説明

高効率を有する閉塞フリーのフィルタ装置

ディーゼルエンジンの排気からすすを除去するためには、排気が相前後して配置された少なくとも2つのフィルタユニット(I,II)を介して案内される。各フィルタユニットは、バイパス(4)を備えたフィルタエレメントを有しており、前記バイパスを介して排気はフィルタリングされずに通流可能である。連続した2つのフィルタエレメントのバイパス(4,5)は、閉塞フリーの直接的な流路によって互いに接続されている。但し、連続したフィルタエレメント(2,3)のバイパス(4,5)は、一方のバイパスから後続のフィルタユニットのバイパスへ排気が直接に通流することは概ね回避されるように、流体技術的に互いに配置されている。これにより、個々のフィルタユニットに設けられたバイパス(4,5)にもかかわらず、フィルタ全体の高い効率が、コンベンショナルなフィルタ装置の場合と比較可能な排気背圧において保証されている。フィルタユニットに設けられたバイパスは、フィルタ再生が能動的であれ受動的であれ、一端行われなくなってしまった場合に、未だ許容可能な排気背圧を伴った非常運転を保証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気からすすを除去するための閉塞フリーのフィルタ装置に関する。
【0002】
粒子フィルタを備えた排気装置は公知である。この粒子フィルタの作動時の問題は、既にフィルタ内に堆積したすすによる排気背圧の増大である。最も不都合な場合、この背圧はエンジンの停止を生ぜしめるほど上昇する。従って、コンベンショナルなすすフィルタは時々再生されねばならない。つまり、すすフィルタに堆積したすすを燃焼させる必要がある。高度なすす負荷の場合は、すすの燃焼熱によってフィルタが破壊される恐れがある。このことは、定期的な再生により防止される。
【0003】
すすは、約600℃の温度において初めて燃焼する。すすの点火温度は、触媒活性燃料添加剤の使用又は触媒作用を有するフィルタコーティングにより、約400℃に低下させることができるが、触媒活性時でもすすの点火温度は、エンジンの規定された運転状態においてしか得られない。フィルタの閉塞を排除するためには、フィルタのすす負荷をエンジン制御により手間をかけて監視し、必要な場合は排気温度を能動的に上昇させることによってフィルタ再生を導入せねばならない。この能動的なフィルタ再生は必然的に燃料消費量の増大を生ぜしめる。再生措置に費やそうとする燃料の量は、フィルタ負荷の算出における不確実性及びこれにより必要となる安全裕度により付加的に増大される。
【0004】
比較的古いディーゼル車両の排気装置は、しばしば後から粒子フィルタを装備される。これらの車両は、後装備されたフィルタを能動的に再生することはできないので、高負荷及び高温排気を伴った運転条件における受動的な再生しか残されていない。前記運転条件はケースバイケースで生じるに過ぎず、部分的には比較的長時間にわたって全く生じない可能性もあるので、後装備フィルタは長時間受動的な再生が生ぜしめられない場合でも、閉塞フリーの作動を保証する必要がある。
【0005】
フィルタ閉塞の危険は、いわゆる開いたフィルタシステムによって回避され得る。この場合、フィルタ媒体を通る流路の他に、フィルタ媒体を迂回する別の流路が供与される(バイパス)。フィルタのすす負荷が高くなるにつれて、フィルタの背圧はバイパスと比較して増大する。流れ全体の大部分はバイパスへ移動して、フィルタ負荷の更なる増大が遅らされる。このようにして、フィルタの極端に高い負荷延いては再生時の極端に高い温度によるフィルタの破壊が回避される。フィルタ材料が完全に閉塞した場合でさえも、排気はまだバイパスを介して通流することができ、システム全体の閉塞は生じ得ない。
【0006】
文献から、開いたフィルタシステムの多数の異なる構成が公知である。開いたフィルタの一例がドイツ連邦共和国特許出願公開第10044893号明細書に記載されている。この明細書には、フィルタ内部に長手方向で配置された1つのバイパスを備えた、ディーゼル内燃機関の排気浄化用粒子フィルタが記載されている。この場合、バイパスの開口は粒子フィルタの上流側の端面の所定の箇所に配置されており、この箇所は粒子を含む排気が全く又は僅かにしか流れない。類似の配置形式は、ヨーロッパ特許第0879938号明細書にも記載されている。
