説明

高メルトフローのプロピレン耐衝撃コポリマー及び方法

本開示は、メルトフローが大きいプロピレン耐衝撃コポリマーを製造するための重合方法を提供する。本発明の方法は、約100g/10分を超えるメルトフローレートを有する活性なプロピレン系ポリマーを重合リアクターにおいて1つ又はそれ以上のオレフィンと接触させて、約60g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。本発明の高メルトフローのプロピレン耐衝撃コポリマーの製造を、標準的な水素濃度を利用して、また、ビスブレーキング(visbreaking)を何ら利用することなく、1つ又はそれ以上の重合リアクターにおいて行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年8月24日出願の米国仮特許出願第60/957,888号の優先権を主張する2008年8月21日出願の国際特許出願番号PCT/US2008/073882の一部継続出願であり、それぞれの出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
より高性能なポリマーを必要とすることが拡大し続けるので、大きいメルトフローを有するプロピレン耐衝撃ポリマーに対する要求が増え続けている。リアクター内のプロピレン耐衝撃コポリマーは、重合を介して製造されるコポリマーであり、例えば、ビスブレーキング(visbreaking)を含まない。高メルトフローのプロピレン耐衝撃ポリマーを直接に重合によって製造することは困難である。従来の重合触媒では典型的に、非常に高い水素濃度の使用が、最終的なプロピレン耐衝撃コポリマーのメルトフローよりも大きいメルトフローを有するマトリックス相ポリマーの形成のために要求される。多くの場合において、高い水素濃度の供給は、リアクターの操作性限界、安全性の問題、及び/又は、経済的な考慮のために可能でない。
【0003】
高メルトフローのプロピレン耐衝撃ポリマーを製造するための重合方法が望ましい。大きい衝撃強さを有する高メルトフローのプロピレン耐衝撃ポリマーを製造するための方法がさらに望まれる。方法中断の危険性が低下しているか、又は、方法中断の危険性が全くない、大きい衝撃強さを有する高メルトフローのプロピレン耐衝撃ポリマーを製造するための方法がさらに望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、大きいメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを製造するための重合方法を提供する。本発明の高メルトフローのプロピレン耐衝撃コポリマーはまた、大きい衝撃強さを有することができる。本発明の方法はリアクター内方法であり、ビスブレーキングを含まない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態において、重合方法が提供される。本発明の重合方法は、活性なプロピレン系ポリマーを第1の重合リアクターにおいて気相重合すること、又は、気相重合を介して、活性なプロピレン系ポリマーを第1の重合リアクターにおいて形成することを含む。前記活性なプロピレン系ポリマーは、ASTM D1238−01(230℃、2.16kg)に従って測定されるときに約100g/10分を超えるメルトフローレートを有する。本発明の方法は、前記活性なプロピレン系ポリマーを第2の重合リアクターに導入することを含む。第2のリアクターにおいて、前記プロピレン系ポリマーが重合条件下で少なくとも1つのオレフィンと接触させられる。本発明の方法はさらに、約60g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。
【0006】
1つの実施形態において、上記方法は、0.3未満のH/Cのモル比を一方のリアクター又は両方のリアクターにおいて維持することを含む。
【0007】
1つの実施形態において、上記方法は、約65μg/g未満の揮発物含有量を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。揮発物含有量がVW標準法PV3341に従って測定される。
【0008】
本開示は別の方法を提供する。1つの実施形態において、少なくとも1つのオレフィンを、重合条件下、リアクターにおいて、活性なプロピレン系ポリマーと接触させることを含む重合方法が提供される。前記活性なプロピレン系ポリマーは、約100g/10分を超えるメルトフローレートを有する。本発明の方法はさらに、約85g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。
【0009】
1つの実施形態において、重合リアクターは気相重合リアクターである。
【0010】
1つの実施形態において、上記方法は、H/Cのモル比を0.20未満でリアクターにおいて維持することを含む。
【0011】
1つの実施形態において、上記方法は、約65μg/g未満の揮発物含有量を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。
【0012】
本開示は組成物を提供する。1つの実施形態において、約100g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン系ポリマー、及び、前記プロピレン系ポリマー内に分散されるプロピレン/エチレン コポリマーを含むプロピレン耐衝撃コポリマーが提供される。本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーは、約5wt%〜約50wt%のFc値及び約20wt%〜約90wt%のEc値を有する。本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーは、約60g/10分を超えるメルトフローレートを有する。
【0013】
本開示の利点が、プロピレン耐衝撃コポリマーを製造するための改善された方法の提供であり、特に、高メルトフローのプロピレン耐衝撃コポリマーを製造するための改善された方法の提供である。
【0014】
本開示の利点が、改善されたプロピレン耐衝撃コポリマーの提供である。
【0015】
本開示の利点が、大きいメルトフローを有する、クラッキングを受けていないプロピレン耐衝撃コポリマーの提供である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つの実施形態において、重合方法が提供される。本発明の重合方法は、約100g/10分を超えるメルトフローレート(MFR)を有する活性なプロピレン系ポリマーを気相重合すること(又は、気相重合を介して形成すること)を含む。MFRが、ASTM D1238−01(230℃、2.16kg)に従って測定される。活性なプロピレン系ポリマーが、重合(すなわち、気相重合)条件下、第1の重合リアクターにおいて形成される。本発明の方法は、活性なプロピレン系ポリマーを、活性なプロピレン系ポリマーが重合条件下でプロピレン以外の少なくとも1つのオレフィンと接触させられる第2の重合リアクターに導入することを含む。本発明の方法はさらに、約60g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。
【0017】
本明細書中で使用される「活性なポリマー」は、重合条件下でオレフィンにさらされたときにさらに重合することができる、所定量の活性な触媒を(典型的には埋め込まれて)含有するポリマーである。1つの実施形態において、活性なプロピレン系ポリマーに埋め込まれる活性な触媒は、プロ触媒組成物、助触媒及び混合された外部電子供与体(M−EED)を含む自己制限性の触媒組成物である。M−EEDは、第1の選択性制御剤(SCA1)、第2の選択性制御剤(SCA2)及び活性制限剤(ALA)を含む。M−EEDは3つ以上のSCA及び/又は2つ以上のALAを含み得ることが理解される。
【0018】
本発明のプロ触媒組成物はチーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物であり得る。従来のチーグラー・ナッタ型プロ触媒はどれも、本発明の触媒組成物において使用することができる。1つの実施形態において、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は遷移金属化合物及び第2族金属化合物を含有する。遷移金属化合物は、遷移金属化合物に由来する固体の錯体であり得る。例えば、遷移金属化合物は、チタン、ジルコニウム、クロム又はバナジウムのヒドロカルビルオキシド化合物、ヒドロカルビル化合物、ハリド(ハロゲン化物)化合物又はそれらの混合物に由来する固体の錯体であり得る。
【0019】
遷移金属化合物は一般式TrXを有し、但し、式中、Trは遷移金属であり、Xはハロゲン或いはC1−10のヒドロカルボキシル基又はヒドロカルビル基であり、xは、第2族金属化合物との組合せでの本化合物におけるそのようなX基の数である。Trは、第4族又は第5族又は第6族の金属であり得る。1つの実施形態において、Trは第4族の金属であり、例えば、チタンなどである。Xは、クロリド、ブロミド、C1−4アルコキシド又はフェノキシド、或いは、それらの混合であり得る。1つの実施形態において、Xはクロリドである。
【0020】
チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物を形成するために使用することができる好適な遷移金属化合物の限定されない例が、TiCl、ZrCl、HfCl、TiBr、TiCl、Ti(OCCl、Zr(OCCl、Ti(OCBr、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Zr(OCCl及びTi(OC)Clである。そのような遷移金属化合物の混合物も同様に使用することができる。少なくとも1つの遷移金属化合物が存在する限り、遷移金属化合物の数に対する制限は何らない。1つの実施形態において、遷移金属化合物はチタン化合物である。
【0021】
好適な第2族金属化合物の限定されない例には、ハロゲン化マグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハリド、マグネシウムオキシハリド、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及び、マグネシウムのカルボン酸塩が含まれる。1つの実施形態において、第2族金属化合物はマグネシウムジクロリドである。
【0022】
1つの実施形態において、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は、マグネシウム化合物に担持されるか、又は、そうでない場合にはマグネシウム化合物に由来するチタン成分の混合物である。好適なマグネシウム化合物には、無水塩化マグネシウム、塩化マグネシウム付加物、マグネシウムジアルコキシド又はマグネシウムアリールオキシド、或いは、カルボン酸化されたマグネシウムジアルコキシド又はマグネシウムアリールオキシドが含まれる。1つの実施形態において、マグネシウム化合物はマグネシウムジ(C1−4)アルコキシドであり、例えば、ジエトキシマグネシウムなどである。
【0023】
好適なチタン成分の限定されない例には、チタンアルコキシド、チタンアリールオキシド及び/又はハロゲン化チタンが含まれる。チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物を調製するために使用される化合物には、1つ又はそれ以上のマグネシウムジ(C1−4)アルコキシド、マグネシウムジハリド、マグネシウムアルコキシハリド、或いは、それらの混合物、及び、1つ又はそれ以上のチタンテトラ(C1−4)アルコキシド、四ハロゲン化チタン、チタン(C1−4)アルコキシドハリド、或いは、それらの混合物が含まれる。
【0024】
前駆体組成物を、当分野では一般に公知であるように、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物を調製するために使用することができる。前駆体組成物は、前述の混合されたマグネシウム化合物、チタン化合物又はそれらの混合物の塩素化によって調製することができ、また、固体/固体メタセシスによる特定の組成物の形成又は可溶化を助ける、「クリッピング剤」と呼ばれる1つ又はそれ以上の化合物の使用を伴うことがある。好適なクリッピング剤の限定されない例には、トリアルキルボラート(特に、トリエチルボラート)、フェノール性化合物(特に、クレゾール)及びシランが含まれる。
【0025】
