aの噛合わせ位置は従動軸32より下側になる。図12は、従動歯車31Aに軸のスラスト方向の力Fasinγが働いた状態を示している。スラスト力Fasinγにより従動歯車31Aは従動軸32に対して角度λ傾くことになり、歯車の適切な噛合いが妨げられる。なお、従動軸32に対する傾き角度λは、従動軸32と従動歯車31Aとの隙間によって発生する。
そこで、第4実施形態では、図13に示すように、駆動軸23を駆動ユニット2に対して角度λ傾けて固定している。
このような構成にすると、駆動ユニット2の駆動時に、駆動歯車22Aと従動歯車31Aの噛合い時の歯の向きの角度差が解消され、振動や騒音、回転変動などが抑止される。
【0024】
〔第5実施形態〕
図14は、本発明の駆動力伝達装置の第5実施形態を模式的に示している。
この第5実施形態は、第1実施形態と比べて、ガイド板25が設けられている点で異なる。このガイド板25には両端が半円状の長穴25aが形成され、該長穴25aには従動軸32が挿通されている。
この長穴25aは、駆動ユニット2の駆動時の従動軸32の中心位置である点Bと、駆動ユニット2の非駆動時の従動軸32の中心位置である点Cとの間を移動可能なように、線分ABの垂線に対して角度α−β傾いた方向に沿って長穴25aが配置されるように、駆動ユニット2が組み立てられている。また、点Bの位置において、従動軸32は長穴25aの一端で拘束されるように長穴25aは形成されている。
このように従動軸32の位置を歯車回転時の従動歯車31の歯面に加わる力によって所定位置からずれないように長穴25aの一端で従動軸32を拘束することで、両歯車22、31を理想の位置で確実に噛み合わせることができ、歯車の噛合い精度が良好であり、振動や騒音、回転変動などが抑止される。また、駆動ユニット2の起動時に長穴25aをガイドとして従動軸32が移動するため、駆動ユニット2の故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の駆動力伝達装置の第1実施形態を示す概略図である。
【図3】駆動歯車と従動歯車とが噛み合った状態を示す概略図である。
【図4】駆動歯車の圧力角を示す概略図である。
【図5】駆動歯車と従動歯車との噛合い時の歯車に加わる力を示す概略図である。
【図6】駆動歯車と従動歯車との噛合い時の歯車の軸に加わる力を示す概略図である。
【図7】駆動ユニット駆動前後における駆動軸の位置を示す概略図である。
【図8】本発明の駆動力伝達装置の第2実施形態を示す概略図である。
【図9】本発明の駆動力伝達装置の第3実施形態を示す概略図である。
【図10】本発明の駆動力伝達装置の第4実施形態を説明するための図である。
【図11】本発明の駆動力伝達装置の第4実施形態を説明するための図である。
【図12】本発明の駆動力伝達装置の第4実施形態を説明するため図である。
【図13】本発明の駆動力伝達装置の第4実施形態の要部を示す概略図である。
【図14】本発明の駆動力伝達装置の第5実施形態の要部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0026】
L 画像形成装置
L1 画像形成ユニット
L2 感光体
L3 帯電装置
L4 現像装置
L5 クリーニング装置
L6 露光装置
L7 トナーカートリッジ
L8 給紙装置
L9 クリーニング装置
L10 定着装置
P 用紙
R1 転写ローラ
R2 搬送ローラ
R3 レジストローラ
R4 排紙ローラ
R5 2次転写ローラ
R6〜R8 ローラ
1 駆動力伝達装置
2 駆動ユニット
21 駆動力発生手段
22、22A 駆動歯車
23 駆動軸
24、24A 固定部材
25 ガイド板
25a 長穴
3 従動ユニット
31、31A 従動歯車
32 従動軸
33 回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生する駆動力発生手段と、該駆動力により回転駆動される駆動歯車と、前記駆動力発生手段からの駆動力を前記駆動歯車に伝達する駆動軸とを有する駆動ユニットと、
前記駆動歯車と噛み合って回転駆動する従動歯車と、該従動歯車を保持する従動軸と、該従動軸に固定された回転体とを有する従動ユニットと、
を備える駆動力伝達装置であって、
前記駆動ユニットの駆動時における駆動軸及び従動軸の中心位置をそれぞれ点A及び点Bとし、線分ABが水平面となす角度をα、駆動歯車の圧力角をβとした場合、線分ABの垂線に対して角度α−βだけ従動軸の回転方向に傾いた線上に、前記駆動ユニットの非駆動時の従動軸の中心位置がある
ことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動力伝達装置において、
前記駆動軸を前記駆動ユニットに固定する固定部材を有する
ことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動力伝達装置において、
前記固定部材は、線分ABの垂線に対して角度α−β傾いた方向に沿って配置されている
ことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1に記載の駆動力伝達装置において、
前記駆動歯車及び従動歯車はハス歯歯車であり、
前記駆動ユニットの駆動時の従動軸の径方向と、従動歯車の径方向との角度差をλとした場合、
前記駆動軸は駆動ユニットに対して角度λ傾けて固定されている
ことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1に記載の駆動力伝達装置において、
前記従動軸は前記駆動ユニットに形成された長穴に挿通され、線分ABの垂線に対して角度α−β傾いた方向に沿って前記長穴が配置されるように、駆動ユニットが組み立てられ、
前記駆動ユニットの駆動時に従動軸が前記長穴の一端で移動が拘束された状態で、該従動軸の中心が点Bと一致する
ことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の駆動力伝達装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−103840(P2009−103840A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274452(P2007−274452)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】