説明

骨及び関節の変性疾患の治療に有用な分子標的及び化合物並びにその同定方法

本発明は、破骨細胞形成を調節するプロセスに関与するタンパク質の発現又は活性を阻害できる作用物質を同定する方法であって、該阻害が、骨及び関節の変性疾患並びに破骨細胞の異常な活性又は分化が関与する疾患の予防及び/又は治療に有用である、前記方法に関する。特に、本発明は、関節リウマチの予防及び/又は治療における使用のための作用物質の同定方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の背景)
本発明は、破骨細胞形成を調節する過程に関与するタンパク質の発現又は活性を阻害できる作用物質を同定する方法であって、該阻害が、骨及び関節の変性疾患、並びに破骨細胞の異常な活性が関与する疾患の予防及び/又は治療に有用である、前記方法に関する。特に、本発明は、関節リウマチの予防及び/又は治療に有用な作用物質を同定するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は慢性的な関節の変性疾患であり、関節の構造の炎症及び破壊によって特徴づけられる。該疾患を調査しない場合、それは、実質的な機能障害、関節機能の欠失による痛み、及び早死にさえももたらす。従って、RA療法の目的は、該疾患を遅延させることではなく、関節の破壊を止めるために緩解を達成することである。疾患結果の重篤性の他に、RAの高い有病率(成人の〜0.8%が世界中で罹患している)は、高い社会経済的衝撃を意味する(RAの総説につき、出願人は、Smolen及びSteiner (2003);Lee及びWeinblatt (2001);Choy及びPanayi (2001);O'Dell (2004)及びFirestein (2003)を引用する)。
【0003】
RA患者の関節の組織学的分析は、RA関連性分解過程に関与する機構をはっきりと証明する。滑膜は細胞層であり、関節包を滑液腔から分離する下内層(sublining)及び内層(lining)領域からなる。炎症を起こした滑膜は、RAの病態生理学の中心である。滑液関節は、それぞれが軟骨の層で覆われ、関節腔で区切られ、かつ滑液膜及び関節包によって囲まれる2つの隣接する骨端からなるものとして示される。滑液膜は滑液内層(軟骨及び骨に面する)からなり、これは滑膜細胞の薄い(1〜3細胞)層、及び高度に血管化された下内層結合組織層からなる。健常者とRA患者との間の滑膜の組織学的な違いは図1に示される。
【0004】
多くの関節炎の他の形態のように、関節リウマチ(RA)はまず最初に、様々な型の単核細胞の重要な流入によって特徴づけられる滑液膜(「滑膜炎」)の炎症性の反応によって、並びに局所的な又は浸潤した単核細胞の活性化によって特徴づけられる。内層の層は、過形成(それは20個より多い細胞厚を有し得る)ようになり、滑液膜は拡大する。しかしながら、加えて、RAの特質は、関節の破壊である:関節の空間は、軟骨破壊の標示として狭くなるか又は消失し、「浸食」とも称される隣接する骨の破壊が起こる。滑液膜の破壊的な部分は、「パンヌス」と称される。骨破壊の様々な形態は、RAにおいて明らかである。全身性骨粗鬆症の他に、RAは、軟骨の下の及び軟骨に隣接する骨の浸食によっても特徴づけられる。これらの焦点浸食は、骨及びパンヌスの境界面での増加した破骨細胞集団の存在から主に生じる(RAの骨破壊の総説につき、出願人は、Gravallese(2002)を引用する)。破骨細胞は、細胞と骨組織との間の酸性化された空間(再吸収小窩(resorption lacuna))において、骨に接着し、骨基質分解酵素(例えばカテプシンK、MMP9)を分泌する多核細胞である。健常な個人において、骨の再構築は、骨を再吸収するこれらの破骨細胞の活性、及び石灰化された骨基質の産生に関与する骨芽細胞の活性により制御される。骨芽細胞は間充織幹細胞から分化し、破骨細胞は血液生成単球/マクロファージ前駆体から分化する。
【0005】
RAにおいて、破骨細胞分化を誘導する因子の集中は、骨とパンヌスの間の境界面で増加し(Pettitらの文献、2006)、骨形成と骨破壊の間のバランスの調節不全に至る。破骨細胞分化における重要な因子は、NF-κBの受容体活性化因子(RANK)及びそのリガンド(RANKL)並びにオステオプロテゲリン(OPG)である。
【0006】
RANKLは、TNFスーパーファミリーの膜固定型リガンドである。通常の骨組織において、RANKLは骨芽細胞により発現されるが、RAにおいて、滑膜線維芽細胞並びに活性化Tリンパ球がRANKLの重要な供給源である。RANKLは、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであるRANKを介し、破骨細胞又は破骨細胞前駆細胞にその影響を与える。破骨細胞生物学の別の重要な因子は、RANKLのおとり受容体であるOPGであり、これはTNF受容体スーパーファミリーに属し、RANKLへの結合についてRANKと競合する。OPGは、従って、破骨細胞の成熟及び破骨細胞の活性化を効果的に阻害する。OPG-トランスジェニックマウスは、高い骨量(大理石骨病発現型)を有するが、OPG-ノックアウトマウス(Bucayらの文献、1998)に示すように、OPGの欠如は高度の骨粗鬆症に結果としてなる。要約すると、RANK/RANKLシグナリングと、RANKLの可溶性おとり受容体であるOPGのレベルとの間のバランスは、砕骨細胞の発達及び活性化を制御し、したがって骨代謝に強く関与する。従って、OPGを介するRANKL機能の阻害は、いくつかの疾患(例えば、RA)において骨破壊を防止するかもしれない。この観点において重要なのは、RANKLノックアウトマウスがCIAに供したときに骨浸食の傾向が少ないという観察(Pettitらの文献、2001)、及び組換えOPGが単独で又は抗TNFαと組み合わせてRAのための動物モデルにおいて骨浸食を防止するという観察(Redlichらの文献、2004)である。加えて、関節炎の動物モデルにおいて骨を保護するためにOPG発現を誘導する薬の能力は、ラットにおいてPTHにより誘導された骨吸収において、及び乳癌細胞の骨への転移において示されている(Onyiaらの文献、2004)。
【0007】
RANK、RANKL及びOPGの生物学の説明から、これらの因子の変調による破骨細胞の活性又は分化に影響を与えることは、RAにおいてのみならず、骨粗鬆症の治療のためにも可能性があることは明白である。加えて、癌に伴う骨転移も骨再構築を必要とするので、破骨細胞の活性又は分化の阻害剤もこの徴候について使用できる。骨転移における総説について、Roodman(2004)を参照されたい。
【0008】
(報告された開発)
NSAIDS(非ステロイド性抗炎症剤)は、RAに伴う痛みを和らげ、患者の生活の質を改善するために使用する。しかしながら、これらの薬は、RA関連性の関節破壊を抑制しない。
【0009】
副腎皮質ステロイドは、X線撮影で検出されるRAの進行を減少させることが見出され、低用量で使用してRA患者(30〜60%)のサブセットを治療する。しかしながら、重篤な副作用が、長い副腎皮質ステロイド使用(例えば、皮膚薄層化、骨粗鬆症、白内障、高血圧症、高脂血症)と関係している。
【0010】
合成疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD、例えばメトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン)は、主にRAの免疫炎症性構成要素に対処する。主要な不利点として、これらの薬は、限られた有効性を有するだけである(関節の破壊は、DMARDによって遅延されるだけであって妨げられず、このようにして疾患の進行が長期的に続く)。効力の欠如は、平均して30%の患者のみが、メトトレキサートでの治療の24ヵ月後にACR50スコアを成し遂げるという事実により示され、これは米国リウマチ学会によると、30%の患者のみが、それらの症状の50%改善を成し遂げることを意味する。(O'Dellらの文献、1996)加えて、DMARDの作用の正確な機構は、しばしば不明である。
【0011】
生物学的DMARD(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、リツキシマブ、CTLA4-Ig)は、サイトカイン(例えば、TNF-α)を不活性化する治療的タンパク質、又はRA病態生理学での重要な役割を有する細胞(例えば、T細胞又はB細胞)である(Kremerらの文献、2003;Edwardsらの文献、2004)。TNF-α-遮断薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ)及びメトトレキサート併用療法は、現在利用可能な最も有効なRA治療であるが、この療法さえ12ヵ月の治療後に患者の50〜60%の疾患症において50%の改善(ACR50)を成し遂げるだけであることは注目される(St Clairらの文献、2004)。感染(結核)、血液学的イベント及び脱髄性障害の危険性の増加は、TNF-α遮断薬について記載されている(Gomez-Reinoらの文献(2003)も参照されたい)。また、生物学的療法であるTNF-α遮断薬は、不快な投与方法(注入部位反応を伴う頻繁な注入)を必要とし、高い生産コストを有する。様々な目標とされた治療法は、同程度であるが、限られた有効性を有するという事実は、RAについて多数の病原因子があることを示唆する。
【0012】
これは、緩解を成し遂げるために、更なる戦略を要求する。緩解は、後遺疾患が漸進性関節の損傷、及びそれゆえ進行性障害の危険性を負った時から要求される。RA治療のために現在使用される薬の主標的を表すRA疾患の免疫-炎症性構成要素を阻害することは、疾患の主要な特質である関節劣化の阻止に結果としてならない。
【0013】
加えて、ビスホスホネートは、臨床的に利用可能な骨吸収で最も強力な阻害剤として、及び骨粗鬆症の治療の大黒柱として受け入れられている、OC活性の阻害剤である。しかしながら、意外なことに、潜在的にパンヌスのOCのレベルのビスホスホネートの劣った生物学的利用能のため、ビスホスホネート治療は、RA患者において放射線学的進行を防止しない(Vallealaらの文献、2004)。従って、RAの分野の革新的な再吸収的治療法のための明白な必要性が存在する。
【0014】
本発明は、本明細書中に開示されるTARGETSの発現及び/又は活性を阻害する作用物質が、オステオプロテグリンを増加させることができ、それゆえ、関節の骨吸収を減少させる際の有用性を有するという発見に基づく。従って、本発明は、OPG発現及び破骨細胞形成を導く経路に関与しているTARGETS、TARGETSの発現及び/又は活性を阻害できる作用物質のスクリーニングのための方法、並びに関節リウマチなどの関節変性状態の予防及び/又は治療におけるこれらの作用物質の使用を提供する。
【発明の概要】
【0015】
(本発明の要旨)
本発明は、破骨細胞形成を阻害する化合物を同定する方法であって、化合物を、配列番号41〜69及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(以下「TARGETS」)及びその断片と、前記ポリペプチドが前記化合物と結合し得る条件下で接触させること、並びに、破骨細胞形成に関連する化合物-ポリペプチド特性を測定することを含む、前記方法に関する。具体的実施態様において、測定された化合物-ポリペプチド特性は、OPG発現レベルである。
【0016】
本方法の態様は、TARGET又はその断片に対応するポリペプチドを使用し、該断片が配列番号41〜69及び80に記載されるアミノ酸配列の断片である、化合物のインビトロアッセイ、並びに、TARGET阻害に、例えばTARGET発現レベル、TARGET酵素活性及び/又はOPGレベルを含む観測指標が続く細胞アッセイを含む。
【0017】
本発明は、
(1) アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む発現阻害剤であって、前記ポリヌクレオチドが、TARGETポリペプチドをコードする天然存在型ポリヌクレオチド配列に相補的な、又は該配列から人為操作された核酸配列を含み、前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号1〜29及び40からなる群から選択される配列を含む、前記発現阻害剤、並びに、
(2) 関節リウマチなどの慢性的関節変性疾患の治療又は予防に有用な前記阻害剤を含む医薬組成物、
にも関する。
【0018】
本発明の別の態様は、骨及び/又は関節の変性に関連する状態の治療又は予防方法であって、該状態に苦しんでいる又は感受性の対象において、有効なTARGET-発現阻害量の発現阻害剤、又は有効なTARGET活性阻害量の活性阻害剤を含む医薬組成物を投与することによる、前記方法である。
【0019】
本発明の更なる態様は、対象におけるTARGET発現のレベルの指標の測定を含む、骨及び/又は関節の変性に関連した状態の診断方法である。
【0020】
本発明の別の態様は、骨及び/又は関節の変性が関与する疾患の治療に有用な治療法、医薬組成物及び当該組成物の製造における、本明細書中に開示されるTARGETを阻害する作用物質の使用に関する。特に、本方法は、破骨細胞形成によって特徴づけられる疾患の治療におけるTARGETを阻害する作用物質の使用、及び特に異常なOPG発現によって特徴づけられる疾患に関する。該作用物質は、骨疾患、特に破骨細胞の機能及び分化を低減又は制御するのが望ましい骨疾患の改善又は治療に有用であり、該骨疾患には限定ではないが、骨粗鬆症、若年性骨粗鬆症、骨形成不全症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症(osteomalacia)、骨軟化症(osteohalisteresis)、溶骨性骨疾患、骨壊死、骨のパジェット病、関節リウマチによる骨損失、炎症性関節炎、骨髄炎、副腎皮質ステロイド治療、転移性骨疾患、歯周骨損失、癌による骨損失、骨量の年齢関連性の損失、骨減少症の他の形態を含み、並びに、骨折、骨欠損、形成手術、歯科移植及び他の移植などの骨修復又は置換の促進が要求される場合において有用である。具体的実施態様において、疾患は、関節リウマチである。
【0021】
他の目的及び利点は、以下の例証的な図面と併せてなされる記載の考慮から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】正常な関節及び関節リウマチにおけるその変化の概略図(Smolen及びSteiner, 2003から)。
【0023】
【図2】OPG ELISAの成績の例。
【0024】
【図3】一次スクリーニングの概略的描写:OPGアッセイにおけるSilenceSelect(登録商標)コレクションのスクリーニングの原理。
【0025】
【図4】OPGアッセイにおけるSilenceSelect(登録商標)コレクションのスクリーニングにおいて使用するコントロールプレートのレイアウト及び成績。
【0026】
【図5】SilenceSelect(登録商標)コレクションに対するOPGアッセイの一次選別において得られるデータ点を表しているスキャッタプロット。
【0027】
【図6A】破骨細胞-RASF共培養アッセイの原理。
【0028】
【図6B】破骨細胞-RASF共培養アッセイにおけるAd5-siRNAのスクリーニングの原理。
【0029】
【図7A】破骨細胞単培養のαvβ3及びカルシトニン受容体cELISA。
【0030】
【図7B】RASF-破骨細胞共培養のαvβ3及びカルシトニン受容体染色。
【0031】
【図7C】アデノウイルスによるOC-RASF共培養における破骨細胞分化の阻害は、OPGの過剰発現を誘導した。
【0032】
【図8】標的分析:6つの標的について得られたデータ。
【0033】
【図9A】特定の標的について二次アッセイ及びMOI再選別(選別A)から集計された生データ。
【0034】
【図9B】特定の標的について二次アッセイ及びMOI再選別(選別B)から集計された生データ。
【0035】
【図10】MMP1アッセイに使用した「ヒットプレート」のレイアウト。選択されたOPGヒットについて、当初のOPGヒットKDウイルス、並びに異なるshRNAの発現を介して同じ遺伝子を標的化する独立のKDウイルスを回収し、ウエルC1からF11にグループ化する。3つの異なるネガティブコントロールウイルス(Ad5-Luc-KD_v13、Ad5-eGFP-KD_v5、Ad5-M6PR-KD_v1)及び1つのポジティブコントロールウイルス(Ad5-MMP1-KD)を列B及びGにグループ化する。「ヒットプレート」の内容を再増殖させて該試験のためのウイルス粗溶解物の十分量を生成し、該ウイルスの力価の均一性を確実にする。MMP1実験の間、「ヒットプレート」の内容で形質導入された(tranduced)RASFを含んでいるプレートのウエルB2、B3及びB4(イタリックで示される)は誘発しないままにし、全ての他のウエルを「TNFαに基づく誘発剤」で活性化させる。
【0036】
【図11】MMP1アッセイ実験の結果の代表例。感染多重度(MOI)3で試験し、ポジティブコントロール(Ad5-MMP1-KD)及び非誘発の又は誘発したネガティブコントロールの成績と比較した14KDウイルスについて、MMP1発現の標準化された減少を示す。ネガティブコントロールデータは、3つ(非誘発条件)の又は13(誘発条件)の「ヒットプレート」に存在するネガティブコントロールについて得られたデータの平均を表す。ヒット判定のためのカットオフは、点線により表される。試験した全ての14KDウイルスは、RASFにおけるサイトカイン誘導性MMP1発現を著しく減少させた。
【0037】
【図12】選択された抗OPG抗体によるOPGの中和。前破骨細胞を、組換えOPG及び抗OPG抗体の示された量の存在下でRASFの上にまき、一晩のインキュベーションの後、破骨細胞分化を、示された総量のsRANKLの添加により誘導する。さらに11日の培養後に形成される破骨細胞の数を、ビトロネクチンcELISA読み出しを使用して定量化する。抗OPG(カタログ番号A805、R&D Systems)の添加がない場合、破骨細胞形成は、sRANKLの用量に依存し、かつOPGの添加によって妨げられる;破骨細胞形成を妨げるOPGの能力は、破骨細胞分化を誘発するために使用するsRANKLの用量による:より高用量のsRANKLでは、より多くのOPGが破骨細胞分化を妨げるために必要である。抗OPG抗体の添加は、OPGの存在下で、破骨細胞分化を救出することが可能である。破骨細胞分化を救出する能力は、加えられるOPGの濃度、及びsRANKLの用量と共に、抗体の用量に依存し:より多くの抗体では、より多くのOPGを中和でき、OPG阻害の救出が観察されることができるRANKLの用量はより低い。観察できるように、OPGが加えられない場合、sRANKLの用量反応は、より低いsRANKL濃度にすでに低下し、抗OPG抗体が添加される場合、RASFにより内因性分泌されたOPGの中和に起因する。実験のために、抗OPG Abを3μg/mL及び15ng/mLの濃度で使用し、sRANKLを使用して破骨細胞分化を誘発する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(詳細な説明)
以下の用語は、下記においてそれとともに提示される意味を有することを意図し、かつ本発明の説明及び意図する範囲を理解することに有用である。
【0039】
用語「作用物質」は、いかなる分子も意味し、ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、化合物及び小分子を含む。特に、用語作用物質は、試験化合物又は薬剤候補化合物などの化合物を含む。
【0040】
用語「アゴニスト」とは、最も幅広い意味において、リガンドが結合する受容体を刺激するリガンドをいう。
【0041】
用語「アッセイ」は、化合物の特定の特性を測定するために使用するいかなるプロセスも意味する。「スクリーニングアッセイ」は、化合物のコレクションからそれらの活性に基づく化合物を特徴づけるか又は選択するために使用するプロセスを意味する。
【0042】
用語「結合親和性」は、2つの以上化合物が非共有結合関係でどれくらい強く互いに会合するかについて記述する特性である。結合親和性は、質的に(例えば「強い」、「弱い」、「高い」、又は「低い」)、又は量的に(KDを測定することなど)特徴づけられることが可能である。
【0043】
用語「担体」は、媒体、バルク及び/又は医薬組成物に対する使用可能な形態を提供する、医薬組成物の製剤において使用される非毒性の材料を意味する。担体は、賦形剤、安定剤、又は水性pH緩衝溶液などのこの種の材料の1以上を含み得る。生理的に許容可能な担体の例には以下を含む:リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸などの水性又は固体緩衝成分;アスコルビン酸などの酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又は、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤。
【0044】
用語「複合体」は、2つ以上の化合物が互いに結合し、接触し、又は会合する場合につくられる実体を意味する。
【0045】
用語「化合物」は、本明細書において、本発明のアッセイに関連して記載されている「試験化合物」又は「薬剤候補化合物」の文脈で使用される。このように、これらの化合物は有機化合物又は無機化合物を含み、合成に又は天然資源に由来する。化合物は、ポリヌクレオチド、脂質又はホルモン類似体などの無機化合物又は有機化合物を含む。他の生体高分子性有機試験化合物は、約2〜約40アミノ酸を含むペプチド、及び約40〜約500アミノ酸を含むより大きなポリペプチドを含み、ポリペプチドリガンド、酵素、受容体、チャネル、抗体又は抗体抱合体を含む。
【0046】
用語「状態」又は「疾患」は、症状の顕在的表出(すなわち、疾病)又は異常な臨床指標(例えば、生化学指標又は診断指標)の現れを意味する。あるいは、用語「疾患」とは、この種の症状又は異常な臨床指標を進行させる遺伝的若しくは環境的危険又は傾向をいう。
【0047】
用語「接触」又は「接触させること」は、インビトロシステムかインビボシステムかにかかわらず、少なくとも2つの部分を合わせることを意味する。
【0048】
用語「ポリペプチドの誘導体」は、該ポリペプチドの連続的なアミノ酸残基のストレッチを含み、かつ該タンパク質の生物活性を保持する、それらのペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素に関し、例えば、該ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列と比較してアミノ酸突然変異を有するポリペプチドに関する。誘導体は、ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列と比較して、さらなる天然存在型の、修飾された、グリコシル化された、アシル化された、又は非天然存在型アミノ酸残基をさらに含み得る。誘導体は、ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列と比較して、1以上の非アミノ酸置換基、又は異種アミノ酸置換基を含むこともでき、例えば該アミノ酸配列に共有結合的に又は非共有結合的に結合するレポーター分子又は他のリガンドを含むこともできる。
【0049】
用語「ポリヌクレオチドの誘導体」は、該ポリヌクレオチドの核酸残基のストレッチを含むDNA-分子、RNA-分子及びオリゴヌクレオチドに関し、例えば、ポリヌクレオチドの天然存在型形態の核酸配列と比較して、核酸突然変異を有し得るポリヌクレオチドに関する。誘導体は、PNA、ポリシロキサン及び2'-O-(2-メトキシ)エチル-ホスホロチオエートなどの修飾された骨格を有する核酸、非天然存在型核酸残基、又はメチル-、チオ-、サルフェート、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、又はその検出を容易にするレポーター分子をさらに含み得る。
【0050】
用語「破骨細胞」とは、成長している骨で見出される大きな多核細胞であって、管及び空腔の形成におけるような骨ばった組織を再吸収する前記細胞をいう。
【0051】
用語「破骨細胞形成」とは、破骨細胞が、単球-マクロファージ細胞株の細胞の融合によって生成されるプロセスをいう。
【0052】
用語「有効量」又は「治療上有効量」は、医師又は他の臨床医により求められている、対象の生物学的又は医学的な反応を誘発する化合物又は作用物質の量を意味する。
【0053】
用語「内因性」は、哺乳類が自然に産生する物質を意味するものとする。用語「プロテアーゼ」、「キナーゼ」又はGタンパク質共役受容体(「GPCR」)に関連しての内因性とは、哺乳類(例えば、限定ではないが、ヒト)によって自然に産生されるものを意味するものとする。対照的に、この文脈における用語非内因性とは、哺乳類(例えば、限定ではないが、ヒト)によって自然に産生されないものを意味するものとする。両方の用語は、インビトロ及びインビボシステムの両方における記載に利用できる。例えば、及び限定ではないが、スクリーニングアプローチにおいて、内因性又は非内因性のTARGETは、インビトロスクリーニングシステムに関し得る。更なる例として、及び限定としてではなく、哺乳類のゲノムが非内因性TARGETを含むように人為操作された場合、インビボシステムの手段による候補化合物のスクリーニングは可視的である。
【0054】
用語「発現可能な核酸」は、タンパク性分子、RNA分子又はDNA分子をコードする核酸を意味する。
【0055】
用語「発現」は、内因性発現、及び形質導入による過剰発現の両方を含む。
【0056】