【0007】
開いたフィルタシステムの別の例がヨーロッパ特許第1219794号明細書に開示されている。この明細書には、交互に閉鎖された複数の流れ通路を備えた壁面流フィルタが記載されている。閉塞フリーの作動を保証するためには、若干の閉鎖部が部分的に開放されているので、該当する流れ通路が排気の自由な通流を可能にする。開いたフィルタシステムにおいて、個別の開放された通路をバイパスとして使用することは、米国特許第4464185号明細書にもやはり記載されている。
【0008】
上で説明した開いたフィルタシステムの主要な欠点は、このシステムでは通常運転においても排気がバイパスを通ってフィルタリングされずに周辺環境へ逃がされるという事実にある。従って、当該フィルタシステムではしばしば所望のフィルタ作用が保証されない恐れがある。
【0009】
これに対応して引き続き、能動的な再生無しで、良好なフィルタ効率で閉塞フリーの作動を可能にするフィルタシステムの需要が生じている。
【0010】
前記の問題は、本発明に基づき排気用の適当に配置された複数のバイパスを備えた複数のフィルタエレメントを直列につなぐことにより解決され、この場合、前記バイパスはフィルタがすすにより閉塞した場合に、排気のための閉塞フリーの流路を形成する。
【0011】
直列接続された複数のフィルタエレメントの使用は、個々のフィルタエレメントのための複数のバイパスとの関連においても特許文献から公知である。即ち、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19855093号明細書には、相前後して配置された2つのフィルタエレメントから成るシステムが記載されている。1部分流が所定のバイパス内で上流側のフィルタエレメントの傍らを案内され且つ下流側のフィルタエレメントにおいて浄化される。別の部分流は、上流側のフィルタエレメント内で浄化され且つ所定のバイパス内で下流側のフィルタエレメントの傍らを案内される。極めて類似したシステムが、米国特許第6464744号明細書及び米国特許第4625511号明細書にも記載されている。
【0012】
この米国特許第4625511号明細書に開示された、相前後して配置された2つのフィルタを備えたシステムでは第1のフィルタだけにバイパスが設けられている。類似のシステムは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10151698号明細書にも記載されている。このシステムの利点は、すすによる両フィルタの均等な負荷が得られる点にある。
【0013】
上で説明した、1つ又は複数のフィルタエレメントのための複数のバイパスを備えた、直列に接続された複数のフィルタエレメントから成る構造は、閉じられたフィルタシステムである。即ち、この閉じられたフィルタシステムは閉塞フリーのフィルタシステムに対する要求を満たさない。むしろ、この場合は複数のフィルタが直列に接続される。フィルタの閉塞は、システム全体の閉塞を招く。
【0014】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気からすすを除去するための良好なフィルタ効率を有する、開いた、延いては閉塞フリーのフィルタ装置を開示するものである。このフィルタ装置は、間隔をおいて直列に接続された少なくとも2つのフィルタユニットから成っており、これらのフィルタユニットを排気が順次通流する。当該フィルタ装置は、各フィルタユニットが1つ又は複数のバイパスを有しており、これらのバイパスが連続した2つのフィルタユニットの側方で互いにずらされており、しかも、連続したフィルタユニットのバイパス間に閉塞フリーの流路が設けられていることを特徴とする。
【0015】
つまり、各フィルタユニットは1つの粒子フィルタと、1つ又は複数のバイパスとを有しており、これらのバイパスを介して排気の一部はフィルタリングされずに、対応配置されたフィルタユニットを通過することができる。バイパスは、各粒子フィルタの内部に配置されていても外部に配置されていてもよい。
【0016】
