説明

高分子化合物及びそれを用いた有機半導体素子

【課題】高いキャリア移動度を有する高分子化合物を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される構造単位を有する高分子化合物であって、


(1)
〔式中、Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。nは、0〜3の整数を表す。Arが複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。〕2個の高分子化合物の主鎖間のキャリア伝導性と高分子化合物の主鎖内のキャリア伝導性の両方が大きく、高いキャリア移動度を有する高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物及びそれを用いた有機半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性を示す高分子化合物は有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)や有機トランジスタなどの有機半導体素子用の有機半導体材料として用いられる。
【0003】
有機半導体素子に用いられる導電性高分子化合物としては、例えば、ポリ(2,5−ビス(3−アルキルチオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン)が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、従来の導電性高分子化合物のキャリア移動度は十分高いとは言えず、それを用いた有機半導体素子(例えば有機トランジスタ)の性能が十分ではなく、より高い性能を示す有機半導体素子を与え得る高いキャリア移動度を有する高分子化合物が求められている。
【0005】
高いキャリア移動度を有する高分子化合物として、例えば、特許文献1には、共役高分子化合物であって、その部分構造2個のスタッキング安定構造において、式
【0006】
【化1】

で表される分子2個のスタッキング安定構造と比較して、理論化学的手法を用いて計算したHOMO間および/またはLUMO間の共鳴積分絶対値が大きいことを特徴とする共役高分子化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−32426
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ネイチャー マテリアルズ(Nature Materials)、2006年、第5巻、p.328−333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、より高い性能を示す有機半導体素子を与えるために、より高いキャリア移動度を有する高分子化合物が求められている。
【0010】
本発明の目的は、高いキャリア移動度を有する高分子化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、式(1)で表される構造単位を有する高分子化合物であって、
【0012】
【化2】

(1)
【0013】
〔式中、Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。nは、0〜3の整数を表す。Arが複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。〕
【0014】
式(2)で表される化合物が2個スタッキングした安定構造の理論化学的手法を用いて計算した最高被占軌道間共鳴積分の絶対値よりも、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物であって、該化合物のHが結合している原子とHが結合している原子との間の距離が式(2)で表される化合物のCとCとの間の距離に最も近い化合物が2個スタッキングした安定構造の理論化学的手法を用いて計算した最高被占軌道間共鳴積分の絶対値が大きく、かつ、
【0015】
【化3】

(2)
【0016】
〔式中、C及びCは、炭素原子を表す。Hは水素原子を表す。〕
【0017】
【化4】

(3) (4)
【0018】
〔式中、mは1以上の整数を表す。Dは式(1)で表される構造単位に含まれる部分構造であってArで表される基を含む部分構造を表す。H及びHは、水素原子を表す。Ar、Ar及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【0019】
式(5)で表される2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値よりも、式(6)で表されるEの値が大きい高分子化合物を提供する。
【0020】
【化5】

(5)
【0021】
〔式中、C及びCは、炭素原子を表す。Hは、水素原子を表す。〕
【0022】
【数1】

【0023】
〔式中、Iは、第1の2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値を表す。Iは、第2の2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値を表す。LAは、第1の2価の基の第1の金電極が結合している原子と第2の金電極が結合している原子との間の距離、LBは第2の2価の基の第1の金電極が結合している原子と第2の金電極が結合している原子との間の距離、LSは式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離を表す。第1の2価の基は、式(7)で表される2価の基及び式(8)で表される2価の基からなる群から選ばれる2価の基であって、その第1の金電極と結合する原子と第2の金電極と結合する原子との間の距離が、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離よりも長く、かつ、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離に最も近くなる2価の基を表す。第2の2価の基は、式(7)で表される2価の基及び式(8)で表される2価の基からなる群から選ばれる2価の基であって、その第1の金電極と結合する原子と第2の金電極と結合する原子との間の距離が、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離よりも短く、かつ、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離に最も近くなる2価の基を表す。
【0024】
【化6】

(7) (8)
(式中、Ar、Ar、D、n及びmは、前述と同じ意味を表す。)〕
【0025】
ある一形態においては、前記Arが、式(9)で表される2価の基である。
【0026】
【化7】

