説明

高精度位置測定用の一体化マイクロアクチュエータおよび線形可変差動変圧器

非強磁性圧電駆動屈曲部を持つ単一のハウジングは、屈曲部において一体化された異なる直径の第一及び第二巻型を有し、一方の巻型は他方の巻型の内部に同軸に配置される。一次巻型及び二次巻型の平面を形成する円筒は空間的に重ならない。二次コイルを反対方向に巻いて、変圧装置になるように配線することができる。コイルの中心軸の方向への二次コイルに対する一次コイルの移動を高精度で分別検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、(1)線形可変差動変圧器(LVDT)即ちナノメートル未満程度の非常に小さい機械的変位を差動電圧に(またその逆に)変換する装置、及び(2)原子間力顕微鏡(AFM)等の走査プローブ装置の構造にLVDTを一体化し、装置の一定の運動を適切に感知して、望ましい場合にはこれを修正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、本出願と同じ発明者の一部による米国特許第7038443号「高精度位置測定用の線形可変差動変圧器」に係るLVDTを示す。このLVDTは、移動する一次コイルと2つの二次コイルとの間の相互インダクタンスは移動部の位置の関数として変化する、先行技術における上記装置の基本的概念を反映する。市販のLVDT(米国特許第7038443号のLVDT)において、移動部は強磁性磁心であり、一次コイル及び二次コイルの位置が固定された。しかし、その構成において非強磁性材料が使用され、一次コイルが静止せず移動し、かつ先進的信号処理エレクトロニクス(advanced signal conditioning electronics)がその作動を制御するので、米国特許第7038443号のLVDTは、それ以前のLVDTでは得られない感度を与える。図1のLVDTは、可動非強磁性巻型114(その周りに一次コイル115が巻き付けられる)、及び静止非強磁性巻型(単数または複数)110(その周りに2つの二次コイル103及び104が巻き付けられる)を備える。巻型はプラスチックまたは常磁性材料で製造できる。一次巻型114はシャフト108によって対象物(図示せず)に機械的に連結される。シャフト108はミクロンまたはこれ以下程度の対象物の変位を伝達できる。または、一次巻型を静止とし、二次巻型を可動として、対象物を二次巻型に機械的に連結することができる。このようなLVDTの機能性は図1に示されるものと同等となる。
【0003】
励磁エレクトロニクス111は一次コイル115を駆動する電流を生成する。シャフト108に取り付けられた対象物の位置が変化し、それにより二次コイル103及び104に対する一次コイル115の位置が変化すると、2つの二次コイル103及び104に結合されるフラックスも変化する。これらの電圧は、差動増幅器106によって増幅し、信号処理エレクトロニクス112によって磁心変位に比例する電圧に変換される。変位は小さいので信号は線形である。図1のLVDTの構成にプラスチックまたは常磁性材料を使用することにより、高透磁性材料によって与えられるより感度ゲインは低くなるが、バルクハウゼン雑音は取り除かれる。バルクハウゼン雑音を取り除くことによって、これに相当する出力雑音の増大を生じることなく、励磁エレクトロニクス111の出力を高めることができるので、LVDTの感度を増大させる。
【0004】
図2は、本出願と同じ発明者の一部による米国特許出願第US20040056653号「デジタルエレクトロニクスを持つ線形可変差動変圧器」から得られる図1のLVDT用のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスの更に詳細な図を示す。図2のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスはデジタル生成された方形波を基盤とする。デジタル生成された方形波は、濾波されると、アナログ正弦波生成器によって生成された正弦波駆動信号より正確に定義された振幅及び周波数及びより低い雑音を持つ正弦波駆動信号を生成する。このデジタル生成された方形波はマイクロプロセッサ280から発せられる。マイクロプロセッサとしてデジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラまたは当業者に既知のその他の同様のマイクロプロセッサが可能である。方形波は、低域フィルタ224によって濾波され、低域フィルタは基本波より上の方形波の全ての高調波成分を効果的に除去して純粋の正弦波とする。フィルタは、温度の変動に対して安定するように最適化される。更に、正弦波は電流緩衝器225によって増幅される。緩衝器はLVDT一次コイル215を直接駆動する。この励磁回路によって生成された正弦波はほぼ完璧な周波数及び振幅安定性を有し、かつ高い信号対雑音比を有する。
【0005】
