説明

高エネルギー電子ビームまたはX線を用いた車体上のコーティング硬化方法

要約
本発明は、密集複合した三次元の車体のコーティングを硬化するために、中〜高電力(1kWと同等またはより大きく)および中〜高エネルギー(1Mevと同等またはより大きく)の電子ビームまたはX線を使用することに関する。当該中〜高電力および中〜高エネルギーは、複数層の鋼の硬化を可能にするために適切なスループットと侵入度を有し、それゆえ、車体の折り曲げ、折り重なり、湾曲による影を貫通できる。加えて、当該中〜高電力および中〜高エネルギーは、割れ目や隙間表面に堆積したより厚いコーティングを硬化するために、適切なスループットと侵入度を有する。本発明は、コーティングを硬化可能な電子ビームの使用を可能とし、その結果、車両産業で通常使用される塗料を構成する溶剤に用いられる無反応溶剤に関連する、火災の危険、有害性大気汚染物質、揮発性有機物などの問題を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.0 関連出願とのクロスリファレンス
この特許出願は、2003年7月31日出願、同名称の米国特許出願番号10/630,785の利益を主張し、当該米国出願の開示全体が引用によりここに組み込まれている。
【0002】
2.0 発明の技術分野
本発明は、コーティングを硬化するために、中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームまたはX線を使用することに関する。より詳細には、本発明は、車体などの密集複合した三次元対象物上のコーティングを硬化するために、中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームまたはX線を使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
3.0 発明の背景
コーティングの主な成分は、溶剤および接合剤、選択的に顔料、添加剤および増量剤である。溶剤は、他の構成成分を分散させて、さらに、粘着性を低減させて、容易で、滑らかで均質な塗布を保証するために添加される。かつて、コーティングのほぼ70%は、溶剤から作られていた。最も広く使われていた有機溶剤は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンである。
【0004】
コーティングにおける溶剤の使用は、大きな環境問題となっている。有機溶剤は、通常の気温および気圧で揮発する。したがって、溶剤の蒸気は、日常的な塗装作業中(たとえば、塗料は、スプレーにより噴霧される)、硬化中および清掃作業中に解放される。溶剤の蒸気は、火災の要因となる危険がある。加えて、溶剤の蒸気は、重要な健康の危機となる大気汚染(HAPs)の虞も含む。さらに、溶剤の蒸気は、太陽光の存在下で窒素酸化物と反応して光化学作用のオゾンまたはスモッグを生成する揮発性有機物(VOCs)を含むか、または生成する。
【0005】
1991年、全VOC放出の11%は、表面コーティング作業によるものだと考えられていた。米国環境保護局による1992年10月「国内空気汚染放出概算、1990−1991」を参照。この問題を処理するために、1996年に実施されたクリーンエア法では、VOCの放出の低下が要求されている。加えて、多くの他の連邦、州および地方条例は、VOC放出を制限している。これらの条約に従うことは、塗装設備にとって、多大なコストである。
【0006】
車両コーティングの主な機能は、外観、外部の耐久性および腐蝕防止である。車両塗装は、その一部が重合体および/または複合材料から形成されうる鋼の車体の多層部分に施される。現在、一般的な手法では、リン酸亜鉛か腐蝕防止剤で車体を処理し、それから4つの追加コーティングを施している。第1に、水性の陰極電気塗装(e−coat)が車体に施される。第2に、下塗剤が電気塗装上に施される。第3に、色素塩基コーティングが施される。一般的にこれは水性塗料によりなされるが、水性塗料はなお溶剤を含んでいる。第4に、最後に、溶剤ベースの媒体を用いて、透明コーティングが施される。そのコーティングは、連続的にオーブンでの焼き付けサイクルにより硬化される。
【0007】
米国における車両塗装設備は、VOCを低減するための低減装置の配置を含む。その低減装置は、塗装設備の総投資額の10%に相当しうる。低減装置は、生産される車両に全く価値を与えることなく、数百万ドルの間接コストを加算する。さらに、低減装置は、エネルギーを消費し、禁止されていないが有益でない窒素酸化物(NOX)を生成してしまう。これらのおよび他の方法によって、自動車メーカーは、1960年代以来、塗装作業における放射を80%減らしている。しかし、簡単な仕事は終わり、より困難な、さらなるVOCの低減が必要とされている。
【0008】
照射硬化性塗装が知られている。紫外線(UV)および低エネルギー電子ビーム技術は、長年、飲料製品の缶、雑誌およびインスタントくじなどの小さな工業的および商業的製品の塗装およびコーティングに用いられている。一般的には、照射硬化は、基材直上の特別に処方されたコーティング内のフリーラジカル重合またはカチオン重合を初期化する。無反応溶剤は、放射硬化性コーティングに必要とされないので、該コーティングは、100%の反応型液体からなり得る。ある放射硬化性コーティングは揮発させ、制限されたVOCを放射するが、このような放射は、比較的低く、しばしば存在しない。
【0009】
電子ビーム硬化性コーティングは、電子を塗装に衝突させることによって硬化される。UV硬化性コーティングと対照的に、電子ビーム硬化性コーティングでは、電子ビームの衝突自体が十分なエネルギーを供給し、フリーラジカルを生成するので、光開始剤を必要としない。加えて、電子ビーム硬化は、不透明性および染色の影響を受けない。
【0010】
不幸にも、電子ビーム硬化は、比較的平らな表面上の薄い部分のコーティングの硬化に制限されてきた。これは、従来の利用可能な電子ビーム加速器の性質が、低電力で低エネルギーであったからである。低電力加速器(すなわち、1kWより低い)は、低電力がスループット率の制限を意味するので、あまり有用ではなかった。他の要素が等しい場合、200kW加速器は、50kW加速器の4倍の物質を単位時間当たりに処理する。低エネルギーは低い電子侵入度を意味するので、低エネルギー加速器(たとえば、50〜300keV)は、作業が制限される。正確な侵入度は、密度によって変化するが、これは、通常、300keVで0.5ミリメートルより小さいこと、あるいは、プラスチック材料の約3〜4mm/MeVの侵入度と相互に関連する。(加速器のビーム出射口でエネルギーが浪費されるから、電子侵入度は、低エネルギーでは電子ビームエネルギーとは直接比例しないことに留意する。)そのような侵入度では、視野方向のとても薄いフィルムの硬化にしか適していない。電子は、複数層の鋼板を侵入して、製品中の折り曲げ、折り重なり、湾曲によって隠れた表面に到達するだけの十分なエネルギーを持っていない。また、電子は、割れ目や隙間に形成されるフィルムの厚い領域に侵入するのに十分なエネルギーを持っていない。したがって、従来の電子ビームは、厚さが変化した複雑な三次元の鋼表面を持つ車体上のフィルムの硬化には用いられていなかった。
【0011】
Advanced Electron Beams Inc.(AEB)は、最近、自動車産業が従来の塗装ラインを交換しうる低エネルギー電子ビーム装置を提案した。Electron 2003年5月26日発行のBusiness Week95〜96ページ、Beams For Everyone参照。しかし、AEB装置は、比較的小さく(80〜120keVか、場合によってはもっと低い)、従来の装置と同様に低エネルギーの不利益に苦しむ。したがって、視野方向の硬化に有用であるだけである。
【0012】
高エネルギー電子を高密度の目的物に衝突して生成したX線により製品を処理する構想は、25年以上前に提案された。X線は、電子よりもより高い物質侵入度を示す。しかし、適度なX線電力を生成するためには、比較的高い電子ビーム電力が要求されるので、この構想は、商業的には、ほとんど注目を集めなかった。電子をX線に変換する処理は、とても非効率である。(たとえば、10MeVより小さい電子ビームエネルギーに対して15%以下である)
1990年代半ば、Ion Beam Applications、S.A.(IBA)は、革新的な中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビーム加速器のシリーズを紹介した。Rhodotron(登録商標)TT100は、10MeV(3.5mA)で最大35kW生成する。Rhodotron(登録商標)TT200は、10MeV(10mA)で100kWまで、5MeV(20mA)で最大100kW生成する。Rhodotron(登録商標)TT300は、10MeV(20mA)で200kWまで、5MeV(27mA)で最大135kW生成する。Rhodotron(登録商標)TT200およびTT300のビーム電力は、連続的な工業系事業において、それぞれ、80kWおよび150kWが保証されている。IBAは、世界初の超高電力工業加速器であるRhodotron(登録商標)TT1000の構築を完了し、テストの最終段階にあり、該TT1000の電力は、7MeVおよび700kWと見積もられている。加速器のRhodotron(登録商標)ファミリーは、米国特許5,107,221号に記述されており、その全記載は、ここに参照することにより本書に組み込まれる。
【発明の開示】
【0013】
4.0 発明の概要
IBAによって生成されるような高電力、高エネルギー電子ビームのための媒体の最新の生成は、車体のように複雑な三次元の表面を持つ大きく厚い対象物上のコーティングを硬化するのに十分なスループットおよび侵入度を有する。したがって、本発明の一つの態様は、車体上の1以上のコーティングを硬化する方法であって、次を含むものである:(i)少なくとも1の電子ビーム硬化性コーティングで前記車体をコーティングし;(ii)1以上の中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビーム中に、前記車体を1回以上通過する。
【0014】
