高炉炉体のセメント吹付け厚さと跳ね返り量の測定方法
【課題】 高炉内のセメント吹付け効果を評価する、および高炉の炉壁残厚を測定する。
【解決手段】 高炉内のセメント吹付け効果を評価する方法は、(a)高炉の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、(b)高炉の内壁に対してセメント吹付け作業を行うステップと、(c)高炉の内壁にセメント吹付けをした後の外形に対する第二回の3次元点群を測定取得するステップと、(d)ステップ(a)の第一回の3次元点群とステップ(c)の第二回の3次元点群を比較して、セメント吹付けの厚さを求めるステップと、を含む。これによって、セメント吹付け品質に厚さが均一ではない状況がないかを検査することができる。
【解決手段】 高炉内のセメント吹付け効果を評価する方法は、(a)高炉の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、(b)高炉の内壁に対してセメント吹付け作業を行うステップと、(c)高炉の内壁にセメント吹付けをした後の外形に対する第二回の3次元点群を測定取得するステップと、(d)ステップ(a)の第一回の3次元点群とステップ(c)の第二回の3次元点群を比較して、セメント吹付けの厚さを求めるステップと、を含む。これによって、セメント吹付け品質に厚さが均一ではない状況がないかを検査することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の内壁の外形を測定する方法に関し、特に高炉内のセメント吹付け効果を評価する方法および高炉の炉壁残厚を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3次元レーザスキャナは、文献の〔曾義星、史天元、「新世代の測定利器である3次元レーザスキャナ」、科学発展、2003年5月、第365号〕に開示されているように、サンプリングの速さ(25000点/秒)、正確さ(約20mm)および測定範囲の広さ(100m以上)などの特性によって、土木、建築および古跡保護など、多くの分野に適用されている。鋼鉄生産プロセスにおいて転炉のライニング厚さ(例えば、米国特許第6,922,251号)、および材面外形(例えば文献、〔E. Meller and J.Hellmich、「Full Automation Of Stacker and Reclaimers」、Bulk Solids Handling,Vol 21,No,5,2001〕)に適用することができると開示されている。
【0003】
図1は、従来の高炉を示す概略図である。高炉1は、炉頂11、炉の喉部(炉喉)12、炉体13、炉の腰部(炉腰)4、炉腹15、および炉床16を含み、製鉄技術における重要な反応器である。炉頂11は円錐状であり、炉の喉部(炉喉)12は円柱状であり、炉頂11および炉の喉部(炉喉)12の材質は鋼である。炉頂11に、開けて高炉1の内部を露出させることができる複数のマンホール(Manhole)111がある。炉体13、炉の腰部(炉腰)14、炉腹15および炉床16の炉壁の材質は耐火材であり、それらによって液体鉄17が収容される。液体鉄17は材面171を有する。
【0004】
図2は、従来の高炉が長期間にわたって稼動した後に炉体の炉壁が侵食されたことを示す概略図である。図においてT1は炉体13の炉壁の最初の厚さを表し、T2は炉体13の炉壁が侵食された後の残存厚さを表す。高炉1が長い年月にわたって高温高圧の厳しい環境において稼動するため、炉壁の耐火材は徐々に侵食される。その主な原因としては、文献の〔頼鳳成、「中鋼高炉ライニングレンガ使用に関する研究」、技術と訓練、21巻、第2号、pp.57〜66〕に開示されているように、液体鉄17の材料層降下による機械的磨耗、化学侵食および熱侵食などが考えられる。従って、高炉1は、その寿命を延長させるために、ある期間運転した後、停止して炉体13のセメント吹付け作業を行わなければならない。
【0005】
図3は、従来の高炉でセメント吹付け作業を行うことを示す概略図である。当該セメント吹付け作業は、機具2を高炉1内に吊り上げ、液体状の耐火材21を用いて炉体13の炉壁に対して吹付けを行いセメント吹付け厚さT3を形成する。環境および設備などの要因に制限されていたため、これまでは炉壁上のセメント吹付け厚さT3に対して測定と評価を行うことができず、セメント吹付け作業の品質を評価することもできなかった。また、機具2から噴出される耐火材21が液体状であるため、セメント吹付け過程において炉壁を経由して底部の材面171に跳ね返って跳ね返り量の厚さT4を形成する。ある期間を経過すると、材面171上にある耐火材は相当硬い外殻に凝固して、高炉1において運転開始後に底部の高温ガスが上へ流れる経路を阻害することになる。これは、炉の運転開始プロセスに大きな影響があり、危険を引き起こすことさえある。しかし、同様に、環境および設備などの要因に制限されていたため、これまでは材面171上の跳ね返り量の厚さT4を測定・評価することができなかった。