図2に示す励磁・信号処理エレクトロニクスの実施形態において、二次コイル103及び104の各々から1本のリード線が接地され、他方は高精度、低雑音差動増幅器106に接続される。増幅器は一方の二次コイルの入力を他方の二次コイルの入力から減算して、差分モード信号を増幅する。差動増幅器は、低インピーダンス入力源(コイルなど)に接続されるとき低騒音を発するように設計される。差動増幅器106からの信号は緩衝増幅器231及び反転緩衝増幅器232に入力される。緩衝増幅器231の出力は、アナログスイッチ233の通常閉じている入力部へ送られるのに対して、反転緩衝増幅器232の出力は、同じスイッチの通常開いている入力部へ送られる。このような配列は、一方の入力部が閉じているとき他方の入力部が開いているようにスイッチの2つの入力部が設定される限り、機能性を損失することなく逆にできる。アナログスイッチ233の作用はマイクロプロセッサ280から発せられる方形波によって制御される。この方形波の位相を、同じくマイクロプロセッサ280から発せられるLVDT一次コイル215を駆動する(濾波され、増幅されるとき)方形波に対してずらすことができる。マイクロプロセッサ280から発せられる一次コイル駆動方形波に対して位相をずらす代わりに、一次駆動電流緩衝器225に入る信号に対して位相をずらすことができる。重要なのは、基準方形波の位相に対する一次コイル駆動方形波の位相が調整可能であることである。好ましくは、スイッチ233の他方の入力部の閉鎖に伴い生じる一方の入力部の開放が、増幅器106からの出力信号に対して90度の位相のずれを持つことである。アナログスイッチ233の出力は安定した低騒音の低域フィルタ234へ送られる。このフィルタの出力は、移動する一次コイル215の位置に比例する信号を与える。
【0006】
原子間力顕微鏡(AFM)等の走査プローブ装置を用いて、分子レベル、更には原子レベルの分解能を持つ広範囲の材料の特徴を表す画像またはその他の情報を得ることができる。分解能に関する要求が高まり、人為的雑音なしにますます小さい力及び運動を測定することが要求されているので、古い世代のこの種の装置は時代遅れになる。好ましい解決法は、小さい力及び運動を最小限の雑音で測定するという中心的問題に対処する新しい装置である。
【0007】
便宜上、説明は、走査プローブ装置の一定の実施形態即ち原子間力顕微鏡(AFM)において実現できる装置及び技法に重点を置く。走査プローブ装置は、AFM、走査トンネル顕微鏡(STM)、3D分子力プローブ機器、高分解能側面計(high-resolution stylus profilometer)(機械的スタイラス側面計を含む)、表面改質機器、ナノインデンタ(NanoIndenters)、化学的または生物学的感知プローブ、電気測定用機器及び微細作動装置を含む。他の走査プローブ装置並びに高精度、低雑音の変位測定を必要とする走査プローブ装置以外の装置において、本明細書において説明する装置及び技法を実施できる。
【0008】
AFMは、試料の表面をプローブ端部の鋭い先端で走査する(例えば、ラスタリング(rastering)する)しながら、トポグラフィ情報(あるいはその他の試料特性)を得る装置である。情報及び特性は、プローブのたわみまたは振動の変化を検出することによって(例えば、振幅、たわみ、位相、周波数などの小さい変化を検出することによって)得られ、フィードバックを用いて装置を基準状態に戻す。試料を先端で走査することによって、試料トポグラフィまたはその他の特性の「マップ」を得ることができる。
【0009】
プローブのたわみまたは振動の変化は一般に光学レバー装置もしくは配置(optical lever arrangement)によって検出される。光学レバー装置によって光線はプローブの先端の反対側に向けられる。プローブから反射した光線は、位置感知検出器(PSD)を照らす。プローブのたわみまたは振動が変化すると、PSDに反射するスポットの位置が変化して、PSDからの出力の変化を生じる。プローブのたわみまたは振動の変化は、一般に試料に対するプローブのベースの垂直位置(本明細書においてはZ位置の変化と呼ぶ。Zは試料によって形成されるXY平面に概ね直交する)の変化を引き起こして、たわみまたは振動を予め設定された一定の値に維持する。AFM画像を生成するために一般に使用されるのはこのフィードバックである。
【0010】
プローブ先端が常に試料表面に接している接触モード及び先端が表面に接しないまたは間欠的にのみ表面に接するACモードを含む多様な試料特性決定モードでAFMを作動できる。
【0011】
アクチュエータは、AFMにおいて、例えば試料表面をプローブでラスタリングするためまたは試料表面に対するプローブのベースの位置を変化させるために使用される。アクチュエータの目的は、AFMの異なる部品間、例えばプローブと試料との間に相対的運動を与えることである。様々な目的及び様々な結果に合わせて、試料またはプローブまたはその両方の組み合わせを作動することが有益である。AFMにおいて、センサも一般に使用される。センサは、アクチュエータによって生成される創生される運動を含むAFMの各種要素の運動、位置またはその他の属性を検出するために使用される。
