説明

高周波増幅器および無線通信装置

【課題】回路規模、消費電力の増大を抑止しつつ、出力端での振幅を抑制してダイナミックレンジを広げることが可能となり、また、ゲインの周波数依存性を安定に保つことが
可能な高周波増幅器および無線通信装置を提供する。
【解決手段】増幅部11と、出力端子TO11と、増幅部の出力端が接続され、増幅部から出力される電流信号を電圧信号として上記出力端子に出力する負荷回路12と、を有し、負荷回路12は、第1の可変容量素子C11と、第2の可変容量素子C12と、インダクタL11と、を有し、第1の可変容量素子C11の一端と第2の可変容量素子C12の一端が接続され、その接続点が増幅部11の出力端に接続され、第2の可変容量素子C12の他端とインダクタL11の一端が接続され、その接続点が出力端子に接続され、第1の可変容量素子C11とインダクタL11が並列に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョンチューナ等の無線通信装置のフロントエンド部に適用可能な高周波増幅器およびこれを適用した無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信周波数(RF)に受信周波数に帯域制限をかけて希望する周波数のみ選択する受信機において、高周波増幅器の負荷にはほとんどの場合、LC共振器が利用されている。
【0003】
図1は、負荷に並列LC共振器を適用したフロントエンド回路の高周波増幅器の構成例を示す回路図である。
【0004】
この高周波増幅器1は、増幅部であるgmアンプ2、負荷回路3、および出力端子TO1、TO2を有する。
負荷回路3は、gmアンプ2の出力と出力端子TO1,TO2との間に配置されている。
負荷回路3は、ノードND1がgmアンプ2の出力および出力端子TO1に接続され、ノードND2が出力端子TO2および基準電位VSSに接続されている。
負荷回路3は、可変容量素子C、インダクタL、および共振インピーダンス素子としての抵抗素子Rを有する。
可変容量素子C、インダクタL、および抵抗素子Rは、ノードND1とノードND2間に並列に接続されている。
この負荷回路3においては、たとえば容量素子Cの容量値を可変にすることで、帯域を切り替え、帯域切り替えに伴う利得変動を補償するように構成される。
【0005】
図2は、図1の高周波増幅器におけるゲインの周波数依存性を示す図である。
図2において、横軸が周波数を、縦軸がゲインをそれぞれ表している。
【0006】
並列LC共振器の共振時のインピーダンス(共振インピーダンス)RoはωLQで決まるため周波数が高くなるにつれて負荷のインピーダンスも高くなり、増幅器のゲインはトランスコンダクタンスgmと共振インピーダンスRoから以下のように表わされる。
【0007】
【数1】