本発明では、2つの連続したフィルタユニットのバイパス間に閉塞フリーの流路が存在しているので、フィルタが完全に閉塞した場合でも、排気は未だ妨害されずにバイパスを介してフィルタ装置を通流することができる。連続した2つのフィルタユニットのバイパスは、側方で互いにずらされているので、上流側の粒子フィルタを通流して浄化された排気成分は、有利には後続のフィルタユニットのバイパスを通流するのに対して、上流側のフィルタユニットのバイパスからの排気成分は、有利には下流側の粒子フィルタを通流する。これにより、個々のフィルタユニットに設けられたバイパスにかかわらず、フィルタ全体の高い効率が、コンベンショナルなフィルタ装置と比較可能な排気背圧において保証されている。
【0017】
この装置の機能性にとって重要なのは、閉塞フリーの直接的な流れ接続が、相前後して配置されたフィルタユニットのバイパス間で可能である点である。連続した2つのフィルタユニットのバイパス間のこの直接的な流れ接続によってのみ、粒子フィルタが完全に閉塞した場合の排気のための自由な流路が、バイパスによって常に保証されている。つまり、フィルタユニットに設けられたバイパスは、フィルタ再生が能動的であろうと受動的であろうと一端行われなくなってしまった場合に、未だ許容可能な排気背圧を伴う非常運転を保証する。
【0018】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0019】
本発明の根底を成す機能原理は、図1に示した実施形態に基づき明らかである。図1に示したフィルタ装置1は、2つのフィルタユニットI,IIを有している。各フィルタユニットは、それぞれすすフィルタ2,3と、対応配置された外部バイパス4,5とを有している。これらのバイパスは側方に互いにずらされて配置されている。
【0020】
この配置形式に基づき、フィルタ装置に流入する排気は、フィルタ2を通流する第1の部分流6と、バイパス4を通流する第2の部分流7とに分割される。第1の部分流6からは、フィルタを介してそのフィルタ効率に相応してすす負荷が除去されるのに対して、第2の部分流7は、フィルタリング無しでバイパス4を通流する。第1のフィルタユニットIを通流した後で、排気の第1の部分流と第2の部分流とがある程度混合される。混合された排気は、第2のフィルタユニットIIにおいて第3の部分流8と第4の部分流10とに分割される。第3の部分流8はすすフィルタ3を通流して、そのフィルタ効率に相応して残りのすす負荷が除去される(符号11)のに対して、第4の部分流10はフィルタリングされずにバイパス5を通流する。
【0021】
図1には、フィルタ2,3が僅かにすす負荷された場合の流れ状況が示されている:即ち、排気の主質量流量は、両フィルタを通過して高効率ですすを除去される。これに対して図2には、フィルタ2,3が高度にすす負荷された場合の流れ状況が示されている。すす負荷されたフィルタの高い排気背圧に基づいて、排気の主質量流量はバイパスを通ってフィルタの傍らを案内される。この場合、フィルタ作用は低い。
【0022】
例えば、第1及び第2の部分流がそれぞれ全排気質量流量の50%を成し、フィルタ2において第1の部分流から完全にすすが除去されると仮定すると、フィルタユニットIIへの流入前に両部分流が完全に混合され且つバイパス5とフィルタ3とに質量流量がやはり半分割されると更に仮定して、フィルタ装置から流出する排気のすすの75%の削減が得られる。
【0023】
この値は、フィルタ装置の作動中常に変化する。フィルタ内に堆積するすすの量が増えれば増えるほど、より多くの排気流がバイパスへ移動させられる。第2の部分流に対する第1の部分流の質量流量比は、フィルタ2内のすすの堆積に基づき形成される流れ抵抗に相応して動的に変化する。同じことは、第4の部分流に対する第3の部分流の質量流量比についても云える。両フィルタが極端に閉塞された場合には、全ての排気がフィルタリングされずに両バイパスを介して流れる。フィルタ装置の完全な閉塞は生じ得ない。有利にはバイパスは、フィルタが完全に閉塞した場合にバイパスにより生ぜしめられた排気背圧が許容可能な値を超過しないように寸法決めされる。
【0024】