【0012】
本明細書において、特に指示されない限り、(1)「アクチュエータ」という用語は、圧電起動屈曲部(piezo activated flexure)、圧電管、圧電スタック(piezo stack)、ブロック、バイモル及びユニモル、リニアモーター、電気ひずみアクチュエータ、静電気モーター、容量性モーター、音声コイルアクチュエータ及び磁気ひずみアクチュエータを含み、入力信号を物理的運動に変換する広範囲の装置を意味し、(2)「センサ」または「位置センサ」という用語は、変位、速度または加速など物理的量を電気信号など1つまたはそれ以上の信号にまたはその逆に変換する装置を意味し、光の方向変化検出器(上でPSDと呼ばれるものを含む)、容量性センサ、誘導性センサ(渦流センサを含む)、差動変圧器(米国特許第7038443号及び同時係属出願である米国特許出願第US20020175677号「高精度位置測定用の線形可変差動変圧器」及びUS20040056653号「デジタルエレクトロニクスを持つ線形可変差動変圧器」に説明されるものなど。これらは参照によりその全部が本明細書に組み込まれる)、可変磁気抵抗センサ、光干渉計、ひずみ計、圧電センサ、及び磁気ひずみ及び電気ひずみセンサを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】USP 2364237
【特許文献2】USP 2452862
【特許文献3】USP 2503851
【特許文献4】USP 4030085
【特許文献5】USP 4634126
【特許文献6】USP 4669300
【特許文献7】USP 4705971
【特許文献8】USP 5414939
【特許文献9】USP 5461319
【特許文献10】USP 5465046
【特許文献11】USP 5469053
【特許文献12】USP 5477473
【特許文献13】USP 5513518
【特許文献14】USP 5705741
【特許文献15】USP 5739686
【特許文献16】USP 5767670
【特許文献17】USP 5777468
【特許文献18】USP 5948972
【特許文献19】USP 6267005
【特許文献20】USP 7038443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は従来技術の問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための手段は、特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】先行技術の低透磁性地震及び移動一次コイルを持つLVDTを示す。
【図2】先行技術の同期アナログスイッチに基づく励磁・信号処理エレクトロニクスを示す。
【図3】一体化した圧電屈曲部LVDTの好ましい実施形態を示す。
【図4】一体化した圧電屈曲部LVDT用のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスの好ましい実施形態を示す。
【図4A】図4のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクス用の磁場プログラム可能なゲートアレイ(field programmable gate array)の好ましい実施形態を示す。
【図4B】図4のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスの一次駆動装置の別の実施形態を示す。
【図4C】図4のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスの二次コイル用の配線の別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
圧電起動屈曲部を用いて、AFMのプローブの先端に対してX及びY方向に試料を移動させること、即ち本出願と同じ発明者の一部による米国特許第7038443号の図2に示されるものと同様のXY位置決定ステージを用いて試料をXY平面において走査することができる。同様に、前記特許の図19が示すように、Z位置決定ステージを用いて試料に対してプローブのベースの垂直位置(即ち、Z軸に沿った位置)を変化させるために前記屈曲部を用いて、プローブ先端のたわみまたは振動を予め設定された一定値に維持することができる。どちらの状況においても、米国特許第7038443号に開示されるのと同様のLVDTを用いて、X、YおよびZ方向の運動を感知して、所望の修正を加えることができる。このために、重要なことは、XY位置決定ステージのX位置及びY位置及びZ位置決定ステージのZ位置が、各々、別個のLVDTのシャフト108を介して別個のLVDTの一次巻型114に機械的に連結され、各一次巻型が、X位置、Y位置またはZ位置(場合に応じて)のどのような運動にも合わせて移動することである。各LVDTの二次巻型110は、LVDTがX位置またはY位置に関する場合にはXY位置決定ステージのフレームに締結され、LVDTがZ位置に関する場合にはAFMのフレームに締結される。従って、各LVDTの二次巻型110は一次巻型114に対して静止したままである。
