説明

骨材用プライマー組成物、舗装材用骨材およびこれを用いる舗装材

【課題】硬質骨材が脱離しにくく耐クラック性に優れる舗装材および硬質骨材との接着性に優れる骨材用プライマー組成物の提供。
【解決手段】ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤と溶剤とを含有する骨材用プライマー組成物、および、硬質骨材を含む骨材を前記骨材用プライマー組成物で処理することにより得られうる舗装材用骨材と樹脂バインダーとからなる舗装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨材用プライマー組成物、舗装材用骨材およびこれを用いる舗装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃タイヤを機械的に粉砕したゴムチップ等の弾性骨材と硬質骨材とをウレタンバインダーで結合してなる弾性舗装材が、歩道、車道等に使用されている。このような弾性舗装材において、硬質骨材をシランカップリング剤で表面処理して用いることが特許文献1に記載されている。
すなわち、特許文献1には、外部環境劣化に対する耐久性に優れた弾性舗装材の提供を目的として、「硬質骨材及び弾性骨材をウレタンバインダーで結合してなる弾性舗装材において、該硬質骨材がシランカップリング剤で前処理された表面処理硬質骨材であり、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を含むことを特徴とする弾性舗装材。」が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−342906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、特許文献1に記載されている弾性舗装材について、経時的に湿潤時の滑り抵抗が低くなることを見出した。このような滑り抵抗の低下は、硬質骨材が弾性舗装材から離脱したり、硬質骨材とウレタンバインダーとの界面にクラックが発生することが原因であることを本発明者は発見した。
【0005】
したがって、本発明の目的は、硬質骨材が脱離しにくく耐クラック性に優れる舗装材および硬質骨材との接着性に優れる骨材用プライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤と溶剤とを含有する組成物が硬質骨材との接着性に優れること、および、このような組成物で処理された硬質骨材と樹脂バインダーとからなる舗装材は、硬質骨材が舗装材から脱離しにくく耐クラック性に優れることとを知見し、これらの知見に基づき本発明を完成させたのである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(11)を提供する。
(1)ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤と溶剤とを含有する骨材用プライマー組成物。
(2)前記ウレタンプレポリマーが、骨格にポリカーボネートの構造を有する上記(1)に記載の骨材用プライマー組成物。
(3)前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が全て、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合している上記(1)または(2)に記載の骨材用プライマー組成物。
(4)前記ウレタンプレポリマーが官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーを含み、前記官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーの量が前記ウレタンプレポリマー中の10〜90質量%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の骨材用プライマー組成物。
(5)前記潜在性硬化剤が、ケトンまたはアルデヒドとアミンとから導かれるイミン化合物である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の骨材用プライマー組成物。
(6)前記イミン化合物が、下記式(I)または式(II)で表されるケチミンである上記(5)に記載の骨材用プライマー組成物。
【0008】
【化2】

【0009】
[式(I)中、R1およびR3は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基または水素原子を表し、R2は、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R4は、R1またはR2と互いに結合して環を形成してもよい。ただし、R4がR2と結合して環を形成し、さらに、カルボニル基のα位の炭素原子のうち前記環に含まれる炭素原子がR2またはR4と二重結合で結合する場合、R3は存在しない。式(II)中、R5およびR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5とR6とは互いに結合して環を形成してもよい。]
(7)さらに、エポキシ樹脂を含有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載の骨材用プライマー組成物。
(8)前記エポキシ樹脂の含有量が、前記ウレタンプレポリマーと前記エポキシ樹脂との合計量の10〜90質量%である上記(7)に記載の骨材用プライマー組成物。
(9)硬質骨材を含む骨材を上記(1)〜(8)のいずれかに記載の骨材用プライマー組成物で処理することにより得られうる舗装材用骨材。
(10)前記骨材が、さらに弾性骨材を含む上記(9)に記載の舗装材用骨材。
(11)上記(9)または(10)に記載の舗装材用骨材と樹脂バインダーとからなる舗装材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の骨材用プライマー組成物は、硬質骨材との接着性に優れる。
また、本発明の舗装材は、硬質骨材が脱離しにくく耐クラック性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
まず、本発明の骨材用プライマー組成物について説明する。
本発明の骨材用プライマー組成物は、ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤と溶剤とを含有する組成物である。
【0012】
本発明の骨材用プライマー組成物に用いられるウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基がヒドロキシ基に対して過剰となる量比で反応させることにより得られうるものであれば、特に制限されない。
【0013】
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0014】
なかでも、ポリイソシアネート化合物は、硬質骨材との接着性により優れ、耐熱性、耐水性に優れるという観点から、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているものが好ましい。このようなポリイソシアネート化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【化3】

【0015】
式中、Raは、酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むことができる有機基を表し、Rbは酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むことができる有機基または水素原子を表し、RaとRbとは同一でも異なっていてもよく、pは2以上の整数であり、Rcは酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むことができる、2価以上の炭化水素基を表し、Raは、Rcの一部またはRbと結合して環を形成することができる。
【0016】
有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。有機基は、酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含むことができ、具体的には例えば、カルボニル基、尿素基(カルバミド基)、イソシアネート基のような官能基;エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合のような結合を含むことができる。
【0017】
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0018】
