説明

(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンの新規治療的使用

4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(l−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩は、線維筋痛、肥満、体重増加および他の状態の処置に価値を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、既知化合物の新規使用に関する。
【0002】
背景技術
三環性抗鬱剤の心臓血管および抗コリン作動性傾向特性を減少させた多くの非三環性抗鬱剤が近年開発されている。これらの薬剤は、セロトニンおよびまたはノルアドレナリンの取り込みを阻害するものを含む。これらの薬剤の多くの使用が提案され、肥満および体重増加、パーキンソン病、てんかん、統合失調症、強迫神経症、物質濫用および薬物嗜癖、月経前症候群、摂食障害および片頭痛の処置、および禁煙の促進を含む。すべての非三環性抗鬱剤がすべての疾患/状態に働く訳ではなく、各疾患/状態に関するノルアドレナリン取り込みのセロトニン取り込み阻害に対する優劣は明らかではない。
【0003】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(l−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジン一水和物塩酸塩は既知である(US−A−4695568参照)。これはセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み遮断特性の両方を有するだけでなく、重要な5HT−3レセプター遮断活性も有し、これはインビボで化合物の薬理学的作用を予期できない方法で修飾することが期待される。この化合物の疼痛、泌尿器疾患、機能性腸疾患の処置への利用が最近、各々、WO02/094249、WO03/063873およびPCT/GB03/02974に記載されている(これらいずれも本件の最初の優先権主張日より前には公開されていない)。
【0004】
発明の要約
驚くべきことに、上記の既知化合物(本明細書でMCI−225と呼ぶ)は、肥満および体重増加、パーキンソン病、てんかん、統合失調症、強迫神経症、物質濫用、喫煙(禁煙の促進)、月経前症候群、摂食障害、片頭痛、卒中からの回復、線維筋痛、疲労、吐き気、嘔吐および、癌化学療法および放射線療法により誘発されるものを含む嘔吐の処置に有効な活性を有し得ることが判明した。そのセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み遮断と、5HT−3レセプター遮断の組み合わせは、これらの活性を担うものとしては、以前は明白に同定されていなかった。
【0005】
活性物質の任意の適当な形、例えば、他の塩形またはプロドラッグもしくは活性代謝物を使用し得ることは認識されるであろう。
【0006】
好ましい実施態様の記載
本発明の手段により、上記に概説した疾患/状態を処置、例えば、制御または予防できる。本発明の特定の実施態様は、疲労と筋肉、靱帯および腱の広範の疼痛により特徴付けられる慢性状態である、線維筋痛の処置である。この状態は、以前は、結合組織炎、慢性筋肉痛症候群、心因性リウマチおよび腱筋痛のような他の名前で知られていた。
【0007】
本発明の他の実施態様は、肥満または体重増加を処置する方法にある。これは、体重の減少、体重過剰となることの回避、体重増加の回避、または肥満の回避を意味する;これらすべて通常食事の大量消費のためである。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様は、パーキンソン病を処置する方法にある。これは、意図した移動の制約が徐々に増えること、振戦、動作緩慢、強直およびヒトの姿勢の障害を含むが、これらに限定されないパーキンソン病の症状の回避を意味する。
【0009】
本発明のさらなる実施態様は、癌患者の疾患および/またはその処置によりもたらされるもの、慢性C型肝炎を含む慢性肝疾患の患者におけるもの、および慢性疲労症候群の患者におけるものを含む、疲労を処置する方法にある。
【0010】
さらなる実施態様は、強迫神経症、物質濫用、月経前症候群、摂食障害および片頭痛の処置にある。これらの用語は本明細書では、本分野で許容されている意味と一致した方法で使用する。例えば、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th Ed, American Psychiatric Association(1997)参照。
【0011】
“処置または予防する方法”、“処置する方法”および“予防する方法”は、本明細書では本発明が関与する疾患と関連して使用し得る。これらの用語は、症状および/またはこれらの疾患と関係する作用の軽減、予防または回避を意味し、本発明の範囲内に包含される。
【0012】
本発明の目的のために、活性化合物は慣用の希釈剤または担体と共に任意の適当な方法で製剤できる。活性化合物は好ましくは経口経路により投与する;投与の他の適当な経路は、舌下/バッカル、経皮、筋肉内、経鼻、直腸、非経腸、皮下、肺および局所を含む。活性剤の有効量は、患者の性質と従順さ、年齢と状態、ならびに当分野の技術者が既知の他の因子に依存する。典型的一日量は0.1mgから5gであり得る。
【0013】
活性成分を含む医薬組成物は、舌下錠またはパッチの形であり得る。経口使用のための適当な組成物は、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルション、硬または軟カプセル、シロップおよびエリキシル剤を含む。適当な添加剤は、甘味剤、香味剤、着色剤および防腐剤を含む。錠剤は、活性成分を、非毒性の薬学的に許容される賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えば、澱粉、ゼラチンまたはアカシア、および滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクと混合して含む。錠剤は非コーティングであり得、または、それらは胃腸管における崩壊および吸収を遅らせ、それにより長時間にわたり持続した作用を提供するための既知の方法でコーティングし得る。例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような時間を遅くする物質を用い得る。それらはまた制御された放出のための浸透性治療錠剤(osmotic therapeutic tablets)を形成するためにコーティングし得る。硬ゼラチンカプセルは不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンを含み得る;軟ゼラチンカプセルは水または油媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油を含み得る。
【0014】
以下の方法はMCI−225の優れた作用をいかに証明し得るかを説明するための例として記載する。上記に引用した3つの最近のPCT公報/出願に提供された証拠もまた関連する。
【0015】
肥満および体重増加の処置
