説明

高粘度液体塗布装置

【課題】吐出開始時におけるノズルからの高粘度液体の吐出量を抑え、高品質な塗布作業を行う。
【解決手段】 ホットメルト接着剤Bを、ポンプユニット3からヒーティングホース4を通して圧送し、塗布ガン2の吐出ノズル8から吐出する。ポンプユニット3の還流路14に、ホットメルト接着剤Bの圧送圧力を調整するためのエア作動式の圧力調整バルブ15を設ける。圧力調整バルブ15とエア源6との間にエア供給路24,25を並列に設け、作動エア圧力を高圧側に調整するための第1のエアレギュレータ26、低圧側に調整するための第2のエアレギュレータ29、第1,第2の切替弁28,31及びそれらを制御するシーケンサ7を設ける。シーケンサ7は、塗布ガン2におけるホットメルト接着剤Bの非吐出時に、作動エア圧力を低圧側とし、ホットメルト接着剤Bの吐出開始時に、作動エア圧力を高圧側に切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給源の高粘度液体をポンプにより供給路を通して圧送するポンプユニットと、このポンプユニットにより供給された高粘度液体をノズルから吐出して塗布対象物に塗布する塗布ガンとを備えた高粘度液体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高粘度液体、例えばホットメルト接着剤を塗布対象物(ワーク)に自動的に塗布するホットメルト接着剤塗布装置は、ホットメルト接着剤を吐出ノズルから吐出する塗布ガン(自動ガン)と、この塗布ガンにホースを介してホットメルト接着剤を圧送するポンプユニットとを備えて構成されている。前記塗布ガンは、例えばロボットアームに取付けられ、所定の軌跡を描くようにしながら接着剤の塗布作業を行うようになっている。
【0003】
前記ポンプユニットとして、塗布ガンに向けて圧送するホットメルト接着剤の圧送圧力(流量)を一定に制御するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。具体的には、このポンプユニットは、供給源からのホットメルト接着剤を供給路に圧送するポンプを備えると共に、このポンプの出口側と入口側とをつなぐように設けられた還流路にエア作動式の流量調整弁を設けて構成されている。そして、エア供給源から前記流量調整弁に供給される作動エアが、エアレギュレータを介することによって一定の圧力に調整されるようになっている。
【特許文献1】実用新案登録第2584057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ホットメルト接着剤塗布装置により実行される作業として、塗布対象物の平坦面にホットメルト接着剤を線状(ビード状)に均一幅で塗布していく作業や、塗布対象物に設けられた凹溝部内に沿ってホットメルト接着剤を均一に充填していく作業などがある。
【0005】
ところが、上記従来のホットメルト接着剤塗布装置では、ホットメルト接着剤を例えば線状(ビード状)に塗布する場合、ポンプユニットからのホットメルト接着剤の圧送圧力を一定に調整しても、吐出ノズルからの吐出開始の瞬間における接着剤の吐出量が、どうしても定常時よりも多くなってしまい、塗布開始地点において接着剤が太く塗布されてしまう事情があった(図4(b)参照)。
【0006】
これは、次のような理由によるものである。即ち、上記ホットメルト接着剤塗布装置は、ポンプユニットにより圧送する液体の粘度が高いため、圧力損失が比較的大きくなる事情がある。具体例をあげると、塗布ガンの吐出ノズルからの吐出圧力(動圧)を例えば2.5MPaとしたい場合に、ポンプユニットからの圧送圧力を例えば4MPaとする必要がある。