説明

高純度薬品容器用ポリエチレン、その製造方法、及び高純度薬品容器

【課題】ポリエチレン樹脂からの溶出物やその劣化物等の汚染物質の高純度薬品への溶出を極力抑え、表面光沢が良好な高純度薬品容器、さらに詳しくは燃料電池用アルコール容器を提供する。
【解決手段】直鎖状ポリエチレンであって、エチレン単独重合体又はエチレン単位と炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であり、その密度、メルトフローレート、Mw/Mn、分子量1,000以下の成分の占有率、分子量100万以上の成分の占有率、融点ピークの数、ノルマルヘプタン抽出量、及び炭素数18及び20の炭化水素成分量が特定の範囲内であることを特徴とする高純度薬品容器用ポリエチレン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度薬品用容器等に適用し得るポリエチレン、その製造方法、及び高純度薬品容器、さらに詳しくは燃料電池用アルコール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体などのポリエチレンは機械的強度に優れている等の優れた特性を有しているため、各種成形体の原材料として使用されている。たとえば射出成形により、小型容器のキャップ、ビール用のコンテナ、パレットなどに成形されている。そして、このような射出成形体の原料としては、一般にチーグラーナッタ触媒によって重合されたポリエチレンが好適に使用されている。分子量分布の狭いポリエチレン製射出成形体が提案(例えば、特許文献1参照)されている。
【0003】
またメタロセン触媒を用いた射出成形品の提案(例えば、特許文献2、特許文献3 参照)、メタロセン触媒より製造されるエチレン−α−オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンをブレンドした組成物からなる射出成形品の提案(例えば、特許文献4 参照)がある。
【0004】
近年、電子工業分野の著しい発達に伴って、高純度薬品の需要が高まっている。高純度薬品は、例えば、大規模化、集積化されたLSI等の電子回路の製造に不可欠な薬品として使用されている。具体的には、ウエハー洗浄・エッチング用、配線・絶縁膜エッチング用、治具洗浄用、現像液、乾燥用等の用途として、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、過酸化水素水、イソプロピルアルコール、キシレン、メタノール、エタノール、酢酸、リン酸、アンモニア水、乳酸エチル等が用いられている。従来、これらの高純度薬品用容器材料として、耐薬品性、耐衝撃性、価格等の点から、ポリエチレン樹脂が使用されている。さらに薬品による該樹脂の溶出物や劣化物等の汚染物質による内容物への汚染を低減した高純度薬品用容器が求められている。
中でもメタノールやエタノールなど液体燃料を用いた燃料電池は、リチウム二次電池に比べて充電の必要が無く、取替え式の燃料カートリッジによる燃料の補給により長時間使用が可能といった利点から、燃料電池ノート型パソコン、携帯電話、携帯情報端末、デジタルカメラなどの小型電子機器(モバイル機器)等の電源として近年注目されている。この燃料容器を構成する材料としては、例えばアクリル樹脂を用いることが特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−278229号公報
【特許文献2】特開平10−193377号公報
【特許文献3】特開2001−213916号公報
【特許文献4】特開2002−275322号公報
【特許文献5】特開2003−17102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ポリエチレン樹脂からの溶出物やその劣化物等の汚染物質の高純度薬品への溶出を極力抑え、表面光沢が良好な高純度薬品容器、さらに詳しくは燃料電池用アルコール容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の性状を有する直鎖状ポリエチレンを使用することにより、その目的に適合しうることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、高純度薬品容器用ポリエチレン、その製造方法及び高純度薬品容器、さらに詳しくは燃料電池用アルコール容器に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高純度薬品容器用ポリエチレンは、ポリエチレン樹脂からの溶出物やその劣化物等の汚染物質の薬品への溶出を極力抑えることが可能であり、表面光沢が良好な高純度薬品容器、さらに詳しくは燃料電池用アルコール容器用途に適している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明について具体的に説明する。
【0011】
本実施の形態の高純度薬品容器用ポリエチレンは、下記(a−1)〜(a−9)の要件を満たす直鎖状ポリエチレンであることを特徴とする高純度薬品容器用ポリエチレンである。該直鎖状ポリエチレンは、好ましくは、炭素数6以上の不活性溶媒を用いるスラリー重合法で製造される。
【0012】
(a−1)エチレン単独重合体又はエチレン単位と炭素数3〜20のα−オレフィン単位とからなる共重合体である。
(a−2)密度が940〜975kg/mである。
(a−3)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜20g/10分である。
(a−4)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法により求められるMw/Mnが、3.0〜7.0である。
(Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、Mw/Mnは分子量分布を表わす指標である。)
(a−5)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法で得られる分子量分布曲線から得られる分子量1,000以下の成分の占有率が、1.0重量%以下である。
(分子量1,000以下の成分の占有率は、ポリマー全重量に対する、分子量分布曲線から得られる分子量1,000以下の成分の積分量の割合)
(a−6)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法で得られる分子量分布曲線から得られる分子量100万以上の成分の占有率が、0.5重量%以下である。
(分子量100万以上の成分の占有率は、ポリマー全重量に対する、分子量分布曲線から得られる分子量100万以上の成分の積分量の割合)
(a−7)示差走査型熱量計による昇温測定において得られる吸熱曲線の融点ピークが一つである。
(a−8)80℃におけるノルマルヘプタン抽出分の量が1.0重量%以下である。
(a−9)エタノール抽出による炭素数18、及び20の炭化水素成分量が100ppm以下である。
【0013】
(直鎖状ポリエチレン)
本実施の形態の高純度薬品容器用ポリエチレンに用いられる直鎖状ポリエチレンは、エチレン単独重合体又はエチレンから導かれる繰り返し単位と1又は2種以上の炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位とからなる共重合体である。
ここで「直鎖状」ポリエチレンとは、従来の高圧法による分岐状低密度ポリエチレンを除外する趣旨であり、それ以外の全てのポリエチレンを包含する概念である。線状系ポリエチレンと呼ぶ場合もある。
【0014】
エチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、6−メチル−1−ヘプテンなどが挙げられる。α−オレフィンとしては、一般的に入手し易さから、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、重合プロセスから1−ブテンが好ましい。
【0015】
共重合体としては、エチレンと1種類のα−オレフィンとの共重合体であってもよく、エチレンと2種類以上を組合せたα−オレフィンとの共重合体であってもよい。直鎖状ポリエチレンとしては、エチレンとα−オレフィンの共重合体とエチレンと別のα−オレフィンとの共重合体を任意の比率でドライブレンド又はメルトブレンドした共重合体であってもよい。
【0016】
本実施の形態の直鎖状ポリエチレンの密度は、940〜975kg/mである。直鎖状ポリエチレンの密度は、好ましくは950〜970kg/mであり、より好ましくは960〜970kg/mである。
【0017】
直鎖状ポリエチレンの密度が940kg/m以上であれば、ポリエチレンを射出成形体とした場合に剛性に優れる成形体が得られる。直鎖状ポリエチレンの密度が975kg/m以下であれば、良好な成形加工特性で高い剛性を有するポリエチレンの高純度薬品容器を得ることができる。
【0018】
直鎖状ポリエチレンの密度は、ポリエチレンの成形体とした場合の優れた機械的特性と、成形体作製の際の良好な成形加工特性とを両立させることができる点で、上記範囲内にあることが好ましい。
本実施の形態において、密度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0019】
本実施の形態の直鎖状ポリエチレンのメルトフローレート(以下、「MFR」とも呼ぶこととする。)は、190℃、2.16kg荷重において0.1〜20g/10分である。直鎖状ポリエチレンのMFRは、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは5〜10g/10分である。
