説明

高付着防食被膜付き鉄筋材及びその製造方法

【課題】 エポキシ樹脂の性能を保持できる温度条件下でのエポキシ粉体塗料の吹付けにより、鉄筋材の表面に上下2層の防食被膜を形成して、防食被膜に不可避的に発生するピンホールの問題を解決すると同時に、2層目の防食被膜にエポキシ樹脂でコーティングされた状態の強固な突起を発現させて、コンクリートとの付着力を高めることができる高付着防食被膜付き鉄筋材を提供する。
【解決手段】 鉄筋材1を加熱し、鉄筋材の表面温度が200〜250℃にある間に、鉄筋材にエポキシ粉体塗料4を吹き付けて第一防食被膜2を形成し、この温度条件下で、溶融状態にある第一防食被膜の表面に、粒径がエポキシ樹脂粉体aの粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズbが混合されたエポキシ粉体塗料4を吹き付けて第二防食被膜3を形成し、第二防食被膜3の表面に無数の突起3aを有する高付着防食被膜付き鉄筋材を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートに対する付着性能を高めた防食被膜付き鉄筋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【非特許文献1】土木学会 コンクリート・ライブラリー第58号 「エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いる鉄筋コンクリートの設計施工指針(案)」 第19頁
【特許文献1】特公平6−16868号公報
【特許文献2】特開2001−90254号公報
【0003】
近年、コンクリートの骨材等の影響もあって、鉄筋の腐食が進み、いろいろな事故が多発して、問題になっている。そのため、特許文献1などに見られるように、加熱した鉄筋材の表面に、エポキシ粉体塗料を吹き付けて溶融付着させることにより、防食被膜を形成したエポキシ塗装鉄筋が開発され、これにより、防食被膜に不可避的に発生するピンホールの問題を除けば、鉄筋の腐食の問題は一応解決されたようである。
【0004】
しかしながら、非特許文献1に見られるように、鉄筋にエポキシ塗装すると、コンクリートに対する長期の付着力が、無塗装鉄筋とコンクリートとの値の80%程度にまで低下することが知られている。これは、コンクリート構造物の強度に重大な影響を及ぼし、その寿命にも係わる重大な問題である。
【0005】
特許文献2に記載の発明は、このような問題を解決するために提案されたもので、合成樹脂粉体塗料(具体的には、熱可塑性ポリエチレンイソフタレートテレフタレート共重合体)を用いて防食被膜を形成した鉄筋材において、防食被膜表面に、珪砂、アルミナ粉末のようなセラミック粉末、ガラス粉末等の無機粒状物を吹き付けて、コンクリートに対する付着性能を高めた点に特徴がある。
【0006】
この従来例を、図4に基づいて説明すると、次の通りである。先ず、図4の(A)に示すように、鉄筋材41にショットブラストを行って、鉄筋材41の表面の錆や汚れを落とすと共に、鉄筋材41の表面を荒らして粗面にする。しかる後、図4の(B)に示すように、鉄筋材41を加熱し、図4の(C)に示すように、所定の温度(260〜400℃)になった鉄筋材41の表面に、合成樹脂粉体塗料44を吹き付けて、溶融付着させる。そして、図4の(D)に示すように、合成樹脂粉体塗料44が溶融状態にある間に、無機粒状物40aを吹き付け、冷却の工程を経て、図4の(E)に示すように、防食被膜42の表面に無機粒状物40aが固着された高付着防食被膜付き鉄筋材を得るのである。
【0007】
この従来例によれば、合成樹脂粉体塗料44が溶融状態にある間に無機粒状物40aを吹き付けることによって、無機粒状物40aの一部分が防食被膜42に埋まって当該防食被膜42に固定され、他の部分は防食被膜42上に露出して無数の突起(凹凸)を形成することになり、防食被膜付き鉄筋材であるにもかかわらず、コンクリートに対する付着性能が改善されることになる。
【0008】
しかしながら、この従来例では、防食被膜42の表面に素材の違うものを接着していることになるので、無機粒状物40aの一部が防食被膜42に押し込まれた状態に接着されているとはいえ、他物との当接によって無機粒状物40aが剥がれ落ちる可能性が大きく、防食被膜42の経年的な劣化により付着性能が著しく低下することが想定される。
