説明

髄核組織(nucleuspulposustissue)を含むヒドロゲル組成物

開示されているのは、動物の、そして特にヒトなどの脊椎動物の柔軟組織および/又は硬質組織の治療、増殖、および/又は修復に有益な方法および組成物である。本発明は、損傷部の治癒、軟骨又は半月板の修復、皮膚の増殖、および骨の融合のためのい薬剤の調製に使用するヒドロゲル組成物、ならびに椎間円板を修復する治療方法を提供する。特定例において、本発明は、椎間円板の高さが増大させ、障害、変性疾患、先天的異状性、そして/又は加齢過程に伴い危険にさらされた椎間円板において、軟骨細胞や他の細胞増殖および生存を改良させる、流体力学的機能の回復に有益な組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.1 発明の分野
本発明は、一般的に柔軟組織か硬質組織の増殖又は修復に有効な方法および組成物に関する。より具体的に本発明は、ヒトや他の哺乳動物における創傷部の治癒、軟骨および半月板の修復、皮膚の増殖、骨の融合、および椎間円板損傷部の治療のための新規なヒドロゲル組成物に関する。一つの観点において組成物が、流体機能の回復、椎間円板の高さの増大に、そして外傷、変性疾患、先天的異常性そして/又は加齢過程により危険に曝された椎間円板の軟骨細胞およびその他の細胞増殖や生存の改良に有効である。
【背景技術】
【0002】
1.2 関係技術の記載
ヒトの脊柱(棘(spine))は、柔軟組織の椎間円板で分けられた複数の関節より成る骨要素(脊椎)を含む。その椎間円板が、椎骨を相互に屈曲、伸張、そして回転させるよう構成された柔軟な結合体であり、従って骨格軸内で棘(spine)の安定性と運動性に寄与している。椎間円板は、髄核として知られた中心の、内部が柔らかく、非晶質の粘液状物質から成り、線維輪として知られた粘りの強い、線維物質の輪状リング層により周辺が囲まれている。
【0003】
隣接する椎骨の上部と下部の両端部の位置にある脊椎の端部プレートにて、髄核と線維輪が、これらの最上部と最下部(すなわち頭蓋部と尾部で)をたがいに結合している。薄層の硝子質軟骨から構成されるこれら端部プレートを、これらの外縁で線維輪の内部の層板へ直接結合している。線維輪の外側の層板が、隣接する脊椎骨の線維輪の外側端部で骨に直接結合している。従って隣接する脊椎骨の端部プレートを、線維輪により互いに結合し、そして健全な相互二つの円板状空間において、棘(spine)の構造的な負荷により髄核物質が、放射状に漏れるか、押し出されることのないよう流体の静力学的に分けられた仕切りを有している。
【0004】
柔らかく粘性の強い髄核が、軟骨細胞を含み、それがコラーゲン原線維 (主にII型のコラーゲンのみならずタイプIX,XIなど)を形成し、そして図1に示すように負に荷電し、大分子の硫化プロテオグリカンを生成する。髄核の脱細胞成分が、細胞増殖を可能にしそして健全な椎間円板に必須のマトリックスを含む。従って髄核は、細胞成分、コラーゲン成分、およびプロテオグリカン成分を含む。
【0005】
本明細書に用いられるマトリックスという用語は、構造支持体を提供し、そして椎間円板および椎間円板から呼吸および栄養物や水の移動を容易にする組成物を指している。髄核の細胞外マトリックスのコラーゲン成分が、正常な細胞(すなわち軟骨細胞)の付着や細胞増殖を提供する足場を含む。髄核の細胞外マトリックスの負に荷電したプロテオグリカン成分が、水を誘引しコラーゲン線維や軟骨細胞を包含するヒドロゲルを生成する。通常健全な髄核は、全重量の80-90%の水を含む。
【0006】
従って髄核が、正常な円形の流体力学的機能の維持に重要な役割を果している。より具体的には、大分子量のプロテオグリカンが、脊椎端部プレートの篩様孔から髄核へ水を誘引する。各椎間円板内に得られた浸透圧が、隣接する脊椎骨をさらに離すよう作用し、脊椎骨を軸方向に(すなわち垂直に)伸張する傾向となる。一方では脊椎骨を軸方向に圧縮、屈曲、そして回転を与える運動機構により、椎間円板上に力が働き、髄核から水を導出し易くなる。浸透圧の勾配と機構力を組み合わせた効果により椎間円板へ出入りする水の移動は、健全な椎間円板を維持に重要な流体力学的機能を構成する。
【0007】
正常な流体力学的機能の期間中、椎間円板と脊椎骨との間を通る水における溶質の移動が、細胞の呼吸や養分を支援し、椎間円板内の軟骨細胞の増殖を容易にする。この機能では、椎間円板の髄核組織が無血管域(ヒトの生体中最大の無血管構造)であることから、軟骨細胞の生存に必須である。さらに髄核内に十分に含有する水分を保持することが、高い機構的(衝撃)負荷を吸収し、こうした負荷の下で髄核の物質のヘルニア形成(herniation)の耐性となり、そして棘(spine)の安定性に必要な柔軟性および強度を維持するよう線維輪の水和化に重要である。
【0008】
正常な流体力学機能が、椎間円板変性疾患(DDD)にて機能的危険にさらされる(compromised)。DDDが、1又は複数の椎間円板構造や機能の劣化を含み、そして通常加齢および脊椎性外傷(trauma)と関係する。DDDの因果関係が十分に判明されていないが、変性した椎間円板に示されるものと一致する変化が、全体的に髄核や線維輪内のプロテオグリカンの含量を減少させることである。プロテオグリカンの親水性特性から、DDDと関連したプロテオグリカンの含量が減少すると、椎間円板の水の含量が付随して喪失してくる。椎間円板構造体の水和状態が減少すると線維輪が弱くなり、椎間円板のヘルニア形成に成り易くなる。髄核物質が押し出されると、ヘルニアがしばしば起り、脊髄又は神経に作用し痛み、衰弱を起こし、そして時には不治の無能化(permanent disability)となる。
【0009】
十分な椎間円板の水和が、棘(spine)の安定性および正常な可動性に重要であるため、DDDの有効な治療により、椎間円板が天然で自己支持する流体力学的機能を理想的に復帰させることになろう。こうした椎間円板再生療法により、水和した髄核の細胞外マトリックスを維持するよう実質的な椎間円板内で細胞のプロテオグリカン合成を復帰させる必要がある。こうした再生された椎間円板の流体力学的機能を改良すると、椎間円板の高さが回復し、そして
再度機能を確立する。さらにそれが、改良された水和性の線維輪を提供することができ、同様にヘルニア形成を減少できる。
【0010】
問題点の椎間円板における先行技術の方法では、正常に自己支持する流体力学的機能が回復できず、従って高い負荷により正常な棘(spine)の安定性そして/又は移動性が復帰できない。椎間円板細胞と生物的活性にて生物的に分解可能な基質とを組み合わせた物質を用い、椎間円板を改質する1の方法が、Ganらの米国特許番号5,964,807に記載され、引用として本明細書に組み入れられている。Ganらにより生物的に分解可能な基質が記載され、生物的な活性ガラス、発泡重合体、およびゾル、ゲルの生物的活性物質にて被覆された発泡重合体があげられ、細胞の機能、細胞増殖および細胞の分化の促進を意図している。
Ganらが、炎症をほとんどか又は全く伴わず、細胞を内部増殖と併行した移植物質の分解とを判定する、成熟したニュジランド・ラビットの椎間円板を改質する本方法の適応を記載している。
【0011】
しかしながら、PLAs,PGAsおよびPLGAsの酸性分解など、移植物質の変性部分が、細胞増殖、細胞機能そして/又は細胞の分化に悪影響を及ぼす場合がある。移植のための組織に関するある程度同様の開示では、細胞にて植え付け可能な増殖因子を含むマトリックス微粒子を記載している。引用により本明細書に組み入れられている、Bellに付与された米国特許番号5,800,537を参照。マトリックスおよび細胞が足場に付けられ、その足場には、生物的に分解可能な重合体、微粒子、そして紫外線放射に曝すことにより架橋され、さらに固形フォーム、より糸、フイルムを形成できるコラーゲンがあげられる。
【0012】
Bellは、特に高級塩などの試薬又はブタノール/エーテルなどの脱リシジン化(delysidation)試薬又は洗剤などの使用を避けている、その理由は、修復や再構築する処理の刺激に重要な元の組織因子の除去に関与しているという好ましくない特徴があるからである。こうした因子が、組織から得られることでなく他の資源から得られるという別の選択肢が述べられていない。
【0013】
さらに軟骨細胞の再生に関する別の開示が、Muellerらに付与された米国特許番号5,837,235に見出され、そして引用により本明細書に取り入れられている。Muellerらは、担体として使用する微粒子の自己性膜ヒダ(autologous omentum)、又は他の脂肪組織を細い粒子に細粉し、およびトランスフォーム増殖因子ベータ(TGF-β)および骨形成タンパク質(BMP)などの担体増殖因子に加えることを記載している。Muellerらは、組織を架橋して架橋マトリックスを生成することを教示していない。
【0014】
Ganらは、椎間円板に対する天然の流体力学的円板(disc)機能を実質的に復帰又は再生する過去における試みを示しているが、そうした技術が、臨床試験において証明されていない。同様にBellとMuellerらの方法は、円板の再生に広くは採用されておらず、さらに良い方法が必要とされる、その理由が、低背部(low back )へ患者が作業できないほどの激しい痛みが、あらゆる人々の生活のある時点にてその全ての人々の60-85%罹るといわれている。
【0015】
有意に安全で有効な治療が無い状態で、これらの症状の治療として米国だけで毎年椎間円板の切除が150,000人そして脊椎固定手術が250,000人行われていると推定される。さらに幾つかの人工装具(prosthetic device)及び合成成分を用いた組成物により、変性された円板又はその1部の交換が提示されている。たとえば米国特許番号4,772,287, 4,904,260, 5,047,055, 5,171,280, 5,171,281, 5,192,326, 5,458,643, 5,514,180, 5,534,028, 5,645,597, 5,674,295, 5,800,549, 5,824,093, 5,922,028, 5,976,186, および6,022,376を参照。
【0016】
上記の円板部分の人工装具が、健全な天然の円板の流体力学的機能と幾つかの点で流体力学的機能を同様に容易にすると考えられるヒドロゲルを含む。たとえば米国特許番号6,022,376(Assellら)を参照。しかしながらこれらの人工的ヒドロゲルが、円板内の細胞活性を介し再更新されない。従って円板の流体力学的機能としてのどのような改良も、自己を保持することができないであろう、そして人工のヒドロゲルの劣化による時間経過に伴い衰退することになろう。対照的に健全な椎間円板は、円板内における生きた細胞が、天然のヒドロゲル(すなわち細胞外マトリックス)の成分を更新することから、経過時間の延長に伴い棘(spine)内に軸方向の圧縮力に流体力学的に緩和する能力を保持する。
【0017】
米国特許出願番号09/545,441(2000年4月7日に提出)およびPCT Intl. Pat.Appl.Publ.No.PCT/US01/11576(2000年4月9日に提出)が関係しているが、その全体の引用により本明細書に特に組み入れられ、それぞれの全体の内容が、ドーナ脊椎から髄核組織を含むDDDを治療する組成物および方法を開示している。好ましくは髄核組織が脱細胞化され、さらに好ましくは、脱細胞化及び架橋化が共に行われることである。
【0018】
組成物が、危険にされされている椎間円板の髄核へ好ましくは注射により、導入できる適度な粘性の流体マトリックスを含む。開示された組成物が、DDDの治療に実質的な改良を提供するが、マトリックスは、線維輪の裂け目又は亀裂から押し出される場合があることから、厳しい危険にさらされた円板の使用は、制限される可能性がある。
【0019】
従って本発明の目的は、椎間円板へ導入後の椎間円板の空間に十分保持されるDDD治療の改良された組成物を提供することである。さらに本発明の目的は、最小浸襲方法を含む、こうした組成物を投与する改良方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、髄核中の軟骨細胞と他の細胞の改良された増殖性および生存性を提供する危険にさらされた椎間円板を治療する組成物を提供することである。
【0020】
別の例において本発明の目的は、粘性の調節可能な椎間円板組成物を治療する組成物を提供することである。さらなる例においてその組成物を、一次粘性にて椎間円板の髄核へ導入しその後架橋するか、そうでなければ一次粘性より有意に高い二次粘性へ粘性を高めるよう処理できる。好ましい例において一次粘性では、椎間円板へたとえば注射にて導入できる注入可能な流体が提供され、そして二次粘性では、円板が機構的な危険にさらされた時、椎間円板内に亀裂、孔又は同様の開口部を介し押し出されることを避けるに十分な半固形のゲルが生成されることなどである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
2.発明の要約
本発明は、柔軟組織又は硬性組織の増大又は修復の方法および組成物を含む。本発明の組成物は、ドーナ動物の柔軟組織から誘導される3次元の流体マトリックス、および粘性調節剤を含む。一例においては柔軟組織が、脱細胞化されそしてコラーゲンを含む。好ましい例において脱細胞化された柔軟組織が、ドーナの脊椎動物からの髄核組織を含む。髄核組織は、コラーゲン成分およびプロテオグリカン成分を含む。さらに好ましくは、髄核組織が、たとえばそのコラーゲン成分の少なくとも1部を架橋させることにより安定化することである。
【0022】
粘性調節剤は、患者の柔軟組織又は硬性組織に導入された後にin situでマトリックスの粘性を変化させるため使用でき架橋可能な重合体を含むことができる。
特にそのマトリックスを、比較的粘性の低い液体にて患者へ導入し、そしてin situにおいて有意に高い粘性の液体又は半固体へゲル化することができる。さらに本発明のマトリックスは、マトリックスにおける細胞の移動、増殖、呼吸、現象型の保持、そして/又は生存力を改良する細胞増強剤を含むことができる。好ましい例において、粘性調節剤および細胞増強剤は同じ薬剤でも良い。
【0023】
本発明の3次元流体マトリックスは、in vivoにおいて生物適合性があり、実質的に非免疫原でそして耐変性がある。その結果これらには、加速されたプロテオグリカン合成時期に再生を受けている椎間円板に対し重要な内部構成支持体が提供可能である。安定化したマトリックスを、カテーテルを介した注射による注入、又は先行技術として周知な方法により椎間円板の空間へ導入できる。
【0024】
