説明

高度に官能化されたエチレンコポリマーから誘導された接着剤組成物

非官能化ベース樹脂および高圧オートクレーブ内で直接合成されるエチレン/無水マレイン酸(E/MAH)コポリマーまたはエチレン/エチル水素マレイン酸エステル(E/MAME)コポリマーなどの官能化エチレンコポリマーを含む接着剤組成物が開示されている。これらの接着剤組成物は自立性フィルムとして被着させることが可能であるか、あるいは基材上に共押出するか、または押出被覆することが可能である。これらの組成物を含む多層構造体、フィルム、パイプ塗料および建物パネルも開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年7月29日出願の米国仮特許出願第60/592,213号の利益を主張する。
本発明は接着剤組成物に関する。本発明は接着剤組成物を含む物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
反応性基で(典型的には無水マレイン酸グラフト化によって)官能化された変性ポリマーは、押出接着剤および積層接着剤として、特に多層複合構造体の中の接着剤層として広く用いられている。無水マレイン酸グラフトポリマー(「マレイン酸エステル化」ポリマーと呼ばれることが多い)は、パイプ塗料および建物パネルの中でも一般に用いられる。
【0003】
無水マレイン酸グラフトポリマーには、マレイン酸エステル化ポリエチレン、マレイン酸エステル化ポリプロピレン、マレイン酸エステル化スチレンエチレンブテンスチレントリブロックコポリマーおよびマレイン酸エステル化ポリブタジエンが挙げられる。エチレン/アルキルアクリレート/一酸化炭素ターポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレンプロピレンゴムも無水マレイン酸グラフト化によって変性することが可能である。無水マレイン酸変性線状高密度ポリエチレンの例は、Polybond(登録商標)3009という商品名でCrompton Corporationから販売されている製品である。類似のマレイン酸エステル化ポリオレフィンは、Fusabond(登録商標)という商品名でDuPontから販売されている。
【0004】
米国特許第5,516,583号明細書、同第4,861,676号明細書、同第4,861,677号明細書、同第4,552,819号明細書および同第5,965,255号明細書には接着剤組成物が開示されている。米国特許第5,225,482号明細書には、エチレン酢酸ビニルコポリマー、スチレンポリマー樹脂、グラフト変性ポリエチレン、ポリスチレンエラストマーおよびエチレンオレフィンコポリマーを含む接着剤組成物が開示されている。国際公開第01/18141号パンフレットには、ポリオレフィン、官能性ポリオレフィン、ポリスチレン系組成物およびエラストマーを含む接着剤組成物が開示されている。
【0005】
従来の変性ポリオレフィンは、金属への接着強度またはポリオレフィンへの接着強度のいずれかを犠牲にするか、あるいは金属またはポリオレフィンへの接着の時に低温で活性化しない。更に、低温で活性化する接着剤組成物は非常に柔らかくてねばねばする材料でありうるために、熱積層プロセスにおいて裏なしフィルムとしてのこれらの組成物の取扱いが問題をはらむ可能性があり、くっつきを防ぐために非常に高価な剥離フィルムを必要としうる。また、接着剤を実際に用いた後に接着剤は経時的に接着強度を大幅に失いうる。この現象を産業界では「エージダウン」と呼んでいる。
【0006】
マレイン酸エステル化ポリオレフィンおよび他の無水マレイン酸グラフトコポリマーの製造および使用は問題がないわけではない。例えば、必要な反応条件が架橋および鎖の切断などの望ましくない副反応を引き起こしうるので、グラフト化によってマレイン酸エステル化ポリオレフィンにおいて高いレベルの官能化に到達することが困難でありうる。この理由のために、約2重量%を上回る濃度での無水マレイン酸のグラフト化は困難で面倒でありうる。
【0007】
マレイン酸エステル化ポリオレフィンの高いグラフト化レベルに付随した問題がなく、けれども優れた接着剤性能を提供する接着剤組成物を使用することが望ましいことがあり得る。
【0008】
無水マレイン酸などの反応性官能基を含むエチレンコポリマーは、高圧ラジカル法を用いる直接共重合によって容易に得ることが可能である。こうした高圧は、例えば米国特許第4,351,931号明細書に記載されている。
【0009】
国際公開第2003/099930A1号パンフレットには、エチレンと約3〜約15重量%の範囲内でコポリマーに含まれている官能性コモノマーから調製されたコポリマーを含む耐衝撃性改良剤組成物によって強化されたポリアミドが記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、非官能化ベース樹脂とブレンドされた高圧オートクレーブ反応器から得られたオレフィン/マレイン酸エステルコポリマーを含む改善された接着剤ブレンド組成物である。
【0011】
別の態様において、本発明は、
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含む高分子接着剤組成物であって、約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜約95重量%の成分(b)を含む高分子接着剤組成物である。
【0012】
別の態様において、本発明は、
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含む接着剤フィルムであって、接着剤組成物が約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜約95重量%の成分(b)を含む接着剤フィルムである。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含む多層複合構造体であって、接着剤組成物が約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜約95重量%の成分(b)を含む多層複合構造体である。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含む物品であって、接着剤組成物が約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜約95重量%の成分(b)を含む物品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書で開示されたすべての参考文献は参照により援用する。
【0016】
一実施形態において、本発明は、非官能化ベース樹脂とブレンドされた高圧オートクレーブ反応器から得られたオレフィン/マレイン酸エステルコポリマーを含む改善された接着剤ブレンド組成物である。