直鎖状ポリエチレンのMFRが0.1g/10分以上かつ20g/10分以下であれば成形加工性に優れかつ、このポリエチレンから得られる射出成形体は耐落下衝撃性に優れる。
本実施の形態において、MFRは、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
本実施の形態の直鎖状ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)、分子量1,000以下の成分の占有率、分子量100万以上の成分の占有率は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法により求めることができる。
本実施の形態において、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法による測定は、以下の実施例に記載の方法により実施することができる。
【0021】
直鎖状ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法において、3.0〜7.0であり、好ましくは3.0〜5.0、より好ましくは3.2〜4.0の範囲である。
直鎖状ポリエチレンの分子量分布が、上記範囲内にあれば、分子量の均一性に起因して、該樹脂からの溶出物やその劣化物等の汚染物質の薬品への溶出を極力抑えた高純度薬品容器に適したポリエチレンとすることができ、射出成形性も良好である。
直鎖状ポリエチレンのゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法で得られる分子量分布曲線から得られる分子量1,000以下の成分の占有率(分子量1,000以下の成分の占有率は、ポリマー全重量に対する、分子量分布曲線から得られる分子量1,000以下の成分の積分量の割合)がポリマー全重量の1.0重量%以下であり、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。分子量1,000以下の成分の占有率がポリマー全重量の1.0重量%以下であれば、該樹脂の低分子量成分である溶出物や劣化物等の汚染物質の薬品への溶出を極力抑えることができる。
直鎖状ポリエチレンのゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法で得られる分子量分布曲線から得られる分子量100万以上の成分の占有率(分子量100万以上の成分の占有率は、ポリマー全重量に対する分子量分布曲線から得られる分子量100万以上の成分の積分量との割合)がポリマー全重量の0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下である。分子量100万以上の成分の積分量がポリマー全重量の0.5重量%以下であれば、成形した高純度薬品容器の表面光沢性が良好であり、ゲル状の発生物が少なく、印刷加工性にも優れる。
【0022】
本実施の形態の直鎖状ポリエチレンの吸熱曲線の融点ピーク及び発熱曲線の結晶化熱量ΔHは、それぞれ示差走査型熱量計による昇温測定及び降温測定において求めることができる。
本実施の形態において、示差走査型熱量計による測定は、以下の実施例に記載の方法により実施することができる。
本実施形態の直鎖状ポリエチレンの示差走査型熱量計による昇温測定において得られる吸熱曲線の融点ピークは一つである。これによって成形した高純度薬品容器は寸法安定性に優れ、しかも耐熱性にも優れる。
本実施形態の直鎖状ポリエチレンの示差走査型熱量計による降温測定において得られる発熱曲線の結晶化熱量ΔHは220J/g以上であり、好ましくは230J/g以上である。結晶化熱量ΔHは発熱ピーク時の発熱量であり、発熱ピーク面積から求められる。ΔHが220J/g以上であれば、結晶化度が高いため該樹脂の低分子量成分である溶出物や劣化物等の汚染物質の高純度薬品への溶出を極力抑えることができる。
【0023】
本実施の形態の直鎖状ポリエチレンの80℃におけるノルマルヘプタン抽出分の量が1.0重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下である。ノルマルヘプタン抽出量が1.0重量以下であれば、該樹脂の低分子量成分である溶出物や劣化物等の汚染物質の高純度薬品への溶出を極力抑えることができる。
本実施の形態において、ノルマルヘプタン抽出分の量は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
本実施の形態の直鎖状ポリエチレンのエタノール抽出による炭素数18、及び20の炭化水素成分量の測定方法は以下のとおりである。試料ペレット10g、エタノール10ccを密閉されたテフロン(登録商標)製容器中に保持し、50℃、5日間抽出する。和光純薬工業(株)製特級n−オクタデカン及び和光純薬工業(株)製特級n−エイコサンのクロロホルム溶液を、標準試薬として用いた。上記抽出液を、島津製作所(株)製ガスクロマトグラフGC−14B及び内径3.2mm、有効長1.1m、島津製作所(株)製SiliconeOV−17を充填したカラムを用い、インジェクション温度250℃、カラム温度160℃の条件下で測定された。上記標準試薬のピークエリアとの比から、炭素数18、20の炭化水素成分量を算出した。
本実施形態の直鎖状ポリエチレンのエタノール抽出による炭素数18及び20の炭化水素成分量は100ppm以下であり、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。エタノール抽出による炭素数18及び20の炭化水素成分量が100ppm以下であれば、該樹脂の低分子量成分である溶出物や劣化物等の汚染物質の高純度薬品への溶出を極力抑えることができる。特にメタノールやエタノール等の低級アルコール類など極性溶媒への溶出を極力抑えることができる。
特に、高純度薬品容器に適したポリエチレンとして用いられる直鎖状ポリエチレンとしては、ポリエチレン樹脂の溶出物や劣化物等の汚染物質の高純度薬品への溶出を極力抑える観点から、エチレン単独重合体がより好ましい。
直鎖状ポリエチレンがエチレン単独重合体であれば、さらに分子量分布が狭く、低分子量ポリエチレンにコモノマーの導入が無いため、さらに該樹脂の溶出物や劣化物等の汚染物質の高純度薬品への溶出を極力抑えたポリエチレンを得ることができる。
【0025】
本発明の直鎖状ポリエチレンは、例えば、メタロセン触媒を用い、かつ特殊な製造方法を適用することで製造され、これにより本発明の課題が効率よく達成されるものである。
メタロセン触媒を用いることにより、直鎖状ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)を狭く、分子量1,000g/モル以下の分子量成分(該樹脂の低分子量成分)である溶出物や劣化物等の汚染物質を極力低減する分子設計が実現できる。
【0026】
直鎖状ポリエチレンの製造方法には特に制限はないがメタロセン担持触媒[I]を予め水素と接触させた後、液体助触媒成分[II]と共に重合反応器へ導入し、エチレン単独の重合又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合を行う方法が例として挙げられる。
【0027】
本発明で用いられる重合方法としては、不活性溶媒中でのスラリー重合が好ましく用いられる。
重合法としては、例えば、不活性ガス中での流動床式気相重合又は撹拌式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などが挙げられるが、低分子重合体の樹脂への取り込みを制限するために不活性溶媒中でのスラリー重合が最も好ましい。
不活性溶媒としては、好ましくは炭素数が6以上の不活性溶媒、より好ましくは炭素数6以上かつ10以下の不活性溶媒、例えば、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンなどが挙げられる。
【0028】
本発明の直鎖状ポリエチレン(A)の製造方法は、連続式の重合反応器に溶媒としてノルマルヘキサンを用いるスラリー重合法で行う場合には、ノルマルヘキサン中の不純物量(溶媒であるノルマルヘキサンを蒸発乾燥して、残った残留分を元のノルマルヘキサン重量で割った値)が0〜1.0重量%の範囲であり、好ましくは0〜0.8重量%、より好ましくは0〜0.5重量%である。ノルマルヘキサン中の不純物量が1.0重量%以下であれば、該樹脂の溶出物や劣化物等の汚染物質の高純度薬品への溶出を極力抑えた高純度薬品容器に適したポリエチレンを得ることができる。
さらにスラリー重合法における重合温度を75℃〜80℃、好ましくは78℃〜80℃にコントロールすることにより、溶出物や劣化物等の汚染物質を極力低減する分子設計が実現できる。
【0029】
(メタロセン担持触媒[1])
本発明の高純度薬品容器用ポリエチレンの製造に好ましく用いられるメタロセン担持触媒[I]としては、(I−a)担体物質、(I−b)有機アルミニウム、(I−c)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(I−d)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製されたメタロセン担持触媒を用いることが好ましい。
【0030】
(I−a)担体物質としては、有機担体、無機担体のいずれでもよい。
有機担体としては、好ましくは、炭素数2〜20のα−オレフィンの重合体、芳香族不飽和炭化水素重合体、及び極性基含有重合体などが挙げられる。