上で試算したすす削減量は、流体技術的な手段により、第3の部分流が主として第2の部分流により形成され且つそのすす負荷が第2のフィルタユニットにおいてフィルタ効率に相応して堆積される一方で、第4の部分流が主として既にすすの除去された第1の部分流により形成されることが保証されると、更に改善され得る。このような手段は、例えば第1のバイパス4のフィルタ装置への流出部Aが、排気の流れ方向で見て第2のバイパス5の流入部Eの下流側に設けられることにある。この流出部及び流入部の配置形式は、図3に示されている。これにより、フィルタ低負荷時の通常運転では、上流側のフィルタで浄化された排気が有利には第2のフィルタエレメントのバイパスを通流する一方で、上流側のバイパスからの排気は、有利には下流側のフィルタで浄化されるということが達成される。
【0025】
両バイパスの排気背圧は、有利にはフィルタ装置の予め規定された目標すす負荷に関して、排気のちょうど50%が上流側と下流側のバイパスを通流するように設定される。フィルタ負荷が比較的低い場合は、バイパスを通流する排気量が減少し延いてはフィルタ装置を通るすす通流量も減少する。フィルタ負荷が目標負荷よりも大である場合は、排気の大部分がバイパスを通流し、フィルタリングされずに系から流出する。フィルタ装置を通るすす通流量は増大する。フィルタが完全に閉塞した場合、排気は両バイパスを介してフィルタリングされずにフィルタ装置から流出する。
【0026】
フィルタユニットの総フィルタ効率は、主として下流側のバイパスの流入部Eと上流側のバイパスの流出部Aとの間の接続部材における個々の部分流の混合度合いに関連する。この混合は、適当な構造、例えば最も簡単な場合は両バイパス間の接続部材のテーパにより最小限にすることができる。
【0027】
フィルタが完全に閉塞した場合の系の最大背圧は、バイパスの背圧によって規定される。このバイパス背圧の排気質量流量についての関連性は、バイパスにおける摩擦損失の形式で規定される。乱流によるエネルギ損失が二次的な関連性をもたらすのに対して、層流による摩擦損失は一次的な関連性をもたらす。本発明の意味において有利なのは、バイパスが、フィルタ負荷の低い場合、つまりバイパス内の流速が低い場合は、排気のなるべく大部分をフィルタエレメントを通すように導き、且つフィルタエレメントが閉塞した場合、つまり流速が高い場合には、できるだけ低い背圧を有している場合である。この目標は、主として層流による摩擦損失の場合に満たされるのが最良である。層流による摩擦エネルギ損失は、例えばバイパスに通流ハニカム体13,14を組み込むことにより得られる。この装置の付加的な利点は、前記の付加的な通流ハニカム体を触媒作用を有するようにコーティングし延いては系の再生特性に意図的にポジティブな影響を及ぼす可能性にある。
【0028】
本発明によるフィルタ装置は、特にディーゼル車両に粒子フィルタを後装備するために適している。後から装備されるフィルタは、能動的な再生無しでもエンジンのあらゆる運転状態にわたって障害のない作動及び無制限の作動時間を可能にせねばならない。本発明によるフィルタ装置は、この要求に適合する。フィルタが完全に閉塞した状態でさえも、未だ排気の自由な流れがバイパスを介して可能である。
【0029】
エンジンが高い排気温度を有する高負荷下で運転されると常に、フィルタは熱により再生される。再生支援のためには、フィルタ及びバイパスが触媒作用を有するようにコーティングされていてよい。この場合、フィルタには有利にはすす点火温度を低下させるコーティングが施され、バイパスには酸化コーティングが施される。付加的に、フィルタの上流側に酸化触媒が配置されてよく、この酸化触媒は排気中に含まれる一酸化窒素を二酸化窒素へと酸化する。二酸化窒素は強力な酸化剤であり、フィルタに堆積したすすを、比較的低い排気温度においても既に燃焼させることができる。
【0030】
上で説明した、外部でフィルタの傍らを案内されたバイパスを備えた本発明の簡単な実施形態は、フィルタに一度閉塞が生じた場合、排気が完全にバイパスを通って流れるので、フィルタエレメントが再生時に極めて低速で正面側から熱伝導により加熱されねばならないという欠点を有している。有利には、例えば壁面流フィルタの場合は、若干の開いた通路を介してフィルタに直接にバイパスが組み込まれる。本発明のこのような実施形態は、図5に示されている。符号20は排気浄化ケーシングを示すものであり、この排気浄化ケーシング内には2つの壁面流フィルタ21,22が相前後して配置されている。両フィルタ内には若干の流れ通路が通流通路として、つまりバイパス通路として形成されている。