【0009】
また、加熱した鉄筋材41にエポキシ粉体塗料等の合成樹脂粉体塗料44を吹き付けて、溶融接着し、防食被膜42を形成する場合、一般的に、鉄筋材1メートルあたり数個のピンホール(極小の気泡)が不可避的に生じるので、全製品について、全長にわたってピンホール検査を行い、ピンホールの個数が許容値以下であることを確認した上で、工場出荷されているのが実情であるが、上記の従来例では、1層の防食被膜42を形成し、その表面に無機粒状物40aを吹き付けているので、1層の防食被膜42に生じたピンホールがそのまま防食性能上の弱点として残ることになる。
【0010】
このような問題の解決策として、本願の出願人は、粉体塗料の吹き付けにより、鉄筋材の表面に上下2層の防食被膜を形成して、防食被膜に不可避的に発生するピンホールの問題を解決すると同時に、2層目の防食被膜により無数の突起を形成して、コンクリートとの付着力を高めることができる高付着防食被膜付き鉄筋材の製造方法を開発し、既に特願2003−304077として提案している。
【0011】
この製造方法は、鉄筋材を加熱し、鉄筋材の表面温度が250〜390℃にある間に、当該鉄筋材に、エポキシ粉体塗料を吹き付けて溶融付着させることにより第一防食被膜を形成すると共に、この温度条件下で、溶融状態にある第一防食被膜の表面に、ジンクリッチ粉体塗料(亜鉛金属末とエポキシ樹脂及び硬化剤とが混合されて成る粉体塗料)を吹き付けて溶融付着させることにより第二防食被膜を形成し、しかる後、第一,第二防食被膜付き鉄筋材を冷却することにより、第二防食被膜によって形成された無数の突起を有する高付着防食被膜付き鉄筋材を製造することを特徴としている。
【0012】
この方法によれば、1層目の第一防食被膜にピンホールが生じても、溶融状態にある第一防食被膜の上に第二防食被膜を形成することで、第一防食被膜のピンホールが修復されることになる。たとえピンホールが修復されずに残っても、第一防食被膜のピンホールと第二防食被膜のピンホールとが合致する確率は殆どゼロであるから、第一防食被膜のピンホールに起因する防食性能上の弱点が第二防食被膜でカバーされ、第二防食被膜のピンホールに起因する防食性能上の弱点が第一防食被膜でカバーされる結果、高い防食性能を確保できるのである。
【0013】
それでいて、エポキシ粉体塗料による第一防食被膜の上に、ジンクリッチ粉体塗料による第二防食被膜を形成し、第二防食被膜によって形成された無数の突起によりコンクリートに対する付着力を高めるので、防食被膜の表面に別の粒状物を接着して突起を形成する場合のように、他物との当接等によって突起が剥がれ落ちる虞がなくなり、長年月にわたって高い付着性能を確保できることになる。
【0014】
しかしながら、先に提案した方法では、次の点に改良の余地があることが判明した。即ち、第一に、エポキシ樹脂は高温では性能が低下するので、エポキシ粉体塗料の吹付け塗装はできるだけ低温の条件下で行うことが望ましいが、上記の方法では、第二防食被膜を形成するためのエポキシ粉体塗料に混合される粒状物が亜鉛金属末(無機粒状物)であるため、これをバインダー成分(エポキシ樹脂)でコーティングされた状態の強固な突起として第二防食被膜の表面に発現させるためには、250〜390℃といった高温条件下で二層目の吹付け塗装を行う必要があり、エポキシ樹脂の性能を保持し難い。
【0015】
第二に、高温での防錆性能実験を行うと、ジンク(亜鉛成分)がエポキシ樹脂に悪影響を及ぼし、エポキシ樹脂成分を劣化させるので、加熱炉用構造物など用途によっては、将来的な弱点につながる。
【0016】
第三に、亜鉛は塩化物イオンに対し劣化を示す。上記の方法では、亜鉛金属末がバインダー成分であるエポキシ樹脂でコーティングされた状態の突起となるので、コーティング
