説明

高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔及びその製造方法、回路基板、銅張積層基板及びその製造方法

【課題】高周波特性、耐熱性に優れる樹脂基板との高耐熱密着性を兼ね備える銅箔を提供することである。
【解決手段】本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔は、未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理が施された一次粗化面、金属銅による二次粗化処理が施された二次粗化面、金属亜鉛による三次処理が施された三次処理面が順に設けられている。
本発明の回路基板は前記高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔をフレキシブル樹脂基板又はリジット樹脂基板と積層してなる基板である。
本発明の銅張積層基板の製造方法は、前記高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔と、耐熱性を有する樹脂基板とを熱圧接し、前記粗化処理した金属銅と前記金属亜鉛からなる三次処理面を合金化(して真鍮と)するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温多湿の条件下にも耐え、更には通信端末機能に欠かすことのできない高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔、該耐熱性銅箔の製造方法に関するものである。
また、特に長期信頼性を必要とするハイブリット自動車、電気自動車(以後、HEV車、EV車と記す)等の高温多湿の条件下に耐え、更には通信端末機能に欠かすことのできない高周波伝送特性に優れる自動車制御用のエレクトロニクス回路基板に関するものである。
また、前記耐熱性銅箔と耐熱性樹脂基板とを積層してなる銅張積層基板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の中でも携帯電話に代表される様に、小型化・薄型化に加えて通話以外にも映像や動画の送受信はもとよりGPS(Global Positioning System)機能、ワンセグ受信等々の多機能化が著しく進んでいる。このような技術は電子機器に止まらず昨今では、自動車にも搭載され飛躍的に利便性を向上させている。特に近年の環境保護に呼応してモータリゼーション技術は、炭酸ガスの排出量を少なくする取り組みがなされ、既に内燃機関とモーターを組み合わせたHEV車は量産市販が開始され、代替需要の高まりを見せている。更に太陽光発電や二次電池の高容量化も進み、プラグインのEV車の上市も間近に迫っている。
【0003】
例えば市販の高級グレード自動車には、高周波の電波を自車より発信して対象物との距離を把握する、所謂車間レーダーや暗闇での物体を検知するレーダーが搭載されている。また近年発売された自動車では衛星放送を受信するアンテナを屋根に埋め込み、GPS機能を活かしつつ快適なメディアのサポートによる移動を実現している。
【0004】
このレーダーや衛星放送等の通信技術には、数ギガ帯から数十ギガ帯をカバーできる高周波対応のPCB(Printed Circuit Board)の開発が急務となっている。この高周波対応制御基板には回路を形成する高周波対応銅箔と誘電特性と耐熱性に優れる樹脂基板の技術との組み合わせが必須で、例えば特許文献1には、銅箔の表面に粗化粒子を付着させ、液晶ポリマーフィルムとの密着強度を向上させた、回路基板用の銅箔が開示されている。
【0005】
内燃機関の自動車に限らずHEV車やEV車にも搭載される電子制御機能を有する部品は、過酷な条件下で使用されることは周知である。特に内燃機関の混合ガスの噴射量を制御する演算回路やモーターの回転数を制御する演算回路が納められている、所謂コンピュータボックスは、演算工程が繁多になる程配線回路は発熱し、しかも該ボックス自体も電磁波シールド材により保護されているために、該ボックス内は高温となり、制御基板も必然的に熱を帯びる。
従来コンピュータボックスの熱を除く対処法として放熱アルミ板を積層した放熱方式が一般的に採用されているが、昨今の高機能化に伴う演算回数の増大により放熱効果を大幅に改善する必要性に迫られ、自動車メーカーや電子制御実装部品メーカー、強いては、関連するPCBメーカーでの回路基板の設計見直しが行なわれている。
【0006】
放熱効果を向上させるには、例えば放熱アルミ板を厚くしたり大きくしたり、場合によっては穴を明けて表面積を増大させると言った方法が取られてきたが、現在多機能化が進み、限られた基板スペースに多くの回路が形成される等、軽薄短小化の波はコンピュータボックスを含めた機器分野にも求められ、放熱効率を向上させることは益々困難になってきている。そこで、放熱効率の向上のために回路基板には基板面積を狭く、厚みも薄くする設計技術が要求されてきている。
【0007】
近年のプリント配線板で用途が拡大しているフレキシブル基板では、樹脂基板は、例えば工業用プラスチックフィルムで代表的なPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PI(ポリミド)フィルム、PC(ポリカーボネート)フィルムであり、回路材料の銅箔とはバインダーを介して接着する方法が用いられる。この方法は接着にバインダーを使用するために粗化粒子を有する銅箔を必要とせず、光沢性に富む圧延銅箔が主に用いられている。しかしこれらの材料では、使用用途の条件が日常生活の範疇に限られる携帯電話、携帯電子端末機器、デジタル機器の記録媒体の部材になり得ても、耐熱条件下の密着性の維持や低電流から40〜50A(アンペア)が通電される回路には、長期品質信頼性の面で採用することができない。
