高温超伝導体積層ワイヤ用の2面接合部
ワイヤの機械的な完全性を維持する一方で、2本の積層ワイヤを共に接合する2面ジョイントが開示されている。2面ジョイントは、テーパ端部を有した2本の積層HTSワイヤを接合することができ、底部ストラップおよび頂部ストラップを備えている。一態様では、積層した繋いだ超伝導体ワイヤは、超伝導体ジョイントを備えており、それは、第1および第2超伝導体ワイヤを備えている。各ワイヤは、ラミネート層と、該ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層と、該空隙層上のラミネート層とを備えている。各ワイヤは、第1積層ワイヤの第2ラミネート層と第2積層ワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続する第1HTSストラップと、第1ラミネート層に近接したバッキング・ストラップを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、高温超伝導体の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
高温超伝導体(HTS)材料は、極めて低い損失で非常に大量の電流を運ぶ手段を提供する。HTS材料は、臨界温度以下に冷やされたときに、直流の電流に対する全抵抗を失い、交流の流れに対するほぼ全抵抗を失う。これらの材料を使用するHTSワイヤ(用語「ワイヤ」は、テープ状の導体を含む様々な導体に対してここでは使用されている)の開発は、高効率で、コンパクトで、且つ環境にやさしい電気機器の新しい世代を約束する。それは、電力グリッド、輸送、材料処理、および他の産業の革新のための可能性を有している。しかしながら、商業ベースに乗った製品には、厳格な工業要求があり、それは、商用用途での技術の実施を複雑にしてきた。
【0003】
現在開発中の第2世代のHTSワイヤ(コーティングを施した導体)技術では、HTS材料は、一般に、多結晶の希土類/アルカリ土類/酸化銅(例えばイットリウム・バリウム酸化銅(YBCO))である。HTS材料が現在有する能力は、その結晶配列または構造と強い関係がある。周辺の結晶の超伝導体粒の配列異常によって形成された結晶粒界は、超伝導流の流れに対する障害を形成するものとして知られているが、この障害は、配列または構造の程度の増加に伴って減少する。したがって、その材料を商業ベースに乗った製品(例えば、HTSワイヤ)にするために、超伝導材料は、比較的長距離に亘って高い結晶配列または構造の程度を維持しなければならない。さもなければ、超伝導電流容量(臨界電流密度)は制限されてしまう。
【0004】
典型的な第2世代のHTSワイヤ100の模式図が図1に示される。ワイヤは、基板110と、緩衝層120(複数の緩衝層を備えることができる)と、超伝導体層130と、空隙またはキャップ層140とを備えており、下で述べるように製作される。この図およびすべての後の図では、寸法は実測するためのものではないことを注記しておく。超伝導体材料は、柔軟なテープ形状の基板110および緩衝層120の上に材料の薄層130をエピタキシャル成長させることにより、大きい領域に亘って高度の結晶配列または構造で製作されることができる。それは、最も上の層の表面がその表面で高度の結晶構造を有するように製作される。結晶の超伝導体材料がこの表面でエピタキシャル成長される場合、その結晶配列は、基板の構造と一致するように成長する。換言すれば、基板構造は、結晶の超伝導体材料のエピタキシャル成長のためのテンプレートを提供する。さらに、基板は、超伝導体層に構造的な完全性を与える。
【0005】
基板110および/または緩衝層120は、高臨界電流密度などの優れた超伝導特性を持ったエピタキシャル超伝導体層130を得るテンプレートを提供するように構造化されることができる。ニッケル、銅、銀、鉄、銀合金、ニッケル合金、鉄合金、ステンレス鋼合金、および銅合金などの材料が、特に基板において使用されることができる。基板110は、基板の圧延加工などを含む塑性変形加工および再結晶(アニール)を使用して構造化されることができる。そのような処理の一例は、圧延支援2軸構造化基板(RABiTS)処理である。この場合、大量の金属が、塑性変形加工およびアニールによって経済的に加工され、高度の構造を実現することができる。
【0006】
1つ以上の緩衝層120は、超伝導体層130を成長させるための適切な結晶学的なテンプレートを備えた基板110の表面上に堆積させるかまたは成長させることができる。さらに、緩衝層120は、超伝導体材料130の結晶格子中への基板110からの原子の
、または、基板材料中の酸素の、長時間に亘る拡散を防止する追加の利点を提供することができる。この拡散すなわち「汚染(poisoning)」は、結晶配列を分裂させ、そのため、超伝導体材料の電気的性質を低下させる。さらに、緩衝層120は、基板110と超伝導体層130との間の付着を強めることがある。さらに、緩衝層120は、超伝導体材料のそれによく一致する熱膨脹係数を有することがある。この技術の商用用途における実施のために、ワイヤが応力に晒される場合、それが基板から超伝導体層の形成間剥離を防止するのを助けることができるので、この特徴は望ましい。
【0007】
代わりに、ハステロイ(HASTELLOY)(ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金)などの非構造化基板110を使用することができ、イオンビーム支援堆積(IBAD)または傾斜基板堆積(ISD)などによって堆積された緩衝層120を構造化することができる。追加の緩衝層120が、HTS層130のエピタキシャル堆積に対する最終的なテンプレートを提供するために、IBADまたはISD層に随意にエピタキシャル堆積されることが可能である。
【0008】
テンプレートとして基板110および1つ以上の緩衝層120の適切な組合せを使用することによって、超伝導体層130は、優れた結晶配列または構造で、テンプレート表面への付着も良好であり、基板からの原子による汚染に対して十分な障壁を持って、エピタキシャル成長することができる。超伝導体層130は、様々な方法のうちのいずれかによって堆積されることができ、有機金属堆積(MOD)処理、有機金属化学堆積法(MOCVD)、パルスレーザ堆積(PLD)、熱または電子ビーム堆積、または他の適切な方法を含んでいる。最後に、キャップ層140が、多層アセンブリに追加されることができ、それは、上からの超伝導体層の汚染を防止するのを助ける。キャップ層140は、例えば、銀または銀−金合金であることができ、例えばスパッタリングによって超伝導体層130上に堆積されることができる。積層後にスリット形成が行なわれる場合、キャップ層は、さらに、例えばハンダ付けによってキャップ層に接合された銅またはステンレス鋼の層などの追加の積層金属の「スタビライザ」層を備えることが可能であり、空隙層を形成する。
【0009】
典型的な製作したままの多層HTSワイヤ100は、5%のタングステン合金を有したニッケル製の2軸構造化基板110と、Y2O3、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)およびCeO2を連続して堆積したエピタキシャル緩衝層120と、YBCOのエピタキシャル層130と、Agの空隙層140とを備えている。これらの層の典型的な厚さは次の通りである:約25〜75μmの基板、各々約75nmの緩衝層、約1μmのYBCO層、および約1〜3μmの空隙層。100mまでの長さのHTSワイヤ100が、上述したような技術を使用して製造されている。
【0010】
使用中に、HTSワイヤが曲げ歪みを許容することができることは望ましい。曲げは、その曲げの外側凸面上の引張歪みと、その曲げの内側凹面上の圧縮歪みとを誘引し、それによって、HTS層を、ワイヤが曲げられている方向に依存して引張または圧縮歪みに晒す。適度な大きさの圧縮応力は、HTS層の電流容量を実際に強めることができるが、一般には、アセンブリ全体を応力(特に、繰返し応力)に晒すことは、ワイヤを機械的損傷の危険に晒すことになる。例えば、HTS層中でクラックが形成され且つ伝播されることがあり、その機械的および電気的性質を低下させるか、または、異なる層が互いからまたは基板から剥離することがある。
【0011】
HTS層中の応力を低減する方法は、例えば、特許文献1および特許文献2において記述されている。例えば、基板と同様の厚さおよび機械的な特徴を持つように選択された銅ストリップは、インサートの上面に接合されることができる。全体的な構造の凡そ真ん中にHTS層を挟むことは、もしアセンブリが曲げられた場合、HTS層は、その曲げの外
側面でも内側面でもない。これらのアセンブリのうちの2つもまた、単一のHTSワイヤ・アセンブリを形成するためにそれぞれの銅ストリップに共に接合することができる。この場合、2つの基板は外方に面し、銅テープはアセンブリの真ん中にある。この場合、第2アセンブリの包含は、追加の電流容量を提供するが、HTS層への電気的な接触は、ワイヤを開いて結合するか、または、接触部分におけるインサートのうちの1つを部分的に除去することを必要とする。
【0012】
コーティングを施した導体HTSワイヤのさらなる問題点は、そのワイヤが使用されるときの環境汚染である。環境暴露は、HTS層の電気的な性能をゆっくりと低下させることがある。さらに、ワイヤに接触する液体窒素などの低温液体の存在下で、その液体は、ワイヤ内の穴に拡散することができ、そして、暖まることによってワイヤを破損させることがある「バルーン」を形成することがある。ワイヤの密閉は、HTS層の環境暴露またはワイヤへの液体の起寒剤の浸透のいずれかを防止するために望ましい。HTSアセンブリ用のシールは、例えば特許文献3に記述されている。
【0013】
コーティングを施した導体の手法は、強化されたテープの長尺製造が確立されるまでに近年非常に進んでいる。しかしながら、これらのテープの実用性は、機械的に強健で、厳しい幾何公差に従う低抵抗ジョイントを介して任意の必要な長さにそれらを作ることができるならば、大幅に増大されるであろう。
【0014】
HTSワイヤは、現場で互いに、終端に、およびリーダに接合されなければならない。同様に、生産量およびワイヤ品質は、工場での接合によって改善されることができ、それによって、ワイヤ価格を低減し、固有の生産限界を超えた長さのワイヤの出荷を可能にする。これらの接合部は、ワイヤと同様の要求を満たさなければならない。
【0015】
初期の接合部は、ラップジョイントであった。ラップジョイントは、2つの材料を重畳させることによって接合する処理である。このように、HTSワイヤの場合、2本のHTSワイヤは、設定距離に亘ってワイヤの端部を重畳させて、次に、ワイヤを共にハンダ付けすることにより接合されることができる。ラップジョイント法は、元のワイヤの厚さの約2.0〜2.2倍である接合部を生じさせる。
【0016】
ラップ法は、第1世代のワイヤまたはテープには適しているが、第2世代のテープ(絶縁層がYBCO膜と基板との間にある)は、接合される親ワイヤの元の配向を保持するために、また、接合部抵抗を最小限にするために、各端部でラップジョイントによる直接ストラップまたは導電性ブリッジの使用を必要とする。同時係属中の米国特許出願第11/880,586号明細書は、導電性ブリッジ接合部をより詳細に開示しており、その開示が参照によってここにその全体を援用される。しかしながら、導電性ブリッジ構造は、単純なラップジョイントを作るのに対して2倍の時間が掛かる。なぜならば、本質的に、2つのラップジョイントを作らなければならないからである(例えば、ストラップの各端部に対して1つ。接合部抵抗を2倍にし、1つの接合部当たりワイヤに2つの塊を取り込む)。第1世代のワイヤでのように、導電性ブリッジが親と同じ材料ならば、接合部は、典型的には親ワイヤの厚さの2.0〜2.2倍になる。より剛性のある厚い領域が配線におけるよりも大きい張力を必要とし、曲げにおける接合部分離の可能性を増大させるので、また、ケーブル・ピッチからの局所的な偏差を最小限にするために可及的に短い長さであるので、接合部は、より良い配線のために親と厚さおよび機械的性質で同様であるべきである。これらの問題は、ケーブル中の適切なワイヤ安定化のためにより厚い積層ストリップが必要になることから悪化する。したがって、物理的且つ機械的にほぼ対称(2面)であり、機械的に強健であるが、規格に適合した、1つの接合部当たり1つのジョイントのみを必要とする接合部の必要性がある一方で、結合されたワイヤの各々の機械的および電気的性質を依然として維持する接合部の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,745,059号明細書
【特許文献2】米国特許第6,828,507号明細書
【特許文献3】米国特許第6,444,917号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これらの考察の観点から、1つ以上の実施形態は、次の接合技術に関する。それは、ダブルラップ導電性ブリッジ接合部をなすために使用される技術よりも2倍速く、その軸について対称な機械的応答を持ったワイヤを提供し、接合部剛性を低減する一方で接合部の強健さを改善する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
2面で、低価格で、低抵抗で、機械的に強健で、薄く、幾何学的に均一な、厚い超伝導体ワイヤ用のジョイントが記述されている。
ここに開示された実施形態は、HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントに関する。該2面ジョイントは、第1積層HTSワイヤ(第1積層ワイヤの幅に亘るテーパを持つテーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層と、該空隙層上の第2ラミネート層とを備える)と、第2積層HTSワイヤ(第2積層ワイヤの幅に亘るテーパを持つテーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該緩衝層上の空隙層と、該空隙層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤのテーパ端部は第2積層HTSワイヤのテーパ端部に隣接し且つ結合している)と、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている第1HTSストラップと、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接したバッキング・ストラップとを備えている。
【0020】
第1HTSストラップは、空隙層と、該空隙層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の緩衝層と、該緩衝層上の基板層とを備えることができ、該空隙層は、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに隣接するとともに電気的に接続されている。加えて、第1HTSストラップは、その基板層上のラミネート層、および/または、導電性の空隙層と第1および第2HTSワイヤとの間に介在する第2ラミネート層を備えることができる。
【0021】
バッキング・ストラップは、第1HTSストラップの厚さの約50%〜約150%または約90%〜約105%にあるように選択されてもよく、アルミニウム、亜鉛、銅、銀、ニッケル、鉄、クロム、鉛、銀、またはモリブデンを含有する金属または合金を含むことができる。加えて、バッキング・ストラップは、第2HTSストラップを備えてもよい。第2HTSストラップは、基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層とを備えることができ、該空隙層は、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに隣接するとともに電気的に接続されている。第2HTSストラップは、その基板層に近接したラミネート層、および/または、導電性の空隙層と第1および第2HTSワイヤとの間に介在する第2ラミネート層をさらに備えることができる。加えて、バッキング・ストラップは、バッキング・ストラップにおいて0.5%の引張歪みを与える第1負荷が、第1HTSストラップに0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第2負荷の30%〜150%の範囲内になるように選択されることができる。さらに、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラッ
プは、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップの組合せにおいて0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第1負荷が、第1積層ワイヤまたは第2積層HTSワイヤのいずれかにおいて0.5%の歪みを与えるのに必要な第2負荷未満となるように選択されることができる。
【0022】
1つ以上の実施形態では、電気的な接続は、240℃未満の溶融温度を持った金属または合金を含むことができ、該金属または合金は、50μΩcm未満の常温抵抗を持つことができる。加えて、金属または合金は、Pb、Sn、Ag、Cu、またはInのうちのいずれかを含むことができる。
【0023】
1つ以上の実施形態では、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤの各々は、さらに、その第1ラミネート層とその基板層との間に介在する非積層HTSワイヤを備えている。該非積層HTSワイヤは、該第1ラミネート層上の第2空隙層と、該空隙層上の第2HTS膜層と、該第2HTS膜層上の第2緩衝層と、該第2緩衝層上の第2基板層とを備えている。非積層HTSワイヤの空隙層は第1ラミネート層に電気的に接続されている。加えて、第2HTSストラップも第1ラミネート層に電気的に接続されてよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤは、各々、約250μm以上、または、約300μm以上の厚さを有している。さらに、第1HTSストラップは、約250μm未満、または、約50μm〜約200μmの厚さを有することができる。幾つかの実施形態では、第1HTSストラップは、バッキング・ストラップの長さよりも約2%〜約70%長い、および/または、バッキング・ストラップの長さよりも約20%〜約50%長いことがある。
【0025】
幾つかの実施形態では、厚肉の積層ワイヤに対する第1テーパ端部の各々の角度は、約3度〜約50度の範囲である。さらに、テーパ端部の長さは、約0.4cm〜約10cmの範囲であることができる。HTSストラップは、約2cm〜26cm、または、約5cm〜26cmの長さを有することができる。バッキング・ストラップは、約6cm〜約16cm、または、約1.5cm〜25cmの長さを有することができる。
【0026】
1つ以上の実施形態では、各積層ワイヤの積層部は、真鍮、ステンレス鋼、もしくは銅からなる材料、または、亜鉛、鉛、銀、錫、ニッケル、鉄、およびアルミニウムを含有する合金から選択されることができる。
【0027】
1つ以上の実施形態では、ジョイントを介した抵抗は、77K〜293Kの温度範囲で3.0μΩ未満であることができる。
1つ以上の実施形態では、2面ジョイントを10cm以下の直径に曲げることによって、該ジョイントにおける物理的な欠陥が生じず、臨界電流が15%以上減少せず、接合部抵抗が5%以上増大しない。さらに、2面ジョイントは形成器上に螺旋状に巻かれ、形成器は、5cm以下の直径を有し、第1および第2厚肉積層ワイヤにおける1kg〜5kg未満の軸方向張力と、65mm以上のピッチとを有し、その結果、2面ジョイントと形成器との間の空隙は、1.5mm未満である。
【0028】
1つ以上の実施形態では、HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントは、第1積層HTSワイヤ(該第1積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える)と、第2積層HTSワイヤ(該第2積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤの角度を持ったテ
ーパ端部に隣接し且つ結合している)と、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている上部サポートと、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層近傍の下部サポートとを備えている。ジョイントの材料および寸法は、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤのHTS膜に中立軸を提供するように選択される。
【0029】
1つ以上の実施形態では、HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントは、第1積層HTSワイヤ(第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える)と、第2積層HTSワイヤ(第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤのテーパ端部に隣接し且つ結合している)と、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている第1HTSストラップと、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接したバッキング・ストラップとを備えている。ジョイントの材料および寸法は、ジョイントに亘り連続した機械的応力を提供するように選択される。
【0030】
別の態様は、5cm以下の直径を有した形成器と、複数のHTSワイヤとを備える、超伝導体ケーブルに関する。ここで開示されるように、実施形態によれば、少なくとも1つのワイヤは、1つ以上の2面ジョイントと、該2面ジョイントの各々と形成器との間の1つ以上の空隙とを有している。該空隙は、1.5mm未満である。超伝導体ケーブルは、約0.1kg〜約7kg(好ましくは、約5kg)の軸方向張力で、且つ、65mm以上のピッチで形成器に螺旋状に巻かれた複数のワイヤを有することができる。
【0031】
別の態様は、超電導ワイヤを巻く方法に関し、ここに開示される実施形態によれば、1つ以上の2面ジョイントを形成するために1つ以上のHTSワイヤを接合することと、螺旋状のパターンで形成器の周囲に1つ以上のHTSワイヤを巻くことと、2面ジョイントと形成器との間に空隙を形成することを含んでいる。空隙は、約1.5mm未満である。本方法の1つ以上の実施形態では、複数のワイヤは、約0.1kg〜約7kgの軸方向張力および65mm以上のピッチで形成器に螺旋状に巻かれる。 用語「HTSワイヤ」または「HTSテープ」は、電流を運ぶのに使用される多層構造を示すように意図されている。ワイヤまたはテープは、実質的に密閉されているか、または、環境から分離されていることが可能である。HTSワイヤまたはテープは、典型的には、基板と、1つ以上の緩衝層と、超伝導体層と、空隙層と、随意に、空隙層の一部と考えることができるスタビライザ層とを備えている。一般に、このHTSワイヤまたはテープでは、超伝導体層は、緩衝層によって金属基板から電気的に分離されることができる。しかしながら、導電性の緩衝層が使用される場合、超伝導体層は、金属基板に電気的に接続されることができる。代わりに、導電性の空隙層は、超伝導体層および基板の両方に接触することができ、これら2つの間の電気的な接触を提供することができる。
【0032】
用語「HTS膜」は、機械的な支持部またはシールに関係しないHTSワイヤまたはテープの層を示すように意図されている。典型的には、HTS膜は、1つ以上の緩衝層と、超伝導体層と、空隙層とを備えている。
【0033】
用語「密閉される」は、実質的に囲まれ、実質的に物理的に環境から分離されることを意味するように意図されている。用語「密閉される」は、通常の状況下の気体または液体による浸透に対する実質的な不浸透性を含むことが可能であるが、これに限定されない。
【0034】
ケーブル化したワイヤの典型的な動作圧は、最大2MPa(20bar)であるが、ワ
イヤは、典型的には最大3MPa(30bar)までの信頼性を試験される。
用語「Ic」は、超電導ワイヤの臨界電流を指し示している。臨界電流は、超伝導体が保持することができる最大電流である。超伝導体中の電流が臨界電流を超える場合、超電導ワイヤはその超伝導性を失う。
【0035】
用語「テーパ縁部」は、超電導ワイヤの幅に沿ったテーパを指し、ワイヤの幅は変化し、ワイヤの厚さはテーパに沿って一定のままである。
「欠陥」は、3cm未満の直径を持ったワイヤにおける局所的な曲げ(屈曲)である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】典型的なHTSワイヤの断面図。
【図2】本発明の1つ以上の実施形態にかかるテーパ端部を有した積層HTSワイヤの斜視図。
【図3】本発明の1つ以上の実施形態にかかる頂部ストラップおよび底部ストラップによって第2積層HTSワイヤに結合された第1積層HTSワイヤの断面図。
【図4】本発明の1つ以上の実施形態にかかる第1HTSストラップおよび底部ストラップによって第2積層HTSワイヤに結合された第1積層HTSワイヤの側断面図。
【図5】本発明の1つ以上の実施形態にかかる第1HTSストラップおよび第2HTSストラップによって第2積層HTSワイヤに結合された第1積層HTSワイヤの側断面図。
【図6】本発明の1つ以上の実施形態にかかる4プライの積層HTSワイヤの側断面図。
【図7】2本のHTSワイヤを製造し、本発明の1つ以上の実施形態にかかる2面ジョイントでそれらを結合する方法のフローチャート。
【図8a】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、HTSワイヤに対するLN2 PT−ケーブル敷設サイクル試験におけるIc保持を示すグラフ。
【図8b】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、HTSワイヤに対するLN2 PT−ケーブル敷設サイクルにおける正規化された接合部抵抗を示すグラフ。
【図9a】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、平均初期Icが77.2Aである、厚さ0.4mmの真鍮積層・ケーブル・ワイヤ接合部に対する保持Ic対形成器直径のグラフ。
【図9b】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、77Kで平均初期接合部抵抗が0.39μΩのときの、厚さ0.4mmの真鍮積層・ケーブル・ワイヤに対する最終および初期の接合部抵抗の比対形成器直径のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0037】
積層高温超伝導体(HTS)ワイヤは、任意の長さのワイヤを形成するためにジョイントで結合される。各HTSワイヤは、別のHTSワイヤに結合するテーパ縁部を有している。頂部ストラップおよび底部ストラップは、機械的安定性を提供し、その結果、ジョイントは、ワイヤ間の電気的接続およびワイヤのHTS層の破損なしに、湾曲または屈曲させることができる。頂部ストラップまたは底部ストラップのいずれかまたは両方がHTSストラップであることができる。さらに、ここに示される実施形態は、超電導ワイヤ用のケーブルまたはコイル巻線中の張力を低減し、コイルおよびケーブルへの塊衝撃を低減し、ジョイントを通じたHTSワイヤ配向を維持し、ジョイントを通じて緩和した機械的応答を提供する(欠陥および電流低下の可能性を低減する)。形状および材質選定の柔軟性は、異なるワイヤおよび用途に対して最適化されたバージョンを提供する。
【0038】
図2は、テーパ端部250を有した積層HTSワイヤ200を示している。積層HTSワイヤ200は、第1ラミネート層210と、基板層220と、緩衝層225と、超伝導体層230と、空隙層235と、第2ラミネート層240とを備えている。積層ワイヤ2
00は、第2積層HTSワイヤ(図示せず)の相補的なテーパ端部を結合するテーパ端部250を備えている。ここで使用されるそれらの用語「相補的な」または「結合する」は、2本のワイヤのテーパ縁部が、同様であるが反対の配向であることを示すように意図されている。その結果、テーパ縁部を互いに対向させて配置したとき、2つのテーパはHTSワイヤと実質的に同様の寸法(例えば、幅、厚さ)のジョイント領域を形成する。第1ラミネート層210および第2ラミネート層240は、真鍮、ステンレス鋼、または銅、あるいは、亜鉛、鉛、錫、ニッケル、鉄、またはアルミニウムを含んだ合金であることができ、ワイヤを強化することができる。緩衝層225および空隙層235は、図1を参照して議論する緩衝層120および空隙層140と実質的に同様である。基板層220は、図1に示され、上で議論したHTSワイヤにおける基板層110と同様であり、例えば、5%のタングステンを含むニッケル合金の2軸構造化基板であることができる。HTS膜層は、連続して堆積した緩衝層225(例えば、エピタキシャル堆積させたY2O3、YSZ、およびCeO2の層)と、HTS酸化物層230(例えば、YBCOのエピタキシャル層(超伝導体層230))と、空隙層235(例えば、図1に示され、上で議論したようなAgおよびハンダ)とを備えている。電流は、超伝導体層230によって運ばれる。
【0039】
テーパ端部250は、3度〜50度の範囲の様々な角度を持つことができる(好ましくは、約5〜約10度の間の角度範囲)。テーパ端部250は、約0.4cm〜約10cmの範囲の長さを有し、好ましくは、約1cm〜約5cmである(テーパ角およびワイヤ厚に依存する)。第2HTSワイヤ(図示せず)は、このHTSワイヤ200のテーパ端部250に結合する相補的なテーパ端部を有することができる。テーパ端部250の使用は、ジョイントの外形を減少させる。ワイヤの2つの部分が互いの上に積層される代わりに結合されるので、ワイヤの外形は、接合範囲で2倍にならない。代わりに、2つのサポート・ストラップの使用であっても、接合範囲でのワイヤの外形厚さは、元のワイヤの外形厚さの2倍未満であり、好ましくは1.6倍未満の厚さである。
【0040】
積層HTSワイヤ200は、厚肉積層HTSワイヤであることができ、ラミネート層の厚さの増大から生じる追加の厚さを伴う。厚肉積層HTSワイヤは、少なくとも250μm、好ましくは300μm超であり、例えば、360μm〜440μmまたは550μm〜650μmの間の厚さを有したワイヤである。薄い積層HTSは、250μm未満の厚さを持ったワイヤであり、好ましくは、約50μm〜約200μmの間である。厚肉積層ワイヤは、例えば電流制限ワイヤとして使用されることができる。厚肉積層ワイヤは、(1)電気的および熱的安定性の増大、(2)より大きい熱容量による故障電流状況における温度上昇の低減、(3)バックリングを生じさせる軸方向圧縮歪みに対する抵抗の増大、(4)軸方向引張荷重許容範囲および応力許容範囲の増大、(5)衝撃または表面接触劣化に対する抵抗の増大、に対して望ましいものである。
【0041】
より厚肉積層材は、強化した強健さを持ったHTSワイヤを提供し、それは、ケーブル敷設の用途において重要である。ワイヤは、撚り線および使用中に複数のサイクルの複雑な捩れ、曲げ、ならびに軸方向応力および歪みに晒される。積層の追加の被覆層の適用は、圧縮応力を加え、それは、ワイヤを局所的に変形させることができ、その結果、それが巻かれる円筒形に丸められたケーブル形成器の表面上の任意の凹凸に馴染む。
【0042】
さらに、より厚いテープは、曲げられたケーブルの内側での典型的な条件である、軸方向の圧縮応力/歪み状態におけるバックリングに対する遥かに大きい抵抗を示す。しかしながら、ワイヤおよび接合部の厚さが増大すると、それらの曲げ剛性が厚さの3乗で増大し、積層の焼戻しがアニール状態まで低減されることができなければ、より厚いワイヤおよび接合部は、ケーブル敷設することが急速に困難になる。
【0043】
さらに、厚肉積層・ケーブルは、実質的な性能劣化なしに、使用中に複数回曲げたり引っ張ったりされることができるので、それは、ケーブル化したHTSワイヤを応力および歪みに晒すべく、より強健である。HTSワイヤが曲げ引きされる場合、曲げられたケーブルの外側および内側のワイヤ部分は、巻きに加えて、軸方向の引張および圧縮歪みを受ける。さらに、一旦ケーブルが作られると、このケーブルは、約20気圧までの圧力で液体窒素により冷却されることができ、HTSワイヤを低温および高圧に晒す。ケーブルが冷却後に加熱されると、液体窒素は、沸騰して無くなり、これ以上ケーブルおよび付随するHTSワイヤを冷却することがない。このように、HTSワイヤは、典型的なケーブル寿命の間、幾度となく熱的且つ圧力的循環を繰り返す(つまり、冷却および加熱段階)。
【0044】
電流制限ケーブルの用途では、積層ストリップは、ヒートシンクとしても機能する。したがって、より厚い材料のそれに比例して高くなる熱容量は、障害中のワイヤにおける温度上昇を同様に減少させ、それによって、ワイヤの電流制限特性を改善し、障害によってもたらされる温度上昇で液体窒素が沸騰する可能性を低減させる。
【0045】
図3は、第2テーパ端部積層HTSワイヤ300に結合された第1テーパ端部積層HTSワイヤ200を示している(第1積層HTSワイヤ200と同様に、第1ラミネート層310と、基板層320と、緩衝層325と、超伝導体層330と、空隙層335と、第2ラミネート層340とを有している)。第2積層HTSワイヤ300のテーパ端部は、先端350を有し、結合されたジョイントは、第2積層HTSワイヤ300の先端350から第1積層HTSワイヤ200の先端365(仮想線で示されている)に延びる長さ360を有している。ジョイント360の長さは、典型的には、約1cm〜約6cmの範囲である。
【0046】
2本のワイヤは、頂部ストラップ370および底部ストラップ380によって互いに保持されることができ、ここでは「バッキング・ストラップ」と呼ばれている。テーパ端部を持った積層HTSワイヤと頂部および底部ストラップの使用は、個々のワイヤの厚さ2倍未満(好ましくは、その厚さの1.6倍未満)であるジョイントを生じさせる。頂部ストラップ370は、第1積層HTSワイヤ200および第2積層HTSワイヤ300の第2ラミネート層に電気的に接続されてよい。底部ストラップ380は、第1積層HTSワイヤ200および第2積層HTSワイヤ300の第1ラミネート層210および310と電気的に接続されてよい。ハンダ層372が、電気的接続または連絡として使用されることも可能である。ハンダは、2本のHTSワイヤのテーパ面を接合するために使用されることも可能である。さらに、ジョイントは、頂部および底部ストラップの端部に、低抵抗ハンダの縁部シール372を備えている。頂部および底部ストラップ370および380の各々は、導電性金属(例えば、アルミニウム、真鍮、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、鉄合金、またはそれらの混合物)からなることができる。さらに、頂部および底部ストラップ370および380の各々は、下で詳細に議論するように、HTSワイヤ・ストラップであることができる。
【0047】