脱細胞化され、そして架橋した髄核組織の3次元流体マトリックスを含む椎間円板の変性を治療する組成物は、これまで先行技術として、米国特許出願番号09/545,441(以後「'441出願」)に開示されている。こうした架橋技術が、髄核組織のプロテオグリカン部分ではなく、そのコラーゲン部分の架橋を含むことが、当業者に理解されるであろう。'441出願に開示された組成物が、組成物の粘性を調節するようin situにおいて架橋でき、付加的に架橋可能な重合体成分を提供することにより強化できることが、本発明者により発見された。従って架橋可能な重合体成分が、粘性調節剤として機能する。好ましい例において粘性調節剤が、一次粘性からの組成物の粘性をより高い二次粘性へ増大させるようin situにおいて架橋できる架橋可能な成分を加えることにより、変更された生物的に適合できる重合体を含む。
【0025】
さらに'441出願の組成物が、細胞の移動、増殖、現象型の維持、および生存を容易にするように、細胞増強剤を追加的に提供することで改良できることが、発見された。好ましい例において、細胞増強剤は、プロテオグリカンを、より好ましくは架橋可能な成分を添加し変化したプロテオグリカンを含む。たとえ細胞増強剤が、すでに天然の髄核組織に存在するプロテオグリカンを含むとしても、プロテオグリカンを商業的に入手できるヒアルロン酸などの外因性資源から髄核組織へ得ることができ、さらに架橋可能な成分を添加して修飾することが好ましい。
【0026】
本発明の組成物を、一次粘性にて患者へ導入し、そして組成物の粘性では、患者へ導入後より高い二次の粘性へ増大できる粘性調節剤を含むことができる。組成物を注射により注入でき、そうでなければ最少浸襲手段により患者に導入でき、そしてその注入物には、増殖因子、生物活性剤、そして/又は生きた細胞を含むことができる。さらに組成物が細胞増強剤を含み、移動、増殖、細胞外マトリックス、および生きた細胞の生存性を改良することができる。
【0027】
特定の例において、ヒト又は動物資源から得られた天然の円板の髄核物質が、光作用架橋方法を受けて、そして椎間円板の空間内でヒドロゲル物質それ自身を架橋し又は重合できるヒドロゲル物質と結合する。In situにおいて重合可能なヒドロゲル物質と収集された天然の髄核物質とを結合させ、変性された円板の髄核空間部分の増大そして/又は再生に有効な生物的に適合可能で、生物的に変性可能なヒドロゲルを生成する。さらに組成物が、関節軟骨の欠陥など別の症状の治療に、創傷を癒合するための養生として、そして増殖因子のための担体として、あるいは椎間円板軟骨細胞又は幹細胞などの種々の細胞として有効である。
【0028】
本発明のマトリックスを単独か、増殖因子および/又は生きた細胞を組み合わせて使用し、変性した椎間円板の構成物の再生を容易にすることができる。十分な生育できる内在性円板細胞(軟骨細胞)および細胞増殖因子を有する患者において、3次元架橋マトリックスだけが、円板の改良された機構的安定性及び細胞増殖、そして/又は代謝のためのより好ましい環境を提供することにより、in vivoにおける椎間円板の流体力学的機能の再生に実質的に貢献している。
【0029】
マトリックスだけが、治療的利点を提供できるが、本発明のその他の例においては、3次元マトリックスが、1および複数の核酸、タンパク質増殖因子、天然又は合成血液成分(血清又は血漿など)又はヒト又は動物の器官、前記の偽合成物、天然又は合成による苦痛緩和剤、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症性薬剤、麻酔薬、抗生物質又はマトリックスの効果を誘発又は高める前記の組み合わせ物が、あげられる。好ましい例においてさらに精製された細胞増殖因子が、枯渇されたプロテオグリカン・ヒドロゲル・マトリックスに活性化軟骨細胞を含む円板におけるDDDの治療に使用できる。この場合、髄核組織と粘性調節剤とを一緒に架橋したコラーゲン成分が、危険にさらされた円板内に存在する
(天然の)軟骨細胞に拡張的に再構築可能な3次元マトリックスを提供するが、細胞増殖因子が、プロテオグリカンの生成を加速的に誘発し、患者のヒドロゲル・マトリックスを回復させる。3次元マトリックスと1又は複数の精製された細胞増殖因子とを組み合わせた物が、細胞増殖介在物として言及されている。
【0030】
個々に精製された細胞増殖因子を、当業者に周知な組み換え技術により得ることができるが、本発明のマットリックスにおける使用に適した骨由来の精製細胞増殖因子の混合物が、米国特許番号5,290,763, 5,371,191および5,563,124に開示され、全体的に引用により本明細書に組み入れられている。これらの特許により生成された骨由来の細胞増殖因子を、以後「GFm」と記載する。
【0031】
患者から得られ、そして増殖を容易にするように培養された自発性軟骨細胞を、並びに椎間円板の細胞、胚性幹細胞、成人の多能幹細胞又は間葉幹細胞などの同種異型又は異種異型の出発資源(origin)の外因性細胞を含む細胞、さらに本発明のマトリックスへ加えることができる。本発明の組成物において架橋したコラーゲンとプロテオグリカン粘性調節剤を合わせ、他の細胞外マトリックス分子中にin vivoにおいてコラーゲンII型線維やプロテオグリカンを合成する本質的能力を有する生きた細胞(外因性細胞および天然の円板又は他の自原的細胞を含むことができる)を支持するマトリックスを形成する。患者の天然の円板細胞が、取り出されていたか、そうでなければ増殖を引き起こすに不十分である場合、生きた細胞を円板の再生をさらに促進するように、架橋した髄核物質の3次元マトリックスへ添加することができる。
【0032】
従ってその他の例において、本発明は、外因性そして/又は自発性の生きた細胞が加えられた脱細胞化され架橋した髄核組織の3次元マトリックスを含む。3次元マトリックス物質と外因性および/又は自発性の生きた細胞とが注入できる結合体を、本明細書において注入可能な細胞マトリックスと称す。こうした注入可能なマトリックスとして適切な細胞が、たとえば哺乳動物の椎間円板の髄核から、軟骨から、脂肪組織から、筋肉組織から、骨髄から、又は骨の物質(すなわち間葉幹細胞)から得ることが出来るが、これらの組織の種類に限定されない。これらの細胞が、これらの生存性を確認するため、そして所望により細胞増殖因子を用い応答する細胞増殖および合成を増大させるために、in vitroにおいて培養することが好ましい。
【0033】
別の観点において、本発明は、変性した円板疾患の治療に髄核を交換するための極めて適合可能な物質特性を提供する新しいヒドロゲル組成物を含む。本明細書に記載され修飾されたヒドロゲル化学的に、そして重合可能な構成物の使用物質を用い、以下の注入可能な流体組成物を生成することができ、すなわち(1)は、生物的に適合可能であり、そして細胞的に適合可能である;(2)は、主要の円板組織(核および輪)との接着性相互作用を形成し、そして円板内を保持し、そしてヘルニア形成への耐性のための凝集力を作り出す;(3)は、18乃至26のゲージ針を介し導入に十分な初期粘性を有する;(4)は、in situにおいて重合し数分以内に所望の粘性を有する1組のゲルにすることができる。;(5)は、浸透圧勾配法を確立することにより円板の水和化による復帰を提供する;(6)は、円板の高さの増大及び圧縮率の増大を提供する;そして(7)は、最後に頚部痛とロウ・バック(low back)痛からの有効な緩和を提供する。
【0034】
本明細書に使用されている「脱細胞化された(decellularized)」および「脱細胞化している(decellularization)」は、ドーナ組織から天然の生きた細胞が破壊され、断片化され、そして/又は除去された組織、およびその過程を言及している。好ましい脱細胞化方法は、高濃度の塩(好ましくはNaCl)および糖(好ましくはサッカローズ)を有する溶液へ組織を浸すことを含む。こうした高濃度の塩、高濃度の糖の溶液は、HSHS溶液として言及されている。
【0035】
しかしながら別の脱細胞化方法を用いることもできる。組織が脱細胞化され、そして架橋化された後、得られた流体マトリックスを滅菌するために凍結乾燥し、そして保存し、さらに使用前に再水和化する。本発明によるマトリックスは、受容体(recipient)へ移植した後に、変性(これにより耐久性を強化する)に対して、と実質的な非免疫原に対しての両方に耐性がある。強調すべきことは本発明における脱細胞化が、ドーナ動物の細胞の破壊、断片化、そして/又は除去した細胞のみを言及しているが、患者から組成物が投与されるヒトへ自発性細胞および外因性幹細胞などの組成物に存在可能な別の細胞を言及していない。
【0036】
「安定化された(stabilized)」および「安定化している(stabilization)」は、受容体(recipient)への移植後ドーナ組織の免疫原的、化学的及び/又は機構的な変性が、減少又は除去された組織および方法を言及している。特に好ましい安定化方法は、架橋することであり(また固定としても知られている)、それは、化学的に、熱的に行うことができ、あるいはより好ましくは可視光線又は近可視スペクトルの1又は複数の波長を選択的に吸収する光酸化触媒にて行うことができる。髄核組織の基本的物質特性を保持する他の架橋方法を用いることができるが、以後「光架橋」、「光結合」、「光固定化」、又は「光固定」として言及される光酸化性架橋方法が好ましい。架橋方法では、細胞障害性のないことが特に好ましい。
【0037】
光固定化法は好ましい架橋方法であり、その理由は、免疫応答に対し物質を安定化することに加えて、こうした方法が分解を促進し残基となる細胞要素を除去し、そして酵素による耐タンパク質変性を提供し、異種(xenogenic)組織および同種(allogenic)組織の免疫原系の減少を促進するからである。加えて光固定化法は、多くの所望する成分を保持することができ、そしてコラーゲンII型の足場分子や親水性プロテオグリカンを含むドーナの髄核の治療方法を可能にする。
【0038】
光固定技術は技術的に周知であり、そして米国特許番号5,147,514, 5,332,475, 5,817,153および5,854,397に記載され、それにより全てが、全体にわたって引用により明細書に組み入れられる。これらの特許が、光固定触媒としての光感受性染料の使用を開示している。これらの染料では、メチレン・ブルー、メチレン・グリーン、ローズベンガル、リボフラビン、プロフラビン、蛍光体、エオシン、およびピリドキサル-5-ホスフェートがあげられる。何らかの特定理論の制限がなく、特定波長の光を吸収することにより光感受性染料が遊離基種へ変換され、その遊離基種を用いてコラーゲン分子中のアミノ酸残基、特にシステイン残基を、分子内と分子間の両方で架橋できると考えられる。
【0039】
別の観点において天然の髄核物質を、in situにて重合できる合成又は天然の物質と組み合わせ、新規の生物適合性物質、細胞質適合物質、親水性髄核の交換物質を生成できる。この物質では、内因性又は外因性細胞増殖を促進する能力が顕著であり、そして椎間円板内に存在するか又は生成される髄核の空間へ順応する能力がある。さらに最小浸入による外科装置および方法を用いることにより、その物質が導入される。好ましい組成物においてマトリックスが、一次粘性にて治療される円板へ導入され、そしてin situにて架橋され、二次の高粘性の半固形状ヒドロゲルが提供される。
【0040】
上記と一致した一例において本発明は、架橋したコラーゲンと架橋可能な粘性調節剤とを含む治療に必要な椎間円板の髄核へ導入する流体マトリックスを含む。その架橋可能な粘性調節剤は、in situにおいて架橋しDDDを治療するマトリックスを提供でき、そのマトリックスが、細胞、増殖因子、抗生物質や他の活性剤などの薬剤を含むことができる。別の例において本発明の3次元流動物質は、ドーナ脊椎動物から架橋した脱細胞化の髄核組織、および粘性調節剤を含む。ドーナは、同じ個体又は異なった個体の患者又はその他の動物にて良い。
【0041】
別の例において本発明の組成物が、ドーナ脊椎動物から脱細胞化の髄核組織を含み、ここで髄核組織のコラーゲン成分の少なくとも1部が架橋され、さらに粘性調節剤を含むことにより組成物の粘性を、一次粘性から二次粘性へ、前記一次粘性より有意に高い粘性へ増大させることができる。さらなる例において、本発明の組成物が、治療に必要な椎間円板の髄核へ輸送するヒドロゲルを含み、前記ヒドロゲルは、架橋したコラーゲンの流体マトリックス、そしてヒアルロン酸、ポリアルキレン・グリコール、キトサン、フィブリン、および他のポリテオグリカンから成る群から選択された架橋した粘性調節剤を含む。
【0042】
異なる例において本発明は、ドーナ脊椎動物からの髄核組織および粘性調節剤を含む、椎間円板の変性を治療するマトリックスを提供する。髄核組織は脱細胞化されることが好ましく、さらに髄核組織は架橋したコラーゲン成分を含むことが、さらに好ましい。本発明によるマトリックス中の粘性調節剤が、in situにおいて1又は複数の紫外線、可視光線、又は赤外線に曝すことにより架橋できることが好ましい。他の波長の電磁放射を用いても良い。好ましくは粘性調節剤が、ヒアルロン酸、ポリアルキレン・グリコール、キトサン、フィブリン、および他のポリテオグリカンから成る群から選択される。より好ましくは、粘性調節剤が、メタアクリル酸グリシジル成分、メタアクリル酸無水物成分、およびメタアクロイル・クロライド成分から成る群から選択される架橋可能な成分を含む。
【0043】
さらなる観点において本発明は、DDDを治療する方法を提供する。好ましい例において本発明は、ドーナの脊椎動物から脱細胞化髄核組織を含む流体マトリックスを提供することを含む椎間円板を治療する方法を含み、ここで前記髄核組織のコラーゲン成分の少なくとも1部が架橋され、そして架橋可能な粘性調節剤は、ヒアルロン酸、ポリアルキレン・グリコール(プルロニック・ポリアルキレン・グリコールおよびその誘導体)、キトサン、フィブリンおよび他のプロテオグリカンを含むことができる。さらにこの方法は、治療される椎間円板の髄核へ流体マトリックス・ヒドロゲルを導入し、そして光線に曝すことにより前記架橋可能な粘性調節剤を架橋することを含む。その方法は、一次粘性を有するマトリックスを提供する工程、そしてそのマトリックスを架橋し、一次粘性より高い二次粘性を有するマトリックスを提供する工程を含む。好ましい例において治療される円板の髄核へ、マトリックスを注入することによる導入が行われる。
【課題を解決するための手段】
【0044】
4.図式的実施例の記載
本発明の図式的実施例が以下に記載されている。自明性と関連して実際の方法の特性の全てが、必ずしも本明細書において記載されていない。もちろんこうした開発の実例では、たとえばシステムとの関連および事業との関連による制約に従い、一方の手法からもう一方の手法に変更するなどの、開発者の特定目標を実現する多くの特定手法の決定を行なわなければならないことが、良く理解されると考える。さらにこうした開発努力では、複雑で時間を必要とするにもかかわらず、当業者にはこの開示の一定の恩恵を受けることが理解されるであろう。
【0045】
