説明

高エネルギーリチウムイオン二次電池

室温にて中程度の放電レートでサイクルする場合に、高い総エネルギー、エネルギー密度および比放電容量を有するリチウムイオン二次電池が記載されている。改良された電池は、高エネルギー密度を有する正極材料の高充填量に基づいている。この容量は、性能を犠牲にすることなく高密度で電極に充填し得る、非常に高い比エネルギー容量を有する正極活物質の開発によって達成される。電池における正極材料の高充填量は、800,000原子質量単位より大きい平均分子量を有するポリマーバインダーを用いることによって促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
この特許出願は、同時係属の2009年3月13日に出願のBuckleyらの米国特許出願第12/403,521号(発明の名称「高エネルギーリチウムイオン二次電池」)および2008年4月16日に出願のBuckleyらの米国特許仮出願第61/124,407号(発明の名称「高エネルギーリチウムイオン二次電池」)に対する優先権を主張し、引用することによって本明細書に包含する。
【0002】
本発明は、得られる電池に対して特に高い放電エネルギー密度を提供する高エネルギー正極材料を電池構成において有するリチウムイオン二次電池に関する。本発明は、高エネルギーリチウムイオン二次電池の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池は、エネルギー密度が比較的高いので、家庭用電化製品において幅広く用いられている。充電池は二次電池とも呼ばれ、リチウムイオン二次電池は一般に、リチウムが挿入される負極材料を有する。現在の市販の電池のいくつかに関して、負極材料は黒鉛であり得、正極材料はコバルト酸リチウム(LiCoO)を含有し得る。実際には、カソードの理論容量のおよそ50%のみ、例えばおよそ140ミリアンペア時/グラム(mAh/g)が使用可能である。少なくとも2種類の他のリチウムベースカソード材料も、現在商業的に用いられている。これらの2種類の材料は、スピネル構造を有するLiMnおよびオリビン構造を有するLiFePOである。これらの他の材料は、エネルギー密度において著しい向上を何ら提供しなかった。
【0004】
リチウムイオン電池は一般に、それらの用途に基づいて2つのカテゴリーに分類される。第1のカテゴリーは高出力電池に関し、リチウムイオン電池は、電動工具およびハイブリッド電気自動車等の用途のための高電流(アンペア)を供給するように設計される。しかし、高電流を提供する設計は一般に電池から供給し得る総エネルギーを減少させるので、これらの電池は意図的にエネルギーが低減される。第2の設計カテゴリーは高エネルギー電池に関し、リチウムイオン電池は、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車(EV)、およびより高い総エネルギーの供給を伴うプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の用途のための低電流〜中程度の電流(アンペア)を供給するように設計される。
【発明の概要】
【0005】
第1の要旨において、本発明は、正極活物質およびバインダーを含有する正極、第1のリチウム挿入組成物を含有する負極、リチウムイオンを含有する電解液、ならびに正極と負極との間のセパレータを含んでなるリチウムイオン二次電池に関する。いくつかの態様において、電池は、4.6Vから2.0Vに放電する場合に少なくとも約240Wh/kgの放電エネルギー密度を有する。電池の正極の正極活物質は、第2のリチウム挿入組成物を含有する。電池の正極は、少なくとも約92重量%の正極活物質を含有し得る。正極活物質は、式xLiMO・(1−x)LiM’Oで表される第2のリチウム挿入組成物を含有し、式中Mは1つ又はそれより多くの3価金属イオンであり、少なくとも1つの金属イオンはMn+3、Co+3またはNi+3であり、M’は+4の平均価数を有する1つ又はそれより多くの金属イオンを表しており、0<x<1である。いくつかの態様において、第2のリチウム挿入組成物は約0.1モルパーセント〜約10モルパーセントの金属フッ化物をコーティングとして更に有し得る。更なる態様において、電池の正極は、第2のリチウム挿入組成物とは異なる約0.1〜5重量%の導電剤および約0.5〜7.9重量%のポリマーバインダーを含有し得る。バインダーは、少なくとも約800,000原子質量単位の平均分子量を有するポリマーを含有し得る。いくつかの態様において、電池の負極は、集電体の片側において約65ミクロン〜約200ミクロンの厚さを有する。別の態様において、電池は少なくとも約250Wh/kg〜550Wh/kgの放電エネルギー密度を有し得る。電池は、少なくとも約550Wh/lの体積放電エネルギー密度を有し得る。
【0006】
第2の要旨において、本発明は、正極、第1のリチウム挿入組成物を有する負極および正極と負極との間のセパレータを含んでなるリチウムイオン二次電池に関し、ここで、正極は少なくとも約92重量パーセントの正極活物質、約0.1〜5重量パーセントの導電剤および約0.5〜7.9重量パーセントのポリマーバインダーを含有する。いくつかの態様において、電池の正極活物質は、式xLiMO・(1−x)LiM’Oで表される第2のリチウム挿入組成物を含有し、式中Mは1つ又はそれより多くの三価金属イオンであり、少なくとも1つの金属イオンはMn+3、Co+3またはNi+3であり、M’は+4の平均価数を有する1つ又はそれより多くの金属イオンを表しており、0<x<1である。オプションのフッ素ドーパントは、第2のリチウム挿入組成物の式における酸素を最大で約1原子パーセント置換し得る。電池の正極は少なくとも約2.5g/mLの密度を有する。いくつかの他の態様において、第2のリチウム挿入組成物は式Li1+xNiαMnβCoγで表され、式中xは約0.05〜約0.25の範囲であり、αは約0.1〜約0.4の範囲であり、βは約0.4〜約0.65の範囲であり、γは約0.05〜約0.3の範囲である。いくつかの態様において、正極材料は約1.0モルパーセント〜約10モルパーセントの金属フッ化物をコーティングとして更に有し得る。一の態様において、金属フッ化物コーティングはAlFを含有する。いくつかの態様において、正極活物質の第2のリチウム挿入組成物は式Li1+xNiαMnβCOγM”δ2−z/2で表され、式中xは約0.05〜約0.25の範囲であり、αは約0.1〜約0.4の範囲であり、βは約0.4〜約0.65の範囲であり、γは約0.05〜約0.3の範囲であり、δは約0〜約0.1の範囲であり、zは約0〜約0.1の範囲であり、M”はMg、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nbまたはそれらの組み合わせである。電池の負極は黒鉛、人造黒鉛、硬質炭素、黒鉛コート金属箔、コークスまたはそれらの組み合わせを含有し得る。いくつかの態様において、電池のセパレータはポリエチレン、ポリプロピレン、セラミック−ポリマー複合材料またはそれらの組み合わせを含む。特に、セパレータはポリエチレン−ポリプロピレン−ポリエチレン3層膜を含み得る。また、正極の導電性材料は黒鉛、カーボンブラック、金属粉、金属繊維またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの態様において、正極のポリマーバインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、エチレン−(プロピレン−ジエンモノマー)共重合体(EPDM)ならびにそれらの混合物および共重合体を含み得る。構造に関して、電池は複数の電極を有し得、各極性はケーシング内においてセパレータで離隔されている。いくつかの態様において、電池の電極およびセパレータを、ケーシング内において積層し得、ジェリーロール状(jelly−rolled)にし得、または折り畳み得る。一般に、電池のケーシングはポリマーフィルム、金属箔、金属缶またはそれらの組み合わせを含む。電池のケーシングは例えば角形状または円筒形状であり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の電池は、4.6Vから2.0Vに放電する場合に少なくとも約250Wh/kgの放電エネルギー密度を有する。
【0007】
第3の要旨において、本発明はリチウムイオン二次電池の製造方法に関する。この方法は、正極、負極およびセパレータを組み立てて少なくとも約240Wh/kgの放電エネルギー密度を有する電池を作製することを含む。セパレータは電池の正極と負極との間に挟まれ、正極は、バインダーと、リチウム挿入組成物を含有する正極活物質とを含有する。正極の密度は少なくとも約2.5グラム/ミリリットル(g/mL)である。いくつかの態様において、電池の正極は、正極活物質をバインダーと共に集電体上にコーティングすることによって作製される。正極は少なくとも約92重量%の正極活物質を含有し得、この正極活物質において、リチウム挿入組成物は式xLiMO・(1−x)LiM’Oで表され、式中Mは1つ又はそれより多くの三価金属イオンであり、少なくとも1つの金属イオンはMn+3、Co+3またはNi+3であり、M’は+4の平均価数を有する1つ又はそれより多くの金属イオンを表しており、0<x<1である。電池の正極集電体は、金属箔、金属グリッド、エキスパンドメタルまたは金属フォーム(または発泡体)を含み得る。別の態様において、電池の正極集電体は、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、銅またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、電池の正極は約0.1〜5重量%の導電剤および/または約0.5〜7.9重量%のポリマーバインダーを更に含む。電池の正極のバインダーは、少なくとも約800,000原子質量単位の平均分子量を有するポリマーを含有し得る。更なる態様において、負極は集電体の片側において約65ミクロン〜約200ミクロンの厚さを有する。いくつかの態様において、電池は、4.6Vから2.0Vに放電する場合に少なくとも約250Wh/kgの放電エネルギー密度を有する。
【0008】