このため、図3(b)に示すように、ホットメルト接着剤の非吐出時における、ホットメルト接着剤の圧力(静圧)が比較的高く(4MPa)なり、塗布ガンのオン時、つまり吐出ノズルからの吐出開始時に、瞬間的にホットメルト接着剤の吐出圧力が高いものとなり、接着剤が勢い良く吐出されてしまうことになる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、圧力損失が比較的大きくなる高粘度液体を塗布するものにあって、吐出開始時におけるノズルからの高粘度液体の吐出量を抑え、ひいては高品質な塗布作業を行うことができる高粘度液体塗布装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の高粘度液体塗布装置は、ポンプユニットに、供給路のポンプの出口側と液体供給源側との間をつなぐように還流路を設け、この還流路の途中部に高粘度液体の圧送圧力を制御するエア作動式の圧力調整バルブを設け、この圧力調整バルブの作動エア圧力を制御する圧力制御手段を設けると共に、前記圧力制御手段を、塗布ガンにおける高粘度液体の非吐出時に、該高粘度液体の圧送圧力を低圧力とし、高粘度液体の吐出開始時に高圧力に切替えるように作動エア圧力を制御するように構成したところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0009】
これによれば、圧力制御手段により圧力調整バルブの作動エア圧力を制御することによって、ポンプユニットからの高粘度液体の圧送圧力を制御することができるのであるが、このとき、塗布ガンにおける高粘度液体の非吐出時には、該高粘度液体の圧送圧力が低圧力となり、高粘度液体の吐出開始時には高圧力に切替えられるように、作動エア圧力が制御されるようになる。
【0010】
ここで、圧送される液体が高粘度であることから、ポンプユニットからの圧送圧力とノズルからの吐出圧力(動圧)との差(圧力損失)が比較的大きくなる事情があるが、高粘度液体の吐出開始の直前においては、高粘度液体の圧送圧力が低圧力とされているため、吐出開始時における高粘度液体の吐出量が多くなってしまうことを未然に防止することができる。そして、吐出が開始されると、ポンプユニットからの圧送圧力が高圧力とされるので、圧力損失が比較的大きくても、適切な吐出圧力を得ることが可能となる。
【0011】
本発明においては、上記圧力制御手段を、前記圧力調整バルブとエア源との間に並列に接続された2本のエア供給路に、夫々高圧側及び低圧側に設定されるエアレギュレータを設けると共に、それら2本のエア供給路を切替えるための切替手段を設けて構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、比較的簡単で安価な構成で、圧力制御手段を実現することができ、高粘度液体の圧送圧力の調整の作業も容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高粘度液体塗布装置によれば、圧力損失が比較的大きくなる高粘度液体を塗布するものにあって、ポンプユニットの還流路にエア作動式の圧力調整バルブを設け、塗布ガンにおける高粘度液体の非吐出時に高粘度液体の圧送圧力を低圧力とし、高粘度液体の吐出開始時に高圧力に切替えるように前記圧力調整バルブの作動エア圧力を制御する圧力制御手段を設けたので、吐出開始時におけるノズルからの高粘度液体の吐出量を抑え、ひいては高品質な塗布作業を行うことができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を高粘度液体としてのホットメルト接着剤の塗布装置に適用した一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施例に係る高粘度液体塗布装置たるホットメルト接着剤塗布装置1の全体構成を概略的に示している。
【0014】
この塗布装置1は、塗布ガン2、この塗布ガン2に向けてホットメルト接着剤Bを圧送するポンプユニット3、それらを接続するヒーティングホース4を備えている。また、塗布装置1には、塗布ガン2に供給されるホットメルト接着剤Bの圧力(圧送圧力)を検出する圧力計5、コンプレッサからなるエア源6や後述するシーケンサ(コントローラ)7なども設けられている。
【0015】
前記塗布ガン2は、ボディの先端部に吐出ノズル8を備えており、詳しく図示はしないが、ボディの内部には、ヒーティングホース4を通して圧送されたホットメルト接着剤Bを吐出ノズル8に導くための流路、及び、その流路を開閉するための開閉弁を備えている。これにて、ポンプユニット3からホットメルト接着剤Bが圧送されている状態で、開閉弁が開放されることにより、吐出ノズル8からホットメルト接着剤Bが吐出されるようになっている。