本発明は、種々の修飾や選択肢としての形状を受け易いが、その特定例が図面の例を介して明示され、そして本明細書に詳細に記載されている。しかしながら、本明細書の特定例の記載が、開示された特定形態に本明細書を限定する意図がなく、反対に本発明が、変更物、等価物を包含し、そしてそれぞれが、添付クレームにより定義された本発明の精神および範囲内に入る修飾物、等価物および択一物の全てを包含することを理解すべきである。
【0046】
本発明の図式的例が以下に記載されている。自明性の関連において実際方法の特長の全てが、本明細書に記載されているわけではない。もちろんこうした開発の実例では、たとえばシステムとの関連および事業との関連による制限に従い、一方の手法からもう一方の手法に変更するなど、開発者の特定目標を実現する多くの特定手法の決定が、行なわれなければならないことは、良く理解されると考えられる。さらにこうした努力による開発が、複雑で時間を必要とするにもかかわらず、当業者には一定の開示の恩恵を受けることが理解されるであろう。
【0047】
本発明による組成物が、椎間円板組織の再生や修復を促進しそして/又は強化する生物的に変性可能な流体マトリックスを含む。好ましい例において組成物が、架橋したコラーゲン成分を有する脱細胞化組織、および粘性調節剤を含む。脱細胞化された組織は、好ましくはそのコラーゲン成分の少なくとも1部が架橋した髄核を含む。粘性調節剤が、好ましくはプロテオグリカン誘導体を含み、特に光架橋可能な成分が、プロテオグリカンへイオン結合か共有結合かの何れかにて結合された誘導体を含む。
【0048】
好ましい例において組成物が、一次粘性にて半粘性液体として椎間円板へ導入され、そして、二次の高い粘性を有する半固形のヒドロゲルへin situにおいて架橋することができる。生物的に変性可能なマトリックスが親水性分子を含み、それが椎間円板組織の「獲得された」水分含量を維持しそして/又は増大させることになる。さらに生物的に変性可能なマトリックスが、付加された増殖因子および/又は適切な生きた細胞種に対する担体基質としての働きをすることができる。
【0049】
本発明の生物的に変性可能なマトリックスが、閉じて確保されている円板の空間の中へ導入された時、圧縮できない支持体を補強する。さらに一次のより低粘性の状態にて円板内へ均一に分散され、さらにin situにて架橋したことから、本流体マトリックスが、効果的な分散力として、円板内へ水の力学的に均一な伝達力を有す。従ってこのマトリックスが、軸方向の圧縮及び輪の破壊に対する耐性を提供し、一方で他のマトリックス物質(たとえば重合体の海綿体とコラーゲン海綿体)が、円板内の軸方向の圧縮力下で急激な破壊をもたらす。さらにIn situによる架橋方法が、強化した細胞増殖性および生存力の特性を有するマトリックスを提供する。
【0050】
好ましい例において本発明の生物的変性マトリックスが、最小侵害技術(minimally invasive techniques)にて注入るか、又はその他の点で導入することができ、1部の切除や脊椎の融合などの処置に関し、治療コストと合併症の両方を有意に減少させる。同様に本発明が、固体の比較的に生物的変性したマトリックスなどの人工髄核の交換デバイスの移植すること、又は移植された生物的な変性可能な基質のための空間を創り出す核様組織を排除することが、ための輪内へ孔をあける必要性を回避している。
【0051】
本発明のマトリックスが天然の物質で、動物および/又はヒトの正常で、健康な核組織から、そして天然又は組み換え資源から得られたプロテオグリカン・マトリックス分子から調製されることが好ましい。従ってそのマトリックスが、椎間円板において有効な流体力学的機能として特に採用されたタンパク質およびマトリックス分子から構成される。本発明に関連したマトリックスの分解成生物は、円板細胞により消化され易いことが、本発明の重要な特質である。比較としてこれまでに教示された幾つかのマトリックス物質(たとえばポリビニルアルコール)が、生理的な治療にて分解されない。加えて幾つかの合成樹脂の基質が、酸性変性化の副産物、特にPGAおよびPLAを創りだす。
【0052】
本マトリックス内へ細胞の即時分散(実質的に均一)が、本発明のもう一つの利点である。注入のための好ましい粘性の流体形成物が、適切な型の細胞と直接混合され、そして椎間円板を治療すると同時に導入される。それがPGAおよびコラーゲン海綿体などの特定マトリックス物質に対すると同様本発明のマトリックスにおいて、移植する前に数日又は数週間、細胞とマトリックスとを合わせて培養することが、必ずしも必要でない。本発明のマトリックスが、椎間円板細胞の内部成長、増殖および維持するための固有の適した細胞に対する適切な基質である。ホルマリンやグルタルアルデヒドにて固定されたI型コラーゲン海綿体と比較し椎間円板細胞が、本発明のマトリックス内で優先的に増殖し、そしてマトリックス内にて生存する。
【0053】
4.1 複合体ヒドロゲル・マトリックス組成物に対する明示的使用及び適用
開示された流体マトリックス組成物、そして特に複合体ヒドロゲル・マトリックスにおける重合化度(架橋程度)が、組成物の粘性および付着特性を調節するため調整される。さらにこれらのマトリックスが、1又は複数の種々の医薬物、又は増殖因子、抗生物質、鎮痛剤などの活性剤を所望により含むことができる。これら活性剤が、そのマトリックス内での方法が、延長期間にわたり組織又は修復部位へ1又は複数の活性剤の調節された放出、保持された放出、時間的な放出を提供するこうした方法において、複合体ヒドロゲル・マトリックスなどのマトリックス内へ含むことができる。
【0054】
さらに本発明の生物的に適合可能なマトリックスが、骨芽細胞、軟骨細胞、間葉幹細胞などの細胞を、in vitro,in vivo,in situ,又はex situにおける1又は複数の選択された組織へ、導入する担体デバイスとしての働きをする。開示された流体マトリックス組成物が、種々の薬物、歯、および/又は医薬物の用途に使用できることが見出された。たとえば開示された組成物が、増殖因子の導入、薬物の導入および遺伝子の導入(任意の重合体、ペプチド、タンパク質、核酸などの導入)の担体で良い。
【0055】
さらにこれらは、いずれかの現象型の主要細胞(primary cell)(線維芽細胞、軟骨細胞、神経細胞、間葉幹細胞、骨芽細胞など)に対する担体として働き、特に組織の修復又は創傷を治癒する療法や養生法に有効である。さらに開示された組成物が、たとえば組織工学的な構造の重合体の足場を分解させる酸性度を相殺する(オフセット(offset))、炭酸水素塩又は他の塩などの薬物を緩衝する担体として、又は栄養物(グルコース、血清成分など)の担体として使用できる。別の観点において、開示された架橋可能な流体マトリックス組成物が、組織増大の特定用途に見出すことができる。たとえば注入可能な処方物(ゲル又は溶液)は、所望される特性が、調節される範囲の密度、剛性、粘性、および半透明である場合に使用することができる。
【0056】
4.2 骨の修復のため付随するヒドロゲル・マトリックス組成物
ヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体(すなわちGM-HAMのヒドロゲルと光酸化による髄核PNPマトリックスの組み合わせヒドロゲル)の生成物が、骨修復物質の付加に適切であり、たとえば骨の欠陥の修復および棘(spine)の融合における非癒合又は外科手術における再構成に使用するための脱鉱化された骨マトリックス(DBM's)、および種々の骨の隙間の充填剤(リン酸カルシウム/コラーゲン構成物又は硫酸カルシウム・ペレット)がある。
【0057】
骨修復物質とヒドロゲル・マトリックス構成物との組み合わせ物が、移植として優れた操作特徴を有する骨修復構成物を生成し、そしてゲラチン化の開始能力とin situにおける保持能力を提供する。ヒドロゲル・マトリックス構成物を含む骨修復組成物を調製する場合、その混合物は、紫外線下化学的重合を進行できるGM-HAMにおいて、十分な密度の反応基を提供すべきである。
【0058】
最終生成物が、骨修復物質に対するヒドロゲル・マトリックス複合体の比率に依存し、ある程度柔軟でそしてゲラチン性か又は剛性のものでも良い。たとえば、ヒドロゲル・マトリックス複合体が、CaSO4ペレットと組み合わせた場合、厚みの粘性ペーストを形成し、次にそれを骨の隙間空間へ注入し、そしてin situにおいて紫外線にて重合し、物質を所定位置に保持するようにする。骨の修復に使用する図式的なリン酸カルシウム・コラーゲン構成物が、米国特許出願公開番号 US2002/0114795(引用によりその全体を本明細書に特に組み入れる)に記載されている。
【0059】
4.3 創傷、火傷、およびその他の柔軟組織の損傷の手当ての使用のため、そして療養および修復のためのヒドロゲル・マトリックス組成物
さらにヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体の生成物(GM-HAMおよび光酸化髄核PNPマトリックスを含む組み合わせヒドロゲルを含む)が、損傷部の被覆物質としても適切である。ヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体が、創傷の被覆組成物において好ましい接着特性を提供する。開示されている1又は複数のヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体の医薬的に受け入れ可能な生成物が、水分量を変え皮膚への付着性を維持し、さらにその付着性を最も適切にし皮膚上の付着位置を維持するようにする。こうしたヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体により、損傷部を粘性の高いゲルとして被覆することができ、そして適切な位置で紫外線による重合が可能である。重合したヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体が、損傷領域上に殺菌した抗菌性障害物を維持する働きがあり、同時に空気や水分の換気を可能にし、さらに皮膚の滲出物を皮膚から外へ排出することができる。
【0060】
4.4 関節軟骨の修復に使用するヒドロゲル・マトリックス組成物
開示された1又は複数のヒドロゲル・マトリックス複合体(たとえば、GM-HAMのヒドロゲルと光酸化による髄核PNPマトリックスとの組み合わせ)の生成物が、関節軟骨修復の使用に適している。さらにヒドロゲル・マトリックス複合体の組成物が、単独で移植可能な物質としての使用することができ、そしてそれが、粘性流動ペーストとして準備された関節軟骨の欠陥部位へ注入し、その場所においてUVにて重合化される。
【0061】
ヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体の流動ベーストを、軟骨欠陥部の全ての領域へ流してその領域を充満し、その後に重合化する従って、主要軟骨でしっかり密封しそして均一なインタフェースを形成、すなわち移植結合を形成する。ヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体の特長は、下層の亜軟骨層に対し、そして欠陥部位を仕切る軟骨のリム壁に対し接着性を提供する。主要軟骨が、ヒドロゲル・マトリックス複合体と一体化し、そしてそのマトリックスを新たな関節軟骨へ順次再構築ことになろう。幾つかの可能な方法では、ヒドロゲル・マトリックス複合体を、関節軟骨の修復すべきデバイスへ組み入れることが可能となり、すなわち、軟骨プラグを形成するように他の足場物質と組み合わせて、微細な破壊技術における付加ゲルとして使用すること、そして自己由来の軟骨細胞又は間葉幹細胞などを導入するための細胞を植え込む担体デバイスとして使用することである。
【0062】
微細な破壊技術を介して関節軟骨の修復に使用するため、関節軟骨を創面切除し損傷した軟骨を除去し、そいて明示した境界や壁を用い欠陥部を形成するよう構成した。欠陥部の表面が、亜軟骨層の直ぐ真下であるが、通すことなく削りだすことができる。次にマイクロ・ピッキングツールを用い、亜軟骨を通す均等な空間の破壊(fractures)を形成する。このマイクロ破壊(fractures)技術により、下層の骨髄及び幹細胞の豊富な血液が、調製された損傷部位へ滲出することになる。この時点で、ヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体が、軟骨の欠陥部を充満した血液、フィブリン(fibrin)および幹細胞の混合物をゆっくり凝結するように加えられた。ヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体、骨髄/幹細胞の混合物の紫外線による重合体が、こうした関節軟骨の欠陥部内の修復要素を保持することができる。
【0063】
二次方法は、コラーゲン海綿体など形成された足場へヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体を包含させることを含む。たとえば、ヒドロゲル・マトリックス・ゲル複合(composite)体を、コラーゲン海綿体へ滲出、透過させるように、海綿の構造体へ塗ることができる。コラーゲン海綿体へゲルを透過させた後、次にゲル・コラーゲン海綿体を、調製された軟骨の欠陥部へセットすることになる。ヒドロゲル・マトリックス・ゲル複合(composite)体質が、軟骨へ強化された表面接着を提供し、さらに所定位置で紫外線で重合したヒドロゲル・マトリックス・ゲル複合(composite)体が、欠陥部位において強化された海綿体の保持を提供することになる。
【0064】
重合化されたヒドロゲル・マトリックス・ゲル複合(composite)体が、構造体の暴露された表面に平滑な潤滑層を形成し、主要軟骨のために優秀なインタフェースを、つまり軟骨欠陥部内へ一体化した海綿構造体を提供する。この方法において、ヒドロゲル・マトリックス・ゲル複合(composite)体を、天然の軟骨である増殖因子を伴い負荷することができ、又は選択肢としてゲル-コラーゲン海綿構造体を占めることになる特定細胞型(軟骨細胞、幹細胞)と共にゲルを負荷することが可能であり、さらに軟骨マトリックスの形成を開始し、最終的に海面構造体を再構築することになる。
【0065】
第三の方法は、関節軟骨を修復するための細胞治療とヒドロゲル・マトリックス・ゲル複合(composite)体との組み合わせを含む。新らしい細胞治療方法(たとえば、Genzyme Carticel)が、軟骨細胞を搬送するためにヒドロゲル・マトリックス複合(composite)体を加えることにより実質的に改良されることを、提示している。この方法において、採取された自己移植の軟骨細胞、同種異形移植の軟骨細胞又は間葉幹細胞を、ゲル物質内にカプセル化し、関節軟骨細胞の欠陥部へ注入し、そして所定位置で紫外線にて重合化することができる。主要軟膏の一体化(host integration)および空間部を満たす上記利点が、関節の軟骨の修復する結果において、適切な結果が提供されると期待されている。
【実施例】