1つの実施形態において、前駆体組成物は式MgTi(ORの混合マグネシウム/チタン化合物であり、但し、式中、Rは、1個〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基、或いは、COR’(式中、R’は、1個〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である)である;それぞれのOR基は同じであるか、又は異なる;Xは独立して、塩素、臭素又はヨウ素である;dは0.5〜56であり、又は、2〜4であり、又は、3である;fは2〜116であり、又は、5〜15である;gは0.5〜116であり、又は、1〜3であり、又は、2である。前駆体は、その調製で使用される反応混合物からアルコールを除くことによる制御された沈殿化によって調製することができる。1つの実施形態において、反応媒体は、芳香族の液体(特に、塩素化芳香族化合物、例えば、クロロベンゼンなど)と、アルカノール(特に、エタノール)及び無機の塩素化剤との混合物を含む。好適な無機の塩素化剤には、ケイ素、アルミニウム及びチタンの塩素誘導体が含まれ、例えば、四塩化チタン又は三塩化チタンなどが含まれ、特に、四塩化チタンが含まれる。塩素化剤により、部分的な塩素化がもたらされ、これにより、比較的高レベルのアルコキシ成分(1つ又はそれ以上)を含有する前駆体が生じる。塩素化において使用される溶液からアルカノールを除くことにより、望ましい形態学及び表面積を有する固体前駆体が沈殿する。前駆体が反応媒体から分離された。その上、得られた前駆体は特に均一な粒子サイズを有しており、また、得られたプロ触媒の崩壊だけでなく、粒子が砕けることに対して抵抗性がある。1つの実施形態において、前駆体組成物はMgTi(OEt)Clである。
【0026】
次に、前駆体は、無機のハロゲン化物化合物(好ましくは、チタンのハロゲン化物化合物)とのさらなる反応(ハロゲン化)及び内部電子供与体の取り込みによって固体のプロ触媒に変換される。十分な量で前駆体に既に取り込まれていないならば、内部電子供与体を、ハロゲン化の前に、又は、ハロゲン化の期間中に、又は、ハロゲン化の後で別個に加えることができる。この手順を場合な場合にはさらなる添加物又は補助物の存在下において1回又はそれ以上繰り返すことができ、そして、最終的な固体生成物を脂肪族の溶媒により洗浄することができる。固体のプロ触媒を作製し、回収し、また、貯蔵するどのような方法も、本開示における使用のために好適である。
【0027】
前駆体をハロゲン化するための1つの好適な方法が、前駆体を必要な場合には炭化水素希釈剤又はハロ炭化水素希釈剤の存在下において四価チタンハロゲン化物と高い温度で反応することによるものである。好ましい四価チタンハロゲン化物が四塩化チタンである。オレフィン重合プロ触媒の製造で用いられる、必要に応じて使用される炭化水素溶媒又はハロ炭化水素溶媒は好ましくは、(12個を含めて)12個までの炭素原子を含有し、又は、(9個を含めて)9個までの炭素原子を含有する。例示的な炭化水素には、ペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン及びデカヒドロナフタレンが含まれる。例示的な脂肪族ハロ炭化水素には、塩化メチレン、臭化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジブロモエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロシクロヘキサン、ジクロロフルオロメタン及びテトラクロロオクタンが含まれる。例示的な芳香族ハロ炭化水素には、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン及びクロロトルエンが含まれる。脂肪族ハロ炭化水素は、少なくとも2つのクロリド置換基を含有する化合物であり得る(例えば、四塩化炭素又は1,1,2−トリクロロエタンなど)。芳香族ハロ炭化水素はクロロベンゼン又はo−クロロトルエンであり得る。
【0028】
ハロゲン化を1回又はそれ以上繰り返すことができ、但し、必要な場合には、不活性な液体(例えば、脂肪族又は芳香族の炭化水素又はハロ炭化水素など)による洗浄を、ハロゲン化と、ハロゲン化との間に、また、ハロゲン化の後に伴う。さらに必要な場合には、不活性な液体希釈剤(特に、脂肪族又は芳香族の炭化水素、或いは、脂肪族又は芳香族のハロ炭化水素)と接触させることを、特に、100℃を超える高い温度で、又は、110℃を超える高い温度で伴う1回又はそれ以上の抽出を、不安定な化学種を除くために、特に、TiClを除くために用いることができる。
【0029】
1つの実施形態において、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は、(i)ジアルコキシマグネシウムを、標準温度において液体である芳香族の炭化水素又はハロ炭化水素に懸濁すること、(ii)前記ジアルコキシマグネシウムをハロゲン化チタンと接触させること、及び、さらには、(iii)得られた組成物を前記ハロゲン化チタンと再度接触させること、並びに、前記ジアルコキシマグネシウムを(ii)における前記ハロゲン化チタンによる処理の期間中のある時点で芳香族ジカルボン酸のジエステルと接触させることによって得られる固体の触媒組成物を含む。
【0030】
1つの実施形態において、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は、(i)式MgTi(OR(前記で記載される通り)の前駆体物質を、標準温度において液体である芳香族の炭化水素又はハロ炭化水素に懸濁すること、(ii)前記前駆体をハロゲン化チタンと接触させること、及び、さらには、(iii)得られた組成物を前記ハロゲン化チタンと再度接触させること、並びに、前記前駆体を(ii)における前記ハロゲン化チタンによる処理の期間中のある時点で芳香族ジカルボン酸のジエステルと接触させることによって得られる固体の触媒組成物を含む。
【0031】
プロ触媒組成物は内部電子供与体を含む。本明細書中で使用される「内部電子供与体」は、プロ触媒組成物の形成の期間中に付加される化合物、又は、そうでない場合には、プロ触媒組成物の形成の期間中に形成される化合物であって、得られたプロ触媒組成物に存在する1つ又はそれ以上の金属に1対の電子を与える化合物である。何らかの特定の理論によってとらわれないが、内部電子供与体は、活性部位の形成を調節することを助け、それにより、触媒の立体選択性を高めることが考えられる。
【0032】
1つの実施形態において、内部電子供与体は二座化合物である。「二座化合物」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも2つの酸素含有官能基を含有し、これらの酸素含有官能基が、ヘテロ原子(1つ又はそれ以上)を場合により含有し得る少なくとも1つの飽和したC−C10炭化水素鎖によって隔てられる化合物である。二座化合物は、フタラート、ジエーテル、スクシナート、フェニレンジベンゾアート、マレアート、マロナート、グルタラート、ジアルコキシベンゼン、ビス(アルコキシフェニル)、ジオールエステル、ケトエステル、アルコキシアルキルエステル、ビス(アルコキシアルキル)フルオレン及びそれらの任意の組合せであり得る。
【0033】
1つの実施形態において、内部電子供与体は、ジイソブチルフタラート及び/又はジ−n−ブチルフタラートである。
【0034】
1つの実施形態において、内部電子供与体は9,9−ビス(メトキシメチル)−9H−フルオレンである。
【0035】
1つの実施形態において、内部電子供与体はフェニレンジベンゾアートである。
【0036】
チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物はまた、不活性な担体物質を含むことができる。担体は、遷移金属化合物の触媒性能を有害に変化させない不活性な固体であり得る。例には、金属の酸化物(例えば、アルミナなど)及びメタロイドの酸化物(例えば、シリカなど)が含まれる。
【0037】
本発明の触媒組成物は助触媒を含む。前述のチーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物とともに使用される助触媒がアルミニウム含有組成物であり得る。好適なアルミニウム含有組成物の限定されない例には、有機アルミニウム化合物が含まれ、例えば、1個〜10個の炭素原子又は1個〜6個の炭素原子をそれぞれのアルキル基又はアルコキシド基に含有するトリアルキルアルミニウム化合物、ジアルキルアルミニウムヒドリド化合物、アルキルアルミニウムジヒドリド化合物、ジアルキルアルミニウムハリド化合物、アルキルアルミニウムジハリド化合物、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物及びアルキルアルミニウムジアルコキシド化合物などが含まれる。1つの実施形態において、助触媒はC1−4トリアルキルアルミニウム化合物であり、例えば、トリエチルアルミニウム(TEA又はTEAl)などである。アルミニウム対チタンのモル比が10〜200:1であり、又は、35〜50:1である。1つの実施形態において、アルミニウム対チタンのモル比が45:1である。
【0038】
本発明の触媒組成物は、第1の選択性制御剤(SCA1)と、第2の選択性制御剤(SCA2)と、活性制限剤(ALA)とを含む混合された外部電子供与体(M−EED)を含む。本明細書中で使用される「外部電子供与体」(又は「EED」)は、1対の電子を金属原子に与えることができる少なくとも1つの官能基を含有する、プロ触媒形成とは無関係に添加される化合物である。特定の理論によって何らとらわれないが、触媒組成物における1つ又はそれ以上の外部電子供与体の提供はホルマント(formant)ポリマーの下記の特性に影響を及ぼすことが考えられる:タクチシティー(すなわち、キシレン可溶物)のレベル、分子量(すなわち、メルトフロー)、分子量分布(MWD)、融点及び/又はオリゴマーレベル。
【0039】
SCAのための好適な化合物の限定されない例には、ケイ素化合物、例えば、アルコキシシランなど;エーテル及びポリエーテル、例えば、アルキルエーテル及び/又はアルキルポリエーテル、シクロアルキルエーテル及び/又はシクロアルキルポリエーテル、アリールエーテル及び/又はアリールポリエーテル、混合アルキル/アリールエーテル及び/又は混合アルキル/アリールポリエーテル、混合アルキル/シクロアルキルエーテル及び/又は混合アルキル/シクロアルキルポリエーテル、並びに/或いは、混合シクロアルキル/アリールエーテル及び/又は混合シクロアルキル/アリールポリエーテルなど;エステル及びポリエステル、特に、モノカルボン酸又はジカルボン酸(例えば、芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸など)のアルキルエステル、シクロアルキルエステル及び/又はアリールエステルなど;そのようなエステル又はポリエステルのアルキルエーテル誘導体又はシクロアルキルエーテル誘導体又はチオエーテル誘導体、例えば、芳香族モノカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸のアルキルエステル又はアルキルジエステルのアルキルエーテル誘導体など;及び、前記のすべての第15族ヘテロ原子置換誘導体又は第16族ヘテロ原子置換誘導体;並びに、アミン化合物、例えば、環式、脂肪族又は芳香族のアミンなど、より具体的には、ピロール化合物又はピリジン化合物が含まれ、但し、前記SCAのすべてが合計で2個〜60個の炭素を含有し、かつ、1個〜20個の炭素をどのようなアルキル基又はアルキレン基においても含有し、3個〜20個の炭素をどのようなシクロアルキル基又はシクロアルキレン基においても含有し、6個〜20個の炭素をどのようなアリール基又はアリーレン基においても含有する。
【0040】
1つの実施形態において、SCA1及び/SCA2は、下記の一般式(I)を有するシラン組成物である:
SiR(OR’)4−m (I)
【0041】
上記式において、Rは独立してそれぞれが水素であるか、或いは、1つ又はそれ以上の第14族ヘテロ原子、第15族ヘテロ原子、第16族ヘテロ原子又は第17族ヘテロ原子を含有する1つ又はそれ以上の置換基により場合により置換されるヒドロカルビル基又はアミノ基である。Rは、水素及びハロゲンを除いて20個までの原子を含有する。R’はC1−20アルキル基であり、mは、0、1又は2である。1つの実施形態において、Rは、C6−12アリール基、C6−12アルキル基又はC6−12アラルキル基、C3−12シクロアルキル基、C3−12分岐アルキル基、或いは、C3−12環式アミノ基であり、R’はC1−4アルキル基であり、mは1又は2である。
【0042】
1つの実施形態において、SCA1はジメトキシシラン系化合物である。ジメトキシシラン系化合物は、ケイ素原子に直接に結合する少なくとも1つの第二級アルキル基及び/又は1つの第二級アミノ基を含有することができる。好適なジメトキシシラン系化合物の限定されない例には、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン及び前記化合物の任意の組合せが含まれる。