層で保護されることになるが、コーティング層の亀裂が発生した場合、塩化物イオンによる劣化が生じる可能性があり、港湾構造物や海洋構造物など用途によっては、将来的な弱点につながる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の点を改良したものであって、その目的とするところは、エポキシ樹脂の性能を保持できる温度条件下でのエポキシ粉体塗料の吹付けにより、鉄筋材の表面に上下2層の防食被膜を形成して、防食被膜に不可避的に発生するピンホールの問題を解決すると同時に、2層目の防食被膜にエポキシ樹脂でコーティングされた状態の強固な突起を発現させて、コンクリートとの付着力を高めることができる高付着防食被膜付き鉄筋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次のとおりである。即ち、本発明による高付着防食被膜付き鉄筋材は、鉄筋材の表面に、エポキシ粉体塗料による第一防食被膜を形成し、第一防食被膜の表面に、粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズを混合したエポキシ粉体塗料による第二防食被膜を形成して、第二防食被膜によって形成された無数の突起によりコンクリートに対する付着力を高めたことを特徴としている(請求項1)。
【0019】
本発明による高付着防食被膜付き鉄筋材の製造方法は、鉄筋材を加熱し、鉄筋材の表面温度が200〜250℃にある間に、当該鉄筋材に、エポキシ粉体塗料を吹き付けて溶融付着させることにより第一防食被膜を形成すると共に、この温度条件下で、溶融状態にある第一防食被膜の表面に、粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズが混合されたエポキシ粉体塗料を吹き付けて溶融付着させることにより第二防食被膜を形成し、しかる後、第一,第二防食被膜付き鉄筋材を冷却することにより、第二防食被膜によって形成された無数の突起を有する高付着防食被膜付き鉄筋材を製造することを特徴としている(請求項2)。
【発明の効果】
【0020】
本発明の高付着防食被膜付き鉄筋材によれば、1層目の第一防食被膜にピンホールが生じても、溶融状態にある第一防食被膜の上に第二防食被膜を形成することで、第一防食被膜のピンホールが修復されることになる。たとえピンホールが修復されずに残っても、第一防食被膜のピンホールと第二防食被膜のピンホールとが合致する確率は殆どゼロであるから、第一防食被膜のピンホールに起因する防食性能上の弱点が第二防食被膜でカバーされ、第二防食被膜のピンホールに起因する防食性能上の弱点が第一防食被膜でカバーされる結果、高い防食性能を確保できるのである。
【0021】
それでいて、エポキシ粉体塗料による第一防食被膜の上に、粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズを混合したエポキシ粉体塗料による第二防食被膜を形成し、第二防食被膜によって形成された無数の突起によりコンクリートに対する付着力を高めるので、防食被膜の表面に別の粒状物を接着して突起を形成する場合のように、他物との当接等によって突起が剥がれ落ちる虞がなくなり、長年月にわたって高い付着性能を確保できることになる。
【0022】
本発明による高付着防食被膜付き鉄筋材の製造方法によれば、請求項1に記載の高付着防食被膜付き鉄筋材を製造できる。即ち、鉄筋材を加熱し、鉄筋材の表面温度が200〜250℃にある間に、換言すれば、エポキシ樹脂の性能を保持できる低温条件下で、当該鉄筋材に、エポキシ粉体塗料を吹き付けて溶融付着させることにより第一防食被膜を形成
するだけでなく、引き続いて、これと同じ温度条件下で、溶融状態にある第一防食被膜の表面に、粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズが混合されたエポキシ粉体塗料を吹き付けて溶融付着させることにより第二防食被膜を形成するので、融け残ったアクリル系樹脂ビーズが局部的に浮き上がり、エポキシ粉体塗料のバインダー成分(エポキシ樹脂)でコーティングされた状態の強固な突起が発現することになる。また、第一防食被膜と第二防食被膜は、溶融状態で付着することから、一層の被膜と同様な性質を示しており、第一,第二防食被膜間で剥離することがない。
【0023】
尚、鉄筋材の予熱温度が200℃以下では、エポキシ樹脂が溶け難く、エポキシ粉体塗料の吹付け塗装に長時間を要し、250℃以上では、エポキシ樹脂の性能を保持し難い。また、200〜250℃の温度条件下において、アクリル系樹脂ビーズの粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5倍以下であると、第二防食被膜の表面にビーズの融け残りによる突起が形成されず、アクリル系樹脂ビーズの粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の3倍以上であれば、ビーズの融け残りによる突起が大き過ぎて、エポキシ樹脂によるコーティングが不完全になる。換言すれば、何れの場合も、剥がれ難い強固な突起を形成できない。