【0066】
5.実施例
本発明の好ましい例を実証するために、以下の例が含まれる。本技術が実施例に開示され、それが発明を行う場合十分に機能するように、発明者により発見された代表的技術に従い、さらにそれを行うための好ましい形態を構成すると考えられることが、当業者により理解されるべきである。しかしながら、本開示と照らして当業者は、多くの変化が特定の例に行われ、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、良好か又は同様の結果が開示され、そしてさらに得られることを理解すべきである。
【0067】
5.1 実施例1:変性した円板疾患の治療に適切な架橋した流体マトリックスの調製
本発明の実施例による架橋した髄核組織の三次元流体マトリックスが、ドーナ脊椎動物から調製することができる。特に好ましい例においてブタのドーナを使用、哺乳動物として脊椎動物が好まれる(たとえばヒト、ブタ、ウシ、ヒツジなど)、さらに他の脊椎動物からの髄核組織を使用する場合がある。たとえ髄核組織が、脊椎動物の多くのドーナから多様な方法にて採取できるとしても、好ましい例において髄核組織を、ブタの脊椎の椎間円板から滅菌にて切除した。滅菌の環境(すなわち層状態流動のドラフト)において、ブタのドーナからの線維輪を放射状に薄く切り、そして哺乳動物の端部プレートを分離し髄核を露出した。後者の物質が、線維輪および末端プレート組織を欠いている円板の中央部分から外へ硬化した。
【0068】
従って採取された髄核組織が、細菌又は他の汚染を実質的に減少させながら、組織から低分子量のプロテオグリカンを実質的に喪失させないよう、約3500ダルトン(Daltons)を切り離した好ましい分子量の滅菌透析(フイルター)チュービングへ挿入した。他の半透膜又はろ過膜の型を用いこれらの機能を実行することができる。
【0069】
さらに架橋した髄核組織を、ドーナ細胞および/又は細胞の断片を破壊しそして取り出すための適切な処理をした。この目的に対し髄核組織を含む透析チュブ処理では、約2,2%:8.4% wt./vol.(それぞれ)の高塩で、高スクロース(sucrose)(HSHS)溶液にて、約48時間浸した。HSHS溶液の濃度範囲が1%乃至50%であるが、好ましいHSHS溶液が、10Lの水中に220グラムのNaClと837.5グラムのサッカローズ(sucrose)を含む。さらに短時間でもあるいは長時間でも良好に使用できたとしても、好ましいHSHSインキュベート時間が、約24時間乃至約72時間である。
【0070】
このHSHS溶液に曝すと、天然の軟骨細胞の浸透性破壊と断片化(脱細胞化)が生じ、さらに可溶な細胞タンパク質および核酸の変性が生ずる。さらにHSHS溶液は、核酸を分解する別の試薬(スルホン剤およびヌクレアーゼを含むがそれに限定されない)、および膜脂質を抽出できる別の試薬(アルコール、クロロホルム、およびメタノールを含むがそれに限定されない)を含むことができる。ドーナの天然細胞が、本発明の別の例において保持可能であるが、免疫原の応答能力を減少させるように、外在性の(特に外来異種の)組織が用いられると、脱細胞化および変性が好ましい。HSHS溶液に暴露すること以外の方法を、本目的として使用することができる。
【0071】
髄核組織の架橋が、米国特許番号5,147,514, 5,332,475, 5,817,153,そして/又は5,845,397(それぞれが、特に引用によりその全体を本明細書に取り入れられる)による光介在方法により行われることが好ましい。こうした方法の一つでは、光活性化染料(メチレン・ブルー)を、約20mg/リッターの好ましい染色濃度にてHSHS溶液へ溶解する。光活性染料を、HSHSにおい初期保持/脱細胞化の過程で、透析チュブリン内へ核様組織が浸透できる。上記特許にて教示された多様な光活性染料および濃度を用い、哺乳動物の円板組織再生の使用に適した架橋した流体マトリックスを得ることができる。好ましい染料が、約0.001%から約1.0%wt./vol.の濃度で、メチレン・ブルーおよびメチレン・グリーンを含む。
【0072】
髄核組織内のコラーゲンを架橋する染料が、浸透した髄核組織を含む透析チュビングを、光酸化室(chamber)に入れ、そしてボード・スペクトル(broad-spectrum)可視光線にて48時間暴露した。本発明の好ましい例においてこの組織を、約24時間から約72時間架橋することができる。リン酸緩衝の生理食塩水(「PBS」)中でメチレン・ブルー溶液を温度調節下で10℃に保持し、そして光酸化室(chamber)内の透析チュビング周辺を循環させ、髄核組織を実質的に一定温度に調節した。正確な温度調節が本発明を行うには必須ではない、しかしながら組織の損傷を避けるために比較的低温を維持することが好ましい。コラーゲンの光架橋の後処理された髄核組織を採集し、遠心下真空にて凍結乾燥し、そして液体窒素により凍結ミルにて微粉末にした。従って調製された架橋マトリックス生成物を、γ線放射のエチレンオキサイド(又は滅菌剤)を用い滅菌し、使用のための解凍まで-80℃にて保存した。本発明によるマトリックスを調製する好ましい方法を、図2に示す。
【0073】
架橋したマトリックスの調製に加えて、コントロール(非架橋)組織を、光に曝されなかった事を除いて、上記手順に従って調製した。これら非架橋組織のコントロールを、比較目的として使用した。架橋したマトリックスと非架橋コントロールとの膨潤能力を検討するためにの架橋マトリックスと非架橋コントロールとの凍結乾燥試料を水中懸濁し、そして水の吸収による重量増大を、0から96時間種々の時間にて測定した。図6に示すように、架橋したマトリックスが、非架橋コントロールの95%の水和能力を保持した。
【0074】
5.2 実施例2:架橋方法により誘発されるタンパク質の修飾を評価する流体マトリックスの試験
実施例1の凍結乾燥化工程の前にて得られた0.5グラムのマトリックス物質を、4Mの塩酸グアニジン溶液15mlに入れ、プロテオグリカンを溶解するよう24時間、攪拌器にてしんとうさせる。遠心後浮遊物を取り出し、そしてペレットをそれぞれ5分蒸留水にて3回洗浄した。次にペレット化したマトリックス物質を、取り出しろ紙上でブロット乾燥した。ブロット乾燥した100mgのマトリックスを、5%と1%のβ-メルカプトエタノール(BMP)を含む1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)1000μlにて、1.5mlのマイクロ遠心管に入れた。SDS/BMEのマトリックスを、1時間煮沸しタンパク質(たとえばコラーゲン)を抽出した。次に試料を、12000rpmにて、1時間遠心機にかけ適量の上澄液を、ポリアクリルアミド・ゲル勾配に電気泳動にかけた。
【0075】
ゲルをSDS/BMEおよび熱処理にて抽出したタンパク質を見だせるようコマシブルー又は銀にて染色した。図3に示すように、コラーゲン帯域が、非架橋組織のコントロールで顕著に染色されたが、架橋したマトリックスにおいて、僅かな染色しか呈していない。これらの結果が、架橋したマトリックス物質において、コラーゲンタンパク質が、架橋を起こしたことを示す上記処理で容易に抽出されなかったことを実証した。対照的にコントロール組織の染色されたゲルは、コラーゲンタンパク質が、上記処理により非架橋物質から容易に抽出されたことを実証した。図3を参照。
【0076】
5.3 実施例3:細胞の破片や残りの膜物質を評価するマトリックス組織学
実施例1の凍結乾燥工程の前に得られた架橋したマトリックス物質を、組織を固定するために4%のパラホルムアルデヒドに入れた。埋め込み、切断、及びヘマトキシリン及びエロシン染料にて切断部を染色するという標準的な組織的技術を行った。ヘマトキシリン及びエロシン染料にて染色された切断部の架橋したマトリックスの視覚化により、マトリックス調製方法が、ブタの新鮮な髄核物質に比較として残した最小の膜物質、およびHSHS処理、凍結-解凍サイクル、およびHSHS処理プラス凍結-解凍サイクルにより脱細胞化した非架橋組織を用い、細胞膜及び細胞内の破壊を容易にすることを証明した。
【0077】
5.4 コラーゲンII型に対しモノクロナール抗体を使用し、マトリックス抗原反応性の評価
さらに実施例1の凍結乾燥工程の前に得られた架橋マトリックス物質を、コラーゲンII型タンパク質を切断するようペプシン消化液に曝した。タンパク質の消化をSDS/PAGEにて行い、さらにニトロセルローズの膜へ移した。膜へ移されたタンパク質の全を、コロイド状金を用いて視覚化した。視覚化されたニトロセルローズ膜を、コラーゲンII型に対するマウスのモノクロナール抗体、およびアルカリ性ホスファターゼを用い結合された二次抗体(抗-マウス)にてインキュベートした。抗体の活性が、アルカリ性ホスファターゼ基質の付加を介し視覚化した。図5に明示されているように、コラーゲンII型に対する抗体が、非架橋コントロール組織のペプシン消化物ほど架橋マトリックスのペプシン消化産物と反応しない。その結果本発明のマトリックスが、コラーゲンII型に対し抗原エピトープを減少させ、さらに非架橋組織より免疫原性が有意に少ないことを示す。これらの結果を図5に示す。
【0078】
5.5 実施例5:ウサギの抗血の産生物におけるマトリックスの免疫原性の評価
実施例1により調製され凍結乾燥し、そして微粉化した1gのマトリックスを、PBS中に分散し(すなわち解凍)そして遠心分離にかけた。次に浮遊物のタンパク質濃度を、BCAアッセイを用い決定し、そして浮遊物を最終濃度がPBSml当り200μのタンパク質となるようPBSにて希釈した。次に注入手順のため希釈された浮遊物を滅菌した。3匹のラビットを、滅菌された浮遊物からの100μタンパク質にて免疫を行った。各ラビットが、14週にわたって9回の免疫を受け、そして血清を調節計画に基づいてラビットから採取した。タンパク質抽出物に対する抗血清産生物を、酵素結合免疫溶媒検定(ELISA)を用い測定した。コラーゲンII型を、ELISAにおいて正のコントロールとして含んだ。マトリック物質に対し対象とされる抗血清の比色計による評価では、ラビットに極めて低い免疫原性が証明された。これらの結果を図9に示す。
【0079】
5.6 実施例6:注入と導入のための血清および他の流体を含むマトリックスの形成
実施例1により調製され、凍結乾燥しそして微粉化した1gのマトリックスを70%のエタノールにて滅菌し、そしてそのエタノールを、連続PBSリンスにて除去した。分散されたマトリックスを、遠心分離にかけそしてそのペレットを、1mlの血清に対し0.5gの凍結乾燥マトリックスの比率で、熱に非活性なヒツジの血清中にて懸濁し、標準的なシリンジに充填可能な、そして小ゲージ針を介し導入できる粘性の流体マトリックスを調製する。
【0080】
本発明の好ましい例において血清を、治療される脊椎動物又はヒトの患者から採取し、好ましくないタンパク質成分(相補的タンパク質)を破壊するよう熱に非活性にし、そして0.2μの滅菌ろ過器を通した。さらにマトリックス/血清の比率の相違により、使用に都合よくすることができる。1mlの血清に0.1gから2.0gの範囲にわたる比率で、凍結乾燥されたマトリックスが好ましい。血清が、本発明の架橋マトリックスの混合および導入の好ましい流体であり、その理由は、椎間円板細胞に有益な種々の内在性増殖因子を含むからである。
【0081】
さらに血清が、外在性増殖因子そして/又は小分子の適切な担体としての働きがある。椎間円板細胞に及ぼす外在性増殖因子の有効な効果が、血清を付加することにより強化される。さらに別の流体物は、粘性の流体マトリックスの混合および導入に適したものである。さらにたとえば滅菌した生理食塩水又は滅菌水を使用することができる。本発明による例は、本発明のマトリックスの混合および導入に使用できる種々の担体としての流体物に関するが、それに限定を意味するものでない。
【0082】
5.7 実施例7:圧力を介在したシリンジを用い椎間円板にマトリックス生成物を注入
マトリックス物質を、粘性流体を形成するよう、実施例6(血清と混合され)に基づいて調製し、そして付属した小さなゲージ針を備えた(例えば18-31ゲージ)標準的シリンジへ充填した。シリンジの注入圧力が、手の指で簡単に調節可能である。本発明の別の例において、粘性流体の注入圧力は、シリンジのプランジャーに所定の力を付随的に測定し(たとえば圧変換器を介し)そして伝達する外部デバイスにて調節できる。
【0083】
このデバイスの1つの好ましい例において、針に熱要素が含まれる。熱要素を有する針を提供することにより、針周辺のコラーゲン線維を収縮させ、そして針の貫通部位を効果的にシールするため、治療の端部で、そしてシリンジ針を取り出す時に、線維輪の外側の層に熱を導入することができる。本発明のマトリックスが、さらに患者のトランスペデキュラリー(すなわち脊椎茎を通して)の円板空間へ導入できることが考察される。特に架橋したマトリックスを、脊椎茎のチャンネルを介して挿入された生検カニューレ(biopsy cannula)を介し経皮的に投与できる。マトリックスを導入した後、次にチャンネル部分をシールするには、そのチャンネル部分を骨セメントやその他同様の物質にて充填する。
【0084】
5.8 実施例8:ヒト、ヒツジ、およびヒヒの椎間円板髄核細胞の単離
ヒトの椎間円板髄核組織を、外科手術中に採取し、抗生物質にて補充した1:1 vol./vol.の混合物において、Dulbecco's Modified Eagle Medium/Nutrient Mixture F-12(DMEM/F-12)にて懸濁した。その組織を切除し、其の時その組織を、滅菌化したダルベコ・リン酸緩衝の生理食塩水(Dulbecco's Phosphate Buffer Saline(DPBS))にて2-3回すすぎ洗いし、そこにある血液を除去した。層状に流れるドラフトにおいて、髄核組織を単離し、小さな(2mm)立方体のサイコロ形状にし、さらに10%の熱非活性子牛の血清、0.25%のペニシリン、0.4%のストレプトマイシン、0.001%のアンホテリシン B、および50μg/mlのアスクロビン酸にて補給したDMEM/F-12培養培地を含む組織培養培地(以後「TCM」として言及)に入れた。血液および他の異常要素をきれいにした組織だけが使用された。37℃にてシェイカーに入れ、その組織を、TCM中0.01%のヒアルロニダーゼ(Calbiochem)で1時間、そしてTCM中0.1%のII型(Sigma)コラゲナーゼで1昼夜消化し、ヒト椎間円板髄核細胞の懸濁液を得た。さらに上記方法をヒツジおよびヒヒの椎間円板髄核組織へ適用し、ヒツジおよびヒヒの椎間円板髄核細胞それぞれを得ることができた。
【0085】
5.9 実施例9:ヒト、ヒツジ、ヒヒの椎間円板髄核細胞の一次培養および展開
実施例8からヒトの椎間円板髄核細胞を、5%のCO2の雰囲気中95%の相対湿気で、37℃にてTCMにおいて培養し展開した。TCMを2-3日毎に変化させ、細胞を、連続増大させるよう80-90%の密集度になると別の容器へトリプシンと共に移す。さらに上記方法を、ヒツジ、およびヒヒの椎間円板髄核組織に適用し、拡大的に補給された椎間円板髄核細胞を得ることができた。