作動中、電流は第1超伝導体層230から流れ、空隙層235を通じて第1積層HTSワイヤ200のラミネート層240へ流れ、ハンダ374を通じて頂部ストラップ370に流れ、そして、ハンダ374を通じて第2積層HTSワイヤ300のラミネート層340に流れ戻り、そして、空隙層335を通じて第2超伝導体層330に流れる。加えて、電流の一部は、第1積層HTSワイヤの超伝導体層230から第2積層ワイヤの超伝導体層330に直接流れることが可能である。対照的に、基板層220および320と緩衝層225および235とは、比較的高い電気抵抗を有しており、絶縁性であることが可能である。したがって、ワイヤ210および310の基板側と接触する底部ストラップ380は、不十分に抵抗性である場合があり、電流は、超伝導層230から緩衝層225および基板層220を通じて底部ジョイント380および第2ワイヤ300に流れないであろう
。
【0048】
この種類の薄型2面ジョイントは、非対称HTSワイヤにとって特に有用であり、ワイヤの片側面が、その反対側よりも遥かに低い電気抵抗を有している。2つのそのようなワイヤを頂部ストラップ370に接合すること、例えば、図3に示すように、電流が2本のワイヤ200および300の各々の低抵抗側と頂部ストラップ370とを通じて流れることを可能にし、ワイヤの全体的な対称性も維持し、その結果、基板220および320は、一般に、ジョイントの両側のワイヤの同じ側に残るであろう。対照的に、2本のワイヤ間の単純なラップジョイントでは、基板がジョイントの一側でワイヤの反対側になってしまう。また、2本のワイヤ間の突合せジョイントは、高い抵抗および低い機械的安定性を呈する。
【0049】
頂部および底部ストラップのさらなる態様は、ジョイントが構造的対称性を有しているということである。積層HTSワイヤの上方および下方の両方のジョイントの対称性は、巻きおよびケーブル敷設作業を改善し、ジョイントの機械的強度および安定性を高める。頂部ストラップ370および底部ストラップ380は、同じ長さまたは異なる長さを有することが可能である。典型的には、頂部ストラップ370および底部ストラップ380は、約1.5インチ〜約30インチの範囲の長さを有している。頂部ストラップ370は、底部ストラップ380よりも長くすることができる。例えば、頂部ストラップの長さは、底部ストラップの長さよりも約2%〜約70%長くすることができ、好ましくは、底部ストラップの長さよりも約20%〜約50%長くすることができる。例えば、頂部ストラップ370は、約6cm〜約24cmの範囲であることができる一方で、底部ストラップ380は、約6cm〜約16cmの範囲であることができる。典型的な長さ組合せは、下記のテーブル1やテーブル2およびテーブル3に列挙されている。
【0050】
【表1】
【0051】
頂部および底部ストラップの各々は、約250μm未満の厚さを有し、好ましくは、約30μm〜約200μmである。底部ストラップは、頂部ストラップの厚さの約50%〜約150%の間で選択されることができる。さらに、頂部ストラップおよび底部ストラップは、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤの幅の約90%〜約105%の間で選択されることが可能である。ジョイントまたは接合部を通じた標準状態の抵抗は、長さの増大によって減少するが、長さが増大した場合、対応する剛性の増大がある。
【0052】
ジョイント自体は比較的長く、長い電気的経路(つまり、大きい接触領域)を提供し、
それに亘って、電流が、第1積層HTSワイヤ200から頂部ストラップ370に、そして、第2積層HTSワイヤ300に送られ、したがって、接合部抵抗を低減する。ジョイントの長さの限定因子は、テーパ縁部の角度である。例えば、ジョイント360は、1.5cm〜約40cmの範囲の長さを有することが可能である。この場合、ジョイントは、単一のHTSワイヤほどの導電性を有しないことがあるが、ジョイントの電気抵抗は、結合されたワイヤが通常の動作電流を流すことを可能にする程度に、低く作られることが可能である。
【0053】
上述のように、低抵抗ハンダ374は、頂部ストラップ370と第2ラミネート層240および340との間の、および、底部ストラップ380と第1ラミネート層210および310との間の結合または電気的接続を提供する。幾つかの実施形態では、電気的接続は、240℃未満の溶融温度および/または50μΩcm未満の常温抵抗を持った金属または合金であることが可能である。例えば、電気的接続は、Pb、Sn、Ag、Cu、In、Sb、Bi、As、またはCdのうちのいずれか1つの金属またはそれらのうちのいずれか1つを含んだ合金であることが可能である。幾つかの実施形態では、ハンダは、インジウム、Pb−Sn、またはPb−Sn:Agであることが可能である。ハンダ374の湿潤は、機械的摩耗を誘引する表面の活性化またはプラズマ・エッチングなどの表面処理によって、そのままであるいは溶融に先立って適用される化学的フラックスと共に、強められることが可能である。ストラップからワイヤまでの4つの遷移領域は、ストラップの端部での出っ張りの頂部からワイヤへおよびそのワイヤに沿ってハンダ縁部シールまたはハンダ「傾斜(ramp)」372を形成することによって随意に処理されることができる。これは、環境端部を実質的に密閉し、また、ワイヤが被る応力および歪みを低減する。それは、幾つかの状況では、さもなければ、超伝導体層およびその臨界電流の欠陥、層間剥離、および/または劣化を生じさせることがある。しかしながら、より詳しく下で議論するように、或る材料および構造の使用は、ジョイントにおける機械的応力を低減し、それによって、幾つかの用途でハンダ縁部シールを提供する必要性を排除する。
【0054】
しかしながら、図3に示されるようなハンダ「傾斜」372がすべての実施形態に含まれる必要はない。例えば、ストラップ370および380の端部が、その代りに、任意形状のハンダ・ビードで密閉されることができる。あるいは、例えば、縁部シール372を使用してストラップ370および380の端部を密閉する必要はまったくないが、むしろ充填材の存在が端部を密閉するために使用されることができる。縁部シールが電流を運ぶのに必要ではないので、追加の材料が、ストラップ370および380の端部への充填材の付着を強めるために使用されることができる。
【0055】
図4は、頂部ストラップが第1HTSストラップ400で或る実施形態を示している。HTSストラップ400は、随意のラミネート層410と、空隙層415と、超伝導体層420と、緩衝層430と、基板層435と、随意の第2ラミネート層440とを備えることができる。1つ以上の実施形態では、HTSストラップ400は、HTSワイヤ200および300よりも薄い。例えば、HTSストラップ400は、約250μmより少なくなることができ、好ましくは、約50μm〜約200μmの間である。超伝導体層420は、該超伝導体層420が空隙層415およびハンダ374を介して第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤの超伝導体層230および330と空隙層415を通じて電気的に接続するように配置される。したがって、HTSストラップ400の基板430は、HTSワイヤ200および300から離隔配置され、その間に、空隙層415と、超伝導層420と、緩衝層430とが配置される。HTSストラップ400は、第1積層HTSワイヤ200および第2積層HTSワイヤ300と同じまたは同様の材料からなることができる。好ましくは、HTSストラップ400は、高強度基板(例えば、ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金「ハステロイ」、または、アメリカン・スーパーコンダクター社(米国マサチューセッツ州ディベ
ンス)によって製造されるサイド積層HTSテープ(PN 8600)当たりの25μm316Lステンレス鋼)上のHTS膜を含んでいる。さらに、HTSストラップ400は、イオンビーム支援堆積(IBAD)でコーティングを施した導体HTSストラップであることができる。さらに、HTSストラップ400は、スーパーパワー社(米国ニューヨーク州スケネクタディ)によって製造されるHTSワイヤの部分であることができる。HTSストラップ400は、頂部ストラップ370と同様の長さおよび幅を有することができる。
【0056】
HTSストラップ400は、頂部ストラップが第2ラミネート層に取り付けられた方法と同様に、ハンダ・ストリップ374によって第1および第2積層ワイヤの第2積層240および340にハンダ付けされることができる。さらに、HTSストラップ400は、ハンダ傾斜372を有することができる。
【0057】
HTSストラップ400を備えたジョイントの抵抗は、平坦な金属ストラップ(図3)を備えたジョイントの抵抗よりも低い。HTSストラップ400の使用は、ジョイントを通じた抵抗を77K〜293Kの温度範囲で3.0μΩ未満に低減することができる。
【0058】
HTSストラップ400は、1つ以上の積層ストリップ410および440を備えることができる。第1積層ストリップ440は、基板435上にあることが可能である。第2積層ストリップ410は、空隙層415と、第1および第2積層HTSワイヤ200および300の第2ラミネート層240および340との間に配置されることが可能である。積層ストリップまたは層410,440は、真鍮、ステンレス鋼、銅、または、亜鉛、鉛、銀、錫、ニッケル、鉄、もしくはアルミニウムを含んだ合金からなることが可能であり、HTSストラップ400に追加の機械的強度を与えるために加えられることがある。
【0059】
HTSストラップが先に積層されたワイヤから構築される場合、ワイヤの各々の片側面の積層ストリップは、例えば、エッチング、機械的な摩耗、または溶解(剥離)によって、除去されるか、または、各端部の意図した重畳領域から厚さを低減されることが可能である。積層ストリップは、ジョイントの長さに亘って望ましいものよりも幾らか高い抵抗を有することが可能であるので、積層ストリップの厚さを除去または低減することは、接合部抵抗を低減する。代わりに、積層ストリップは、ワイヤ中に残されるか、または、積層ストリップを有していないワイヤに加えられる。また、オーバーラップ・ジョイントは、積層ストリップがもたらす接合部抵抗による追加を補償するために、実際的な範囲内で延長されることが可能である。より高い抵抗ジョイントが望まれる場合(故障電流制限ワイヤ)、接合部間のステンレス鋼または他の高抵抗値金属の層は、接合部の全体的な抵抗を上昇させるのに使用される。また、例えば、電気的絶縁コーティングを施したおよび/または密閉されたHTSワイヤは、ここで記述した方法を使用して接合されることができる。ここで、絶縁は、接合作業の前にまたは作業中に重畳領域から除去される。絶縁は、接合部ジョイントが接合領域を電気的に絶縁および/または密閉した後で適用されるかまたは再適用されることが可能である。
【0060】
幾つかの実施形態では、底部ストラップ380は、図5に示されるようなHTSストラップ500であることもできる。底部HTSストラップ500は、頂部HTSストラップ400と同じ特性および構成を有することができ、随意の第1ラミネート層510と、空隙層515と、超伝導体層520と、緩衝層530と、基板層535と、随意の第2ラミネート層540とを備えている(底部HTSストラップ500の空隙層が、第1HTSワイヤ200および第2HTSワイヤ300の第1ラミネート層210および第2ラミネート層310に面することができ、その結果、底部HTSストラップ500のキャップ層が、第1および第2積層HTSワイヤ200および300のラミネート層210および310と電気的に接続すること以外は)。さらに、底部HTSストラップ500は、積層スト
リップが頂部HTSストラップ400に挿入されるのと同様の方法で、底部HTSストラップ500に挿入された積層ストリップを有するように構成されることができる。
【0061】
図6に示される実施形態では、第1積層HTSワイヤ200および第2積層HTSワイヤは、4プライのワイヤであり、基板層220および320に加えて、緩衝層225および325と、超伝導体層230および330と、空隙層235および335と、第1ラミネート層210および310上の第2空隙層600および605と、空隙層600および605上の第2超伝導体層610および615と、第2超伝導体層610および615上の第2緩衝層620および625と、第2緩衝層620および625上の第2基板層630および635とを備えている。この実施形態では、頂部ストラップおよび底部ストラップの両方が、HTSストラップ620および630である。第2HTSストラップ620は、電流の第2空隙層600から第2HTSストラップ620へ、そして第2空隙層605への流れを可能にすることができる。上述したように、HTSストラップ620および630の配向は、ストラップを通じた導電経路を提供するように選択される。さらに、図6に示すようなHTSストラップ620および630は、ラミネート層を含んでいない。しかしながら、上で示したように、HTSストラップ層の各々は、1つ以上のラミネート層を備えることができる。
【0062】
図2〜図6に示した実施形態では、材料および寸法は、積層ワイヤのHTS膜に中立軸を提供するように選択されることができる。例えば、頂部および底部ストラップの長さ、そして各々における積層量は、HTS膜上の機械的応力を低減するように調節されることができる。加えて、材料および寸法は、第1および第2ワイヤ間の機械的連続性を与えるように選択されることができる。
【0063】
1つ以上の実施形態では、頂部および底部ストラップの長さは、接合部と積層HTSワイヤとの間の機械的性質の徐々の遷移を提供するように選択される。それは、同様に、例えば、接合領域が30〜100mm曲げ直径範囲で曲げられる際に欠陥を低減する。欠陥は、ここでは、直径約3cm未満の接合またはワイヤ領域の或る部分の局所的な屈曲として定義されている(たとえその領域の全体的な曲げ直径が5cm以上であっても多くの場合、直径1cmよりもずっと小さい)。例えば、10cm以下(例えば5cmまたは3cm)の直径に曲げられる場合、ここで開示する2面ジョイントは、ジョイントにおける物理的な欠陥を生じさせず、臨界電流を15%以上減少させず、接合部抵抗を5%以上増大させない。
【0064】
さらに、前のジョイントを使用するHTSワイヤは、超伝導体ケーブル用途で使用される場合(超電導ワイヤがケーブルを形成するために形成器に巻きつけられる場合)、ケーブルと形成器との間に約2mmよりも大きい大空隙を生じさせる。これらの大空隙は、ジョイントまたは接合部における剛性によってもたらされる場合があり、超電導ワイヤを弱め、電流の流れに負の影響を与えることがある。しかしながら、ここで開示するような2面ジョイントを有したHTSワイヤの使用は、超伝導体ケーブル用途で、ワイヤと形成器との間の空隙のサイズを低減し、それによって、ワイヤの強度および電流性能を高めることができる。例えば、直径5cmの形成器上にここで開示するような1つ以上の以下2面ジョイントを有した1つ以上の超電導ワイヤを螺旋状に巻くことによって超伝導体ケーブルを形成する場合、ジョイント領域と形成器との間の空隙は、1.5mm未満である。巻線のパラメータは、約0.1kg〜7kgの間の第1および第2積層HTSワイヤにおける軸方向張力と、65mm以上のピッチとを含むことができる。
【0065】
さらに、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップ400は、超伝導層に中立軸を生成するための、ジョイントに亘る最適な負荷を実現するように選択されることができる。超伝導層に対する中立軸の生成は、それがケーブル敷設され歪められる場合(つ
まり、ケーブル敷設用途での通常動作中に)、超伝導層に対する応力および歪みを低減する。この通常動作中における超伝導層上の応力および歪みの低減は、超電導ワイヤを通じた最適な電流の流れを可能にする。例えば、バッキング・ストラップは、該バッキング・ストラップに約0.3%〜0.5%の引張歪みを与える負荷が、第1HTSストラップに0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第2負荷の30%〜150%の範囲内となるように、選択されることができる。このように、バックストラップに同じ歪みを取り込む負荷は、HTSストラップに同じ歪みを取り込む負荷とは異なることがある。加えて、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップは、バッキング・ストラップおよびHTSストラップの両方における歪みを取り込む負荷が、積層HTSワイヤ上で同じ負荷を与えるのに必要な負荷未満となるように、選択されることができる。例えば、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップの組合せにおける0.5%の引張歪みを与えるのに必要な負荷は、第1積層ワイヤまたは第2積層HTSワイヤのいずれかにおける0.5%の歪みを与えるのに必要な第2負荷未満となる。このように、第1HTSストラップおよびバッキング・ストラップは、それらがジョイントの剛性を実質的に増大させず、ジョイントの機械的連続性に実質的に影響しないように、選択される。
【0066】
幾つかの実施形態では、ストラップ端部から厚いテープ延長部までの遷移でのハンダ傾斜は、ジョイントを通じた機械的連続性を与えることができる。この傾斜は、再度ハンダを流し、厚いテープ表面に沿って約5〜10mm、ストラップの端部からビードを引くことによって形成される。この傾斜は、厚い結合領域から積層HTSワイヤまでの機械的性質の徐々の遷移を強める。
【0067】
図2〜図6に示した実施形態では、基板の裏面(HTSの反対側)は、充填材によって基板の湿潤を強めるために処理されることができる。例えば、2005年7月19日に出願され、「高温超伝導体ワイヤのための構造」と題する米国特許出願第11/193,262号明細書に記述されるように(それらの全内容は参照によって援用される)、幾つかの有用な湿潤層は、Ag、Cu、Ni、Ti、およびTiNを含んでおり、例えばスパッタリングを使用して基板上にコーティングを施すことができる。
【0068】
電流がジョイントを通過する際に積層ストリップを通じて流れる実施形態では、積層ストリップの表面は、ジョイントの抵抗、および/または、積層ストリップへの充填材またはハンダの付着を改善するために、積層に先立って修正されることができる。例えば、Cu積層ストリップについては、ハンダまたはSnなどの低融点金属の層は、より速い結合を可能にするためにストリップに適用されることができる。あるいは、例えば、ステンレス鋼積層ストリップについては、他の低融点合金を使用することができるが、Niストライキ層および純粋なSnの層を適用することができる。Niストライキ層は、ステンレス鋼へのSnの付着を改善するために使用される。Sn層は、超伝導体ワイヤへの後の積層中に、ハンダによるステンレス鋼の湿潤性を改善する。Sn層の厚さは、例えば、40μインチ〜200μインチ以上の範囲であることができる(例えば、50μインチ)。NiおよびSn層の適用前に、ステンレス鋼積層ストリップが、例えば、完全に活性化されたステンレス鋼フラックスの使用によって、または、砥石車で表面を擦ることによって、表面を電気的に、化学的に、または機械的に清掃することによって、作成される。この作成は、ステンレス鋼を活性化させ、表面からCr2O3酸化物を除去し、したがって、表面の抵抗を低減する。あるいは、例えば、真鍮ラミネート層ストリップについては、そのような厳格な活性化は必要ではない。真鍮は、例えば、中性洗剤で清掃され、Sn、Sn:Pb、またはCuでめっきされることができる。
【0069】
異なる実施形態では、異なる材料が、ジョイントおよび/またはワイヤにおける充填材および/またはハンダとしての使用に適している。例えば、下で述べるワイヤ例の多くは、インジウム製のハンダを使用するが、Sn:PbおよびSn−Pb−Agもまた適切で
ある場合がある。アセンブリへの積層ストリップを強化するために使用される充填材によっては、Sn:PbおよびSn−Pb−Agは、充填材と同様の融点および同様の機械的強度を有することが可能であり、したがって、応力による層間剥離を生じさせることがあるハンダと充填材との間の熱的および機械的な誤った組合せを減少させることが可能である。例えば、使用される充填材およびハンダの両方がSn:Pbである場合、誤った組合せは無視でき、したがって、特に強いジョイントをもたらす。このように、幾つかの実施形態では、ハンダ「傾斜」372は、超伝導体層の欠陥、層間剥離、および/または劣化を緩和するために、図3に示されるものと同じ構成を有する必要はない。
【0070】
より低い電気抵抗を持った接合部を形成することは有利であり、これが、電流が接合部を通過する間の、エネルギ損失、冷却コスト、および局所的な過熱を低減する。電気接続材料のより低い電気抵抗は、接合部抵抗を低減する。同時に、接合部が、HTS材料を破損せず(最大約300℃)、且つ、厚肉積層・テープの構造的完全性を、異なる成分を取り付けた積層ハンダを過度に溶かすことによって害することがないような、ハンダ付け方法によって接合がなされる場合、電気接続材料の溶融温度は、十分に低くなければならない。
【0071】
例えば、積層HTSテープは、170〜180℃の範囲で溶けるSn−Pb−Agベースのハンダで作ることができる(Sn:36%±3%、Pb:2%±1%、Ag)。より高い溶融温度およびより低い電気抵抗を持った追加のハンダが、使用に関して試験された。これらの積層ハンダは、215℃〜225℃の範囲で溶けるSn:3.5%±1.5%およびAg、212℃〜222℃の範囲で溶けるSn:3.8%±1.5%、Ag:0.7%±0.3%およびCu、ならびに230〜250℃の範囲で溶けるSn:5%±1.5%およびSbを含んでいる。
【0072】
しかしながら、接合部接続ハンダは、積層ハンダのほぼ溶融温度以下の溶融温度を持った材料を必要とする。Sn−Pb−Ag積層ハンダについては、上述したような、155〜165℃の範囲で溶けるInベースのハンダと、170〜180℃の溶融温度を持った積層ハンダ自体との両方が、接合ハンダとして使用される。したがって、上述したハンダはすべて、積層ハンダの溶融温度が実質的に接合ハンダの溶融温度以上である限り、接合ハンダとして使用されることができる。
【0073】
さらに、上記のハンダは、それらの比較的低い電気抵抗(いずれも室温で25μΩcmを超えず、そのうち幾つかは12μΩcm程度である)、およびそれらの比較的高い強度(35〜55MPa)のために選択される。さらに、Inなどの無鉛ハンダまたは上で列挙した高溶融温度のハンダを利用することもまた有利である。
【0074】
接合部およびワイヤの特性および信頼性を低下させることがある接合ハンダ/積層ハンダの互換性および汚染問題を制限するために、積層および接合の両方に同じハンダを使用することも可能である。要約すると、熟考されたハンダの範囲は、室温で10〜25μΩであり、引張強さが35MPaを超え、溶融温度が155℃〜240℃の範囲である。
【0075】
図7は、図2〜図6に示した接合されたHTSワイヤを生産する典型的な方法を示している。まず、第1HTSワイヤが製作される。基板が提供され(700)、HTS膜(緩衝層、超伝導体、およびキャップ層を備える)がワイヤを形成するために基板上に配置され(710)、基板およびHTS膜層が積層され(720)、テーパ縁部が積層ワイヤにカットされる(730)。これとは別に、第2HTSワイヤが基板(700’)を提供することによって製作され、ワイヤを形成するために基板上にHTS膜(緩衝層、超伝導体、およびキャップ層を備える)を堆積し(710’)、基板およびHTS膜層を積層し(720’)、テーパ縁部を積層ワイヤにカットする(730’)。鋸引きを使用すること
も可能であるが、テーパ端部は、精密シヤーリングツールまたはクリッパで実現されることができる。次に、構成要素の表面は、拭取り清浄され、フラックスをつけられ、接合ハンダを再度流され、接合部固定具の必要な構造に配置される。
【0076】
次に、第1HTSワイヤおよび第2HTSワイヤは、それぞれのテーパ縁部に結合される(740)。次に、頂部ストラップおよび底部ストラップは、第3HTSワイヤまたは金属ストラップから提供される(750)。接合部用のストラップが製造され、必要な長さにカットされる(好ましくは、カット端で著しいバリを発生させず、超伝導性または機械的性質を低下させないように)。ストラップの長さは、ジョイントの全長に亘って満足な電気抵抗を提供するように選択される。次に、頂部および底部ストラップは、例えばハンダ付け(760)を通じて、2つの対になった積層HTSワイヤに接合される。次に、固定圧が熱と共に加えられ、局所的な構成要素の温度を適切に増大させて接合ハンダを溶かし、その部分を圧縮し、圧縮しつつ冷却することによってハンダを凝固させる。各テープ端部の横方向およびテープを通じた位置決めが、接合ハンダ付け、エッジ・ガイドまたはチャネルによる、また、スレッドまたは圧力棒、あるいは上面および下面用の固定具による再度流し中に、維持される。次に、接合部寸法Icおよび抵抗は、典型的には、接合部品質および標準仕様への適合を評価するために測定され、それらは、さらに、構造的完全性を視覚的に検査される。
【0077】
HTSストラップ(頂部または底部)が下で述べるように積層ストリップで強化される場合、接合部および再流れ温度は、材料の初期溶融温度未満に維持され、それは、HTS膜に対して積層ストリップを強化する(例えば、ハンダ、またはキャップ層および積層ストリップとのハンダ相互作用から形成された、その関連する相)。
【0078】
[積層]
積層ストリップを互いに積層する方法は、積層するワイヤ(HTS/基板)を最初の清掃およびフラックス塗布ステーションからなるハンダ積層ラインに供給すること、溶融ハンダバス中に液浸させる一方で、積層ストリップおよびワイヤが工具によって結び付けられ、それらの横方向の位置決めを適切に維持する。次に、アセンブリは、ハンダ・チャンバから出て、ハンダを凝固すべく急速に冷却され、完全に接合した複合物を形成する。幾つかの構造の変形形態は、この方法によって容易に形成されることができ、それらは、4プライ(下で議論する)、3プライ、2プライ、および1プライHTSワイヤを含んでいる。3プライ構造は、2つの積層ストリップを備えることができ、1つは、ハンダによってHTS/基板ワイヤの一側に取り付けられ、HTS部分は、緩衝層と超伝導層とを備えることができる。基板ワイヤは、さらに、強化した湿潤および保護のための銀製「キャップ」層を含むことが可能である。2プライ構造は、HTS/基板ワイヤの基板側に積層された単一の積層ストリップ・ハンダを含むことができる(例えば、HTSストラップ・テープとして使用するために)。1プライ構造は、単にHTS/基板テープであることができ、0〜5μmの厚さ範囲の銀製の内側層と、約25μmの厚さのCu製の外側層(50μm程度の厚さである可能性がある)とを備える可能性がある。
【0079】
4プライの変形形態では、2つのHTS/基板テープが、それぞれHTS/基板アセンブリの各側に対して、2つの積層ストリップと共に積層ラインに供給され、2つのラミネート層の間にはさまれた2つのHTS/基板テープを生じさせ、その結果、基板側は、互いに隣接し、HTS膜は、積層ストリップに面する。
【0080】
必要に応じて、代わりに、電気的絶縁被膜などのシール材が、結合されたワイヤを一側または両側に適用されるか、または、結合されたワイヤを完全に囲むことができる。
一般に、本方法の工程は、与えられたものとは異なる順に実行されることができる。本方法の工程は、手動および/または自動で行なうことができる。例えば、ワイヤの端部の
カットは、手動で行なわれ、ハンダで湿潤した導電性ブリッジおよびワイヤを互いに押すことは、例えば、型の中で自動的に行なれることができる。なお、ジョイントは、2つの別々に製作したワイヤを接合するために単独で使用される必要がなく、ジョイントは、単一のワイヤの切れ目を補修するのに、または、一般には任意の2本のHTSワイヤ間の低抵抗電気的接続を提供するのにも有用である。
【0081】
ここで記述した方法を使用して接合されることができるYBCO HTSワイヤを作る方法が記述される。他の種類のHTSワイヤは、ここで記述した方法を使用して接合されることができ、接合部、第1ワイヤ、および第2ワイヤは、同一である必要がない。例えば、HTSワイヤは、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム酸化銅(BSCCO)超伝導体またはMgB超伝導体であることができる。
【0082】
[HTSワイヤの製造および結合]
[構造化金属基板]
テンプレートは、約1〜10cmあるいはこれよりも大きい幅で提供される。随意に、それは構造化される。HTSワイヤ用の基板としての使用に適した構造化金属基板を作成する方法がまず記述される。第1ステーションでは、基板は、2軸構造を得るように処理される。好ましくは、基板表面は、比較的明確に定義された結晶学的な配向を有している。例えば、その表面は、2軸構造化面(例えば、(113)[211]面)または立方体構造化面(例えば、(100)[011]面または(100)[001]面)であることができる。好ましくは、表面110のX線回折極点図におけるピークは、約20°未満のFWHMを有している(例えば、約15°未満、約10°未満、または約5°〜約10°)。
【0083】
基板の表面は、例えば、圧延加工およびアニールによって作成されることができる。表面は、例えば、任意に配向した多結晶面上の2軸構造化面を形成するために、イオンビーム支援堆積、傾斜基板堆積、および、本技術分野で知られている他の真空技術などの真空処理を使用して作成されることもできる。或る実施形態では(例えば、イオンビーム支援堆積が使用される場合)、基板の表面は、構造化される必要はない(例えば、その表面は、任意に配向した多結晶であることができるか、または、その表面は、無定形であることが可能である)。
【0084】
基板は、緩衝層スタックおよび/または超伝導体材料の層を支持することができる任意の材料から作られることができる。基板として使用されることができる基板材料の例は、例えば、金属、および/またはニッケル、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、および/またはそれらの合金などの合金を含んでいる。幾つかの実施形態では、基板は、スーパーアロイから形成されることができる。或る実施形態では、基板は、比較的大きい表面積(例えば、テープまたはウェハ)を有した物体の形態をなすことができる。これらの実施形態では、基板は、好ましくは、比較的柔軟な材料から作られる。
【0085】
これらの実施形態のうちの幾つかでは、基板は、次の金属のうちの2つを含んだ二元合金である:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、タングステン、金、および亜鉛。例えば、二元合金は、ニッケルおよびクロムから作ることができる(例えば、ニッケルおよび最大20原子百分率のクロム、ニッケルおよび約5〜約18原子百分率のクロム、またはニッケルおよび約10〜約15原子百分率のクロム)。別の例として、二元合金は、ニッケルおよび銅から作ることができる(例えば、銅および約5〜約45原子百分率のニッケル、銅および約10〜約40原子百分率のニッケル、または銅および約25〜約35原子百分率のニッケル)。さらに次の例として、二元合金は、ニッケルおよびタングステンを含むことができる(例えば、約1原子百
分率のタングステン〜約20原子百分率のタングステン、約2原子百分率のタングステン〜約10原子百分率のタングステン、約3原子百分率のタングステン〜約7原子百分率のタングステン、約5原子百分率のタングステン)。二元合金は、さらに比較的少量の不純物を含むことができる(例えば、約0.1原子百分率未満の不純物、約0.01原子百分率の不純物、または約0.005原子百分率未満の不純物)。
【0086】
これらの実施形態に或るものでは、基板は、2つを超える金属を含んでいる(例えば、三元合金または四元合金)。これらの実施形態のうちの幾つかでは、合金は、1つ以上の酸化物形成器を含むことができる(例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Ga、Ge、Zr、Hf、Y、Si、Pr、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu、Th、Er、Tm、Be、Ce、Nd、Sm、Yb、および/またはLaであり、Alは、好ましい酸化物形成器である)と共に、次の金属のうちの2つを含むことができる:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、金、および亜鉛。これらの実施形態の或るものでは、合金は、次の金属のうちの2つを含むことができる:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、金、および亜鉛。そして、合金では、前述の酸化物形成器のうちのいずれかが実質的に欠けていてもよい。
【0087】
合金が酸化物形成器を含んでいる実施形態では、合金は、少なくとも約0.5原子百分率の酸化物形成器(例えば、少なくとも約1原子百分率の酸化物形成器または少なくとも約2原子百分率の酸化物形成器)と、最大約25原子百分率の酸化物形成器(例えば、最大約10原子百分率の酸化物形成器または最大約4原子百分率の酸化物形成器)とを含むことができる。例えば、合金は、銅が平衡した、約25原子百分率〜約55原子百分率のニッケル(例えば、約35原子百分率〜約55原子百分率のニッケルまたは約40原子百分率〜約55原子百分率のニッケル)の酸化物形成器(例えば、少なくとも約0.5のアルミニウム)を含むことができる。別の例として、合金は、ニッケルが平衡した、約5原子百分率〜約20原子百分率のクロム(例えば、約10原子百分率〜約18原子百分率のクロムまたは約10原子百分率〜約15原子百分率のクロム)の酸化物形成器(例えば、少なくとも約0.5の原子のアルミニウム)を含むことができる。合金は、比較的少量の追加の金属(例えば、約0.1原子百分率未満の追加の金属、約0.01原子百分率未満の追加の金属、または約0.005原子百分率未満の追加の金属)を含むことができる。
【0088】
合金から形成される基板は、例えば、粉末形態の構成物質を組合せ、溶融し、および冷却することによって、または、例えば、粉末成分を互いに固形状態において拡散することによって、形成されることができる。次に、合金は、構造化面(例えば、2軸構造化または立方体構造化)を形成するために変形構造化されること(例えば、アニール、圧延、加締め、押出し、および/または引抜き)によって形成されることができる。代わりに、合金構成物質は、ゼリーロール(ロールケーキ)構成にスタックされ、次に、変形構造化されることができる。幾つかの実施形態では、比較的低い熱膨脹係数を持った材料(例えば、Nb、Mo、Ta、V、Cr、Zr、Pd、Sb、NbTi、または、NiAlもしくはNi3Alなどの金属間化合物、または、それらの混合物)は、ロッドに成形され、変形構造化される前に合金に埋め込まれることができる。
【0089】
幾つかの実施形態では、基板の表面上に配置された中間層を使用して、第1エピタキシャル(例えば、緩衝層)層が2軸構造化合金表面上に形成されるまで、表面の安定した酸化物層は低減されることができる。中間層は、エピタキシャル緩衝層膜の初期成長に必要なPO2および温度によって確立されるような条件に晒されたときに、表面の酸化物を形成しない中間層のエピタキシャル金属または合金層を含んでいる。加えて、緩衝層は、基板要素が中間層の表面へ移動し、エピタキシャル層の初期成長中に酸化物を形成するのを防止するための障壁として作用する。そのような中間層がない限り、基板における1つ以
上の要素が、例えば、この酸化物層における構造の不足によって、エピタキシャル層の堆積を著しく阻害することがある基板表面に熱力学的に安定した酸化物を形成すると予想される。