【0006】
従って、新規性かつ進歩性のある高炉内のセメント吹付け効果を評価する方法を提供し、上記の問題を解決する必要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な目的は、高炉内セメント吹付け効果を評価する方法を提供することにある。この方法は、(a)当該高炉の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、(b)当該高炉の内壁に対してセメント吹付け作業を行うステップと、(c)当該高炉の内壁にセメント吹付けをした後の外形に対する第二回の3次元点群を測定取得するステップと、(d)前記ステップ(a)の第一回の3次元点群と前記ステップ(c)の第二回の3次元点群を比較して、セメント吹付け厚さを求めるステップと、を含む。これによって、セメント吹付け品質に厚さが均一ではない状況がないかを検査することができる。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、高炉の炉壁残厚を測定する方法を提供することにある。この方法は、(a)当該高炉の内壁の現在の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、(b)当該高炉の内壁の最初の外形に対する機械的寸法モデルを取得するステップと、(c)前記ステップ(a)の第一回の3次元点群と前記ステップ(b)の機械的寸法モデルを比較して、当該高炉の炉壁残厚を求めるステップと、を含む。これによって、高炉の寿命を評価することができる。また、炉壁残厚の分布状況に従って侵食量が比較的多い部分の位置を表示し、セメント吹付けのプロセスを計画することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図4は、本発明の高炉内セメント吹付け効果を評価する方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。本実施例で測定・評価する高炉1は図1に示した高炉1である。この方法は以下のステップを含む。ステップS401で3次元レーザスキャナを高炉1内に架設する。本実施例では、飛行時間(Time of flight)を原理としたレーザー距離測定システムの型番がRIEGL LMS−Z210iである3次元レーザスキャナを例としている。測定時に、レーザー光点が当該3次元レーザスキャナから被測体に発射され、当該3次元レーザスキャナに反射され、光点の空間中における飛行時間に基づいて被測体と当該3次元レーザスキャナ間の距離を計算する。また、当該3次元レーザスキャナは回転機構により光点を走査する方式で大面積の測定を達成し、それによる測定結果は3次元座標を有する点群(point cloud)である。当該回転機構には、水平角度φの回転(0〜330度)および垂直角度θ(50〜130度)の回転という2つの自由度がある。回転角度の解析度は最大で0.05度であり、それに対応する測定時間は約数分間である。
【0010】
本実施例では、当該3次元レーザスキャナは、高炉1の炉頂11にあるマンホール111を経由して高炉1内のマンホール111付近に架設されている。
【0011】
ステップS402で当該3次元レーザスキャナを起動し、それを利用して図5の曲線51で示されるような高炉1の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得する。
【0012】
ステップS403で、セメント吹付け作業の機具2(図3)をマンホール111から入れて高炉1に対してセメント吹付けを行いやすいよう、当該3次元レーザスキャナを取り出す。
【0013】
ステップS404で図3に示したように高炉1の内壁に対してセメント吹付け作業を行う。セメント吹付け作業が完了した後に再び機具2(図3)をマンホール111から吊り出す。
【0014】
ステップS405で再び当該3次元レーザスキャナを高炉1内に架設する。本実施例では、当該3次元レーザスキャナはステップS401と同一のマンホール111を経由して高炉1内の同一位置に架設する。正確な測定結果を得るために、セメント吹付け前後2回の3次元レーザスキャナの架設位置と角度に大きな差がなく、かつ、データ上の位置決めが困難ではないようにする必要がある。本実施例では、誤差を低減させるために、ステップS401およびS405の架設過程において電子式水平計を用いて補助し、架設中に傾斜度の調整を行い、2回の3次元レーザスキャナ架設時の角度に大きな差がないことを確保した。なお、本実施例において、当該電子式水平計の型番はTESA clinobevel2である。
【0015】
ステップS406で当該3次元レーザスキャナを起動し、それを利用して図5の曲線52で示されるような高炉1の内壁のセメント吹付け後の外形に対する第二回の3次元点群を測定取得する。
【0016】
