説明

駆動装置

【課題】駆動装置において、ECUに記憶される情報の書き込みを容易とするとともに、その情報の誤書き換えを抑制することにある。
【解決手段】同一のUART端子P7を通じて情報の書き込み処理及び車両情報の取得をすることができる。UART端子P7を通じて情報の書き込みが可能となることで、ECU20をケース等から取り出す手間がなく、マイコン21への情報の書き込みが容易となる。また、車両情報信号は第1の通信プロトコルにて送信され、書込情報信号は第2の通信プロトコルにて送信される。よって、第1の通信プロトコルにて送信される車両情報信号が、書込情報信号として誤って認識されること、ひいては誤ってマイコン21の情報が書き換えられることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動装置の一種として、車両のウインドウを自動で開閉させるパワーウインドウ装置がある。このパワーウインドウ装置は、ECU(Electronic Control Unit)と、モータとを備える。ECUは、モータの駆動を通じて車両のウインドウを開閉する。
【0003】
このECU(正確には、ECU内のマイコン)には、出荷前に外部ツールを通じて内部情報が書き込まれる。この情報には、ウインドウの開閉に係るプログラム、及び何れの車両ドアに対応したものであるかを示す識別情報等が含まれている。すなわち、出荷前には、車両ドア毎に異なる情報を書き込む必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、ECUは、車両用通信端子と、テスト端子とを備える。車両用通信端子はECUがケースに収納された状態において露出する位置に設けられる。一方、テスト端子は、ECUがケースに収納された状態においては隠蔽される位置であって、ECUがケースから取り出された状態において外部に露出する位置に設けられている。
【0005】
ECUは、車両用通信端子を通じて、BCM(Body Control Module)からの車両情報を受ける。
一方、ECUに内部情報を書き込む場合にはテスト端子が利用される。すなわち、ECUをケースから取り出した後に、テスト端子に外部ツールを接続する。この状態で、外部ツールからテスト端子を通じて情報の書き込みを要求する旨の信号がECUに送信される。ECUは、テスト端子を通じて当該信号を受けると、その後に受信した情報を書き込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−291541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構成においては、ECUへ情報を書き込む際、テスト端子を利用しているため、ECUをケースから取り出す必要があり面倒であった。そこで、情報の書き込みにおいても、車両用通信端子を利用することが考えられる。この場合には、出荷後に、例えばメーカや市場において、誤って情報の書き込みを要求する旨の信号が車両用通信端子を通じてECUに送信されるおそれがある。また、ECUにおいて情報の書き込みを要求する旨の信号であると誤って認識されるおそれもある。この場合には、その後に受信した車両情報にECUの情報が書き換えられる。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ECUに記憶される情報の書き込みを容易とするとともに、その情報の誤書き換えを抑制した駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、駆動源を駆動制御する制御装置を備えた駆動装置において、前記制御装置は、信号が入力される通信用端子を備え、前記通信用端子を通じて互いに異なる第1の通信プロトコル及び第2の通信プロトコルの信号を正常に受信可能であって、前記駆動制御に利用される情報を含む第1の情報信号を前記第1の通信プロトコルにて正常に受信したとき、その情報に基づき前記駆動源を駆動制御し、自身に情報の書き込みを要求する際に外部から送信される書込情報を含む第2の情報信号を前記第2の通信プロトコルにて正常に受信したとき、前記書込情報を自身に書き込むことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、同一の通信用端子を通じて、書込情報及び駆動制御に利用される情報の取得をすることができる。従って、従来のように、テスト端子を通じた情報の書き込み処理を行う必要がない。ここで、一般的にテスト端子は、制御装置を収納するケース等によって隠蔽されているため、情報の書き込みの際には、制御装置をケース等から取り出す必要があった。この点、通信用端子を通じて情報の書き込みが可能となることで、制御装置をケース等から取り出す手間がなく、情報の書き込みが容易となる。
