説明

高周波電源装置および高周波電力供給方法

【課題】 プラズマ生成に有効な高周波電力を、精度よく、短時間で制御して供給できる高周波電源装置および高周波電力供給方法を提供する。
【解決手段】 プラズマ処理室5へ、第1の周波数fの高周波電力を供給する第1高周波電源部11および第2の周波数f(f>f)の高周波電力を供給する第2高周波電源部71を、少なくとも備え、第1高周波電源部11に、第1の周波数の高周波電力を発振する、周波数可変の第1高周波発振部16と、第1高周波発振部の出力を受けて、その電力を増幅する第1電力増幅部15と、反射波をヘテロダイン検波するヘテロダイン検波部13と、ヘテロダイン検波部で検波された信号および進行波信号を受信し、第1高周波発振部の発振周波数および第1電力増幅部の出力を制御する第1制御部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電源装置および高周波電力供給方法に関し、より具体的には、半導体装置の作製等に用いられるプラズマ処理のための高周波電源装置および高周波電力供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、光半導体チップなどの半導体装置は、半導体基板上に半導体積層膜を形成し、各部位をエッチングにより穿孔して金属膜等を充填して電気的に接続し、また所定の領域を囲む溝を設け、酸化膜を充填して絶縁する等のプロセスを経て製造される。積層膜をエッチングして孔や溝を形成するプロセスには、各種のエッチング法が用いられるが、プラズマによる処理は、深く急峻な高アスペクト比のエッチングができるため、多くの半導体装置の製造に採用されている。
【0003】
プラズマは、プラズマ発生装置内にプラズマを生成するガスを導入し、そこに高周波電力を供給して高周波電界を形成して、高周波電界内にプラズマを発生する。半導体積層膜に、高アスペクト比の急峻で深い孔を形成するためには、制御指令に追随性よく対応して、プラズマ処理室に高周波電力の供給を行い、低密度から高密度まで各密度レベルのプラズマの発生、安定維持および消滅(停止)を制御性よく行なう必要がある。また、エッチング処理とは関係なく、上記半導体装置の酸化膜や窒化膜の形成にも、プラズマ処理は用いられる。このようなプラズマ処理装置に対する高周波電力供給の制御性は、半導体装置の小型化(高精細化)および高性能化を達成する上で重要な要因となるため、従来から精力的に改善がなされてきた。
【0004】
プラズマ処理室への高周波電力の供給の制御について、高周波電源装置では、次の2つの制御手法がとられてきた。(1)一つは、反射波(反射高周波電力Pr)を検波して電力増幅器に帰還する手法である。すなわち、高周波電力が供給されているプラズマ処理装置から戻ってくる反射波を、方向性結合器により入射波(入射または進行波高周波電力:Pf)と分けて検波して、電力増幅器に帰還するという方法であり、高周波電力そのものを制御する手法である。(2)他の一つは、供給する高周波電力の整合を、インピーダンス整合器によりとる手法である。インピーダンス整合器は、高周波電力の電圧と電流の位相差ψおよびインピーダンスZを検出する検出部と、キャパシタンスCおよびインダクタンスLで構成されるインピーダンス整合部と、検出部で検出された位相差をゼロとして、かつ電圧と電流との比が伝送線路の特性インピーダンスになるように、上記のキャパシタンスCおよびインダクタンスLを自動的に調整するサーボモータ制御部とを備えている。サーボモータ制御部は、ダイヤル機構を用いて、手動で制御することも可能である。インピーダンス整合器を用いる方法は、供給する高周波電力を有効にプラズマ生成に利用するための効率を制御する手法である。上記(1)および(2)により、プラズマ生成に用いられる高周波電力供給の制御がはかられてきた。
【0005】
しかし、上記(2)インピーダンス整合による制御については、次の問題があった。プラズマ処理装置では、プラズマが発生する前後で負荷インピーダンスが急激に大きく変動する。したがって、サーボモータ機構を用いてインピーダンス整合器によりマッチングをとっても、追随速度が十分でないため、各種の不都合が生じていた。すなわち、サーボモータの慣性等の影響を受けるため、調整時間の短縮には限界があり、その結果、速やかにプラズマを安定発生することができない場合を生じていた。また、ある場合にはプラズマが発生しても途中で停止するという問題があった。この問題を打開するために、高周波発振部の発振周波数を可変とし、かつプラズマ処理室内でのプラズマ発生を検知するプラズマ発生検出器を別に設け、そのプラズマ発生検知器でプラズマ発生を検知した時、高周波発振部の発振周波数を予め決められた所定の固定周波数に変化させ、プラズマ生成中はその固定周波数で発振する方法の提案がなされた(特許文献1)。プラズマ発生前は、インピーダンス整合部の位相差検出器からの位相差信号を受信し、位相差をゼロにするように、高周波発振部の発振周波数を変える手法がとられる。この方法によれば、プラズマの発生後、直ちに最適の固定周波数に電子的に調整して高周波電力を供給でき、安定状態に入ることができる。プラズマ生成後は、高周波発振器は固定周波数で発振し、インピーダンス整合器により整合をはかることになる。
【0006】