【0018】
本発明は、AFMのプローブの先端に対してX、Y及びZ方向に試料を移動する(即ち、XY平面において試料を走査する)ために、またプローブのベースに対して試料の垂直位置を移動して(即ち、Z平面において試料またはプローブのベースを移動して)プローブ先端のたわみまたは振動を予め設定された一定値に維持するために、圧電起動屈曲部を使用する。この圧電起動屈曲部は、AFMのスキャナーモジュールの一部である。このような圧電起動屈曲部を使用できるAFMは、同じ発明者の一部による同時係属出願である米国特許出願第60/xxxxxx号「モジュール式原子間力顕微鏡」に説明されている。
【0019】
図3は、このような圧電起動屈曲部の1つを示す。これはプローブのベースに対する試料の垂直位置を変化させるために使用される。XY平面において試料を走査するために、図3に示されるのと同様の圧電起動屈曲部を使用できる。図3の圧電301は、上ボールベアリング302及び下ボールベアリング303を収容するために上下に陥凹所を持つ、当業者には既知のスタック設計のものである。屈曲部304は、上部305においてねじ付き試料支持プレート307と共にねじ付きディスクインサート(または接触ディスクインサート)用の、また下部において別のねじ付きディスクインサート用の雌ねじを持つチューブ設計である。ディスクインサートは、上下ボールベアリング302及び303を収容するために圧電301の上下の陥凹所に対応する上下陥凹所を有する。屈曲部304の雌ねじ及びねじ付きディスクインサート305及び306は、ボールベアリング302及び303を介して圧電301を屈曲部304内の所定場所にロック(lock)できるようにする。
【0020】
屈曲部304の下ディスクインサート306は、屈曲部自体の設計と結合してキャップの役割をし、屈曲部の下方向へのZ軸に沿った非常に小さい運動を可能にする。上ディスクインサート305も、屈曲部自体の設計と結合して、圧電301の垂直方向の伸縮に応じて屈曲部の上方へのZ軸に沿った屈曲部304の自由な運動を可能にする。屈曲部304のカットアウトまたは凹所308はこの運動をZ平面に対して抑制して、X及びY平面における非常にわずかな運動しか許容しない。
【0021】
圧電301が屈曲部304内の所定場所にロックされると、上ディスクインサート305は、屈曲部304を予荷重する手段として、圧電を所定場所にロックするために必要とされるよりも若干強く締め付けられる。屈曲部304のカットアウトまたは凹所308は、この付加的な締め付けを、試料支持プレート307と、従って試料(図示せず)と一緒に屈曲部の上方へのZ軸に沿った屈曲部の運動に変換する。圧電301が収縮するとき(適切な電荷を用いて)、屈曲部304のカットアウトまたは凹所308は、この収縮を、試料支持プレート307と、従って試料と一緒にカットアウトまたは凹所308上の屈曲部304の部分による屈曲部の下方へのZ軸に沿った運動に変換する。圧電301が伸張するとき(適切な電荷を用いて)、屈曲部304のカットアウトまたは凹所308は、この伸張を、試料支持プレート307及び試料と一緒にカットアウトまたは凹所308上方の屈曲部304の部分による屈曲部の上方へのZ軸に沿った運動に変換する。既述のように、この運動にはX及びY平面におけるごく小さい運動が伴う。
【0022】
既述のように、米国特許第7038443号に開示されるのと同様のLVDTは、AFMにおいて、XY平面において試料を走査するとき、またはプローブのベースに対して試料の垂直位置をZ平面において移動させるときに、X方向、Y方向またはZ方向の運動を感知してこれを修正するために使用できる。前記特許に示すように、これは、LVDTの一次コイル及び二次コイルをこの目的に関するAFMの部品に機械的に連結することによって可能になる。
【0023】
本発明は、LVDTを用いて、AFMにおいてX方向、Y方向またはZ方向の運動を感知して、これを修正するが、米国特許第7038443号に示されるものとは非常に異なる方法でこれを行う。LVDTの一次巻型及び二次巻型をこの目的のためのAFMの部品に機械的に連結する代わりに、本発明においては、一次巻型及び二次巻型は前記部品自体と一体である。図3に示すように、LVDT用の一次巻型としての役割をする溝309が屈曲部304のカットアウトまたは凹所308のすぐ上の屈曲部304の上部に形成される。上述のように、屈曲部のこの部分、従って溝309は、圧電が伸縮するときに移動する。同様に、LVDT用の二次巻型としての役割をする1対の溝310が固定スリーブ311の中に形成される。スリーブはカットアウトまたは凹所308の下方において屈曲部304に締結される。上述のように、スリーブ311が取り付けられる屈曲部304の部分、従ってスリーブは、圧電301が伸縮するときには移動しない。