アリール基としては、例えば、フェニル基;ナフタレン、アントラセンのような縮合多環炭化水素から水素原子を少なくとも1個除いた基;フラン、チオフェン、ピロール、ピリジンのような複素環から水素原子を少なくとも1個除いた基が挙げられる。アリール基はフェニル基であるのが、強度、接着性の観点から好ましい態様の1つとして挙げられる。
aがRbと結合して環を形成する場合、形成されうる環としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような脂環族炭化水素基が挙げられる。
【0019】
脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基は、貯蔵安定性、硬化性、密着性、作業性の観点から、脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基であるのが好ましい。式(1)中のRaおよびRbがいずれもメチル基であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0020】
2価以上の炭化水素基は、特に制限されず、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、ベンゼン環のような芳香族炭化水素基が挙げられる。2価以上の炭化水素基は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせることができる。
aがRcの一部またはRbと結合して環を形成する場合、形成されうる環としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基のような2価以上の脂環族炭化水素基が挙げられる。
pは、2以上の整数であり、2〜4の整数であるのが、基材との密着性の観点から好ましい。
【0021】
式(1)で表される化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(水添MDI)、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、トルエンジイソシアネートの水素添加物(水添TDI)のような、イソシアネート基が脂肪族第二級炭素原子に結合しているポリイソシアネート化合物;式(2)で表されるm−またはp−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、α−メチルスチレン骨格のイソシアネート化合物(TMI)を重合させて得られるポリイソシアネート化合物のような、イソシアネート基が脂肪族第三級炭素原子に結合しているポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ビュレット体、アダクト体が挙げられる。
【0022】
【化4】

【0023】
なかでも、硬質骨材との接着性により優れ、得られるプライマー層の弾性に優れるという観点から、式(2)で表されるm−またはp−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が好ましい。
【0024】
なお、ポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を1個のみ有するモノイソシアネート化合物と併用して使用することができる。
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、低分子量多価アルコール類、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオールが挙げられる。
【0026】
低分子多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールのような2個のヒドロキシ基を有するアルコール類;グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールのような3個以上のヒドロキシ基を有するアルコール類;ソルビトールのような糖類が挙げられる。
【0027】
ポリカーボネートポリオールは、カーボネート結合(−O−CO−O−)と2個以上のヒドロキシ基とを有するものであれば特に限定されない。例えば、ジアルキルカーボネートのアルコキシ基と、ポリオール化合物のヒドロキシ基から水素原子を除いた基とのエステル交換反応により得られうるものが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの製造の際に使用されうるポリオール化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの製造の際に使用されうるジアルキルカーボネートとしては、例えば、下記式(3)で表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。
【0028】
【化5】

【0029】
式中、R7、R8は、それぞれ独立に、炭素数12以下のアルキル基を表す。なかでも、炭素数12以下のアルキル基は、基材との密着性、貯蔵安定性、ぬれ性、作業性、原料の入手のしやすさの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基であるのが好ましい。
【0030】
式(3)で表されるジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが挙げられる。
【0031】
ポリカーボネートポリオールは、その製造について、特に制限されない。例えば、従来公知の方法に従って行うことができる。上述のようなエステル交換反応によりポリカーボネートポリオールを製造する場合、エステル交換反応は触媒の存在下で行うことができる。使用されうる触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物;水酸化カリウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物;ナトリウムメチレート、カリウムメチレート、チタンテトライソプロピレート、ジルコニウムテトライソプロピレートのような金属アルコレートが挙げられる。
【0032】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールのような炭素数2〜10の鎖状脂肪族炭化水素化合物のジオール体から得られうるポリカーボネートポリオール、シクロヘキサンジオールのような炭素数3〜10の脂環式炭化水素化合物のジオール体から得られうるポリカーボネートポリオールが挙げられる。なかでも、密着性、ぬれ性、原料の入手のしやすさの観点から、炭素数2〜10の脂肪族炭化水素化合物のジオール体から誘導されるポリカーボネートポリオールであるのが好ましい。
【0033】
また、ポリカーボネートポリオールは、密着性、ぬれ性の観点から、その重量平均分子量が1000以上であるのが好ましい。
ポリカーボネートポリオールは、密者性、ぬれ性の観点から、炭素数6以上の鎖状脂肪族炭化水素化合物のジオール体から誘導され、分子量が1000以上のものであるのがより好ましい。
具体的なポリカーボネートポリオールとしては、例えば、HO[(CH26−O−C(=O)−O]m(CH26−OH(mは、2〜50の整数である。)が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールは、通常、上記の低分子量多価アルコール類から導くことができる。本発明においては、更に芳香族ジオール類から導かれるものも用いることができる。芳香族ジオール類としては、例えば、キシリレングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、スチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシエチルフェノール;下記に示す、ビスフェノールA構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造のようなビスフェノール骨格を有するものが挙げられる。
【0035】
【化6】

【0036】
低分子量多価アルコール類および/または芳香族ジオール類から導かれるポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子量多価アルコール類および芳香族ジオール類から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)のようなアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオールが挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオールが挙げられる。