【0031】
これらのバイパス通路は、有利には再生時のフィルタの均等な加熱が保証されているように、フィルタにわたって配分される。この場合、全流れ抵抗は開いた通路の数を介して調整されねばならない。再生時にフィルタを均等に加熱するためには、比較的多数の開いた通路が有利である。個々の開いた通路の流れ抵抗が引き上げられると、規定された全流れ抵抗において開いた通路の数を増やすことができる。この目的のためには、開いた通路の直径を通常のフィルタ通路の直径よりも小さく選択するか、又は部分的に塞がれた通路を用いることができる。
【0032】
本発明では、バイパス通路は2つの連続したフィルタにジオメトリックに、上流側のフィルタのバイパス通路からの排気が、有利には下流側のフィルタの活性フィルタ通路に当たり且つ上流側のフィルタの活性フィルタ通路からの排気が、有利には下流側のフィルタのバイパス通路に当たるように配置されている。発明者の流れシミュレーション演算は、バイパス通路のこのような選択的な流れが、側方で互いにずらされて位置するバイパス通路により極めて簡単且つ効果的に実現可能であるということを示した。この場合、個々の部分流間の混合は数パーセントである。
【0033】
セラミックの壁面流フィルタは、一般に直方体形の複数の個別のエレメントから構成される。このような直方体形のフィルタエレメントを使用した特に好適な実施形態が図6に示されている。フィルタユニットI,IIは排気浄化ケーシング30内に位置しており、それぞれ複数の直方体形のフィルタエレメントから成っている。各フィルタエレメントは若干のバイパス通路を有しており、この場合、これらのバイパス通路は、連続したフィルタエレメント内で、本発明により側方で互いにずらされている。
【0034】
各フィルタユニットは、短いフィルタエレメント32,34と長いフィルタエレメント31,33とから成っており、これらのフィルタエレメントはそれぞれ碁盤状のパターンで配置されている。この場合、短いフィルタエレメント32,34と長いフィルタエレメント31,33とは、連続した両フィルタユニット内で互いに相補的に配置されているので、両フィルタユニットI,IIの噛合いが可能である。相前後して位置するフィルタのこの噛合いは、フィルタ装置全体の機械的な安定性を高め且つモノリス構成を生ぜしめる。これにより、開いた通路のジオメトリック的に精密な相対配置も簡単に保証されている。この場合、フィルタ装置全体が、バイパス通路無しで完全に一貫して延びる若干のフィルタ直方体を有していてもよい。
【0035】
本発明の別の実施形態では、個々のフィルタエレメントが、統合されたフィルタ材料を備えた、適当に構造化された金属シートによって形成される。この場合も、上流側のフィルタエレメントと下流側のフィルタエレメントの各バイパス通路はジオメトリックに、本発明によるバイパス通路の選択的な流れが保証されるように配置されねばならない。このことは、例えば両フィルタエレメントが螺旋状に巻成された波形鉄板層から成っており、上流側のフィルタエレメント及び下流側のフィルタエレメントのバイパス通路が、それぞれ半径方向でずらされて位置する層に配置されると、簡単に達成され得る。この場合も、系は必ずしも2つの分離されたフィルタモノリスから成っている必要はなく、上流側のフィルタエレメント及び下流側のフィルタエレメントはそれぞれ、例えば半径方向で可変の長さで構成されていてよいので、上流側及び下流側のフィルタエレメントは、系の安定性を高めるために互いに噛み合わせることができる。
【0036】
本発明のジオメトリックな構成は、ここで説明した比較的簡単なジオメトリに限定されるものではない。特に、金属フィルタとしての構成においては、個々のフィルタエレメントが極めて複雑な形状で配置されてもよい。重要なのは、本発明では多数のフィルタ通路のために各1つのバイパスが存在しており、しかも、これらのバイパス通路がジオメトリックに、フィルタエレメントが完全に閉塞した場合に当該バイパス通路を介した排気の自由な通流が可能であるように接続されている点である。
【0037】