用語「発現阻害剤」は、細胞内で通常発現する特定のポリペプチド又はタンパク質の転写、翻訳及び/又は発現に選択的に干渉するように設計されたポリヌクレオチドを意味する。より具体的には、「発現阻害剤」は、特定のポリペプチド又はタンパク質をコードするポリリボヌクレオチド配列内の連続的なヌクレオチドのうち少なくとも約15〜30、特に少なくとも17に同一又は相補的なヌクレオチド配列を含むDNA又はRNA分子を含む。典型的な発現阻害分子には、リボザイム、二重鎖siRNA分子、自己相補一本鎖siRNA分子、遺伝的アンチセンス構築物及び修飾された安定化骨格を有する合成RNAアンチセンス分子を含む。
【0057】
用語「ポリヌクレオチドの断片」とは、完全な配列に類似するが必ずしも同一ではない活性を実質的に示す連続的な核酸残基のストレッチを含むオリゴヌクレオチドに関する。具体的態様において、「断片」は、前記完全な配列の核酸配列のうち少なくとも5の核酸残基(好ましくは、少なくとも10の核酸残基、少なくとも15の核酸残基、少なくとも20の核酸残基、少なくとも25の核酸残基、少なくとも40の核酸残基、少なくとも50の核酸残基、少なくとも60の核酸残基、少なくとも70の核酸残基、少なくとも80の核酸残基、少なくとも90の核酸残基、少なくとも100の核酸残基、少なくとも125の核酸残基、少なくとも150の核酸残基、少なくとも175の核酸残基、少なくとも200の核酸残基、又は少なくとも250の核酸残基)の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドをいうことができる。
【0058】
用語「ポリペプチドの断片」は、連続するアミノ酸残基のストレッチを含み、かつ完全な配列と類似するが必ずしも同一ではない機能的又は発現活性を実質的に示す、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、モノマー、サブユニット及び酵素に関する。特定の態様において、「断片」は、前記完全な配列のアミノ酸配列のうち少なくとも5つのアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10のアミノ酸残基、少なくとも15のアミノ酸残基、少なくとも20のアミノ酸残基、少なくとも25のアミノ酸残基、少なくとも40のアミノ酸残基、少なくとも50のアミノ酸残基、少なくとも60のアミノ残基、少なくとも70のアミノ酸残基、少なくとも80のアミノ酸残基、少なくとも90のアミノ酸残基、少なくとも100のアミノ酸残基、少なくとも125のアミノ酸残基、少なくとも150のアミノ酸残基、少なくとも175のアミノ酸残基、少なくとも200のアミノ酸残基、又は少なくとも250のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を含む、ペプチド又はポリペプチドをいうことができる。
【0059】
用語「ハイブリダイゼーション」は、核酸の鎖が塩基対を介して相補鎖と結合するいかなる方法も意味する。用語「ハイブリダイゼーション複合体」とは、相補的塩基間の水素結合の形成による、2つの核酸配列間に形成される複合体をいう。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液において形成でき(例えば、COt又はROt解析)、又は、溶液に存在する1の核酸配列と固相支持体(例えば、紙、膜、フィルタ、チップ、ピン若しくはガラススライド、又は細胞若しくはそれらの核酸が固定された任意の他の適切な基板)に固定される別の核酸配列との間に形成できる。用語「ストリンジェント条件」とは、ポリヌクレオチドと特許請求の範囲に記載のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを許容する条件をいう。ストリンジェント条件は、塩濃度、有機溶媒、例えばホルムアミドの濃度、温度、及び当業界で公知の他の条件によって規定できる。特に、塩の濃度を低下させること、ホルムアミドの濃度を増加させること、又はハイブリダイゼーション温度を上げることは、ストリンジェンシーを増加させることができる。用語「標準ハイブリダイゼーション条件」とは、ハイブリダイゼーション及び洗浄について5×SSC及び65℃に実質的に等しい塩及び温度条件をいう。しかしながら、当業者は、この種の「標準ハイブリダイゼーション条件」が、緩衝液中のナトリウム及びマグネシウムの濃度、ヌクレオチド配列長及び濃度、パーセントミスマッチ、パーセントホルムアミドなどを含む具体的な条件に依存していることを理解するであろう。また、「標準ハイブリダイゼーション条件」の決定において重要なのは、ハイブリダイズしている2つの配列がRNA-RNA、DNA-DNA又はRNA-DNAであるかである。このような標準ハイブリダイゼーション条件は、周知の公式に従って当業者で容易に決定され、該ハイブリダイゼーションは、典型的には、必要に応じて、より高い厳しさの洗浄を有する予測又は決定されたTmより10〜20℃低い。
【0060】
用語「反応」との関連における用語「阻害」又は「阻害すること」は、反応が該化合物の非存在下とは対照的に該化合物の存在下で減少するか又は妨げられることを意味する。
【0061】
用語「阻害」とは、プロセスの減少、下方制御、又はプロセスについての刺激の除去をいい、これはタンパク質若しくはポリペプチドの発現又は活性の不在あるいは最小化に結果としてなる。
【0062】
用語「誘導」とは、プロセスの誘導、上方制御又は刺激をいい、これはタンパク質若しくはポリペプチドの発現又は活性化に結果としてなる。
【0063】
用語「リガンド」は、内因性の天然存在型受容体に特異的な内因性の天然存在型分子を意味する。
【0064】
用語「医薬として許容し得る塩類」とは、本明細書中に開示されるTARGETSの発現又は活性を阻害する化合物のうち、非毒性の無機及び有機酸付加塩及び塩基付加塩をいう。これらの塩類は、本発明に有用な化合物の最終的な単離及び精製の間、インサイチュウで調製できる。
【0065】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質(TARGETSなど)、タンパク性分子、タンパク質の断片、モノマー、サブユニット、又は重合タンパク質、ペプチド、オリゴペプチド及び酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GPCRのもの、その他など)の部分に関する。
【0066】
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖形態の、及びセンス又はアンチセンス方向のポリ核酸、ストリンジェント条件下において特定のポリ核酸にハイブリダイズする相補的ポリ核酸、並びに、その塩基対のうち少なくとも約60パーセント及び特にその塩基対の70パーセントにおいて共通の、最も特に90パーセント、及び特定の実施態様においてはその塩基対の100パーセントで相同性のポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドには、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸及びその合成類似体を含む。また、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン及び2'-O-(2-メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾された骨格を有する核酸も含む。ポリヌクレオチドは、約10〜約5000塩基、特に約100〜約4000塩基、特に約250〜約2500塩基の範囲で長さにおいて変化する配列により記載される。1つのポリヌクレオチドの実施態様には、約10〜約30塩基長を含む。ポリヌクレオチドの具体的実施態様は、約17〜約22ヌクレオチドのポリリボヌクレオチドであり、より一般的には低分子干渉RNA(siRNA)として記述される。別の具体的実施態様は、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン及び2'-O-(2-メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾された骨格を有する核酸、又は非天然存在型核酸残基、若しくはメチル-、チオ-、サルフェート、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、若しくはその検出を容易にするレポーター分子を含む核酸である。ポリヌクレオチドは、本明細書において、特定の標的DNA配列の異なる鎖と「実質的に」相補的に選択される。これは、該ポリヌクレオチドが、それらのそれぞれの鎖でハイブリダイズするために十分に相補的でなければならないことを意味する。従って、該ポリヌクレオチド配列は、TARGET配列の正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片は、ポリヌクレオチドの5'端に付着するとともに、該ポリヌクレオチド配列の剰余は、該鎖に相補的であることができる。あるいは、非相補的塩基又はより長い配列はポリヌクレオチドに散在できるが、但し、該ポリヌクレオチド配列が、ストリンジェント条件下でそれとハイブリダイズする鎖の配列、又は伸長産物の合成用テンプレートを形成するための鎖の配列と十分な相補性を有することを条件とする。
【0067】
用語「予防すること(preventing)」又は「予防(prevention)」とは、病原性作用物質にさらされ得る、又は疾患開始に先立って疾患傾向であり得る対象において、疾患又は障害を発症するか又は進行する危険の減少(すなわち、疾患の臨床症状のうち少なくとも1を発現させない)をいう。
【0068】
用語「予防(prophylaxis)」は「予防(prevention)」に関し、かつ疾患を治療し又は治癒させるというよりむしろ防ぐ目的での測定又は手順をいう。予防的測定の非限定的な例には、ワクチンの投与;例えば、不動化による血栓症の危険のある病院患者に対する低分子量のヘパリンの投与;及び、マラリアが風土性である、又はマラリアになる危険が高い地理的領域への訪問に先立つ、クロロキンなどの抗マラリア剤の投与;を含み得る。
【0069】
用語「溶媒和物」は、1以上の溶媒分子と本発明に有用な化合物との物理的な会合を意味する。この物理的な会合には、水素結合を含む。特定の場合において、溶媒和物は、例えば1以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に取り込まれるときに単離できる。「溶媒和物」は、溶相及び単離可能な溶媒和物の両方を含む。代表的な溶媒和物には、水和物、エタノラート及びメタノラートを含む。
【0070】
用語「対象」には、ヒト及び他の哺乳類を含む。
【0071】
用語「TARGET」又は「TARGETS」は、本明細書に記載されているアッセイに従って同定され、OPG発現レベルの変調に関与していると決定されるタンパク質又はポリペプチドを意味する。
【0072】
「治療上有効量」は、医師又は他の臨床医により求められている対象の生物学的又は医学的反応を誘発する薬剤、化合物、発現阻害剤又は医薬的作用物質の量を意味する。特に、破骨細胞形成の活性化によって特徴づけられる疾患状態を治療することに関して、用語「有効な骨吸収阻害量」は、破骨細胞形成が阻害され、骨吸収が減少されるように、対象の疾患罹患組織でOPG発現に生物学的に有意な増加をもたらす本明細書に記載したTARGETを阻害するのに有効量な化合物の量を意味することを意図する。
【0073】
OPG誘導特性を有する化合物又は「OPG誘導化合物」は、細胞に提供される場合、有効量で、当該細胞においてOPGの発現又は産生において生物学的に有意な増加をもたらし得る化合物を意味する。
【0074】
任意の疾患若しくは障害の用語「治療する」又は「治療」とは、一実施態様において、疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患を抑えること、又はその臨床症状のうちの少なくとも1つの徴候、範囲又は重篤性を減少させること)をいう。別の実施態様において、「治療すること」又は「治療」とは、少なくとも1つの物理的パラメータを改善することをいい、これは対象によっては識別可能でなくてもよい。さらに別の実施態様において、「治療すること」又は「治療」は、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理的に(例えば、物理的パラメータの安定化)又はその両方のいずれかで、疾患又は障害を調節することをいう。さらなる態様において、「治療すること」又は「治療」は、疾患の進行を減速させることに関する。
【0075】
出願人の発明は、骨吸収及び破骨細胞形成の減少に関連し、OPG発現及び破骨細胞分化とのTARGETの関係に部分的に基づく。TARGETは、骨吸収若しくは骨劣化を含むか又は引き起こす骨病及び関節病に関係する。特に、TARGETは、関節リウマチに関係する。
【0076】
OPG発現は、それが、インビボにおいて、骨吸収の原因となる活性化された発現型の方への破骨細胞形成の刺激に逆相関するように、骨吸収に関係する。これは、RANKLノックアウトマウスが、CIA(Pettitらの文献、2001)及び組換えOPGに単独で又はRAの動物モデルにおいて骨浸食を予防する抗TNFα(Redlichらの文献、2004)と組み合わせて供された場合に、骨浸食の傾向がより少ないという観察によって支持される。
【0077】
従って、OPG発現の誘導は、RAの治療の方への有益な治療的アプローチを表す。したがって、滑膜線維芽細胞又は関節を構成する別の細胞における候補タンパク質の発現の減少がOPG発現及び/又は活性レベルに増加をもたらすのであれば、当該タンパク質はOPG発現の制御に関与し、かつRAの治療についての治療戦略の開発のための関連標的である。本発明者は、以下「Ad-siRNA」と記載するshRNAのライブラリの発現を伝達している組換えアデノウイルスをスクリーニングすることによって当該標的タンパク質を同定した。本明細書において使用されるコレクションは更に、「アデノウイルスsiRNAライブラリ」又は「SilenceSelect(登録商標)」コレクションという。これらのライブラリは組換えアデノウイルスを含み、さらに、RNA干渉(RNAi)に基づく機構により標的化された遺伝子の発現レベルを減少させるshRNAの細胞における発現を媒介するノックダウン(KD)ウイルス又はAd-siRNAとして言及した(WO03/020931)。スクリーニング作業は、実施例1で後述する。
【0078】
先に指摘したように、本発明は、実施例で後述する様々な選別の結果として同定されたTARGETポリペプチドが、OPGの発現の制御における因子のみならず、破骨細胞形成の変調における因子でもあるという、本発明者の発見に基づく。OPG誘導タンパク質の活性低下は、関節の劣化、例えば関節リウマチが関与する疾患を含む、増加した骨吸収が関与する様々な疾患の進行の原因であり、かつその進行に相関すると考えられている。OPG発現は、骨粗鬆症、若年性骨粗鬆症、骨形成不全症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症(osteomalacia)、骨軟化症(osteohalisteresis)、溶骨性骨疾患、骨壊死、骨のパジェット病、関節リウマチによる骨損失、炎症性関節炎、骨髄炎、副腎皮質ステロイド治療、転移性骨疾患、歯周骨損失、癌による骨損失、骨量の年齢関連性の損失、骨減少症の他の形態を含むがこれらに限定されない骨疾患に関与する。OPGの変調は、骨修復又は置換の促進が、骨折、骨欠損、形成手術、歯科移植及び他の移植などの要求される場合にも有用であり得る。
【0079】
一態様において、本発明は、骨吸収を阻害する薬剤候補化合物についてのアッセイ方法であって、該化合物を配列番号41〜69及び80のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその断片と、前記ポリペプチドが該化合物と結合し得る条件下で接触させること、並びに、該ポリペプチドと該化合物との間の複合体の形成を検出することを含む、前記方法に関する。複合体形成を測定する1つの具体的手段は、前記ポリペプチドに対する前記化合物の結合親和性を決定することである。
【0080】
より具体的には、本発明は、骨吸収を阻害する作用物質を同定する方法に関し、該方法は以下を含む:
(a) 哺乳動物細胞の集団を、TARGETポリペプチド又はその断片に結合親和性を呈する1以上の化合物と接触させること、及び、
(b) 化合物-ポリペプチド特性を測定すること。
【0081】
更なる態様において、本発明は、骨吸収を阻害する薬剤候補化合物についてアッセイするための方法であって、該化合物を、配列番号41〜69及び80のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその断片と、前記化合物が該ポリペプチドの活性又は発現を調節できる条件下で接触させること、及び、該ポリペプチドの活性又は発現を測定することを含む、前記方法に関する。ポリペプチドの活性又は発現を測定する具体的手段は、抗体などのポリペプチド結合性作用物質を使用して前記ポリペプチドの量を決定すること、又は、生物学的若しくは生化学測定、例えばキナーゼポリペプチドの標的のリン酸化の量で前記ポリペプチドの活性を測定することである。
【0082】
上記化合物-ポリペプチド特性は、TARGETの発現又は活性に関し、かつ当業者によって選択される測定可能な事象である。測定可能特性は、例えば、前記化合物のポリペプチドTARGETのペプチド領域に対する結合親和性、又は骨吸収の多くの生化学的マーカーレベルのいずれか1つのレベルであり得る。骨吸収に関連したイベント又は活性は、例えば、破骨細胞の量又は活性の測定、又は例えばCTX-I、又は、オステオカルシン(osteocalcin)のような骨吸収のためのマーカー標識測定で測定できる。該化合物は、破骨細胞、破骨細胞前駆体又は関連した細胞株とインキュベートすることができ、前記細胞の分化、成熟活性化及び機能的状態が測定される。複数の破骨細胞培養システム又は方法及び本発明の潜在的な骨形成化合物を選別するために成功的に使用することができる骨形成アッセイがある。例えば、米国特許番号6,080,779を参照されたい。スクリーニングにおける使用のための1つの破骨細胞培養は、新生児マウス頭蓋冠アッセイである。ラット頭蓋冠骨成長における化合物の影響もインビボでテストできる。加えて、マクロファージ、破骨細胞前駆体及び破骨細胞を含む破骨細胞培養は、骨髄前駆体、特に骨髄マクロファージから生成でき、破骨細胞調節活性のための化合物の評価において利用できる。骨髄マクロファージは、48ウエル又は96ウエル細胞培養ディッシュにおいて、M-CSF(10ng/mL)、RANKL(100ng/mL)の存在下で、化合物若しくはコントロールの添加の有無において培養し、培地を交換した(例えば3日目に)。破骨細胞様細胞は、酒石酸塩耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性についての染色によって特徴づけられる。骨吸収を評価することにおいて、例えばピットアッセイを使用して、破骨細胞は、骨髄マクロファージからクジラ象牙質スライス上に生成される。破骨細胞を生成するための3日の培養の後、化合物又はコントロールは、該培養物に2日間加えられる。実験の最後に、細胞をTRAP染色し、細胞数を記録するために撮影する。それから細胞を、0.5Mの水酸化アンモニウム及び機械振動で象牙質スライスから剥がす。最大の融食作用空隙深度は、共焦顕微鏡を使用して測定する(Microradiance、Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)。ピット数及び再吸収領域の評価のために、象牙質スライスは、クマシーブリリアントブルーで染色し、定量のためのOsteomeasureソフトウェア(Osteometries、Decatur, Georgia)を使用する顕微鏡検査により解析する。
【0083】
更なる態様において、本発明は、骨吸収を阻害する候補化合物のアッセイ方法であって、該化合物を、配列番号1〜29及び40の核酸配列又はその断片/部分を含むTARGETポリペプチドをコードしている核酸と、前記核酸が該化合物と結合するか又はそうでなければ会合できる条件下で接触させること、及び該核酸と該化合物間の複合体の形成を検出することを含む、前記方法に関する。複合体形成を測定する特定の手段は、前記化合物の前記核酸に対する結合親和性を測定すること、又はヌクレアーゼに対する抵抗特性若しくはゲル移動度アッセイによる複合体の存在を測定することである。あるいは、複合体形成は、核酸の転写又は翻訳の阻害で測定できる。
【0084】
本発明の特定の実施態様において、TARGETポリペプチドは、表1に収載される配列番号41〜69及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。本発明の実施態様において、TARGETポリペプチドをコードすることができる核酸は、表1に収載される配列番号1〜29及び40からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0085】
【表1】





【0086】
本発明の別の具体的実施態様には、配列番号56、57、59〜61及び80として同定されるTARGETSを含む。本発明の別の具体的実施態様には、配列番号58として同定されるイオンチャネルTARGETを含む。本発明の更なる具体的実施態様には、配列番号54、62及び80として同定されるGPCR TARGETSを含む。本発明の更なる具体的実施態様には、配列番号41〜49、56、60〜61及び63〜64として同定されるキナーゼTARGETを含む。本発明の更なる具体的実施態様には、配列番号50及び65として同定されるプロテアーゼTARGETを含む。本発明の更なる具体的実施態様には、配列番号51〜53, 57, 66〜69として同定される酵素TARGETを含む。本発明の更なる具体的実施態様には、配列番号55及び59として同定されるホスホジエステラーゼTARGETを含む。1つのタンパク質が多くの報告された配列を有し得ること、及びこれらの配列が同一のTARGETを調査するために互換的に使用できることは、当業者によって理解されるであろう。特に、一実施態様において、TARGETは、配列番号41、42、43、44又は45のいずれか1つにより記載され得るNTRK2である。更なる実施態様において、TARGETは、配列番号46、47、48又は49のいずれか1つにより記載され得るMAP4K4である。更なる実施態様において、TARGETは、配列番号52又は53により記載され得るMGLLである。更なる実施態様において、TARGETは、配列番号60又は61により記載され得るMAP3K3である。更なる実施態様において、TARGETは、配列番号63又は64により記載され得るNEK3である。更なる実施態様において、TARGETは、配列番号66、65、68又は69のいずれか1つにより記載され得るFNTAである。
【0087】
当業者の選択に応じて、本アッセイ方法は一連の測定として機能するように設計でき、そのそれぞれは、薬剤候補化合物が、実際に該ポリペプチドに作用することにより骨吸収を阻害するかどうかを測定するように設計されている。例えば、該ポリペプチド又はその断片に対する化合物の結合親和性を測定するように設計されたアッセイは、該試験化合物が対象に投与されるときに骨吸収を阻害することに有用であり得るかどうかを確認するのに必要であり得るが、十分でない可能性がある。
【0088】
この種の結合情報は、例えばOPG発現などの生化学的経路のさらに1つ下などの異なる特性を測定し得るアッセイにおける使用のための一組の試験化合物を同定することに有用であり得るだろう。この種の第2のアッセイは、該試験化合物が、該ポリペプチドに対する結合親和性を有し、実際に骨吸収を阻害することを確認するために設計してもよい。この種のアッセイは、該試験化合物が破骨細胞分化を阻害し、RANK又はRANKLに影響を与え、MMP1に対する作用などの抗炎症作用を有することを確認するように設計してもよい。適切及び典型的なアッセイは、従来技術において周知であり及び/又は更に本明細書中に記載されている。適切なコントロールは、偽陽性又は偽陰性の読み取りを防ぐために、常に置くべきである。本発明の具体的実施態様において、スクリーニング方法には、化合物を適切なコントロールと比較する追加ステップを含む。一実施態様において、コントロールは、試験化合物と接触していなかった細胞又はサンプルであり得る。代替的実施態様において、コントロールは、TARGETを発現しない細胞であり得る;例えばこの種の実施態様の1つの態様において、試験細胞は天然にTARGETを発現でき、コントロール細胞は、TARGETの発現を阻害し又は防止する作用物質(例えばsiRNA)と接触させることができる。あるいは、この種の実施態様の別の態様において、その天然状態の細胞はTARGETを発現せず、試験細胞はTARGETを発現するように設計されており、この実施態様において、コントロールは非形質転換の天然細胞であり得る。
【0089】
典型的なコントロールが本明細書中に記載されているが、これは限定としてとられるべきではなく、使用される実験条件について適切なコントロールを選択することは、当業者の範囲内である。
【0090】
これらの測定又は前記ステップの実行の順序は、本発明の実施に決定的に重要であるとは考えておらず、いかなる順序で実施してもよい。例えば、該ポリペプチドに対する化合物の結合親和性に関する情報がない一組の化合物のスクリーニングアッセイを最初に実行できる。あるいは、ポリペプチドドメインに対する結合親和性を有するとして同定される一組の化合物、又は該ポリペプチドの阻害剤であるとして同定される化合物の種類をスクリーニングできる。しかしながら、薬剤候補化合物の最終的な使用に意味のある本アッセイについては、骨吸収活性の測定値は必要であり得る。コントロール、及び本発明のポリペプチドに対する結合親和性の測定値を含む検証研究は、それでもなお、任意の治療的又は診断的適用に有用な化合物を同定することに有用である。