【0011】
また、第1の情報信号は、駆動制御に利用される情報を含む信号であって、第1の通信プロトコルにて送信される。第2の情報信号は、書き込みを要求する際に外部から送信される書込情報を含む信号であって、第2の通信プロトコルにて送信される。
【0012】
制御装置は、第2の情報信号を第2の通信プロトコルにて正常に受信したとき、情報の書き込みを実行する。よって、第1の通信プロトコルにて送信される第1の情報信号が、第2の情報信号として誤って認識されること、ひいては誤って情報が書き換えられることを抑制できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の駆動装置において、前記制御装置は、第1の通信ポート及び第2の通信ポートを有するマイコンを備え、前記通信用端子からの信号は前記両通信ポートに送信され、前記第1の通信ポートは前記第1の通信プロトコルに設定され、前記第2の通信ポートは前記第2の通信プロトコルに設定されることをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、第1の情報信号は第1の通信ポートを通じて正常に受信され、第2の情報信号は第2の通信ポートを通じて正常に受信される。本構成によれば、通信プロトコルの異なる第1及び第2の情報信号を、同一の通信用端子を通じて正常に受信することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の駆動装置において、前記マイコンは、リセットしてスタートした後に、前記第1の通信ポートを受信許可状態とするとともに、前記第2の通信ポートを受信禁止状態とし、前記スタートから一定時間内に外部から前記第1の通信ポートを通じて、第1の通信プロトコルにて書き込み要求信号を受信したとき、前記第2の通信ポートを受信許可状態として、前記第2の情報信号を受信可能とすることをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、マイコンは、リセットしてスタートした後に、第1の通信ポートを受信許可状態とするとともに、第2の通信ポートを受信禁止状態とする。そして、マイコンは、そのスタートから一定時間内に書き込み要求信号を受信したとき第2の通信ポートを受信許可状態として、第2の情報信号の受信を可能とする。このように、第2の通信ポートを受信許可状態とする期間を制限することで、誤ってマイコンの情報が書き換えられることを抑制できる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の駆動装置において、前記マイコンは、前記第2の通信ポートを受信許可状態とした場合において、前記第1の通信ポートを通じて前記第1の情報信号を正常に受信したとき、前記第2の通信ポートを受信禁止状態とすることをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、第1の通信ポートを通じて第1の情報信号が正常に受信されたとき、第2の通信ポートが受信許可状態にあれば、その状態から受信禁止状態とされる。これにより、第2の通信ポートを受信許可状態とする期間が制限されることで、誤ってマイコンの情報が書き換えられることを抑制できる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の駆動装置において、前記制御装置は、ユーザによるスイッチの操作に基づき、前記駆動源を駆動制御し、前記スタートから一定時間内に、前記スイッチに対して特定の条件を満たす操作がされた旨認識し、かつ前記書き込み要求信号を受信したとき、前記第2の通信ポートを受信許可状態とすることをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、第2の通信ポートを受信許可状態とするためには、特定の条件を満たすスイッチ操作が必要である。このため、誤ってマイコンの情報が書き換えられることを抑制できる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5の何れか一項に記載の駆動装置において、前記第1の通信プロトコルは、奇数パリティチェック及び偶数パリティチェックの何れか一方に設定され、前記第2の通信プロトコルは、奇数パリティチェック及び偶数パリティチェックの何れか他方に設定されることをその要旨としている。
【0022】