【0008】
その結果、図1の高周波増幅器は、図2のようにゲインに周波数依存性を持つ特性となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−160660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1の例のように、並列LC共振器をRFアンプの負荷に使用することにより、周波数間でのゲイン偏差が大きくなり、広帯域にわたって増幅器の動作状態を一定に保つことができない。
このことによってSNR、歪性能の周波数特性が大きくなり最適な動作点を決定することが困難になる。
【0011】
ゲイン偏差を小さくする方法としては増幅器から供給される電流を調整する回路を追加することによって可能となるが、回路規模・消費電力の増大、ノイズの増加などの悪影響を及ぼす。
また、この回路構成は共振時のインピーダンスが非常に高くなるため増幅部の出力端での振幅が大きくなり、歪性能の劣化によってダイナミックレンジに制限を与えてしまう。
【0012】
本発明は、回路規模、消費電力の増大を抑止しつつ、出力端での振幅を抑制してダイナミックレンジを広げることが可能となり、また、ゲインの周波数依存性を安定に保つことが可能な高周波増幅器および無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点の高周波増幅器は、入力信号を電圧信号から電流信号に変換して出力する機能を有する増幅部と、出力端子と、上記増幅部の出力端が接続され、当該増幅部から出力される電流信号を電圧信号として上記出力端子に出力する負荷回路と、を有し、上記負荷回路は、第1のリアクタンス素子と、第2のリアクタンス素子と、第3のリアクタンス素子と、を有し、上記第1のリアクタンス素子の一端と上記第2のリアクタンス素子の一端が接続され、その接続点が上記増幅部の出力端に接続され、上記第2のリアクタンス素子の他端と上記第3のリアクタンス素子の一端が接続され、その接続点が上記出力端子に接続され、上記第1のリアクタンス素子と上記第3のリアクタンス素子が並列に接続され、上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子は、容量性リアクタンス素子または誘導性リアクタンス素子により形成され、上記第3のリアクタンス素子は、誘導性リアクタンス素子または容量性リアクタンス素子により形成され、上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子は、リアクタンスが可変である。
【0014】
本発明の第2の観点の無線受信装置は、局部発振部による局部発振信号に基づいて主信号に対する所定の処理を行うフロントエンド部を有し、上記フロントエンド部は、受信信号を受けて上記主信号を出力する高周波幅器を含み、上記高周波増幅器は、入力信号を電圧信号から電流信号に変換して出力する機能を有する増幅部と、出力端子と、上記増幅部の出力端が接続され、当該増幅部から出力される電流信号を電圧信号として上記出力端子に出力する負荷回路と、を有し、上記負荷回路は、第1のリアクタンス素子と、第2のリアクタンス素子と、第3のリアクタンス素子と、を有し、上記第1のリアクタンス素子の一端と上記第2のリアクタンス素子の一端が接続され、その接続点が上記増幅部の出力端に接続され、上記第2のリアクタンス素子の他端と上記第3のリアクタンス素子の一端が接続され、その接続点が上記出力端子に接続され、上記第1のリアクタンス素子と上記第3のリアクタンス素子が並列に接続され、上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子は、容量性リアクタンス素子または誘導性リアクタンス素子により形成され、上記第3のリアクタンス素子は、誘導性リアクタンス素子または容量性リアクタンス素子により形成され、上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子は、リアクタンスが可変である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路規模、消費電力の増大を抑止しつ、出力端での振幅を抑制してダイナミックレンジを広げることが可能となる。
また、ゲインの周波数依存性をフラットな特性に安定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】負荷に並列LC共振器を適用したフロントエンド回路の高周波増幅器の構成例を示す回路図である。
【図2】図1の高周波増幅器におけるゲインの周波数依存性を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る高周波増幅器の構成例を示す回路図である。
【図4】図3の高周波増幅器におけるゲインの周波数依存性を、図1の高周波増幅器の周波数依存性と比較して示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る高周波増幅器の構成例を示す回路図である。