【0043】
1つの実施形態において、SCA1は剛性促進組成物である。「剛性促進組成物」は、本明細書中で使用される場合、本開示の方法条件に従う操作を別にすれば、得られたポリマーの剛性を目的とする重合条件のもとで増大させるか、又は、そうでない場合には高める組成物である。好適な剛性促進組成物の限定されない例には、上記において開示されるジメトキシシラン系化合物のいずれもが含まれる。
【0044】
1つの実施形態において、SCA1はジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0045】
1つの実施形態において、SCA2は、ジエトキシシラン系化合物、トリエトキシシラン系化合物、テトラエトキシシラン系化合物、トリメトキシシラン系化合物、2つの線状アルキル基を含有するジメトキシシラン系化合物、2つのアルケニル基を含有するジメトキシシラン系化合物、ジエーテル、ジアルコキシベンゼン及びそれらの任意の組合せから選択されるケイ素化合物である。
【0046】
SCA2のための好適なケイ素化合物の限定されない例には、下記の化合物が含まれる:ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、n−プロピルメチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ビニル(クロロメチル)ジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−(ジエトキシメチルシリル)エタン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、オクタエトキシ−1,3,5−トリシラペンタン、n−オクタデシルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−メチルジエトキシシリルプロポキシ)ジフェニルケトン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、1,2−ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、及び、ジイソブチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、O−(ビニルオキシブチル)−N−トリエトキシシリルプロピルカルバマート、10−ウンデセニルトリメトキシシラン、n−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−[5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソペンチル]カプロラクタム、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、トリエトキシシリルウンデカナールエチレングリコールアセタール、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル−O−メントカルバマート、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバマート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバマート、スチリルエチルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、(S)−N−1−フェニルエチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、(R)−N−1−フェニルエチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、S−(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、及び、O−(メタクリルオキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)カルバマート、テトラメトキシシラン、及び/又は、テトラエトキシシラン。
【0047】
1つの実施形態において、SCA2は、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブタ−3−エニルトリエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−ペンテン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン及び前記化合物の任意の組合せであり得る。
【0048】
1つの実施形態において、SCA2は、2つの線状アルキル基を含有するジメトキシシラン系化合物、2つのアルケニル基又は水素を含有するジメトキシシラン系化合物(但し、1つ又はそれ以上の水素原子はハロゲンによって置換される場合がある)、及び、それらの任意の組合せから選択される。
【0049】
1つの実施形態において、SCA2は、ジエーテル、ジエーテルのダイマー、ジアルコキシベンゼン、ジアルコキシベンゼンのダイマー、線状炭化水素基によって連結されるジアルコキシベンゼン、及び、それらの任意の組合せであり得る。下記において示されるALAのためのジエーテルは、SCA2のジエーテルのための限定されない例として同等に当てはまることに留意されたい。
【0050】
1つの実施形態において、SCA2はメルトフロー促進組成物である。「メルトフロー促進組成物」は、本明細書中で使用される場合、本開示の方法条件に従う操作を別にすれば、得られたポリマーのメルトフローレートを目的とする重合条件のもとで増大させる組成物である。メルトフロー促進組成物は、上記において開示されるような、SCA2として好適であるシラン組成物のいずれか、ジエーテル、アルコキシベンゼン、エステル、ケトン、アミド及び/又はアミンであり得る。
【0051】
M−EEDは活性制限剤(ALA)を含む。「活性制限剤」は、本明細書中で使用される場合、高い温度における触媒活性、すなわち、約100℃を超える温度における重合条件での重合リアクターにおける触媒活性を低下させるものである。ALAの提供は自己制限性の触媒組成物をもたらす。本明細書中で使用される「自己制限」性の触媒組成物は、低下した活性を、約100℃を超える温度で明らかにする触媒組成物である。言い換えれば、「自己制限」は、反応温度が通常的には80℃未満である通常の重合条件のもとでの触媒活性と比較して、反応温度が100℃を超えて上昇するときの触媒活性の低下である。加えて、実用的な基準として、重合方法(例えば、通常の処理条件で稼動する流動床気相重合など)が、ポリマー粒子の凝集に関しての低下したリスクとともに中断し、かつ、その結果として触媒床の崩壊を生じさせることができるならば、触媒組成物は、「自己制限」性を有すると言われる。
【0052】
この場合に使用される、高い温度における重合活性の標準化された尺度として、触媒活性が、温度に起因する異なるモノマー濃度を補償するために調節される。例えば、液相(スラリー又は溶液)重合条件が使用されるならば、高い温度での反応混合物における低下したプロピレン溶解度を説明するための補正係数が含められる。すなわち、触媒活性が、より低い温度(特に、67℃の標準)と比較して、「低下した溶解性」を補償するために「正規化」される。温度Tにおける「正規化(された)」活性、すなわち、Aが、濃度補正係数[P(67)]/[P(T)]が乗じられる温度Tでの測定された活性、すなわち、(重量・ポリマー/重量・触媒/hr)として定義され、但し、式中、[P(67)]は67℃におけるプロピレン濃度であり、[P(T)]は温度Tにおけるプロピレン濃度である。正規化活性のための式が下記に示される。
正規化活性(A)=([P(67)]/[P(T)])×活性(T)
【0053】
この式において、温度Tにおける活性に、温度Tにおけるプロピレン濃度に対する、67℃におけるプロピレン濃度の比率が乗じられる。得られた正規化活性(A)は、温度上昇によるプロピレン濃度の低下について調節されたものであり、様々な温度条件のもとでの触媒活性を比較するために使用することができる。補正係数が、液相重合において使用される条件について下記に示される。
67℃ 85℃ 100℃ 115℃ 130℃ 145℃
1.00 1.42 1.93 2.39 2.98 3.70
【0054】
この補正係数は、重合活性が、用いられる条件のもとではプロピレン濃度とともに直線的に増大することを仮定している。補正係数は、使用される溶媒又は希釈剤の関数である。例えば、上記で示される補正係数は、一般的なC6−10脂肪族炭化水素の混合物(Isopar(商標)E、Exxon Chemical Companyから入手可能)についてである。気相重合条件のもとでは、モノマーの溶解度は通常、要因ではなく、活性は一般に、温度の違いについて補正されない。すなわち、活性と、正規化活性とが同じである。
【0055】
「正規化活性比」がA/A67として定義される(式中、Aは温度Tにおける活性であり、A67は67℃における活性である)。この値を、温度の関数としての活性変化の指標として使用することができる。例えば、A100/A67が0.30に等しいことは、100℃における触媒活性が67℃における触媒活性の30パーセントに過ぎないことを示す。100℃において、35%以下のA100/A67比が、自己制限性の系である触媒系をもたらすことが見出されている。
【0056】
ALAは、芳香族エステル又はその誘導体、脂肪族エステル又はその誘導体、ジエーテル、ポリ(アルキレングリコール)エステル、及び、それらの組合せであり得る。好適な芳香族エステルの限定されない例には、芳香族モノカルボン酸のC1−10のアルキルエステル又はシクロアルキルエステルが含まれる。その好適な置換された誘導体には、芳香族環(1つ又はそれ以上)又はエステル基の両方が、1つ又はそれ以上の第14族ヘテロ原子又は第15族ヘテロ原子又は第16族ヘテロ原子(特に、酸素)を含有する1つ又はそれ以上の置換基により置換される化合物が含まれる。そのような置換基の例には、(ポリ)アルキルエーテル基、シクロアルキルエーテル基、アリールエーテル基、アラルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ジアルキルアミン基、ジアリールアミン基、ジアラルキルアミン基及びトリアルキルシラン基が含まれる。芳香族カルボン酸エステルは、安息香酸のC1−20ヒドロカルビルエステル(但し、ヒドロカルビル基は非置換であるか、或いは、1つ又はそれ以上の第14族ヘテロ原子含有置換基又は第15族ヘテロ原子含有置換基又は第16族ヘテロ原子含有置換基により置換される)、及び、そのC1−20(ポリ)ヒドロカルビルエーテル誘導体、又は、C1−4アルキルベンゾアート及びそのC1−4環アルキル化誘導体、又は、メチルベンゾアート、エチルベンゾアート、プロピルベンゾアート、メチルp−メトキシベンゾアート、メチルp−エトキシベンゾアート、エチルp−メトキシベンゾアート及びエチルp−エトキシベンゾアートが含まれる。1つの実施形態において、芳香族カルボン酸エステルはエチルp−エトキシベンゾアートである。
【0057】
1つの実施形態において、ALAは脂肪族エステルである。脂肪族エステルはC−C30脂肪族酸エステルである場合があり、また、モノエステル又はポリ(2つ以上)エステルである場合があり、また、直鎖又は分岐である場合があり、また、飽和又は不飽和である場合があり、また、それらの任意の組合せである場合がある。C−C30脂肪族酸エステルはまた、1つ又はそれ以上の第14族ヘテロ原子含有置換基又は第15族ヘテロ原子含有置換基又は第16族ヘテロ原子含有置換基により置換される場合がある。好適なC−C30脂肪族酸エステルの限定されない例には、脂肪族C4−30モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C4−20モノカルボン酸及び脂肪族C4−20ジカルボン酸のC1−4アリルモノエステル及びC1−4アリルジエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸及び脂肪族C8−20ジカルボン酸のC1−4アルキルエステル、及び、C2−100(ポリ)グリコール又はC2−100(ポリ)グリコールエーテルのC4−20モノカルボキシラート誘導体又はC4−20ポリカルボキシラート誘導体が含まれる。さらなる実施形態において、C−C30脂肪族酸エステルはイソプロピルミリスタート及び/又はジ−n−ブチルセバカートであり得る。
【0058】
1つの実施形態において、ALAはイソプロピルミリスタートである。
【0059】