同構成によれば、第1及び第2の通信プロトコル間で互いに異なる奇数パリティチェック又は偶数パリティチェックに設定される。これにより、第1の情報信号を受信したときには、両通信ポートのうち何れか一方がパリティエラーとなって、第2の情報信号を受信したときには、両通信ポートのうち何れか他方がパリティエラーとなる。よって、両通信ポートを通じて同一の信号が正常に受信されることが回避される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、駆動装置において、ECUに記憶される情報の書き込みを容易とするとともに、その情報の誤書き換えを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態におけるパワーウインドウ装置等の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態におけるECUの構成の一部を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施形態におけるリセット後のマイコンの処理手順を示したフローチャート。
【図4】本発明の一実施形態における第1及び第2の通信ポートの受信状態等を示すタイミングチャート。
【図5】本発明の一実施形態における第1の通信ポートを通じて信号を受信したときのマイコンの処理手順を示したフローチャート。
【図6】本発明の一実施形態における第2の通信ポートを通じて信号を受信したときのマイコンの処理手順を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかる駆動装置を、車載されるパワーウインドウ装置に具体化した一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
(構成)
図1に示すように、車両は、パワーウインドウ装置1と、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子11と、IGスイッチ12と、操作ユニット13と、車速センサ14と、BCM(Body Control Module)15と、電源18とを備える。
【0026】
パワーウインドウ装置1は、ECU20と、モータ16と、ホールIC17と、を備える。
ECU20は、マイコン(マイクロコンピュータ)21と、各種I/F(インターフェイス)22a〜22eと、リレードライバ23と、リレー回路24と、マイコン電源回路25と、ホールIC電源回路26と、ダイオードD1と、を備える。このECU20は、パワーウインドウ装置1の外形をなすケース(図示略)内に収納されている。
【0027】
また、ECU20は、+B端子P1と、IG端子P2と、UP端子P3と、DOWN端子P4と、AUTO端子P5と、車速端子P6と、UART端子(通信用端子)P7と、GND端子P8と、+M端子P9と、−M端子P10と、VS端子P11と、PLS1端子P12と、PLS2端子P13と、SGND端子P14と、を備える。
【0028】
ECU20において、IG端子P2とマイコン21との間にはIGI/F22aが接続され、UP端子P3、DOWN端子P4及びAUTO端子P5と、マイコン21との間にはSWI/F22bが接続されている。同様に、車速端子P6とマイコン21との間には車速I/F22cが接続され、UART端子P7とマイコン21との間にはUARTI/F22dが接続されている。また、PLS1端子P12及びPLS2端子P13と、マイコン21との間にはホールICI/F22eが接続されている。
【0029】
また、+B端子P1とマイコン21との間には、+B端子P1側から順に、逆流防止用のダイオードD1及びマイコン電源回路25が直列接続されている。なお、ダイオードD1は、そのカソードがマイコン電源回路25を向くように設置されている。+M端子P9及び−M端子P10と、マイコン21との間には、マイコン21側から順に、リレードライバ23及びリレー回路24が直列接続されている。また、ホールIC電源回路26は、
2つの端子を有する。その第1の端子はVS端子P11に接続され、第2の端子はダイオードD1及びマイコン電源回路25間と、ホールICI/F22eとに並列接続されている。
【0030】
操作ユニット13は、UPスイッチ13aと、DOWNスイッチ13bと、AUTOスイッチ13cとを備える。
電源18(正極)には、PTC素子11、IGスイッチ12及び操作ユニット13が並列接続されている。そして、PTC素子11は+B端子P1に接続され、IGスイッチ12はIG端子P2に接続されている。同様に、UPスイッチ13aはUP端子P3に接続され、DOWNスイッチ13bはDOWN端子P4に接続され、AUTOスイッチ13cはAUTO端子P5に接続されている。また、車速センサ14は車速端子P6に接続され、BCM15はUART端子P7に接続されている。