【図6】本実施形態に係る高周波増幅器を採用した無線通信装置のRFフロントエンド部の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る高周波増幅器を採用したテレビジョン受像機のチューナ部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態(高周波増幅器の第1の構成例)
2.第2の実施形態(高周波増幅器の第2の構成例)
3.第3の実施形態(無線通信装置のフロントエンド部の構成例)
4.第4の実施形態(テレビジョン受像機のチューナ部の構成例)
【0018】
<1.第1の実施形態>
図3は、本発明の第1の実施形態に係る高周波増幅器の構成例を示す回路図である。
【0019】
本第1の実施形態に係る高周波増幅器10は、図3に示すように、gmアンプにより形成される増幅部11、負荷回路12、入力端子TI11、第1の出力端子TO11、第2の出力端子TO12、第1のノードND11、および第2のノードND12を有する。
【0020】
本第1の実施形態の高周波増幅器10は、直列容量と並列容量の容量2個とインダクタ1個を含むタップ容量共振器を負荷回路12として採用している。
タップ容量共振器の負荷回路12において、容量比を適切に選ぶことにより高周波増幅器10での出力端インピーダンスを低インピーダンス化し、出力端での振幅を小さくすることによってダイナミックレンジを広くすることができる負荷方式が採用されている。
また、高周波増幅器10は、負荷回路12において、容量を変化させてある帯域をカバーする場合、負荷回路12におけるタップ容量共振器負荷と並列に固定容量を接続する構成が採用できる。
この構成を採用することによって、容量比を周波数に依存して変化させることができ、インピーダンス変換比に周波数依存性を持たせて広帯域にわたってゲインを一定に保つことができるようになる。
【0021】
増幅部11は、負荷回路12に接続されて、たとえばRF信号をゲート(制御端子)に受けて増幅する増幅素子としての電界効果トランジスタ(FET)を含んで構成される。
増幅部11を形成するgmアンプは、トランスコンダクタンスgmを有する。
増幅部11は、アンテナで受信され、入力端子TI11を介して入力された所定周波数の入力信号を電圧信号Vinから電流信号に変換する。
【0022】
負荷回路12は、増幅部11の出力と出力端子TO11,TO12との間に配置されている。
負荷回路12は、第1の可変容量素子C11、第2の可変容量素子C12、固定容量素子C13、インダクタL11、および共振インピーダンス素子(Ro)としての抵抗素子R11を有する。
第1の可変容量素子C11が容量性リアクタンス素子である第1のリアクタンス素子に相当し、第2の可変容量素子C12が容量性リアクタンス素子である第2のリアクタンス素子に相当する。インダクタL11が誘導性リアクタンス素子である第3のリアクタンス素子に相当する。
【0023】
負荷回路12は、第1のノードND11が増幅部11の出力端を形成する第1のノードND11に接続されている。
第1のノードND11は第2の可変容量素子C12を介して第1の出力端子TO11に接続され、第2のノードND12が第2の出力端子TO12および基準電位VSS(たとえば接地電位GND)に接続されている。
【0024】
第1の可変容量素子C11により並列容量が形成され、第2の可変容量素子C12により直列容量が形成される。
【0025】
第1の可変容量素子C11は、その一端(一電極端)が第1のノードND11に接続され、他端(他電極端)が第2のノードND12に接続されている。
第2の可変容量素子C12は、その一端(一電極端)が第1のノードND11に接続され、他端(他電極端)が第1の出力端子TO11に接続されている。
第2の可変容量素子C12の他端(他電極端)と第1の出力端子TO11との接続ラインにノードND13が形成されている。
固定容量素子C13は、その一端(一電極端)が第1のノードND11に接続され、他端(他電極端)が第2のノードND12に接続されている。
インダクタL11は、その一端がノードND13、すなわち第2の可変容量素子C12の他端(他電極端)に接続され、他端が第2のノードND12(第2の出力端子TO12)に接続されている。
抵抗素子R11は、共振時のインピーダンスωLQを等価的に表しているものである。この抵抗素子11は、等価的に、その一端がノードND13(第1の出力端子TO11)に接続され、他端が第2のノードND12(第2の出力端子TO12)に接続される。
【0026】
以下の説明では、第1の可変容量素子C11の容量値をC1で示し、第2の可変容量素子C12の容量値をC2で示し、固定容量素子C13の容量値をCcで示す。
本実施形態において、可変容量素子C11,C12の容量値C1,C2は200pF程度に、固定容量素子C13の容量値Ccは1pF程度に、インダクタL11のインダクタンスは200nH程度に設定される。
【0027】
次に、図3の高周波増幅器の動作を説明する。
【0028】
入力端子TI11に入力された信号は増幅部11で入力信号に比例した電流へ変換され、その入力信号に比例した電流が負荷回路12に流れ出力端子TO11,TO12から電圧として出力される。
【0029】
増幅部11の出力端を形成する第1のノードND11における電圧振幅をVamp、出力電圧をVoutとすると、増幅部11の出力端である第1のノードND11からの出力端子TO11への電圧ゲインは次式で表される。
【0030】
【数2】