また、ビスフェノール骨格を有するポリエーテルポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)に、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0037】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記の低分子量多価アルコール類および/または芳香族ジオール類と多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール)、ラクトン系ポリオールが挙げられる。
縮合系ポリエステルポリオールを製造する際に使用される多塩基性カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、他の低分子量カルボン酸、オリゴマー酸、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコールとの反応生成物のようなヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
ラクトン系ポリオールとしては、例えば、プロピオンラクトン、バレロラクトンのような開環重合体が挙げられる。
また、ビスフェノール骨格を有するポリエステルポリオールとしては、例えば、上記の低分子量多価アルコール類に代えてまたは低分子量多価アルコール類とともに、ビスフェノール骨格を有するジオールを用いて得られる縮合系ポリエステルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ビスフェノールAとヒマシ油とから得られるポリエステルポリオール、ビスフェノールAとヒマシ油とエチレングリコールとプロピレングリコールとから得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0038】
その他のポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオールのような炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオールが挙げられる。
【0039】
ポリオール化合物は、得られるプライマー層の機械的強度に優れるという観点から、ポリカーボネートポリオールが好ましい。また、硬質骨材との接着性により優れるという観
点から、ヒドロキシ基を3個以上有するアルコール類が好ましく、1,1,1−トリメチロールプロパンがより好ましい。
ポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
本発明の骨材用プライマー組成物に含有されるウレタンプレポリマーは、骨格にポリカーボネートの構造を有するのが、プライマーと硬質骨材との接着性により優れ、プライマーの機械的特性に優れるという観点から好ましい。このため、このようなウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物はポリカーボネートポリオールであるのが好ましい。
【0041】
また、ウレタンプレポリマーは、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の全てが、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているものであるのが、ウレタンプレポリマー自体の保存安定性に優れ、硬質骨材との接着性により優れるという観点から好ましい。したがって、このようなウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基の全てが、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているポリイソシアネート化合物が好ましく、式(1)で表される化合物がより好ましく、水添MDI、水添TDI、式(2)で表されるm−またはp−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)がさらに好ましい。
【0042】
ウレタンプレポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
2種以上のウレタンプレポリマーを組み合わせて使用する場合、ウレタンプレポリマーは、官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーを含むのが好ましい。ウレタンプレポリマーが、官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーを含む場合、硬質骨材との接着性により優れ、得られるプライマー層の弾性に優れる。
【0043】
官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基を3個以上有するアルコール類と、イソシアネート基が脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているジイソシアネート化合物との付加体が挙げられる。具体的には、例えば、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)とから合成されるTMXDI/TMP付加体が好ましい態様の1つとして挙げられる。
このような付加体の市販品として、例えば、日本サイテックインダストリーズ社製のサイセン3174を用いることができる。付加体は未反応原料を含んでいてもよい。
【0044】
官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーの量は、使用されるウレタンプレポリマー中の10〜90質量%であるのが、架橋密度を高くし、プライマー層の弾性に優れ、硬質骨材との接着性により優れるという観点から好ましく、20〜70質量%であるのがより好ましい。
【0045】
官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーと組み合せることが可能な、官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマー以外のウレタンプレポリマーは、特に制限されない。例えば、ポリカーボネートポリオールとイソシアネート基が脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているポリイソシアネート化合物とから得られうる、1500を超える重量平均分子量を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、ポリカーボネートポリオールとテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)とから得られうる、1500を超える重量平均分子量を有するウレタンプレポリマーが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0046】
官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマー以外のウレタンプレポリマーの量は、使用されるウレタンプレポリマー中の10〜90質量%であるのが、硬質骨材との接着性により優れるという観点から好ましく、30〜80質量%であるのがより好ましい。
【0047】
ウレタンプレポリマーは、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。
【0048】
本発明の骨材用プライマー組成物に含有される潜在性硬化剤について以下に説明する。 潜在性硬化剤は、ウレタンプレポリマーの硬化剤となりうる化合物であれば特に制限されない。例えば、イミン化合物が挙げられる。
イミン化合物は、イミノ結合(>C=N−)を有する化合物である。イミン化合物としては、例えば、ケトンまたはアルデヒドとアミンとから導かれる化合物が挙げられる。具体的には、ケトンとアミンとから導かれるケチミン、アルデヒドとアミンとから導かれるアルジミンが挙げられる。
【0049】
イミン化合物の製造の際に使用されるケトンまたはアルデヒドとしては、例えば、下記式(I)または式(II)で表される化合物が挙げられる。なかでも、ケトンのカルボニル基の少なくとも一方のα位の炭素原子、または、アルデヒドのカルボニル基のα位の炭素が、第二級炭素原子または第三級炭素原子となる下記式(I)で表される化合物であるのが好ましい。
【0050】
【化7】

【0051】
式(I)中、R1およびR3は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基または水素原子を表し、R2は、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R4は、R1またはR2と結合して環を形成してもよい。ただし、R4がR2と結合して環を形成し、さらに、カルボニル基のα位の炭素原子のうち、該環に含まれる炭素原子が、R2またはR4と二重結合で結合する場合、R3は存在しない。なお、R4が、R1またはR2と結合して環を形成する場合、形成されてなる環状炭化水素としては、例えば、脂肪族炭化
