説明

高分子シェルに封入された液状有機物コアを含む化学的機械的研磨パッド及びその製造方法

【課題】本発明は化学的機械的研磨パッドに関する。
【解決手段】高分子マトリックス内に沸点または分解点がが130℃以上の液状有機物を封入した高分子シェルのコアを含み、研磨面上に前記コアにより形成された開孔を有する化学的機械的研磨(CMP)パッド、及び前記パッドの製造方法が提供される。高硬度及び高密度を有する前記CMPパッドは、研磨効率及びウェーハの平坦度を改善し、そしてコアの均一な大きさを維持し、それにより、高い研磨効率及び安定した研磨性能を有するパッドを生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学的機械的研磨(CMP)パッド、そしてより具体的には、高分子シェルに封入された液状有機物を含む高分子マトリックスから形成されたCMPパッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に研磨工程は、粗い表面を摩耗してガラスのような平坦な表面を形成することを含む。研磨パッドを用いて物の表面を反復的かつ規則的に研磨する間に、研磨パッドと物との界面に存在する微粒子スラリーが物を研磨する。特に、半導体の製造工程ではウェーハの平坦化が半導体集積度に大きな影響を有するため、ウェーハの平坦化のために化学的機械的研磨(CMP)工程を行なわれなければならない。
【0003】
CMP工程に使用される研磨パッドに関する技術としては、三つの慣用法がある。
【0004】
一つは、ウールのような天然フェルト、天然の織繊維、ウレタンと混合されたフェルトポリエステル及び全ての種類の充填材のうちの一つで充填されたウレタンパッドである。もう一つは、充填材を含有しないがスラリーを貯蔵することのできるバブル或いは細孔を含む研磨パッドである。他のものは、スラリーを貯蔵することができるマイクロホールを持つ均一な高分子マトリックスを使用する研磨パッドである。
【0005】
前記ウレタンパッドについて、特許文献1は、細孔及び突出した繊維を使用するために、ウレタンと混合されたポリエステルフェルトから形成された研磨パッドを開示している。前記研磨パッドは優れた平坦度を示すものの、パッドが低い硬度を有するので、研磨速度が遅い。
【0006】
別の研磨パッドについて、特許文献2は、ポリウレタンに中空の球形の補助材を混合することにより形成された半円状の陥没部の表面構造を持つ研磨パッドを開示している。
【0007】
このようなパッドは優れた研磨速度と平坦度により広く使用されてきた。しかし、異種の補助材を混合するとき該補助材の低い密度によって均一な分散が難しく、これによって密度のバラツキが一定なパッドを均一に生産することが困難である。また、研磨が進行するほど平坦度の誤差が大きくなる。中空形状のため、研磨効率を向上させるために、高い硬度を持つパッドを製造することが難しい。
【0008】
特許文献3は、固相の高分子を充填材として使用した研磨パッドを開示している。しかし、前記パッドにはスラリーを捕集するための場所がなく、これによって研磨効率を低下させている。
【0009】
また、特許文献4は、水溶性の有機及び無機物質を高分子マトリックスに混合することにより形成された研磨パッドを開示している。水に溶けた物質の空き空間がスラリーを捕集することができる細孔として作用する。しかし、スラリーを捕集する空間を形成するための時間が必要であり、これにより、研磨効率の低下を引き起こす。また、水溶性物質の水溶性のために、物性の低下によって、パッドの寿命が短くなる。
【0010】
また、特許文献5号は、埋め込まれた液状微小要素を含有する研磨パッド及び該研磨パッドの製造方法を開示している。前記文献には、製造工程に使用する成分が全て液状であ
るため研磨パッドの製造工程が容易であると記載されている。しかし、初期にウレタンポリマーマトリックスと混合され埋め込まれた液状微小要素が一定の大きさを有しないことが知られていた。従って、液状微小要素によって形成されるスラリーを捕集するための空間の大きさを、ウレタン反応中に調節する必要がある。
【0011】
短いウレタン反応時間内に均一なスラリー捕集空間を形成する必要があるので、ウレタンと相溶性の無い液体が必要があり、そして製造工程の小さく変化で、均一なスラリー捕集空間の大きさを調節することは難しい。また、高分子マトリックスと相溶性の無い液状物質を使用するので、パッド表面への液状物質の移動現象が原因で接着力が低下する。また、ウレタンマトリックスの性能低下が原因でパッドの寿命が短く、そして空間に液体のみが存在するので、パッド自体の硬度が低下する。従って、半導体工程のウェーハ平坦化の要求を満たすことは難しい。