IBAの中〜高電力、中〜高エネルギー加速器、特に最新のTT1000加速器(7MeVおよび700kWと見積もられている)は、車体上の塗装硬化を実行可能な代替物として、多量のX線を生成する。X線は、電子よりもかなり深いフィルムの厚さに侵入する。したがって、本発明の他の態様は、車体上の1以上のコーティングを硬化するための方法であり、次を含むものである:(i)少なくとも1のX線硬化性コーティングで前記車体をコーティングし、(ii)中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームを金属目標物に衝突させて生成される1以上のX線照射野中に、前記車体を1回以上通過する。
【0015】
本発明は、中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームを採用している。本発明で採用される電子ビームは、主として、少なくとも1MeVのエネルギーを有し、好ましくは、少なくとも3MeV、より好ましくは少なくとも5MeV以上10〜12MeV以下である。これは、従来のコーティング技術で使われていた低エネルギービームが一般的に持つ50〜300keVの範囲のビームエネルギーよりも高い。本発明で採用されている電子ビームは、主として、電力能力として、少なくとも1kWを有し、好ましくは少なくとも10kW、より好ましくは少なくとも35kW、さらにより好ましくは少なくとも80kW、理想的には150kWを有し、少なくとも一つの実施形態では、200kW〜700kWを有する。
【0016】
上記発明の方法は、多くの効果を提供する。第1に、電子ビームおよびX線は、車両コーティング産業において使用される無反応溶剤の排除または低減を可能とする。第2に、電子ビームおよびX線は、潜在的には一つの車体に対して1分以下という、極めて迅速な硬化を提供し、即座の起動および停止機能も提供する。第3に、電子ビームおよびX線硬化は、低温度処理である。第4に、放射硬化性コーティングは、コーティングが単一成分系であるので、分類としては、より長い持続期間およびより長いポットライフを持つ傾向にある。第5に、同じ調子では、放射硬化性コーティングは、より良い硬度、耐溶剤性、耐着色性および耐磨耗性を示す傾向にある。放射硬化性コーティングにおける揮発性構成物が少ないほど、光沢が高く、体型がより良く、収縮率が低い。第6に、電子ビーム加速器は、熱炉に比べてよりエネルギー効率が良い。第7に、電子ビーム加速器は、従来の熱炉よりもスペースを必要とせず、電子ビーム硬化設備のための主要なコストは、炉硬化設備と同程度である。
【0017】
本発明は、大きく文脈上で車体の硬化コーティングについて記載されているが、これに限定されるものではなく、他の大きな三次元の対象物をコーティングする際に出くわす同様の問題も解決する。したがって、本発明の他の態様は、折り曲げ、折り重なり、湾曲されて三次元構造体にされたシート素材から形成される対象物上の1以上のコーティングを硬化する方法であり、次を含むものである:(i)少なくとも1の電子またはX線硬化性コーティングで前記対象物をコーティングし、(ii)中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームまたはX線照射野中に、前記対象物を1回以上通過し、ここで、前記ビームまたは前記照射野の可視的視野方向中にないコーティングの領域を硬化するために、少なくとも1の電子ビームおよび/またはX線照射野が複数層の前記シート素材を通じて侵入可能である。一の実施形態では、シート素材は相当面密度を有し(たとえば、体積密度が乗算された厚さ)、該面密度は、3mmのプラスチック素材の相当面密度と同等かまたはより大きい。他の実施形態では、シート素材は、0.4mmの鋼の相当面密度と同等かそれより大きい相当面密度を有する。
【0018】
本発明の他の態様は、上記方法のいずれか一つを実施できる設備である。したがって、本発明は、次の構成要素を含むプラントである:(i)折り曲げ、折り重なり、湾曲されて三次元構造体にされたシート素材から形成され、1以上の電子ビームまたはX線硬化性コーティングによりコーティングされた1以上の対象物と;(ii)電子ビームおよび/またはX線照射野中に、1以上の前記対象物を通過させるコンベアシステム;(iii)前記ビームまたは照射野の侵入方向にないコーティング領域を硬化するために、多数層の前記シート素材を通じて侵入可能な、中〜高電力、中〜高エネルギーの(複数の)電子ビームおよび/または(複数の)X線照射野を生成可能な1以上の加速器。
【0019】
本発明の他の態様は、ここに提供される開示を考慮して当業者にとって明らかである。
【0020】
5.0 図面の簡単な説明
図1Aは、本発明に使用される垂直迷路の上面図である。
【0021】
図1Bは、本発明に使用される垂直迷路の側面図である。
【0022】
図2Aは、本発明に使用される垂直および水平迷路の上面図である。
【0023】
図2Bは、本発明に使用される垂直および水平迷路の側面図である。
【0024】
図3Aは、本発明に使用される水平迷路の上面図である。
【0025】
図3Bは、本発明に使用される水平迷路の側面図である。
【0026】
図4は、50ミクロンのアクリルコーティングでコーティングされた鉄への5MeVの電子エネルギー堆積を示すグラフである。
【0027】
図5は、50ミクロンのアクリルコーティングでコーティングされた鉄への7MeVの電子エネルギー堆積を示すグラフである。
【0028】
図6は、50ミクロンのアクリルコーティングでコーティングされた鉄への10MeVの電子エネルギー堆積を示すグラフである。
【0029】
図7は、1.2mmタンタル目標物を用いた鉄への5MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【0030】
図8は、1.2mmタンタル目標物を用いた鉄への6MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【0031】
図9は、1.2mmタンタル目標物を用いた鉄への7MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【0032】
図10は、1.4mmタンタル目標物を用いた鉄への7MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【0033】
図11は、50ミクロンのアクリルコーティングでコーティングされた鉄への7MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【0034】
図12は、鋼板スタックおよび拡大された鋼板の角を示す図である。
【0035】
6.0 好ましい実施形態の詳細な説明
6.1 定義
ここで使用される、以下の用語は、以下の意味を有するように意図されている。
【0036】
“低エネルギー”は、1MeVよりも低く、主に100〜300keVであることを意味する。
【0037】
“中エネルギー”は、1MeV以上、5MeV未満を意味する。
【0038】
“高エネルギー”は、5MeV以上を意味する。
【0039】
“中〜高エネルギー”は、少なくとも1MeVを意味する。
【0040】
“低電力”は、1kWより小さいことを意味する。
【0041】
“中電力”は、1kW以上、80kW未満を意味する。
【0042】
“高電力”は、80kW以上を意味する。
【0043】
“中〜高電力”は、少なくとも1kWを意味する。
【0044】
ここで使用される“車体”は、乗用車、トラック、バス、単車、トラクターまたは他のいかなる自動搬送車両の主要部を示し、少なくともフレームまたはシェルを含み、選択的に、ドア、フード、トランク、アクセルなどの他の部分も含む。車体は、一般的に、鋼材により形成されているが、アルミニウム、ポリマー(プラスチックおよびゴム)、グラスファイバー、カーボンファイバー、合成物、および木材さえも含む他の材料が、交換可能にまたは鋼材と組み合わせて使用されてもよい。
【0045】
ここで使用される“影”は、製品表面上の折り曲げ、折り重なり、湾曲により所定の視線方向では見えない製品表面上の領域を示す。
【0046】
ここで使用される“コーティング”は、1以上の被覆層が、保護および/または装飾のために、製品の表面上に広がることを示す。塗装は、コーティングの一種である。
【0047】
“塗装”は、少なくとも一部に色彩が施されたコーティングを示す。
【0048】
“視線方向”は、所定の方向から所定の領域を見る能力を示す。所定の方位は、電子ビームまたはX線を用いたコーティング硬化の前後における電子ビームまたはX線照射野の出力点である。
【0049】
“相当面密度”は、材料の厚さに、その体積密度を乗算したものを示す。
【0050】
6.2 概説
中〜高電力、中〜高エネルギー工業的電子加速器の出現により、現在、車体の塗装およびコーティングの硬化に電子ビーム技術が使用されており、その結果、硬化スピードが向上し、工場フロアスペースが削減され、揮発性放射が低減され、エネルギーコストが削減されている。電子ビームは、鋼パネル上のコーティングを硬化するために適しているだけでなく、硬化中の低温性から熱可塑性パネル上のコーティングの硬化にも適している。本発明に従って、車体上の1以上のコーティングを硬化する1以上の電子ビームまたはX線を生成するために、少なくとも1の中〜高電力、中〜高エネルギー加速器が使用される。
【0051】
現在、車両産業の一般的な実務は、車体をリン酸亜鉛またはそれに近い防蝕剤で処理し、さらに、4つの追加コーティングを供給している。第1に、水性の陰極電気塗装(e−coat)が車体に施される。第2に、下塗剤が電気塗装上に施される。第3に、一般的に水性でなお溶剤を含む色素塩基塗装が施される。第4に、最後に、溶剤ベースの媒体を用いて、透明コーティングが施される。そのコーティングは、連続的にオーブンでの焼き付けサイクルにより硬化される。これらのコーティングは、周知技術であり、十分に文書化されており、商業的にBASFおよびPPGを含む製造業から入手可能である。特別な設計は、車両製品間で少々変更される。
【0052】