水素、芳香族炭化水素が挙げられる。
【0052】
式(II)中、R5およびR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5とR6とは、互いに結合して環を形成してもよい。なお、R5とR6が結合して環を形成する場合、形成されてなる環状炭化水素としては、例えば、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。
【0053】
式(I)で表される化合物は、上述したように、イミノ化された際にイミノ結合を構成する炭素原子(以下、「イミン炭素原子」ともいう。)のα位の炭素原子の一方が、2個または3個の置換基を有しており、いわば分岐炭素原子となっている。このようにイミン炭素原子は嵩高い基と比較的嵩の小さな基とを有するため、式(I)で表される化合物は硬化性と可使時間とがいずれも好適範囲になる。
【0054】
また、式(II)で表される化合物は、イミン炭素原子のα位の炭素原子の両方が、炭素原子数1〜6のアルキル基と結合している。また、炭素原子数1〜6のアルキル基2個は、互いに結合して環を形成することができる。このようにイミン炭素原子が2個の炭素原子数2〜7のアルキル基を有するため、式(II)で表される化合物は、硬化性と可使時間とがいずれも好適範囲になる。
【0055】
式(I)で表される化合物としては、具体的には、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチル−t−ブチルケトン(MTBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ピバルアルデヒド(トリメチルアセトアルデヒド)、カルボニル基に分岐炭素が結合したイソブチルアルデヒド((CH32CHCHO)、メチルシクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキシルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノンが挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、MTBK、MIPKが好ましい。
【0056】
また、式(II)で表される化合物としては、具体的には、例えば、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ブチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルアミルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトンが好ましい。
【0057】
一方、イミン化合物の製造の際に使用されるアミン化合物としては、例えば、分子内にアミノ基を2個以上有するポリアミンであるのが挙げられる。なかでも、脂肪族ポリアミンおよび/または脂環式ポリアミンであるのが好ましい。また、反応調整が容易であるという観点から、エチレンジアミン、下記式(4)で表されるポリアミンが好ましい。
【0058】
【化8】

【0059】
式中、R9は炭素原子数1〜20の2〜6価の炭化水素基を表し、nは2〜6の整数である。
炭素原子数1〜20の2〜6価の炭化水素基は、特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、式(4)中のアミノ基の窒素原子と結合して環構造を形成することができる。
【0060】
式(4)で表されるポリアミンとしては、具体的には、例えば、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD、デュポン・ジャパン社製)、ノルボルナンジアミン(NBDA、三井化学社製)などのノルボルナン骨格を有するジアミン、ジシクロペンタジエン骨格のジアミンのような脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン(MXDA)、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタンのような芳香族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン;サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148に代表されるポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC、三菱ガス化学社製)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミンのような脂環式ポリアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、ポリプロピレングリコール(PPG)を骨格に持つサンテクノケミカル社製のジェファーミンD230、ジェファーミンD400が挙げられる。
【0061】
ジシクロペンタジエン骨格のジアミンとしては、例えば、下記式(III)であらわされる3(4),8(9)−ビス−(アミノメチル)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(異性体、TCDジアミン)およびその混合物が挙げられる。
TCDジアミンの異性体の混合物の市販品としては、例えば、セラニーズ・ケミカル社製のものが挙げられる。
【0062】
【化9】

【0063】
これらのうち、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、m−キシリレンジアミン(MXDA)、ジシクロペンタジエン骨格のジアミン、ジェファーミンEDR148(商品名)、ポリアミドアミンであるのが好ましい。
アミン化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
イミン化合物は、上記の各種ケトンまたはアルデヒドと上記の各種アミンとの組み合わせにより得られうるものが挙げられる。
例えば、MIBKとプロピレンジアミンとから得られるもの;MIPKおよび/またはMTBKとヘキサメチレンジアミンとから得られるもの;MIPKおよび/またはMTBKとジェファーミンEDR148とから得られるもの;MIPKおよび/またはMTBKと1,3BACとから得られるもの;MIPKおよび/またはMTBKとNBDAとから得られるもの;MIPKおよび/またはMTBKとMXDAとから得られるもの;MIPKおよび/またはMTBKとポリアミドアミンとから得られるもの;ジエチルケトンとMXDAとから得られるもの;MIPKおよび/またはMTBKとジシクロペンタジエン骨格のジアミンとから得られるものが挙げられる。
これらのうち、MIPKまたはMTBKとヘキサメチレンジアミンとから得られるもの;MIPKまたはMTBKと1,3BACとから得られるもの;MIPKまたはMTBKとNBDAとから得られるもの;MIPKまたはMTBKとMXDAとから得られるもの;MIPKおよび/またはMTBKとジシクロペンタジエン骨格のジアミンとから得られるものが、硬質骨材との接着性がより優れるという観点から好ましい。
【0065】
また、アルデヒドとポリアミンとの組み合わせから得られるイミン化合物としては、例えば、ピバルアルデヒド、イソブチルアルデヒドおよびシクロヘキサンカルボクスアルデヒドからなる群より選択される少なくとも1種のアルデヒドと、NBDA、1,3BAC、ジェファーミンEDR148およびMXDAからなる群より選択される少なくとも1種のアミンとの組み合わせから得られるものが挙げられる。
【0066】
イミン化合物は、その製造について特に制限されない。例えば、ケトンまたはアルデヒドとアミンとを、無溶媒でまたはベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒中で、加熱環流させ、脱離してくる水を共沸により除きながら反応させることにより得ることができる。
【0067】
本発明の骨材用プライマー組成物は、イミン化合物を用いることにより、密着性、乾燥性、機械的特性に優れる。これは、空気中の水分等によりイミン化合物が容易に加水分解されてアミンを生成し、生成したアミンにより、ウレタンプレポリマーとの硬化反応が速やかに進行するためであると本発明者は考える。
【0068】
イミン化合物の含有量は、(ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基)/(イミン化合物中のイミノ結合)で表される当量比で、0.5〜1.5であるのが好ましく、0.95〜1.05であるのがより好ましい。イミン化合物の含有量がこのような範囲の場合、硬質骨材との接着性により優れる。
【0069】