【0017】
「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。
【0018】
本発明の目的において、ポリオレフィンはオレフィンモノマーのホモポリマーおよびコポリマーである。より詳しくは、ホモポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリブテンなどの単一不飽和オレフィンからなるポリマーを含み、ここで、オレフィンは2〜20個の炭素原子を有する。オレフィンのコポリマーは、2〜20個の炭素原子を有する1種以上の不飽和炭化水素または多不飽和炭化水素からなるポリマーを含む。例には、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/ブテン/オクタンコポリマー、エチレン/プロピレン/ノルボルナジエンコポリマーおよびプロピレン/ブテンコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0019】
本特許明細書において、「官能性コポリマー」という用語は、オレフィン、特にエチレンと、共有結合またはイオン結合を形成するために反応することが可能である特定の官能基を有するコモノマーのコポリマーを意味する。
【0020】
「グラフトポリオレフィン」という用語は、エチレン系不飽和カルボン酸およびエチレン系不飽和カルボン酸無水物から選択された少なくとも1種のモノマーを上にグラフトされているポリオレフィン、非オレフィンコポリマーあるいはポリオレフィンおよび/または非オレフィンコポリマーの混合物またはブレンドを意味する。ここで、エチレン系不飽和カルボン酸およびエチレン系不飽和カルボン酸無水物は、あまり好ましくないが、こうした酸の誘導体およびそれらの混合物を含む。モノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸であってもよい酸および酸無水物の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸および置換無水マレイン酸、例えば、無水ジメチルマレイン酸、または無水クロトン酸、ナジック(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸)無水物、メチルナジック(メチル5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸)無水物および無水テトラヒドロフタル酸であり、無水マレイン酸は特に好ましい。不飽和酸の誘導体の例は、塩、アミド、イミドおよびエステル、例えば、マレイン酸一ナトリウムおよびマレイン酸二ナトリウム、アクリルアミド、グリシジルメタクリレートおよびジメチルフマレイン酸エステルである。グラフトポリオレフィンは技術上知られており、押出機または他の混合装置内での熱グラフト化、溶液中でのグラフト化または流動層反応器内でのグラフト化を含む様々なプロセスによって製造することが可能である。グラフトポリオレフィンのブレンドまたは混合物も用いてよい。
【0021】
本特許明細書において、「ポリスチレン系」または「ポリスチレン」という用語は、スチレンまたはアルファメチルスチレンのホモポリマーあるいはスチレンと、エチレン、ブテン、ブタジエンまたはイソプレンに限定されないが、それらなどの不飽和モノマーとのコポリマーを意味する。特定の例には、エチレン/スチレンランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、エチレン/ブタジエンランダムコポリマーまたはブロックコポリマーおよび水素添加ブタジエン/スチレンコポリマーおよび部分水素添加ブタジエン/スチレンコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。強化された衝撃特性のために更に変性され、耐衝撃性ポリスチレンまたはHIPSと通常呼ばれるポリスチレン系樹脂も有用である。ポリスチレン系樹脂のブレンドおよび混合物も用いてよい。特定の例には、Nova Chemicalsによって販売されているHigh Performance StyrenicsおよびIndex(登録商標)という商品名でDow Chemicalによって販売されているエチレン/スチレンコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0022】
本特許明細書において、「エラストマー」という用語もポリオレフィンまたはポリスチレン系を意味するが、比較的低いレベルの結晶度を有する点で、すなわち、比較的非晶質である点で、上述したポリオレフィンまたはポリスチレン系とは区別される。本明細書における定義によるエラストマーは、10℃/分の加熱速度で示差走査熱分析(DSC)によって測定して、30ジュール/グラム未満の融解熱を有する。例えば、ポリオレフィンエラストマーは、エチレンとアルファオレフィンのコポリマーであってもよく、それらには、「Exact」(登録商標)という商品名でExxonMobilによって販売されている低密度メタロセンエチレン/ブテンコポリマーまたは「Engage」(登録商標)という商品名でDuPont Dow Elastomersによって販売されているメタロセンエチレン/オクテンコポリマーが挙げられる。ポリオレフィンエラストマーには、「Vistalon」(登録商標)という商品名でExxonMobilによって販売されているエチレン/プロピレンコポリマー、「Tafmer」(登録商標)という商品名でMitsuiによって販売されているエチレン/アルファオレフィンコポリマーまたは「Nordel」(登録商標)という商品名でDuPont Dow Elastomersによって販売されているエチレン/プロピレン/ノルボルナジエンコポリマーも挙げられる。ポリオレフィンエラストマーには、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンも挙げられる。ポリスチレン系エラストマーの例には、例えば、「Kraton」(登録商標)という商品名でShellによって販売されているジブロックコポリマーおよびトリブロックコポリマーまたは「Stereon」(登録商標)という商品名でFirestoneによって販売されているものが挙げられる。
【0023】
本発明の接着剤組成物の各成分は、好ましくは最終接着剤に特定の属性を与える。ポリエチレンまたはエチレン/酢酸ビニルコポリマーなどの低融点のベース樹脂は接着剤の低活性化温度特性を強化する。官能性コポリマーは基材(ポリアミドなどのより極性のポリマーまたは金属)への接着剤組成物の優れた接着に主として寄与する。
【0024】
官能性コポリマー
本発明の接着剤組成物は、オレフィンと官能性コモノマーから調製されたコポリマー、より詳しくは、オレフィン、特にエチレンと無水マレイン酸またはその官能的同等物とのコポリマーを含む。