【0086】
5.10 実施例10:ヒト、ヒツジおよびヒヒの椎間円板髄核細胞における椎間円板細胞のマトリックス産生物のアルシアン・ブルー・アッセイ(Alcian Blue Assay)
実施例9からヒトの椎間円板細胞が、外在性増殖因子の存在する場合と存在しない場合でTCM中の24ウエルへ植え付けそして増殖させた。種々の時間点でTCMをウエルから吸引し、そしてそのウエルをPBSにて3回洗浄した。次に細胞を、4%のパラホルムアルデヒド(pH 7.4)にて10分間固定した。固定された細胞をPBSにて2回洗浄し、さらに0.1Nの塩酸(pH 1.5)に0.5%のアルシアン・ブルー(Alcian blue)にて1昼夜染色した。
【0087】
1昼夜染色した後過剰な染料を、PBSリンスで3回すすぎ洗いした。残っているアルシアン・ブルー(Alcian blue)染料(プロテオグリカンに結合)を、6Mのグアニジン塩酸塩にて1昼夜溶解し、そして分光器を用い630nmの吸光度で測定し、ヒトの髄核細胞における外在性増殖因子によりマトリックス産生の誘発指示剤を提供する。さらに上記方法を、実施例9からヒツジおよびヒヒの椎間円板髄核細胞へ適用し、ヒツジおよびヒヒの椎間円板髄核細胞の外在性増殖因子によりマトリックス産生の誘発を支援することができる。
【0088】
5.11 実施例11:ヒツジの椎間円板髄核細胞上の酵素結合免疫溶媒検定(ELISA)
合成マトリックスにおける特定の抗原エピトープを検出には、単一層に植え付けし、そして増殖した実施例9からのヒツジの椎間円板髄核細胞を、2%のグルタルアルデヒドにて室温で1時間固定した。固定された細胞をTBSにて5分間それぞれ3回洗浄した。非特定抗体の結合をブロックするようその細胞を、1mMのエチレンジアミン4酢酸(EDTA)、0.05%のTween-20TM、および0.25%のウシの血清アルブミンを含むTris緩衝生理食塩水(TBS)の溶液中で1時間インキュベートした。
【0089】
ブロック工程の後、TBSにて5分間それぞれ3回洗浄した。その細胞を一次抗体と共に室温にて2,5時間インキュベートし、そしてその過剰な一次抗体を、5分間にてそれぞれ3回洗浄し除去した。ブロッキング緩衝液による二次インキュベーションを10分間行い、その後TBSにて3回洗浄した。次に細胞を二次抗体と共にインキュベートし、それをアルカリ性ホスファターゼ酵素と3時間、室温にて結合した。未結合二次抗体を取り出し、5分間それぞれ3回TBSにて洗浄した。結合した一次および二次抗体を、着色反応物を形成する酵素特異的基質を付加することにより検出した。比色測定の分光光度計を用い、存在する結合抗体の定量的な測定を提供した。
【0090】
5.12 実施例12:ヒツジの椎間円板髄核細胞におけるプロテオグリカン合成に関する外在性増殖因子の効果
米国特許番号5,290,763、 5,371,191および5,563,124により生成されたトランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)と骨タンパク質増殖因子(BP)の混合物を、ヒツジの髄核細胞におけるプロテオグリカン合成の刺激に及ぼす効果を試験した。ヒツジの椎間円板髄核細胞を採取し、そして実施例8および9に記載されたように培養した。ヒツジの細胞を、24-ウエル・プレートのウエルへマイクロマス(200,000)に植え付けた。増殖因子の希釈物を、熱に非活性な0.5%子牛血清にて補充されたTCMで調製した。TGF-β1およびBPを、共に10ng/mlで試験した、さらにBPを、10μg/mlの濃度にて試験した。増殖因子のないコントロール・ウエルがTCMを含み、そのTCMを0.5%および10%の熱に非活性な子牛血清にて補充した。
【0091】
細胞を、7日および10日間種々の増殖因子へ継続的に暴露してインキュベートした。これらの時点で細胞を固定し、そしてプロテオグリカン合成量を、実施例10に記載のようにアルシアンブルー・アッセイにより測定した。7日と10日との両方の時間点で、プロテオグリカン合成が、0.5%の牛胎児の血清コントロール培養より10%の牛胎児の血清において有意に多い。7日の時間点にて、10μg/mlより高い濃度でのBPが、10%の血清コントロール培養におけるレベルより上の、プロテオグリカン合成においてかなり高い増大(93%)を、そして0.5%の血清コントロール培養におけるレベルより上の極めて高い増大(197%)を生成した。
【0092】
0.5%を越えた血清コントロールでプロテオグリカン合成がわずかな増大を、10ng/mlのTGF-β1およびBP培養物に観察されたが、これらの増大は有意でない。10日の時間点(図8)で、10μg/mlのBPが、10%を越える血清コントロールにてプロテオグリカン合成では有意な増大(132%)を作り出し、一方で10μg/mlのTGF-β1が、0.5%を越える血清コントロールで有意な増大(52%)を作り出した。10ng/mlで、BPが、0.5%を越える血清コントロールによるプロテオグリカン合成にほどほど(20%)の増大を呈し、一方10μg/mlの濃度で、BPが0.5%を越える血清コントロールでは890%の増大を作り出した。
【0093】
5.13 実施例13:ヒツジの椎間円板髄核細胞により産生されたコラーゲンII型およびコンドロイチン-6-硫酸塩に及ぼす外在性増殖因子の効果
TGF-β1とBPを、ヒツジの椎間円板髄核細胞のコラーゲンII型とコンドロイチン-6-硫酸塩の合成の刺激に及ぼす効果のために試験した。その細胞を実施例8および9記載のように得、そして培養しさらに組織培養皿に植え付けた。TGF-β1とBPの増殖因子を、熱非活性の0.5%牛胎児血清にて補給されたTCMにおいて調製した。TGF-β1を、10ng/mlの濃度にて試験した。一方BPを10μg/mlの濃度にて試験した。コントロール培地を0.5%の血清のみにより補給されたTCMにおいて培養した。
【0094】
増殖因子と共に7日間培養した後、2%のグルタルアルデヒド中で細胞培養物を固定し、細胞培養にて生成されたコラーゲンII型とコンドロイチン-6-硫酸塩の量を、実施例11記載の方法によるELISAにて検出した。使用した一次抗体が、マウス-抗ヒトコラーゲンII型とマウス-抗ヒトコンドロイチン-6-硫酸塩であった。7日の時点で、10μg/mlのBPを伴い培養された細胞培養物が、コントロールよりコラーゲンII型を324%も、そしてコンドロイチン-6-硫酸塩を1780%も多く生成した。10ng/mlのTGF-β1の場合、コントロールよりコラーゲンII型の生成を115%、そしてコンドロイチン-6-硫酸塩を800%多く増大した。
【0095】
5.14 実施例14:ヒトの椎間板髄核細胞のプロテオグリカン合成に及ぼす外因性増殖因子の効果
TGF-β1およびBPを、ヒトの髄核細胞におけるプロテオグリカン合成の刺激に及ぼす効果のため試験した。40歳の女性患者の椎間円板L5-S1から得られたヒトの椎間円板髄核細胞を、実施例8および9に記載のように培養し、そして24-ウエル・プレートに植え付けた。細胞をウエル表面に付着させた後、異なる増殖因子の複数の希釈液を付加した。試験される増殖因子の濃度が、TGF-β1が10ng/ml、そしてBPが10と20μg/mlであった。希釈物をTCM中で調製した。細胞を増殖因子に5日と8日間連続的に暴露した後に固定し、合成したプロテオグリカンを、実施例10記載のようにアルシアンブルー・アッセイにより検出した。
【0096】
わずか5日間で生成されたBPでは、コントロールよりアルシアンブルー・アッセイにより染色が有意に増大した。10μg/mlのBPでは、コントロールより34%増大し一方で20μg/mlのBPでは、コントロールより23%増大した。10と20μg/mlとの平均BP間では、有意差がない。8日間で両方の増殖因子が、コントロールよりアルシアンブルー・アッセイによる染色において有意差な増大を呈した。コントロールより10ng/mlでのTGF-β1が42%増大した。BPが、コントロールより10μg/mlにて60%の増大、そして20μg/mlにて66%増大した。
【0097】
5.15 実施例15:ヒト椎間円板髄核細胞におけるプロテオグリカン合成に及ぼす外在性増殖因子の効果
プロテオグリカン合成に及ぼすTGF-β1とBPの効果を試験するための第二の実験を、実施例14に記載の異なるヒト患者にて行った。別の40歳の女性患者から得たヒトの椎間円板細胞を、実施例8および9記載のように培養し、24のウエル・プレートに植え付けた。細胞を1昼夜付着させた後、増殖因子を加えた。TGF-β1を10ng/mlの濃度にて、BPを10μg/mlの濃度にて試験した。6日と9日後に細胞を固定し、そして合成されたプロテオグリカン量を、実施例10記載のアルシアンブルー・アッセイにより測定した。6日で10ng/mlのTGF-β1に刺激された細胞が、コントロールより54%多くプロテオグリカンを生成し、そして10μg/mlのBPが、コントロールより104%だけ生成を増大した。9日(図16B)で、10ng/mlのTGF-β1が、コントロールより74%だけ生成を増大させ、そして10μg/mlのBPが、コントロールより171%だけ生成を増大させた。
【0098】
5.16 実施例16:ヒヒの椎間円板髄核細胞におけるプロテオグリカン合成に及ぼす外在性増殖因子の効果
TGF-β1およびBPを、ヒヒの髄核細胞のプロテオグリカン合成の刺激に及ぼす効果を試験した。ヒヒの椎間円板髄核細胞を7歳の雌のヒヒから得、そして実施例8および9に記載のように培養し、そして24のウエル・プレートに植え付けた。増殖因子を付加する前に、その細胞をウエル表面に付着することができる。試験される増殖因子の濃度は、10μg/mlのBPと10ng/mlのTGF-β1であった。
【0099】
希釈物をTCM中にて調製した。その細胞を、増殖因子に4日、と8日間連続的に暴露した後に固定し、そしてプレテオグリカンの合成を、実施例10記載のように、アルシアンブルー・アッセイにより検出した。4日間では、プロテオグリカン合成における増殖因子とコントロールとの間の差が、有意的に増大していない。8日間で(図17)でTGF-β1とBPが、プロテオグリカン合成をコントロールより有意的に増大したが、その増大はわずかな増大にすぎなかった。特にTGF-β1の生成では、コントロールより21%の増大であり、一方BPの生成がコントロールより22%の増大であった。
【0100】
5.17 実施例17: 植えつけられたマトリックス物質をファロイジンにより染色
生きた細胞にて植え付けられた架橋化マトリックスを、生きた細胞のマトリックス内にて成長および増殖を明示するように、ファロイジンにより染色した。培地をマトリックスからPBS洗浄液にて各5分間で3回すすぎ洗した。そのマトリックスを4%のパラホルムアルデヒドにて常温で1時間固定した。4%のパラホルムアルデヒドを3回のPBSリンスにて洗い出した。そのマトリックスを、0.1%のTritopn-X 100TMにて3回処理し、さらに3回のPBSリンスにて洗浄した。次にマトリックスをファロイジン結合ロダミンにて染色し、PBS中45分間にて形成した。過剰なファロイジンをPBSにて洗い出した。マトリックスを、スライド上に取り付け、そして530-550nmの範囲のフィルターにて蛍光下に検討した。
【0101】
5.18 実施例18:BP増殖因子を伴う非均一性マトリックスにヒツジの椎間円板髄核細胞の成長および増殖
ヒツジの椎間円板髄核細胞を、本発明のマトリックスへ刺激した増殖因子の内部成長および増殖を研究した。実施例1の凍結乾燥工程の前に得られた架橋マトリックス物質を、各側面を切片が、75mmの四角形に切り出し、70%のエタノールにて3時間滅菌した。この方法の残りの工程を無菌条件下で行った。
【0102】
滅菌PBSにて1時間2回洗浄し、マトリックスからエタノールを除去し、その後TCMにて1時間洗浄した。次にマトリックスを、BP濃度20ng/mlと20μg/ml有するTCMに1昼夜懸濁した。コントロールは、架橋した20μg/mlのBSA(ウシ血清アルブミン)に懸濁されたマトリックスである値等。次にそれぞれのマトリックス片を、24ウエル・プレートのウエルに入れて、ヒツジの椎間円板髄核細胞を40,000細胞/mlを含むTCMにて植え付けた。細胞をマトリックス中で増殖させ、そしてTCMを2-3日毎に変えた。試料としてのマトリックス片を、3,6および9日で固定し、実施例17記載のようにファロイジンにて染色した。その方法を図7に示す。
【0103】
ヒツジの髄核細胞のマトリックス内への侵潤を、3、6および9日の時間点の全て観察し、そのマトリックスが、生物的に適合できることを示唆している。領域当り観察される細胞数が、6日と9日で有意に高く、細胞がマトリックス内で増殖していることを示唆している。より多くの細胞が、増殖因子を有しないコントロールよりも。BPを含むTCMにおいて懸濁されたマトリックス片にて観察された。20μg/mlでBPが、マトリックスへ最も大きな浸透と細胞増殖を生成した。
【0104】
実施例19:BP増殖因子にて均質なマトリックス内にヒツジの椎間円板髄核細胞の成長および増殖
ヒツジの椎間円板髄核細胞を本発明のマトリックス内に刺激した増殖因子の内部成長および増殖のさらなる研究が、実施例18の非均一化マトリッスクと対照的に、均一化されたマトリックスを用いて行なわれた。実施例1の凍結乾燥化前に得られた架橋マトリックス物質を、組織均質化器(homogenizer)を用い均質にし、そして70%のエタノールにて3時間滅菌した。以下の工程の全ての手順が無菌化の条件であった。
【0105】
均一化したマトリックスを、3200rpmにて10分間遠心分離にかけ、その上澄みを取り出した。ペレット状マトリックスを、1時間のPBSにて洗浄し、そして1時間のTCM洗浄の2回すすぎ洗い(rins)した。各洗浄の間マトリックスを遠心分離し、そして上澄み液を廃棄した。次にペレット状マトリックスを、20ng/mlと20μg/mlのBP濃度を有するTCMに1昼夜懸濁した。コントロールは、20μg/ml BSAに懸濁された架橋マトリックスであった。
【0106】
次にTCM/マトリックスの混合物を遠心分離にかけ、そして上澄み液を取り出した。マトリックス・ペレットを、ヒツジの椎間円板髄核細胞を含むTCM中で懸濁し、実施例8および9の手順に従って得た。マトリックス/細胞の懸濁液を、24-ウエル・プレートの各ウエルへピペットへ入れた。TCMを2-3日毎に変えた。細胞にて植え付けられた均質化マトリックスを4日間にて固定し、実施例17に記載のようにファロイジンにて染色した。その方法を図7に示す。
【0107】
4日後に、20μg/mlのBP中に浸透され、そして細胞にて植え付けられた架橋マトリックス層が収縮し、緻密な組織の丸みのある集塊を形成した。この組織が、元の架橋マトリックスと浸透された細胞にて生成された新しい合成マトリックスの両方から構成された。ウエル表面に付着した細胞が、極めてまれでありほとんどの細胞がマトリックスを浸透したことを示している。この決定が、ファロイジン染色により視覚化されたマトリックスへ細胞の密度の高い浸透により強化された。