【0031】
また、増幅部11の出力端である第1のノードND11から出力端子TO11側を見込んだインピーダンスRiは以下のようになる。
【0032】
【数3】

【0033】
すなわち、増幅部11の出力端である第1のノードND11におけるインピーダンスは共振インピーダンスRoを増幅部11の出力端である第1のノードND11からの出力端子TO11への電圧ゲインの2乗で割った値となる。
【0034】
また、増幅部11の出力端である第1のノードND11における出力電流は、増幅部11のトランスコンダクタンスgmと入力信号Vinの積で表わされるので、増幅部11の出力端である第1のノードND11における振幅は以下のようになる。
【0035】
【数4】

【0036】
このように、増幅部11の出力端における振幅が増幅部11の出力端である第1のノードND11からの出力端子TO11への電圧ゲインの2乗に反比例する。
以上のように、本第1の実施形態においては、従来の並列LC共振器に比べて増幅部11の出力端での振幅が制限できることから、増幅部11の出力端である第1のノードND11における歪性能が改善されダイナミックレンジが広がる。
【0037】
また、本第2の実施形態のように、容量を変化させてある帯域をカバーするシステムの場合は固定容量Ccの値を適切に選ぶことによって、高周波増幅器10のゲインのフラット化を実現することが可能となる。
高周波増幅器10のトータルのゲインは以下のように表わされる。
【0038】
【数5】

【0039】
共振インピーダンスRo(ω)は周波数が高くなるにつれて大きくなるため、背景技術で述べた通り、図1の並列LC共振器を負荷に持つ高周波増幅器は図2のようにゲインに周波数依存性を持ってしまう。
一方、本発明の実施形態に係る負荷方式を適用した高周波増幅器10では周波数が高くなるにつれて可変容量素子C11、C12の容量値C1,C2は小さくなるが、固定容量素子C13の容量値Ccは一定なので、変換比は次のように大きくなる。
【0040】
【数6】

【0041】
その結果、共振インピーダンスRo(ω)の周波数特性と変換比が逆特性の関係になるため、トータルのゲインの周波数特性としては図4の実線Aで示すようにフラット化が可能となる。
【0042】
なお、図4は、図3の高周波増幅器におけるゲインの周波数依存性を、図1の高周波増幅器の周波数依存性と比較して示す図である。
図4において、横軸が周波数を、縦軸がゲインをそれぞれ表している。
図4中、実線Aで示す特性が本実施形態の高周波増幅器10の特性を、破線Bで示す特性が図1の高周波増幅器1の特性を示している。
【0043】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
すなわち、タップ容量共振器を増幅器の負荷に用いることにより、増幅部の出力端での振幅を抑制しダイナミッックレンジを広げることが可能となる。
併せて、固定容量素子C13を並列に接続することによってゲインの周波数依存性をフラットに保つことができる。
【0044】
<2.第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る高周波増幅器の構成を示す回路図である。
【0045】
第2の実施形態に係る高周波増幅器10Aが上述した第1の実施形態に係る高周波増幅器10と異なる点は次の通りである。
すなわち、第2の実施形態に係る高周波増幅器10Aでは、負荷回路12Aをタップ容量共振器の代わりに、タップインダクタ共振器により構成している。
【0046】
タップインダクタ共振器の負荷回路12Aは、第1の可変インダクタL11A、第2の可変インダクタL12A、固定インダクタL13A、容量素子C11A、および共振インピーダンス素子(Ro)としての抵抗素子R11Aを有する。
第1の可変インダクタL11Aが誘導性リアクタンス素子である第1のリアクタンス素子に相当し、第2の可変インダクタL12Aが誘導性リアクタンス素子である第2のリアクタンス素子に相当する。固定容量素子C11Aが容量性リアクタンス素子である第3のリアクタンス素子に相当する。
【0047】
第1の可変インダクタL11Aは、その一端(一電極端)が第1のノードND11Aに接続され、他端(他電極端)が第2のノードND12Aに接続されている。
第2の可変インダクタL12Aは、その一端(一電極端)が第1のノードND11Aに接続され、他端(他電極端)が固定インダクタL13Aの一端に接続されている。
固定インダクタL13Aの他端が第1の出力端子TO11に接続され、その接続ラインにノードND13Aが形成されている。
固定容量素子C11Aは、その一端(一電極端)がノードND13A(第1の出力端子TO11)に接続され、他端(他電極端)が第2のノードND12A(第2の出力端子TO12)に接続されている。
抵抗素子R11Aは、共振時のインピーダンスωLQを等価的に表しているものである。この抵抗素子R11Aは、等価的に、その一端がノードND13A(第1の出力端子TO11)に接続され、他端が第2のノードND12A(第2の出力端子TO12)に接続される。
【0048】
以下の説明では、第1の可変インダクタL11Aのインダクタンス値をL1で示し、第2の可変インダクタL12Aのインダクタンス値をL2で示し、固定インダクタL13Aのインダクタンス値をLcで示す。
【0049】
次に、図5の高周波増幅器の動作を説明する。
【0050】
入力端子TI11に入力された信号は増幅部11で入力信号に比例した電流へ変換され、その入力信号に比例した電流が負荷回路12Aに流れ出力端子TO11,TO12から電圧として出力される。
【0051】
第1の実施形態の場合と同様に、増幅部11の出力端を形成する第1のノードND11Aにおける電圧振幅をVamp、出力電圧をVoutとすると、増幅部11の出力端である第1のノードND11Aからの出力端子TO11への電圧ゲインは次式で表される。
【0052】
【数7】