1つの実施形態において、ALAはジエーテルである。ジエーテルは、下記の式によって表されるジアルキルジエーテルであり得る:
【化1】

【0060】
上記式において、R〜Rは互いに独立して、20個までの炭素原子を有するアルキル基又はアリール基又はアラルキル基であり、但し、これらのアルキル基又はアリール基又はアラルキル基は、R及びRが水素原子であり得るならば、第14族ヘテロ原子、第15族ヘテロ原子、第16族ヘテロ原子又は第17族ヘテロ原子を必要に応じて含有することができる。好適なジアルキルエーテル化合物の限定されない例には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジエトキシプロパン及び9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが含まれる。さらなる実施形態において、ジアルキルエーテル化合物は2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである。
【0061】
1つの実施形態において、ALAはポリ(アルキレングリコール)エステルである。好適なポリ(アルキレングリコール)エステルの限定されない例には、ポリ(アルキレングリコール)モノアセタート又はポリ(アルキレングリコール)ジアセタート、ポリ(アルキレングリコール)モノミリスタート又はポリ(アルキレングリコール)ジミリスタート、ポリ(アルキレングリコール)モノラウラート又はポリ(アルキレングリコール)ジラウラート、ポリ(アルキレングリコール)モノオレアート又はポリ(アルキレングリコール)ジオレアート、グリセリルトリ(アセタート)、C2−40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、及び、それらの任意の組合せが含まれる。1つの実施形態において、ポリ(アルキレングリコール)エステルのポリ(アルキレングリコール)成分はポリ(エチレングリコール)である。
【0062】
1つの実施形態において、アルミニウム対ALAのモル比が1.4〜85:1である場合があり、又は、2.0〜50:1である場合があり、又は、4〜30:1である場合がある。2つ以上のカルボキシラート基を含有するALAについては、カルボキシラート基のすべてが、効果的な成分であると見なされる。例えば、2つのカルボキシラート官能基を含有するセバカート分子は、2つの効果的な機能性分子を有すると見なされる。
【0063】
1つの実施形態において、触媒組成物は0.5〜25:1のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、1.0〜20:1のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、1.5〜15:1のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、約6.0未満のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、約5未満のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、4.5未満のAl対M−EEDのモル比を含む。
【0064】
1つの実施形態において、Al:M−EEDのモル比が0.5〜4.0:1である。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、0.5:1〜4.0:1のAl/M−EEDのモル比により、十分な量のアルミニウムが、重合反応を標準の重合温度で維持するために提供されることが考えられる。しかしながら、(例えば、温度暴走又は方法不調に起因する)高い温度では、より多くのアルミニウム化学種が他の触媒成分と反応する。このことは、重合反応を遅くするアルミニウム不足を引き起こす。アルミニウム不足により、アルミニウムと錯体形成する電子供与体の数における対応する低下が引き起こされる。錯体形成していない供与体の自由電子対が触媒系の毒となり、これにより、反応が自己制限される。
【0065】
本明細書中で使用される「総SCA」は、SCA1及びSCA2の(モルでの)合計量である。言い換えれば、総SCA=SCA1(モル)+SCA2(モル)。M−EEDにおけるALAの量は触媒自己制限能を高い温度で高め、一方で、SCA1の量は剛性を生成ポリマーにおいて提供し、かつ、SCA2はメルトフローを生成ポリマーにおいて提供する。総SCA対ALAのモル比が0.43〜2.33:1であり、又は、0.54〜1.85:1であり、又は、0.67〜1.5:1である。SCA1対総SCAのモル比が0.2〜0.5:1であり、又は、0.25〜0.45:1であり、又は、0.30〜0.40:1である。出願人らは、驚くべきことに、また、予想外であったが、(1)SCA1対SCA2、及び/又は、(2)総SCA対ALA、及び/又は、(3)SCA1対総SCAの制御されたモル比により、自己制限性の触媒が使用可能であるという特性と併せて、大きいメルトフロー及び大きい剛性の特異な特性を有する生成ポリマーが得られることを発見している。
【0066】
1つの実施形態において、総SCA対ALAのモル比が0.43〜2.33:1であり、SCA1対総SCAのモル比が0.2〜0.5:1である。
【0067】
1つの実施形態において、触媒組成物は1.4〜85:1のAl対総SCAのモル比を含み、又は、2.0〜50:12のAl対総SCAのモル比を含み、又は、4.0〜30:1のAl対総SCAのモル比を含む。
【0068】
1つの実施形態において、触媒組成物は、1.0未満である総SCA対ALAのモル比を含む。驚くべきことに、また、予想外であったが、総SCA対ALAのモル比を1.0未満に維持することにより、リアクターの操作性が著しく改善されることが見出されている。
【0069】
1つの実施形態において、M−EEDは、ジシクロペンチルジメトキシシラン(SCA1)、メルトフロー促進組成物(SCA2)及びイソプロピルミリスタート(ALA)を含む。さらなる実施形態において、SCA2が、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチル−ジメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、テトラエトキシシラン、1−エトキシ−2−(6−(2−エトキシフェノキシ)ヘキシルオキシ)ベンゼン、1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼン及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0070】
本発明の触媒組成物の様々な成分の間におけるモル比が下記において表1に示される。
【表1】

【0071】
本発明の触媒組成物は、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0072】
1つの実施形態において、活性なプロピレン系ポリマーの形成が、触媒組成物が第1の重合リアクターにおいてプロピレン及び必要な場合には1つ又はそれ以上のオレフィンと接触させられる気相重合方法を介して行われる。1つ又はそれ以上のオレフィンモノマーを必要な場合には、プロピレンと一緒に第1の重合リアクターに導入して、触媒と反応させ、ポリマー、コポリマー(又はポリマー粒子の流動床)を形成させることができる。好適なオレフィンモノマーの限定されない例には、下記の化合物が含まれる:エチレン;C4−20α−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン及び1−ドデセンなど;C4−20ジオレフィン、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)及びジシクロペンタジエンなど;C8−40ビニル芳香族化合物、これには、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンが含まれる;及び、ハロゲン置換されたC8−40ビニル芳香族化合物、例えば、クロロスチレン及びフルオロスチレンなど。
【0073】
本明細書中で使用される「重合条件」は、所望されるポリマーを形成するための、触媒組成物及びオレフィンの間での重合を促進させるために好適な重合リアクター内の温度パラメーター及び圧力パラメーターである。重合方法は、1基又は2基以上の重合リアクターにおいて作動する気相重合方法、スラリー重合方法又は塊状重合方法であり得る。従って、重合リアクターは、気相重合リアクター、液相重合リアクター又はそれらの組合せであり得る。
【0074】
重合リアクターにおける水素の供給は重合条件の構成要素の1つであることが理解される。重合期間中、水素は連鎖移動剤であり、生成ポリマーの分子量(及び、それに対応して、メルトフローレート)に影響を及ぼす。
【0075】
1つの実施形態において、重合が気相重合を介して行われる。本明細書中で使用される「気相重合」又は「気相重合する」は、1つ又はそれ以上のモノマーを含有する上昇する流動化媒体が、触媒の存在下、流動化媒体によって流動状態で維持されるポリマー粒子の流動床の中を通り抜けることである。「流動化(fluidization)」、「流動(化された)(fluidized)」又は「流動化(させる)(fluidizing)」は、微細に分割されたポリマー粒子の層がガスの上昇流によって持ち上げられ、かつ、かき混ぜられる気体・固体接触方法である。粒子層の隙間を通り抜ける流体の上向きの流れにより、粒子の重量を超える圧力差及び摩擦抵抗増加が達成されるとき、流動化が粒子層において生じる。従って、「流動床」は、流動化媒体の流れによって流動状態で懸濁される多数のポリマー粒子である。「流動化媒体」は、1つ又はそれ以上のオレフィンガス、場合により、キャリアガス(例えば、H又はNなど)、及び、場合により、気相リアクターの中を通って上昇する液体(例えば、炭化水素など)である。
【0076】
典型的な気相重合リアクター(又は気相リアクター)は、容器(すなわち、リアクター)、流動床、分配プレート、入口配管及び出口配管、コンプレッサー、サイクルガスの冷却器又は熱交換器、並びに、生成物排出システムを含む。容器は反応域及び速度低下域を含み、それらのそれぞれが分配プレートの上方に位置する。流動床が反応域に位置する。1つの実施形態において、流動化媒体は、プロピレンガスと、少なくとも1つの他のガス(例えば、オレフィン及び/又はキャリアガス(例えば、水素又は窒素など)など)とを含む。1つの実施形態において、気相重合が凝縮モードで行われる。
【0077】
1つの実施形態において、接触させることが、触媒組成物を重合リアクターに供給し、オレフィンを重合リアクターに導入することを介して生じる。1つの実施形態において、本発明の方法は、オレフィンを助触媒と接触させることを含む。助触媒を、プロ触媒組成物が重合リアクターに導入される前にプロ触媒組成物と混合することができる(プレミックス)。別の実施形態において、助触媒が、プロ触媒組成物と独立して重合リアクターに加えられる。重合リアクターへの助触媒の独立した導入をプロ触媒組成物の供給と同時に行うことができ、又は、プロ触媒組成物の供給と実質的に同時に行うことができる。
【0078】
1つの実施形態において、本発明の方法は、M−EEDをプロ触媒組成物と混合すること、又は、そうでない場合には、M−EEDをプロ触媒組成物と一緒にすることを含む。M−EEDを助触媒と錯体形成させることができ、及び/又は、触媒組成物と、プロピレンとの間における接触の前にプロ触媒組成物と混合することができる(プレミックス)。別の実施形態において、M−EED(又はその個々の成分)を重合リアクターに独立して加えることができる。
【0079】
1つの実施形態において、本重合方法は、水素対プロピレン(「H/C」)のモル比を気相リアクターにおいて0.30(すなわち、0.30:1)未満で維持すること、又は、0.20未満で維持すること、又は、0.18未満で維持すること、又は、0.16未満で維持すること、又は、0.08未満で維持することを含む。大きいメルトフローを、高レベルの水素を使用することによって達成することができるが、0.30を超えるH/Cのモル比を介して製造されるプロピレン系ポリマーは、リアクターの酸化された炭素鋼の存在下でのプロピレンの望まれない水素化反応を加速させ、また、触媒活性を低下させることが見出されている。他方で、本発明の方法を介して形成される生成したプロピレン系ポリマーでは、H/Cのモル比が0.3未満であるので、過度な量の触媒作用残渣が回避される。
【0080】