また、上記の(1)の反射波を高周波増幅器に帰還させる方法には、次の問題があった。プラズマ処理室の電極には、プラズマ発生用の高周波電力だけでなく、基板近傍のイオンの運動を制御するために、低い周波数のイオン制御用高周波電力が、重畳して印加される。このため、プラズマ処理室からの反射波は、プラズマ生成のための高い周波数の高周波信号とイオン制御用の低い周波数の反射波とが混合され、変調波および高調波を含むスペクトルから形成されることになる。すなわち、プラズマ生成のための高い周波数の高周波信号を中心に、上記イオン制御用高周波電力の周波数分しか離れていないサイドピークを含むスペクトルが生成し、それらのピークを分離して検波できないために、電力増幅器の制御の誤差要因となっていた。上記問題を解決するために、プラズマ生成のための高周波電力の周波数より低い周波数で、かつその周波数がイオン制御用の高周波の周波数より高い所定の周波数の高周波を用いて、ヘテロダイン検波を行う方法が提案された(特許文献2)。このヘテロダイン検波法によれば、上記周波数の高周波信号の回りに、イオン制御用の高周波の周波数分だけ離れたサイドピークができるスペクトルが生成し、このスペクトルから周波数をもつ高周波信号を選び出すフィルタは簡単な構成で実現できる。このヘテロダイン検波法により、反射波の高周波信号を誤差なく捕捉して、電力増幅器に出力信号を送ることが可能になった。
【0007】
【特許文献1】特開平9−161994号公報
【特許文献2】特開2003−179030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、半導体装置のメーカーでは、小型化(高精細化)および高性能化の絶え間ない追求が続いており、このため、さらに多くの状態のプラズマを短時間で安定生成できる、制御性を高めた高周波電源装置の要求が恒常化している。本発明は、さらに制御性を高めた高周波電源装置および高周波電力供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高周波電源装置は、プラズマ処理室へ、第1の周波数の高周波電力を供給する第1高周波電源部および第1の周波数より低い第2の周波数の高周波電力を供給する第2高周波電源部を、少なくとも、備える高周波電源装置である。この高周波電源装置では、第1高周波電源部に、第1の周波数の高周波電力を発振する、周波数可変の第1高周波発振部と、第1高周波発振部の出力を受けて、その電力を増幅する第1電力増幅部と、プラズマ処理室からの反射波および第1電力増幅部からの進行波が入力される第1方向性結合器と、第1方向性結合器からの反射波信号をヘテロダイン検波する反射波第1ヘテロダイン検波部と、反射波第1ヘテロダイン検波部で検波された信号および第1方向性結合器からの進行波信号を受信し、第1高周波発振部の発振周波数および前記第1電力増幅部の出力を制御する第1制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、高い精度のヘテロダイン検波信号を受けて、第1制御部は、発振周波数の最適化と電力増幅の最適化とを、両者の相互の影響等を考慮した上で、電子機構により瞬時に行うことができる。このため、実際のプラズマ内への高周波電力の供給を、外部操作に応じて精度よく行うことができ、かつその追随速度を向上させることができる。すなわち本発明では第1高周波電源部および第2高周波電源部ともにインピーダンス整合部を必要とするが、そのインピーダンス整合部のサーボモータ機構によるキャパシタンス等の制御に先立って、電子的機構により、発振周波数を瞬時に制御して整合をとることが可能となる。しかも、プラズマに投入される高周波電力の効率と、その高周波電力の出力とを、ともに瞬時に両方とも最適化するため、発振周波数の最適化により高周波電力の給電効率が向上する結果、電力増幅部の電力素子の許容電力容量を低く抑えることが可能となる。
【0011】
上記した高精細化された半導体装置の作製では、とくに低いプラズマ密度での制御を精度よく行う必要があるが、低いプラズマ密度の場合、投入電力も絞るためプラズマ処理室からの反射波の主ピークは低くなり、サイドピークの強度と同等か、または低くなる場合が生じやすい。さらに上記のように発振周波数の制御を行うため、反射波の主ピークも状況に応じて周波数がシフトする。このような場合、ヘテロダイン検波はとくに有効に機能して、その低く、周波数シフトする主ピークを精度よく検波することができ、第1制御部はそのヘテロダイン検波信号を受信して、インピーダンス整合部でのマッチングに適合する周波数を指令することができる。このため反射波はさらに低くなるが、それでも、その低くなった強度の反射波のヘテロダイン検波信号をもとにして、第1制御部は、短時間で最適な発振周波数および電力増幅の高周波電力の給電を実現することができる。高精細化の半導体装置の作製では、あらゆる種類のプラズマの制御性(追随速度、精度および結果として得られる安定性)を高くすることが重要であるが、とくに低いプラズマ密度での高い制御性が重要であり、本発明におけるヘテロダイン検波と周波数制御とを用いることにより、好適に高精細化半導体装置を作製することができる。
【0012】
また、当然のことであるが、ヘテロダイン検波による反射波の検波により、検波信号の信頼性が向上するため、その検波信号のみを信頼して発振周波数および出力を制御することができる。この結果、たとえば他の検知装置(プラズマ発生検知装置など)を別に備える必要がない。なお、進行波信号は第1方向性結合器からそのまま第1制御部に入力されてもよいし、フィルタ等の進行波第1検波部を通して第1制御部に入力してもよい。
【0013】
また、上記の第1高周波電源部に進行波第1ヘテロダイン検波部を備え、その進行波第1ヘテロダイン検波部は、第1方向性結合器からの進行波信号をヘテロダイン検波して、第1制御部がその進行波信号のヘテロダイン検波信号を受信する構成としてもよい。この構成により、第1方向性結合器からの進行波信号にも変調波や高調波成分が混入し、ノイズとなって影響を受けるおそれがあっても、精度のよい進行波信号の検波ができ、電力増幅の制御を精度よく行うことができる。
【0014】