【0012】
また、特許文献6は、膨張された微細中空球体または未発泡加熱膨張性微細球状体及び水をイソシアネート基末端プレポリマー及び活性水素含有化合物と混合し硬化することにより製造された研磨パッド用ウレタン成形物を開示している。しかし、ウレタン反応中に微細球状体及び水により発生するバブルが膨張または発泡することによりバブルが変形して密度及び硬度が低下するという問題がある。また、スラリー捕集空間としてガスが使用されるので、パッドの硬度と密度が高くならない。
【0013】
特許文献7は、不活性ガスを混合することにより製造されたマイクロウレタンフォームの研磨パッドを開示している。これもまた、不活性ガスを混入することにより製造された研磨パッド自体の硬度を高めることが難しく、低い硬度のため、CMP工程中、中低そり及び侵食の問題が引き起こされ得、ウェーハの平坦度を向上させることが難しい。
【0014】
他に、表面テキスチャーを使用してパッドに研磨性能を与えた均質なウレタン非発泡体研磨パッドがある。しかし、前記パッドは物の研磨面にスクラッチを生じさせ、そして研磨工程中のスラリー量が不十分であるため、研磨速度が低い。
【0015】
これまで、細孔、充填材、不織布を混合するか、固化するか、含浸することにより弾性と硬度が与えられ、製造の容易性などを考慮してポリウレタン高分子マトリックスを使用した研磨パッドが主に使用されている。また、ポリウレタンマトリックスに加えて、前記異種物質の幾つか、細孔、バブル、及びCMP工程中に凹部を形成することができる異種物質を含んだパッドが、幾つかの半導体工程或いはガラスの平坦化工程に通常使用されている。
【0016】
しかし、ポリウレタンマトリックスが細孔またはバブルを含む場合には、分散の不均一性による密度のバラツキが大きくなり、それにより、ロット別の研磨性能の差及び同一ロット内でも部位別に密度差、及び平坦度の誤差を生じ、該誤差は研磨が進行するほどが大きくなるという問題がある。
【0017】
半導体工程の改良とともに、高い研磨効率、安定した研磨性能、ウェーハの平坦度及びパッド生産時の便宜性のような優れた性能を有する研磨パッドが求められている。
【0018】
日々高まる半導体の高集積化及び平坦化のための要求水準を満たすため、研磨パッドは高硬度、高い研磨効率及び安定した研磨性能を備えることが必要である。しかし、一般的に、パッドの研磨効率は高いけれども、該研磨効率は経時的に低下する。また、中空補助材の低い密度によって、高硬度及び高密度を持つパッドを安定して生産することは難しい。
【0019】
他方、安定した研磨性能を有するウレタン非発泡体研磨パッドは、高硬度及び高密度を有し、ウェーハの平坦度を維持することができる。しかし、該パッドの研磨効率は比較的低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,927,432号明細書
【特許文献2】米国特許第5,578,362号明細書
【特許文献3】米国特許第6,685,540号明細書
【特許文献4】米国特許第6,790,883号明細書
【特許文献5】韓国特許登録公報第0495404号明細書
【特許文献6】韓国特許公開第2001−0005435号明細書
【特許文献7】米国特許第6,777,455号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前記のように、一般的な研磨パッドが、日々高まる半導体の高集積化及び高平坦化のための要求水準を満たすことは難しい。
【0022】
従って、本発明の一側面は、高硬度、高密度、高い研磨効率及び安定した研磨性能を備えた研磨パッド、並びに前記研磨パッドの製造における便宜性を伴う、該研磨パッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一側面によると、高分子マトリックス内に沸点または分解点が130℃以上の液状有機物を封入した高分子シェルのコアを含み、研磨面上に前記コアにより形成された開孔を有する化学的機械的研磨(CMP)パッドが提供される。
前記高分子シェルは、0.5〜1.5m/cm3 の密度を有し得る。
前記高分子シェルは、ポリスチレン−アクリレートコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、シリコーン、エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
