説明

高歩留まりスプレー塗布

硬化型スラリー組成物のスプレー時に高歩留まりを確保するための方法および器具。スラリーはある長さのホースによりノズルスプレー・オリフィスまで搬送され、そして硬化促進剤はノズルスプレー・オリフィスから距離「D」においてスラリーの中に導入される。促進剤のレベルは、硬化促進剤を注入する地点においてスラリー経路中に配置されたセンサーを用いてモニターされる。好ましいセンサーは、各々がホースまたはノズル穴の直径に対応する穴付きの環状体を有する2対の伝導度センサーを含んでなる。促進剤のレベルを微調整することができ、そしてスプレーコーティングの一貫して高い歩留まりを得ることができように、スラリーの電圧は、塩ベースの促進剤流体をスラリーの中に注入する場合に得られる歩留まりに関連付け可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速硬化性組成物のスプレー塗布、特にスプレー組成物の中に導入される硬化促進剤のレベルを精確にモニターすることにより、硬化型組成物の高歩留まりスプレー塗布を確実に行うための方法および器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ホースによる搬送後組成物の中に導入される促進剤を使用することを含む、スプレー塗布が知られている。特に、ホースにより圧送される組成物は、スプレーノズルにより基材上に噴射される水和セメント質粒子のスラリーあるいはサスペンジョンである。例えば、このような促進剤は、コンクリート(例えば、「ショットクリート」)のスプレー塗布および鋼梁およびパネルなどの金属基材用の防火コーティングにおいて使用される。
【0003】
防火分野において特に成功したタイプの製品は、石膏結合材に加えて、破砕発泡ポリスチレン、バーミキュライトおよび/またはセルロースなどの軽量無機骨材を空気同伴剤および他の薬剤と共に含有する石膏ベースのスラリー配合物である。Grace Construction Products(Cambridge,Mass.)からのMONOKOTE(登録商標)ブランドの防火材などの防火性混合物が乾燥粉末として販売されている。この粉末は、地表面に配置されている混合機を用いて作業現場で水と混合される。次に、この防火性スラリーは、時には、地表面より20〜30階上の場所まで延びる長いホースにより圧送される。これは、ノズルにより鋼梁、パネルまたは他の建設表面上にスプレーされる。
【0004】
特許文献1で説明されているように、このスラリーはスプレー塗布のために多数の重要な性質を保有しなければならない。これらは、湿潤スラリー状態において、そして硬化の後に金属基材に接着しなければならない。これらは、被覆の絶縁的な性質を弱体化する可能性のあるひび割れ形成を避けるために過度の膨張あるいは収縮を起こさずに硬化しなければならない。このスラリー組成物は、容易にかつ高所まで圧送可能であるように比較的大量の水を保持することができなければならない。それにも拘わらず、成分の偏析あるいは沈降を避けるために、スラリーはコンシステンシーを維持しなければならない。
【0005】
経済的な観点から、スプレー型スラリーは適当な「歩留まり」を提供することが重要である。用語「歩留まり」は、防火性組成物スラリーの製造に使用される乾燥混合物の所定の重量当りの塗布された防火性組成物の硬化後の体積を意味する。
【0006】
歩留まりを増大させるために、特許文献1は、酸性硬化促進剤をセメント質スラリーの中に注入して、その中に含有される塩基性材料と反応させることができるということを開示した。この反応は、スラリー組成物を発泡させ、そして膨張させるための二酸化炭素ガスを生じ、それによってスラリーの歩留まりの実質的な増大をもたらす。特許文献1においては、フィードライン中の促進された混合物の硬化に対する潜在性を最少とするのに、促進剤がノズル近くでスラリーの中に導入されるということが示唆された。
【0007】
促進剤の使用は、スラリー混合物の硬化時間を約4〜12時間から約15分未満に変換することが知られており、そして約5〜10分の硬化時間を得るために、そして0.1%〜20%の範囲の歩留まり増加を得るためにも充分な量の促進剤を使用することがしばしば好ましい。
【0008】
スラリーの中に導入される硬化促進剤の量をコントロールするのに、容積流量測定法が