また、上記の第2高周波電源部に、第2の周波数の高周波電力を発振する、周波数可変の第2高周波発振部と、第2高周波発振部の出力を受けて、その電力を増幅する第2電力増幅部と、プラズマ処理室からの反射波および第2電力増幅部からの進行波が入力される第2方向性結合器と、第2方向性結合器からの反射波信号を検波する反射波第2検波部と、反射波第2検波部で検波された検波信号および第2方向性結合器からの進行波信号を受信し、第2高周波発振部の発振周波数および第2電力増幅部の出力を制御する第2制御部とを備えることができる。これにより、プラズマ処理室に、第1の高周波電力とともに、基板近傍のイオンの挙動を制御するイオン制御用高周波電力を第2高周波電力として供給する場合、第2高周波電力の周波数および電力値を、電子的機構により、瞬時に、インピーダンス整合部のサーボモータ機構による制御に先立って、精度よく最適化してプラズマの安定性を高めることができる。プラズマは対象範囲で電気的中性条件を満たす必要があり、その均衡が破れると不安定要因を惹起するが、第2高周波電源部を上記の構成により制御することにより、プラズマ(プラズマ密度、プラズマ圧力、プラズマ温度等)を精度よく短時間のうちに制御することが可能となる。また、第2の周波数が低い場合には、第2の周波数の反射波についてヘテロダイン検波等をする必要はなく、簡単な構成のフィルタで精度よく検波して、周波数制御をすることができる。また、第2高周波電源部に対して配置されるインピーダンス整合部のサーボモータ機構は、上記の周波制御により使用頻度は減少する。第2電力増幅部の電力素子の許容電力容量を小さくできることも、第1高周波電源部と同様である。なお、進行波信号は第2方向性結合器からそのまま第2制御部に入力されてもよいし、フィルタ等の進行波第2検波部を通して第2制御部に入力してもよい。
【0015】
また、上記の反射波第2検波部が反射波信号をヘテロダイン検波する反射波第2ヘテロダイン検波部であり、第2制御部は、その反射波第2ヘテロダイン検波部で検波された信号を受信し、第2高周波発振部の発振周波数および前記第2電力増幅部の出力を制御する構成とすることができる。この構成により、第1高周波電源部の周波数をより高くし、それに付随させて第2高周波電源部の周波数を高くする場合には、第2高周波電源部においても反射波をヘテロダイン検波することにより、精度のよい反射波信号を受けて、効率よくかつ瞬時にプラズマの安定維持に必要な第2高周波電力をプラズマ処理室に提供することができるようになる。
【0016】
また、上記の第2高周波電源部に進行波第2ヘテロダイン検波部を備え、その進行波第2ヘテロダイン検波部は、第2方向性結合器からの進行波信号をヘテロダイン検波して、第2制御部がその進行波信号のヘテロダイン検波信号を受信する構成にしてもよい。この構成により、第1高周波電源部の周波数をより高くし、それに付随させて第2高周波電源部の周波数を高くした場合には、第2高周波電源部の進行波信号にも変調波や高調波などのノイズが混入するおそれがあるが、その進行波信号をヘテロダイン検波することにより第2高周波電源部の進行波信号を精度よく検出して電力増幅の出力精度を高めることができる。
【0017】
また、上記のプラズマ処理室へ高周波電力を供給する高周波電源部を、さらに1つまたは2つ以上備え、当該1つまたは2つ以上の高周波電源部は、第1および第2の周波数と異なる周波数の高周波電力を出力することができる。この構成により、より精度の高い高周波電力の供給を行うことができ、高精細化された半導体装置の製造に貢献することができる。
【0018】
また上記の1つまたは2つ以上の高周波電源部の少なくとも1つの高周波電源部は、反射波信号および進行波信号のうち少なくとも反射波信号に対してヘテロダイン検波を行うヘテロダイン検波部と、そのヘテロダイン検波部で検波された反射波信号を受信し、当該高周波電源部の発振周波数および出力の制御を行う制御部とを備えることができる。この構成により、プラズマ処理室への高周波電力の供給をよりきめ細かいものにして、その制御の即応性および精度を向上することができる。
【0019】
本発明の高周波電力供給方法は、プラズマ処理室へ、少なくとも、第1の周波数の第1高周波電力および当該第1の周波数より低い第2の周波数の第2高周波電力を供給する高周波電力供給方法である。この方法は、第1高周波電力を第1高周波電源部で、また第2高周波電力を第2高周波電源部で、それぞれ電力増幅して、プラズマ処理室へ供給する工程と、第1高周波電源部において、プラズマ処理室からの反射波をヘテロダイン検波する工程と、ヘテロダイン検波された反射波信号および第1高周波電力の進行波の信号を受信し、第1高周波電源部における発振周波数および電力増幅を制御する工程と、第2高周波電源部において、プラズマ処理室からの反射波信号および第2高周波電力の進行波信号を検波する工程と、検波された反射波信号および進行波信号を受信し、第2高周波電源部における発振周波数および電力増幅を制御する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
上記の方法によれば、第1高周波電源部において、反射波のヘテロダイン検波信号を電力増幅器への帰還とインピーダンス整合のための制御信号として用い、インピーダンス整合部でサーボモータ機構によりマッチングを図っていたのを、そのサーボモータ機構のマッチングに先立って、電子的機構により、瞬時に、高精度で、発振周波数および高周波電力値の最適化を両方ともに、行うことができる。また、第2高周波電源部においても、電子的機構により、瞬時に、高精度で、発振周波数および高周波電力値の最適化を両方ともに、行うことができる。このため、従来よりも格段に精度よく、プラズマ(プラズマ密度、プラズマ圧力、プラズマ温度等)の変動に対応して瞬時に最適の高周波電力を供給することができる。このような高周波電力の供給方法は、あらゆる種類のプラズマの安定生成に有効であるが、とくに低密度のプラズマ生成中の処理室からの反射波を、ヘテロダイン検波により精度よく受信して、瞬時に最適の電力増幅および発振周波数を実現することができる。