【0008】
自動車の制御用回路基板は実用域を超える温度変化条件の下で健全に回路を作動させる必要があり、かかる要求を満足させつつ基板面積を狭く、厚みを薄く設計するには、実用域を超える温度変化の条件下であっても回路基板に “そり”が起きたり“クラック”を発生させたりしない樹脂材料とその樹脂材料に線膨張係数値で追随する、回路金属材料が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−219379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高周波特性等の付加価値を有する銅箔には、回路形成に必要なエッチング加工性、耐熱性に優れる樹脂基板との熱圧着積層時における耐熱性と密着性、樹脂基材と相まっての高伝送特性を兼ね備えることが求められている。しかし、密着強度の向上と優れた伝送特性とを両立させることは物理的に極めて困難であるとされている。
【0011】
銅箔と樹脂基板との密着性は、銅箔表面に設ける凹凸による樹脂基板への物理的な投錨効果によることが大きく、そのため銅箔の一方の面に投錨性に富む大きさの(形状の)銅粒子による粗化処理を施し、その処理面に必要に応じて耐熱性を高めるメッキ処理やケミカル的なバインダー効果を有するカップリング剤処理を施している。
一方、高周波伝送特性を高めるためには、物理一般的に電気伝送が導体の表層をメインに流れるために、回路材料である銅箔の表面は鏡面に準ずる程度の平滑性が必須とされている。
【0012】
上述した様な技術上の背景から、電解銅箔の樹脂との積層面側に銅粗化粒子を低粗化となるように電気メッキを施して密着性を付与し、耐熱密着性の維持には銅以外の重金属をメッキすることで保ち、投錨効果による密着性の不足分をシランカップリング剤の併用により品質規格をクリアーしている。しかし、このような技術ではエッチング加工性、高耐熱密着性、マイグレーション不具合のない伝送特性に優れる電解銅箔は提供できず、これらの要求を満足させた回路材料として電解銅箔の出現が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、平滑性(高周波特性)と投錨効果(樹脂基板との密着性)の相反する特性を満足させるべく鋭意検討を重ねた結果、先ず銅粗化処理を施し、該粗化表面に更に微細化させた微細粗化粒子(銅コブ)を施し、該微細粗化粒子を施した表面上に金属亜鉛メッキで亜鉛処理面を設け、前記粗化粒子(金属銅)と金属亜鉛とを樹脂基板との加熱積層時の熱で合金化し、真鍮とした。この真鍮となった表層面は伝送特性を損なうことなく、樹脂基板との耐熱密着性を十分に維持せしめることができ、本発明に至った。
【0014】
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔は、未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理が施された一次粗化面、金属銅による二次粗化処理が施された二次粗化面、金属亜鉛による三次処理が施された三次処理面が順に設けられている。
【0015】
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔は、未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理が施された一次粗化面、金属銅による二次粗化処理が施された二次粗化面、金属亜鉛による三次処理が施された三次処理面、クロメートによるクロメート防錆層がこの順に設けられている。
【0016】
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔は、未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理が施された一次粗化面、金属銅による二次粗化処理が施された二次粗化面、金属亜鉛による三次処理が施された三次処理面、クロメートによるクロメート防錆層、シランカップリング剤による薄膜層がこの順に設けられている。
【0017】
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔の製造方法は、未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理を施し、該一次粗化処理面上に金属銅による二次粗化処理を施し、該二次粗化処理を施した面上に金属亜鉛による三次処理が施される。
【0018】
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔の製造方法は、マット面(液面側)の素地がJIS−B−0601に規定されるRz値で1.5〜3.5μmの電解銅箔のマット面に銅粗化粒子からなる一次粗化処理面を設け、該一次粗化処理面の上に銅粗化粒子からなる二次粗化処理面を、該面の表面粗さがJIS−B−0601に規定されるRz値で2.0〜4.0μmの範囲で形成し、該二次粗化処理面上に金属亜鉛からなる三次処理面を形成する。
【0019】
本発明の回路基板は、前記高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔をフレキシブル樹脂基板又はリジット樹脂基板と積層してなる回路基板である。
