説明

(R)−N−メチルナルトレキソン、その合成方法およびその医薬用途

本発明は、R−MNTXおよびその中間体の立体選択的合成、R−MNTXおよびその中間体を含む医薬製剤ならびにそれらの使用方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、(R)−N−メチルナルトレキソン(R−MNTX)およびその中間体の立体選択的合成、R−MNTXまたはその中間体を含む医薬製剤およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
メチルナルトレキソン(MNTX)は、純粋なオピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンの第四級誘導体である。これは塩として存在する。文献に置いてMNTXの臭化物塩に使用される名称としては、以下が挙げられる:臭化メチルナルトレキソン;臭化N−メチルナルトレキソン;ナルトレキソンメトブロミド;ナルトレキソンメチルブロミド;MRZ 2663BR、MNTXは、70年代半ばにGoldbergらによって米国特許第4,176,186号に記載されるように報告された。環の窒素へのメチル基の添加が、ナルトレキソンよりも大きな極性および低い脂溶性を有する荷電化合物を形成すると考えられる。MNTXのこの特徴は、ヒトにおいて血液脳関門の通過を防ぐ。結果として、MNTXは、中枢神経系よりもむしろ末梢においてこの効果を発揮し、中枢神経系におけるオピオイドの鎮痛作用を妨げないという利点を伴う。
【0003】
MNTXはキラル分子であり、第四級の窒素はRまたはS立体配置であり得る。(図1参照。)MNTXの異なる立体異性体が、異なる生物学的特性および化学特性を示すか否かは知られていない。文献に記載され報告された機能の全てが、MNTXが末梢オピオイドアンタゴニストであることを示す。これらのアンタゴニスト機能のいくつかは、米国特許第4,176,186号、第4,719,215号、第4,861,781号、第5,102,887号、第5,972,954号、第6,274,591号、第6,559,158号、および6,608,075、ならびに米国特許出願第10/163,482号(2003/0022909A1)、第10/821,811号(20040266806)、第10/821,813号(20040259899)および第10/821,809号(20050004155)に記載されている。
【0004】
これらの用途は、オピオイドの効果を低下させることなくオピオイド副作用を減少させることを含む。かかる副作用は、吐き気、嘔吐、不快、掻痒、尿閉、腸の運動低下、便秘、胃の運動低下、遅発性胃内容排出および免疫抑制を含む。当該技術は、MNTXがオピオイド鎮痛処置に起因する副作用を減少させるだけでなく、内因性オピオイド類単独でまたは外因性オピオイド処置との組み合わせによって媒介される副作用をも減少させることを開示する。かかる副作用は、胃腸運動の阻害、術後胃腸機能障害、突発性便秘、および上記のものを含むがこれらに限定されない他の状態を含む。しかしながら、当該技術からは、これらの研究に使用されたMNTXがR立体異性体とS立体異性体との混合物であったか単一の立体異性体であったかは明らかでない。
【0005】
当該技術から、化合物の単離された立体異性体が時に対照的な物理的および機能的特性を有する可能性があることを示唆されるが、いかなる特定の状況においてこれが該当するるかは予測できない。デキストロメトルファンは鎮咳剤であるが、その鏡像異性体であるレボメトルファンは強力な麻酔薬である。R,R−メチルフェニデートは、注意欠陥過活動性障害(ADHD)を処置する薬物であるが、この鏡像異性体であるS,S−メチルフェニデートは抗うつ剤である。S−フルオキセチンは、片頭痛に対して活性であるが、その鏡像異性体であるR−フルオキセチンは鬱病を処置するために使用される。シタロプラムのS鏡像異性体は、鬱病の処置のために治療上活性な異性体である。そのR鏡像異性体は不活性である。オメプラゾールのS鏡像異性体は、胸焼けの処置に関してそのR鏡像異性体よりも強力である。
【0006】
Bianchetti et al, 1983 Life Science 33 (Sup I):415-418は、3対の四級麻酔性アンタゴニストのジアステレオ異性体およびそれらの親三級アミン類、レバロルファン、ナロルフィンおよびナロキソンについて研究し、キラル窒素に関する立体配置がどのようにインビトロおよびインビボでの活性に影響するかを確かめた。四級誘導体がどのように製造されたかに依存して、活性が著しく変化することを見出した。
【0007】
それぞれのシリーズにおいて、N−アリル−置換三級アミン(「N−メチルジアステレオマー」として言及される)のメチル化によって得られたジアステレオマーのみが、ラット脳膜からのH−ナルトレキソンの置き換えおよびモルモット回腸におけるモルフィンアンタゴニストとしての作用において有効である。反対に、N−メチル−置換三級アミン類をハロゲン化アリルと反応させることにより得たジアステレオ異性体(「N−アリルジアステレオマー」として言及される)は、3H−ナルトレキソンを置き換えず、モルモット回腸において殆どアンタゴニスト活性を有さず、僅かなアゴニスト作用を有する。
【0008】
インビボでの知見は一般的にインビトロでの知見と一致する。したがって、「N−メチルジアステレオマー」のみがモルフィン誘導性の便秘をラットにおいて阻害しアンタゴニストとして作用するが、「N−アリルジアステレオマー」は阻害しない。著者は、製造された材料がHおよび13C核磁気共鳴(NMR)分析によって純粋であるようにみえるとしているが、これらの方法は正確ではない。著者は、ナロルフィンの「N−メチルジアステレオマー」へのR立体配置の割当について参考文献を引用している。レバロルファンおよびナロキソンのジアステレオマーに関しては、割当は提案されていない。これらのジアステレオマーへの立体配置を推定することは危険である(R.J. Kobylecki et al, J. Med. Chem. 25, 1278-1280, 1982)。
【0009】
Goldbergらの米国特許第4,176,186号、およびより最近のCantrellらの国際公開パンフレット2004/043964 A2は、MNTXの合成のプロトコルを説明している。いずれも、メチル化剤による三級N−置換モルフィナンアルカロイドの四級化によるMNTXの合成を記載する。GoldbergらおよびCantrellらはともに、合成によって製造される立体異性体(単数または複数)については言及していない。筆者らは、立体化学を先行技術に基づいて判断することが出来ないため、立体化学に関しても注意深く言及していない。ナルトレキソンにおけるシクロプロピルメチル側鎖は、先行技術の側鎖とは異なっており、温度や圧力などの他の多くの反応パラメーターのように、MNTXの合成における立体化学の結果に影響する可能性もある。それぞれに記載された合成の方法に基づいて製造されたMNRXが、Rであるか、Sであるか、または両方の混合物であるかは不明である。
【0010】
純粋な形態のS−MNTX、および純粋なS−MNTXの製造方法は、文献には記載されていない。標準物質としての純粋なS−MNTXを欠く状態で、研究者が、GoldbergらまたはCantrellらの合成によって得られた立体異性体(単数または複数)を明確に特徴付け、区別することは不可能であっただろう。
【発明の開示】
【0011】
本発明の要旨
S−MNTXは今や高純度で製造され、このことにより、クロマトグラフィーにおけるその相対保持時間をR−MNTXのそれに対して特徴付けることが可能となる。S−MNTXが文献において報告されたMNTXの活性とは異なる活性を有することが見出された。これは、R−MNTXの製造方法および高純度への精製方法への必要性を浮かび上がらせた。
【0012】
本発明は、実質的に純粋なR−MNTXおよびその中間体、実質的に純粋なR−MNTXの結晶およびその中間体、実質的に純粋なR−MNTXの新規の製造方法、R−MNTXとS−MNTXとの混合物におけるR−MNTXの分析および定量方法、R−MNTXとS−MNTXとの混合物からのR−MNTXの単離方法、これを含む医薬製品、ならびにこれらの材料の関連用途を提供する。
【0013】
本発明は、R−MNTX、実質的に純粋なR−MNTX、実質的に純粋なR−MNTXの結晶の立体選択適合性のための合成経路、実質的に純粋なR−MNTXを含む医薬製剤およびこれらの使用方法を提供する。
【0014】
本発明の一側面によれば、窒素についてR立体配置であるMNTXを含む組成物であって、窒素についてR立体配置であるMNTXが99.5%より多くで存在する組成物を提供する。一つの他の態様において、窒素についてR立体配置であるMNTXは、組成物において、約99.6%、または約99.7%、または約99.8%、または約99.9%、または約99.95%より多く、あるいはさらにより好ましくは99.95%より多く存在する。一態様において、本明細書に記載するクロマトグラフィーの手順を用いて検出可能なS−MNTXは存在しない。
【0015】
好ましくは、組成物は、HPLCによって検出可能なS−MNTXを含まない。一態様において、0.02%の検出限界および0.05%の定量限界において、HPLCによって検出可能なS−MNTXが存在しない。さらに別の態様において、本発明の組成物は、99.85%のMNTXを窒素についてR立体配置で含み、0.02%の検出限界および0.05%の定量限界においてHPLCによって検出可能なS−MNTXを含む。
【0016】
本発明の一側面によれば、MNTXを含む組成物を提供し、ここで、組成物において、少なくとも99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、およびさらには99.95%のMNTXは窒素についてR立体配置であり、ならびに1または2以上の緩衝剤、キレート剤、保存剤、凍結防止剤、潤滑剤、防腐剤、酸化防止剤、結合剤を含む。
【0017】
R−MNTXは塩である。したがって、対イオンが存在し、これは、本出願に関しては、双性イオンを含む。典型的には、対イオンはハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸またはアニオン荷電有機種である。ハロゲン化合物は、臭化物、ヨウ化物、塩化物、フッ化物を含む。特定の態様において、ハロゲン化合物はヨウ化物であり、他の重要な態様においては、ハロゲン化合物は臭化物である。特定の態様において、アニオン荷電有機種は、スルホン酸またはカルボン酸である。スルホン酸塩の例は、メシレート、ベシレート、トシレート、およびトリフレートを含む。カルボン酸の例は、ギ酸、酢酸、クエン酸、およびフマル酸を含む。