高周波電力供給の効率の向上により、必要とする電力増幅は抑制されるため、より小さい許容電力容量の電力増幅デバイスで用が足りる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の高周波電源装置および高周波電力供給方法によれば、各種プラズマ生成に有効な高周波電力を瞬時に精度よく供給するための制御が可能となる。あらゆる種類のプラズマへの高周波電力の供給の制御性(追随速度、精度および結果として得られる安定性)を高めることができるが、なかでも低密度プラズマでの高周波電力の供給の制御性を高めることができるので、半導体装置の小型化(高密度化)に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における高周波電源装置10を示すブロック図である。図1において、プラズマ処理室5に、第1高周波電源部11から第1の周波数fの高周波電力を、また第2高周波電源部71から、第1の周波数より低い第2の周波数fの高周波電力を供給する。図1では、プラズマ処理室5は、電極板5aと電極板5bとを備える平行平板プラズマ処理室が例示されるが、高周波電力を供給されてプラズマを生成するものであればどのような装置形式であってもよく、また図1では、プラズマ処理される基板(たとえば半導体ウエハ)は、電極板5bに装着されているが、電極板5aに装着されてもよい。第1の周波数の高周波電力は、上記の2枚の平行平板5a,5b間に高周波電界を形成して、そこにガスを導入してプラズマを形成する。また、第2の周波数の高周波電力は、電極板近くのイオンの挙動を制御するために供給されるイオン制御用の高周波電力である。第1の周波数fは60MHz程度(第1制御部14により制御され、所定範囲内で可変である)とし、第2の周波数fは2MHz程度とするが、第1および第2の周波数は、より高くてもよいし、低くてもよい。本実施の形態では、第2の周波数は、可変であってもなくてもよい。また、図1には、電極板に周波数fの高周波電源部(図示せず)が接続されるように表示してあるが、直流電源部(したがってf=0)または周波数fの高周波電源部を接続してもよい。これにより3周波合成タイプの高周波電源装置を構成することができる。ただし、この周波数fの高周波電源部は無くてもよく、第1および第2の周波数の2周波合成タイプの高周波電源装置であってもよい。
【0023】
第1の高周波電源部11は、上記の第1の周波数fの高周波を発振し、周波数を制御される周波数可変の第1高周波発振部16と、第1高周波発振部の発振の高周波電力を増幅する第1電力増幅部15とを備える。また、第1高周波発振部16の発振周波数および第1電力増幅部15の増幅率を制御する第1制御部14と、プラズマ処理室5からの反射波信号を、第1方向性結合器12により入射波(進行波)から分けて、局部発振器(図示せず)で発振された所定周波数の信号と混合して、低周波数に変換して検波するための第1ヘテロダイン検波部13とを備える。上記の第1ヘテロダイン検波部13は、後で説明する進行波信号のヘテロダイン検波を行う「進行波第1ヘテロダイン検波部」と区別する必要があるときは「反射波第1ヘテロダイン検波部」と記し、図示もするが、煩雑になる場合には反射波を省略して「第1ヘテロダイン検波部13」とのみ記す。
【0024】
第1ヘテロダイン検波部13には、第1方向性結合器12を経て、第1の周波数fの高周波電力と第2の周波数fの高周波電力とが混合した反射波Sが入力され、ヘテロダイン検波により低い周波数に変換される。これより、バンドパスフィルタで選択された信号Sが出力される。第1ヘテロダイン検波部13の詳細な構成については、あとで説明する。第1制御部14は、ヘテロダイン検波された反射信号Sおよび第1方向性結合器12からの進行波(入射波)信号Sを受信する。これら受信した信号S,Sに基づいて演算を行い、第1高周波発振部16への周波数制御信号Sおよび、第1電力増幅部15への出力制御信号Sを発信する。第1方向性結合器12には、第1電力増幅部15から入射波(進行波)が入力されるが、その入射波信号Sは、上記のように第1制御部14に入力される。
【0025】
第1高周波電源部11とは別に、上述のイオン制御用の第2高周波電源部71を備える。この第2高周波電源部71は高周波発振器(図示せず)を含むが、本実施の形態では、発振周波数は可変であっても、また可変でなくてもよく、たとえば、従来の高周波電源装置のように、電力増幅器の増幅率の制御を行い、他の制御は、インピーダンス整合部で整合をとるタイプであってもよい。
【0026】
第1高周波電源部11と、第2高周波電源部71とは、プラズマ処理室5の上部電極5aに、それぞれインピーダンス整合部35,95を介在させて接続されている。第1高周波電源部11は、発振周波数を反射波の強度を抑制するように、瞬時に制御できるため、プラズマ処理室5と第1高周波電源部11との間に設けるインピーダンス整合部35におけるサーボモータ制御機構を設けなくてもよいし、またサーボモータ制御機構を設けてもよい。プラズマ処理室5には、第1および第2の周波数の高周波電力の変調波および高調波が生成するが、図1のプラズマ処理室5に関連付けて、その一部のスペクトルを示す。第1の周波数fの主ピークとその周りに第2の周波数分だけ離れた変調波によるサイドピークと第2の周波数fの主ピークおよびこれらの高調波のスペクトルが生成している。
【0027】