石膏ベースの防火材ならびにスプレーされたコンクリート(ショットクリート)のスプレー塗布において使用されてきた。例えば、石膏ベースの防火材のスプレー塗布時にホースの中にみょうばん促進剤を導入するために流量計が使用されていたと考えられる。もう一つの例として、スプレーされたコンクリート用途での使用のために容積流量測定システムがNormet Corporationから商品名Nordoser900(商標)により、そしてMBT Pty Ltd(Australia)から商品名Viper Roboshot Mklllにより市販されている。
【0009】
しかしながら、本発明者らは、基材上へのスラリーの塗布に長いホースが必要とされる場合、流量計の使用が精確にモニターすることを必ずしも保障しないと考える。混合機とノズルの間の距離が大きい場合には、充分なレベルの精度が本質的に達成困難である。例えば、高層建設現場は数100フィートのスラリーホースの使用を必要とする。このことは、スプレーノズルまで、あるいはその近くまで硬化促進剤を圧送するのに数100フィートの小直径の配管も必要とされるということを意味する。したがって、地表面の混合機からスプレーノズルまでのホース経路は、地表面上10〜30階以上の距離にわたる。この経路は、通常、いくつかの障害物および鋭いエッジ部を巡る曲がりくねった、そして回り道の経路を含む。促進剤配管に対する通常の障害物は、ドアおよび壁開口部、階段の吹き抜けおよび金属飾りくぎを含む。この配管は、スラリーの中への硬化促進剤のコントロールされた導入を妨げる、狭窄、よじれ、つぶれ、漏れおよび他の条件を受け易い。
【特許文献1】米国特許第4,904,503号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、促進剤を注入し、そしてスラリーの中に実際に導入される促進剤レベルを精確にモニターする方法および器具を提供することである。
【0011】
もう一つの目的は、計量器具に及ぼすセメント質組成物の腐食の影響および促進剤注入器に及ぼす閉塞の影響に耐え;現状のライン清浄化方法を用いる清浄化方法を使用し;そしてスプレー操作に対して邪魔にならないことを含む、促進剤をモニターする方法および器具を提供することである。
【0012】
なお更なる目的は、工業的作業環境の危険要因に耐えることができる器具を提供することである。例えば、促進剤モニター器具は、精度または有効性を全く失わずに硬質表面上への繰り返し落下に耐えることができなければならない。
【0013】
最後に、本発明の重要な目的は、スプレー塗布されるホースで搬送された組成物の中に注入される硬化促進剤を用いて、硬化型組成物の一貫して高い歩留まりスプレー塗布を得るための方法および器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、硬化型スラリー組成物の一貫して高い歩留まりスプレーを達成するための方法および器具を提供する。
【0015】
例示の方法は、ある長さのホースによりノズルスプレー・オリフィスまで硬化型スラリーを搬送し;
上記ノズルスプレー・オリフィスから距離「D」において上記搬送されたスラリーの中に硬化促進剤を導入し;そして
センサーを使用して、上記スラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルに対応する上記スラリーの物理的性質の変化を検出することにより、上記ノズルスプレー・オリフィスから「D」未満の距離において上記スラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルをモニタ
ーすることを含んでなる。
【0016】
硬化促進剤(または「促進剤」)は既知の手段によりスラリーの中に導入される。防火性スプレー塗布においては、圧力下で圧送される促進剤をホースまたはノズルの中に注入するために注入ポートが使用され得る。
【0017】
防火性スプレー塗布のためには、促進剤は、好ましくはスラリーの中に水に可溶化された塩として注入され、そしてセンサーは、好ましくは電圧計または他の器具との組み合わせでスラリーの伝導度の指示を与えるように作動する電気伝導度センサーである。例示の伝導度センサーは、電圧源に取り付けられる場合に電圧場を生じるように作動する、好ましくは環状体(例えば、中空円筒形状)を有する第1の電極対と、第2の電極対を電圧計または他の測定器具と接続した場合に上記第1の電極対の間の電圧差を検出するように作動する、各々好ましくは環状体を有する第2の電極対を含んでなる。
【0018】