【0108】
細胞が、核様軟骨細胞を特徴付ける丸みのある形状を形成すると想定し、これら元の形状に対し反転していることを示した。さらに細胞を、4日までに20ng/ml BPに浸透したマトリックス内に成長したが、細胞内の成長が、20μg/ml BPにて浸透されたマトリックスほどの密度がなかった。さらにBSAで懸濁されたコントロール・マトリクスが、そこに浸透した細胞を有するが、異なる希釈液の中で最少の集合状態であった。
【0109】
5.20 実施例20:ヒツジの腰椎棘(Lumbar Spine)モデルにおける髄核再生のための架橋マトリックス及び骨タンパク質(BP)増殖因子のIn Vivoのおける評価
ヒツジの腰椎棘(Lumbar Spine)の椎間円板の空間にBP増殖因子を含む架橋マトリックスを移植するための準備び外科的方法の評価、増殖因子を伴うマトリックスの移植が、6ヶ月間以上ヒツジの円板再生モデルにおける髄核の変性を阻止するかそして/又は再生を刺激するかどうかの評価、そしてマトリックス/BPの組み合わせにヒツジにおける抗体と介在細胞及び介在の免疫応答の評価に対し、試験的な研究(Pilot studies)が行われた。
【0110】
5.20.1 研究1
実施例1に記載のように、二分の一グラム(0.5g)架橋し、凍結乾燥し、そして粉砕したマトリックスを再水和化し、70%のイソプロパノール中で4時間で2回すすぎ洗いにて滅菌した。そのマトリックスを遠心分離にかけペレット化し、さらにそれぞれ2時間で3回滅菌し、PBSにてすすぎ洗しイソプロパノールを除去した。再度再水和化したマトリックスを遠心分離にかけて、そしてペレット化した。米国特許番号5,290,763及び5,371,191にて調製された骨タンパク質(BP)が、Sulzer Biologics,Inc.(Wheat Ride,CO)から、凍結乾燥の状態にて得られた。
【0111】
2ミリグラム(2mg)のBPを、100μl希釈の0.01Mの塩酸にて懸濁し、20mg/ml BPのストック溶液を生成した。BPのストック溶液を、ヒツジの血清中100μg/mlまで希釈し、そしてBP/血清懸濁液を、0.2ミクロンのフィルターに通し滅菌ろ過した。次に1.0mlの滅菌したBP/血清懸濁液を、上記の1.0mlの再水和化したマトリックスへ加え、架橋し、再水和化したマトリックス/BP/血清懸濁液のml当り50μgのBPを最終濃度として得られた。外科手術時に、マトリックス/BP/血清懸濁液の1滴量(one aliquot)(0.5ml)を、18又は20ゲージの注射針を付けた3mlの圧調節注射器に入れた。
【0112】
3匹のヒツジを麻酔にかけ、そして背側の腰椎領域を外科手術のため準備した。前操作として各ヒツジから血液を取り出し、遠心分離にかけ、そして免疫研究のため血清を収集した。腹部側面、腹膜後からのアプローチが、平面の腹部(plane ventral)への腹部斜筋から、腰椎棘(Lumbar Spine)の横突起(transverse processes)へと行われた。椎間円板L3-4,L4-5及びL5-6の線維輪を配置し、柔軟組織を納め、そしてそれぞれ5mmの深さで、5mmの長さの切開が椎間円板L3-4及びL5-6に行われた。介在する中間部のL4-5の椎間板を無傷の状態として内部操作によるコントロールとして使用する。輪穿刺処理(annulus stab procedures)の後、筋組織及び皮下組織を、吸収可能に縫合し閉鎖した。手術後で回復した後、ヒツジを所定地に自由な範囲にて放した。
【0113】
輪穿刺処理(annulus stab procedures)から2ヶ月後に、ヒツジを、2次の期間に基づいて手術した。麻酔にかけそして外科的準備の後、その3匹のヒツジの手術による腰椎棘(Lumbar Spine)を再度暴露した。調製された試験物質(すなわち再水和化されたマトリックス/BP/懸濁液)の200μを、実験的に創傷した椎間円板の1つ(L5-6)へ注入した。二次的に手術された椎間円板(L3-4)が、偽に処理された変性椎間円板として用い、すなわち注射針を輪(annulus)に穿刺したが、物質を注入しない。椎間円板を処理した後、筋組織及び皮下組織を、吸収できるよう縫合し閉鎖した。手術後で回復した後ヒツジを、自由な範囲の移動をできるようにした。研究の設計は、図10に略図化して表している。
【0114】
ヒツジを、二次手術後から2,4及び6ヶ月後に犠牲にした。2ヶ月後のヒツジからの放射線写真が、未処理の椎間円板から変性した外観を示すが、コントロール、および処理された椎間円板において正常な外観を示した(図11)。図12A、図12B及び図12Cに示すよう2ヶ月後のヒツジの組織分析は、偽りの処理がされ、穿刺で誘導された変性の椎間円板内の拡張的変性を確認した。コントロール椎間円板とマトリックス/BPにて処理した椎間円板の両方において、正常なサイズのゲラチン様核、および調節され、コンパクトな輪が観察された。4ヶ月と6ヶ月後のヒツジにて明らかな変化が、3の椎間円板の放射線写真にて見られなかった。4ヶ月後のヒツジの放射線写真を図13に示す。
【0115】
しかしながら、4ヶ月後のヒツジ全体の切開に関し、偽の処理がされた椎間円板が、全体に明らかな変性を呈したがコントロール及び処理した椎間円板が、外観において正常であった(図14)。6ヶ月後のヒツジにおいて偽の処理、コントロール及び処理された椎間円板間に全体的な差がなかった。輪の穿刺技術を用い変性率に幾つかの変化(6ヶ月のヒツジに明らかな変性がない)があるが、これらの結果は、架橋したマトリックス/BPによる処理が、ヒツジの椎間円板における穿刺にて誘発される変性の進行に対し保護するか、又は阻止することができる。
【0116】
5.20.2 研究2
二次研究のためマトリックス物質を、再水和化しそしてBPと血清を組み合わせ、セクション5.20.1(研究1)に記載のマトリックス/BP/血清の懸濁液を生成した。12匹のヒツジを麻酔にかけ、そして背側の腰椎領域の外科手術を準備した。手術前に各ヒツジから血液を取り出し、遠心分離にかけ、そして血清を免疫研究のため収集した。腹部側面の、腹膜後からのアプローチが、腹部斜筋を通り腰椎棘(Lumbar Spine)の横突起(transverse processes)に対し平面の腹部(plane ventral)と行われた。椎間円板L1-2,L2-3,L3-4,L4-5及びL5-6の線維輪を配置し、柔軟組織を納め、そして小さな直径の孔が4から5の椎間円板に注射針を用いて輪(annulus)を通して穿刺された。次に各ヒツジにおける4つの椎間円板のそれぞれから、髄核の個別部分を除去するよう、小型のキュレットを孔から通し椎間円板の空間に置いた。4つの創傷した椎間円板の2に、0.5mlのマトリックス/BP/血清懸濁液を、円板内の空間へ注入し、そして針の刺してその上を靭帯にて縫い合わせて密封した。
【0117】
この懸濁液の即時の注入が、「急性」治療方法と考えられた。その他の2の創傷椎間円板を未処理のままとし、針による穿刺にて縫い合わせ、靭帯にて密封した。介在する中間部L3-4の椎間円板を、内部手術のコントロールとして用いるためヒツジの棘(spine)の全てを無傷のままとした。これら以下の方法に従い、筋組織及び皮下組織を、吸収可能な縫い合わせにより密封した。手術から回復後ヒツジを範囲を自由にした。
【0118】
髄核の物質部分を取り出す最初の手術から6週間後、そのヒツジに2回目の手術をした。手術のため麻酔をかけ準備した後、5の手術による腰椎棘(spine)のレベルを再度暴露した。6週間前に創傷された残っている2の未処理の椎間円板の1において、0.5ミリの調製した試験物質(すなわち再水和化されたマトリックス/BP/血清懸濁液)を、椎間円板の内部円板の空間へ注入した。創傷の椎間円板内へ、6週間後のこの懸濁液を注入することが、「遅延」治療方法と考えられる。二次の未処理創傷の椎間円板が、偽の処理の変性椎間円板として、すなわち注射針で輪を穿刺したが物質を注入していなで用いられた。4つの実験的創傷の椎間円板のそれぞれに用いた治療方法は、棘(spine)内の配置するための位置づけを任意とした。すなわち、無傷のコントロール椎間円板(L3-4)を除いて、「急性」治療椎間円板、「遅延」治療椎間円板、又は非治療の創傷椎間円板の配置が、4の異なる腰椎の椎間円板レベルの1へ無作為に割り当てられた。椎間円板の治療の後筋肉組織及び皮下組織を、吸収可能な縫い合わせ物にて密封した。手術後の回復の後、ヒツジを制限範囲をなくした。
【0119】
ヒツジをマトリックス/BP/血清の注入から2,4,6か月後に犠牲にし、そして棘(spine)をホルマリン中で組織的として固定した。横切断部を、樹脂に埋め込まれた椎間円板から取り出し、H & E and Saffraninにて染色し、そして軟骨の増殖(クローニング)、プロテオグリカンの染色強度、線維のレベル及び骨形成レベルとして評価した。「急性」治療円板、「遅延」治療円板、偽治療された円板、およびコントロール円板の評価が、めくら方式、および上記一覧のそれぞれのパラメータに+1、+2、又は+3(低い、中間又は高い)と等級付けし行われた。組織的結果の半定量的評価を、「急性」と「遅延」(6週)治療の両方に2ヶ月、4ヶ月、および6ヶ月のヒツジにて比較した。
【0120】
その結果注入マトリックス+BPが、創傷した円板の核様マトリックスにおいてサフラニン・O(Saffranin-O)染色のグリコサミノグリカンの軟骨細胞のクローニング及び蓄積を刺激することを、全体にわたり実証した。特に再生よる修復の程度が、未処理の創傷円板にて観察されたものと比較し、「急性」治療円板、「遅延」治療円板の両方において有意に大きかった。マトリックス/BPにて治療された円板の修復のこうした有意に大きなレベルが、0.01レベルの信頼性の統計的有意性であった。さらに非治療円板と比較し急性及び遅延の治療円板に見出される線維化及び骨形成が少なかった。
【0121】
さらに有意な違いが、プロテオグリカンの染色レベルにおいて、「遅延」治療円板と、「急性」の治療円板の間に強調される。たとえば、プロテオグリカン合成及び核マトリックスの内容物の指標としてサフラン-Oによる染色が、「急性」マトリックス/BP治療円板におけるよりも「遅延」マトリックス/BP治療円板において有意に高い。さらにマトリックス/BPにて「遅延」と関連した組織学的に明らかな利点は、非治療の創傷の円板と比較した治療された円板内において骨の形質転換(骨の形成)又は線維組織の蓄積(線維症) の全体にわたる喪失することであった。一般に研究#2の結果が、架橋したマトリックス/BPにて創傷された円板の治療が、実験的に創傷された椎間円板の変性の進行に対抗して保護し、又は進行を妨げることが可能であることを、研究#1からの有意に早い指示を裏付けそして詳述している。
【0122】
5.21 実施例21:光重合可能なヒアルロン酸の合成;グリシジル・メタクリレートによるヒアルロン酸の誘導修飾
ブタのドーナ動物から得られた脱細胞化し、架橋した髄核物質を含む椎間円板治療の流体マトリックスを、in situにおいて架橋可能な重合体の粘性調節剤と組み合わせて合成した。さらに他の脊椎動物(すなわちヒト、ウシ、ヒツジなど)からの髄核組織を
用いることができる。粘性調節剤は、架橋可能な成分で機能化したヒアルロン酸を含む。その他の架橋可能なプロテオグリカンを、選択肢としての粘性調節剤として使用できる。さらに架橋可能な非プロテオグリカン重合体(たとえば機能化したポリアルキレン・グリコール)を、粘性調節剤として単独か又は架橋可能なプロテオグリカンと組み合わせるかのいずれかで使用できるが好ましくない。
【0123】
さらにプロテオグリカン粘性調節剤を、細胞増強剤として機能できるから好ましい。得られたマトリックスを、変性した円板内の髄核における空間を増大に有効な生物的適合性を有するヒドロゲルを提供し、そしてさらにマトリックスが導入されるヒトヘ、患者の髄核を再生すべき潜在的な治療物質を提供する。ヒトの組み換えヒアルロン酸(「rhHA」)を、Genzyme Biosurgery,Inc.から購入した。動物の組織の資源から誘導されるヒアルロン酸を、Sigma-Aldrichから購入した。簡便のため、ヒト又は動物のいずれかを資源とするヒアルロン酸を、「HA」として、グリシジル・メタクリレート(GM)、トリエチルアミン、アセトン、テトラ・ブチルアンモニウム・ブロミド、ビニル・カプロラクタム(VC)、およびビニルピロリジノン(VP)を、Sigma-Aldrichから購入した。Irgacure 2959を、Ciba-Geigyから得た。その他の化学薬品や装置の全てが、試薬等級を受けたものとして使用し、そしてFisher Scientific,VWR Scientific,and Sigma-Aldrichを含む標準的な供給物から得た。
【0124】
500-mlのエレメンヤー・フラスコ(Erlenmeyer fkask)に、1gのヒアルロン酸ナトリウム(「HA」)を100mlの脱イオン水中に室温にて溶解し、1%(wt./vol.)HA溶液を作成した。それ以外の状態でないかぎり、濃度パーセントがwt./vol.である。グリシジル・メタアクリレート2mlの液体、トリエチルアミン2mlの液体、およびテトラブチル・アンモニウム・ブロマイド2gramsを、室温で30分間攪拌しながら1%のHA溶液へゆっくり添加した。次にグリシジル・メタアクリレートに修飾されたHA(GM-HAM)反応混合物を、攪拌せずに24時間室温を維持した。最後に、GM-HAM溶液を含むフラスコを、バス浴中50℃と60℃の間の温度にて1時間加熱した。
【0125】
GM-HAM反応混合物を室温まで冷却した後、修飾したHAを、1.5Lのアセトンを加えることで溶液から沈殿させた。GM-HAM沈殿物を、新しいアセトンにて2-3回すすぎ洗いし、アセトンを蒸発させ除去しそしてGM-HAMを100mlの脱イオン水で再度溶解した。この最終的なGM-HAM溶液を、-80℃にて凍結し、そして粉末にするよう凍結乾燥した。凍結乾燥したGM-HAMを使用するまで4℃にて保存した。上記反応においてヒアルロイン酸骨格ケアクリル結合体を付加して、アクリック(acrylic)を加えることで、HAが遊離基重合、又はより好ましくは共重合へ感化し易くなり、そしてその結果光重合可能なアルロイン酸を架橋する。
【0126】
5.22 実施例22:条件変化によるGM-HAMの光重合化
1乃至3%(wt./vol.)のGM-HAMの溶液を、500ppmと2000の間の光開始剤(initiator)(Irgacure 2959)、そして共モノマーのビニル・ピロリジノン(1μ「VP」)のlμl/mlと /10μl/mlとの範囲を含む燐酸緩衝液生理食塩水中で作成される。VPは、GM-HAMの架橋に必要な時間を減少する共モノマーとして含み、これにより髄核組織と結合したマトリックスの粘性を減少する。何か特定の理論により結合されることなく、VP分子が、大きなGM-HAM分子の反応部位の間の立体障害を未然に防ぐ架橋成分を提供することで、大きなGM-HAM分子の架橋を容易にすると考えられる。
