説明

高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナおよび携帯電話。

【課題】高周波域において、透磁率実部μ’と透磁率虚部μ”の比(μ”/μ’)が小さな、優れた高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナ、および携帯電話を提供する。
【解決手段】基板12と、この基板12上の複数の平板体を形成する磁性相14と、磁性相の間隙を充填する絶縁体相16とから成る複合磁性膜18とを備え、磁性相14が非晶質であり、基板12の表面に平行な面内における、絶縁体相16の伸長方向の平均をX軸方向、同面内においてX軸と直交する方向をY軸方向、基板12の法線方向をZ軸方向とする直交座標系の、Y−Z平面において、平板体の長手方向がZ軸方向から傾斜し、X−Y平面において、面内一軸異方性を有することを特徴とする高周波用磁性材料10、この高周波用磁性材料10の製造方法、この高周波用磁性材料10を用いたアンテナ装置および携帯電話。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナおよび携帯電話に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の携帯機器で使用される電波の周波数帯域は、GHz帯にまで高周波化している。しかし、例えば、携帯機器のアンテナが電磁波を放射する際、金属がアンテナ近傍に存在すると、金属内に生じる誘導電流により電磁波の放射が妨げられてしまう。そこで、アンテナ近傍に高周波用磁性材料(高周波域において、高い透磁率を示す材料)を配置することで、不要な誘導電流の発生を抑制し、高周波域の電波通信を安定化できると考えられている。
【0003】
通常の高透磁率部材としては、Fe、Co、Niなどを主成分とする金属、合金、その酸化物が用いられる。金属もしくは合金の高透磁率部材は、電波の周波数が高くなると渦電流により電波の伝送損失が顕著になるため、高周波用磁性材料としては適さない。
【0004】
一方、フェライトに代表される酸化物の磁性体は、高抵抗であるため渦電流による伝送損失は抑えられるが、共鳴周波数が数百MHzであるため、それ以上の高周波域では共鳴による伝送損失が顕著になり、やはり高周波用磁性材料としては適さない。
【0005】
このため、GHz帯域までの高周波域で磁気特性の優れた高周波用磁性材料の開発が求められている。優れた高周波用磁性材料とは、高周波域において、高抵抗で、透磁率実部μ’が大きく、透磁率の損失成分を示す透磁率虚部μ”が小さい、すなわちμ”/μ’が小さい材料である。
【0006】
このような高周波用磁性材料を作製する試みとして、スパッタリング法などの薄膜技術を用いてグラニュラー構造を有する高透磁率ナノグラニュラー材料が作製されている。ここで、グラニュラー構造とは、絶縁体マトリクスの中に、磁性金属微粒子が分散している構造で、高周波域においても優れた特性を示すことが確認されている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、グラニュラー構造では、磁性金属微粒子の高周波用磁性材料中の体積百分率を向上させ、さらなる高透磁率化を図ることが困難である。
【0007】
また、グラニュラー構造からさらに磁性金属の高周波用磁性材料中の体積百分率を向上させた材料として、柱状構造から成る高透磁率材料が作製されている。これは、絶縁体マトリクスの中に、柱状体の磁性金属が分散している構造で、高周波域においてグラニュラー構造よりも高い透磁率を示すことが確認されている(例えば、非特許文献2)。
【0008】
しかし柱状構造を有する材料では、結晶配向の乱れなどに起因する磁気的な異方性分散が大きいため、高周波域での損失成分μ”が大きく、μ”/μ’が大きいという問題点があった。
【非特許文献1】S.Ohnuma et al., “High−frequency magnetic properties in metal−nonmetal granular films”, Journal of Applied Physics 79(8) pp.5130−5135(1996)
【非特許文献2】N.Hayashi et al., “Soft Magnetic Properties and Microstructure of Ni81Fe19/(Fe70Co30)99(Al2O3)1) Films Deposited by Ion Beam Sputtering”, Transaction of the Materials Research Society of Japan 29[4] pp.1611−1614(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、高周波域において、透磁率実部μ’と透磁率虚部μ”の比(μ”/μ’)が小さな、優れた高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナおよび携帯電話を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の高周波用磁性材料は、基板と、前記基板上に形成され、複数の平板体を形成する磁性相と、前記磁性相の間隙を充填する絶縁体相とから成る複合磁性膜とを具備し、前記磁性相が非晶質であり、前記基板の表面に平行な面内における、前記絶縁体相の伸長方向の平均をX軸方向、同面内において前記X軸方向と直交する方向をY軸方向、前記基板の法線方向をZ軸方向とする直交座標系の、Y−Z平面において、前記平板体の長手方向が前記Z軸方向から傾斜し、X−Y平面において、Y軸方向を中心にした±20°の範囲に、最小異方性磁界Hk1を有し、X−Y平面において、X軸方向を中心にした±20°の範囲に、最大異方性磁界Hk2を有し、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの面内一軸異方性を有することを特徴とする。