ステップS407で前記ステップS402の第一回の3次元点群と前記ステップS406の第二回の3次元点群を比較して、図6に示したようなセメント吹付け厚さT3を求める。本実施例では、当該第一回の3次元点群と当該第二回の3次元点群に対してICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを行う。当該ICPアルゴリズムの機能としては、2つの3次元点群の位置決めを行い、そのうちの1つの3次元点群が属する座標系を、回転およびシフトすることによって、もう1つの3次元点群が属する座標系と重ね合わせる。本実施例では、炉の喉部(炉喉)12以下の部分は耐火材の吹付けによって著しい変化があったため、当該ICPアルゴリズムの特徴点として選定することに適しない。炉の喉部(炉喉)12以上の部分はセメント吹付けの前後にともに変わらない構造となっているので、当該ICPアルゴリズムは高炉1の喉部(炉喉)12以上の外形に対応する点群を特徴点として選定する。セメント吹付け厚さT3は重ね合わせた後の点群に基づいて算出する。セメント吹付け厚さT3の測定によって、セメント吹付け品質に厚さが均一ではない状況がないかを検査することができる。
【0017】
本実施例では、同一のマンホール111においてセメント吹付け前後に各1回測定することになっているが、さらに、その他の位置にあるマンホールから測定を行い、即ち、2つまたは3つのマンホールから測定しても良い。このように、すべての測定結果を合わせると、高炉1の炉壁の360度の完全な全貌を表すことができる。
【0018】
もう1つの実施例では、前記ステップS402の第一回の3次元点群はさらに高炉1内の材面171に対する外形を含み、前記ステップS406の第二回の3次元点群はさらに高炉1内のセメント吹付け後の材面の外形を含む。同様に、前記ステップS407の比較方式を利用してさらに跳ね返り量の厚さT4を求めることができる(図3)。当該跳ね返り量の厚さT4の評価によって、有用なデータを提供し、現場の作業員とセメント吹付け設備業者が責任の帰属と区分を行うことに資することができる。
【0019】
図7は、本発明の高炉の炉壁残厚を測定する方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。本実施例で測定した高炉1は図1の高炉1である。この方法は以下のステップを含む。ステップS701で3次元レーザスキャナを高炉1内に架設する。上記の図4のステップS401と同様に、本実施例では、型番がRIEGL LMS−Z210iである3次元レーザスキャナを例としており、かつ当該3次元レーザスキャナは、高炉1の炉頂11にあるマンホール111を経由して高炉1内のマンホール111付近に架設されている。
【0020】
ステップS702で当該3次元レーザスキャナを起動し、それを利用して図8の曲線81で示されるような高炉1の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得する。ここでは、本実施例の第一回の3次元点群は上記のステップS402の第一回の3次元点群と同様であり、図8の曲線81は図5の曲線51と同様であることに注意する必要がある。
【0021】
ステップS703で高炉1の内壁の最初の外形(即ち、高炉1が運転する前の最初の外形)に対する機械的寸法モデルを取得する。本実施例では、高炉1の最初の機械図により図8の曲線82で示されたような機械的寸法モデル(CAD model)を取得した。
【0022】
ステップS704で前記ステップS702の第一回の3次元点群と前記ステップS703の機械的寸法モデルを比較して、図9に示したような高炉1の炉壁残厚T5を求める。上記の図4に示したステップS407と同様に、本実施例では、前記第一回の3次元点群と前記機械的寸法モデルに対して前記ICPアルゴリズムを行う。同様に、当該ICPアルゴリズムは、高炉1の喉部(炉喉)12以上の外形に対応する点群を特徴点として選定する。前記炉壁残厚T5は、重ね合わせた後の前記第一回の3次元点群と前記機械的寸法モデルに基づいて算出することができる。前記炉壁残厚T5の測定は、高炉1の寿命の評価に用いることができる。また、前記炉壁残厚T5の分布状況に基づいて侵食量が比較的多い部分の位置を表示し、セメント吹付けのプロセスを計画することもできる。
【0023】
上記の実施例は、本発明の原理およびその効果を説明するためのものであり、本発明を制限するためのものではない。従って、当業者が上記の実施例に対して修正および変更を行っても本発明の思想から逸脱することはない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって決められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の高炉を示す概略図である。
【図2】従来の高炉は長期間にわたって稼動した後に炉体の炉壁が侵食されたことを示す概略図である。
【図3】従来の高炉でセメント吹付け作業を行うことを示す概略図である。