次に、図2も併せて、第1ヘテロダイン検波部13を主体に、第1高周波電源部11について説明する。図2において、水晶発振器13aは、周波数f(=10.7MHz)の信号Hを出力し、発振器(第1高周波発振部)16で発振された第1の周波数f(=60MHz)の信号Hとミキサ(DBM:Double Balanced Mixer)13bで混合され、49.3,60.7および70.3MHzの信号を生成する。ローパスフィルタを通してこのうちの49.3MHzの信号成分のみをとり出し、Hとして出力する。ミキサ(DBM)13cには、この信号Hと、第1方向性結合器12で分けられたプラズマ処理室5からの反射波信号Sとが入力され、ミキサ13cからは、合成信号Hが出力される。合成信号Hは、10.7MHzの主ピークの近くに8.7MHzおよび12.7MHzのサイドピークを持つスペクトルを含み、この10.7MHzの主ピークに反射波Sの情報が反映される。水晶発振器13aと、ミキサ13bと、ローパスフィルタと、ミキサ13cと、バンドパスフィルタ13dと、発振部16の一部とが、第1ヘテロダイン検波部13を形成する。
【0028】
ヘテロダイン検波とは、第1の周波数fの高周波信号に所定の周波数f(図2の場合では10.7MHz)を加減した周波数f±f(f>f>f)の高周波信号を生成し、f+f(和成分)またはf−f(差成分)の信号をとり出し、上記の反射波に混合し、周波数fの回りにサイドピークがあるスペクトルを含むものに変換して、検波することをいう。図2には、差成分f−fをとり出して用いる場合を示すが、和成分f+fを用いてもよい。変換されたスペクトルでは、その周波数比(f/f)は約5(=10.7/2)と小さくなり、主ピーク(周波数f)をサイドピークから分離するフィルタは簡単な構成で作製することができる。上記の周波数f(10.7MHz)の主ピークをもとにして、発振周波数および電力増幅率の制御を行うことができる。上記のようにして、簡単な構成のバンドパスフィルタ13dで選択された主ピークが信号Sである。上記の検波信号および第1方向性結合器12からの入射波信号Sを受信し、第1制御部(制御基板)14は演算を行った後、周波数制御信号Sを第1高周波発振部(発振部)16に、また、出力制御信号Sを電力増幅器(第1電力増幅部)15に、それぞれ入力する。なお、上記の高周波電力のプラズマ処理室への供給は、第1高周波電力(60MHzレベル)と第2高周波電力(2MHzレベル)とを給電するタイプについて説明したが、上記の第1高周波電力と第2高周波電力とに、さらに直流または高周波の電力(第3高周波電力と呼ぶ)を同時給電する3周波合成タイプとすることもできる。さらに4周波を同時給電する4周波合成タイプであってもよい。そして、上記の2周波合成タイプだけでなく、3周波以上合成タイプについての検波では、少なくとも反射波信号に対してヘテロダイン検波を行い、発振周波数および出力の制御に用いることができる。さらに、これから説明するように、進行波信号についてもヘテロダイン検波を行ない、発振周波数および出力の制御に用いてもよい。
【0029】
上記のヘテロダイン検波された検波信号Sは、たとえば、プラズマのガス種やガス圧力の変更時や、貫通孔が貫通した直後の負荷インピーダンス(プラズマ)の急激な変動時の状態変動を反映して変動する。制御基板(第1制御部)14は、この検波信号Sの変動に即応して、上記の発振部(第1高周波発振部)における発振周波数および電力増幅率を、両方とも即座に最適化することができる。
【0030】
このため、プラズマ発生直後は固定周波数で発振し、プラズマ生成中はインピーダンス整合器によるマッチングに頼っていた従来の方式(従来方式1)に比べて、プラズマ処理中に生じる変動(プラズマ密度、プラズマ圧力、プラズマ温度等の変動)に、非常に迅速に、精度よく対応することができる。また、従来、ヘテロダイン検波した信号を電力増幅器の制御に用い、インピーダンス整合器のサーボモータ機構に頼って整合を図っていた別の従来の方式(従来方式2)に比べて、プラズマ状態の急激な変動に対応して、非常に短時間で対応できる。
【0031】
上記のような、プラズマ処理中の変動に対する即応性の向上の結果、本発明の高周波電源装置および高周波電力供給方法によれば、プラズマ(プラズマ密度、プラズマ圧力、プラズマ温度等)の制御性(対応速度、精度、プラズマ安定操作)が向上するため、半導体装置の高いアスペクト比のコンタクトホールやトレンチなどを安定して高精細に設けることができる。なかでも低プラズマ密度のプラズマへの高周波電力の制御性を高くできるので、高精細化半導体装置の製作に、非常に有益である。
【0032】
本実施の形態の第1高周波電源部11では、第1制御部14は、発振周波数と電力増幅の両方を最適化するため、インピーダンス整合が周波数制御により瞬時にとれ、必要な電力増幅度が減るため、電力増幅器の許容電力容量を小さくでき、電力増幅デバイスの費用を削減することができる。また、インピーダンス整合部35のサーボモータ機構を駆動させる頻度が減少するためサーボモータ機構により駆動される真空バリコンの寿命を延ばすことができる。またある場合には、インピーダンス整合部35からサーボモータ機構を除くことができ、費用削減に有効である。なお、上記のインピーダンス整合部35のサーボモータ機構は配置しておいてもよいし、また電力増幅デバイスもとくに小容量化しなくてもよい。
【0033】
図3および図4は、本実施の形態において、反射波信号に対してヘテロダイン検波を行うだけでなく、進行波信号に対してもヘテロダイン検波を行うために進行波第1ヘテロダイン検波部18を設けた例を示す図である。進行波第1ヘテロダイン検波部18の構成は、図4に示すように、図2の反射波第1ヘテロダイン検波部13の構成と同様であり、発振部16からの高周波信号と水晶発振器18aとの信号とを混合するミキサ18bを配置し、そのミキサ18bからの信号を、第1方向性結合器12からの進行波信号に、ミキサ18cにおいて混合する。この混合により、低い周波数のピークを得ることができ、簡単な構成のバンドパスフィルタ18dにより、精度良く進行波信号の検波を行うことができる。この結果、進行波に高調波や変調波が混入した場合でも、進行波の電力値を正確に把握して、電力増幅率の制御を非常に適切に行うことができる。また、図3中に周波数fとして示すように、直流または高周波の電力(第3の高周波電力)をプラズマ処理室の電極板5bに同時給電してもよい。これにより3周波合成タイプの高周波電力供給装置を構成することができる。さらに、別の周波数の高周波電力を同時給電して4周波合成タイプの装置を構成してもよい。これら3周波以上合成タイプについての検波では、少なくとも反射波信号に対してヘテロダイン検波を行い、発振周波数および出力の制御に用いることができる。さらに、進行波信号についてもヘテロダイン検波を行ない、発振周波数および出力の制御に用いてもよい。