【0011】
ここで、前記X−Y平面において、前記X軸方向の単位長さ当たりに存在する絶縁体相の数の平均値aと、前記Y軸方向の単位長さ当たりに存在する絶縁体相の数の平均値bとの比が、b/a≧3であり、前記Y―Z平面において、前記平板体の長手方向とZ軸方向との成す角度αが、10°≦α≦80°であることが望ましい。
【0012】
ここで、前記平板体同士の間隔cの平均値caveが、1nm≦cave≦10nmであることが望ましい。
【0013】
ここで、前記磁性相をM、前記絶縁体相をI、前記複合磁性膜をM(1−x)と表記する場合に、0.80≦x≦0.95であることが望ましい。
【0014】
ここで、前記磁性相が少なくともFeとB(ホウ素)とを含有し、前記絶縁体相が少なくとも酸化物を含有することが望ましい。
【0015】
ここで、前記磁性相に含まれるBの、前記磁性相全体に対する割合yが、10at%≦y≦30at%であることが望ましい。
【0016】
ここで、前記磁性相が少なくともNbまたはZrまたはHfのいずれかひとつを含有し、
NbまたはZrまたはHfの合計の、前記磁性相全体に対する割合zが、1at%≦z≦7at%、かつ、前記磁性相に含まれるBの割合yが、5at%≦y≦20at%であることが望ましい。
【0017】
ここで、前記磁性相が少なくともFeとCoとを含有することが望ましい。
【0018】
ここで、前記FeとCoの和に対する、Coの割合wが、20at%≦w≦40at%であることが望ましい。
【0019】
ここで、前記複合磁性膜中に、前記基板に平行な複数の絶縁体層が介在していることが望ましい。
【0020】
ここで、前記絶縁体層の膜厚が、5nm以上100nm以下であることが望ましい。
【0021】
ここで、前記複合磁性膜において、前記Y軸方向に1μm≦d≦1mmの間隔dで細分化され、前記X軸方向にe/d≦100となる間隔eで細分化されていることが望ましい。
【0022】
本発明の一態様の高周波用磁性材料の製造方法は、スパッタ法を用い、磁界中にて、蒸着粒子の入射方向と基板の法線方向との成す角度の平均値βが、10°≦β≦80°となるように、前記基板を固定して形成することを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様のアンテナは、給電端子と、一端に前記給電端子が接続されるアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波用磁性材料を具備するアンテナであって、前記高周波用磁性材料が、上記本発明の一態様の高周波用磁性材料であることを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様の携帯電話は、上記本発明の一態様のアンテナを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高周波域において、透磁率実部μ’と透磁率虚部μ”の比(μ”/μ’)が小さな、優れた高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナおよび携帯電話を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0027】
発明者らは、磁性材料において、磁性相を非晶質にすることで、高周波域において、磁気的な異方性分散を抑制し、かつ、磁性相を傾斜した平板体構造にすることで、大きな格子歪みと形状磁気異方性を付与し、異方性磁界を増大させ、非晶質の柱状構造を有する複合磁性膜よりも、透磁率の損失成分を低減できることを見出した。本発明は、発明者らによって見出された上記知見に基づき完成されたものである。
【0028】
なお、本明細書中、非晶質とは、X線回折におけるFeの最強ピークの半値幅が、3.0以上の状態をいう。
【0029】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の高周波用磁性材料は、基板と、この基板上に形成され、複数の平板体を形成する磁性相と、磁性相の間隙を充填する絶縁体相とから成る複合磁性膜とを備えている。そして、この磁性相が非晶質であり、基板の表面に平行な面内における、絶縁体相の伸長方向の平均をX軸方向、同面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、基板の法線方向をZ軸方向とする直交座標系の、Y−Z平面において、平板体の長手方向がZ軸方向から傾斜し、X−Y平面において、Y軸方向を中心にした±20°の範囲に、最小異方性磁界Hk1を有し、X−Y平面において、X軸方向を中心にした±20°の範囲に、最大異方性磁界Hk2を有している。そして、この高周波用磁性材料は、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの面内一軸異方性を有する
【0030】
図1は、本実施の形態の高周波用磁性材料の構造を示す図である。図1(a)が斜視図、図1(b)がX−Y平面の上面図、図1(c)がY−Z平面の断面図である。