【0031】
炭素数2〜20のα−オレフィンの重合体としては、例えば、エチレン樹脂、プロピレン樹脂、1−ブテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−1−ヘキセン共重合体樹脂、プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂、及びエチレン−1−ヘキセン共重合体などが挙げられる。
【0032】
芳香族不飽和炭化水素重合体としては、例えば、スチレン樹脂及びスチレン−ジビニルベンゼン共重合体樹脂などが挙げられる。
【0033】
極性基含有重合体としては、例えば、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アミド樹脂、及びカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0034】
無機担体としては、好ましくは、無機酸化物、無機ハロゲン化物、無機の炭酸塩、硫酸塩、及び硝酸塩、並びに水酸化物などが挙げられる。
【0035】
無機酸化物としては、例えば、SiO、Al、MgO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、SiO−MgO、SiO−Al、SiO−MgO、及びSiO−Vなどが挙げられる。
【0036】
無機ハロゲン化合物としては、例えば、MgCl、AlCl、及びMnClなどが挙げられる。
【0037】
無機の炭酸塩、硫酸塩、及び硝酸塩としては、例えば、NaCO、KCO、CaCO、MgCO、Al(SO、BaSO、KNO、Mg(NOなどが挙げられる。
【0038】
水酸化物としては、例えば、Mg(OH)、Al(OH)、Ca(OH)などが挙げられる。
【0039】
(I−a)担体物質としては、SiOであることが好ましい。
担体の粒子径は任意であるが、粒子径分布としては、1〜3000μmであることが好ましく、粒子の分散性の見地から、粒子径分布は、10〜1000μmの範囲内であることが、さらに好ましい。
【0040】
(I−a)担体物質は必要に応じて(I−b)有機アルミニウムで処理される。
【0041】
(I−b)有機アルミニウムとしては、一般式:(−Al(R)O−)n(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はRO基で置換されていてもよい。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である。)で示される直鎖状又は環状重合体などが挙げられる。
【0042】
(I−b)有機アルミニウム化合物としては、例えば、Rがメチル基、エチル基、イソブチルエチル基である、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、及びイソブチルエチルアルモキサンなどが挙げられる。
【0043】
(I−b)有機アルミニウムとしては、上記以外にも、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキアルキルハロゲノアルミニウム、アルメニルアルミニウム、ジアルキルハイドロアルミニウム、及びセスキアルキルハイドロアルミニウムなどが挙げられる。
【0044】
トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、及びトリオクチルアルミニウムなどが挙げられる。
【0045】
ジアルキルハロゲノアルミニウムとしては、例えば、ジメチルアルミニウムクロライド及びジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルハロゲノアルミニウムなどが挙げ
【0046】
セスキアルキルハロゲノアルミニウムとしては、例えば、セスキメチルアルミニウムクロライド及びセスキエチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。
【0047】
(I−b)有機アルミニウムとしては、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、及びセスキエチルアルミニウムハイドライドなどを挙げることもできる。
【0048】
(I−b)有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、及びジイソブチルアルミニウムハイドライドであることが好ましい。
【0049】
(I−c)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物としては、下記式(1)で示される化合物を挙げられる。
【化1】

【0050】
上記式(1)中、Mは1つ以上の配位子Lとη結合をしている酸化数+2、+3、+4の長周期型周期律表第4族の遷移金属である。遷移金属は、チタニウムが好ましい。
【0051】
Lは環状η結合性アニオン配位子であり、各々独立にシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、又はオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビ基、ヒドロカルビオルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルホスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基から各々独立に選ばれる1〜8の置換基を任意に有していてもよく、2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカルバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、ジラジイル、ハロシラジイル、アミノシランなどの2価の置換基により結合されていてもよい。
【0052】
Xは各々独立に、60個までの非水素原子を有する、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、又はM及びLに各々l個ずつの価数で結合する2価のアニオンσ結合型配位子である。
【0053】
X'は各々独立に、炭素数4〜40からなるホスフィン、エーテル、アミン、オレフィン、及び/又は共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物である。lは1又は2の整数である。
【0054】
pは0〜2の整数であり、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子であるか、M及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数よりもl以上少なく、XがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数よりもl+1以上少ない。
【0055】
qは0、1又は2の整数である。
【0056】
(I−c)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物としては、上記式(1)でl=1である化合物が好ましい。
【0057】
(I−c)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物の好適な化合物としては、下記式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0058】
【化2】

【0059】
上記式(2)中、Mは形式酸化数+2、+3又は+4のチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、チタニウムであることが好ましい。
【0060】
は各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基であり、各々20個までの非水素原子を有することができる。また、近接するR同士がヒドロカルバジイル、ジラジイル、又はゲルマジイルなどの2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。
【0061】
X”は各々独立に、ハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基、又はシリル基であり、各々20個までの非水素原子を有しており、また2つのX”が炭素数5〜30の中性共役ジエン又は2価の誘導体を形成してもよい。
【0062】
Yは、O、S、NR、又はPRである。
【0063】
ZはSiR、CR、SiRSiR、CRCR、CR=CR、CRSiR、又はGeRである。
【0064】
は各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基である。
【0065】
nは1〜3の整数である。
【0066】
(I−c)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物のより好適な化合物としては、下記式(3)又は下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0067】
【化3】

【0068】
【化4】

【0069】
上記式(3)及び式(4)中、Mはチタニウム、ジルコニウム、又はハフニウムであり、チタニウムであることが好ましい。
【0070】
は各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基であり、各々20までの非水素原子を有することができる。
