説明

高融点材料加工用坩堝、及び該坩堝中における高融点材料の加工方法

【課題】サファイアやガーネット等の高融点材料単結晶の製造に適した坩堝ならびにその使用方法を提供する。
【解決手段】坩堝10は坩堝支持体又は支持本体2と、坩堝支持体又は支持本体の内面上に処理されたコーティング4から成っている。坩堝10には高融点材料の溶融物7が含まれている。コーティング4は溶融物7との接触面を与え、かつ坩堝支持体2の表面を溶融物7との接触から保護する役割を果たす。コーティング4は好ましくは1800℃以上の融点をもつ金属、例えばインジウム等の耐熱性金属からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高融点材料の加工に用いる坩堝、該坩堝中における高融点材料の加工方法、及び該坩堝の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
高融点材料の加工、とりわけ高融点材料の精製あるいは高融点材料単結晶の製造は、半導体技術において、またマイクロリソグラフィー用光学素子の製造において重要である。
【0003】
EP−A1701179には、レンズ系の構成が可能なマイクロリソグラフィー用光学素子の製造方法、及び該方法の利用に関する開示がある。
【0004】
高融点材料の加工は坩堝中において実施可能であるが、坩堝を用いずとも可能である。
【0005】
坩堝無使用方式帯域精製は、半導体エンジニアリングにおいて用いられる既知方法である。原材料の精製は、通常ウエーハ製造用の半導体結晶を成長させる前に行われる。この精製においては、出発物質の縦方向に延ばされたロッドが局部的に溶融され、不純物の種類に依存して該ロッド中の初端部あるいは終端部において不純物が濃縮される。溶融帯域は一般的には誘導によって生成される。半導体溶融物の粘性は比較的高いため、誘導質形状を適切に選択することにより、直径の大きなロッドであっても、坩堝に接触することなく固体片間に溶融帯域を維持することが可能である。
【0006】
前記坩堝無使用方式帯域溶融法はサファイア等の高融点酸化物材料の精製にも用いられる。溶融帯域は主としてミラーヒーターと、さらに極めて強烈な集束光を用いて生成される。さらに、レーザ光または電子衝撃を用いて、あるいは抵抗加熱により、あるいは抵抗加熱と誘導加熱を組み合わせて溶融帯域を生成する方法も既知である。高融点酸化物の溶融物は粘性が極めて低いことから、極めて小さな高融点酸化物の溶融帯域だけを維持できることはすべての技術について共通である。金属製坩堝を用いるチョクラルスキー法は、高融点酸化物単結晶成長に適する方法である。しかしながら、ベルヌーイ成長法、スカル溶融法、及びVGF法(垂直温度勾配凝固法)あるいはHEM法(改良VGF法)などの坩堝中で成長させる方法も用いられている。
【0007】
溶融帯域は、直径の大きな半導体ロッドの坩堝無使用方式での帯域精製中に誘導によって生成される。溶融物の高粘性によって、坩堝と接触することなく溶融物を垂直誘導することが可能とされている。高融点酸化物は伝導性が極めて低いため、誘導加熱だけで高融点酸化物を溶融することは不可能である。抵抗加熱を除いた溶融帯域精製の他技術として、ミラーヒーター、レーザ又は電子ビームを用いる加熱があるが、これらによる加熱は入力されるエネルギー量が小さ過ぎるため溶融帯域の精製には適しない。また、高融点酸化物材料から成る直径の大きなロッドの場合、該材料の粘性が低いため、該ロッド片間の溶融帯域を維持することは不可能である。高融点酸化物材料の単結晶あるいは多結晶の成長は、例えばVGF法又はHEM法に従って金属製坩堝中において、あるいはチョクラルスキー法に従って金属製坩堝から生ずる。溶融物、あるいは溶融物及び結晶は坩堝と接触しているため、これら方法のいずれにおいも坩堝からの不純物が結晶中に蓄積される。
【0008】
成長中の結晶は大きな温度勾配に晒され、またベルヌーイ法やスカル溶融法等の無坩堝方式による成長法の場合には高い内圧が生ずる。
【0009】
リソグラフィー品質を有する高融点酸化物材料の大形単結晶の精製又は成長には、大直径かつ最高純度のロッドに用い得る方法が要求される。特に、単結晶は可能な限りストレスフリー(無ストレス)でなければならない。坩堝無使用方式は問題外である。さらに、外部からの混入を防ぐため、金属の精製中に金属が坩堝、ヒーターあるいは他の装置成分と接触しているなどの状態も問題外である。しかしながら、要求されるロッドサイズに関わる溶融帯域の特性及び溶融帯域ゆえに、前記精製は所謂ボート中において行われなければならない。ここで用語「ボート」とは特別な態様の坩堝のことである。溶融帯域は通常抵抗加熱によって生成される。