【図4】本発明の高炉内セメント吹付け効果を評価する方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。
【図5】第一回の3次元点群が対応する高炉の内壁のセメント吹付け前と第二回の3次元点群が対応する高炉の内壁のセメント吹付け後の外形を示す概略図である。
【図6】図5の2曲線が重ね合わせた後の状況を示す概略図である。
【図7】本発明の高炉の炉壁残厚を測定する方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。
【図8】第一回の3次元点群が対応する高炉の内壁の外形と高炉の最初の機械的寸法モデルを示す概略図である。
【図9】図8の2曲線が重ね合わせた後の状況を示す概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 高炉
2 機具
11 炉頂
12 炉の喉部(炉喉)
13 炉体
14 炉の腰部(炉腰)
15 炉腹
16 炉床
17 液体鉄
21 耐火材
51 曲線
52 曲線
81 曲線
82 曲線
111 マンホール
171 材面
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の内壁の外形を測定する方法に関し、特に高炉内のセメント吹付け効果を評価する方法および高炉の炉壁残厚を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3次元レーザスキャナは、文献の〔曾義星、史天元、「新世代の測定利器である3次元レーザスキャナ」、科学発展、2003年5月、第365号〕に開示されているように、サンプリングの速さ(25000点/秒)、正確さ(約20mm)および測定範囲の広さ(100m以上)などの特性によって、土木、建築および古跡保護など、多くの分野に適用されている。鋼鉄生産プロセスにおいて転炉のライニング厚さ(例えば、米国特許第6,922,251号)、および材面外形(例えば文献、〔E. Meller and J.Hellmich、「Full Automation Of Stacker and Reclaimers」、Bulk Solids Handling,Vol 21,No,5,2001〕)に適用することができると開示されている。
【0003】
図1は、従来の高炉を示す概略図である。高炉1は、炉頂11、炉の喉部(炉喉)12、炉体13、炉の腰部(炉腰)4、炉腹15、および炉床16を含み、製鉄技術における重要な反応器である。炉頂11は円錐状であり、炉の喉部(炉喉)12は円柱状であり、炉頂11および炉の喉部(炉喉)12の材質は鋼である。炉頂11に、開けて高炉1の内部を露出させることができる複数のマンホール(Manhole)111がある。炉体13、炉の腰部(炉腰)14、炉腹15および炉床16の炉壁の材質は耐火材であり、それらによって液体鉄17が収容される。液体鉄17は材面171を有する。
【0004】
図2は、従来の高炉が長期間にわたって稼動した後に炉体の炉壁が侵食されたことを示す概略図である。図においてT1は炉体13の炉壁の最初の厚さを表し、T2は炉体13の炉壁が侵食された後の残存厚さを表す。高炉1が長い年月にわたって高温高圧の厳しい環境において稼動するため、炉壁の耐火材は徐々に侵食される。その主な原因としては、文献の〔頼鳳成、「中鋼高炉ライニングレンガ使用に関する研究」、技術と訓練、21巻、第2号、pp.57〜66〕に開示されているように、液体鉄17の材料層降下による機械的磨耗、化学侵食および熱侵食などが考えられる。従って、高炉1は、その寿命を延長させるために、ある期間運転した後、停止して炉体13のセメント吹付け作業を行わなければならない。
【0005】
図3は、従来の高炉でセメント吹付け作業を行うことを示す概略図である。当該セメント吹付け作業は、機具2を高炉1内に吊り上げ、液体状の耐火材21を用いて炉体13の炉壁に対して吹付けを行いセメント吹付け厚さT3を形成する。環境および設備などの要因に制限されていたため、これまでは炉壁上のセメント吹付け厚さT3に対して測定と評価を行うことができず、セメント吹付け作業の品質を評価することもできなかった。また、機具2から噴出される耐火材21が液体状であるため、セメント吹付け過程において炉壁を経由して底部の材面171に跳ね返って跳ね返り量の厚さT4を形成する。ある期間を経過すると、材面171上にある耐火材は相当硬い外殻に凝固して、高炉1において運転開始後に底部の高温ガスが上へ流れる経路を阻害することになる。これは、炉の運転開始プロセスに大きな影響があり、危険を引き起こすことさえある。しかし、同様に、環境および設備などの要因に制限されていたため、これまでは材面171上の跳ね返り量の厚さT4を測定・評価することができなかった。
【0006】