【0031】
図示する高周波用磁性材料10は、複数の平板体を形成する磁性相14を備える。図1(b)に示すように、磁性相14は、基板12上に、基板12の表面に平行な面内、すなわちX−Y平面において一方向に扁平している。また、図1(c)に示すように、高さ方向すなわち、Y−Z平面における平板体の長手方向が、この基板12の法線方向、すなわち、Z軸方向から角度αだけ傾斜している。そして、この磁性相14は非晶質である。磁性相14としては、例えば、Feに、B、P、Cのうち少なくとも一つの元素を含有する材料が適用可能である。
【0032】
上述のように磁性相14を平板体かつ非晶質とすることにより、高周波域において、磁性金属の高い体積率、すなわち高い透磁率を保ちながら、磁気的な異方性分散を抑制し、非晶質の柱状構造や、結晶質の平板体構造を有する複合磁性膜よりも、透磁率の損失成分を低減することが可能となる。
【0033】
また、上述のように磁性相14である平板体の高さ方向が、基板12の法線方向から傾斜していることにより、大きな格子歪みと、傾斜方向へ磁化しやすくなる形状磁気異方性を付与することができる。このため、基板に対して垂直に立つ柱状構造や平板体構造よりも、異方性磁界を大きくすることができる。その結果、共鳴周波数の高周波化、高周波域での透磁率の損失成分の低減が可能となる。
【0034】
平板体の間には、絶縁体相16が充填されている。磁性相14と絶縁体相16を合わせた部分を、複合磁性膜18とする。
【0035】
絶縁体相16は、基板12の表面に平行な面内において、平板体の扁平方向と同じ方向に伸長した構造となっている。ここで、上述のように、絶縁体相16の伸長方向の平均の方向をX軸方向、同面内において、X軸方向と直交する方向をY軸方向とする。絶縁体相16の伸長方向は、高周波用磁性材料10の、基板12に平行な表面の任意の2ヶ所を、透過型電子顕微鏡を用いて(倍率100万倍)観察し、各観察写真の中心部100nm四方に相当する範囲において、20nm以上伸長する絶縁体相16を選択し、選択した絶縁体相16の中心の任意の1点と、それと20nm離れた同じ絶縁体相16の1点とを結んだ直線の方向とする。各観察写真において、任意の10本の直線を引き、計20本の直線の平均値を、絶縁体相16の伸長方向の平均の方向とする。
【0036】
また、基板12の法線方向をZ軸方向とし、上述のX軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を定める。
【0037】
上述のように、高周波用磁性材料10は、X−Y平面において、Y軸方向を中心にした±20°の範囲に、最小異方性磁界Hk1を有し、X−Y平面において、X軸方向を中心にした±20°の範囲に、最大異方性磁界Hk2を有し、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/m(=50Oe)の面内一軸異方性を有する。
【0038】
本実施の形態の高周波用磁性材料は、上記範囲の面内一軸異方性を備えることにより、高周波域における透磁率の損失成分を低減することが可能となる。
【0039】
面内一軸異方性を有することにより、高周波域において、透磁率の損失成分の低減が可能となるのは、以下のように考えられる。すなわち、最大異方性磁界と、透磁率の共鳴周波数は比例関係にあり、Hk2≧3.98×10A/mとすることで、1GHz以上の共鳴周波数が達成できる。そして、Hk2≧3.98×10A/mを得るには、Hk2/Hk1≧3を満たす面内一軸異方性を付与することが有効である。このように、面内一軸異方性を有することにより、磁気特性が等方的な場合よりも、最大異方性磁界を大きくすることができ、結果的に、高周波域でのμ”/μ’を小さくすることが可能となるのである。
【0040】
このような磁気的な異方性は、磁性相14である平板体が、Z軸方向から傾斜していることにより、大きな格子歪みと、傾斜方向へ磁化しやすい形状磁気異方性が付与された結果、得ることができる。
【0041】
このように、磁性相14が非晶質であり、かつ磁性相14がX軸方向に扁平し、Z軸方向から傾斜した平板体構造であり、X−Y平面の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mとなる面内一軸異方性を備えることにより、従来の磁性材料と比較して、高周波域における透磁率の損失成分を大幅に低減することが可能となる。
【0042】
X−Y平面において、X軸方向の単位長さ当たりに存在する絶縁体相16の数の平均値aと、Y軸方向の単位長さ当たりに存在する絶縁体相16の数の平均値bとの比は、b/a≧3であることが好ましい。ここで、高周波用磁性材料10の、基板に平行な表面の任意の2ヶ所を、透過型電子顕微鏡を用いて(倍率40万倍)観察し、各観察写真において、任意の10点、計20点を選択する。各点を中心に、X軸方向とY軸方向に200nmの長さの直線を引き、X軸方向の直線を横切る絶縁体相16の数の平均値をa、Y軸方向の直線を横切る絶縁体相16の数の平均値をbとする。b/aが3より小さいと、磁性相14の体積百分率が下がって、透磁率が低下するおそれがある。
【0043】
Y―Z平面において、平板体の長手方向とZ軸方向との成す角度α(図1(c))は、10°≦α≦80°であることが好ましい。αが10°より小さいと、形状磁気異方性が小さく、十分な最大異方性磁界を得られないおそれがある。また、αが80°より大きいと、均質な膜を作製することができない。
【0044】