【0071】
Z、Y、X及びX'は、前出のとおりである。
【0072】
pは0〜2の整数であり、qは0又は1の整数である。
【0073】
但し、pが2でqが0の場合、Mの酸化数は+4であり、かつXはハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基又はこれらの複合基であり、20個までの非水素原子を有している。また、pが1でqが0の場合、Mの酸化数は+3であり、かつXはアリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基、又は2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子であるか、又はMの酸化数が+4であり、かつXが2価の共役ジエンの誘導体であるか、又はMとXが共にメタロシクロペンテン基を形成している。さらに、pが0でqが1の場合、Mの酸化数は+2であり、かつX'は中性の共役又は非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素で置換されていてもよく、X'は40までの炭素原子を含み得るものであり、Mとπ型錯体を形成している。
【0074】
(I−c)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物のさらに好適な化合物としては、下記式(5)又は下記式(6)で示される化合物が挙げられる。
【0075】
【化5】

【0076】
【化6】

【0077】
上記式(5)及び式(6)中、Mはチタニウムである。
【0078】
は各々独立に、水素又は炭素数1〜6のアルキル基である。
【0079】
Yは、O、S、NR、又はPRであり、Zは、SiR、CR、SiRSiR、CRCR、CR=CR、CRSiR、又はGeRである。
【0080】
は各々独立に、水素、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基又はこれらの複合基であり、Rは20個までの非水素原子を有することができ、必要に応じてZ中の2つのR同士又はZ中のRとY中のRが環状となっていてもよい。
【0081】
pは0〜2の整数であり、qは0又は1の整数である。
【0082】
但し、pが2でqが0の場合、Mの酸化数は+4であり、かつXは各々独立に、メチル基又はヒドロベンジル基である。また、pが1でqが0の場合、Mの酸化数は+3であり、かつXが2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基であるか、又はMの酸化数が+4であり、かつXが2−ブテン−1,4−ジイルである。さらに、pが0でqが1の場合、Mの酸化数は+2であり、かつX'は1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン又は1,3−ペンタジエンである。
【0083】
前記ジエン類は金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
【0084】
(I−d)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、単に「(I−d)活性剤」と記載する場合がある。)としては、例えば、下記式(7)で示される化合物が挙げられる。
【0085】
メタロセン担持触媒[I]においては、(I−c)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と上記(I−d)活性化剤により形成される錯体が、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。
【0086】
【化7】

【0087】
上記式(7)中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。
【0088】
[Md−は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属又はメタロイドであり、Qは各々独立に、ヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基である。但し、ハライドであるQは1個以下である。
【0089】
mは1〜7の整数であり、tは2〜14の整数であり、dは1〜7の整数であり、t−m=dである。
【0090】
(I−d)活性化剤の好適な化合物としては、下記式(8)で示される化合物が挙げられる。
【0091】
【化8】

【0092】
上記式(8)中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。
【0093】
[M(G(T−H)d−は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属又はメタロイドであり、Qは各々独立に、ヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシド基、アリロキサイド基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基である。但し、ハライドであるQは1個以下である。
【0094】
GはM及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基であり、TはO、S、NR又はPRであり、Rはヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、若しくは水素である。
【0095】
mは1〜7の整数であり、wは0〜7の整数であり、uは0又は1の整数であり、rは1〜3の整数であり、zは1〜8の整数であり、w+z−m=dである。
【0096】
(I−d)活性化剤のより好適な化合物としては、下記式(9)で示される化合物が挙げられる。
【0097】
【化9】

【0098】
上記式(9)中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。
【0099】
[BQは相溶性の非配位性アニオンであり、Bはホウ素原子、Qはペンタフルオロフェニル基であり、Qは置換基としてOH基を1つ有する炭素数6〜20の置換アリール基である。
【0100】
本実施の形態において、相溶性の非配位性アニオンとしては、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)フェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオロメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−(4’−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレートなどが挙げられ、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートであることが好ましい。
【0101】
相溶性の非配位性アニオンとしては、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHRで置き換えられたボレートを挙げることができる。ここでRは、メチル基、エチル基又はt−ブチル基であることが好ましい。
【0102】
本実施の形態において、プロトン付与のブレンステッド酸としては、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウムなどのようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオンが挙げられ、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウムなどのようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンなども挙げられる。
【0103】
(液体助触媒成分[II])
本実施の形態において、液体助触媒成分[II]は下記式(10)で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物[III−1](以下、単に「有機マグネシウム化合物[III−1]」と記載する場合がある。)とアミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物[III−2](以下、単に「化合物[III−2]」と記載する場合がある。)との反応によって合成される、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物であることが好ましい。
【0104】
【化10】

【0105】
上記式(10)中、Mは周期律表第1〜3族に属する金属原子であり、R及びRは炭素数2〜20の炭化水素基であり、a、b、c、dは次の関係を満たす実数である。
【0106】
0≦a、0<b、0≦c、0≦d、c+d>0、かつe×a+2b=c+d(eはMの原子価である。)
【0107】
有機マグネシウム化合物[III−1]と化合物[III−2]との反応には特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素及び/又はベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などの不活性反応媒体中、室温〜150℃の間で反応させることが好ましい。
【0108】