前記液状有機物が、Cn m (nは9乃至16の整数である。)の混合物からなる炭化水素溶媒または変性炭化水素溶媒;フタレート可塑剤;分子量10000以下で、粘度5×108 cps/20℃以下の液状オリゴマー;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のような高沸点溶媒;及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
前記フタレート可塑剤は、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジオクチルアジペート、トリオクチルトリメリテート、ジブチルフタレート及びジイソデシルフタレートからなる群から選択され得る。前記液状オリゴマーは、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリメチレングリコール、エステルポリオール、カーボネートポリオール、ポリハンストフ(Hanstoff)分散物及びポリイソシアネート重付加物からなる群から選択され得る。
前記高分子マトリックスは、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、エポキシ、シリコーン、ポリカーボネート及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
前記コアは、高分子マトリックス内に、樹脂100部当たり(phr)1〜200部含まれ得る。
前記コアは1〜200μmの大きさを有し得る。
前記パッドは60ショアーD又はそれを越える硬度を有し得る。
【0024】
本発明のもう一つの側面によると、主材料及び硬化剤を使用する2液型注型法により高
分子マトリックスを製造し、そして前記高分子マトリックスを、液状有機物を封入した高分子シェルのコアと混合することからなるCMPパッドの製造方法が提供される。
【0025】
より好ましくは、前記液状有機物を封入した高分子シェルのコアは、前記主材料及び前記硬化剤の少なくとも一方と混合され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の例示的な実施態様の研磨パッドを説明する概略構成図である。
【図2】図2は、研磨パッドの硬度の低下を説明するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の例示的な実施態様を詳しく説明する。
【0028】
図1は、液状有機物2を封入した高分子シェル1の形態のコアを含む高分子マトリックス3からなる化学的機械的研磨(CMP)パッドを説明する概略構成図である。
【0029】
本発明において、高分子マトリックスは、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、エポキシ、シリコーン、ポリカーボネート及びこれらの混合物の一つから形成され得る。特に、前記高分子マトリックスは、ポリウレタンから形成され得る。
【0030】
前記ポリウレタンは、主材料と硬化剤からなる2液を注型することにより製造され得る。主材料を硬化剤と混合するとき、高分子シェルに封入された液状有機物を含有するコアは、主材料及び硬化剤の少なくとも一つに混合され得る。
【0031】
前記高分子マトリックス内には液状有機物が封入された高分子シェルの形態のコアが含まれるが、それにより、研磨パッドの硬度を60Dより高くすることができ、研磨工程中、パッドが摩耗したとき、パッド内のコアが露出及び開口して、スラリーを貯蔵する空間を継続的に提供する。
【0032】
従来の中空の細孔を使用することによっては、高硬度及び高密度を持つ研磨パッドを得ることは不可能である。本発明の例示的な実施態様によると、液状有機物を封入したコアを含ませることにより、高硬度及び高密度を持つ研磨パッドを得ることができ、そして互いに似た密度を有する物質を混合することにより、均一な研磨パッドを製造することができる。さらに、研磨工程に長い時間がかかった後でも、前記の通りに製造された研磨パッドの底部がスラリーの攻撃により軟化してパッド自体の硬度が経時的に低下するのを抑制することができるため、安定した研磨効率を得ることができる。
【0033】
前記高分子シェルとしては、マトリックスの混合不良を減らし、そしてウェーハの平坦度のバラツキを減らすために、ウレタンなどの高分子マトリックスと類似した密度を持つ高分子物質を使用することができる。詳しくは、密度は0.5〜1.5g/cm3 であり得る。また、高分子シェルは、ポリスチレン−アクリレートコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、シリコーン、エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される高分子シェルから形成され得る。特に、高分子シェルはポリアクリレートであってよい。