【0090】
これらの実施形態のうちの幾つかでは、中間層は、本来過渡的なものである。ここで使用される「過渡」とは、エピタキシャル膜の初期の核形成および成長に続いて、全体的または部分的に2軸構造化基板に組み込まれるかまたは該基板と組み合わされる中間層を指し示している。これらの状況下でさえ、堆積した膜のエピタキシャルな性質が確立されるまで、中間層および2軸構造化基板は、別体のままである。中間層が或る程度の望ましくない特性を有している場合(例えば、中間層がニッケルのように磁性を有している場合)、過渡的な中間層の使用が好ましいことがある。
【0091】
典型的な中間金属層は、ニッケル、金、銀、パラジウム、およびそれらの合金を含んでいる。追加の金属または合金は、ニッケルおよび/または銅の合金を含むことが可能である。中間層に堆積したエピタキシャル膜または層は、金属酸化物、カルコゲニド、ハロゲン化物、および窒化物を含むことができる。幾つかの実施形態では、中間金属層は、エピタキシャル膜堆積条件下では酸化しない。
【0092】
初期緩衝層構造の核形成および成長がエピタキシャル層を確立する前に、堆積した中間層が基板に完全には組み込まれないかまたは完全には基板に拡散しないことに注意すべきである。これは、基板合金における拡散定数、実際的なエピタキシャル緩衝層の成長条件下での酸化に対する熱力学的安定性、およびエピタキシャル層との格子一致などの適切な属性のに対して金属(または合金)を選択した後で、堆積した金属層の厚さは、エピタキシャル層堆積条件(特に、温度に)に適応されなければならないことを意味している。
【0093】
中間金属層の堆積は、蒸着またはスパッタリングのような真空処理で、または電気めっき(電極ありまたは電極なし)などの電気化学手段によって行われることができる。これらの堆積した中間金属層は、堆積後のエピタキシャルであってもそうでなくてもよいが(堆積中の基板温度に依存する)、エピタキシャルの配向は、堆積後熱処理中に順次得られることができる。
【0094】
或る実施形態では、硫黄が、表面処理において基板の表面上に形成されることができる。硫黄は、例えば、硫黄(例えば、H2S)および水素(例えば、水素、または5%の水素/アルゴンガス混合物などの水素と不活性ガスとの混合物)の源を含んだガス環境に、一定の期間(例えば、約10秒〜約1時間、約1分〜約30分、約5分〜約15分)、中間層を晒すことによって、基板の表面上に形成されることができる。これは、高い温度(例えば、約450℃〜約1100℃、約600℃〜約900℃、850℃の温度)で行なわれることができる。水素(または水素/不活性ガス混合物)の圧力は、比較的低くなるか(例えば、約133Pa(1Torr)未満、約133mPa(1×10−3Torr)未満、約133×10−6Pa(1×10−6Torr)未満)、または比較的高くなることができる(例えば、約133Pa(1Torr)超、約13.3kPa(100Torr)超、約101kPa(760Torr)超)。
【0095】
理論によって拘束されずに、これらの条件下の硫黄源に構造化基板表面を暴露することは、構造化基板表面上の硫黄の上部構造(例えば、c(2×2)上部構造)の形成をもたらすことができると考えられる。さらに、上部構造は、中間層の表面を安定させる(例えば、化学的および/または物理的に安定させる)のに有効である場合があると考えられる。
【0096】
硫黄上部構造の形成に対する1つの手法が記述されているが、そのような上部構造を形
成する他の方法も使用されることができる。例えば、硫黄上部構造(例えば、c(2×2))は、中間層の表面に適切な有機溶液を塗布して適切なガス環境中で適切な温度で加熱することによって、形成されることができる。さらに、それは、基板材料に添加されることがある硫黄を、基板の表面に拡散させることによって得ることができる。
【0097】
中間層の表面上の硫黄上部構造の形成が記述されているが、さらに、他の上部構造が、その表面を安定させる(例えば、化学的および/または物理的に安定させる)のに有効である場合があると考えられる。例えば、その表面上に配置された、酸素上部構造、窒素上部構造、炭素上部構造、カリウム上部構造、セシウム上部構造、リチウム上部構造、またはセレン上部構造が、その表面の安定性を強めるのに有効である場合があると考えられる。
【0098】
さらに、基板は、例えば、ハステロイ(ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金)または他の商用金属を使用して構造化されないことが可能である。
【0099】
[緩衝層]
第2処理ステーションでは、緩衝層は、構造化基板上に形成される。
緩衝材の例は、銀、ニッケル、TbO、CeO2、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、Y2O3、Gd2O3、LaAlO3、SrTiO3、LaNiO3、LaCuO3、SrRuO3、NdGaO3、NdAlO3、および/または当業者に知られているような窒化物のような、金属および金属酸化物を含んでいる。
【0100】
或る実施形態では、エピタキシャル緩衝層は、低真空蒸気堆積処理(例えば、少なくとも約133kPa(1×103Torr)の圧力で行なわれる処理)を使用して形成されることができる。本処理は、緩衝層材料の比較的高い速度および/または集中させたガス・ビームを使用して、エピタキシャル層を形成することを含むことができる。
【0101】
ガス・ビームにおける緩衝層材料は、毎秒約1m超(例えば、毎秒約100m超または毎秒約10m超)の速度を持つことができる。ビーム中の緩衝層材料の少なくとも約50%が、対象面に入射することができる(例えば、ビーム中の緩衝層材料の少なくとも約75%が対象面に入射することができるか、または、ビーム中の緩衝層材料の少なくとも約90%が対象面に入射することができる)。
【0102】
本方法は、低真空環境に対象面(例えば、基板表面または緩衝層表面)を配置し、閾値温度よりも高い温度に対象面を加熱し、それによって、高真空環境(例えば、約13.3mPa(1×10−4Torr)未満など、約133mPa(1×10−3Torr)未満)において、さもなければ同一の条件下で、対象面上に所望の材料のエピタキシャル層を形成することを含むことができる。緩衝層材料(随意に、不活性キャリアガス)を含んだガス・ビームは、少なくとも毎秒約1mの速度で対象面に向けられる。コンディショニング・ガスが、低真空環境では提供される。コンディショニング・ガスは、ガス・ビームに含まれることができるか、または、コンディショニング・ガスは、異なる方法(例えば、環境への漏洩)で低真空環境に導入されることができる。コンディショニング・ガスは、対象面に存在する種(例えば、汚染物質)と反応することができ、それによって、その種を除去する。それは、エピタキシャル緩衝層の核形成を促進することができる。
【0103】
エピタキシャル緩衝層は、高真空(例えば、最大約13.3mPa(1×10−4Torr))での物理蒸着を使用してエピタキシャル層を成長させるのに使用する温度よりも低い表面温度で低真空(例えば、少なくとも約133mPa(1×10−3Torr)、少なくとも約13.3Pa(0.1Torr)、または少なくとも約133Pa(1To
rr))を使用して、対象面で成長されることができる。対象面の温度は、例えば、約25℃〜約800℃(例えば、約500℃〜約800℃または約500℃〜約650℃)であることができる。
【0104】
エピタキシャル層は、例えば少なくとも毎秒約5nm(50オングストローム)などの比較的速い速度で成長することができる。
これらの方法は、2000年2月22日に発行された「エピタキシャル層を形成するための低真空処理」と題する米国特許第6,027,564号明細書、2000年2月8日に発行された「エピタキシャル層を備えた超伝導体物を形成するための低真空処理」と題する米国特許第6,022,832号明細書、および1998年1月15日に出願された「半導体材料のエピタキシャル層を形成するための低真空処理」と題する同一出願人の米国特許出願第09/007,372号明細書に記述されており、それらのすべては参照によってここに援用される。
【0105】
幾つかの実施形態では、エピタキシャル緩衝層は、高スループットで金属または金属酸化物の対象からスパッタリングによって堆積されることができる。基板の加熱は、エピタキシャル形態を得るために、抵抗加熱法またはバイアスおよび電位によって達成されることができる。堆積ドウェルは、金属または金属酸化物の対象から酸化物エピタキシャル膜を形成するために使用されることも可能である。
【0106】
基板上に典型的に存在する酸化物層は、イオンビーム・エッチングとして知られる還元環境内のエネルギ・イオンへの基板表面の暴露によって除去されることができる。イオンビーム・エッチングは、基板から残留酸化物または不純物を除去し、本質的に酸化物のない2軸構造化基板表面を生産することによって、膜堆積に先立って基板を清掃するために使用されることができる。これは、基板と続いて堆積した材料との間の接触を改善する。エネルギ・イオンは、様々なイオン銃(例えば、Ar+などのイオンを基板表面に向かって加速する)によって生成されることができる。好ましくは、150eV超のビーム電圧を持った格子付きイオン源が利用される。代わりに、プラズマが、基板表面近傍の領域に確立されることもできる。この領域内では、イオンは、実質的に酸化物なしの金属面を生成するために、その表面(金属酸化物を含む)から材料を除去するように基板表面と化学的に相互作用する。
【0107】
基板から酸化物層を除去するための別の方法は、基板に電気的にバイアスを掛けることである。基板が陽極電位に対して負とされる場合、それは、堆積(対象がシャッタされる場合)に先立って、または、膜全体の堆積中に、ガスからのイオンによって安定した照射に晒される。このイオン照射は、吸収されたガスについて基板表面を清掃することができ、それは、さもなければ膜に取り込まれ、さらに、高い堆積温度に基板を加熱することが可能である。そのようなイオン照射は、エピタキシャル膜の密度または平滑性の改善によってさらに有利である場合がある。
【0108】
適切に構造化された、実質的に酸化物なしの基板表面の形成に際して、緩衝層の堆積が開始される場合がある。単一の金属または酸化物層を含んだ1つ以上の緩衝層の各々を使用することができる。幾つかの好ましい実施形態では、基板は、これらの実施形態の堆積方法の工程を行なうように構成された装置を通過させられる。例えば、基板がテープの形態をなしている場合、基板は、払出しリールから巻取りリールへと直線的に渡されることができ、リール間を通る際に基板に対して工程を行なうことができる。
【0109】
幾つかの実施形態によれば、基板材料は、該基板材料の融点の約90%未満であるが、所定の堆積速度で、真空環境中の基板材料上で所望の材料のエピタキシャル層を形成するための閾値温度よりも高い高温に加熱される。適切な緩衝層結晶構造および緩衝層平滑性
を形成するために、高い基板温度が一般に好ましい。金属上に酸化物層を成長するための典型的な下限温度は、約200℃〜800℃、好ましくは500℃〜800℃、より好ましくは650℃〜800℃である。放射加熱、対流加熱、および伝導加熱などの様々な周知の方法が、短い長さの基板の(2cm〜10cm)に適している。しかしながら、より長い長さ(1m〜100m)に対しては、これらの技術はよく適さないことがある。さらに、製造工程における所望の高スループット率を得るために、基板は、その処理中に堆積ステーション間を移動されるかまたは移送されなければならない。特定の実施形態によれば、基板は、抵抗加熱によって(つまり、金属基板を通じた電流を通すことによって)加熱される。それは、長寸の製造工程に容易に拡張可能である。この手法は、これらの工程ゾーン間の迅速な移動を瞬間的に可能にする際に功を奏する。温度制御は、加熱される基板に供給される電力を制御するために、光高温計および閉ループ・フィードバック・システムを使用することによって達成されることができる。電流は、基板の少なくとも2つの異なるセグメントにおいて基板と接触する電極によって基板に供給されることができる。例えば、テープの形態の基板がリール間を渡される場合、リールは、それ自体電極として作用することができる。
【0110】
代わりに、ガイドがリール間の基板を移送のために採用される場合、そのガイドは、電極として作用することができる。さらに、電極は、如何なるガイドまたはリールから完全に独立することも可能である。幾つかの好ましい実施形態では、電流は、電流ホイール間の基板テープに加えられる。
【0111】
堆積が適切な温度にある基板に対して行なわれるために、基板上に堆積された金属または酸化物材料は、電流ホイール間の領域に望ましく堆積される。電流ホイールが効率的なヒートシンクになることができ、このようにホイール近傍の領域においてテープを冷却することができるので、材料は、望ましいように、ホイール近傍の領域には堆積されない。スパッタリングの場合、基板上に堆積した荷電材料は、望ましいように、スパッタリング・フラックス経路近傍の他の荷電表面または材料によって影響を受けない。このような理由から、スパッタリング室は、好ましくは、堆積ゾーンから離れた位置に、室壁を含むスパッタリング・フラックスおよび他の堆積要素に影響を及ぼすかまたは反らすことがある構成要素および表面を配置するように、構成される。その結果、それらが適切な堆積温度でテープの領域における金属または金属酸化物の所望の線形のフラックス経路および堆積を変更させない。
【0112】
より多くの詳細が、2000年2月9日に出願された「酸化物層方法」と題する同一出願人の米国特許出願第09/500,701号明細書、および2000年7月14日に出願された「酸化物層方法」と題する同一出願人の米国特許出願第0/615,669号明細書において提供され、それらの両方が参照によって全体にここに援用される。
【0113】
好ましい実施形態では、3つの緩衝層が使用される。Y2O3またはCeO2の層(例えば、約20ナノメータ〜約75ナノメータの厚さ)が、基板表面上に堆積される(例えば、電子ビーム蒸着を使用して)。YSZの層(例えば、約75ナノメータの厚さなど、約0.20ナノメータ〜約700ナノメータの厚さ)が、スパッタリングを使用して(例えば、マグネトロン・スパッタリングを使用して)Y2O3またはCeO2層の表面上に堆積される。CeO2層(例えば、約20ナノメータの厚さ)が、YSZ表面上に堆積される(例えば、マグネトロン・スパッタリングを使用して)。これらの層の1つ以上の表面は、ここで記述するように化学的および/または熱的に調整されることができる。
【0114】
或る実施形態では、緩衝層材料は、当業者に知られる、有機金属堆積を含む液相技術を使用して作成されることができる。そのような技術は、例えば、S.S.ShoupらのJ.Am.Cer.Soc.,Col.81,3019と、D.BeachらのMat.
Res.Soc.Symp.Proc.,col.495,263(1988)と、M.ParanthamanらのSuperconductor Sci.Tech.,vol.12,319(1999)と、D.J.LeeらのJapanese J.Appl.Phys.,vol.38,L178(1999)と、M.W.RupichらのI.E.E.E.Trans.onAppl.Supercon.vol.9,1527とに開示されている。
【0115】
或る実施形態では、溶液コーティング工程が、構造化基板上の酸化物層のうちの1つまたはいずれかの組合せの堆積に使用されることができるが、それらは、構造化金属基板上の初期の(シード)層の堆積に特に適用可能である。シード層の役割は、1)基板に対して酸化雰囲気中で実行されるときに、次の酸化物層の堆積中に酸化から基板を保護すること(例えば、酸化対象からのイットリア安定化ジルコニアのマグネトロン・スパッタ堆積)、および2)次の酸化物層の成長のためのエピタキシャル・テンプレートを提供することである。これらの要求を満たすために、シード層は、金属基板の表面全体に亘ってエピタキシャル成長し、次のエピタキシャル酸化物層の堆積に干渉する如何なる汚染物質を伴わない。
【0116】
或る実施形態では、緩衝層は、イオンビーム支援堆積(IBAD)を使用して形成されることができる。この技術では、緩衝層材料は、蒸発した緩衝層材料が堆積される基板の滑らかな無定形表面にイオンビーム(例えば、アルゴンのイオンビーム)が向けられている間、例えば、電子ビーム堆積、スパッタリング堆積、またはパルスレーザ堆積を使用して蒸着される。
【0117】
例えば、緩衝層は、イオンビームで、岩塩状の構造を有した緩衝層材料(例えば、MgOを含む酸化物または窒化物などの岩塩構造を有した材料)を基板の滑らかで無定形の表面(例えば、約10nm(100オングストローム)未満の二乗平均平方根粗さを有した表面)上に蒸着させることによって、形成されることができる。その結果、緩衝層材料は、面内および面外の両方でほぼ整合(例えば、約13°以下)した表面を有する。
【0118】
緩衝層材料の堆積中に使用される条件は、例えば、約0℃〜約750℃の基板温度(例えば、約0℃〜約400℃、約室温〜約750℃、約室温〜約400℃)、毎秒約0.1nm(1.0オングストローム)〜毎秒約0.44nm(4.4オングストローム)の堆積速度、約200eV〜約1200eVのイオン・エネルギ、および/または約110μA/cm2〜約120μA/cm2のイオン束を含むことができる。
【0119】
幾つかの実施形態では、IBADを使用する場合、基板は、異なる材料(例えば、Si3N4)から形成された滑らかな無定形の表面で、多結晶の非無定形の下部構造(例えば、ニッケル合金などの合金)を有した材料から形成される。
【0120】
或る実施形態では、複数の緩衝層は、元のIBAD表面上のエピタキシャル成長によって堆積されることができる。各緩衝層は、面内および面外の両方でほぼ整合(例えば、約13°以下)させることができる。
【0121】
酸化物緩衝層の形成は、下の基板層の湿潤を促進するように行われることができる。加えて、特定の実施形態では、金属酸化物層の形成は、金属アルコキシドまたはカルボン酸塩前駆体(例えば、「ゾル・ゲル」前駆体)を使用して行われることができる。
【0122】
上述したように、必要に応じて、緩衝層(複数可)は、それらの堆積中にまたはその後にパターン化されることができる。
[前駆体層]
一旦緩衝層を備えた構造化基板が作成されると、前駆体溶液が、上述したようなステーションに堆積される。1つ以上の層は、所望の厚さおよび全体組成を有した前駆体層を形成するように堆積される。
【0123】
適切な前駆体成分は、1つ以上の希土類元素、1つ以上のアルカリ土類金属、および1つ以上の遷移金属の可溶性化合物を含んでいる。ここで使用される、希土類元素、アルカリ土類金属、および遷移金属の「可溶性化合物」は、前駆体溶液に含まれる溶剤に溶けることができるそれらの金属の化合物を指し示している。そのような化合物は、例えば、これらの金属の、塩類(例えば、硝酸塩、酢酸塩、アルコキシド、ハロゲン化物、硫酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩)、酸化物および水酸化物を含んでいる。その化合物の少なくとも1つは、トリフルオロ酢酸塩などのフッ素含有化合物である。
【0124】
使用されることができる金属塩溶液の例は、次の通りである。
幾つかの実施形態では、金属塩溶液は、比較的少量の遊離酸を有することがある。水溶液では、これは、比較的中性のpH(例えば、強酸性でも強アルカリ性でもない)を持った金属塩溶液に対応することがある。金属塩溶液は、超伝導体層が形成される下の層として使用されることができる種々様々な材料を使用して多層超伝導体を作成するために使用されることができる。
【0125】
金属塩溶液の全遊離酸濃度は、1×10−3モル未満(例えば、約1×10−5モルまたは約1×10−7モル未満)であることができる。金属塩溶液に含有することができる遊離酸の例は、トリフルオロ酢酸、酢酸、硝酸、硫酸、ヨウ化物の酸、臭化物の酸および硫酸塩の酸を含んでいる。
【0126】
金属塩溶液が水を含有している場合、前駆体組成は、少なくとも約3(例えば、少なくとも約5または約7)のpHを有することができる。
幾つかの実施形態では、金属塩溶液は、比較的小さい水含有量を有することができる(例えば、約50体積%未満の水、約35体積%未満の水、約25体積%未満の水)。
【0127】
一般に、希土類金属塩は、前駆体溶液に含有される溶剤に溶けることができる、および、中間物(例えば、金属オキシハライド中間物)を形成するために処理される場合、希土類酸化物(例えば、Y2O3)を形成する、任意の希土類金属塩であることができる。希土類元素は、イットリウム、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムのグループから選択されることが可能である。典型的には、アルカリ土類金属は、バリウム、ストロンチウム、またはカルシウムである。そのような塩類は、例えば、構造式M(O2C−(CH2)n−CXX’X’’)(O2C−(CH2)m−CX’’’X’’’’X’’’’’)(O2C−(CH2)p−CX’’’’’’X’’’’’’’X’’’’’’’’)またはM(OR)3を有することができる。Mは、希土類金属である。n、m、およびpは、それぞれ少なくとも1であるが、塩類を溶剤に溶けないようにする数(例えば、1〜10)よりも少ない。X、X’、X’’、X’’’、X’’’’、X’’’’’、X’’’’’’、X’’’’’’’、およびX’’’’’’’’の各々は、H、F、Cl、Br、またはIである。Rは、ハロゲン化可能な(例えば、CH2CF3)または非ハロゲン化可能な炭素含有族である。そのような塩類の例は、ハロゲン化されていないカルボン酸塩、ハロゲン化された酢酸塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリヨード酢酸塩)、ハロゲン化されたアルコキシド、およびハロゲン化されていないアルコキシドを含んでいる。そのようなハロゲン化されていないカルボン酸塩の例は、ハロゲン化されていない酢酸塩(例えば、M(O2C−CH3)3)を含んでいる。一般に、アルカリ土類金属塩は、前駆体溶液に含有される溶剤に溶けることができ、および、中間物(例えば、金属オキシハライド中間物
)を形成するために処理される場合、アルカリ土類酸化物(例えば、BaO)を形成する前にアルカリ土類ハロゲン化物化合物(例えば、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaI2)を形成する、任意のアルカリ土類金属塩であることができる。そのような塩類は、例えば、構造式M’(O2C−(CH2)n−CXX’X’’(O2C−(CH2)m−CX’’’X’’’’X’’’’’)またはM’(OR)2を有することができる。M’は、アルカリ土類金属である。nおよびmは、それぞれ少なくとも1つであるが、塩類を溶剤に溶けないようにする数(例えば、1〜10)よりも少ない。X、X’、X’’、X’’’、X’’’’、およびX’’’’’の各々は、H、F、Cl、B、またはIである。Rは、ハロゲン化または非ハロゲン化炭素含有族であることができる。そのような塩類の例は、ハロゲン化された酢酸塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリヨード酢酸塩)を含んでいる。一般に、遷移金属は、銅である。遷移金属塩は、前駆体溶液に含有される溶剤に溶けるべきである。本発明の1つ以上の実施形態では、希土類およびアルカリ土類は、希土類酸化物およびアルカリ土類フッ化物に代えてまたは加えて、金属または混合金属オキシフルオライドを形成することができる。
【0128】
適切な銅の前駆体溶液は、溶剤中に適切な濃度で溶けている銅塩類を含んでいる。そのような化合物は、硝酸銅、カルボン酸塩、アルコキシド、ハロゲン化物、硫酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩を含んでいる。好ましくは、中間物(例えば、金属オキシハライド)への前駆体の変換中に、最小の交さ結合が、個別の遷移金属分子(例えば、銅分子)間に生じる。そのような遷移金属塩類は、例えば、構造式M’’(CXX’X’’−CO(CH)aCO−CX’’’X’’’’X’’’’’)(CX’’’’’’X’’’’’’’X’’’’’’’’−CO(CH)bCOCX’’’’’’’’’X’’’’’’’’’’X’’’’’’’’’’’),M’’(O2C−(CH2)n−CXX’X’’)(O2C−(CH2)m−CX’’’X’’’’X’’’’’)またはM’’(OR)2を有することができる。M’’は、遷移金属である。aおよびbは、それぞれ少なくとも1つであるが、塩類を溶剤に溶けないようにする数(例えば、1〜5)よりも少ない。一般に、nとmは、それぞれ少なくとも1つであるが、塩類を溶剤に溶けないようにする数(例えば、1〜10)よりも少ない。X、X’、X’’、X’’’、X’’’’、X’’’’’、X’’’’’’、X’’’’’’’、X’’’’’’’’、X’’’’’’’’’、X’’’’’’’’’’、X’’’’’’’’’’’の各々は、H、F、Cl、Br、またはIである。Rは、ハロゲン化された(例えばCH2CF3)またはハロゲン化されていない炭素含有族である。これらの塩類は、例えば、ハロゲン化されていない酢酸塩(例えば、M’’(O2C−CH3)2)、ハロゲン化された酢酸塩、ハロゲン化されたアルコキシド、またハロゲン化されていないアルコキシドを含んでいる。そのような塩類の例は、トリクロロ酢酸銅、トリブロモ酢酸銅、トリヨード酢酸銅、Cu(CH3COCHCOCF3)2、Cu(OOCC7H15)2、Cu(CF3COCHCOF3)2、Cu(CH3COCHCOCH3)2、Cu(CH3CH2CO2CHCOCH3)2、CuO(C5H6N)2、およびCu3O3Ba2(O−CH2CF3)4を含んでいる。適切な化合物は、銅のプロピオン酸である。遷移金属のハロゲン化されていないプロピオン酸塩の一例は、Cu(O2CC2H5)2である。幾つかの実施形態では、遷移金属塩は、硫酸銅、硝酸銅、ヨウ化銅、および/またはシュウ酸銅のような単純な塩である。幾つかの実施形態では、nおよび/またはmは、0の値を持つことができる。或る実施形態では、aおよび/またはbは、0の値を持つことができる。ルイス塩基の例示した非限定の列挙は、アンモニアおよびアミンなどの窒素含有化合物を含んでいる。アミンの例は、CH3CN、C5H5N、およびR1R2R3Nを含んでいる。R1R2R3の各々は、独立して、H、アルキル基(例えば、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、脂肪族アルキル基、非脂肪族アルキル基、および/または置換アルキル基)などである。理論によって拘束されずに、金属塩溶液中のルイス塩基の存在は、中間物の形成中に銅の交さ結合を軽減することができると考えられる。これは、ルイス塩基が銅イオンと配位(例えば、選択的配位)することができ、それによって、銅の交さ結合の能力を軽減するので、実現されると
考えられる。
【0129】
前駆体溶液は、典型的には、化学量論量の成分金属化合物(つまり、3:2:1のCu:Ba:RE)を含んでいるが、幾つかの実施形態では、過剰な銅または不足したバリウムが使用される。アルカリ土類金属に対する遷移金属の比は、1.5超であることができ、前駆体溶液は、少なくとも約5mol%超の銅または少なくとも約20mol%超の銅を含むことができる。
【0130】
希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物の形成のための前駆体成分に加えて、前駆体溶液は、追加の成分を含むことが可能であり、および/または、磁束ピニングサイトの形成のためのドーパント成分は、ピニングセンタを有した超電導膜を得るための溶液に基づいた方法で使用される。追加の化合物は、金属酸化物または酸化物超電導体膜中の金属を形成する、希土類、アルカリ土類、または遷移金属、セリウム、ジルコニウム、銀、アルミニウム、またはマグネシウムの可溶性化合物などの金属化合物であることができる。前駆体溶液は、該前駆体溶液の前駆体成分の金属を部分的に置換するドーパント金属を提供することができる。一般に、ドーパント成分は、前駆体溶液に含有される溶剤に溶けることができ、酸化物超電導体を形成するために処理されるときに、酸化物超電導体の要素を置換するドーパント金属を提供される、任意の金属化合物であることができる。
【0131】
前駆体溶液で使用される溶剤または溶剤の組合せは、金属塩類(例えば、金属カルボン酸塩)を溶かすことができる任意の溶剤または溶剤の組合せを含むことができる。そのような溶剤は、例えば、アルコール、または酸を含み、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびブタノール、プロピオン酸または水を含んでいる。
【0132】
金属塩溶液がトリフルオロ酢酸塩イオンおよびアルカリ土類金属陽イオン(例えば、バリウム)を含有する実施形態では、金属塩溶液に含有されるアルカリ土類金属(例えば、バリウム・イオン)に対する金属塩溶液(例えば、トリフルオロ酢酸塩の形態)に含有されるフッ素のモル比が、少なくとも約2:1(例えば、約2:1〜約18.5:1または約2:1〜約10:1)であるように、トリフルオロ酢酸塩イオンの全量が選択されることができる。
【0133】
下の層(例えば、その上に1つ以上の緩衝層を配置された合金層を有する基板などの、基板の表面)上に超伝導組成を配置する方法は、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットコーティング、ウェブコーティング、および本技術分野で知られている他の技術を含んでいる。
【0134】
[前駆体層の分解]
次のステーションでは、前駆体成分が分解される。酸化物超電導体への前駆体成分の変換は、連続した厚い前駆体膜に対して以前報告されたように行なわれる。少なくとも1つのフッ化物含有塩類を含んだ前駆体成分の場合、加熱工程の第1工程が、所望の超伝導体材料の1つ以上のオキシフルオライド中間物に有機金属分子を分解するために行なわれる。
【0135】
中間のオキシフルオライド膜は、希土類金属アルカリ土類金属遷移金属酸化物超電導体(以下、RE−123)膜に対する前駆体である任意の膜であると考えられる。RE−123は、次のものから構成される:(1)BaF2、希土類酸化物またはフッ化物、および/または遷移金属、遷移金属酸化物、または遷移金属フッ化物の混合物、(2)RE−Ba−O−F相の希土類酸化物またはフッ化物および/または遷移金属酸化物またはフッ化物から構成された化合物の混合物、あるいは、(3)Ba−O−F相の希土類酸化物またはフッ化物および/遷移金属酸化物またはフッ化物から構成された化合物の混合物。次
に、中間膜は、RE−123酸化物超電導体膜を形成するためにさらに処理されることができる。また、酸化物超電導体膜は、小さいが検出可能なフッ化物残留物を示している。
【0136】
典型的には、この工程の初期温度は、ほぼ室温であり、最終温度は、約190℃〜約210℃、好ましくは約200℃までの温度である。好ましくは、この工程は、少なくとも毎分約5℃温度傾斜、より好ましくは少なくとも毎分約10℃の温度傾斜、そして最も好ましくは少なくとも毎分約15℃温度傾斜を使用して行なわれる。この工程中、公称ガス環境中の水蒸気の分圧は、好ましくは約667Pa(5Torr)〜約6.67kPa(50Torr)、より好ましくは約667Pa(5Torr)〜約4kPa(30Torr)、そして最も好ましくは、約2.67kPa(20Torr)〜約4kPa(30Torr)に維持される。公称ガス環境中の酸素の分圧は、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)、好ましくは約97.3〜98.6kPa(730〜740Torr)に維持される。
【0137】
次に、加熱が、毎分約0.05℃〜毎分約5℃(例えば、毎分約0.5℃〜毎分約1℃)の温度傾斜を使用して、約200℃〜約290℃の温度に継続される。好ましくは、この加熱工程中のガス環境は、サンプルが初期温度から約190℃〜約215℃に加熱されるときに使用する公称ガス環境と実質的に同じである。
【0138】
加熱は、オキシフルオライド中間物を形成するために、約650℃の温度まで、より好ましくは約400℃の温度まで、さらに継続される。この工程は、少なくとも毎分約2℃、より好ましくは少なくとも毎分約3℃、そして最も好ましくは少なくとも毎分約5℃の温度傾斜を使用して好ましくは行なわれる。好ましくは、この加熱工程中のガス環境は、サンプルが初期温度から約190℃〜約215℃に加熱されるときに使用される公称ガス環境と実質的に同じである。
【0139】
代替の実施形態では、フッ化バリウムは、約667Pa(5Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の水蒸気(例えば、約667Pa(5Torr)〜約4kPa(30Torr)の水蒸気または約1.33kPa(10Torr)〜約3.33kPa(25Torr)の水蒸気)の水蒸気圧で、初期温度(例えば、室温)から約190℃〜約215℃(例えば、約210℃)の温度にドライ溶液を加熱することによって形成される。酸素の公称分圧は、例えば、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)であることができる。これらの実施形態では、次に、加熱は、約667Pa(5Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の水蒸気(例えば、約667Pa(5Torr)〜約4kPa(30Torr)の水蒸気または約1.33kPa(10Torr)〜約3.33kPa(25Torr)の水蒸気)の水蒸気圧で、約220℃〜約290℃(例えば、約220℃)の温度まで継続される。酸素の公称分圧は、例えば、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)であることができる。これに続いて、フッ化バリウムを形成するために、約667Pa(5Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の水蒸気(例えば、約667Pa(5Torr)〜約4kPa(30Torr)の水蒸気または約1.33kPa(10Torr)〜約3.33kPa(25Torr)の水蒸気)の水蒸気圧で、少なくとも毎分約2℃(例えば、少なくとも毎分約3℃または少なくとも毎分約5℃)の割合で、約400℃まで加熱する。酸素の公称分圧は、例えば、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)であることができる。
【0140】
或る実施形態では、フッ化バリウムを形成するためにドライ溶液を加熱することは、予熱された炉にコーティングを施したサンプルを入れることを含むことができる(例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、最大約300℃、最大約250℃、約200℃の予熱温度)。炉中のガス環境は、例えば、酸素分子が平
衡した、約101kPa(760Torr)の全ガス圧で、所定分圧の水蒸気(例えば、少なくとも約1.33kPa(10Torr)、少なくとも約2.00kPa(15Torr)、最大約3.33kPa(25Torr)、最大約2.67kPa(20Torr)、約2.27kPa(17Torr))を有することができる。コーティングを施したサンプルが炉温度に達した後、炉温度は、所定温度傾斜率(例えば、少なくとも毎分約0.5℃、少なくとも毎分約0.75℃、最大毎分約2℃、最大毎分約1.5℃、毎分約1℃)で上昇されることができる(例えば、少なくとも約225℃、少なくとも約240℃、最大約275℃、最大約260℃、約250℃に)。この工程は、第1加熱工程で使用されるものと同じ公称ガス環境で行なわれることができる。次に、炉の温度は、所定温度傾斜率(例えば、少なくとも毎分約5℃、少なくとも毎分約8℃、最大毎分約20℃、最大毎分約12℃、毎分約10℃)で、さらに上昇されることができる(例えば、少なくとも約350℃、少なくとも375℃、最大約450℃、最大約425℃、約450℃)。この工程は、第1加熱工程で使用されるものと同じ公称ガス環境で行なわれることができる。