従って、新規性かつ進歩性のある高炉内のセメント吹付け効果を評価する方法を提供し、上記の問題を解決する必要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な目的は、高炉内セメント吹付け効果を評価する方法を提供することにある。この方法は、(a)当該高炉の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、(b)当該高炉の内壁に対してセメント吹付け作業を行うステップと、(c)当該高炉の内壁にセメント吹付けをした後の外形に対する第二回の3次元点群を測定取得するステップと、(d)前記ステップ(a)の第一回の3次元点群と前記ステップ(c)の第二回の3次元点群を比較して、セメント吹付け厚さを求めるステップと、を含む。これによって、セメント吹付け品質に厚さが均一ではない状況がないかを検査することができる。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、高炉の炉壁残厚を測定する方法を提供することにある。この方法は、(a)当該高炉の内壁の現在の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、(b)当該高炉の内壁の最初の外形に対する機械的寸法モデルを取得するステップと、(c)前記ステップ(a)の第一回の3次元点群と前記ステップ(b)の機械的寸法モデルを比較して、当該高炉の炉壁残厚を求めるステップと、を含む。これによって、高炉の寿命を評価することができる。また、炉壁残厚の分布状況に従って侵食量が比較的多い部分の位置を表示し、セメント吹付けのプロセスを計画することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図4は、本発明の高炉内セメント吹付け効果を評価する方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。本実施例で測定・評価する高炉1は図1に示した高炉1である。この方法は以下のステップを含む。ステップS401で3次元レーザスキャナを高炉1内に架設する。本実施例では、飛行時間(Time of flight)を原理としたレーザー距離測定システムの型番がRIEGL LMS−Z210iである3次元レーザスキャナを例としている。測定時に、レーザー光点が当該3次元レーザスキャナから被測体に発射され、当該3次元レーザスキャナに反射され、光点の空間中における飛行時間に基づいて被測体と当該3次元レーザスキャナ間の距離を計算する。また、当該3次元レーザスキャナは回転機構により光点を走査する方式で大面積の測定を達成し、それによる測定結果は3次元座標を有する点群(point cloud)である。当該回転機構には、水平角度φの回転(0〜330度)および垂直角度θ(50〜130度)の回転という2つの自由度がある。回転角度の解析度は最大で0.05度であり、それに対応する測定時間は約数分間である。
【0010】
本実施例では、当該3次元レーザスキャナは、高炉1の炉頂11にあるマンホール111を経由して高炉1内のマンホール111付近に架設されている。
【0011】
ステップS402で当該3次元レーザスキャナを起動し、それを利用して図5の曲線51で示されるような高炉1の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得する。
【0012】
ステップS403で、セメント吹付け作業の機具2(図3)をマンホール111から入れて高炉1に対してセメント吹付けを行いやすいよう、当該3次元レーザスキャナを取り出す。
【0013】
ステップS404で図3に示したように高炉1の内壁に対してセメント吹付け作業を行う。セメント吹付け作業が完了した後に再び機具2(図3)をマンホール111から吊り出す。
【0014】
ステップS405で再び当該3次元レーザスキャナを高炉1内に架設する。本実施例では、当該3次元レーザスキャナはステップS401と同一のマンホール111を経由して高炉1内の同一位置に架設する。正確な測定結果を得るために、セメント吹付け前後2回の3次元レーザスキャナの架設位置と角度に大きな差がなく、かつ、データ上の位置決めが困難ではないようにする必要がある。本実施例では、誤差を低減させるために、ステップS401およびS405の架設過程において電子式水平計を用いて補助し、架設中に傾斜度の調整を行い、2回の3次元レーザスキャナ架設時の角度に大きな差がないことを確保した。なお、本実施例において、当該電子式水平計の型番はTESA clinobevel2である。
【0015】
ステップS406で当該3次元レーザスキャナを起動し、それを利用して図5の曲線52で示されるような高炉1の内壁のセメント吹付け後の外形に対する第二回の3次元点群を測定取得する。
【0016】