第4の要旨において、本発明は、正極、第1のリチウム挿入組成物を含有する負極、および正極と負極との間のセパレータを含んでなるリチウムイオン二次電池に関する。正極は、少なくとも約92重量%の正極活物質、約0.1〜5重量%の導電剤、および少なくとも約800,000原子質量単位の平均分子量を有する約0.5〜7.9重量%のPVDF含有ポリマーバインダーを含有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、容器から分離された電池構造の概略図である。
【図2】図2は、2.0〜4.6Vの電圧範囲においてC/10の放電レートでサイクルさせた実施例1に記載の電池の比容量に対する、1回目のサイクルの充放電電圧のプロットである。
【図3】図3は、図2の電池のサイクル寿命に対する比容量のプロットであり、放電容量の変化をサイクル数の関数として示している。
【図4】図4は、2.0〜4.6Vの電圧範囲においてC/10の放電レートでサイクルさせた実施例2に記載のコイン型電池の比容量に対する、1回目のサイクルの充放電電圧のプロットである。
【図5a】図5aは、実施例3において組み立てられたパウチ型電池(またはパウチセル)の正面の写真である。
【図5b】図5bは、実施例3において組み立てられたパウチ型電池の側面の写真である。
【図5c】図5cは、実施例3において組み立てられたパウチ型電池の放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載の設計によるリチウムイオン電池は、極めて高い総エネルギーおよびエネルギー密度を示し、低レート〜中程度のレートの用途に特に適している。これらの電池は、高エネルギー値がかなりの期間にわたって好都合に使用可能であるような良好なサイクル特性も有する。改良された電池は、高エネルギー容量を有する正極材料を部分的にベースとしている。本明細書に記載の電池設計は、本明細書に記載の極めて高いエネルギーを達成するためにこれらの高エネルギー容量の正極材料を好都合に用いることを提示する。具体的には、電池設計は正極活物質の非常に高い充填量を有し得る。高タップ密度を有する正極活物質を得る合成アプローチの開発は、正極に関する本明細書に記載の高充填量を達成するのに適した材料を提供する。更に、正極活物質の非常に高い充填量は、いくつかの態様において、少なくとも約800,000AMUの分子量を有するポリマーバインダーの使用によって少なくとも部分的に更に促進可能である。電池を作製するための対応する方法が記載される。更に、正極活物質は、高エネルギー密度における電池のサイクル特性を向上させるために、無機フッ化物組成物によるコーティング、ドーピングまたはそれらの組み合わせを行うことができる。特に、向上したサイクル特性を提供する無機コーティングにより、コーティングの重量が容量に直接寄与しないにもかかわらず、正極電気活性材料の総エネルギー密度も向上し得、または少なくともかなり低下することはない。
【0011】
リチウムは一次および二次電池の両方に用いられてきた。リチウム金属の魅力的な特徴は、その軽量性および最も電気的に陽性な金属であるという事実であり、これらの特徴の要旨は、リチウムイオン電池も好都合に獲得し得る。特定の形態の金属、金属酸化物および炭素材料が、挿入または同様のメカニズムによってリチウムイオンをその構造の中に組み込むことが知られている。リチウムイオン二次電池における正極の電気活性材料として機能する所望の混合金属酸化物を本明細書に更に記載する。リチウムイオン電池は、負極活物質もリチウム挿入材料である電池を指す。リチウム金属自体をアノードまたは負極の電気活性材料として用いる場合、得られる電池は一般に、単にリチウム電池と呼ばれる。
【0012】
本明細書において用いられる正極活物質はリチウム挿入金属酸化物組成物を含有する。いくつかの態様において、リチウム金属酸化物組成物は、層状複合構造を形成すると一般に考えられているリチウムリッチ組成物を含み得る。いくつかの態様において、電池の正極は少なくとも約92重量%の正極活物質を含有し得、正極活物質は式xLiMO・(1−x)LiM’Oで表される組成物を含有し得、式中Mは1つ又はそれより多くの3価金属イオンであり、少なくとも1つの金属イオンはMn+3、Co+3またはNi+3であり、M’は+4の平均価数を有する1つ又はそれより多くの金属イオンを表しており、0<x<1である。この物質は場合により、酸素と置換するフッ素ドーパントおよび/またはコーティングとしての約0.1モルパーセント〜約10モルパーセントの金属フッ化物を有し得る。電池の正極は約0.1〜約5重量%の導電剤および約0.5〜約7.9重量%のポリマーバインダーを更に含有し得る。
【0013】
いくつかの態様において、電池の負極は集電体の片側において約65ミクロン〜約200ミクロンの厚さを有し得る。電池の負極は黒鉛、人造黒鉛、硬質炭素、黒鉛コート金属箔、コークスまたはそれらの組み合わせを含有し得る。電池のセパレータはポリエチレン、ポリプロピレン、セラミック−ポリマー複合材料またはそれらの組み合わせを含有し得る。具体的には、セパレータはポリエチレン−ポリプロピレン−ポリエチレン3層膜であり得る。正極の導電性材料は黒鉛、カーボンブラック、金属粉、金属繊維またはそれらの組み合わせを含有し得る。
【0014】
一般に、ポリマーバインダーは、正極において粉体を一緒に一体構造として接着するのに使用可能である。正極のポリマーバインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、エチレン−(プロピレン−ジエンモノマー)共重合体(EPDM)ならびにそれらの混合物および共重合体を含有し得る。PVDFバインダーに関して、ポリマーは少なくとも約800,000AMUの分子量を有し得る。高分子量PVDFポリマーを使用すると、電池性能を悪化させることなく、正極へのより高い粉体充填量がもたらされ、その一方で機械的に安定な電極が得られることがわかった。いくつかの商業的な態様において、電池は一般に、ケーシング内に構造物が積層される又は巻かれるような、(1つ又は複数の)セパレータで離隔された複数の電極を有する。電池のケーシングはポリマーフィルム、金属箔、金属缶またはそれらの組み合わせであり得る。そのように作製された電池は、コイン型またはボタン型電池、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池(またはパウチセル)であり得る。
【0015】
得られる電池は一般に、4.6Vから2.0Vに放電する場合に少なくとも約240Wh/kgの放電エネルギー密度を有し得る。いくつかの態様において、得られる電池は少なくとも約250Wh/kg〜550Wh/kgの放電エネルギー密度を有し得る。別の態様において、電池は少なくとも約550Wh/lの体積放電エネルギー密度を有し得る。いくつかの態様において、得られる電池は少なくとも約650Wh/l〜1150Wh/lの体積放電エネルギー密度を有し得る。
【0016】
本明細書に記載の電池は、リチウムイオン含有非水系電解液を一般に用いたリチウムイオン電池である。リチウムイオン二次電池に関して、リチウムイオンが放電の間に負極から放出され、それにより、電極からのリチウムイオンの放出によるリチウムの酸化から電子が発生することによって、負極が放電の間アノードとして作用する。それに対応して、正極は放電の間に挿入等によってリチウムイオンを取り込み、それにより、正極が、電子の消費によってリチウムイオンを中和するカソードとして作用する。二次電池の再充電において、リチウムイオンの流れは電池の中で逆向きになり、負極がリチウムを取り込み、正極がリチウムをリチウムイオンとして放出する。
【0017】
本明細書に記載の正極材料組成物の中には、層状構造を有するそれらの特定の組成物、およびいくつかの他の高容量カソード材料と比較して減少したニッケル量に起因して安全性が向上するので、火災の危険性が低いものもある。また、これらの組成物は、環境的観点からあまり望ましくない元素を少量使用し、商業的規模の製造に対して合理的なコストを有する出発物質から製造可能である。
【0018】
本明細書において、語「元素」は、元素が組成物の中にある場合にその元素が適切な酸化状態を有し、かつ元素形態であることが規定される場合のみ元素がその元素形態(M)で存在する周期表の構成要素を指す語として、その語の常套的な方法で用いられる。従って、金属元素は一般に、その元素形態における金属状態または対応する金属元素形態の合金でのみ存在する。換言すると、金属合金以外の金属酸化物または他の金属組成物は一般に金属でない。
【0019】
充電池は、電話等の携帯通信機器、MP3プレーヤーおよびテレビ等の携帯娯楽機器、ポータブルコンピュータ、広範囲の用途を見出しているこれらの機器の組み合わせ、ならびに自動車およびフォークリフト等の輸送機器等の幅広い用途を有する。比容量およびサイクルに関して向上した正極活物質が組み込まれた本明細書に記載の電池は、特に中程度の電流用途の消費者に、向上した性能を提供し得る。
【0020】
[正極電気活性材料]
本明細書に記載の改良された高エネルギー電池は一般に、常套の材料と比較して大きいエネルギー密度を有する正極電気活性材料を包含する。これらの材料は、粉体が有効に集合してそれに対応して高エネルギーを有する電池になるような適切な材料特性、例えばタップ密度と共に調製可能である。従って、改良された適切な正極電気活性材料は、本明細書に記載の組み立てプロセスで所望の電池を製造するのに有用であることがわかった。
【0021】
挿入に基づく正極活物質を有する対応する電池が用いられる場合、格子からのリチウムイオンの挿入および放出は、電気活性材料の結晶格子における変化を誘発する。これらの変化が本質的に可逆的である限りにおいて、材料の容量は変化しない。しかし、活物質の容量は、サイクルと共に様々な程度に減少することが観察される。従って、多数のサイクルの後、電池性能は許容可能な値より低下し、電池が交換される。また、電池の1回目のサイクルにおいて、その後のサイクルにおける1サイクル当たりの容量損失よりかなり大きい不可逆的容量損失が一般に存在する。不可逆的容量損失は、新しい電池の充電容量と1回目の放電容量との差である。この1回目のサイクルの不可逆的容量損失を補償するために、この失われた容量が電池寿命の大部分の間に利用できず、その結果、負極材料が本質的に消費されるにもかかわらず、電池を十分に充電し得るように追加の電気活性材料が負極に含まれる。
【0022】