【0091】
本アッセイ法は、インビトロで、重合タンパク質、ペプチド、オリゴペプチド及びその酵素的活性部分のモノマー、部分又はサブユニットを含む、1つ以上のTARGETタンパク質又はその断片を使用して実施できる。
【0092】
化合物のポリペプチドTARGETとの結合親和性は、表面プラスモン共鳴バイオセンサ(Biacore(登録商標))を使用することなどの当業界で周知の方法により、標識化合物を用いての飽和結合解析(例えば、スキャッチャード及びリンドモアッセイ)により、差動UV分光光度計、蛍光分極化アッセイ、Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))システム、蛍光共鳴エネルギー転移、及び生体発光共鳴エネルギー転移により測定できる。化合物の結合親和性は、解離定数(Kd)、又はIC5O若しくはEC5Oとしても表現できる。IC5Oは、ポリペプチドに対する別のリガンドの結合の50%阻害のために要求される化合物の濃度を表す。EC50は、TARGET機能を測定する任意のアッセイにおいて最大効果の50%を得るために必要とされる濃度を表す。解離定数(Kd)は、リガンドがどれくらいよくポリペプチドと結合するかという基準であり、該ポリペプチド上の結合部位の正確に半分を飽和させるのに必要とされるリガンド濃度に等しい。高親和結合を有する化合物は、低いKd、IC5O値及びEC5O値、例えば、100nM〜1pMの範囲を有し;中程度〜低親和性結合は、高いKd、IC5O値及びEC5O値、例えばマイクロモルの範囲に関する。
【0093】
本アッセイ法は、細胞アッセイにおいても実施できる。TARGET又はその断片を発現している宿主細胞は、内因性発現を有する細胞、又は例えば形質導入によってTARGETを過剰発現させている細胞であり得る。ポリペプチドの内因性発現が容易に測定できる基線を決定するのに十分でない場合、TARGETを過剰発現させる宿主細胞を使用できる。過剰発現は、TARGET基質最終生成物のレベルが内因性発現による活性レベルより高い利点を有する。したがって、現在利用できる技術を使用してこの種のレベルを測定することがより容易である。あるいは、TARGETの非内因性形態は、細胞において発現又は過剰発現でき、スクリーニングに利用できる。
【0094】
OPG発現及び/又は活性を増加させる化合物を同定する本方法の一実施態様は、TARGETポリペプチド又はその機能的断片若しくは誘導体を発現している哺乳動物細胞の集団を培養すること;前記細胞集団におけるOPG発現及び/又は活性の第1のレベルを測定すること;最終的に該細胞集団を活性化させること;前記細胞集団を化合物又は化合物の混合物に曝露すること;前記細胞集団の前記化合物又は前記化合物の混合物への曝露の間又は曝露後における前記細胞集団におけるOPG発現及び/又は活性の第2のレベルを測定すること;及び、OPG発現及び/又は活性を誘導する化合物を同定すること;を含む。
【0095】
先に指摘したように、破骨細胞形成及び骨吸収の阻害は、TARGETポリペプチド及び/若しくは周知の破骨細胞形成及び/若しくは骨吸収阻害タンパク質の発現並びに/又は活性を測定することにより決定できる。特定の実施態様において、前記破骨細胞形成又は骨吸収阻害タンパク質は、骨組織を除去するのに作用する活性化破骨細胞の形成を阻止することが可能である。本発明の具体的実施態様において、前記破骨細胞形成又は骨吸収阻害タンパク質は、オステオプロテゲリン(OPG)である。
【0096】
破骨細胞形成及び/又は骨吸収阻害タンパク質の発現は、特異的抗体を使用するウエスタンブロット法、又は特定の破骨細胞形成及び/又は骨吸収阻害タンパク質を特異的に認識する抗体を使用するELISAなどの当業界において周知の方法で測定できる。
【0097】
本発明者は、ハイスループットモードで、培養細胞の上清などの複合培地におけるOPGのレベルの検出を可能にするプロトコルを開発した。
【0098】
本発明者は、αvβ3インテグリンについての細胞に基づくELISAに基づき、ハイスループットモードで、複合培地において、及び単培養又は共培養において破骨細胞分化のレベルの検出を可能にするプロトコルを開発した。
【0099】
本発明者は、「ノックダウン」ライブラリを使用することにより、破骨細胞形成及び/又は骨吸収に関与するTARGET遺伝子を同定した。この種のライブラリは、siRNA分子が組換えアデノウイルスによって細胞に形質導入される選別であり、該siRNA分子は、細胞において特定の遺伝子の発現並びに対応する遺伝子産物の発現及び活性を阻害するか又は抑制する。ウイルスベクターの各siRNAは、特定の天然遺伝子に対応する。OPG発現を誘導するsiRNAを同定することによって、特定の遺伝子発現と、OPG発現及び活性と骨吸収をもたらす破骨細胞形成との間の経路との間の直接的な相関が描かれる。ノックダウンライブラリを使用して同定されるTARGET遺伝子(該タンパク質発現産物は、本明細書において「TARGET」ポリペプチドという。)は、それから、骨吸収を予防するために使用することができる化合物を同定する本発明の方法において使用される。実際、表2に収載される配列を含むshRNA化合物(特に配列番号:81〜97及び107、特に配列番号:88、89、91、92及び107)は、これらのTARGET遺伝子の発現及び/又は活性を阻害して細胞のOPG発現を増加させ、このことは、OPG発現から骨吸収の阻害まで経路におけるTARGETSの役割を裏付ける。
【0100】
【表2】

【0101】
表1は、後述するOPGアッセイにおける出願人のノックダウンライブラリを使用して同定されたTARGETSを収載し、同定されたポリペプチドの種類を含む。TARGETSは、例えば、キナーゼ、プロテアーゼ、酵素、イオンチャネル、GPCR、ホスホジエステラーゼ及びホスファターゼなどのポリペプチド種で同定された。化合物の存在下又は非存在下において実行される、キナーゼによる基質のリン酸化を測定することによる該キナーゼの活性を測定する具体的方法は、公知技術である。
【0102】
イオンチャネルは膜タンパク質複合体であり、それらの機能は生体膜を介するイオンの拡散を促進することである。膜又はリン脂質二重層は、親水性かつ帯電性分子に、疎水的な低誘電バリアを築く。イオンチャネルは、膜の疎水的内部を介して高い導電親水性経路を提供する。イオンチャネルの活性は、古典的なパッチクランピングを使用して測定できる。ハイスループット蛍光に基づくアッセイ又はトレーサに基づくアッセイも、イオンチャネル活性を測定するために広く利用できる。これらの蛍光に基づくアッセイは、イオンチャネルを開閉し、このことにより膜を介する特定の蛍光色素の濃度を変化させるそれらの能力に基づき、化合物を選別する。トレーサに基づくアッセイの場合、細胞内外のトレーサの濃度の変化は、放射活性測定又はガス吸収分光測定法で測定される。
【0103】
プロテアーゼであるポリペプチドによる基質の裂開を測定することによって、化合物による阻害を測定する具体的方法は、公知技術である。古典的には、蛍光基が、標的プロテアーゼにより切断できる基質であるペプチド配列によりクエンチャーに連結されている基質が使用される。リンカーの裂開は、蛍光基及びクエンチャーを分離し、蛍光の増加を引き起こす。
【0104】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、エフェクタータンパク質を活性化させることができ、該細胞においてセカンドメッセンジャーレベルの変化に結果としてなる。GPCRの活性は、当該セカンドメッセンジャーの活性レベルを測定することで測定できる。細胞における2つの重要かつ有用なセカンドメッセンジャーは、サイクリックAMP(cAMP)及びCa2+である。活性レベルは、ELISA若しくは放射性技術によって又はCa2+と接触される場合に蛍光若しくは発光シグナルを生成する基質を使用することによって直接的に、あるいはリポータ遺伝子アッセイによって間接的に、当業者に周知の方法で測定できる。1以上のセカンドメッセンジャーの活性レベルは、典型的には、該セカンドメッセンジャーに応答するプロモータによって制御されるレポーター遺伝子で測定できる。この種の目的のために当業界で知られかつ使用されるプロモータは、細胞のサイクリックAMPレベルに応答性のサイクリックAMP応答性プロモータ、及び細胞の細胞質Ca2+レベルに感受性のNF-AT応答性プロモータである。レポーター遺伝子は、典型的には、容易に検出可能である遺伝子産物を有する。レポーター遺伝子は、宿主細胞において、安定的に感染できるか又は一過性にトランスフェクトできる。有用なレポーター遺伝子は、アルカリホスファターゼ、強化された緑色蛍光タンパク質、不安定にされた緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ及びβ-ガラクトシダーゼである。
【0105】
上記のように、ポリペプチドを発現している細胞が天然に該ポリペプチドを発現している細胞でもよいこと、又は該細胞が該ポリペプチドを発現するようにトランスフェクトされ得ることは理解すべきである。また、細胞には、ポリペプチドを過剰発現させるために形質導入することができ、又は該ポリペプチドの非内因性形態を発現するようにトランスフェクションすることができ、これを示差的にアッセイ又は評価できる。
【0106】
1つの具体的実施態様において、本発明の方法は、細胞の集団を該ポリペプチドのアゴニストと接触させるステップをさらに含む。これは、細胞の特定の選ばれた集団におけるポリペプチドの発現がその活性の適切な検出に対して過度に低い方法において有用である。アゴニストを使用することにより、該ポリペプチドを誘発でき、該化合物が該ポリペプチドを阻害する場合に適切な読み出しを可能にする。類似の考慮点は、骨吸収の測定に適用する。特定の実施態様において、本方法で使用する細胞は、哺乳類の滑膜線維芽細胞である。該線維芽細胞は、考察されるアッセイにおいて、活性化できる(例えばサイトカインによって)。
【0107】
骨吸収を阻害する化合物を同定する方法であって、
(a) 化合物を、配列番号41〜69及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド及びその断片と接触させること;及び、
(b) 骨吸収に関連する化合物-ポリペプチド特性を測定すること;
を含む前記方法。
【0108】
本発明の一実施態様において、骨吸収に関連する化合物-ポリペプチド特性は、結合親和性である。
【0109】
本発明の一実施態様において、骨吸収に関連する化合物-ポリペプチド特性は、骨吸収の阻害の生化学的マーカー指標を生じている生物学的経路の上方制御である。特に、一実施態様において、該化合物は、OPG活性又は発現を誘導するか又は上方制御する。
【0110】
本発明の一実施態様において、骨吸収に関連する化合物-ポリペプチド特性は、前記ポリペプチドの活性である。特に、一実施態様において、該化合物は、前記ポリペプチドの活性を阻害する。
【0111】
本発明の一実施態様において、骨吸収に関連する化合物-ポリペプチド特性は、前記ポリペプチドの発現である。特に、一実施態様において、該化合物は、前記ポリペプチドの発現を阻害する。
【0112】
更に、本発明は、骨吸収を阻害する化合物を同定する方法であって:
a) 化合物を、配列番号41〜69及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
b) 該化合物の該ポリペプチドに対する結合親和性を測定すること;
c) 前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の集団を、少なくとも10マイクロモル濃度の結合親和性を呈する化合物と接触させること;及び、
d) 骨吸収を阻害する化合物を同定すること;
を含む、前記方法に関する。
【0113】
更に、本発明は、骨吸収を阻害する化合物を同定する方法であって:
a)化合物を、配列番号41〜69及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
b) 該化合物の該ポリペプチドの発現又は活性を阻害する能力を測定すること;
c) 前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の集団を、該ポリペプチドの発現又は活性を著しく阻害する化合物と接触させること;及び、
d)骨吸収を阻害する化合物を同定すること;
を含む、前記方法に関する。
【0114】
特定の本発明の態様において、上記の方法は、試験される化合物をコントロールに対して比較する追加ステップを含み、該コントロールは、該試験化合物と接触させられなかった細胞の集団である。
【0115】
特定の本発明の態様において、上記の方法は、試験される化合物をコントロールに対して比較する追加ステップを含み、該コントロールは、前記ポリペプチドを発現しない細胞の集団である。
【0116】
本発明の方法は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)又は抗炎症化合物の存在下で、又はそれらの組合せで実施できる。細胞の集団は、異なる手段を介して、例えば培地中で直接インキュベーションすることによって、又は細胞への核酸移送によって、化合物又は化合物の混合物に曝露できる。このような移送は、多種多様な手段によって、例えば裸の単離されたDNA又はRNAの直接的なトランスフェクションによって、又は組換えベクターなどの送達システムによって、達成できる。リポソーム又は他の脂質に基づくベクターなどの他の送達手段を使用することもできる。特に、核酸化合物は、組換えウイルスなどの(組換え)ベクターにより送達される。
【0117】
ハイスループット目的のために、抗体断片ライブラリ、ペプチドファージディスプレイライブラリ、ペプチドライブラリ(例えば、LOPAP(商標)、Sigma Aldrich)、脂質ライブラリ(BioMol)、合成化合物ライブラリ(例えば、LOPAC(商標)、Sigma Aldrich;BioFocus DPI)又は天然化合物ライブラリ(Specs、TimTec)などの化合物のライブラリを使用できる。
【0118】
特定の薬剤候補化合物は、低分子量の化合物である。例えば500ダルトン以下の分子量を有する低分子量の化合物は、生体システムにおいて良好な吸収及び浸透性を有するようであり、従って500ダルトン超の分子量を有する化合物よりもより成功的な薬剤候補である可能性がある(Lipinskiらの文献、(1997))。ペプチドには、薬剤候補化合物の別の特定の種類を含む。ペプチドは優れた薬剤候補であり得、受胎能ホルモン類及び血小板凝集阻害剤などの商業的に有益な複数のペプチドの例がある。天然化合物は、薬剤候補化合物の別の特定の種類である。当該化合物は天然源において見出され及び抽出され、これらはその後、合成できる。該脂質は、薬剤候補化合物の別の特定の種類である。
【0119】
薬剤候補化合物の別の特定の種類は、抗体である。本発明は、TARGETに対して指示される抗体を提供する。これらの抗体は、内因的に産生されて細胞内でTARGETでき、又は組織に添加されて細胞外に存在するTARGETポリペプチドに結合できる。これらの抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。本発明には、キメラ抗体、単鎖抗体及びヒト化抗体、並びにFab断片及びFab発現ライブラリの製品及びFv断片及びFv発現ライブラリの産物を含む。別の実施態様において、化合物は、ナノボディ、すなわち天然存在型シングルドメイン抗体の最も小さな機能的断片でもよい(Cortez-Retamozoらの文献 2004)。
【0120】
ある実施態様において、ポリクローナル抗体が、本発明の実施において使用できる。当業者は、ポリクローナル抗体を調製する方法を知っている。ポリクローナル抗体は、哺乳類において、例えば、1以上の免疫剤、及び必要に応じてアジュバントの注入によって抗体産生できる。典型的には、免疫剤又はアジュバントは、哺乳類において、複数回の皮下又は腹膜内注入によって注入される。抗体は、完全なTARGETタンパク質若しくはポリペプチドに対して、又は細胞膜に埋め込まれているTARGETなどのTARGETタンパク質若しくはポリペプチドの断片、抱合体を含む誘導体、若しくは他のエピトープ、又はファージディスプレイライブラリーなどの抗体可変領域のライブラリーに対しても産生できる。
【0121】
免疫を受ける哺乳類において免疫原性であることが公知のタンパク質に免疫剤を抱合することは有用であり得る。この種の免疫原性タンパク質の例には、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、及び大豆トリプシン阻害剤を含むが、これに限定されるものではない。利用できるアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(一リン酸化リピドA、合成トレハロースジコリノマイコレート(dicorynomycolate))を含む。当業者は、過度の実験なく、免疫プロトコルを選択できる。
【0122】
いくつかの実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体でもよい。モノクローナル抗体は、当業界において周知の方法を使用して調製できる。本発明のモノクローナル抗体は、宿主を該抗体に対する免疫反応から回避させるために「ヒト化」できる。「ヒト化抗体」は、相補性決定領域(CDR)及び/又は軽鎖若しくは重鎖可変ドメインフレームワークの他の部分が非ヒト免疫グロブリンに由来するが、該分子の残りの部分は1以上のヒト免疫グロブリンに由来する。ヒト化抗体は、ドナー若しくはアクセプタの無修飾軽鎖又はキメラ軽鎖に会合したヒト化重鎖によって特徴づけられる抗体も含み、又はその逆もまた同じである。抗体のヒト化は、当業界において周知の方法により達成できる(例えば、Mark及びPadlan(1994)「第4章.モノクローナル抗体のヒト化」、実験薬学ハンドブック第113巻、Springer-Verlag, New Yorkを参照されたい。)。トランスジェニック動物は、ヒト化抗体を発現するために使用することができる。
【0123】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む公知技術の様々な技術を使用して産生できる(Hoogenboom及びWinterの文献(1991)J. Mol Biol. 227:381-8;Marksらの文献 (1991) 222:581-97)。Coleら及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる(Coleらの文献(1985)モノクローナル抗体及び癌治療「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss、77ページ;Boernerらの文献(1991). J. Immunol., 147(l):86-95)。
【0124】
単鎖抗体の生産における公知技術は、本発明のTARGETポリペプチド及びタンパク質に対する単鎖抗体を生産するのに適合し得る。該抗体は、一価の抗体でもよい。一価の抗体を調製する方法は周知技術である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖及び修飾された重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、一般に、重鎖架橋結合を予防するために、Fc領域における任意の点で短くされる。あるいは、関連するシステイン残基は、別のアミノ酸残基により置換されるか又は架橋結合を予防するように除去される。
【0125】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に、及び特に細胞表面タンパク質若しくは受容体若しくは受容体サブユニットに結合特異性を有する、特にヒトの又はヒト化されたモノクローナル抗体である。この場合、結合特性のうちの1つは、TARGETの1つのドメインに対するものであり、他の1つは、同じ又は異なるTARGETの別のドメインに対するものである。
【0126】
二重特異性抗体の製造方法は、公知技術である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づき、該2つの重鎖は、異なる特異性を有する(Milstein及びCuelloの文献, (1983) Nature 305:537-9)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな取り合わせ(random assortment)のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的混合物を生じ、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を備えている。親和性クロマトグラフィステップは、通常、正しい分子の精製を達成する。同様の手順は、Trauneekerらの文献(1991)EMBO J. 10:3655-9において開示されている。
【0127】
別の具体的実施態様によれば、本アッセイ方法は、TARGETに対する結合親和性を有するとして同定される薬剤候補化合物を使用し、及び/又は1以上のTARGETと比較してアンタゴニスト活性などの下方制御活性を有するとして既に同定されている。
【0128】
更に、本発明は、骨吸収を阻害する方法であって、哺乳動物細胞を、配列番号1〜29及び40からなる基から選択されるヌクレオチド配列、特に配列番号16、17、19〜21及び40からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むポリペプチドTARGET又はその部分をコードするヌクレオチド配列のうち少なくとも約15〜約30、特に少なくとも17〜約30、最も具体的には少なくとも17〜約25の連続するヌクレオチドを相補するポリリボヌクレオチド配列を含む発現阻害剤と接触させることを含む、前記方法に関する。
【0129】
本発明の別の態様は骨吸収を阻害する方法であって、哺乳動物細胞を、TARGETポリペプチドをコードしているポリリボヌクレオチドの細胞における翻訳を阻害する発現阻害剤と接触させることによることを含む、前記方法に関する。具体的実施態様は、該剤をTARGET mRNAに対形成させ、それによりTARGETポリペプチドの発現を下方調節又は遮断するのに機能する少なくとも1のアンチセンス鎖を含むポリヌクレオチドを含む組成物に関する。阻害剤は、特に、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)を含み、前記剤は、配列番号1〜29及び40からなる群から選択され、特に配列番号16、17、19〜21及び40からなる群から選択される天然存在型ポリヌクレオチド配列に相補的な、又は該配列から人為操作される核酸配列を含む。
【0130】
本発明の具体的実施態様は、発現阻害剤が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号41〜69及び80をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、並びにTARGETポリリボヌクレオチドのTARGETポリペプチドへの翻訳に干渉するように配列番号1〜29及び40、特に配列番号16、17、19〜21及び40からなる群から選択される配列番号に対応するポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同的である低分子干渉RNA(siRNA、特にshRNA)から選択される方法に関する。
【0131】
本発明の別の具体的実施態様は、発現阻害剤が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号1〜29及び40、特に配列番号16、17、19〜21及び40からなる群から選択される配列番号に対応するポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、TARGETポリリボヌクレオチドのTARGETポリペプチドへの翻訳に干渉するように配列番号1〜29及び40、特に配列番号16、17、19〜21及び40からなる群から選択される配列番号に対応するポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同的である低分子干渉RNA(siRNA、特にshRNA)を発現する核酸である方法に関する。特に発現阻害剤は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド又はsiRNA(特にshRNA)であって、配列番号1〜29及び40からなる群から選択されるヌクレオチド配列、特に配列番号16、17、19〜21及び40からなる群から選択されるヌクレオチド配列のうち少なくとも約17〜約30の連続するヌクレオチドを相補するポリリボヌクレオチド配列を含む。より具体的には、発現阻害剤は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド又はsiRNA(特にshRNA)であって、配列番号1〜29及び40からなる群から選択されるヌクレオチド配列、特に配列番号16、17、19〜21及び40からなる群から選択されるヌクレオチド配列のうち少なくとも15〜約30、特に少なくとも17〜約30、最も具体的には少なくとも17〜約25の連続するヌクレオチドを相補するポリリボヌクレオチド配列を含む。具体的実施態様には、配列番号81〜97及び107からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を相補するポリリボヌクレオチド配列を含む。具体的実施態様には、88、89、91、92及び107からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を相補するポリリボヌクレオチド配列を含む。