【0018】
本発明の別の側面によると、前述の組成物は、窒素についてR立体配置であるMNTXを含み、いくつかの重要な態様においては、MNTXの結晶、溶液または臭化物塩である。他の態様において、前述の組成物は医薬製剤であり、好ましくは、有効量であり、医薬的に許容される担体を含む。
【0019】
本発明の1つの側面によると、少なくとも約99.5%、または約99.6%または約99.7%、もしくは約99.8%、または約99.9%、または最も好ましくは99.95%より多いMNTXが窒素についてR立体配置である、MNTXの結晶を提供する。
【0020】
本発明の一側面によると、下記式の化合物が提供される:
【化1】

【0021】
式中、Rはヒドロキシル保護基である。ヒドロキシル保護基は、多数のかかる基のいずれであってもよい。重要な態様においては、これは、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニル、シリルエーテル類、2−テトラヒドロピラニルエーテル類、および炭酸アルキル類からなる群から選択される。最も好ましくは、ヒドロキシル保護基はイソブチリルである。
【0022】
本発明の一側面によれば、下記式の化合物が提供される:
【化2】

【0023】
式中、Rはヒドロキシル保護基である。ヒドロキシル保護基は、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニル、シリルエーテル類、2−テトラヒドロピラニルエーテル類、および炭酸アルキル類からなる群から選択される。最も好ましくは、ヒドロキシル保護基はイソブチリルである。一態様においては化合物を単離する。単離とは、化合物が少なくとも50%純粋であることを意味する。化合物をさらに高い純度のレベル、例えば60%、70%、80%、90%、またはさらには95%以上の純度で得ることもできる。他の態様において、化合物は、窒素についてR立体配置であり、R構造はS構造に対して、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またさらには99.5%以上で存在する。
【0024】
本発明の別の側面によれば、R−MNTXの立体選択的合成方法を提供する。この方法は、ヒドロキシル保護基をナルトレキソンに添加して3−O−保護ナルトレキソンを生じること;3−O−保護ナルトレキソンをメチル化して3−O−保護−R−MNTX塩を生じること、およびヒドロキシル保護基を除去してR−MNTXを生じることを含む。
【0025】
本発明のある態様において、ヒドロキシル保護基を、有機触媒および/またはナルトレキソンでない三級アミンのそれぞれまたは両方の存在下で添加することができる。本発明のある態様において、3−O−保護ナルトレキソンをヨウ化メチルと反応させることによってナルトレキソンをメチル化し、3−O−保護−R−MNTXヨウ化物塩を製造する。イソブチリルなどのヒドロキシル保護基によって、3−O−保護ナルトレキソンを重要な態様において保護することができる。
【0026】
本発明の好ましい態様において、3−O−保護−R−MNTXヨウ化物塩を臭化水素酸で処理して保護基を除去し、R−MNTX臭化物/ヨウ化物塩を製造し、臭化物/ヨウ化物塩をアニオン交換樹脂カラム(臭化物型)に通し、R−MNTX臭化物を生じる。本発明の前述のあらゆる態様において、MNTXではない三級アミンはトリエチルアミンであってもよい。本発明の前述のあらゆる態様において、有機溶媒はテトラヒドロフランであってもよい。本発明の前述のあらゆる態様において、ヒドロキシル保護基はイソブチリルであってもよい。
【0027】
本発明の別の側面において、R−MNTXの単離および精製のための方法を提供し、これは粗R−MNTXをクロマトグラフィーカラムに通し、R−MNTX保持時間に溶出するR−MNTXを収集することを含む。このプロセスは、上記の方法に脱保護工程および/またはアニオン交換樹脂カラム工程の後に加えられてもよい。
【0028】
本発明の別の側面において、R−MNTXとS−MNTXとの混合物におけるR−MNTXの分析方法を提供する。この方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行うこと、およびR−MNTXをクロマトグラフィーカラムに標準物質として適用することを含む。この方法は好ましくは、S−MNTXとR−MNTXの両方を標準物質として適用し、相対保持/溶出時間を決定することを含む。RおよびSの相対保持時間は本明細書中に記載される。
【0029】
下記の手順に従って、純粋なS−MNTXを得ることができる:ヨードメチルシクロプロパンまたは別のシクロプロピルメチル誘導体をオキシモルホンと双極性非プロトン性溶媒中で組合わせることによって、S−MNTX塩を合成することができる。シクロプロピルメチル誘導体は脱離基、好ましくはヨウ素またはスルホン酸塩などのハロゲン化合物を含む。双極性非プロトン性溶媒は:N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、メチルホスホルアミド、アセトン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、またはこれらの組合せであってもよい。
【0030】
合成されたS−MNTXを、クロマトグラフィー、再結晶、多重再結晶、またはこれらの組合せによって精製することができる。この反応を大気条件下、広い温度範囲にわたって、例えば70℃、または65℃〜75℃の制御された反応温度において行うことができる。S−MNTXヨード塩を、酢酸イソプロピルまたはジオキサンなどの第2溶媒へ移動し、ヨウ化物をヨウ化物以外の対イオンに交換することによって、対イオンを任意にヨウ化物と置き換えてもよい。
【0031】
対イオンの例は、臭化物、塩化物、フッ化物、硝酸、スルホン酸またはカルボン酸である、スルホン酸は、メシレート、ベシレート、トシレート、またはトリフレートであってもよい。カルボン酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸およびフマル酸であってもよい。第2溶媒における反応は、室温で行うことができる。
【0032】
本発明の一側面において、クロマトグラフィーは、2つの溶媒、溶媒Aおよび溶媒Bを使用して行われ、ここで溶媒Aは水性溶媒であり、溶媒Bはメタノール溶媒であり、AとBは共にトリフルオロ酢酸(TFA)を含む。好ましくは、Aは、0.1%水性TFAであり、Bは0.1%メタノールTFAである。重要な態様において、カラムは、結合した、端部がキャップされた(end-capped)シリカを含む。重要な態様において、カラムゲルの細孔の大きさは5ミクロンである。最も好ましい態様において、カラム、流速および勾配プログラムは以下の通りである:
【0033】
カラム: Luna C18(2)、150×4.6mm、5μ
流速: 1mL/分
勾配プログラム:
【表1】

【0034】
検出を230nmの紫外線(UV)波長で都合良く行うことができる。定量限界は、実験室、分析者、機器、試薬ロットの変化にかかわらず、常に測定され報告され得るS−MNTXの最低量である。検出限界は、検出できるが必ずしも厳密な値として定量できるわけではない、サンプルにおけるS−MNTXの最低量である。
【0035】
前述のHPLCを、形成されたクロマトグラムにおけるそれぞれRおよびS曲線の下の面積を測定することにより、S−MNTXおよびR−MNTXならびそれらの合成の中間体の相対量を測定するために使用することができる。本発明の別の側面において、R−MNTXおよび3−0−保護−R−MNTX塩中間体の単離および精製方法を提供し、これは、粗R−MNTXまたはこれの中間体を溶媒または溶媒の混合物から再結晶することを含む。このプロセスは、脱保護工程および/またはアニオン交換樹脂カラム工程の後で上記の方法に加えてもよい。
【0036】
本発明の別の側面において、3−O−保護ナルトレキソンをメチル化剤でメチル化し、3−O−保護−R−MNTX塩を生じることを含む、3−O−保護−R−MNTX塩の立体選択的合成方法を提供する。特定の態様における3−O−保護ナルトレキソンのヒドロキシル保護基は、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニル、シリルエーテル類、2−テトラヒドロピラニルエーテル類、および炭酸アルキル類である。
【0037】
3−O−保護−R−MNTXはアニオンとの塩であり、アニオンは、例えば、ハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸または有機アニオン荷電種である。ハロゲン化合物は、臭化物、ヨウ化物、塩化物、またはフッ化物であり得る。有機アニオン荷電種は、例えば、スルホン酸またはカルボン酸であり得る。例となるスルホン酸は、メシレート、ベシレート、トシレート、またはトリフレートである。例となるカルボン酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸、またはフマル酸である。この方法は、さらにアニオンを異なるアニオンと交換することを含んでもよい。
【0038】
メチル化剤は、求核攻撃を受けやすいメチル基、および脱離基をであり得る。例となるメチル化剤は、ハロゲン化メチル、硫酸ジメチル、硝酸メチル、およびスルホン酸メチルからなる群から選択される。ハロゲン化メチル類は、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチルおよびフッ化メチルである。スルホン酸メチル類は、メチルメシレート、メチルベシレート、メチルトシレート、およびメチルトリフレートを含む。
【0039】
一態様において、メチル化は、約>70℃〜約100℃、または80℃〜約90?Cの温度範囲、または好ましくは約88℃で行われる。メチル化反応は、約1時間〜24時間、または約5時間〜16時間、一態様においては、約10時間行われる。この方法は、クロマトグラフィーまたは再結晶などの、少なくとも1つの精製技術を使用する3−O−保護R−MNTX塩の精製をさらに含むことができる。クロマトグラフィーは、逆相クロマトグラフィーまたは順相クロマトグラフィーであり得る。ある態様において、順相クロマトグラフィーはアルミナまたはシリカゲルを使用することができる。3−O−保護ナルトレキソンは、メチル化の前に精製することが出来る。
