説明

高圧ポンプ、特に内燃機関の燃料噴射装置用の高圧ポンプ

本発明は、高圧ポンプであって、ポンプハウジング(10,12,14)が設けられており、該ポンプハウジング内に複数のポンプエレメント(16)が配置されており、該ポンプエレメント(16)によって液体が高圧下で高圧通路系を介して共通の高圧接続部(42)に搬送される形式のものに関する。このような形式の高圧ポンプにおいて本発明の構成では、ポンプハウジングがハウジング本体(10)と、各ポンプエレメント(16)のために該ポンプエレメント(16)をカバーしていてハウジング本体(10)と結合されているハウジングカバー(14)とを有しており、高圧通路系がハウジング本体(10)内に交差部なしに延びる高圧孔(52,54)を有しており、該高圧孔(52,54)がハウジング本体(10)からハウジングカバーのうちの1つ(14a)への移行部の領域において、又はハウジングカバーのうちの1つ(14a)において、共通の高圧接続部(42)にまとめられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式の高圧ポンプ、特に内燃機関の燃料噴射装置用の高圧ポンプに関する。
【0002】
このような高圧ポンプはドイツ連邦共和国特許公開第19802476号明細書に基づいて公知である。この高圧ポンプはポンプハウジングを有しており、このポンプハウジング内には複数のポンプエレメントが配置されている。ポンプエレメントによって燃料は、高圧通路系を介して共通の高圧接続部に搬送される。高圧ポンプのポンプハウジングはこの場合一体的に形成されており、高圧通路系は、ポンプハウジングを貫いて延びる複数の高圧孔を有しており、これらの高圧孔は互いに開口し合い、交差部を形成している。内燃機関における高い出力及び僅かな有害物質の放出を達成することを目的として燃料噴射装置のために必要な高い圧力では、ポンプハウジングに対しても大きな負荷が生じる。高圧孔の交差部によって、ポンプハウジングにおける応力ピークが発生し、この応力ピークに相応してポンプハウジングは寸法設定され、材料に関しても設計されねばならない。この場合また手間とコストのかかるポンプハウジングの焼き入れ硬化処理も必要である。上述の理由から高圧ポンプの製造は高価になる。
【0003】
発明の利点
請求項1の特徴部に記載のように構成された本発明による高圧ポンプは、公知のものに対して次のような利点を有している。すなわち本発明による高圧ポンプでは、交差部が存在しないことに基づいてハウジング本体が強い負荷を受けなくなり、ひいてはハウジング本体を安価な材料からかつ簡単に製造することができ、これによって全体として高圧ポンプの製造コストが安価になる。ハウジングカバーには通常のように交差部を備えた孔が存在しているので、ハウジングカバーはいずれにせよ、相応な強度をもつ材料から製造しなくてはならないが、高圧孔のその他の交差部がコストを高めることはない。
【0004】
本発明による高圧ポンプの別の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。
【0005】
図面
次に図面を参照しながら、本発明による高圧ポンプの2つの実施例を説明する。
【0006】
図1は、高圧ポンプを示す縦断面図であり、
図2は、図1のII−II線に沿って断面して高圧ポンプの第1実施例を示す横断面図であり、
図3は、高圧ポンプの第2実施例を示す横断面図である。
【0007】
実施例の記載
図1〜図3に示された高圧ポンプは、特に、例えば自動車の内燃機関用の燃料噴射装置のために設けられている。この高圧ポンプによって燃料は2000バールまでの高圧下で、例えばアキュムレータに搬送され、このアキュムレータから、内燃機関における噴射のための燃料が取り出される。高圧ポンプはハウジング本体10とフランジ部分12と、ハウジング本体10に結合されたハウジングカバー14とを有している。ポンプハウジングには、複数の例えば3つのポンプエレメント16が、全周にわたって均一に分配配置されている。ハウジング本体10とフランジ部分12とには、駆動軸18が回転可能に支承されて配置されており、この駆動軸18によってポンプエレメント16は駆動される。駆動軸18はハウジング本体10における軸受箇所20とフランジ部分12における軸受箇所22とを介して、軸線19を中心にして回転可能に支承されていて、図示されていない形式で内燃機関によって駆動される。駆動軸18は偏心体区分24を有しており、この偏心体区分24には行程リング26が支承されている。ポンプエレメント16は各1つのポンプピストン28を有しており、このポンプピストン28は、駆動軸18に対して少なくともほぼ半径方向に延びるシリンダ孔30内において、摺動可能にシールされて案内されている。ポンプエレメント16のシリンダ孔30は、ハウジング本体10に形成されていても又はハウジングカバー14に形成されていてもよい。各ポンプエレメント16のためには、該ポンプエレメント16を駆動軸18の回転軸線19に対して半径方向外側に向かって覆うハウジングカバー14が設けられている。各ポンプエレメント16のポンプピストン28はそのピストン基部29で行程リング26に支持されており、この場合ピストン基部29はばね32によって、行程リング26との接触状態を保たれる。ばね32は一端でハウジング本体10又はハウジングカバー14に支持され、かつ他端でピストン基部29に支持されている。
【0008】