平板体同士の間隔c(図1(b))の平均値caveが、1nm≦cave≦10nmであることが好ましい。ここで、高周波用磁性材料10の、基板12に平行な表面の任意の2ヶ所を、透過型電子顕微鏡を用いて(倍率40万倍で)観察する。そして、各観察写真の中心部100nm四方に相当する範囲に含まれる、すべての平板体について、それと隣接する平板体との最短距離を測定し、それらすべての値の平均値をcaveとする。
【0045】
cが1nmより小さいと、平板体構造を形成しにくくなり、十分な最大異方性磁界を得られないおそれがある。また、cが10nmより大きいと、磁性相14の体積百分率が下がって、透磁率が低下するおそれがある。
【0046】
磁性相14をM、絶縁体相16をI、複合磁性膜18をM(1−x)とすると、0.80≦x≦0.95であること、すなわち、複合磁性膜18に占める磁性相14の割合が、80mol%以上95mol%以下が好ましい。磁性相14が80mol%より少ないと、磁性相14の体積百分率が下がってグラニュラー構造となり、透磁率が低下するおそれがある。磁性相14が95mol%より大きいと、平板体同士が凝集して保磁力が増大し、透磁率の損失が増大するおそれがある。
【0047】
磁性相14は、少なくともFeとB(ホウ素)とを含むことが望ましい。FeにBを添加することで、Feの平板体を、非晶質化することが容易になる。
【0048】
磁性相14に含まれるBの割合yは、10at%≦y≦30at%であることが好ましい。Bが10at%より少ないと、Feの平板体の非晶質化が困難になり、30at%より多いと、Feの割合が減り、透磁率が低くなってしまう。
【0049】
磁性相14は、少なくともNbまたはZrまたはHfのうちのいずれかひとつを含有し、NbまたはZrまたはHfの合計の、磁性相14全体に対する割合zが、1at%≦z≦7at%、かつ、磁性相14に含まれるBの割合yが、5at%≦y≦20at%であることが望ましい。Feに、少なくともNbまたはZrまたはHfのうちのいずれかひとつを添加すると、Feの結晶化温度が向上してFeの非晶質化を促す効果があり、加えてBを添加することで、Feの非晶質化度合いの調整が容易になる。zが1at%より少ないと、Feの結晶化温度が向上しないため、Feの非晶質化は促進されず、7at%より多いと、Feの割合が減り、透磁率が低くなるおそれがある。また、yが5at%より少ないと、Feが非晶質化せず、20at%より多いと、Feの割合が減り、透磁率が低くなるおそれがある。
【0050】
磁性相14が非晶質であることは、X線回折パターンや、電子線回折パターンから判断できる。X線回折パターンでは、結晶の場合のようなシャープな強いピークではなく、ブロードな弱いピークが現れる。電子線回折パターンでは、明瞭なスポットではなく、ハローリングが現れる。本明細中における非晶質とは、X線回折におけるFeの最強ピークの半値幅が、3.0以上の状態とすることは上述したとおりである。
【0051】
結晶質の平板体の場合、結晶配向の乱れがある(すなわち多結晶である)と、磁気的な異方性分散が大きく、透磁率の損失成分(透磁率虚部μ”)が増大してしまうが、非晶質の場合、結晶配向の乱れが無いため、磁気的な異方性分散が極めて小さく、μ”も小さくすることができる。
【0052】
また、金属を非晶質化すると、結晶の金属よりも電気抵抗を大きくすることができる。つまり、磁性相を非晶質の傾斜した平板体とすることで、高い共鳴周波数、高周波域で高透磁率、低損失、高抵抗を示す、優れた高周波用磁性材料10を作製することができる。
【0053】
透磁率をより高くするには、FeとCoを混合することが好ましく、FeCo中のCoの割合が20at%以上40at%以下であることが好ましい。
【0054】
本実施の形態の絶縁体相16は、図1に示すように、磁性相14の平板体の間隙を充填している。この絶縁体相16の材料は、渦電流による伝送損失は抑える観点から、室温で1×10Ω・cm以上の電気抵抗を有することが望ましい。
【0055】
このような絶縁体相16として、例えばMg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、および希土類元素(Yを含む)から選ばれる金属の酸化物、窒化物、炭化物およびフッ化物などが挙げられる。成膜の容易さ、コストの面などから、特に酸化物、中でもシリコン酸化物またはアルミニウム酸化物であることが好ましい。
絶縁体相16は、磁性金属元素を30mol%以下含むことを許容する。磁性金属元素の量が30mol%を超えると、絶縁体相16の電気抵抗率が低下し、複合磁性膜18全体の磁気特性が低下するおそれがある。
【0056】
次に、本実施の形態の複合磁性膜の、磁気的な面内一軸異方性について説明する。図1に示す複合磁性膜18は、X−Y平面において、Y軸方向を中心にした±20°の範囲に、最小異方性磁界Hk1を有し、X−Y平面において、X軸方向を中心にした±20°の範囲に、最大異方性磁界Hk2を有し、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mを満たす、磁気的な面内一軸異方性をもつ。
【0057】
上述のように、一軸異方性を付与することにより、磁気特性が等方的な場合よりも、最大異方性磁界を大きくすることができ、3.98×10A/m以上の異方性磁界を得やすくなる。最大異方性磁界と、透磁率の共鳴周波数は比例関係にあり、Hk2≧3.98×10A/mとすることで、1GHz以上の共鳴周波数を得ることが容易になる。Hk2≧3.98×10A/mを得るには、Hk2/Hk1≧3を満たす一軸異方性を付与することが有効である。このように、一軸異方性を付与し、最大異方性磁界を大きくすることで、高周波域でのμ”/μ’を小さくすることが可能となる。