【0040】
本発明の一側面によれば、本明細書に記載したクロマトグラフィー手順によって検出可能なS−MNTXが存在しないR−MNTX、または3−0−保護−R−MNTX塩中間体、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。一態様において、医薬組成物は、梱包された単位投与量または複数単位投与量である。さらに別の態様において、梱包された単位投与量は溶液である。医薬組成物は、一態様において、溶液である。別の態様において、これは腸溶コーティングされた固体投与形態である。さらなる別の態様において、これは持続放出性処方物である。
【0041】
本発明のさらに別の側面によれば、凍結乾燥処方物中にR−MNTXまたは3−0−保護−R−MNTX塩中間体を含む医薬製剤を、マンニトールなどの凍結防止剤をR−MNTX処方物と組合わせることによって製造する。凍結乾燥製剤は、緩衝剤、酸化防止剤、等張剤およびオピオイドのいずれか1つ、いずれかの組合せ、または全てを含んでも良い。ある態様において、前述の医薬組成物は、オピオイドアンタゴニストでない1つの医薬剤を更に含むことができる。本発明の一態様において、前述の医薬組成物は、オピオイドである医薬剤を含むことが出来る。
【0042】
さらにもう1つの態様において、医薬組成物は、少なくとも1つのオピオイド、およびオピオイドまたはオピオイドアンタゴニストでない少なくとも1つの医薬剤をさらに含むことができる。好ましい態様において、オピオイドまたはオピオイドアンタゴニストでない医薬剤は、抗ウイルス剤、抗感染症薬、抗癌剤、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、ステロイド性または非ステロイド性抗炎症剤、運動亢進剤、5HTアゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアゴニスト、胆汁酸塩捕捉剤、バルク形成剤、アルファ2−アドレナリン作動性アゴニスト、ミネラルオイル、抗うつ剤、生薬、下痢処置剤、緩下剤、便軟化剤、繊維または造血促進剤である。
【0043】
本発明の医薬組成物をキットにおいて提供することができる。キットは、本発明の医薬製剤および使用説明書を含む密封容器を含むパッケージである。キットは、HPLCによって検出可能なS−MNTXの存在しないR−MNTXを含む。一態様におけるキットは、40mg/mLのR−MNTXを含む。別の態様におけるキットは、30mg/mLのR−MNTXを含む。キットはさらにオピオイドもしくはオピオイドアゴニストを含むことができ、またはこれはオピオイドもしくはオピオイドアンタゴニストでない少なくとも1つの医薬剤を含むこともできる。
【0044】
一態様において、キットは、または3−0−保護−R−MNTX塩である医薬製剤および使用説明書を含む密封容器を含むパッケージである。一態様におけるキットは、40mg/mLの3−0−保護−R−MNTX塩を含む。別の態様におけるキットは、30mg/mLの3−0−保護−R−MNTX塩を含む。キットは、オピオイドまたはオピオイドアゴニストをさらに含んでも、またはこれはオピオイドまたはオピオイドアンタゴニストでない少なくとも1つの医薬剤を含んでもよい。
【0045】
本発明の他の側面によれば、S−MNTX(オピオイドアゴニストである)を含まないR−MNTX(オピオイドアンタゴニストである)の製造を保証するための方法を提供する。この方法により、初めて、アンタゴニスト活性のためのR−MNTXの医薬製剤がR−MNTXの活性に対抗する化合物で汚染されていないことを保証することが可能となる。これは、R−MNTXがオピオイド治療の副作用に対抗するために投与される場合に特に望ましい。なぜならば、オピオイドはR−MNTXの活性に対抗してS−MNTXと相乗的に作用すると考えられるからである。本発明のこの側面において、R−MNTXを製造する方法を提供する。この方法は以下を伴う:
【0046】
(a)R−MNTXを含む第1組成物を得ること、(b)第1組成物をクロマトグラフィー、再結晶またはこれらの組合せにより精製すること、(c)精製した第1組成物のサンプルについて、S−MNTXを標準物質として使用してHPLCを行うこと、ならびに(d)サンプル中のS−MNTXの有無を決定すること。重要な態様において、R−MNTXおよびS−MNTXの両方を標準物質として使用し、例えばR−MNTXおよびS−MNTXの相対保持時間を測定する。一態様において、精製は、多重再結晶工程または多重クロマトグラフィー工程である。
【0047】
別の態様において、HPLCで測定されるものとしてS−MNTXがサンプル中に存在しなくなるまで精製を行う。しかし当然のことながら、本発明のいくつかの側面において、精製した第1組成物が、必ずしも検出可能なS−MNTXを含まないわけではない。かかるS−MNTXの存在は、例えば、より純粋なR−MNTXを望む場合は、さらなる精製工程を行うべきであることを示し得る。この方法は、HPLCによって検出可能なS−MNTXの存在しない精製した第1組成物を梱包することをさらに含んでもよい。
【0048】
この方法は、梱包された精製した第1組成物にHPLCによって検出可能なS−MNTXが存在しないことを示す証印を、精製した第1組成物上に、またはその中に提供することを、さらに含むことが出来る。本明細書に記載された状態のいずれかを処置するために、医薬的有効量を梱包することをさらに含んでも良い。R−およびS−MNTXを含む第1組成物を、本明細書中に記載した方法によって得ることができる。
【0049】
本発明の一側面によれば、0.02%の検出限界および0.05%の定量限界でHPLCによって測定した場合に、精製した第1組成物からS−MNTXが0.4%、0.3%、0.2%、0.15%、0.1%、0.05%より少ないかさらには無くなるまで、精製を行う。
一態様において、この方法は、梱包された精製した第1組成物の上、またはその中に、梱包した第1精製組成物におけるS−MNTXのレベルを示す証印を提供する。
【0050】
本発明の一側面によれば、R−MNTXを含む組成物、組成物におけるS−MNTXのレベルを表す、パッケージの上またはその中に含まれた証印を含有するパッケージを提供する。一態様において、S−MNTXのレベルは、0.4%、0.3%、0.2%、0.15%、0.1%、0.05%より少ないかまたはサンプル中に存在しない。さらにもう1つの態様において、パッケージは、R−MNTXと混合された1または2以上の緩衝剤、キレート剤、保存剤、凍結防止剤、潤滑剤、防腐剤、酸化防止剤または結合剤をさらに含む。
【0051】
本発明の一側面によれば、S−MNTXが0.4%、0.3%、0.2%、0.15%、0.1%、0.05%より低いレベルで含まれるかまたは組成物中に存在しないことを理由にR−MNTXの組成物を選択し、患者への投与のために、該組成物を単位投与量または複数単位投与量に処方する、医薬製品の製造方法を提供する。
【0052】
本発明の他の側面によれば、梱包した製品を提供する。このパッケージは、ここで組成物にはHPLCによって検出可能なS−MNTXが存在しない、R−MNTXを含む組成物、および検出可能なS−MNTXが存在しないことを示すパッケージ上またはその中の証印を含む。組成物はさまざまな形状を取ることができ、実験室での実験における使用のための標準物質、製造規約における使用のための標準物質、または医薬組成物を含むが、これらに限られない。組成物が医薬組成物である場合、証印の重要な形状の1つは、ラベルまたは添付書類上の医薬製剤の特徴を説明する書類である。
【0053】
証印は、組成物にS−MNTXが存在しないことを直接的に示すこともでき、または、例えば組成物が純粋または100%のR−MNTXであると記載することにより、これを間接的に示すこともできる。医薬組成物は、本明細書に記載された状態のいずれの処置のためのものであってもよい。医薬組成物は、純粋なR−MNTXの有効量を含むことができ、またこの要旨において具体的に挙げられる下記のいずれの形状をとることもでき、溶液、固体、半固体、腸溶コーティングされた材料などを含むが、これらに限られない。
【0054】
本発明の一側面によれば、オピオイドによって誘導される副作用を処置または予防する方法を提供し、これは本明細書に記載されたクロマトグラフィーの手順によって検出可能なS−MNTXの存在しないR−MNTXまたは本発明の前述の側面のいずれかの3−0−保護−R−MNTX塩中間体組成物を、オピオイド誘導性の副作用を処置する有効量で患者に投与することを含む。本発明の一態様において、患者に慢性的にオピオイド類を投与する。他の態様において、患者に急性的にオピオイド類を投与する。オピオイド誘導性の副作用は好ましくは、便秘、免疫抑制、胃腸運動の阻害、胃内容排出の阻害、吐き気、嘔吐、不完全排便、膨満、腹部膨満,胃食道逆流の増加、低血圧、徐脈、胃腸障害、掻痒、不快、および尿閉からなる群から選択される。
【0055】
好ましい一態様において、オピオイド誘導性の副作用は便秘である。他の好ましい態様において、オピオイド誘導性の副作用は胃腸運動の阻害または胃内容排出の阻害である。さらにもう1つの好ましい態様において、オピオイド誘導性の副作用は吐き気または嘔吐である。さらにもう1つの好ましい態様において、オピオイド誘導性の副作用は掻痒である。さらにもう1つの好ましい態様において、オピオイド誘導性の副作用は不快である。さらにもう1つの好ましい態様において、オピオイド誘導性の副作用は尿閉である。
【0056】
本発明の一側面によれば、手術によりもたらされる疼痛のためにオピオイドを受ける患者を処置する方法を提供し、これは本明細書に記載されたクロマトグラフィー手順で検出可能なS−MNTXが存在しないR−MNTX組成物または3−0−保護−R−MNTX塩中間体を、胃腸運動、胃内容排出、または便秘の解消を促進させるために効果的な量で患者に投与することを含む。
【0057】
本発明の他の側面によれば、便通を必要とする患者において、便通を誘導する方法を提供し、これは本明細書に記載されたクロマトグラフィー手順で検出可能なS−MNTXが存在しないR−MNTX組成物または3−0−保護−R−MNTX塩中間体を患者に有効量で投与することを含む。
【0058】