ステップS407で前記ステップS402の第一回の3次元点群と前記ステップS406の第二回の3次元点群を比較して、図6に示したようなセメント吹付け厚さT3を求める。本実施例では、当該第一回の3次元点群と当該第二回の3次元点群に対してICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを行う。当該ICPアルゴリズムの機能としては、2つの3次元点群の位置決めを行い、そのうちの1つの3次元点群が属する座標系を、回転およびシフトすることによって、もう1つの3次元点群が属する座標系と重ね合わせる。本実施例では、炉の喉部(炉喉)12以下の部分は耐火材の吹付けによって著しい変化があったため、当該ICPアルゴリズムの特徴点として選定することに適しない。炉の喉部(炉喉)12以上の部分はセメント吹付けの前後にともに変わらない構造となっているので、当該ICPアルゴリズムは高炉1の喉部(炉喉)12以上の外形に対応する点群を特徴点として選定する。セメント吹付け厚さT3は重ね合わせた後の点群に基づいて算出する。セメント吹付け厚さT3の測定によって、セメント吹付け品質に厚さが均一ではない状況がないかを検査することができる。
【0017】
本実施例では、同一のマンホール111においてセメント吹付け前後に各1回測定することになっているが、さらに、その他の位置にあるマンホールから測定を行い、即ち、2つまたは3つのマンホールから測定しても良い。このように、すべての測定結果を合わせると、高炉1の炉壁の360度の完全な全貌を表すことができる。
【0018】
もう1つの実施例では、前記ステップS402の第一回の3次元点群はさらに高炉1内の材面171に対する外形を含み、前記ステップS406の第二回の3次元点群はさらに高炉1内のセメント吹付け後の材面の外形を含む。同様に、前記ステップS407の比較方式を利用してさらに跳ね返り量の厚さT4を求めることができる(図3)。当該跳ね返り量の厚さT4の評価によって、有用なデータを提供し、現場の作業員とセメント吹付け設備業者が責任の帰属と区分を行うことに資することができる。
【0019】
図7は、本発明の高炉の炉壁残厚を測定する方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。本実施例で測定した高炉1は図1の高炉1である。この方法は以下のステップを含む。ステップS701で3次元レーザスキャナを高炉1内に架設する。上記の図4のステップS401と同様に、本実施例では、型番がRIEGL LMS−Z210iである3次元レーザスキャナを例としており、かつ当該3次元レーザスキャナは、高炉1の炉頂11にあるマンホール111を経由して高炉1内のマンホール111付近に架設されている。
【0020】
ステップS702で当該3次元レーザスキャナを起動し、それを利用して図8の曲線81で示されるような高炉1の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得する。ここでは、本実施例の第一回の3次元点群は上記のステップS402の第一回の3次元点群と同様であり、図8の曲線81は図5の曲線51と同様であることに注意する必要がある。
【0021】
ステップS703で高炉1の内壁の最初の外形(即ち、高炉1が運転する前の最初の外形)に対する機械的寸法モデルを取得する。本実施例では、高炉1の最初の機械図により図8の曲線82で示されたような機械的寸法モデル(CAD model)を取得した。
【0022】
ステップS704で前記ステップS702の第一回の3次元点群と前記ステップS703の機械的寸法モデルを比較して、図9に示したような高炉1の炉壁残厚T5を求める。上記の図4に示したステップS407と同様に、本実施例では、前記第一回の3次元点群と前記機械的寸法モデルに対して前記ICPアルゴリズムを行う。同様に、当該ICPアルゴリズムは、高炉1の喉部(炉喉)12以上の外形に対応する点群を特徴点として選定する。前記炉壁残厚T5は、重ね合わせた後の前記第一回の3次元点群と前記機械的寸法モデルに基づいて算出することができる。前記炉壁残厚T5の測定は、高炉1の寿命の評価に用いることができる。また、前記炉壁残厚T5の分布状況に基づいて侵食量が比較的多い部分の位置を表示し、セメント吹付けのプロセスを計画することもできる。
【0023】
上記の実施例は、本発明の原理およびその効果を説明するためのものであり、本発明を制限するためのものではない。従って、当業者が上記の実施例に対して修正および変更を行っても本発明の思想から逸脱することはない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって決められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の高炉を示す概略図である。
【図2】従来の高炉は長期間にわたって稼動した後に炉体の炉壁が侵食されたことを示す概略図である。
【図3】従来の高炉でセメント吹付け作業を行うことを示す概略図である。
【図4】本発明の高炉内セメント吹付け効果を評価する方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。
【図5】第一回の3次元点群が対応する高炉の内壁のセメント吹付け前と第二回の3次元点群が対応する高炉の内壁のセメント吹付け後の外形を示す概略図である。