(9)
【0027】
〔式中、Yは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。Vは、水素原子又は1価の有機基を表す。Zは、水素原子が付いた炭素原子、又は窒素原子を表す。2個あるYは、同一でも相異なってもよい。2個あるZは、同一でも相異なってもよい。2個あるVは、同一でも相異なってもよい。〕
【0028】
また、本発明は、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極及び有機半導体層を有し、該有機半導体層中に前記高分子化合物を含む有機半導体素子を提供する。
【0029】
また、本発明は、前記有機半導体素子を含有する装置を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の高分子化合物はキャリア移動度が高く、高い性能を示す有機半導体素子を製造するために本発明は極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の高分子化合物及びそれを用いた有機半導体素子について詳細に説明する。
【0032】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される構造単位を有する。
【0033】
【化8】

(1)
【0034】
〔式中、Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。nは、0〜3の整数を表す。Arが複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。〕
【0035】
Ar及びArで表されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、テトラセンジイル基、ピレンジイル基、ペンタセンジイル基、ペリレンジイル基、フルオレンジイル基が挙げられる。
【0036】
Ar及びArで表されるヘテロアリーレン基としては、例えば、オキサジアゾールジイル基、チアジアゾールジイル基、オキサゾールジイル基、チアゾールジイル基、チオフェンジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、セレノフェンジイル基、ピリジンジイル基、ピラジンジイル基、ピリミジンジイル基、トリアジンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、ベンゾピロールジイル基、ベンゾフランジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、チエノチオフェンジイル基、ジチエノチオフェンジイル基、チエノチエノチエノチオフェンジイル基、ペンタチエノアセンジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、ナフトジチオフェンジイル基、シクロペンタジチオフェンジイル基、ジチエノピロールジイル基、ジチエノシロールジイル基、チアゾロチアゾールジイル基、ベンゾチアジアゾールジイル基、キノキサリンジイル基、ジケトピロロピロールジイル基、ペリレンビスイミドジイル基があげられる。
【0037】
前記アリーレン基又は前記ヘテロアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0038】
Arとしては、式(11)で表される基が好ましい。
【0039】
【化9】

(11)
【0040】
〔式中、Xは、酸素原子、硫黄原子、=N−Vで表される基又は=C(V)で表される基を表す。Yは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。Vは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を表す。Zは、−CH=で表される基又は窒素原子を表す。2個あるYは、同一でも相異なってもよい。2個あるZは、同一でも相異なってもよい。Vが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。〕
【0041】
Vで表される1価の有機基としては、シアノ基、又は、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよく、シクロアルキル基であってもよい。該アルキル基中の1つの−CH−で表される基又は2つ以上の隣接していない−CH2−で表される基が、互いに独立して、酸素原子、硫黄原子、−NR−で表される基、−SiR−で表される基、−CO−で表される基、−COO−で表される基、−OCO−で表される基、−OCOO−で表される基、−S−CO−で表される基、−CO−S−で表される基、−NR−CO−で表される基、−CO−NR−で表される基、−CR=CR−で表される基、−C≡C−で表される基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基で置換されていてもよい。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜12個のアルキル基を表す。前記アリーレン基としては、1,4−フェニレン基、2,2’−ビフェニル−5,5’−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。前記ヘテロアリーレン基としては、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、1,3−チアゾール−2,5−ジイル基、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基、フラン−2,5−ジイル基、1,3−オキサゾール−2,5−ジイル基、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基が好ましい。アルキル基中の−CH−で表される基が置換されている場合、高分子化合物のキャリア移動度を向上させる観点からは、酸素原子で置換されていることが好ましい。
【0042】
式(11)で表される基において、Xが=C(V)で表される基であって2個あるVがともにアルキル基である場合、一方のV中の炭素原子が有する水素原子を1個取り除き、かつ、他方のV中の炭素原子が有する水素原子を1個取り除き、水素原子を取り除いた炭素原子同士を単結合で結合させて環状構造を形成してもよい。また、一方のV中の炭素原子が有する水素原子を2個取り除き、かつ、他方のV中の炭素原子が有する水素原子を2個取り除き、水素原子を取り除いた炭素原子同士を二重結合で結合させて環状構造を形成してもよい。
【0043】
Vとしては、水素原子、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜30の直鎖状のアルキル基がさらに好ましい。
【0044】
高分子化合物のキャリア移動度を向上させる観点からは、式(11)中、Xは、=N−Vで表される基、=C(V)で表される基が好ましい。
【0045】
式(11)で表される構造単位を含有する高分子化合物は、複素環中のヘテロ原子が寄与する静電相互作用により、2分子間でHOMO間共鳴積分の絶対値が大きくなる配置を取りやすくなる。また、キャリアを伝導する共役ニ重結合にヘテロ原子から電子を供与する作用、あるいは、ヘテロ原子が共役ニ重結合から電子を吸引することにより、主鎖内のキャリア伝導を高める構造及び電子状態を取りやすくなり、2つの高分子化合物間の主鎖間の高いキャリア伝導性と高分子化合物の主鎖内の高いキャリア伝導性を有する。
【0046】
Arは、式(9)で表される基が好ましく、式(10)で表される基がより好ましい。
【0047】
【化10】