リチウムイオン電池は、基準となる均一な電気活性リチウム金属酸化物組成物と比較してリチウムリッチな正極活物質を使用し得る。理論による限定は望まないが、適切に形成されたリチウムリッチなリチウム金属酸化物は複合結晶構造を有することが信じられており、その複合結晶構造において、例えば、LiMnOが、層状LiMnO成分もしくはスピネルLiMn成分、またはマンガンイオンが等価の酸化状態を有する他の遷移金属イオンで置換された類似の複合組成物と構造的に一体化されている。いくつかの態様において、正極材料は、2成分表記でxLiMO・(1−x)LiM’Oとして表すことができ、式中Mは1つ又はそれより多くの3価金属イオンであり、少なくとも1つのイオンはMn+3、Co+3またはNi+3であり、M’は1つ又はそれより多くの3価金属イオンであり、0<x<1である。これらの組成物は、Thackerayらの米国特許第6,677,082号(‘082特許、発明の名称「Lithium Metal Oxide Electrodes for Lithium Cells and Batteries」)およびThackerayらの米国特許第6,680,143号(‘143特許、発明の名称「Lithium Metal Oxide Electrodes for Lithium Cells and Batteries」)に更に記載されており、それらの両方は、引用することによって本明細書に組み込まれる。Thackeryは、Mn、TiおよびZrがM’として特に興味深く、Mに関してMnおよびNiが特に興味深いと認定した。
【0023】
これらの材料から作製される電池は、対応するLiMO組成物で作製された電池と比較して、より高い電圧でより高い容量と共にサイクルすることが観察された。他の態様において、層状リチウムリッチ組成物は、2成分表記でxLiMnO・(1−x)LiMn2−yとして表すことができ、式中Mは1つ又はそれより多くの金属カチオンである。これらの組成は、Johnsonらの米国特許出願公開第2006/0051673号(発明の名称「Manganese Oxide Composite Electrodes for Lithium Batteries」)に更に記載されており、引用することによって本明細書に組み込まれる。複合結晶構造を有する正極材料は、室温において良好なサイクル特性と共に200ミリアンペア時/グラム(mAh/g)を上回る高比容量を示し得る。
【0024】
いくつかの特定の層状構造の構造は、Thackeryら「Comments on the structural complexity of lithium−rich Li1+x1−x electrodes(M=Mn,Ni,Co)for lithium batteries」、Electrochemistry Communications 8(2006)、第1531〜1538頁に更に記載されており、引用することによって本明細書に組み込まれる。この論文において報告された研究は、式Li1+x[Mn0.5Ni0.51−xおよびLi1+x[Mn0.333Ni0.333Co0.3331−xの組成物を再検討した。この論文には層状材料の構造的複雑性も記載されている。
【0025】
金属およびフッ素ドーパントが、層状リチウム金属酸化物構造の容量、インピーダンスおよび安定性に影響を及ぼし得ることもわかった。適切な金属およびフッ素ドーパントを有するこれらの組成物は、本明細書に記載の電池で同様に使用可能である。これらの金属およびハロゲン原子がドープされた、例えばフッ素がドープされた組成物のいくつかの態様は、Kangらの米国特許第7,205,072号(発明の名称「Layered Cathode Materials for Lithium Ion Rechargeable Batteries」)に更に記載されており、引用することによって本明細書に組み込まれる。層状リチウム金属酸化物構造にこれらの金属および/またはハロゲン原子がドープされた変形が、本明細書に記載の高エネルギー電池で同様に使用可能である。金属フッ化物組成物は、高エネルギー容量組成物のサイクルを安定化させて、10またはそれより多くの放電/再充電サイクルの間に少なくとも約220mAh/gの放電容量を維持するのに首尾よく使用可能であることがわかった。
【0026】
オプションのフッ素ドーパントを有する正極活物質は、式Li1+xNiαMnβCoγδ2−z/2で記載することができ、式中xは約0.05〜約0.25の範囲であり、αは約0.1〜約0.4の範囲であり、βは約0.4〜約0.65の範囲であり、γは約0.05〜約0.3の範囲であり、δは約0〜約0.1の範囲であり、zは約0〜約0.1の範囲であり、MはMg、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nbまたはそれらの組み合わせである。フッ素は、サイクル安定性および材料の安全性の改良に寄与し得るドーパントである。z=0である態様において、この式はLi1+xNiαMnβCoγδに単純化される。いくつかの態様においてフッ素ドーパントを有することが望ましいことがあるが、適切なコーティングが、フッ素ドーパントを用いることなくサイクル特性における所望の改良を提供することがわかった。更に、いくつかの態様において、改良された性能を未だ提供しながら組成がより単純になるように、δ=0を有することが望ましい。これらの態様に関して、z=0でもある場合、上で説明したパラメータにより式はLi1+xNiαMnβCoγに単純化される。式Li1+xNiαMnβCoγで表される組成物は、別法として、上述の2成分表記で記載することが可能である。上述の明確な範囲内のパラメータ値の追加の範囲が意図され、かつ本明細書の開示事項の範囲内であることを、当業者は理解するであろう。
【0027】
高比容量が、このLi1+xNiαMnβCoγδ2ーz/2組成物に対して、Venkatachalamらの米国特許出願第12/246,814号(‘814出願、発明の名称「Positive Electrode Material for Lithium Ion Batteries Having a High Specific Discharge Capacity and Processes for the Synthesis of these Materials」)およびLopezらの米国特許出願第12/332,735号(‘735出願、発明の名称「Positive Electrode Material for High Specific Discharge Capacity Lithium Ion Batteries」)に記載の合成アプローチを用いて得られ、これらの両方は引用することによって本明細書に組み込まれる。特に、驚くほど良好な結果がLi[Li0.2Ni0.175Co0.10Mn0.525]Oに対して得られた。‘735出願に記載のカーボネート共沈法は、組成物中にコバルトを有し且つ優れたタップ密度と共に高比容量性能を示す所望のリチウムリッチ金属酸化物材料をもたらした。これらの同時係属特許出願には、性能およびサイクルを改良するためのコーティングの有効な使用も記載されている。
【0028】
適切なコーティング材料は、材料の長期間サイクル性能を改良し得、かつ1回目のサイクルの不可逆的容量損失を減少させ得る。理論による限定は望まないが、コーティングは、リチウムイオンの取り込み及び放出の間に結晶格子を安定化し得、その結果、結晶格子における不可逆的変化がかなり減少する。特に、金属フッ化物組成物が有効なコーティングとして使用可能である。カソード活物質、特にLiCoOおよびLiMnに対するコーティングとしての金属フッ化物組成物の一般的な使用は、SunらのPCT出願公開WO 2006/109930A(‘930出願、発明の名称「Cathode Active Material Coated with Fluorine Compound for Lithium Secondary Batteries and Method for Preparing the Same」)に記載されており、引用することによって本明細書に組み込まれる。この特許出願は、LiF、ZnFまたはAlFでコーティングしたLiCoOに関する結果を提示している。金属フッ化物コーティングが、本明細書に記載のリチウムリッチ層状正極活物質に対してかなりの改良を提供し得ることが発見された。これらの改良は、容量低下がかなり減少し、1回目のサイクルの不可逆的容量損失がかなり減少し、かつ一般に容量が向上した長期間サイクルに関する。コーティング材料の量は、観察された性能の向上を強めるように選択可能である。
【0029】
特に、金属フッ化物でコーティングしたリチウム金属酸化物から作製される電池のサイクル特性は、コーティングされていない材料よりかなり向上することがわかった。更に、電池の総容量もまた、フッ化物コーティングにより所望の特性を示し、電池の1回目のサイクルの不可逆的容量損失が減少する。先に議論したように、電池の1回目のサイクルの不可逆的容量損失は、新しい電池の充電容量と、その電池の1回目の放電容量との差である。1回目のサイクルの不可逆的容量損失の容量は一般に正極材料に起因する。
【0030】
コーティングは、本明細書において用いられる高容量リチウムリッチ組成物の性能における予想外の改良を提供する。一般に、選択された金属フッ化物または半金属フッ化物がコーティングに使用可能である。同様に、金属および/または半金属元素の組み合わせによるコーティングが使用可能である。金属/半金属フッ化物コーティングがリチウム二次電池の正極活物質の性能を安定化することが提案されてきた。フッ化物コーティングに適した金属および半金属元素として、例えばAl、Bi、Ga、Ge、In、Mg、Pb、Si、Sn、Ti、Tl、Zn、Zrおよびそれらの組み合わせが挙げられる。フッ化アルミニウムは合理的なコストを有し且つ環境を破壊しないものであると考えられるので、フッ化アルミニウムは望ましいコーティング材料であり得る。金属フッ化物コーティングは概してSunらの‘930出願に記載されている。上述のSunのPCT出願は、特に以下のフッ化物組成物に言及している。CsF、KF、LiF、NaF、RbF、TiF、AgF、AgF、BaF、CaF、CuF、CdF、FeF、HgF、Hg、MnF、MgF、NiF、PbF、SnF、SrF、XeF、ZnF、AlF、BF、BiF、CeF、CrF、DyF、EuF、GaF、GdF、FeF、HoF、InF、LaF、LuF、MnF、NdF、VOF、PrF、SbF、ScF、SmF、TbF、TiF、TmF、YF、YbF、TlF、CeF、GeF、HfF、SiF、SnF、TiF、VF、ZrF、NbF、SbF、TaF、BiF、MoF、ReF、SFおよびWF