その上、H/Cモル比の低い値(例えば、0.30未満の本発明の値など)により、触媒生産性が改善される。H/Cモル比についての値が増大するにつれ、より多くの水素がプロピレンのより多くの量と入れ替わる。プロピレンの水素置換により、触媒組成物との反応のために利用可能なプロピレンの量が少なくなる。従って、H/Cモル比についての大きい値は、より少ないプロピレンが、重合するために利用可能であることを示している。反応のために利用可能なプロピレンがより少ないことは、言い換えると、生成したプロピレンがより少ないことになり、すなわち、低下した触媒活性及び低下したリアクター生産性の目安になる。
【0081】
逆に、本発明の触媒組成物は、H/Cの低いモル比を介して、すなわち、0.30未満のH/Cのモル比を介して、高メルトフローのプロピレン系ポリマーの形成を可能にする。従って、本発明の触媒組成物の改善された水素応答により、触媒活性が改善され、かつ、生産性が改善される。
【0082】
1つの実施形態において、本重合方法は、水素分圧を約80psi未満に維持すること、又は、約71psi未満に維持すること、又は、約63psi未満に維持することを含む。
【0083】
1つの実施形態において、本発明の方法は、リアクターにおける温度が約100℃を超えるときには重合方法を自己制限することを含む。
【0084】
1つの実施形態において、本発明の方法は、プロピレン系ポリマーをただ1つだけの重合リアクターにおいて形成することを含む。
【0085】
出願人らは、驚くべきことに、また、予想外であったが、混合された外部電子供与体の存在により、自己制限性であり、かつ、大きい剛性及び大きいメルトフローを有するプロピレン系ポリマーを標準的重合条件のもとでただ1つだけの重合リアクターにおいてもたらす触媒組成物が提供されることを発見している。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、ALAが、過度な熱により引き起こされる暴走反応、ポリマーシーティング(sheeting)及び/又はポリマー凝集を防止することによって重合リアクターにおける操作性を改善していることが考えられる。SCA1及びSCA2の提供は、標準的な水素レベルの利用とともに、高剛性(すなわち、約170℃を超えるTMF)/高メルトフロー(すなわち、50g/10分又は60g/10分又は70g/10分又は100g/10分を超えるメルトフロー)のプロピレン系ポリマーの形成を可能にする。
【0086】
具体的には、本発明の方法により、ビスブレーキングを伴うことなく、すなわち、MFRを、以前に記載されたようなリアクター品位の高剛性プロピレン系ポリマーの水素使用限界を超えて増大させるための従来の技術を伴うことなく、大きい剛性及び大きいメルトフローを有するプロピレン系ポリマーが有利に製造される。用語「ビスブレーキング」(又は「クラッキング」)は、本明細書中で使用される場合、ポリマーがより小さいポリマー鎖セグメントに熱的及び/又は化学的に分解することである。ビスブレーキングは典型的には、ポリマー(例えば、ポリプロピレンなど)を、ポリプロピレンをより小さいポリプロピレン鎖セグメントに分解するためにフリーラジカル開始剤(例えば、過酸化物など)の存在下で溶融状態に置くことを含む。ビスブレーキングはリアクター後の手順である。プロピレン耐衝撃コポリマーを製造するための本発明の方法はリアクター内重合方法であることが理解される。従って、プロピレン耐衝撃コポリマーを製造するための本発明の方法はビスブレーキングを含まない。
【0087】
ビスブレーキングは多くの副作用を有する:例えば、様々な分解生成物(これらは臭気及び食品不適合性の問題を引き起こすことが多い)の形成、追加された費用、及び、ポリマー剛性における低下など。ビスブレーキングはメルトフローを増大させ、それにもかかわらず、ポリマーの重量平均分子量を低下させる。ビスブレーキングは初期ポリマーの物理的及び化学的な構造を変化させる。例えば、ビスブレーキングを受けたポリプロピレンホモポリマーは、同じMFRを有する、クラッキングを受けていないプロピレンホモポリマーと比較して、物理的特性及び/又は機械的特性における低下(すなわち、より低い引張弾性率、より低い曲げ弾性率)を示す。
【0088】
1つの実施形態において、本発明の方法は、クラッキングを受けていないプロピレン系ポリマーを形成する。「クラッキングを受けていない」ポリマーはビスブレーキング手順にさらされていない。言い換えれば、クラッキングを受けていないポリマーは、熱分解及び/又は化学的分解を受けていないポリマーである。クラッキングを受けていないポリマーは、同じMFRにおいて、ビスブレーキングを受けたポリマーが示すような、分子量に関連づけられる物理的特性及び/又は機械的特性(例えば、曲げ弾性率及び/又は引張弾性率など)における低下を示さない。加えて、クラッキングを受けていないポリマーは、ビスブレーキングを受けたポリマーで見出されるような、(臭気及び食品不適合性の問題を引き起こすことが多い)分解生成物が見出されない。
【0089】
1つの実施形態において、本発明の方法は、下記の特性の1つ又はそれ以上を有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む:(i)クラッキングを受けていないプロピレンホモポリマー、(ii)50g/10分を超えるMFR、又は、60g/10分を超えるMFR、又は、70g/10分を超えるMFR、又は、100g/10分を超えるMFR、(iii)4wt%未満のキシレン可溶分含有量、又は、3wt%未満のキシレン可溶分含有量、又は、約0.1wt%〜2.0wt%未満のキシレン可溶分含有量、(iv)約165℃を超えるTMF、又は、170℃を超えるTMF、(v)少なくとも約5ppm〜約150ppmのALA含有量、(vi)3000ppm未満のリアクター後オリゴマー含有量(「オリゴマー」はC12−C21化合物である)、又は、2500ppm未満のリアクター後オリゴマー含有量、又は、約500ppm〜約3000ppmのリアクター後オリゴマー含有量、及び/又は、(vii)ただ1つだけの剛性促進組成物SCA(及び場合によりALA)を含有する触媒組成物によって類似の重合条件のもとで形成されるプロピン系ポリマーの対応するオリゴマー含有量よりも約10%少ない、又は、約20%少ない、又は、約40%少ないリアクター後オリゴマー含有量。用語「リアクター後オリゴマー含有量」は、本明細書中で使用される場合、重合リアクターから出た直後における生成したプロピレン系ポリマーのオリゴマー含有量である。言い換えれば、「リアクター後オリゴマー含有量」は、何らかの重合後の洗浄手順、加熱手順及び/又は精製手順の前におけるオリゴマー含有量である。
【0090】
1つの実施形態において、クラッキングを受けていないプロピレン系ポリマーはプロピレンホモポリマーである。さらなる実施形態において、プロピレン系ポリマーは毒性が低いか、若しくは、毒性がなく、かつ、分解生成物が少ないか、若しくは、分解生成物がなく、かつ、不快臭が少ないか、若しくは、不快臭がない。
【0091】
1つの実施形態において、活性なプロピレン系ポリマーは、2009年2月23日に出願された同時係属中の特許出願 (代理人文書番号68316)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)において開示されるように製造することができる。
【0092】
本発明の方法は、活性なプロピレン系ポリマーを第2の重合リアクターに導入することを含む。1つの実施形態において、第1の重合リアクター及び第2の重合リアクターが連続して作動し、それにより、第1の重合リアクターからの流出物が第2の重合リアクターに装入され、また、1つ又はそれ以上のさらなる(又は異なる)オレフィンモノマーが、重合を継続するために第2の重合リアクターに加えられる。別の実施形態において、第1の重合リアクター及び第2の重合リアクターのそれぞれが気相重合リアクターである。
【0093】
本発明の方法は、活性なプロピレン系ポリマーを、重合条件下、第2の重合リアクターにおいて少なくとも1つのオレフィンと接触させること、及び、ASTM D1238−01に従って測定されるときに約60g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。前記少なくとも1つのオレフィンはプロピレン以外のオレフィンである。
【0094】
1つの実施形態において、本発明の方法は、160g/10分を超えるMFRを有する活性なプロピレン系ポリマーを形成すること、及び、約85g/10分を超えるMFRを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。別の実施形態において、本発明の方法は、200g/10分を超えるMFRを有する活性なプロピレン系ポリマーを形成すること、及び、約100g/10分を超えるMFRを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。別の実施形態において、本発明の方法は、約300g/10分を超えるMFRを有する活性なプロピレン系ポリマーを形成すること、及び、約150g/10分を超えるMFRを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。
【0095】
プロピレン耐衝撃コポリマーはヘテロ相(heterophasic)コポリマーである。本明細書中で使用される「ヘテロ相コポリマー」は、連続するポリマー相(これはまた、マトリックス相とも呼ばれる)と、連続するポリマー相の内部に分散される不連続なポリマー相(これはまた、エラストマー相又はゴム相又はゴムとも呼ばれる)とを有する多相ポリマーである。第1のリアクターにおいて製造されるプロピレン系ポリマーは連続相である。オレフィンが第2のリアクターにおいてプロピレン系ポリマーの存在下で重合され、不連続相を形成する。ヘテロ相コポリマーは3つ以上のポリマー相を含有することができる。
【0096】
第2のリアクターに導入されるオレフィンは、プロピレン、エチレン、C4−20α−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン及び1−ドデセンなど)又はそれらの任意の組合せであり得る。1つの実施形態において、プロピレン及びエチレンが、プロピレン/エチレンコポリマーを不連続相として含むプロピレン耐衝撃コポリマーを形成するために第2のリアクターにおいて、活性なプロピレン系ポリマーと接触させられる。
【0097】
1つの実施形態において、本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーは約5wt%〜約50wt%のFc値を有し、又は、約10wt%〜約40wt%のFc値を有し、又は、約20wt%〜約30wt%のFc値を有する。本明細書中で使用される「コポリマー割合(「Fc」)は、ヘテロ相コポリマーに存在する不連続相の重量パーセントである。Fc値はプロピレン耐衝撃コポリマーの総重量に基づく。
【0098】
本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーは約20wt%〜約90wt%のEc値を有することができ、又は、約30wt%〜約80wt%のEc値を有することができ、又は、約40wt%〜約60wt%のEc値を有することができる。本明細書中で使用される「エチレン含有量(「Ec」)は、プロピレン耐衝撃コポリマーの不連続相に存在するエチレンの重量パーセントである。Ec値は不連続相(又はゴム相)の総重量に基づく。
【0099】
1つの実施形態において、本発明の重合方法は、0.3未満の水素対プロピレン(「H/C」)のモル比を、第1の重合リアクターにおいて、及び/又は、第2の重合リアクターにおいて維持することを含む。0.3を超えるH/Cのモル比を介して製造されるプロピレン系ポリマーは、過剰量の触媒作用残渣(例えば、チタン及び/又は塩素など)を含有することが見出されている。本発明の方法を介して形成される生成したプロピレン系ポリマーでは、H/Cのモル比が0.3未満であるので、過剰量の触媒作用残渣が回避される。
【0100】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、0.10未満のH/Cのモル比、又は、0.08未満のH/Cのモル比、又は、0.04未満のH/Cのモル比、又は、0.03未満のH/Cのモル比を第2の重合リアクターにおいて維持することを含む。出願人らは、驚くべきことに、また、予想外であったが、H/Cのモル比を0.3未満に維持すること(及び/又は、H/Cのモル比を第2のリアクターにおいて0.1未満に維持すること)により、水素消費が低下し、かつ、触媒活性が増大することを発見している。これは、水素のより少ない存在により、プロピレン及び/又は他のオレフィンの分圧が低下するからである。
【0101】