【0025】
本明細書で用いられる「オレフィン/マレイン酸エステルコポリマー」という用語は、オレフィンと無水マレインまたは無水マレイン酸の官能的同等物などの官能性コモノマーから調製されたコポリマーを意味する。こうした同等物には、マレイン酸および/またはその塩、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステルまたはこれらのいずれかの混合物などの無水マレイン酸の誘導体が挙げられる。オレフィン/マレイン酸エステルコポリマーには、E/X/Yターポリマーも挙げられ、ここで、Eはエチレンであり、Xは、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸および/またはそれらの誘導体からなる群から選択されたモノマーであり、Yは無水マレイン酸またはその官能的同等物である。成分Xとして含めるのに適するモノマーの例は、酸、塩、エステル、酸無水物または当業者に知られている他の酸誘導体を含む(メタ)アクリル酸誘導体である。メチルアクリレートおよびブチルアクリレートは、成分Xとして含めるのに適するアクリレートモノマーの特定の例である。無水マレイン酸、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびn−ブチルアルコールなどのC1〜C4アルコールのエステルを含むマレイン酸ジエステルまたはマレイン酸モノエステル(マレイン酸半エステル)はY成分として適する。好ましくは、オレフィン/マレイン酸エステルコポリマーは、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステルおよび/またはマレイン酸半エステルを含む。より好ましくは、オレフィン/マレイン酸エステルコポリマーは無水マレイン酸を含む。同様に、より好ましくは、オレフィン/マレイン酸エステルコポリマーはマレイン酸半エステルを含む。
【0026】
本明細書において有用なオレフィン/マレイン酸エステルコポリマーは、高圧フリーラジカル重合法によって得られる。本発明の実施において用いるために適する高圧法は、例えば、米国特許第4,351,931号明細書に記載されている。この特許の中の教示は参照により援用する。
【0027】
ポリマーベース樹脂
接着剤組成物は第2の成分として熱可塑性ポリマーベース樹脂を含む。組成物中で用いられるポリマーは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、メタロセンポリエチレン、すなわちMPE(メタロセン触媒を用いて得られたエチレンとアルファオレフィンモノマーのコポリマー)、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)などのターポリマーならびにポリプロピレンホモポリマーおよびコポリマーなどのポリオレフィンに限定されないが、ポリオレフィンを含むポリマーである。
【0028】
適するベース樹脂はエチレンと極性モノマーの共重合から得られたエチレンコポリマーも含んでよい。こうした適するコポリマーには、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)およびエチレン(メタ)アクリレートコポリマーが挙げられる。エチレン(メタ)アクリレートコポリマーには、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンアクリル酸コポリマーおよび/またはエチレンメタクリル酸コポリマーから誘導可能な塩、エチレンアクリル酸エステルコポリマー、エチレンメタクリル酸エステルコポリマーおよび/またはこれらのいずれかの混合物が挙げられる。
【0029】
適するベース樹脂はポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニルおよびポリスチレンも含んでよい。
【0030】
2種以上のポリマーの組み合わせも用いてよい。
【0031】
2種の高分子材料を互いに接着させるために(例えば、LDPEをナイロン6などのポリアミド(ナイロン)に接着させる)、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いるエチレンとアルファオレフィンモノマーのコポリマー(メタロセンポリエチレン)、エチレン/プロセスコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーなどのターポリマーならびにポリプロピレンホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択されたポリマーは注目に値する。より好ましくは、ベース樹脂はMPE、LDPEまたはLLDPEである。LDPEは特に注目に値する。
【0032】
理論に拘束されずに、MPEも、その実質的に線状の構造およびPEの狭い分子量分布のゆえに本発明の実施において特に注目に値する。MPE技術は、本発明のベース樹脂成分として望ましいことがあり得る高い柔軟性および低い結晶度を有するより低い密度のPEを製造することが可能である。
【0033】
MPE技術は、例えば、米国特許第5,272,236号明細書、米国特許第5,278,272号明細書、米国特許第5,507,475号明細書、米国特許第5,264,405号明細書および米国特許第5,240,894号明細書に記載されている。
【0034】
アルミニウムフォイルなどの金属基材に接着させるために、第2の成分ベース樹脂は、好ましくは、MPE、エチレンと酢酸ビニルのコポリマーまたはエチレンとアルキルアクリレートのコポリマーからなる群から選択される。
【0035】
「エチレン/アルキルアクリレートコポリマー」という用語は、エチレンとアルキル部分が1〜6個の炭素原子を含むアルキルアクリレートのコポリマーを含む。アルキルアクリレートの例には、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートが挙げられる。「エチレン/メチルアクリレート(略してEMA)はエチレン(略してE)とメチルアクリレート(略してMA)のコポリマーを意味する。「エチレン/エチルアクリレート(略してEEA)はエチレン(略してE)とエチルアクリレート(略してEA)のコポリマーを意味する。「エチレン/ブチルアクリレート(略してEBA)」はエチレン(略してE)とブチルアクリレート(略してBA)のコポリマーを意味する。i−ブチルアクリレートコモノマーから調製されたエチレン/ブチルアクリレートコポリマー(EiBA)およびn−ブチルアクリレートコモノマーから調製されたエチレン/ブチルアクリレートコポリマー(EnBA)は注目に値する。
【0036】