【0016】
尚、この塗布ガン2は、図示しないロボットアームの先端部に取付けられ、例えば、図4(a)に示すように、所定の軌跡を描くようにしながら(塗布ガン2を矢印A方向に移動させながら)、塗布対象物である板状の部品9(例えば自動車ボディの内装部品)に対し、ホットメルト接着剤Bを線状(ビード状)に塗布する作業を自動で実行するようになっている。このとき、前記開閉弁のオン・オフの制御も自動で行われる。
【0017】
前記ポンプユニット3は、ホットメルト接着剤Bを溶融状態で貯留する液体供給源としてのタンク10、このタンク10の出口部から塗布ガン2(ヒーティングホース4)に向けてホットメルト接着剤Bを送るための供給路11、この供給路11の途中部に設けられたポンプ13、このポンプ13の出口(吐出)側と、前記タンク10とをつなぐように供給路11に接続された還流路14、この還流路14の途中部に設けられたエア作動式の圧力調整バルブ15等を備えて構成されている。
【0018】
前記ポンプ13は、モータ12により駆動され、タンク10からのホットメルト接着剤Bを塗布ガン2(ヒーティングホース4)に向けて圧送するようになっている。前記圧力調整バルブ15は、還流路14を通してタンク10側に戻すホットメルト接着剤Bの圧力(流量)を調整することにより、塗布ガン2に向けて圧送されるホットメルト接着剤Bの圧力を調整するためのもので、エア作動式とされている。尚、前記ヒーティングホース4は、ホットメルト接着剤Bを加熱して溶融状態を保ったまま塗布ガン2に供給するためのものである。
【0019】
図2は、前記圧力調整バルブ15の構成を示している。ここで、圧力調整バルブ15のボディ16は、円筒状をなし、その後端部(図2で右端部)にやや径大なシリンダ部17が設けられている。詳しく図示はしないが、前記シリンダ部17内には、該シリンダ部17内の空間を前後の室に区切るようにピストンが設けられている。このピストンは、Oリング等によって気密状態を保ったまま前後(図で左右)に移動可能に設けられ、また、このピストンには、前方(図で左方)に延びるピストンロッド18が接続されている。
【0020】
前記シリンダ部17の外壁面部には、該シリンダ部17内の後室に連通されるエア供給口が設けられ、このエア供給口にエアホース19(図1参照)が接続されるようになっている。これにて、シリンダ部17の後室内に圧縮エアが供給可能とされている。シリンダ部17の前室は、大気圧に保たれるようになっている、
前記ボディ16内の後部寄り部位には、プランジャ20がOリング等によって気密状態を保ったまま前後(図2で左右)に移動可能に設けられている。前記ピストンロッド18の先端がこのプランジャ20に連結されている。従って、エア供給口からシリンダ部17内に供給される圧縮エアの圧力によって、ピストンひいてはピストンロッド18の前後方向位置が変動するのである。
【0021】
一方、前記ボディ16の先端部には、流体流入口21aを有するシート21が取付けられ、その内側に、流体流入口21aを開閉するためのテーパー状のバルブ22が前後に移動可能に設けられている。そして、このバルブ22と前記プランジャ20との間に、コイルばね23が配設されている。ボディ16の周壁部には、このバルブ22部分に位置して流体流出口16aが形成されている。図1に示すように、前記流体流入口21aが還流路14の上流側に接続され、流体流出口16aが還流路14の下流側に接続されるようになっている。
【0022】
この構成により、流体流入口21aに対して流体が供給されていない状態では、コイルばね23のばね力によりバルブ22がシート21に圧接し、流体流入口21aが閉塞状態にある。これに対し、ホットメルト接着剤Bが還流路14を通って流体流入口21aに流れ込むと、そのホットメルト接着剤Bの圧力によって、バルブ22がコイルばね23のばね力に抗して後方(シート21から離れる方向)に変位して流体流入口21aを開放させる。これにて、ホットメルト接着剤Bが流体流出口16aを通って還流路14を流れるようになっている。