【0031】
LiNi1/3Co1/3Mn1/3のサイクル特性におけるAlFコーティングの効果は、Sunらの論文「AlF−Coating to Improve High Voltage Cycling Performance of Li[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O Cathode Materials for Lithium Secondary Batteries」、J.of the Electrochemical Society、154(3)、A168−A172(2007)に更に記載されている。また、LiNi0.8Co0.1Mn0.1のサイクル特性におけるAlFコーティングの効果は、Wooらの論文「Significant Improvement of Electrochemical Performance of AlF−Coated Li[Ni0.8Co0.1Mn0.1]O Cathode Materials」、J.of the Electrochemical Society、154(11)、A1005−A1009(2007)に更に記載されており、引用することによって本明細書に組み込まれる。Alコーティングによる不可逆的容量損失の減少は、Wuらの「High Capacity,Surface−Modified Layered Li[Li(1−x)/3Mn(2−x)/3Nix/3Cox/3]O Cathodes with Low Irreversible Capacity Loss」、Electrochemical and Solid State Letters、9(5)、A221−A224(2006)で言及され、引用することによって本明細書に組み込まれる。
【0032】
金属/半金属フッ化物コーティングは、Venkatachalamらの米国特許出願第12/246,814号(‘814出願、発明の名称「Positive Electrode Material for Lithium Ion Batteries Having a High Specific Discharge Capacity and Processes for the Synthesis of these Materials」)およびLopezらの米国特許出願第12/332,735号(‘735出願、発明の名称「Positive Electrode Material for High Specific Discharge Capacity Lithium Ion Batteries」)における実施例において実証されるように、リチウムイオン二次電池のリチウムリッチ層状組成物の性能をかなり向上させ得ることがわかり、これらの出願の両方は引用することによって本明細書に組み込まれる。コーティングは電池容量を向上させる。しかしコーティング自体は電気化学的に活性でない。試料に加えられるコーティング量に起因する比容量の損失が、コーティングを加えることの利点がそのコーティングの電気化学的不活性によって相殺されるところを上回る場合、電池容量の減少が予測可能である。一般に、コーティング量は、コーティングから得られる有益な安定化と、一般に材料の高比容量に直接寄与しないコーティング材料の重量に起因する比容量の損失とのバランスをとって選択可能である。一般に、コーティング材料の量は約0.01モルパーセント〜約10モルパーセントの範囲であり、更なる態様において約0.1モルパーセント〜約7モルパーセントの範囲であり、別の態様において約0.2モルパーセント〜約5モルパーセントの範囲であり、他の態様において約0.5モルパーセント〜約4モルパーセントの範囲である。上述の明確な範囲内のコーティング材料の追加の範囲が意図され、かつ本発明の開示事項の範囲内であることを、当業者は理解するであろう。コーティングされていない材料の容量を向上させるために、AlFコート金属酸化物材料において有効なAlFの量は、コーティングされていない材料の粒子寸法および表面積と関連する。特に、より高いモルパーセントの金属フッ化物コーティングは一般に、表面積のより大きい粉体に使用可能であり、それにより、表面積のより小さい粉体におけるコーティングと比較して同等の効果が得られる。
【0033】
正極活性組成物は、リチウムイオン電池において現実的な放電条件の下で驚くほど高い比容量を示し得る。改良された合成アプローチに基づくいくつかの態様において、複合結晶構造を有するリチウムリッチ正極活物質は、4.6ボルトからの放電に対して、室温にて良好なサイクル特性と共に250mAh/gを上回る高比容量を示し得る。いくつかの他の態様において、本明細書において用いられる複合結晶構造を有するリチウムリッチ正極活物質は、4.6ボルトからの放電に対して、室温にて良好なサイクル特性と共に235mAh/gを上回る高比容量および1.8g/mLを上回る高タップ密度を示し得る。一般に、比容量が同程度である場合、正極材料のタップ密度が高いほど、電池のより高い総容量がもたらされる。充放電測定の間、材料の比容量は放電レートに依存することが知られている。特定の電池の最大容量は非常に低速の放電レートで測定する。実際の使用において、実容量は、有限のレートで放電するので最大容量より小さい。より現実的な容量は、使用中のレートにより類似した合理的な放電レートを用いて測定可能である。低レート〜中程度のレートに関して、合理的な試験レートは3時間にわたる電池の放電を伴う。これを、常套的な表記でC/3または0.33Cと記す。4.6ボルトから放電する場合、本明細書において用いられる正極活物質は、室温にて10番目の放電/充電サイクルにおいてC/3の放電レートで少なくとも約250mAh/gの比放電容量を有し得る。いくつかの態様において、4.6ボルトから放電し且つタップ密度が1.8g/mLを上回る場合、本明細書において用いられる正極活物質は、室温にてC/10の放電レートで少なくとも約250mAh/gの比放電容量を有し得る。リチウムイオン電池における最も優れた容量性能はコーティングされた材料によって得られた。
【0034】
正極材料は一般に、Venkatachalamらの米国特許出願第12/246,814号(‘814出願、発明の名称「Positive Electrode Material for Lithium Ion Batteries Having a High Specific Discharge Capacity and Processes for the Synthesis of these Materials」)およびLopezらの米国特許出願第12/332,735号(‘735出願、発明の名称「Positive Electrode Material for High Specific Discharge Capacity Lithium Ion Batteries」)において詳述される共沈法およびゾル−ゲル法によって合成可能であり、これらの両方は、引用することによって本明細書に組み込まれる。いくつかの態様において、正極材料は、+2のカチオンを含有する溶液から混合金属水酸化物または炭酸塩組成物を析出させることによって合成し、水酸化物または炭酸塩組成物は選択された組成を有する。その後、金属水酸化物または炭酸塩沈殿物を熱処理等に付し、結晶性層状リチウム金属酸化物組成物が形成される。
【0035】
リチウム元素は、プロセスにおける1つ又はそれより多くの選択された工程において材料中に組み込まれ得る。例えば、リチウム塩は、水和リチウム塩の添加による沈殿工程を行う前に又は行いながら溶液中に組み込まれ得る。このアプローチにおいて、リチウム種は、他の金属と同様の方法でカーボネート材料に組み込まれる。また、リチウムの特性に起因して、リチウム元素は、得られる生成組成物の特性に悪影響を及ぼすことなく、固相反応において材料に組み込まれ得る。従って、例えば、LiOH・HO、LiOH、LiCOまたはそれらの組み合わせ等の、一般に粉体としての適切な量のリチウム源は、析出した金属水酸化物または炭酸塩と混合可能である。その後、粉体混合物を(1つ又は複数の)加熱工程に進めて酸化物を形成し、それにより、結晶性正極材料を形成する。
【0036】
正極材料のフッ化物コーティングは、溶液ベースの沈殿アプローチを用いて沈着可能である。正極材料の粉体は水性溶媒等の適切な溶媒中で混合し得る。所望の金属/半金属の可溶性組成物は溶媒中に溶解し得る。その後、NHFを分散物/溶液に徐々に加えて金属フッ化物を沈殿させることができる。コーティング反応物の総量は、所望のコーティング量が形成されるように選択可能であり、コーティング反応物の比は、コーティング材料の化学量論に基づき得る。コーティング混合物は、コーティングプロセスの間、合理的な温度(水溶液に対して、約20分〜約48時間の間、約60℃〜約100℃の範囲等)に加熱してコーティングプロセスを促進することが可能である。コーティングされた電気活性材料を溶液から取り出した後、材料を乾燥させて、約20分〜約48時間の間一般に約250℃〜約600℃の温度に加熱して、コーティング材料の形成を完了させることができる。窒素雰囲気または他の実質的に酸素のない雰囲気下で加熱を行うことができる。
【0037】
[電池設計]
本発明の改良された電池において、上述の高エネルギー正極材料は効果的に電池に組み込まれて極めて高性能の値が得られる。特に、高タップ密度を有する高エネルギー密度の電気活性材料を合成する能力は、活物質が高充填量である正極を可能にすることがわかった。高分子量ポリマーにより、電極の機械的安定性または電極の性能を落とすことなく、ポリマー量の少ない電極を作成することが可能となることもわかった。これらの重要な進歩に基づいて、非常に高いエネルギー密度および高い体積エネルギーを有する電池が作製可能である。
【0038】
ケーシングのない電池の概略図を図1に示す。特に、負極102、正極104および負極102と正極104との間のセパレータ106を有する電池100を概略的に示す。電池は、セパレータが適切に配置された複数の正極および複数の負極(積層された複数の正極および複数の負極等)を有し得る。電極と接触した電解液は、セパレータを介して反対の極性の電極間のイオン伝導性を与える。電池は一般に、各々負極102および正極104と関連付けられた集電体108、100を有する。別法として、電極およびセパレータは、ケーシングに封入する前にジェリーロール状にすること又は異なる形状に折り畳むことが可能である。