【0141】
金属塩溶液の先の処理は、構成する金属酸化物および金属フッ化物が膜の全体に亘って均質的に分配されたオキシフルオライド中間膜を生じさせることができる。好ましくは、前駆体は、比較的低い欠陥密度を有しており、中間物の厚さを通じたクラックが本質的にない。フッ化バリウム層に対する溶液化学は開示されているが、他の方法もまた他の前駆体溶液に使用されることができる。
【0142】
[酸化物超電導体の形成]
次に、超伝導体中間膜は、さらなる処理ステーションで所望の超伝導体層を形成するために加熱されることができる。典型的には、この工程は、毎分約25℃超の温度傾斜、好ましくは毎分約100℃超の温度傾斜率、より好ましくは毎分約200℃超の温度傾斜率で、約室温から、約700℃〜約825℃の温度、好ましくは約740℃〜800℃の温度、より好ましくは約750℃〜約790℃の温度への加熱によって行なわれる。この工程は、中間のオキシフルオライド膜を形成するために使用される約400〜650℃の最終温度から開始されることもできる。この工程中、処理ガスは、膜にガス状反応物を供給し、膜からガス状反応生成物を除去するために、膜面に亘って流される。この工程中の公称ガス環境は、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)の全圧を有しており、約12.0Pa(0.09Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の酸素と、約1.33Pa(0.01Torr)〜約20.0kPa(150Torr)の水蒸気と、約0Pa(0Torr)〜約100kPa(750Torr)の不活性ガス(窒素またはアルゴン)とから構成される。より好ましくは、公称ガス環境は、約20.0Pa(0.15Torr)〜約667Pa(5Torr)の全圧を有しており、約13.3Pa(0.1Torr)〜約133Pa(1Torr)の酸素と、約6.67Pa(0.05Torr)〜約533Pa(4Torr)の水蒸気とを含んでいる。
【0143】
次に、膜は、約700℃〜825℃の温度、好ましくは約740℃以上〜800℃の温度、より好ましくは約750℃〜約790℃の温度で、少なくとも約5分〜約120分の時間、好ましくは少なくとも約15分〜約60分の時間、より好ましくは少なくとも約15分〜約30分の時間、保持される。この工程中、処理ガスは、膜にガス状反応物を供給し、膜からガス状反応生成物を除去するために、膜面に亘って流される。この工程中の公称ガス環境は、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)の全圧を有しており、約11.2Pa(0.09Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の酸素と、約1.33Pa(0.01Torr)〜約20.0kPa(150Torr)の水蒸気と、約0Pa(0Torr)〜約100kPa(750Torr)の不活性ガス(窒素またはアルゴン)とから構成される。より好ましくは、公称ガス環境は、約20.0Pa(0.15Torr)〜約667Pa(5Torr)の全圧を有しており
、約13.3Pa(0.1Torr)〜約133Pa(1Torr)の酸素と、約6.67Pa(0.05Torr)〜約533Pa(4Torr)の水蒸気とから構成される。
【0144】
次に、膜は、約6.67Pa(0.05Torr)〜約20.0kPa(150Torr)、好ましくは、約13.3Pa(0.1Torr)〜約66.7Pa(0.5Torr)、より好ましくは約13.3Pa(0.1Torr)〜約26.7Pa(0.2Torr)の酸素圧を持った公称ガス環境中で、室温に冷却される。
【0145】
結果として生じる超伝導体層は、よく整っている(例えば、面内で2軸構造化されているか、または、面からのc−軸であり、面内で2軸構造化されている)。実施形態では、超伝導体材料の大部分が、2軸構造化される。超伝導体層は、少なくとも約1μmの厚さである(例えば、少なくとも約2μmの厚さ、少なくとも約3μmの厚さ、少なくとも約4μmの厚さ、少なくとも約5μmの厚さ)。酸化物超電導体は、その幅に亘って実質的に一定のc−軸配向を有しており、その超伝導体のc−軸配向は、ワイヤまたはテープの表面に実質的に垂直である。
【0146】
超伝導体層は、レーザ・アブレーション、MOCVD、または本技術分野で知られている他の技術によって、そのまま堆積されることもできる(前駆体堆積および個別の反応工程なしに)。
【0147】
[さらなる処理]
キャップ層堆積、酸素アニール、および第2ワイヤへの接合によるさらなる処理が行なわれる。低抵抗で機械的に強健なジョイントを使用してワイヤを接合することによって、脆い酸化物超電導体膜への損傷なしに、通電用途において使用可能な長さのワイヤが形成される。
【0148】
[実施例]
低抵抗で薄型の2面接合部は、厚い強化YBCOでコーティングを施した導体テープ(つまり、図2〜図6に示したHTSワイヤ)を接続するために作られる。典型的な結合されたワイヤは、真鍮、銅、またはステンレス鋼を積層したストリップを有し、より詳しく下で記述するように、様々なハンダで形成される。さらに、幾つかの接合部は、スーパーパワー社のワイヤからなるYBCOワイヤと、基板(基板は、ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金であるハステロイである)と、緩衝層と、YBCOシステムと、3.0μmのAg層と、約1μm〜約50μm、好ましくは約20μm〜約30μmの厚さを持った随意のCu層とから構成される。
【0149】
[実施例1:基本構造および材料]
様々な2面接合部ジョイントは、テーブル2に記述されるような異なるバッキングおよびHTSストラップ材料で作られ、試験された。テーブル2に記述される基本構造が製作および評価された。テーブル2は、様々な実施例、範囲の例、および様々な実施例において想定される範囲を列挙している。
【0150】
【表2】
【0151】
様々な2面接合部ジョイントは、第1厚肉積層ワイヤ端部の第1ラミネート層および第2厚肉積層ワイヤ端部の第1ラミネート層に近接したバックストラップと、第1厚肉および第2積層HTSワイヤ端部の接合テーパと、第1および第2厚肉積層HTSワイヤの第2ラミネート層と電気的に接続するストラップとからなる2面接合部を作る実現可能性を実証するために、テーブル2に記述された利用可能な材料で製作された。
【0152】
幾つかの試験は、これらの2面接合部の幾何学的、機械的、および電気的性質を確立するために、これらのサンプルのうちの幾つかに対して行なわれた。これらの試験の結果は、より詳細に下で議論する。
【0153】
[実施例2:2面接合部]
接合されたサンプルは、上述したテープ(テーブル2)で作られた。テーブル3中のデータは、頂部および底部ストラップの相対的な厚さおよび幅の範囲を示している。このテーブルは、様々なサンプル・セット(1〜11)、接合部の種類、厚肉積層テープの材料、HTSストラップ、およびバックストラップのほか、それらのそれぞれの厚さおよび長さを列挙している。例えば、このテーブルに示すように、HTSストラップに対するバックストラップの相対的な厚さは、52%〜100%の範囲にあった。さらに、ストラップはすべて、厚肉積層HTSテープに対して90%〜105%幅の範囲内であった。さらに、テーブル3では、SSは、316Lステンレス鋼のワイヤを表わし、3プライは、積層−HTS−積層ワイヤ構造を表わし、SPは、ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金HASTALLOYの基板、HTS膜を表わす(〜3umのAg層、サイドワイヤ当たり〜25umのCu外側層)。NM(通常金属)バックストラップ幅は、約4.31mmであり、厚肉積層テープ幅は、約4.4mmであり、積層HTSストラップ幅は、約4.4mmであり、SP HTSストラップ幅は、約4.0mmであり、umは、μmと同義である。
【0154】
【表3】
【0155】
テーブル4は、ここで開示される実施形態にかかるHTSワイヤおよびテープの積層および接合に使用されるハンダ組成のほか、近似融点、引張強さ、および各組成に対する室温での抵抗を列挙している。公称値は、各組成に対して列挙されている。しかしながら、重要な組成の変形形態が、これらの公称値に関して生じる場合がある。
【0156】
【表4】
【0157】
2面ジョイントがここで開示される実施形態に従って作られた後、2面ジョイントは、信頼性試験をされた。信頼性試験は、ケーブル敷設またはケーブル作業の臨界条件を模倣することができ、HTSワイヤ特性への臨界条件の影響を規定する。実施例4〜実施例6について下で記述するカスタム試験は、必要に応じてワイヤに行なう統計的に受容可能な条件を定義する。
【0158】
[実施例3:接合加圧液体窒素(LN2)循環または「密閉性」試験]
この試験は、ケーブル敷設がHTSワイヤを最大20気圧のLN2に暴露するので、HTSワイヤに対する適切な試験である。このように、HTSワイヤが低い温度および圧力にどれくらい良く耐えることができるかを判断するために有用である場合がある。試験装置は、HTSワイヤを含んだプレートと、プレートおよび加圧したLN2を含んだ内側LN2タンクと、77Kに加圧タンクを維持するために1.0気圧のLN2を含んだ外側タンクとからなる。
【0159】
テーブル3のセット1からの接合ワイヤのサンプル(例えば、厚さ620μmの積層ワイヤ、250μm(1面当たり)のステンレス、25μmのSS(1面当たり)の8cmのHTSストラップ、厚さ100μmの6cmのバックストラップ、5cmのテーパ)が、30気圧に循環する加圧した液体窒素を含むケーブル信頼性試験を16時間行なわれ、長いケーブル敷設サイクルをシミュレートした。臨界電流(Ic)、接合部抵抗、および物理的な完全性が、各サイクルの前後に評価された。図8aおよび図8bは、Ic保持(図8aに示される)および抵抗(図8bに示される)に関する、累積的な液体窒素圧力・温度サイクルおよびケーブル敷設サイクルを通じた2面ジョイントの信頼性の棒グラフを図示しており、平均初期接合部抵抗は、77Kで1.8μΩであり、平均初期Icは、87.3Aであった。
【0160】
保持Icに対するこれらの試験の影響は、図8aに示されており、それは、LN2加圧処理(PT)−ケーブル敷設サイクルにおけるIc保持を表わしている。図8aに示すように、HTSワイヤのIcは、LN2 PTおよびケーブル敷設処理によっては著しく低下されてはいない。第1の棒グラフは、平均保持Ic%を表わし、第2の棒グラフは、97.7%の信頼レベルを表わしている。棒グラフの各セットは、LN2 PTおよびケーブル敷設サイクルを含む、循環試験の全体に亘る異なる計側点を表わしている。
【0161】
図8bは、LN2 PT−ケーブル敷設サイクルを通じて正規化された接合部抵抗を示し、測定は、初期値に正規化されている。第1の棒グラフは、初期抵抗に関する平均抵抗である。第2の棒グラフは、97.7%の信頼レベルである。図8bのデータは、LN2
PTおよびケーブル敷設サイクルの信頼性処理の全体に亘る接合部抵抗の小さな増大を
示すが、依然として3μΩ未満のレベルである。
【0162】
[実施例4:接合部ケーブル敷設試験]
HTSワイヤに対して行なわれた第2試験は、接合部ケーブル敷設試験であった。この試験では、1mの長さの結合されたHTSテープは、ケーブル敷設の前後に試験されたIcおよび接合部抵抗でケーブル形成器上に螺旋状に巻かれる。次に、Icおよび接合部抵抗は、張力、形成器直径、およびケーブル敷設ピッチに相関付けられた。この試験の変形形態は、長いワイヤについて、シミュレートされたケーブル試験を行なうことである。
【0163】
テーブル3のセット3の接合ワイヤのサンプル(例えば、厚さ400μmの積層ワイヤ、150μm(1面当たり)の真鍮、25μmのSS(1面当たり)の8cmのHTSストラップ、厚さ75μmの6cmバックストラップ、5cmのテーパ)が、接合部ケーブル敷設試験を行なわれた。図9aおよび9bは、この試験の結果を表示し、初期Icは、77.2Aであり、77Kでの接合部抵抗は、0.39μΩであった。図9aは、344B真鍮積層ワイヤの130mmピッチおよび65mmのピッチに対する、保持Ic%対ケーブル形成器直径のグラフである。図9bは、13cmピッチおよび6.5cmピッチに対する、Y軸上の初期抵抗対最終抵抗の比と、X軸上の形成器直径とのグラフである。6.5cmのピッチを備えた16mmの形成器上でさえ、図9aで見られるように、結合された2Gワイヤのケーブル敷設限界には到達しなかった。これらのデータは、ケーブル敷設用途に対して本発明に従って製造された2G積層強化ワイヤの機械的な適合性を示している。さらに、接合部抵抗は、僅かに増大したが、試験中の接合部損傷の証拠はなかった。
【0164】
[実施例5:引張荷重試験]
この試験では、テーブル5に示されるように、テーブル3に記述された結合サンプルを作るのに使用されるストラップ材料の引張荷重が評価された。テーブル5は、HTSストラップの種類、バックストラップの種類、同様の歪み%でのHTSストラップ負荷と比較して0.5%歪みのバックストラップ負荷を列挙している。テーブル5に列挙した範囲は、欠陥の緩和を含む、改善された曲げ特性を持った2面接合部構成を提供した。
【0165】
【表5】
【0166】
ジョイントを作る代替の方法は、ハンダおよびワイヤの両方を共に保持し、傾斜を形成することができる金型を使用することを含んでいる。これは、切断技術を置換することができる。
【0167】
超音波溶接は、頂部および底部ストラップにワイヤをハンダ付けする代わりに使用されることができる。簡潔に、当業者に知られているように、超音波溶接は、金属部分を共に溶接するためにトランスデューサ(例えば、圧電変換器)によって生成される高周波振動
を使用する。ソノトロードは、1つのワークの別のワークに対する振動を引き起こすために使用され、それは、ワーク間に多量の摩擦を生じさせる。この摩擦は、ワーク表面の不純物を除去し、その表面で共に金属を拡散させ、多量のワークの加熱をもたらさない結合を形成する。
【0168】
さらに、冷間圧接が、頂部および底部ストラップにワイヤをハンダ付けする代わりに使用されることもできる。金属層を冷間圧接するシステムおよび方法は、本技術分野で公知である。
【0169】
[参照による援用]
次の文献が、参照によってその全体をここに援用される:1993年7月27日に発行された「MOD前駆体溶液からの高度に構造化された酸化物超電導膜の作成」と題する米国特許5,231,074号明細書;2000年2月8日に発行された「エピタキシャル層を備えた超伝導体物を形成する低真空処理」と題する米国特許第6,022,832号明細書;2000年2月22日に発行された「エピタキシャル層を形成するための低真空処理」と題する米国特許第6,027,564号明細書;2001年2月20日に発行された「無定形の表面堆積した岩塩状の構造を有した薄膜」と題する米国特許第6,190,752号明細書;2003年3月25日に発行された「配向した終端平面を備えた緩衝層を有する多層超伝導体」と題する米国特許第6,537,689号明細書;2000年10月5日に発行された「合金材料」と題する国際公開第00/58530号;2000年10月5日に発行された「合金材料」と題する国際公開第/58044号;1999年4月8日に発行された「改善された酸化抵抗を有した基板」と題する国際公開第99/17307号;1999年4月8日に発行された「超伝導体用の基板」と題する国際公開第99/16941号;1998年12月23日に発行された「酸化物伝導体への金属オキシフルオライドの制御された変換」と題する国際公開第98/58415号;2001年2月15日に発行された「多層物および該多層物を作る方法」と題する国際公開第01/11428号;2001年2月1日に発行された「多層物および該多層物を作る方法」と題する国際公開第01/08232号;2001年2月1日に発行された「多層物を作るための方法および組成」と題する国際公開第01/08235号;2001年2月1日に発行された「コーティングを施した導体厚膜前駆体」と題する国際公開第01/08236号;2001年2月1日に発行された「A.C.損失を減少させたコーティングを施した導体」と題する国際公開第01/08169号;2001年3月1日に発行された「表面制御合金基板およびそのための製造方法」と題する国際公開第01/15245号;2001年2月1日に発行された「強化した清浄度の酸化物層の形成」と題する国際公開第01/08170号;2001年4月12日に発行された「酸化物層反応速度の制御」と題する国際公開第01/26164号;2001年4月12日に発行された「酸化物層方法」と題する国際公開第01/26165号;2001年2月1日に発行された「強化した高温コーティングを施した超伝導体」と題する国際公開第01/08233号;2001年2月1日に発行された「超伝導体を作る方法」と題する国際公開第01/08231号;2002年4月20日に発行された「前駆体溶液および該前駆体溶液を作る方法」と題する国際公開第02/35615号;2005年12月22日に発行された「構造化金属面上の緩衝層の堆積」と題する国際公開第2005/121414号;2005年9月9日に発行された「ナノドット磁束ピニングセンタを備えた酸化皮膜」と題する国際公開第2005/081710号;2002年8月20日に発行された「酸化物青銅組成および該酸化物青銅組成で製造された構造化物」と題する米国特許第6,436,317号明細書;2001年7月31日に出願された「多層超伝導体および該多層超伝導体を作る方法」と題する米国仮特許出願第60/309,116号;2004年9月28日に発行された「超伝導体方法および反応器」と題する米国特許第6,797,313号明細書;2001年7月31日に出願された「超伝導体方法および反応器」と題する米国仮特許出願第60/308,957号;1999年11月18日に出願された「超伝導体物および組
成ならびに該超伝導体物を作る方法」と題する米国仮特許出願第60/166,297号;2005年12月13日に発行された「超伝導体物および組成ならびに該超伝導体物を作る方法」と題する米国特許第6,974,501号明細書;2004年9月29日に出願された「パターン化した酸化物超電導体の結露堆積」と題する米国特許出願第10/955,866号明細書;2005年9月30日に出願された「改善された性能を持った厚肉超伝導体膜」と題する米国特許出願第11/241,636号明細書;2004年9月29日に出願された「低交流損失の繊条質コーティングを施した超伝導体」と題する米国特許出願第10/955,875号明細書;2004年9月29日に出願された「スタックした繊条質コーティングを施した超伝導体」と題する米国特許出願第10/955,801号明細書;2005年3月31日に出願された「繊条質コーティングを施した超伝導体用のメッシュ型スタビライザ」と題する米国仮特許出願第60/667001号;2005年7月29日に出願された「高温超電導ワイヤ用の構造」と題する米国特許出願第11/193,262号明細書;2005年7月29日に出願された「高温超電導ワイヤおよびコイル」と題する米国仮特許出願第60/703,815号;2005年7月29日に出願された「改善された性能を備えた厚肉超伝導体膜」と題する米国仮特許出願第60/703836号;2005年8月19日に発行された「スタックした繊条質コーティングを施した超伝導体」と題する国際公開第06/021003号;2005年8月19日に発行された「低交流損失の繊条質コーティングを施した超伝導体」と題する国際公開第06/023826号;2006年1月10日に出願された「酸化物超電導膜をパターン化する方法」と題する米国仮特許出願第60/757855号;2006年3月30日に出願された「繊条質コーティングを施した超伝導体用のメッシュ型スタビライザ」と題する米国特許出願第11/393626号明細書;2006年7月21日に出願された「密封した高温超伝導体ワイヤの製造」と題する米国特許出願第11/490779号明細書;2006年7月21日に出願された「高電流で小型の柔軟な導体を包含した高温超伝導テープ」と題する米国仮特許出願第60/832716号;2006年7月21日に出願された「高温超伝導体ワイヤ用の低抵抗接合部」と題する米国仮特許出願第60/832724号;2006年7月25日に出願された「平面磁束ピニングセンタを有した高温超伝導体および該高温超伝導体を作るための方法」と題する米国仮特許出願第60/832871号;2006年11月16日に出願された「高温超伝導体における電気めっきを施した高抵抗スタビライザおよびその方法」と題する米国仮特許出願第60/866148号;2007年3月23日に出願された「高温超伝導体ワイヤ用の金属キャップ層の溶液ベースの堆積のためのシステムおよび方法」と題する米国特許出願第11/728108号明細書;2007年4月6日に出願された「改善した特性を有した高温超伝導体のための複合基板」と題する米国仮特許出願第60/922145号;2007年7月23日に出願された「高温超伝導体ワイヤ用の低抵抗接合部」と題する米国特許出願第11/880,586号明細書;および2006年7月21日に出願された「高温超伝導体ワイヤ用の低抵抗接合部」と題する米国特許出願第60/832,724号明細書。
【0170】
本発明は、その精神または本質的な特質から逸脱することなく他の特定の形態で具現化されることが可能である。したがって、本実施形態は、例示であり、限定的なものではないと考えられるべきである。
【技術分野】
【0001】
本願は、高温超伝導体の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
高温超伝導体(HTS)材料は、極めて低い損失で非常に大量の電流を運ぶ手段を提供する。HTS材料は、臨界温度以下に冷やされたときに、直流の電流に対する全抵抗を失い、交流の流れに対するほぼ全抵抗を失う。これらの材料を使用するHTSワイヤ(用語「ワイヤ」は、テープ状の導体を含む様々な導体に対してここでは使用されている)の開発は、高効率で、コンパクトで、且つ環境にやさしい電気機器の新しい世代を約束する。それは、電力グリッド、輸送、材料処理、および他の産業の革新のための可能性を有している。しかしながら、商業ベースに乗った製品には、厳格な工業要求があり、それは、商用用途での技術の実施を複雑にしてきた。
【0003】
現在開発中の第2世代のHTSワイヤ(コーティングを施した導体)技術では、HTS材料は、一般に、多結晶の希土類/アルカリ土類/酸化銅(例えばイットリウム・バリウム酸化銅(YBCO))である。HTS材料が現在有する能力は、その結晶配列または構造と強い関係がある。周辺の結晶の超伝導体粒の配列異常によって形成された結晶粒界は、超伝導流の流れに対する障害を形成するものとして知られているが、この障害は、配列または構造の程度の増加に伴って減少する。したがって、その材料を商業ベースに乗った製品(例えば、HTSワイヤ)にするために、超伝導材料は、比較的長距離に亘って高い結晶配列または構造の程度を維持しなければならない。さもなければ、超伝導電流容量(臨界電流密度)は制限されてしまう。
【0004】
典型的な第2世代のHTSワイヤ100の模式図が図1に示される。ワイヤは、基板110と、緩衝層120(複数の緩衝層を備えることができる)と、超伝導体層130と、空隙またはキャップ層140とを備えており、下で述べるように製作される。この図およびすべての後の図では、寸法は実測するためのものではないことを注記しておく。超伝導体材料は、柔軟なテープ形状の基板110および緩衝層120の上に材料の薄層130をエピタキシャル成長させることにより、大きい領域に亘って高度の結晶配列または構造で製作されることができる。それは、最も上の層の表面がその表面で高度の結晶構造を有するように製作される。結晶の超伝導体材料がこの表面でエピタキシャル成長される場合、その結晶配列は、基板の構造と一致するように成長する。換言すれば、基板構造は、結晶の超伝導体材料のエピタキシャル成長のためのテンプレートを提供する。さらに、基板は、超伝導体層に構造的な完全性を与える。
【0005】
基板110および/または緩衝層120は、高臨界電流密度などの優れた超伝導特性を持ったエピタキシャル超伝導体層130を得るテンプレートを提供するように構造化されることができる。ニッケル、銅、銀、鉄、銀合金、ニッケル合金、鉄合金、ステンレス鋼合金、および銅合金などの材料が、特に基板において使用されることができる。基板110は、基板の圧延加工などを含む塑性変形加工および再結晶(アニール)を使用して構造化されることができる。そのような処理の一例は、圧延支援2軸構造化基板(RABiTS)処理である。この場合、大量の金属が、塑性変形加工およびアニールによって経済的に加工され、高度の構造を実現することができる。
【0006】
1つ以上の緩衝層120は、超伝導体層130を成長させるための適切な結晶学的なテンプレートを備えた基板110の表面上に堆積させるかまたは成長させることができる。さらに、緩衝層120は、超伝導体材料130の結晶格子中への基板110からの原子の
、または、基板材料中の酸素の、長時間に亘る拡散を防止する追加の利点を提供することができる。この拡散すなわち「汚染(poisoning)」は、結晶配列を分裂させ、そのため、超伝導体材料の電気的性質を低下させる。さらに、緩衝層120は、基板110と超伝導体層130との間の付着を強めることがある。さらに、緩衝層120は、超伝導体材料のそれによく一致する熱膨脹係数を有することがある。この技術の商用用途における実施のために、ワイヤが応力に晒される場合、それが基板から超伝導体層の形成間剥離を防止するのを助けることができるので、この特徴は望ましい。
【0007】
代わりに、ハステロイ(HASTELLOY)(ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金)などの非構造化基板110を使用することができ、イオンビーム支援堆積(IBAD)または傾斜基板堆積(ISD)などによって堆積された緩衝層120を構造化することができる。追加の緩衝層120が、HTS層130のエピタキシャル堆積に対する最終的なテンプレートを提供するために、IBADまたはISD層に随意にエピタキシャル堆積されることが可能である。
【0008】
テンプレートとして基板110および1つ以上の緩衝層120の適切な組合せを使用することによって、超伝導体層130は、優れた結晶配列または構造で、テンプレート表面への付着も良好であり、基板からの原子による汚染に対して十分な障壁を持って、エピタキシャル成長することができる。超伝導体層130は、様々な方法のうちのいずれかによって堆積されることができ、有機金属堆積(MOD)処理、有機金属化学堆積法(MOCVD)、パルスレーザ堆積(PLD)、熱または電子ビーム堆積、または他の適切な方法を含んでいる。最後に、キャップ層140が、多層アセンブリに追加されることができ、それは、上からの超伝導体層の汚染を防止するのを助ける。キャップ層140は、例えば、銀または銀−金合金であることができ、例えばスパッタリングによって超伝導体層130上に堆積されることができる。積層後にスリット形成が行なわれる場合、キャップ層は、さらに、例えばハンダ付けによってキャップ層に接合された銅またはステンレス鋼の層などの追加の積層金属の「スタビライザ」層を備えることが可能であり、空隙層を形成する。
【0009】
典型的な製作したままの多層HTSワイヤ100は、5%のタングステン合金を有したニッケル製の2軸構造化基板110と、Y2O3、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)およびCeO2を連続して堆積したエピタキシャル緩衝層120と、YBCOのエピタキシャル層130と、Agの空隙層140とを備えている。これらの層の典型的な厚さは次の通りである:約25〜75μmの基板、各々約75nmの緩衝層、約1μmのYBCO層、および約1〜3μmの空隙層。100mまでの長さのHTSワイヤ100が、上述したような技術を使用して製造されている。
【0010】
使用中に、HTSワイヤが曲げ歪みを許容することができることは望ましい。曲げは、その曲げの外側凸面上の引張歪みと、その曲げの内側凹面上の圧縮歪みとを誘引し、それによって、HTS層を、ワイヤが曲げられている方向に依存して引張または圧縮歪みに晒す。適度な大きさの圧縮応力は、HTS層の電流容量を実際に強めることができるが、一般には、アセンブリ全体を応力(特に、繰返し応力)に晒すことは、ワイヤを機械的損傷の危険に晒すことになる。例えば、HTS層中でクラックが形成され且つ伝播されることがあり、その機械的および電気的性質を低下させるか、または、異なる層が互いからまたは基板から剥離することがある。
【0011】
HTS層中の応力を低減する方法は、例えば、特許文献1および特許文献2において記述されている。例えば、基板と同様の厚さおよび機械的な特徴を持つように選択された銅ストリップは、インサートの上面に接合されることができる。全体的な構造の凡そ真ん中にHTS層を挟むことは、もしアセンブリが曲げられた場合、HTS層は、その曲げの外
側面でも内側面でもない。これらのアセンブリのうちの2つもまた、単一のHTSワイヤ・アセンブリを形成するためにそれぞれの銅ストリップに共に接合することができる。この場合、2つの基板は外方に面し、銅テープはアセンブリの真ん中にある。この場合、第2アセンブリの包含は、追加の電流容量を提供するが、HTS層への電気的な接触は、ワイヤを開いて結合するか、または、接触部分におけるインサートのうちの1つを部分的に除去することを必要とする。
【0012】
コーティングを施した導体HTSワイヤのさらなる問題点は、そのワイヤが使用されるときの環境汚染である。環境暴露は、HTS層の電気的な性能をゆっくりと低下させることがある。さらに、ワイヤに接触する液体窒素などの低温液体の存在下で、その液体は、ワイヤ内の穴に拡散することができ、そして、暖まることによってワイヤを破損させることがある「バルーン」を形成することがある。ワイヤの密閉は、HTS層の環境暴露またはワイヤへの液体の起寒剤の浸透のいずれかを防止するために望ましい。HTSアセンブリ用のシールは、例えば特許文献3に記述されている。
【0013】
コーティングを施した導体の手法は、強化されたテープの長尺製造が確立されるまでに近年非常に進んでいる。しかしながら、これらのテープの実用性は、機械的に強健で、厳しい幾何公差に従う低抵抗ジョイントを介して任意の必要な長さにそれらを作ることができるならば、大幅に増大されるであろう。
【0014】
HTSワイヤは、現場で互いに、終端に、およびリーダに接合されなければならない。同様に、生産量およびワイヤ品質は、工場での接合によって改善されることができ、それによって、ワイヤ価格を低減し、固有の生産限界を超えた長さのワイヤの出荷を可能にする。これらの接合部は、ワイヤと同様の要求を満たさなければならない。
【0015】
初期の接合部は、ラップジョイントであった。ラップジョイントは、2つの材料を重畳させることによって接合する処理である。このように、HTSワイヤの場合、2本のHTSワイヤは、設定距離に亘ってワイヤの端部を重畳させて、次に、ワイヤを共にハンダ付けすることにより接合されることができる。ラップジョイント法は、元のワイヤの厚さの約2.0〜2.2倍である接合部を生じさせる。
【0016】
ラップ法は、第1世代のワイヤまたはテープには適しているが、第2世代のテープ(絶縁層がYBCO膜と基板との間にある)は、接合される親ワイヤの元の配向を保持するために、また、接合部抵抗を最小限にするために、各端部でラップジョイントによる直接ストラップまたは導電性ブリッジの使用を必要とする。同時係属中の米国特許出願第11/880,586号明細書は、導電性ブリッジ接合部をより詳細に開示しており、その開示が参照によってここにその全体を援用される。しかしながら、導電性ブリッジ構造は、単純なラップジョイントを作るのに対して2倍の時間が掛かる。なぜならば、本質的に、2つのラップジョイントを作らなければならないからである(例えば、ストラップの各端部に対して1つ。接合部抵抗を2倍にし、1つの接合部当たりワイヤに2つの塊を取り込む)。第1世代のワイヤでのように、導電性ブリッジが親と同じ材料ならば、接合部は、典型的には親ワイヤの厚さの2.0〜2.2倍になる。より剛性のある厚い領域が配線におけるよりも大きい張力を必要とし、曲げにおける接合部分離の可能性を増大させるので、また、ケーブル・ピッチからの局所的な偏差を最小限にするために可及的に短い長さであるので、接合部は、より良い配線のために親と厚さおよび機械的性質で同様であるべきである。これらの問題は、ケーブル中の適切なワイヤ安定化のためにより厚い積層ストリップが必要になることから悪化する。したがって、物理的且つ機械的にほぼ対称(2面)であり、機械的に強健であるが、規格に適合した、1つの接合部当たり1つのジョイントのみを必要とする接合部の必要性がある一方で、結合されたワイヤの各々の機械的および電気的性質を依然として維持する接合部の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,745,059号明細書
【特許文献2】米国特許第6,828,507号明細書
【特許文献3】米国特許第6,444,917号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これらの考察の観点から、1つ以上の実施形態は、次の接合技術に関する。それは、ダブルラップ導電性ブリッジ接合部をなすために使用される技術よりも2倍速く、その軸について対称な機械的応答を持ったワイヤを提供し、接合部剛性を低減する一方で接合部の強健さを改善する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
2面で、低価格で、低抵抗で、機械的に強健で、薄く、幾何学的に均一な、厚い超伝導体ワイヤ用のジョイントが記述されている。
ここに開示された実施形態は、HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントに関する。該2面ジョイントは、第1積層HTSワイヤ(第1積層ワイヤの幅に亘るテーパを持つテーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層と、該空隙層上の第2ラミネート層とを備える)と、第2積層HTSワイヤ(第2積層ワイヤの幅に亘るテーパを持つテーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該緩衝層上の空隙層と、該空隙層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤのテーパ端部は第2積層HTSワイヤのテーパ端部に隣接し且つ結合している)と、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている第1HTSストラップと、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接したバッキング・ストラップとを備えている。
【0020】