本発明のプライマー組成物において、潜在性硬化剤がイミン化合物の場合、さらに、加水分解触媒を含有するのが好ましい態様の一つである。
加水分解触媒は、特に限定されず、その具体例としては、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸のようなカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートのようなリン酸類;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートのような有機金属類が挙げられる。
このような加水分解触媒を含有する場合、骨材をプライマー組成物で処理する際に、湿気等による加水分解が促進され、作業性および密着性のバランスが向上するため好ましい。
【0070】
加水分解触媒の含有量は、イミン化合物100質量部に対して0.01〜30質量部であるのが好ましく、0.1〜20質量部であるのがより好ましい。
【0071】
本発明の骨材用プライマー組成物に含有される溶剤について以下に説明する。
溶剤は、ウレタンプレポリマーおよび潜在性硬化剤に対して不活性であれば特に制限されない。例えば、ベンゼン、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類が挙げられる。なかでも、酢酸エチル、トルエンが、沸点が低く乾きが速いという観点から好ましい。
溶剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、溶剤は、充分に乾燥または脱水してから用いることが好ましい。
【0072】
溶剤の含有量は、本発明の骨材用プライマー組成物全量中の、50〜99質量%であるのが好ましく、80〜98質量%であるのがより好ましい。このような範囲の場合、得られる骨材用プライマー組成物の塗布性、乾燥性に優れる。
【0073】
本発明の骨材用プライマー組成物は、さらに、エポキシ樹脂を含有するのが、硬質骨材に対する接着性により優れるという観点から好ましい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物からなる樹脂であれば特に限定されない。エポキシ当量が90〜2000のものを使用することができる。
また、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物や、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、更にナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物のような二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、三官能型、テトラフェニロールエタン型のような多官能型のようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;下記式(5)で表されるN,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリンのようなグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;下記式(6)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を有するエポキシ化合物、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエンとメタクレゾール等のクレゾール類もしくはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる公知の製造方法によって得ることができるエポキシ化合物;脂環型エポキシ樹脂;東レチオコール社製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0074】
【化10】

【0075】
式(6)中、mは0〜15の整数である。
なかでも、骨格に芳香環を有するエポキシ樹脂が、硬質骨材に対する接着性により優れ、耐熱性、機械的強度に優れるという観点から好ましい。
エポキシ樹脂は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
エポキシ樹脂の含有量は、ウレタンプレポリマーおよびエポキシ樹脂の合計量の10〜90質量%であるのが好ましく、30〜80質量%であるのがより好ましい。このような範囲の場合、硬質骨材との接着性により優れる。
【0077】
本発明の骨材用プライマー組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記各種成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤が挙げられる。
【0078】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0079】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0080】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
本発明の骨材用プライマー組成物は、その製造について、特に限定されない。例えば、ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤と必要に応じて使用することができる、エポキシ樹脂や添加剤とを、溶剤中で、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合する方法が挙げられる。
本発明の骨材用プライマー組成物は骨材(例えば、舗装材用)を処理するのに使用することができる。
【0082】
本発明の骨材用プライマー組成物は、湿気等によって潜在性硬化剤が加水分解されて硬化剤を生成し、生成した硬化剤がウレタンプレポリマーと反応することによって硬化しプライマー層が形成される。本発明の骨材用プライマー組成物から得られるプライマー層は、従来のプライマー組成物と比べて、硬質骨材との接着性、樹脂バインダーとの接着性、弾性に優れる。
また、本発明の骨材用プライマー組成物は潜在性硬化剤を含有することにより、従来のプライマー細成物と比べて、硬化反応が速く、乾燥性、機械的特性に優れる。
【0083】
次に、本発明の舗装材用骨材について説明する。
本発明の舗装材用骨材は、硬質骨材を含む骨材を本発明の骨材用プライマー組成物で処理することにより得られうるものである。
【0084】
本発明の舗装材用骨材に使用される骨材用プライマー組成物は、本発明の骨材用プライマー組成物であれば特に制限されない。
本発明の舗装材用骨材に使用される骨材について以下に説明する。
骨材は、硬質骨材を含むものである。骨材の全部が硬質骨材であってもよい。
【0085】
硬質骨材は、特に制限されない。例えば、山砂利、川砂利のような天然石からなる天然骨材;砕石、寒水石、珪砂、人工石、スラグ、セラミックスのような人工骨材;金属粉のような金属粒状物が挙げられる。なかでも、コストの点から、砕石、珪砂の粒状物が好ましい。
硬質骨材は、舗装材の強度、耐摩耗性を優れたものとすることができる。また、硬質骨材は舗装材の表面に露出してタイヤ等が滑るのを防ぐことができ、防滑性に優れる。このような観点により優れることから、硬質骨材の平均粒径は、1mm以上であるのが好ましく、1〜4mmがより好ましい。また、硬質骨材は、平均粒径4mm以下の細粒骨材を10体積%以上含むのが同様の観点から好ましい。
【0086】
本発明の舗装材用骨材において、骨材は、さらに、弾性骨材を含むのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
弾性骨材としては、例えば、各種のゴム、合成樹脂、木片またはコルクのチップが挙げられる。なかでも、舗装材の弾性に優れるという観点から、ゴム、合成樹脂が好ましい。
ゴムチップとしては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルニトリルブタジエンゴム、ポリウレタンゴム、EPDMが挙げられる。経済性の点からは、産業廃棄物としての廃タイヤを粉砕したものが好ましい。
【0087】
ゴムチップは、その形状が、例えば、粒状、ひじき状のものが挙げられる。
粒状ゴムチップの平均粒経は、舗装材の弾性に優れ、舗装材が多孔構造となりやすいという観点から、1mm以上であるのが好ましく、1〜4mmがより好ましい。
ひじき状ゴムチップは、その形状がひじき状のものであれば特に制限されない。ひじき状ゴムチップの平均長さは、舗装材の弾性に優れ、舗装材が多孔構造となりやすいという観点から、0.5〜6mmであるのが好ましい。
【0088】
合成樹脂チップは、ゴムチップ以外の各種合成樹脂材料から得られる粒状物であれば特に制限されない。例えば、自動車のバンパーやゴルフボールの粉砕品が挙げられる。