【0058】
本明細書中では、Hk(Hk1およびHk2)は、図2に示すように、印加磁界に対する磁化の変化量が最も大きい磁界(≧0)下での接線と、最も変化量が小さい磁界下での接線との、磁化曲線の第一象限(磁化>0、印加磁界>0)における交点の磁界と定義する。
【0059】
このような磁気的な異方性は、磁性相14である平板体が、Z軸方向から傾斜していることにより、大きな格子歪みと、傾斜方向へ磁化しやすい形状磁気異方性が付与された結果、得ることができる。本発明での格子歪みとは、例えば、複合磁性膜18のX−Y平面での異方性磁界Hk1に対応する方向でのFeの原子間距離が、異方性磁界Hk2に対応する方向でのFeの原子間距離より長い状態である。
【0060】
本実施の形態の基板12は、例えばポリイミドのようなプラスチック、SiO、Al、MgO、Si、ガラスのような無機材料を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0061】
本実施の形態の高周波用磁性材料10において、複合磁性膜18とは異なる材料を含有する薄膜層を、基板12と複合磁性膜18の間に形成することを許容する。このような薄膜層上に複合磁性膜18を成膜する場合、例えば、複合磁性膜18中の磁性相14の平板体の大きさを制御できたり、基板12と複合磁性膜18との界面における磁気構造の乱れを低減したりすることで、磁気特性がより向上した高周波用磁性材料10を得ることが可能になる。
【0062】
薄膜層は、Ni,Fe,Cu,Ta,Cr,Co,Zr,Nb,Ru,Ti,Hf,W,Auもしくはその合金、またはSiO、Alのような酸化物から選ばれることが好ましい。
【0063】
そして、薄膜層は、50nm以下とすることが望ましい。この薄膜層が50nmを超えると、磁性相14の高周波用磁性材料中の体積百分率が減少し、透磁率が低下するおそれがある。
【0064】
本実施の形態の高周波用磁性材料10は、例えば、対向型マグネトロンスパッタ成膜装置によるスパッタ法を用い、磁界中にて、蒸着粒子の入射方向と基板の法線方向との成す角度の平均値βが、10°≦β≦80°となるように基板を固定して形成することで製造可能である。
【0065】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の高周波用磁性材料は、複合磁性膜中に、基板に平行な複数の絶縁体層が介在していること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、以後、第1の実施の形態と重複する点については記載を省略する。
【0066】
図3は、本実施の形態の高周波用磁性材料の断面図である。図3に示すように、基板12上に複合磁性膜18が2層以上積層され、これらの複合磁性膜18の間に絶縁体層20が形成された構造を有する。
【0067】
このように2層以上の複合磁性膜18の間に絶縁体層20を介在させる、つまり厚さ方向の複合磁性膜18を絶縁体層20で分離して厚膜化することによって、複合磁性膜18に絶縁体層20を介在せずに一層で厚膜にした場合に生じる反磁界の影響を低減し、高周波用磁性材料10全体の磁気特性の向上を図ることが可能になる。また、複合磁性膜18を厚膜化する際に懸念される膜厚方向への構造の乱れを回避することも可能になる。
【0068】
絶縁体層20は、例えばMg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、および希土類元素(Yを含む)から選ばれる金属の酸化物、窒化物、炭化物およびフッ化物の群から選ばれる少なくとも1つから作られることが好ましい。特に、絶縁体層20は複合磁性膜18を構成する絶縁体相16と同種の材料を選択することが好ましい。
【0069】
絶縁体層20は、5nm以上、100nm以下、より好ましくは50nm以下であることが好ましい。絶縁体層20が100nm以上であると、高周波用磁性材料10中の磁性相の体積百分率が小さくなり透磁率が低下し、5nm以下だと複合磁性膜18間の磁気的カップリングが切れず、反磁界の影響が顕著になるおそれがある。
【0070】
高周波用磁性材料10は、高周波域において、渦電流による伝送損失を抑制するために、高抵抗であることが望ましい。高周波用磁性材料を高抵抗化するには、材料を細分化することが有効であり、Y軸方向が1μm≦d≦1mmの間隔dで細分化され、X軸方向がe/d≦100となるような間隔eで細分化されていることが好ましい。dを1μmより小さくすることは技術的に困難であり、dが1mmより大きいと、渦電流による伝送損失が増大するおそれがある。また、e/dが100より大きいと、X軸方向に磁化しやすくなる形状磁気異方性が生じてしまい、傾斜した平板体構造による磁気異方性を打ち消し、大きな異方性磁界が得られないおそれがある。材料の細分化は、レーザー加工、ダイシング加工、スタンパ加工などにて実施できるが、これらに限定されるわけではない。
【0071】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態のアンテナは、給電端子と、一端に給電端子が接続されるアンテナエレメントと、このアンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波用磁性材料を備えている。そして、この高周波用磁性材料が第1の実施の形態または第2の実施の形態に記載した高周波用磁性材料であることを特徴とする。したがって、以下、第1または第2の実施の形態で記述した高周波用電極材料に関する記載については重複するため省略する。