第1HTSストラップは、空隙層と、該空隙層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の緩衝層と、該緩衝層上の基板層とを備えることができ、該空隙層は、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに隣接するとともに電気的に接続されている。加えて、第1HTSストラップは、その基板層上のラミネート層、および/または、導電性の空隙層と第1および第2HTSワイヤとの間に介在する第2ラミネート層を備えることができる。
【0021】
バッキング・ストラップは、第1HTSストラップの厚さの約50%〜約150%または約90%〜約105%にあるように選択されてもよく、アルミニウム、亜鉛、銅、銀、ニッケル、鉄、クロム、鉛、銀、またはモリブデンを含有する金属または合金を含むことができる。加えて、バッキング・ストラップは、第2HTSストラップを備えてもよい。第2HTSストラップは、基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層とを備えることができ、該空隙層は、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに隣接するとともに電気的に接続されている。第2HTSストラップは、その基板層に近接したラミネート層、および/または、導電性の空隙層と第1および第2HTSワイヤとの間に介在する第2ラミネート層をさらに備えることができる。加えて、バッキング・ストラップは、バッキング・ストラップにおいて0.5%の引張歪みを与える第1負荷が、第1HTSストラップに0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第2負荷の30%〜150%の範囲内になるように選択されることができる。さらに、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラッ
プは、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップの組合せにおいて0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第1負荷が、第1積層ワイヤまたは第2積層HTSワイヤのいずれかにおいて0.5%の歪みを与えるのに必要な第2負荷未満となるように選択されることができる。
【0022】
1つ以上の実施形態では、電気的な接続は、240℃未満の溶融温度を持った金属または合金を含むことができ、該金属または合金は、50μΩcm未満の常温抵抗を持つことができる。加えて、金属または合金は、Pb、Sn、Ag、Cu、またはInのうちのいずれかを含むことができる。
【0023】
1つ以上の実施形態では、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤの各々は、さらに、その第1ラミネート層とその基板層との間に介在する非積層HTSワイヤを備えている。該非積層HTSワイヤは、該第1ラミネート層上の第2空隙層と、該空隙層上の第2HTS膜層と、該第2HTS膜層上の第2緩衝層と、該第2緩衝層上の第2基板層とを備えている。非積層HTSワイヤの空隙層は第1ラミネート層に電気的に接続されている。加えて、第2HTSストラップも第1ラミネート層に電気的に接続されてよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤは、各々、約250μm以上、または、約300μm以上の厚さを有している。さらに、第1HTSストラップは、約250μm未満、または、約50μm〜約200μmの厚さを有することができる。幾つかの実施形態では、第1HTSストラップは、バッキング・ストラップの長さよりも約2%〜約70%長い、および/または、バッキング・ストラップの長さよりも約20%〜約50%長いことがある。
【0025】
幾つかの実施形態では、厚肉の積層ワイヤに対する第1テーパ端部の各々の角度は、約3度〜約50度の範囲である。さらに、テーパ端部の長さは、約0.4cm〜約10cmの範囲であることができる。HTSストラップは、約2cm〜26cm、または、約5cm〜26cmの長さを有することができる。バッキング・ストラップは、約6cm〜約16cm、または、約1.5cm〜25cmの長さを有することができる。
【0026】
1つ以上の実施形態では、各積層ワイヤの積層部は、真鍮、ステンレス鋼、もしくは銅からなる材料、または、亜鉛、鉛、銀、錫、ニッケル、鉄、およびアルミニウムを含有する合金から選択されることができる。
【0027】
1つ以上の実施形態では、ジョイントを介した抵抗は、77K〜293Kの温度範囲で3.0μΩ未満であることができる。
1つ以上の実施形態では、2面ジョイントを10cm以下の直径に曲げることによって、該ジョイントにおける物理的な欠陥が生じず、臨界電流が15%以上減少せず、接合部抵抗が5%以上増大しない。さらに、2面ジョイントは形成器上に螺旋状に巻かれ、形成器は、5cm以下の直径を有し、第1および第2厚肉積層ワイヤにおける1kg〜5kg未満の軸方向張力と、65mm以上のピッチとを有し、その結果、2面ジョイントと形成器との間の空隙は、1.5mm未満である。
【0028】
1つ以上の実施形態では、HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントは、第1積層HTSワイヤ(該第1積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える)と、第2積層HTSワイヤ(該第2積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤの角度を持ったテ
ーパ端部に隣接し且つ結合している)と、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている上部サポートと、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層近傍の下部サポートとを備えている。ジョイントの材料および寸法は、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤのHTS膜に中立軸を提供するように選択される。
【0029】
1つ以上の実施形態では、HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントは、第1積層HTSワイヤ(第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える)と、第2積層HTSワイヤ(第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤのテーパ端部に隣接し且つ結合している)と、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている第1HTSストラップと、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接したバッキング・ストラップとを備えている。ジョイントの材料および寸法は、ジョイントに亘り連続した機械的応力を提供するように選択される。
【0030】
別の態様は、5cm以下の直径を有した形成器と、複数のHTSワイヤとを備える、超伝導体ケーブルに関する。ここで開示されるように、実施形態によれば、少なくとも1つのワイヤは、1つ以上の2面ジョイントと、該2面ジョイントの各々と形成器との間の1つ以上の空隙とを有している。該空隙は、1.5mm未満である。超伝導体ケーブルは、約0.1kg〜約7kg(好ましくは、約5kg)の軸方向張力で、且つ、65mm以上のピッチで形成器に螺旋状に巻かれた複数のワイヤを有することができる。
【0031】
別の態様は、超電導ワイヤを巻く方法に関し、ここに開示される実施形態によれば、1つ以上の2面ジョイントを形成するために1つ以上のHTSワイヤを接合することと、螺旋状のパターンで形成器の周囲に1つ以上のHTSワイヤを巻くことと、2面ジョイントと形成器との間に空隙を形成することを含んでいる。空隙は、約1.5mm未満である。本方法の1つ以上の実施形態では、複数のワイヤは、約0.1kg〜約7kgの軸方向張力および65mm以上のピッチで形成器に螺旋状に巻かれる。 用語「HTSワイヤ」または「HTSテープ」は、電流を運ぶのに使用される多層構造を示すように意図されている。ワイヤまたはテープは、実質的に密閉されているか、または、環境から分離されていることが可能である。HTSワイヤまたはテープは、典型的には、基板と、1つ以上の緩衝層と、超伝導体層と、空隙層と、随意に、空隙層の一部と考えることができるスタビライザ層とを備えている。一般に、このHTSワイヤまたはテープでは、超伝導体層は、緩衝層によって金属基板から電気的に分離されることができる。しかしながら、導電性の緩衝層が使用される場合、超伝導体層は、金属基板に電気的に接続されることができる。代わりに、導電性の空隙層は、超伝導体層および基板の両方に接触することができ、これら2つの間の電気的な接触を提供することができる。
【0032】
用語「HTS膜」は、機械的な支持部またはシールに関係しないHTSワイヤまたはテープの層を示すように意図されている。典型的には、HTS膜は、1つ以上の緩衝層と、超伝導体層と、空隙層とを備えている。
【0033】
用語「密閉される」は、実質的に囲まれ、実質的に物理的に環境から分離されることを意味するように意図されている。用語「密閉される」は、通常の状況下の気体または液体による浸透に対する実質的な不浸透性を含むことが可能であるが、これに限定されない。
【0034】
ケーブル化したワイヤの典型的な動作圧は、最大2MPa(20bar)であるが、ワ
イヤは、典型的には最大3MPa(30bar)までの信頼性を試験される。
用語「Ic」は、超電導ワイヤの臨界電流を指し示している。臨界電流は、超伝導体が保持することができる最大電流である。超伝導体中の電流が臨界電流を超える場合、超電導ワイヤはその超伝導性を失う。
【0035】
用語「テーパ縁部」は、超電導ワイヤの幅に沿ったテーパを指し、ワイヤの幅は変化し、ワイヤの厚さはテーパに沿って一定のままである。
「欠陥」は、3cm未満の直径を持ったワイヤにおける局所的な曲げ(屈曲)である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】典型的なHTSワイヤの断面図。
【図2】本発明の1つ以上の実施形態にかかるテーパ端部を有した積層HTSワイヤの斜視図。
【図3】本発明の1つ以上の実施形態にかかる頂部ストラップおよび底部ストラップによって第2積層HTSワイヤに結合された第1積層HTSワイヤの断面図。
【図4】本発明の1つ以上の実施形態にかかる第1HTSストラップおよび底部ストラップによって第2積層HTSワイヤに結合された第1積層HTSワイヤの側断面図。
【図5】本発明の1つ以上の実施形態にかかる第1HTSストラップおよび第2HTSストラップによって第2積層HTSワイヤに結合された第1積層HTSワイヤの側断面図。
【図6】本発明の1つ以上の実施形態にかかる4プライの積層HTSワイヤの側断面図。
【図7】2本のHTSワイヤを製造し、本発明の1つ以上の実施形態にかかる2面ジョイントでそれらを結合する方法のフローチャート。
【図8a】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、HTSワイヤに対するLN2 PT−ケーブル敷設サイクル試験におけるIc保持を示すグラフ。
【図8b】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、HTSワイヤに対するLN2 PT−ケーブル敷設サイクルにおける正規化された接合部抵抗を示すグラフ。
【図9a】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、平均初期Icが77.2Aである、厚さ0.4mmの真鍮積層・ケーブル・ワイヤ接合部に対する保持Ic対形成器直径のグラフ。
【図9b】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、77Kで平均初期接合部抵抗が0.39μΩのときの、厚さ0.4mmの真鍮積層・ケーブル・ワイヤに対する最終および初期の接合部抵抗の比対形成器直径のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0037】
積層高温超伝導体(HTS)ワイヤは、任意の長さのワイヤを形成するためにジョイントで結合される。各HTSワイヤは、別のHTSワイヤに結合するテーパ縁部を有している。頂部ストラップおよび底部ストラップは、機械的安定性を提供し、その結果、ジョイントは、ワイヤ間の電気的接続およびワイヤのHTS層の破損なしに、湾曲または屈曲させることができる。頂部ストラップまたは底部ストラップのいずれかまたは両方がHTSストラップであることができる。さらに、ここに示される実施形態は、超電導ワイヤ用のケーブルまたはコイル巻線中の張力を低減し、コイルおよびケーブルへの塊衝撃を低減し、ジョイントを通じたHTSワイヤ配向を維持し、ジョイントを通じて緩和した機械的応答を提供する(欠陥および電流低下の可能性を低減する)。形状および材質選定の柔軟性は、異なるワイヤおよび用途に対して最適化されたバージョンを提供する。
【0038】
図2は、テーパ端部250を有した積層HTSワイヤ200を示している。積層HTSワイヤ200は、第1ラミネート層210と、基板層220と、緩衝層225と、超伝導体層230と、空隙層235と、第2ラミネート層240とを備えている。積層ワイヤ2
00は、第2積層HTSワイヤ(図示せず)の相補的なテーパ端部を結合するテーパ端部250を備えている。ここで使用されるそれらの用語「相補的な」または「結合する」は、2本のワイヤのテーパ縁部が、同様であるが反対の配向であることを示すように意図されている。その結果、テーパ縁部を互いに対向させて配置したとき、2つのテーパはHTSワイヤと実質的に同様の寸法(例えば、幅、厚さ)のジョイント領域を形成する。第1ラミネート層210および第2ラミネート層240は、真鍮、ステンレス鋼、または銅、あるいは、亜鉛、鉛、錫、ニッケル、鉄、またはアルミニウムを含んだ合金であることができ、ワイヤを強化することができる。緩衝層225および空隙層235は、図1を参照して議論する緩衝層120および空隙層140と実質的に同様である。基板層220は、図1に示され、上で議論したHTSワイヤにおける基板層110と同様であり、例えば、5%のタングステンを含むニッケル合金の2軸構造化基板であることができる。HTS膜層は、連続して堆積した緩衝層225(例えば、エピタキシャル堆積させたY2O3、YSZ、およびCeO2の層)と、HTS酸化物層230(例えば、YBCOのエピタキシャル層(超伝導体層230))と、空隙層235(例えば、図1に示され、上で議論したようなAgおよびハンダ)とを備えている。電流は、超伝導体層230によって運ばれる。
【0039】
テーパ端部250は、3度〜50度の範囲の様々な角度を持つことができる(好ましくは、約5〜約10度の間の角度範囲)。テーパ端部250は、約0.4cm〜約10cmの範囲の長さを有し、好ましくは、約1cm〜約5cmである(テーパ角およびワイヤ厚に依存する)。第2HTSワイヤ(図示せず)は、このHTSワイヤ200のテーパ端部250に結合する相補的なテーパ端部を有することができる。テーパ端部250の使用は、ジョイントの外形を減少させる。ワイヤの2つの部分が互いの上に積層される代わりに結合されるので、ワイヤの外形は、接合範囲で2倍にならない。代わりに、2つのサポート・ストラップの使用であっても、接合範囲でのワイヤの外形厚さは、元のワイヤの外形厚さの2倍未満であり、好ましくは1.6倍未満の厚さである。
【0040】
積層HTSワイヤ200は、厚肉積層HTSワイヤであることができ、ラミネート層の厚さの増大から生じる追加の厚さを伴う。厚肉積層HTSワイヤは、少なくとも250μm、好ましくは300μm超であり、例えば、360μm〜440μmまたは550μm〜650μmの間の厚さを有したワイヤである。薄い積層HTSは、250μm未満の厚さを持ったワイヤであり、好ましくは、約50μm〜約200μmの間である。厚肉積層ワイヤは、例えば電流制限ワイヤとして使用されることができる。厚肉積層ワイヤは、(1)電気的および熱的安定性の増大、(2)より大きい熱容量による故障電流状況における温度上昇の低減、(3)バックリングを生じさせる軸方向圧縮歪みに対する抵抗の増大、(4)軸方向引張荷重許容範囲および応力許容範囲の増大、(5)衝撃または表面接触劣化に対する抵抗の増大、に対して望ましいものである。
【0041】
より厚肉積層材は、強化した強健さを持ったHTSワイヤを提供し、それは、ケーブル敷設の用途において重要である。ワイヤは、撚り線および使用中に複数のサイクルの複雑な捩れ、曲げ、ならびに軸方向応力および歪みに晒される。積層の追加の被覆層の適用は、圧縮応力を加え、それは、ワイヤを局所的に変形させることができ、その結果、それが巻かれる円筒形に丸められたケーブル形成器の表面上の任意の凹凸に馴染む。
【0042】
さらに、より厚いテープは、曲げられたケーブルの内側での典型的な条件である、軸方向の圧縮応力/歪み状態におけるバックリングに対する遥かに大きい抵抗を示す。しかしながら、ワイヤおよび接合部の厚さが増大すると、それらの曲げ剛性が厚さの3乗で増大し、積層の焼戻しがアニール状態まで低減されることができなければ、より厚いワイヤおよび接合部は、ケーブル敷設することが急速に困難になる。
【0043】
さらに、厚肉積層・ケーブルは、実質的な性能劣化なしに、使用中に複数回曲げたり引っ張ったりされることができるので、それは、ケーブル化したHTSワイヤを応力および歪みに晒すべく、より強健である。HTSワイヤが曲げ引きされる場合、曲げられたケーブルの外側および内側のワイヤ部分は、巻きに加えて、軸方向の引張および圧縮歪みを受ける。さらに、一旦ケーブルが作られると、このケーブルは、約20気圧までの圧力で液体窒素により冷却されることができ、HTSワイヤを低温および高圧に晒す。ケーブルが冷却後に加熱されると、液体窒素は、沸騰して無くなり、これ以上ケーブルおよび付随するHTSワイヤを冷却することがない。このように、HTSワイヤは、典型的なケーブル寿命の間、幾度となく熱的且つ圧力的循環を繰り返す(つまり、冷却および加熱段階)。
【0044】
電流制限ケーブルの用途では、積層ストリップは、ヒートシンクとしても機能する。したがって、より厚い材料のそれに比例して高くなる熱容量は、障害中のワイヤにおける温度上昇を同様に減少させ、それによって、ワイヤの電流制限特性を改善し、障害によってもたらされる温度上昇で液体窒素が沸騰する可能性を低減させる。
【0045】
図3は、第2テーパ端部積層HTSワイヤ300に結合された第1テーパ端部積層HTSワイヤ200を示している(第1積層HTSワイヤ200と同様に、第1ラミネート層310と、基板層320と、緩衝層325と、超伝導体層330と、空隙層335と、第2ラミネート層340とを有している)。第2積層HTSワイヤ300のテーパ端部は、先端350を有し、結合されたジョイントは、第2積層HTSワイヤ300の先端350から第1積層HTSワイヤ200の先端365(仮想線で示されている)に延びる長さ360を有している。ジョイント360の長さは、典型的には、約1cm〜約6cmの範囲である。
【0046】
2本のワイヤは、頂部ストラップ370および底部ストラップ380によって互いに保持されることができ、ここでは「バッキング・ストラップ」と呼ばれている。テーパ端部を持った積層HTSワイヤと頂部および底部ストラップの使用は、個々のワイヤの厚さ2倍未満(好ましくは、その厚さの1.6倍未満)であるジョイントを生じさせる。頂部ストラップ370は、第1積層HTSワイヤ200および第2積層HTSワイヤ300の第2ラミネート層に電気的に接続されてよい。底部ストラップ380は、第1積層HTSワイヤ200および第2積層HTSワイヤ300の第1ラミネート層210および310と電気的に接続されてよい。ハンダ層372が、電気的接続または連絡として使用されることも可能である。ハンダは、2本のHTSワイヤのテーパ面を接合するために使用されることも可能である。さらに、ジョイントは、頂部および底部ストラップの端部に、低抵抗ハンダの縁部シール372を備えている。頂部および底部ストラップ370および380の各々は、導電性金属(例えば、アルミニウム、真鍮、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、鉄合金、またはそれらの混合物)からなることができる。さらに、頂部および底部ストラップ370および380の各々は、下で詳細に議論するように、HTSワイヤ・ストラップであることができる。
【0047】
作動中、電流は第1超伝導体層230から流れ、空隙層235を通じて第1積層HTSワイヤ200のラミネート層240へ流れ、ハンダ374を通じて頂部ストラップ370に流れ、そして、ハンダ374を通じて第2積層HTSワイヤ300のラミネート層340に流れ戻り、そして、空隙層335を通じて第2超伝導体層330に流れる。加えて、電流の一部は、第1積層HTSワイヤの超伝導体層230から第2積層ワイヤの超伝導体層330に直接流れることが可能である。対照的に、基板層220および320と緩衝層225および235とは、比較的高い電気抵抗を有しており、絶縁性であることが可能である。したがって、ワイヤ210および310の基板側と接触する底部ストラップ380は、不十分に抵抗性である場合があり、電流は、超伝導層230から緩衝層225および基板層220を通じて底部ジョイント380および第2ワイヤ300に流れないであろう
。
【0048】
この種類の薄型2面ジョイントは、非対称HTSワイヤにとって特に有用であり、ワイヤの片側面が、その反対側よりも遥かに低い電気抵抗を有している。2つのそのようなワイヤを頂部ストラップ370に接合すること、例えば、図3に示すように、電流が2本のワイヤ200および300の各々の低抵抗側と頂部ストラップ370とを通じて流れることを可能にし、ワイヤの全体的な対称性も維持し、その結果、基板220および320は、一般に、ジョイントの両側のワイヤの同じ側に残るであろう。対照的に、2本のワイヤ間の単純なラップジョイントでは、基板がジョイントの一側でワイヤの反対側になってしまう。また、2本のワイヤ間の突合せジョイントは、高い抵抗および低い機械的安定性を呈する。
【0049】
頂部および底部ストラップのさらなる態様は、ジョイントが構造的対称性を有しているということである。積層HTSワイヤの上方および下方の両方のジョイントの対称性は、巻きおよびケーブル敷設作業を改善し、ジョイントの機械的強度および安定性を高める。頂部ストラップ370および底部ストラップ380は、同じ長さまたは異なる長さを有することが可能である。典型的には、頂部ストラップ370および底部ストラップ380は、約1.5インチ〜約30インチの範囲の長さを有している。頂部ストラップ370は、底部ストラップ380よりも長くすることができる。例えば、頂部ストラップの長さは、底部ストラップの長さよりも約2%〜約70%長くすることができ、好ましくは、底部ストラップの長さよりも約20%〜約50%長くすることができる。例えば、頂部ストラップ370は、約6cm〜約24cmの範囲であることができる一方で、底部ストラップ380は、約6cm〜約16cmの範囲であることができる。典型的な長さ組合せは、下記のテーブル1やテーブル2およびテーブル3に列挙されている。
【0050】
【表1】
【0051】
頂部および底部ストラップの各々は、約250μm未満の厚さを有し、好ましくは、約30μm〜約200μmである。底部ストラップは、頂部ストラップの厚さの約50%〜約150%の間で選択されることができる。さらに、頂部ストラップおよび底部ストラップは、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤの幅の約90%〜約105%の間で選択されることが可能である。ジョイントまたは接合部を通じた標準状態の抵抗は、長さの増大によって減少するが、長さが増大した場合、対応する剛性の増大がある。
【0052】
ジョイント自体は比較的長く、長い電気的経路(つまり、大きい接触領域)を提供し、
それに亘って、電流が、第1積層HTSワイヤ200から頂部ストラップ370に、そして、第2積層HTSワイヤ300に送られ、したがって、接合部抵抗を低減する。ジョイントの長さの限定因子は、テーパ縁部の角度である。例えば、ジョイント360は、1.5cm〜約40cmの範囲の長さを有することが可能である。この場合、ジョイントは、単一のHTSワイヤほどの導電性を有しないことがあるが、ジョイントの電気抵抗は、結合されたワイヤが通常の動作電流を流すことを可能にする程度に、低く作られることが可能である。
【0053】
上述のように、低抵抗ハンダ374は、頂部ストラップ370と第2ラミネート層240および340との間の、および、底部ストラップ380と第1ラミネート層210および310との間の結合または電気的接続を提供する。幾つかの実施形態では、電気的接続は、240℃未満の溶融温度および/または50μΩcm未満の常温抵抗を持った金属または合金であることが可能である。例えば、電気的接続は、Pb、Sn、Ag、Cu、In、Sb、Bi、As、またはCdのうちのいずれか1つの金属またはそれらのうちのいずれか1つを含んだ合金であることが可能である。幾つかの実施形態では、ハンダは、インジウム、Pb−Sn、またはPb−Sn:Agであることが可能である。ハンダ374の湿潤は、機械的摩耗を誘引する表面の活性化またはプラズマ・エッチングなどの表面処理によって、そのままであるいは溶融に先立って適用される化学的フラックスと共に、強められることが可能である。ストラップからワイヤまでの4つの遷移領域は、ストラップの端部での出っ張りの頂部からワイヤへおよびそのワイヤに沿ってハンダ縁部シールまたはハンダ「傾斜(ramp)」372を形成することによって随意に処理されることができる。これは、環境端部を実質的に密閉し、また、ワイヤが被る応力および歪みを低減する。それは、幾つかの状況では、さもなければ、超伝導体層およびその臨界電流の欠陥、層間剥離、および/または劣化を生じさせることがある。しかしながら、より詳しく下で議論するように、或る材料および構造の使用は、ジョイントにおける機械的応力を低減し、それによって、幾つかの用途でハンダ縁部シールを提供する必要性を排除する。
【0054】
しかしながら、図3に示されるようなハンダ「傾斜」372がすべての実施形態に含まれる必要はない。例えば、ストラップ370および380の端部が、その代りに、任意形状のハンダ・ビードで密閉されることができる。あるいは、例えば、縁部シール372を使用してストラップ370および380の端部を密閉する必要はまったくないが、むしろ充填材の存在が端部を密閉するために使用されることができる。縁部シールが電流を運ぶのに必要ではないので、追加の材料が、ストラップ370および380の端部への充填材の付着を強めるために使用されることができる。
【0055】
図4は、頂部ストラップが第1HTSストラップ400で或る実施形態を示している。HTSストラップ400は、随意のラミネート層410と、空隙層415と、超伝導体層420と、緩衝層430と、基板層435と、随意の第2ラミネート層440とを備えることができる。1つ以上の実施形態では、HTSストラップ400は、HTSワイヤ200および300よりも薄い。例えば、HTSストラップ400は、約250μmより少なくなることができ、好ましくは、約50μm〜約200μmの間である。超伝導体層420は、該超伝導体層420が空隙層415およびハンダ374を介して第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤの超伝導体層230および330と空隙層415を通じて電気的に接続するように配置される。したがって、HTSストラップ400の基板430は、HTSワイヤ200および300から離隔配置され、その間に、空隙層415と、超伝導層420と、緩衝層430とが配置される。HTSストラップ400は、第1積層HTSワイヤ200および第2積層HTSワイヤ300と同じまたは同様の材料からなることができる。好ましくは、HTSストラップ400は、高強度基板(例えば、ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金「ハステロイ」、または、アメリカン・スーパーコンダクター社(米国マサチューセッツ州ディベ
ンス)によって製造されるサイド積層HTSテープ(PN 8600)当たりの25μm316Lステンレス鋼)上のHTS膜を含んでいる。さらに、HTSストラップ400は、イオンビーム支援堆積(IBAD)でコーティングを施した導体HTSストラップであることができる。さらに、HTSストラップ400は、スーパーパワー社(米国ニューヨーク州スケネクタディ)によって製造されるHTSワイヤの部分であることができる。HTSストラップ400は、頂部ストラップ370と同様の長さおよび幅を有することができる。
【0056】
HTSストラップ400は、頂部ストラップが第2ラミネート層に取り付けられた方法と同様に、ハンダ・ストリップ374によって第1および第2積層ワイヤの第2積層240および340にハンダ付けされることができる。さらに、HTSストラップ400は、ハンダ傾斜372を有することができる。
【0057】
HTSストラップ400を備えたジョイントの抵抗は、平坦な金属ストラップ(図3)を備えたジョイントの抵抗よりも低い。HTSストラップ400の使用は、ジョイントを通じた抵抗を77K〜293Kの温度範囲で3.0μΩ未満に低減することができる。
【0058】
HTSストラップ400は、1つ以上の積層ストリップ410および440を備えることができる。第1積層ストリップ440は、基板435上にあることが可能である。第2積層ストリップ410は、空隙層415と、第1および第2積層HTSワイヤ200および300の第2ラミネート層240および340との間に配置されることが可能である。積層ストリップまたは層410,440は、真鍮、ステンレス鋼、銅、または、亜鉛、鉛、銀、錫、ニッケル、鉄、もしくはアルミニウムを含んだ合金からなることが可能であり、HTSストラップ400に追加の機械的強度を与えるために加えられることがある。
【0059】
HTSストラップが先に積層されたワイヤから構築される場合、ワイヤの各々の片側面の積層ストリップは、例えば、エッチング、機械的な摩耗、または溶解(剥離)によって、除去されるか、または、各端部の意図した重畳領域から厚さを低減されることが可能である。積層ストリップは、ジョイントの長さに亘って望ましいものよりも幾らか高い抵抗を有することが可能であるので、積層ストリップの厚さを除去または低減することは、接合部抵抗を低減する。代わりに、積層ストリップは、ワイヤ中に残されるか、または、積層ストリップを有していないワイヤに加えられる。また、オーバーラップ・ジョイントは、積層ストリップがもたらす接合部抵抗による追加を補償するために、実際的な範囲内で延長されることが可能である。より高い抵抗ジョイントが望まれる場合(故障電流制限ワイヤ)、接合部間のステンレス鋼または他の高抵抗値金属の層は、接合部の全体的な抵抗を上昇させるのに使用される。また、例えば、電気的絶縁コーティングを施したおよび/または密閉されたHTSワイヤは、ここで記述した方法を使用して接合されることができる。ここで、絶縁は、接合作業の前にまたは作業中に重畳領域から除去される。絶縁は、接合部ジョイントが接合領域を電気的に絶縁および/または密閉した後で適用されるかまたは再適用されることが可能である。
【0060】
幾つかの実施形態では、底部ストラップ380は、図5に示されるようなHTSストラップ500であることもできる。底部HTSストラップ500は、頂部HTSストラップ400と同じ特性および構成を有することができ、随意の第1ラミネート層510と、空隙層515と、超伝導体層520と、緩衝層530と、基板層535と、随意の第2ラミネート層540とを備えている(底部HTSストラップ500の空隙層が、第1HTSワイヤ200および第2HTSワイヤ300の第1ラミネート層210および第2ラミネート層310に面することができ、その結果、底部HTSストラップ500のキャップ層が、第1および第2積層HTSワイヤ200および300のラミネート層210および310と電気的に接続すること以外は)。さらに、底部HTSストラップ500は、積層スト
リップが頂部HTSストラップ400に挿入されるのと同様の方法で、底部HTSストラップ500に挿入された積層ストリップを有するように構成されることができる。
【0061】
図6に示される実施形態では、第1積層HTSワイヤ200および第2積層HTSワイヤは、4プライのワイヤであり、基板層220および320に加えて、緩衝層225および325と、超伝導体層230および330と、空隙層235および335と、第1ラミネート層210および310上の第2空隙層600および605と、空隙層600および605上の第2超伝導体層610および615と、第2超伝導体層610および615上の第2緩衝層620および625と、第2緩衝層620および625上の第2基板層630および635とを備えている。この実施形態では、頂部ストラップおよび底部ストラップの両方が、HTSストラップ620および630である。第2HTSストラップ620は、電流の第2空隙層600から第2HTSストラップ620へ、そして第2空隙層605への流れを可能にすることができる。上述したように、HTSストラップ620および630の配向は、ストラップを通じた導電経路を提供するように選択される。さらに、図6に示すようなHTSストラップ620および630は、ラミネート層を含んでいない。しかしながら、上で示したように、HTSストラップ層の各々は、1つ以上のラミネート層を備えることができる。
【0062】
図2〜図6に示した実施形態では、材料および寸法は、積層ワイヤのHTS膜に中立軸を提供するように選択されることができる。例えば、頂部および底部ストラップの長さ、そして各々における積層量は、HTS膜上の機械的応力を低減するように調節されることができる。加えて、材料および寸法は、第1および第2ワイヤ間の機械的連続性を与えるように選択されることができる。
【0063】
1つ以上の実施形態では、頂部および底部ストラップの長さは、接合部と積層HTSワイヤとの間の機械的性質の徐々の遷移を提供するように選択される。それは、同様に、例えば、接合領域が30〜100mm曲げ直径範囲で曲げられる際に欠陥を低減する。欠陥は、ここでは、直径約3cm未満の接合またはワイヤ領域の或る部分の局所的な屈曲として定義されている(たとえその領域の全体的な曲げ直径が5cm以上であっても多くの場合、直径1cmよりもずっと小さい)。例えば、10cm以下(例えば5cmまたは3cm)の直径に曲げられる場合、ここで開示する2面ジョイントは、ジョイントにおける物理的な欠陥を生じさせず、臨界電流を15%以上減少させず、接合部抵抗を5%以上増大させない。
【0064】
さらに、前のジョイントを使用するHTSワイヤは、超伝導体ケーブル用途で使用される場合(超電導ワイヤがケーブルを形成するために形成器に巻きつけられる場合)、ケーブルと形成器との間に約2mmよりも大きい大空隙を生じさせる。これらの大空隙は、ジョイントまたは接合部における剛性によってもたらされる場合があり、超電導ワイヤを弱め、電流の流れに負の影響を与えることがある。しかしながら、ここで開示するような2面ジョイントを有したHTSワイヤの使用は、超伝導体ケーブル用途で、ワイヤと形成器との間の空隙のサイズを低減し、それによって、ワイヤの強度および電流性能を高めることができる。例えば、直径5cmの形成器上にここで開示するような1つ以上の以下2面ジョイントを有した1つ以上の超電導ワイヤを螺旋状に巻くことによって超伝導体ケーブルを形成する場合、ジョイント領域と形成器との間の空隙は、1.5mm未満である。巻線のパラメータは、約0.1kg〜7kgの間の第1および第2積層HTSワイヤにおける軸方向張力と、65mm以上のピッチとを含むことができる。