液体助触媒成分を製造する反応において添加する順序については特に制限はなく、有機マグネシウム化合物[III−1]中に化合物[III−2]を添加する方法、化合物[III−2]に有機マグネシウム化合物[III−1]を添加する方法、又は両者を同時に添加する方法のいずれの方法を用いてもよい。
【0109】
有機マグネシウム化合物[III−1]と化合物[III−2]との反応比率については特に制限はないが、反応により合成される液体助触媒成分[II]に含まれる全金属原子に対する化合物[III−2]のモル比が0.01〜2であるように化合物[III−2]を添加することが好ましく、0.1〜1となるように添加することがより好ましい。
【0110】
本実施の形態において、液体助触媒成分[II]は不純物のスカベンジャーとして用いられる。液体助触媒成分[II]は、高濃度であっても重合活性を低下させることが少なく、したがって広い濃度範囲で高い重合活性を発現させることができる。このため液体助触媒成分[II]を含むオレフィン重合用触媒は、重合活性の制御が容易である。
【0111】
液体助触媒成分[II]は1種で使用してもよいし二種類以上混合して使用してもよい。
【0112】
重合に使用する際の液体助触媒成分[II]の濃度については特に制限はないが、液体助触媒成分[II]に含まれる全金属原子のモル濃度が0.001mmol/リットル以上10mmol/リットル以下であることが好ましく、0.01mmol/リットル以上5mmol/リットル以下であることがより好ましい。
【0113】
該モル濃度が0.001mmol/リットル以上であれば、不純物のスカベンジャーとしての作用を十分に発揮することができ、10mmol/リットル以下であれば、重合活性を十分に発揮させることができる。
【0114】
有機マグネシウム化合物[III−1]は上記式(10)で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物である。
【0115】
上記式(10)として、有機マグネシウム化合物[III−1]は、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、(RMg及びこれらと他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。記号a、b、c、dの関係式e×a+2b=c+dは、金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0116】
上記式(10)中、R及びRの炭素数2〜20の炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基であり、アルキル基であることが好ましく、一級アルキル基であることがより好ましい。
【0117】
a>0の場合、金属原子Mとしては、周期律表第1〜3族からなる群に属する金属元素が使用でき、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどが挙げられるが、特にアルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が好ましい。
【0118】
金属原子Mに対するマグネシウムのモル比b/aには特に制限はないが、0.1以上50以下の範囲が好ましく、0.5以上10以下の範囲がより好ましい。
【0119】
a=0の場合、有機マグネシウム化合物[III−1]が炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物であることが好ましく、上記式(10)のR及びRが次に示す三つの群(i)、(ii)、(iii)のいずれか一つであることがさらに好ましい。
【0120】
(i)R及びRの少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級又は三級のアルキル基であり、好ましくはR及びRが共に炭素原子数4〜6であり、かつ少なくとも一方は二級又は三級のアルキル基である。
【0121】
(ii)R及びRが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であり、好ましくはRが炭素原子数2又は3のアルキル基であり、Rが炭素原子数4以上のアルキル基である。
【0122】
(iii)R及びRの少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であり、
好ましくはR及びRが共に炭素原子数6以上のアルキル基である。
【0123】
(i)において炭素原子数4〜6である二級又は三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−エチルプロピル基などが挙げられ、1−メチルプロピル基が好ましい。
【0124】
(ii)において炭素原子数2又は3のアルキル基としては、エチル基、プロピル基が挙げられ、エチル基が好ましい。また、炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられ、ブチル基、ヘキシル基が好ましい。
【0125】
(iii)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基などが挙げられ、アルキル基である方が好ましく、ヘキシル基であることがより好ましい。
【0126】
有機マグネシウム化合物[III−1]として、一般にアルキル基の炭素原子数を増やすと炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘性が高くなる傾向があり、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくないことがある。有機マグネシウム化合物[III−1]は炭化水素溶液として用いられるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミンなどのコンプレックス化剤をわずかに含有してもよく、また、該溶液中に該コンプレックス化剤が残存していても差し支えなく用いることができる。
【0127】
化合物[III−2]は、アミン、アルコール、シロキサン化合物からなる群に属する化合物である。
【0128】
アミン化合物としては、特に制限はないが、脂肪族、脂環式又は芳香族アミンが挙げられる。
【0129】
アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジンなどが挙げられる。
【0130】
アルコール化合物としては、特に制限はないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−エチル−4−メチル−1−ペンタノール、2−プロピル−1−ヘプタノール、2−エチル−5−メチル−1−オクタノール、1−オクタノール、1−デカノール、シクロヘキサノール、フェノールが挙げられ、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールが好ましい。
【0131】
シロキサン化合物としては、特に制限はないが、下記式(11)で示される構成単位を有するシロキサン化合物が挙げられる。
【0132】
シロキサン化合物は1種類又は2種類以上の構成単位から成る2量体以上の鎖状又は環状の化合物の形で用いることができる。
【0133】
【化11】

【0134】
上記式(11)中、R6及びRは、水素、炭素原子数1〜30の炭化水素基又は炭素原子数1〜40の置換された炭化水素基なる群より選ばれる基である。
【0135】
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基、ビニル基が挙げられる。炭素原子数1〜40の置換された炭化水素基としては、特に制限はないが、トリフルオロプロピル基が挙げられる。
【0136】
シロキサン化合物として、対称ジヒドロテトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ペンタメチルトリヒドロトリシロキサン、環状メチルヒドロテトラシロキサン、環状メチルヒドロペンタシロキサン、環状ジメチルテトラシロキサン、環状メチルトリフルオロプロピルテトラシロキサン、環状メチルフェニルテトラシロキサン、環状ジフェニルテトラシロキサン、(末端メチル封塞)メチルヒドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、(末端メチル封塞)フェニルヒドロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが好ましい。
【0137】
高純度薬品容器に適したポリエチレンには、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて公知の添加剤を添加することができるが、本来無添加が好ましい。チーグラーナッタ触媒で重合されたポリエチレンは、塩素を補足するための中和剤や熱安定剤としての酸化防止剤が必要となる。この中和剤としては、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩やハイドロタルサイト類が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系安定剤、有機ホスファイト系安定剤が挙げられる。何れも高純度薬品中に溶出して汚染原因となる。メタロセン系触媒で重合されたポリエチレンは、これらの中和剤や酸化防止剤を必要とせず、無添加のままで高純度薬品用容器に使用できるので好ましいすなわち、本実施形態の高純度薬品用容器用ポリエチレンは、中和剤及び酸化防止剤を、いずれも実質的に含まないことが好ましい。ここで「実質的に含まない」とは、意図的にこれらが添加されていないことを意味し、具体的には下記の添加量の上限より2桁以上少ないことを意味する。