エチレン/アルキルアクリレートコポリマーに導入されたアルキルアクリレートコモノマーの相対的な量は、原則として、全コポリマーの数重量%から40重量%ほどに至るまで、またはずっとより多くまで広く異なることが可能である。同様に、アルキル基の選択は、再び原則として、著しい分岐を伴うか、または伴わないで単純なメチル基から炭素原子数6のアルキル基に至るまで異なることが可能である。アルキルアクリレートエステルコモノマー中に存在するアルキル基の相対的な量および選択は、得られたエチレンコポリマーを熱可塑性組成物中の極性高分子成分として、いかに且つどの程度考慮すべきかを確立すると見ることが可能である。
【0037】
アルキルアクリレートコモノマー中のアルキル基は、好ましくは1〜4個の炭素原子を有し、アルキルアクリレートコモノマーは、エチレン/アルキルアクリレートコポリマーの5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%の濃度範囲を有する。
【0038】
エチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、オートクレーブ反応器または管状反応器のいずれかを用いてポリマー技術上周知されているプロセスによって調製することが可能である。共重合はオートクレーブ内で連続プロセスとして行うことが可能である。エチレン、アルキルアクリレートおよびメタノールなどの任意の溶媒(米国特許第5,028,674号明細書参照)は、開始剤と合わせて、米国特許第2,897,183号明細書に記載されたタイプの攪拌されたオートクレーブに連続的にフィードされる。添加の速度は、重合温度、圧力、用いられるアルキルアクリレートモノマーおよびコポリマーの目標組成を達成するために必要とされる反応混合物中のモノマーの濃度などの変数に応じて異なる。場合によって、分子量を制御するためにプロパンなどのテロゲンを用いることが望ましい場合がある。反応混合物はオートクレーブから連続的に取り出される。反応混合物が反応容器を出た後、コポリマーは、従来の手段、例えば、重合しなかった材料および溶媒を減圧下且つ高温で蒸発させることにより未反応モノマーおよび溶媒(溶媒を用いた場合)から分離される。
【0039】
管状反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、技術上一般に知られているように、オートクレーブで製造されたより従来型のエチレン/アルキルアクリレートから区別することが可能である。従って、本発明目的に関して「管状反応器で製造された」エチレン/アルキルアクリレートコポリマーという用語または言葉は、管状反応器または類似物の中で高圧および高温で製造されたエチレンコポリマーを表し、ここで、それぞれのエチレンおよびアルキルアクリレートコモノマーに関する異なる反応動力学の固有の帰結は、管状反応器内の反応流路に沿ってモノマーを意図的に導入することによって緩和されるか、または部分的に相殺される。技術上一般に認識されるように、こうした管状反応器共重合技術は、ポリマー主鎖に沿ってより大きな相対異質度(コモノマーの濃淡によりむらがある分布)を有するコポリマーを製造し、長鎖分岐の存在を減らす傾向があり、高圧攪拌オートクレーブ反応器において同じコモノマー比で製造されたコポリマーより高い融点によって特徴付けられるコポリマーを製造する。管状反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、オートクレーブで製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーより一般に堅くて弾性である。
【0040】
この性質の管状反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、E.I.du Pont de Nemours & Co.(Wilmington,Delaware)から市販されている。
【0041】
前述した管状反応器によるエチレン/アルキルアクリレートコポリマーの実際の製造は、好ましくは、管に沿って反応物コモノマーを追加的に導入しつつ高温での高圧管状反応器の中であり、攪拌された高温高圧オートクレーブ型反応器の中で単に製造されるわけではない。しかし、米国特許第3,350,372号明細書、同第3,756,996号明細書および同第5,532,066号明細書で教示されたようにコモノマーの代替を反応物コモノマーの多ゾーン導入によって達成する一連のオートクレーブ反応器内で類似のエチレン/アルキルアクリレートコポリマー材料を製造することができるとともに、そういうものとしてのこれらの高融点材料は本発明の目的において同等とみなされるべきであることは認められるべきである。
【0042】
オートクレーブで製造された従来のコポリマーを基準として管状反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーを更に例示し特性分析するために、市販されているエチレン/メチルアクリレートコポリマーの関連した融点データを伴った以下の一覧表は、ポリマー鎖に沿って非常に異なるMA分布のゆえに、管状EMA樹脂がオートクレーブEMAに対して随分より高い融点を有することを示している。
【0043】

【0044】
管状反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーとオートクレーブで製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーとの間の相違に関する追加の議論に関しては、Richard T.Chou、Mimi Y.KeatingおよびLester J.Hughes、「High Flexibility EMA made from High Pressure Tubular Process」、Annual Technical Conference−Society of Plastics Engineers(2002年)、60th(第2巻)、1832−1836、CODEN:ACPED4 ISSN:0272−5223;AN2002:572809;CAPLUSを参照すること。
【0045】
本発明において用いるために適するエチレン/アルキルアクリレートコポリマーはDuPontから入手できる。DuPontから入手できる管状反応器で製造されたエチレン/アルキルアクリレートコポリマーの特定の例に関する表Aを参照すること。







【0046】
表A

【0047】
本発明において有用なエチレン/アルキルアクリレートコポリマーは、ごく僅かの数から約10に至る観点でメルトインデックスを数値的に有するエチレン/アルキルアクリレートコポリマーによって示されるように分子量において大幅に異なることが可能である。それぞれ4.3g/10分および7.4g/10分のMIを有するEBA−5およびEBA−6は注目に値する。2g/10分のMIを有するEMA−3も注目に値する。
【0048】