【0023】
この場合、コイルばね23のばね力と、ホットメルト接着剤Bの流入圧力とのバランスによってバルブ22の位置つまり流体流入口21aの開放度合が決まってくる。そして、そのバルブ22の開放度合によって、還流路14を流れるホットメルト接着剤Bの流量、ひいては供給路11を圧送されるホットメルト接着剤Bの流量(圧力)が変動する。このとき、ピストンロッド18ひいてはプランジャ20の前後方向位置によって、コイルばね23からバルブ22に作用するばね力が変動するので、前記シリンダ部17内に供給される圧縮エアの圧力(作動エア圧力)を調整することによって、圧送されるホットメルト接着剤Bの圧力を調整することが可能となる。
【0024】
つまり、作動エア圧力が高圧であるときには、バルブ22の開放度合が小さくなり、還流路14を流れるホットメルト接着剤Bの流量が少なくなって、供給路11を圧送されるホットメルト接着剤Bの圧力が大きくなる。逆に、作動エア圧力が低圧になると、還流路14を流れるホットメルト接着剤Bの流量が多くなって、供給路11を圧送されるホットメルト接着剤Bの圧力が小さくなる。
【0025】
さて、本実施例では、前記圧力調整バルブ15の作動エア圧力を制御する圧力制御手段として、図1に示す構成が採用されている。即ち、前記圧力調整バルブ15のエア供給口に接続されたエアホース19と、前記エア源6との間には、第1及び第2の2本のエア供給路24及び25が並列に接続されている。
【0026】
前記第1のエア供給路24には、作動エア圧力を調整するための第1のエアレギュレータ26及び第1のエア圧力計27、該第1のエア供給路24を開閉するための第1の切替弁28が直列に設けられている。また、前記第2のエア供給路25には、作動エア圧力を調整するための第2のエアレギュレータ29及び第2のエア圧力計30、該第2のエア供給路25を開閉するための第2の切替弁31が直列に設けられている。
【0027】
前記第1の切替弁28及び第2の切替弁31は、エア供給路24及び25を開閉制御するためのものであり、共に電磁式の二位置切替弁からなる。このとき、これら第1及び第2の切替弁28及び31は、前記シーケンサ7により後述するように制御されるようになっており、一方が開放されると、他方が閉塞されるように構成されている。これにより、第1及び第2の切替弁28及び31並びにシーケンサ7から切替手段が構成され、圧力調整バルブ15のエア供給口に供給する作動エア圧力を、第1のエアレギュレータ26を通した第1の圧力(高圧側)と、第2のエアレギュレータ29を通した第2の圧力(低圧側)との間で切替えることができるようになっている。
【0028】
前記第1及び第2の2個のエアレギュレータ26及び29は、作業者により互いに異なる圧力に設定されるようになっており、この場合、前記第1のエアレギュレータ26は、エア源6からのエアの圧力を第1の圧力(高圧側)に調整し、第2のエアレギュレータ29は、エア源6からのエアの圧力を第2の圧力(低圧側)に調整するためのものである。この調整は、ロボットによる実際の塗布作業を開始する前に、前記圧力計5の検出値に基づき、作業者により手動で行われる。
【0029】
より具体的には、図3に示すように、吐出ノズル8からのホットメルト接着剤Bの適切な(目標とする)吐出圧力(動圧)が例えば2.5MPaであるとすると、第2のエアレギュレータ29による第2の圧力(低圧側)は、塗布ガン2の吐出ノズル8からのホットメルト接着剤Bの非吐出時(開閉弁の閉塞時)においてポンプユニット3から圧送されるホットメルト接着剤Bの圧力(静圧)を、2.5MPaとするように調整される。
【0030】
一方、第1のエアレギュレータ26による第1の圧力(高圧側)は、静圧と動圧との圧力損失分を考慮して、塗布ガン2におけるホットメルト接着剤Bの非吐出時(開閉弁の閉塞時)においてポンプユニット3から圧送されるホットメルト接着剤Bの圧力(静圧)を、上記した目標とする動圧(吐出圧力)にその圧力損失分(例えば1.5MPa)を上乗せした値、例えば4MPaとするように調整される。
【0031】