本発明の更に別の実施形態は、触媒作用を有するようにコーティングされたフィルタエレメントを使用する。この場合、上流側及び下流側のフィルタエレメントに関して、それぞれ異なるコーティングを選択することができる。バイパス通路も、触媒作用を有するようにコーティングされていてよい。この場合、フィルタ通路用と同じ又は異なるコーティングが選択されてよい。例えば完全負荷されたフィルタの場合は流れの大部分がバイパス通路を通流する。従って、再生時になるべく多くの発熱量を得るためには、バイパス通路を酸化触媒でコーティングすることが役に立つ。反対に、フィルタ壁のコーティングは、むしろすす点火温度を低下する方向で最適化することが有利である。
【0038】
本発明は、新式の高多孔質のフィルタ材料を使用した場合に特に有利である。これらの材料は、完全に無負荷の状態では程々のフィルタ効率しか示さない。このフィルタ効率は、フィルタケーキの形成により負荷された状態において向上する。本発明によるフィルタシステムは、予め選択される「基準負荷」に関して排気の50%がバイパスを通過し且つ50%がフィルタユニットを通過するように設定される。基準負荷における背圧は、全負荷時に生じる背圧の半分である。この設定では、負荷されていないフィルタの場合は排気の80%以上が両フィルタエレメントを通過するので、この場合もほぼ完全なすす分離が達成される。フィルタの負荷が高くなるにつれて、二重にフィルタリングされるガスの量は低下するが、その代わり多孔質のフィルタ材料のフィルタ効率は高くなる。このようにして、通常運転領域全体にわたって良好な分離度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】複数の外部バイパスを備えた本発明によるフィルタ装置であり、僅かなすす負荷でフィルタリングした場合の流れ状況を示した図である。
【図2】複数の外部バイパスを備えた本発明によるフィルタ装置であり、高度なすす負荷でフィルタリングした場合の流れ状況を示した図である。
【図3】排気の流れ方向で見て第2のバイパスの流入部Eの下流側に配置された第1のバイパスの流出部Aを備えた、図1に示したフィルタ装置である。
【図4】バイパス内に配置された通流ハニカム体を備えた、図1に示したフィルタ装置である。
【図5】複数の内部バイパスを備えた2つの壁面流フィルタから成る、本発明によるフィルタを示した図である。
【図6】互いに噛み合った直方体形の複数の個別のフィルタエレメントから成るモノリス型フィルタ装置を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて直列に接続された少なくとも2つのフィルタユニットから成るフィルタ装置であって、ディーゼルエンジンの排気からすすを除去するために、前記フィルタユニットを排気が順次通流するようになっている形式のものにおいて、
各フィルタユニットが1つ又は複数のバイパスを有しており、これらのバイパスが、2つの連続したフィルタユニットの側方で互いにずらされており、前記の連続したフィルタユニットのバイパス間に閉塞フリーの流路が設けられていることを特徴とする、高効率を有する閉塞フリーのフィルタ装置。
【請求項2】
バイパスが、完全に再生されたフィルタにおいて排気の体積流の10〜50%を受容するように寸法決めされている、請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
直列に接続されたフィルタユニットが、それぞれ壁面流フィルタ、セラミック発泡体フィルタ、金属発泡体フィルタ、金属フィルタ及びポケットフィルタから成るグループから選択されたフィルタを有しており、バイパスが、各フィルタの側方を通って案内された排気導管により形成されている、請求項2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
バイパスが層流による摩擦損失を備えている、請求項3記載のフィルタ装置。
【請求項5】
バイパス内にモノリス型の通流ハニカム体が配置されている、請求項4記載のフィルタ装置。
【請求項6】
フィルタ及び/又は通流ハニカム体が触媒作用を有するようにコーティングされている、請求項5記載のフィルタ装置。
【請求項7】
フィルタ及び/又は通流ハニカム体が酸化触媒でコーティングされている、請求項6記載のフィルタ装置。
【請求項8】