【0127】
GM-HAM/VP/開始混合物の試料(70-100μl)を、長波長紫外線(Black-Ray lamp,UV波長365nm)に時間を変えて曝し、重合型架橋反応によりこれらヒドロゲルを十分架橋するに必要な最適なパラメータを決定した。表1の一覧は、2分間という基準とした制約時間内で、紫外線に曝して形成すべき組み合わせに十分である基質GM-HAM、共モノマー、および開始剤の濃度を示している。比較的短い重合時間が、患者の外傷を最少にするために必要である。300秒より少ない重合時間が好ましく、1-100秒の時間が最適であると考えられる。
【0128】
表 1
光重合ヒドロゲルのための重合化条件および生成成分

GM-HAM 時間
(% wt./vol. ) Irgacure 2959 VP(μl/ml) (分:秒) 備考
2.5 1000ppm 2 1:30 固形ゲル
2.5 1000ppm 4 1:20 固形ゲル
2.5 1000ppm 6 2:00 固形ゲル
2.5 2000ppm 4 1:05 固形ゲル
2.0 2000ppm 8 1:15 固形ゲル

【0129】
5.23 実施例23: GM-HAMと光酸化PNPマトリックス(PF)との組み合わせヒドロゲルに生きたヒツジの核様軟骨細胞の包含
GM-HAMの3%(wt./vol. )の溶液を、2000ppmのIrgacure 2959および6μのビニル・カプロラクタムを含有するPBS中で調製した。前記実施例1により実質的に生成し、凍結乾燥し、光架橋した髄核(「PNP」)を、PBS液中で再水和化した。次にマトリックスを遠心分離にて滅菌し、70%(wt./vol. )のエタノールにて水和化した。次に再度遠心分離しエタノールを除去し、そしてPBSにて洗浄(rinse)しエタノールを除去し、PBS中で単独で再度水和化した。再水和化された100mgのPNPマトリックスが1mlの容積を占め、これにより10%wt./vol.の溶液が得られた。
【0130】
3%のGM-HAMをエーテルにて1:1に希釈した、すなわち(1)は脱細胞化された10%のPNPを滅菌;(2)は、5%のPNP(10%のPNPに等量のPBSを加えるて得られた)を滅菌し、脱細胞化し;又は(3)がPBSを滅菌し、(1)1.5%のGM-HAM/5%のPNP(開始剤およびビニル・カプロラクタムを伴い);(2)が、1.5%のGM-HAM/2.5%のPNP(開始剤およびビニル・カプロラクタムを伴い);並びに(3)が1.5%のGM-HAM/PBS(さらに開始剤およびビニル・カプロラクタムを伴い)、それぞれの最終溶液を得た。
【0131】
ヒツジの核様軟骨細胞(SNCs)を、GM-HAM/PBSおよびGM-HAM/PNPのマトリックス溶液を2x106細胞/mlの濃度にて懸濁した。SNC/マトリックスの懸濁液を型に注ぎ、そして長波長紫外線365nmの波長を用い光重合した。UVへ曝し2分後にSNCsを、重合化したヒドロゲルに包含した。次にヒドロゲルを、12ウエルのプレートを分離しているウエルに入れ、そして増殖培地(10%のFBS,50μg/mlのアスクロビン酸、および抗生物質にて補給されたDMEM/F-12)にて培養されたTranswell(商標)挿入物(Corning,Inc.)に入れた。
【0132】
3の群からヒドロゲルを、種々の時間点(0,1,6,14および21日)にて増殖培地から取り出し、そしてSNCsの生育性を評価するための商業的に入手可能な生存/死の蛍光染色(生きた細胞では緑色を示し、死んだ細胞では赤色を呈す)にて染色した。細胞の光学顕微鏡写真を、上記一覧のそれぞれの時間点にて撮った。固定したヒドロゲルを形成すべき重合時間が、以下のような、すなわち1.5%のGM-HAMだけで50秒重合、1.5%のGM-HAMプラス2.5%のPNC物質で1分間重合、1.5%のGM-HAMプラス5.0%のPNC物質で1分と20秒間重合した。
【0133】
3つのヒドロゲル形成物のインキュベーション直後(0hr)のデータでは、顕著なSNC生育性を示した。SNCsの生存性が、GM-HAMゲルにおいて24時間までで50%まで低下したが、PFマトリックス物質を含むゲルに非常に高く維持していた。表2は、架橋マトリックスにおける重合化および包含した後の細胞の成育性の一覧である。直後および24時間後の細胞の高い成育性が、GM-HAMマトリックス成形物の細胞適合性を明示する。図20および図21が、架橋したGM-HAMだけよりPNPマトリックスにおけるSNCsの生存性が増強されていることを証明する顕微鏡写真を提供した。
【0134】
表2
形成されたヒドロゲルにおけるSNCの成育性

データ点 マトリックス %生育性
0 hr 1.5%GM-HAM 82.42
0 hr 1.5%GM-HAM/25%PF 87.10
0 hr 1.5%GM-HAM/50%PF 90.75
24 hr 1.5%GM-HAM 50.44
24 hr 1.5%GM-HAM/25%PF 85.90
24 hr 1.5%GM-HAM/50%PF 97.08

【0135】
この開示に記載の好ましい組成物を、最少侵害外科装置を用いて円板空間の内側をin situにて重合できることが、理解できよう。光は、FocalSealTM(Genzyme Biosurgery Inc.,Cambridge MA)などの歯科への応用および外科の接着への応用に開発された商業的に利用可能な装置と類似する光繊維UV光システムを用いて、円板の空間に導入できる。修飾されたヒアルロン酸が、粘性調節剤として特に好ましく、その理由が円板の核様物質の主要成分である。しかしながら、粘性調節剤および細胞増強剤として試料に用いられたGA-HAM物質が、マクロモノマーに基づくポリエチレン・グリコールなどの他の水溶性マクロモノマーと置き換えが可能である。
【0136】
さらにIrgacure 2929を、この好ましい例において使用されたとしても、架橋する共重合反応を開始する遊離基を、たとえばエロシン/トリエタノールアミンなど重合化学の先行技術として周知な他の遊離基開始剤又は光開始剤にて生成できる。さらにアンモニウム硫化物などの水溶性熱開始剤を使用することができる。Irgacureが、水およびPBSなどの水溶性緩衝液に溶解(3%まで)でき、そして架橋の開始に極めて少量しか必要としないから好ましい、最後にVPが、実施例22における共モノマーとして用いられたが、さらにビニル・カプロラクタム、アクリル酸、ポリエチレングリコール・アクリレイト、およびメタクリルレイト・エステルなどの他の共モノマーを使用することができる。水溶性共モノマーが好ましい。他のマクロメイヤーおよび開始剤には、たとえばPathakら(1993)を参照。
【0137】
さらに髄核における天然のHAの化学的修飾が、実施例1記載と同じ化学物質を使用できる。しかしながら、外在性物質が好ましい。動物又はヒトの資源から誘導される修飾の又は非修飾の髄核物質が、たとえば椎間円板の空間(又は生体内の別な空間)のin situにて重合可能な溶液を用い、たとえば混合することにより結合される。実施例21が、光重合化ヒアルロン酸の合成を記載する。
【0138】
ヒトを含む哺乳動物における椎間円板の損傷の治療に有効なマトリックス組成物が、上の記載および実例にて調製できる。本発明の種々の例が詳細に記載されているが、これらの例の修飾および適用が、本開示を照らして当業者に明らかになるであろう。しかしながらこうした修飾や適用が、本発明の精神及び範囲内であり、以下のクレームに記載されている。
【0139】
5.24 GM-HAMおよび光酸化PNPマトリックス(PN)とアルキニ化したビーズとを組み合わせたヒドロゲルに生きたヒトの関節軟骨細胞のカプセル化
実施例23. 1.5%のGM-HAM/PBSおよび1.5%のGM-HAM/2.5%のPNPを、実施例23記載と同様に調製した。Cambrex Bio Science Walkersvilleから購入した正常なヒトの関節軟骨細胞(NHACs)を、マトリックス形成物に2x106細胞/mlの細胞の濃度にて懸濁した。NHAC/マトリックス懸濁液を型に注ぎ、そして365nmの長波長の紫外光を用いて、光重合した。1分間UVに曝した後、NHACsを、ヒドロゲルに包含した。次にヒドロゲルを、12ウエルプレートの別々のウエルに入れ、軟骨細胞の異なる培地(Cambrex Bio Science)を用いインキューベイトした。さらにNHACsを正のコントロールとして1.2%のアルギナート(alginate)・ビーズに懸濁した。アルギナート(alginate)・ビーズを、CaCl2の溶液中にて、18-ゲージの針を通して発現される、NHAC/アルギナート(alginate) 懸濁物の重合により形成する。
【0140】
3つの群からの試料を、増殖培地から種々の時間点(0,1,7,および28日)にて取り出し、そして商業的に入手できる生/死の蛍光染色にて染色し、SNCsの活性を評価した(生きている細胞が緑色であり、死んでいる細胞が赤く見える)。細胞の光学顕微鏡写真を、上記一覧の各時間点にて撮った。3の形成におけるインキュベーション直後(0hr)のデータが、図22、図23および図24に示されるように顕著な初期NHACの発育力を示した。24時間後の生成物全てにおける生存が、極めて高く維持されている。直後および24時間後の細胞の高い生育性が、GM-HAMおよびGM-HAM/PNPマトリックス成形物の細胞融合性を明示した。図25、図26、及び図27が、光学顕微鏡写真を提供し、それが、NHACsが生育性を維持し、そして継続して増殖させ、そして28日の培養を介しアルギナート(alginate)・ビーズとして両ヒドロゲルを交差して移動することを証明している。
【0141】
5.25 実施例25:GM-HANと光酸化性PNPマトリックス(PF)との組み合わせヒドロゲルから放出される残留光重合化成分の細胞障害性
ヒツジの核様細胞(SNCs)を24ウエル・プレートで25,000細胞/ウエルにて植え付けし、そしてDMEM/F-12の培養培地を含む組織培養培地(Tissue Culture Medium(以後「TCM」と言及))にてインキュベートした、そのDMEM/F-12の培養培地では、10%の熱不活性子牛の血清、0.25%のペニシリン、0.4%のストレプトマイシン、0.001%のアンフォテリシンB、および50μg/mlのアスコルビン酸が補給された。1.5%のGM-HAM及び1.5%のGM-HAM/2.5%PNPモノマー溶液を、実施例23記載のように調製した。モノマー溶液を型に注いで、そして365nmの長波長の紫外線を用いて光重合した。重合化したヒドロゲルを、後に植え付けられたSNCs上に置かれた組織培養挿入物の中へ置かれた。さらに未重合マトリックスの細胞障害性が、挿入物含有の未重合化モノマー溶液を含むことにより判定される。空の挿入物を含むSNCにて植え付けられたウエルを、コントロールとして用いた。SNCs及び挿入物をTCM内に完全に浸した。24時間露出した後、挿入物を取り出して、細胞の生存可能性を、MTS(3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-サルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム)法にて評価した。MTS法は、比色法により細胞の生存性を測定し、そこでMTSのテトラゾリウム化合物を、TCM中で溶解可能な着色されるホルマザン生成物へ細胞により生物的に還元される。この変換は、代謝としての活性細胞に存在するデハイドロゲナーゼ酵素により行われる。
【0142】
図28のグラフは、種々の試験物質に対し570nmのTCMの吸収を示した。570nmの吸収が、種々の細胞により産生されるホルマザン生成物の量と直接関係する。これらの結果から、重合化されたヒドロゲルも重合化されていないモノマー溶液も、細胞障害性のないことを結論することができる。従ってモノマー溶液及び重合化ヒドロゲルにおける光開始系構成物(Irgacure 2959、ビニル・カプロラクタム)並びに重合化されたヒドロゲルから放出される遊離残基が、細胞に適合できる。
【0143】
5.26 実施例26:生きたヒツジの核様軟骨細胞上の光開始系の細胞障害性
ヒツジの核様軟骨細胞を、12のウエル・プレートにおいて、20,000細胞/ウエルにて植え付けし、そしてTMCにてインキュベートした。48時間以上の間細胞を付着させた後、用いられた培養物をIrgacure 2959の0又は1000 ppm含有のTCMと取り換えた。次にSNCsを、波長365nmの長波長の紫外線で、異なる時間長にて暴露し、その後37℃にてインキュベートした。MIT法が、UVに暴露したあと1,5及び24時間にて行われ、細胞の変動性を評価した。この評価法の原理は、異なるテトラゾリウム(tetrazolium)化合物がこの方法に用いられている以外、前に言及したMTSアッセイと同様である。
図29の観察のように、UV光及びIrgacure 2959単独では、有意な細胞障害性ではない。Irgacure 2959とUV光の相互作用により遊離基の生成が、細胞死の要因である、しかし5分と10分のUVの暴露だけ有意である。GM-HAMとGM-HAM/PNPマトリックスの最近の光重合時間が、細胞障害性のない3分のUV暴露下である。
6.文献
本明細書に記載されたものに例示的な方法又はその他の詳細な補足事項を提供する程度まで、以下の文献が引用により特に本明細書に組み入れられる。
米国特許番号 4,772,287
米国特許番号 4,904,260
米国特許番号 5,047,055
米国特許番号 5,147,514
米国特許番号 5,171,280
米国特許番号 5,171,281
米国特許番号 5,192,326
米国特許番号 5,290,763
米国特許番号 5,332,475
米国特許番号 5,371,191
米国特許番号 5,458,643
米国特許番号 5,514,180
米国特許番号 5,534,028
米国特許番号 5,563,124
米国特許番号 5,645,597
米国特許番号 5,674,295
米国特許番号 5,800,537
米国特許番号 5,800,549
米国特許番号 5,817,153
米国特許番号 5,824,093
米国特許番号 5,837,235
米国特許番号 5,854,397
米国特許番号 5,922,028
米国特許番号 5,964,807
米国特許番号 5,976,186
米国特許番号 6,022,376
米国特許出願番号 09/545,441
米国特許出願番号 09/746,921
Pathakらによる「Bioerodible Hydrogels Based on Photopolymerized Poly(Ethylene Glycol)-Co-Poly(Alpha-Hydroxy Acid) Diacrylate Macromers,」Macromolecules,26:581-87,1993.