適当な電気塗装は周知技術であり、商業的に利用可能である。電気塗装(e−coat)とは、電着下塗剤を示す。電気塗装は、およそ40年間知られており、産業的金属対象物上の耐食性を向上するために広く採用されている。電気塗装の間、導電性の製品を被覆するために、帯電した粒子が水懸濁から堆積される。電気塗装は、印加された電圧量により調節される一定の被膜厚さを、製品に与える。堆積は、自己制御式であり、製品を電気的に絶縁するコーティングが加えられると衰える。電気塗装固体は、最初は対極と最も近い領域から堆積され、これらの領域が電流から絶縁されると、固体はより奥に進み、露出した金属領域に完全な被覆が供給される。典型的なe−coatは、エポキシベースの水性陰極電気塗装(CED)下塗剤である。最初のCED下塗剤は、トルエンジイソシアネートのようなブロックされたイソシアネートで硬化された、ペンダントアミン基を有するエポン樹脂であった。現在、ほとんどのCED下塗剤は、硬化剤として、オキシムブロックされたトルエンジイソシアネートを用いている。適当なe−caotは、BASFやPPGなどの企業から商業的に利用可能である。
【0053】
適当な下塗剤は、周知技術であり、商業的に利用可能である。下塗剤は、一般的に、噴霧により与えられる。しばしば、下塗剤は粉末である。主要な粉末下塗剤表面処理は、エポキシポリエステルである。下塗剤は電気塗装であってもよい。たとえば、PPGは、ブラジルのダイムラークライスラープラントで昨年紹介された二槽電極市システムであるパワープライムを販売している。パワープライムは、2in1電気塗装下塗剤であり、第1の槽が腐食抑制下塗剤を与え、第2の槽が全身の欠け防止下塗剤表面処理を与える。この過程は、下塗剤の被覆においてスプレー塗装のステップを省略できる。
【0054】
適当な色彩基礎コーティングは、周知技術であり、商業的に利用可能である。適当な基礎コーティングは、一般的に、顔料を含む。基礎コーティングにおける接着剤は、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびアミノプラスト樹脂から選択されうる。一般的な基礎コーティングは、溶剤または水性ポリエステルコーティングである。
【0055】
適当な透明コーティング、あるいは最表面コーティングは、周知技術であり、日本ペイントなどの製造業者から商業的に利用可能である。透明コーティングは、外的要素から塗装を保護するために使用される。適当な透明コーティング剤は、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびアミノプラスト樹脂を含む。一般的に、透明コーティング剤は、溶剤性のアクリルまたはウレタンである。BASFは、イソシアネートを使用することなくウレタンの特性を提供するカルバメート機能を有する一液形アクリルである、ウレクリア(登録商標)透明コーティングを販売している。BASFは、また、VOC生成がないと報道されている車両用粉末スラリー透明コーティングも開発した。BASF粉末スラリーは、メルセデスベンツの車両にも適用されており、ミシガンの低放射塗装事業体(GM、フォード、ダイムラークライスラーにより実行される合同R&Dプロジェクト)で試験が試されている。
【0056】
典型的な基礎コーティングおよび透明コーティングは、それぞれ、20および50μmの厚さであり、密度は少なくとも1g/cmである。車体は複雑で幾何学的な形状を有しているので、低エネルギー電子ビームを用いて、必要な全視野方向で十分に車体上のコーティングを硬化することは非常に困難である。低エネルギー電子の空間中の短い範囲は、これをより難しくしている。さらに、低エネルギービームは、ひびや割れ目表面に通常起こる、コーティングの比較的厚い継ぎを硬化するために必要な侵入度が足りない。特に、影になった塗装表面を硬化するために、1以上の車体の鋼ボディ(たとえば、厚さ0.8mm、密度7.85g/cm)の厚さを侵入する必要がしばしばあるので、より高いエネルギーが要求されている。
【0057】
差し迫った発明では、車体上の少なくとも1のコーティングが電子ビーム硬化コーティングまたはX線硬化コーティングである。ある実施形態では、色彩基礎コーティングは、電子またはX線硬化性である。他の実施形態では、色彩基礎コーティングおよび透明コーティングは、電子またはX線硬化性である。いずれの実施形態でも、基礎コーティングおよび透明コーティングは、個別にまたは同時に硬化される。電子ビーム硬化性コーティングは、中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームによって硬化される。選択的に、硬化性コーティングは、中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームによって生成されたX線照射野によって硬化される。好ましくは、電子ビームは、高エネルギー、高電力ビームである。
【0058】
6.3 電子およびX線硬化性コーティング
電子硬化性およびX線硬化性コーティングは、基本的に類義語である。物理学的に異なるかもしれないが、化学的反応は基本的に同一である。しかしながら、高電力および高エネルギーの要求は電子をX線に変換することを必要とするので、電子ビームの方がX線よりももともとは好まれている。したがって、従来技術および本論述では、電子ビーム硬化性フィルムに注目する。しかし、ほとんどの電子ビーム硬化性樹脂はX線硬化性でもあることが理解されねばならない。
【0059】
電子ビームおよびX線硬化性コーティングは、周知技術であり、商業的に利用可能である。たとえば、アクリル酸塩を水溶性コーティングまたは水性エマルジョンのような水性製剤中で使用する電子ビーム硬化性システムが利用可能である。
【0060】
電子ビーム硬化性コーティングは、一般的に噴霧で対象物上になされ、電子ビーム加速器からの照射によって硬化(架橋/重合)される。この硬化プロセスは、従来のコーティングが要する数分後、数時間、数日後よりむしろ、照射されたときにほぼ即座に起こる。硬化がすばやく起こるので、コーティングを流出し最大の光沢を得るために十分な時間が塗装と硬化との間に許される。しかし、この流出時間の間、VOCの放射はどうしても起こる。
【0061】
電子ビームおよびX線硬化は、コーティングの色または不透明性には影響を受けない。電子は、短い照射時間においてコーティングを硬化するために、着色されたコーティングを効率的に侵入する。
【0062】
電子ビームおよびX線硬化性コーティングは、100%反応溶液を用いることができ、それによって、反応しない溶剤の必要性を完全に除去できる。しかし、一定の樹脂は揮発してVOCとなりうるので、VOCなしの形成の達成能力は、製剤に依存する。電子ビームおよびX線硬化コーティングは、一般的に、次の要素からなる;(i)二重結合不飽和を含むオリゴマーまたはプレポリマー;(ii)よく反応する溶剤(すなわち、不飽和の度合いが変化する1以上のモノマー)。しばしば、オリゴマーまたはプレポリマーは、アクリル酸塩またはメタクリル酸塩基を含む。電子ビーム硬化性コーティングは、光開始剤、顔料、染料および他の添加剤を含みうる。
【0063】
電子ビームまたはX線硬化性コーティングの第1タイプは、重合過程において、フリーラジカルを用いる。フリーラジカルは、高い反応性の分子であり、不対電子を含む。フリーラジカルは、反応物質を電子ビームに露出することによって直接的に生成され、または、電子ビームの照射から光化学反応を起こす光開始剤分子から間接的に生成される。フリーラジカルは、架橋および/または重合を引き起こす連鎖反応を活性化するアクリル酸塩基のような活性化した二重結合と反応する。
【0064】
電子ビームまたはX線硬化性コーティングの第2タイプは、陽イオンの重合を用いる。この処理は、複合有機分子の塩を用い、エポキシド(オキシラン環)を含む樹脂およびモノマー中の陽イオン連鎖重合を開始する。アクリルアルケン二重結合およびオキシラン環は、電子ビーム照射によって光開始剤があってもなくても、活性化されうる。
【0065】
従来の溶剤ベースのコーティングに用いられる樹脂は、電子ビーム硬化性になるように化学的に変更されうる。たとえば、エポキシド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、および他の材料は、アクリル酸塩機能性を紹介することによって、変更されうる。今日の電子ビーム硬化性製剤に最もよく見られるオリゴマーは、アクリル酸塩ウレタン、エポキシ、ポリエステルおよびシリコーンである。これらの機能性は、典型的に、アクリル酸をアルコール基によって反応させることによって、または、ヒドロキシエチルアクリル酸塩を酸性基で反応させることによって得られる。樹脂の一般的な物理的および化学的特性は、変化後に維持される。
【0066】
6.4 高電力、中〜高エネルギー電子ビーム
加速器は、電子的エネルギーを使って自由電子を生成し、自由電子を高速度に加速させ(これによって、それらに高い運動エネルギーを与える)、通常コンベアまたは他のタイプの運搬システムにより運ばれる物質に自由電子を案内する機械である。選択的に、十分な電力およびエネルギーのビームを与えるために、電子は、電子をX線に変換するタンタル板などのような変換目標物に案内されてもよい。ここで、X線は、電子よりも侵入力が高い以外、電子と同じ機能を有する。
【0067】
加速器はTVセットまたは医療用X線装置と類似しており、同様の方法で電子を生成する。真空チャンバ内の陰極を加熱することによって、無数の自由電子が生成される。マイナス電気を帯びた電子は、一度生成されると、陰極上の負電位によって跳ね返され、接地された陽極板に引き付けられる。RDI DYNAMITRON(登録商標)のような方向付け加速器では、陰極に印加された負電位が電子の全運動エネルギーを決定する。電磁波線形(リニアック)加速器、または、IBA Rhodotron(登録商標)のようなラジオ周波数(RF)加速器においては、電子は、比較的小さいエネルギー(通常、25〜50keV)で加速され、電子加速構造に注入され、交流電場でより高い運動エネルギーへ加速される。加速された電子は、接地された陽極板に設けられた細い金属窓から逃げ出し、処理する材料に向かって空間を進む。
【0068】
加速器の出力は通常、電力のワットまたはキロワットで特定される。他の要素が同一の場合、200kW加速器は50kW加速器の4倍だけ単位時間当たりに処理する。したがって、低エネルギー加速器(たとえば50〜300keV)は、低エネルギーが低電子侵入度を意味するので、塗装処理が非常に制限される。