【0132】
アンチセンス核酸を使用する遺伝子発現の下方制御は、翻訳レベル又は転写レベルで成し遂げることが可能である。本発明のアンチセンス核酸は、特にTARGETポリペプチド又はその対応するメッセンジャーRNAをコードしている核酸の全部又は一部と特異的にハイブリダイズできる核酸断片である。加えて、その一次転写産物のスプライシングを阻害することによって、TARGETポリペプチドをコードすることができる核酸配列の発現を減少させるアンチセンス核酸を設計できる。TARGETをコードする核酸の発現を下方制御するか又は遮断できる限り、いかなる長さのアンチセンス配列も本発明の実施に適する。特に、アンチセンス配列は、少なくとも約15〜30ヌクレオチド長、及び特に少なくとも17ヌクレオチド長である。アンチセンス核酸、アンチセンスRNAをコードしているDNAの使用及び調製、並びにオリゴ及び遺伝子的アンチセンスの使用は公知技術である。
【0133】
発現阻害剤の一実施態様は、配列番号1〜29及び40、特に配列番号16、17、19〜21及び40を含む核酸に対するアンチセンスである核酸であり、例えば、アンチセンス核酸(例えばDNA)は、インビトロで細胞へと導入でき、又はインビボで配列番号1〜29及び40、特に配列番号16、17、19〜21及び40を含む核酸の細胞性発現を阻害するための遺伝子療法として対象に投与できる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約15〜約100ヌクレオチド、より具体的には約15〜約30ヌクレオチド、及び最も具体的には約17から〜約25ヌクレオチドを含む配列を含み得る。アンチセンス核酸は、配列番号1〜29及び40、特に配列番号16、17、19〜21及び40の配列から選択され、逆の方向で発現される約15〜約30の連続するヌクレオチドから調製できる。
【0134】
当業者は、TARGET及び/又はOPG発現の阻害に効果的なアンチセンス核酸及びオリゴヌクレオチドのための選択プロセスを促進しかつ単純化するためのいくつかの戦略のいずれかを容易に利用できる。mRNA分子におけるオリゴヌクレオチドと相補配列との間の結合エネルギーの予測又は熱力学的指数の計算が利用できる(Chiangらの文献(1991) J. Biol. Chem. 266:18162-18171;Stall らの文献 (1992) Nucl. Acids Res. 20:3501-3508)アンチセンスオリゴヌクレオチドは、二次構造を基礎として選択できる(Wickstromらの文献(1991) 癌及びAIDSのアンチセンス核酸療法の展望(Prospects for Antisense Nucleic Acid Therapy of Cancer and AIDS)中, Wickstrom編, Wiley-Liss, Inc., New York, 7-24頁;Limaらの文献(1992) Biochem. 31:12055-12061)。Schmidt及びThompson(米国特許6416,951)は、RNAをオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせること、並びに、挿入色素の存在下でハイブリダイズさせること若しくは標識を取り込ませること、及び非標識オリゴヌクレオチドの存在下における色素若しくは標識のシグナルの分光特性を測定することによりハイブリダイゼーションの反応速度をリアルタイムで測定することを含む、機能的アンチセンス剤の同定方法を記載する。加えて、例えば自己相補性の不存在、ヘアピンループの不存在、安定ホモ二量体の不存在及び二量体形成(kcal/molで予測されたエネルギーにより評価される安定性)を含む、当業者により認識される様々な基準を利用して適切なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列又はアンチセンス標的を予測する、様々なコンピュータプログラムのいずれかを利用できる。この種のコンピュータプログラムの例は、当業者に容易に利用でき、かつ知られており、OLIGO 4又はOLIGO 6プログラム(Molecular Biology Insights, Inc., Cascade, CO)並びにOligo Techプログラム(Oligo Therapeutics Inc., Wilsonville, OR)を含む。加えて、本発明において適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション条件下でオリゴヌクレオチドライブラリ又は核酸分子のライブラリをスクリーニングすること、及び標的RNA又は核酸にハイブリダイズするものについて選択することにより同定できる(例えば米国特許6,500,615を参照)。Mishra及びToulmeは、標的を結合するオリゴヌクレオチドの選択的増幅に基づいて、選択手順も開発した(Mishraらの文献(1994) Life Sciences 317:977-982)。オリゴヌクレオチドは、開裂断片の選択及び特徴描写によって、RNAse Hによる標的RNAの開裂を媒介するそれらの能力により選択することもできる(Hoらの文献(1996) Nucl Acids Res 24:1901-1907;Hoらの文献(1998) Nature Biotechnology 16:59-630)。RNA分子のGGGAのモチーフに対するオリゴヌクレオチドの生成及び標的化も記載されていた(米国特許6,277,981)。
【0135】
アンチセンス核酸は具体的にはオリゴヌクレオチドであり、完全にデオキシリボヌクレオチド、修飾されたデオキシリボヌクレオチド又は両方のある程度の組合せからなることができる。アンチセンス核酸は、合成オリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、必要に応じて、安定性及び/又は選択性を改善するために化学的に修飾できる。本発明について描かれるいくつかの特定のオリゴヌクレオチドの具体的実施態様には、例えば、修飾された骨格、例えばホスホロチオエート、リン酸トリエステル、メチルホスホン酸塩、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル糖間結合、又は短鎖ヘテロ原子若しくは複素環糖間結合を含むものを含む。オリゴヌクレオチドは細胞内ヌクレアーゼによって分解されやすいので、該修飾には、例えば、リン酸ジエステル結合の遊離酸素を置き換えるための硫黄基の使用を含むことができる。この修飾は、ホスホロチオエート結合と呼ばれている。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、水溶性、ポリ陰イオン性で、かつ内因性ヌクレアーゼに耐性である。加えて、ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドがそのTARGET部位にハイブリダイズする場合、RNA-DNA二本鎖は内因性酵素リボヌクレアーゼ(RNase)Hを活性化させ、これがハイブリッド分子のmRNA構成要素を切断する。オリゴヌクレオチドは、1以上の置換された糖部分を含むこともできる。特定のオリゴヌクレオチドは、2'位で以下のうちの1つを含む:OH、SH、SCH3、F、OCN、ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換されたシリル;RNA切断基;レポーター基;挿入物質(intercalator);オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基;又は、オリゴヌクレオチドの薬力学的特性及び類似の特性を有する他の置換を改善するための基。同様の修飾は、オリゴヌクレオチド上の別の部位、特に3'末端ヌクレオチド上の糖の3'位及び5'末端ヌクレオチドの5'位でなすこともできる。
【0136】
加えて、ホスホラミダイト及びポリアミド(ペプチド)結合を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成できる。これらの分子は、ヌクレアーゼ分解に非常に抵抗性であるべきである。さらにまた、化学基を糖部分の2'炭素及びピリミジンの5炭素(C-5)に加えて安定性を強化し、そのTARGET部位に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合を促進することができる。修飾は、2'-デオキシ、O-ペントキシ、O-プロポキシ、O-メトキシ、フルオロ、メトキシエトキシホスホロチオエート、修飾塩基、並びに当業者に周知の別の修飾を含むことができる。
【0137】
TARGETSのレベルを低下させる別の種類の発現阻害剤は、リボザイムである。リボザイムは、別々の触媒及び基質結合ドメインを有する触媒RNA分子(RNA酵素)である。基質結合配列は、ヌクレオチド相補性、及びおそらくはそのTARGET配列との非水素結合相互作用により化合される。触媒部分は、特定の部位でTARGET RNAを切断する。リボザイムの基質ドメインは、特定のmRNA配列にそれを方向付けるように設計できる。リボザイムは、相補的塩基対を介してTARGET mRNAを認識し、それから結合する。いったん正しいTARGET部位に結合すると、リボザイムは酵素的に作用してTARGET mRNAを切断する。リボザイムによるmRNAの開裂は、対応するポリペプチドの合成を指示するその能力を破壊する。いったんリボザイムがそのTARGET配列を切断すると、リボザイムは放出され、繰り返し他のmRNAに結合して切断することができる。
【0138】
リボザイム形態には、ハンマーヘッドモチーフ、ヘアピンモチーフ、デルタ型肝炎ウイルス、I型イントロン又はRNaseP RNA(RNAガイド配列を伴う)モチーフ又はアカパンカビ属(Neurospora)VS RNAモチーフを含む。ハンマーヘッド又はヘアピン構造を備えているリボザイムは、これらの触媒RNA分子が細胞内で真核生物プロモータから発現されることができるので、容易に調製される(Chenらの文献(1992) Nucleic Acids Res. 20:4581-9)。本発明のリボザイムは、真核生物細胞において適切なDNAベクターから発現できる。必要に応じて、リボザイムの活性は、第2のリボザイムによる、一次転写産物からのその放出により増大できる(Venturaらの文献(1993) Nucleic Acids Res 21:3249-55)。
【0139】
リボザイムは、オリゴデオキシリボヌクレオチドを、転写後にTARGET mRNAにハイブリダイズする配列に隣接するリボザイム触媒ドメイン(20ヌクレオチド)と組み合わせることによって、化学的に合成できる。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、プライマーとして基質結合配列を使用しすることにより増幅される。増幅産物は、真核生物発現ベクターにクローン化される。
【0140】
リボザイムは、DNA、RNA又はウイルスベクターに挿入される転写単位から発現される。リボザイム配列の転写は、真核生物RNAポリメラーゼIのためのプロモータから駆動される(pol(I)、RNAポリメラーゼII(pol II)又はRNAポリメラーゼIII(pol III)。pol II又はpol IIIプロモータからの転写産物は、全ての細胞において高レベルで発現され;所与の細胞種における所与のpol IIプロモータのレベルは、近くの遺伝子制御配列に依存する。原核生物RNAポリメラーゼ酵素が適切な細胞において発現されることを条件として、原核生物RNAポリメラーゼプロモータも使用される(Gao及びHuangの文献 (1993) Nucleic Acids Res. 21:2867-72)。これらのプロモータから発現されるリボザイムが哺乳動物細胞において機能できることが証明された(Kashani-Sabetらの文献(1992) Antisense Res. Dev. 2:3-15)。
【0141】
特定の阻害剤は、低分子干渉RNA(siRNA、特に低分子ヘアピンRNA「shRNA」)である。siRNA(特にshRNA)は、サイレンスRNA(silenced RNA)に対する配列に相同的な二重鎖RNA(dsRNA)によって、遺伝子サイレンシングの転写後プロセスを媒介する。本発明によるsiRNAは、配列番号1〜29及び40に記載される配列からなる群から選択される配列、特に配列番号16、17、19〜21及び40、具体的には配列番号81〜97及び107に記載される配列からなる群から選択される配列、最も具体的には配列番号88、89、91、92及び107に記載される配列の連続する17〜25ヌクレオチド配列に相補的な又は相同的な15〜30、特に17〜30、最も具体的には17〜25ヌクレオチドのセンス鎖、並びに、該センス鎖に相補的な15〜30、特に17〜30、最も具体的には17〜25ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含む。最も具体的なsiRNAは、互いに及びTARGETポリヌクレオチド配列に100%相補的であるセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む。特に、siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖を連結するループ領域をさらに含む。
【0142】
本発明による自己相補一本鎖shRNA分子ポリヌクレオチドには、ループ領域リンカーによって連結されるセンス部分及びアンチセンス部分を含む。特に、ループ領域配列は、4〜30ヌクレオチド長、より具体的には5〜15ヌクレオチド長、及び最も具体的には8又は12ヌクレオチド長である。最も具体的な実施態様において、リンカー配列は、UUGCUAUA又はGUUUGCUAUAAC(配列番号108) である。自己相補一本鎖siRNAはヘアピンループを形成し、通常のdsRNAより安定である。加えて、それらは、ベクターからより容易に産生される。
【0143】
アンチセンスRNAと同様に、siRNAは修飾して核酸分解に対する抵抗を与え、又は活性を強化し、又は細胞分布を強化し、又は細胞取り込みを強化することができ、この種の修飾は、修飾されたヌクレオシド間結合、修飾された核酸塩基、修飾された糖及び/又はsiRNAの1以上の部分若しくは抱合体に対する化学結合からなることができる。ヌクレオチド配列は、これらのsiRNA設計規則に従わないヌクレオチド配列と比較してTARGET配列の改善された減少を与えるsiRNA設計規則に従って選択できる(これらの規則に関する議論及びsiRNAの製剤の例については、WO 2004/094636及びUS 2003/0198627が引用により本明細書に組み込まれる。)。
【0144】
本発明は、骨吸収を阻害できるポリヌクレオチドを発現できるDNA発現ベクター及び発現阻害剤として本明細書に先に記載したDNA発現ベクターを含む組成物及び前記組成物を使用する方法にも関する。
【0145】
これらの組成物及び方法の特定の態様は、TARGETポリペプチドと選択的に相互作用できる細胞内結合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの誘導された発現による、TARGETポリペプチドの発現の下方制御又は遮断に関する。細胞内結合タンパク質は、それが発現され、ポリペプチドの機能を中和し又はさもなければ阻害するか遮断している細胞内で該ポリペプチドと選択的に相互作用し又は結合できるいかなるタンパク質も含む。特に、細胞内結合タンパク質は、配列番号41〜69及び80のTARGETポリペプチドのエピトープ、特に配列番号56、57、59〜61及び80のTARGETポリペプチドのエピトープに結合親和性を有する中和抗体又は中和抗体の断片である。より具体的には、細胞内結合タンパク質は単鎖抗体である。
【0146】
この組成物の具体的実施態様には、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号41〜69又は80、特に配列番号56、57、59〜61又は80をコードするポリリボヌクレオチドを開裂するリボザイム、並びに、siRNAがTARGETポリペプチドにTARGETポリリボヌクレオチドの翻訳に干渉するように、配列番号1〜29及び40、特に配列番号16、17、19〜21及び40に対応するポリリボヌクレオチドの一部に十分に相同性である低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される発現阻害剤を含む。
【0147】
発現阻害剤を発現するポリヌクレオチド、又は細胞内でTARGETポリペプチドを発現するポリヌクレオチドは、具体的にはベクターに含まれる。ポリ核酸は、該核酸配列の発現を可能にするシグナルに使用可能的に連結され、特に組換えベクター構築物を利用している細胞に導入され、いったんベクターが細胞に導入されると該構築物は該核酸又はアンチセンス核酸を発現する。様々なウイルスに基づく系が利用可能であり、該系には、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、単純疱疹ウイルス又はセンダイウイルスのベクター系を含む。全ては、TARGET細胞における発現阻害剤のためのポリヌクレオチド配列を導入し、発現させるために使用することができる。
【0148】
特に、本発明の方法で使用するウイルスベクターは、複製欠損体である。この種の複製欠損ベクターは、通常、感染細胞におけるウイルスの複製のために必要である少なくとも1つの領域を含む。これらの領域は、(全体又は一部)除去できるか、又は当業者に周知の任意の技術によっても非機能的にすることができる。これらの技術には、不可欠領域(複製について)への1以上の塩基の完全な除去、置換、部分的削除又は付加を含む。この種の技術は、遺伝子操作技術を使用して、又は突然変異誘導性薬剤での処理により、インビトロで(単離されたDNAで)、又はインサイチュウで実行できる。特に、複製欠損ウイルスはそのゲノムの配列を保持し、これはカプシド化、すなわちウイルス粒子のために必要である。
【0149】
特定の実施態様において、ウイルス性構成要素は、アデノウイルスに由来する。特に、ビヒクルには、アデノウイルスカプシド又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体にパッケージされるアデノウイルスベクターを含む。アデノウイルス生物学は、分子レベルでも比較的周知である。アデノウイルスベクターのための多くのツールが開発されかつ開発され続けており、それゆえアデノウイルスカプシドを本発明のライブラリに組み込むための特定のビヒクルとさせる。アデノウイルスは、多種多様な細胞に感染できる。しかしながら、異なるアデノウイルス血清型は、細胞に対し異なる優先傾向を有する。具体的実施態様において本発明のアデノウイルスカプシドが入ることができるTARGET細胞集団を混合し拡張するために、ビヒクルは、少なくとも2のアデノウイルスからのアデノウイルス線維タンパク質を含む。特定のアデノウイルス線維タンパク質配列は、血清型17、45及び51である。これらのキメラベクターの技術又は構築及び発現は、US2003/0180258及びUS2004/0071660において開示され、これらは引用により本明細書に組み込まれる。
【0150】
特定の実施態様において、アデノウイルスに由来する核酸には、アデノウイルス後期タンパク質又はその機能的部分、誘導体若しくは類似体をコードしている核酸を含む。アデノウイルス後期タンパク質、例えばアデノウイルス線維タンパク質を好ましく使用して、特定の細胞にビヒクルをTARGET化させることができ、又は該細胞への該ビヒクルの送達の強化を誘導することができる。特に、アデノウイルスに由来する核酸は、基本的に全てのアデノウイルス後期タンパク質をコードし、完全なアデノウイルスカプシド又はその機能的部分、類似体及び/又は誘導体の形成を可能にする。特に、アデノウイルスに由来する核酸は、アデノウイルスE2A又はその機能的部分、誘導体若しくは類似体をコードしている核酸を含む。特に、アデノウイルスに由来する核酸は、細胞において少なくとも部分的にアデノウイルス由来核酸の複製を促進する、少なくとも1のE4領域タンパク質又はその機能的部分、誘導体若しくは類似体をコードしている核酸を含む。この用途の例において使用するアデノウイルスベクターは、本治療方法発明に有用なベクターの典型である。
【0151】
本発明の特定の実施態様は、レトロウイルスベクター系を使用する。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する集積ウイルス(integrating virus)であり、それらの構造は当業界に公知である。レトロウイルスベクターは、異なる種類のレトロウイルス、例えば、MoMuLV(「モロニーマウス白血病ウイルス」MSV(「モロニーマウス肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハービー肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)及びフレンドウイルス)から構築できる。レンチウイルスベクター系を、本発明の実施に使用することもできる。レトロウイルス系及びヘルペスウイルス系は、神経細胞のトランスフェクションのための特異的ビヒクルであり得る。
【0152】
本発明の他の実施態様において、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)が利用される。AAVウイルスは、感染細胞のゲノムに、安定かつ特異的な様式で一体化する、比較的小さいサイズのDNAウイルスである。該ウイルスは、多種多様な細胞に、細胞増殖、形態又は分化に何ら影響を生じさせずに感染することができ、かつヒトの病状に関与していないようである。
【0153】
ベクター構築物において、本発明のポリヌクレオチド剤は、1以上の調節領域に連結できる。適切な制御領域又は領域の選択は、当業者のレベルの範囲内で、日常的事項である。制御領域は、プロモータを含み、かつエンハンサー、サプレッサーなどを含むことができる。
【0154】
本発明の発現ベクターにおいて使用できるプロモータは、構成的プロモータ及び制御(誘導可能)プロモータの両方を含む。プロモータは、宿主に応じて原核生物性又は真核生物性であり得る。原核生物(バクテリオファージを含む)プロモータのうち本発明の実施に有用なのは、lac、lacZ、T3、T7、ラムダPr、Pl及びtrpプロモータである。真核生物(ウイルスを含む)プロモータのうち本発明の実施に有用なのは、遍在プロモータ(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、中間径フィラメントプロモータ(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療的遺伝子プロモータ(例えば、MDRタイプ、CFTR、第VIII因子)、組織特異的プロモータ(例えば、平滑筋細胞のアクチンプロモータ、又は内皮細胞において活性なFlt及びFlkプロモータ)であり、動物の転写制御領域を含み、該プロモータは組織特異性を呈し、かつトランスジェニック動物において利用されている:膵臓腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftらの文献(1984) Cell 38:639-46;Ornitzらの文献(1986) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonaldの文献, (1987) Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahanの文献、(1985)Nature 315: 115-22)、リンパ系細胞において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの文献(1984) Cell 38:647-58;Adamesらの文献(1985) Nature 318:533-8;Alexanderらの文献(1987) Mol. Cell. Biol. 7:1436-44)、睾丸、乳房、リンパ系及びマスト細胞において活性なマウス乳癌ウイルス制御領域、(Lederらの文献(1986) Cell 45:485-95)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertらの文献(1987) Genes and Devel. 1:268-76)、肝臓において活性なα‐フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufらの文献(1985) Mol. Cell. Biol., 5:1639-48;Hammerらの文献(1987) Science 235:53-8)、肝臓において活性なアルファ1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyらの文献(1987) Genes and Devel., 1: 161-71)、骨髄細胞において活性なβグロビン遺伝子制御領域(Mogramらの文献(1985) Nature 315:338-40;Kolliasらの文献(1986) Cell 46:89-94)、脳におけるオリゴデンドロサイトにおいて活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadらの文献(1987) Cell 48:703-12)、骨格筋において活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Saniの文献, (1985) Nature 314.283-6)、及び、視床下部において活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonらの文献(1986) Science 234:1372-8)。