MCI−225を、成熟メス肥満Zuckerラットで32日の期間にわたり評価する。6匹の動物のコントロールグループには媒体のみを毎日投与し、一方、6匹の体重を一致させた動物はMCI−225を30mg/kgで1日1回経口投与される。0日目、7日目、14日目、21日目、28日目および32日目に、餌を7.30amに動物から離し、餌を除いてから2時間以内に動物の体重を測定し、それ以外の日は餌を自由に摂食させる。動物の体重を測定した後に餌を与える。MCI−225処置動物のより軽い体重により、優れた効果が証明される。
【0016】
物質濫用/薬物嗜癖の処置
MCI−225の効果を、アルコールを好むラットで証明する。この動物の飲酒のパターンから、この動物は、ヒトのアルコール中毒の状態の有効なモデルを表すと考えられる(McBride et al, 1990, Alcohol 7: 199-205, Lankford et al, 1991, Pharmacol. Biochem. Behav., 8: 293-299)。最大に好むアルコール濃度を4日間安定化した後、MCI−225を30mg/kg/日で経口的にまたは媒体を連続4日にわたり投与した。MCI−25治療の優れた効果が、g/kgの絶対値および/または全飲料摂取に対するアルコールの比率におけるアルコールの摂取の減少により証明される。
【0017】
禁煙
MCI−225の効果を、ラットにおける音響驚愕反射を使用したニコチン離脱のモデルにおいて試験する(例えば、Helton et al, 1997, Neuropharmacology 36 (11-12): 1511-1516参照)。ニコチン(6mg/kg/日)を12日間皮下に浸透性ミニポンプを使用して投与する。12日後、ポンプを除去し、動物の自然離脱を開始させる。慢性ニコチン暴露の停止は、離脱後4日間、増大した驚愕反射(感覚運動反応)を起こす。ニコチン離脱後の30mg/kg/日でのMCI−225処置の利点は、例えばニコチンの離脱後の増大した音響驚愕応答の減弱化により証明される。
【0018】
卒中の処置
MCI−225の効果を、ラットの一過性中大脳動脈閉塞モデルで試験する(Chen et al, 1999, J. Neurol. Sci. 171(1): 24-30参照)。特に、回転棒(rotarod)、裏面粘着式体性感覚(adhesive-backed somatosensory)および神経学的スコアを含む多数の機能測定での効果を試験する。例えば、閉塞2時間後に開始した30mg/kgのMCI−225での治療による優れた効果は、媒体処置動物と比較して、虚血後に測定した1個またはそれ以上の機能スコアの改善により証明される。
【0019】
吐き気/嘔吐の処置
MCI−225の効果を、フェレットにおけるシスプラチン誘導嘔吐に対して試験する(Florczyk et al, 1982, Cancer Treat. Rep. 66(1): 187-189参照)。シスプラチン投与1時間前に30mg/kg経口で与えたMCI−225での処置の優れた効果は、コントロール動物と比較した催吐性応答の減少により証明される。シスプラチンに対する効果は、放射能誘導吐き気/嘔吐に対する効果を予測する。MCI−225の広範囲の抗嘔吐活性が、フェレットモデルにおけるアポモルヒネを含む他の催吐剤の使用を通して証明され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(l−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の線維筋痛の処置用医薬の製造における使用。
【請求項2】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の肥満および体重増加の処置用医薬の製造における使用。
【請求項3】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(l−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の物質濫用および薬物嗜癖の処置用医薬の製造における使用。
【請求項4】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の禁煙促進用医薬の製造における使用。
【請求項5】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の月経前症候群の処置用医薬の製造における使用。
【請求項6】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の摂食障害の処置用医薬の製造における使用。
【請求項7】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンその塩の片頭痛の処置用医薬の製造における使用。
【請求項8】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩のパーキンソン病の処置用医薬の製造における使用。
【請求項9】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(l−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の卒中の処置用医薬の製造における使用。
【請求項10】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の吐き気および嘔吐の処置用医薬の製造における使用。
【請求項11】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の化学療法または放射能誘発嘔吐の処置用医薬の製造における使用。
【請求項12】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(l−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の統合失調症の処置用医薬の製造における使用。
【請求項13】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の強迫神経症の処置用医薬の製造における使用。
【請求項14】
(4−(2−フルオロフェニル)−6−メチル−2−(1−ピペラジニル)チエノ[2,3−D]ピリミジンまたはその塩の疲労の処置用医薬の製造における使用。
【請求項15】
塩が塩酸塩一水和物である、請求項1から14のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2006−500427(P2006−500427A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569724(P2004−569724)
【出願日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003720
【国際公開番号】WO2004/019948
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(502419948)アラクノーバ・セラピューティックス・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Arachnova Therapeutics Ltd.
【Fターム(参考)】