エチレン/アルキルアクリレートコポリマーがベース樹脂に含まれる特に好ましい実施形態において、エチレン/アルキルアクリレートコポリマーは管状反応器内で調製されるタイプのコポリマーである。
【0049】
本発明の組成物は成分を合わせて混合することにより調製することが可能である。押出接着剤および積層接着剤として組成物を調製するためにドライブレンドまたは溶融ブレンドのいずれかが効果的に用いられる。
【0050】
本発明の組成物は、一般に用いられ接着剤技術上周知されている任意の材料の少量を追加的に含むことが可能である。こうした材料には、可塑剤;粘度安定剤および加水分解安定剤を含む安定剤;一次酸化防止剤および二次酸化防止剤;紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料または他の着色剤、無機充填剤、難燃剤、潤滑剤;ガラス繊維およびガラスフレークなどの強化剤;起泡剤または発泡剤、加工助剤、滑剤;シリカまたはタルクなどの粘着防止剤;離型剤、粘着性付与樹脂および/またはそれらの混合物を含む高分子材料中で用いられる従来の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technologyに記載されている。
【0051】
これらの従来の原料は、組成物の基礎的特性および新規特性を損なわない限り且つ組成物の接着剤品質に大幅に悪影響を及ぼさない限り、一般には0.01〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%である量で本発明において用いられる組成物中に存在してもよい(こうした添加剤の重量%は、「発明の開示」において上で定義された組成物の全重量%の中に含まれない)。典型的には、こうした多くの添加剤は0.01〜5重量%で存在してもよい。
【0052】
こうした従来の原料の組成物への任意の導入は、既知のいずれかの方法によって行うことが可能である。この導入は、例えば、ドライブレンドによって、種々の成分の混合物を押し出すことによって、または従来のマスターバッチ技術などによって行うことが可能である。
【0053】
本発明の接着剤組成物はドライブレンドすることが可能であり、その後、二軸スクリュー押出機内で溶融ブレンドすることが可能であり、技術上知られているように再ペレット化することが可能である。その後、これらの溶融ブレンドされた樹脂は二次加工することが可能であり、様々な技術およびプロセスによって被着させることが可能である。例えば、接着剤はキャストフィルムダイ押出技術またはブローフィルムダイ押出技術によってフィルムに二次加工することが可能であり、この接着剤フィルムは、金属またはポリオレフィンなどの適切な基材に積層することが可能である。代替法として、接着剤組成物は、より経済的な接着剤フィルムを製造するためにポリオレフィンの片面または両面のいずれかの上に表皮層としての他のポリオレフィンと合わせて共押出することが可能である。更なる代替法として、極性バリア材料に直接接着させるために本発明の接着剤組成物を用いてポリアミド、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)またはポリエステルなどの極性バリア樹脂を導入した共押出フィルムを製作することが可能である。これらの接着剤フィルムは、接着剤フィルムを熱活性化することにより種々の基材に積層することが可能である。熱活性化は、加熱されたプレートまたはローラとの直接接触、赤外線エネルギーの吸収、オーブン内での直接加熱あるいは高周波放射線またはマイクロ波放射線を通した活性化に限定されないが、それらを含む様々な方法によって行うことが可能である。
【0054】
本発明の接着剤組成物のもう1つの用途において、接着剤は、例えば、押出積層、押出被覆、共押出積層および共押出被覆を含む技術上周知されている方法で基材上に直接被覆することが可能である。本発明の接着剤組成物は、EVOH、ポリアミドまたはポリエステルなどの極性バリア樹脂に接着させるために用いることが可能である。接着剤組成物の幾つかは、スチール、アルミニウム、銅および真鍮などの金属ならびにポリエチレン、エチレンコポリマーおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンに接着させるために用いることも可能である。
【0055】
上で示したように、高圧ラジカル法から製造されたエチレンと無水マレイン(またはそのタイプ)のコポリマーと適する非官能化エチレン系ポリマーとの組み合わせはポリアミド耐衝撃性改良剤として開示されてきた。エチレン/エチル水素マレイン酸エステル(E/MAME)などの高度に官能化されたエチレンコポリマーは単独で良好な耐衝撃性改良剤ではない。ポリマー改良剤として靱性にするために、随伴エチレン系ポリマーは、より低い結晶度および/またはより低いガラス転移温度(Tg)を有する柔らかいPEでなければならない。例えば、LDPE(比較的より硬いPE)とE/MAMEの組み合わせは、ポリアミドを強化するために良好な耐衝撃性を提供しない。
【0056】
しかし、E/MAMEは、高い接着強度を必要とする用途において接着剤樹脂として単独で機能することが可能である。更に、例えば、本明細書で記載されたLDPEとE/MAMEの組み合わせは、押出ポリアミド(ナイロン)/繋ぎ/PE複合構造体または積層ポリアミド(ナイロン)/繋ぎ/PE複合構造体を製作する際に優れた繋ぎ層として機能することが可能である。
【0057】
本発明の接着剤組成物は金属とポリオレフィンの両方に接着し、比較的より低い温度で活性化し、紙の挿入も剥離紙も必要としない自立フィルムまたは共押出フィルムとして容易に取り扱われる。更に、これらの接着剤組成物が剥離試験中に凝集で破壊しうることが見出された。凝集破壊は、接着強度が接着剤の凝集強度より大きいほどまでに高い接着強度の指標でありうる点で望ましい属性である。
【0058】
凝集破壊は、他の試験方法が容易には利用できない時に多層構造を適切に接着させることを保証する便利な目視試験も提供する。最後に、接着剤の凝集破壊モードと製品を実際に用いた後の接着強度の保持との間の強い相関がありそうである。
【0059】
従って、本発明は、金属基材および多くの高分子材料への優れた接着特性を有し、よって高い剥離強度を有する接着剤層をもたらす接着剤組成物を提供する。本発明は、建物パネルおよびパイプ塗料などの物品の製造に際して用いられるべき比較的より低い活性化温度も考慮に入れている。
【0060】