何らかの特定の理論によってとらわれないが、本発明の触媒組成物は、生成したプロピレン耐衝撃コポリマーの揮発物含有量の低いレベルに寄与することが考えられる。1つの実施形態において、本発明の方法は、約65μg/g未満の揮発物含有量を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。本明細書中で使用される「揮発物」は、ポリマーから室温又はわずかに高い温度で蒸気として追い出される炭素含有物質である。揮発物含有量は約65μg/g未満であり、又は、約60μg/g未満であり、又は、約50μg/g未満であり、又は、約10μg/g〜約65μg/g未満である。揮発物含有量がVolkswagen(VW)標準法PV−3341に従って求められる。
【0102】
本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーの揮発物含有量の低い量は好都合なことに、その後のパージ手順を減らすか、又は、その後のパージ手順を排除する。従来のプロピレン耐衝撃コポリマーでは典型的に、低い揮発物含有量を要求する用途(例えば、食品容器用途など)については特に、揮発物含有量を許容可能なレベルに減らすために(数日間にわたる)窒素パージ及び/又はスチームパージが要求される。本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーの低い揮発物含有量はパージ時間を減らすか、又は、パージ手順を完全に排除する。
【0103】
1つの実施形態において、本発明の方法は、温度が第1の重合リアクター及び/又は第2の重合リアクターにおいて100℃を超えるときには重合反応を自己制限する。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、ALAが、どちらかのリアクターにおいて重合期間中に形成される過度な熱により引き起こされる暴走反応、ポリマーシーティング(sheeting)及び/又はポリマー凝集を防止することによって重合リアクターにおける操作性を改善することが考えられる。
【0104】
1つの実施形態において、本発明の方法は、M−EED或いはその1つ又はそれ以上の成分を第2のリアクターに導入することを含む。従って、第1の選択性制御剤(SCA1)、第2の選択性制御剤(SCA2)及び/又は活性制限剤(ALA)を、別々にであれ、又は、どのような組合せであれ、第2のリアクターに加えることができる。
【0105】
本発明の方法は、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0106】
本開示は別の方法を提供する。1つの実施形態において、重合条件下、重合リアクターにおいて、少なくとも1つのオレフィンを活性なプロピレン系ポリマーと接触させることを含む重合方法が提供される。活性なプロピレン系ポリマーは、約100g/10分を超えるメルトフローレートを有する。
【0107】
本発明の方法はさらに、ASTM D1238−01(230℃、2.16kgの重り)に従って測定されるときに少なくとも85g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。1つの実施形態において、プロピレン系ポリマーは、約150g/10分を超えるMFRを有し、プロピレン耐衝撃コポリマーは、約100g/10分を超えるMFRを有する。別の実施形態において、プロピレン系ポリマーは、約200g/10分を超えるMFRを有し、プロピレン耐衝撃コポリマーは、約150g/10分を超えるMFRを有する。
【0108】
1つの実施形態において、重合が気相重合を介して行われる。言い換えれば、活性なプロピレン系ポリマーと、オレフィン(1つ又はそれ以上)との間における接触が、重合条件下、気相重合リアクターにおいて生じる。重合リアクターは、上記で開示されるような第2の重合リアクターであってもよい。
【0109】
1つの実施形態において、本発明の方法は、0.20未満のH/Cのモル比、又は、0.10未満のH/Cのモル比、又は、0.08未満のH/Cのモル比、又は、0.04未満のH/Cのモル比、又は、0.03未満のH/Cのモル比をプロピレン耐衝撃コポリマーの形成期間中に維持することを含む。
【0110】
1つの実施形態において、本発明の方法は、重合リアクターにおける温度が約100℃を超えるときには、重合を、活性なプロピレン系ポリマーに埋め込まれた触媒組成物により自己制限することを含む。活性なプロピレン系ポリマーに埋め込まれた触媒は、プロ触媒、助触媒、及び、第1の選択性制御剤(SCA1)と、第2の選択性制御剤(SCA2)と、活性制限剤(ALA)とを含む混合された外部電子供与体(M−EED)を有する本明細書中に開示される触媒組成物であり得る。
【0111】
1つの実施形態において、本発明の方法は、M−EED或いはその1つ又はそれ以上の成分をリアクターに導入することを含む。従って、第1の選択性制御剤(SCA1)、第2の選択性制御剤(SCA2)及び/又は活性制限剤を、別々にであれ、又は、どのような組合せであれ、重合リアクターに加えることができる。
【0112】
1つの実施形態において、活性なプロピレン系ポリマーがプロピレン及びエチレンと接触させられる。本発明の方法は、約5wt%〜約50wt%のFc値及び約20wt%〜約90wt%のEc値を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。
【0113】
1つの実施形態において、本発明の方法は、核形成剤をプロピレン耐衝撃コポリマーと溶融ブレンドすること、及び、核形成したプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。本明細書中で使用される「溶融ブレンドする」は、ポリマーが軟化及び/又は溶融させられ、1つ又はそれ以上の他の化合物と混合される方法である。溶融ブレンド方法の限定されない例には、押出し、溶融混合(回分式又は連続式)、反応性溶融ブレンド及び/又は配合が含まれる。
【0114】
核形成剤は微結晶のサイズを低下させ、それにより、プロピレン耐衝撃コポリマーから作製される物品の透過性及び透明度を改善する。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、核形成剤が、より整列した、より速いポリオレフィン結晶化のための部位を冷却期間中に提供することが考えられる。結晶化過程の期間中において、ポリマー結晶が、球晶と呼ばれるより大きい超構造に組織化する。この球晶は、サイズが、核形成剤の非存在下で形成される球晶よりも均一であり、かつ、小さい。
【0115】
当分野で公知である様々な核形成剤を、制限なく使用することができる。好適な核形成剤の限定されない例には、安息香酸ナトリウム、アジピン酸アルミニウム、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、ソルビトールのアセタール誘導体(例えば、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ビス(p−メチル−ベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−p−クロロベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン−ソルビトール、1,3−O−2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(これは、Millad(登録商標)3988の商品名で、Milliken Chemical Spartanburg,SCから入手可能である)、1,3−O−2,4−ビス(p−メチルジメチルベンジリデン)ソルビトール(これもまた、Millad(登録商標)3940の商品名で、Milliken Chemicalから入手可能である)など)、ナトリウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスファート、ナトリウムビス(4−t−メチルフェニル)ホスファート、カリウムビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファート、ナトリウム2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファート(NA−11)、ナトリウム2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファート、タルク、炭酸カルシウム、及び、前記の任意の組合せが含まれる。
【0116】
1つの実施形態において、本発明の方法は、約65μg/g未満の揮発物含有量を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む。揮発物含有量は約65μg/g未満であり、又は、約60μg/g未満であり、又は、約50μg/g未満であり、又は、約10μg/g〜約65μg/g未満である。
【0117】
本発明の方法は、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0118】
本開示はプロピレン耐衝撃コポリマーを提供する。本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーは、プロピレン/エチレンコポリマー(不連続相)が分散されているプロピレン系ポリマー(マトリックス相)を含む。プロピレン系ポリマーは、約100g/10分を超えるメルトフローレートを有する。プロピレン耐衝撃コポリマーは、約60g/10分を超えるメルトフローレート、約5wt%〜約50wt%のFc値、約20wt%〜約90wt%のEc値を有する。
【0119】
1つの実施形態において、プロピレン系ポリマーは、約160g/10分を超えるMFRを有し、プロピレン耐衝撃コポリマーは、約85g/10分を超えるMFRを有する。別の実施形態において、プロピレン系ポリマーは、約200g/10分を超えるMFRを有し、プロピレン耐衝撃コポリマーは、約100g/10分を超えるMFRを有する。1つの実施形態において、プロピレン系ポリマーは、約300g/10分を超えるMFRを有し、プロピレン耐衝撃コポリマーは、約150g/10分を超えるMFRを有する。さらなる実施形態において、プロピレン系ポリマーはプロピレンホモポリマーである。
【0120】
1つの実施形態において、プロピレン系ポリマーは下記の特性の1つ又はそれ以上を有する:約4wt%未満又は約2wt%未満のキシレン可溶分含有量、及び、約170℃を超えるTMF
【0121】
1つの実施形態において、プロピレン耐衝撃コポリマーのポリマー成分はどれもクラッキングを受けていない。言い換えれば、プロピレン耐衝撃コポリマーはクラッキングを受けておらず、かつ、プロピレン系ポリマーはクラッキングを受けておらず、かつ、プロピレン/エチレンコポリマーはクラッキングを受けていない。
【0122】
1つの実施形態において、プロピレン耐衝撃コポリマーは約65μg/g未満の揮発物含有量を有し、又は、約60μg/g未満の揮発物含有量を有し、又は、約50μg/g未満の揮発物含有量を有し、又は、約10μg/g〜約65μg/g未満の揮発物含有量を有する(VW PV3341)。
【0123】
1つの実施形態において、プロピレン耐衝撃コポリマーは少なくも5ppmのALA含有量を有し、又は、少なくとも10ppmのALA含有量を有し、又は、少なくも20ppmのALA含有量を有し、又は、少なくとも30ppmのALA含有量を有し、又は、約5ppm〜約150ppmのALA含有量を有する。
【0124】
1つの実施形態において、プロピレン耐衝撃コポリマーは、核形成したプロピレン耐衝撃コポリマーである。
【0125】
本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーは、様々な用途のために、例えば、少ない揮発物が要求される自動車用内装部品などのために使用される場合があり、また、多くの食品接触用途のために、例えば、カップ及び容器などのために使用することができる。加えて、多くの通常の成形品、例えば、玩具、ペール缶、バケツ及び汎用品などは、本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーの高メルトフロー成果及び衝撃強さ特性及び/又は低揮発物含有量を利用することができる。本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーはまた、カーペット、いす張り材料及びおむつのための繊維を製造するために使用することができる。
【0126】
本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーは、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0127】
定義
【0128】