【0065】
さらに、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップ400は、超伝導層に中立軸を生成するための、ジョイントに亘る最適な負荷を実現するように選択されることができる。超伝導層に対する中立軸の生成は、それがケーブル敷設され歪められる場合(つ
まり、ケーブル敷設用途での通常動作中に)、超伝導層に対する応力および歪みを低減する。この通常動作中における超伝導層上の応力および歪みの低減は、超電導ワイヤを通じた最適な電流の流れを可能にする。例えば、バッキング・ストラップは、該バッキング・ストラップに約0.3%〜0.5%の引張歪みを与える負荷が、第1HTSストラップに0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第2負荷の30%〜150%の範囲内となるように、選択されることができる。このように、バックストラップに同じ歪みを取り込む負荷は、HTSストラップに同じ歪みを取り込む負荷とは異なることがある。加えて、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップは、バッキング・ストラップおよびHTSストラップの両方における歪みを取り込む負荷が、積層HTSワイヤ上で同じ負荷を与えるのに必要な負荷未満となるように、選択されることができる。例えば、バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップの組合せにおける0.5%の引張歪みを与えるのに必要な負荷は、第1積層ワイヤまたは第2積層HTSワイヤのいずれかにおける0.5%の歪みを与えるのに必要な第2負荷未満となる。このように、第1HTSストラップおよびバッキング・ストラップは、それらがジョイントの剛性を実質的に増大させず、ジョイントの機械的連続性に実質的に影響しないように、選択される。
【0066】
幾つかの実施形態では、ストラップ端部から厚いテープ延長部までの遷移でのハンダ傾斜は、ジョイントを通じた機械的連続性を与えることができる。この傾斜は、再度ハンダを流し、厚いテープ表面に沿って約5〜10mm、ストラップの端部からビードを引くことによって形成される。この傾斜は、厚い結合領域から積層HTSワイヤまでの機械的性質の徐々の遷移を強める。
【0067】
図2〜図6に示した実施形態では、基板の裏面(HTSの反対側)は、充填材によって基板の湿潤を強めるために処理されることができる。例えば、2005年7月19日に出願され、「高温超伝導体ワイヤのための構造」と題する米国特許出願第11/193,262号明細書に記述されるように(それらの全内容は参照によって援用される)、幾つかの有用な湿潤層は、Ag、Cu、Ni、Ti、およびTiNを含んでおり、例えばスパッタリングを使用して基板上にコーティングを施すことができる。
【0068】
電流がジョイントを通過する際に積層ストリップを通じて流れる実施形態では、積層ストリップの表面は、ジョイントの抵抗、および/または、積層ストリップへの充填材またはハンダの付着を改善するために、積層に先立って修正されることができる。例えば、Cu積層ストリップについては、ハンダまたはSnなどの低融点金属の層は、より速い結合を可能にするためにストリップに適用されることができる。あるいは、例えば、ステンレス鋼積層ストリップについては、他の低融点合金を使用することができるが、Niストライキ層および純粋なSnの層を適用することができる。Niストライキ層は、ステンレス鋼へのSnの付着を改善するために使用される。Sn層は、超伝導体ワイヤへの後の積層中に、ハンダによるステンレス鋼の湿潤性を改善する。Sn層の厚さは、例えば、40μインチ〜200μインチ以上の範囲であることができる(例えば、50μインチ)。NiおよびSn層の適用前に、ステンレス鋼積層ストリップが、例えば、完全に活性化されたステンレス鋼フラックスの使用によって、または、砥石車で表面を擦ることによって、表面を電気的に、化学的に、または機械的に清掃することによって、作成される。この作成は、ステンレス鋼を活性化させ、表面からCr2O3酸化物を除去し、したがって、表面の抵抗を低減する。あるいは、例えば、真鍮ラミネート層ストリップについては、そのような厳格な活性化は必要ではない。真鍮は、例えば、中性洗剤で清掃され、Sn、Sn:Pb、またはCuでめっきされることができる。
【0069】
異なる実施形態では、異なる材料が、ジョイントおよび/またはワイヤにおける充填材および/またはハンダとしての使用に適している。例えば、下で述べるワイヤ例の多くは、インジウム製のハンダを使用するが、Sn:PbおよびSn−Pb−Agもまた適切で
ある場合がある。アセンブリへの積層ストリップを強化するために使用される充填材によっては、Sn:PbおよびSn−Pb−Agは、充填材と同様の融点および同様の機械的強度を有することが可能であり、したがって、応力による層間剥離を生じさせることがあるハンダと充填材との間の熱的および機械的な誤った組合せを減少させることが可能である。例えば、使用される充填材およびハンダの両方がSn:Pbである場合、誤った組合せは無視でき、したがって、特に強いジョイントをもたらす。このように、幾つかの実施形態では、ハンダ「傾斜」372は、超伝導体層の欠陥、層間剥離、および/または劣化を緩和するために、図3に示されるものと同じ構成を有する必要はない。
【0070】
より低い電気抵抗を持った接合部を形成することは有利であり、これが、電流が接合部を通過する間の、エネルギ損失、冷却コスト、および局所的な過熱を低減する。電気接続材料のより低い電気抵抗は、接合部抵抗を低減する。同時に、接合部が、HTS材料を破損せず(最大約300℃)、且つ、厚肉積層・テープの構造的完全性を、異なる成分を取り付けた積層ハンダを過度に溶かすことによって害することがないような、ハンダ付け方法によって接合がなされる場合、電気接続材料の溶融温度は、十分に低くなければならない。
【0071】
例えば、積層HTSテープは、170〜180℃の範囲で溶けるSn−Pb−Agベースのハンダで作ることができる(Sn:36%±3%、Pb:2%±1%、Ag)。より高い溶融温度およびより低い電気抵抗を持った追加のハンダが、使用に関して試験された。これらの積層ハンダは、215℃〜225℃の範囲で溶けるSn:3.5%±1.5%およびAg、212℃〜222℃の範囲で溶けるSn:3.8%±1.5%、Ag:0.7%±0.3%およびCu、ならびに230〜250℃の範囲で溶けるSn:5%±1.5%およびSbを含んでいる。
【0072】
しかしながら、接合部接続ハンダは、積層ハンダのほぼ溶融温度以下の溶融温度を持った材料を必要とする。Sn−Pb−Ag積層ハンダについては、上述したような、155〜165℃の範囲で溶けるInベースのハンダと、170〜180℃の溶融温度を持った積層ハンダ自体との両方が、接合ハンダとして使用される。したがって、上述したハンダはすべて、積層ハンダの溶融温度が実質的に接合ハンダの溶融温度以上である限り、接合ハンダとして使用されることができる。
【0073】
さらに、上記のハンダは、それらの比較的低い電気抵抗(いずれも室温で25μΩcmを超えず、そのうち幾つかは12μΩcm程度である)、およびそれらの比較的高い強度(35〜55MPa)のために選択される。さらに、Inなどの無鉛ハンダまたは上で列挙した高溶融温度のハンダを利用することもまた有利である。
【0074】
接合部およびワイヤの特性および信頼性を低下させることがある接合ハンダ/積層ハンダの互換性および汚染問題を制限するために、積層および接合の両方に同じハンダを使用することも可能である。要約すると、熟考されたハンダの範囲は、室温で10〜25μΩであり、引張強さが35MPaを超え、溶融温度が155℃〜240℃の範囲である。
【0075】
図7は、図2〜図6に示した接合されたHTSワイヤを生産する典型的な方法を示している。まず、第1HTSワイヤが製作される。基板が提供され(700)、HTS膜(緩衝層、超伝導体、およびキャップ層を備える)がワイヤを形成するために基板上に配置され(710)、基板およびHTS膜層が積層され(720)、テーパ縁部が積層ワイヤにカットされる(730)。これとは別に、第2HTSワイヤが基板(700’)を提供することによって製作され、ワイヤを形成するために基板上にHTS膜(緩衝層、超伝導体、およびキャップ層を備える)を堆積し(710’)、基板およびHTS膜層を積層し(720’)、テーパ縁部を積層ワイヤにカットする(730’)。鋸引きを使用すること
も可能であるが、テーパ端部は、精密シヤーリングツールまたはクリッパで実現されることができる。次に、構成要素の表面は、拭取り清浄され、フラックスをつけられ、接合ハンダを再度流され、接合部固定具の必要な構造に配置される。
【0076】
次に、第1HTSワイヤおよび第2HTSワイヤは、それぞれのテーパ縁部に結合される(740)。次に、頂部ストラップおよび底部ストラップは、第3HTSワイヤまたは金属ストラップから提供される(750)。接合部用のストラップが製造され、必要な長さにカットされる(好ましくは、カット端で著しいバリを発生させず、超伝導性または機械的性質を低下させないように)。ストラップの長さは、ジョイントの全長に亘って満足な電気抵抗を提供するように選択される。次に、頂部および底部ストラップは、例えばハンダ付け(760)を通じて、2つの対になった積層HTSワイヤに接合される。次に、固定圧が熱と共に加えられ、局所的な構成要素の温度を適切に増大させて接合ハンダを溶かし、その部分を圧縮し、圧縮しつつ冷却することによってハンダを凝固させる。各テープ端部の横方向およびテープを通じた位置決めが、接合ハンダ付け、エッジ・ガイドまたはチャネルによる、また、スレッドまたは圧力棒、あるいは上面および下面用の固定具による再度流し中に、維持される。次に、接合部寸法Icおよび抵抗は、典型的には、接合部品質および標準仕様への適合を評価するために測定され、それらは、さらに、構造的完全性を視覚的に検査される。
【0077】
HTSストラップ(頂部または底部)が下で述べるように積層ストリップで強化される場合、接合部および再流れ温度は、材料の初期溶融温度未満に維持され、それは、HTS膜に対して積層ストリップを強化する(例えば、ハンダ、またはキャップ層および積層ストリップとのハンダ相互作用から形成された、その関連する相)。
【0078】
[積層]
積層ストリップを互いに積層する方法は、積層するワイヤ(HTS/基板)を最初の清掃およびフラックス塗布ステーションからなるハンダ積層ラインに供給すること、溶融ハンダバス中に液浸させる一方で、積層ストリップおよびワイヤが工具によって結び付けられ、それらの横方向の位置決めを適切に維持する。次に、アセンブリは、ハンダ・チャンバから出て、ハンダを凝固すべく急速に冷却され、完全に接合した複合物を形成する。幾つかの構造の変形形態は、この方法によって容易に形成されることができ、それらは、4プライ(下で議論する)、3プライ、2プライ、および1プライHTSワイヤを含んでいる。3プライ構造は、2つの積層ストリップを備えることができ、1つは、ハンダによってHTS/基板ワイヤの一側に取り付けられ、HTS部分は、緩衝層と超伝導層とを備えることができる。基板ワイヤは、さらに、強化した湿潤および保護のための銀製「キャップ」層を含むことが可能である。2プライ構造は、HTS/基板ワイヤの基板側に積層された単一の積層ストリップ・ハンダを含むことができる(例えば、HTSストラップ・テープとして使用するために)。1プライ構造は、単にHTS/基板テープであることができ、0〜5μmの厚さ範囲の銀製の内側層と、約25μmの厚さのCu製の外側層(50μm程度の厚さである可能性がある)とを備える可能性がある。
【0079】
4プライの変形形態では、2つのHTS/基板テープが、それぞれHTS/基板アセンブリの各側に対して、2つの積層ストリップと共に積層ラインに供給され、2つのラミネート層の間にはさまれた2つのHTS/基板テープを生じさせ、その結果、基板側は、互いに隣接し、HTS膜は、積層ストリップに面する。
【0080】
必要に応じて、代わりに、電気的絶縁被膜などのシール材が、結合されたワイヤを一側または両側に適用されるか、または、結合されたワイヤを完全に囲むことができる。
一般に、本方法の工程は、与えられたものとは異なる順に実行されることができる。本方法の工程は、手動および/または自動で行なうことができる。例えば、ワイヤの端部の
カットは、手動で行なわれ、ハンダで湿潤した導電性ブリッジおよびワイヤを互いに押すことは、例えば、型の中で自動的に行なれることができる。なお、ジョイントは、2つの別々に製作したワイヤを接合するために単独で使用される必要がなく、ジョイントは、単一のワイヤの切れ目を補修するのに、または、一般には任意の2本のHTSワイヤ間の低抵抗電気的接続を提供するのにも有用である。
【0081】
ここで記述した方法を使用して接合されることができるYBCO HTSワイヤを作る方法が記述される。他の種類のHTSワイヤは、ここで記述した方法を使用して接合されることができ、接合部、第1ワイヤ、および第2ワイヤは、同一である必要がない。例えば、HTSワイヤは、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム酸化銅(BSCCO)超伝導体またはMgB超伝導体であることができる。
【0082】
[HTSワイヤの製造および結合]
[構造化金属基板]
テンプレートは、約1〜10cmあるいはこれよりも大きい幅で提供される。随意に、それは構造化される。HTSワイヤ用の基板としての使用に適した構造化金属基板を作成する方法がまず記述される。第1ステーションでは、基板は、2軸構造を得るように処理される。好ましくは、基板表面は、比較的明確に定義された結晶学的な配向を有している。例えば、その表面は、2軸構造化面(例えば、(113)[211]面)または立方体構造化面(例えば、(100)[011]面または(100)[001]面)であることができる。好ましくは、表面110のX線回折極点図におけるピークは、約20°未満のFWHMを有している(例えば、約15°未満、約10°未満、または約5°〜約10°)。
【0083】
基板の表面は、例えば、圧延加工およびアニールによって作成されることができる。表面は、例えば、任意に配向した多結晶面上の2軸構造化面を形成するために、イオンビーム支援堆積、傾斜基板堆積、および、本技術分野で知られている他の真空技術などの真空処理を使用して作成されることもできる。或る実施形態では(例えば、イオンビーム支援堆積が使用される場合)、基板の表面は、構造化される必要はない(例えば、その表面は、任意に配向した多結晶であることができるか、または、その表面は、無定形であることが可能である)。
【0084】
基板は、緩衝層スタックおよび/または超伝導体材料の層を支持することができる任意の材料から作られることができる。基板として使用されることができる基板材料の例は、例えば、金属、および/またはニッケル、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、および/またはそれらの合金などの合金を含んでいる。幾つかの実施形態では、基板は、スーパーアロイから形成されることができる。或る実施形態では、基板は、比較的大きい表面積(例えば、テープまたはウェハ)を有した物体の形態をなすことができる。これらの実施形態では、基板は、好ましくは、比較的柔軟な材料から作られる。
【0085】
これらの実施形態のうちの幾つかでは、基板は、次の金属のうちの2つを含んだ二元合金である:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、タングステン、金、および亜鉛。例えば、二元合金は、ニッケルおよびクロムから作ることができる(例えば、ニッケルおよび最大20原子百分率のクロム、ニッケルおよび約5〜約18原子百分率のクロム、またはニッケルおよび約10〜約15原子百分率のクロム)。別の例として、二元合金は、ニッケルおよび銅から作ることができる(例えば、銅および約5〜約45原子百分率のニッケル、銅および約10〜約40原子百分率のニッケル、または銅および約25〜約35原子百分率のニッケル)。さらに次の例として、二元合金は、ニッケルおよびタングステンを含むことができる(例えば、約1原子百
分率のタングステン〜約20原子百分率のタングステン、約2原子百分率のタングステン〜約10原子百分率のタングステン、約3原子百分率のタングステン〜約7原子百分率のタングステン、約5原子百分率のタングステン)。二元合金は、さらに比較的少量の不純物を含むことができる(例えば、約0.1原子百分率未満の不純物、約0.01原子百分率の不純物、または約0.005原子百分率未満の不純物)。
【0086】
これらの実施形態に或るものでは、基板は、2つを超える金属を含んでいる(例えば、三元合金または四元合金)。これらの実施形態のうちの幾つかでは、合金は、1つ以上の酸化物形成器を含むことができる(例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Ga、Ge、Zr、Hf、Y、Si、Pr、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu、Th、Er、Tm、Be、Ce、Nd、Sm、Yb、および/またはLaであり、Alは、好ましい酸化物形成器である)と共に、次の金属のうちの2つを含むことができる:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、金、および亜鉛。これらの実施形態の或るものでは、合金は、次の金属のうちの2つを含むことができる:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、金、および亜鉛。そして、合金では、前述の酸化物形成器のうちのいずれかが実質的に欠けていてもよい。
【0087】
合金が酸化物形成器を含んでいる実施形態では、合金は、少なくとも約0.5原子百分率の酸化物形成器(例えば、少なくとも約1原子百分率の酸化物形成器または少なくとも約2原子百分率の酸化物形成器)と、最大約25原子百分率の酸化物形成器(例えば、最大約10原子百分率の酸化物形成器または最大約4原子百分率の酸化物形成器)とを含むことができる。例えば、合金は、銅が平衡した、約25原子百分率〜約55原子百分率のニッケル(例えば、約35原子百分率〜約55原子百分率のニッケルまたは約40原子百分率〜約55原子百分率のニッケル)の酸化物形成器(例えば、少なくとも約0.5のアルミニウム)を含むことができる。別の例として、合金は、ニッケルが平衡した、約5原子百分率〜約20原子百分率のクロム(例えば、約10原子百分率〜約18原子百分率のクロムまたは約10原子百分率〜約15原子百分率のクロム)の酸化物形成器(例えば、少なくとも約0.5の原子のアルミニウム)を含むことができる。合金は、比較的少量の追加の金属(例えば、約0.1原子百分率未満の追加の金属、約0.01原子百分率未満の追加の金属、または約0.005原子百分率未満の追加の金属)を含むことができる。
【0088】
合金から形成される基板は、例えば、粉末形態の構成物質を組合せ、溶融し、および冷却することによって、または、例えば、粉末成分を互いに固形状態において拡散することによって、形成されることができる。次に、合金は、構造化面(例えば、2軸構造化または立方体構造化)を形成するために変形構造化されること(例えば、アニール、圧延、加締め、押出し、および/または引抜き)によって形成されることができる。代わりに、合金構成物質は、ゼリーロール(ロールケーキ)構成にスタックされ、次に、変形構造化されることができる。幾つかの実施形態では、比較的低い熱膨脹係数を持った材料(例えば、Nb、Mo、Ta、V、Cr、Zr、Pd、Sb、NbTi、または、NiAlもしくはNi3Alなどの金属間化合物、または、それらの混合物)は、ロッドに成形され、変形構造化される前に合金に埋め込まれることができる。
【0089】
幾つかの実施形態では、基板の表面上に配置された中間層を使用して、第1エピタキシャル(例えば、緩衝層)層が2軸構造化合金表面上に形成されるまで、表面の安定した酸化物層は低減されることができる。中間層は、エピタキシャル緩衝層膜の初期成長に必要なPO2および温度によって確立されるような条件に晒されたときに、表面の酸化物を形成しない中間層のエピタキシャル金属または合金層を含んでいる。加えて、緩衝層は、基板要素が中間層の表面へ移動し、エピタキシャル層の初期成長中に酸化物を形成するのを防止するための障壁として作用する。そのような中間層がない限り、基板における1つ以
上の要素が、例えば、この酸化物層における構造の不足によって、エピタキシャル層の堆積を著しく阻害することがある基板表面に熱力学的に安定した酸化物を形成すると予想される。
【0090】
これらの実施形態のうちの幾つかでは、中間層は、本来過渡的なものである。ここで使用される「過渡」とは、エピタキシャル膜の初期の核形成および成長に続いて、全体的または部分的に2軸構造化基板に組み込まれるかまたは該基板と組み合わされる中間層を指し示している。これらの状況下でさえ、堆積した膜のエピタキシャルな性質が確立されるまで、中間層および2軸構造化基板は、別体のままである。中間層が或る程度の望ましくない特性を有している場合(例えば、中間層がニッケルのように磁性を有している場合)、過渡的な中間層の使用が好ましいことがある。
【0091】
典型的な中間金属層は、ニッケル、金、銀、パラジウム、およびそれらの合金を含んでいる。追加の金属または合金は、ニッケルおよび/または銅の合金を含むことが可能である。中間層に堆積したエピタキシャル膜または層は、金属酸化物、カルコゲニド、ハロゲン化物、および窒化物を含むことができる。幾つかの実施形態では、中間金属層は、エピタキシャル膜堆積条件下では酸化しない。
【0092】
初期緩衝層構造の核形成および成長がエピタキシャル層を確立する前に、堆積した中間層が基板に完全には組み込まれないかまたは完全には基板に拡散しないことに注意すべきである。これは、基板合金における拡散定数、実際的なエピタキシャル緩衝層の成長条件下での酸化に対する熱力学的安定性、およびエピタキシャル層との格子一致などの適切な属性のに対して金属(または合金)を選択した後で、堆積した金属層の厚さは、エピタキシャル層堆積条件(特に、温度に)に適応されなければならないことを意味している。
【0093】
中間金属層の堆積は、蒸着またはスパッタリングのような真空処理で、または電気めっき(電極ありまたは電極なし)などの電気化学手段によって行われることができる。これらの堆積した中間金属層は、堆積後のエピタキシャルであってもそうでなくてもよいが(堆積中の基板温度に依存する)、エピタキシャルの配向は、堆積後熱処理中に順次得られることができる。
【0094】
或る実施形態では、硫黄が、表面処理において基板の表面上に形成されることができる。硫黄は、例えば、硫黄(例えば、H2S)および水素(例えば、水素、または5%の水素/アルゴンガス混合物などの水素と不活性ガスとの混合物)の源を含んだガス環境に、一定の期間(例えば、約10秒〜約1時間、約1分〜約30分、約5分〜約15分)、中間層を晒すことによって、基板の表面上に形成されることができる。これは、高い温度(例えば、約450℃〜約1100℃、約600℃〜約900℃、850℃の温度)で行なわれることができる。水素(または水素/不活性ガス混合物)の圧力は、比較的低くなるか(例えば、約133Pa(1Torr)未満、約133mPa(1×10−3Torr)未満、約133×10−6Pa(1×10−6Torr)未満)、または比較的高くなることができる(例えば、約133Pa(1Torr)超、約13.3kPa(100Torr)超、約101kPa(760Torr)超)。
【0095】
理論によって拘束されずに、これらの条件下の硫黄源に構造化基板表面を暴露することは、構造化基板表面上の硫黄の上部構造(例えば、c(2×2)上部構造)の形成をもたらすことができると考えられる。さらに、上部構造は、中間層の表面を安定させる(例えば、化学的および/または物理的に安定させる)のに有効である場合があると考えられる。
【0096】
硫黄上部構造の形成に対する1つの手法が記述されているが、そのような上部構造を形
成する他の方法も使用されることができる。例えば、硫黄上部構造(例えば、c(2×2))は、中間層の表面に適切な有機溶液を塗布して適切なガス環境中で適切な温度で加熱することによって、形成されることができる。さらに、それは、基板材料に添加されることがある硫黄を、基板の表面に拡散させることによって得ることができる。
【0097】
中間層の表面上の硫黄上部構造の形成が記述されているが、さらに、他の上部構造が、その表面を安定させる(例えば、化学的および/または物理的に安定させる)のに有効である場合があると考えられる。例えば、その表面上に配置された、酸素上部構造、窒素上部構造、炭素上部構造、カリウム上部構造、セシウム上部構造、リチウム上部構造、またはセレン上部構造が、その表面の安定性を強めるのに有効である場合があると考えられる。
【0098】
さらに、基板は、例えば、ハステロイ(ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金)または他の商用金属を使用して構造化されないことが可能である。
【0099】
[緩衝層]
第2処理ステーションでは、緩衝層は、構造化基板上に形成される。
緩衝材の例は、銀、ニッケル、TbO、CeO2、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、Y2O3、Gd2O3、LaAlO3、SrTiO3、LaNiO3、LaCuO3、SrRuO3、NdGaO3、NdAlO3、および/または当業者に知られているような窒化物のような、金属および金属酸化物を含んでいる。
【0100】
或る実施形態では、エピタキシャル緩衝層は、低真空蒸気堆積処理(例えば、少なくとも約133kPa(1×103Torr)の圧力で行なわれる処理)を使用して形成されることができる。本処理は、緩衝層材料の比較的高い速度および/または集中させたガス・ビームを使用して、エピタキシャル層を形成することを含むことができる。
【0101】
ガス・ビームにおける緩衝層材料は、毎秒約1m超(例えば、毎秒約100m超または毎秒約10m超)の速度を持つことができる。ビーム中の緩衝層材料の少なくとも約50%が、対象面に入射することができる(例えば、ビーム中の緩衝層材料の少なくとも約75%が対象面に入射することができるか、または、ビーム中の緩衝層材料の少なくとも約90%が対象面に入射することができる)。
【0102】
本方法は、低真空環境に対象面(例えば、基板表面または緩衝層表面)を配置し、閾値温度よりも高い温度に対象面を加熱し、それによって、高真空環境(例えば、約13.3mPa(1×10−4Torr)未満など、約133mPa(1×10−3Torr)未満)において、さもなければ同一の条件下で、対象面上に所望の材料のエピタキシャル層を形成することを含むことができる。緩衝層材料(随意に、不活性キャリアガス)を含んだガス・ビームは、少なくとも毎秒約1mの速度で対象面に向けられる。コンディショニング・ガスが、低真空環境では提供される。コンディショニング・ガスは、ガス・ビームに含まれることができるか、または、コンディショニング・ガスは、異なる方法(例えば、環境への漏洩)で低真空環境に導入されることができる。コンディショニング・ガスは、対象面に存在する種(例えば、汚染物質)と反応することができ、それによって、その種を除去する。それは、エピタキシャル緩衝層の核形成を促進することができる。
【0103】
エピタキシャル緩衝層は、高真空(例えば、最大約13.3mPa(1×10−4Torr))での物理蒸着を使用してエピタキシャル層を成長させるのに使用する温度よりも低い表面温度で低真空(例えば、少なくとも約133mPa(1×10−3Torr)、少なくとも約13.3Pa(0.1Torr)、または少なくとも約133Pa(1To
rr))を使用して、対象面で成長されることができる。対象面の温度は、例えば、約25℃〜約800℃(例えば、約500℃〜約800℃または約500℃〜約650℃)であることができる。
【0104】
エピタキシャル層は、例えば少なくとも毎秒約5nm(50オングストローム)などの比較的速い速度で成長することができる。
これらの方法は、2000年2月22日に発行された「エピタキシャル層を形成するための低真空処理」と題する米国特許第6,027,564号明細書、2000年2月8日に発行された「エピタキシャル層を備えた超伝導体物を形成するための低真空処理」と題する米国特許第6,022,832号明細書、および1998年1月15日に出願された「半導体材料のエピタキシャル層を形成するための低真空処理」と題する同一出願人の米国特許出願第09/007,372号明細書に記述されており、それらのすべては参照によってここに援用される。
【0105】
幾つかの実施形態では、エピタキシャル緩衝層は、高スループットで金属または金属酸化物の対象からスパッタリングによって堆積されることができる。基板の加熱は、エピタキシャル形態を得るために、抵抗加熱法またはバイアスおよび電位によって達成されることができる。堆積ドウェルは、金属または金属酸化物の対象から酸化物エピタキシャル膜を形成するために使用されることも可能である。
【0106】
基板上に典型的に存在する酸化物層は、イオンビーム・エッチングとして知られる還元環境内のエネルギ・イオンへの基板表面の暴露によって除去されることができる。イオンビーム・エッチングは、基板から残留酸化物または不純物を除去し、本質的に酸化物のない2軸構造化基板表面を生産することによって、膜堆積に先立って基板を清掃するために使用されることができる。これは、基板と続いて堆積した材料との間の接触を改善する。エネルギ・イオンは、様々なイオン銃(例えば、Ar+などのイオンを基板表面に向かって加速する)によって生成されることができる。好ましくは、150eV超のビーム電圧を持った格子付きイオン源が利用される。代わりに、プラズマが、基板表面近傍の領域に確立されることもできる。この領域内では、イオンは、実質的に酸化物なしの金属面を生成するために、その表面(金属酸化物を含む)から材料を除去するように基板表面と化学的に相互作用する。
【0107】
基板から酸化物層を除去するための別の方法は、基板に電気的にバイアスを掛けることである。基板が陽極電位に対して負とされる場合、それは、堆積(対象がシャッタされる場合)に先立って、または、膜全体の堆積中に、ガスからのイオンによって安定した照射に晒される。このイオン照射は、吸収されたガスについて基板表面を清掃することができ、それは、さもなければ膜に取り込まれ、さらに、高い堆積温度に基板を加熱することが可能である。そのようなイオン照射は、エピタキシャル膜の密度または平滑性の改善によってさらに有利である場合がある。
【0108】
適切に構造化された、実質的に酸化物なしの基板表面の形成に際して、緩衝層の堆積が開始される場合がある。単一の金属または酸化物層を含んだ1つ以上の緩衝層の各々を使用することができる。幾つかの好ましい実施形態では、基板は、これらの実施形態の堆積方法の工程を行なうように構成された装置を通過させられる。例えば、基板がテープの形態をなしている場合、基板は、払出しリールから巻取りリールへと直線的に渡されることができ、リール間を通る際に基板に対して工程を行なうことができる。
【0109】
幾つかの実施形態によれば、基板材料は、該基板材料の融点の約90%未満であるが、所定の堆積速度で、真空環境中の基板材料上で所望の材料のエピタキシャル層を形成するための閾値温度よりも高い高温に加熱される。適切な緩衝層結晶構造および緩衝層平滑性
を形成するために、高い基板温度が一般に好ましい。金属上に酸化物層を成長するための典型的な下限温度は、約200℃〜800℃、好ましくは500℃〜800℃、より好ましくは650℃〜800℃である。放射加熱、対流加熱、および伝導加熱などの様々な周知の方法が、短い長さの基板の(2cm〜10cm)に適している。しかしながら、より長い長さ(1m〜100m)に対しては、これらの技術はよく適さないことがある。さらに、製造工程における所望の高スループット率を得るために、基板は、その処理中に堆積ステーション間を移動されるかまたは移送されなければならない。特定の実施形態によれば、基板は、抵抗加熱によって(つまり、金属基板を通じた電流を通すことによって)加熱される。それは、長寸の製造工程に容易に拡張可能である。この手法は、これらの工程ゾーン間の迅速な移動を瞬間的に可能にする際に功を奏する。温度制御は、加熱される基板に供給される電力を制御するために、光高温計および閉ループ・フィードバック・システムを使用することによって達成されることができる。電流は、基板の少なくとも2つの異なるセグメントにおいて基板と接触する電極によって基板に供給されることができる。例えば、テープの形態の基板がリール間を渡される場合、リールは、それ自体電極として作用することができる。
【0110】
代わりに、ガイドがリール間の基板を移送のために採用される場合、そのガイドは、電極として作用することができる。さらに、電極は、如何なるガイドまたはリールから完全に独立することも可能である。幾つかの好ましい実施形態では、電流は、電流ホイール間の基板テープに加えられる。
【0111】
堆積が適切な温度にある基板に対して行なわれるために、基板上に堆積された金属または酸化物材料は、電流ホイール間の領域に望ましく堆積される。電流ホイールが効率的なヒートシンクになることができ、このようにホイール近傍の領域においてテープを冷却することができるので、材料は、望ましいように、ホイール近傍の領域には堆積されない。スパッタリングの場合、基板上に堆積した荷電材料は、望ましいように、スパッタリング・フラックス経路近傍の他の荷電表面または材料によって影響を受けない。このような理由から、スパッタリング室は、好ましくは、堆積ゾーンから離れた位置に、室壁を含むスパッタリング・フラックスおよび他の堆積要素に影響を及ぼすかまたは反らすことがある構成要素および表面を配置するように、構成される。その結果、それらが適切な堆積温度でテープの領域における金属または金属酸化物の所望の線形のフラックス経路および堆積を変更させない。
【0112】
より多くの詳細が、2000年2月9日に出願された「酸化物層方法」と題する同一出願人の米国特許出願第09/500,701号明細書、および2000年7月14日に出願された「酸化物層方法」と題する同一出願人の米国特許出願第0/615,669号明細書において提供され、それらの両方が参照によって全体にここに援用される。
【0113】
好ましい実施形態では、3つの緩衝層が使用される。Y2O3またはCeO2の層(例えば、約20ナノメータ〜約75ナノメータの厚さ)が、基板表面上に堆積される(例えば、電子ビーム蒸着を使用して)。YSZの層(例えば、約75ナノメータの厚さなど、約0.20ナノメータ〜約700ナノメータの厚さ)が、スパッタリングを使用して(例えば、マグネトロン・スパッタリングを使用して)Y2O3またはCeO2層の表面上に堆積される。CeO2層(例えば、約20ナノメータの厚さ)が、YSZ表面上に堆積される(例えば、マグネトロン・スパッタリングを使用して)。これらの層の1つ以上の表面は、ここで記述するように化学的および/または熱的に調整されることができる。
【0114】
或る実施形態では、緩衝層材料は、当業者に知られる、有機金属堆積を含む液相技術を使用して作成されることができる。そのような技術は、例えば、S.S.ShoupらのJ.Am.Cer.Soc.,Col.81,3019と、D.BeachらのMat.