【0089】
なお、本明細書において硬質骨材と弾性骨材とはその硬度によって分類することとする。つまり、硬質骨材はその硬度がJIS K 6253−1997のタイプAデュロメータ硬さでA90より大きいものとする。また、弾性骨材はその硬度がA90以下であるものとする。
【0090】
本発明の舗装材用骨材において、使用される骨材は、硬質骨材のみである場合と硬質骨材および弾性骨材を含む場合とが挙げられる。
骨材が硬質骨材および弾性骨材を含む場合、硬質骨材と弾性骨材の組み合わせは特に限定されない。ゴムチップと砕石の組み合わせが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0091】
また、骨材が硬質骨材および弾性骨材を含む場合、硬質骨材と弾性骨材の混合比率は各種用途に合わせて適宜変更することができる。例えば、歩道に用いる場合には、弾性骨材/硬質骨材の体積比は10/0.1〜5/5が適している。このような範囲の場合、衝撃吸収性が十分であり、転倒時の安全性に優れている。特に転倒時の衝撃に対する安全性を重視する場合は、10/0.1〜7/3が好ましく、10/0.1〜8/2がより好ましい。
また、各種競技場用に用いる場合には、弾性骨材/硬質骨材の体積比は、それぞれ、陸上競技場用としては10/0.1〜6/4、ジョギング走路用として10/0.1〜6/4、テニスコート用としては10/0.1〜7/3、サッカー場用としては9/1〜5/5、その他多目的グラウンド用としては10/0.1〜5/5が適している。
【0092】
車道に用いる場合には、弾性骨材/硬質骨材の体積比は6/4〜1/9が適している。このような範囲の場合、湿潤時にタイヤが滑りやすいなどの車両の操縦安定性に問題がなく、騒音低減効果に優れる。なかでも、高速道路等の耐摩耗性が特に要求される場合には、弾性骨材/硬質骨材の体積比は4/6〜1/9が好ましく、3/7〜1/9がより好ましい。
【0093】
骨材用プライマー組成物の使用量は、硬質骨材との接着性により優れるという観点から、骨材100gに対して、0.5〜15gであるのが好ましい。
【0094】
本発明の舗装材用骨材において、骨材を本発明の骨材用プライマー組成物で処理する方法は、特に制限されない。例えば、本発明の骨材用プライマー組成物を骨材に噴霧、塗布する方法、骨材を本発明の骨材用プライマー組成物にディッピングする方法が挙げられる。
本発明の骨材用プライマー組成物で処理された骨材は、少なくとも表面の一部が本発明の骨材用プライマー組成物で被覆されていればよく、接着性の観点から、表面全体が被覆されているのが好ましい。
また、このようなプライマー処理工程の後に、溶剤を乾燥させるために、乾燥工程を設けることができる。乾燥温度は、乾焼時間を短縮でき、硬質骨材との接着性により優れるという観点から、60〜80℃であるのが好ましい。
【0095】
本発明の舗装材用骨材は、プライマーと硬質骨材との接着性、プライマー層の弾性、プライマーと樹脂バインダーとの接着性に優れる。したがって、本発明の舗装材用骨材を用いて、これと樹脂バインダーとを混合させることにより得られる舗装材は、硬質骨材が弾性舗装材から離脱したり、硬質骨材と樹脂バインダーとの界面にクラックが発生することが少ない。
【0096】
次に、本発明の舗装材について説明する。
本発明の舗装材は、本発明の舗装材用骨材と樹脂バインダーとからなるものである。
本発明の舗装材において使用される舗装材用骨材は、本発明の舗装材用骨材であれば特に制限されない。本発明の舗装材用骨材は、上述のとおりである。
【0097】
樹脂バインダーについて以下に説明する。
本発明の舗装材に使用される樹脂バインダーは、骨材を固定して舗装材を形成しうるものであれば特に制限されない。例えば、ウレタン樹脂が挙げられる。
樹脂バインダーとしてのウレタン樹脂は、特に制限されず、例えば、従来公知のものを使用することができる。
【0098】
樹脂バインダーは、必要に応じて、添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、チクソトロピー付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤が挙げられる。各添加剤としては、例えば、従来公知のものが挙げられる。添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。添加剤の使用量は特に制限されない。
【0099】
舗装材が着色されていることが景観上求められる場合には、樹脂バインダーに顔料を添加することにより着色することができる。顔料の添加量は、樹脂バインダー100体積部に対して、1.5〜8体積部であることが好ましい。また、骨材として、有色材料を用いることもできる。例えば、EPDM等のゴム、合成樹脂、人工石等のカラーチップが挙げられる。
硬化速度を更に向上させる場合には、施工時に、アミン系硬化剤、酸系硬化剤、酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、ポリチオール系硬化剤、水のような従来公知の硬化剤を添加することができる。
【0100】
本発明の舗装材において、舗装材用骨材と樹脂バインダーとの配合比(舗装材用骨材/樹脂バインダーで体積比により示す。)は、用途に応じて適宜選択できる。例えば、歩道用としては9/1〜6/4が適しており、9/1〜7/3が特に好適である。また、陸上競技場用としては9/1〜6/4、ジョギング走路用としては9/1〜6/4、テニスコート用としては9/1〜7/3、サッカー場用としては9/1〜5/5、その他多目的グラウンド用としては9/1〜5/5が適している。
車道に用いる場合には、舗装材用骨材と樹脂バインダーとの配合比(舗装材用骨材/樹脂バインダーで体積比により示す。)は、9/1〜6/4が適しており、8/2〜6/4が特に好適である。例えば高速道路に用いる場合には、8/2〜6/4が適している。
【0101】
本発明の舗装材について添付の図面を用いて説明する。
図2〜図3は、本発明の舗装材が敷設された舗装道路の例を模式的に示す断面図である。
図2において、20は本発明の舗装材である。舗装材20の下には基盤24が敷設されている。基盤24は地面22の上に設けられている。
また、舗装材20は1層の舗装材である。このように舗装材が1層からなる場合、舗装材が滑り特性および弾性を兼ね備えるために、舗装材中の骨材は、硬質骨材および弾性骨材を含むのが好ましい。
【0102】
舗装材20の施工方法について以下に説明する。
舗装材20の施工方法としては、舗装材用骨材と樹脂バインダーとを混合して舗装材組成物とする混合工程と、舗装材組成物を基盤24上に敷設する敷設工程とを具備する方法が挙げられる。
【0103】
まず、混合工程において舗装材用骨材と樹脂バインダーとを混合する。具体的には、例えば、本発明の舗装材用骨材をミキサー等のかくはん装置に投入してかくはんさせ、これに樹脂バインダーと必要に応じて使用される添加剤とを添加して舗装材用組成物を調製する。舗装材用骨材と樹脂バインダーとの量比は上述のとおりである。
また、別の方法として、例えば、かくはん装置に硬質骨材を含む骨材を投入し、これに本発明の骨材用組成物を噴霧、滴下のような方法で添加してこれらを十分かくはんさせた後に、ここに樹脂バインダーと必要に応じて使用される添加剤とを添加して舗装材用組成物を調製することもできる。
【0104】
樹脂バインダーの添加方法は、樹脂バインダーを舗装材用骨材に均一に付着できる方法であれば特に限定されない。例えば、スプレー法、滴下法が挙げられる。
【0105】
次に、敷設工程において、上記のとおり調製された舗装材組成物を用いて、これを基盤24に敷設する。
地面22の上には予め基盤24を設けておく。基盤としては、例えば、コンクリート舗装、モルタル舗装、アスファルトコンクリート舗装、半たわみ舗装などの各種舗装の他、木板、合成樹脂、砕石層、栗石層のような路盤層が挙げられる。
舗装材組成物は、基盤24の上に、例えば、スムーサーやフィニッシャーを用いて所定の厚さ(例えば、歩道用には1〜2cm程度、車道用には2〜3cm程度、競技場用には1〜5cm程度)となるように敷設され、場合によってはタンデムローラーなどで締め固められ、その後常温で固化し、舗装材20となる。
必要に応じて、舗装材組成物を敷設する前に、基盤24にプライマー処理(図示せず)を行うこともできる。プライマーとしては、例えば、TMXDI系プレポリマー、MDI系プレポリマー、TDI系プレポリマーなどを溶剤(酢酸エチル、トルエンなど)や水で希釈したものが挙げられる。
【0106】
図3において、30は本発明の舗装材(以下、「上層舗装材30」という。)である。上層舗装材30の下には下層舗装材36が敷設されている。下層舗装材36の下には基盤34が設けられ、基盤34は地面32の上に設けられている。
【0107】