【0155】
本発明の実施において使用できる他のプロモータには、分裂細胞において優先して活性化されるプロモータ、刺激(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)に反応するプロモータ、テトラサイクリン制御性転写モジュレータ、サイトメガロウイルス最初期プロモータ、レトロウイルスLTRプロモータ、メタロチオネインプロモータ、SV-40プロモータ、E1aプロモータ、及びMLPプロモータを含む。
【0156】
さらなるベクター系には、患者へのポリヌクレオチド剤の導入を容易にする非ウイルス系を含み、例えば、所望の配列をコードしているDNAベクターをリポフェクションによりインビボで導入できる。リポソーム媒介型トランスフェクションによって遭遇する問題点を制限するように設計された合成カチオン脂質を使用して、マーカーをコードしている遺伝子のインビボトランスフェクションのためのリポソームを調製できる(Feignerらの文献(1987) Proc. Natl. Acad Sci. USA 84:7413-7);Mackeyらの文献 (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31;Ulmerらの文献(1993) Science 259:1745-8を参照されたい。)。カチオン脂質の使用は、負に帯電する核酸の封入を促進でき、負に帯電する細胞膜との融合も促進できる(Feigner及びRingoldの文献, (1989) Nature 337:387-8)核酸の移送のための特に有用な脂質化合物及び組成物は、国際出願公開WO 95/18863及びWO 96/17823において、並びに米国特許第5,459,127号において記載されている。インビボにおいて外因性遺伝子を特定の器官に導入するリポフェクションの使用は、特定の実際的利点があり、特定の細胞型にトランスフェクションを指示することは、細胞異質性を有する組織、例えば、膵臓、肝臓、腎臓及び脳において特に有利である。脂質は、標的化の目的で他の分子に化学的に連結できる。例えば、標的化されたペプチド(例えば、ホルモン類又は神経伝達物質)及びタンパク質(例えば抗体)又は非ペプチド分子は、化学的にリポソームに連結できるであろう。別の分子、例えば、陽イオンオリゴペプチド(例えば、国際出願公開WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、国際出願公開WO 96/25508)又は陽イオンポリマー(例えば、国際出願公開WO 95/21931)は、インビボにおいて、核酸のトランスフェクションを促進することに有用である。
【0157】
インビボでDNAベクターを裸のDNAプラスミドとして導入することも可能である(米国特許番号5,693,622;5,589,466;及び5,580,859を参照されたい。)。治療目的のための裸のDNAベクターは、当業界において周知の方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、顕微鏡下注射、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用、又はDNAベクター輸送体の使用により所望の宿主細胞に導入できる(例えば、Wilsonらの文献(1992) J. Biol. Chem. 267:963- 7;Wu及びWuの文献, (1988) J. Biol. Chem. 263:14621-4;1990年3月15日に出願されたHartmutらのカナダ国特許出願番号2,012,311;Williamsらの文献(1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30を参照されたい。)。受容体媒介型DNA送達法も使用できる(Curielらの文献(1992) Hum. Gene Ther. 3:147-54;Wu及びWuの文献, (1987) J. Biol. Chem. 262:4429-32)。
【0158】
本発明は、TARGET阻害剤として同定される1以上の化合物の有効量、及び/又は本明細書の先に記載した発現阻害剤を含む、生体適合性の骨吸収組成物も提供する。
【0159】
生体適合性組成物は、固体、液体、ゲル又は他の形態であってよい組成物であり、該組成物において本発明の化合物、ポリヌクレオチド、ベクター又は抗体は、活性型形態、例えば生物活性に影響を及ぼし得る形態で維持される。例えば、本発明の化合物は、TARGETにおけるインバースアゴニスト又はアンタゴニスト活性を有し;核酸は、複製し、メッセージを翻訳し、又はTARGETの相補mRNAにハイブリダイズすることができ;ベクターは、前述のようにTARGET細胞にトランスフェクトしてアンチセンス、抗体、リボザイム又はsiRNAを発現することが可能であり;抗体は、TARGETポリペプチド領域を結合する。
【0160】
特定の生体適合性組成物は、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液又はHEPES緩衝液を使用して緩衝化され、塩イオンを含む水溶液である。通常、塩イオンの濃度は、生理的レベルに近い。生体適合性溶液は、安定剤及び防腐剤を含み得る。より具体的な実施態様において、生物学的適合性組成物は、医薬として許容し得る組成物である。この種の組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、皮下、及び眼内経路による投与用に調製できる。非経口投与は、静注、筋内注射、動脈内注射又は注入技術を含むことを意味する。組成物は、要望に応じて標準的で周知の無毒の生理的に許容可能な担体、アジュバント、及びビヒクルを含む用量単位製剤で非経口的に投与できる。
【0161】
本組成物発明の具体的実施態様は、前述の発現阻害剤の治療上有効量を、医薬として許容し得る担体との混合物で含む、骨吸収阻害医薬組成物である。別の具体的実施態様は、骨吸収が関与する状態若しくはその状態への易罹患性の治療又は予防のための医薬組成物であって、有効な骨吸収阻害量のTARGETアンタゴニスト又はインバースアゴニスト、その医薬として許容し得る塩類、水和物、溶媒和物又はプロドラッグを医薬として許容し得る担体との混合物で含む、前記医薬組成物である。
【0162】
経口投与用の医薬組成物は、経口投与に適している投与量で、周知の医薬として許容し得る担体を使用して製剤化できる。この種の担体は、医薬組成物が、患者による摂取のために、錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化されることを可能にする。経口的使用のための医薬組成物は、活性化合物を固体の賦形剤と混合すること、結果として生じる混合物を任意に顆粒化すること、及び必要に応じて、適切な助剤を加えた後に顆粒混合物を加工して錠剤又は糖衣錠コアを得ることにより製造できる。適切な賦形剤は、炭水化物又はタンパク質充填剤であり、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ又は他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴム及びトラガカントゴムなどのゴム;及び、ゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質;などである。所望であれば、崩壊剤又は可溶化剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩を添加してもよい。糖衣錠コアは濃縮砂糖溶液などの適切なコーティングと併せて使うことができ、これはアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含むこともできる。染料又は色素は、製品識別のために、又は活性化合物の量(すなわち、投与量)を特徴づけるために、錠剤又は糖衣剤コーティングに添加できる。
【0163】
経口的に使用できる医薬製剤は、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティングからなる軟らかい密封カプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、ラクトース若しくはデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、及び任意に安定剤と混合した活性成分を含み得る。軟カプセルにおいて、活性化合物は、安定剤を伴い又は伴わずに、脂肪油、液体又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁できる。
【0164】
特定の無菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容し得る溶媒又は希釈剤中の溶液又は懸濁液であり得る。医薬として許容し得る担体の例は、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、等張性生理食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム又は塩化マグネシウム、又はこの種の塩類の混合物)、リンガー溶液、デキストロース、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組み合わせであり、1,3-ブタンジオール及び無菌の不揮発性油が溶媒として又は懸濁媒体として都合に合わせて利用される。合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油を利用できる。オレイン酸などの脂肪酸も、注射可能薬物の製造における使用を見出す。
【0165】
本発明の化合物又は組成物は、重合担体、生体分解性又は生体模倣のマトリクス又はスキャフォールド(scaffold)での投与用に組合せることができ又はその中に埋め込むことができる。担体、マトリクス又はスキャフォールドは、組成物が組み込まれかつ発現することを可能にし、細胞の追加によって又は細胞の存在下で適合性のいかなる材料でもよい。特に、担体マトリクス又はスキャフォールドは優性的に非免疫原性で、かつ生体分解性である。生体分解性物質の例には、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ヒアルロン酸、腸線縫合糸材料、ゼラチン、セルロース、ニトロセルロース、コラーゲン、アルブミン、フィブリン、アルギン酸塩、綿、又は他の天然存在型生体分解性材料が挙げられるが、これらに限定されない。投与又は移植の前に、例えば、酸化エチレンで処理することによって、又は電子線でのγ照射又は照射によって、マトリクス又はスキャフォールド材料を殺菌することが好ましい場合がある。加えて、多くの他の材料は、スキャフォールド又はフレームワーク構造を形成するために使用することができ、以下を含むが、これに限定されるものではない:ナイロン(ポリアミド類)、ダクロン(ポリエステル類)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル化合物(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリカーボネート(PVC)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE、テフロン)、サーマノックス(thermanox)(TPX)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)及びポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)などのヒドロキシ酸のポリマー、ポリオルトエステル類、ポリ無水物、ポリホスファゼン類、及び様々なポリヒドロキシアルカノエート、並びにこれらの組み合わせ。適切なマトリクスには、重合メッシュ又はスポンジ及び重合ヒドロゲルを含む。具体的実施態様において、マトリクスは、1年未満、より具体的には6ヵ月未満、最も具体的には2〜10週の期間に渡って生体分解性である。ポリマー組成物、並びに製造方法は、分解速度を決定するために使用することができる。例えば、増加量のポリ乳酸とポリグリコール酸とを混合することは、分解時間を減少させる。使用できるポリグリコール酸のメッシュは、例えば外科用品会社(例えば、Ethicon、N.J)から、商業的に得ることができる。一般に、これらのポリマーは、水、緩衝塩溶液又は水性アルコール溶液などの、帯電側鎖又はその一価のイオン塩を有する水溶液に少なくとも部分的に溶解性である。
【0166】
組成物媒体はヒドロゲルでもあり得、これは、薬剤吸収スポンジとして作用できる親水性ポリアクリル酸ポリマーなどの任意の生物学的適合性若しくは非細胞傷害性ホモポリマー又はヘテロポリマーから調製される。特定のヒドロゲル、特に、エチレン又は酸化プロピレンから得られるものなどは市販されている。ヒドロゲルは、例えば外科的介入の間、治療される組織の表面上に直接的に堆積できる。
【0167】
本発明の医薬組成物の実施態様には、本発明の作用物質をコードする複製欠損組換えウイルスベクター、及びポロクサマーなどのトランスフェクションエンハンサーを含む。ポロクサマーの例はPoloxamer 407であり、これは市販されており(BASF、Parsippany、N.J.)、無毒性の生体適合性ポリオールである。組換えウイルスを含浸されたポロクサマーは、例えば外科的介入の間、治療される組織の表面に直接的に堆積することができる。ポロクサマーは、基本的に、ヒドロゲル同じ効果を有すると同時に、より低い粘性を有する。
【0168】
活性薬剤は、例えば、界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン微小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンにより調製されるマイクロカプセルに取り込むこともできる。当該技術は、レミントンの薬学(1980)第16版、Osol、A編に開示されている。
【0169】
徐放製剤を調製できる。徐放製剤の適切な例には、抗体を含んでいる固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、該マトリクスは、成形物品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタミン酸塩の共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解可能な乳酸-グリコール酸共重合体(例えばLUPRON DEPOT(商標))(乳酸-グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能な微小球体)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーが100日超の間、分子の放出を可能にする一方、特定のヒドロゲルはより短時間の間タンパク質を放出する。カプセル化された抗体が長期間該本体のままの場合、それらは37℃で水分に曝される結果として変性又は凝集する可能性があり、生物活性の損失及び免疫原性の変化の可能性を生じる。関与する機構に応じて、安定化のための合理的な戦略が考案できる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を介する分子間S-S結合形成であることを発見される場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾することにより、酸性溶液から凍結乾燥することにより、含水量を制御することにより、適切な添加物を使用することにより、及び特定のポリマーマトリクス組成物を開発することにより成し遂げることが可能である。
【0170】
先に定義したように、治療的に有効な用量は、化合物、作用物質、タンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はその抗体、アゴニスト若しくはアンタゴニストのその量を意味し、該用量は、ある状態又はその1以上の症状を改善する。この種の化合物の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な医薬的手順、例えばED50(集団の50%に治療的に有効な用量)及びLD50(集団の50%に致命的な用量)により測定できる。治療効果に対する毒性の用量比は治療指数であり、これは比率LD50/ED50として表現できる。大きな治療指数を示す医薬組成物は特異的である。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータが、ヒト使用のための投与量の範囲を策定する際に使用される。この種の化合物の用量は、具体的には、ほとんど又は全く毒性を含まないED50を含む循環濃度の範囲の中にある。投与量は、利用される剤形、患者の感受性及び投与経路により、この範囲の中で変化する。
【0171】
任意の化合物について、治療的有効量は、細胞培養アッセイにおいて、又は動物モデル、通常ではマウス、ウサギ、イヌ若しくはブタのいずれかで最初に推定できる。また、動物モデルを使用して、望ましい濃度範囲及び投与経路を達成できる。それから、当該情報を使用して、ヒトでの投与について有用な用量及び経路を決定することができる。正確な投与量は、治療される患者からみて、個々の医師によって選ばれる。投与量及び投与は、十分なレベルの活性成分を提供するか又は所望の効果を維持するように調節される。考慮できる更なる因子には、患者の疾患状態の重篤性、年齢、体重及び性別;食事、治療の所望の継続、投与方法、時間及び投与頻度、薬の組合せ、反応感受性及び療法への許容度/反応を含む。長時間作用する医薬組成物は、具体的製剤の半減期及びクリアランス速度に応じて、3〜4日毎に、毎週又は2週に1回投与できる。
【0172】
本発明による医薬組成物は、様々な方法によって、対象に投与できる。該医薬組成物は、標的とされた組織に直接的に添加でき、カチオン脂質と複合体を形成でき、リポソーム内に梱包でき、又は、公知技術の他の方法によって標的細胞に送達できる。所望の組織に対する局所的な投与は、直接注入、経皮吸収、カテーテル、注入ポンプ又はステントによってなし得る。DNA、DNA/ビヒクル複合体、又は組換えウイルス粒子は、治療部位に、局所的に投与される。送達の代替的経路には、静注、筋内注射、皮下注入、エアロゾル吸入、経口送達(錠剤又はピル形態)、局所送達、全身送達、眼送達、腹膜内送達及び/又はクモ膜下腔内送達を含むが、これに限定されるものではない。リボザイム送達及び投与の例は、Sullivanらの文献WO 94/02595に提供されている。
【0173】
本発明による抗体は、大量瞬時投与のみとして送達でき、長期注入でき、又は大量瞬時投与として投与できかつ長期注入できる。当業者は、タンパク質についてよりも、ポリヌクレオチドについて異なる製剤を利用できる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、具体的な細胞、条件、位置などに特有である。
【0174】
先に記載したように、組換えウイルスを使用して、本発明に有用なポリヌクレオチド剤をコードしているDNAを導入することができる。本発明による組換えウイルスは、通常、約104〜約1014pfuの用量の形態で製剤化され、投与される。AAV及びアデノウイルスの場合、約106〜約1011pfuの用量が特に使用される。用語pfu(「プラーク形成単位」)は、ビリオンの懸濁液の感染力に対応し、適切な細胞培養に感染すること、及びプラーク形成数を測定することにより決定される。ウイルス溶液のpfu力価を測定する技術は、従来技術で十分に文書化されている。
【0175】
本発明はまた、骨又は関節劣化を阻害する方法であって、骨又は関節劣化が関与する疾患状態に苦しんでいる対象に、本明細書に記載されている骨又は関節劣化を阻害する医薬組成物を、特に本発明の発現阻害剤の治療上有効量で投与することを含む、前記方法を提供する。本発明は更に、骨折の数又有病率を減少させる方法であって、骨又は関節劣化が関与する疾患状態に苦しんでいる対象に、本明細書に記載されている骨又は関節劣化を阻害する医薬組成物を、特に本発明の発現阻害剤の治療上有効量で投与することを含む、前記方法を提供する。骨吸収が関与する疾患には、骨粗鬆症、若年性骨粗鬆症、骨形成不全症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症(osteomalacia)、骨軟化症(osteohalisteresis)、溶骨性骨疾患、骨壊死、骨のパジェット病、関節リウマチによる骨損失、炎症性関節炎、骨髄炎、副腎皮質ステロイド治療、転移性骨疾患、歯周骨損失、癌による骨損失、骨量の年齢関連性の損失、骨減少症の他の形態を含む。本発明による治療についてのより特定の疾患は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、初期の関節炎、反応性関節炎、骨関節炎、強直性脊椎炎などの変形性関節症である。本方法による治療について最も具体的な変形性関節症は、関節リウマチである。
【0176】
本発明はまた、骨又は関節劣化を阻害する方法であって、骨又は関節劣化が関与する疾患状態に苦しんでいる対象に、本明細書に記載されている骨吸収阻害医薬組成物を、特に本明細書において同定されるTARGETの発現又は活性化を阻害する作用物質の治療上有効量で投与することを含む、前記方法を提供する。骨又は関節劣化が関与する疾患には、骨粗鬆症、若年性骨粗鬆症、骨形成不全症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症(osteomalacia)、骨軟化症(osteohalisteresis)、溶骨性骨疾患、骨壊死、骨のパジェット病、関節リウマチによる骨損失、炎症性関節炎、骨髄炎、副腎皮質ステロイド治療、転移性骨疾患、歯周骨損失、癌による骨損失、骨量の年齢関連性の損失、骨減少症の他の形態を含む。本発明による治療についてのより特定の疾患は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、初期の関節炎、反応性関節炎、骨関節炎、強直性脊椎炎などの変形性関節症である。本方法による治療について最も具体的な変形性関節症は、関節リウマチである。
【0177】
更なる態様において、本発明は、骨又は関節劣化を阻害する方法であって、骨又は関節劣化が関与する疾患状態に苦しんでいる対象に、本明細書に記載されている骨吸収阻害医薬組成物を、特に抗リウマチ薬(DMARD)又は抗炎症化合物と組み合わせて本明細書において同定されるTARGETの発現又は活性化を阻害する作用物質の治療上有効量で投与することを含む、前記方法を提供する。骨又は関節劣化が関与する疾患には、骨粗鬆症、若年性骨粗鬆症、骨形成不全症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症(osteomalacia)、骨軟化症(osteohalisteresis)、溶骨性骨疾患、骨壊死、骨のパジェット病、関節リウマチによる骨損失、炎症性関節炎、骨髄炎、副腎皮質ステロイド治療、転移性骨疾患、歯周骨損失、癌による骨損失、骨量の年齢関連性の損失、骨減少症の他の形態を含む。特定の抗炎症化合物には、副腎皮質ステロイド又は非ステロイド性の抗炎症性薬剤を含む。特定のDMARDには、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、リツキシマブ若しくはCTLA4-Igなどの生物学的DMARD、又はメトトレキサート、レフルノミド又はスルファサラジンなどの合成DMARDを含む。本発明による治療についてのより特定の疾患は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、初期の関節炎、反応性関節炎、骨関節炎、強直性脊椎炎などの変形性関節症である。本方法による治療について最も具体的な変形性関節症は、関節リウマチである。
【0178】
対象患者に対する本発明の発現阻害剤の投与は、自己投与及び別の人による投与の両方を含む。患者は、既存の疾患又は医学的状態のための治療を必要としてもよいか、又は骨代謝の障害に影響を受ける疾患及び医学的状態のためのリスクを予防若しくは低下させる予防治療を望んでもよい。本発明の発現阻害剤は、対象患者に、経口的に、経皮的に、吸入、注入を介して、経鼻的に、直腸的に、又は徐放製剤を介して送達できる。
【0179】
本方法の特定の療法は、骨代謝の障害によって特徴づけられる疾患状態に苦しんでいる対象に、本発明の発現阻害剤の有効な骨吸収阻害量を、該患者における異常なレベルの骨吸収を減少させるのに十分な時間、特に前記吸収に関与する自己永続化プロセスを終結させるのに十分な時間投与することを含む。本方法の具体的実施態様には、本発明の発現阻害剤の有効なOPG誘導量を、関節リウマチの進行に苦しんでいる若しくは感受性である対象患者に、前記患者の関節における骨再吸収をそれぞれ減少させ又は予防するのに十分な時間、特に前記吸収に関与する自己永続化プロセスを終結させるのに十分な時間投与することを含む。
【0180】
また本発明は、骨吸収が関与する疾患を治療し又は予防するための医薬の製造のための上記作用物質の使用に関する。具体的には、病的状態は、関節炎である。より具体的には、病的状態は、関節リウマチである。