【0069】
電子は、所定の材料において、予測可能な侵入深さ、または範囲を有する。当該範囲は2つのパラメータにより影響を受ける:電子エネルギーと製品密度である。侵入度は、エネルギーに比例し、密度に反比例する。等しい入出射線量での樹脂材料の侵入度を示す基本方程式は、次の通りである。
【0070】
侵入度=(0.414E−0.142)/d
ここで、“E”はMeV単位のビームエネルギー、“d”はg/cm単位の密度である。正確な侵入度は、密度や原子番号で変化するが、これは、一般的に、MeV当りおよそ3〜4ミリメーターの材料侵入度に相関がある。
【0071】
低エネルギー加速器は、侵入して、車体などの複雑な三次元高密度対象物を硬化するために十分なエネルギーを有するビームを生成しない。低エネルギー加速器は、工程の直接的な視線方向中の薄いコーティングを硬化することに、根本的に制限されている。一つの車体の全露出表面領域に直接的な視線方向を有することは、一つのビームまたはいくつかのビームでさえ不可能ではないにしても、極めて困難であり、複数のタイプの車体ではなおさらである。車体表面上の折り曲げ、折り重なり、湾曲による影は、少なくともいくらかの露出された表面を隠す。したがって、従来の加速器における侵入度の欠如は、この目的において、大きな問題であると考えられてきた。
【0072】
対照的に、本発明で使用される加速器は、中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビーム加速器である。好ましくは、加速器は高電力、高エネルギー電子ビーム加速器である。電子ビームは、本発明において、典型的に、1MeVより高く、好ましくは3MeV以上、より好ましくは5MeV以上で10〜12MeVと同等のエネルギーを有する。これは、典型的に50〜300keVのエネルギー範囲しかもたない従来からコーティング技術に使用されている低エネルギービームよりもかなり高い。電子ビームは、本発明では、典型的に、少なくとも1kW好ましくは10kW以上、より好ましくは35kW以上、さらにより好ましくは80kW以上、理想的には150kW以上、少なくとも一つの実施形態において、200kW〜700kWと同等の電力容量を有する。これらのビームは、金属の複数層を侵入でき、これにより、車体において影が形成される影響により不利益を被らない。これらのビームは、鋼板の複数層を侵入でき、三次元構造における折り曲げ、折り重なり、湾曲により直接的な視野方向から隠れた車体の一部に到達できる。
【0073】
適当な加速器は、IBAによって最近紹介された。Rhodotron(登録商標)TT100は、10MeV(3.5mA)で35kWまで生成できる。Rhodotron(登録商標)TT200は、10MeV(10mA)で100kWまで、5MeV(20mA)で100kWまで生成できる。Rhodotron(登録商標)TT300は、10MeV(20mA)で200kWまで、5MeV(27mA)で135kWまで生成できる。Rhodotron(登録商標)TT200およびRhodotron(登録商標)TT300のビーム電力は、連続的な商業的サービスにおいて、80kWおよび150kWが、それぞれ保証されている。IBAは、世界初の超高電力工業加速器であるRhodotron(登録商標)TT1000の構築を完了し、テストの最終段階にあり、該TT1000の電力は、7MeVおよび700kWと見積もられている。加速器のRhodotron(登録商標)シリーズは、米国特許5,107,221号に記述されており、その全記載は、ここに参照することにより本書に組み込まれる。
【0074】
6.5 ビーム配列
中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビーム加速器は、さまざまな配列で配置されうる。3つの配列を次に詳細に示す。
【0075】
6.5.1 プラントコンセプト♯1:複数の中〜高エネルギービーム走査部
ある実施形態では、完成した車体が連続的なコンベアシステムで運ばれて、複数の固定されたビーム走査部(たとえば2〜4個またはより多く)を有するヴォールトに入れられる、ここで、ビーム走査部は、中〜高エネルギー、中〜高電力電子ビームを供給する。たとえば、ビームは、幅3mまでの領域をカバーするために対象物の両側から放射される。加速器は、ヴォールトに隣接している複数の部屋に位置する。走査部は、車体全体にそれぞれ均一な線量が確実に放射されるように、ヴォールト内に戦略的に配置されている。
【0076】
複雑な形状へのビームの分配は、多くの手段によって最大限に生かされる。図面で示す実施例は次を含む:(a)クリランドらの米国特許4,295,048号では、線形および不規則な形状の対象物へ制御された照射量で照射する手段が開示されており;(b)ジャイレンツらの米国特許6,479,831号では、標準形状の対象物および湾曲した表面に均一な線量を照射するための手段が開示されている。これらの特許の開示は、参照によりここに組み込まれる。
【0077】
モンテカルロソフトウェアを使ったコンピュータシミュレーションは、ビームに対して塗装表面が常に正しい方向に直接向いていたら、40kGyの線量、単一の10MeV、20mA(たとえば、200kW)ビームの使用、1.64分/車体(または0.6車/分)の硬化時間が達成されると予測している。硬化時間は、塗装表面に到達するまでにさまざまな厚さの金属が侵入されなくてはならなくても、いまだかなり妥当である。特に、上記予測硬化時間は、(厚さ0.8mmで7.85g/cmの密度を有する各鋼板が、それぞれ、2、4、6枚積層されたものを通じて、)深さ1.6、3.2、4.8mmで1.1、1.1、2.3分/車体である。異なる方向から2以上のビームの線量を供給することによる魅力的な効果は、これらの演算には組み込まれていない。これらの割合は、2つの加速器が使用されたら半減され、また、20kGyのより低い線量が望まれた場合も半減する。たとえば、線量要求20kGyを達成するための、400kWのビーム電力の使用(たとえば、2つの10MeV、200kW加速器)は、上述の硬化率よりも4倍早い硬化率をもたらす。
【0078】
5〜10MeVのエネルギーを有する2つのビームが十分であろう。3〜4のビームであれば、より効率的である。
【0079】
第1実施形態では、線量の均一性を改善するために、車体は、処理ゾーンを通過する際に固定角度(たとえば45°)回転させられる。この車体の方向付けを伴って1回の通過で2つのビームを通過すれば、十分のはずである。代わりに、1回の通過の総線量が半分で2回通過(すなわち、2倍のコンベア速度)する場合、より均一な線量放射を得るためには、車体に逆回転が加えられる。2回の通過は、今日の多くの電子ビーム設備で繰り返しなされている。これは、ヴォールトの外部のコンベアシステムに、ループと適切なコンピュータ化された製品追跡システムとを要求する。設備の全スループットは、本質的に、1回だけ通過するシステムと変わらない。
【0080】
6.5.2 プラントコンセプト♯2:単一の中〜高エネルギー走査ホーン
他の実施形態では、連続的なコンベアによって運ばれた完成した車体は、単一の加速器および操作部が使用されるヴォールトに入る。この実施形態では、走査部は、いかなる水平、垂直または角度が付けられた方向にも向くように、配置されている。好ましくは、走査部は、ヴォールトの中央で下方向に向くように垂直に取り付けられ、または、ヴォールトの横から中央に向くように水平に配置される。均一な線量放射を達成するために、コンベアは、車体がヴォールトを通過する際に、ビームと直面するように車体を傾けるようにプログラミングされている。換言すると、ビームの直接的な視線方向から隠れる総表面領域を低減するために、車体はビーム中で舞う。第1実施形態では、車体は45°まで傾かされた。本他の実施形態では、車体は2軸上で傾けられる。
【0081】
これは動的プログラムでありえて、複数の走査ホーンを使用したときと比べて、同じ総ビーム電力で同じ全体的なスループットを達成するために、ヴォールトの2回以上の通過を必要とする。このコンセプトの利点は、複数の走査ホーンを使用したときと比べて、ビームの侵入度の要求が減少されることにより、より低いエネルギービームが利用可能である点である。これは、より低い熱効率およびスループットの向上である。より少ない加速器しか要求されず、あるいはできる限り遮蔽が減少されるので、主要なコストは少し低い。不利な面は、より複雑な製品処理システムが要求されることである。すべての他の要素は、複数の走査ホーンを使用した場合に匹敵する。
【0082】
6.5.3 プラントコンセプト♯3:とても高電力な加速器を用いたX線硬化
ある実施形態では、水平または垂直走査ホーンを有する1以上の高電力加速器がX線変換目標物に取り付けられ、X線をヴォールトに導き、本質的に、ヴォールト全体をX線照射野内に浸漬される。最新世代の中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームは、大量のX線の生成を可能とする。高電力および高エネルギーはX線変換を容易にするので、高電力高エネルギービームが好まれる。この関連で、IBAは、世界初の超高電力工業加速器であるRhodotron(登録商標)TT1000の構築を完了し、テストの最終段階にあり、該TT1000の電力は、7MeVおよび700kWと見積もられている。
【0083】
X線は、電子を使用するよりも大きな規模のオーダーで厚みに侵入する能力を提供する。一般的に、X線からの光子は、電子を衝突させるのと同等の硬化効果を有することが期待されている。不利な面は、X線を生成するために使用される電子ビームのエネルギーしだいで、電子ビームからX線への変換効率が5%〜15%の範囲(10MeV以下のエネルギーに対して)と悪いことである。しかしながら、処理スピードは、いまだ適当に高く、特にRhodotron(登録商標)TT1000のようなとても高電力の加速器を採用するときに適当である。
【0084】