本発明のさらにもう1つの側面によれば、宿便を予防および/または処置する方法をかかる予防/処置を必要とする患者において提供し、これは本明細書に記載されたクロマトグラフィー手順で検出可能なS−MNTXが存在しないR−MNTX組成物または3−0−保護−R−MNTX塩中間体を患者に有効量で投与することを含む。
【0059】
本発明のさらにもう1つの側面によれば、手術後の術後腸機能障害を予防および/または処置する方法を、特に腹部手術において、かかる予防/処置を必要とする患者において提供し、これは本明細書に記載されたクロマトグラフィー手順で検出可能なS−MNTXが存在しないR−MNTX組成物または3−0−保護−R−MNTX塩中間体を患者に有効量で投与することを含む。
【0060】
本発明の一側面によれば、内因性オピオイドによって誘導される胃腸障害を処置または予防する方法を提供し、これは本明細書に記載されたクロマトグラフィー手順で検出可能なS−MNTXが存在しないR−MNTX組成物または3−0−保護−R−MNTX塩中間体を患者に内因性オピオイド誘導性の胃腸障害を処置するために効果的な量で投与することを含む。胃腸障害を胃腸運動の阻害、便秘および腸閉塞からなる群から選択することができる。本発明のある態様において、腸閉塞は術後腸閉塞、産後腸閉塞、麻痺性腸閉塞からなる群から選択される。
【0061】
本発明の一側面によれば、突発性便秘を予防または処置する方法を提供し、これは本明細書に記載されたクロマトグラフィー手順で検出可能なS−MNTXが存在しないR−MNTX組成物または3−0−保護−R−MNTX塩中間体を患者に突発性便秘を予防または処置するために効果的な量で投与することを含む。
【0062】
本発明のさらにもう1つの側面によれば、過敏性腸症候群を処置する方法を提供し、これは本明細書に記載されたクロマトグラフィー手順で検出可能なS−MNTXが存在しないR−MNTX組成物または3−0−保護−R−MNTX塩中間体を、過敏性腸症候群の少なくとも1つの症状を改善するために効果的な量で、患者に投与することを含む。
【0063】
本発明のある態様において、R−MNTX組成物または3−0−保護−R−MNTX塩組成物は、少なくとも1つの過敏性腸症候群処置剤をさらに含む。過敏性腸症候群処置剤は、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、抗炎症剤、運動亢進剤、5HTアゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアゴニスト、胆汁酸塩捕捉剤、バルク形成剤、アルファ2−アドレナリン作動性アゴニスト、ミネラルオイル、抗うつ剤、生薬、下痢処置剤およびこれらの組合せからなる群から選択される。
本発明の一側面によれば、本発明の化合物および組成物の非経口的投与方法を提供し、これは静脈内、筋肉内および皮下注射を含むが、これらに限られない。本発明の一態様において、本発明の化合物は、前もって充填した注射器、前もって充填したペン注入器、ペン注入器用カートリッジ、再利用可能な注射器または他の医療注入器、液体乾燥注入器(liquid dry injector)、無針ペンシステム、シレット、自己注射器または他の患者管理注射デバイスにおいて好適な医薬製剤の中にある。
本発明のこれらと他の側面を、本明細書中により詳細に説明する。
【0064】
詳細な説明
本発明は、R−MNTX、(モルヒナニウム、17R、17−(シクロプロピルメチル)−4,5−エポキシ−3,14−ジヒドロキシ−17−メチル−6−オキソ−、塩、(5α)−(9Cl))の立体選択的合成のための合成経路、実質的に純粋なR−MNTX、実質的に純粋なR−MNTXの結晶、実質的に純粋なR−MNTXを含む医薬製剤、およびこれらの使用方法を提供する。
【0065】
R−MNTXは下記式の構造を有する:
【化3】

【0066】
ここでXは対イオンである。対イオンはあらゆる対イオンであってよく、双性イオンを含む。好ましくは、対イオンは医薬的に許容される。対イオンは、ハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸、およびアニオン荷電有機種を含む。ハロゲン化合物は、ヨウ化物、臭化物、塩化物、フッ化物またはこれらの組合せであり得る。一態様において、ハロゲン化合物はヨウ化物である。好ましい態様において、ハロゲン化合物は臭化物である。アニオン荷電有機種は、スルホン酸またはカルボン酸であってもよい。スルホン酸は、メシレート、ベシレート、トシレート、またはトリフレートであってもよい。カルボン酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸、またはフマル酸であってもよい。
【0067】
本発明はさらにR−MNTX中間体、下記式の単離3−O−保護−R−MNTX塩:
【化4】

【0068】
式中、Rはヒドロキシル保護基であり、実質的に純粋な3−O−保護−R−MNTX塩、実質的に純粋な3−O−保護−R−MNTX塩の結晶、実質的に純粋な3−O−保護−R−MNTX塩を含む医薬製剤、およびこれらの使用方法を提供する。本発明はさらに、3−O−保護R−MNTX塩の立体選択的合成のための合成経路を提供する。
【0069】
「アルキル」は一般に、1〜約10個の炭素原子を鎖中に有する直鎖状、分枝または環状の脂肪族炭化水素基、ならびにその範囲の全ての組合せおよび副組合せを指す。「分枝」は、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖アルキル鎖に付いている、アルキル基を指す。特定の好ましい態様において、アルキル基はC〜Cアルキル基、すなわち1〜約5個の炭素を有する分枝または直鎖アルキル基である。他の好ましい態様において、アルキル基はC〜Cアルキル基、すなわち1〜約3個の炭素を有する分枝または直鎖アルキル基である。例となるアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルを含む。「低級アルキル」は、1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。好ましいアルキル基は、1〜約3個の炭素の低級アルキル基を含む。
【0070】
「アルキル化剤」は、出発材料と反応し得、出発材料にアルキル基を結合し得、典型的には共有結合し得る化合物である。アルキル化剤は、典型的には、出発材料への付着の時にアルキル基から分離する脱離基を含む。脱離基は、例えば、ハロゲン、ハロゲン化スルホネートまたはハロゲン化アセテートであってもよい。アルキル化剤の例は、ヨウ化シクロプロピルメチルである。
【0071】
「メチル化剤」とは、求電子的性質を有する、すなわち、ナルトレキソンの窒素原子に「メチル基」を導入してそこに共有結合を形成する能力がある、反応種を意味する。実例のメチル化剤は、式CHZによって表すことができ、ここで「Z」は脱離基であって、その離脱により、CHがナルトレキソンの窒素原子と共有結合を形成してMNTXを形成することを可能にする。一般的なメチル化剤および一般的な脱離基は、当業者によく知られており、特許文献および化学教科書の両方に、広範囲にわたって記載されている。好適なZ基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、−OSOCF、CHOSOO−、−OSOCH、−OSO−p−CH、−OSO−p−Brを含むが、これらに限られない。
【0072】
「アルケニル」とは、一般に、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、2〜約10個の炭素原子を鎖中に有するアルキル基、ならびにその範囲の全ての組合せおよび副組合せを指す。特定の好ましい態様において、アルケニル基は、C〜C10アルキル基、すなわち、2〜約10炭素を有する分枝または直鎖アルケニル基である。他の好ましい態様において、アルケニル基は、C〜Cアルケニル基、すなわち、2〜約6個の炭素を有する分枝または直鎖アルケニル基である。さらに他の好ましい態様において、アルケニル基は、C〜C10アルケニル基、すなわち、3〜約10個の炭素を有する分枝または直鎖アルケニル基である。さらにもう1つの好ましい態様において、アルケニル基は、C〜Cアルケニル基、すなわち、2〜約5個の炭素を有する分枝または直鎖アルケニル基である。例となるアルケニル基は例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニルおよびデシル基を含む。
【0073】
「アルキレン」とは、一般に、1〜約6個の炭素原子を有する、直鎖状または分枝二価脂肪族炭化水素基、ならびにその範囲の全ての組合せおよび副組合せを指す。アルキレン基は、直鎖状、分枝または環状であってもよい。例となるアルキレン基は、例えば、メチレン(−CH−)、エチレン(−CH−CH−)およびプロピレン(−(CH−)を含むが、これらに限られない。アルキレン基に沿って任意に挿入される1または2以上の酸素、硫黄、または任意に置換される窒素原子があってもよく、ここで窒素置換基は上記のアルキルである。好ましいアルキレン基は約1〜約4個の炭素を有する。
【0074】
「アルケニレン」とは、一般に、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含むアルキレン基を指す。例となるアルケニレン基は、例えばエテニレン(−CH=CH−)およびプロペニレン(−CH=CHCH−)を含む。好ましいアルケニレン基は、2〜約4炭素を有する。
【0075】
「シクロアルキル」とは、一般に、あらゆる安定な約3〜約10個の炭素を有する単環または二環式の環、ならびにその範囲の全ての組合せおよび副組合せを指す。好ましい態様において、シクロアルキル基はC〜Cシクロアルキル基、すなわち、約3〜約8個の炭素を有するシクロアルキル基であって、C〜Cシクロアルキル基、すなわち、約3〜約6個の炭素を有するシクロアルキル基がより好ましい。シクロアルキル基は、1または2以上のシクロアルキル基置換基で任意に置換されてもよい。好ましいシクロアルキル基置換基は、アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、アルコキシ、好ましくはC〜Cアルコキシ、またはハロを含む。例となるシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル基を含む。