【0039】
市販の電池は一般に、正極と比較して過剰な容量を負極において有するように設計され、その結果、放電の間に電池がアノードによって制限されず、また、電池の再充電の間にリチウム金属が負極に析出しない。リチウム金属は、リチウム金属の反応性に起因してサイクル問題および安全性に対する懸念を引き起こし得る。電池に対して所望の高エネルギーを達成するために、負極構造をより厚くすることが可能であり、その結果、負極は非常に高い正極容量の観点において適切な容量を提供し得る。
【0040】
本明細書に記載の高エネルギー電池は、例えば常套的なリチウム挿入炭素材料で作製された負極を有し得る。適切な負極活物質として、例えば、リチウム挿入炭素、いくつかの金属合金、いくつかのケイ素材料およびいくつかの金属酸化物が挙げられる。正極と負極との間にセパレータが設けられる。電極の積層は、リチウムイオンおよび一般に非水系液体を含有する電解液と接触する。電極の積層および電解液は適切な容器の中に封入する。
【0041】
電圧はカソードおよびアノードにおける半電池電位の差であるので、負極挿入材料の性質は、得られる電池電圧に影響を及ぼす。適切な負極のリチウム挿入組成物として、例えば、黒鉛、人造黒鉛、硬質炭素、メソフェーズ炭素、適切なカーボンブラック、コークス、フラーレン、五酸化ニオブ、金属間化合物合金、ケイ素合金、スズ合金、ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、およびLiTiO(0.5<x≦1)またはLi1+xTi2−x(0≦x≦1/3)等のチタン酸リチウムを挙げることができる。負極に使用するのに適した硬質炭素は、Wangらの米国特許出願第2003/0157014号A(発明の名称「Pyrolyzed Hard Carbon Material,Preparation and its Applications」)に更に記載されており、引用することによって本明細書に組み込まれる。合金ベースの負極は、例えばThackerayらの米国特許第6,730,429号(発明の名称「Intermetallic Negative Electrodes for Non−Aqueous Lithium Cells and Batteries」)、Leの米国特許出願公開第2007/0148544号A1(発明の名称「Silicon−Containing Alloys Useful as Electrodes for Lithium−Ion Batteries」)、およびYamaguchiらの米国特許第7,229,717号(発明の名称「Anode Active Material and Battery Using it」)に更に記載されており、これら3つの全ては、引用することによって本明細書に組み込まれる。金属合金は、挿入炭素および/または導電性炭素と組み合わせることが可能である。負極活物質はポリマーバインダーと組み合わせることが可能であり、集電体に結合させて負極を形成することが可能である。同様に、所望のサイクル容量と共に適切な放電電圧を与える他の適切な電気活性負極組成物を用いることが可能である。更なる負極材料は、同時係属のKumarの特許仮出願第61/002,619号(発明の名称「Inter−metallic Compositions,Negative Electrodes With Inter−Metallic Compositions and Batteries」)、およびKumarらの第61/125,476号(Kumerら、発明の名称「Lithium Ion Batteries With Particular Negative Electrode Compositions」)に記載されており、それらの両方は引用することによって本明細書に組み込まれる。いくつかの態様において、負極は、アノード材料の圧縮後に集電体の両側において65ミクロン〜200ミクロンの厚さを有し得、別の態様において、75ミクロン〜150ミクロンの厚さを有し得る。いくつかの態様において、アノードは約1.5〜1.7g/mLの密度を有する。上述の明確な範囲内の電極厚さの更なる範囲が意図され、かつ本明細書の開示事項の範囲内であることを、当業者は理解するであろう。
【0042】
正極活性組成物および負極活性組成物は一般に、対応する電極においてポリマーバインダーと一緒に保持される粉体組成物である。バインダーは、電極に接触する際に活性粒子にイオン伝導性を与える。適切なポリマーバインダーとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ゴム、例えばエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)ゴムまたはスチレンブタジエンゴム(SBR)、それらの共重合体およびそれらの混合物が挙げられる。バインダー中の正極活物質充填量は多量であり得、例えば約80重量%より大きいことが可能である。正極内の正極活物質粉体のこれらの高充填量は、高分子量のポリマーを用いて、より望ましい且つ再現可能な程度の機械的安定性と共に形成可能である。特に、いくつかの態様において、PVDFポリマーバインダーは、少なくとも約800,000原子質量単位(AMU)の平均分子量を有し、別の態様において、少なくとも約850,000AMU、別の態様において少なくとも約900,000AMU、更なる態様において約1,000,000AMU〜5,000,000AMUの平均分子量を有する。上述の明確な範囲内の組成物の更なる範囲が意図され、かつ本明細書の開示事項の範囲内であることを、当業者は理解するであろう。電極を作製するために、ポリマーのための溶媒等の適切な液体中で、粉体をポリマーと混合することが可能である。得られるペーストをプレスして電極構造にすることが可能である。
【0043】
正極組成物および場合により負極組成物は一般に、電気活性組成物とは異なる導電性粉体も含有する。適切な追加の導電性粉体として、例えば黒鉛、カーボンブラック、銀粉等の金属粉、ステンレス鋼繊維等の金属繊維等、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
電極は一般に、電極と外部回路との間の電子の流れを促進するために、導電性集電体と関連付けられる。集電体は、金属箔、金属グリッドもしくはスクリーンまたはエキスパンドメタル等の金属を含み得る。エキスパンドメタル集電体は、より多量の電極材料が金属グリッドの中に設けられるように、より厚い厚さを有する金属グリッドを指す。いくつかの態様において、集電体は、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等から作製可能である。電極材料は、集電体と接触させてキャスト成型可能である。例えば、いくつかの態様において、集電体の箔または他の構造物と接触した電極材料は、約2〜約10kg/cm(キログラム/平方センチメートル)の圧力をかけることが可能である。プレス構造物を、例えば炉内で乾燥させて、電極から溶媒を除去し得る。集電体として金属箔が使用可能である。例えば、負極の集電体として銅箔が使用可能であり、正極集電体としてアルミニウム箔が使用可能である。カソード材料のペーストまたはスラリーを箔の両側にコーティングし得る。その後、カレンダーロール、金型を有するプレス、または所望の厚さに電極を圧縮するための他の適切な加工装置を用いて電極をプレスし得る。正極は、集電体の両側において20mg/cm〜50mg/cmの活物質粒子充填量を有し得る。正極は、少なくとも2.5グラム/ミリリットル(g/mL)の密度を有し得、別の態様において少なくとも約2.8g/ml、更なる態様において約3.0g/mL〜約3.5g/mLの密度を有し得る。上述の明確な範囲内の活物質充填量の追加の範囲が意図され、かつ本明細書の開示事項の範囲内であることを、当業者は理解するであろう。
【0045】
セパレータは正極と負極との間に位置する。セパレータは、2つの電極間で少なくとも選択されたイオンの伝導性を与えるが、電気的に絶縁性である。種々の材料をセパレータとして使用し得る。例えば、多孔性マットへと成形されたガラス繊維をセパレータとして使用し得る。市販のセパレータ材料は一般に、イオン伝導性を与える多孔性シートであるポリエチレンおよび/またはポリプロピレン等のポリマーから作製される。市販のポリマーセパレータとして、例えば、Hoechst Celanese(ノースカロライナ州シャーロット)製のセパレータ材料のCelgard(登録商標)ラインが挙げられる。適切なセパレータ材料として、例えば、12ミクロン〜40ミクロンの厚さの3層ポリプロピレン−ポリエチレン−ポリプロピレンシート、12ミクロンの厚さを有するCelgard(登録商標)M824等が挙げられる。また、セパレータ用途のためにセラミック−ポリマー複合材料が開発された。これらの複合材料セパレータは、より高い温度で安定であり得、複合材料は火災の危険性をかなり減らすことができる。セパレータ材料のためのポリマー−セラミック複合材料は、Hennigeらの米国特許出願第2005/0031942号A(発明の名称「Electric Separator,Method for Producing the Same and the Use Thereof」)に更に記載されており、引用することによって本明細書に組み込まれる。リチウムイオン電池のセパレータのためのポリマー−セラミック複合材料は、Evonik Industries(独国)によって商標Separion(登録商標)の下で市販されている。
【0046】