本明細書中での元素周期表に対するすべての参照は、CRC Press,Inc.が2003年に発行し、同社が著作権を有する元素周期表を参照するものとする。また、族に対する参照はいずれも、族の番号表記のためのIUPACシステムを使用してこの元素周期表に反映される族を参照するものとする。反することが述べられる場合、又は、文脈から暗黙的である場合、又は、当分野において慣例的である場合を除き、すべての部及びパーセントは重量に基づく。米国特許実務の目的のために、本明細書中で参照される何らかの特許、特許出願又は刊行物の内容が、特に、合成技術、定義(本明細書中に示されるどのような定義とも矛盾しない程度に)、及び、当分野における一般的知識に関しては、本明細書によりそれらの全体において参照によって組み込まれる(又は、それらの同等な米国対応物が参照によって同様に組み込まれる)。
【0129】
用語「含む」及びその派生形は、何らかのさらなる成分、工程又は手順が本明細書中に開示されているか否かにかかわらず、何らかのさらなる成分、工程又は手順の存在を除外することが意図されない。何らかの疑念を避けるために、用語「含む」の使用により本明細書中で主張されるすべての組成物は、反することが述べられない限り、ポリマーであろうとも、又は、そうでなくとも、何らかのさらなる添加物、補助物又は化合物を含むことができる。対照的に、用語「から本質的になる」は、何らかのその後の列挙の範囲から、操作性に不可欠でないものを除いて、何らかの他の成分、工程又は手順を除外する。用語「からなる」は、具体的に記述又は列挙されていない何らかの成分、工程又は手順を除外する。用語「又は(若しくは、或いは)」は、別途述べられない限り、列挙された要素を個々に参照し、同様にまた、任意の組合せで参照する。
【0130】
本明細書中に列記される数値範囲はどれも、少なくとも2単位の隔たりが、何らかの下方値と、何らかの上方値との間に存在するならば、1単位の刻みで、下方値から上方値までのすべての値を含む。一例として、ある成分の量、或いは、組成的特性又は物理的特性(例えば、ブレンド配合物成分の量、軟化温度、メルトインデックスなど)の値が1〜100の間であることが述べられるならば、すべての個々の値(例えば、1、2、3など)及びすべての部分範囲(例えば、1〜20、55〜70、197〜100など)が本明細書において明示的に列挙されることが意図される。1未満である値については、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01又は0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図されることの例にすぎず、列挙される最低値及び最高値の間における数値のすべての可能な組合せが本明細書において明示的に述べられると見なされなければならない。言い換えれば、本明細書中に列記される数値範囲はどれも、述べられた範囲に含まれるどのような値又は部分範囲も包含する。様々な数値範囲が、本明細書中で議論されるように、メルトインデックス、メルトフローレート及び他の特性に関して列記されている。
【0131】
用語「ブレンド配合物」又は用語「ポリマーブレンド配合物」は、本明細書中で使用される場合、2つ以上のポリマーのブレンド配合物である。そのようなブレンド配合物は、(分子レベルで相分離しない)混和性を有する場合があり、又は、混和性を有しない場合がある。そのようなブレンド配合物は、相分離する場合があり、又は、相分離しない場合がある。そのようなブレンド配合物は、透過型電子顕微鏡観察、光散乱、X線散乱、及び、当分野において公知である他の方法から求められるような1つ又はそれ以上のドメイン形態を含有する場合があり、又は、ドメイン形態が含有しない場合がある。
【0132】
用語「組成物」には、本明細書中で使用される場合、組成物を構成する材料、並びに、組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物の混合物が含まれる。
【0133】
用語「ポリマー」は、同じタイプ又は異なるタイプのモノマーを重合することによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー及びインターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」は、少なくとも2つのタイプのモノマー又はコモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。インターポリマーには、コポリマー(これは通常、2つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)、ターポリマー(これは通常、3つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)、及び、テトラポリマー(これは通常、4つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
用語「インターポリマー」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製ポリマーを示す。従って、総称用語であるインターポリマーには、2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを示すために通常的に用いられるコポリマー、及び、3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーが含まれる。
【0135】
用語「オレフィン系ポリマー」は、ポリマーの総重量に基づいて過半重量パーセントのオレフィン(例えば、エチレン又はプロピレン)を重合された形態で含有するポリマーである。オレフィン系ポリマーの限定されない例には、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーが含まれる。
【0136】
用語「エチレン系ポリマー」は、本明細書中で使用される場合、(重合可能なモノマーの総重量に基づいて)過半重量パーセントの重合されたエチレンモノマーを含み、かつ、場合により、少なくとも1つの重合されたコモノマーを含み得るポリマーを示す。
【0137】
用語「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」は、本明細書中で使用される場合、(重合可能なモノマーの総量に基づいて)過半重量パーセントの重合したエチレンモノマーと、少なくとも1つの重合したα−オレフィンとを含むインターポリマーを示す。
【0138】
用語「プロピレン系ポリマー」は、本明細書中で使用される場合、(重合可能なモノマーの総量に基づいて)過半重量パーセントの重合されたプロピレンモノマーを含み、かつ、場合により、少なくとも1つの重合されたコモノマーを含み得るポリマーを示す。
【0139】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合、分岐又は非分岐である飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を示す。好適なアルキル基の限定されない例には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、2−プロペニル(又はアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(又は2−メチルプロピル)などが含まれる。アルキルは1個及び20個の炭素原子を有する。
【0140】
用語「置換(された)アルキル」は、本明細書中で使用される場合、アルキルのいずれかの炭素に結合する1つ又はそれ以上の水素原子が別の基(例えば、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ及びそれらの組合せなど)によって置換される、ちょうど記載されたようなアルキルを示す。好適な置換アルキルには、例えば、ベンジル及びトリフルオロメチルなどが含まれる。
【0141】
用語「アリール」は、本明細書中で使用される場合、ただ1つだけの芳香族環であり得る芳香族置換基、或いは、融合されて一緒になるか、又は、共有結合により連結されるか、又は、共通の基(例えば、メチレン成分又はエチレン成分など)に連結される多数の芳香族環であり得る芳香族置換基を示す。そのような芳香族環には、中でも、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びビフェニルが含まれ得る。アリールは1個及び20個の炭素原子を有する。
【0142】
試験方法
【0143】
曲げ弾性率が、1.3mm/分で試験されるASTM D638のタイプIの試験片を使用して、ASTM D790−00の方法Iに従って求められる。
【0144】
アイゾット衝撃強さが、ASTM D256に従って測定される。
【0145】
メルトフローレート(MFR)が、プロピレン系ポリマーについて、2.16kgの重りを用いた230℃でのASTM D1238−01試験法に従って測定される。
【0146】
キシレン可溶分(XS)が下記の手順に従って測定される。0.4gのポリマーを、撹拌とともに、130℃で20分間、20mlのキシレン(異性体混合物)に溶解する。その後、溶液を25℃に冷却し、30分後、不溶性ポリマー画分をろ過して除く。得られたろ液を、Viscotek ViscoGEL H−100−3078カラムを1.0ml/分で流れるTHF移動相とともに使用して、フロー・インジェクション・ポリマー分析によって分析する。カラムは、光散乱、粘度計及び屈折計の各検出器が45℃で作動するViscotek Model l302三連検出器アレイに接続される。装置の較正が、Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準物により維持された。
【0147】
最終的融点TMFは、サンプルにおける最も完全な結晶を融解するための温度であり、アイソタクチシティー及び固有的なポリマー結晶性についての尺度と見なされる。試験が、TA Q100示差走査熱量計を使用して行われる。サンプルが80℃/分の割合で0℃から240℃まで加熱され、同じ割合で0℃に冷却され、その後、再び同じ割合で150℃にまで加熱され、150℃で5分間保たれ、その後、1.25℃/分で150℃から180℃に加熱される。TMFが、加熱曲線の終点でのベースラインの開始を計算することによってこの最後のサイクルから求められる。
【0148】
試験手順:
【0149】
(1)装置を、高純度インジウムを標準物として用いて較正する。
【0150】
(2)装置のヘッド/セルを50ml/分の一定流速の窒素により絶え間なくパージする。
【0151】
(3)サンプル調製:
1.5gの粉末サンプルを、30−G302H−18−CX Wabash Compression Molder(30トン)を使用して圧縮成形する:(a)混合物を接触させて230℃で2分間加熱する;(b)サンプルを、20トンの圧力により1分間、同じ温度で圧縮する;(c)サンプルを20トンの圧力とともに45°Fに冷却し、2分間保つ;(d)サンプルを均質にするために、板状試験片をほぼ同じサイズの4つに切断し、それらを積み重ね、段階(a)〜段階(c)を繰り返す。
【0152】
(4)サンプル板状試験片からの1片のサンプル(好ましくは5mg〜8mgの間)を重量測定し、標準的なアルミニウム製サンプル皿において密封する。サンプルを含有する密封された皿を装置のヘッド/セルのサンプル側に置き、空の密封された皿を参照側に置く。自動サンプラーを使用するならば、数個の異なるサンプル試料を量り取り、装置を連続のために設定する。
【0153】
(5)測定:
(i)データ記憶:オフ
(ii)温度勾配 240.00℃まで80.00℃/分
(iii)等温 1.00分間
(iv)温度勾配 0.00℃まで80.00℃/分
(v)等温 1.00分間
(vi)温度勾配 150.00℃まで80.00℃/分
(vii)等温 5.00分間
(viii)データ記憶:オン
(ix)温度勾配 180.00℃まで1.25℃/分
(x)方法の終了
【0154】
(6)計算:TMFを2つの線の切片によって求める。1つの線を高温のベースラインから引く。別の線を高温側の曲線の終点に近い曲線の片寄り(deflection)点から引く。
【0155】
揮発分含有量−教本(Pyrolysis and GC in Polymer Analysis、編者:S.A.Liebman及びE.J.Levy、Marcel Dekker,Inc.、1985)に記載される静的ヘッドスペース分析によって測定される。ガスクロマトグラフィー/ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC−HS)分析が自動車業界では広く使用される。Volkswagen AG社が、プラスチック業界において一般に受け入れられ、かつ、使用される標準法を開発している。この標準法は、「VW標準法PV3341(又は「PV3341」)として公知である。PV3341は、2グラムのサンプルがヘッドスペースバイアルの中に置かれ、120℃での5時間の状態調節に供され、その後、GCに注入される試験である。定量化が、アセトン標準物のピーク面積応答に基づく外部標準技術を使用して達成される。