【0031】
モータ16の両端は、+M端子P9及び+B端子P10にそれぞれ接続されている。ホールIC17は、VS端子P11、PLS1端子P12、PLS2端子P13及びSGND端子P14にそれぞれ接続されている。
【0032】
ECU20内において、GND端子P8及びSGND端子P14間は接続されている。また、GND端子P8はグランドに接続されている。
(作用)
電源18からの電流はPTC素子11を通じて+B端子P1に供給される。PTC素子11は、閾値以下の電流が流れるときには+B端子P1への電流の供給を可能とし、過電流によって閾値を超える電流が一定時間に亘って流れたときに、自己発熱によって自身の抵抗値が大きくなることで+B端子P1への電流を遮断する。
【0033】
ECU20において、+B端子P1を通じて流入した電流は、ダイオードD1を通じて、マイコン電源回路25に供給される。マイコン電源回路25は、その電流をマイコン21の動作に適した電圧として、その電圧をマイコン21に供給する。マイコン21は、このマイコン電源回路25からの電力に基づき動作する。また、+B端子P1からの電力はホールIC電源回路26及びリレー回路24にも供給される。
【0034】
IGスイッチ12は、車両のイグニッション(IG)の状態に応じてオンオフ状態間で切り替わることで、その状態に応じた電圧をIG端子P2に印加する。IGI/F22aは、IG端子P2の電圧をマイコン21の処理に適した信号に変換し、その信号をマイコン21に出力する。マイコン21は、この信号に基づき、車両のIG状態を認識する。
【0035】
各スイッチ13a〜13cは、ユーザの操作によりオンオフ状態間で切り替わることで、その状態に応じた電圧をそれぞれUP端子P3、DOWN端子P4、AUTO端子P5に印加する。SWI/F22bは、UP端子P3、DOWN端子P4、AUTO端子P5に印加される電圧をマイコン21の処理に適した信号に変換し、その信号をマイコン21に出力する。マイコン21は、この信号に基づき、各スイッチ13a〜13cの操作状態を認識する。
【0036】
また、車速センサ14は、車速に応じた信号を車速端子P6に送信する。車速I/F22cは、車速端子P6からの信号をマイコン21の処理に適した信号に変換し、その信号をマイコン21に出力する。マイコン21は、この信号に基づき車速を認識する。
【0037】
ホールIC電源回路26は、VS端子P11を通じてホールIC17に電力を供給する。その電力は、SGND端子P14及びGND端子P8を通じてグランドに流される。
ホールIC17は、車両ウインドウの開閉位置に応じた検出信号を生成し、その検出信号をPLS1端子P12及びPLS2端子P13を通じてホールICI/F22eに出力する。ホールICI/F22eは、検出信号をマイコン21の処理に適した信号に変換し、その信号をマイコン21に出力する。マイコン21は、この信号に基づき、車両ウインドウの開閉位置を認識する。
【0038】
BCM15は、車両のイグニッションの状態を示すIG信号、各スイッチ13a〜13cの操作の有無を示す操作信号等の車両情報信号をUART端子P7に出力する。UARTI/F22dは、UART端子P7からの車両情報信号をマイコン21の処理に適した信号に変換し、その車両情報信号をマイコン21に出力する。
【0039】
マイコン21は、IGI/F22aを通じて認識したIG状態と、UARTI/F22dからのIG信号に基づき認識したIG状態との論理和に基づき、IG状態を認識する。例えば、マイコン21は、IGI/F22aを通じてIG状態がオン状態であって、UARTI/F22dを通じてIG状態がオフ状態である旨認識した場合には、IG状態がオン状態であると認識する。
【0040】
マイコン21は、SWI/F22bを通じて認識した各スイッチ13a〜13cの状態と、UARTI/F22dからの操作信号に基づき認識した各スイッチ13a〜13cの状態との論理和に基づき、各スイッチ13a〜13cの状態を認識する。
【0041】
マイコン21は、IG状態がオン状態であると認識している場合に、UPスイッチ13aのみが操作された旨認識すると、その操作時間に亘ってリレードライバ23を通じてリレー回路24を第1の接続状態とする。リレー回路24が第1の接続状態とされると、モータ16にはリレー回路24から正方向の電流が供給される。これにより、モータ16が正方向に駆動することで、車両ウインドウは閉方向に移動する。
【0042】
また、マイコン21は、IG状態がオン状態であると認識している場合に、DOWNスイッチ13bのみが操作された旨認識すると、その操作時間に亘ってリレードライバ23を通じてリレー回路24を第2の接続状態とする。第2の接続状態とされると、モータ16には、リレー回路24から負方向の電流が供給される。これにより、モータ16が逆方向に駆動することで、車両ウインドウは開方向に移動する。