本発明の好ましい樹脂および接着剤組成物は用途の種々の種類において用いることが可能であり、特定の用途に応じて異なる特性を有することが可能である。特定の好ましい接着剤のための1つの用途は、建物パネルがポリエチレンなどのポリオレフィンコアに接着されたアルミニウムまたはスチールなどの金属基材を含む複合構造体の形態を取る建設産業のための建物パネルの製造にある。上で示したように、ポリエチレンなどのポリマーを金属に接着させるために、MPE、エチレンと酢酸ビニルのコポリマーまたはエチレンとアルキルアクリレートのコポリマーから選択されたベース樹脂は好ましい。本発明のこれらの好ましい接着剤組成物は、金属基材をポリエチレンコアに接着させるために用いられる。こうした用途において、接着剤層が金属基材へのポリオレフィンの優れた接着力を提供することが重要である。接着剤が利用中に凝集で破壊するとともに、配合し使用するのが比較的容易であるべきことも望ましい。本発明の接着剤組成物が金属基材および多くの高分子材料への優れた接着力を提供することが見出された。接着剤組成物は自立フィルムとして用いることが可能であり、よって接着剤組成物を取扱い、加工するのを容易にする。
【0061】
高い剥離強度、フィルムに成形した時の低い表面粘着性および低温での接着の独特の組み合わせのゆえに、本発明の好ましい接着剤はアルミニウム製およびスチール製の建物パネルの製造において有用である。
【0062】
地下設置のために意図されているスチールパイプまたはスチールチューブは腐食に対して保護被覆されなければならない。これは、接着剤塗料または接着剤プライマでパイプを被覆し、その後、2工程手順においてプラスチック外被材料の層で被覆することにより典型的に実行される。プライマは、エポキシ熱硬化性粉末が被着されている加熱されたパイプに融着する特定のエポキシ熱硬化性粉末からなることが多い。外被材料は高密度ポリエチレンからなることが多い。
【0063】
一定長さのパイプを保護被覆するための伝統的な方法は、一列の粉末ガンが中に据え付けられているブースを通して、加熱されたパイプを縦に回転させ搬送することである。粉末ガンは、ブースを通して前進しつつパイプの円周のまわりに粒子状プライマ材料を噴霧する。例えば、米国特許第3,616,006号明細書で開示されたように回転パイプ上にねじ山方式で外被材料を巻きつける螺旋包み装置がブースの下流にある。
【0064】
上のアプローチに付随する幾つかの欠点がある。第1に、パイプを回転させ前進させるために用いられる搬送システムは建造し維持するのに高価である。第2に、より小さい直径のパイプに特に関連して、パイプ上にプライマの均一被膜を達成するのが困難であり、多量の過剰噴霧も存在し、従って、プライマ材料の廃物がある。第3に、螺旋方法を用いて被着させた外被材料は、重なりにおける弱い接続およびパイプ上の半径方向または縦方向の溶接継目の劣った被覆を受けやすい。螺旋包みの欠点は外側外被材料として高密度ポリエチレンを被着させる場合より大きい。外被材料で螺旋状に包まれたパイプは、保護被膜の比較的劣った低温接着力を示すことが多い。第4に、このアプローチは工業プラント環境においてのみ用いることが可能であり、設置の場所でパイプのパイプ被膜を修復するために用いることはできない。
【0065】
上の欠点を克服するために、パイプを保護被覆するための代替方法が探索されてきた。例えば、パイプを被覆する現在好ましい方法は「クロスヘッド」押出技術を用い、それは「ストレートスルー」プロセスまたは「エンド」プロセスとしても知られている。これは、押出機の環状ノズルまたは環状ヘッドを通して回転しないパイプを縦に搬送することを伴い、押出機は、押出ヘッドを通過するにつれてパイプ上に接着剤フィルムおよび外被材料の管状被膜を押し出すために動作可能である。しかし、クロスヘッド押出機の上流でプライマ材料により一定長さの回転しないパイプを被覆する装置および方法を提供することはなお必要である(米国特許第6,589,346号明細書参照)。
【0066】
パイプ被覆のための螺旋包み法またはクロスヘッド押出法のいずれにおいてもプライマの使用をなくすことが望ましい。本発明の組成物は、管状共押出フィルムなどの多層構造体をプライマの必要なしにパイプに接着させることを可能にするのに十分な接着力を金属に与える。従って、本発明は本発明の組成物を含むパイプ塗料を提供する。
【0067】
本発明の好ましい実施形態に関連して本発明を特に示し記載してきた一方で、本発明の精神および範囲から逸脱せずに形態および詳細の種々の変更を行ってもよいことは当業者によって理解されるであろう。
【0068】
以下の実施例は単に例示にすぎず、本明細書に記載されおよび/または主張された本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0069】
用いた材料
M−1は、Fusabond(登録商標)E MB226DとしてDuPontから入手できる1.5のメルトインデックス(MI)および0.93g/ccの密度を有するポリエチレン/無水マレイン酸グラフトコポリマーである。
【0070】
F−1は、30のMIを有するポリエチレン/エチルマレイン酸モノエステルコポリマー(E/MAME90.5/9.5重量%)である。
【0071】
F−2は、80のMIを有するポリエチレン/無水マレイン酸コポリマー(E/MAH96/4重量%)である。
【0072】
LDPE−1は、NA940という商品名でEquistarから入手できる0.25のMIおよび0.918g/ccの密度を有する低密度ポリエチレンである。
【0073】
MPE−1は、Engage(登録商標)8180という商品名でDuPont Dow Elastomersから入手できる、メタロセン触媒を用いて調製された0.5のMIおよび0.863g/ccの密度を有する低密度エチレン/オクタンコポリマーである。
【0074】
PA−1は、Ultramid(登録商標)B35という商品名でBASFから入手できるナイロン6である。
【0075】
EBA−5は、4.3のMIを有するエチレン/n−ブチルアクリレートコポリマー(n−BA27重量%)である。
【0076】
EMA−3は、2のMIを有するエチレン/メチルアクリレートコポリマー(MA9重量%)である。
【0077】
EVA−1は、1.5のMIを有するエチレン/酢酸ビニルコポリマー(VA21重量%)である。
【0078】
PP−1は、DX5E98という商品名でDow Chemicalから入手できる3.4のMIおよび0.90g/ccの密度を有するポリプロピレンである。
【0079】
HIP−1は、PX510という商品名でNova Chemicalsから入手できる3.4のMIおよび0.90g/ccの密度を有する耐衝撃性スチレンである。
【0080】
すべての部および百分率は特に指示がない限り重量によって与えられる。
【0081】
メルトインデックス(MI)は、温度および圧力の制御された条件下で規定毛細管を通したポリマーの流れの質量速度である。本明細書で報告されるメルトインデックスは、2160gの分銅を用いて190℃でASTM1238に準拠して決定され、MIの値はグラム/10分で報告される。
【0082】