通流ハニカム体に施される酸化触媒によるコーティングの濃度が、フィルタにおけるよりも大である、請求項7記載のフィルタ装置。
【請求項9】
直列に接続された2つのフィルタユニットが各1つの壁面流フィルタを有しており、これらの壁面流フィルタの流れ通路の一部が通流通路として形成されていることによってバイパスが形成されている、請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項10】
壁面流フィルタの相互間隔が通路直径の1〜200倍である、請求項9記載のフィルタ装置。
【請求項11】
壁面流フィルタが、異なる長さの複数の直方体形のフィルタエレメントから構成されており、これらのフィルタエレメントが、それぞれ若干の通流通路を有しており、前記の異なる長さのフィルタエレメントが、連続した壁面流フィルタ内で互いに相補的に配置されており且つモノリス型のフィルタ装置を形成するために互いに噛み合わされている、請求項10記載のフィルタ装置。
【請求項12】
壁面流フィルタとその通流通路とが、触媒作用を有するようにコーティングされている、請求項9から11までのいずれか1項記載のフィルタ装置。
【請求項13】
ディーゼルエンジンの排気からすすを除去するための方法において、
イ)排気流を、バイパスを備えた第1のフィルタユニットを通して案内し、排気の第1の部分流のすす負荷を、第1のフィルタユニットにおいてそのフィルタ効率に対応して堆積させる一方で、排気の第2の部分流が第1のフィルタユニットをバイパスを介してフィルタリングされずに通過するようにし、その後、
ロ)排気流を、バイパスを備えた第2のフィルタユニットを通して案内し、排気の第3の部分流のすす負荷を、第2のフィルタユニットにおいてそのフィルタ効率に対応して堆積させる一方で、排気の第4の部分流が第2のフィルタユニットをバイパスを介してフィルタリングされずに通過するようにすることを特徴とする、ディーゼルエンジンの排気からすすを除去するための方法。
【請求項14】
流体技術的な手段により、第3の部分流を主として第2の部分流により形成し、そのすす負荷を、第2のフィルタユニットにおいてそのフィルタ効率に対応して堆積させる一方で、第4の部分流を主として既にすすの除去された第1の部分流により形成することを保証する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
排気流を第2のフィルタユニットの流出後に、バイパスを備えた少なくとも1つの別のフィルタユニットを介して案内し、排気流とすす堆積物の分割を、第1又は第2のフィルタユニットにおけるのと同様に行う、請求項10記載の方法。
【請求項16】
バイパスを通る質量流量が、最初の5〜30%から、すす負荷により全排気質量流量の40〜70%に増大した場合に、フィルタユニットの能動的な再生を導入する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
フィルタユニットのバイパスを、それぞれフィルタユニットの傍らを通して案内する、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
フィルタユニット及び/又はバイパスを触媒作用を有するようにコーティングする、請求項16記載の方法。
【請求項19】
フィルタユニットのバイパスを、それぞれフィルタユニットを貫通して案内する、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
フィルタユニット及び/又はバイパスを触媒作用を有するようにコーティングする、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−540933(P2008−540933A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512718(P2008−512718)
【出願日】平成18年5月6日(2006.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004253
【国際公開番号】WO2006/125516
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】