【0034】
前記液状有機物は、湖成ケメックス(株)(Hosung Chemex Co.,Ltd.)製のCX−2100、CX−2500及びCX−2700のようなCn m (n
は9乃至16の整数である。)の混合物である炭化水素溶媒または変性炭化水素溶媒;ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジオクチルアジペート、トリオクチルトリメリテート、ジブチルフタレート及びジイソデシルフタレートのようなフタレート可塑剤;ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリメチレングリコール、エステルポリオール、カーボネートポリオール、ポリハンストフ(Hanstoff)分散物及びポリイソシアネート重付加物のような変性ポリオールである分子量10000以下で、粘度5×108 cps/20℃以下で、分解点が130℃以上の液状オリゴマー;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のような高沸点溶媒;及びこれらの混合物からなる群から選択されることができる。
【0035】
また、前記液状の有機物の沸点または分解点は130℃以上、より好ましくは160℃以上であって、高分子マトリックスの重合反応熱によっても容易に揮発しないことが好ましい。液状有機物の沸点が130℃より低い場合には、ウレタン反応中のコアの変形により高密度及び高硬度の研磨パッドを得ることができない。
【0036】
前記コアは、高分子マトリックスを基準として、1〜200phr、より好ましくは10〜60phrまで高分子マトリックス内に含まれ得る。コアの量が1phr未満である場合、研磨速度及び平坦性の水準などの研磨特性が低い。コアの量が200phrを超える場合には、コアの分散を均一にすることが困難であるため、研磨パッドを安定して製造し且つ安定した研磨効率を得るのが困難である。
【0037】
前記コアの大きさは1〜200μm、より具体的には10〜70μmであってよい。大きさが1μm未満の場合は、研磨スラリーの量が少ないため、研磨速度及び平坦性のような研磨特性は向上しない。大きさが200μmを超える場合は、研磨パッド用ウレタン成形物として適当でない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
ポリ(テトラメチレングリコール)(PTMEG)(官能基2、Mw=1000)1000gを反応容器に投入し、そしてメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)1262gを反応容器に投入した。2液を温度80℃で3時間撹拌することにより、両末端がイソシアネートからなるプレポリマー(主材料)を製造した。これに、高分子シェルに封入された液状有機物であるMS−220D[ドンジン セミケム株式会社(Dongjin Semichem Co.,Ltd.)]500gを投入し、そして高速ミキサーを使用して混合した。MS−220Dは、160℃以上の沸点を持つ炭化水素液状有機物(Cn m )(nは9乃至16の整数である。)の混合溶媒である液状有機物を封入したポリアクリレートシェルからなるコアである。
【0040】
主材料と混合される硬化剤は、容器に4,4’−メチレンビス(O−クロロアニリン)1080gを投入して130℃で3時間加熱し、そしてそれから気泡を除くことにより製造した。
【0041】
主材料を硬化剤と、1:1のウレタン反応当量で、高速ミキサーを使用して混合し、そして25インチ(63.5cm)の円形オープンモールドに注いで硬化させた。前記のように製造されたウレタンケーキを熟成のため80℃で24時間放置して完全に反応させた。
【0042】
この場合、製造されたポリウレタンは1.105g/cm3 の密度及びショアーDで67Dの硬度を有していた。ポリウレタン塊を長さ20インチ(50.8cm)に切断及びスライスした。幅400μm及びピッチ0.5インチを持つXY形状に形成された溝を、レーザを使用して、ポリウレタンの表面に形成した。両面テープを使用してポリウレタンの底部に緩衝パッドを取り付けることにより、研磨パッドを製造した。
【0043】
実施例2
MS−220Dの投入量を除いては、実施例1と同様の方法を使用してウレタンケーキを製造した。この場合、前記投入量は1000gであった。
【0044】
実施例3
MS−220Dの投入量を除いては、実施例1と同様の方法を使用してウレタンケーキを製造した。この場合、前記投入量は1500gであった。
【0045】
実施例4