【0072】
図4は本実施の形態のアンテナの斜視図、図5は断面図である。高周波用磁性材料10が、給電端子22が一端に接続されるアンテナエレメント24と、配線基板26との間に設けられている。この配線基板26は、例えば、携帯機器の配線基板であり、例えば、金属の筐体で囲まれている。
【0073】
例えば、携帯機器のアンテナが電磁波を放射する際、アンテナと、携帯機器の筐体などの金属とが、一定以上に近接すると、金属内に生じる誘導電流により電磁波の放射が妨げられてしまう。しかしアンテナ近傍に高周波用磁性材料を配置することで、アンテナと、筐体などの金属とを近接させても、誘導電流が発生せず、電波通信を安定化でき、携帯機器を小型化しうる。
【0074】
本実施の形態のように、高周波用磁性材料10を、給電端子22を挟む2本のアンテナエレメント24と、配線基板26との間に挿入することで、アンテナエレメント24が電磁波を放射する際、配線基板26に生じる誘導電流を抑制し、アンテナの放射効率を上げることができる。そして、アンテナの放射効率を上げるためには、アンテナエレメントに対して、高周波磁性材料の上記定義によるX−Y面を、図4に示すような配置とすることが望ましい。
【0075】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態の携帯電話は、第3の実施の形態のアンテナを備えている。図6は本実施の形態の携帯電話の斜視図である。携帯電話28は、アンテナエレメント24の近傍に高周波用磁性材料10を具備する。図6において、配線基板26の記載は省略したが、配線基板26は、高周波磁性材料10を挟んで、アンテナエレメント24と反対側に存在するものとする。このように、携帯電話のアンテナに高周波用磁性材料10を配置することで、上述したように、電磁波の高い放射効率を維持しながら、携帯電話を小型化することができる。
【0076】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナ、および、携帯電話等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナ、および、携帯電話等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0077】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナ、および、携帯電話は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0079】
(実施例1)
対向型のマグネトロンスパッタ成膜装置を用いた。Fe60.5Co25.9Nb3.610−SiO(磁性相となるFeCoNbBが93mol%すなわちx=0.93、Bの割合yは10at%、磁性相中のNbの割合zは3.6at%)を用いた。チャンバ内の基板ホルダ上に、蒸着粒子の入射方向と基板の法線方向とが成す角度の平均値が25°(すなわちβ=25°)となるように、SiO基板を固定した。7.96×10A/m(100Oe)の磁界を印加しながら、チャンバ内をAr雰囲気中、0.67Pa(5×10−3torr)の圧力下でターゲットからの蒸着粒子を基板表面に堆積して、厚さ0.17μmの複合磁性膜を成膜した。
【0080】
この複合磁性膜表面について、CuKα線X線回折測定(XRD)をおこなった結果を図7に示す。2θ=45°付近の、Feの(110)ピークの半値幅Fは、7.05であり、非晶質であった。
【0081】
この複合磁性膜について、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した、基板の表面に平行な面内の画像(倍率100万倍)を図8に示す。図8から、磁性相(黒色部)である平板体間に絶縁体相(白色部)が形成されていることがわかる。
【0082】
図8と同様にして観察した透過型電子顕微鏡写真2視野の、各観察写真の中心部100nm四方に相当する範囲において、20nm以上伸長する絶縁体相の、絶縁体相の中心の任意の1点と、それと20nm離れた1点とを結んだ直線を引く。各観察写真において、10本の直線を引き、計20本の直線の平均値を、絶縁体相の伸長方向の平均、すなわちX軸方向とした。また、基板の表面に平行な面内において、X軸方向と直交する方向をY軸方向とした。
【0083】
また、各観察写真の中心部100nm四方に相当する範囲に含まれる、すべての平板体について、それと隣接する平板体との最短距離を測定したところ、それらすべての値の平均値は2nmであった。(すなわちcave=2nm)
【0084】
また、図8において、X軸方向とY軸方向それぞれに100nmの直線を引き、各直線上に存在する絶縁体相の数をそれぞれa、bとすると、b/a=5であった。基板の表面に垂直な面内(基板の法線方向をZ軸としたときのY−Z平面)の画像(倍率40万倍)を図9に示す。図9から、平板体の長手方向とZ軸方向とが成す角度αは、25°であることがわかる。
【0085】
この複合磁性膜について、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、磁気特性(印加磁界に対する磁化の大きさ)を測定した。その結果を図10に示す。X−Y平面内において、X軸から10°ずれた方向に、最大異方性磁界Hk2が3.21×10A/m、Y軸方向から10°ずれた方向に、最小異方性磁界Hk1が5.50×10A/mであり、最大異方性磁界方向と最小異方性磁界方向は直交していた。