そして、次の作用説明でも述べるように、前記シーケンサ7には、塗布ガン2の開閉弁の開閉信号が入力されるようになっている。シーケンサ7は、塗布ガン2の開閉弁の閉塞状態、つまり塗布ガン2におけるホットメルト接着剤Bの非吐出時において、第2のエア供給路25側を開放(第1のエア供給路24を閉塞)するように第1及び第2の切替弁28及び31を制御する。これにより、圧力調整バルブ15の作動エア圧力が低圧側とされ、ポンプユニット3からのホットメルト接着剤Bの圧送圧力(静圧)が低圧力(例えば2.5MPa)とされる。
【0032】
これに対し、シーケンサ7は、塗布ガン2の開閉弁が閉塞状態から開放状態に切替えられたとき、つまり、ホットメルト接着剤Bの吐出開始時に、第1及び第2の切替弁28及び31を制御し、第1のエア供給路24側を開放(第2のエア供給路25側を閉塞)するように切替える。これにより、圧力調整バルブ15の作動エア圧力が高圧側とされ、ポンプユニット3からのホットメルト接着剤Bの圧送圧力(静圧)が高圧力(例えば4MPa)とされる。尚、塗布ガン2の開閉弁の開放状態では、圧力調整バルブ15の作動エア圧力を高圧側とすることが継続され、開閉弁が閉塞状態に切替わると、圧力調整バルブ15の作動エア圧力も低圧側に戻される。
【0033】
次に、上記構成の塗布装置1の作用について述べる。上記塗布装置1にあっては、図示しないロボットアームの先端部に取付けられた塗布ガン2を、例えば図4(a)に示すように、部品9に対し矢印A方向に移動させながら、ホットメルト接着剤Bを線状(ビード状)に塗布する作業を実行する。このとき、吐出ノズル8が、部品9の塗布開始位置(図で左端部)に位置した状態で、塗布ガン2内の開閉弁を開放してホットメルト接着剤Bの吐出を開始し、塗布ガン2(吐出ノズル8)を一定速度で右方に移動させた後、塗布終了位置にて開閉弁を閉塞してホットメルト接着剤Bの吐出を終了する。
【0034】
上記塗布作業を行うにあたり、上述のように、シーケンサ7は、第1及び第2の切替弁28及び31を制御し、圧力調整バルブ15の作動エア圧力を低圧側と高圧側との間で切替える。今、図3(a)に示すように、塗布ガン2におけるホットメルト接着剤Bの吐出開始時点を時刻T1、吐出終了時点を時刻T2とする。この図3(a)では、圧力調整バルブ15の作動エア圧力が高圧側に固定されたと仮想された場合におけるホットメルト接着剤Bの圧送圧力(圧力計5の検出圧力)の変動の様子をHの線で示しており、また、圧力調整バルブ15の作動エア圧力が低圧側に固定されたと仮想された場合における圧送圧力の変動の様子をLの線で示している。尚、図3(a)中、Δt1,Δt2は、塗布ガン2の開閉弁の開閉(或いは切替弁28,31の切替え)に要する微小時間である。
【0035】
ここで、ホットメルト接着剤Bは粘度が高いため、圧力損失が比較的大きく、いずれの場合にも、開閉弁の閉塞時(ホットメルト接着剤Bの非吐出時)の圧送圧力(静圧)に対し、吐出ノズル8からの吐出時における吐出圧力(動圧)が比較的大きく低下してしまう事情がある。具体的には、高圧側(H)の場合、静圧が4MPa、動圧が2.5MPaとなり、低圧側(L)の場合、静圧が2.5MPa、動圧が1.5MPaとなる。
【0036】
従来例で述べたように、もし、単純に、吐出ノズル8からの吐出時における吐出圧力(動圧)を2.5MPaとするべく、ポンプユニット3からの圧送圧力(静圧)を4MPaとすると、吐出ノズル8からの吐出開始時に、瞬間的にホットメルト接着剤Bの吐出圧力が高いものとなり、ホットメルト接着剤Bが勢い良く吐出されてしまうことになる(図3(b)参照)。この結果、図4(b)に示すように、塗布開始地点においてホットメルト接着剤Bが太く塗布されてしまう不具合を生ずる。
【0037】
これに対し、本実施例では、時刻T1以前の塗布ガン2の開閉弁が閉塞している状態では、圧力調整バルブ15の作動エア圧力が低圧側とされ、この状態では、ポンプユニット3からのホットメルト接着剤Bの圧送圧力(静圧)が低圧力(2.5MPa)とされる。そして、塗布ガン2の開閉弁が開放される時刻T1(ホットメルト接着剤Bの吐出開始時)において、シーケンサ7により、圧力調整バルブ15の作動エア圧力が高圧側に切替えられ、ポンプユニット3からのホットメルト接着剤Bの圧送圧力(静圧)が高圧力に切替えられる。