【0020】
本発明の銅張積層基板の製造方法は、未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理面を設け、該一次粗化処理面上に金属銅からなる二次粗化処理面を設け、該二次粗化処理面上に金属亜鉛処理を施して三次処理面を設けてなる高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔と、耐熱性を有する樹脂基板とを熱圧接し、前記粗化処理した金属銅と前記金属亜鉛からなる三次処理面とを合金化して真鍮層を形成する。
【0021】
本発明の銅張積層基板の製造方法は、未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理面を設け、該一次粗化処理面上に金属銅からなる二次粗化処理面を設け、該二次粗化処理表面上に金属亜鉛処理を施し、該金属亜鉛からなる三次処理面上にクロメートによるクロメート防錆層を施してなる高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔と、耐熱性を有する樹脂基板とを熱圧接し、前記粗化処理した金属銅と前記金属亜鉛層とを合金化して真鍮層を形成する。
【0022】
本発明の銅張積層基板の製造方法は、未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理面を設け、該一次粗化処理面上に金属銅からなる二次粗化処理面を設け、該二次粗化処理面上に金属亜鉛からなる三次処理面を施し、該金属亜鉛からなる三次処理面上にクロメートによるクロメート防錆層、シランカップリング剤からなる薄膜層を設けてなる高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔と、耐熱性を有する樹脂基板とを熱圧接し、前記粗化処理した金属銅と前記金属亜鉛とを合金化して真鍮層を形成する。
【0023】
本発明の銅張積層基板は、前記銅張積層基板の製造方法で製作された銅張積層基板である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔は、密着強度の出し難いテフロン(登録商標)系樹脂やフィラー含有量の多いガラスエポキシ系樹脂との密着強度(例えば日本プリント回路工業会の規格であるJPCA−BU01−1998で規定されるような導体層引きはがし強さ)に優れると共に、適宜な伸縮塑性と耐熱性を兼ね備えたものであり、伝送特性に代表される高周波特性に優れ、自動車搭載用途をも含む耐熱性を要求される制御回路を形成する銅箔として優れた効果を有するものである。
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔はエッチング加工性、高耐熱密着性、マイグレーション不具合のない伝送特性に優れる回路材料として優れ、耐熱性を要求される例えば自動車用制御回路基板に適した回路基板を提供することができる。
【0025】
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔の製造方法によれば、密着強度の出し難いテフロン(登録商標)系樹脂やフィラー含有量の多いガラスエポキシ系樹脂との密着強度(例えば日本プリント回路工業会の規格であるJPCA−BU01−1998で規定されるような導体層引きはがし強さ)に優れると共に、適宜な伸縮塑性と耐熱性を兼ね備え、伝送特性に代表される高周波特性に優れ、自動車搭載用途をも含む耐熱性を要求される制御回路を形成する銅箔を製造することができる。
本発明の銅張積層基板の製造方法によれば、密着強度の出し難いテフロン(登録商標)系樹脂やフィラー含有量の多いガラスエポキシ系樹脂と密着し、伝送特性に代表される高周波特性に優れ、自動車搭載用途をも含む耐熱性を要求される制御回路が形成できる銅張積層基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の製造工程の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔につき詳細に説明する。
本発明の高耐熱および高周波対応の銅箔は、銅箔の一方の表面に樹脂基板との密着性を持たせるために、投錨効果の高い銅粒子による一次粗化処理を電解ヤケメッキの条件により施す。次に、一次粗化処理面の上に微細な銅粗化粒子からなる銅粒子を二次粗化処理として電解メッキで付着させる。次いで該一次、二次粗化処理面を健全に保つべく、該粗化処理面に金属亜鉛を電解メッキで設ける。亜鉛メッキ表面の形成には耐薬品性の向上のために、適宜のバナジュウム金属、アンチモン金属或いは三価クロム金属の添加が好ましい。
【0028】
電解銅箔は、該銅箔のマット面の素地がJIS−B−0601に規定されるRz値で1.5〜3.5μmの範囲にあるものを採用することが好ましい。
前記銅箔は電解銅箔で柱状晶粒であることが好ましい。柱状晶粒であるとは、電解銅箔のマット面側の断面が霜柱状の結晶構造となっている状態で、本発明においてはこの霜柱状(凹凸状)の頂上に銅粒子からなる一次粗化粒子を堆積させる。このように柱状晶粒の凹凸の頂上を中心に銅粒子を堆積させることで良好な投錨効果が付与される。
【0029】
また、高温での使用に対しては、銅箔と貼り合わせる耐熱性の樹脂の伸び率を勘案すると電解製箔後の常温状態での伸び物性率が最も薄い0.012mm厚みの銅箔であっても3.5%以上、好ましくは5%以上である電解銅箔を採用することが好ましい。