(9) (10)
【0048】
〔式中、Y、V及びZは、前述と同じ意味を表す。Hは、水素原子を表す。〕
【0049】
式(1)で表される構造単位としては、式(12)で表される構造単位が好ましい。
【0050】
【化11】

(12)
〔式中、X、Y及びZは、前述と同じ意味を表す。〕
【0051】
式(12)中、2個あるXは、同一でも相異なってもよい。4個あるYは、それぞれ同一であっても相異なってもよい。2個あるZは、同一でも相異なってもよい。高分子化合物のキャリア移動度を向上させる観点からは、Xは、=N−Vで表される基又は=C(V)で表される基が好ましく、=C(V)で表される基がより好ましく、=CH(V)で表される基がさらに好ましい。
【0052】
式(12)で表される構造単位としては、式(13)で表される構造単位が好ましい。
【0053】
【化12】

(13)
【0054】
〔式中、Xは、前述と同じ意味を表す。〕
【0055】
式(13)中、2個あるXは、同一でも相異なってもよい。高分子化合物のキャリア移動度を向上させる観点からは、Xは、=N−Vで表される基又は=C(V)で表される基が好ましく、=C(V)で表される基がより好ましく、=CH(V)で表される基がさらに好ましい。
【0056】
式(13)で表される構造単位としては、式(14)で表される構造単位が好ましい。
【0057】
【化13】