【0024】
屈曲部304の予荷重の要件によって課せられる限度の範囲内で、上ディスクインサート305の緩めまたは締め付けによって、LVDT用の二次巻型として役立つ溝310に対する一次巻型としての役割をする溝309をセンタリングすることができる。
【0025】
屈曲部304は一次コイル、二次コイル及び圧電301との間に電気接続を確立するための複数の導管を有する。図3は複数の導管312中の1本の外部を示す。
【0026】
米国特許第7038443号に記述されるように、非強磁性巻型は感度のよいLVDTを製造するために重要な要素である。このために、巻型をプラスチックまたは常磁性材料で製造することができる。本発明において、その中に一次巻型の役割をする溝309が一体化された屈曲部304は、アルミニウム7075等の高降伏応力の非強磁性アルミニウムから製造されることが好ましい。または、セラミック材料からこれを製造することができる。その中に二次巻型としての役割をする1対の溝310が一体化された固定スリーブ311はPEEKなどプラスチック材料から製造されることが好ましい。この場合にも、セラミック材料からこれを製造することもできる。
【0027】
図4は、本発明のLVDT用のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスの好ましい実施形態を示す。このエレクトロニクスにおいて、LVDTの一次巻型及び二次巻型は、図3に示されるものと同様の圧電起動屈曲部の関連する移動部と一体であり、巻型は非強磁性材料から形成される。このようなエレクトロニクスは、他の設計のLVDT、例えば図1のLVDTに使用できる。この場合、このエレクトロニクスが図2に示すデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスに取って代わる。
【0028】
図4のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスの実施形態は、アナログ正弦波生成器によって生成された正弦波よりもずっと正確に形成された振幅及び周波数及び低雑音を持つ、デジタル生成された正弦波駆動信号を基盤とする。この正弦波駆動信号は、磁場(field)プログラム可能なゲートアレイ412内に実装された直接デジタルシンセサイザ401から発生する。ゲートアレイの要素の一部を別個に図4Aに示す。次に、正弦波は、同じくFPGA内部に実装されたデジタルゲインステージ402へ送られる。これはユーザーが正弦波の振幅を制御できるようにする。この時点で、正弦波は下記の形態を有する。
A sin ωt
【0029】
次に、正弦波は、デジタル−アナログ変換器403によってアナログ形式に変換され、緩衝器404によって増幅される。緩衝器は、一般に+10V〜−10Vの電圧範囲で本発明のLVDT一次コイル405を直接駆動するが、他の電圧を使用できる。図4Bに示す別の実施形態によって一次コイル405を駆動する電圧を二倍にすることができる。前記の実施形態において、デジタル−アナログ変換器の出力は分割されて、ゲインステージ420及び負のゲインステージ421の両方へ送られる。各ステージの主力はLVDT一次コイル405のリード線の一方に接続され、一次コイルは元来の電圧範囲の二倍で差動駆動される。
【0030】
本発明のLVDT用のデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスの信号処理エレクトロニクスを図4に示す。図に示すように、二次コイル408及び409の一方は他方の巻線と反対方向に巻かれ、反対方向に巻かれた二次コイルから発する隣り合うリード線は接続配線される。二次コイルの一方、この場合には二次コイル409からの他方のリード線は接地され、第二の二次コイル、この場合には二次コイル408からの他方のリード線はアナログゲインステージ410に接続される。
【0031】