【0010】
高純度ストレスフリー単結晶の成長中においては、坩堝との接触が避けられない場合がある。ロッドあるいは結晶への坩堝成分の混入を避けるためには、高純度材料から成る坩堝が使用されなければならない。坩堝の製造に常温成形法を用いることはできない。ロッドあるいは結晶は結晶成長過程において坩堝へ付着するため、ロッドあるいは結晶をボート又は結晶から機械的に分離しなければならない。いずれの場合においても、ロッド残渣、結晶残渣、あるいは溶融物残渣はボートあるいは坩堝から取り除かれなければならない。その結果として、ボート又は坩堝を掃除するための器具により不純物が高純度坩堝、ロッドあるいは結晶中へと再度持ち込まれる。
【0011】
適当に大きく、高純度で耐熱性のある金属製坩堝の製造は労力、時間を要し、かつ高価な作業である。一般的ルールとして、坩堝の溶融物の重量及び精製工程から生ずる機械的ストレス及び歪みに耐える機械的安定性は常温成形により製造された坩堝に比べて小さい。前者の方がより高い摩耗を受ける。高融点酸化物の精製、あるいは例えばリソグラフィーに用いる高純度な大形単結晶の成長は、十分な機械的強度をもつ高純度坩堝中において実施され、かつ坩堝の機械的処理あるいは取り扱いによってロッド、結晶、あるいは溶融物残渣を容易に取り除くことができる一方において欠点のない方法が要求される。
【0012】
既知坩堝の製造は、例えば溶接又は蒸着工程、とりわけ雌型上への電子蒸着が用いられる面倒な作業である。このようにして製造された坩堝、特に蒸着処理を用いて製造された坩堝は必ずしも漏れに対して密封性ではなく、何度も繰り返し使用していると漏れを生ずるものである。
【0013】
特に高融点材料の単結晶成長に用いられる既知方法では、坩堝が成長した結晶に付着し、坩堝材料が高融点材料の溶融物と反応を起こすなどの問題がしばしば生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、高融点材料の加工に適し、かつ該加工に関し従来技術における既知坩堝がもつ上述した欠点の少なくとも一部を解消できる坩堝を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、溶融物と接触することになる坩堝表面部分が1800℃以上の融点をもつ金属から成る層でコーティングあるいは被覆されている、高融点材料溶融物受け入れ用の坩堝を提供することによって達成される。かかる坩堝が本発明の主題である。
【0016】
前記層は好ましくは坩堝材料へ堅固に結合される箔又は層である。
【0017】
坩堝の内側部分は好ましくは前記箔で完全に被覆される。
【0018】
坩堝の前記内側部分以外の部分も好ましくは前記箔で摂離自在に結合される。ここで用語「摂離自在に結合される」とは、坩堝中において高融点材料を溶融及び固化させた後、その固化中に前記箔と結合された固化高融点材料が該坩堝へ結合された箔と共に坩堝から取り外すこと、従って坩堝の前記内側部分以外の部分、すなわち坩堝支持体部分から取り外すことが可能なことを意味する。
【0019】
前記溶融物と接触することとなる坩堝表面部分をコーティングあるいは被覆する層を成す金属は好ましくは耐熱性金属である。かかる耐熱性金属は、特にハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、あるいはこれら金属から成る合金の中から選択される。
【0020】
本発明に係る坩堝に用いられる箔の厚さは、好ましくは1mm未満、特に好ましくは0.1mm未満、さらに好ましくは0.05mm未満である。
【0021】
前記箔の最小厚は好ましくは0.001mm以上である。
【0022】
本発明に係る坩堝は前記箔と本願において坩堝支持体と呼ばれるその他部分から構成される。前記坩堝支持体は前記箔の支持体として機能するものである。前記坩堝支持体は好ましくは耐熱金属から成り、旋盤上での旋盤細工、深絞り加工等の常温成形方法によって作製可能である。支持体として機能する坩堝の部分は好ましくは前記箔に比べて純度の低い材料から構成される。本発明に係る坩堝は、高融点材料が坩堝支持体と直接接触せず、かつ坩堝成分の混入が生じない利点も有する。