リチウムイオン電池の電解液は1種類またはそれより多くの種類の選択されたリチウム塩を含有し得る。適切なリチウム塩は一般に不活性アニオンを有する。適切なリチウム塩として、例えば以下のものが挙げられる。リチウムヘキサフルオロフォスフェート、リチウムヘキサフルオロアルセナート、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニルイミド)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、リチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、リチウムテトラフルオロボレート、過塩素酸リチウム、リチウムテトラクロロアルミネート、塩化リチウムおよびそれらの組み合わせ。伝統的に、電解質は1M濃度のリチウム塩を含有する。いくつかの態様において、体積比1対1のエチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートの混合物中の1モル濃度のLiPF溶液等の、常套的な電解液組成物が使用可能である。いくつかの態様において、固体電解質が使用可能であり、これは一般に、電極のセパレータとしても機能する。固体電解質は、例えばParkらの米国特許第7,273,682号(発明の名称「Solid Electrolyte,Method for Preparing the Same,and Battery Using the Same」)に更に記載されており、引用することによって本明細書に組み込まれる。
【0047】
件のリチウムイオン電池に関して、(1種類または複数の種類の)リチウム塩を溶解させるのに非水系液体を一般に使用する。溶媒は一般に不活性であり、電気活性材料を溶解しない。適切な溶媒として、例えば以下のものが挙げられる。プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、トリグライム(トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、DME(グライムまたは1,2−ジメチルオキシエタンまたはエチレングリコールジメチルエーテル)、ニトロメタンおよびそれらの混合物。
【0048】
本明細書に記載の電極は、種々の市販の電池設計に組み込むことが可能である。例えば、カソード組成物は角形電池、巻かれた円筒形電池、コイン型電池、パウチ型電池または他の合理的な電池形状に対して使用可能である。実施例における試験は、コイン型電池およびパウチ型電池を用いて行う。電池は、1正極構造、または並列および/もしくは直列の(1つ又は複数の)電気接続で組み立てられた複数の正極を有する積層構造を有し得る。特に、電池は、セパレータを間に有する正極および負極の交互の積層を有し得る。一般に、複数の電極を並列接続して、正極および負極の対によって設定される電圧における電流を増大させる。正極活物質は一次または1回充電用途の電池に使用可能であるが、得られる電池は一般に、電池の多数のサイクルにわたって二次電池に対して望ましいサイクル特性を有する。
【0049】
いくつかの態様において、正極および負極を、それらの間のセパレータと共に積層することが可能であり、得られる積層構造を円筒形または角形構造に巻いて電池構造を形成し得る。適切な導電タブを集電体に溶接する等が可能であり、得られるジェリーロール構造を金属缶またはポリマーパッケージの中に入れて、負極タブおよび正極タブを適切な外部コンタクトに溶接し得る。電解液を缶に加え、缶またはパッケージを封止して電池を完成させる。
【0050】
他の電池寸法が使用可能であるが、現在用いられている市販の充電池として、例えば、円筒形18650電池(直径18mm、長さ65mm)および26700電池(直径26mm、長さ70mm)が挙げられる。円筒形電池は、幅広く用いられている電池パッケージング方式である。電池の円筒形状は高い内圧および外圧に耐える能力を有する。更に、円筒形電池は、過剰な内圧を解放するための放出メカニズムを有し得る。しかし、円筒形電池は、その円筒形状および固定された寸法を理由として一般に空間利用に劣り、利用可能な電池寸法付近で設計しなければならない。円筒形電池において、電極およびセパレータを長尺の薄いシートにして、場合によりロッド形状の正極(またはポジティブ・ターミナル)の周りに、螺旋状またはジェリーロール状に巻くことが可能である。別法として、電極を平坦な心棒に巻いて、角形電池を作製するために角形ケース内部に適合し得る扁平形状が与えられ得る。別法として又は付加的に、電極を角形形状の電池内部に積層し得る。
【0051】
角形電池は、異なる寸法およびエネルギー需要を満たすように特注可能な種々の寸法がある。角形電池の一の型はパウチ型電池と呼ばれ、それは一般に、巻かれた又は積層された電極およびセパレータを包むために、金属缶の替わりとして熱封止可能な箔を有する。パウチ型電池方式は一般に、正確な電池寸法に調整することを可能にし、利用可能な空間を最も有効に利用し、電池パックの中で最も高い90〜95%のパッケージング効率を達成し得ることがある。金属缶がないので、パウチ型電池は一般に軽量である。角形およびパウチ型電池方式は、セパレータを間に有する層状に共に挟まれた複数の電極シートおよび負極シートを有し得る。
【0052】
本明細書に記載の電池に対して非常に高いエネルギーを達成するために、正極設計は一般に、上述の高容量カソード電気活性組成物を含む。しかし、正極は一般に、電極に対する電気活性材料の高充填量も伴い、それに対応して導電性粉体およびバインダーが減少する。電極は、粒子の高充填量において適切な密着性(または凝集性)を有するべきである。これは、高分子量のバインダーおよび/またはゴムポリマーを用いる等の、ポリマーバインダーの適切な選択によって達成可能である。
【0053】
いくつかの特定の態様において、正極は約90〜約99重量%の活物質を含有し得、別の態様において約92〜98重量%、更なる態様において約92〜約97.5重量%、他の態様において約92.5〜約97重量%の活物質を含有し得る。同様に、正極は約0.1〜約8重量%の追加の導電剤を含有し得、別の態様において約0.5〜約6重量%の導電剤、更なる態様において約1〜約5重量%の導電剤を含有し得る。更に、正極は約0.5〜約8重量%のポリマーバインダーを含有し得、別の態様において約1.0〜約6重量%のポリマーバインダー、更なる態様において約1.5〜約5重量%のポリマーバインダーを含有し得る。上述の明確な範囲内の正極組成物の量の更なる範囲が意図され、かつ本明細書の開示事項の範囲内であることを、当業者は理解するであろう。適切な導電剤として、例えば黒鉛粉体、カーボンブラック、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0054】
本明細書に記載の電池は、高度な安全性を提供する活物質を用いて作製される。市販のリチウムイオン電池は、電池が発火する場合に起因する安全性の問題を抱えていた。比較的高いエネルギー容量を有する市販の電池とは対照的に、本明細書に記載の電池は、本発明の電池が熱暴走を示さないように、対応する不安定性を有しない材料をベースとしている。本明細書に記載の電池を加熱すると、それらの電池が自発的に反応して発火することはない。比較的高エネルギーの市販のリチウムイオン電池は熱暴走を示し、熱暴走において、加熱された電池は反応して発火する。従って、本明細書に記載の電池は、向上したエネルギー容量を提供し、かつ使用中の安全性の増大を提供する。
【0055】
[改良された電池特性]
上述のように、正極電気活性材料は、良好なサイクルと共に、一般に少なくとも約200ミリアンペア時/グラム(mAh/g)の高エネルギー容量を有し得、いくつかの態様において、少なくとも約225mAh/g、別の態様において少なくとも約250mAh/gの高エネルギー容量を有し得る。本明細書に記載の電池設計によって、所望の形状および寸法の電池において、電池は少なくとも約240ワット時/キログラム(Wh/kg)の総エネルギー密度を有し得、別の態様において約250〜550Wh/kg、いくつかの態様において約280〜500Wh/kg、別の態様において約300〜450Wh/kgの総エネルギー密度を有し得る。別法として、体積項(volumetric terms)において測定する場合、電池は、所望の形状および寸法の電池において、少なくとも約550ワット時/リットル(Wh/l)の総体積エネルギー密度を有し得、別の態様において約650〜1150Wh/l、いくつかの態様において約675〜1050Wh/l、別の態様において約700〜1000Wh/lの総体積エネルギー密度を有し得る。電池の体積は例えば(電池缶の断面積)×(電池缶の長さ)、または(電池の長さ)×(幅)×(厚さ)として評価し得る。上述の明確な範囲内の電池容量の更なる範囲が意図され、かつ本明細書の開示事項の範囲内であることを、当業者は理解するであろう。
【0056】
本発明の電池設計とは対照的に、Ishidaらの米国特許第7,201,997号および7,166,385号には、高エネルギー密度の活物質を有するリチウムイオン電池における、エネルギー密度、サイクル寿命およびレート容量に対する電極厚さを含む詳細が記載されており、これらの特許の両方は引用することによって本明細書に組み込まれる。アノード厚さ及びカソード厚さの両方は60〜360ミクロンで様々であり、データは、電極厚さの増加に従ってサイクル寿命およびレート容量がかなり低下することを示している。これらの電池設計は、常套的な正極活物質を包含した。これらの特許は、本明細書において達成される性能レベルを報告していない。本明細書に記載の電池において、より高容量の活物質の使用により高エネルギーを提供し、かつより高充填量の活物質を用いながら、正極をより薄くすることが可能である。
【0057】
一般に、種々の同様の試験手法が、電池性能を評価するのに使用可能である。特定の試験手法を、本明細書に記載の性能値の評価のために記載する。試験手法は、下記の実施例においてより詳細に記載する。特に、電池は室温において4.6ボルト〜2.0ボルトの間でサイクルし得るが、他の範囲が、対応して異なる結果と共に使用可能である。4.6ボルト〜2.0ボルトの範囲にわたる評価は、電池が一般にこの電圧範囲にわたって安定なサイクルを有するので、商業的使用に対して望ましい。最初の3サイクルの間、電池をC/10のレートで放電させて不可逆的容量損失を設定する。その後、3サイクルの間電池をC/5でサイクルさせる。サイクル7の間およびそれを超えると、C/3のレートで電池をサイクルさせ、このレートは中程度の電流用途に対して合理的な試験レートである。重ねて、表記C/xは、電池をあるレートで放電させて、x時間の間に選択された下方電圧カットオフへと電池を完全に放電させることを意味する。一般に、電池容量は放電レートにかなり依存し、放電レートが増加すると容量が減少する。
【0058】