センサーは、促進剤をホースまたはノズルの中に注入する注入ポートの後の地点においてノズルスプレー・オリフィスから距離「D」(例えば、6インチ〜100フィート)でホースまたはノズル中に取り付け可能である。好ましくは、センサー機構に損傷を与える機会を最少にするために、センサーは、ノズルスプレー・オリフィスから少なくとも5フィート、更に好ましくは少なくとも10〜75フィートの距離においてスリーブ筐体中に格納される。
【0019】
前述の伝導度電極は、電極表面上へのスラリー材料の堆積を最少するように、ホースまたはノズル内径と一致する穴内径を好ましくは有する。
【0020】
電極および計測器具の使用は、実際の野外試験の結果に基づいてスラリー伝導度と歩留まりの間の相関付けを可能とする。したがって、本発明は、伝導度測定値が予め決められたレベル以下に低下するか、あるいはそれ以上に上昇する場合に、スラリーの中への促進剤注入速度の自動あるいは手動の調整を容易とさせる。本発明の更なる方法および器具においては、促進剤のレベルが予め決められたレベルから偏るか、あるいは臨界的な調整を必要とする場合の指示に、目視式および/または可聴式アラームが使用可能である。
【0021】
このようにして、本発明は、ホースまたはノズル内の実際のレベル指示を与えるセンサーを使用することにより、促進剤レベルのモニターのモニターおよびコントロールが行われるために、更に一貫した高い歩留まりスプレー塗布を提供すると考えられ、そして
ホースまたはノズルへの配管中を圧送される促進剤の流量を単にモニターする、先行技術の定容法よりもはるかに精確であると考えられる。言い換えれば、本発明の精度は、閉塞、よじれ、または漏洩のある配管または接続器具により妨害されることはない。
【0022】
本発明は、精確であり、高耐久性であり、簡便であり、そして経済的である硬化型スラリーのスプレー塗布システムおよび器具も提供する。上述のセンサーは、ホース区分の間、ホースとノズルの間でねじ込みおよび/またはクランプ固定可能な、ポリエチレンまたはポリアミドなどの誘電性材料でできた剛直なスリーブ中に格納され得るか;あるいはセンサーはノズルそれ自身の中に直接に組み込まれ得る。
【0023】
本発明の更なる利点、メリットおよび特徴はこれ以降に更に詳細に述べられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この明細書で使用されるように、用語「硬化型スラリー組成物」は、ある長さのホースにより圧送され、そして基材上にノズルによりスプレー塗布可能で、水との混合時に水和スラリーを形成する無機結合材材料を含んでなる組成物を意味し、指す。
【0025】
用語「歩留まり」は、硬化型スラリー組成物の製造に使用される乾燥無機結合材材料の所定の重量当りのスプレー塗布されたスラリー組成物の硬化後の体積を意味する。
【0026】
硬化型スラリー組成物での使用に意図される通常の無機結合材材料は、焼き石膏、スタッコ、石膏、ポルトランドセメント、アルミナセメント(例えば、カルシウムスルホアルミネートセメント、高アルミナセメント)、ポゾランセメント(例えば、微粉砕した高炉スラグまたはフライアッシュ、シリカヒューム)、ガナイト、オキシ塩化マグネシウム、オキシ硫酸マグネシウムまたはこれらの混合物を含む。好適な硬化型スラリー組成物は、すべて引用によりこの明細書に組み込まれている、例えば、Shuらへの米国特許第4,751,024号;Hiltonへの米国特許第4,904,503号;Kindtらへの米国特許第5,034,160号;Peritoへの米国特許第5,340,612号および第5,401,538号;Gaidisらへの米国特許第5,520,332号;Berneburgらへの米国特許第5,556,578号;Kindtらへの米国特許第6,162,288号;およびHiltonへのWO03/060018で開示されている。
【0027】
好ましい硬化型スラリー組成物は、W.R.Grace & Co.(Conn.,Cambridge,Massachusetts)から商品名MONOKOTE(登録商標)により販売されている。このようなスプレー型防火性スラリー組成物は、破砕発泡ポリスチレンならびに他の構成成分、例えば既知の硬化遅延剤(例えば、Kindtらへの米国特許第6,162,288号を参照のこと)。
【0028】
広範で、多様な代替の骨材および充填材材料が硬化型スラリー内で使用され得る。これらは、剥離バーミキュライト、発泡パーライト、珪藻土、耐火性充填材、例えばアルミナまたは焼塊あるいはコロイド状シリカ、セラミックファイバー、鉱物繊維、ガラスファイバー、普通混合紙くず、製紙スラッジ、パルプ、セルロースなど、または農業ファイバー、例えばアカシア樹皮から抽出されるファイバー、やしファイバー、ケナフ、あし、および天然有機粒子、例えば磨砕コルクおよびおがくずを含む。