【0086】
この複合磁性膜について、凌和電子製超高周波透磁率測定装置PMM−9G1を用い、1MHzから9GHzの範囲で、最大異方性磁界の方向に励磁して測定を行った。その結果を図11に示す。1GHzにおける透磁率実部μ’は55.4であり、1GHzにおける透磁率の損失成分を示す透磁率虚部μ”は0.216であり、磁気特性を示すμ”/μ’は、1GHzにおいて0.00390であった。以上の測定結果をまとめて表1に示す。
【0087】
(実施例2)
β=10°にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0088】
(実施例3)
β=80°にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
(比較例1)
β=0°にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。磁性相は基板表面から垂直方向にのびた柱状構造となった。
【0090】
(実施例4)
x=0.80にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0091】
(実施例5)
x=0.95にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
(比較例2)
x=0.75にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。磁性相は平板体構造ではなく、グラニュラー構造となった。測定結果を表1に示す。
【0093】
(比較例3)
x=0.97にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行ったところ、明確な構造組織は得られなかった。
【0094】
(実施例6)
y=10at%、z=0at%にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
(実施例7)
y=30at%、z=0at%にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0096】
(実施例8)
y=35at%、z=0at%にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0097】
(実施例9)
y=20at%、z=1at%にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0098】
(実施例10)
y=5at%、z=7at%にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0099】
(比較例4)
y=5at%、z=0.5at%にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。XRDのFeのピークの半値幅は0.54であり、磁性相が結晶質の平板体構造となった。その結果を表1に示す。
【0100】
(実施例11)
y=5at%、z=10at%にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
【0101】
(比較例5)
成膜時に磁界を印加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定をおこなった。その結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
実施例1、2および3の複合磁性膜は、非晶質の傾斜した平板体構造であり、表1から明らかなように、柱状構造である比較例1や、グラニュラー構造である比較例2や、明確な構造組織をもたない比較例3や、結晶質である平板体構造に比べ、1GHzにおける透磁率虚部μ”(透磁率の損失成分)および1GHzにおける透磁率実部と透磁率虚部の比(μ”/μ’)が小さく、高周波域において優れた磁気特性を有することがわかる。
【0104】
また、磁性相の割合が80mol%以上95mol%以下である実施例1、4および5は、この範囲からはずれる比較例2よりもμ”/μ’が低く、高周波域において優れた磁気特性を有している。
【0105】
また、磁性相中へのB添加量が10at%≦y≦30at%の範囲である実施例6および7は、この範囲からはずれる実施例8および比較例4よりもμ”/μ’が低く、高周波域において優れた磁気特性を有している。
【0106】
また、磁性相中へのB添加量が5at%≦y≦20at%、かつ、磁性相中へのNbまたはZrまたはHf添加量が1at%≦z≦7at%の範囲である実施例9および10は、この範囲からはずれる実施例11および比較例4よりもμ”/μ’が低く、高周波域において優れた磁気特性を有している。
【0107】
また、成膜時に磁界を印加した実施例1は、磁界を印加しなかった比較例5よりもμ”/μ’が低く、高周波域において優れた磁気特性を有している。
【0108】
このように、本実施例により本発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】第1の実施の形態の高周波用磁性材料の斜視図、上面図および断面図。
【図2】印加磁界に対する磁化曲線。
【図3】第2の実施の形態の高周波用磁性材料の断面図。