【0053】
また、増幅部11の出力端である第1のノードND11Aから出力端子TO11側を見込んだインピーダンスRiは以下のようになる。
【0054】
【数8】

【0055】
すなわち、増幅部11の出力端である第1のノードND11Aにおけるインピーダンスは共振インピーダンスRoを増幅部11の出力端である第1のノードND11Aからの出力端子TO11への電圧ゲインの2乗で割った値となる。
【0056】
また、増幅部11の出力端である第1のノードND11Aにおける出力電流は、前述したように増幅部11のトランスコンダクタンスgmと入力信号Vinの積で表わされるので、増幅部11の出力端である第1のノードND11Aにおける振幅は以下のようになる。
【0057】
【数9】

【0058】
このように、増幅部11の出力端における振幅が増幅部11の出力端である第1のノードND11Aからの出力端子TO11への電圧ゲインの2乗に反比例する。
以上のように、本第2の実施形態においては、従来の並列LC共振器に比べて増幅部11の出力端での振幅が制限できることから、増幅部11の出力端である第1のノードND11Aにおける歪性能が改善されダイナミックレンジが広がる。
【0059】
また、本第2の実施形態のように、インダクタのインダクタンスを変化させてある帯域をカバーするシステムの場合は固定インダクタンスLcの値を適切に選ぶことによって、高周波増幅器10Aのゲインのフラット化を実現することが可能となる。
高周波増幅器10Aのトータルのゲインは以下のように表わされる。
【0060】
【数10】

【0061】
共振インピーダンスRo(ω)は周波数が高くなるにつれて大きくなるため、背景技術で述べた通り、図1の並列LC共振器を負荷に持つ高周波増幅器は図2のようにゲインに周波数依存性を持ってしまう。
一方、本発明の第2の実施形態に係る負荷方式を適用した高周波増幅器10Aでは周波数が高くなるにつれて可変インダクタL11A、L12Aのインダクタンス値L1,L2は小さくなるが、固定インダクタL13Aのインダクタンス値Lcは一定である。
したがて、変換比は次のように大きくなる。
【0062】
【数11】