各ポンプエレメント16のポンプピストン28によって、シリンダ孔30内においてはその端面で、各1つのポンプ作業室34が画成される。ポンプ作業室34は、該ポンプ作業室34内に開口する入口弁36を通して燃料供給通路38と接続可能であり、この燃料供給通路38内には低圧が存在している。ポンプ作業室34はさらに、アキュムレータに向かって開放する出口弁40によって、ハウジング本体10及びハウジングカバー14内を延びる高圧通路系(これについては後で詳説する)を介して、アキュムレータと接続可能である。駆動軸18の回転時にポンプピストン28は偏心体区分24と行程リング26とを介して、往復運動で駆動される。各ポンプピストン28が半径方向内側に向かって運動すると、ポンプピストン28は吸込み行程を実施し、この場合には各入口弁36が開放するので、燃料が燃料供給通路38を介して各ポンプ作業室34に流入し、これに対して各出口弁40は閉鎖される。各ポンプピストン38が半径方向外側に向かって運動すると、ポンプピストン28は吐出行程を実施し、この際には各入口弁36が閉鎖されて、ポンプピストン28によって圧縮された燃料は、開放された出口弁40を通して高圧下で高圧通路系を介してアキュムレータに達する。
【0009】
ハウジングカバー14aには高圧接続部42が配置されており、この高圧接続部42には、アキュムレータに通じる高圧管路44が接続されている。ポンプエレメント16から搬送された燃料は、高圧通路系を介して、すべてのポンプエレメント16のために共通の高圧接続部42に導かれる。この高圧接続部42は任意の方向付けでハウジングカバー14aに配置されている。各ポンプエレメント16の各入口弁36及び各出口弁40又はそのいずれか一方の弁は、各ハウジングカバー14a,b,cに配置されている。
【0010】
以下においては図2を参照しながら、ハウジング本体10及びハウジングカバー14a,b,cにおける高圧通路系について詳説する。高圧接続部42が配置されていない2つのハウジングカバー14b,cにおいては、各出口弁40に接続して各1つの孔50がハウジング本体10に向かって延びている。これらの孔50は、駆動軸18の回転軸線19に対して少なくともほぼ半径方向に延びている。孔50の開口はその直径が、例えば円錐形又は球形に拡大されていてもよい。ハウジングカバー14a,b,cとハウジング本体10とは、互いに向けられた少なくともほぼ平らな面11;15を有しており、これらの面で互いに接触している。ハウジング本体10内には高圧孔52,54が延びており、これらの高圧孔52,54はそれぞれ、両ハウジングカバー14b,cの孔50に接続されていて、ハウジングカバー14aに通じており、このハウジングカバー14aには共通の高圧接続部42が配置されている。ハウジング本体10の、ハウジングカバー14b,cに向けられた面15には、各1つの凹設部56が設けられており、この凹設部56の少なくともほぼ平らな底部57には、高圧孔52;54が開口している。凹設部56の底部57における高圧孔52;54の開口は、それぞれ有利には丸く面取りされている。これは、凹設部56の平らな底部57に当て付けることができる成形ドリルによって行うことができる。凹設部56はそれぞれ、高圧孔52,54よりも大きな横断面を有している。凹設部56には、高圧孔52,54を取り囲む各1つのシールリング58が挿入されており、このシールリング58によって、ハウジングカバー14b,cにおける孔50からハウジング本体10における高圧孔52;54への移行部がシールされる。
【0011】
図2に示された第1実施例ではハウジング本体10の、ハウジングカバー14aに向けられた面11に、凹設部60が設けられており、この凹設部60は少なくともほぼ平らな底部61を有している。ハウジング本体10における2つの高圧孔52,54は、互いに間隔をおいて凹設部60に開口している。凹設部60はその横断面が、両高圧孔52,54の直径の和よりも大きく形成されている。凹設部60の底部61における高圧孔52,54の開口は有利にはそれぞれ丸く面取りされており、このような面取り部は同様に、凹設部60の平らな底部61に当て付け可能な成形ドリルを用いて簡単に製造することができる。凹設部60にh、高圧孔52,54を取り囲むシールリング62が挿入されている。ハウジングカバー14aには少なくともほぼ凹設部60に対して道心艇に配置された孔50が設けられており、この孔50は共通の高圧接続部42に通じている。孔50は、駆動軸18の回転軸線19に対して少なくともほぼ半径方向に延びている。孔50の、凹設部60に向けられた開口は、例えば円錐形に又は丸く面取りされて、直径を拡大されている。シールリング62によって、ハウジング本体10における高圧孔52,54からハウジングカバー14aにおける孔50への移行部はシールされる。ハウジングカバー14aにおける孔50と、ハウジングカバー14aに配置された出口弁40の流出部とは、共通の高圧接続部42に通じている。高圧孔52,54はハウジング本体10において交差部(Verschneidung)なしに延びており、ハウジング本体10からハウジングカバー14aへの移行部の領域における凹設部60において1つにまとめられている。ハウジング本体10の負荷はこれによって極めて小さく保たれるので、ハウジング本体10は、例えばスチールのような、特殊な焼き入れ硬化処理を施されていない十分な強度を有する安価な金属や、又はポンプエレメント16によって生ぜしめられる圧力が低い場合には例えばアルミニウムのような軽金属から製造することができる。択一的に、交差部を有する高圧孔の経過において必要であるような、高強度の金属を使用する場合には、高圧ポンプによって生ぜしめられる圧力を高めることができ、このような場合でも、ハウジング本体10の十分な耐久性を保証することができる。ハウジングカバー14a,b,cは、各出口弁40の流出部が孔50に移行している場合には、交差部を有しており、このような構成では、ハウジングカバー14a,b,cは、ハウジング本体10よりも相応に高い強度をもつ金属、例えば焼き入れ硬化されたスチールから製造されている。