【0034】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2の高周波電源装置に用いられる第2高周波電源部71を示すブロック図である。プラズマ生成用の高周波電力を供給する第1高周波電源部には、実施の形態1と同じものを用いる。実施の形態1では、イオン制御用の高周波電源部71は、第1の周波数より低い周波数の高周波電力を供給できれば、どのような高周波電源でもよかった。しかし、本実施の形態では、イオン制御用の高周波電源部の発振部(第2高周波発振部)76の発振周波数および電力増幅器(第2電力増幅部)75の出力を制御する制御基板(第2制御部)74が設けられ、その第2制御部74が、周波数制御信号Kおよび出力制御信号Kを、発振部76および電力増幅器75にそれぞれ入力する点に特徴がある。イオン制御用の高周波電力は、プラズマ生成用の電極板にプラズマ中のイオンを引き込むイオン引き込み制御に用いられる。プラズマは電気的中性条件を維持するが、上記のイオンの引き込みは、電気的中性条件の確保に必須であり、このイオン制御が欠けると不安定性を増すことになる。このため、イオン制御用の第2の高周波電力の供給の制御はプラズマ(プラズマ密度、プラズマ圧力、プラズマ温度等)の安定維持に非常に重要である。
【0035】
図5において、イオン制御用の低い第2の周波数(たとえば2MHz)の高周波電力は、第2電力増幅器75で増幅され、第2方向性結合器72を通って、インピダンス整合部95(図1、図3参照)を経て、プラズマ処理室に供給される。プラズマ処理室からの反射波は、第2方向性結合器72で分けられ、低周波数域フィルタ73aを通して、制御基板(第2制御部)74に入力される。プラズマ処理室からの反射波は、上記低い第2の周波数の単独ピークのスペクトルと、第1高周波電源部から供給される高い第1の周波数(たとえば60MHz)の主ピークおよび第2の周波数の間隔に位置するサイドピークからなるスペクトルとを含む。このような信号から第2の周波数の単独ピークを選別する低周波数域フィルタは簡単な構成で作製することができる。反射波の検波をする第2検波部は、低周波数域フィルタ73aで構成される。選択された反射波の単独ピークの信号は、制御基板(第2制御部)74に入力される。
【0036】
第2方向性結合器72の進行波電力の経路を通る信号は、上記の反射波のスペクトルと同様のスペクトルから形成されており、低周波数域フィルタ73bで低周波数の単独ピークを容易に選択し、進行波(入射波)の単独ピーク信号は制御基板(第2制御部)74に入力される。制御基板74は、反射波信号および進行波信号に基づいて演算を行い、周波数制御信号Kを発振部(第2高周波発振部)76に、また出力制御信号Kを電力増幅器(第2電力増幅部)75に、それぞれ入力する。
【0037】
上記の構成によれば、プラズマ中の電極板に近い位置のイオン制御のために供給するイオン制御用高周波電力を、プラズマ状態(プラズマ密度、プラズマ圧力、プラズマ温度等)の変動に応じて、即座に対応して最適な周波数および最適な電力値に制御することができる。従来、イオン制御用高周波電源において周波数制御を行うという発想は皆無であった。しかし、上記の構成により、電極板近くのイオン制御における追随速度および精度を向上することにより、プラズマ処理中に多くの不安定要因が発生しても、即座に対応してプラズマ状態を安定に維持することが可能となった。
【0038】
また、第2高周波電源部に対して配置されるインピーダンス整合部のサーボモータ機構は、上記の周波制御により使用頻度は減少する。このため、サーボモータ機構に駆動される真空バリコンの寿命延長を得ることができ、さらに所定の場合にはサーボモータ機構を不要とすることができる。また、第2電力増幅器の許容電力容量を小さくできることも、第1高周波電源部と同様である。
【0039】
上記図5における反射波電力は、周波数が1.8MHz〜2.2MHzであるため、低周波数域フィルタ73aにより精度よく検波される。しかし、たとえば第1高周波電源部の発振周波数がより高くなり、イオン制御用の第2高周波電力の周波数も数十MHzになったときには、上記低周波数域フィルタ73aのみでは精度のよい検波はできない。この結果、誤った反射波信号に基づき誤った制御を行う場合も生じる。第2高周波電力の周波数が高くなった場合には、第2高周波電源部71においても、ヘテロダイン検波を行うことが好ましい。図6は、第2方向性結合器72からの反射波信号をヘテロダイン検波する反射波第2ヘテロダイン検波部83を配置した第2高周波電源部71の構成例を示す図である。このように第2高周波電源部71においても、反射波信号をヘテロダイン検波することにより、精度よい反射波の検波を行い、そのヘテロダイン検波信号に基づき、第2高周波電力の供給の最適化を瞬時に行うことができ、プラズマの安定化に必要なイオン制御を高精度で実現することができる。また、第2高周波電源部71において、反射波信号に対してのみヘテロダイン検波を行うのではなく(図6参照)、図7に示すように第2方向性結合器72からの進行波信号に対してもヘテロダイン検波を行うことにより、第2高周波電源部71での電力増幅器の出力制御を、より精度よく適切に行うことが可能となる。
【実施例】
【0040】