【0029】
ファイバーは、乾燥した合成の粒子あるいはファイバー、例えばミル掛けされた熱可塑性樹脂フォーム、例えばフェノールホルムアルデヒドレゾール樹脂フォーム、ウレアホルムアルデヒフォームおよびポリウレタン剛性あるいは可撓性フォームから誘導される有機粒子;および有機ファイバー、例えばカーボン、アラミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリルおよびこれらの混合物を含んでなり得る。
【0030】
本発明のスラリー組成物の硬化を促進するのに有用な例示の硬化促進剤は、慣用的に既知のものを含み得る。共同譲渡人により所有されるGaidisらへの米国特許第5,520,332号で述べられているように、硬化促進剤は、好ましくは基材上での硬化時間を減少させるのにスラリーの中に注入される低粘度の流体である。スラリーの遅延を満足にずらす能力のある酸性硬化促進剤が使用可能である。大部分の商業用途には、促進剤のタイプおよび量は、約4〜12時間の硬化時間を約5〜10分に急速に変換するものである。このような硬化時間をもたらすのに必要とされる量は、促進剤と、遅延剤と結合材のタイプおよび量に依って変わる。一般に、乾燥セメント質結合材の重量基準で約0.1%〜20重量%の範囲の量の乾燥した促進剤が使用され、約2%が好ましい。有用な促進剤の例は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸カリウム、硫酸および酢酸を含み、硫酸アルミニウムが好ましい。
【0031】
低粘度の液体、特に防火スプレー塗装業界およびショットクリート業界で使用されるも
のの中に低粘度の液体促進剤を導入するのに、慣用の硬化促進剤注入器ポート16あるいは機構が使用され得る。好適な機構は、この明細書に組み込まれている、例えばHiltonらへの米国特許第4,934,596号およびGaidisらへの米国特許第5,520,332号で開示された。‘332特許においては、Gaidisらは、管を含んでなるチェックバルブ・注入器ポートが長さに沿ってスラリー経路の中に挿入された複数のスリットを有するということを開示した。管は、スリットがポンと開くように管を拡張させる伸張性材料からできている。促進剤は、開いたスリットからスラリー経路の中に圧力下で注入される。スラリー圧力中にサージがある場合には、スリットは閉じ、それによって管を閉塞する可能性のあるスラリーの侵入を防止することができる。ホースまたはノズル内のスラリー経路の中に促進剤を導入するために、他の硬化促進剤注入器の設計も使用され得る。
【0032】
スラリー内でガスまたは泡を生成する目的で、塩基性材料を使用することが望ましい。用語「塩基性材料」は、ガスの発生およびスラリーの体積膨張と共に組成物中で使用される酸性硬化促進剤と反応するいかなる材料も指す。好ましくは、この塩基性材料は、スラリー組成物に添加され、そしてセメント質結合材中の天然起源のものではない。スラリー結合材に添加して、硬化促進剤と合体される場合にガスを生じることができる例示の塩基性材料は、炭酸塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムまたはこれらの混合物を含む。
【0033】
図1に示すように、混合機10は、水とセメント質結合材12を合体して、圧送型でかつ硬化型スラリーを与えるために使用され、スラリーは、全体を22で示されスプレー・オリフィスを有するノズルに向かってある長さのホース14により搬送される。通常、ノズルはアルミニウム、鋼などの金属または他の剛性材料から形成される。加圧空気は、空気ホース24からノズルへと、そしてノズルスプレー・オリフィス22から動力付きの空気ポンプ26により圧送されて、ノズルから基材(鋼梁あるいはパネルなど、図示せず)上にスラリーを噴射する。
【0034】
本発明の好ましい態様においては、促進剤(促進剤のタンクとポンプは両方とも18で示される)は、ノズルスプレー・オリフィス22から距離「D」においてホースに沿って配置され、16で示される促進剤注入ポートからホース14の中に圧送される。促進剤注入ポートは、ノズル上、あるいはノズルの近傍にあり得るが、更に好ましくは、促進剤注入ポート16とノズルスプレー・オリフィス24の間の距離「D」は、10フィート以上、そして100フィート22であり;そして更に好ましくは、これは、ノズルスプレー・オリフィス22から15〜75フィートに配置されて、スラリーの中に注入(注入ポート16から)される酸性硬化促進剤をスラリー中に含有される塩基性材料と反応され、そしてスプレーされ、そして基材上で乾燥された時にスラリーの歩留まりを増大させるガスを生じさせる。