【0063】
その結果、共振インピーダンスRo(ω)の周波数特性と変換比が逆特性の関係になるため、トータルのゲインの周波数特性としては図4の実線Aで示すようにフラット化が可能となる。
【0064】
以上説明したように、本第2の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
すなわち、タップインダクタ共振器を増幅器の負荷に用いることにより、増幅部の出力端での振幅を抑制しダイナミッックレンジを広げることが可能となる。
併せて、固定インダクタを直列に接続することによってゲインの周波数依存性をフラットに保つことができる。
【0065】
<3.第3の実施形態>
図6は、本実施形態に係る高周波増幅器を採用した無線通信装置のRFフロントエンド部の構成例を示す図である。
【0066】
図6のRFフロントエンド部100は、アンテナ110、デュプレクサ120、RFアンプ部130、局部発振器140、およびミキサ150,160を有する。
【0067】
デュプレクサ120は、1本のアンテナ110を送信と受信で共用可能とするために、送信経路と受信経路を電気的に分離する機能を有する。
【0068】
RFアンプ部130は、受信系130Rおよび送信系130Tを含んで構成されている。
受信系130Rは、アンテナ110で受信された受信信号を所定のゲインで増幅する低雑音増幅器(LNA)131を有する。受信系130Rは、LNA131の出力信号から所望の周波数帯域の信号を通過させ、ミキサ150に主信号として出力するバンドパスフィルタ(BPF)132を有する。
送信系130Tは、ミキサ160による出力信号から所望の送信周波数帯域の信号を通信させるBPF133、およびBPF133の出力を増幅してデュプレクサ120に出力するパワーアンプ(PA)134を有する。
【0069】
ミキサ150は、BPF132から出力される受信信号と局部発振器140の局部発振信号とをミキシングして、たとえば中間周波信号(IF信号)を出力する。
ミキサ160は、図示しない送信処理系による送信すべき信号に局部発振器140の局部発振信号をミキシングしてBPF133に出力する。
【0070】
本第3の実施形態のフロントエンド部100は、RFアンプ部130のLNA131に、上述した第1または第2の実施形態の高周波増幅器10,10Aが適用される。
したがって、LNA131の増幅部の出力端での振幅を抑制しダイナミッックレンジを広げることが可能となり、併せて、ゲインの周波数依存性をフラットに保つことができる。
【0071】
<4.第4の実施形態>
図7は、本実施形態に係る高周波増幅器を採用したテレビジョン受像機のチューナ部の構成例を示す図である。
【0072】
テレビジョン受像機のチューナ部200は、受信アンテナ210、チューニングフィルタ220、LNA230、チューニングフィルタ240、局部発振器250、およびミキサ260を有する。
チューナ部200は、さらにIFフィルタ270、IFアンプ280、およびデュモジュレータ290を有する。
チューナ部200において、受信アンテナ210、チューニングフィルタ220、LNA230、チューニングフィルタ240、局部発振器250、ミキサ260、IFフィルタ270、およびIFアンプ280によりフロントエンド部が形成される。
【0073】
受信アンテナ210で受信された放送波は、受信信号としてチューニングフィルタ220で所望の周波数が抽出され、LNA230で増幅された後、チューニングフィルタ240で所望の周波数が抽出され、主信号としてミキサ260に入力される。
ミキサ260では、局部発振器250の局部発振信号とミキシングされて、IF信号(中間周波信号)として出力される。このIF信号は、IFフィルタ270で不要な成分が除去され、IFアンプ280で増幅された後、デュモジュレータ290に入力され、ここで復調される。
【0074】
本第4の実施形態のチューナ部200は、LNA230に、上述した第1または第2の実施形態の高周波増幅器10,10Aが適用される。
したがって、LNA230の増幅部の出力端での振幅を抑制しダイナミッックレンジを広げることが可能となり、併せて、ゲインの周波数依存性をフラットに保つことができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る高周波増幅器が適用される電子機器として、ここではテレビジョン受像機のチューナ部を例に説明したが、本発明は、RF信号に対する受信機を有する携帯機器等の電子機器にも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
10,10A・・・高周波増幅器、11・・・gmアンプ(増幅部)、12,12A・・・負荷回路、C11・・・可変容量素子、C12・・・可変容量素子、C13・・・固定容量素子、L11・・・インダクタ、L11A・・・可変インダクタ、L12A・・・可変インダクタ、L13A・・・固定インダクタ、C11A・・・容量素子、R11,R11A・・・共振インピーダンス素子(Ro)としての抵抗素子、ND11,ND11A・・・第1のノード、ND12,ND12A・・・第2のノード、TI11・・・入力端子、TO11・・・第1の出力端子、TO12・・・第2の出力端子、100・・・RFフロントエンド部、110・・・アンテナ、120・・・デュプレクサ、130・・・RFアンプ部、130R・・・受信系、130T・・・送信系、131・・・低雑音増幅器(LNA)、132,133・・・バンドパスフィルタ(BPF)、134・・・パワーアンプ(PA)、200・・・TVチューナ部、210・・・アンテナ、220,240・・・チューニングフィルタ、230・・・LNA、250・・・局部発振器、260・・・ミキサ、270・・・IFフィルタ、280・・・IFアンプ、290・・・デュモジュレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を電圧信号から電流信号に変換して出力する機能を有する増幅部と、
出力端子と、
上記増幅部の出力端が接続され、当該増幅部から出力される電流信号を電圧信号として上記出力端子に出力する負荷回路と、を有し、
上記負荷回路は、
第1のリアクタンス素子と、
第2のリアクタンス素子と、
第3のリアクタンス素子と、を有し、
上記第1のリアクタンス素子の一端と上記第2のリアクタンス素子の一端が接続され、その接続点が上記増幅部の出力端に接続され、
上記第2のリアクタンス素子の他端と上記第3のリアクタンス素子の一端が接続され、その接続点が上記出力端子に接続され、
上記第1のリアクタンス素子と上記第3のリアクタンス素子が並列に接続され、
上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子は、
容量性リアクタンス素子または誘導性リアクタンス素子により形成され、
上記第3のリアクタンス素子は、
誘導性リアクタンス素子または容量性リアクタンス素子により形成され、
上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子は、リアクタンスが可変である
高周波増幅器。
【請求項2】
上記負荷回路は、
上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子が、容量が可変の第1および第2の可変容量素子により形成され、上記第3のリアクタンス素子がインダクタにより形成された、タップ容量共振器を含む
請求項1記載の高周波増幅器。
【請求項3】
上記増幅部の出力端に対して、上記第1のリアクタンス素子を形成する可変容量素子に並列に容量が固定の固定容量素子が接続されている
請求項2記載の高周波増幅器。
【請求項4】
上記負荷回路は、
上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子が、インダクタンスが可変の第1および第2の可変インダクタにより形成され、上記第3のリアクタンス素子が容量素子により形成された、タップインダクタ共振器を含む
請求項1記載の高周波増幅器。
【請求項5】
上記第2の可変インダクタにより形成される上記第2のリアクタンス素子の一端と上記容量素子により形成される上記第3のリアクタンス素子の他端との間に、インダクタンスが固定の固定インダクタが接続されている
請求項4記載の高周波増幅器。
【請求項6】
局部発振部による局部発振信号に基づいて主信号に対する所定の処理を行うフロントエンド部を有し、
上記フロントエンド部は、
受信信号を受けて上記主信号を出力する高周波幅器を含み、
上記高周波増幅器は、