(14)
【0058】
〔式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基を表す。該アルキル基中の1つの−CH−で表される基又は2つ以上の隣接していない−CH2−で表される基が、互いに独立して、酸素原子、硫黄原子、−NR−で表される基、−SiR−で表される基、−CO−で表される基、−COO−で表される基、−OCO−で表される基、−OCOO−で表される基、−S−CO−で表される基、−CO−S−で表される基、−NR−CO−で表される基、−CO−NR−で表される基、−CR=CR−で表される基、−C≡C−で表される基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基で置換されていてもよい。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜12個のアルキル基を表す。Hは、水素原子を表す。〕
【0059】
及びRで表されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基であってもよい。かかるアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−ブチルオクチル基、2−エチルドデシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルドデシル基、2−デシルテトラデシル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜26のアルキル基が挙げられる。前記アリーレン基としては、1,4−フェニレン基、2,2’−ビフェニル−5,5’−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。前記ヘテロアリーレン基としては、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、1,3−チアゾール−2,5−ジイル基、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基、フラン−2,5−ジイル基、1,3−オキサゾール−2,5−ジイル基、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基が好ましい。
【0060】
上記アルキル基中の−CH−で表される基が置換されている場合、高分子化合物のキャリア移動度を向上させる観点からは、酸素原子(−O−)で置換されていることが好ましい。この場合、R及びRで表される基は、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、2−ブチルオクチルオキシ基、2−エチルドデシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、2−オクチルドデシルオキシ基、2−デシルテトラデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、3−[2−〔2−(2−ブトキシ)エトキシ〕エトキシ]プロピル基等の炭素数5〜26のアルコキシ基である。
【0061】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される構造単位以外の構造単位を有していてもよい。式(1)で表される構造単位以外の構造単位としては、例えば、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基、及び、それらを2〜5個連結した基が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、テトラセンジイル基、ピレンジイル基、ペンタセンジイル基、ペリレンジイル基、フルオレンジイル基が挙げられる。ヘテロアリーレン基としては、例えば、オキサジアゾールジイル基、チアジアゾールジイル基、オキサゾールジイル基、チアゾールジイル基、チオフェンジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、セレノフェンジイル基、ピリジンジイル基、ピラジンジイル基、ピリミジンジイル基、トリアジンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、ベンゾピロールジイル基、ベンゾフランジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、チエノチオフェンジイル基、ジチエノチオフェンジイル基、チエノチエノチエノチオフェンジイル基、ペンタチエノアセンジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、ナフトジチオフェンジイル基、シクロペンタジチオフェンジイル基、ジチエノピロールジイル基、ジチエノシロールジイル基、チアゾロチアゾールジイル基、ベンゾチアジアゾールジイル基、キノキサリンジイル基、ジケトピロロピロールジイル基、ペリレンビスイミドジイル基があげられる。前記アリーレン基又は前記ヘテロアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。本発明の高分子化合物が含有する構造単位の合計量を100とした場合、式(1)で表される構造単位の量は、70以上であることが好ましく、80以上がより好ましく、90以上がさらに好ましい。
【0062】
高分子化合物のキャリア移動度を向上させる観点からは、本発明の高分子化合物は、共役高分子化合物であることが好ましく、式(1)で表される構造単位のみからなることがより好ましい。
【0063】
本発明の高分子化合物は、2個の高分子化合物の主鎖間のキャリア伝導性と高分子化合物の主鎖内のキャリア伝導性の両方が大きく、高いキャリア移動度を有する。
【0064】
2個の高分子化合物の主鎖間のキャリア伝導性は、式(2)で表される分子を基準分子とするHOMO(最高被占分子軌道)間共鳴積分の絶対値で評価する。基準分子と理論計算対象とする高分子化合物が含有する部分構造を含む分子について、同じ理論化学的手法を用いて、2分子のスタッキング安定構造におけるHOMO(最高被占分子軌道)間共鳴積分の絶対値を算出する。
【0065】
【化14】

(2)
【0066】
〔式中、C及びCは、炭素原子を表す。Hは水素原子を表す。〕
【0067】
HOMO間共鳴積分の絶対値の算出に用いる高分子化合物が含有する部分構造を含む分子には、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物であって、該化合物のHが結合している原子とHが結合している原子との間の距離が式(2)で表される化合物のCとCとの間の距離に最も近い化合物を用いる。
【0068】
【化15】