【0030】
一次粗化したコブ状の銅粒子の個々の表面に二次微細銅コブ粒子を堆積する。二次粗化処理による銅の微粒子は特に一次粗化粒子の表面部分に均一に付着される。該二次微細銅粗化処理後の粗度は、JIS−B−0601に規定されるRz値で2.5〜4.5μmの範囲とすることが好ましい。
【0031】
本発明においては、前記一次、二次銅粗化処理後の表面に耐熱効果を有する金属亜鉛を三次処理して設ける。前記亜鉛表面の亜鉛付着量は、金属亜鉛として2.5〜4.5mg/dmとすることが好ましい。
【0032】
なお、前記亜鉛の表面にクロメート防錆層を設けることが好ましい。防錆層のクロム付着量は、金属クロムとして0.005〜0.020mg/dmとすることが好ましい。
【0033】
前記防錆層の表面にシランカップリング剤からなるケミカル的な薄膜層を設けることが望ましい。シランカップリング剤の付着量はケイ素として0.001〜0.015mg/dmとすることが望ましい。
【0034】
次に、図1により本発明抵抗層付銅箔の製造方法につきその一実施形態を説明する。
図1においてリールに巻き取られた未処理銅箔(電解銅箔、以下単に銅箔という)1を、一次粗化銅粒子表面を形成するための第一処理槽22に導く。第一処理槽22には酸化イリジウムアノード23が配置され、銅-硫酸電解液24が充填され、銅粒子からなる一次粗化処理面が形成される。第一処理槽22で一次粗化処理面が形成された銅箔5は水洗槽25で洗浄された後第二処理層26へ導かれる。
【0035】
第二処理槽26には酸化イリジウムアノード27が配置され、第一処理槽と同様に(銅-硫酸)電解液28が充填されており、二次粗化処理が施される。二次粗化処理が施された銅箔6は水洗槽29で洗浄された後、第三処理層30へ導かれる。第三処理槽30には酸化イリジウムアノード31が配置され、亜鉛電解液32が充填されている。第三処理槽30において亜鉛メッキが施された銅箔7は水洗槽35で洗浄された後、第四処理槽37へ導かれる。第四処理槽37にはSUSアノード38が配置され、クロメート電解液39が充填されており、クロメート防錆層が施される。第四処理槽37においてクロメート防錆層が施された銅箔8は水洗槽40で洗浄された後、第五処理槽42へ導かれる。第五処理槽42にはシラン液43が充填されており、銅箔8の表面にシランカップリング剤を塗布する。第五処理槽42においてシランカップリング剤を塗布された銅箔9は乾燥工程44を経て巻取りロール45に巻き取られる。
【0036】
未処理銅箔1としては圧延銅箔を用いることも可能であるが、対象とする樹脂基板との密着性を高めるためには、少しでも粗化処理面に“凹凸”や“うねり”を有する方が有利であるために、汎用の電解製箔条件により製造された柱状晶粒からなる結晶構造を有し、0.012mm厚さ以上でマット面側(電着液面側)の電解製箔後の形状粗度がJIS−B−0601に規定されるRz値で1.5〜3.5μm範囲で、かつ室温状態での常温伸び率が3.5%以上ある電解銅箔を用いることが好ましい。
【0037】
本発明の銅箔は特に高周波回路基板、特に自動車用の制御回路基板用に適する仕様で使用されるため、耐熱性と伝送性を重視する。このために銅箔と積層する樹脂基板自体が熱履歴に対して伸縮することのない材料、例えばテフロン(登録商標)系の樹脂材料が用いられる。このように伸びの少ない樹脂基板と積層し、回路形成後に基板が“反る”、“曲がる”様な変形を起こさないためには格別に伸びの良い銅箔は必要ではなく、伸び率は3.5%以上、好ましくは5%以上であれば良い。また、伸び率が高い分には問題ないので、上限値を設ける必要はない。
【0038】
銅箔1のマット面に設ける一次粗化処理は第一処理槽22で金属モリブデンが添加されている硫酸銅浴を用いた陰極電解メッキ法により施される。
一次粗化処理は銅箔表面に銅のコブ状の粗化粒子を形成させる。その方法としては、硫酸銅の銅として20〜30g/l、硫酸濃度はHSOとして90〜110g/l、モリブデン酸ナトリュウムのMoとして0.15〜0.35g/l、塩素を塩素イオン換算で0.005〜0.010g/l、浴温度18.5〜28.5℃に設定して、電解ヤケメッキ電流密度を28〜35A/dmに設定し、適宜な流速と極間距離とで、健全な銅コブ粗化粒子を銅箔表面に形成することができる。なお、同一浴内で前記銅コブ粗化粒子が脱落しないように、必要により電流密度を15〜20A/dm程度に設定した条件で平滑電解メッキを施すことが好ましい。
【0039】
次いで樹脂基板との密着性を高めるために、微細粒の二次粗化銅粒子を前工程で形成した一次銅粗化粒子上に形成させる。この微細銅粗化粒子処理も基本的には第一処理槽の浴組成に準ずるが、硫酸銅の銅として濃度を4〜6g/lと希薄にするのが特徴である。浴温度は18.5〜28.5℃に設定して、電解ヤケメッキ電流密度を5〜10A/dmで適宜な流速と極間距離とを設定することで、健全な微細銅粒子銅粗化面を形成させることができる。二次粗化処理で施される二次粗化銅粒子は微細粒である。二次粗化処理で施される金属銅のコブの個々の大きさは、一次粗化の銅コブの個々の大きさの1/4〜3/4程度とすることが好ましい。二次粗化の微細粒は樹脂基板との密着性を高めると同時に高周波伝送特性を損なわない程度の表面とするためで、実用性の観点から二次粗化銅粒子の大きさは、一次粗化の銅コブの個々の大きさの1/4〜3/4程度とすることが好ましい。
【0040】