【0038】
これにより、比較的大きな圧力損失があっても、吐出ノズル8からは、ホットメルト接着剤Bが適切な吐出圧力(2.5MPa)で吐出されるようになる。この結果、図4(a)に示すように、部品9に対し、ホットメルト接着剤Bが、塗布開始地点から終了地点まで、適切且つ均等な幅でビード状に塗布されるようになるのである。ホットメルト接着剤Bの吐出終了時(時刻T2)においては、シーケンサ7により、圧力調整バルブ15の作動エア圧力が低圧側に切替えられ、ポンプユニット3からのホットメルト接着剤Bの圧送圧力(静圧)が低圧力(2.5MPa)に戻されるのである。
【0039】
このとき、吐出開始(時刻T1)の直前におけるホットメルト接着剤Bの圧送圧力(静圧)は低圧力(2.5MPa)であるため、上記したような吐出開始時に瞬間的にホットメルト接着剤Bの吐出圧力が高くなって勢い良く吐出されてしまうことが未然に防止され、ひいては、塗布開始地点においてホットメルト接着剤Bが太く塗布されてしまうことを防止することができるのである。
【0040】
このように本実施例のホットメルト樹脂塗布装置1によれば、塗布ガン2におけるホットメルト接着剤Bの非吐出時に、ポンプユニット3からのホットメルト接着剤Bの圧送圧力を低圧力とし、吐出開始時に高圧力に切替えるように構成したので、圧力損失が比較的大きくなる高粘度液体であるホットメルト接着剤Bを塗布するものにあって、吐出開始時における吐出ノズル8からのホットメルト接着剤Bの吐出量が多くなってしまうといった従来の欠点を解消することができ、吐出開始時における吐出ノズル8からのホットメルト接着剤Bの吐出量を抑え、ひいては高品質な塗布作業を行うことができるという優れた効果を得ることができる。
【0041】
また、特に本実施例では、ポンプユニット3からのホットメルト接着剤Bの圧送圧力を制御するための構成として、還流路14にエア作動式の圧力調整バルブ15を設ける構成を採用すると共に、高圧側及び低圧側に設定されるエアレギュレータ26及び29、切替弁28,31、シーケンサ7等から圧力制御手段を構成したので、比較的簡単で安価な構成で、圧力制御手段を実現することができる。しかも、圧力調整バルブ15に供給されるエア圧力、ひいてはホットメルト接着剤Bの圧送圧力の調整を、簡単な作業で行うことができるといったメリットも得ることができる。
【0042】
図5は、上記したホットメルト接着剤塗布装置1の塗布ガン2によってホットメルト接着剤Bが塗布される塗布対象物の別の例を示すものである。この塗布対象物は、例えば家屋の部屋のドア32からなり、このドアは、木製のドア本体33に設けられた矩形開口部33a内に、板ガラス34が嵌込まれて構成される。板ガラス34を嵌込むにあたっては、ドアの内外(表裏)に夫々配置される第1及び第2の2個の取付枠35及び36が用いられ、それら四者がホットメルト接着剤Bにより接着固定されるようになっている。
【0043】
この場合、まず、ドア本体33と、第1の取付枠35と、板ガラス34とを、図5(a)に示すようにセットする。この状態では、ドア本体33の矩形開口部33aの内壁、板ガラス34の外周端面、第1の取付枠35の図で上面によって、全体で四角形状に(板ガラス34の外周全周に渡って)凹溝部が形成される。そして、ホットメルト接着剤塗布装置1の塗布ガン2を移動させながら、吐出ノズル8により凹溝部に対してホットメルト接着剤Bを塗布(充填)する作業が実行される。その後、第2の取付枠36を図5(b)に示すように嵌込み、ホットメルト接着剤Bが硬化することによって接着が完了する。
【0044】
このときにも、上記と同様のホットメルト接着剤Bの圧送圧力の制御が行われることにより、凹溝部全体に、ホットメルト接着剤Bを適量で且つ均一に充填することができる。従って、第2の取付枠36の取付時に、ホットメルト接着剤Bがはみ出したり、ホットメルト接着剤Bの不足によって空隙が残ってしまったりすることなく、高品質な接着作業を行うことができるものである。
【0045】