【0012】
図3に示された第2実施例による高圧ポンプは、その構造において、第1実施例における高圧ポンプとほぼ同じであるので、以下においては異なっている点だけを述べる。第2実施例による高圧ポンプでは、ハウジング本体10の、ハウジングカバー14aに向けられた面11には、別個の2つの凹設部160が設けられており、各凹設部160には高圧孔52;54が開口している。凹設部160はそれぞれ少なくともほぼ平らな底部161を有しており、各凹設部160への高圧孔52;54の開口は、有利には丸く面取りされている。ハウジングカバー14aには相応に2つの孔152,154が設けられており、両方の孔152,154は高圧孔52,54を共通の高圧接続部42に向かって延長している。各凹設部160には、それぞれの高圧孔52;54を取り囲むシールリング162が挿入されており、これによってハウジング本体10からハウジングカバー14aへの移行部をシールすることができる。従って第2実施例においても、ハウジング本体10における高圧孔52,54は交差部なしに延びており、そしてハウジングカバー14aにだけ交差部が存在している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】高圧ポンプを示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿って断面して高圧ポンプの第1実施例を示す横断面図である。
【図3】高圧ポンプの第2実施例を示す横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ポンプ、特に内燃機関の燃料噴射装置用の高圧ポンプであって、ポンプハウジング(10,12,14)が設けられており、該ポンプハウジング(10,12,14)内に複数のポンプエレメント(16)が配置されており、該ポンプエレメント(16)によって液体が高圧下で高圧通路系を介して共通の高圧接続部(42)に搬送される形式のものにおいて、ポンプハウジングがハウジング本体(10)と、各ポンプエレメント(16)のために該ポンプエレメント(16)をカバーしていてハウジング本体(10)と結合されているハウジングカバー(14)とを有しており、高圧通路系がハウジング本体(10)内に交差部なしに延びる高圧孔(52,54)を有しており、該高圧孔(52,54)がハウジング本体(10)からハウジングカバーのうちの1つ(14a)への移行部の領域において、又はハウジングカバーのうちの1つ(14a)において、共通の高圧接続部(42)にまとめられていることを特徴とする、高圧ポンプ、特に内燃機関の燃料噴射装置用の高圧ポンプ。
【請求項2】
共通の高圧接続部(42)がハウジングカバー(14a)に配置されている、請求項1記載の高圧ポンプ。
【請求項3】
高圧孔(52,54)が、ハウジング本体(10)からハウジングカバー(14a)への移行部の領域においてまとめられていて、ハウジング本体(10)の、ハウジングカバー(14a)に向けられた面(11)に設けられた凹設部(60)に開口しており、該凹設部(60)からはハウジングカバー(14a)内において、ただ1つの孔(50)が共通の高圧接続部(42)に通じている、請求項1又は2記載の高圧ポンプ。
【請求項4】
凹設部(60)の底部(61)が少なくともほぼ平らに形成されており、凹設部(60)の底部(61)における高圧孔(52,54)の開口が丸く面取りされている、請求項3記載の高圧ポンプ。
【請求項5】
高圧孔(52,54)がそれぞれ、ハウジング本体(10)の、ハウジングカバー(14a)に向けられた面(11)に設けられた各1つの凹設部(160)に開口しており、ハウジングカバー(14a)内を、高圧孔(52,54)の別個の延長孔(152,154)が延びていて、該延長孔(152,154)がハウジングカバー(14a)内において、請求項1又は2記載の高圧ポンプ。
【請求項6】
凹設部(160)の底部(160)が少なくともほぼ平らに形成されており、凹設部(160)の底部(161)における高圧孔(52,54)の開口がそれぞれ丸く面取りされている、請求項5記載の高圧ポンプ。
【請求項7】
ハウジング本体(10)からハウジングカバー(14a)への移行部をシールするために、凹設部(60;160)にそれぞれシールエレメント(62;162)が挿入されている、請求項3から6までのいずれか1項記載の高圧ポンプ。
【請求項8】
ハウジング本体(10)が、ハウジングカバー(14)よりも小さな強度を有する金属から成っている、請求項1から7までのいずれか1項記載の高圧ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−502338(P2006−502338A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542162(P2004−542162)
【出願日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【国際出願番号】PCT/DE2003/002061
【国際公開番号】WO2004/033905
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】