ここまでの工程で樹脂基板との密着性は確保できる。しかし、樹脂基板との高温時(想定温度は鉛フリーの半田リフロー工程の条件を最大温度として288℃)の密着性が劣るため二次粗化処理表面に耐熱性を高める処理を施す。本発明では適宜な厚さの亜鉛平滑電解メッキ処理を行うことで、前工程で形成した銅粗化粒子形状を損なうことなく投錨効果を有し、樹脂基板との密着性と高温時の耐熱特性を両立させることができる。
【0041】
金属亜鉛の電解メッキを行う溶解亜鉛の浴組成は、可溶性亜鉛化合物であれば特に限定はしないが、好ましくは硫酸亜鉛を用い亜鉛として3.5〜6.0g/l、水酸化ナトリウムを18〜40g/l、耐薬品性を付与するために添加物としてバナジュウム化合物よりバナジュウムとして0.1〜0.5g/l、またはアンチモン化合物よりアンチモンとして0.3〜1.0g/lを溶かした浴組成とすることが好ましい。
【0042】
亜鉛の平滑メッキの付着量は、金属亜鉛として2.5〜4.5mg/dmとすることが好ましい。このような付着量範囲であると銅箔と樹脂基板とを積層して片面銅張積層板を作製する場合に、160〜240℃程度の加熱加圧プレス条件下で下層の粗化銅粒子と十分に熱拡散して銅と亜鉛の合金である真鍮となる。この真鍮表面は粗化形状を変形させることがない。
【0043】
真鍮となった表層は高周波伝導特性を損なうことはない。例えば伝送特性において最も影響が顕著にでる0.012mm厚みの銅箔で、JIS−C−3001に規定される電気抵抗値の測定方法により求めた導電率は、電解製箔後の所謂表面処理フリー(未処理銅箔)の状態での測定値が98.7%であるのに対して、前記亜鉛量をメッキ処理し、更に180℃に加熱して亜鉛を拡散させた所謂真鍮化した銅箔の導電率は、98.4%であり、殆ど影響がない。
【0044】
次に亜鉛処理表面に、必要によりクロメート防錆剤を浸漬処理により塗布し、或いは必要に応じて陰極電解処理(第四処理槽38)して防錆層を設け、防錆力を高める。このように亜鉛メッキ処理後に防錆処理を施すが、この場合耐熱性を重視してクロム酸溶解液による所謂クロメート防錆処理がコストパフォーマンスに優れるために好ましい。近年ベンゾトリアゾールに代表される有機系防錆剤でもその誘導体化合物に耐熱性に優れるものが市販されているが、長期信頼性の点で未だ実績に乏しいので本発明ではあえてクロメート防錆処理を用いる。
【0045】
クロメート処理の場合の皮膜厚みは、金属クロム量として0.005〜0.025mg/dmの範囲が好ましい。この付着量範囲であればJIS-Z−2371に規定される塩水噴霧試験(塩水濃度:5%−NaCl、温度35℃)条件下で24時間まで表面が酸化銅変色しない。
【0046】
更にクロメート処理の施された面には必要に応じてシランカップリング剤を適宜コーティングしてテフロン(登録商標)系樹脂基板や含有フィラー入り樹脂基板との密着性を高めることが望ましい。シランカップリング剤は対象となる樹脂基板により適宜選択されるが、特に高周波対応基板に優れるアミノ系、ビニル系、メタクリロキシ系カップリング剤を選択することが好ましい。また、本発明においては品種種類を限定しないが、少なくともケミカル的に樹脂基板との密着性を向上させるため、マット面側のシランカップリング剤の付着量が、ケイ素として0.001〜0.015mg/dmの範囲であることが好ましい。
【実施例1】
【0047】
公知の電解製箔条件により製造された厚み0.035mmの未処理電解銅箔で、そのマット面側(電着液面側)の形状粗度がJIS−B−0601に規定のRz値1.8μmで、かつ常態伸び率が6.2%の銅箔(古河電工製造の電解銅箔)を用いて、該マット面側に以下の条件で表面処理を施した。
【0048】
[一次銅粗化粒子形成浴組成と処理条件]
硫酸銅を用いて金属銅として・・・・・・・・・・・・・23.5g/l
硫酸として・・・・・100g/l
モリブデン酸ナトリュウムを用いてモリブデンとして・・0.25g/l
塩酸の塩素イオンとして・・・・・・・・・・・・・・・0.002g/l
硫酸第二鉄の金属鉄として・・・・・・・・・・・・・・0.20g/l
硫酸クロムの三価クロムとして・・・・・・・・・・・・0.20g/l
浴温度:25.5℃
槽入口側の電解メッキ電流密度:28.5A/dm
槽出口側の電解メッキ電流密度:12.5A/dm
【0049】
[二次微細銅粗化粒子処理条件]
硫酸銅を用いて金属銅として・・・・・・・・・・・・・5.5g/l
硫酸として・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50g/l
モリブデン酸ナトリュウムを用いてモリブデンとして・・0.25g/l
塩酸の塩素イオンとして・・・・・・・・・・・・・・・0.002g/l
硫酸第二鉄の金属鉄として・・・・・・・・・・・・・・0.20g/l
硫酸クロムの三価クロムとして・・・・・・・・・・・・0.20g/l
浴温度:18.5℃
槽入り口側の電解メッキ電流密度:12.5A/dm
【0050】
[金属亜鉛メッキ処理条件]
硫酸亜鉛の金属亜鉛として・・・・・・・・・・・・・・4.0g/l
水酸化ナトリュウムとして・・・・・・・・・・・・・・25.0g/l
pH:12.5〜13.5
浴温度:18.5℃
電解メッキ電流密度:5.5A/dm
【0051】
防錆処理は、CrOとして3g/l浴に浸漬し、乾燥させてクロメート層を形成した。その後に、シランカップリング処理として、0.5wt%、pH:3.5に建浴したメタクリロ系のシランカップリング剤(チッソ(株)製サイラエースS-710)を該銅箔のマット面側のみに薄膜塗布した。
【0052】