【0076】
「シクロアルキル−置換アルキル」とは、一般に、炭素鎖末端がシクロアルキル基、好ましくはC〜Cシクロアルキル基で置換されている、直鎖アルキル基、好ましくは低級アルキル基を指す。典型的なシクロアルキル−置換アルキル基は、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロプロピルメチルなどを含む。
【0077】
「シクロアルケニル」とは、一般に、約4〜約10個の炭素を有するオレフィン性不飽和シクロアルキル基、ならびにその範囲の全ての組合せおよび副組合せを指す。好ましい態様において、シクロアルケニル基は、C〜Cシクロアルケニル基、すなわち、約5〜約8個の炭素を有するシクロアルケニル基を指す。
【0078】
「アルコキシ」とは、一般に、アルキル−O−基を指し、ここでアルキルは上記の通りである。例となるアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびヘプトキシを含む。
「アルコキシ−アルキル」とは、一般に、アルキル−O−アルキル基を指し、ここでアルキルは上記の通りである。
【0079】
「アシル」とは、一般に、アルキル−CO−基を意味し、ここでアルキルは上記の通りである。好ましいアシル基は、約1〜約3個の炭素のアルキルなどの低級アルキル基を含む。例となるアシル基は、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、およびブタノイルである。
【0080】
「アリール」とは、一般に、6、10または14個の炭素を含む、芳香族炭素環式ラジカルを指す。フェニル基を1または2またはそれ以上の置換基で、任意に置換しても良い。好ましいアリール基の置換基は、アルキル基、このましくはC〜Cアルキル基を含む。例となるアリール基は、フェニルおよびナフチルを含む。
【0081】
「アリール−置換アルキル」とは、一般に、任意に置換したアリール基、好ましくは任意に置換したフェニル環で、炭素を置換した、直鎖アルキル基、好ましくは低級アルキル基を指す。例となるアリール−置換アルキル基は、例えば、フェニルメチル、フェニルエチルおよび3−(4−メチルフェニル)プロピルを含む。
【0082】
「複素環」とは、一般に、約4〜約10員を含む、単環または多環式環系ラジカル、ならびにその範囲の全ての組合せおよび副組合せを指し、ここで員の1または2以上は炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素または硫黄である。複素環基は、芳香族または非芳香族であってもよい。例となる複素環基は、例えば、イソキサゾール、ピロールおよびピペリジン基を含む。
【0083】
「有機溶媒」は、当業者にとって共通の一般的な意味を有している。本発明において有用な、例となる有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、ヘキサン、エーテル、クロロホルム、酢酸、アセトニトリル、クロロホルム、シクロヘキサン、メタノール、およびトルエンを含むが、これらに限られない。無水有機溶媒は含まれる。
【0084】
「双極性非プロトン性」溶媒は、不安定水素原子を供与することができず、永久双極子モーメントを示すプロトン受容溶媒である。例には、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびN−メチルピロリドンを含む。
【0085】
「双極性プロトン性」溶媒は、不安定水素原子を供与することができ、永久双極子モーメントを示すものである。例には、水、2−プロパノール、エタノール、メタノールなどのアルコール類、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸などのカルボン酸を含む。
【0086】
「三級アミン」は、その共通の一般的な意味を有している。一般的に、本発明に有用な三級アミン類は、下記式を有している:
【化5】

【0087】
式中、R、R、およびRは同一であるか、または異なる直鎖状または分枝鎖アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキル基、シクロアルキル−置換アルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルコキシ−アルキル基、アシル基、アリール基、アリール−置換アルキル基、および複素環基の組合せである。本発明にしたがって有用な、例となる三級アミン類は、R1−3が式(C2n+1、n=1−4)のアルキル基、または式(C(CH−[n=1−2]のアルアルキル基である。本発明にしたがって有用な、例となる三級アミン類は、シクロアルキル三級アミン類(例えば、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン)、ピリジンおよびProton Sponge(登録商標)(N,N,N’,N’-テトラメチル−1,8−ナフタレン)である。
【0088】
当然のことながら、存在する官能基は、合成過程の間に保護基を含んでもよい。保護基はそれ自体、ヒドロキシル基およびカルボキシル基などの官能基に選択的に付加除去することができる、化学官能基として知られている。これらの基は、化合物がさらされる化学反応条件に不活性なかかる官能基を与えるために、化学化合物中に存在する。さまざまな保護基のいずれを、本発明に用いても良い。好ましい保護基は、形成、単離および精製の間に安定なものである。
【0089】
好ましい保護基は、イソブチリル基;シリルエーテル類(SiR、ここでそれぞれのRは独立して直鎖または分枝のC〜Cアルキルである);2−テトラヒドロピラニルエーテル、炭酸アルキル;ベンジルオキシカルボニル基およびtert−ブチルオキシカルボニル基である。本発明にしたがって用いられても良い他の好ましい保護基は、Greene, T. W. and Wuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis 2d. Ed., Wiley & Sons, 1991に記載されている。本明細書中下記の「ヒドロキシル保護基」の表現は、OH基の水素原子の場所に挿入される基を指定することを意図している。
【0090】
ヒドロキシル保護基が脂肪族エステルである場合、これは好ましくは、以下からなる群から選択されるラジカルを表す:
3〜8個の炭素原子を有するアルカノイル;1または2以上の二重結合および3〜8個の炭素原子を有するアルケノイル;
【0091】
【化6】

式中、シクロアルキル部分が、3〜7環原子を含み、rはゼロ、1、2または3であるもの;
【0092】
フェノキシアセチル;ピリジンカルボニル;ならびに
【化7】

【0093】
式中、rはゼロ、1、2または3であり、フェニルは非置換であるか、それぞれ1〜4個の炭素原子を有する1〜3アルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロ、トリフルオロメチル、2〜8個の炭素原子を有するジアルキルアミノまたは2〜6個の炭素原子を有するアルカノイルアミノで置換される。
【0094】
アシル基がアルカノイルである場合、非分枝および分枝アルカノイルの両方が含まれ、例えば、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、2−メチルブタノイル、ピバリル(ピバロイル)、3−メチルペンタノイル、3,3−ジメチルブタノイル、2,2−ジメチルペンタノイルなどである。ピバリル、イソブチリルおよびイソバレリルが重要な例である。
【0095】
アシル基がアルケノイルである場合、例えば、クロトニル、2,5−ヘキサジエノイルおよび3,6−オクタジエノイルが含まれる。
アシル基が
【化8】

である場合、シクロアルカンカルボニルおよびシクロアルカンアルカノイル基が含まれ、ここでシクロアルカン部分は、1または2アルキル基を置換基として任意に持つこともでき、
【0096】
例えばシクロプロパンカルボニル、1−メチルシクロプロパンカルボニル、シクロプロパンアセチル、α−メチルシクロプロパンアセチル、1−メチルシクロプロパンアセチル、シクロプロパンプロピオニル、α−メチルシクロプロパンプロピオニル、2−イソブチルシクロプロパンプロピオニル、シクロブタンカルボニル、3,3−ジメチルシクロブタンカルボニル、シクロブタンアセチル、2,2−ジメチル−3−エチルシクロブタンアセチル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンアセチル、シクロヘキサンカルボニル、シクロヘプタンカルボニルおよびシクロヘプタンプロピオニルである。シクロヘキサンカルボニルが特に好ましい。
【0097】
アシル基が、ピリジンカルボニルである場合、ピコリノイル(2−ピリジンカルボニル)、ニコチノイル(3−ピリジンカルボニル)およびイソニコチノイル(4−ピリジンカルボニル)が含まれる。
【0098】
アシル基が、
【化9】

である場合、
【0099】
例えば、ベンゾイル、フェニルアセチル、α−フェニルプロピオニル、β−フェニルプロピオニル、p−トルイル、m−トルイル、o−トルイル、o−エチルベンゾイル、p−tert−ブチルベンゾイル、3,4−ジメチルベンゾイル、2−メチル−4−エチルベンゾイル、2,4,6−トリメチルベンゾイル、m−メチルフェニルアセチル、p−イソブチルフェニルアセチル、β−(p−エチルフェニル)プロピオニル、
【0100】
p−アニソイル、m−アニソイル、o−アニソイル、m−イソプロポキシベンゾイル、p−メトキシフェニルアセチル、m−イソブトキシフェニルアセチル、m−ジエチルアミノベンゾイル、3−メトキシ−4−エトキシベンゾイル、3,4,5−トリメトキシベンゾイル、p−ジブチルアミノベンゾイル、3,4−ジエトキシフェニルアセチル、β−(3,4,5−トリメトキシフェニル)プロピオニル、
【0101】
o−ヨードベンゾイル、m−ブロモベンゾイル、p−クロロベンゾイル、p−フルオロベンゾイル、2−ブロモ−4−クロロベンゾイル、2,4,6−トリクロロベンゾイル、p−クロロフェニルアセチル、α−(m−ブロモフェニル)プロピオニル、p−トリフルオロメチルベンゾイル、2,4−ジ(トリフルオロメチル)ベンゾイル、m−トリフルオロメチルフェニルアセチル、β−(3−メチル−4−クロロフェニル)プロピオニル、p−ジメチルアミノベンゾイル、p−(N−メチル−N−エチルアミノ)ベンゾイル、
【0102】