本明細書に開示され、そしてクレームされた組成物、および方法の全てが、本開示と照らして過剰な実験をすることなく、作成されそして実施することができる。本発明の組成物及び方法が、好ましい実施の態様に関して記載されているが、その変化が、本発明の考え、精神、範囲を逸脱することなく、本明細書に記載された組成物、および方法に適用され、そしてその方法の工程又は一連の工程において適用されることが、当業者に明らかになるであろう。より具体的には、化学的と生理的とが関連する特定薬剤が、本明細書に記載される薬剤と置き換えることができるが、同じか同様の結果が得られることは、明らかであろう。こうした同様の置き換え、および修飾した物の全てが、添付されたクレームにより定義されたように、本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であると考えられることは、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0144】
以下の図面は、本明細の1部を形成し、そして本発明の特定の観点をさらに実証することを意図している。本発明が添付図面と結びつけて行われる以下の記載の引用により、より良く理解することができ、同じ引用数が、同じ要素を同定し、そこにおいて、
【図1】図1は、脊椎動物の健全な髄核組織の成分を示す略図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい例におけるブタの髄核組織の架橋したマトリックスの調製および使用方法を示す略図である。
【図3】図3は、本発明の架橋したマトリックスから抽出されたタンパク質の量を非架橋コントロールと比較して、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)分析の写真撮影による再生である。レーンA(Lane A)が、非架橋コントロールの実質的タンパク質の抽出化を示し、そしてレーンB(Lane B)が、還元されたタンパク質抽出を実証する架橋したマトリックスを示す。
【図4】図4は、本発明の架橋したマトリックスにてブタの新鮮な髄核のH & E(ヘマトキシリンおよびエロシン)にて染色された断面部を、写真撮影にて両方を300Xの倍率で比較したものである。新鮮な髄核が、丸い、有核の軟骨細胞、および無傷の細胞周囲マトリック「ネスト(nests)」を示し、一方架橋したマトリックスが、破壊された鋸状断片、最小の膜物質、およびさらにイソプロパノールによる滅菌を示している。
【図5】図5は、本発明の架橋したマトリックスから消化された型IIコラーゲンの活性化と非架橋コントロールと比較して、染色されたニトロセルロズ膜の写真撮影による再生である。非架橋コントロールのペプシン消化物が、コラーゲンII型抗体と反応することを、レーンA(Lane A)が示している。架橋したマトリックスのペプシン消化物が、コラーゲンII型抗体と反応しないことを、レーンB(Lane B)が示している。
【図6】図6は、本発明の架橋したマトリックスと非架橋コントロールの流体力学的/膨潤能力の比較図である。架橋したマトリックスが、約95%の流体力学的能力を保持している。
【図7】図7は、骨タンパク質増殖因子(BP)と結合した架橋化したマトリックスを含む、本発明の例において、ヒツジ細胞の内部成長、増殖、および新しいマトリックスの合成の刺激の証明に用いられる実験的な方法の略図である。
【図8】図8は、マトリックス合成を刺激する増殖因子を示す。この図は、増殖因子により刺激されたヒツジ髄核細胞のマトリックス形成物のアルシアン・ブルー法(Alcian blue assay)の結果を示している。マトリックス産生の有意な刺激が、μgのBP濃度でのみ発生する。
【図9】図9が、ラビットの免疫化物およびヒツジの血清において、本発明の架橋したマチリックスに対する免疫原性試験の結果を示す図である。ラビットの免疫化物における架橋化したマトリック低抗体力価である。In vivoに (最初のヒツジ) おいて架橋化されたマトリックスに対する血清抗体がない。
【図10】図10が、本発明のマトリックスと増殖因子の組み合わせのin vivoにおける研究の方法の図である。
【図11】図11が、本発明の例のin vivo研究におけるマトリックスと増殖因子を組み合わせ、注入2ヶ月後に犠牲にしたヒツジからの脊椎柱の放射線写真である。治療された椎間円板とコントロールの椎間円板が、正常なサイズでありそして椎間円板の構造が正常に見られる。未治療未の椎間円板版が、分離した端部プレート、骨の再吸収および再構築を示した。
【図12】図12A、図12B、図12Cが、本発明のマトリックスおよび増殖因子の組み合わせたものを注射して2ヵ月後犠牲にしたヒツジの椎間円板の組織スライドの写真撮影による再生である。図12Aが未治療の椎間円板を示し、図12Bが、コントロールを示し、そして図12Cが治療した椎間円板を示す。注入から2ヶ月後、未治療の椎間円板は拡張した変性を呈すが、架橋マトリックス/BP治療椎間円板が、コントロール椎間円板に類似した正常な構造を保持している。
【図13】図13が、本発明のin vivoの研究におけるマトリックスと増殖因子の組み合わせを注入し、4ヶ月後に犠牲にしたヒツジの脊椎柱の放射線写真である。4ヶ月経過したヒツジの椎間円板の間の放射線写真による相違が現れていない。
【図14】図14が、マトリックスと増殖因子との組み合わせを注入し、4ヶ月後に、犠牲にしたヒツジの椎間円板の写真撮影した組織再生の組織スライド。注入後4ヶ月後の未治療椎間円板が、変性による変化を呈する一方で架橋したマトリックス/BP治療椎間円板が、コントロールと類似し、つまり正常なゼラチン化髄核が、輪状の無傷の端部プレートを調節する。
【図15】図15Aおよび図15Bが、増殖因子の刺激に基づいてコラーゲンII型およびコンドロイチン-6-硫化物の合成を測定するために行われるELISAの結果を示す図である。
【図16】図16Aおよび図16Bが、ヒト椎間円板の髄核細胞のプロテオグリカン合成を刺激する増殖因子を示す。示されたのは、増殖因子により刺激されるヒト椎間円板細胞のプロテオグリカン合成のためのAlcian blueアッセイの結果を示しているグラフ(図16Aが8日のインキュベート、図16Bが9日のインキュベート)である。
【図17】図17は、ヒヒの椎間円板髄核細胞のプロテオグリカン合成を刺激する増殖因子を示す。示されたのは、増殖因子により刺激されるヒヒの椎間円板細胞のプロテオグリカン合成のためのAlcian blueアッセイの結果を示しているグラフである。
【図18】図18は、光架橋によるヒヤロイン酸、および光架橋による髄核の物質を含む本発明による代表的マトリックスの写真である。
【図19】図19は、本発明によるヒドロゲルにカプセル化され、そして0時間で生/死を染色にて色分けされたヒツジの髄核細胞(SNCs)の顕微鏡写真である。
【図20】図20は、本発明によるヒドロゲルにカプセル化され、そして24時間で生/死を染色にて色分けされたヒツジの髄核細胞(SNCs)の顕微鏡写真である。
【図21】図21は、本発明によるヒドロゲルにカプセル化され、そして21日で生/死を染色にて色分けされたヒツジの髄核細胞(SNCs)の顕微鏡写真である。
【図22】図22が、実施例24に詳細な研究結果を示す顕微鏡写真である。正常なヒトの関節の軟骨細胞を、カトリックス組成物にカプセル化し、そして紫外線(UV light)にて光重合した。示されたのは、0時間のインキュベーションにて得られたデータである。
【図23】図23が、実施例24に詳細な研究結果を示す顕微鏡写真である。正常なヒトの関節の軟骨細胞を、カトリックス組成物にカプセル化し、そして紫外線(UV light)にて光重合した。示されたのは、0時間のインキュベーションにて得られたデータである。
【図24】図24が、実施例24に詳細な研究結果を示す顕微鏡写真である。正常なヒトの関節の軟骨細胞を、カトリックス組成物にカプセル化し、そして紫外線(UV light)にて光重合した。示されたのは、0時間のインキュベーションにて得られたデータである。
【図25】図25が、実施例24に詳細な研究結果を示す顕微鏡写真である。正常なヒトの関節の軟骨細胞を、カトリックス組成物にカプセル化し、そして紫外線(UV light)にて光重合した。データは、軟骨細胞が、生き生きし、継続して増殖することができ、培養28日を通しマトリックスを交差していることを、証明している。
【図26】図26が、実施例24に詳細な研究結果を示す顕微鏡写真である。正常なヒトの関節の軟骨細胞を、カトリックス組成物にカプセル化し、そして紫外線(UV light)にて光重合した。データは、軟骨細胞が、生き生きし、継続して増殖することができ、培養28日を通しマトリックスを交差していることを、証明している。
【図27】図27が、実施例24に詳細な研究結果を示す顕微鏡写真である。正常なヒトの関節の軟骨細胞を、カトリックス組成物にカプセル化し、そして紫外線(UV light)にて光重合した。データは、軟骨細胞が、生き生きし、継続して増殖することができ、培養28日を通しマトリックスを交差していることを、証明している。
【図28】図28が、ヒツジの髄核の軟骨細胞の非重合化モノマー溶液、および重合化ヒドロゲルの細胞障害性影響を示す図である。
【図29】図29が、紫外線暴露24時間後のヒツジの髄核の軟骨細胞で、Irgacure 2959の波長365nmの紫外線、およびIrgacure 2959の遊離基の細胞障害性影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の髄核組織又は細胞を含む生物的に適合できる流体架橋マトリックス、および少なくとも一次の架橋可能な粘性調節剤を含む組成物。
【請求項2】
前記脊椎動物の髄核組織又は細胞が、ヒト、ウシ、ヒツジ、又はブタを資源(origin)とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記脊椎動物の髄核組織又は細胞が、ヒトを資源(origin)とする請求項1又は2のいずれか1項記載の組成物。
【請求項4】
前記脊椎動物の髄核組織が、脱細胞化された前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
前記生物的に適合できる流体架橋マトリックスが、光感受性染料にて架橋した前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
生物的に適合できる流体架橋マトリックスが、コラーゲンを含む前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
前記生物的に適合できる流体架橋マトリックスが、前記髄核組織又は前記細胞へ架橋した機能化コラーゲンを含む前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋可能な粘性調節剤が、in situにて架橋可能である請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋可能な粘性調節剤が、ex vivoにて架橋可能である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記架橋可能な粘性調節剤を、光へ曝すことにより架橋可能である前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記架橋可能な粘性調節剤が、紫外線又は可視光へ曝すことにより架橋可能である請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記架橋可能な粘性調節剤が、架橋可能なプロテオグリカンを含む前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記架橋可能な粘性調節剤が、ヒアルロン酸、ポリアルキレン・グリコール、キトサン、およびフィブリンから成る群から選択される架橋可能なプロテオグリカンを含む前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記架橋可能な粘性調節剤が、少なくとも一次の架橋可能成分の添加により機能化された前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
前記架橋可能な粘性調節剤が、機能化されたポリアルキレン・グリコールを含む請求項13又は請求項14のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
前記架橋可能な粘性調節剤が、機能化されたヒアルロン酸を含む請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
前記架橋可能な粘性調節剤が、機能化されたヒトのヒアルロン酸を含む請求項13乃至請求項16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
前記架橋可能な粘性調節剤が、機能化された組み換えのヒトにおけるヒアルロン酸を含む請求項13乃至請求項17のいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
前記架橋可能な粘性調節剤が、グリシジル・メタクリレイト、メタクリレイト無水物、およびメタクロイル・クロライドから成る群から選択される少なくとも一次の架橋可能な成分にて機能化された前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
前記架橋可能な粘性調節剤が、グリシジル・メタクリレイトにより機能化された前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
前記架橋可能な粘性調節剤が、少なくとも二次の明確な架橋可能な成分を含む前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
前記二次の明確な架橋可能成分が、ビニル・ピロリジノンである請求項21記載の組成物。
【請求項23】
さらに医薬賦形剤を含む前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項24】
治療に使用する前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項25】
骨の修復又は治療に使用する前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項26】
椎間円板の変性又は関節軟骨の変性の修復又は治療に使用する前項請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
火傷又は創傷の治療に使用するための請求項1乃至24の何れか1項記載の組成物。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか1項による組成物を含む単離された哺乳動物の宿主細胞又は組織。
【請求項29】
前記宿主細胞又は組織が、ヒトである請求項28記載の単離された哺乳動物の宿主細胞又は組織。
【請求項30】
前記宿主組織が、ヒトの円板、軟骨又は皮膚組織である請求項28又は請求項29の何れか1項記載の単離された哺乳動物の宿主細胞又は組織。
【請求項31】
哺乳動物を治療するための薬剤の製造において、請求項1乃至27の何れか1項記載の組成物、又は請求項28乃至30のいずれか1項記載の単離された哺乳動物の宿主細胞又は組織の使用。
【請求項32】
哺乳動物の骨の疾患又は損傷、火傷、創傷、円板の変性、又は関節軟骨の損傷又は外傷を治療する薬剤の製造において、請求項1乃至27の何れか1項記載の組成物、又は請求項28乃至30のいずれか1項記載の単離された哺乳動物の宿主細胞又は組織の使用。
【請求項33】
前記組成物又は前記宿主細胞を、前記哺乳動物の細胞、組織又は器官へ注射によるか又は直接投与により前記哺乳動物へ提供する請求項31又は請求項32のいずれか1項記載の使用。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである請求項31乃至33のいずれか1項記載の使用。
【請求項35】
前記哺乳動物が、骨の疾患、骨の損傷又は骨の結合損傷、椎間円板の損傷、疾患又は変性、又は関節軟骨の損傷、疾患又は変性を発症しているか、発症の疑いのある又はそのリスクのあるヒトである請求項31乃至34のいずれか1項記載の使用。
【請求項36】
前記哺乳動物が、骨の疾患、骨の損傷又は骨の結合損傷を発症しているか、発症の疑いのある又はそのリスクのあるヒトである請求項31乃至35のいずれか1項記載の使用。
【請求項37】
前記哺乳動物が、椎間円板の損傷、疾患、又は変性を発症しているか、発症の疑いのあるか又はそのリスクを有するヒトである請求項31乃至35のいずれか1項記載の使用。
【請求項38】
前記哺乳動物が、関節軟骨の損傷、疾患、又は変性を発症しているか、発症の疑いがあるか又はそのリスクを有するヒトである請求項31乃至35のいずれか1項記載の使用。
【請求項39】
哺乳動物の骨、椎間円板、又は関節軟骨に対する疾患、機能不全、又は外傷を発症しているか、発症の疑いがあるか又はそのリスクを有する哺乳動物の治療方法において、請求項1乃至27の何れか1項記載の組成物、又は請求項28乃至30のいずれか1項記載の単離された哺乳動物の宿主細胞又は組織の生物的な有効量を前記哺乳動物に、前記疾患、機能不全又は損傷の治療に十分な期間、投与することを含む前記方法。
【請求項40】
皮膚組織又は皮の細胞へ創傷又は外傷を発症しているか、発症の疑いがあるか又はそのリスクを有する哺乳動物の治療方法において、請求項1乃至27の何れか1項記載の組成物、又は請求項28乃至30のいずれか1項記載の単離された哺乳動物の宿主細胞又は組織の生物的な有効量を前記哺乳動物に、前記創傷又は外傷の治療に十分な期間、投与することを含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2006−518256(P2006−518256A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503281(P2006−503281)
【出願日】平成16年2月2日(2004.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/003034
【国際公開番号】WO2004/069296
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(502363700)ジンマー オーソバイオロジクス,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】