尚、本発明は上記し且つ図面に示した実施例に限定されるものではなく、例えば以下のような拡張、変更が可能である。即ち、上記実施例では、2個のエアレギュレータ26,29並びに切替弁28,31などから圧力制御手段を構成するようにしたが、圧力制御手段として、入力信号に応じてエア圧力を調整する電−空レギュレータを用いて、エア源6からの圧縮空気を調整して圧力調整バルブ15に供給されるように構成しても良い。この場合、コントローラからの信号により、電−空レギュレータを、上記実施例と同様に、高圧側と低圧側との2段階のエア圧力が得られるように切替え制御することができる。
【0046】
また、上記実施例では、第2のエアレギュレータ29による第2の圧力(低圧側)を、ホットメルト接着剤Bの非吐出時(開閉弁の閉塞時)においてポンプユニット3からの圧送圧力(静圧)が、吐出ノズル8からのホットメルト接着剤Bの適切な吐出圧力(動圧)である2.5MPaとなるように調整したが、それよりも若干低い圧送圧力となるようにしても良い。この場合、ホットメルト接着剤Bの吐出開始時の吐出量をより少なくすることが可能となる。
【0047】
その他、本発明は、ホットメルト接着剤Bの塗布装置に限らず、高粘度液体としての、ホットメルト充填剤や、シーリング剤、常温で使用される接着剤などの塗布装置全般に適用することができる。また、各部の圧力などの具体的な数値についても、あくまでも一例を示したものに過ぎないなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、ホットメルト接着剤塗布装置の全体構成を概略的に示す図
【図2】圧力調整バルブの構成を示す縦断面図
【図3】実施例(a)及び従来例(b)における、吐出開始、終了のタイミングとホットメルト接着剤の圧力との関係を示す図
【図4】実施例(a)及び従来例(b)における、部品にホットメルト接着剤を塗布した様子を示す平面図
【図5】塗布対象物の別の例を説明するための図
【符号の説明】
【0049】
図面中、1はホットメルト接着剤塗布装置(高粘度液体塗布装置)、2は塗布ガン、3はポンプユニット、4はヒーティングホース、6はエア源、7はシーケンサ(切替手段)、8は吐出ノズル(ノズル)、9は部品(塗布対象物)、10はタンク(液体供給源)、11は供給路、13はポンプ、14は還流路、15は圧力調整バルブ、24,25はエア供給路、26,29はエアレギュレータ、28,31は切替弁(切替手段)、32はドア(塗布対象物)、Bはホットメルト接着剤(高粘度液体)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給源の高粘度液体をポンプにより供給路を通して圧送するポンプユニットと、このポンプユニットにより供給された高粘度液体をノズルから吐出して塗布対象物に塗布する塗布ガンとを備えた高粘度液体塗布装置において、
前記ポンプユニットは、前記供給路の前記ポンプの出口側と前記液体供給源側との間をつなぐように設けられた還流路と、この還流路の途中部に設けられ前記高粘度液体の圧送圧力を制御するエア作動式の圧力調整バルブと、この圧力調整バルブの作動エア圧力を制御する圧力制御手段とを備えていると共に、
前記圧力制御手段は、前記塗布ガンにおける高粘度液体の非吐出時に、該高粘度液体の圧送圧力を低圧力とし、高粘度液体の吐出開始時に高圧力に切替えるように前記作動エア圧力を制御することを特徴とする高粘度液体塗布装置。
【請求項2】
前記圧力制御手段は、前記圧力調整バルブとエア源との間に並列に接続された2本のエア供給路に、夫々高圧側及び低圧側に設定されるエアレギュレータを設けると共に、それら2本のエア供給路を切替えるための切替手段を設けて構成されていることを特徴とする請求項1記載の高粘度液体塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−11912(P2009−11912A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175280(P2007−175280)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】