o−アセトアミドベンゾイル、m−プロピオンアミドベンゾイル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニルアセチル、p−n−ブトキシベンゾイル、2,4,6−トリエトキシベンゾイル、β−(p−トリフルオロメチルフェニル)プロピオニル、2−メチル−4−メトキシベンゾイル、p−アセトアミドフェニルプロピオニルおよび3−クロロ−4−エトキシベンゾイル
が含まれる。
【0103】
ヒドロキシル保護基が炭酸の分類である場合、これは構造式
【化10】

を有する。
【0104】
すなわち、COOH部分からヒドロキシル基の除去により炭酸から得られると考えられる有機ラジカルである。Y’は好ましくは、
1〜7個の炭素原子を有するアルキル;1もしくは2つの二重結合および2〜7個の炭素原子を有するアルケニル;
シクロアルキル−C2r
ここでシクロアルキル部分は3〜7環原子を含み、rはゼロ、1、2または3であるもの;フェノキシ;2−、3−、または4−ピリジル;または
【0105】
フェニル−C2r
式中、rはゼロ、1、2もしくは3であり、フェニルは非置換もしくは1〜3の、それぞれ1〜4個の炭素原子を有するアルキル、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロ、トリフルオロメチル、2〜8個の炭素原子を有するジアルキルアミノまたは2〜6個の炭素原子を有するアルカノイルアミノで置換されるものを表す。最も好ましくは、Y’はC〜Cアルキルであり、特にエチルまたはイソプロピルである。
【0106】
好ましい保護基は、選択的に官能基に付加されるものである。これらの基は、かかる官能基を当該化合物がさらされる化学反応条件に対して不活性にさせる。保護基がその役割を果たした後、分子構造を変えることなく、官能基から選択的に除去することができる。最も好ましい保護基は、穏和な条件下で、高収率で、官能基へ選択的に付加または官能基から選択的に除去することができるものである。
【0107】
3−O−保護ナルトレキソンに対する好ましい保護基は、生成および精製の間に不安定でありしたがってより低い収率および純度ならびに取り扱いの困難をもたらすことが見出されたアセチル保護基と比べて、より安定で立体的に遮蔽(sterically hinder)されたものを含む。本発明の方法に用いるために好ましい保護基の例は、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニルなどを含む。好ましい態様において、高収率および純度をもたらすその優れた安定性のため、保護基はイソブチリルである。かかる保護基は、70以上、好ましくは75%以上の3−O−保護ナルトレキソンの収率をもたらす。一態様において、3−O−保護ナルトレキソンの収率は、約80%またはそれ以上である。
【0108】
前述の保護基および三級アミン類のいくつかは置換されていないが、当業者は状況次第で置換が存在し得ることを理解する。
本発明は、
(a)3−O−保護−R−MNTX塩を得るための、メチル化剤での3−O−保護ナルトレキソンのメチル化;および
(b)R−MNTXを得るための、3−ヒドロキシル保護基を除去するための加水分解を含む、
R−MNTXの立体選択的合成方法を提供する。
【0109】
3−O−保護−R−MNTX塩の好ましいヒドロキシル保護基は、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニル、シリルエーテル類、2−テトラヒドロピラニルエーテル類、および炭酸アルキル類を含む。
【0110】
Goldbergらによって記載された、N−MNTXを製造するための室温で3週間または70℃で7日間のメチル化反応を教示する方法と違い、本発明の立体選択的なメチル化条件は、70℃以上、より好ましくは80℃以上で行われる。一態様において、反応を約88℃で行う。立体異性体に関する化学反応の基本原則に基づいて、より高温での反応は、速度支配を伴って進み、両方の立体異性体を高い割合で含むR−MNTXとS−MNTXとの混合物をもたらすことが予測される。高温で、本発明の方法が、高い割合のS−MNTXとの混合物よりむしろ主にR−MNTXをもたらすことは驚くべきことであった。
【0111】
本発明のメチル化反応は、1時間〜約24時間、好ましくは約5時間〜約16時間、より好ましくは約8〜12時間、最も好ましくは約10時間進行させる。この反応時間は、Goldbergらによって教示された室温での3週間や70℃での7日間に優る主な工業規模の利点を提供する。
【0112】
好ましい態様において、メチル化反応は、約88℃で10時間行われる。これらの反応パラメーターは、工業規模でのスケールアップに応じやすいプロセスの開発に非常に望ましい。
【0113】
本発明はさらに、R−MNTXとS−MNTXとの立体異性体の混合物からのR−MNTXの精製方法を提供し、当該方法は、少なくとも1、2または多重の再結晶を含む。再結晶された生成物は、R−MNTXが高度に濃縮されており、実質的にS−MNTXを欠いている。一態様において、再結晶された生成物は、98%より高い純度のR−MNTXである。再結晶された生成物が、99%より高い純度のR−MNTXおよび99.9%以上の純度のR−MNTXである、R−MNTXのより高い純度および/またはより高い収率を得るために、当業者は、この手法を最適化することができるものと考える。
【0114】
再結晶溶媒は、有機溶媒または有機溶媒の混合物、または有機溶媒(単数または複数)と水との混合物であり得る。好ましい溶媒は、アルコールであり、より好ましくは低分子量アルコールである。一態様において、低分子量アルコールはメタノールである。
【0115】
GoldbergらおよびCantrellらは、再結晶に有機溶媒(単数または複数)/水を用いる。これは反応混合物を浄化する標準的技法である。立体異性体の存在や、立体異性体を優先的に得るかどうかに注意を向けていないように、他方よりも一方の立体異性体を得ることはGoldbergらおよびCantrellらが定めた目標ではない。したがって、GoldbergらおよびCantrellらのいずれも、再結晶が有するかもしれない立体異性体の組成物への影響に注意を向けていない。本発明は、R−MNTXとS−MNTXの混合物からのR−MNTXの純度を高めるために再結晶を有利に使用できる条件を開示している。
【0116】
本発明の1つの側面は、MNTXの溶液において、R−MNTXおよびS−MNTXを分離し同定する方法である。R−MNTXはまた、組成物または混合物におけるR−MNTXの量を定量するHPLC分析方法において有用であり、当該方法は、組成物または混合物のサンプルをクロマトグラフィーカラムに適用すること、組成物または混合物の成分を分離すること、およびサンプルにおける分離した成分の割合とR−MNTXの標準濃度の割合とを比較することによりサンプル中のR−MNTXの量を計算することを含む。当該方法は、逆相HPLCクロマトグラフィーにおいて特に有用である。
【0117】
本発明の医薬製剤を、単独またはカクテル中で用いる場合、治療上の有効量で投与する。治療上の有効量は、後述するパラメーターによって決定される;しかし、いずれにしても、本明細書中に記載される症状の1つを有するヒト被験者などの被験体を処置するために有効な薬物(単数または複数)のレベルを確立する量である。有効量とは、処置される状態またはこれにともなう症状の発現を遅らせる、重篤度を軽減する、もしくは完全に予防する、進行を軽減する、または発現と進行を同時に止めるために必要な、単独または複数投与での量を意味する。
【0118】
便秘の場合、有効量は、例えば、便秘の症状を緩和する量、便通を誘発する量、便通の頻度を増やす量、または経口−盲腸通過時間を減少する量である。便秘の公知および通常の定義は、(i)3日間に1回より少ない便通または(ii)1週間に3回より少ない便通である(例えば米国特許6,559,158参照)。言い換えると、患者が3日毎に少なくとも1回の便通を、および1週間に少なくとも3回の便通を有する場合、患者は便秘ではない(すなわち本明細書において「通常の便通を」有する)。したがって、少なくとも1回の便通を二日毎に有することは、通常の便通と考えられる。同様に、一日に少なくとも1回の便通は通常の便通である。したがって、有効量は通常の便通を確立または持続するために必要な量である。
【0119】
場合によっては、投与方法に依存して、R−MNTXまたはR−MNTX中間体3−O−保護−R−MNTX塩の投与の12時間、10時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間以内、さらには投与直後に便通を誘発するに十分な量である。静脈内投与は、慢性的なオピオイド使用者において便通の即効性作用を引き起こすことができる。皮下投与は、投与の12時間以内、好ましくは投与の四時間以内に便通をもたらすことができる。被験体に投与した場合、有効量は、もちろん、処置される特定の状態;状態の重症度;年齢、身体的状態、サイズおよび体重を含む個別の患者のパラメーター;併用療法、特にオピオイドが慢性的に投与されるオピオイドを用いた併用療法;処置の頻度;ならびに投与方法に依存する。これらの要因は、当業者には周知であり、定型的実験なしに取り組むことができる。
【0120】
本発明の治療に適している患者は、末期患者、高度先進医療の対象である疾患(advanced medical illness)を有する患者、癌患者、AIDS患者、術後患者、慢性疼痛を有する患者、ニューロパシーを有する患者、関節リウマチを有する患者、変形性関節症を有する患者、慢性腰痛を有する患者、脊髄損傷を有する患者、慢性の腹痛を有する患者、慢性の膵臓痛を有する患者、骨盤/会陰痛を有する患者、線維筋痛を有する患者、慢性疲労症候群を有する患者、HCVに感染した患者、過敏性腸症候群の患者、片頭痛または緊張性頭痛を有する患者、鎌状赤血球貧血の患者、血液透析を受ける患者などを含むが、これらに限定されない。
【0121】
本発明の治療に適している患者は、特に術後セッティングにおいて、内因性オピオイド類による機能障害に苦しんでいる患者も含むが、これに限られない。特定の対応において、R−MNTXまたはその中間体は、直腸切除、結腸切除、胃、食道、十二指腸、虫垂切除術などの腹部手術、または整形外科、外傷性傷害、胸部または移植手術などの非腹部手術を含む、術後の退院を早めるために十分な量で存在する。この処置は、入院の期間を縮めるため、または手術後の腸音、または最初の放屁まで、手術の後の最初の便通または固形食摂取までの時間を縮めることにより、術後に退院許可書が書かれるまでの時間を縮めるために効果的であり得る。R−MNTXまたはその中間体を、オピオイド鎮痛剤を術後に患者が受けなくなった後に、続けて提供しても良い。