次に、図2に示す第1高周波電源部11と、図3に示す第2高周波電源部71を用いて、第1高周波電源部のA点(信号S)およびB点(信号S)において(図1および図2参照)、反射波信号の周波数スペクトルを測定した結果を示す。図8は、プラズマガスにNFを用い、圧力150mTorrとし、進行波電力1kWとしたときの反射波信号の周波数スペクトルを示す図である。A点はヘテロダイン検波の前であり、反射波電力は20Wである。このとき、反射波の主ピークは61.4MHzにあり、2MHz程度離れたサイドピークよりも高いが、サイドピークと分離して取り込むことは難しい。従来、この状態の反射波信号を用いて電力増幅の帰還に用いていたため、サイドピークも取り込んで誤った反射波信号が受信されることになっていた。また、図9は、同じくA点での反射波信号の周波数スペクトルを示す図であるが、プラズマ圧力は70mTorrと低い場合である。このとき、主ピークは59.65MHzであり、サイドピークと同等または少し低くなっている。低いプラズマ圧力は、微細加工において重要であるが、主ピークが低くなるため、反射波信号はとくに誤差を生じ易く誤った制御をし易くなる。
【0041】
また、図1において、第1方向性結合器12から第1制御部14が受信する進行波信号Sのスペクトルを図10に示す。第1方向性結合器12における進行波と反射波との分離が十分でないため、進行波信号Sには、反射波信号が重畳され、反射波信号Sと同様のサイドピークが認められる。ただ、反射波信号Sと異なり、主ピークの強度がサイドピークより、比較的、高いため、検波に大きな誤差は生じにくい。しかし、サイドピークの影響はまったく無視できるほど主ピークの強度は高くない。
【0042】
ヘテロダイン検波をしたB点での反射波信号Sの周波数スペクトルを図11に示す。プラズマの条件等は、図8の場合と同じである。図11によれば、主ピークはほぼ10.6MHzにあり、サイドピークはバンドパスフィルタ13dにより取り除かれている。このため、10mWという小さい反射波電力であり、かつ周波数制御されるため第1高周波電力の主ピークの周波数はシフトするが、ヘテロダイン検波後の信号は周波数シフトせず、第1高周波電力の反射波信号のみを精度よく受信することができ、この反射波信号に基づき、第1制御部は、最適な発振周波数および電力増幅を即座に実現することができる。また、進行波信号についてもヘテロダイン検波を行うことにより、検波の精度を高め、その結果、制御の精度を確実に高めることができる。とくに、低いプラズマ圧力のプラズマへの制御性の高い高周波電力の供給は、半導体装置に高アスペクト比のコンタクトホール等を設けるために重要であるが、上記の図11に示すようなヘテロダイン検波信号により精度よく反射波強度を検知して、最適な制御を即座に実行することができる。
【0043】
また、上記の本発明の方法によれば、即座にインピーダンス整合がとられ、効率よく高周波電力をプラズマに供給することができるので、電力増幅デバイスを小容量化することができる。また、インピーダンス整合部のサーボモータ機構の使用頻度を減らすので、真空バリコンの寿命を長くし、またある場合には真空バリコンを固定コンデンサとしてサーボモータ機構を除くことができる。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の高周波電源装置および高周波電力供給方法を用いることにより、プラズマ発生から停止に至る全期間にわたって、高周波信号を精度よく受信して、プラズマ生成のための高周波電力の周波数および電力増幅を常に最適なものに、短時間で制御することができる。あらゆる種類のプラズマの安定生成の制御性に有益であるが、なかでも低密度プラズマの制御性に優れるので、各種半導体装置の小型化にとくに寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1における高周波電源装置を示すブロック図である。
【図2】図1の高周波電源装置の第1高周波電源部を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1における高周波電源装置の変形例を示すブロック図である。
【図4】図3の高周波電源装置の第1高周波電源部の進行波第1へテロダイン検波部を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2における高周波電源装置の第2高周波電源部を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態2における高周波電源装置の第2高周波電源部の変形例を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2における高周波電源装置の第2高周波電源部の別の変形例を示すブロック図である。
【図8】ヘテロダイン検波前の反射波信号の周波数スペクトルを示す図である(圧力150mTorr)。
【図9】ヘテロダイン検波前の反射波信号の周波数スペクトルを示す図である(圧力70mTorr)。
【図10】ヘテロダイン検波前の進行波信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図11】ヘテロダイン検波後の反射波信号の周波数スペクトルを示す図である(圧力150mTorr)。
【符号の説明】
【0047】