【図4】第3の実施の形態のアンテナの斜視図。
【図5】第3の実施の形態のアンテナの断面図。
【図6】第4の実施の形態の携帯電話の斜視図。
【図7】実施例1における、複合磁性材料表面のX線回折パターン。
【図8】実施例1における、複合磁性材料表面のTEM観察画像。
【図9】実施例1における、複合磁性材料断面のTEM観察画像。
【図10】実施例1における、VSM測定結果。
【図11】実施例1における、高周波特性測定結果。
【符号の説明】
【0110】
10 高周波用磁性材料
12 基板
14 磁性相
16 絶縁体相
18 複合磁性膜
20 絶縁体層
22 給電端子
24 アンテナエレメント
26 配線基板
28 携帯電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、複数の平板体を形成する磁性相と、前記磁性相の間隙を充填する絶縁体相とから成る複合磁性膜とを具備し、
前記磁性相が非晶質であり、
前記基板の表面に平行な面内における、前記絶縁体相の伸長方向の平均をX軸方向、同面内において前記X軸方向と直交する方向をY軸方向、前記基板の法線方向をZ軸方向とする直交座標系の、
Y−Z平面において、前記平板体の長手方向が前記Z軸方向から傾斜し、
X−Y平面において、前記Y軸方向を中心にした±20°の範囲に、最小異方性磁界Hk1を有し、
X−Y平面において、前記X軸方向を中心にした±20°の範囲に、最大異方性磁界Hk2を有し、
Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの面内一軸異方性を有することを特徴とする高周波用磁性材料。
【請求項2】
前記X−Y平面において、前記X軸方向の単位長さ当たりに存在する前記絶縁体相の数の平均値aと、前記Y軸方向の単位長さ当たりに存在する前記絶縁体相の数の平均値bとの比が、b/a≧3であり、
前記Y―Z平面において、前記平板体の長手方向と前記Z軸方向との成す角度αが、10°≦α≦80°であることを特徴とする請求項1記載の高周波用磁性材料。
【請求項3】
前記平板体同士の間隔cの平均値caveが、1nm≦cave≦10nmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波用磁性材料。
【請求項4】
前記磁性相をM、前記絶縁体相をI、前記複合磁性膜をM(1−x)と表記する場合に、0.80≦x≦0.95であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項に記載の高周波用磁性材料。
【請求項5】
前記磁性相が少なくともFeとB(ホウ素)とを含有し、
前記絶縁体相が少なくとも酸化物を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項に記載の高周波用磁性材料。
【請求項6】
前記磁性相に含まれるBの、前記磁性相全体に対する割合yが、10at%≦y≦30at%であることを特徴とする請求項5記載の高周波用磁性材料。
【請求項7】
前記磁性相が少なくともNbまたはZrまたはHfのいずれかひとつを含有し、
NbまたはZrまたはHfの合計の、前記磁性相全体に対する割合zが、1at%≦z≦7at%、かつ、前記磁性相に含まれるBの割合yが、5at%≦y≦20at%であることを特徴とする請求項6記載の高周波用磁性材料。
【請求項8】
前記磁性相が少なくともFeとCoとを含有することを特徴とする請求項1ないし請求項7いずれか一項に記載の高周波用磁性材料。
【請求項9】
前記FeとCoの和に対する、Coの割合wが、20at%≦w≦40at%であることを特徴とする請求項8記載の高周波用磁性材料。
【請求項10】
前記複合磁性膜中に、前記基板に平行な複数の絶縁体層が介在していることを特徴とする請求項1ないし請求項9いずれか一項に記載の高周波用磁性材料。
【請求項11】
前記絶縁体層の膜厚が、5nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項10記載の高周波用磁性材料。
【請求項12】
前記複合磁性膜において、前記Y軸方向に1μm≦d≦1mmの間隔dで細分化され、前記X軸方向にe/d≦100となる間隔eで細分化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11いずれか一項に記載の高周波用磁性材料。
【請求項13】
スパッタ法を用い、磁界中にて、蒸着粒子の入射方向と基板の法線方向との成す角度の平均値βが、10°≦β≦80°となるように、前記基板を固定して形成することを特徴とする高周波用磁性材料の製造方法。
【請求項14】
給電端子と、
一端に前記給電端子が接続されるアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波用磁性材料を具備するアンテナであって、
前記高周波用磁性材料が、請求項1ないし請求項12いずれか一項に記載の高周波用磁性材料であることを特徴とするアンテナ。
【請求項15】
請求項14記載のアンテナを具備することを特徴とする携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−239131(P2009−239131A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85190(P2008−85190)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】