【0023】
さらに別の好ましい実施態様においては、前記層が坩堝材へ堅固に接着される。
【0024】
かかる層は好ましくは蒸着あるいは電子化学蒸着によって形成される。直流通電により一般的な化学蒸着を行うことが可能である。
【0025】
本発明のサブジェクトマターには、坩堝へ層コーティングを施すこと、あるいは坩堝支持体へ箔処理を行うことで構成される本発明に係る坩堝の製造方法も含まれる。
【0026】
本発明のサブジェクトマターには、さらに、高融点材料の加工における本発明に係る坩堝の利用方法も含まれる。
【0027】
前記用語「高融点材料の加工」とは、特に高融点材料からの単結晶の製造を意味する。また、前記用語は、多結晶材料の状態が得られた高融点材料であってもよい高融点材料から成る単結晶の精製をも意味する。この場合、高融点材料の加工は該材料の少なくとも一部が溶融される形で行われる。
【0028】
本発明には、本発明に係る箔が処理された坩堝中への高融点材料の導入、高融点材料の少なくとも一部の溶融、溶融された高融点材料の箔処理された坩堝中における固化、坩堝からの高融点材料及び箔の同時除去、高融点材料からの箔の除去から構成される高融点材料の加工方法という別の主題がある。
【0029】
坩堝からの高融点材料と箔の同時取り出しは、例えば坩堝をひっくり返すか、倒すかして坩堝からそれらを落とし出すことによって実施可能である。
【0030】
上記方法において、好ましくは、箔の融点が高融点材料の融点よりも摂氏で少なくとも倍、3倍、あるいは4倍、とりわけ1.5倍高い場合には、坩堝の選択が行われる。
【0031】
さらに、上記方法において、坩堝の残りの部分、すなわち坩堝支持体又は基部の融点が高融点材料の融点より摂氏で少なくとも倍、1.5倍、3倍、とりわけ少なくとも4倍高い場合、好ましくは坩堝の選択が行われる。
【0032】
高融点材料(例えば高融点材料から成る単結晶)からの前記箔の除去は、多大な機械的労力、例えば剥離あるいは取り外し等、を要せず実施可能である。前記箔が大気を含む酸素中での加熱によって燃える燃焼性材料から成る場合には、該箔を燃やし、あるいは燃焼させて取り除くことも可能である。このような材料の例としてはタングステン、タンタル、ニオブが挙げられる。さらに別の好ましい実施態様においては、前記箔は酸又は塩基に溶解する材料から作製される。この場合、該箔をエッチングで高融点材料から取り去ることも可能である。例えばタングステン箔の場合は、それをクロム酸中で溶解させることが可能である。
【0033】
このような方法は本発明方法の変形を取り扱う上で特に容易な方法である。
【0034】
前記箔は、例えば逆型への蒸着によって生成可能である。また、溶接により坩堝中に箔を生成させることも可能である。
【0035】
前記箔の厚さが薄いことからより少ない材料費で迅速に作製することが可能なため、高純度材料から成る坩堝よりも経済的である。そのため、前記箔を一時的な使用にも提供することが可能となる。これにより、例えばチョクラルスキー法(他の方法を採用することも可能)において、高融点材料と接触することとなる箔の純度を一定純度に確保することが可能となる。
【0036】
前記箔材料は、本発明に従い、好ましくは高融点材料の溶融物中へ箔材料が拡散しないか、あるいは拡散しても極めて僅かとなるように選択される。前記箔材料は、本発明方法の実施後において、高融点材料に含まれる箔材料濃度が100ppm未満、特に10ppm未満、さらには1ppm未満となるように選択される。
【0037】
坩堝の内側部分以外の部分に用いる材料は、箔の作製に用いられる材料に対して影響のない材料から選択されなければならない。例えばセラミック材料を坩堝の内側部分以外の部分へ用いることも可能である。
【0038】
また、坩堝の内側部分以外の部分、すなわち坩堝支持体によって機械的支持作用が果たされていることから、箔材料として比較的軟質な材料を用いることも可能である。
【0039】
本発明方法の実施中に反応(例えば共晶形成、包晶形成、又は合金形成)が起こらないように箔材料及び前記内側部分以外の部分に用いる材料を選択することが有利である。
【0040】
本発明に係る坩堝には、坩堝の前記内側部分以外の部分と高融点材料との接触が避けられることにより、例えば前記内側部分以外の部分の材料と高融点材料との反応が起こらないように防止できる利点もある。