(3) (4)
【0069】
〔式中、mは1以上の整数を表す。Dは式(1)で表される構造単位に含まれる部分構造であってArで表される基を含む部分構造を表す。H及びHは、水素原子を表す。Ar、Ar及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【0070】
nが1である場合、Dで表される部分構造は−Ar−で表される構造である。nが2である場合、Dで表される部分構造は−Ar−で表される構造、又は、−Ar−Ar−で表される構造である。nが3である場合、Dで表される部分構造は−Ar−で表される構造、−Ar−Ar−で表される構造、又は、−Ar−Ar−Ar−で表される構造である。
【0071】
本発明の高分子化合物が含有する部分構造を含む式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物であって、該化合物のHが結合している原子とHが結合している原子との間の距離が式(2)で表される化合物のCとCとの間の距離に最も近い化合物が2個スタッキングした安定構造の理論化学的手法を用いて計算した最高被占軌道間共鳴積分の絶対値(以下、「高分子化合物に係る共鳴積分値」という場合がある。)は、式(2)で表される化合物が2個スタッキングした安定構造の理論化学的手法を用いて計算した最高被占軌道間共鳴積分の絶対値(以下、「式(2)で表される化合物に係る共鳴積分値」という場合がある。)よりも大きくなる。
【0072】
高分子化合物に係る共鳴積分値が式(2)で表される化合物に係る共鳴積分値より大きくなる高分子化合物は、式(2)で表される化合物より高い主鎖間のキャリア伝導性を示す。
【0073】
本発明の高分子化合物の中でも、高分子化合物に係る共鳴積分値が式(2)で表される化合物に係る共鳴積分値の1.1倍以上である高分子化合物は、より高い2個の高分子化合物の主鎖間のキャリア伝導性を示すため好ましい。
【0074】
また、高分子化合物に係る共鳴積分値が0.29eV以上である高分子化合物が、より高い2個の高分子化合物の主鎖間のキャリア伝導性を示すためさらに好ましい。
【0075】
HOMO間共鳴積分の絶対値が大きいほど、分子間をホールが移動する確率が高くなるため、2個の高分子化合物の主鎖間のキャリア伝導性は大きくなる。
【0076】
本発明において、HOMO間共鳴積分の絶対値の計算に用いる理論化学的手法とは、MPWB1K密度汎関数と6-31G*基底関数を組み合わせた手法である(以下、「MPWB1K/6-31G*法」という場合がある。)。ケミカル フィジックス レターズ(Chem. Phys. Lett.)、2007年、第439巻、p.35−39に記載されているように、前記手法を用いて計算される全エネルギーが極小となるように構造パラメータを最適化することによって、2分子のスタッキング安定構造を予測することが可能である。計算はGaussian09等の量子化学計算プログラムを用いて実行可能である。
【0077】
また、HOMO間共鳴積分の絶対値は、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物であって、該化合物のHが結合している原子とHが結合している原子との間の距離が式(2)で表される化合物のCとCとの間の距離に最も近い化合物2個(以下A、Bとする)がスタッキング安定構造と同一の空間配置を独立にとっている状態におけるHOMO(以下ΨAHOMO、ΨBHOMOとする)を、スタッキング安定構造(以下ABとする)における分子軌道(以下、ΨiABとする。iは分子軌道番号を表す。)の線形一次結合(式(21))で表することにより計算する。
【0078】
【数2】

【0079】
【数3】

・・・(21)
【0080】
式(21)中、CAi,HOMO及びCBj,HOMOは、展開係数を表す。式(21)を用いることは、A、B、ABの分子軌道が同じ原子軌道関数の線形一次結合で表現されているため可能である。
【0081】
式(21)を利用し、HOMO間共鳴積分の絶対値(|<ΨHOMO|KSAB|ΨHOMO>|)を下式(22)により計算する。
【0082】
【数4】

・・・(22)
【0083】
式(22)中、KSABはスタッキング安定構造におけるKohn-Sham演算子を表し、εiABはスタッキング安定構造におけるi番目の分子軌道のエネルギーを表す。
【0084】
高分子化合物の主鎖内のキャリア伝導性は、式(5)で表される2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造を基準構造とし、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧をかけた時の電流量で評価する。基準構造と理論計算対象とする高分子化合物が含有する部分構造を含む2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造とにおいて、同じ理論化学的手法を用いて、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧をかけた時の電流量を算出する。
【0085】
【化16】

(5)
【0086】
〔式中、C及びCは、炭素原子を表す。Hは、水素原子を表す。〕
【0087】
高分子化合物が含有する部分構造を含む2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧をかけた時の電流量は、式(6)で表されるEの値である。
【0088】
【数5】

【0089】
〔式中、Iは、第1の2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値を表す。Iは、第2の2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値を表す。LAは、第1の2価の基の第1の金電極が結合している原子と第2の金電極が結合している原子との間の距離、LBは第2の2価の基の第1の金電極が結合している原子と第2の金電極が結合している原子との間の距離、LSは式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離を表す。第1の2価の基は、式(7)で表される2価の基及び式(8)で表される2価の基からなる群から選ばれる2価の基であって、その第1の金電極と結合する原子と第2の金電極と結合する原子との間の距離が、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離よりも長く、かつ、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離に最も近くなる2価の基を表す。第2の2価の基は、式(7)で表される2価の基及び式(8)で表される2価の基からなる群から選ばれる2価の基であって、その第1の金電極と結合する原子と第2の金電極と結合する原子との間の距離が、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離よりも短く、かつ、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離に最も近くなる2価の基を表す。
【0090】
【化17】