下層舗装材36は、弾性骨材を含む骨材と樹脂バインダーとからなる舗装材である。下層舗装材36に含有される骨材は、さらに硬質骨材を含むことができる。また、下層舗装材36に含有される骨材を実質的に弾性骨材のみとすることができる。
弾性骨材を含む骨材は本発明の骨材用プライマー組成物で処理することができる。また、弾性骨材を他の方法(例えば、従来公知の方法)で処理することができる。
下層舗装材36に含有される骨材が実質的に弾性骨材のみである場合、上層舗装材30に含有される舗装材用骨材において、その製造の際使用される骨材を実質的に硬質骨材のみとすることができる。
このように弾性を有する下層舗装材36と滑り特性を有する上層舗装材30とにより舗装材38が形成される。
【0108】
舗装材38の施工方法としては、例えば、弾性骨材を含む骨材と樹脂バインダーとを混合して下層舗装材組成物とする混合工程(以下、この混合工程を「混合工程1」という。)と、下層舗装材組成物を基盤34上に敷設して下層舗装材36とする敷設工程(以下、この敷設工程を「敷設工程1」という。)と、本発明の舗装材用骨材と樹脂バインダーとを混合して上層舗装材組成物とする混合工程(以下、この混合工程を「混合工程2」という。)と、上層舗装材組成物を下層舗装材36の上に敷設して上層舗装材30とする敷設工程(以下、この敷設工程を「敷設工程2」という。)とを具備する方法が挙げられる。なお、混合工程1は敷設工程1の前に行われればよい。また、混合工程2は敷設工程2の前に行われればよい。
【0109】
まず、混合工程1において、弾性骨材を含む骨材と樹脂バインダーとを混合して下層舗装材組成物とする。弾性骨材を含む骨材と樹脂バインダーの量比は特に制限されず、例えば、従来公知の量で混合することができる。また、混合方法は、特に限定されず、例えば、ミキサー等のかくはん装置を用いればよい。
【0110】
敷設工程1において、得られた下層舗装材組成物を基盤34上に敷設して下層舗装材36とする。基盤34は予め地面32の上に設けておく。基盤の例示は上記と同様である。基盤34に上記と同様なプライマー処理を施すことができる。また、舗装材組成物の敷設方法は上記と同様である。敷設された下層舗装材36の厚さは、歩道用には0.5〜2cm程度、車道用には1〜3cm程度、競技場用には1〜3cm程度である。下層舗装材36上にプライマーおよび/または接着剤を塗布することができる。
【0111】
混合工程2において、本発明の舗装材用骨材と樹脂バインダーとを混合して上層舗装材組成物とする。舗装材用骨材と樹脂バインダーとの量比は上述のとおりである。混合方法は上記と同様である。
【0112】
敷設工程2において、得られた上層舗装材組成物を下層舗装材36の上に敷設して上層舗装材30とする。敷設方法は上記と同様である。敷設された上層舗装材30の厚さは、歩道用には0.5〜2cm程度、車道用には1〜3cm程度、競技場用には0.5〜2cm程度である。舗装材38の厚さは、歩道用には0.5〜3cm程度、車道用には1.5〜4cm程度、競技場用には1〜5cm程度である。
以上のようにして舗装材38を得る。
【0113】
また、本発明の舗装材の施工方法としては、上記のような現場施工タイプのほか、例えば、予め金型にて、舗装材用骨材と樹脂バインダーとの組成物を所定の形状(例えば、パネル状)に成形し成形体とし、得られた成形体を基盤上に敷設して図2のような舗装材を施工する方法が挙げられる。このような1層の舗装材の敷設に用いられる基盤、舗装材組成物は上記と同様である。舗装材の厚さは、歩道用には0.5〜3cm程度、車道用には1.5〜4cm程度、競技場用には1〜5cm程度である。
【0114】
また、得られた成形体を下層舗装材の上に敷設して図3のような舗装材を施工する方法が挙げられる。このような2層からなる舗装材に用いられる基盤、下層舗装材組成物および上層舗装材組成物は上記と同様である。下層舗装材36の敷設方法は持に制限されず、下層舗装材組成物を基盤34上に例えば、スムーサーやフィニッシャーを用いて所定の厚さに敷設することもできるし、金型を用いて成形し、得られた成形体を用いて敷設することもできる。下層舗装材36上にはプライマーおよび/または接着剤を塗布することができる。下層舗装材36の厚さは、歩道用には0.5〜2cm程度、車道用には1〜3cm程度、競技場用には1〜3cm程度である。上層舗装材30の厚さは、歩道用には0.5〜2cm程度、車道用には1〜3cm程度、競技場用には0.5〜2cm程度である。舗装材38の厚さは、歩道用には0.5〜3cm程度、車道用には1.5〜4cm程度、競技場用には1〜5cm程度である。
【0115】
本発明の舗装材は、硬質骨材が弾性舗装材から離脱したり、硬質骨材と樹脂バインダーとの界面にクラックが発生することが少ない。このことにより舗装材における経時的に湿潤時の滑り抵抗が低くなることを防ぐことができる。これは、本発明の舗装材が、硬質骨材を含む骨材を本願発明の骨材用プライマー組成物で処理されることにより得られる、硬質骨材との接着性、樹脂バインダーとの接着性、弾性に優れるプライマー層を有する舗装材用骨材を使用しており、このようなプライマー層が、硬質骨材を含む舗装材において硬質骨材の界面に集中する応力をミクロ的に分散させることによると、本発明者は推察する。
なお、上述のようなメカニズムはあくまでも本発明者の推定であり、仮にメカニズムが別であっても本発明の範囲内である。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.ウレタンプレポリマーの調製
(1)ウレタンプレポリマー1の調製
ポリカーボネートポリオール(プラクセルCD220、ダイセル化学工業社製、重量平均分子量2000)と、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI、日本サイテックインダストリーズ社製)とを、イソシアネート基/ヒドロキシ基(ヒドロキシ基1個あたりのイソシアネート基の個数)(以下、単に「NCO/OH」という。)=2.0となる当量比で混合し、スズ触媒の存在下、窒素気流中、80℃で8時間、かくはんしながら反応させることにより、NCO基を3.3質量%含有するポリカーボネート/TMXDIウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマーをウレタンプレポリマー1とする。
【0117】
(2)ウレタンプレポリマー2
ウレタンプレポリマー2として、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)と、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)との反応物(NCO/OH=2.0)が、酢酸ブチルに希釈されている(固形分75質量%)サイセン3174(日本サイテックインダストリーズ社製)を用いた。
【0118】
2.潜在性硬化剤の調製
潜在性硬化剤として、ノルボルナンジアミン(NBDA、三井化学社製)100gと、メチルイソプロピルケトン(MIPK)200gとを、トルエン200gとともにフラスコに入れ、生成する水を共沸により除きながら20時間反応させることにより得られる、下記式(7)で表されるケチミンを用いた。
【0119】
【化11】

【0120】
3.実施例1
(1)骨材用プライマー組成物1の調製
上記のようにして得たウレタンプレポリマー1の50質量部と、ウレタンプレポリマー2の30質量部と、エポキシ樹脂20質量部[汎用ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるEP4100E(旭電化工業社製、エポキシ当量190)]と、上記のようにして得た潜在性硬化剤25.2質量部と、2−エチルヘキサン酸1質量部と、溶剤としてのメチルエチルケトン900質量部とを混合して、骨材用プライマー組成物を調製した。得られた骨材用プライマー組成物を骨材用プライマー組成物1とする。骨材用プライマー組成物1において、ウレタンプレポリマー2の含有率は、ウレタンプレポリマー1とウレタンプレポリマー2との合計中、31質量%であった。
【0121】
(2)舗装材用骨材1の調製
硬質骨材(7号砕石、粒径:5mm>、平均粒経:3.8mm)3kgをミキサーに投入し、かくはんしながらこれに骨材用プライマー組成物1(40g)を霧状に散布した。散布後、骨材用プライマー組成物1が散布された硬質骨材を80℃の条件下で30分乾燥させて、舗装用骨材を得た。得られた舗装用骨材を舗装用骨材1とする。
【0122】
(3)舗装材の作製
まず、第1表に示す下層用の各成分を第1表に示す組成比(単位:体積部)で混合して下層用混合物とし、下層用混合物を金型に注入して敷き均し厚さ15mmの下層部を形成した。
続いて、第1表に示す上層用の各成分を第1表に示す組成比(単位:体積部)で混合して上層用混合物とし、上層用混合物を上記の金型内にさらに注入して下層部の上に敷き均し、常温で成形、硬化させ、縦300mm、横300mm、厚さ30mm(上層の厚さ15mm、下層の厚さ15mm)のパネルを得た。
【0123】
4.比較例1