【図6】図5の2曲線が重ね合わせた後の状況を示す概略図である。
【図7】本発明の高炉の炉壁残厚を測定する方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。
【図8】第一回の3次元点群が対応する高炉の内壁の外形と高炉の最初の機械的寸法モデルを示す概略図である。
【図9】図8の2曲線が重ね合わせた後の状況を示す概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 高炉
2 機具
11 炉頂
12 炉の喉部(炉喉)
13 炉体
14 炉の腰部(炉腰)
15 炉腹
16 炉床
17 液体鉄
21 耐火材
51 曲線
52 曲線
81 曲線
82 曲線
111 マンホール
171 材面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉内のセメント吹付け効果を評価する方法であって、
(a)当該高炉の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、
(b)当該高炉の内壁に対してセメント吹付け作業を行うステップと、
(c)当該高炉の内壁にセメント吹付けをした後の外形に対する第二回の3次元点群を測定取得するステップと、
(d)前記ステップ(a)の第一回の3次元点群と前記ステップ(c)の第二回の3次元点群を比較して、セメント吹付け厚さを求めるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)は
(a1)3次元レーザスキャナを前記高炉内に架設するステップと、
(a2)前記3次元レーザスキャナを利用して前記第一回の3次元点群を測定取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)の前に、さらに前記3次元レーザスキャナを取り出すステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)は、
(c1)再び前記3次元レーザスキャナを高炉内に架設するステップと、
(c2)前記3次元レーザスキャナを利用して前記第二回の3次元点群を測定取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a1)および(c1)の架設過程において、誤差を低減するために水平計を利用して補助することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(c)は
(c1)3次元レーザスキャナを前記高炉内に架設するステップと、
(c2)前記3次元レーザスキャナを利用して前記第二回の3次元点群を測定取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(d)は、前記第一回の3次元点群と前記第二回の3次元点群に対してICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ICPアルゴリズムは、前記高炉の喉部(炉喉)以上の外形に対応する点群を特徴点として選定することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)の前記第一回の3次元点群がさらに前記高炉内の材面の外形に対するものであり、前記ステップ(c)の前記第二回の3次元点群がさらに前記高炉内にセメント吹付けをした後の材面の外形に対するものであり、前記ステップ(d)の比較の後にさらに跳ね返り量の厚さを得るステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
高炉の炉壁残厚を測定する方法であって、
(a)当該高炉の内壁の現在の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、
(b)当該高炉の内壁の最初の外形に対する機械的寸法モデルを取得するステップと、
(c)前記ステップ(a)の第一回の3次元点群と前記ステップ(b)の機械的寸法モデルを比較して、前記高炉の炉壁残厚を求めるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)は、
(a1)3次元レーザスキャナを前記高炉内に架設するステップと、
(a2)前記3次元レーザスキャナを利用して前記第一回の3次元点群を取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)は、前記高炉の最初の機械図から前記機械的寸法モデルを取得することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(c)は、前記第一回の3次元点群と前記機械的寸法モデルに対してICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを行うことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項1】