【0041】
本発明方法は、例えば(所謂フロートゾーン法による)サファイアの成長、あるいはガーネット酸化物の成長、あるいはそれらの精製に用いることが可能であり、単結晶又は多結晶の成長が可能である。本発明方法はVGF成長法、VB成長法、HB成長法、HEM成長法、あるいは他の成長方法に従って適用可能である。
【0042】
本発明によれば、坩堝の前記内側部分以外の部分、すなわち坩堝支持体は、例えば旋盤上で回転させることにより漏れのない又は高密度な焼成材料から作製可能である。また、ロールに巻かれた金属シート又はプレートを溶接することによっても作製可能である。
【0043】
坩堝の機械的支持体としてのみ機能する坩堝の前記内側部分以外の部分は、本発明方法においては繰り返し使用可能である。この部分は安価で純度の低い材料で作製可能である。最新方法におけるのと同様に、坩堝全体を高価な高純度材料を用いて作製することも不要である。本発明方法においては、単純な鍛造坩堝、例えばモリブデン製坩堝であっても使用可能である。
【0044】
坩堝に用いる一般的な材料は、箔又はコーティングに用いられる材料と同じ材料である。しかしながら、セラミック材料であるAl、ZrO、Y及びMgO等の作業温度において安定な他の材料も有用材料である。
【0045】
前記箔を蒸着処理によって生成することも可能である。これら箔は高純度かつ密閉状態、すなわち漏れ防止特性をもつように作製可能である。
【0046】
高融点材料溶融物の温度は、本発明方法を実施する場合であっても、慣例的に2100℃以下とされる。この温度以下では坩堝の前記内側部分以外の部分が箔へ結合することはなく、特に両者がタングステン又はモリブデンで作製されている場合には顕著である。箔材料と坩堝の前記内側部分以外の部分の材料との結合が可能な限り少なくなるように、両者材料は注意深く選定される。
【0047】
使用温度で十分な機械的強度をもたない金属であっても箔材料として用いることが可能である。例えば箔をイリジウムで作製することも可能である。この場合、例えば坩堝の内側部分以外の部分を酸化イットリウム等のセラミック材で作製することによって箔を十分に機械的に支持することが可能である。
【0048】
本発明方法をチョクラルスキー法によるサファイア又はガーネット酸化物の成長に用いることが可能である。例えば、抵抗加熱を用いて、高純度イリジウム箔を前記箔として作製することができる。箔を支える坩堝支持体はセラミック材で作製可能である。
【0049】
本発明方法を用いて単結晶の成長を行うことが可能である。他方、本発明方法を用いて多結晶材料を製造することも可能である。
【0050】
本発明方法において用いられる高融点材料は好ましくは1800℃以上の融点を有する。
【0051】
本発明に係るさらに別の好ましい実施態様において、高融点材料は例えばサファイア等の酸化物材料である。
【0052】
しかしながら、本発明において前記高融点材料は、上述した特性を備える金属であってもよい。
【0053】
一定の高融点材料に用いられる箔材料は、好ましくは本発明方法の実施中に両材料が反応を起こさず、かつ合金を生成しないように選択される。
【0054】
前記高融点材料の典型例は、例えばEP−A1701179に開示されており、特に取り上げれば、立方晶系ガーネット、立方晶系スピネル、立方晶系ペルブスカイト及び又は立方晶系■/■酸化物を挙げることができる。
【0055】
前記立方晶系ガーネットは好ましくはイットリウム・アルミニウムガーネット(YAl12)、ルテニウム・アルミニウムガーネット(LuAG;LuAl12)、緑ざくろ石(CaAlSi12)、エルパソリス(KNaAlF, KNaScF, KLiAlF)、及び又はクリオリチオナイト(NaAlLi12)である。その他の好ましいガーネットとしては、TmAl12、ScAl12、DyAl12及びYbAl12が挙げられる。
【0056】
さらに、好ましい高融点材料として、特に上述したYAl12(YAG)又はLuAl12(LuAG)等の立方晶系ガーネットが挙げられ、このうちイットリウム又はルテニウムは同価かつ同等なイオン半径をもつイオンで置き換えられる。
【0057】
さらに、前記高融点材料は下記一般式(I):
(A1−xAl12 (I)