(7) (8)
【0091】
(式中、Ar、Ar、D、n及びmは、前述と同じ意味を表す。)〕
【0092】
本発明の高分子化合物を用いて計算したEの値は、式(5)で表される2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値(以下、「基準構造の電流量」という場合がある。)よりも大きくなる。Eの値が、基準構造の電流量より大きくなる高分子化合物は、式(5)で表される2価の基を含有する化合物より高い主鎖内のキャリア伝導性を示す。
【0093】
本発明の高分子化合物の中でも、Eの値が基準構造の電流量の1.1倍以上である高分子化合物が、より高い主鎖内のキャリア伝導性を示すため好ましい。
【0094】
また、Eの値が13μA以上である高分子化合物が、より高い主鎖内のキャリア伝導性を示すためさらに好ましい。
【0095】
本発明において、Eの値及び基準構造の電流量の計算に用いる理論化学的手法は、フィジカル レビュー ビー(Phys. Rev. B)、2002年、第65巻、p.165401−1〜17に記載された密度汎関数法に基づく非平衡グリーン関数法である。密度汎関数はPBE密度汎関数を、基底関数はDZP基底関数とTroullier-Martins擬ポテンシャルを用いる。計算はTranSIESTA等の非平衡グリーン関数法プログラムを用いて実行可能である。
【0096】
基準構造の電流量の計算は、第一に、式(5)で表される2価の基の端の原子2個それぞれに、金原子を1個ずつ付加した構造において、B3LYP密度汎関数と3-21G*基底関数を用いて安定構造を計算する。但し、金原子の基底関数についてはLanl2DZ基底関数を用いる。計算はGaussian09等の量子化学計算プログラムを用いて実行可能である。その後、前記端の原子2個を結ぶ直線と平行な直線であって該端の原子に結合した金原子を通る直線を引き、該直線上において端の原子と逆の方向に無限の金原子を結合させ金電極を形成する。金電極の形成は、2個の端の原子についてそれぞれ行い。金原子と金原子との間の距離は金結晶中の金原子間距離である2.884Åとする。
【0097】
電流を計算する際に第1の金電極と第2の金電極との間にかける電圧は0.3Vとする。0.3Vとした場合、電極間にかかる電界強度は、膜厚100nmの有機薄膜に10Vの電圧をかけた場合の電界強度1×10V/cmに近い値となる。
【0098】
本発明の高分子化合物から成る層を有する有機半導体素子、例えば有機薄膜トランジスタは、前記層中のキャリア(ホール)移動度が大きいため、有機EL素子を駆動するのに十分な電流量を供給可能であり、極めて有用である。
【0099】
次に本発明の有機半導体素子の例として電界効果型有機薄膜トランジスタの構成と製造方法について説明する。電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの電極の間に設けられ電流経路となる本発明の高分子化合物を含有する有機半導体層、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層に接して設けられており、かつ、ゲート電極と有機半導体層との間に有機半導体層に接した絶縁層が設けられていることが好ましい。
【0100】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開2009-267372号公報記載の方法で作製することができる。具体的には、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn型シリコン基板の表面を熱酸化し、シリコン酸化膜を形成する。この基板をアセトン等で超音波洗浄した後、オゾンUVを照射する。その後、窒素を満たしたグローブボックス中で、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)等の表面処理剤の希釈液を用い、これに基板を浸漬することによりこの基板表面をシラン処理する。次に、本発明の高分子化合物をクロロホルム等の溶媒に溶解し、これをメンブランフィルターでろ過して塗布液を調製する。その後、得られた塗布液を、上記表面処理した基板上にスピンコート法等により塗布し、前記高分子化合物の薄膜(有機薄膜)を形成する。そして、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、有機薄膜上にソース電極及びドレイン電極を作製する。
【0101】
前記有機薄膜を作製する際、適切な溶媒もしくは混合溶媒を選択すること、或いは、溶媒を徐々に蒸発させる処理、高温でアニールする処理等の処理を行うことにより、高分子化合物のスタッキング度を高めることが可能である。スタッキング度が高まったことは、XRD等で確認することができる。高分子化合物がスタッキングした部分は、スタッキングしていない部分よりもHOMO間共鳴積分の絶対値が大きいため、キャリア移動度が大きくなる。
【0102】
また、前記有機薄膜を作製する際、有機薄膜を延伸する処理、有機薄膜を摩擦転写する処理、基板上に塗布液をディップコートして有機薄膜を製膜する処理、ラビングした基板上に有機薄膜を製膜する処理、光配向した膜上に有機薄膜を製膜する処理、電場をかける処理、磁場をかける処理等の処理により、高分子化合物の主鎖を、ソース電極とドレイン電極を結ぶ方向(S−D方向)に配向させることができる。配向度が高まったことは、XRD等で確認することができる。主鎖をS−D方向に配向させることにより、高分子化合物の高い主鎖内のキャリア伝導性を利用できるため、キャリア移動度が大きくなる。
【0103】
また、前記有機半導体素子を構成要素とすることにより、インクジェット法等を利用して大面積の発光部分を有する装置、例えばフレキシブルディスプレイを作製することが可能となる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0105】
実施例1
式(A)で表される構造単位からなる高分子化合物において、高分子化合物に係る共鳴積分値及びEの値を計算した。式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物であって、該化合物のHが結合している原子とHが結合している原子との間の距離が式(2)で表される化合物のCとCとの間の距離に最も近い化合物(以下、「共鳴積分計算に用いる化合物」という場合がある。)として式(A−1)で表される化合物を用い高分子化合物に係る共鳴積分値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した。結果を表1に示す。また、第1の2価の基として式(A−2)で表される基を、第2の2価の基として式(A−3)で表される基を用いてEの値を非平衡グリーン関数法によって計算した。結果を表1に示す。
【0106】
【化18】