高炉内のセメント吹付け効果を評価する方法であって、
(a)当該高炉の内壁の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、
(b)当該高炉の内壁に対してセメント吹付け作業を行うステップと、
(c)当該高炉の内壁にセメント吹付けをした後の外形に対する第二回の3次元点群を測定取得するステップと、
(d)前記ステップ(a)の第一回の3次元点群と前記ステップ(c)の第二回の3次元点群を比較して、セメント吹付け厚さを求めるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)は
(a1)3次元レーザスキャナを前記高炉内に架設するステップと、
(a2)前記3次元レーザスキャナを利用して前記第一回の3次元点群を測定取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)の前に、さらに前記3次元レーザスキャナを取り出すステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)は、
(c1)再び前記3次元レーザスキャナを高炉内に架設するステップと、
(c2)前記3次元レーザスキャナを利用して前記第二回の3次元点群を測定取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a1)および(c1)の架設過程において、誤差を低減するために水平計を利用して補助することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(c)は
(c1)3次元レーザスキャナを前記高炉内に架設するステップと、
(c2)前記3次元レーザスキャナを利用して前記第二回の3次元点群を測定取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(d)は、前記第一回の3次元点群と前記第二回の3次元点群に対してICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ICPアルゴリズムは、前記高炉の喉部(炉喉)以上の外形に対応する点群を特徴点として選定することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)の前記第一回の3次元点群がさらに前記高炉内の材面の外形に対するものであり、前記ステップ(c)の前記第二回の3次元点群がさらに前記高炉内にセメント吹付けをした後の材面の外形に対するものであり、前記ステップ(d)の比較の後にさらに跳ね返り量の厚さを得るステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
高炉の炉壁残厚を測定する方法であって、
(a)当該高炉の内壁の現在の外形に対する第一回の3次元点群を測定取得するステップと、
(b)当該高炉の内壁の最初の外形に対する機械的寸法モデルを取得するステップと、
(c)前記ステップ(a)の第一回の3次元点群と前記ステップ(b)の機械的寸法モデルを比較して、前記高炉の炉壁残厚を求めるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)は、
(a1)3次元レーザスキャナを前記高炉内に架設するステップと、
(a2)前記3次元レーザスキャナを利用して前記第一回の3次元点群を取得するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)は、前記高炉の最初の機械図から前記機械的寸法モデルを取得することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(c)は、前記第一回の3次元点群と前記機械的寸法モデルに対してICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを行うことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−121105(P2008−121105A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131513(P2007−131513)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(507162256)チャイナ スティール コーポレーション (9)
【氏名又は名称原語表記】CHINA STEEL CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(507162256)チャイナ スティール コーポレーション (9)
【氏名又は名称原語表記】CHINA STEEL CORPORATION
【Fターム(参考)】
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