いくつかの態様において、正極活物質は、C/3の放電レートにおいて10回目のサイクルの間に少なくとも約235ミリアンペア時/グラム(mAh/g)の比容量を有し、更なる態様において約240mAh/g〜約310mAh/g、別の態様において約245mAh/g〜約300mAh/g、他の態様において約250mAh/g〜約290mAh/gの比容量を有する。更に、C/3の放電レートでサイクルする場合、20回目のサイクルの活物質の放電容量は、5回目のサイクルの放電容量の少なくとも約98%であり、別の態様において98.5%である。金属フッ化物でコーティングされた電気活性材料に対する1回目のサイクルの不可逆的容量損失は、同等の性能のコーティングされていない材料と比較して、少なくとも約25%減少し得、別の態様において約30%〜約60%減少し得ることがわかった。活物質のタップ密度は少なくとも約1.8g/mLであり得、別の態様において約2〜約3.5g/mL、更なる態様において約2.05〜約2.75g/mLであり得る。固定された体積を仮定すると、高いタップ密度は高い総電池容量につながる。比容量およびタップ密度の更なる範囲ならびに不可逆的容量損失の減少量の更なる範囲が意図され、かつ本明細書の開示事項の範囲内であることを、当業者は理解するであろう。電子機器のための電池等の体積が固定された用途に関して、高いタップ密度、従って高い総電池容量が特に重要である。
【0059】
一般に、タップ密度は、規定されたタッピング条件の下で得られる見かけ上の粉体密度である。粉体の見かけ密度は、粉体の各粒子がどれだけ接近して一緒に充填されるかに依存する。見かけ密度は固体の真の密度だけでなく、粒度分布、粒子形状および凝集性(または密着性)の影響も受ける。粉体材料の操作または振動は、いくらかの凝集力を乗り越えることが可能であり、粒子が互いに対して運動することを許容し、従って、より小さい粒子がより大きい粒子の間の空間に入り込み得る。結果として、粉体が占める総体積が減少し、粉体密度は増加する。最終的に、圧力を加えることなく更なる自然な粒子充填を測定することはできず、粒子充填の上限が達成された。電極は圧力を加えて作製されるが、合理的な量の圧力は、電池電極において電気活性材料の一定の充填密度を形成することにのみ有効である。電極における実際の密度は一般に、粉体に対して測定されるタップ密度に関連し、その結果、タップ密度測定は電池電極における充填密度を予測し、より高いタップ密度は電池電極におけるより高い充填密度に対応する。
【実施例】
【0060】
実施例1〜3において、異なるパッケージングの電池(例えばパウチ型電池に対するコイン型電池)を組み立てて試験した。得られた電池を、Maccorサイクルテスターを用いて試験し、充放電曲線および多数のサイクルにわたるサイクル安定性が得られた。
【0061】
[実施例1−コイン型電池測定から規定されるカソード容量]
この実施例は、活物質の高充填量と共に作製される正極を有する電池から得ることができる高エネルギー密度を実証する。活物質は、高エネルギー容量、および電極への高充填量をもたらす粒子特性を有する。
【0062】
正極は、化学式Li[Li0.2Ni0.175Co0.10Mn0.525]O2.0およびフッ化アルミニウムの表面コーティングを有するカソード粉体を用いて作製した。材料は、‘735出願の実施例に記載されているように合成した。カソード粉体を、ジャーミルにおいて数時間、導電性炭素と混合した。得られる粉体を、マグネチックスターラーを用いてPVDFおよびN−メチルピロリドン(NMP)溶液と混合して均一なスラリーを形成させた。PVDFは100万原子質量単位(AMU)の平均分子量を有した。スラリーを、アルミニウム箔に所望の厚さにコーティングし、その後、真空乾燥した。乾燥させたコーティング箔を所望の厚さに圧縮し、コイン型電池を作製するためにコーティング箔から電極を打ち抜いた。このように作製した電極は、94.25重量%のカソード粉体、3重量%の導電性炭素および2.75重量%のPVDFバインダーを含有する。電極は、18.1mg/cmの活性カソード材料充填レベルおよび3.0g/mLの密度を有した。一般に、等量の電気活性粉体および導電性炭素を、100万AMUよりかなり小さい分子量を有するPVDFポリマーと共に処理した場合、得られる構造は、電極材料の不十分な接着および密着に関連して、低性能および組み立て困難性を有した。
【0063】
アルゴンを満たしたドライボックスにおいて、1MのLiPFを用いてコイン型電池を組み立てた。リチウム箔を負極として使用し、市販のセパレータ材料を正極と負極との間に設けた。室温にて、C/10レートで、即ち電池が10時間かけて放電するレートで電池をサイクルさせた。Maccor(商標)電池テスターを用いて電池の性能を試験した。図1は、コイン形電池の1回目の充放電サイクルの充電および放電容量を示す。図1に示すように、カソード材料は310mAh/gの初期充電容量および277mAh/gの放電容量を示した。4.6Vから2.0Vの間で様々なレートにて電池をサイクルさせた。図2は、50サイクルまで測定した電池のサイクル安定性を示す。最初の3サイクルの間、電池をC/10のレートで放電させて不可逆的容量損失を設定する。その後、C/5で3サイクルの間電池をサイクルさせる。サイクル7の間およびそれを超えると、電池をC/3のレートでサイクルさせ、このレートは、中程度の電流用途に対して合理的な試験レートである。重ねて、表記C/xは、電池をあるレートで放電させて、x時間の間に選択された下方電圧カットオフへと電池を完全に放電させることを意味する。
【0064】
[実施例2−別のコイン型電池測定から規定される正極容量]
この実施例は、アノードがリチウム挿入材料を含有するコイン型電池において得ることができる高エネルギー容量を実証する。コイン型電池は、活性カソード材料を高充填して作製される正極を有する。
【0065】
正極は、化学式Li[Li0.2Ni0.175Co0.10Mn0.525]O2.0およびフッ化アルミニウムの表面コーティングを有するカソード粉体を用いて作製した。カソード粉体を、ジャーミルにおいて数時間、導電性炭素と混合した。得られる粉体を、マグネチックスターラーを用いてPVDFおよびN−メチルピロリドン(NMP)溶液と混合して均一なスラリーを形成させた。用いられるPVDFは100万AMUの平均分子量を有する。スラリーを、アルミニウム箔に所望の厚さにコーティングし、その後、真空乾燥させた。乾燥させたコーティング箔を所望の厚さに圧縮し、コイン型電池を作製するためにコーティング箔から電極を打ち抜いた。このように作製した電極は、94.25重量%のカソード粉体、3重量%の導電性炭素および2.75重量%のPVDFバインダーを含有する。電極は、20.2mg/cmの活性カソード材料充填レベルを有する。
【0066】
アルゴンを満たしたドライボックスにおいて、1MのLiPFを用いてコイン型電池を組み立てた。銅箔にコーティングした黒鉛炭素を負極として使用し、3層(ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)微孔セパレータ(2320、Celgard,LLC製(米国ノースカロライナ州))を正極と負極との間に設けた。室温にて、C/10レートで、即ち電池が10時間かけて放電および充電するレートで電池をサイクルさせた。Maccor(商標)電池テスターを用いて電池の性能を試験した。図3は、4.55Vの充電カットオフと2.5Vの放電カットオフとの間のコイン型電池の充放電容量を示す。図3に示すように、カソード材料は、示されるサイクル範囲にわたって260mAh/gの放電容量を示し、放電レートは、実施例1において記載したように後のサイクルによって様々であった。
【0067】
[実施例3−パウチ型電池測定から規定される正極容量]
この実施例は、活性カソード材料の高充填量と共に作製されるパウチ型電池において得ることができる高エネルギー容量を実証する。190mm×95mm×8mm(体積=0.144L)の寸法を有するパウチ型電池を組み立て、実施例2において説明したものと同じ構成および試験アプローチに従って、セパレータで離隔された電極の積層を有するパウチ型電池に合うように適合させて試験した。正極を並列接続し、負極を同様に並列接続する。図5aは、パウチ型電池の正面の写真を示す。図5bは、パウチ型電池の側面の写真を示す。図5cは、23Ahおよび250Wh/kgのエネルギー密度を有するパウチ型電池の放電曲線を示す。
【0068】
上述の実施例1および2で示したデータは、各々C/10サイクルレートにおいて、リチウムアノードを用いて277mAh/gのカソード容量を実証し、炭素アノードを用いて260mAh/gのカソード容量を実証した。本明細書において議論した正極が25アンペア時の実用的な電池設計を支持することが示され、データを表1および2に示す。電池の体積エネルギー密度は、C/10のサイクルレートにおいて550〜650Wh/lの範囲であった。比較として、市販のLiCoOを用いた性能の結果は、実施例におけるカソードと同じ電極多孔度と共に利用される場合、C/10のサイクルレートにおいて425〜525Wh/lを得ることが示される。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
上述の態様は例示的なものであり、限定的でないことが意図される。更なる態様は特許請求の範囲の範囲内である。更に、特定の態様を参照して本発明を説明してきたが、形式および詳細において、本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更を加え得ることを、当業者は理解するであろう。上述の文書を引用することによるいずれの包含も、本明細書の明確な開示事項に反する事項を包含しないように限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質およびバインダーを含有する正極、第1のリチウム挿入組成物を含有する負極、リチウムイオンを含有する電解液、ならびに正極と負極との間のセパレータを含んでなるリチウムイオン二次電池であって、電池が、4.6Vから2.0Vに放電する場合に少なくとも約240Wh/kgの放電エネルギー密度を有し、正極活物質は第2のリチウム挿入組成物を含有する、リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
正極が少なくとも約92重量%の正極活物質を含有し、第2のリチウム挿入組成物が式xLiMO・(1−x)LiM’Oで表され、式中Mは1つ又はそれより多くの3価金属イオンであり、少なくとも1つの金属イオンはMn+3、Co+3またはNi+3であり、M’は+4の平均価数を有する1つ又はそれより多くの金属イオンを表しており、0<x<1である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