Res.Soc.Symp.Proc.,col.495,263(1988)と、M.ParanthamanらのSuperconductor Sci.Tech.,vol.12,319(1999)と、D.J.LeeらのJapanese J.Appl.Phys.,vol.38,L178(1999)と、M.W.RupichらのI.E.E.E.Trans.onAppl.Supercon.vol.9,1527とに開示されている。
【0115】
或る実施形態では、溶液コーティング工程が、構造化基板上の酸化物層のうちの1つまたはいずれかの組合せの堆積に使用されることができるが、それらは、構造化金属基板上の初期の(シード)層の堆積に特に適用可能である。シード層の役割は、1)基板に対して酸化雰囲気中で実行されるときに、次の酸化物層の堆積中に酸化から基板を保護すること(例えば、酸化対象からのイットリア安定化ジルコニアのマグネトロン・スパッタ堆積)、および2)次の酸化物層の成長のためのエピタキシャル・テンプレートを提供することである。これらの要求を満たすために、シード層は、金属基板の表面全体に亘ってエピタキシャル成長し、次のエピタキシャル酸化物層の堆積に干渉する如何なる汚染物質を伴わない。
【0116】
或る実施形態では、緩衝層は、イオンビーム支援堆積(IBAD)を使用して形成されることができる。この技術では、緩衝層材料は、蒸発した緩衝層材料が堆積される基板の滑らかな無定形表面にイオンビーム(例えば、アルゴンのイオンビーム)が向けられている間、例えば、電子ビーム堆積、スパッタリング堆積、またはパルスレーザ堆積を使用して蒸着される。
【0117】
例えば、緩衝層は、イオンビームで、岩塩状の構造を有した緩衝層材料(例えば、MgOを含む酸化物または窒化物などの岩塩構造を有した材料)を基板の滑らかで無定形の表面(例えば、約10nm(100オングストローム)未満の二乗平均平方根粗さを有した表面)上に蒸着させることによって、形成されることができる。その結果、緩衝層材料は、面内および面外の両方でほぼ整合(例えば、約13°以下)した表面を有する。
【0118】
緩衝層材料の堆積中に使用される条件は、例えば、約0℃〜約750℃の基板温度(例えば、約0℃〜約400℃、約室温〜約750℃、約室温〜約400℃)、毎秒約0.1nm(1.0オングストローム)〜毎秒約0.44nm(4.4オングストローム)の堆積速度、約200eV〜約1200eVのイオン・エネルギ、および/または約110μA/cm2〜約120μA/cm2のイオン束を含むことができる。
【0119】
幾つかの実施形態では、IBADを使用する場合、基板は、異なる材料(例えば、Si3N4)から形成された滑らかな無定形の表面で、多結晶の非無定形の下部構造(例えば、ニッケル合金などの合金)を有した材料から形成される。
【0120】
或る実施形態では、複数の緩衝層は、元のIBAD表面上のエピタキシャル成長によって堆積されることができる。各緩衝層は、面内および面外の両方でほぼ整合(例えば、約13°以下)させることができる。
【0121】
酸化物緩衝層の形成は、下の基板層の湿潤を促進するように行われることができる。加えて、特定の実施形態では、金属酸化物層の形成は、金属アルコキシドまたはカルボン酸塩前駆体(例えば、「ゾル・ゲル」前駆体)を使用して行われることができる。
【0122】
上述したように、必要に応じて、緩衝層(複数可)は、それらの堆積中にまたはその後にパターン化されることができる。
[前駆体層]
一旦緩衝層を備えた構造化基板が作成されると、前駆体溶液が、上述したようなステーションに堆積される。1つ以上の層は、所望の厚さおよび全体組成を有した前駆体層を形成するように堆積される。
【0123】
適切な前駆体成分は、1つ以上の希土類元素、1つ以上のアルカリ土類金属、および1つ以上の遷移金属の可溶性化合物を含んでいる。ここで使用される、希土類元素、アルカリ土類金属、および遷移金属の「可溶性化合物」は、前駆体溶液に含まれる溶剤に溶けることができるそれらの金属の化合物を指し示している。そのような化合物は、例えば、これらの金属の、塩類(例えば、硝酸塩、酢酸塩、アルコキシド、ハロゲン化物、硫酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩)、酸化物および水酸化物を含んでいる。その化合物の少なくとも1つは、トリフルオロ酢酸塩などのフッ素含有化合物である。
【0124】
使用されることができる金属塩溶液の例は、次の通りである。
幾つかの実施形態では、金属塩溶液は、比較的少量の遊離酸を有することがある。水溶液では、これは、比較的中性のpH(例えば、強酸性でも強アルカリ性でもない)を持った金属塩溶液に対応することがある。金属塩溶液は、超伝導体層が形成される下の層として使用されることができる種々様々な材料を使用して多層超伝導体を作成するために使用されることができる。
【0125】
金属塩溶液の全遊離酸濃度は、1×10−3モル未満(例えば、約1×10−5モルまたは約1×10−7モル未満)であることができる。金属塩溶液に含有することができる遊離酸の例は、トリフルオロ酢酸、酢酸、硝酸、硫酸、ヨウ化物の酸、臭化物の酸および硫酸塩の酸を含んでいる。
【0126】
金属塩溶液が水を含有している場合、前駆体組成は、少なくとも約3(例えば、少なくとも約5または約7)のpHを有することができる。
幾つかの実施形態では、金属塩溶液は、比較的小さい水含有量を有することができる(例えば、約50体積%未満の水、約35体積%未満の水、約25体積%未満の水)。
【0127】
一般に、希土類金属塩は、前駆体溶液に含有される溶剤に溶けることができる、および、中間物(例えば、金属オキシハライド中間物)を形成するために処理される場合、希土類酸化物(例えば、Y2O3)を形成する、任意の希土類金属塩であることができる。希土類元素は、イットリウム、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムのグループから選択されることが可能である。典型的には、アルカリ土類金属は、バリウム、ストロンチウム、またはカルシウムである。そのような塩類は、例えば、構造式M(O2C−(CH2)n−CXX’X’’)(O2C−(CH2)m−CX’’’X’’’’X’’’’’)(O2C−(CH2)p−CX’’’’’’X’’’’’’’X’’’’’’’’)またはM(OR)3を有することができる。Mは、希土類金属である。n、m、およびpは、それぞれ少なくとも1であるが、塩類を溶剤に溶けないようにする数(例えば、1〜10)よりも少ない。X、X’、X’’、X’’’、X’’’’、X’’’’’、X’’’’’’、X’’’’’’’、およびX’’’’’’’’の各々は、H、F、Cl、Br、またはIである。Rは、ハロゲン化可能な(例えば、CH2CF3)または非ハロゲン化可能な炭素含有族である。そのような塩類の例は、ハロゲン化されていないカルボン酸塩、ハロゲン化された酢酸塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリヨード酢酸塩)、ハロゲン化されたアルコキシド、およびハロゲン化されていないアルコキシドを含んでいる。そのようなハロゲン化されていないカルボン酸塩の例は、ハロゲン化されていない酢酸塩(例えば、M(O2C−CH3)3)を含んでいる。一般に、アルカリ土類金属塩は、前駆体溶液に含有される溶剤に溶けることができ、および、中間物(例えば、金属オキシハライド中間物
)を形成するために処理される場合、アルカリ土類酸化物(例えば、BaO)を形成する前にアルカリ土類ハロゲン化物化合物(例えば、BaF2、BaCl2、BaBr2、BaI2)を形成する、任意のアルカリ土類金属塩であることができる。そのような塩類は、例えば、構造式M’(O2C−(CH2)n−CXX’X’’(O2C−(CH2)m−CX’’’X’’’’X’’’’’)またはM’(OR)2を有することができる。M’は、アルカリ土類金属である。nおよびmは、それぞれ少なくとも1つであるが、塩類を溶剤に溶けないようにする数(例えば、1〜10)よりも少ない。X、X’、X’’、X’’’、X’’’’、およびX’’’’’の各々は、H、F、Cl、B、またはIである。Rは、ハロゲン化または非ハロゲン化炭素含有族であることができる。そのような塩類の例は、ハロゲン化された酢酸塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリヨード酢酸塩)を含んでいる。一般に、遷移金属は、銅である。遷移金属塩は、前駆体溶液に含有される溶剤に溶けるべきである。本発明の1つ以上の実施形態では、希土類およびアルカリ土類は、希土類酸化物およびアルカリ土類フッ化物に代えてまたは加えて、金属または混合金属オキシフルオライドを形成することができる。
【0128】
適切な銅の前駆体溶液は、溶剤中に適切な濃度で溶けている銅塩類を含んでいる。そのような化合物は、硝酸銅、カルボン酸塩、アルコキシド、ハロゲン化物、硫酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩を含んでいる。好ましくは、中間物(例えば、金属オキシハライド)への前駆体の変換中に、最小の交さ結合が、個別の遷移金属分子(例えば、銅分子)間に生じる。そのような遷移金属塩類は、例えば、構造式M’’(CXX’X’’−CO(CH)aCO−CX’’’X’’’’X’’’’’)(CX’’’’’’X’’’’’’’X’’’’’’’’−CO(CH)bCOCX’’’’’’’’’X’’’’’’’’’’X’’’’’’’’’’’),M’’(O2C−(CH2)n−CXX’X’’)(O2C−(CH2)m−CX’’’X’’’’X’’’’’)またはM’’(OR)2を有することができる。M’’は、遷移金属である。aおよびbは、それぞれ少なくとも1つであるが、塩類を溶剤に溶けないようにする数(例えば、1〜5)よりも少ない。一般に、nとmは、それぞれ少なくとも1つであるが、塩類を溶剤に溶けないようにする数(例えば、1〜10)よりも少ない。X、X’、X’’、X’’’、X’’’’、X’’’’’、X’’’’’’、X’’’’’’’、X’’’’’’’’、X’’’’’’’’’、X’’’’’’’’’’、X’’’’’’’’’’’の各々は、H、F、Cl、Br、またはIである。Rは、ハロゲン化された(例えばCH2CF3)またはハロゲン化されていない炭素含有族である。これらの塩類は、例えば、ハロゲン化されていない酢酸塩(例えば、M’’(O2C−CH3)2)、ハロゲン化された酢酸塩、ハロゲン化されたアルコキシド、またハロゲン化されていないアルコキシドを含んでいる。そのような塩類の例は、トリクロロ酢酸銅、トリブロモ酢酸銅、トリヨード酢酸銅、Cu(CH3COCHCOCF3)2、Cu(OOCC7H15)2、Cu(CF3COCHCOF3)2、Cu(CH3COCHCOCH3)2、Cu(CH3CH2CO2CHCOCH3)2、CuO(C5H6N)2、およびCu3O3Ba2(O−CH2CF3)4を含んでいる。適切な化合物は、銅のプロピオン酸である。遷移金属のハロゲン化されていないプロピオン酸塩の一例は、Cu(O2CC2H5)2である。幾つかの実施形態では、遷移金属塩は、硫酸銅、硝酸銅、ヨウ化銅、および/またはシュウ酸銅のような単純な塩である。幾つかの実施形態では、nおよび/またはmは、0の値を持つことができる。或る実施形態では、aおよび/またはbは、0の値を持つことができる。ルイス塩基の例示した非限定の列挙は、アンモニアおよびアミンなどの窒素含有化合物を含んでいる。アミンの例は、CH3CN、C5H5N、およびR1R2R3Nを含んでいる。R1R2R3の各々は、独立して、H、アルキル基(例えば、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、脂肪族アルキル基、非脂肪族アルキル基、および/または置換アルキル基)などである。理論によって拘束されずに、金属塩溶液中のルイス塩基の存在は、中間物の形成中に銅の交さ結合を軽減することができると考えられる。これは、ルイス塩基が銅イオンと配位(例えば、選択的配位)することができ、それによって、銅の交さ結合の能力を軽減するので、実現されると
考えられる。
【0129】
前駆体溶液は、典型的には、化学量論量の成分金属化合物(つまり、3:2:1のCu:Ba:RE)を含んでいるが、幾つかの実施形態では、過剰な銅または不足したバリウムが使用される。アルカリ土類金属に対する遷移金属の比は、1.5超であることができ、前駆体溶液は、少なくとも約5mol%超の銅または少なくとも約20mol%超の銅を含むことができる。
【0130】
希土類/アルカリ土類金属/遷移金属酸化物の形成のための前駆体成分に加えて、前駆体溶液は、追加の成分を含むことが可能であり、および/または、磁束ピニングサイトの形成のためのドーパント成分は、ピニングセンタを有した超電導膜を得るための溶液に基づいた方法で使用される。追加の化合物は、金属酸化物または酸化物超電導体膜中の金属を形成する、希土類、アルカリ土類、または遷移金属、セリウム、ジルコニウム、銀、アルミニウム、またはマグネシウムの可溶性化合物などの金属化合物であることができる。前駆体溶液は、該前駆体溶液の前駆体成分の金属を部分的に置換するドーパント金属を提供することができる。一般に、ドーパント成分は、前駆体溶液に含有される溶剤に溶けることができ、酸化物超電導体を形成するために処理されるときに、酸化物超電導体の要素を置換するドーパント金属を提供される、任意の金属化合物であることができる。
【0131】
前駆体溶液で使用される溶剤または溶剤の組合せは、金属塩類(例えば、金属カルボン酸塩)を溶かすことができる任意の溶剤または溶剤の組合せを含むことができる。そのような溶剤は、例えば、アルコール、または酸を含み、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびブタノール、プロピオン酸または水を含んでいる。
【0132】
金属塩溶液がトリフルオロ酢酸塩イオンおよびアルカリ土類金属陽イオン(例えば、バリウム)を含有する実施形態では、金属塩溶液に含有されるアルカリ土類金属(例えば、バリウム・イオン)に対する金属塩溶液(例えば、トリフルオロ酢酸塩の形態)に含有されるフッ素のモル比が、少なくとも約2:1(例えば、約2:1〜約18.5:1または約2:1〜約10:1)であるように、トリフルオロ酢酸塩イオンの全量が選択されることができる。
【0133】
下の層(例えば、その上に1つ以上の緩衝層を配置された合金層を有する基板などの、基板の表面)上に超伝導組成を配置する方法は、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットコーティング、ウェブコーティング、および本技術分野で知られている他の技術を含んでいる。
【0134】
[前駆体層の分解]
次のステーションでは、前駆体成分が分解される。酸化物超電導体への前駆体成分の変換は、連続した厚い前駆体膜に対して以前報告されたように行なわれる。少なくとも1つのフッ化物含有塩類を含んだ前駆体成分の場合、加熱工程の第1工程が、所望の超伝導体材料の1つ以上のオキシフルオライド中間物に有機金属分子を分解するために行なわれる。
【0135】
中間のオキシフルオライド膜は、希土類金属アルカリ土類金属遷移金属酸化物超電導体(以下、RE−123)膜に対する前駆体である任意の膜であると考えられる。RE−123は、次のものから構成される:(1)BaF2、希土類酸化物またはフッ化物、および/または遷移金属、遷移金属酸化物、または遷移金属フッ化物の混合物、(2)RE−Ba−O−F相の希土類酸化物またはフッ化物および/または遷移金属酸化物またはフッ化物から構成された化合物の混合物、あるいは、(3)Ba−O−F相の希土類酸化物またはフッ化物および/遷移金属酸化物またはフッ化物から構成された化合物の混合物。次
に、中間膜は、RE−123酸化物超電導体膜を形成するためにさらに処理されることができる。また、酸化物超電導体膜は、小さいが検出可能なフッ化物残留物を示している。
【0136】
典型的には、この工程の初期温度は、ほぼ室温であり、最終温度は、約190℃〜約210℃、好ましくは約200℃までの温度である。好ましくは、この工程は、少なくとも毎分約5℃温度傾斜、より好ましくは少なくとも毎分約10℃の温度傾斜、そして最も好ましくは少なくとも毎分約15℃温度傾斜を使用して行なわれる。この工程中、公称ガス環境中の水蒸気の分圧は、好ましくは約667Pa(5Torr)〜約6.67kPa(50Torr)、より好ましくは約667Pa(5Torr)〜約4kPa(30Torr)、そして最も好ましくは、約2.67kPa(20Torr)〜約4kPa(30Torr)に維持される。公称ガス環境中の酸素の分圧は、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)、好ましくは約97.3〜98.6kPa(730〜740Torr)に維持される。
【0137】
次に、加熱が、毎分約0.05℃〜毎分約5℃(例えば、毎分約0.5℃〜毎分約1℃)の温度傾斜を使用して、約200℃〜約290℃の温度に継続される。好ましくは、この加熱工程中のガス環境は、サンプルが初期温度から約190℃〜約215℃に加熱されるときに使用する公称ガス環境と実質的に同じである。
【0138】
加熱は、オキシフルオライド中間物を形成するために、約650℃の温度まで、より好ましくは約400℃の温度まで、さらに継続される。この工程は、少なくとも毎分約2℃、より好ましくは少なくとも毎分約3℃、そして最も好ましくは少なくとも毎分約5℃の温度傾斜を使用して好ましくは行なわれる。好ましくは、この加熱工程中のガス環境は、サンプルが初期温度から約190℃〜約215℃に加熱されるときに使用される公称ガス環境と実質的に同じである。
【0139】
代替の実施形態では、フッ化バリウムは、約667Pa(5Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の水蒸気(例えば、約667Pa(5Torr)〜約4kPa(30Torr)の水蒸気または約1.33kPa(10Torr)〜約3.33kPa(25Torr)の水蒸気)の水蒸気圧で、初期温度(例えば、室温)から約190℃〜約215℃(例えば、約210℃)の温度にドライ溶液を加熱することによって形成される。酸素の公称分圧は、例えば、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)であることができる。これらの実施形態では、次に、加熱は、約667Pa(5Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の水蒸気(例えば、約667Pa(5Torr)〜約4kPa(30Torr)の水蒸気または約1.33kPa(10Torr)〜約3.33kPa(25Torr)の水蒸気)の水蒸気圧で、約220℃〜約290℃(例えば、約220℃)の温度まで継続される。酸素の公称分圧は、例えば、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)であることができる。これに続いて、フッ化バリウムを形成するために、約667Pa(5Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の水蒸気(例えば、約667Pa(5Torr)〜約4kPa(30Torr)の水蒸気または約1.33kPa(10Torr)〜約3.33kPa(25Torr)の水蒸気)の水蒸気圧で、少なくとも毎分約2℃(例えば、少なくとも毎分約3℃または少なくとも毎分約5℃)の割合で、約400℃まで加熱する。酸素の公称分圧は、例えば、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)であることができる。
【0140】
或る実施形態では、フッ化バリウムを形成するためにドライ溶液を加熱することは、予熱された炉にコーティングを施したサンプルを入れることを含むことができる(例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、最大約300℃、最大約250℃、約200℃の予熱温度)。炉中のガス環境は、例えば、酸素分子が平
衡した、約101kPa(760Torr)の全ガス圧で、所定分圧の水蒸気(例えば、少なくとも約1.33kPa(10Torr)、少なくとも約2.00kPa(15Torr)、最大約3.33kPa(25Torr)、最大約2.67kPa(20Torr)、約2.27kPa(17Torr))を有することができる。コーティングを施したサンプルが炉温度に達した後、炉温度は、所定温度傾斜率(例えば、少なくとも毎分約0.5℃、少なくとも毎分約0.75℃、最大毎分約2℃、最大毎分約1.5℃、毎分約1℃)で上昇されることができる(例えば、少なくとも約225℃、少なくとも約240℃、最大約275℃、最大約260℃、約250℃に)。この工程は、第1加熱工程で使用されるものと同じ公称ガス環境で行なわれることができる。次に、炉の温度は、所定温度傾斜率(例えば、少なくとも毎分約5℃、少なくとも毎分約8℃、最大毎分約20℃、最大毎分約12℃、毎分約10℃)で、さらに上昇されることができる(例えば、少なくとも約350℃、少なくとも375℃、最大約450℃、最大約425℃、約450℃)。この工程は、第1加熱工程で使用されるものと同じ公称ガス環境で行なわれることができる。
【0141】
金属塩溶液の先の処理は、構成する金属酸化物および金属フッ化物が膜の全体に亘って均質的に分配されたオキシフルオライド中間膜を生じさせることができる。好ましくは、前駆体は、比較的低い欠陥密度を有しており、中間物の厚さを通じたクラックが本質的にない。フッ化バリウム層に対する溶液化学は開示されているが、他の方法もまた他の前駆体溶液に使用されることができる。
【0142】
[酸化物超電導体の形成]
次に、超伝導体中間膜は、さらなる処理ステーションで所望の超伝導体層を形成するために加熱されることができる。典型的には、この工程は、毎分約25℃超の温度傾斜、好ましくは毎分約100℃超の温度傾斜率、より好ましくは毎分約200℃超の温度傾斜率で、約室温から、約700℃〜約825℃の温度、好ましくは約740℃〜800℃の温度、より好ましくは約750℃〜約790℃の温度への加熱によって行なわれる。この工程は、中間のオキシフルオライド膜を形成するために使用される約400〜650℃の最終温度から開始されることもできる。この工程中、処理ガスは、膜にガス状反応物を供給し、膜からガス状反応生成物を除去するために、膜面に亘って流される。この工程中の公称ガス環境は、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)の全圧を有しており、約12.0Pa(0.09Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の酸素と、約1.33Pa(0.01Torr)〜約20.0kPa(150Torr)の水蒸気と、約0Pa(0Torr)〜約100kPa(750Torr)の不活性ガス(窒素またはアルゴン)とから構成される。より好ましくは、公称ガス環境は、約20.0Pa(0.15Torr)〜約667Pa(5Torr)の全圧を有しており、約13.3Pa(0.1Torr)〜約133Pa(1Torr)の酸素と、約6.67Pa(0.05Torr)〜約533Pa(4Torr)の水蒸気とを含んでいる。
【0143】
次に、膜は、約700℃〜825℃の温度、好ましくは約740℃以上〜800℃の温度、より好ましくは約750℃〜約790℃の温度で、少なくとも約5分〜約120分の時間、好ましくは少なくとも約15分〜約60分の時間、より好ましくは少なくとも約15分〜約30分の時間、保持される。この工程中、処理ガスは、膜にガス状反応物を供給し、膜からガス状反応生成物を除去するために、膜面に亘って流される。この工程中の公称ガス環境は、約13.3Pa(0.1Torr)〜約101kPa(760Torr)の全圧を有しており、約11.2Pa(0.09Torr)〜約6.67kPa(50Torr)の酸素と、約1.33Pa(0.01Torr)〜約20.0kPa(150Torr)の水蒸気と、約0Pa(0Torr)〜約100kPa(750Torr)の不活性ガス(窒素またはアルゴン)とから構成される。より好ましくは、公称ガス環境は、約20.0Pa(0.15Torr)〜約667Pa(5Torr)の全圧を有しており
、約13.3Pa(0.1Torr)〜約133Pa(1Torr)の酸素と、約6.67Pa(0.05Torr)〜約533Pa(4Torr)の水蒸気とから構成される。
【0144】
次に、膜は、約6.67Pa(0.05Torr)〜約20.0kPa(150Torr)、好ましくは、約13.3Pa(0.1Torr)〜約66.7Pa(0.5Torr)、より好ましくは約13.3Pa(0.1Torr)〜約26.7Pa(0.2Torr)の酸素圧を持った公称ガス環境中で、室温に冷却される。
【0145】
結果として生じる超伝導体層は、よく整っている(例えば、面内で2軸構造化されているか、または、面からのc−軸であり、面内で2軸構造化されている)。実施形態では、超伝導体材料の大部分が、2軸構造化される。超伝導体層は、少なくとも約1μmの厚さである(例えば、少なくとも約2μmの厚さ、少なくとも約3μmの厚さ、少なくとも約4μmの厚さ、少なくとも約5μmの厚さ)。酸化物超電導体は、その幅に亘って実質的に一定のc−軸配向を有しており、その超伝導体のc−軸配向は、ワイヤまたはテープの表面に実質的に垂直である。
【0146】
超伝導体層は、レーザ・アブレーション、MOCVD、または本技術分野で知られている他の技術によって、そのまま堆積されることもできる(前駆体堆積および個別の反応工程なしに)。
【0147】
[さらなる処理]
キャップ層堆積、酸素アニール、および第2ワイヤへの接合によるさらなる処理が行なわれる。低抵抗で機械的に強健なジョイントを使用してワイヤを接合することによって、脆い酸化物超電導体膜への損傷なしに、通電用途において使用可能な長さのワイヤが形成される。
【0148】
[実施例]
低抵抗で薄型の2面接合部は、厚い強化YBCOでコーティングを施した導体テープ(つまり、図2〜図6に示したHTSワイヤ)を接続するために作られる。典型的な結合されたワイヤは、真鍮、銅、またはステンレス鋼を積層したストリップを有し、より詳しく下で記述するように、様々なハンダで形成される。さらに、幾つかの接合部は、スーパーパワー社のワイヤからなるYBCOワイヤと、基板(基板は、ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金であるハステロイである)と、緩衝層と、YBCOシステムと、3.0μmのAg層と、約1μm〜約50μm、好ましくは約20μm〜約30μmの厚さを持った随意のCu層とから構成される。
【0149】
[実施例1:基本構造および材料]
様々な2面接合部ジョイントは、テーブル2に記述されるような異なるバッキングおよびHTSストラップ材料で作られ、試験された。テーブル2に記述される基本構造が製作および評価された。テーブル2は、様々な実施例、範囲の例、および様々な実施例において想定される範囲を列挙している。
【0150】
【表2】
【0151】
様々な2面接合部ジョイントは、第1厚肉積層ワイヤ端部の第1ラミネート層および第2厚肉積層ワイヤ端部の第1ラミネート層に近接したバックストラップと、第1厚肉および第2積層HTSワイヤ端部の接合テーパと、第1および第2厚肉積層HTSワイヤの第2ラミネート層と電気的に接続するストラップとからなる2面接合部を作る実現可能性を実証するために、テーブル2に記述された利用可能な材料で製作された。
【0152】
幾つかの試験は、これらの2面接合部の幾何学的、機械的、および電気的性質を確立するために、これらのサンプルのうちの幾つかに対して行なわれた。これらの試験の結果は、より詳細に下で議論する。
【0153】
[実施例2:2面接合部]
接合されたサンプルは、上述したテープ(テーブル2)で作られた。テーブル3中のデータは、頂部および底部ストラップの相対的な厚さおよび幅の範囲を示している。このテーブルは、様々なサンプル・セット(1〜11)、接合部の種類、厚肉積層テープの材料、HTSストラップ、およびバックストラップのほか、それらのそれぞれの厚さおよび長さを列挙している。例えば、このテーブルに示すように、HTSストラップに対するバックストラップの相対的な厚さは、52%〜100%の範囲にあった。さらに、ストラップはすべて、厚肉積層HTSテープに対して90%〜105%幅の範囲内であった。さらに、テーブル3では、SSは、316Lステンレス鋼のワイヤを表わし、3プライは、積層−HTS−積層ワイヤ構造を表わし、SPは、ヘインズ・インターナショナル社(インディアナ州ココモ)によって製造される耐食合金HASTALLOYの基板、HTS膜を表わす(〜3umのAg層、サイドワイヤ当たり〜25umのCu外側層)。NM(通常金属)バックストラップ幅は、約4.31mmであり、厚肉積層テープ幅は、約4.4mmであり、積層HTSストラップ幅は、約4.4mmであり、SP HTSストラップ幅は、約4.0mmであり、umは、μmと同義である。
【0154】
【表3】
【0155】
テーブル4は、ここで開示される実施形態にかかるHTSワイヤおよびテープの積層および接合に使用されるハンダ組成のほか、近似融点、引張強さ、および各組成に対する室温での抵抗を列挙している。公称値は、各組成に対して列挙されている。しかしながら、重要な組成の変形形態が、これらの公称値に関して生じる場合がある。
【0156】
【表4】
【0157】
2面ジョイントがここで開示される実施形態に従って作られた後、2面ジョイントは、信頼性試験をされた。信頼性試験は、ケーブル敷設またはケーブル作業の臨界条件を模倣することができ、HTSワイヤ特性への臨界条件の影響を規定する。実施例4〜実施例6について下で記述するカスタム試験は、必要に応じてワイヤに行なう統計的に受容可能な条件を定義する。
【0158】
[実施例3:接合加圧液体窒素(LN2)循環または「密閉性」試験]
この試験は、ケーブル敷設がHTSワイヤを最大20気圧のLN2に暴露するので、HTSワイヤに対する適切な試験である。このように、HTSワイヤが低い温度および圧力にどれくらい良く耐えることができるかを判断するために有用である場合がある。試験装置は、HTSワイヤを含んだプレートと、プレートおよび加圧したLN2を含んだ内側LN2タンクと、77Kに加圧タンクを維持するために1.0気圧のLN2を含んだ外側タンクとからなる。
【0159】
テーブル3のセット1からの接合ワイヤのサンプル(例えば、厚さ620μmの積層ワイヤ、250μm(1面当たり)のステンレス、25μmのSS(1面当たり)の8cmのHTSストラップ、厚さ100μmの6cmのバックストラップ、5cmのテーパ)が、30気圧に循環する加圧した液体窒素を含むケーブル信頼性試験を16時間行なわれ、長いケーブル敷設サイクルをシミュレートした。臨界電流(Ic)、接合部抵抗、および物理的な完全性が、各サイクルの前後に評価された。図8aおよび図8bは、Ic保持(図8aに示される)および抵抗(図8bに示される)に関する、累積的な液体窒素圧力・温度サイクルおよびケーブル敷設サイクルを通じた2面ジョイントの信頼性の棒グラフを図示しており、平均初期接合部抵抗は、77Kで1.8μΩであり、平均初期Icは、87.3Aであった。
【0160】
保持Icに対するこれらの試験の影響は、図8aに示されており、それは、LN2加圧処理(PT)−ケーブル敷設サイクルにおけるIc保持を表わしている。図8aに示すように、HTSワイヤのIcは、LN2 PTおよびケーブル敷設処理によっては著しく低下されてはいない。第1の棒グラフは、平均保持Ic%を表わし、第2の棒グラフは、97.7%の信頼レベルを表わしている。棒グラフの各セットは、LN2 PTおよびケーブル敷設サイクルを含む、循環試験の全体に亘る異なる計側点を表わしている。
【0161】
図8bは、LN2 PT−ケーブル敷設サイクルを通じて正規化された接合部抵抗を示し、測定は、初期値に正規化されている。第1の棒グラフは、初期抵抗に関する平均抵抗である。第2の棒グラフは、97.7%の信頼レベルである。図8bのデータは、LN2
PTおよびケーブル敷設サイクルの信頼性処理の全体に亘る接合部抵抗の小さな増大を
示すが、依然として3μΩ未満のレベルである。
【0162】
[実施例4:接合部ケーブル敷設試験]
HTSワイヤに対して行なわれた第2試験は、接合部ケーブル敷設試験であった。この試験では、1mの長さの結合されたHTSテープは、ケーブル敷設の前後に試験されたIcおよび接合部抵抗でケーブル形成器上に螺旋状に巻かれる。次に、Icおよび接合部抵抗は、張力、形成器直径、およびケーブル敷設ピッチに相関付けられた。この試験の変形形態は、長いワイヤについて、シミュレートされたケーブル試験を行なうことである。
【0163】
テーブル3のセット3の接合ワイヤのサンプル(例えば、厚さ400μmの積層ワイヤ、150μm(1面当たり)の真鍮、25μmのSS(1面当たり)の8cmのHTSストラップ、厚さ75μmの6cmバックストラップ、5cmのテーパ)が、接合部ケーブル敷設試験を行なわれた。図9aおよび9bは、この試験の結果を表示し、初期Icは、77.2Aであり、77Kでの接合部抵抗は、0.39μΩであった。図9aは、344B真鍮積層ワイヤの130mmピッチおよび65mmのピッチに対する、保持Ic%対ケーブル形成器直径のグラフである。図9bは、13cmピッチおよび6.5cmピッチに対する、Y軸上の初期抵抗対最終抵抗の比と、X軸上の形成器直径とのグラフである。6.5cmのピッチを備えた16mmの形成器上でさえ、図9aで見られるように、結合された2Gワイヤのケーブル敷設限界には到達しなかった。これらのデータは、ケーブル敷設用途に対して本発明に従って製造された2G積層強化ワイヤの機械的な適合性を示している。さらに、接合部抵抗は、僅かに増大したが、試験中の接合部損傷の証拠はなかった。
【0164】
[実施例5:引張荷重試験]
この試験では、テーブル5に示されるように、テーブル3に記述された結合サンプルを作るのに使用されるストラップ材料の引張荷重が評価された。テーブル5は、HTSストラップの種類、バックストラップの種類、同様の歪み%でのHTSストラップ負荷と比較して0.5%歪みのバックストラップ負荷を列挙している。テーブル5に列挙した範囲は、欠陥の緩和を含む、改善された曲げ特性を持った2面接合部構成を提供した。
【0165】
【表5】
【0166】
ジョイントを作る代替の方法は、ハンダおよびワイヤの両方を共に保持し、傾斜を形成することができる金型を使用することを含んでいる。これは、切断技術を置換することができる。
【0167】
超音波溶接は、頂部および底部ストラップにワイヤをハンダ付けする代わりに使用されることができる。簡潔に、当業者に知られているように、超音波溶接は、金属部分を共に溶接するためにトランスデューサ(例えば、圧電変換器)によって生成される高周波振動
を使用する。ソノトロードは、1つのワークの別のワークに対する振動を引き起こすために使用され、それは、ワーク間に多量の摩擦を生じさせる。この摩擦は、ワーク表面の不純物を除去し、その表面で共に金属を拡散させ、多量のワークの加熱をもたらさない結合を形成する。
【0168】
さらに、冷間圧接が、頂部および底部ストラップにワイヤをハンダ付けする代わりに使用されることもできる。金属層を冷間圧接するシステムおよび方法は、本技術分野で公知である。
【0169】
[参照による援用]