【0043】
マイコン21は、IG状態がオン状態であって、かつAUTOスイッチ13cがオン状態であると認識している場合に、UPスイッチ13a又はDOWNスイッチ13bが操作された旨認識すると、モータ16の正方向又は逆方向の駆動を通じて車両ウインドウを全閉状態又は全開状態となるまで移動させる。
【0044】
マイコン21は、車両ウインドウによる異物の挟み込みによって生じる変動(モータの回転数の変動、車両ウインドウの移動速度の変動等)を算出し、この変動が閾値を超えた旨判断したとき、挟み込みが生じたとして、車両ウインドウを開方向に移動させて、挟み込みを回避する。マイコン21は、認識した車速に応じてこの閾値を設定する。具体的には、車速が大きくなるにつれて閾値が大きく設定される。これにより、車速が大きい場合には、特に路面状況に起因して車両ウインドウに加わる力によって上記変動が生じて挟み込みがある旨の誤判断がされることが抑制される。
【0045】
以下、本実施形態の特徴部分について説明する。
図2に示すように、マイコン21は、第1の通信ポート21aと、第2の通信ポート21bと、を備える。UARTI/F22dからの信号は、両通信ポート21a,21bに出力される。
【0046】
第1の通信ポート21aにおける通信プロトコルは、ビットレートが9600bpsに設定され、ストップビットが1ビットに設定され、パリティチェックの方式が偶数パリティチェックに設定される。これを第1の通信プロトコルと呼ぶ。
【0047】
第2の通信ポート21bにおける通信プロトコルは、ビットレートが9600bpsに設定され、ストップビットが1ビットに設定され、パリティチェックの方式が奇数パリティチェックに設定される。これを第2の通信プロトコルと呼ぶ。このように、両通信ポート21a,21b間で、パリティチェックの方式が偶数パリティチェックと奇数パリティチェックとに分けられている。
【0048】
ここで、上記背景技術で説明したように、出荷前に、マイコン21には内部情報が書き込まれる。具体的には、ECU20がケースに収納された状態で、外部ツールをUART端子P7に接続する。そして、外部ツールは、書き込み要求信号を第1の通信プロトコルにて第1の通信ポート21aを通じてマイコン21に送信する。これは、後述する特定の条件を満たさない限り、第2の通信ポート21bは受信禁止状態にあるからである。詳しくは後述するが、この書き込み要求信号によって、第2の通信ポート21bは受信許可状態とされる。
【0049】
そして、外部ツールは、マイコン21からの応答信号を受信すると、マイコン21に書き込むべき情報を含む書込情報信号を第2の通信プロトコル(奇数パリティチェック)にて送信する。すなわち、この書込情報信号にビット「1」が奇数個だけ含まれている場合、パリティビットは「1」になる。
【0050】
一方、車両情報信号は、第1の通信プロトコル(偶数パリティチェック)にて送信される。すなわち、車両情報信号に、ビット「1」が偶数個だけ含まれている場合、パリティビットは「0」になる。
【0051】
マイコン21の出荷前の情報書き込みの際の処理手順について図3のフローチャート及び図4のタイミングチャートを参照しつつ説明する。このフローチャートは、マイコン21がリセットされた後にスタートする。
【0052】
まず、マイコン21は、第1の通信ポート21aを第1の通信プロトコルに設定し、第2の通信ポート21bを第2の通信プロトコルに設定する(S101)。そして、マイコン21は、第1の通信ポート21aを受信許可状態とし、第2の通信ポート21bを受信禁止状態とする(S102)。すなわち、図4の下から2段目に示すように、第1の通信ポート21aは常に受信許可状態とされ、第2の通信ポート21bはスタート時には受信禁止状態とされる。
【0053】
図3に示すように、マイコン21は、上記スタートから1s(秒)を経過したか否かを判断する(S103)。マイコン21は、スタートから1sを経過しない旨判断したとき(S103でNO)、前提条件が成立するか否かを判断する(S104)。ここで、前提条件とは、上記リセットから1s経過前であること(S103でNO)に加え、1.イグニッションの状態がオン状態であること、2.UPスイッチ13aがオフ状態であること、3.DOWNスイッチ13bがオフ状態であること、4.AUTOスイッチ13cがオフ状態であることである。図4においては、時刻t1において前提条件が成立している。
【0054】