また、本来無添加が好ましいが、内容物の薬品の種類によっては、中和剤として好ましくは150PPM以下、より好ましくは100ppm以下である。酸化防止剤として好ましくは800PPM以下、より好ましくは300ppm以下である。
中和剤として高級脂肪酸の金属塩類を添加することが最も好ましく、成形加工性における滑剤としてはたらき、容器の表面状態が比較的良好である。
酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を添加することが最も好ましく、樹脂の薬品による酸化劣化を防止し、容器の変色・劣化を抑えることができる。
【0138】
添加剤としては、高級脂肪酸の金属塩としての安定剤、フェノール系安定剤をはじめ、有機ホスファイト系安定剤、有機チオエステル系安定剤、有機又は無機顔料、紫外線吸収剤、染料、核剤、潤滑剤、カーボンブラック、タルク、ガラス繊維などの無機充填材又は補強材、難燃剤、中性子遮断剤などのポリオレフィンに添加される配合剤などが挙げられる。
【0139】
高級脂肪酸の金属塩としての安定剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、カプリル酸、アラキジン酸、パルミチン酸、及びベヘニン酸などの高級脂肪酸のマグネシウム、カルシウム、及びバリウム塩などのアルカリ土類金属塩、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、ナトリウム塩、カリウム塩、並びにリチウム塩などを用いても良い。
【0140】
高級脂肪酸の金属塩としての安定剤としては、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシュウム、オレイン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、及び12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。
フェノール系安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−メチルフェノール、2,6−ジイソプロピル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−オクチル−4−n−プロピルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−n−オクチルフェノール、2−イソプロピル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−2−エチル−6−t−オクチルフェノール、2−イソブチル−4−エチル−6−t−ヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−4−n−ブチル−6−イソプロピルフェノール、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート)メタン、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンジルベンゼン、1,3,5−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)メタン、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルフェノール)プロピオン酸アルキルエステル、2,2−オキザミドビス(エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(2,4−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシル)プロピオネート)、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオノ−1,3,5−トリアジン、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール)、ビス(3,5−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシド)グリコールエステル、4,4−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、1,3,5−トリス((3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル)イソシアヌレート、2−オクチルチオ−4,6−ジ(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル)フェノキシ−1,3,5−トリアジン、4,4−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)などが挙げられる。
【0141】
有機ホスファイト系安定剤としては、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチル−ジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、トリス(モノ又はジノニルフェニル)ホスファイト、水素化−4,4−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイド、ビス(オクチルフェニル)ビス(4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール))1,6−ヘキサンオールジホスファイド、フェニル−4,4−イソプロピリデンジフェノールペンタエリスリトールジホスファイド、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイド、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイド、トリス((4,4、−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール))ホスファイド、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイド、トリス(1,3−ジ−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、4,4−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)ジ(ノニルフェニル)ホスファイド、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレンジホスファイドなどが挙げられる。
【0142】
有機チオエステル系安定剤としては、ジラウリル−、ジミリスチル−、ジステアリル−などのジアルキルチオプロピオネート及びブチル−、オクチル−、ラウリル−、ステアリル−などのアルキルチオプロピオン酸の多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート)のエステルなどが挙げられ、具体的には、ジラウリルチオプロピオネート、ジミリスチルチオプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジブチレート、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネートなどが挙げられる。
【0143】
本実施の形態の高純度薬品容器に適した直鎖状ポリエチレンの成形体を調製する際には、直鎖状ポリエチレンと各種の添加剤を公知の方法を利用して混合することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、加熱ロール練り機等で溶融混合することにより得られる。
次に、本発明における高純度薬品容器について説明する。
本実施の形態の高純度薬品容器用ポリエチレンからなる、200℃の成形温度で成形した成形片の成形品の表面は、光沢性に優れており、JIS−Z8741:1997に準拠し入射角が60°にて測定される光沢度が90.0以上であることが好ましく、更に好ましくは92.0%以上である。
本発明において、高純度薬品容器の製造方法については特に制限は無いが、射出成形、ブロー成形、押出成形、回転成形等既知の成形方法により容器状に成形することにより、高純度薬品容器になる。特に射出成形法が適しており、高純度薬品への低溶出性、表面光沢性、さらに機械強度、耐落下衝撃性に優れる。
この高純度薬品容器は、ウエハー洗浄・エッチング用、配線・絶縁膜エッチング用、治具洗浄用、現像液、乾燥用等の用途として、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、過酸化水素水、イソプロピルアルコール、キシレン、メタノール、エアタノール、酢酸、リン酸、アンモニア水、乳酸エチル等の高純度薬品用容器として利用される。
中でもメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノールなどのアルコール類、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、メチルイソブチルケトンなど極性溶媒の高純度薬品容器として最適である。