車体上のコーティングが電子ビームで硬化される前述のコンセプト以外のこのコンセプトの利点は、たった一つの走査ホーンしか有さない単純な製品処理システムを使える点と、車体中の均一な侵入が達成されない見込みがほとんどない点である。また、生成される全エネルギーのより小さな割合しか鋼に吸収されないので、温度増加が直接的な電子ビーム硬化より小さい。X線方法の不利な点は、およそ1500kWという高い電気的要求を含むことと、いささか遮蔽要求が増加されることである。
【0085】
モンテカルロソフトウェアを用いたコンピュータシミュレーションでは、7MeV、700kWビームからの単一の高電力X線資源を用いて、40kGyの線量で、深さ1.6、3.2および4.8mm(2,4および6枚の金属厚さにそれぞれ相当する)に、およそ12、13および14分/車体の硬化時間が達成されることを予測している。これらの時間は、線量20kGyでは半減し、2つの加速器が使用された場合にも半減する。したがって、4つの加速器を備えたシステムは、1.5〜2分/車体の範囲の硬化時間を有しうる。
【0086】
6.6 コンベアシステム
迷路中で車体を移動させるために、いかなる周知のコンベアシステムが利用されてもよい。オーバーヘッドおよび変換された電力および自由コンベアおよびチェーンコンベアの混合が一般的である。適当なコンベアシステムは、Jervis Webbなどの企業から商業的に利用可能である。コンベアシステムの原則的要求は、迷路中の車体を移動させ支持するのに適切で、ビームによる均一な線量を確保するために車体のスピードおよび角度を制御できることである。供給された線量は、ビームによるコンベアのスピードに反比例する。
【0087】
6.7 迷路
全ての照射がヴォールト内に含まれることを保証する一つの方法は、車体がヴォールトに入る前に、“迷路”を通過することを伴う。このヴォールトおよび迷路は、迷路の入り口または出口において照射レベルを背景強度まで低減するために、内部表面から4つまたは5つの散らばりを生成するように設計されている。どんな特定の設備設計のヴォールトおよび迷路の外側の照射レベルでも、正確にモデル化するコンピュータコードが商業的に利用可能である。
【0088】
図1A、1B、2A、2B、3Aおよび3Bは、そのような設備が取りうる3つのレイアウトの平面図および側面図を示す。迷路は、水平型、垂直型または両者の組み合わせである。図1Aおよび1Bは、垂直迷路を有する“ストレートスルー”配列を示す。図2Aおよび2Bは、垂直および水平迷路の組み合わせを示す。図3Aおよび3Bは、迷路の角を車体が通過する際に車体が旋回する水平迷路を示す。車体は、迷路中およびヴォールトを連続的に一方位に進むことができ、または迷路を通過する際に旋回できる。多くの他の考え方が可能である。可能な構造のたった3つの実施例がある。コンクリート壁は、走査部近傍で厚く、迷路の出入口で薄い。コンクリートの代わりに、鋼や鉛のような高密度遮蔽材料を使用することは、いささか高い主要コストにもかかわらず、必要な壁厚みを低減し、その結果、設備のサイズを低減する。
【0089】
ヴォールトから漏れる照射は直線的に進むが、内側面から散乱しない。これらのレイアウトは、線量を背景強度まで減衰するために内側面からの5回の散乱が要求されると、想定する。これは、慎重な予測かもしれない。4つの分散だけが要求されることもありえるし、この結果、より小さい迷路となる。設備に見られる内部寸法は、SUVのようなフルサイズの車体にとって十分とすべきである。
【0090】
6.8 加熱
鋼のブロックの断熱温度上昇は、鉄に伝達される線量のkGyごとに約2.27℃である。したがって、40kGyの線量は、環境温度を超える91℃の温度上昇、換言すると約120℃という最大温度までの上昇を即座に引き起こす。この温度上昇は、許容範囲内に違いない(塗装された車体は、現行の炉焼き工程中にこれより高い温度にやがてさらされるからである)。さらに、空気(または他の)冷却システムはこの温度上昇を低減しうる。車体の全表面領域のうちのほんの小さな部分だけが瞬間的にビームエネルギーにさらされ、より低く要求された線量に比例して温度上昇も低下する。たとえば、20kGyの線量は、約45℃の環境を超えて、理論上の最大温度上昇に帰着する。概して、温度上昇は深刻な問題ではない。
【0091】
6.9 無酸素環境
コーティングを硬化する電子ビームの硬化率は、照射チャンバ内の酸素の存在によって妨げられる。電子はフリーラジカルの生成によりコーティングを硬化する。酸素は、フリーラジカル清掃物なので、フリーラジカルの工程を遅延させる。この影響が重大である場合、電子硬化性コーティングにおいて過酸化物清掃物を組み込むことによって、酸素レベルを低減できる。代わりに、不活性ガス(たとえば窒素ガス)をパルスすることによって、および/または真空吸引によって、酸素レベルを低減できる。その製品は、また、真空によってシールされるか、不活性ガスによって充填されたバッグ内に詰められる。酸素によって大きな影響を受けない硬化率の電子ビーム硬化性コーティングを選択することが好ましい。適当な塗料は、たとえば、Strathmore(ニューヨーク)によって生成され、B95−0002U(S 26992)と呼ばれている。StrathmoreのB95−0002Uは、電子ビーム硬化性、陽イオン性、黒色、脂環式のエポキシ製剤である。
【0092】
6.10 本発明の利益
本発明の方法は、複数の利益を提供する。第1で最重要なものとして、本方法は、車両コーティング産業において使用される無反応溶剤をなくすか低減することが可能である。上述のように、溶剤は、火災の原因となり、HAPおよびVOCの発生源となる蒸気を発生し、このため、高価でエネルギー消費が高いVOC減少装置を強いる。第2に、電子ビームおよびX線は、極めて迅速な硬化を提供し−潜在的には車体1台に対して1分より短い−即座な起動および終了機能も提供する。これは、上昇、硬化および下降に多くの時間を要する従来の熱オーブンに比べて、スループットを増加する。第3に、電子ビームおよびX線硬化は、低温度工程である。製品内で内部温度が発生するが、これらの工程は、熱可塑性物質のような熱に敏感な物質に対してもやさしい。感熱物質は、車体や基礎コーティングの多様な部分にしばしば見られる。第4に、照射硬化性コーティングがしばしば単一構成材要素であるので、塗布の前に長い持続期間および長いポットライフを有する傾向にある分類の照射硬化性コーティングを許容する。第5に、この同じ傾向で、照射硬化性コーティングは、強度、耐溶剤性、汚れ防止、磨耗防止のような、良い物理的特性を示す傾向にある。実際、照射硬化性コーティングにおけるより低い揮発性成分は、光沢、良い体型および低い収縮性を車体に与える。第6に、電子ビーム加速器は、熱オーブンに比べてエネルギー効率が良い。従来のシステムにおける溶剤の蒸発または熱反応のために必要な熱エネルギーは、オーブンが非効率なので、電子ビームシステムで使用されるエネルギーよりも大規模である。10MeV、200kWの加速器は、約500kWの電力を必要とする。コストが5セント/kW時間であると見積もられた場合、料金は25$/時間である。これは熱オーブンに比べて実質的なコスト削減である。第7に、電子ビーム加速器は、従来の熱オーブンよりも少ないフロア空間しか必要とせず、電子ビーム硬化設備のための主要コストは熱硬化設備と比べて遜色ない。
【0093】
6.11 他の応用
本発明は、車体上の硬化コーティングについて大きく詳述されてきたが、これに限定されるものではない。他の大きな三次元対象物のコーティングを硬化する際に出会う、似たような問題も、本発明により解決される。したがって、本発明は、いかなる三次元構造物、たとえば、家具(食器棚、机など)、芝刈り機のフレーム、ボート、自転車、建設用機器、造園機器などにも適応可能である。本発明は、特に、シート状素材が折り曲げ、折り重なり、湾曲されて形成されるいかなる三次元対象物上のコーティングの硬化にも適用可能である。適当なシート素材は、金属、樹脂、ガラスファイバー、カーボンファイバー、ゴム、木材またはそれらの組み合わせを含む。
【0094】
その結果、本発明の他の態様は、折り曲げ、折り重なり、湾曲されて三次元構造体にされたシート素材から形成される対象物上の1以上のコーティングを硬化する方法であって、次を含む:(i)少なくとも1の電子またはX線硬化性コーティングで前記対象物をコーティングし、(ii)中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームまたはX線照射野中に、前記対象物を1回以上通過し、ここで、前記ビームまたは照射野の可視的視野方向上にないコーティングの領域を硬化するために、少なくとも1の電子ビームおよび/またはX線照射野が複数層の前記シート素材を通じて侵入可能である。好ましくは、全ての電子ビームおよび/またはX線照射野を前記シート素材の複数層を通じて侵入可能とし、該ビームまたは照射野の可視的視線方向上にないコーティング領域を硬化する。高電力、中〜高エネルギーX線照射野は、現在、金属目標物に中〜高パワー、中〜高エネルギー電子ビームを衝突させることによって生成されている。ある実施形態では、シート素材は、3mmのプラスチック材料の相当面密度と同等か一層大きい相当面密度を有する。他の実施形態では、シート素材は、0.4mmの鋼の相当面密度と同等か一層大きい相当面密度を有する。さらに他の実施形態では、シート材料は鋼である。
【0095】
本発明の他の態様では、上述の方法のいずれか一つでも実行できる設備である。その結果、本発明は、次の構成要素を含むプラントである:(i)折り曲げ、折り重なり、湾曲されて三次元構造体にされたシート素材から形成され、1以上の電子ビームまたはX線硬化性コーティングによりコーティングされた1以上の対象物と、(ii)電子ビームおよび/またはX線照射野中に、1以上の前記対象物を通過させるコンベアシステムと、(iii)1以上の中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームおよび/またはX線照射野を生成可能であり、少なくとも1の前記ビームまたはおよび/または照射野が、前記ビームまたは照射野の可視的視野方向上にないコーティング領域を硬化するために、多数層の前記シート素材を通じて侵入可能な1以上の加速器。好ましくは、全ての電子ビームおよび/またはX線照射野を前記シート素材の複数層を通じて侵入可能であり、該ビームまたは照射野の可視的視線方向上にないコーティング領域を硬化する。高電力、中〜高X線照射野は、現在、金属目標物に中〜高パワー、中〜高エネルギー電子ビームを衝突させることによって生成されている。ある実施形態では、シート素材は、3mmのプラスチック材料の相当面密度と同等か一層大きい相当面密度を有する。他の実施形態では、シート素材は、0.4mmの鋼の相当面密度と同等か一層大きい相当面密度を有する。さらに他の実施形態では、シート材料は鋼である。