5 プラズマ処理室、5a,5b 平行電極板、10 高周波電源装置、11 第1高周波電源部、12 第1方向性結合器、13 反射波第1ヘテロダイン検波部、13a 水晶発振器、13b,13c ミキサ(DBM)、13d バンドパスフィルタ、14 制御基板(第1制御部)、15 電力増幅器(第1電力増幅部)、16 発振部(第1高周波発振部)、18 進行波第1ヘテロダイン検波部、18a 水晶発振器、18b,18c ミキサ(DBM)、18d バンドパスフィルタ、35 インピーダンス整合部、71 第2高周波電源部、72 第2方向性結合器、73a,73b 低周波数域フィルタ、74 制御基板(第2制御部)、75 電力増幅器(第2電力増幅部)、76 発振部(第2高周波発振部)、83 反射波第2ヘテロダイン検波部、88 進行波第2ヘテロダイン検波部、95 インピーダンス整合部、S 周波数制御信号、S 出力制御信号、H 水晶発振器の出力信号、H 第1高周波発振部からの出力信号、H ミキサからの出力信号、H ミキサからの出力信号、S 方向性結合器からの反射波出力信号、S ヘテロダイン検波の信号、S 方向性結合器からの進行波出力信号、K 第2高周波電源での周波数制御信号、K 第2高周波電源での出力制御信号。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理室へ、第1の周波数の高周波電力を供給する第1高周波電源部および前記第1の周波数より低い第2の周波数の高周波電力を供給する第2高周波電源部を、少なくとも、備える高周波電源装置であって、
前記第1高周波電源部に、
前記第1の周波数の高周波電力を発振する、周波数可変の第1高周波発振部と、
前記第1高周波発振部の出力を受けて、その電力を増幅する第1電力増幅部と、
前記プラズマ処理室からの反射波および前記第1電力増幅部からの進行波が入力される第1方向性結合器と、
前記第1方向性結合器からの反射波信号をヘテロダイン検波する反射波第1ヘテロダイン検波部と、
前記反射波第1ヘテロダイン検波部で検波された信号および前記第1方向性結合器からの進行波信号を受信し、前記第1高周波発振部の発振周波数および前記第1電力増幅部の出力を制御する第1制御部とを備えることを特徴とする、高周波電源装置。
【請求項2】
前記第1高周波電源部に進行波第1ヘテロダイン検波部を備え、その進行波第1ヘテロダイン検波部は、前記第1方向性結合器からの進行波信号をヘテロダイン検波して、前記第1制御部がその進行波信号のヘテロダイン検波信号を受信することを特徴とする、請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記第2高周波電源部に、前記第2の周波数の高周波電力を発振する、周波数可変の第2高周波発振部と、前記第2高周波発振部の出力を受けて、その電力を増幅する第2電力増幅部と、前記プラズマ処理室からの反射波および前記第2電力増幅部からの進行波が入力される第2方向性結合器と、前記第2方向性結合器からの反射波信号を検波する反射波第2検波部と、前記反射波第2検波部で検波された検波信号および前記第2方向性結合器からの進行波信号を受信し、前記第2高周波発振部の発振周波数および前記第2電力増幅部の出力を制御する第2制御部とを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の高周波電源装置。
【請求項4】
前記反射波第2検波部が前記反射波信号をヘテロダイン検波する反射波第2ヘテロダイン検波部であり、前記第2制御部は、その反射波第2ヘテロダイン検波部で検波された信号を受信し、前記第2高周波発振部の発振周波数および前記第2電力増幅部の出力を制御することを特徴とする、請求項3に記載の高周波電源装置。
【請求項5】
前記第2高周波電源部に進行波第2ヘテロダイン検波部を備え、その進行波第2ヘテロダイン検波部は、前記第2方向性結合器からの進行波信号をヘテロダイン検波して、前記第2制御部がその進行波信号のヘテロダイン検波信号を受信することを特徴とする、請求項4に記載の高周波電源装置。
【請求項6】
前記プラズマ処理室へ高周波電力を供給する高周波電源部を、さらに1つまたは2つ以上備え、当該1つまたは2つ以上の高周波電源部は、前記第1および第2の周波数と異なる周波数の高周波電力を出力することを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の高周波電源装置。
【請求項7】
前記1つまたは2つ以上の高周波電源部の少なくとも1つの高周波電源部は、反射波信号および進行波信号のうち少なくとも反射波信号に対してヘテロダイン検波を行うヘテロダイン検波部と、そのヘテロダイン検波部で検波された反射波信号を受信し、当該高周波電源部の発振周波数および出力の制御を行う制御部とを備えることを特徴とする、請求項6に記載の高周波電源装置。
【請求項8】
プラズマ処理室へ、少なくとも、第1の周波数の第1高周波電力および当該第1の周波数より低い第2の周波数の第2高周波電力を供給する高周波電力供給方法であって、
前記第1高周波電力を第1高周波電源部で、また第2高周波電力を第2高周波電源部で、それぞれ電力増幅して、前記プラズマ処理室へ供給する工程と、
前記第1高周波電源部において、前記プラズマ処理室からの反射波をヘテロダイン検波する工程と、
前記ヘテロダイン検波された反射波信号および前記第1高周波電力の進行波の信号を受信し、前記第1高周波電源部における発振周波数および電力増幅を制御する工程と、
前記第2高周波電源部において、前記プラズマ処理室からの反射波および前記第2高周波電力の進行波を検波する工程と、
前記検波された反射波信号および進行波信号を受信し、前記第2高周波電源部における発振周波数および電力増幅を制御する工程とを備えることを特徴とする、高周波電力供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−130398(P2008−130398A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314962(P2006−314962)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(591288056)パール工業株式会社 (6)
【出願人】(506391015)中微半導体設備(上海)有限公司 (1)
【Fターム(参考)】