【0035】
ノズルスプレー・オリフィス22から「D」未満の距離において配置される「20」で示される地点においてスラリーの中に導入される硬化促進剤の実際の量をモニターするのに、センサー20が使用される。センサー20は、好ましくは電源32(直流源または交流源であり得る)と計測器具38と電気的あるいは電子的に接続される。電源32および計測器具38は、混合機10の作業者の近くに都合のよいように配置されて、スラリーの中に促進剤をフィードするポンプ18で自動あるいは手動調整を行うことを可能とする。
【0036】
スラリーの中に導入される硬化促進剤が水溶性塩である場合には、センサー20は、水性スラリーの伝導度の指示を与えるように作動する伝導度センサーであることができる。図2に示すように、例示のセンサー20は、ノズルスプレー・オリフィスから「D」未満の前記距離においてスラリーの伝導度の指示を与えるように作動する伝導度センサーを含
んでなる。好ましくは、センサー20は、相互に物理的に絶縁され、そしてスラリーと電気的に接触するようにホース、格納スリーブまたはノズル内に搭載される電極組み立て体を含んでなる。電極の構築に使用される材料はいかなる電気伝導性材料であることもできる。電極の製造には316ステンレス鋼が普通に使用されてきた。
【0037】
図2に示すように、センサー20組み立て体は、ある間隔で隔てられ、そしてホース、格納スリーブまたはノズルの穴と位置合わせされた第1の電極対30を含んでなる。電圧源32を第1の電極対30に接続した場合に、これらは、スラリーの一部分内で電圧場を生じるように作動する。第2の電極対34もある間隔で隔てられるが、2つの第1の電極対30の間に配置され、そして第1の電極対30間の電圧差を検出するように作動する計器36または他の伝導度検出器具に接続される。ホースの一部または別の格納スリーブは全体で14で示され、そして電極30/34を相互に、そして外部環境から物理的あるいは電気的に絶縁するように使用される。
【0038】
電極30および34は各々、好ましくはホース14(または、ノズル中あるいはその近傍に位置する場合にはノズル)の穴と位置合わせされ、そして類似の直径の穴付きの環状体(好ましくは中空円筒形状)を有する。細片および矩形などの電極形状を環状体の代替物として使用することができるが、環状体の形状30/34は、電極表面の一部分がスラリーと電気的に接触し、それにより更に信頼性のある伝導度レベルの読みを与えるために好ましい。加えて、穴(周囲の表面に対して突出した表面がない)と位置の合う環状形状によれば、スラリー材料は、いかなる突出した電極表面に対しても蓄積しないようにされる。
【0039】
このように、硬化型スラリーをスプレー塗布するための例示の方法は、ある長さのホース14により搬送されるセメント質スラリーを基材(図示せず)上にスプレー塗布するノズルスプレー・オリフィス22まで硬化型セメント質スラリーを搬送し;ノズルスプレー・オリフィス22から距離「D」において硬化促進剤16をスラリーの中に導入し;そしてセンサー20を使用して、上記搬送されたスラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルに対応するスラリーの物理的性質の変化を検出することにより、ノズルスプレー・オリフィスから「D」未満の距離において上記スラリー中の硬化促進剤のレベルをモニター22することを含んでなる。
【0040】
本発明の好ましい器具および方法は、硬化促進剤注入地点16とノズルスプレー・オリフィス22の間に位置するホース中の地点においてセンサー20をホース14中で使用することを含んでなる。好ましくは、センサー20は、相互にある距離を隔てられた第1の伝導度電極対30を含んでなる。これらの電極30は、電源32を電気的に接続するとスラリー内で電極の間の領域中で電圧場を生じるように作動する。第2の伝導度電極対34は、相互にある距離を隔てられ、そして上記第1の伝導度電極対30の間に配置される。この第2の電極対34は、電圧計38または他の検出器具をこの第2の電極対34に接続すると、第1の伝導度電極対30の間の電圧差を検出する作動する。
【0041】
更なる例示の態様においては、伝導度が予め決められた限界以下に低下するか、あるいはそれ以上に上昇したことを作業者に指示を与えるように、電圧計38は、警告灯および/またはアラームに接続され、そして硬化促進剤の注入を自動的にコントロールするように使用され得る。