【実施例】
【0096】
7.0 実施例
7.1 実施例1:モンテカルロシミュレーション(電子ビーム)
高エネルギー電子で車体上のコーティングを硬化するのに必要とされる時間を見積もるために、演算がなされた。特に、ITS3 TIGERモンテカルロコードは、5,7および10MeVの電子ビームで照射された電子吸収材内の深さ−線量分布を演算するために使用された。各ケースでは、鉄の厚さは、一次電子の最大範囲よりも大きいものとした。鉄の表面は、コーティング中のエネルギー堆積(吸収された線量に比例)と鉄中のエネルギー堆積との相違を評価するために、アクリル材料によりカバーするものとした。
【0097】
TIGERコードは、解放された領域を有する平板材料中の一次元線量分布だけを与える。電力データは、大きな平らな表面を照射するために領域スループット率を演算するため、および、吸収材内で吸収された線量の変化を示すために使用される。しかし、異なる形状を有する有限平板または対象物の端部の線量変化は、該コードを用いて評価できない。そのような三次元演算は、ITS3 ACCESSモンテカルロコード(すなわち、照射安全情報計算センターから利用可能な、連結された電子/陽子モンテカルロ伝送コードのCCC−467/ITS3コードパッケージ、統合されたTIGERシリーズ)により可能である。3つのモンテカルロ演算が、厚い鉄吸収材への5,7および10MeVの電子投射により実行された。入力データを簡易化するために、鋼の代わりに鉄が指定された。鋼と鉄との相違は、これらの演算では無視できる。50ミクロンのチタン電子ビーム照射口は、当該照射口と鉄吸収材との間の100cmの空間に沿って含まれる。ビーム照射口で付与される電子エネルギーおよび空隙は、これらの入力エネルギーでは無視でき、これらは、結果を変更することなく演算から削除できる。
【0098】
ビーム照射口および空間は、単一の区画(層)として設計される。鉄中の深さ−線量分布を示すために、50ミクロンのアクリルコーティングは、2つの区画に細分され、一方、厚い鉄吸収材は、それぞれ厚さ0.2mmの複数の区分に細分される。これらの演算は、有機コーティングと鉄吸収材との間で、より高い線量が予想されることを裏付ける。各モンテカルロ演算は、500,000個の電子の履歴を含む。実行時間は、1.7GHzペンティアム4プロセッサを搭載したパソコンを用いて、およそ21〜37分に及んだ。
【0099】
ITS3 TIGER出力データファイルは、吸収素材の各区画中における電子ごとにエネルギー堆積を、MeV cm/g単位、または、単位領域密度g/cm当りのMeVという単位で与える。各区画の出入口の深さは、その材料中で深さZを最大電子範囲Rで除算した無次元率Z/Rとして、また、体積密度g/cmに厚さcmを乗算した領域密度単位g/cmとして与えられる。モンテカルロ演算の結果は、部分的に、図4、5および6にプロットされる。生データは、下記に示される:
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
これらの深さ−線量分布は、等しい入出線量に対する鉄の厚さが5MeVで1.8mm、7MeVで2.8mm、10MeVで4.2mmであることを示す。鉄の体積密度は、7.89g/cmであるので、均一な面密度は、5MeVで1.4g/cm、7MeVで2.2g/cm、10MeVで3.3g/cmである。エネルギー堆積の初期上昇は、鉄に含まれる活動的な二次電子の生成によって起こる。際立った深さでのエネルギー堆積の減少は、一次および二次電子エネルギーの枯渇によって起こる。
【0104】
鉄中の電子エネルギー堆積の値は、鉄の深さを0.2mmずつ増加させて、表1、2および3の第2列に示される。表面値に対する深さ値の割合は、第3列に示される。エネルギー堆積は、5MeVでおよそ1.0mm、7MeVでおよそ1.4mm、10MeVでおよそ2.4mmの最大値に到達する。表面値に対する最大値の割合は、5MeVでおよそ1.57、7MeVでおよそ1.66、10MeVでおよそ1.67である。
【0105】
車両部品の有機コーティングは、鉄吸収材よりも高い電子阻止能を持つ。その阻止能は、素材の区画を通り抜ける際に電子から付与されたMeVのエネルギーとして定義される。したがって、鉄の表面と同じ電子フルエンスが浴びせられるコーティング中のエネルギー堆積は、第1の鉄区域中のエネルギー堆積よりも高いに違いない。両素材中の二次電子平衡を前提とすると、それらの表面のエネルギー堆積の割合は、それらの電子阻止能の割合と同じである。
【0106】
50ミクロンコーティングは、ポリメチルメタクリレートと似た阻止能を有するアクリル酸樹脂であると仮定される。鉄中の電子阻止能に対するポリマー中の電子阻止能の割合は、該割合が電子エネルギーの増加に伴いわずかに増加するけれども、ほぼ電子エネルギーと無関係である。理論的な阻止能の割合は、5MeVで1.31、7MeVで1.30、10MeVで1.29である。図4、5および6に示されるモンテカルロデータから得られた、計算された表面エネルギー堆積の割合は、5MeVで1.24、7MeVで1.28、10MeVで1.30である。コーティング中のより高いエネルギー堆積は、理論的な期待値と一致する。
【0107】
テーブルの第6列に示される領域スループットの割合は、以下の方程式により計算される:
A/T=KT/D
ここで、A/TはM/分単位の領域スループットであり、IはmA単位の電子ビーム電流であり、DはkGy単位の吸収線量である。電子ビーム電力は、各ケースで200kWが想定された。したがって、電子ビーム電流は、5MeVで40mA、7MeVで28.6mA、10MeVで20mAであった。コーティング中の吸収線量は40kGyが想定された。
【0108】
要素KはkGy m/mAの領域処理係数であり、MeV cm/gのエネルギー堆積の6倍に等しい。鉄のKの値は、テーブルの第4列に示される。第5列に示されるコーティングのためのK要素は、鉄のK要素に、それぞれ、テーブル1の1.24を乗算して、テーブル2の1.28を乗算して、テーブル3の1.30を乗算して得られる。モンテカルロ演算(既述の説明参照)から得られる鉄のエネルギー堆積に対するポリメチルメタクリレートのエネルギー堆積の割合の値がある。第6列の領域スループットの割合は、アクリルコーティングのためのより高いK要素に基づく。
【0109】
第7列に示されるラインスピードは、2mと想定されたコンベア幅で除算された領域スループットである。第8列に示される車体硬化率は、5mと想定された車体ごとに、コンベアの長さでラインスピードを除算した値である。車体ごとの硬化時間は、車体硬化率の逆数である。
【0110】
鉄表面のコーティング中のエネルギー堆積に基づいて、車体ごとの硬化時間は、5MeVでビーム電流40mAで約0.72分、7MeVで28.6mAで約1.01分、10MeVで20mAで約1.64分であり、コーティング中の吸収線量が40kGyと想定され、一方向から一つの加速器を用いた処理と想定された。硬化時間は、均等な入出線量のための厚みよりも大きな鉄の厚みを通じて線量が供給される場合、一層長くなる。
【0111】
一方、硬化時間は線量に対して直接比例するので、硬化時間は、要求された線量がより低い場合に短くなる。たとえば、線量が演算に用いられた40kGyの代わりに20kGyに減少されうる場合、テーブルに記入された硬化時間は半減される。また、2つの電子加速器により両側から車体が照射された場合、硬化時間はほぼ半減し、線量分布の均一性が向上する。これらのモンテカルロシミュレーションに基づいて、車体のような複雑な鋼構造物上の有機コーティングが、高エネルギー電子の照射によって硬化される。この技術を用いてさまざまな利点があり、たとえば、従来の熱効果に比べて、より短い硬化時間、より低い電力コストおよびより低い主要コストである。
【0112】
7.2 実施例2:モンテカルロシミュレーション(X線)
高エネルギーX線を用いて車体上のコーティングを硬化するのに必要とされる時間を見積もるために、類似の演算がなされた。その結果は、一般的な目標組立体上に5、6、7MeV電子によって生成されたX線を用いて厚い鉄吸収材中の深さ−線量分布を演算するために、ITS3 TIGERモンテカルロコードを用いて得られた。想定された目標構造体は、加速器からの全一次電子を停止するのに十分な厚さであった。電子深さ−線量分布のX線“バックグラウンド”は、目標物を超えて目標物から電子吸収材まで広がった。深さ−線量分布の残りの“テイル”は、この報告のために必要なデータを提供した。
【0113】
最初に、典型的なX線目標物上に、5、6および7MeV電子により三つのモンテカルロ演算がなされた。想定された目標物素材は、1.2mmタンタルコンバータ板、冷却水の2mmチャネルおよび2mmステンレス鋼受け板を含む。もう一度、鉄は、入力データを簡略化するために鋼の代わりに特定される。50ミクロンのチタン電子ビーム照射口は、該照射口と目標物との間の15cmの空隙に沿って含まれる。他の100cmの空間は、X線目標物と5cmの厚さに想定された鉄吸収材との間に含まれた。ビーム照射口および空隙内に堆積された電子エネルギーは、これらの入力エネルギーにおいては無視でき、これらは結論を変えることなく演算から削除される。X線の減衰を示すために鉄吸収材が各1mm厚さの50個の区画に分割されている一方で、鉄吸収材を除いて全素材は、エネルギー堆積を演算するために単一区画(層)に指定された。
【0114】
想定された目標物構造体が5および6MeVでは全1次電子を停止できるだけ十分に厚く、7MeVでは十分でなかったことが、最初の演算で示された。結果として、7MeVで全一次電子を停止するのに十分な1.4mm厚のタンタルコンバータ板を用いて、7MeVにおける他の演算がなされた。鉄吸収材の表面上の50ミクロンアクリルコーティングを用いて7MeVでの第5の演算が行われた。これは、鉄吸収材と対比して有機コーティング中のより高い線量の予想を裏付ける。各モンテカルロ演算は、500,000電子の履歴を有する。1.7GHzペンティアム4プロセッサを搭載したパソコンを用いて、それぞれの実行には、約75分かかった。これらのモンテカルロ演算の結果は、図7、8、9、10および11に部分的に示される。縦軸の目盛りは、電子深さ−線量分布のX線“テイル”を強調するために、拡張されており、切り取られている。生データは、下記の通りである:
【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
目標物材料内の電子エネルギー堆積の値は、外部の鉄吸収材中のX線エネルギー堆積よりも約100倍高い。目標物中の最大電子エネルギー堆積がこれらの図表に示される場合、鉄吸収材中のX線エネルギー堆積はほとんど目立たない。図7、8および10のグラフ、およびテーブル4、5および6中のデータを比較すると、外部の鉄吸収材の第1区画の電子ごとのX線エネルギー堆積がX線目標物上の電子エネルギー投射に伴って増加していることを示す。入射口の値は、5MeVで0.0218から、6MeVで0.0320へ、さらに7MeVで0.0418へ増加している。5から7MeVまでの増加は、1.92の割合であり、初期電子エネルギーの2乗の割合、つまり(7/5)=49/25=1.96とほぼ等しい。この結果は、照射されたX線電力が電子エネルギーの2乗と電子ビーム電流との乗算として増加するという実際的な規則と一致する。ビーム電流が一定の場合、X線照射は、電子エネルギーの2乗として増加する。一方、ビーム電力(エネルギー×電流)が一定で、ビーム電流が電子エネルギーの増加として増加する場合、X線照射は、電子エネルギーの最初の電力としてだけ増加する。
【0119】
図9および10のグラフを比較すると、外部鉄吸収材の第1区画中の電子ごとのエネルギー堆積は、薄いタンタル目標物を伴う方がとても高いことがわかる。図9における第1および第2鉄区画間のより大きな減衰は、第1鉄区画中の追加的なエネルギー堆積が目標物からの低エネルギー電子から来ており、該低エネルギー電子が鉄の最初の1ミリメートル中で停止されていることを示す。この効果は、より厚いタンタル目標板を有する図10では明らかではない。
【0120】
車体部品上の有機コーティングは、鉄吸収材よりも高い電子阻止能を有する。したがって、鉄と同じ二次電子影響を示すコーティング中のエネルギー堆積は、鉄の電子阻止能の割合にしたがって、鉄中のエネルギー堆積よりも高い。阻止能は、面密度1g/cmの材料の区画を通り抜ける際に電子により付与されるMeVのエネルギーとして定義される。
【0121】
再度、コーティングは、ポリメチルメタクリレートの阻止能と同等のアクリル酸材料に想定されている。電子阻止能率はわずかに電子エネルギー増加に伴って増加するけれども、電子阻止能率はほぼ電子エネルギーと関係ない。目標物による制動放射陽子の最も有望なエネルギーを含む0.2〜0.5MeVのエネルギー範囲では、阻止能率はおよそ1.4である。コーティングのより高いエネルギー堆積は、鉄吸収材上の50ミクロンアクリルコーティングを想定して演算された図11に示すデータによって確認される。コーティングの第1区画のエネルギー堆積は0.0585であり、鉄の第1区画のエネルギー堆積は0.0420である。これらの値の比率は、1.39である。図7、8および10の減衰カーブは、電子領域からX線領域まで滑らかな推移を示す。これは、外部鉄吸収材の表面の線量がこの材料内の指数関数型減弱と一致することを意味する。
高エネルギー陽子の平行ビームを起こす表面−線量集積効果はない。
【0122】
5、6および7MeV電子を用いたモンテカルロ演算から得られた鉄へのX線エネルギー堆積値は、鉄の1mmずつの深さ増加に伴って、テーブル4、5および6の第2列に示される。表面値に対する深さ値の割合は、第3列に示される。テーブル6の7MeVデータにとって、鉄の最初の1ミリメーターの減衰はおよそ7.5%である。半値深さは、14mm鉄についてのテーブル1および2の、5および6MeVデータとほぼ同じである。15.5mm鉄の7MeVデータにとっての半値深さは、わずかに、より大きい。
【0123】
領域スループット率は、次の方程式により演算され、第6列に示される。
【0124】
A/T=KI/D
ここで、A/Tは領域スループット率であり単位m/分で示され、Iは電子ビーム電流で単位mAで示され、Dは吸収線量で単位kGyで示される。製品コンベアの領域を上から走査することによって、ビーム電流のいかなる損失に対しても、堆積されない。電子ビーム電流は、100mAに想定され、コーティング内の吸収線量は40kGyに想定された。
【0125】
K要素は、領域処理係数であり、単位kGy m=/mA 分で示され、MeV cm/g単位のエネルギー堆積の6倍に等しい。鉄のKの値は、第4列に示される。コーティングためのK要素は、テーブルの第5列に示され、鉄のK要素に1.4倍を乗算することによって得られる。ここで、1.4とは、鉄に対するポリメチルメタクリレートの阻止能の割合として適切な値である。第6列の領域スループット率は、アクリルコーティングのためのより高いK要素に基づく。
【0126】
第7列に示されるラインスピードは、領域スループット率を2mと想定されたコンベア幅で除算したものである。第8列に示される車体硬化率は、ラインスピードを5mと想定される車体ごとのコンベア長さで除算したものである。車体ごとの硬化時間は、車体硬化率の逆数である。
【0127】
最短の硬化時間は、最高のX線エネルギーを用いて得られる。コーティングされた鉄の表面のエネルギー堆積に基づいて、目標物上に100mAの電子ビーム電流を有し、コーティング内に40kGyの吸収線量を有する7MeVのX線を使用することにって、車体ごとの硬化時間が約11分となる。テーブルに示されるように、鉄の数ミリメートルを通じて線量が運ばれる場合、硬化時間は、わずかに長くなる。
【0128】
一方、硬化時間が線量に直接比例するので、必要な線量が低い場合、硬化時間が短くなる。たとえば、想定された40kGyの値の代わりに20kGyまで線量が低減された場合、テーブルに表された硬化時間は半減される。また、車体が両側から2つの加速器により照射された場合、硬化時間はほぼ半減し、線量分布の均一性が向上される。
【0129】
モンテカルロシミュレーションは、車体のような複雑な鋼構造体上の有機コーティングが高エネルギーX線で照射されることによって硬化されることを示す。この種のエネルギーを使用する主な利点は、比較的低い線量均整度が単純な製品コンベアシステムで達成できることである。車体ごとのX線硬化時間は、電子ビーム電流が同じと仮定すると、高エネルギー電子を用いた照射による硬化時間よりも長い。なぜなら、投射する電子ビーム電力を放射するX線電力に変換するための効率が比較的低いからである。
【0130】
7.3 実施例3:コーティングされた板と板スタックの電子ビーム処理
従来の電子コーティングおよび下塗で前処理された15枚のスチール板(4”×12”)が電子ビーム硬化性色素(銀)基礎コーティングでスプレー塗装された。この基礎コーティングの後、全15枚の塗装された板は、従来の透明コーティングによりスプレー塗装された。これらの板のうち5枚は、10kGyから50kGyまで値を増加させて、標準の運搬用トレーを用いて、高エネルギー電子ビーム照射装置(8kW、12MeV)で個々に処理された。基礎コーティングおよび下塗を含む残りの10枚の板は、5枚の板からなる2つのスタックに組み立てられ、30kGyおよび40kGyで処理された。図12に図示されるように、各板スタック1200は、角の穴1220を通じて互いにボルト締結され、スペーサ1230(厚さ0.25インチ)によって互いに分離された個々の板1210からなる。加えて、電子コーティングでコーティングされた単一の板、および電子コーティングおよび下塗でコーティングされた単一の板が、単に10kGyから50kGyまでの増分で処理された。
【0131】
各経過の後、コーティングの硬さが検査された。この実験の生データは、以下に示す通りである。
【0132】
【表7】

【0133】
上述のように、10kGyの第1のパス(13:58)の後、全板は、いまだ湿っており、基礎コーティングも透明コーティングも簡単にふき取られた。20kGyの第2のパス(14:14)の後、基礎コーティングは乾いたが、透明コーティングは未だ湿っていた。これは、30kGyの第3のパス、40kGyの第4のパス(14:30)および50kGyの第5のパス(14:38)の後でも残っていた。基礎コーティングおよび透明コーティングでコーティングされていないいかなる板においても明らかな変化はなかった。温度の重要な変化はなかった−その50kGy板は触ると暖かかった。コーティングされた板のスタックは、30kGyの第3のパス(14:21)および40kGyの第4のパス(14:30)で処理された。全基礎コーティングは硬化された。
【0134】
この実験に基づいて、電子ビーム硬化性基礎コーティングを硬化するために複数の鋼板を侵入するために、高エネルギー電子ビームが使用可能であることが立証された。侵入度は、車体の陰に隠れたコーティングを硬化するのに必要な侵入度と同一である。したがって、高エネルギー電子ビームは、電子ビーム硬化性基礎コーティングを硬化するために車体の陰に侵入するために使用可能である。電子ビーム硬化性透明コーティングと共に電子ビームまたはX線硬化性基礎コーティングを採用することによって、基礎コーティングおよび透明コーティングは、同時に硬化されることに留意しなければならない。
【0135】
7.4 実施例3:板スタック中のコーティングされた板の電子ビーム処理
車両用金属下塗は、6インチ×6インチの亜鉛メッキされた鋼板13枚の両側に加えられた。図12を再び参照すると、各板1210は、0.8mm(1/32インチ)の厚みを有する。直径0.25インチの一つの穴1220は、各穴1220の中心が最も近い角から0.5インチとなるように、各板1210の各角をドリル穴開けされて形成される。
【0136】