【0024】
このように、第一防食被膜の上に第二防食被膜を形成することで、防食被膜に不可避的に発生するピンホールの問題を解決できるのみならず、200〜250℃という比較的低温の条件下(エポキシ樹脂の性能を保持できる温度条件下)で、粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズが混合されたエポキシ粉体塗料を吹き付けて、第二防食被膜自体に突起を発現させるので、突起の剥がれ落ちる虞がなくて、高い付着性能を確保できる高付着防食被膜付き鉄筋材が製造できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明するが、それによって本発明は限定されるものではない。図1は、本発明に係る高付着防食被膜付き鉄筋材の一例を示す要部の模式的な断面図、図2は、高付着防食被膜付き鉄筋材とコンクリートCとの付着性能を説明する要部の模式的な断面図である。図1、図2において、1は鉄筋材(例えば、異形鉄筋)であり、その表面1aは、ショットブラストにより荒らされた粗面となっている。2は、鉄筋材1の表面1aに形成されたエポキシ粉体塗料(基体樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤及び顔料よりなる粉体塗料)による第一防食被膜、3は、第一防食被膜2の上に形成された第二防食被膜である。第二防食被膜3は、粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5〜3倍のアクリル系樹脂ビーズが混合されたエポキシ粉体塗料によって形成されたもので、第二防食被膜3自体で形成された無数の突起3aを有し、これらの突起3aがコンクリートCに食い込むことによって、コンクリートCと強固(無塗装鉄筋の場合よりも強固)に付着するように構成されている。突起3aは融け残ったアクリル系樹脂ビーズがエポキシ粉体塗料のバインダー成分であるエポキシ樹脂でコーティングされた状態となっている。
【0026】
次に、上記の高付着防食被膜付き鉄筋材の製造方法を、図3に基づいて説明する。先ず、図3の(A)に示すように、鉄筋材1にショットブラストを行って、鉄筋材1の表面1aの錆や汚れを落とすと共に、鉄筋材1の表面1aを荒らし、粗面にする。
【0027】
しかる後、図3の(B)に示すように、鉄筋材1を既知の加熱手段によって200〜250℃に加熱する。
【0028】
次いで、図3の(C)に示すように、200〜250℃に加熱された鉄筋材1の表面1aに、エポキシ粉体塗料(基体樹脂としてのエポキシ樹脂粉体a、図外の硬化剤及び顔料よりなる粉体塗料)4を吹き付けて、溶融付着させ、図3の(D)に示すように、厚さ100〜200μmの第一防食被膜2を形成する。
【0029】
そして、同じ温度条件下(200〜250℃)で、溶融状態にある第一防食被膜2の表面に、粒径がエポキシ樹脂粉体aの粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズbが混合されたエポキシ粉体塗料4を吹き付けて溶融付着させることにより、厚さ100〜200μmの第二防食被膜3を形成し、しかる後、第一,第二防食被膜付き鉄筋材を冷却して、図3の(E)に示すように、第二防食被膜3によって形成された無数の突起3aを有する高付着防食被膜付き鉄筋材を製造する。
【0030】
上記の製造方法によれば、鉄筋材1を、エポキシ樹脂の性能を低下させない温度域である200〜250℃に加熱し、この温度条件下で、エポキシ粉体塗料4を吹き付けて第一防食被膜2を形成するだけでなく、この温度条件下(200〜250℃)で、溶融状態にある第一防食被膜2の表面に、粒径がエポキシ樹脂粉体aの粒径の2.5〜3倍のアクリル系樹脂ビーズbが混合されたエポキシ粉体塗料4を吹き付けて第二防食被膜3を形成するので、融け残ったアクリル系樹脂ビーズbが局部的に浮き上がり、エポキシ粉体塗料4のバインダー成分(エポキシ樹脂)でコーティングされた状態の強固な突起3aが発現することになる。また、第一防食被膜と第二防食被膜は、溶融状態で付着することから、一層の被膜と同様な性質を示しており、第一,第二防食被膜間で剥離することがない。