実施例1と同様の方法を使用してウレタンケーキを製造し、レーザを使用して表面に、大きさ180μm及びピッチ300μmを持つマイクロホール及び溝を同時に形成することにより研磨パッドを製造した。この場合、ポリウレタンケーキは1.1g/cm3 の密度及び硬度は66ショアーDの硬度を有していた。
【0046】
比較例1
液状有機物を封入した高分子シェルのコアを除いては、実施例1と同様の方法を用いてウレタンケーキを製造した。
【0047】
この場合、ポリウレタンケーキは、1.145g/cm3 の密度及びショアーDで68Dの硬度を有していた。ポリウレタン塊を長さ20インチ(50.8cm)に切断及びスライスした。レーザを使用してポリウレタンの表面に、大きさ180μm及びピッチ300μmを持つマイクロホールを形成した。その後、両面テープを使用してポリウレタンの底部に緩衝パッドを取り付けることにより、研磨パッドを製造した。
【0048】
比較例2
ユニローヤル(Uniroyal)社製アジペン(ADIPENE)L−325(登録商標)からなるポリエーテルプレポリマー500重量部と濃度2.2meg/gのイソシアネートグループを、エクスパンセル(EXPANCEL)551DE(塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなるマイクロシェル)13gと混合し、気泡を除くために圧縮し、そして温度120℃で予め溶融されていた4,4’−メチレンビス(O−クロロアニリン)145gを撹拌しながら添加して、混合物を製造した。この混合物を約1分間撹拌し、円形のオープンモールドに入れ、そして温度100℃で6時間オーブンで熟成して、ポリウレタン微細発泡体ブロック(セル直径40μm)を得た。得られたポリウレタン微細発泡体ブロックは、0.75g/cm3 の密度を有していた。レーザ工程を使用して溝を形成した。
【0049】
実施例1乃至4並びに比較例1及び2でそれぞれ製造された研磨パッドの性能を試験した。製造されたパッドの化学的機械的研磨(CMP)工程に適用する条件としては、CMP機としてアバンチ(AVANTI)−472(IPEC株式会社製)(IPEC Co.,Ltd.)を使用し、スラリーとしてシリカスラリー[第一毛織社(Cheil Industries)製、スタープラナー(Starplanar)−4000]を使用し、流量は200mL/分、研磨荷重は7psi(48.3kPa)、研磨パッド回転数46rpm、ウェーハ回転数38rpmであった。前記条件下で、ウェーハ均一性、平均研磨速度及びスクラッチ数を測定した。結果を下記の表1に示す。
【0050】
平均研磨速度
平均研磨速度は、1μm(10000Å)の熱酸化膜が塗布された8インチ(20.3cm)シリコンウェーハを前記研磨条件で1分間研磨することにより試験した。
【0051】
ウェーハ均一性
ウェーハ均一性は、1μm(10000Å)の熱酸化膜が塗布された8インチ(20.3cm)シリコンウェーハを前記研磨条件で1分間研磨した後、98箇所のウェーハの層厚を測定することにより得られた。ウェーハ均一性は下記の式により得られた。
ウェーハ均一性(%)=[(最大厚さ−最少厚さ)/2×平均層厚]×100(式)
【0052】
スクラッチ数
スクラッチ数は、1μm(10000Å)の熱酸化膜が塗布された8インチ(20.3cm)シリコンウェーハを前記研磨条件で1分間研磨し、該ウェーハを洗浄及び乾燥した後、KLA[テンコール株式会社(TENCOR Co.,Ltd.)製KLA2112]を使用することにより、1枚のウェーハに形成されたマイクロスクラッチ数を測定することにより得られた。スクラッチ数が小さいほど、研磨パッドはより優れた性能を有する。商業的に通用するスクラッチ数は通常、500個未満であり得る。
【0053】
【表1】

【0054】
前記表1に示されるように、実施例1乃至4によって得られた研磨パッドは比較例2に比べて高硬度及び高密度を有し、そして平均研磨速度、ウェーハ均一性、及びスクラッチ数が比較例1及び比較例2に比べてより優れた値を有する。各含量に対する硬度の低下の場合は、多量である45phrを混合しても、本発明の研磨パッドは、0.95g/cm3 の高い密度を有し、細孔を含む比較例2の54Dよりも著しく高く且つ高硬度を有するハードパッドとして使用される比較例1の68Dよりわずかに低い65Dの硬度を有する。また、研磨速度、スクラッチ数及びウェーハ均一性の場合は、本発明の研磨パッドは比較例1及び比較例2と比較してより高く、そして安定した数値を示している。
【0055】
実施例5
高分子シェル内に封入された液状有機物からなるコアを混合することにより、実施例1
と同様の方法を用いてウレタンケーキを製造した。
【0056】