13:00から始まって、13枚の下塗された各板1210の一側に基礎コーティングを加えるためにアルミニウムのスプレッダーが使用された。基礎コーティングは、B95−0002U(以前はS26992)という名前で販売され、陽イオン、ブラック、脂環式のエポキシ製剤として識別される商品をStrathmore(ニューヨーク)から購入した。13枚の下塗およびコーティングされた各板1210は、板スタック1200を形成するために、厚さ0.25インチのスペーサ1230により各板1210間に1/4インチの空隙分離されて、次々と上に積み重ねられ、ボルト締結された。全塗装および積層過程には35分が費やされた。
【0137】
14:10から、12MeV電子加速器によって生成された電子ビームの最初の通過によって、板スタック1200が照射された。与えられた表面線量は、40kGyであった。14:16、板スタック1210中の板1210が解析された。下から4枚の板1210が未だ湿っている一方で、上から9枚目の板1210までは硬化したと判断された。14:25、板スタック1200が、ひっくり返され、40kGyの表面で第2時間だけ照射された。14:33、板スタック1200中の板1210が、再び解析された。全板1210は硬化したと判断された。翌日の7:30、板1210が、再び解析された。全プレート1210は完全な硬化、光沢および非常に硬い仕上がりを有していた。
【0138】
この実験は、複数の鋼板を侵入し、電子ビーム硬化性基礎コーティングを硬化するために、高エネルギー電子ビームが使用され得ることをさらに確認した。設計によって車体ごとに要求される侵入度は変化する。相当密度に厚さ0.8mmの鋼板の13枚分の厚みを乗算したものを超える侵入度が要求される場合、要求された侵入度が達成されるように、2以上の電子ビーム源を戦略的に配置することによって、さらなる侵入度が達成されうる。したがって、高エネルギー電子ビームは、電子ビーム硬化性基礎コーティングを硬化するために車体の陰に侵入するために使用される。
【0139】
8.0 むすび
8.1 参照による組み込み
本明細書で言及された全ての公報、特許および特許出願は、各個別の公報、特許または特許出願が参照により組み込まれるために特別におよび個別に指定されたのと同じ範囲で、ここに組み込まれる。ここで引用されたいかなる参照も従来技術としての自白を形成するものではない。
【0140】
8.2 発明の思想
本発明は今完全に説明され、本発明の思想および範囲から離れることなく多くの変更および変形が加えられることは当業者にとって明らかである。したがって、本発明の範囲は、法によって定義されるように、特許請求の範囲の限定およびそのいかなる均等物によって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1A】本発明に使用される垂直迷路の上面図である。
【図1B】本発明に使用される垂直迷路の側面図である。
【図2A】本発明に使用される垂直および水平迷路の上面図である。
【図2B】本発明に使用される垂直および水平迷路の側面図である。
【図3A】本発明に使用される水平迷路の上面図である。
【図3B】本発明に使用される水平迷路の側面図である。
【図4】50ミクロンのアクリルコーティングでコーティングされた鉄への5MeVの電子エネルギー堆積を示すグラフである。
【図5】50ミクロンのアクリルコーティングでコーティングされた鉄への7MeVの電子エネルギー堆積を示すグラフである。
【図6】50ミクロンのアクリルコーティングでコーティングされた鉄への10MeVの電子エネルギー堆積を示すグラフである。
【図7】1.2mmタンタル目標物を用いた鉄への5MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【図8】1.2mmタンタル目標物を用いた鉄への6MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【図9】1.2mmタンタル目標物を用いた鉄への7MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【図10】1.4mmタンタル目標物を用いた鉄への7MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【図11】50ミクロンのアクリルコーティングでコーティングされた鉄への7MeVのX線エネルギー堆積を示すグラフである。
【図12】鋼板スタックおよび拡大された鋼板の角を示す図である。
【符号の説明】
【0142】
1200 各板スタック、
1210 個々の板、
1220 角の穴、
1230 スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上の1以上のコーティングを硬化する方法であって、
(i) 少なくとも1の電子ビーム硬化性コーティングで前記車体をコーティングし、
(ii) 1以上の中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビーム中に、前記車体を1回以上通過する方法。
【請求項2】
前記車体は、1以上の高電力、高エネルギー電子ビームの中に、1回以上通過される請求項1の方法。
【請求項3】
前記車体は、連続的なコンベアシステムによって移動され、前記車体の両側から1以上の加速器によって生成される中〜高エネルギー電子ビームを供給する複数の電子ビーム走査部を有するヴォールト(vault)を通過する請求項1の方法。
【請求項4】
前記車体は、複数回前記ヴォールトを通過する請求項3の方法。
【請求項5】
単一の電子ビーム加速器および走査部が用いられ、前記車体がヴォールトを通過する際に前記車体が前記ビームの方を向くように、連続したコンベアが前記車体を傾ける請求項1の方法。
【請求項6】
前記車体はヴォールトを複数回通過する請求項5の方法。
【請求項7】
前記車体は、電子コーティング、下塗、基礎コーティングおよび透明コーティングでコーティングされる請求項1の方法。
【請求項8】
前記基礎コーティングは電子ビーム硬化性コーティングである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記電子ビーム硬化性コーティングは、不飽和オリゴマーまたはポリマーである請求項1の方法。
【請求項10】
前記ビーム硬化性コーティングは、アクリル酸機能オリゴマーまたはポリマーである請求項9記載の方法。
【請求項11】
車体上の1以上のコーティングを硬化するための方法であって、
(i) 少なくとも1のX線硬化性コーティングで前記車体をコーティングし、
(ii) 中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームを金属目標物に衝突させて生成される1以上のX線照射野中に、前記車体を1回以上通過する方法。
【請求項12】
前記車体は、高電力、高エネルギー電子ビームを金属目標物に衝突させて生成される1以上のX線照射野(fields)中に、1回以上通過される請求項11の方法。
【請求項13】
前記車体は、コンベアによって移動され、単一のX線照射野中に当該車体が浸漬されるヴォールト内を通過する請求項11の方法。
【請求項14】
前記車体は、複数回前記ヴォールトを通過する請求項13の方法。
【請求項15】
前記車体は、コンベアによって移動され、複数のX線照射野中に当該車体が浸漬されるヴォールトを通過する請求項11の方法。
【請求項16】
前記車体は、複数回前記ヴォールトを通過する請求項15の方法。
【請求項17】
前記車体は、電子コーティング、下塗、基礎コーティングおよび透明コーティングでコーティングされる請求項11の方法。
【請求項18】
前記基礎コーティングはX線硬化性コーティングである請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記X線硬化性コーティングは、不飽和オリゴマーまたはポリマーである請求項11の方法。
【請求項20】
前記X線硬化性コーティングは、アクリル酸機能オリゴマーまたはポリマーである請求項19記載の方法。
【請求項21】
折り曲げ、折り重なり、湾曲されて三次元構造体にされたシート素材から形成される対象物上の1以上のコーティングを硬化する方法であって、
(i) 少なくとも1の電子またはX線硬化性コーティングで前記対象物をコーティングし、
(ii) 中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームまたはX線照射野中に、前記対象物を1回以上通過し、ここで、前記ビームまたは照射野の視野方向外部のコーティングの領域を硬化するために、少なくとも1の電子ビームおよび/またはX線照射野が複数層の前記シート素材を通じて侵入可能である。
【請求項22】
前記シート素材は、少なくとも0.4mmの鋼の相当面密度を有する請求項21の方法。
【請求項23】
前記シート素材は、鋼板である請求項22の方法。
【請求項24】
(i) 折り曲げ、折り重なり、湾曲されて三次元構造体にされたシート素材から形成され、1以上の電子ビームまたはX線硬化性コーティングによりコーティングされた1以上の対象物と、
(ii) 電子ビームおよび/またはX線照射野中に、1以上の前記対象物を通過させるコンベアシステムと、
(iii) 前記ビームまたは照射野の視野方向上にないコーティング領域を硬化するために、多数層の前記シート素材を通じて侵入可能な1以上の中〜高電力、中〜高エネルギー電子ビームおよび/またはX線照射野を生成可能な1以上の加速器と、
いう構成要素を含む設備。
【請求項25】
前記シート素材は、少なくとも0.4mmの鋼の相当面密度を有する請求項24の設備。
【請求項26】
シート素材は鋼板である請求項25の設備。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−502695(P2007−502695A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521915(P2006−521915)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/023519
【国際公開番号】WO2005/013288
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ペンティアム
【出願人】(506035566)イオンビーム アプリケーションズ, エス.エー. (5)
【Fターム(参考)】