図3に示すように、マイコン21は、前提条件が成立した旨判断すると(S104でYES)、許可条件が成立するか否かを判断する(S105)。ここで、許可条件とは、上記前提条件が成立した状態から、AUTOスイッチ13cがオン状態とされることである。
【0055】
マイコン21は、許可条件が成立した旨判断すると(S105でYES)、第1の通信ポート21aを通じて外部ツールからの書き込み要求信号の受信の有無を判断する(S106)。
【0056】
マイコン21は、書き込み要求信号の受信がある旨判断すると(S106でYES)、第2の通信ポート21bを受信許可状態とした後(S107)、応答信号を送信する(S108)。マイコン21は、この応答信号の送信中は第2の通信ポート21bを受信禁止状態とする。
【0057】
図4においては、時刻t2において第2の通信ポート21bの受信が許可される。外部ツールは、応答信号を受信すると、マイコン21に書き込むべき情報を含む書込情報信号を第2の通信プロトコルにて送信する。
【0058】
図3に示すように、マイコン21は、書き込み要求信号の受信がない旨判断すると(S106でNO)、ステップS103の処理に戻る。また、マイコン21は、前提条件又は許可条件が成立しない旨判断すると(S104でNO又はS105でNO)、ステップS103の処理に戻る。
【0059】
マイコン21は、スタートから1sを経過した旨判断したとき(S103でYES)、両通信ポート21a,21bの受信状態を維持したまま処理を終了する。
次に、マイコン21による第1の通信ポート21aを通じて信号を受信した後の処理手順について図5のフローチャートを参照しつつ説明する。このフローチャートに係る処理は、第1の通信ポート21aを通じて信号を受信したときに開始される。
【0060】
マイコン21は、受信した信号について偶数パリティチェックを行って、パリティエラーの有無を判断する(S201)。マイコン21は、パリティエラーがない旨判断すると(S201でYES)、BCM15からの車両情報信号の受信処理を行う(S202)。マイコン21は、その車両情報信号に基づき、車両ウインドウの開閉制御を行う。
【0061】
そして、マイコン21は、上記図3のステップS107の処理を経ることで第2の通信ポート21bが受信許可状態にあれば、それを受信禁止状態とし(S203)、処理を終了する。マイコン21は、パリティエラーがある旨判断すると(S201でNO)、車両情報信号の受信処理を行うことなく、処理を終了する。
【0062】
次に、マイコン21による第2の通信ポート21bを通じて信号を受信した後の処理について図6のフローチャートを参照しつつ説明する。このフローチャートは、上記図3のステップS107において第2の通信ポート21bが受信許可状態とされた後に、第2の通信ポート21bを通じて信号を受信したときに開始される。
【0063】
マイコン21は、受信した信号について奇数パリティチェックを行って、パリティエラーの有無を判断する(S301)。
ここで、両通信ポート21a,21bが受信許可状態にあるとき何れかがパリティエラーとなる。これは、受信信号におけるビット「1」の数が、必ず奇数又は偶数の何れかになるからである。
【0064】
マイコン21は、パリティエラーがない旨判断すると(S301でYES)、受信した信号は外部ツールからの書込情報信号であるとして、その情報の書き込み処理を実行した後(S302)、処理を終了する。なお、このとき、マイコン21に予め情報が記憶されている場合にはその情報が書き換えられる。
【0065】
一方、マイコン21は、パリティエラーがある旨判断すると(S301でNO)、受信した信号はBCM15からの車両情報信号であるとして上記ステップS302の処理を実行することなく、処理を終了する。よって、車両情報信号に基づき情報の書き込み処理が実行されることが抑制される。
【0066】
また、マイコン21が第2の通信ポート21bを受信許可状態から受信禁止状態とするタイミングは、上記ステップS203に限らない。マイコン21は、1s以上に亘って外部ツールとの通信が途絶した旨判断したとき、及び第2の通信ポート21bにおいて受信エラー(オーバーランエラー、フレーミングエラー及びパリティエラー)を検出したときにも第2の通信ポート21bを受信禁止状態とする。図4においては、時刻t3において、第2の通信ポート21bの受信が禁止されている。
【0067】
なお、車両情報信号は第1の情報信号に相当し、書込情報信号は第2の情報信号に相当する。また、ECU20は制御装置に相当する。
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0068】