得られた表面処理銅箔の表面処理を施した面(マット面側)の表面粗度をJIS−B−0601に規定されるRz値を測定し表1に記載した。更に該処理銅箔を250mm角に切断して市販のポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂系基板(Panasonic電工製メグトロン-6プリプレグ使用)に処理面(マット面側)を重ね合わせて加熱プレス積層して、片面銅張積層板を作製し密着性の測定用にした。加熱プレスの条件は、160℃で60分とした。
耐熱性の測定評価には、市販のガラスエポキシ系樹脂基板(日立化成(株)製LX67Nプリプレグ使用)に処理面(マット面側)を重ね合わせて加熱プレス積層して、片面銅張積層板を作製し、吸湿促進試験を行なった後に288℃に保たれた半田浴槽中に30秒間浸漬して膨れの有無を評価するための耐熱性評価用試験片とした。
高周波特性の評価は、伝送損失測定結果を以って優劣を相対評価した。対象とした基板は、市販の液晶ポリマー系樹脂基板(ROGERS CORPORATION製ULTRALAM3000使用)に処理面(マット面側)を重ね合わせて、連続ラミネートによる積層に代えて本評価では単板熱プレスにて積層して、片面銅張積層板を作製し伝送損失の測定用試験片にした。
【0053】
樹脂基材との密着性の測定は、JIS−C−6481に規定される測定方法により測定し密着強度として表1に記載した。
また耐熱性の良否判定は、前記片面銅張板を50mm角に切断して各条件で5ヶの試験片を準備して、PCT(プレッシャークッカーテスト)試験条件(相対湿度100%、2気圧、121℃、120分)下で前処理を行い、次いでその試験片を288℃に設定された半田浴に30秒浸漬させて、銅箔と基板との“膨れ”発生の有無を、膨れが試験片の全てに全く発生しなかったものを◎、試験片の一片に1ヶ程度の5mmΦ未満の軽微な膨れが見られた場合を○、2〜3ヶの5mmΦ未満の膨れが見られた場合を△、数に関係なく5mmΦ以上の膨れが見られた場合を×として評価し表1に記載した。
伝送測定の評価は、1〜25GHz域の測定に適する公知のストリップライン共振器法(マイクロストリップ構造:誘電体厚さ50um、導体長さ1.0m、導体厚さ12um、導体回路幅120um、特性インピーダンス50Ωでカバーレイフィルムなし〔例えば誘電特性の悪いカバーレイを使うと伝送損失が大きくなり差異の判断が不正確になるため〕の状態でS21パラメーターを測定する方法)を用いて1〜15GHzまでを連続測定した。この測定値の内、周波数5、10、15GHzに相当する伝送損失(dB/100mm)を、GTS−MP−35μm箔の伝送損失値(比較例1の損失値)を100とした場合の相対値として表1に記載した。
【実施例2】
【0054】
実施例1で用いた未処理銅箔を用い、得られる表面処理側の粗度がRz値で2.0μm前後となるように実施例1と同様の粗化および表面処理を行い、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に記載する。
【実施例3】
【0055】
実施例1で用いた未処理銅箔を用い、得られる表面処理側の粗度がRz値で4.0μm前後となるように実施例1と同様の粗化および表面処理を行い、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に記載する。
【実施例4】
【0056】
実施例1で用いた未処理銅箔を用い、得られる表面処理側の粗度がRz値で6.0μm前後となるように実施例1と同様の粗化および表面処理を行い、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に記載する。
【実施例5】
【0057】
実施例1で用いた未処理銅箔を用い、得られる表面処理側の粗度がRz値で8.0μm前後となるように実施例1と同様の粗化および表面処理を行い、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に記載する。
【0058】
[比較例1]
実施例1に用いた未処理銅箔のマット面側に実施例1同様の一次および二次の銅粗化処理を施し、次いで銅の平滑カプセルメッキを施した後に、下記のニッケル浴と亜鉛浴を用いて表面処理層を電解メッキで施し、実施例1と同じ防錆処理とシランカップリング剤処理を施し、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
【0059】
[銅の平滑カプセルメッキ処理条件]
硫酸銅を用いて金属銅として・・・・・・・・52.5g/l
硫酸として・・・・・・・・・・・・・・・・100g/l
塩酸の塩素イオンとして・・・・・・・・・・0.002g/l
浴温度:45.5℃
電解メッキ電流密度:18.5A/dm
【0060】
[GTS処理のニッケルメッキ条件]
硫酸ニッケルを用いて金属ニッケルとして・・5.0g/l
過硫酸アンモニュームとして・・・・・・・・40.0g/l
ホウ酸として・・・・・・・・・・・・・・・28.5g/l
pH:3.5〜4.2
浴温度:28.5℃
【0061】
[公知のGTS処理の亜鉛メッキ条件]
硫酸亜鉛を用いて金属亜鉛として・・・・・・4.8g/l
水酸化ナトリュウムとして・・・・・・・・・35.0g/l
pH:12.5〜13.8
浴温度:18.5℃
電解メッキ電流密度:0.8A/dm
【0062】
[比較例2]
実施例1に用いた未処理銅箔に一次粗化処理をせずに、二次微細粗化処理以降を実施例1と同様に行い、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