図4Cは、図4の二次コイル408及び409及びアナログゲインステージ410の別の同等配置を示す。この場合、二次コイルの巻線は同じ方向に巻かれるが、図4に示される反対方向に巻かれる二次コイルの場合と同じ効果を生じるように配線される。いずれの配置も、例えば図2に示すエレクトロニクスのような他のLVDTのエレクトロニクスに比べて、本発明のLVDT用の信号処理エレクトロニクスの信号対雑音比を大幅に改良する。このような改良の1つの理由は、この配置の自己キャンセル機能(self-cancelling feature)にある。図2のLVDTの信号処理エレクトロニクスにおいて、一次コイル215によって一方の二次コイルに結合される信号は、差動増幅器106において他方の二次コイルに結合される信号から差分されて、一次巻型114の変位、従って一次巻型に機械的に連結された対象物の変位に比例する電圧を決定する。実際には、差動増幅器106は、一次コイルが2つの二次コイルの間のちょうど中央にあって、測定すべき変位がない場合でも、この計算を行う。しかし、本発明のLVDT用の信号処理エレクトロニクスの場合、二次コイル408及び409に結合される信号は、図4に示す配置の場合には結合された信号によって誘導される電流あるいは図4Cに示す配置の場合には同様に誘導される電圧が二次コイルにおいて相互に対して反対方向に巻き線または配線されるので、差動増幅器を不要にする。この自己相反(self-opposing)現象は、例えば、一次コイル405が2つの二次コイルのちょうど中央にあるとき二次コイル408及び409または425及び426(場合に応じて)からの信号をゼロ信号にする。
【0032】
図2と同様の差動増幅器106を使用するLVDT用の信号処理エレクトロニクスの信号対雑音比は、電圧レール(voltage rail)がこの種の増幅器の一部であるために、本来的に、望ましい値より低い。電圧レールは、増幅器が対応できる二次コイルにおける電圧を低レベルに制限するので、可能な信号対雑音比を制限する。更に、二次コイルの電圧が上がると、ジョンソン雑音も上がるので、信号処理エレクトロニクスの信号対雑音比は低下する。
【0033】
本発明のLVDT用の信号処理エレクトロニクスの自己相反現象は、非常高い電圧を使用して信号対雑音比を高めることを可能にする。このための1つの方法は、一次コイル405を駆動する電圧(または電流)、従って二次コイル408及び409または425および426(場合に応じて)おいて誘導される電圧(または電流)を増大することである。上述のように、図4Bに示す実施形態は、使用される一次電圧(または電流)を二倍にする方法を示す。別の方法は、一次コイルに対して二次コイルの巻数比を増大することにより、一次コイル405の電圧(または電流)によって二次コイル408及び409または425及び426(場合に応じて)において誘導される電圧(または電流)を実質的に増大する。周知のように、この方法によって二次コイル408及び409または425及び426(場合に応じて)において誘導される電圧(または電流)を何倍にも増大できる。ただし、二次コイル408及び409または425及び426(場合に応じて)において誘導される電圧(または電流)を、一次コイル405を駆動する電圧(または電流)を増大することによって増大するか、一次コイルに対する二次コイルの巻数比を増大することによって増大するか、またはその両方であるかに関係なく、本発明のLVDT用の信号処理エレクトロニクスの自己相反現象は、一方の二次コイルにおいて誘導された電圧(または電流)と他方の二次コイルにおいて誘導された電圧(または電流)との間の差分のみをゲインステージ410へ伝える。このようにして、電圧レールによって課せられる差動増幅器の電子入力範囲によって駆動の規模または二次コイル対一次コイルの巻数比が制限されることがなくなるので、信号対雑音比の大幅な増大が得られる。
【0034】
図4に示すように、本発明の信号処理エレクトロニクスは、二次コイル408及び409または425及び426(場合に応じて)からの出力をアナログゲインステージ410へ送る。この時点で、出力は下記の形態を持つ125kHz正弦波である。
B sin(ωt+φ)
【0035】
典型的な作動周波数は125kHzであるが、他の周波数を使用することができる。次に、この正弦波は、アナログ−デジタル変換器411によってデジタル形式に変換されて、FPGA(その要素は図4Aにおいて別個に示される)へ送られる。次に、デジタル化された信号は、FPGA412内部に実装されたDC遮断フィルタへ送られ、DC遮断フィルタの出力は、同じくFPGA412内部に実装されたデジタル乗算回路431へ送られる。乗算回路431への別の入力は、その位相オフセットが調整された後LVDT一次コイル405を駆動するデジタル正弦波である。上述のように、この正弦波はFPGA内部に実装されたDDS401から発せられる。LVDT一次コイルを駆動するデジタル正弦波の位相オフセットは、同じくFPGA412内部に実装された位相オフセット調整回路432によって調整される。乗算回路431からの出力は下記の形態を有する。
A sin(ωt)xB sin(ωt+φ)=(AxB)/2(sin(2ωt+φ)+sinφ)
【0036】