この場合、MS−220Dをポリマーマトリックスの容積に対して5%、10%、20%、30%及び40%の容積比で添加混合して、5枚の研磨パッドを製造した。各研磨パッドの硬度を測定した。測定結果を図2に示す。
【0057】
比較例3
高分子シェル内に封入された液状有機物コアの代わりにエクスパンセル551DE(塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなるマイクロシェル)を使用することにより、比較例2と同様の方法を用いてウレタンケーキを製造した。
【0058】
この場合、前記エクスパンセル551DEの含量をポリマーマトリックスの容積に対してそれぞれ5%、10%、20%、30%及び40%の容積比で添加混合して5枚の研磨パッドを製造した。各研磨パッドの硬度を測定した。測定結果を図2に示す。
【0059】
比較例4
高分子シェル内に封入された液状有機物コアの代わりに大豆油を使用することにより、実施例5と同様の方法を用いてウレタンケーキを製造した。
【0060】
この場合、前記大豆油の含量をポリマーマトリックスの容積に対してそれぞれ5%、10%、20%、30%及び40%の容積比で添加混合して5枚の研磨パッドを製造した。各パッドの硬度を測定した。測定結果を図2に示す。
【0061】
比較例5
高分子シェル内に封入された液状有機物コアの代わりにβ−シクロデキストリンを使用することにより、実施例5と同様の方法を用いてウレタンケーキを製造した。
【0062】
この場合、前記β−シクロデキストリンの含量をポリマーマトリックスの容積に対してそれぞれ5%、10%、20%、30%及び40%の容積比で添加混合して5枚の研磨パッドを製造した。各パッドの硬度を測定した。測定結果を図2に示す。
【0063】
図2は、実施例5及び比較例3乃至5によって製造された研磨パッドの硬度変化を測定した結果を説明するグラフである。図2を参照すると、液状有機物形態のコアを混合することにより製造された研磨パッドと慣用の研磨パッドとの間には、明らかに差があることが分かる。従って、研磨パッドの硬度が維持されると、それにより、研磨効率及びウェーハの平坦度が維持されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の一側面は、より高い研磨効率、より安定した研磨性能及びウェーハの平坦度を得るために、高分子シェル内に封入された液状有機物の形態のコアを高分子マトリックスに混合することによって製造された研磨パッドを提供する。従って、前記研磨パッドは、半導体工程を集積化するために重要であり得る研磨効率及びウェーハの平坦度を向上させるための60Dを越える硬度を有することができる。低い密度を有する中空補助材により生じる不具合は、ウレタンと同様の密度を有する、高分子シェル内に封入された液状有機物を使用することにより減少させることができる。温度130℃でのウレタン反応において、コアの大きさは均一に維持され、それにより、高い研磨効率及び安定したパッド生産が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックス内に沸点または分解点が130℃以上の液状有機物を封入した高分子シェルのコアを含み、研磨面上に前記コアにより形成された開孔を有する化学的機械的研磨(CMP)パッドであって、
前記液状有機物はCn m (nは9乃至16の整数である。)の混合物からなる炭化水素溶媒または変性炭化水素溶媒;フタレート可塑剤;分子量10000以下で、粘度5×108 cps/20℃以下の液状オリゴマー;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のような高沸点溶媒;及びこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも一つであるCMPパッド。
【請求項2】
前記高分子シェルが、0.5〜1.5g/cm3 の密度を有する、請求項1に記載のCMPパッド。
【請求項3】
前記高分子シェルが、ポリスチレン−アクリレートコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、シリコーン、エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1に記載のCMPパッド。
【請求項4】
前記フタレート可塑剤が、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジオクチルアジペート、トリオクチルトリメリテート、ジブチルフタレート及びジイソデシルフタレートからなる群から選択されている、請求項1に記載のCMPパッド。