骨材用プライマー組成物で処理しない硬質骨材を用いることの他は実施例1と同様に実験を行い舗装材を得た。なお、骨材用プライマー組成物で処理されていない硬質骨材を舗装材用骨材2とする。
5.比較例2
骨材用プライマー組成物1を、pH4に調節しながら作製した、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランの1%酢酸溶液(これを、「骨材用プライマー組成物2」とする。)に代えた他は、実施例1と同様に実験を行い舗装材を得た。なお、硬質骨材を骨材用プライマー組成物2で処理することにより得られた舗装材用骨材を舗装材用骨材3とする。
【0124】
6.舗装材の評価
舗装材の繰り返し載荷走行試験を下記のとおり行った。
舗装材の繰り返し載荷走行試験について、添付の図面を用いて説明する。なお、図1は本発明において評価方法として採用される繰り返し載荷走行試験を説明するものであり、本発明は添付の図面に限定されない。
【0125】
図1は、舗装材の繰り返し載荷走行試験を模式的に示す概略図である。
図1において、1は舗装材であり、10は繰り返し載荷走行試験機である。舗装材1は、上記のとおり作製された縦300mm、横300mm、上層の厚さ15mm、下層の厚さ15mmのパネルである。繰り返し載荷走行試験機10は2本のタイヤ12と軸部14とからなる。タイヤは例えばトラックやバス用に使用されるものであればよく、本試験において使用されたタイヤのサイズは、リムの直径:22.5インチ、ラジアル構造、タイヤの断面幅:12インチ、タイヤの強度:16である。タイヤ12は軸部14の端部にそれぞれ取り付けられている。繰り返し載荷走行試験機10の軸荷重は2.1tである。軸部14の長さWは6mである。繰り返し載荷走行試験機10は、駆動装置(図示せず)によって、軸部14の中心軸16を中心として左右いずれかの方向に一定の速度で回転することができ、図1において軸部14は中心軸16を中心として左回りに回転している。このような回転にともなってタイヤ12は点線部2の上を速度12.5km/hrで走行する。点線部2には、舗装材1が配置されている。舗装材1はエポキシ樹脂系接着剤によって点線部2に固定されている。図1においては5個の舗装材1が点線部2の上に配置され同時に評価されているが、舗装材1の個数を1個で評価することもできる。また、カウンター(図示せず)によってタイヤ12が点線部2の上の1つの舗装材1を通過した通過回数(単位:輪)をカウントする。軸部14が1回転すると、タイヤ12が1つの舗装材1の上を2輪通過することとなる。
【0126】
本発明において、上記の舗装材の繰り返し載荷走行試験により、舗装材について粒取れ、クラックまたは轍掘れ・擦れが発生したときの、タイヤ12が舗装材1の上を通過した通過回数を評価した。結果を第1表に示す。
【0127】
粒取れの評価基準は、硬質骨材1個が舗装材の表面から欠落した状態とする。
クラックの評価基準は、舗装材の表面に微小のクラックが目視で確認された状態とする。
轍掘れ・擦れの評価基準は、舗装材の表面に1mm以上の轍が発生した状態とする。
また、舗装材が走行困難な状態となるまでのタイヤ12の通過回数(輪数)を記載した。
【0128】
【表1】

【0129】
第1表に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・舗装材用骨材1、3:上記のようにして得た舗装材用骨材
・舗装材用骨材2:7号砕石(粒径:5mm>、平均粒径:3.8mm、骨材用プライマー組成物による処理はされていない)
・樹脂バインダー:ポリウレタン樹脂[ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のウレタンプレポリマーの変性物、商品名:PPU16、横浜ゴム社製]
・カーボンブラック:HTC#G(粒子径64nm、吸油量80ml/100g)、新日化カーボン社製
・弾性骨材:ひじき状ゴムチップ(長さ3.36〜1mmのひじき状のゴムチップを95%以上含有するもの)
【0130】
第1表に示す結果から明らかなように、実施例1の舗装材は、比較例1〜2と比較して、硬質骨材が脱離しにくく、耐クラック性に優れ、耐久性が飛躍的に優れる。このことから、本発明の舗装材は経時的に滑り特性が低下しにくいことが分かる。また、実施例1の骨材用プライマー組成物から得られるプライマー層は、硬質骨材および樹脂バインダーとの接着性が高いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、舗装材の繰り返し載荷走行試験を模式的に示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の舗装材が敷設された舗装道路の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の舗装材が敷設された舗装道路の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0132】
1 舗装材
2 点線部
10 繰り返し載荷走行試験機
12 タイヤ
14 軸部
16 中心軸
20、38 舗装材
22、32 地面
24、34 基盤
30 上層舗装材
36 下層舗装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤と溶剤とを含有する骨材用プライマー組成物。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーが、骨格にポリカーボネートの構造を有する請求項1に記載の骨材用プライマー組成物。
【請求項3】
前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が全て、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合している請求項1または2に記載の骨材用プライマー組成物。
【請求項4】
前記ウレタンプレポリマーが官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーを含み、前記官能基を3個以上有する重量平均分子量1500以下のウレタンプレポリマーの量が前記ウレタンプレポリマー中の10〜90質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の骨材用プライマー組成物。
【請求項5】
前記潜在性硬化剤が、ケトンまたはアルデヒドとアミンとから導かれるイミン化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の骨材用プライマー組成物。
【請求項6】
前記イミン化合物が、下記式(I)または式(II)で表されるケチミンである請求項5に記載の骨材用プライマー組成物。
【化1】


[式(I)中、R1およびR3は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基または水素原子を表し、R2は、メチル基またはエチル基を表し、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R4は、R1またはR2と互いに結合して環を形成してもよい。ただし、R4がR2と結合して環を形成し、さらに、カルボニル基のα位の炭素原子のうち前記環に含まれる炭素原子がR2またはR4と二重結合で結合する場合、R3は存在しない。式(II)中、R5およびR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5とR6とは互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項7】
さらに、エポキシ樹脂を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の骨材用プライマー組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂の含有量が、前記ウレタンプレポリマーと前記エポキシ樹脂との合計量の10〜90質量%である請求項7に記載の骨材用プライマー組成物。
【請求項9】
硬質骨材を含む骨材を請求項1〜8のいずれかに記載の骨材用プライマー組成物で処理することにより得られうる舗装材用骨材。
【請求項10】
前記骨材が、さらに弾性骨材を含む請求項9に記載の舗装材用骨材。
【請求項11】
請求項9または10に記載の舗装材用骨材と樹脂バインダーとからなる舗装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−99889(P2007−99889A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291052(P2005−291052)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】