【0031】
このように、200〜250℃といった比較的低温の条件下で、溶融状態にある第一防食被膜2の上に、粒径がエポキシ樹脂粉体aの粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズbが混合されたエポキシ粉体塗料4を吹き付けて第二防食被膜3を形成するので、第二防食被膜3自体にエポキシ樹脂でコーティングされた状態の強固な突起3aを発現させることができ、突起3aの剥がれ落ちる虞がなくなるので、高い付着性能を確保できるのである。
【0032】
しかも、エポキシ樹脂でコーティングされた状態の突起3aがアクリル系樹脂ビーズbによって形成されるので、高温下においても、突起を亜鉛金属末で形成した場合のようなエポキシ樹脂成分に対する悪影響がなく、たとえ、突起3aのコーティング層に亀裂が発生しても、亜鉛金属末で突起を形成する場合のような塩化物イオンによる劣化が生じる可能性がない。
【0033】
また、溶融状態にある第一防食被膜2の上に、アクリル系樹脂ビーズbが混合されたエポキシ粉体塗料4を吹き付けて第二防食被膜3を形成するので、1層目の第一防食被膜2にピンホールが生じても、その上に第二防食被膜3を形成することで、第一防食被膜2のピンホールが修復されることになり、たとえピンホールが修復されずに残っても、第一防食被膜2のピンホールと第二防食被膜3のピンホールとが合致する確率は殆どゼロであるから、第一防食被膜2のピンホールに起因する防食性能上の弱点が第二防食被膜3でカバーされ、第二防食被膜3のピンホールに起因する防食性能上の弱点が第一防食被膜2でカバーされることになる。
【0034】
従って、亜鉛金属末を用いた場合のようなエポキシ樹脂成分に対する悪影響や塩化物イオンによる劣化がないことと相まって、高い防食性能を確保できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る高付着防食被膜付き鉄筋材の模式的な断面図である。
【図2】要本発明に係る高付着防食被膜付き鉄筋材とコンクリートとの付着性能を説明する模式的な断面図である。
【図3】本発明に係る高付着防食被膜付き鉄筋材の製造方法の説明図である。
【図4】従来の高付着防食被膜付き鉄筋材の製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 鉄筋材
2 第一防食被膜
3 第二防食被膜
3a 突起
4 エポキシ粉体塗料
a エポキシ樹脂粉体
b アクリル系樹脂ビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋材の表面に、エポキシ粉体塗料による第一防食被膜を形成し、第一防食被膜の表面に、粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズを混合したエポキシ粉体塗料による第二防食被膜を形成して、第二防食被膜によって形成された無数の突起によりコンクリートに対する付着力を高めたことを特徴とする高付着防食被膜付き鉄筋材。
【請求項2】
鉄筋材を加熱し、鉄筋材の表面温度が200〜250℃にある間に、当該鉄筋材に、エポキシ粉体塗料を吹き付けて溶融付着させることにより第一防食被膜を形成すると共に、この温度条件下で、溶融状態にある第一防食被膜の表面に、粒径がエポキシ樹脂粉体の粒径の2.5倍〜3倍のアクリル系樹脂ビーズが混合されたエポキシ粉体塗料を吹き付けて溶融付着させることにより第二防食被膜を形成し、しかる後、第一,第二防食被膜付き鉄筋材を冷却することにより、第二防食被膜によって形成された無数の突起を有する高付着防食被膜付き鉄筋材を製造することを特徴とする防食被膜付き鉄筋材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−233614(P2006−233614A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51019(P2005−51019)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(503312848)株式会社明希 (2)
【出願人】(599175200)株式会社エム・ケイ・ケイ (2)
【Fターム(参考)】