(A)
【0107】
【化19】

(A−1)
【0108】
【化20】

(A−2)
【0109】
【化21】

(A−3)
【0110】
実施例2
式(B)で表される構造単位からなる高分子化合物において、共鳴積分計算に用いる化合物として式(B−1)で表される化合物を用い高分子化合物に係る共鳴積分値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した。結果を表1に示す。また、第1の2価の基として式(B−2)で表される基を、第2の2価の基として式(B−3)で表される基を用いてEの値を非平衡グリーン関数法によって計算した。結果を表1に示す。
【0111】
【化22】

(B)
【0112】
【化23】

(B−1)
【0113】
【化24】

(B−2)
【0114】
【化25】

(B−3)
【0115】
計算例1
式(2)で表される化合物が2個スタッキングした安定構造の理論化学的手法を用いて計算した最高被占軌道間共鳴積分の絶対値(式(2)で表される化合物に係る共鳴積分値)をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した。結果を表1に示す。また、式(5)で表される2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量(基準構造の電流量)を非平衡グリーン関数法によって計算した。結果を表1に示す。
【0116】
【化26】

(2)
【0117】
【化27】

(5)
【0118】
比較例1
式(C)で表される構造単位からなる高分子化合物において、共鳴積分計算に用いる化合物として式(C−1)で表される化合物を用い高分子化合物に係る共鳴積分値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した。結果を表1に示す。また、第1の2価の基として式(C−2)で表される基を、第2の2価の基として式(C−3)で表される基を用いてEの値を非平衡グリーン関数法によって計算した。結果を表1に示す。
【0119】
【化28】

(C)
【0120】
【化29】

(C−1)
【0121】
【化30】

(C−2)
【0122】
【化31】

(C−3)
【0123】
比較例2
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)において、共鳴積分計算に用いる化合物として式(D−1)で表される化合物を用い高分子化合物に係る共鳴積分値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した。結果を表1に示す。また、第1の2価の基として式(D−2)で表される基を、第2の2価の基として式(D−3)で表される基を用いてEの値を非平衡グリーン関数法によって計算した。結果を表1に示す。
【0124】
【化32】