(1)同一のUART端子P7を通じて情報の書き込み処理及び車両情報の取得をすることができる。従って、従来のように、テスト端子を通じた情報の書き込み処理を行う必要がない。ここで、一般的にテスト端子はケース等に隠蔽される位置に設けられているため、情報の書き込みの際には、ECU20をケース等から取り出す必要があった。この点、UART端子P7を通じて情報の書き込みが可能となることで、ECU20をケースから取り出す手間がなく、マイコン21への情報の書き込みが容易となる。
【0069】
また、車両情報信号は、車両ウインドウの開閉制御をするにあたって利用される情報を含む信号であって、第1の通信プロトコルにて送信される。書込情報信号は、情報の書き込みを行う際に外部ツールから送信される情報を含む信号であって、第2の通信プロトコルにて送信される。
【0070】
ECU20は、書込情報信号を第2の通信プロトコルにて正常に受信したとき、情報の書き込み処理を実行する。よって、第1の通信プロトコルにて送信される車両情報信号が、書込情報信号として誤って認識されること、ひいては誤ってマイコン21の情報が書き換えられることを抑制できる。
【0071】
(2)車両情報信号は第1の通信ポート21aを通じて正常に受信され、書込情報信号は第2の通信ポート21bを通じて正常に受信される。本構成によれば、通信プロトコルの異なる車両情報信号及び書込情報信号を、同一のUART端子P7を通じて正常に受信することができる。
【0072】
(3)マイコン21は、リセットしてスタートした後に、前記第1の通信ポート21aを受信許可状態とするとともに、第2の通信ポート21bを受信禁止状態とする。マイコン21は、そのスタートから1s以内に、前提条件及び許可条件を満たした後に外部ツールからの書き込み要求信号を受信したとき第2の通信ポート21bを受信許可状態とし、書込情報信号の受信を可能とする。このように、第2の通信ポート21bを受信許可状態とする期間を制限することで、誤ってマイコン21の情報が書き換えられることを抑制できる。
【0073】
(4)マイコン21は、第2の通信ポート21bを受信許可状態とした場合において、第1の通信ポート21aを通じて車両情報信号を受信したとき、第2の通信ポート21bを受信禁止状態とする(S203)。第2の通信ポート21bを受信許可状態とする期間が制限されることで、誤ってマイコン21の情報が書き換えられることを抑制できる。
【0074】
(5)第2の通信ポート21bを受信許可状態とするためには、前提条件が成立した状態で許可条件が成立することが必要である(S104及びS105でYES)。このため、ユーザの意図なく、マイコン21の情報が書き換えられることを抑制できる。
【0075】
(6)第1及び第2の通信プロトコル間で互いに異なる奇数及び偶数のパリティチェックに設定される。これにより、両通信ポート21a,21bを通じて車両情報信号を受信したときには、第2の通信ポート21bからの信号がパリティエラーとなって、両通信ポート21a,21bを通じて書込情報信号を受信したときには第1の通信ポート21aからの信号がパリティエラーとなる。よって、両通信ポート21a,21bを通じて同一の信号が正常に受信されることが回避される。
【0076】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態において、ステップS105及びステップS106の処理は逆であってもよい。すなわち、マイコン21は、書き込み要求信号を受信した後に、AUTOスイッチ13cが操作された旨認識すると(許可条件成立)、第2の通信ポート21bを受信許可状態とする。
【0077】
・上記実施形態における前提条件及び許可条件は一例であって、これらに限定されない。例えば、前提条件は、イグニッションのみならず、各スイッチ13a〜13cのうち少なくとも何れか一つがオン状態であってもよい。また、許可条件は前提条件が成立した状態においてAUTOスイッチ13c以外のスイッチ13a,13bがオン状態に切り替えられることであってもよいし、各スイッチ13a〜13cが何れかの組み合わせで同時にオン状態とされることであってもよい。
【0078】
・上記実施形態においては、駆動装置をパワーウインドウ装置に適用していた。しかし、駆動装置であれば、パワーウインドウ装置に限らず、例えば、電動ミラー装置等であってもよい。
【0079】
また、駆動装置によっては、駆動源はモータ16に限らず、例えばソレノイドであってもよい。
・上記実施形態において、第2の通信ポート21bを受信許可状態とするにあたって、ステップS104,S105において前提条件及び許可条件の成立が要求されていたが、ステップS104,S105を省略してもよい。この場合には、スタートから1s経過前(S103でNO)に書き込み要求信号が受信されたとき(S106)、第2の通信ポート21bが受信許可状態とされる(S107)。また。前提条件及び許可条件の何れかを省略してもよい。