【0122】
処置に特に適している特定の患者は、便秘および/または胃腸不動の症状を有している患者であって、緩下剤または便軟化剤を単独または併用して用いて症状の緩和を得られなかったかまたは緩和もしくは一貫した度合いの緩和を得なくなった患者、さもなければ緩下剤および/または便軟化剤に耐性をしめす患者である。かかる患者は、通常の緩下剤および/または便軟化剤では効果が無いと言える。便秘および/または胃腸不動は、病状、身体的状態、薬物によって誘導される状態、生理学的不均衡、ストレス、不安神経症などを含むがこれらに限定されない1または2以上の様々な状態によって誘発され得るか、またはその結果であり得る。
【0123】
被験体を、R−MNTX、またはその3−O−保護−R−MNTX中間体、ならびに緩下剤および/または便軟化剤(さらに任意にオピオイド)の組合せで処置することができる。これらの場合、R−MNTXまたはその中間体および他の処置剤(単数または複数)を、被験体が上記の様々な薬剤の効果を所望のとおりに経験するように、十分に近い時間で投与し、これは典型的には同時である。ある態様において、R−MNTXまたはその中間体が1番目に送達され、ある態様においては2番目に送達され、さらにある態様では同時に送達される。
【0124】
本明細書中でより詳細に論じるように、本発明は医薬製剤を意図し、ここでR−MNTXまたはその中間体を、R−MNTXまたはその中間体、および緩下剤と便軟化剤の一方または両方(および任意にオピオイド)を含む処方物において投与する。これらの処方物は、非経口または経口であってもよく、米国特許出願第10/821,809号に記載されたものなどである。固体、半固体、液体、徐放、凍結乾燥および他のこのような処方物が含まれる。
【0125】
重要な態様において、R−MNTXの投与量は便通を誘導するに十分である。 これは被験体が慢性的オピオイド使用者である場合に特定の用途を有する。慢性的なオピオイド使用は、本明細書において使用される場合、一週間以上にわたる毎日のオピオイド処置または少なくとも2週間にわたる断続的なオピオイド使用を含む。慢性的にオピオイドを受ける患者はオピオイドに対して耐性を持つようになり用量の増加を必要とすることが、以前から分かっていた。したがって、慢性的なオピオイドの経口投与を受けている患者は、典型的には一日当たり40〜100mgのモルフィンと等価の用量のオピオイドを受ける。驚くべきことに、かかる被験体はMNTXの効果に対してより応答性であるようになること、および驚くほどの低用量が副作用を引き起こすことも、同様に分かった。したがって、即時の便通を誘発するために、静脈内でおおよそ約0.15mg/kgのMNTXしか必要としない。経口投与に関しては、十分な用量とは、コーティングされていない場合は3mg/kgより少ない、そしてR−MNTXが腸溶性コーティングされている場合はより少ないと考えられる。
【0126】
慢性的にオピオイドを使用する患者は、後期癌患者、骨関節炎変化を有する高齢患者、メサドン維持患者、神経因性疼痛および慢性腰痛の患者を含む。これらの患者の処置は、痔核、食欲抑制、粘膜破壊、敗血症、結腸癌のリスクおよび心筋梗塞などの合併症を減らすためと同様に、生活の質の観点から重要である。
【0127】
オピオイドは、あらゆる医薬的に許容されるオピオイドであり得る。一般的なオピオイドは、アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブルプレノルフィン(burprenorphine)、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシラート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レバロルファン、酢酸レボメサジル、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルフィン、モルフィン6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、およびトラマドールからなる群から選択される。オピオイドはR−MNTXまたはその中間体と混合されていてもよく、R−MNTXまたはその中間体に関連した上記のいかなる形状で提供されてもよい。
【0128】
一般的に、R−MNTXおよびその中間体の経口用量は、一日当たり体重1kgあたり約0.25〜約19.0mgである。一般的に、静脈内および皮下投与を含む非経口的投与は、ボーラスとしてであるか、I.V.点滴などによる長時間の拡散であるかに依存して、一日当たり体重1kgあたり約0.01〜1.0mgである。一般的に、術後腸機能障害(POBD)のためのI.V.用量は0.3mg/kgである。体重1kgあたり0.01〜0.45mgの範囲の用量が所望の結果をもたらすと予測される。投与量を所望の局所的または全身の薬物レベルを達成するために、投与方法に依存して、適切に調整しても良い。
【0129】
例えば、腸溶性コーティングされた処方物におけるオピオイドアンタゴニストの経口投与の投与量は、即時放出経口処方物における場合よりも低いと予測される。かかる用量において患者における応答が不十分な場合には、より高い用量(または異なるより局所的な送達経路による、効果的により高い投与量)を患者の耐容性が揺する範囲まで用いても良い。一日当たり複数用量は、化合物の適切な全身レベルを達成するために検討される。適切な全身レベルは、例えば、患者の薬物のピークまたは持続的血漿レベルを測定することにより判断され得る。ある場合に、100ng/mlより低いピーク血漿レベルが望ましい。「用量」および「投与量」は本明細書中に同じ意味で用いられる。
【0130】
様々な投与経路が利用出来る。特定の方法は、もちろん、選択した薬物の特定の組合せ、処置または予防する状態の重症度、患者の状態、および治療効果に必要とされる投与量に依存して選択される。本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に許容されるあらゆる投与方法を用いて行われてもよく、これは、臨床的に許容されない悪影響を引き起こすことなく活性化合物の有効レベルを作り出すあらゆる方法を意味する。
【0131】
かかる投与方法は、経口、直腸、局所、経皮、舌下、静脈内注入、肺、動脈内、脂肪組織内、リンパ管内、筋肉内、腔内、エアロゾル、耳(例えば、点耳剤を介して)、鼻腔内、吸入、関節内、無針注射、皮下または皮内(例えば、経皮)送達を含む。持続注入に関しては、患者管理鎮痛法(PCA)デバイスまたは埋め込み薬物送達デバイスを用いても良い。経口、直腸または局所投与は、予防または長期処置に重要であり得る。好ましい直腸送達方法は、坐剤または浣腸洗浄剤としての投与を含む。
【0132】
医薬製剤は、都合良く単位投与量形態で提供されてもよく、調剤の分野で周知のいずれの方法で調製されても良い。全ての方法は、本発明の化合物を1または2以上の副成分を構成する担体と結合させる工程を含む。一般に、組成物は、本発明の化合物を液体担体、微粉化固体担体、または両方と均一におよび密接に結合させ、そして必要であれば製品に形成することにより調製する。
【0133】
投与の際、本発明の医薬製剤は、医薬的に許容される組成物において適用される。かかる調製物は通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、潤滑油、および任意に他の処置成分を含んでも良い。薬に用いられる場合、塩は医薬的に許容されるものであるべきであるが、医薬的に許容され無い塩をその医薬的に許容される塩の調製のために都合良く用いても良く、本発明の範囲から除かれない。かかる薬理学的および医薬的に許容される塩は、以下の酸から製造されるものを含むが、これらに限定されない:塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、パモン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸およびベンゼンスルホン酸。
【0134】
当然のことながら、MNTX、R−およびS−MNTX、ならびに本発明の処置剤(単数または複数)に言及する場合、その塩を包含することを意味する
。かかる塩は多様であり当業者に周知である。医薬製剤において用いられる場合、塩は好ましくはヒトに用いるために、医薬的に許容される。臭化物はかかる塩の一例である。
【0135】
本発明の医薬製剤は、医薬的に許容される担体中に含まれるか、希釈されても良い。本明細書で用いられる「医薬的に許容される担体」の用語は、ヒトまたは非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタまたはヤギなどの他の哺乳類に投与するために適した、1または2以上の適合性の固体または液体の充てん剤、希釈剤または封入物質を意味する。「担体」の用語は、活用を促進するために活性成分と組み合わされる、天然または合成の有機または無機の成分、を意味する。担体は、所望の医薬的有効性や安定性を本質的に損なう相互作用が存在しないような方法で、本発明の調製物および互いと入り交じることができる。経口投与、坐剤および非経口的投与などに適した担体処方物は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Paにおいて見出すことができる。
【0136】
水性処方物は、好ましくは3.0〜3.5にpH調整されたキレート剤、緩衝剤、酸化防止剤および任意に等張剤を含むことができる。蒸気殺菌法および長期保存に適するような処方物の例は、同時係属アメリカ出願第10/821,811号、表題「医薬処方物」に記載される。
【0137】
キレート剤は、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその誘導体、クエン酸およびその誘導体、ナイアシンアミドおよび誘導体、デソキシコール酸ナトリウムおよびその誘導体、ならびにL−グルタミン酸、N,N−アセト酢酸およびその誘導体を含む。
【0138】