【0181】
本明細書に記載されている本発明の実施に有用なポリペプチド及びポリヌクレオチドは、溶液において遊離し、固相支持体に固定され、細胞表面に支持され、又は細胞内に位置することができる。本方法を実行するために、TARGETポリペプチド又は化合物のいずれかを固定して、非複合体化形態のポリペプチドからの複合体の分離を促進すること、並びに本アッセイの自動化に適応させることは、実現可能である。TARGETポリペプチドの化合物との相互作用(例えば、結合)は、反応物を含むのに適しているいかなる容器においても達成できる。当該容器の例には、マイクロタイタプレート、試験管及びマイクロ遠心管を含む。一実施態様において、ポリペプチドがマトリクスに結合することを可能にするドメインを付加された融合タンパク質を提供できる。例えば、TARGETポリペプチドは、「His」タグ化され、その後Ni-NTAマイクロタイタプレート上へ吸着されることができ、又は、TARGETポリペプチドを有するProtA融合体をIgGに吸着させ、これをそれから(例えば、35S標識された)細胞可溶化液及び候補化合物と混合し、該混合物を複合体形成に適した条件下(例えば、塩及びpHにつき生理的条件)でインキュベートできる。インキュベーション後、プレートを洗浄して全ての結合していない標識を除去し、マトリクスを固定する。放射能の量は、直接的に測定できるか又は複合体解離後の上清で測定できる。あるいは、複合体はマトリクスから解離でき、SDS-PAGEによって分離され、TARGETタンパク質に結合するタンパク質のレベルが標準電気泳動的な技術を使用してゲルから定量化される。
【0182】
マトリクス上のタンパク質を固定する他の技術は、化合物を同定する方法にも使用できる。例えば、TARGET又は化合物は、ビオチン及びストレプトアビジンの結合を利用して固定できる。ビオチン化されたTARGETタンパク質分子は、周知技術を使用してビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製でき(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, III.)、ストレプトアビジンコートした96ウエルプレート(Pierce Chemical)のウエルに固定できる。あるいは、TARGETSに反応性であるが、TARGETの化合物への結合には干渉しない抗体をプレートのウエルに誘導体化し、TARGETを抗体抱合体によってウエルに捕捉することができる。上述のように、標識化された候補化合物の調製物を、TARGETSを表すプレートのウエルでインキュベートし、該ウエルに捕捉された複合体の量を数量化できる。
【0183】
TARGETポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドは、配列番号1〜29及び40として同定される。本発明者は、これらの遺伝子を標的とするAd-siRNAでの哺乳動物細胞のトランスフェクションが、破骨細胞分化及び骨吸収を促進する因子の放出を減少させることを本明細書において示す。
【0184】
本発明は、骨吸収が関与する病的状態の診断のための方法であって、配列番号1〜29及び40、特に配列番号16、17、19〜21及び40の遺伝子のうち少なくとも1つの核酸配列を、対象のゲノムDNAにおいて測定すること;該配列をデータベース及び/又は健常対象から得られる核酸配列と比較すること;及び、該病的状態の開始に関連する任意の違いを同定すること;を含む、前記方法に関する。
【0185】
本発明の更に別の態様は、対象における骨吸収が関与する病的状態又は該状態に対する感受性を診断するための方法であって、生体サンプル中の配列番号41〜69及び80、特に配列番号56、57、59〜61及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの量を測定すること、並びに、該量を健常対象におけるポリペプチドの量と比較することであって、健常対象に比較したポリペプチドの量の増加が該病的状態の存在の指標である前記比較を含む、前記方法に関する。
【0186】
本発明は、以下の図面及び実施例において更に実証される。
【実施例】
【0187】
序文にて説明したように、OPGは、関節炎及び骨粗鬆症の文献において、破骨細胞の分化及び活性の制御、従って骨の維持に関与する重要な因子の1つとして同定されている。現在の骨保護療法は、関節リウマチにおいて効力の欠如を示す。RANKLの増加した濃度は、滑膜線維芽細胞及びT細胞から生じ、RA患者の関節において観察されている。これは、分化及び破骨細胞(OC)の活性の増加をもたらすと考えられる。これらの観察に基づき、RA患者に由来する初代ヒト滑膜線維芽細胞(RASF)におけるOPGの発現を調節する因子を同定するための機能的な遺伝学的努力を開始することが決定された。配列されたアデノウイルスshRNA(低分子ヘアピンRNA)発現ライブラリ(その生産及び使用は、WO99/64582に記載されている)と組み合わせて使用される場合、以下のアッセイは、OPGを産生する滑膜線維芽細胞(SF)の能力を調節する因子の発見に有用である。候補因子は、はじめに一次アッセイ(更に「OPGアッセイ」ともいう。)を介して選別され、それに二次アッセイが続く。これらの因子は、関節リウマチ(骨粗鬆症)における骨の保護、維持又は安定化のための新規な治療法の開発の根拠として使うことができ、癌細胞の骨への転移を減少させるためにも使用できる。
【0188】
実施例1は、オステオプロテゲリン(OPG)のタンパク質レベルの検出のためのELISAを使用するアデノウイルスsiRNAライブラリの一次アッセイ選別の開発及び設定を記載し、本明細書において「OPGアッセイ」という。
【0189】
実施例2は、スクリーニング及びその結果を記載する。
【0190】
実施例3は、3つのMOIでの再選別の手順を記載する。
【0191】
実施例4は、OC-RASF共培養アッセイという、二次アッセイの設定を記載する。
【0192】
実施例5は、OC-RASF共培養アッセイにおけるOPGヒットの検証を記載する。
【0193】
実施例6は、RASFにおける標的遺伝子の内因性発現レベルの測定を記載する。
【0194】
実施例7は、独立のAd5-siRNAでのOPGの上方制御の同定を記載する。
【0195】
実施例8は、TARGETSの抗炎症効果の決定を記載する。
【0196】
実施例9は、破骨細胞分化のAd-siRNA媒介型阻害のOPG依存性を記載する。
【0197】
(実施例1)RASFによるOPG発現の制御因子の同定のためのハイスループットスクリーニング法の設計及び設定
SilenceSelect(登録商標)コレクションのスクリーニングのために開発されたOPGアッセイは、以下の弁別的特徴を有する:
1)本アッセイは、初代ヒト滑膜線維芽細胞で実行されるが、最小限の適応化を伴って初代細胞の任意の他の供給源、又はOPG発現に感受性の細胞株にさえも使用できる。
2)本アッセイは、機能的な遺伝学的目的のために配列されたアデノウイルスコレクションを用いる利用のために最適化されている。
3)最小限の適応化を伴い、本アッセイを使用して、化合物又は合成コレクションを選別することも使用できる。
4)本アッセイは、ハイスループットモードで実行できる。
【0198】
OPG ELISAのプロトコルは、後述する。このプロトコルは、様々な抗体及び様々なプロトコルの試験結果である:
【0199】
解析するRA患者(RASF培養物)に由来する初代ヒト滑膜線維芽細胞の培養物の上清を希釈緩衝液(1×PBS + 0.1%のBSA)で8倍希釈し、35μLを予めコートしたELISAプレートに移す。このプレートのコーティングは、以下の通りに実施する:捕捉抗体(抗ヒトオステオプロテゲリン精製マウスモノクローナルIgG2A(クローン69127.1)、R&D systems、カタログ番号MAB8051、500μg/mL)をPBSでlμg/mLに希釈する。この希釈剤の40μlをウエルごとに添加し、一晩培養を4℃で実施する。その翌日(2日目)、プレートをPBST(0.5%Tween含有1×PBS)で1回、及び1×PBS(GIBCO)で1回洗浄する。洗浄後、プレートを1OOμLのブロッキング緩衝液(1%BSA、5%スクロース、0.05%NaN3)で4時間ブロッキングする。別の洗浄ステップはPBSTにより実施し、検出抗体混合物(50ng/mL)をそれからプレートに添加する。この検出混合物は、以下の検出抗体を含有する:PBS+1%BSAで希釈したビオチン化hOPG親和性精製ヤギIgG(R&D systemsカタログ番号BAF805)。プレートはそれから暗条件に2時間置き、このインキュベーション時間後、2つの洗浄工程、すなわちPBSTでの第1工程、及びPBSでの第2工程を実施する。全てのウエルに、35μLのストレプトアビジン-HRP抱合体(BioSource カタログ番号SN2004)を添加する。この抱合体は、添加前に、1% BSAを補充した1×PBSで1/3000に希釈する。45分のインキュベーション工程後、2つの洗浄工程、すなわちPBSTでの第1工程、及びPBSでの第2工程を実施する。それからPBSを除去し、50μLのPOD化学発光基質(ルミノール(POD Roche, 1582950)をプレートに添加する。暗条件下での5分のインキュベーション後、読み取りをLumiAscent照度計(Labsystems)、PMTデフォルト電圧、100ミリ秒読み時間で実施する。
【0200】
コントロールプレートの性能の実施例を図2に示す。組換えOPG(R&D カタログ番号85-05-025)は、希釈緩衝液(PBS+0.1%BSA)で25μg/mLから8ng/mLに希釈する。その後、2倍の希釈液、及び希釈緩衝液でも検量線になるように作成する。それからサンプルを、上記のプロトコルに従いOPG ELISAで試験する。検出されるシグナルの用量依存的増加は、開発したアッセイの質を示す。
【0201】
(実施例2)OPGアッセイでの11330の「Ad-siRNA」スクリーニング
その開発が実施例1に記載されているOPGアッセイは、RA患者に由来する初代ヒト滑膜線維芽細胞(RASF)におけるshRNAの発現を媒介する11330の異なる組換えアデノウイルスのアレイコレクションに対してスクリーニングされた。これらのshRNAは、RNA干渉(RNAi)として公知の機構により、相同配列を含む遺伝子の発現レベルにおける減少を引き起こす。アレイコレクションに含まれる11330のAd-siRNAは、5046の異なる転写産物を標的とする。平均して、全ての転写産物は、2〜3の独立Ad-siRNAによって標的化される。スクリーニングの原理を図3に図示する。手短に言えば、滑膜線維芽細胞(SF)を384枚のウエルプレートにまき、まいた翌日にアレイshRNAライブラリで感染させ、これにより、各ウエルは、1つの個々のAd-siRNAに感染する。感染の5日後に、細胞上の培地を交換し、細胞をさらに2日培養に供する。2日後に、上清を回収し、OPG ELISAに供する。
【0202】
RASF(継代1)は、Cell Applications社から得られ、10%胎児のウシ血清(HyClone)、100単位/mlのペニシリン(Invitrogen)及び100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen)を補充したDMEM培地(Invitrogen)で培養し、継代6まで37℃及び10%CO2でインキュベートした。細胞は、典型的には、週一回、1/3分割で継代する。継代6で、液体窒素に格納される「マスター細胞ストック」を生成する。このマスターストックからの細胞は、完全なスクリーニングのために使用される。細胞ストックが解凍される場合、細胞を二次培養し、継代10〜12の間に実験のために使用する。
【0203】
スクリーニングのために、RASFは、0.1%ゼラチン(Merck)で被覆されている透明な384枚のウエルプレート(Greiner)中、1000細胞/ウエルの密度で、50μL Synovial Cell生育培地(Cell Applications社)中にまく。播種の翌日、384ウエルプレートに保存したSilenceSelect(登録商標)コレクション(WO 03/020931)の各ウエルからのAd-siRNAウイルス2.5μL(mL当たり2.5×109ウイルス粒子の推定力価)を、96/384チャネルディスペンサ(TeMO96、TeMO384及びRoMaを備えているTecan Freedom 200、Tecan AG, Switzerland)を用いて、SFを含む384ウエルプレートの個々のウエルに移す。感染の5日後に、培地をVacuSafe装置(Integra)で除去し、80μLのaMEM(Invitrogen)+ 10%FBS(HI)+ Pen/Strep培地をMultidropによりウエルに添加する。2日の培養後、上清を384ウエルプレート(Greiner)において回収し、OPG ELISA(実施例1に記載される)でのさらなる処理まで-80℃で保存した。アッセイについて、8.57μLの上清を60μLの希釈緩衝液(1×PBS + 1%(w/v)BSA)で満たされた384-ウエルに移すことで作成された35μLの8倍希釈液をOPG ELISAに供する。ELISAプレートへの希釈及び移行は、TECAN Freedomワークステーションで実行する。
【0204】
384ウエルコントロールプレートを作成して各アッセイの品質を評価する。コントロールプレートは、異なるスクリーニング実行の間、SilenceSelect(登録商標)コレクションからアリコートプレートとして並列にかつ同条件下で実行する。このプレートの組成は、図4(上方パネル)に示す。コントロールプレートは、SilenceSelect(登録商標)アデノウイルスコレクションと同じ条件下で作成したコントロールウイルスを含む。該ウイルスには、3セットのネガティブコントロールウイルス(N1(Ad5-eGFP_vl_KI)、N2(Ad5-Luc_v13_KD)、N3(Ad5-eGFP_v5_KD)を含み、対角線に配列され、陽コントロールウイルスによって仕切られている(P1=P3=P3(Ad5-OPG_vl_KI)、Bl:ブランク(非感染))。コントロールプレートの全てのウエルは、50μLのウイルス粗溶解物を含む。このコントロールプレートの複数のアリコートを作成し、-80℃で保存する。上記のスクリーニングプロトコルで試験されるコントロールプレートの配置及び性能の代表例を図4(下方パネル)に示す。この図において、コントロールプレートの配置(上方パネル)を示し、プレート上の全ての組換えアデノウイルスについてアッセイを実施して検出される生のOPGシグナルを下方パネルに示す。OPGレベルについての値がカットオフ値(ネガティブコントロールの標準偏差の2.6倍超として定義)を超える場合、該表のフィールドにおける書式は黒背景、白文字である。
【0205】
完全なSilenceSelect(登録商標)コレクション(5046の転写産物を標的化する11330のAd-siRNA(30の384ウエルプレートに含まれる))は、2相で、上記のプロトコルに従い、OPGアッセイにおいてスクリーニングする。第1のスクリーニングラウンド(選別A)において、7枚のウイルスライブラリプレートを1回ずつスクリーニング及び再スクリーニングし、Ad-siRNAごとに2つのデータ点を結果的に生じる。第2のスクリーニングラウンド(選別B)において、残りの23枚のウイルスライブラリプレートを、一次再選別及び独立再選別の両方において独立のアッセイプレート上の複製物でスクリーニングする。このように、4つのデータ点がそれゆえ、選別BにおいてAd-siRNAごとに得られる。Ad-siRNAウイルスは、データ点の半分が閾値を超える得点の場合、一次ヒットとして推薦される。選別A及び選別Bの閾値設定は、プレートにつき全てのデータ点の平均、及びプレートにつき全てのデータ点の標準偏差の2.6倍超で設定する。閾値を上回って得点した合計271のヒット(選別A中80及び選別B中193)を分離した。
【0206】
図5に、OPGアッセイにおいてSilenceSelect(登録商標)コレクションのスクリーニングで得られた全てのデータ点を示す。一次選別(PS)における複製サンプルから得られる平均化された相対的発光データを、再選別(DS)において得られた対応するAd-siRNAについての平均化された相対的発光データに対してプロットする。閾値(2.6倍の標準偏差)を点線により示す。最も特定の標的についてのデータは黒円として示し、ヒットとして推薦されたAd-siRNAのデータを黒三角形として示し、ヒットでないAd-siRNAのデータを×印として示す。一次選別のデータと再選別(データ点は直線周辺に密集する)データとの間に観察される強い左右対称は、スクリーニングの品質及び再現性を示す。全ての標的についての一次選別において得られた相対的なOPG発現レベルを、発現した「プレート平均を上回る標準偏差倍数」の用語で表現し、下記の表3に収載する。
【0207】
【表3】

【0208】
この一次選別において特定の標的が得られ、これらは、独立に設計されかつ無関係の選別における関節リウマチ(RA)及び/又は骨粗鬆症(OP)において以前に同定されていた。これは、RA/OP標的としてこれらのポリペプチドを同定するのに役立ち、本明細書において利用される選別の精度及び関連性を実証する。これらの標的は、ヒットH51〜103、H51〜119、H51〜145、H51〜153、H51〜177、H51〜183、H51〜206、H51〜251及びH51〜270に関する。それらの核酸配列は配列番号30〜39で与えられ、かつそれらのアミノ酸配列は配列番号70〜79であり、それらの適切な具体的配列は本明細書中表1〜5に提供する。これらは、WO 2005/063976、WO 2005/121778及びWO 2005/124342に記載され、これらの各々は引用により本明細書に組み込まれる。
【0209】
(実施例3)独立の再増殖材料を使用する一次ヒットの3つのMOIでの再選別
OPG ELISAにおいて同定されたAd-siRNAの結果を確認するために、以下のアプローチを取り得る:Ad-siRNAヒットは96ウエルプレートレベルでPerC6細胞(Crucell, Leiden, The Netherlands)を使用して再増殖させ、その後3つのMOI(感染多重度)にてOPGアッセイにおける再試験をする。はじめに、同定されたヒットAd-siRNAサンプルの粗溶解物を含む管をSilenceSelect(登録商標)コレクションから回収し、ネガティブ/ポジティブコントロールと共に96ウエルプレートにおいて再配置する。選別A及び選別Bからの一次ヒットは、4つの96ウエルプレートに渡ってそれぞれ再配置する。管をバーコード(Screenmates(商標)、Matrix technologies)でラベルし、品質チェックを再編成されたプレートに実施する。再編成されたヒットウイルスを増殖させるために、40.000のPerC6.E2A細胞を、10%非熱不活性化FBSを含有する200μLのDMEM中96ウエルプレートの各ウエルにまき、10%CO2加湿インキュベータ中39℃で終夜インキュベートする。その後、上記のように96ウエルプレートにおいて再配置されるヒットAd-siRNAからの2μLの粗溶解物は、96ウエルディスペンサを使用してPerC6.E2A細胞に添加する。プレートはそれから、10%CO2の加湿インキュベータにおいて7〜10日間、34℃にてインキュベートできる。この期間の後、再増殖プレートを-20℃で凍らせるが、但し、完全CPEが見られ得ることを条件とする。増殖されたAd-siRNAは、3つのMOI(4μL、2μL及び1μL)でのOPGアッセイにおいて再選別する。3つのMOIでの感染は、以下の通りに実行される:96/384TeMoピペッタを使用して、1/2及び1/4希釈物は、再増殖されたヒットの粗溶解物を含む各96ウエルプレートからなる。その後、選別A又は選別Bの再増殖されたヒットの希釈していない粗溶解物を含んでいる4枚の96ウエルプレートの各々の一定分量を、1枚の384-ウエルプレートに移す。同様に、1/2又は1/4(それぞれ)希釈物の一定分量を1枚の384-ウエルプレートに混合し、選別Aの(又は選別Bの)再増殖されたヒットの非希釈、1/2又は1/4希釈した粗溶解物を含む3枚の384ウエルプレートを結果的に生じる。最後に、これらの3枚の384-ウエルプレートの各々の4μLをアッセイプレートに移し、4μL、2μL及び1μLの感染を生じる。1回の3つのMOIでの再選別内で、各MOIでの感染は反復実施し、各回数を異なるアッセイプレートで実施する。
【0210】
大部分の一次ヒット(選別B)について、同定されたAd-siRNAは、2の独立した3つのMOIでの再選別において再試験する。3つのMOI選別の各々についてのデータアッセイを以下の通りに実施する。全てのプレートについて、平均及び標準偏差は、ネガティブコントロールのために算出し、各データ点を全ての陰性の標準偏差に関して全ての陰性のサンプルと平均との間の差を示す「カットオフ値」に変換するために使用することができる。各MOIについて、閾値設定は、いずれの陰性も陽性を得点しない最小の「カットオフ値」として規定する。第1の3つのMOIでの再選別についての閾値設定は、2.3 - 2.0 - 2.0(それぞれMOI 4μL/2μL/1μLについて)である。第2の3つのMOIでの再選別の閾値設定は、各MOIそれぞれについて2.2 - 2.4 - 2.3である。第3のMOI再選別の1つにおいて、Ad-siRNAは、陽性である少なくとも1つのMOIにおいて反復して得点化しなければならない。両方の3のMOI実験において陽性であるとわかるヒットは、「確認されたOPGヒット」として定義する。193の一次ヒット(選別B)のうちの159は、このようにして検証する。
【0211】
一次ヒット(選別A)の少数について、同定されたAd-siRNAは、ただ1つの3つのMOIでの再選別において再試験する。このカットオフ設定は、以下のように5 - 3.6 - 3.2(それぞれMOI 4μL/2μL/1μLについて)であり、2つのネガティブコントロール(N2及びN3)に基づく。選別Aからの80の一次ヒット中63が、この3つのMOIでの再選別の中で少なくとも1つのMOIにおいて反復で得点化されることがわかり、確認される。
【0212】
要約すると、273の一次ヒット(又は81.3%)中222は、再増殖されたAd-siRNA材料を使用して確認される。3つのMOIスクリーニングデータは、表4に要約される:更なる検証実験における選別A(A)又は選別B(B)で同定される一次OPGヒットの成績の概要:OPGの3つのMOIの再試験(この実施例)及び共培養OCアッセイにおける試験(次の実施例を参照)。これらの検証実験の各々は、3つのMOI(1つのMOIにおいて反復)(*)でする。該表は、ヒットが、実施される(ランA、B、C)各繰り返しについてカットオフ設定(OPGについて)より上又はカットオフ設定(破骨細胞アッセイ(OC)について)より下で反復して得点化されたMOIの数を示す。該表はまた、ヒットが、先に概説されたヒット判定基準に従う検証実験の各々で確認された(1)か又は確認されなかった(0)かどうかを示す。
【0213】
OPGの3つのMOIの再試験(この実施例)及び共培養OCアッセイにおける試験(次の実施例を参照)で得られた最も特定の標的についての全てのデータを図9Bに示す。この図は、更なる検証実験における選別A(A)又は選別B(B)で同定されるいくつかの一次OPGヒットのカットオフ設定及び成績を要約する:OPGの3つのMOIの再試験及び共培養OCアッセイにおける試験。カットオフ値(OPGアッセイについて)を上回る又はカットオフ値(OCアッセイについて)を下回るカットオフ設定を有する値は、灰色の陰線により示す。
【0214】
標的Ad-siRNAの品質管理は、以下の通りに実施される:標的Ad-siRNAは96ウエルプレート中PER.C6(c)細胞(Crucell, Leiden, The Netherlands)の誘導体を使用して増殖させ、その後に標的Ad-siRNAウイルスによりコード化されるsiRNAの塩基配列決定が続く。PERC6.E2A細胞は、96ウエルプレートに40,000細胞/ウエルの密度で180μL PER.E2A培地中で播種する。細胞はそれから、10%CO2加湿インキュベータにおいて39℃で終夜インキュベートする。翌日、細胞は、標的Ad-siRNAを含んでいるSilenceSelect(登録商標)ストックからの1μLの粗細胞可溶化物で感染させる。細胞は、細胞病理学的な影響の出現まで(細胞の腫脹及び丸まりによって現れ、典型的には感染後7日)、34℃、10%CO2で更にインキュベートする。上清を回収し、ウイルス粗溶解物は、無菌PCR管の12μL粗溶解物に対して1mg/mLのプロテイナーゼK(Roche Molecular Biochemicals、カタログ番号745 723)及び0.45%のTween-20(Roche Molecular Biochemicals、カタログ番号1335465)を補充した4μLの溶解緩衝液(MgCl2含有1×Expand High Fidelity緩衝液(Roche Molecular Biochemicals、カタログ番号1332465)に添加することによりプロテイナーゼK処理する。これらの管を55℃で2時間インキュベートし、その後に95℃で15分の不活化工程が続く。PCR反応のために、1μLの溶解物を、5μlのMgCl2含有10×Expand High Fidelity緩衝液、0.5μLのdNTP混合物(各dNTPにつき10mM)、1μLの「フォワードプライマー」(10mMストック、配列:
【化1】

)(配列番号110)、1μLの「リバースプライマー」(10mMストック、配列:
【化2】