(式中、Dは可能な限り格子変形が小さくなるようにA+3と同価かつ同イオン半径の元素である)で表される立方晶系ガーネットである。本発明において、Aで表される元素の好ましいものは、特にイットリウム、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びSc等の希土酸化物又はランタン系列元素である。しかしながら、特に好ましい元素はY、Lu、Yb、Tm、Dy及びScである。適する代表的なドーピング剤Dはイットリウム、希土酸化物、及びスカンジウムから同様に選択される。他の希土酸化物及び又はScでドープされた、YAl12、LuAl12、DyAl12、TmAl12、YbAl12等のガーネット、及び特に(Y1−xLuAl12を含む混合結晶は特に適することが確認されている。
【0058】
式(I)中のパラメータxはモル数を表し、0≦x≦1である。AとDは好ましくは異なるものである。AとDが同じものである場合、x=0である。本発明において溶融物及び結晶について同じモル数が用いられる場合、モル数に関して結晶化中に百分率組成が変化しないことを意味する。
【0059】
立方晶系スピネルの中で、特にスピネルMgAl、ガノスピネル(Mg,Zn)Al、CaAl、CaB、及び又はリチウムスピネルLiAlが特に適することが確認されている。
【0060】
BaZrO及び又はCaCeOは特に好ましい立方晶系ペロブスカイトである。(Mg,Zn)Oは特に適する立方晶系II/IV酸化物であることが確認されている。
【0061】
本発明方法によれば、150mm以上、とりわけ200mm以上、さらには250mm以上、猶さらには300mm以上の直径をもつ大容量単結晶を製造することが可能である。
【0062】
光学素子用及び光学撮像システム用の単結晶を本発明方法によって製造することが可能である。これらの単結晶は、ステッパー、レーザ、特にエキシマレーザ、コンピュータチップ及び集積回路、及びこれら回路及びチップを有する電子装置の製造に適する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】坩堝の内側に形成されたコーティングによって高融点材料溶融物との接触面が与えられている本発明に係る坩堝の第一の実施態様の断面図である。
【図2】坩堝中に配置された箔によって高融点材料溶融物との接触面が与えられている本発明に係る坩堝の第二の実施態様の断面図である。
【発明を実施するための手段】
【0064】
本発明の目的及び特長につき、以下において添付図面を参照しながら下記の好ましい実施態様を用いてさらに詳細に説明する。
【0065】
図1は本発明に係る坩堝10の第一の実施態様を示した図である。坩堝10は坩堝支持体又は支持本体2と、坩堝支持体又は支持本体の内面上に処理されたコーティング4から成っている。坩堝10には高融点材料の溶融物7が含まれている。コーティング4は溶融物7との接触面を与え、かつ坩堝支持体2の表面を溶融物7との接触から保護する役割を果たす。コーティング4は好ましくは例えばインジウム等の耐熱性金属であり、他方坩堝支持体は前述したセラミック材を用いて作製可能である。
【0066】
図2は本発明に係る坩堝10の第二の実施態様を示した図である。坩堝10は坩堝支持体又は支持本体2を有して構成されている。図1に示した実施態様におけるコーティング4に代えて、坩堝10の内側には箔5が配置され、この箔で坩堝の内面が被覆されている。坩堝中に箔5が形成・配置されることにより、溶融物7との接触面が与えられ、坩堝支持体2が溶融物7と接触しないように保護されている。この坩堝支持体はセラミック材で作製でき、箔5はタングステン等の耐熱性金属を用いて作製可能である。
【0067】
本発明は高融点材料加工用の坩堝及び坩堝中における高融点材料の加工方法として具現化されて説明されているが、本発明の精神から逸脱することなく種々変更及び変形を加えることが可能なことから、本発明を本願記載の詳細に限定する意図ではない。
【0068】
上記記載において本発明の要旨はさらなる分析を要することなく十分に開示されていることから、第三者は最新技術を適用し、また従来技術の観点に立って、本発明の全体的あるいは特定の観点において必須の特徴を構成している特長を漏らすことなく本発明を種々用途へ容易に適用することが可能である。
【0069】