【0080】
さらに、ステップS103におけるスタートから1s経過したか否かに係る判断処理を省略してもよい。この場合、スタートからの経過時間に関わらず、書き込み要求信号が受信されたとき(S106)、第2の通信ポート21bが受信許可状態とされる(S107)。
【0081】
・上記実施形態においては、スタート後に第1の通信ポート21aを受信許可状態とし、第2の通信ポート21bを受信禁止状態としていた(S102)。しかし、このとき、両通信ポート21a,21bを受信許可状態としてもよい。この場合でも、車両情報信号と、書込情報信号とでは通信プロトコルが異なるため、誤って情報が書き換えられることが抑制される。
【0082】
・両通信ポート21a,21b間でパリティチェックの方式について偶数及び奇数を逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
11…PTC素子、12…IGスイッチ、13…操作ユニット、13a…UPスイッチ、13b…DOWNスイッチ、13c…AUTOスイッチ、14…車速センサ、15…BCM、16…モータ、20…ECU、21…マイコン、21a…第1の通信ポート、21b…第2の通信ポート、P7…UART端子(通信用端子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源を駆動制御する制御装置を備えた駆動装置において、
前記制御装置は、信号が入力される通信用端子を備え、前記通信用端子を通じて互いに異なる第1の通信プロトコル及び第2の通信プロトコルの信号を正常に受信可能であって、
前記駆動制御に利用される情報を含む第1の情報信号を前記第1の通信プロトコルにて正常に受信したとき、その情報に基づき前記駆動源を駆動制御し、
自身に情報の書き込みを要求する際に外部から送信される書込情報を含む第2の情報信号を前記第2の通信プロトコルにて正常に受信したとき、前記書込情報を自身に書き込むことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記制御装置は、第1の通信ポート及び第2の通信ポートを有するマイコンを備え、
前記通信用端子からの信号は前記両通信ポートに送信され、
前記第1の通信ポートは前記第1の通信プロトコルに設定され、前記第2の通信ポートは前記第2の通信プロトコルに設定されることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動装置において、
前記マイコンは、リセットしてスタートした後に、前記第1の通信ポートを受信許可状態とするとともに、前記第2の通信ポートを受信禁止状態とし、前記スタートから一定時間内に外部から前記第1の通信ポートを通じて、第1の通信プロトコルにて書き込み要求信号を受信したとき、前記第2の通信ポートを受信許可状態として、前記第2の情報信号を受信可能とすることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置において、
前記マイコンは、前記第2の通信ポートを受信許可状態とした場合において、前記第1の通信ポートを通じて前記第1の情報信号を正常に受信したとき、前記第2の通信ポートを受信禁止状態とすることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の駆動装置において、
前記制御装置は、ユーザによるスイッチの操作に基づき、前記駆動源を駆動制御し、前記スタートから一定時間内に、前記スイッチに対して特定の条件を満たす操作がされた旨認識し、かつ前記書き込み要求信号を受信したとき、前記第2の通信ポートを受信許可状態とすることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項2〜5の何れか一項に記載の駆動装置において、
前記第1の通信プロトコルは、奇数パリティチェック及び偶数パリティチェックの何れか一方に設定され、
前記第2の通信プロトコルは、奇数パリティチェック及び偶数パリティチェックの何れか他方に設定されることを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83048(P2013−83048A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222064(P2011−222064)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】