入力信号を電圧信号から電流信号に変換して出力する機能を有する増幅部と、
出力端子と、
上記増幅部の出力端が接続され、当該増幅部から出力される電流信号を電圧信号として上記出力端子に出力する負荷回路と、を有し、
上記負荷回路は、
第1のリアクタンス素子と、
第2のリアクタンス素子と、
第3のリアクタンス素子と、を有し、
上記第1のリアクタンス素子の一端と上記第2のリアクタンス素子の一端が接続され、その接続点が上記増幅部の出力端に接続され、
上記第2のリアクタンス素子の他端と上記第3のリアクタンス素子の一端が接続され、その接続点が上記出力端子に接続され、
上記第1のリアクタンス素子と上記第3のリアクタンス素子が並列に接続され、
上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子は、
容量性リアクタンス素子または誘導性リアクタンス素子により形成され、
上記第3のリアクタンス素子は、
誘導性リアクタンス素子または容量性リアクタンス素子により形成され、
上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子は、リアクタンスが可変である
無線通信装置。
【請求項7】
上記負荷回路は、
上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子が、容量が可変の第1および第2の可変容量素子により形成され、上記第3のリアクタンス素子がインダクタにより形成された、タップ容量共振器を含む
請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
上記増幅部の出力端に対して、上記第1のリアクタンス素子を形成する可変容量素子に並列に容量が固定の固定容量素子が接続されている
請求項7記載の無線通信装置。
【請求項9】
上記負荷回路は、
上記第1のリアクタンス素子および上記第2のリアクタンス素子が、インダクタンスが可変の第1および第2の可変インダクタにより形成され、上記第3のリアクタンス素子が容量素子により形成された、タップインダクタ共振器を含む
請求項6記載の無線通信装置。
【請求項10】
上記第2の可変インダクタにより形成される上記第2のリアクタンス素子の一端と上記容量素子により形成される上記第3のリアクタンス素子の他端との間に、インダクタンスが固定の固定インダクタが接続されている
請求項9記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97160(P2011−97160A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246539(P2009−246539)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】