【0042】
本発明の更なる例示の器具および方法においては、伝導度センサー電極30/34の近傍でスラリーの温度を測定するように作動する少なくとも1つの温度センサー36がホース14の領域中で使用され得る。図2に示すように、温度センサー36は、ホース14の穴内径と一致する穴付きの環状体も含んでなり得る。スラリーの電気伝導度は温度により
影響を受けるので、温度センサー36を使用することによって、温度の偏りを考慮に入れ、伝導度の読みの精度を更に高めることが可能となる。
【0043】
伝導度電極30および34ならびに温度センサー36は、好ましくはポリエチレン、ポリアミドまたは他の非電導性材料などの非電導性材料でできたスリーブ筐体内に好ましくは搭載され、埋め込まれる。このように、電極30/34および温度センサー36は、ホース14により搬送されるスラリーにより生じる潜在的な損傷から保護される。上述のように、電極の穴内径およびこれらを搭載するスリーブ筐体は、ねじ、クランプまたは他の既知の機構によりスリーブ筐体に取り付け可能なホース14のそれと好ましくは同一である。勿論、スリーブ筐体の周囲外直径は、スラリーの内圧ならびに落下による外部損傷に抵抗する構造完全性を付与するのに必要なだけホースの外径よりも大きくともよい。
【0044】
作業者は、スプレー塗布し、そして鋼梁あるいはパネルなどの基材表面上で硬化する場合に、スラリーが所望の歩留まりレベルに達するまでスプレー器具を運転する。GRACEのMONOKOTE製品などの商用防火性スラリーの歩留まり測定は、通常、ノズルスプレー・オリフィスから出てくるスラリーの既知の体積のカップ重量を測定することにより行われる。ホースの中に導入される(16により示される促進剤注入器ポート経由で)硬化促進剤の所定のレベルに対して所望のカップ重量歩留まり(すなわち密度)がノズルで得られる場合には、電圧計38により求められるスラリー伝導度は所望の歩留まりと相関付け可能である。
【0045】
作業現場におけるスラリーの実際の塗布時、混合機作業者が促進剤ポンプ18に対する調整を行うことができるように、混合機10(図1)の次に計器38(図2に示すように)を配置することが好ましい。
【0046】
更なる例示の態様においては、スプレーノズル22の作業者または混合機10の作業者にスラリー中のスラリー伝導度レベルと、したがって促進剤レベルの指示を与えるように、計測器具38を目視式および/または可聴式アラームに接続することができる。例えば、計器38が所望の歩留まり値(したがって、望ましい硬化促進剤レベル)に対応するスラリーの伝導度に手動で設定されている場合には、許容し得るあるいは許容し得ない工程条件が存在することを指示するのに、可視光、アルファニューメリック表示、可聴式アラームまたは振動式センサー(ページング装置などの)の形であり得る指示計が使用され得る。スラリーの伝導度が予め決められた限界以上に上昇するか、あるいはそれ以下に低下し、工程偏りが存在することを指示する場合には、硬化促進剤レベルをチェックすべきであるという指示が適切な人間に与えられる。スラリーの伝導度が予め決められた臨界的なレベル以上、あるいはそれ以下であり、修正されなければならない工程偏りが存在することを指示する場合には、改訂された指示が与えられる。
【0047】
本発明のなお更なる例示の態様においては、工程は、プログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)のラップトップコンピューターなどのコンピューター・プロセシング・ユニット(「CPU」)の使用により自動化可能である。例えば、計測器具38にフィードバックされるセンサー20情報に依って、スラリーの中に圧送18(注入ポート16経由で)される硬化促進剤の量が相関付けおよび自動調整可能であるように、計測器具38および促進剤ポンプ18は両方ともCPUまたはPLCに接続可能である。
【0048】
なお更に例示の態様においては、センサー20は、ホース16の中に注入される酸性硬化促進剤のレベルを検出するように作動するpHセンサーであり得る。超音波式、光学式および容量式センサーなどの他のセンサーが使用され得る。しかしながら、感度および堅牢性の理由により電気伝導度センサーの使用が最も好ましく、これらの理由の優先度の順でpHセンサーが次にくるものであった。
【0049】