特にメタノールやエタノールなど液体燃料を用いた燃料電池は、燃料電池ノート型パソコン、携帯電話、携帯情報端末、デジタルカメラなどの小型電子機器(モバイル機器)等の燃料電池用アルコール容器に特に好適に使用される。また、本発明における高純度薬品容器は半導体分野、IT分野、医療医薬分野、及びサニタリー分野において、クリーン性が必要とされる用途にも好適に使用され、特に前記分野の容器として、特に好適に使用される。
本発明の高純度薬品容器は、高純度薬品に対する溶出物が少なく、表面光沢性に優れるため高級外感と容器表面への印刷性に優れる。
次に、実施例及び参考例などに基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0144】
次に、実施例及び参考例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0145】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によって更に詳細に説明するが、本実施の形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0146】
(1)密度
JIS−K−7112:1999に準じて測定した。
【0147】
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS−K−7210:1999(温度=190℃、荷重=2.16kg)に準じて測定した。
【0148】
(3)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法によるMw/Mn(分子量分布)、ポリマー全重量に対する分子量1,000以下の成分の占有率、及び分子量100万以上の成分の占有率
Waters社製150−C ALC/GPCの装置を用い、カラムとしてShodex製AT−807Sと東ソー製TSK−gelGMH−H6を直列にして用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定を行った。溶媒に10ppmのイルガノックス1010を含むトリクロロベンゼンを用いて、140℃で測定した。なお標準物質として市販の単分散のポリスチレンを用い、検量線を作成した。分子量1,000以下の成分の占有率は、ポリマー全重量に対する分子量分布曲線から得られる分子量1,000以下の成分の積分量の割合で示される。分子量100万以上の成分の占有率は、ポリマー全重量に対する分子量分布曲線から得られる分子量100万以上の成分の積分量との割合で示される。
【0149】
(4)示差走査型熱量計による融点ピーク(℃)及び結晶化熱量ΔH(J/g)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7型装置)を用い、以下の条件で測定した。1)ポリマー試料約5mgをアルミパンに詰め200℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した。2)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で50℃まで降温し、降温完了後5分間保持した。3)次いで、50℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。この2)の過程で観察される発熱曲線より発熱ピークの面積を結晶化熱量ΔH(J/g)として求めた。また、この3)の過程で観察される吸熱曲線より融解ピーク位置の最高温度を融点ピーク(℃)として求め、評価した。
(5)ノルマルヘプタン抽出分の量
ソックスレー抽出器を用い、あらかじめ乾燥したポリマー試料を約10g秤量し、ノルマルへプタン400mlで80℃で約6時間抽出した。ポリマー全重量に対する抽出率(重量%)で示す。
(6)エタノール抽出による炭素数18及び20の炭化水素成分量
秤量したポリマー試料を約10g、エタノール60ccを密閉されたテフロン(登録商標)製容器中に保持し、50℃、5日間抽出する。和光純薬工業(株)製特級n−オクタデカン及び和光純薬工業(株)製特級n−エイコサンのクロロホルム溶液を標準試薬として用いた。上記抽出液は、島津製作所(株)製ガスクロマトグラフGC−14B及び内径3.2mm、有効長1.1m、島津製作所(株)製SiliconeOV−17を充填したカラムを用い、インジェクション温度250℃、カラム温度160℃の条件下で測定された。上記標準試薬のピークエリアとの比から炭素数18、20の炭化水素成分量を算出した。
(7)ノルマルヘキサン中の不純物量
連続式の重合反応器から約400mlのノルマルヘキサン液を採取し、重量を秤量後、ノルマルヘキサンを蒸発させて、乾燥固化させて溶出物を得た。この溶出物の重量を秤量し、溶出物の重量を採取したノルマルヘキサン液の所期の重量に対する割合をノルマルヘキサン中の不純物量として求める。
(8)60゜グロス光沢度(表面光沢性)
東芝製射出成形機IS−130FBを用い、肉厚1mm、縦10cm、横10cmの平板を成形した。得られた平板を成形後2日間放置し、平板表面について、光沢度:JIS Z8741:1997に準拠して入射角が60°にて測定した。
(9)落下衝撃試験
上記で作成した肉厚1mm、縦10cm、横10cmの平板を東洋精機製落錘型グラフィックインパクトテスターにより全吸収エネルギーを測定した。試験回数を3回とした。
【0150】
[実施例1]
<樹脂サンプル作製>
[メタロセン担持触媒[I]の調製]
シリカQ−6[富士シリシア社(日本国)製]を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.85mmol/g−SiO2であった。容量1.8リットルのオートクレーブにこの脱水シリカ40gをヘキサン800ml中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下50℃に保ちながらトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/リットル)を80ml加え、その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされている成分[IV]を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー880mlを得た。
【0151】
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」と記載する。)200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000ccに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg6(C253(n−C4912の1mol/リットルヘキサン溶液を20cc加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/リットルに調整し、成分[V]を得た。
【0152】
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と記載する。)5.7gをトルエン50ccに添加して溶解し、ボレートの100mmol/リットルトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1mol/リットルヘキサン溶液5ccを室温で加え、さらにヘキサンを加えて溶液中のボレート濃度が70mmol/リットルとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物を得た。
【0153】
ボレートを含むこの反応混合物46ccを、上記で得られた成分[IV]のスラリー800ccに15〜20℃で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。さらに上記で得られた成分[V]のうち32ccを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうしてシリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されているメタロセン担持触媒[I]を得た。
【0154】
[液体助触媒成分[II]の調製]
有機マグネシウム化合物[III−1]として、AlMg(C(n−C12で示される有機マグネシウム化合物を使用した。化合物[III−2]として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)を使用した。
【0155】
200ccのフラスコにヘキサン40ccとAlMg(C(n−C12を、MgとAlの総量として37.8mmolを攪拌しながら添加し、25℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40ccを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下に反応させることにより、液体助触媒成分[II]を調製した。
【0156】
[直鎖状ポリエチレンであるエチレン単独重合体の調製]