)(配列番号111) 、0.2μLのExpand High Fidelity DNAポリメラーゼ(3.5U/μL, Roche Molecular Biochemicals)及び41.3μLのH2OからなるPCRマスターミックスに添加する。PCRは、以下の通りにPE Biosystems GeneAmp PCRシステム9700で実施する:PCR混合物(総量50μL)は、95℃で5分間インキュベートする;各サイクルは、95℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で4分間実行し、35サイクル繰り返す。68℃での最終的なインキュベーションを7分間実施し、5μLのPCR混合物を、2μLの6×ゲル電気泳動緩衝液と混合し、0.5μg/μLの臭化エチジウムを含む0.8%アガロースゲルで電気泳動し、増幅産物を分離する。増幅断片のサイズを、同じゲル上で泳動した標準DNAラダーから評価する。増幅断片およそ500bpである。塩基配列決定解析のために、標的アデノウイルスにより発現されるsiRNA構築物を、pIPspAdapt6-U6プラスミドのSapI部位に隣接するベクター配列と相補的なプライマーを使用するPCRにより増幅する。PCR断片の配列を決定し、予想される配列と比較する。全ての配列が、予想される配列と同一であるとわかる。
【0215】
(実施例4)共培養における破骨細胞分化の制御因子の同定のためのスクリーニング法の設計及び設定
(破骨細胞共培養アッセイの背景及び原理)
図6Aは、破骨細胞共培養アッセイの原理を表す。このアッセイにおいて、RASFは、マルチウエルプレートに播種する。これらの細胞は、負の方向(例えばOPG)又は正の方向(例えばTNF又はRANKL)のいずれかでの破骨細胞前駆細胞の分化を調節する因子を発現できる。破骨細胞前駆細胞をそれからRASFの上にまき、M-CSF並びにRANKLを共培養に添加する。この設定において、破骨細胞前駆細胞は、阻害因子が共培養されたRASFにより発現されない限り、分化する。このように、このアッセイは、RASFによる破骨細胞分化を調節している因子の発現を機能的にモニタすることを可能にする。共培養における破骨細胞の分化を定量化するために適用される読み取りは、分化した破骨細胞に特異的なマーカー(ビトロネクチン受容体、αv-β3インテグリンとも呼ばれる)の発現を測定する細胞に基づくELISAである。破骨細胞共培養アッセイにおいて配列されたアデノウイルスコレクションのスクリーニングの原理を図6Bに図示する。手短に言えば、RASFをマルチウエルプレートに播種し、1日目に配列されたフォーマットでAd-siRNAで感染させる。7日目に、破骨細胞前駆細胞及びM-CSFをRASF上に添加する。8日目にsRANKLを加え、19日目(10日の培養後)に、ビトロネクチンcELISAを実施する。
【0216】
4.1 破骨細胞-RASF共培養についての読み取りの選択
抗体に基づく検出方法は、HTS開発に従う。従って、発明者らは、αvβ3インテグリン(ビトロネクチン受容体)及びカルシトニン受容体のためのcELISA検出方法を評価することを目的とし、該2つのマーカーはOC分化をアッセイするのに多用され、そのための抗体は市販されている。
【0217】
これらのマーカーについての読み取りは、市販のPoetics(商標)破骨細胞前駆細胞系(Cambrex)を使用して評価する。この細胞系は、提供された最適化分化培地で解凍及び培養すると、成熟した機能的な多核OCの方へ分化する、低温保存されたヒトOC前駆細胞を含む。これらの特定の前駆細胞はさらに、OCPともいう。αvβ3インテグリン及びカルシトニン受容体に対する市販の抗体によるcELISAに基づく読み取りを試験する(図7Aを参照)。表される実験について、初代ヒトOCP細胞を、10,000細胞/ウエルの密度で96ウエルプレートフォーマットに播種し、rRANKL(66ng/mL)及びM-CSF(33ng/mL)の両方を含む培地(特許製品Cambrex培地)で、又はM-CSFのみを含む培地(未分化コントロール)で10日間培養する。αvβ3(Monosan)又はカルシトニン受容体(Serotec)に対する一次抗体をAlkaline Phosphatase-Fast Red染色キット(Dako)と組み合わせて使用する免疫染色を実施し、結合した一次抗体を可視化する。αvβ3インテグリン及びカルシトニン受容体の発現は、未分化コントロール培養物にかろうじて検出されるが、培養状態がOC分化を許容する場合には明らかに増加し、これは破骨細胞の検出のためのアプローチの正当性を立証する。
【0218】
これらの結果は、OCPの単培養におけるOC分化をアッセイするαvβ3インテグリン及びカルシトニン受容体発現のcELISAに基づく測定の実現可能性を証明する一方、発明者らは分化がRASFの頂端上で起こる共培養アッセイを開発することを目的とする。従って、発明者らは、OC分化に適している条件下で実行されたRASF培養物がαvβ3及びカルシトニン受容体検出のためのcELISA手順を受ける場合、バックグラウンドシグナルの不在を示すことを必要とする。背景染色がαvβ3について検出されない一方、細胞がカルシトニン受容体発現についてアッセイされる場合、クリアなシグナルが検出される(図7Bを参照)。描写される実験を以下の通りに実行する。RASFは、3000細胞/ウエルで96ウエルプレートに播種する。3日の培養後、後述するように、細胞層は、αvβ3及びカルシトニン受容体のための抗体を使用して固定し、染色する。明白な染色がカルシトニン受容体mAbで観察されたが、細胞をαvβ3 mAbとインキュベートする場合、バックグラウンド(二次Abのみ又は抗体なし)より高いシグナルは観察されなかった。従って、αvβ3インテグリンcELISA読み取りだけが、更なるアッセイ開発のために考慮される。
【0219】
次の実験において、原理の証明は、RASFによるRANKL誘導性OC分化の阻害のために供給される。RASF(1100細胞/ウエル)を384ウエルプレートに播種し、Ad5-eGFP又はAd5-OPG(図7C、パネルA)のいずれかで感染させるか、又は感染させないまま(図7C、パネルB)とする。播種の24時間後に、OC前駆細胞(OCP、Cambrex、1500細胞/ウエル)及びM-CSF(40ng/mL、R&D systems)を全てのウエルに添加し、同様に、組換えOPG(rOPG、22ng/mL又は66ng/mL、R&D systems)及びIL4(10ng/mL、R&D systems)(パネルB)を添加する。翌日、rRANKL(0〜60ng/mL、Cambrex)を添加し、インキュベーションをαvβ3インテグリンcELISAの発光読み取り前の11日間実施する。発光データは、15ng/mLのrRANKL濃度(=100%)でネガティブコントロールについて得られるシグナルのパーセンテージとして表現する。結果を図7Cに示す。OC分化の明白なrRANKL用量依存的誘導は、この実験において得られる(非感染サンプル及びAd5-eGFP感染サンプルに示されるように)。分化は、(組換え又はSFにより発現される)OPGにより阻害される。添加されるrOPG用量(22ng/mL)は、最高7.5ng/mLのrRANKLの影響を阻害するのに十分である。予想されるように、高用量のrOPGは、rRANKLのさらにより高い濃度さえ阻害でき:最高15ng/mL までのrRANKLは、66ng/mLのrOPGによる効率的に阻害される。rIL4の添加も、前OCにおけるRANKLシグナル化の阻害を介してrRANKL駆動OC分化を強力に遮断できる。合わせて考えると、この実験は、rRANKL駆動OC分化プロセスが様々な分泌された因子により遮断されることを実証し、「RANKL誘導性OC分化アッセイの阻害」についての原理実験の証明を表す。
【0220】
スクリーニング設定における破骨細胞の検出のために使用するビトロネクチン受容体cELISAのプロトコルは、以下の通りである:
【0221】
破骨細胞単培養又は破骨細胞-RASF共培養の頂端上の培地を取り除き、50μLの氷冷MeOH(Riedel-de-Haen, カタログ番号32213)を細胞の固定のために添加する。MeOHは、80μLでMeOHで交換する。-20℃で20分間のインキュベーション後、MeOHを除去し、プレートを空気で20分間乾燥させた。プレートはそれから、80μLの1×PBS(GIBCO)で2回洗浄し、75μL の0.1%カゼイン緩衝液をすぐに添加してプレートを遮断する。カゼイン緩衝液は、以下の通りに調製される:2gのカゼインを含む80mLのMilliQを、PH 12に調整し、室温で15分撹拌し、200mLの10×PBSを添加し、2LのMilliQに調整し、PH7.4に調整する。プレートは室温で少なくとも2時間遮断し、カゼイン緩衝液をそれから取り除く。それから、25μLのEC緩衝液をプレートに添加する。EC緩衝液は、以下の通りに調製される:8gのカゼイン、4.26gのNa2HPO4、4gのウシアルブミン、1.38gのNaH2PO4・H2O、1gのCHAPS、46.6gのNaClを含む15OmLのMilliQ、8mLのEDTA pH8、pH12に調整し、低熱で15分撹拌し、1OmLのNaN3 10%を加え、MilliQで2Lに調整し、pH7.0に調整する。EC緩衝液をそれから取り除き、35μLの一次抗体(Monosan、Mon2033)をプレートに添加する。プレートを4℃で終夜インキュベートし、その後2回洗浄し、PBST(0.05%Tween20含有1×PBS)で1回及び1×PBSで1回洗浄する。二次抗体(DAKOからのヤギ抗マウス免疫グロブリンの2000倍希釈)をそれから、緩衝液C中、該プレートに添加する。緩衝液Cを以下のように調製する:0.82gのNaH2PO4・H2O、4.82gのNa2HPO4、46.6gのNaCl、2Ogのウシアルブミン、MilliQで2Lに調整し、8mLの0.5M EDTA pH8.0を加え、pH7.0に調整し、滅菌する。最長1時間のインキュベーションを実施する。培養後、プレートをPBST(0.05%Tween20含有1×PBS)で2回、及び1×PBSで1回洗浄する。読み出しは、Luminol(POD Roche、1582950)(化学発光基質)により実施する。
【0222】
ビトロネクチン受容体cELISAは、以下の通りに、共培養上で配列されたアデノウイルスコレクションのスクリーニングに適合化される。1日目、RASF細胞(1000細胞/ウエル)を、0.1%ゼラチンで被覆したプレート(Greiner, カタログ番号781080)中50μL培地(滑液成長培地、CellApplication)にまく。翌日(2日目)、該細胞を、ライブラリからの4μLのAd-siRNA材料(3つの希釈)で感染させる。7日目に、培地を、10%FBS並びにペニシリン及びストレプトマイシンの混合物を補充し、60ng/mLのrhMCSF (Cambrex;PT-9010)を含む、30μLの共培養培地(aMEM、(GIBCO, カタログ番号22571-020))で交換する。1250の破骨細胞前駆細胞(Cambrex、カタログ番号2T-110、30μlの培地に含まれる)をそれから、RASFの上に添加する。8日目に、sRANKL(Cambrex、破骨細胞培養弾丸キット)を30ng/mLの濃度に添加する。19日目に(37℃、5%CO2で10日間培養後)、ビトロネクチン受容体cELISAを実施する。
【0223】
(実施例5)破骨細胞-RASF共培養アッセイにおけるOPGヒットの検証
確認されたOPGヒットは、上で記載され(実施例4)、開発し、実施される破骨細胞RASF共培養アッセイで更にアッセイする。所望の効果は、以下である:RASF単層におけるAd-siRNA標的遺伝子発現のノックダウンは、RANKL及びMCSFにより駆動される破骨細胞分化を阻害すべきである。破骨細胞分化アッセイにおいて試験する確認されたOPGヒット(選別Bから生じるヒット)の大部分については、以下の通りである。Ad-siRNAは、各々が3つのMOIで実施される、2つの独立実験において試験する。Ad-siRNA及びポジティブコントロール及びネガティブコントロールのためのウイルス材料は、3つのMOI OPGにおける一次ヒットの再試験のために調製されたものと同じである。破骨細胞分化アッセイからの読み取り後に得られた結果は、3つのMOI OPG ELISAについて記載されている各プレート上のネガティブコントロールの平均及び標準偏差に基づく「カットオフ値」に変換されるが、偶数行及び奇数行についての結果は、偶数/奇数行上のコントロールのシグナル強度において観察された差を修正するために最初に分離する場合においてはこの限りではない。各MOIについて、ヒット判定するための閾値を設定する。閾値は、いずれの陰性も陽性を得点しない(すなわち、閾値より低いカットオフ値を有する)、最も低い「カットオフ」値である。2の独立した3 MOI OC試験の設定は、-1.8/-1.8/-1.8(それぞれ3 MOI 4μL/2μL/1μL)である。Ad-siRNAは、3つのMOI実験の範囲内で陽性のMOIのうちの少なくとも1つにおいて反復して得点化することを必要とする。159の確認されたOPGヒット(選別B)のうちの53は、両方の3つのMOI実験において陽性であり、この制御試験に合格する。他の33は、2つの3 MOI実験のうちの1のみにおいて陽性であった。これらの33のAd-siRNAは、コントロールと共にウイルスプレートから選別され、3つのMOIでのOCアッセイで3回試験する。33のうちの7がアッセイの後に陽性の得点を有することがわかり、OC分化制御試験に合格する。従って、選別Bから生じているヒットが確認される159のOPG中60(すなわち37.7%)は、このように、OCに共培養アッセイに合格することがわかる。
【0224】
少数の確認されたOPGヒット(選別A由来)について、Ad-siRNAを、3つの独立したOC共培養実験で試験する。これらのうちの1つは、1つのMOI(SilenceSelectコレクション管からの2.5μL感染)のみで実施し、2つは、一次スクリーニングの後得られた再増殖されたウイルス材料を使用する3つのMOIで実施する。ヒット判定についての閾値設定は、上記の通りに適切なネガティブコントロールの結果に基づく。OCに分化基準に合格するために、Ad-siRNAは、3つの実験のうちの2つに陽性の得点を有することを必要とする。63の確認されたOPGヒットのうち、23(すなわち36.5%)がこの基準に合格した。
【0225】
要約すると、222の確認されたOPGヒットのうちの83(又は37.4%)が、共培養アッセイにおけるOC分化を阻害することもわかる。TARGETSについて二次アッセイで得られた結果を表4(選別A及び選別B)に要約し、特定の標的について得られた生データを図9(選別A及び選別B)に示す。
【0226】
【表4】

NA=適切でない(OCアッセイの第3の実行は、それが以前の2つにおいて得点されるので、なれなかった)。
(*)=選別Aから同定されるヒットについてのOCのランBは、2つの独立実験の1つのMOIのみでなされた。このランにおいてヒットであるために、Ad-siRNAは、2つの実験のうちの1件において得点しなければならなかった。
【0227】
(実施例6)RA患者の滑膜に由来するヒト初代滑膜線維芽細胞において同定される特定の標的について発現レベルの解析
特定の同定された標的の発現レベルは、以下の通りに初代ヒト滑膜線維芽細胞の異なる分離株において測定する。
【0228】
RASF分離株は、Cell Applications社からの低温保存された継代2の細胞(カタログ番号404-05)として得られる。これらの細胞は、10%(v/v)の熱不活化FBS(ICN)及び1×Pen/Strep(Invitrogen)を補充したDMEM(Invitrogen)において培養し、増殖させる。発現アッセイのために、細胞を継代11に培養する。
【0229】
RNA調製のために、初代ヒト滑膜線維芽細胞を、6ウエルプレートの10cmペトリプレート(500,000の細胞/プレート)にまく。一晩の培養後、培地を、1×Pen/Strepを含む1%(v/v)の熱不活化FBSを補充した6mLのM199培地で交換する。24時間後に、総RNAを、「SV Total RNA Isolationキット」(Promega)を使用して抽出する。
【0230】
各サンプルのRNA濃度は、「Ribogreen RNA定量キット」(Molecular Probes)を使用して、蛍光定量的に定量化する。各調製物からのRNAの同程度の量は、Applied Biosystemsからの「Taqman逆転写キット」を用いて第1の鎖cDNAに逆転写される。簡潔にいうと、50pmolのランダムヘキサマー、10UのRnase阻害剤、25UのMultiscribe逆転写酵素、5mMのMgCl2及び0.5mMの各dNTPを含む20μL反応混合物につき40ngのRNAが含まれる。反応混合物は25℃で10分間インキュベートし、その後サーモサイクラー(Dyad, MJ Research)において48℃での30分のインキュベーション、及び逆転写酵素の熱不活化(5分95℃)が続く。反応物は、プログラム終了後直ちに4℃に冷却する。得られたcDNAの複数回の凍結/融解サイクルを回避するために、異なるサンプルは、96ウエルプレートにプールし、等分し、-20℃で保存する。
【0231】
リアルタイムPCR反応は、「ABI PRISM 7000 Sequence Detection System Instrument」(Applied Biosystems)を使用して実施し、モニタする。定量的遺伝子発現のために予めデザインされた遺伝子特異的Taqmanプローブ及びプライマーセットは、「アッセイオンデマンド(Assays on Demand)」遺伝子発現製品の一部として、Applied Biosystemsから購入する。これらの市販のキットは、供給元により品質検査が行われ、サンプルの標的cDNAの量の定量的測定を可能にする。「アッセイオンデマンド」遺伝子発現製品は、供給元により送達されるプロトコルに従って使用する。PCR混合物は、25μLの合計容量において、1×「Taqman Universal PCR Mastermix no AmpErase UNG」及び1×「Taqman Gene Expression Assay on Demand mix」、及び5μLのレトロ転写反応産物(1〜100ngのRNA がcDNAに変換される)からなる。95℃で10分間のはじめの変性工程の後、cDNA産物を、95℃15秒及び60℃1分からなる40サイクルにより増幅する。異なるサンプルの間のcDNAのはじめの量の可変性を標準化するために、同じcDNAでの増幅反応は、ハウスキーピング遺伝子β-アクチンについて、予め開発されたβ-アクチン「アッセイオンデマンド」プライマーセット、Taqmanプローブミックス、及び「Taqman Universal PCR Mastermix」(全てApplied Biosystems)を使用し、製造業者の指示に従って実施する。残留するゲノムDNAから生じているいかなる汚染も同定するために、同条件下で実行されるが逆転写酵素を添加しないコントロール(-RT)逆転写反応からの産物でのリアルタイムPCR反応が各サンプルについて含まれる。閾値サイクル値(Ct)は、例えば、関心対象の増幅された遺伝子の量が一定の閾値に達したサイクル数を各サンプルについて測定する。各試料について、ΔCt値は、標的遺伝子について得られたCt値から内因性コントロール(β-アクチン)のCt値を減算することにより決定する。このヒットについて得られたΔCt値が利用できる2つの滑液分離株のうちの少なくとも1つにおいて13.3より低い場合、遺伝子は、活性化されている又は活性化されていない初代ヒトSFにおいて発現されているものとみなす。9.9を下回るΔCt値を有する遺伝子は、RASFにおいて高度に発現しているとみなす。発現プロファイリング実験の結果を表5に要約する。誘発していないSFの2つの分離株における様々な標的について得られたβ-アクチンに関連するΔCt値を、この表5において与える。
【0232】
【表5】

【0233】
(実施例7)KDウイルスを使用する「オンターゲット解析(On target analysis)」
ヒットの検証を強化するために、異なる配列を介して同じ標的遺伝子を標的としている完全に独立なsiRNAを使用してその効果を要約することは有用である。この解析は、「オンターゲット解析」とよばれる。実際には、これは、記載されている専門アルゴリズムを使用して標的に対して複数の新規なshRNAオリゴヌクレオチドを設計すること、及びこれらをWO 03/020931に従ってアデノウイルスに組み込むことによりなされる。ウイルス産生後、これらのウイルスを、ポジティブコントロールウイルス及びネガティブコントロールウイルスと共に、96ウエルプレートに配置する。平均して、6つの新規な独立Ad-siRNAが、一組の標的について産生される。これらのウイルスプレートの2つの独立した再複製物をそれから、上記の通りに3つのMOIでの再選別について実施する。これらの2つの独立する再増殖において産生されるプレートは、3つのMOIのOPGアッセイにおいて、及び3つのMOIでの再選別(実施例3)に記載されているプロトコルに従い反復で2つの独立実験において試験する。2つの独立実験のうち少なくとも1つのMOIにおいて設定カットオフ値より上のOPGレベルで増加を媒介するAd-siRNAは、「オンターゲット解析」で得点されるヒットとして推薦される。これらの実験のカットオフ値は、ネガティブコントロールを上回る平均、かつネガティブコントロールの標準偏差の2倍超として定義する。この行使を介し、以下の最も特定の標的が同定される:ENPP2、CXCR6、MAP3K3、PTK6、MRAS。「オンターゲット解析」試験の1つにおいてこれらの標的について得られるデータを図8に示す。この図において、OPGレベルの測定において得られた生データを示す。全ての標的について、同じプレートで試験されるネガティブコントロールについて得られた生のOPGデータの平均を示し、ヒットAd-siRNAについてOPG発現における増加を認めることができる。
【0234】
(実施例8)OPG標的の抗炎症効果の測定
上記の骨浸食態様に加え、関節リウマチは、TNFα遮断薬の効果により示されるような、強い炎症性の組成物要素も有する。OPGヒットの選択のプロファイルを更に強化するために、追加的な調査を実施できる。この行使の目的は、OPGを誘導すること、及びそれゆえの骨保護特性の他に、これらのOPGヒットの付加的な抗炎症性の特徴を実証することである。基本的に、実施される追加的な試験は、どのOPGヒットが、サイトカイン誘導マーカー(MMP1)の発現によりモニタされるようなRASFのサイトカイン活性化を減少させることが可能であることを実証することを目的とする。この追加的な試験は、より好適なヒットの同定を可能にする。この追加的な試験は、以下の通りに実施できる:
【0235】
8.1 ウイルスの回収及び取扱い:
特定の遺伝子の発現を標的化するOPGヒットの選択のために、一組の独立KDウイルスを回収し、これは、標的mRNA上の異なる配列を介して同じ標的遺伝子の発現の減少を媒介する。これらのウイルスは、元のOPGヒットウイルスと共に、ポジティブコントロールウイルス及びネガティブコントロールウイルスと共に、96ウエルプレート(「ヒットプレート」)に配置する。プレートの一般的レイアウトを図10hに図示する。外側のウエルは周辺効果を回避するために空のままにされるので、全てのコントロールプレートは、合計60の試料(40のヒットウイルス及び20のコントロールウイルス)を収容できる。MMP 1を標的化するKDウイルスはポジティブコントロールとして選択されるが(プレートにつき4ウエル)、異なる3種類のネガティブコントロールが、ルシフェラーゼ遺伝子転写産物(プレートにつき8つのウエル)、M6PR遺伝子転写産物(プレートにつき4つのウエル)又はeGFP遺伝子転写産物(プレートにつき4つのウエル)のいずれかを標的化するのに使用された。再構成されたプレートは、試験されるウイルスの力価の均一性を保証するために再増殖される。
【0236】
8.2 RASFの細胞取扱い及び形質導入
0日目に、RASF(継代数11未満)を、3000細胞/ウエルの密度で50μLの培地中、96ウエルプレートに播種する。翌日(1日目)、ウイルスプレートに含まれるウイルス粗溶解物のうちの8、16又は24μLを、細胞を含むプレートに移す。全てのウイルス充填物を反復して試験するにつれ、6×60のデータ点が全ての「ヒットプレート」について生じる。
【0237】
8.3 細胞の誘発及び上清回収
細胞の形質導入の5日後に、KDウイルスにより媒介される標的遺伝子の発現の減少は、完全に効果的である。6日目に、培地を除去し、8倍の希釈の「TNFαに基づく誘発剤」を含むM 199培地+1%FBSで置き換える。この誘発剤は、以下の通りに調製する。「TNFαに基づく誘発剤」の生産は、THP-1単球細胞を、1%血清を補充したM199培地に1×10E6細胞/mLの密度で接種することにより開始する。播種の翌日、組換えヒトTNFα(Sigma)を、培養フラスコに25ng/mLの最終濃度に添加する。サイトカインの追加の48時間後に、上清を回収し、更なる使用まで一定分量で-80℃に保存する。「TNFαに基づく誘発剤」の全ての新規バッチを、RASFによるMMP1発現を誘導することにより、その有効性を特徴づける。この誘発剤は、RASFにおける多様なシグナル形質導入経路を活性化させる様々な炎症メディエータを含む。8日目に、誘発した細胞上の上清を回収し、MMP1 ELISAに供する。
【0238】
8.4 MMP1 ELISA