前出の方法の説明から明白なように、本発明は、ノズルスプレー・オリフィス22まで硬化型スラリーを搬送するホース14、ノズルスプレー・オリフィス22から距離「D」において上記ホース14に沿って(あるいはノズルに、あるいはその近傍に)配置された硬化促進剤注入ポート16、およびノズルスプレー・オリフィス22から「D」未満の距離において搬送されたスラリー経路内に配置されたセンサー20を含んでなり、センサー20が搬送されたスラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルに相関する指示を与えるように作動する、硬化型組成物をスプレー塗布する装置を提供する。
【0050】
スプレー塗布された硬化型スラリー組成物の一貫して高い歩留まりを得るための本発明の好ましい器具は、ホースそれ自身、更に好ましくはポリエチレン、ポリアミドまたは他の非電導性材料などの非電導性材料でできた剛性格納スリーブであることができる格納スリーブ(14)内に収められ、図2の断面透視図に示すように各々環状体を有する複数の伝導度電極30および34を含んでなる。前に説明したように、好ましい配置は、電極30を電圧源32’に接続した場合に、電場を生じるための第1の電極対30と、第2の電極対34を電圧計38または他の測定器具に接続した場合に、スラリー中の電圧差を測定するための、第1の電極対30の間で、かつスラリー経路に沿って配置された第2の電極対34を有することである。
【0051】
前出の例は例示の目的のみに提供され、そして本発明の範囲を限定するように意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】硬化型スラリー組成物用の本発明の例示のスプレー塗布の概略図である。
【図2】ホースで搬送された硬化型スラリー組成物の中に導入された硬化促進剤のレベルを検出するための本発明の例示のセンサーの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある長さのホースによりノズルスプレー・オリフィスまで硬化型スラリーを搬送し;
前記ノズルスプレー・オリフィスから距離「D」において前記搬送されたスラリーの中に硬化促進剤を導入し;そして
センサーを使用して、前記スラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルに対応する前記スラリーの物理的性質の変化を検出することにより、前記ノズルスプレー・オリフィスから「D」未満の距離において前記スラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルをモニターする
ことを含んでなる硬化型スラリーをスプレー塗布するための方法。
【請求項2】
前記スラリーが焼き石膏、スタッコ、石膏、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ポゾランセメント、ガナイトまたはこれらの混合物を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラリーが石膏を含んでなる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スラリーが骨材を更に含んでなる請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化促進剤が水溶性塩であり、そして前記センサーが前記ノズルスプレー・オリフィスから「D」未満の前記距離において前記スラリーの伝導度の指示を与えるように作動する伝導度センサーである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記距離「D」が前記ノズルスプレー・オリフィスから5フィート以上で、そして100フィート以下である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化促進剤が硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸カリウム、硫酸および酢酸からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化促進剤が硫酸アルミニウムであり;前記スラリーが石膏、ポルトランドセメントまたはこれらの混合物であり;そして前記スラリーが前記硬化促進剤との接触時に前記スラリー内に泡を生成させる塩基性材料を更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記センサーが電圧源を第1の電極対と接続した場合、前記スラリーの一部分内で電圧場を生じるように作動する第1の電