本願において権利化が求められている発明は新規であり、それら発明は添付書類である特許請求の範囲に載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融物が坩堝中に受け入れられた時に溶融物が前記坩堝上の層だけとしか接触しないように前記層が形成され、前記坩堝の前記層以外の部分と前記層から構成される高融点材料溶融物を受け入れるための坩堝であって、
前記層は前記溶融物と反応せず、かつ1800℃以上の融点をもつ金属から成ることを特徴とする前記坩堝。
【請求項2】
前記層の前記金属が耐熱性金属であることを特徴とする請求項1項記載の坩堝。
【請求項3】
前記層が箔であり、その箔の厚さが1mm未満であることを特徴とする請求項1項記載の坩堝。
【請求項4】
前記箔が坩堝の前記層以外の部分と摂離自在に結合されることを特徴とする請求項3項記載の坩堝。
【請求項5】
前記層以外の部分が1800℃以上の融点をもつ金属で作製されることを特徴とする請求項4項記載の坩堝。
【請求項6】
前記層以外の部分の前記金属が耐熱性金属であることを特徴とする請求項5項記載の坩堝。
【請求項7】
前記坩堝中へ溶融物が受け入れられる時に、前記高融点材料から成る溶融物が前記箔とだけしか接触しないように、坩堝支持体の表面を箔で内張りするか、あるいは坩堝支持体の表面上へ箔を配置する工程を含んで構成される高融点材料を受け入れるための坩堝の製造方法であって、
前記箔は、前記溶融物と反応せず、かつ1800℃以上の融点をもつ耐熱性金属から成り、さらに厚さが1mm未満であり、及び
前記坩堝支持体は、前記高融点材料の溶融物を受け入れる前記坩堝の層以外の部分であって、かつ同様に1800℃以上の融点をもつ耐熱性金属から成ることを特徴とする前記製造方法。
【請求項8】
請求項1項記載の坩堝を使用する工程が含まれることを特徴とする、特に光学材料製造のための高融点材料の加工方法。
【請求項9】
a)前記層以外の部分と、前記高融点材料の溶融物が坩堝中へ受け入れられる時に前記高融点材料の溶融物が前記箔だけとしか接触しないように前記層以外の部分上へ配置される箔であって、前記溶融物と反応せず、かつ1800℃以上の融点をもつ金属から成る箔から構成される坩堝中へ高融点材料を導入する工程、
b)高融点材料の少なくとも一部を溶融させて溶融物を生成させる工程、
c)少なくとも一部が溶融した高融点材料を坩堝中において固化させて固化材料を生成させる工程、
d)固化された材料を箔と共に坩堝から取り除く工程、及び
e)固化された材料から箔を取り除く工程から構成される高融点材料の加工方法。
【請求項10】
高融点材料の単結晶を成長させる工程がさらに含まれることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項11】
単結晶成長を行うためのチョクラルスキー法、VGF法、又はHEM法がさらに含まれることを特徴とする請求項10項記載の方法。
【請求項12】
前記箔の前記融点が高融点材料の融点より少なくとも摂氏で1.4倍高いことを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項13】
前記高融点材料がサファイアであることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項14】
前記高融点材料が立方晶系ガーネット、立方晶系スピネル、立方晶系ペロブスカイト、及び立方晶系II/IV酸化物から選択されることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項15】
前記高融点材料が式(I):
(A1−xAl12 (I)
(式中、AはY、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScから選択され、DはAとは独立して、Y、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScから選択され、かつAとDは異なり、及び0≦x≦1である)
で表される立方晶系ガーネットであることを特徴とする請求項9項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−132544(P2010−132544A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276060(P2009−276060)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】