MMP1 ELISAは、WO 2006/040357にて記載されるように384ウエルフォーマットで実施する。以下のプロトコルが適用される:白いLumitrac 600 384ウエルプレート(Greiner)を、2μg/mlの抗MMP1抗体MAB1346(Chemicon)で被覆する。該抗体は、緩衝液40(1.21gのトリス塩基(Sigma)、0.58gのNaCl(Calbiochem)及び5mLの10%NaN3(Sigma)の1LのmilliQ水溶液、pH 8.5に調整)で希釈する。4℃で一晩のインキュベーション後、プレートをPBS(80gのNaCl、2gのKCl(Sigma)、11.5gのNa2HPO4・7H2O及び2gのKH2PO4の10LのmilliQ溶液、pH 7.4)で洗浄し、100μL/ウエルのカゼイン緩衝液(2%カゼイン(VWR International)含有PBS)でブロッキングする。翌日、カゼイン緩衝液をELISAプレートから除去し、50μL/ウエルEC緩衝液(4gのカゼイン、2.13gのNa2HPO4(Sigma)、2gのウシアルブミン(Sigma)、0.69gのNaH2PO4・H2O(Sigma)で、0.5gのCHAPS(Roche)、23.3gのNaCl、4mlの0.5M EDTA pH 8(Invitrogen)、5mLの10%NaN3の1LのmilliQ溶液、pH 7.0に調整)で置き換える。0.25mM DTT(Sigma)を、解凍されたサンプルプレートに添加する。EC緩衝液の除去後、20μLのサンプルをELISAプレートに移す。4℃で一晩の培養後、プレートをPBSで2回、PBST(0.05% Tween-20(Sigma)含有PBS)で1回洗浄し、35μL/ウエルのビオチン化された抗MMP 1抗体溶液(R&D)をインキュベートする。この二次抗体を、5μg/mLの濃度で、緩衝液C(0.82g NaH2PO4・H2O、4.82 gのNa2HPO4、46.6gのNaCl、20gのウシアルブミン、及び4mLの0.5M EDTA pH 8の2LのmilliQ溶液、pH 7.0に調整)で希釈する。室温で2時間の培養後、プレートを先に記載したように洗浄し、50μL/ウエルのストレプトアビジン-HRP抱合体(Biosource)とインキュベートする。ストレプトアビジン-HRP抱合体は、0.25μg/mLの濃度で、緩衝液Cで希釈する。45分後に、プレートを先に記載したように洗浄し、50μL/ウエルのBM Chem ELISA基質(Roche)と5分間インキュベートする。読み取りは、200ミリ秒の集積時間を有する、又はEnvision reader(Perkin Elmer)を有するLuminoscan Ascent Luminometer(Labsystems)で実施する。
【0239】
8.5 ヒット解析
「TNFαに基づく誘発剤」により活性化するRASFによるMMP1の発現を減少させる回収されたウイルスの能力は、以下の通りに測定できる。全てのプレートについて、3つの対照ウエルを誘発しないままにしておき、MMP1発現が予想通りに誘導されるかどうかを測定することを可能にする。17の対照ウエル(13の負のネガティブコントロール及び4のポジティブコントロールを含む)を誘発する。平均及び標準偏差は、13の誘発したネガティブコントロールウエルの全体にわたり、MMP1シグナルについて算出する。全てのデータ点について、MMP1発現の標準化された減少は、以下の通りに算出される:
KDウイルスXについてのMMP1シグナルの標準化された減少=[(13のネガティブコントロールについての平均シグナル(KDウイルスXについてのシグナル))/(13のネガティブコントロールの全体にわたるMMP1シグナルの標準偏差)]。
【0240】
2を超えているMMP1発現の標準化された減少が「陽性」、すなわち「TNFαに基づく誘発剤」誘導されたMMP1発現であるとみなされる全てのデータ点は、これらのサンプルにおいて重大な方法で減少されると考えられる。これらのウイルスについて、ウイルスXのMMP1シグナルとネガティブコントロールのMMP1との間のシグナルの差は、ネガティブコントロールの標準偏差の2倍を超える。このように、6つの独立した標準化されたMMP1 データ点は、試験されたKDウイルスごとに生じる。6つのデータ点のうち少なくとも3つが「陽性」であるウイルスは、MMP1アッセイのヒットとみなす。7つのOPGヒットについて得られたデータの概要を表6に示す。試験される7つの標的のうち6つについて、少なくとも1つのKDウイルスは、「TNFαに基づく誘発剤」により誘導されたMMP1発現を著しく減少させることを同定する。このように、これらの遺伝子の活性の阻害は、RASFによるOPG発現を増加させ、かつRASFの炎症性サイトカインに対する反応を減少させると予測される。MMP1アッセイにおいて得られたデータの例を図11に挙げる。
【0241】
【表6】

【0242】
7つの選択されたOPGヒットについて、同じ遺伝子の発現を標的としているさらに9つまでのKDウイルス構築物(「独立KDウイルス」)を回収する。「TNFαに基づく誘発剤」誘導性MMP1発現の顕著な減少を媒介するOPGヒットあたりの構築物の数を該表に示す。
【0243】
(実施例9)RASF-破骨細胞共培養における破骨細胞分化のAd-siRNA媒介型阻害のOPG依存性
実施例5において、Ad-siRNA OPGヒットは、形質導入されたRASFとの共培養においてRANKL誘導性破骨細胞分化を減少させるそれらの能力に基づいて選択される。この実施例に記載されるアッセイ(更に「OPG依存アッセイ」ともよばれる)の目的は、共培養アッセイにおいて観察された破骨細胞分化の阻害が、選択されたAd-siRNAで形質導入されたRASFによるOPG放出の増加に起因することを実証することである。このアッセイの原理を図6Aに図示する。手短にいうと、Ad-siRNAは、OPG生物活性を中和できる抗OPG抗体を含み又は含まずに、破骨細胞共培養アッセイで試験する。Ad-siRNAのための所望のプロファイルは、以下である:共培養アッセイが抗OPG抗体の不在下で実施される場合の阻害RANKL駆動破骨細胞分化、及びアッセイが抗OPG抗体の存在下で実施される場合の効果の欠如。実験のために選択される抗OPG抗体(カタログ番号AF805、R&D Systems)は、ヤギポリクローナルIgG抗体であって、図7Cに示してあり、これは、可溶OPGを中和でき、かつ共培養アッセイにおいてsRANKL駆動型破骨細胞形成のOPG媒介型阻害を予防できる。追加的な試験は、以下の通りに実施される:
【0244】
9.1 ウイルスの回収及び取扱い
共培養アッセイ(実施例5)においてOC分化を阻害することも見出された確認されたOPGヒットを、「OPG依存アッセイ」の試験のために選択できる。この実験のために使用されるウイルス材料は、3つのMOI OPG(実施例3)における一次ヒットの再試験のために調製したものと同じである。選択されたAd-siRNAを、これらのウイルスプレートから選別し、それぞれポジティブコントロールウイルス及びネガティブコントロールウイルス(すなわち、3つのMOIの再試験の材料を調製すると同時にAd-siRNAで再増殖させたコントロールウイルス)と共に、96ウエルプレート(「ヒットプレート」)に再配置する。プレートの一般的レイアウトを図4に図示する。全てのプレートは、3種類の異なるネガティブコントロールウイルス(N1=Ad5-eGFP_v1_KI、N2=Ad5-Luc_v13_KD)、N3=Ad5-eGFP_v5_KD)のための4つのウエル、及びポジティブコントロール(P=Ad5-OPG_v1_KI)を含む1つのウエルを含む。該アッセイにおいて、形質導入は、以下の通りに実施する:ウイルスヒットプレートからの3μLを、全ての4つの四半分(quadrant)が同じウイルスに感染しているように、4回、384-ウエルアッセイプレートに移す。
【0245】
9.2 アッセイの説明
1日目に、RASF細胞(1000細胞/ウエル)を、0.1%ゼラチンで被覆した384ウエルプレート(Greiner、カタログ番号781080)上に50μLの培地中でまく。翌日(2日目)、細胞を3μLのAd-siRNA材料で感染させる。トランスフェクションは、4重に実施する(1つの96ウエルに関し、全ての4つの四半分を同じAd-siRNAで感染させる)。7日目に、培地を30μLの共培養培地で交換し、それから破骨細胞前駆体細胞(105ng/mlのrhMCSFを有する30μLの共培養培地に含まれる1600個の細胞)をRASFの上に加え、その後、24μg/mLの濃度で中和抗OPG抗体を含まない(奇数列のみ)又は含む(偶数列のみ)10μLの共培養培地の添加を行う。このようにして、4つのデータ点(抗OPG抗体の存在下で2つ及び不在下で2つ)が、全ての「ヒットプレート」について生成される。一晩のインキュベーションの後(8日目)、40ng/mLのrhMCSF及び120ng/mLのsRANKLを含む10μLの共培養培地を全てのウエルに添加し、破骨細胞分化を誘導する。この時点での試薬の最終濃度は、15ng/mLのsRANKL、40ng/mLのrhMCSF及び3μg/mLの抗OPG抗体(添加される場合)である。20日目(37℃、5%CO2でのインキュベーション11日後)に、破骨細胞分化を、cELISAによるビトロネクチン受容体発現を定量化することにより読み取る。
【0246】
9.3 ヒット解析
各ヒットウイルスについて、抗OPG抗体の存在下又は不在下における反復の値を平均し、閾値をセットした。閾値の下にある値を生じるヒットウイルスは、RANKLによる駆動される破骨細胞分化を阻害するものとみなす。ヒット判定のための閾値シグナルは、個々のネガティブコントロール(抗OPG Abの存在下又は不在下において)によって生じる値のいずれも陽性を得点しないように規定する。ヒットウイルスについての観察された破骨細胞阻害は、抗OPG Ab不在下での平均値が該閾値を下回り、かつ抗OPG Ab存在下での値が該閾値を上回る場合に、OPG依存的であるという。代表的な実験において得られたデータの例を図12に挙げる。
【0247】
(引用文献)
Roodman GDらの文献 (2004) 「骨転移の機構(Mechanisms of Bone Metastasis.)」N Engl J Med 350:1655
Pettit AR, Ji H, von Stechow D, Goldring SR, Choi Y, Benoist C, Gravallese EMの文献 (2001) 「TRANCE/RANKLノックアウトマウスは、関節炎の血清転移モデルにおける骨浸食から保護される(TRANCE/RANKL knockout mice are protected from bone erosion in a serum transfer model of arthritis.)」Am J Pathol 159: 1689.
Pettit AR, Walsh NC, Manning C, Goldring SR, Gravallese EM.の文献 (2006) 「RANKLタンパク質は、関節リウマチにおける関節骨浸食部位のパンヌス-骨境界面で発現される(RANKL protein is expressed at the pannus-bone interface at sites of articular bone erosion in rheumatoid arthritis.)」Rheumatology 45:1068-76.
Bucay N, Sarosi I, Dunstan CR, Morony S, Tarpley J, Capparelli C, Scully S, Tan HL, Xu W, Lacey DL, Boyle WJ, Simonet WS.の文献 (1998) 「オステオプロテゲリン欠損マウスは、早期に骨粗鬆症開始及び動脈石灰化を発現する(osteoprotegerin-deficient mice develop early onset osteoporosis and arterial calcification.)」Genes Dev. 12:1260-8.
Kim N, Odgren PR, Kim DK, Marks SC Jr, Choi Y.の文献 (2000) 「TRANCE欠損による骨格生理学における腫瘍壊死因子ファミリーメンバーの多様な役割及びリンパ球発現されたTRANCE導入遺伝子による部分的救済(Diverse roles of the tumor necrosis factor family member TRANCE in skeletal physiology revealed by TRANCE deficiency and partial rescue by a lymphocyte-expressed TRANCE transgene.)」Proc Natl Acad Sci USA. 97:10905-10.
Gravallese EM. の文献(2002) 「関節炎における骨破壊(Bone destruction in arthritis.)」Ann Rheum Dis. 61 Suppl 2:ii84-6.
Onyia JE, Galvin RJ, Ma YL, Halladay DL, Miles RR, Yang X, Fuson T, Cain RL, Zeng QQ, Chandrasekhar S, Emkey R, Xu Y, Thirunavukkarasu K, Bryant HU, Martin TJ. の文献(2004) 「オステオプロテゲリン発現の新規かつ選択的な小分子刺激因子は骨吸収を阻害する(Novel and selective small molecule stimulators of osteoprotegerin expression inhibit bone resorption.)」J Pharmacol Exp Ther. 309:369-79
Valleala H, Laasonen L, Koivula MK, Mandelin J, Friman C, Risteli J, Konttinen YT. の文献(2003) 「関節リウマチにおけるエチドロナートの2年無作為対照化試験:血清アミノ末端テロペプチドにおける変化は、疾患のX線撮影進行と相関する(Two year randomized controlled trial of etidronate in rheumatoid arthritis: changes in serum aminoterminal telopeptides correlate with radiographic progression of disease.)」J Rheumatol. 30: 468-73.
Redlich K, Gortz B, Hayer S, Zwerina J, Doerr N, Kostenuik P, Bergmeister H, Kollias G, Steiner G, Smolen JS, Schett G.の文献 (2004) 「腫瘍壊死因子媒介関節炎におけるオステオプロテゲリン又は副甲状腺ホルモンと組み合わせての抗腫瘍壊死因子を用いる治療での局所的骨浸食の修復及び全身骨粗鬆の反転(Repair of local bone erosions and reversal of systemic bone loss upon therapy with anti-tumor necrosis factor in combination with osteoprotegerin or parathyroid hormone in tumor necrosis factor-mediated arthritis.)」Am J Pathol. 164: 543-55.
Smolen及びSteinerの文献 (2003);Lee及びWeinblattの文献(2001);Choy及びPanayiの文献(2001);O'Dell (2004)及びFiresteinの文献(2003)
【0248】
前述の説明から、本発明の組成物及び方法における様々な修飾並びに改変が当業者に発生する。添付の特許請求の範囲内にある全てのこのような修飾は、本明細書に含まれることを意図する。
【0249】
本明細書に引用する特許及び特許出願書類を含むが限定されない全ての刊行物は、個々の刊行物が、あたかも完全に記載されているかのように、引用により本明細書に組み込まれるように具体的かつ個別的に示されているように、引用により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨吸収を阻害する化合物を同定する方法であって、
(a) 化合物を、配列番号41〜69及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド及びその断片と接触させること;及び、
(b) 骨吸収に関連する化合物-ポリペプチド特性を測定すること;
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、インビトロ無細胞調製におけるものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、哺乳動物細胞内に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記特性が、前記化合物の前記ポリペプチドに対する結合親和性である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
c) 前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の集団を、少なくとも10マイクロモル濃度の結合親和性を呈する化合物と接触させる工程;及び、
d) 骨吸収を阻害する化合物を同定する工程;
をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記特性が、骨吸収の阻害の指標となる生化学的マーカーを産生する生物学的経路の上方制御である、請求項1又は3記載の方法。
【請求項7】
前記指標がオステオプロテゲリンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記特性が、前記ポリペプチドの活性である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記特性が、前記ポリペプチドの発現である、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項10】
c) 前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の集団を、該ポリペプチドの発現又は活性を顕著に阻害する化合物と接触させる工程;及び、
d) 骨吸収を阻害する化合物を同定する工程;
をさらに含む、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
試験される化合物を、コントロールに対して比較する工程をさらに含む、請求項1〜10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記コントロールが、前記ポリペプチドが前記化合物と接触されていない場合のものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記化合物をコントロールと比較する工程をさらに含み、前記コントロールが、前記ポリペプチドを発現しない哺乳動物細胞集団である、請求項5又は10記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、市販のスクリーニングライブラリの化合物、並びに配列番号41〜69及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合親和性を有する化合物からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、ファージディスプレイライブラリ又は抗体断片ライブラリのペプチドである、請求項1記載の方法、
【請求項16】
骨吸収を阻害することに効果のある作用物質であって、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択され、前記作用物質が、配列番号1〜29及び40からなる群から選択される核酸配列の約17〜約30の連続するヌクレオチドの天然存在型ポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列、又は該天然存在型ポリヌクレオチド配列から人為操作した核酸配列を含む、前記作用物質。
【請求項17】
哺乳動物細胞内のベクターが前記作用物質を発現する、請求項16記載の作用物質。
【請求項18】
OPGアッセイにおいてオステオプロテゲリン(OPG)発現を誘導することに効果的である、請求項16記載の作用物質。
【請求項19】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴性ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純疱疹ウイルスベクター、又はセンダイウイルスベクターである、請求項17記載の作用物質。
【請求項20】
前記アンチセンスポリヌクレオチド及び前記siRNAが、センス鎖に相補的な17〜25ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、前記センス鎖が、配列番号1〜29及び40からなる群から選択される核酸配列の17〜25の連続ヌクレオチドから選択される、請求項16記載の作用物質。
【請求項21】
前記siRNAが、前記センス鎖をさらに含む、請求項20記載の作用物質。
【請求項22】
前記センス鎖が、配列番号81〜97及び107からなる群から選択される、請求項21記載の作用物質。
【請求項23】
前記siRNAが、前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖を連結しているループ領域を更に含む、請求項20記載の作用物質。
【請求項24】
前記ループ領域が、UUGCUAUA又はGUUUGCUAUAAC(配列番号108)からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項23記載の作用物質。
【請求項25】
前記作用物質が、配列番号81〜97及び107からなる群から選択される核酸配列に相補的な核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム又はsiRNAである、請求項16〜24のいずれか1項記載の作用物質。
【請求項26】
治療上有効量の請求項16〜25のいずれか1項記載の作用物質を医薬として許容し得る担体との混合物において含む、骨吸収阻害医薬組成物。
【請求項27】
骨代謝におけるアンバランスが関与する疾患に苦しむ対象又は該疾患に感受性である対象における該疾患の治療及び/又は予防における使用のための請求項26記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記疾患が関節変性疾患である、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記疾患が関節リウマチである、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
異常な骨吸収が関与する疾患の治療及び/又は予防における使用のための請求項16〜25のいずれか1項記載の作用物質。
【請求項31】
前記疾患が、関節変性疾患及び炎症疾患からなる群から選択される、請求項30記載の作用物質。
【請求項32】
前記疾患が関節リウマチである、請求項30又は31記載の作用物質。
【請求項33】
異常なオステオプロテゲリン(OPG)発現及び/又は活性により特徴づけられる状態の治療又は予防における使用のための請求項16〜25のいずれか1項記載の作用物質。
【請求項34】
前記治療及び/又は予防が、前記医薬組成物又は前記OPG誘導性作用物質を、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)又は抗炎症化合物と組み合わせて投与することをさらに含む、請求項26〜33のいずれか1項記載の作用物質又は医薬組成物。
【請求項35】
前記DMARDが、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、リツキシマブ、CTLA4-Ig メトトレキサート、レフルノミド及びスルファサラジンからなる群から選択される、請求項34記載の方法又は使用。
【請求項36】
前記抗炎症剤が、副腎皮質ステロイド又は非ステロイド性抗炎症剤からなる群から選択される、請求項34記載の方法又は使用。
【請求項37】
対象における異常な骨吸収が関与する病的状態又は該状態に対する感受性を診断する方法であって、前記対象から得られる生体サンプルに存在する配列番号41〜67及び80からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの第1の量を測定すること、並びに、前記第1の量を、健常対象集団で測定された該ポリペプチド量の範囲と比較することを含み、該健常対象について測定された量の範囲に対して比較される前記生体サンプル中のポリペプチド量の増加が該病的状態の存在の指標である、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−B】
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【図7A−B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−538244(P2010−538244A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512694(P2010−512694)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057820
【国際公開番号】WO2008/155397
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】