極対と、電圧計を第2の電極対と接続した場合、前記第1の電極対の電圧差を検出するように作動する第2の電極対を含んでなり、前記スラリーと物理的接触する電極組み立て体を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電極が各々ホースまたはノズル内径と位置合わせされた穴付きの環状体を有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記環状電極が前記環状電極を相互に電気的に絶縁するように作動するスリーブ筐体内に搭載される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記センサーに近接する領域中のスラリーの温度を測定するように作動する少なくとも1つの温度センサーを更に含んでなる請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記センサーがスラリーの電気伝導度と相関する指示を与えるように作動する複数の電極を含んでなる伝導度センサーであり、前記電極は計器に接続され;前記方法がスラリー
の電気伝導度と相関する前記指示に応答して前記促進剤を前記スラリーの中に導入した後の地点において前記スラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルを調整することを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記指示が可視光、アルファニューメリック表示、可聴式アラーム、振動式装置またはこれらの組み合わせである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
石膏、ポルトランドセメントまたはこれらの混合物を含み且つ、少なくとも1つの骨材と塩基性材料を含んでなる硬化型セメント質スラリーを、ある長さのホースにより、前記セメント質スラリーを基材上にスプレー塗布するためのノズルスプレー・オリフィスまで搬送し;
前記スラリー内に含有される前記塩基性材料と反応し、そして前記ノズルスプレー・オリフィスから基材上にスプレー塗布する場合これらの歩留まりを増大させるように作動する、硬化促進剤を前記ノズルスプレー・オリフィスから距離「D」において前記搬送されたスラリーの中に導入し;そして
電圧源を前記第1の電極対と接続した場合に、前記スラリーの一部分内で電圧場を生じるように作動する第1の電極対と、電圧計を前記第2の電極対と接続した場合、前記第1の電極対の電圧差を検出するように作動する第2の電極対を含んでなり、前記スラリーと物理的接触した電極組み立て体を含んでなるセンサーを使用して、前記スラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルに対応する前記スラリーの物理的性質の変化を検出することにより、前記ノズルスプレー・オリフィスから「D」未満の距離において前記スラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルをモニターすることを含んでなる硬化型スラリーをスプレー塗布するための方法。
【請求項16】
前記電圧計により与えられる指示に応答して前記スラリーの中に導入された硬化促進剤のレベルを調整することを更に含んでなる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ノズルスプレー・オリフィスまで硬化型スラリーを搬送するためのホース、前記ノズルスプレー・オリフィスから距離「D」において前記ホースにそって配置された硬化促進剤注入ポート、および前記ノズルスプレー・オリフィスから「D」未満の距離において前記ホースにそって配置されたセンサーを含んでなり、前記センサーがスラリーの中に導入される硬化促進剤のレベルと相関する指示を与えるように作動するスプレー塗布器具。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−529763(P2008−529763A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554111(P2007−554111)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/001737
【国際公開番号】WO2006/083557
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】