(D−1)
【0125】
【化33】

(D−2)
【0126】
【化34】

(D−3)
【0127】
比較例3
式(E)で表される構造単位からなる高分子化合物において、共鳴積分計算に用いる化合物として式(E−1)で表される化合物を用い高分子化合物に係る共鳴積分値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した。結果を表1に示す。また、第1の2価の基として式(E−2)で表される基を、第2の2価の基として式(E−3)で表される基を用いてEの値を非平衡グリーン関数法によって計算した。結果を表1に示す。
【0128】
【化35】

(E)
【0129】
【化36】

(E−1)
【0130】
【化37】

(E−2)
【0131】
【化38】

(E−3)
【0132】
比較例4
式(F)で表される構造単位からなる高分子化合物において、共鳴積分計算に用いる化合物として式(F−1)で表される化合物を用い高分子化合物に係る共鳴積分値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した。結果を表1に示す。また、第1の2価の基として式(F−2)で表される基を、第2の2価の基として式(F−3)で表される基を用いてEの値を非平衡グリーン関数法によって計算した。結果を表1に示す。
【0133】
【化39】

(F)
【0134】
【化40】

(F−1)
【0135】
【化41】

(F−2)
【0136】
【化42】

(F−3)
【0137】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構造単位を有する高分子化合物であって、
【化1】

(1)
〔式中、Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。nは、0〜3の整数を表す。Arが複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。〕
式(2)で表される化合物が2個スタッキングした安定構造の理論化学的手法を用いて計算した最高被占軌道間共鳴積分の絶対値よりも、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物であって、該化合物のHが結合している原子とHが結合している原子との間の距離が式(2)で表される化合物のCとCとの間の距離に最も近い化合物が2個スタッキングした安定構造の理論化学的手法を用いて計算した最高被占軌道間共鳴積分の絶対値が大きく、かつ、
【化2】

(2)
〔式中、C及びCは、炭素原子を表す。Hは水素原子を表す。〕
【化3】

(3) (4)
〔式中、mは1以上の整数を表す。Dは式(1)で表される構造単位に含まれる部分構造であってArで表される基を含む部分構造を表す。H及びHは、水素原子を表す。Ar、Ar及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
式(5)で表される2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値よりも、式(6)で表されるEの値が大きい高分子化合物。
【化4】

(5)
〔式中、C及びCは、炭素原子を表す。Hは、水素原子を表す。〕
【数1】

〔式中、Iは、第1の2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値を表す。Iは、第2の2価の基の一方の端の原子を第1の金電極に結合させ他方の端の原子を第2の金電極に結合させた構造において、第1の金電極と第2の金電極との間に0.3Vの電圧を印加した際に流れる電流量の理論計算値を表す。LAは、第1の2価の基の第1の金電極が結合している原子と第2の金電極が結合している原子との間の距離、LBは第2の2価の基の第1の金電極が結合している原子と第2の金電極が結合している原子との間の距離、LSは式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離を表す。第1の2価の基は、式(7)で表される2価の基及び式(8)で表される2価の基からなる群から選ばれる2価の基であって、その第1の金電極と結合する原子と第2の金電極と結合する原子との間の距離が、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離よりも長く、かつ、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離に最も近くなる2価の基を表す。第2の2価の基は、式(7)で表される2価の基及び式(8)で表される2価の基からなる群から選ばれる2価の基であって、その第1の金電極と結合する原子と第2の金電極と結合する原子との間の距離が、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離よりも短く、かつ、式(5)で表される2価の基のCとCとの間の距離に最も近くなる2価の基を表す。
【化5】

(7) (8)
(式中、Ar、Ar、D、n及びmは、前述と同じ意味を表す。)〕
【請求項2】
Arが、式(9)で表される2価の基である請求項1に記載の高分子化合物。
【化6】

(9)
〔式中、Yは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。Vは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基を表す。Zは、−CH=で表される基又は窒素原子を表す。2個あるYは、同一でも相異なってもよい。2個あるZは、同一でも相異なってもよい。2個あるVは、同一でも相異なってもよい。〕
【請求項3】
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極及び有機半導体層を有し、該有機半導体層中に請求項1又は2に記載の高分子化合物を含む有機半導体素子。
【請求項4】
請求項3に記載の有機半導体素子を含有する装置。

【公開番号】特開2012−241038(P2012−241038A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109555(P2011−109555)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】