【0063】
[比較例3]
未処理銅箔を厚さ17.5μm、表面形状粗度がJIS−B−0601に規定のRa値で0.1μm(Rz値0.45μm)、常態伸び率が2.8%の圧延銅箔(日本製箔(株)圧延加工製造の圧延銅箔)を用いて、一方の面側に実施例1の条件と全く同じ処理を施し、実施例1と同様の評価測定を行った。その結果を表1に併記する。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、実施例1〜5の銅箔は、樹脂基板との密着強度は必要とされる0.7kg/cm以上を満足するものであった。
また、実施例1〜5は伝送損失が小さく満足するものであった。伝送特性が小さくなる要因は、銅箔を樹脂基板と積層する加熱プレス時の熱処理条件で銅箔の表層が亜鉛と合金化して真鍮層を形成するためと推測される。一方汎用タイプの銅箔である比較例1は、密着強度と耐熱性は満足するものの、伝送損失で実用性に乏しい。実施例と比較して伝送損失が悪い要因は表面処理にニッケルと亜鉛を用いているためで、銅箔を樹脂基板と積層する加熱プレス時の熱処理条件で銅箔の表層が真鍮層とならず、表面が粗いままになっているためと推測される。
吸湿後の半田浸漬耐熱性は実施例2の表面粗度が小さかったために△となったが、実用性に支障はなく、その他の実施例は共に満足するものであった。
比較例2および比較例3は、密着強度も耐熱性も満足するものではなく、粗度Rzが小さい効果で伝送損失特性は若干各実施例より優位であるものの、必要とされる樹脂基板との密着や耐熱性の評価で実用性がないものとなった。
【0066】
上述したように本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔は、密着強度の出し難いテフロン(登録商標)系樹脂やフィラー含有量の多いガラスエポキシ系樹脂との密着強度(JPCA規格)に優れると共に、適宜な伸縮塑性と耐熱性を兼ね備えたものであり、伝送特性に代表される高周波特性に優れ、HEVおよびEV自動車用の高周波用途の伝送を多用する制御回路としての樹脂基板との密着性も十分に維持でき、過酷な自然風土の条件にあってもまた制御回路自体の発熱等々に際しても適宜な耐熱性と耐湿性を有し、更には粗化形状と表面処理金属が伝送特性を阻害することなく(所謂伝送損失が小さく伝送性に優れる)適宜に高周波対応基板の特性を発揮できる優れた効果を有するものである。
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔はエッチング加工性に障害となる表面処理材料を使用していず、従ってエッチング加工性に不具合がなく、高耐熱密着性、マイグレーション不具合のない伝送特性に優れる回路材料として優れ、耐熱性を要求される例えば自動車用制御回路基板に適した回路基板を提供することができる。
【0067】
本発明の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔の製造方法によれば、密着強度の出し難いテフロン(登録商標)系樹脂やフィラー含有量の多いガラスエポキシ系樹脂との密着強度(JPCA規格)に優れると共に、適宜な伸縮塑性と耐熱性を兼ね備え、伝送特性に代表される高周波特性に優れ、自動車搭載用途をも含む耐熱性を要求される制御回路を形成する銅箔を特別な装置等を必要とせずに容易に製造することができる。
【0068】
本発明の銅張積層基板の製造方法によれば、密着強度の出し難いテフロン(登録商標)系樹脂やフィラー含有量の多いガラスエポキシ系樹脂と密着し、伝送特性に代表される高周波特性に優れ、HEVおよびEV自動車用の高周波用途の伝送を多用し、耐熱性が要求される制御回路形成用銅張積層基板としての効果を発揮する銅張積層基板を提供することができる。
また、本発明銅箔の製造方法によれば、連続的に一次粗化と二次微細粗化を健全にかつ安価に製造することができるので、来るべき環境対応の観点からEV自動車の普及が促進されても、供給面でも特性面でも十分に対応することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 未処理銅箔
22 第一処理槽(一次銅粗化粒子処理形成工程)
26 第二処理槽(二次銅微細粗化粒子処理形成工程)
30 第三処理槽(亜鉛メッキ工程)
37 第四処理槽(防錆処理工程)
42 第五処理槽(シランカップリング)
44 乾燥工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理が施された一次粗化面、金属銅による二次粗化処理が施された二次粗化面、金属亜鉛による三次処理が施された三次処理面が順に設けられている高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項2】
未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理が施された一次粗化面、金属銅による二次粗化処理が施された二次粗化面、金属亜鉛による三次処理が施された三次処理面、クロメートによるクロメート防錆層がこの順に設けられている高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項3】
未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理が施された一次粗化面、金属銅による二次粗化処理が施された二次粗化面、金属亜鉛による三次処理が施された三次処理面、クロメートによるクロメート防錆層、シランカップリング剤による薄膜層がこの順に設けられている高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項4】