本発明のLVDT用の信号処理エレクトロニクスによって与えられる分解能を高めるために、二次コイル408及び409または425及び426(場合に応じて)からの正弦波出力を変換するために使用されるAD変換器411は、少なくとも2MHzの速度でサンプリングする少なくとも18ビット変換器であることが好ましい。このようなAD変換器を用いると、例えば二次コイル408及び409または425及び426(場合に応じて)とAD変換器411との間に介在するアナログゲインステージ410を通過した後に125KHzの正弦波であるこの出力は、サイクルあたり16サンプルの速度でサンプリングされ、正弦波をデジタル的に捕捉するために必要な最小速度の数倍である。しかし、ADC411によって与えられる各サンプルの18ビット分解能は、量子化効果を克服しかつ本発明のLVDTに要求されるナノメートル未満の運動範囲の変位を測定するには不十分である。このような困難の解決法は、AD変換器411が2MHzの速度(本発明による圧電屈曲部の運動を修正するために必要とされる速度よりずっと速い速度)でサンプリングすることである。従って、いくつかのサンプルが正弦波の付加的分解能を創生するために使用される。結果はビット成長(bit growth)と呼べるものである。従って、FPGA412へ送られるAD変換器411の出力は、高分解能のデジタル形態の、二次コイル408及び409または425及び426(場合に応じて)からの正弦波出力である。
【0037】
乗算回路431からの出力は低域フィルタ433へ送られる。低域フィルタはsin(2ωt+φ)の項を濾波して、dc項(AxB)/2sinφを残す。信号のこのdc項は本発明の圧電屈曲部の位置の変化に比例し、これを用いてこの位置を所望の位置に修正できる。
【0038】
以上、多少の実施形態のみを開示したが、他の実施形態が可能であり、発明者はこれらを本明細書に含めることを意図している。明細書は、別の方法で達成できるより概括的な目標を達成するための一定の例について説明する。この開示は例示を意図しており、特許請求の範囲は当業者に予見できるであろう変更または対案を包むことを意図する。
【0039】
また、発明者は「〜ための手段」という言葉を使用する請求項のみ、35USC112第6節に基づいて解釈されることを意図している。更に、特許請求の範囲に明白に限定が含まれない限り明細書からの限定は一切請求項に読み込まれないものとする。本明細書において説明するコンピュータは任意の種類のコンピュータであり、汎用あるいはワークステーションなど一定目的のコンピュータが可能である。コンピュータはWindows(登録商標) XPまたはLinux(登録商標)を実行するPentium(登録商標)クラスのコンピュータであっても、Machintoshコンピュータであってもよい。また、コンピュータはPDA、携帯電話またはラップトップ等の手持ち式コンピュータでもよい。
【0040】
プログラムは、CまたはJava(登録商標)、Brew、またはその他の任意のプログラミング言語で書くことができる。プログラムは、例えばコンピュータのハードドライブ、メモリースティックまたはSD媒体などリムーバブルディスクまたは媒体またはその他のリムーバブル媒体など記憶媒体(例えば磁気または光学媒体)に常駐させることができる。また、プログラムを、例えばサーバーまたはローカルマシンに信号を送るその他のマシンを用いて、ネットワーク上で実行することもできる。サーバーまたはその他のマシンはローカルマシンが本明細書に説明される操作を実行できるようにする。
【符号の説明】
【0041】
301 圧電
302 上ボールベアリング
303 下ボールベアリング
304 屈曲部
305,306 ディスクインサート
307 支持プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非強磁性圧電駆動屈曲部を収容するハウジングであって、前記屈曲部が、その中に一体化され一方の表面が他方の表面の内側で空間的に重ならず同軸配置された第一表面及び第二表面を有し、第一表面上に一次コイルを巻き付けることができ、かつ第二表面上に二次コイルの2つの部分を巻き付けることができ、第二表面及び第三表面が実質的に平行方向に相互に対して移動可能である、ハウジングと、
第一表面及び第二表面の各々への電気接続を可能にする少なくとも1つの構造要素と、
前記一次及び二次コイルの中心軸の方向において前記二次コイルに対する前記一次コイルの移動を高精度で分別検出するデジタル励磁・信号処理エレクトロニクスと、
を含む装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2012−506050(P2012−506050A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532082(P2011−532082)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/005635
【国際公開番号】WO2010/044871
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511093177)
【Fターム(参考)】