次の文献が、参照によってその全体をここに援用される:1993年7月27日に発行された「MOD前駆体溶液からの高度に構造化された酸化物超電導膜の作成」と題する米国特許5,231,074号明細書;2000年2月8日に発行された「エピタキシャル層を備えた超伝導体物を形成する低真空処理」と題する米国特許第6,022,832号明細書;2000年2月22日に発行された「エピタキシャル層を形成するための低真空処理」と題する米国特許第6,027,564号明細書;2001年2月20日に発行された「無定形の表面堆積した岩塩状の構造を有した薄膜」と題する米国特許第6,190,752号明細書;2003年3月25日に発行された「配向した終端平面を備えた緩衝層を有する多層超伝導体」と題する米国特許第6,537,689号明細書;2000年10月5日に発行された「合金材料」と題する国際公開第00/58530号;2000年10月5日に発行された「合金材料」と題する国際公開第/58044号;1999年4月8日に発行された「改善された酸化抵抗を有した基板」と題する国際公開第99/17307号;1999年4月8日に発行された「超伝導体用の基板」と題する国際公開第99/16941号;1998年12月23日に発行された「酸化物伝導体への金属オキシフルオライドの制御された変換」と題する国際公開第98/58415号;2001年2月15日に発行された「多層物および該多層物を作る方法」と題する国際公開第01/11428号;2001年2月1日に発行された「多層物および該多層物を作る方法」と題する国際公開第01/08232号;2001年2月1日に発行された「多層物を作るための方法および組成」と題する国際公開第01/08235号;2001年2月1日に発行された「コーティングを施した導体厚膜前駆体」と題する国際公開第01/08236号;2001年2月1日に発行された「A.C.損失を減少させたコーティングを施した導体」と題する国際公開第01/08169号;2001年3月1日に発行された「表面制御合金基板およびそのための製造方法」と題する国際公開第01/15245号;2001年2月1日に発行された「強化した清浄度の酸化物層の形成」と題する国際公開第01/08170号;2001年4月12日に発行された「酸化物層反応速度の制御」と題する国際公開第01/26164号;2001年4月12日に発行された「酸化物層方法」と題する国際公開第01/26165号;2001年2月1日に発行された「強化した高温コーティングを施した超伝導体」と題する国際公開第01/08233号;2001年2月1日に発行された「超伝導体を作る方法」と題する国際公開第01/08231号;2002年4月20日に発行された「前駆体溶液および該前駆体溶液を作る方法」と題する国際公開第02/35615号;2005年12月22日に発行された「構造化金属面上の緩衝層の堆積」と題する国際公開第2005/121414号;2005年9月9日に発行された「ナノドット磁束ピニングセンタを備えた酸化皮膜」と題する国際公開第2005/081710号;2002年8月20日に発行された「酸化物青銅組成および該酸化物青銅組成で製造された構造化物」と題する米国特許第6,436,317号明細書;2001年7月31日に出願された「多層超伝導体および該多層超伝導体を作る方法」と題する米国仮特許出願第60/309,116号;2004年9月28日に発行された「超伝導体方法および反応器」と題する米国特許第6,797,313号明細書;2001年7月31日に出願された「超伝導体方法および反応器」と題する米国仮特許出願第60/308,957号;1999年11月18日に出願された「超伝導体物および組
成ならびに該超伝導体物を作る方法」と題する米国仮特許出願第60/166,297号;2005年12月13日に発行された「超伝導体物および組成ならびに該超伝導体物を作る方法」と題する米国特許第6,974,501号明細書;2004年9月29日に出願された「パターン化した酸化物超電導体の結露堆積」と題する米国特許出願第10/955,866号明細書;2005年9月30日に出願された「改善された性能を持った厚肉超伝導体膜」と題する米国特許出願第11/241,636号明細書;2004年9月29日に出願された「低交流損失の繊条質コーティングを施した超伝導体」と題する米国特許出願第10/955,875号明細書;2004年9月29日に出願された「スタックした繊条質コーティングを施した超伝導体」と題する米国特許出願第10/955,801号明細書;2005年3月31日に出願された「繊条質コーティングを施した超伝導体用のメッシュ型スタビライザ」と題する米国仮特許出願第60/667001号;2005年7月29日に出願された「高温超電導ワイヤ用の構造」と題する米国特許出願第11/193,262号明細書;2005年7月29日に出願された「高温超電導ワイヤおよびコイル」と題する米国仮特許出願第60/703,815号;2005年7月29日に出願された「改善された性能を備えた厚肉超伝導体膜」と題する米国仮特許出願第60/703836号;2005年8月19日に発行された「スタックした繊条質コーティングを施した超伝導体」と題する国際公開第06/021003号;2005年8月19日に発行された「低交流損失の繊条質コーティングを施した超伝導体」と題する国際公開第06/023826号;2006年1月10日に出願された「酸化物超電導膜をパターン化する方法」と題する米国仮特許出願第60/757855号;2006年3月30日に出願された「繊条質コーティングを施した超伝導体用のメッシュ型スタビライザ」と題する米国特許出願第11/393626号明細書;2006年7月21日に出願された「密封した高温超伝導体ワイヤの製造」と題する米国特許出願第11/490779号明細書;2006年7月21日に出願された「高電流で小型の柔軟な導体を包含した高温超伝導テープ」と題する米国仮特許出願第60/832716号;2006年7月21日に出願された「高温超伝導体ワイヤ用の低抵抗接合部」と題する米国仮特許出願第60/832724号;2006年7月25日に出願された「平面磁束ピニングセンタを有した高温超伝導体および該高温超伝導体を作るための方法」と題する米国仮特許出願第60/832871号;2006年11月16日に出願された「高温超伝導体における電気めっきを施した高抵抗スタビライザおよびその方法」と題する米国仮特許出願第60/866148号;2007年3月23日に出願された「高温超伝導体ワイヤ用の金属キャップ層の溶液ベースの堆積のためのシステムおよび方法」と題する米国特許出願第11/728108号明細書;2007年4月6日に出願された「改善した特性を有した高温超伝導体のための複合基板」と題する米国仮特許出願第60/922145号;2007年7月23日に出願された「高温超伝導体ワイヤ用の低抵抗接合部」と題する米国特許出願第11/880,586号明細書;および2006年7月21日に出願された「高温超伝導体ワイヤ用の低抵抗接合部」と題する米国特許出願第60/832,724号明細書。
【0170】
本発明は、その精神または本質的な特質から逸脱することなく他の特定の形態で具現化されることが可能である。したがって、本実施形態は、例示であり、限定的なものではないと考えられるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントにおいて、
第1積層HTSワイヤであって、該第1積層ワイヤの幅に亘るテーパを持つテーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該緩衝層上の空隙層と、該空隙層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、該第2積層ワイヤの幅に亘るテーパを持つテーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層と、該空隙層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤのテーパ端部は第2積層HTSワイヤのテーパ端部に隣接し且つ結合している、第2積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている第1HTSストラップと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接したバッキング・ストラップとを備える2面ジョイント。
【請求項2】
第1HTSストラップは、空隙層と、該空隙層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の緩衝層と、該緩衝層上の基板層とを備え、該空隙層は、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに隣接するとともに電気的に接続されている請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項3】
第1HTSストラップは、その基板層上のラミネート層をさらに備える請求項2記載の2面ジョイント。
【請求項4】
第1HTSストラップは、導電性の空隙層と前記第1および第2HTSワイヤとの間に介在する第2ラミネート層をさらに備える請求項3記載の2面ジョイント。
【請求項5】
前記バッキング・ストラップは、第1HTSストラップの厚さの約50%〜約150%になるように選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項6】
第1HTSストラップおよび前記バッキング・ストラップは、それぞれ第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤの幅の約90%〜約105%となるように選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項7】
前記バッキング・ストラップは、前記バッキング・ストラップにおいて0.5%の引張歪みを与える第1負荷が、第1HTSストラップに0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第2負荷の30%〜150%の範囲内になるように選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項8】
前記バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップは、前記バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップの組合せにおいて0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第1負荷が、第1積層ワイヤまたは第2積層HTSワイヤのいずれかにおいて0.5%の歪みを与えるのに必要な第2負荷未満となるように選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項9】
電気的な接続は、溶融温度が240℃未満の金属または合金を含む請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項10】
電気的な接続は、常温抵抗が50μΩcm未満の金属または合金を含む請求項1記載の
2面ジョイント。
【請求項11】
電気的な接続は、Pb、Sn、Ag、Cu、またはInのうちのいずれかを含有する金属または合金である請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項12】
前記バッキング・ストラップは、第2HTSストラップを備える請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項13】
第2HTSストラップは、基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層とを備え、該空隙層は、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに隣接するとともに電気的に接続されている請求項12記載の2面ジョイント。
【請求項14】
第2HTSストラップは、その基板層に近接したラミネート層をさらに備える請求項13記載の2面ジョイント。
【請求項15】
第2HTSストラップは、導電性の空隙層と第1および第2HTSワイヤとの間に介在する第2ラミネート層をさらに備える請求項14記載の2面ジョイント。
【請求項16】
第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤは各々、その第1ラミネート層とその基板層との間に介在する非積層HTSワイヤをさらに備え、該非積層HTSワイヤは、該第1ラミネート層上の第2空隙層と、該空隙層上の第2HTS膜層と、該第2HTS膜層上の第2緩衝層と、該第2緩衝層上の第2基板層とを備え、前記非積層HTSワイヤの空隙層は該第1ラミネート層と電気的に接続されている請求項12記載の2面ジョイント。
【請求項17】
第2HTSストラップは第1ラミネート層と電気的に接続されている請求項16記載の2面ジョイント。
【請求項18】
前記バッキング・ストラップは、アルミニウム、亜鉛、銅、銀、ニッケル、鉄、クロム、鉛、銀、またはモリブデンを含有する金属または合金を含む請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項19】
第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤは各々、約250μm以上の厚さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項20】
第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤは各々、約300μm以上の厚さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項21】
第1HTSストラップは、約250μm未満の厚さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項22】
第1HTSストラップは、約50μm〜約200μmの厚さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項23】
第1HTSストラップの長さは、前記バッキング・ストラップの長さよりも約2%〜約70%長い請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項24】
第1HTSストラップの長さは、前記バッキング・ストラップの長さよりも約20%〜約50%長い請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項25】
厚肉の積層ワイヤに対する各々の第1テーパ端部の角度は、約3度〜約50度の範囲である請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項26】
前記テーパ端部の各々は、約0.4cm〜約10cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項27】
前記HTSストラップは、約2cm〜26cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項28】
前記HTSストラップは、約5cm〜26cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項29】
前記バッキング・ストラップは、約6cm〜約16cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項30】
前記バッキング・ストラップは、約1.5cm〜25cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項31】
前記各積層ワイヤの積層部は、真鍮、ステンレス鋼、もしくは銅からなる材料、または、亜鉛、鉛、銀、錫、ニッケル、鉄、およびアルミニウムを含有する合金から選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項32】
前記ジョイントを介した抵抗は、77K〜293Kの温度範囲において3.0μΩ未満である請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項33】
前記2面ジョイントを10cm以下の直径に曲げることによって前記ジョイントに物理的な欠陥が生じない請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項34】
前記ジョイントを10cm以下の直径に曲げることによって臨界電流が15%以上減少しない請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項35】
前記ジョイントを10cm以下の直径に曲げることによってジョイントの抵抗が5%以上増大しない請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項36】
前記2面ジョイントは形成器上に螺旋状に巻かれ、前記形成器は、5cm以下の直径を有し、前記2面ジョイントと形成器との間の空隙が1.5mm未満であるように、第1および第2厚肉積層ワイヤにおける約0.1kg〜7kgの軸方向張力と、65mm以上のピッチとを有する、請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項37】
HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントにおいて、
第1積層HTSワイヤであって、該第1積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、該第2積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部がは第2積層HTSワイヤの角度を持ったテーパ端部に隣接し且つ結合している、第2積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている上部サポートと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接した下部サポートとを備え、
前記ジョイントの材料および寸法は、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤのHTS膜に中立軸を提供するように選択される2面ジョイント。
【請求項38】
HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントにおいて、
第1積層HTSワイヤであって、第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤのテーパ端部に隣接し且つ結合している、第2積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている第1HTSストラップと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接したバッキング・ストラップとを備え、
前記ジョイントの材料および寸法は、前記ジョイントに亘り連続した機械的応力を提供するように選択される2面ジョイント。
【請求項39】
超伝導体ケーブルであって、
形成器と、
複数のHTSワイヤであって、少なくとも1つのワイヤが、1つ以上の2面ジョイントと、該2面ジョイントの各々と前記形成器との間の1つ以上の空隙とを有する、複数のHTSワイヤと、を備え、
前記1つ以上の2面ジョイントは、
第1積層HTSワイヤであって、該第1積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、該第2積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤの角度を持ったテーパ端部に隣接し且つ結合している、第1積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている上部サポートと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接した下部サポートとを備える、超伝導体ケーブル。
【請求項40】
前記形成器は、5cm以下の直径を有する請求項39記載の超伝導体ケーブル。
【請求項41】
前記空隙は、1.5mm未満である請求項39記載の超伝導体ケーブル。
【請求項42】
前記複数のワイヤは、約1kg〜約5kgの軸方向張力および65mm以上のピッチで形成器に螺旋状に巻かれている請求項39記載の超伝導体ケーブル。
【請求項43】
超電導ワイヤを巻く方法であって、
1つ以上の2面ジョイントを形成すべく1つ以上のHTSワイヤを接合する工程と、
前記1つ以上のHTSワイヤを形成器の周囲に螺旋状のパターンで巻く工程と、
前記2面ジョイントと前記形成器との間に空隙を形成する工程とを含み、
前記1つ以上の2面ジョイントは、
第1積層HTSワイヤであって、該第1積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、該第2積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤの角度を持ったテーパ端部に隣接し且つ結合している、第2積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている上部サポートと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接した下部サポートとを備える、超電導ワイヤを巻く方法。
【請求項44】
前記複数のワイヤは、約1kg〜約5kgの軸方向張力および65mm以上のピッチで形成器に螺旋状に巻かれる請求項43記載の超電導ワイヤを巻く方法。
【請求項45】
前記空隙は、約1.5mm未満である請求項43記載の超電導ワイヤを巻く方法。
【請求項1】
HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントにおいて、
第1積層HTSワイヤであって、該第1積層ワイヤの幅に亘るテーパを持つテーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該緩衝層上の空隙層と、該空隙層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、該第2積層ワイヤの幅に亘るテーパを持つテーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層と、該空隙層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤのテーパ端部は第2積層HTSワイヤのテーパ端部に隣接し且つ結合している、第2積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている第1HTSストラップと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接したバッキング・ストラップとを備える2面ジョイント。
【請求項2】
第1HTSストラップは、空隙層と、該空隙層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の緩衝層と、該緩衝層上の基板層とを備え、該空隙層は、第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに隣接するとともに電気的に接続されている請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項3】
第1HTSストラップは、その基板層上のラミネート層をさらに備える請求項2記載の2面ジョイント。
【請求項4】
第1HTSストラップは、導電性の空隙層と前記第1および第2HTSワイヤとの間に介在する第2ラミネート層をさらに備える請求項3記載の2面ジョイント。
【請求項5】
前記バッキング・ストラップは、第1HTSストラップの厚さの約50%〜約150%になるように選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項6】
第1HTSストラップおよび前記バッキング・ストラップは、それぞれ第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤの幅の約90%〜約105%となるように選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項7】
前記バッキング・ストラップは、前記バッキング・ストラップにおいて0.5%の引張歪みを与える第1負荷が、第1HTSストラップに0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第2負荷の30%〜150%の範囲内になるように選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項8】
前記バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップは、前記バッキング・ストラップおよび第1HTSストラップの組合せにおいて0.5%の引張歪みを与えるのに必要な第1負荷が、第1積層ワイヤまたは第2積層HTSワイヤのいずれかにおいて0.5%の歪みを与えるのに必要な第2負荷未満となるように選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項9】
電気的な接続は、溶融温度が240℃未満の金属または合金を含む請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項10】
電気的な接続は、常温抵抗が50μΩcm未満の金属または合金を含む請求項1記載の
2面ジョイント。
【請求項11】
電気的な接続は、Pb、Sn、Ag、Cu、またはInのうちのいずれかを含有する金属または合金である請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項12】
前記バッキング・ストラップは、第2HTSストラップを備える請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項13】
第2HTSストラップは、基板層と、該基板層上の緩衝層と、該緩衝層上の超伝導体層と、該超伝導体層上の空隙層とを備え、該空隙層は、第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに隣接するとともに電気的に接続されている請求項12記載の2面ジョイント。
【請求項14】
第2HTSストラップは、その基板層に近接したラミネート層をさらに備える請求項13記載の2面ジョイント。
【請求項15】
第2HTSストラップは、導電性の空隙層と第1および第2HTSワイヤとの間に介在する第2ラミネート層をさらに備える請求項14記載の2面ジョイント。
【請求項16】
第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤは各々、その第1ラミネート層とその基板層との間に介在する非積層HTSワイヤをさらに備え、該非積層HTSワイヤは、該第1ラミネート層上の第2空隙層と、該空隙層上の第2HTS膜層と、該第2HTS膜層上の第2緩衝層と、該第2緩衝層上の第2基板層とを備え、前記非積層HTSワイヤの空隙層は該第1ラミネート層と電気的に接続されている請求項12記載の2面ジョイント。
【請求項17】
第2HTSストラップは第1ラミネート層と電気的に接続されている請求項16記載の2面ジョイント。
【請求項18】
前記バッキング・ストラップは、アルミニウム、亜鉛、銅、銀、ニッケル、鉄、クロム、鉛、銀、またはモリブデンを含有する金属または合金を含む請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項19】
第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤは各々、約250μm以上の厚さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項20】
第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤは各々、約300μm以上の厚さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項21】
第1HTSストラップは、約250μm未満の厚さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項22】
第1HTSストラップは、約50μm〜約200μmの厚さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項23】
第1HTSストラップの長さは、前記バッキング・ストラップの長さよりも約2%〜約70%長い請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項24】
第1HTSストラップの長さは、前記バッキング・ストラップの長さよりも約20%〜約50%長い請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項25】
厚肉の積層ワイヤに対する各々の第1テーパ端部の角度は、約3度〜約50度の範囲である請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項26】
前記テーパ端部の各々は、約0.4cm〜約10cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項27】
前記HTSストラップは、約2cm〜26cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項28】
前記HTSストラップは、約5cm〜26cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項29】
前記バッキング・ストラップは、約6cm〜約16cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項30】
前記バッキング・ストラップは、約1.5cm〜25cmの長さを有する請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項31】
前記各積層ワイヤの積層部は、真鍮、ステンレス鋼、もしくは銅からなる材料、または、亜鉛、鉛、銀、錫、ニッケル、鉄、およびアルミニウムを含有する合金から選択される請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項32】
前記ジョイントを介した抵抗は、77K〜293Kの温度範囲において3.0μΩ未満である請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項33】
前記2面ジョイントを10cm以下の直径に曲げることによって前記ジョイントに物理的な欠陥が生じない請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項34】
前記ジョイントを10cm以下の直径に曲げることによって臨界電流が15%以上減少しない請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項35】
前記ジョイントを10cm以下の直径に曲げることによってジョイントの抵抗が5%以上増大しない請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項36】
前記2面ジョイントは形成器上に螺旋状に巻かれ、前記形成器は、5cm以下の直径を有し、前記2面ジョイントと形成器との間の空隙が1.5mm未満であるように、第1および第2厚肉積層ワイヤにおける約0.1kg〜7kgの軸方向張力と、65mm以上のピッチとを有する、請求項1記載の2面ジョイント。
【請求項37】
HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントにおいて、
第1積層HTSワイヤであって、該第1積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、該第2積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部がは第2積層HTSワイヤの角度を持ったテーパ端部に隣接し且つ結合している、第2積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている上部サポートと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接した下部サポートとを備え、
前記ジョイントの材料および寸法は、第1積層HTSワイヤおよび第2積層HTSワイヤのHTS膜に中立軸を提供するように選択される2面ジョイント。
【請求項38】
HTS積層ワイヤ用の2面ジョイントにおいて、
第1積層HTSワイヤであって、第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤのテーパ端部に隣接し且つ結合している、第2積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている第1HTSストラップと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接したバッキング・ストラップとを備え、
前記ジョイントの材料および寸法は、前記ジョイントに亘り連続した機械的応力を提供するように選択される2面ジョイント。
【請求項39】
超伝導体ケーブルであって、
形成器と、
複数のHTSワイヤであって、少なくとも1つのワイヤが、1つ以上の2面ジョイントと、該2面ジョイントの各々と前記形成器との間の1つ以上の空隙とを有する、複数のHTSワイヤと、を備え、
前記1つ以上の2面ジョイントは、
第1積層HTSワイヤであって、該第1積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、該第2積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤの角度を持ったテーパ端部に隣接し且つ結合している、第1積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている上部サポートと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接した下部サポートとを備える、超伝導体ケーブル。
【請求項40】
前記形成器は、5cm以下の直径を有する請求項39記載の超伝導体ケーブル。
【請求項41】
前記空隙は、1.5mm未満である請求項39記載の超伝導体ケーブル。
【請求項42】
前記複数のワイヤは、約1kg〜約5kgの軸方向張力および65mm以上のピッチで形成器に螺旋状に巻かれている請求項39記載の超伝導体ケーブル。
【請求項43】
超電導ワイヤを巻く方法であって、
1つ以上の2面ジョイントを形成すべく1つ以上のHTSワイヤを接合する工程と、
前記1つ以上のHTSワイヤを形成器の周囲に螺旋状のパターンで巻く工程と、
前記2面ジョイントと前記形成器との間に空隙を形成する工程とを含み、
前記1つ以上の2面ジョイントは、
第1積層HTSワイヤであって、該第1積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備える、第1積層HTSワイヤと、
第2積層HTSワイヤであって、該第2積層HTSワイヤの幅に亘るテーパを持つ第1テーパ端部を有し、第1ラミネート層と、該第1ラミネート層上の基板層と、該基板層上のHTS膜層と、該HTS膜層上の第2ラミネート層とを備え、第1積層HTSワイヤの第1テーパ端部は第2積層HTSワイヤの角度を持ったテーパ端部に隣接し且つ結合している、第2積層HTSワイヤと、
第1積層HTSワイヤの第2ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第2ラミネート層とに電気的に接続されている上部サポートと、
第1積層HTSワイヤの第1ラミネート層と第2積層HTSワイヤの第1ラミネート層とに近接した下部サポートとを備える、超電導ワイヤを巻く方法。
【請求項44】
前記複数のワイヤは、約1kg〜約5kgの軸方向張力および65mm以上のピッチで形成器に螺旋状に巻かれる請求項43記載の超電導ワイヤを巻く方法。
【請求項45】
前記空隙は、約1.5mm未満である請求項43記載の超電導ワイヤを巻く方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9a】
【図9b】
【図8a】
【図8b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9a】
【図9b】
【図8a】
【図8b】
【公表番号】特表2011−529255(P2011−529255A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520160(P2011−520160)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/051392
【国際公開番号】WO2010/011739
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(500117059)アメリカン スーパーコンダクター コーポレイション (13)
【氏名又は名称原語表記】AMERICAN SUPERCONDUCTOR CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/051392
【国際公開番号】WO2010/011739
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(500117059)アメリカン スーパーコンダクター コーポレイション (13)
【氏名又は名称原語表記】AMERICAN SUPERCONDUCTOR CORPORATION
【Fターム(参考)】
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