【請求項5】
前記液状オリゴマーが、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリメチレングリコール、エステルポリオール、カーボネートポリオール、ポリハンストフ(Hanstoff)分散物及びポリイソシアネート重付加物からなる群から選択されている、請求項1に記載のCMPパッド。
【請求項6】
前記高分子マトリックスが、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、エポキシ、シリコーン、ポリカーボネート及びこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1に記載のCMPパッド。
【請求項7】
前記コアが、高分子マトリックス内に、樹脂100部当たり(phr)1〜200部含まれている、請求項1に記載のCMPパッド。
【請求項8】
前記コアが1〜200μmの大きさを有する、請求項1に記載のCMPパッド。
【請求項9】
前記パッドが60ショアーD又はそれを越える硬度を有する、請求項1に記載のCMPパッド。
【請求項10】
主材料及び硬化剤を使用する2液型注型法により高分子マトリックスを製造し、そして前記高分子マトリックスを、沸点または分解点が130℃以上の液状有機物を封入した高分子シェルのコアと混合することからなるCMPパッドの製造方法であって、
前記液状有機物はCn m (nは9乃至16の整数である。)の混合物からなる炭化水素溶媒または変性炭化水素溶媒;フタレート可塑剤;分子量10000以下で、粘度5×108 cps/20℃以下の液状オリゴマー;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のような高沸点溶媒;及びこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも一つである方法。
【請求項11】
前記液状有機物を封入した高分子シェルのコアが、前記主材料及び前記硬化剤の少なくとも一つと混合される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記高分子シェルのコアが、高分子マトリックス内に1〜200phr含まれる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記高分子マトリックスが、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、エポキシ、シリコーン、ポリカーボネート及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記高分子シェルが、0.5〜1.5g/cm3 の密度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記高分子シェルが、ポリスチレン−アクリレートコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、シリコーン、エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記フタレート可塑剤が、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジオクチルアジペート、トリオクチルトリメリテート、ジブチルフタレート、ジイソデシルフタレートからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記液状オリゴマーが、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリメチレングリコール、エステルポリオール、カーボネートポリオール、ポリハンストフ(Hanstoff)分散物及びポリイソシアネート重付加物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−544480(P2009−544480A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521694(P2009−521694)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003513
【国際公開番号】WO2008/013377
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(506183111)エスケーシー カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】