表1の実施例1〜3は、3層のナイロン/繋ぎ/LDPEブローフィルム中の繋ぎ層として本発明の組成物を用いて達成された接着力を示している。直径5cm(2インチ)のBramptonダイを用いてブローフィルムライン上でPA−1/繋ぎ/LDPE−1(厚さ約1.0ミル/0.5ミル/1.5ミル)の3層共押出ブローフィルムを調製した。繋ぎ層は、LDPE−1とF−1のドライブレンドされた混合物であり、F−1含有率はそれぞれ5、10および20重量%であった。幅1インチの細片を3層フィルムから切り出した。第2日目に手による剥離試験を用いて細片の接着力特性を試験した。
【0083】
すべての3層フィルムは、層間で分離不能の優れた層間接着力を示している。F−1の5重量%のレベルでさえも、組成物は優れた接着力を提供している。これは、E/MAMEと低コストLDPE(または他のPE)の組み合わせから溶融ブレンディングなしで高い接着強度を提供する本発明の接着剤組成物を調製してもよいことを実証している。
【0084】
表1 LDPE-1/繋ぎ/PA-1の3層ブロ−フィルム

【0085】
実施例4〜8
実験室規模の小さいブローフィルムラインを用いて厚さ約2〜4ミルの表2に記載した組成のブローフィルムサンプルを製造した。その後、構造Alフォイル/接着剤/Alフォイルの3層複合材を製造するためにフィルムを接着剤層として用いた。Alフォイルは厚さ1ミルであった。3層複合材を以下の手順により調製した。
【0086】
積層プレスを規定温度に設定した。Alフォイル/接着剤(ブローフィルム)/Alフォイルの順に積み重ねることにより複合材を組み立てた。積み重ねられた層をプレス内で5分にわたり予熱し、その後、44psiの圧力で30秒にわたりプレスして、積層された複合材構造体を形成した。構造体を放置して室温に冷却した。幅1インチの細片を3層フィルムから切り出した。第2日目に手による剥離試験を用いて細片の接着力特性を試験した。
【0087】
データを表2でまとめている。剥離試験を次の通り報告した。
a)Nは接着力がないことを意味する。すなわち、複合材は容易に剥離されて開いた。
b)Pは接着力があるが、Alフォイルを壊さずにAlフォイルと接着剤層を分離することが可能である。
c)Yは接着強度が強すぎて、Alフォイルを破壊せずに引き剥がすことができないことを意味する。
【0088】
表2 Al/接着剤/Al積層体の剥離試験

【0089】
表2で示したように、規定されたプレス成形条件で、E/MAMEとPPまたはLDPEのいずれかとのブレンド(実施例4〜8)は、Alフォイルに適切な接着力を付与していない。Alフォイルとブレンド接着剤は容易に剥がれた。
【0090】
繋ぎ層としての純E/MAME(比較例C1)はAlフォイルに接着している。しかし、手による剥離によって、AlフォイルとE/MAME層との間の接着力が大して強くないことが明らかである。複合材はAlフォイルを破壊せずに容易に剥離されて開いた。
【0091】
実施例9〜44
表3に記載された組成の積層物サンプルを実施例4〜8に関する手順により調製した。
【0092】
50mm/分の試験速度でASTM904に準拠して行われた90度剥離強度試験を用いて剥離強度を評価した。結果を表3でまとめている。







【0093】
表3 Al/接着剤/Al積層物の剥離試験







[表3続き]

【0094】
繋ぎ層としての純E/MAME(比較例C2〜C6)はAlフォイルに接着している。しかし、接着強度はすべての用途のために十分ではない。
【0095】
実施例4〜44は、E/MAMEまたはE/MAHとエチレン/酢酸ビニルおよびエチレン/アルキルアクリレートならびにMPEなどの軟質エチレンコポリマーとの組み合わせが金属への意外に優れた接着力を提供することを実証している。
【0096】
EVA−1、EBA−5またはEMA−3とのE/MAMEブレンドはすべてAlフォイルへの優れた接着力を示した。複合材はAlフォイルを破壊せずに剥離されて開けることができなかった。従って、接着剤破壊は凝集破壊である。EVAとブレンドされたE/MAMEに関する接着力開始温度は、純E/MAMEのための温度より随分低い温度で活性化されている。
【0097】
特定の詳細度で本発明をこうして記載し例示してきたが、以下の特許請求の範囲がそれほど限定されるべきでなく、特許請求の範囲およびその均等物の各要素の表現に相応した範囲を与えられるべきであることは認められるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含む高分子接着剤組成物であって、約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜約95重量%の成分(b)を含む高分子接着剤組成物。
【請求項2】
前記官能性コモノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステルまたはそれらの混合物からなる群から選択されたモノマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記官能性コモノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステルおよびマレイン酸モノエステルまたはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記官能性コモノマーは無水マレイン酸である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記官能性コモノマーはマレイン酸モノエステルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記官能性コポリマーはE/X/Yターポリマーであって、Eがエチレンであり、Xが酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸とカルボン酸の混合無水物からなる群から選択され、Yが無水マレイン酸、マレイン酸ジエステルおよびマレイン酸モノエステルからなる群から選択されるE/X/Yターポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
Xはメチルアクリレートまたはブチルアクリレートである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