前記三次処理面は、金属亜鉛の付着量が2.5〜4.5mg/dmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高周波特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項5】
前記未処理銅箔が電解銅箔であり、前記一方の表面がマット面(液面側)であり、該マット面の素地が、JIS−B−0601に規定されるRz値で1.5〜3.5μmの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項6】
前記電解銅箔の常温状態での伸び率が3.5%以上である請求項5に記載の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項7】
前記二次粗化処理を施した二次粗化面の粗度が、JIS−B−0601に規定されるRz値で2.0〜4.0μmの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項8】
前記クロメート防錆層のクロム付着量が、金属クロムとして0.005〜0.025mg/dmである請求項2叉は3に記載の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項9】
前記シランカップリング剤からなる薄膜層におけるシランカップリング剤の付着量が、ケイ素として0.001〜0.015mg/dmである請求項3に記載の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔。
【請求項10】
未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理を施し、該一次粗化処理面上に金属銅による二次粗化処理を施し、該二次粗化処理を施した面上に金属亜鉛による三次処理が施される高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔の製造方法。
【請求項11】
マット面(液面側)の素地がJIS−B−0601に規定されるRz値で1.5〜3.5μmの電解銅箔のマット面に銅粗化粒子からなる一次粗化処理面を設け、該一次粗化処理面の上に銅粗化粒子からなる二次粗化処理面を、該面の表面粗さがJIS−B−0601に規定されるRz値で2.0〜4.0μmの範囲で形成し、該二次粗化処理面上に金属亜鉛からなる三次処理面を形成する高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔の製造方法。
【請求項12】
前記未処理銅箔の常温状態での伸び物性率が3.5%以上である請求項10叉は11に記載の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔をフレキシブル樹脂基板又はリジット樹脂基板と積層してなる回路基板。
【請求項14】
未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理面を設け、該一次粗化処理面上に金属銅からなる二次粗化処理面を設け、該二次粗化処理面上に金属亜鉛処理を施して三次処理面を設けてなる高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔と、耐熱性を有する樹脂基板とを熱圧接し、前記粗化処理した金属銅と前記金属亜鉛からなる三次処理面とを合金化して真鍮層を形成してなる銅張積層基板の製造方法。
【請求項15】
未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理面を設け、該一次粗化処理面上に金属銅からなる二次粗化処理面を設け、該二次粗化処理表面上に金属亜鉛処理を施し、該金属亜鉛からなる三次処理面上にクロメートによるクロメート防錆層を施してなる高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔と、耐熱性を有する樹脂基板とを熱圧接し、前記粗化処理した金属銅と前記金属亜鉛層とを合金化してなる銅張積層基板の製造方法。
【請求項16】
未処理銅箔の一方の表面に金属銅による一次粗化処理面を設け、該一次粗化処理面上に金属銅からなる二次粗化処理面を設け、該二次粗化処理面上に金属亜鉛からなる三次処理面を施し、該金属亜鉛からなる三次処理面上にクロメートによるクロメート防錆層、シランカップリング剤からなる薄膜層を設けてなる高周波伝送特性に優れる耐熱性銅箔と、耐熱性を有する樹脂基板とを熱圧接し、前記粗化処理した金属銅と前記金属亜鉛とを合金化してなる銅張積層基板の製造方法。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかに記載の製造方法で製造された銅張積層基板。

【図1】
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【公開番号】特開2011−38168(P2011−38168A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188042(P2009−188042)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】