第2のリチウム挿入組成物が約0.1モルパーセント〜約10モルパーセントの金属フッ化物をコーティングとして更に有する、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
正極が、第2のリチウム挿入組成物とは異なる約0.1〜5重量%の導電剤を含有する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
正極が約0.5〜7.9重量%のポリマーバインダーを含有する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
ポリマーバインダーが少なくとも約800,000原子質量単位の平均分子量を有する、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
負極が集電体の片側において約65ミクロン〜約200ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
電池が少なくとも約250Wh/kg〜550Wh/kgの放電エネルギー密度を有する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
電池が少なくとも約550Wh/lの体積放電エネルギー密度を有する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項10】
正極、第1のリチウム挿入組成物を含有する負極、および正極と負極との間のセパレータを含んでなるリチウムイオン二次電池であって、
正極が、少なくとも約92重量パーセントの正極活物質、約0.1〜5重量パーセントの導電剤および約0.5〜7.9重量パーセントのポリマーバインダーを含有し;
正極活物質が、式xLiMO・(1−x)LiM’Oで表される第2のリチウム挿入組成物を含有し、式中Mは1つ又はそれより多くの三価金属イオンであり、少なくとも1つの金属イオンはMn+3、Co+3またはNi+3であり、M’は+4の平均価数を有する1つ又はそれより多くの金属イオンを表しており、0<x<1であり、オプションのフッ素ドーパントは、式における酸素を最大で約1原子パーセント置換し得;
正極の密度は少なくとも約2.5g/mLである、リチウムイオン二次電池。
【請求項11】
第2のリチウム挿入組成物が式Li1+xNiαMnβCoγで表され、式中xは約0.05〜約0.25の範囲であり、αは約0.1〜約0.4の範囲であり、βは約0.4〜約0.65の範囲であり、γは約0.05〜約0.3の範囲である、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項12】
正極材料が約0.1モルパーセント〜約10モルパーセントの金属フッ化物をコーティングとして更に有する、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項13】
金属フッ化物がAlFを含有する、請求項12に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項14】
第2のリチウム挿入組成物が式Li1+xNiαMnβCOγM”δ2−z/2で表され、式中xは約0.05〜約0.25の範囲であり、αは約0.1〜約0.4の範囲であり、βは約0.4〜約0.65の範囲であり、γは約0.05〜約0.3の範囲であり、δは約0〜約0.1の範囲であり、zは約0〜約0.1の範囲であり、M”はMg、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nbまたはそれらの組み合わせである、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項15】
負極が黒鉛、人造黒鉛、硬質炭素、黒鉛コート金属箔、コークスまたはそれらの組み合わせを含有する、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項16】
セパレータがポリエチレン、ポリプロピレン、セラミック−ポリマー複合材料またはそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項17】
セパレータがポリエチレン−ポリプロピレン−ポリエチレン3層膜を含む、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項18】
導電性材料が黒鉛、カーボンブラック、金属粉、金属繊維またはそれらの組み合わせを含有する、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項19】
ポリマーバインダーがポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、エチレン−(プロピレン−ジエンモノマー)共重合体(EPDM)ならびにそれらの混合物および共重合体を含む、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項20】
電池が複数の電極を有し、各極性がケーシング内においてセパレータで離隔されている、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項21】
電極およびセパレータがケーシング内において積層され、ジェリーロール状にされ、または折り畳まれている、請求項20に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項22】
ケーシングがポリマーフィルム、金属箔、金属缶またはそれらの組み合わせを含む、請求項20に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項23】
ケーシングが角形状である、請求項20に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項24】
ケーシングが円筒形状である、請求項20に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項25】
電池が、4.6Vから2.0Vに放電する場合に少なくとも約250Wh/kgの放電エネルギー密度を有する、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項26】
リチウムイオン二次電池の製造方法であって、その方法は正極、負極およびセパレータを組み立てて少なくとも約240Wh/kgの放電エネルギー密度を有する電池を作製することを含み、
セパレータが正極と負極との間に挟まれ、
正極は正極活物質およびバインダーを含有し、正極活物質はリチウム挿入組成物を含有し、
正極の密度が少なくとも約2.5g/mLである、方法。
【請求項27】
正極が、正極の正極活物質をバインダーと共に集電体上にコーティングすることによって作製され、正極は少なくとも約92重量%の正極活物質を含有し、リチウム挿入組成物は式xLiMO・(1−x)LiM’Oで表され、式中Mは1つ又はそれより多くの三価金属イオンであり、少なくとも1つの金属イオンはMn+3、Co+3またはNi+3であり、M’は、+4の平均価数を有する1つ又はそれより多くの金属イオンを表しており、0<x<1である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
集電体が金属箔、金属グリッドまたはエキスパンドメタルを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
集電体がニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、銅またはそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
正極が約0.1〜5重量%の導電剤を更に含有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
正極が約0.5〜7.9重量%のポリマーバインダーを含有する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
バインダーが少なくとも約800,000原子質量単位の平均分子量を有するポリマーである、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
負極が集電体の片側において約65ミクロン〜約200ミクロンの厚さを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
電池が、4.6Vから2.0Vに放電する場合に少なくとも約250Wh/kgの放電エネルギー密度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
正極、第1のリチウム挿入組成物を含有する負極、および正極と負極との間のセパレータを含んでなるリチウムイオン二次電池であって、
正極が少なくとも約92重量%の正極活物質、約0.1〜5重量%の導電剤および約0.5〜7.9重量%のPVDF含有ポリマーバインダーを含んでなり、
ポリマーバインダーが少なくとも約800,000原子質量単位の平均分子量を有する、リチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2011−519126(P2011−519126A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505000(P2011−505000)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/002206
【国際公開番号】WO2009/128879
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510275367)エンビア・システムズ・インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】ENVIA SYSTEMS, INC.
【Fターム(参考)】