Yは無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステルからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記官能性コモノマーは無水マレイン酸である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記官能性コモノマーはマレイン酸モノエステルである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記高分子ベース樹脂は、ポリオレフィンおよびエチレンと極性モノマーの共重合から得られたエチレンコポリマーからなる群の中のポリマーから選択された少なくとも1種のポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記高分子ベース樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いるエチレンとアルファオレフィンモノマーのコポリマー(メタロセンポリエチレン)、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーなどのターポリマーならびにポリプロピレンホモポリマーおよびコポリマーからなる群の中のポリマーから選択された少なくとも1種のポリオレフィンポリマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記高分子ベース樹脂は、エチレンと極性モノマーの共重合から得られた少なくとも1種のエチレンコポリマーを含み、前記コポリマーは、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリレートコポリマーおよびエチレン/アクリレート/一酸化炭素ターポリマーからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ベース樹脂は、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニルおよびポリスチレンからなる群から選択された少なくとも1種の追加のポリマーを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の追加のポリマーは耐衝撃性ポリスチレンである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含む接着剤フィルムであって、接着剤組成物が約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜約95重量%の成分(b)を含む接着剤フィルム。
【請求項17】
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含む多層複合構造体であって、接着剤組成物が約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜約95重量%の成分(b)を含む多層複合構造体。
【請求項18】
前記複合構造体は多層フィルムまたは多層シートである、請求項17に記載の多層複合構造体。
【請求項19】
前記複合構造体は包装フィルムである、請求項18に記載の多層複合構造体。
【請求項20】
前記構造体は少なくとも2層の接着剤層を含む、請求項19に記載の多層構造体。
【請求項21】
前記構造体は少なくとも3層の接着剤層を含む、請求項20に記載の多層構造体。
【請求項22】
前記官能性コモノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステルまたはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含むパイプ塗料であって、接着剤組成物が約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜95重量%の成分(b)を含むパイプ塗料。
【請求項24】
前記官能性コモノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、フマル酸、フマル酸モノエステルまたはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載のパイプ塗料。
【請求項25】
前記官能性コモノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステルおよびマレイン酸モノエステルまたはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項24に記載のパイプ塗料。
【請求項26】
前記官能性コモノマーは無水マレイン酸である、請求項25に記載のパイプ塗料。
【請求項27】
前記官能性コモノマーはマレイン酸モノエステルである、請求項26に記載のパイプ塗料。
【請求項28】
前記高分子ベース樹脂は、エチレンと極性モノマーの共重合から得られた少なくとも1種のエチレンコポリマーを含み、前記コポリマーは、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリレートコポリマーおよびエチレン/アクリレート/一酸化炭素ターポリマーからなる群から選択される、請求項23に記載のパイプ塗料。
【請求項29】
(a)オレフィンと約3重量%〜約15重量%の官能性コモノマーのコポリマーおよび
(b)高分子ベース樹脂
を含む物品であって、接着剤組成物が約5〜約50重量%の成分(a)および約50〜約95重量%の成分(b)を含む物品。
【請求項30】
前記物品はペレットまたは建物パネルである、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記官能性コモノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステルおよびマレイン酸モノエステルまたはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項30に記載の物品。
【請求項32】
前記官能性コモノマーは無水マレイン酸である、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
前記官能性コモノマーはマレイン酸モノエステルである、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記高分子ベース樹脂は、エチレンと極性モノマーの共重合から得られた少なくとも1種のエチレンコポリマーを含み、前記コポリマーは、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリレートコポリマーおよびエチレン/アクリレート/一酸化炭素ターポリマーからなる群から選択される、請求項29に記載の物品。

【公表番号】特表2008−508403(P2008−508403A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523841(P2007−523841)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/026954
【国際公開番号】WO2006/015201
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】