【0156】
限定によってではなく、例として、次に、本開示の様々な実施例が示される。
【0157】
実施例
【0158】
(1)プロ触媒
【0159】
SHAC320は、チタン、マグネシウム、及び、ジ−イソブチルフタラートの内部電子供与体から構成され、米国特許第6,825,146号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)の実施例1に従って調製されるチーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物である。
【0160】
プロ触媒FVは、チタン、マグネシウム、及び、欧州特許出願第728,769号に開示されるような1,3−ジエーテルの内部電子供与体から構成されるチーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物である。FVプロ触媒は下記のように調製される。
【0161】
周囲温度において、350gの混合型マグネシウム/チタンハリドアルコラートと、72gの9,9−ビス(メトキシメチル)−9H−フルオレンと、塩化チタン(IV)及びクロロベンゼンの50/50(vol/vol)混合物の5.6Lとを一緒にする。混合物を105℃〜115℃で60分間撹拌し、静置させ、100℃でろ過する。固形物を2.8Lのクロロベンゼンにおいて85℃で撹拌し、静置させ、85℃でろ過する。固形物を、105℃〜115℃で30分間、50/50の塩化チタン(IV)及びクロロベンゼンの新鮮な混合物の5.6Lにおいて2回撹拌し、静置させ、100℃でろ過する。冷却後、固形物を50℃〜60℃で5.2Lのヘキサンにより2回洗浄し、その後、最後の洗浄を周囲温度で5.6Lの2−メチルブタンにより行う。固形物を1.19kgの鉱油と一緒にする。得られたスラリーを真空に供して、残留揮発物を除いた。
【0162】
(2)外部電子供与体
【0163】
サンプルA〜サンプルEは、M−EED成分が下記から選択される混合された外部電子供与体(M−EED)を含む:
DCPDMS:ジシクロペンチルジメトキシシラン(SCA)
IPM:イソプロピルミリスタート(ALA)
PTES:n−プロピルトリエトキシシラン(SCA2)
TEOS:テトラエトキシシラン(SCA2)
【0164】
サンプルFは、成分が下記から選択される外部電子供与体を含む。
DCPDMS:ジシクロペンチルジメトキシシラン(SCA)
IPM:イソプロピルミリスタート(ALA)
【0165】
サンプルG及びサンプルHは従来の耐衝撃コポリマーである。サンプルHは、ジシクロペンチルジメトキシシランを外部電子供与体として含む触媒組成物により調製される。サンプルG及びサンプルHは比較として提供され、本開示の実施形態ではない。
【0166】
(3)重合
【0167】
サンプルA〜サンプルF及びサンプルHの製造が、連結された流動床リアクター(例えば、米国特許第4,882,380号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるリアクターなど)を使用して気相で行われる。重合条件は、下記の表2において列挙される条件である。
【0168】
サンプルGは、Spheripol方法(液相重合リアクターを第1段階で使用し、その後に、ゴム相の製造のための1つ又は2つのさらなる気相重合リアクターが続く公知の多段階方法)で作製される従来の耐衝撃コポリマーである。仕上がった品種がリアクター品種である(すなわち、ビスブレーキングを受けていない)。
【0169】
サンプルA〜サンプルFの製造における最終工程として、それぞれのサンプルをファイバーパック(fiberpak)の中に半連続的に排出し、これに、1000kgの樹脂あたりおよそ3kgの水を使用して、3時間までの期間、湿潤窒素を22℃で散布する(すなわち、それぞれのサンプルを湿潤窒素により失活させる)。
【0170】
サンプルHからの樹脂をリアクターから排出した後、樹脂を、1000kgの樹脂あたり1kgの水を使用して、22℃で湿潤窒素により1時間〜3時間パージすることによって失活させる。
【0171】
サンプルA〜サンプルF及びサンプルHを、二軸スクリューかみ合い押出し機を使用して、表4に列挙される添加物と配合する。パージ処理が、配合後、これらのサンプルに対しては行われない。
【表2】

【表3】

【表4】

【0172】
サンプルA〜サンプルFは、サンプルA〜サンプルFがそれぞれ、サンプルHよりも大きいMFRを有するという事実にもかかわらず、比較例のサンプルHよりも低い揮発物含有量を有する。
【0173】
サンプルFは、異なる触媒(FV触媒)をIPM及びDCPDMSとの組合せで使用することによって、同じ結果が達成され得ること、すなわち、大きいメルトフロー及び低い揮発物含有量を有するプロピレン耐衝撃コポリマーの製造が達成され得ることを示す。さらに、IPMをDCPDMS(及び、場合により、それ以外のシラン)との組合せで使用することによって、より少ない量のDCPDMSが必要とされる。DCPDMSはより高価であるので、このことはさらなるコスト削減をもたらす。
【0174】
サンプルA及びサンプルBはそれぞれが、(実質的に同じ添加物又は同じ添加物を使用する)サンプルGと同じ又は実質的に同じである衝撃特性及び剛性特性を有する。驚くべきことに、また、予想外であったが、気相で製造される本発明のプロピレン耐衝撃コポリマーは揮発物含有量において優れている。具体的には、サンプルA及びサンプルBはそれぞれが、サンプルGよりも小さい揮発物含有量を有する。
【0175】
本発明は、本明細書中に含まれる様々な実施形態及び例示に限定されず、下記の特許請求の範囲に含まれるように、実施形態の一部を含むそのような実施形態の改変された形態、及び、種々の実施形態の構成要素の組合せを含むことが特に意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D1238−01(230℃、2.16kg)に従って測定されるときに約100g/10分を超えるメルトフローレートを有する活性なプロピレン系ポリマーを第1の重合リアクターにおいて気相重合すること、
前記活性なプロピレン系ポリマーを第2の重合リアクターに導入すること、
前記活性なプロピレン系ポリマーを、重合条件下、第2のリアクターにおいて少なくとも1つのオレフィンと接触させること、及び
約60g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成すること
を含む重合方法。
【請求項2】
プロピレン及び必要な場合には少なくとも1つの他のオレフィンを第1の重合リアクターにおいて触媒組成物と接触させることを含み、但し、前記触媒組成物が、プロ触媒、助触媒、及び、第1の選択性制御剤(SCA1)と、第2の選択性制御剤(SCA2)と、活性制限剤(ALA)とを含む混合された外部電子供与体(M−EED)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.3未満のH/Cのモル比を、前記第1の重合リアクター、前記第2の重合リアクター及びそれらの組合せからなる群より選択される構成要素において維持することを含む、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
0.1未満のH/Cのモル比を前記第2の重合リアクターにおいて維持することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
混合された外部電子供与体(M−EED)、第1の選択性制御剤(SCA1)、第2の選択性制御剤(SCA2)、活性制限剤(ALA)及びそれらの組合せからなる群より選択される成分を前記第2のリアクターに導入することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記活性なプロピレン系ポリマーをプロピレン及びエチレンと接触させること、並びに、約5wt%〜約50wt%のFc値及び約20wt%〜約90wt%のEc値を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
VW標準法PV3341に従って測定されるときに約65μg/g未満の揮発物含有量を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
温度が、前記第1の重合リアクター、前記第2の重合リアクター及びそれらの組合せからなる群より選択されるリアクターにおいて100℃を超えるときには、重合を前記触媒組成物により自己制限することを含む、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
重合条件下、重合リアクターにおいて、少なくとも1つのオレフィンを、ASTM D−1238−01(230℃、2.16kg)に従って測定されるときに約100g/10分を超えるメルトフローレートを有する活性なプロピレン系ポリマーと接触させること、及び
約85g/10分を超えるメルトフローレートを有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成すること
を含む重合方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのオレフィンを気相重合リアクターにおいて前記活性なプロピレン系ポリマーと接触させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
/Cのモル比を0.20未満で維持することを含む、請求項9から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記活性なプロピレン系ポリマーが自己制限性の触媒組成物を含み、かつ、前記方法が、前記重合リアクターにおける温度が約100℃を超えるときには自己制限されることを含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プロピレン及びエチレンを前記活性なプロピレン系ポリマーと接触させること、並びに、約5wt%〜約50wt%のFc値及び約20wt%〜約90wt%のEc値を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
VW標準法PV3341に従って測定されるときに約65μg/g未満の揮発物含有量を有するプロピレン耐衝撃コポリマーを形成することを含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ASTM D−1238−01(230℃、2.16kg)に従って測定されるときに約100g/10分を超えるメルトフローレート(MFR)を有するプロピレン系ポリマー、及び
前記プロピレン系ポリマー内に分散されるプロピレン/エチレン コポリマー
を含み、約60g/10分を超えるメルトフローレート、約5wt%〜約50wt%のFc値及び約20wt%〜約90wt%のEc値を有するプロピレン耐衝撃コポリマー。
【請求項16】
前記プロピレン系ポリマーのMFRが約160g/10分を超え、前記プロピレン耐衝撃コポリマーのMFRが約85g/10分を超える、請求項15に記載のプロピレン耐衝撃コポリマー。
【請求項17】
前記プロピレン系ポリマーが、約4%未満のキシレン可溶分含有量、約170℃を超えるTMF、及び、それらの組合せからなる群より選択される特性を有する、請求項15から16のいずれか一項に記載のプロピレン耐衝撃コポリマー。
【請求項18】
前記プロピレン系ポリマーがクラッキングを受けていない、請求項15から17のいずれか一項に記載のプロピレン耐衝撃コポリマー。
【請求項19】
VW標準法PV3341に従って測定されるときに約65μg/g未満の揮発物含有量を含む、請求項15から18のいずれか一項に記載のプロピレン耐衝撃コポリマー。
【請求項20】
少なくとも約5ppmの活性制限剤を含む、請求項15から19のいずれか一項に記載のプロピレン耐衝撃コポリマー。

【公表番号】特表2012−500320(P2012−500320A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523832(P2011−523832)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/034881
【国際公開番号】WO2010/082943
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】