(A−1)上記により得られたメタロセン担持触媒[I]と液体助触媒成分[II]は、触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素を接触させて重合反応器に導入し、溶媒としてノルマルヘキサン、モノマーとしてエチレンを用いた。ここで溶媒として使用するノルマルヘキサン中には、不純物量(溶媒であるノルマルヘキサンを蒸発乾燥して、残った残留分を元のノルマルヘキサン重量で割った値)が0.8重量%含まれていた。反応温度は78℃としてエチレン、水素の混合ガス(ガス組成は、水素とエチレン+水素のモル比が0.48%を維持できるように調節)を全圧が0.8MPaで、直鎖状ポリエチレンであるエチレン単独重合体を重合により調製した。得られた直鎖状ポリエチレン(A−1)であるエチレン単独重合体のパウダーは、中和剤や酸化防止剤などの添加剤を一切使用せずに、日本製鋼所社製TEX−44(スクリュー径44mm、L/D=35)の二軸押出成形機を利用し、220℃の温度で溶融混錬して造粒した。該ポリエチレンは、密度が966kg/m、MFRが12g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフの測定による分子量分布(Mw/Mn)が3.5であり、ノルマルヘプタン抽出分の量が0.73重量%であった。得られたエチレン重合体の評価結果を表1に併せて示した。
【0157】
[実施例2〜5]
実施例1の製法に準じ、表1に記載の実施例2〜5のエチレン重合体を製造した。得られたエチレン重合体は良好な低溶出性を有し、且つ成形体も優れた物性を有していた。評価結果を表1に併せて示した。
[比較例1]
<樹脂サンプル作製>
[チーグラーナッタ触媒を用いたエチレン単独重合体の製法]
(1)固体触媒成分[A]の調製
充分に窒素置換された200mlのステンレス製オートクレーブに組成式AlMg(C12(OCで表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液40ml(アルミニウムとマグネシウムの総量として37.8mmol相当)を仕込み、25℃で攪拌しながらメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40mlを30分かけて滴下した。滴下後、80℃に昇温し、3時間攪拌しながら反応させることにより、チタン化合物と接触させる有機マグネシウム化合物を得た。
充分に窒素置換された8Lのステンレス製オートクレーブにヘキサン2400mlを仕込み、−5℃で攪拌しながら、組成式AlMg(C12(OCで表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液1300ml(マグネシウム521mmol相当)と0.5mol/Lの四塩化チタンのヘキサン溶液1300mlとを、2時間かけて同時に滴下した。滴下後、さらに10℃で1時間攪拌しながら熟成させた後、上澄み液を除去し、ヘキサン3000mlでの洗浄を4回行うことにより、固体触媒成分[A](チーグラーナッタ触媒)を調製した。
【0158】
(2)重合反応
容積230Lの重合器で重合反応をおこなった。重合温度は86℃、重合圧力は0.98MPaとした。この重合器に合成したチーグラーナッタ触媒を0.3g/hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムを24mmol/hr、ノルマルヘキサンは48L/hrの速度で導入した。これにエチレン、水素の混合ガス(ガス組成は、水素とエチレン+水素のモル比が46%を維持できるように調節)を導入して重合した。得られたエチレン単独重合体のパウダーは、実施例1と同様に中和剤や酸化防止剤などの添加剤を一切使用せずに、日本製鋼所社製TEX−44(スクリュー径44mm、L/D=35)の二軸押出成形機を利用し、220℃の温度で溶融混錬して造粒した。該ポリエチレンは、密度が966kg/m、MFRが5.0g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフの測定による分子量分布(Mw/Mn)が7.2であり、ノルマルヘプタン抽出分の量が1.4重量%であった。得られた該ポリエチレンの評価結果を表1に併せて示した。
[比較例2〜3]
実施例1の製法に準じ、表1に記載の比較例2及び3のエチレン共重合体を製造した。(但し、比較例2における重合温度は、75℃であった。)得られたエチレン共重合体の評価結果を表1に併せて示した。比較例3で得られたエチレン共重合体は、ノルマルヘキサン中の不純物量が少ない製造方法で製造したにもかかわらず、MFRが高いため、ノルマルヘプタン抽出分の量、並びにエタノール抽出による炭素数18、及び20の炭化水素成分量が多い。さらに、結晶化熱量ΔHが小さく、落下衝撃試験において試験片に亀裂が見られた。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、半導体装置産業分野、精密工業部品分野、医薬品分野、シャンプーや化粧品容器などのサニタリー分野等に使用され、高純度薬品用容器、さらには燃料電池用アルコール容器の材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状ポリエチレンであって、下記(a−1)〜(a−9)の要件を満たすことを特徴とする高純度薬品容器用ポリエチレン。
(a−1)エチレン単独重合体又はエチレン単位と1又は2種以上の炭素数3〜20のα−オレフィン単位とからなる共重合体である。
(a−2)密度が940〜975kg/mである。
(a−3)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜20g/10分である。
(a−4)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法により求められるMw/Mnが、3.0〜7.0である。
(Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、Mw/Mnは分子量分布を表す指標である。)
(a−5)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法で得られる分子量分布曲線から得られる分子量1,000以下の成分の占有率が、1.0重量%以下である。
(分子量1,000以下の成分の占有率は、ポリマー全重量に対する、分子量分布曲線から得られる分子量1,000以下の成分の積分量の割合)
(a−6)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法で得られる分子量分布曲線から得られる分子量100万以上の成分の占有率が、0.5重量%以下である。
(分子量100万以上の分子量成分の占有率は、ポリマー全重量に対する分子量分布曲線から得られる分子量100万以上の成分の積分量の割合)
(a−7)示差走査型熱量計による昇温測定において得られる吸熱曲線の融点ピークが一つである。
(a−8)80℃におけるノルマルヘプタン抽出分の量が1.0重量%以下である。
(a−9)エタノール抽出による炭素数18、及び20の炭化水素成分量が100ppm以下である。
【請求項2】
中和剤、及び酸化防止剤をいずれも実質的に含まないことを特徴とする請求項1に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
【請求項3】
前記直鎖状ポリエチレンがエチレン単独重合体である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
【請求項4】
前記直鎖状ポリエチレンの示差走査型熱量計による降温測定において得られる発熱曲線の結晶化熱量ΔHが220J/g以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレンを製造する方法であって、前記直鎖状ポリエチレンを、(I−a)担体物質、(I−b)有機アルミニウム、(I−c)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(I−d)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製されたメタロセン担持触媒[I]、並びに液体助触媒成分[II]を用いて重合により調製する、上記製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の高純度薬品容器用ポリエチレンの製造方法であって、前記直鎖状ポリエチレンを、連続式の重合反応器において溶媒としてノルマルヘキサンを用いスラリー重合法で製造するにあたり、該ノルマルヘキサン中の不純物量(溶媒である該ノルマルヘキサンを蒸発乾燥して得られた残留分の重量を元の該ノルマルヘキサンの重量で割った値)が0〜1.0重量%の範囲内であることを特徴とする、上記製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレンを含む、高純度薬品用容器。
【請求項8】
前記高純度ポリエチレンを200℃の成形温度で成形して得られた成形片の60°のグロス測定による光沢度が、90.0以上である、請求項7に記載の高純度薬品用容器。
【請求項9】
前記高純度薬品が、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルコールである、請求項7、又は8に記載の耐アルコール性高純度薬品用容器。
【請求項10】
前記高純度薬品用容器が燃料電池用アルコール容器であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の高純度薬品用容器。

【公開番号】特開2010−242077(P2010−242077A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62811(P2010−62811)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】