緩衝剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸ナトリウムおよびリン酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、重炭酸ナトリウムおよび炭酸、コハク酸ナトリウム、ヒスチジン、および安息香酸ナトリウムおよび安息香酸からなる群、またはこれらの組合せから選択されるものを含む。
【0139】
酸化防止剤は、アスコルビン酸誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、アルキルガレート、メタ−重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム、トコフェラールおよびその誘導体、モノチオグリセロール、ならびに亜硫酸ナトリウムからなる群から選択されるものを含む。好ましい酸化防止剤は、モノチオグリセロールである。
【0140】
等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース、グリセロールおよびソルビトールからなる群から選択されるものを含む。
本組成物に用いることの出来る防腐剤は、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノールおよび好ましくは塩化ベンザルコニウムを含む。典型的に、防腐剤は約2重量%までの濃度で組成物に存在する。しかしながら、防腐剤の正確な濃度は目的の用途に依存して変化し、当業者は容易に判断できる。
【0141】
本発明の化合物は、好ましくはマンニール、またはラクトース、デキストロース、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリジンなどの凍結防止剤の存在下で、凍結乾燥組成物に調製できる。6.0以下の再構成pHをもたらす凍結防止剤が好ましい。本発明はしたがって、本発明の処置剤(単数または複数)の凍結乾燥製剤を提供する。調製物は、好ましくは水中において中性または酸性である、マンニトールまたはラクトースなどの凍結防止剤を含むことができる。
【0142】
薬剤の経口、非経口および坐剤処方物は周知であり、市販されている。本発明の処置剤(単数または複数)を、かかる周知の処方物に加えることができる。かかる処方物において溶液または半固体溶液で混ぜ合わせることができ、かかる処方物内に懸濁液で提供することができ、またはかかる処方物内に粒子で含むこともできる。
【0143】
発明の治療剤(単数または複数)および任意に1または2以上の他の活性薬剤を含む製品を、経口製剤として構成することができる。経口投薬は、液体、半固体または固体であり得る。オピオイドを任意に経口製剤に含んでも良い。経口製剤を、本発明の処置剤(単数または複数)を他の薬剤(および/またはオピオイド)の前、後または同時に放出するように構成してもよい。経口製剤を、本発明の処置剤(単数または複数)および他の薬剤を胃で完全に放出するか、一部を胃で放出し一部を腸で放出するか、腸で放出するか、結腸で放出するか、一部を胃で放出するか、または完全に結腸で放出するように構成してもよい。
【0144】
経口製剤を、本発明の処置剤(単数または複数)の放出を胃または腸に制限しながら、他の活性剤の放出をそれほど制限しないか本発明の処置剤(単数または複数)とは異なるように制限することによって構成してもよい。例えば、本発明の治療剤(単数または複数)は、他の剤を最初に放出し、本発明の処置剤(単数または複数)が胃を通過し腸へ至った後にのみ本発明の処置剤(単数または複数)を放出するピルまたはカプセル内に含まれた、腸溶性コーティングのコアまたはペレットであってもよい。
【0145】
本発明の治療剤(単数または複数)は持続放出材料内にあってもよく、本発明の治療剤(単数または複数)を消化管を通して放出し、そして他の薬剤を同じまたは異なるスケジュールで放出する。本発明の治療剤(単数または複数)放出の同じ目的は、腸溶コーティング本発明の治療剤(単数または複数)と組み合わせた本発明の治療剤(単数または複数)の即時放出で達成することができる。これらの場合において、他の剤を、胃で、消化管を通して、または腸のみで、即座に放出することができる。
【0146】
これらの異なる放出プロファイルを達成するために有用な材料は、当業者に周知である。即時放出は、胃で溶解する結合剤を有する従来のタブレットによって得られる。胃のpHで溶解するコーティングまたは高温で溶解するコーティングは、同じ目的を達成する。腸でのみの放出は、腸のpH環境において溶解する(しかし胃では溶解しない)pH感受性コーティングのような従来の腸溶コーティングまたは時間とともに溶解するコーティングを用いて達成する。消化管を通しての放出は、持続放出材料、および/または即時放出システムと持続性および/または遅延性の計画的放出システム(例えば、異なるpHで溶解するペレット)との組合せを用いて達成する。
【0147】
発明の治療剤(単数または複数)を最初に放出することが望ましい場合において、本発明の治療剤(単数または複数)を徐放処方物の表面に、かかるコーティングに適し、本発明の治療剤(単数または複数)の放出を可能にするために適したあらゆる医薬的に許容される担体において、例えば通常徐放のために用いられる温度感受性の医薬的に許容される担体において、コーティングすることができる。体内に入れられた場合に溶解する他のコーティングは、当業者に周知である。
【0148】
本発明の治療剤(単数または複数)は、徐放処方物を通して完全に混合されてもよく、それによって、これは別の剤の前、後または同時に放出される。本発明の治療剤(単数または複数)は遊離、すなわち処方物の材料中で可溶性であってもよい。本発明の治療剤(単数または複数)は、処方物の材料全体に分散したワックスコーティングしたマイクロペレットなどの小胞の形態であってもよい。コーティングしたペレットは、温度、pHなどに基づいて、本発明の治療剤(単数または複数)を即座に放出するために形作ることができる。
【0149】
ペレットを、本発明の治療剤(単数または複数)の放出を遅らせ、本発明の治療剤(単数または複数)がその効果を発揮する前に他の薬剤を一定期間作用させるように構成することができる。本発明ペレットの治療剤(単数または複数)は、先行技術の、当業者に周知の材料を用いて、一次放出速度またはシグモイド放出速度を示すパターンを含む、事実上あらゆる持続放出パターンで本発明の処置剤(単数または複数)を放出するように構成することもできる。
【0150】
本発明の治療剤(単数または複数)を徐放処方物内のコア内に含むことも出来る。コアは、1またはあらゆる組合せの、ペレットに関して上記した特性を有してもよい。本発明の治療剤(単数または複数)は、例えば、材料でコーティングされるコア中にあっても、材料内に分散していても、材料にコーティングされても、または材料にもしくは材料にわたって吸着されてもよい。
【0151】
当然のことながらペレットまたはコアは事実上どのタイプであってもよい。放出材料でコーティングされた薬物、材料に散在する薬物 、材料に吸着された薬物などでありえる。材料は浸食可能であっても浸食不可能であってもよい。
【0152】
本発明の処置剤(単数または複数)は粒子で提供されてもよい。本明細書において粒子とはナノまたはマイクロ粒子(またはある場合はより大きいもの)を意味し、これは明細書に記載されるように本発明の処置剤(単数または複数)または他の剤の全体または一部を構成できる。粒子は、腸溶コーティングを含むがこれに限定されないコーティングに囲まれたコアにおける治療剤(単数または複数)を含んでもよい。処置剤(単数または複数)は粒子全体にわたって分散してもよい。
【0153】
処置剤(単数または複数)は粒子に吸着されても良い。粒子は、0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持続放出、即時放出およびこれらのあらゆる組合せなどを含む、あらゆる速度式のものであっても良い。粒子は、治療剤(単数または複数)に加えて、薬学および医薬の分野で通常的に用いられるあらゆる材料を含んでもよく、これは浸食可能、浸食不不可能、生物分解可能、または生物分解不可能な材料またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。粒子は、溶液中または半固体状態におけるアンタゴニストを含むマイクロカプセルであってもよい。粒子は事実上あらゆる形状であり得る。
【0154】
生物分解不可能および生物分解可能なポリマー材料の両方を治療剤(単数または複数)を送達するための粒子の製造に用いることが出来る。かかるポリマーは天然または合成ポリマーでありえる。ポリマーは、放出が望まれる時間に基づいて選択する。特定の目的の生体接着ポリマーは、H.S. Sawhney, C.P. Pathak and J.A. Hubell in Macromolecules, (1993) 26:581-587に記載される生体内分解性ヒドロゲルを含み、この教示は本明細書に組み込まれる。
【0155】
これらは、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)を含む。
【0156】
治療剤(単数または複数)は、徐放システムに含まれてもよい。「徐放(controlled release)」の用語は、処方物からの薬物放出の方法およびプロファイルが制御される処方物を含む、あらゆる薬物を指すことを意図する。これは、非即時放出処方物と同様に即時放出処方物も指し、非即時放出処方物は持続放出および遅延放出処方物を含むがこれらに限定されない。
【0157】
用語「持続放出(sustained release)」(extended releaseともいう)は、従来の意味において、長期間にわたって、徐々に放出するために提供し、必須ではないが好ましくは長期間にわたる一定の薬物の血中濃度をもたらす、薬物処方物を指して用いられる。用語「遅延放出(delayed release)」は、従来の意味において、処方物の投与とそこからの薬物の放出の間に時間遅延が存在する薬物処方物を指す。「遅延放出」は、長期間にわたる緩やかな放出に関連しても、しなくてもよく、したがって、「持続放出」であってもなくてもよい。これらの処方物は、あらゆる投与方法に対するものであってよい。
【0158】
消化管に対して特異的な送達システムは、大まかに3つのタイプに分けられる:第一は、例えばpHの変化に応答して薬物を放出するように設計された遅延放出システム;第二は、あらかじめ定められた時間の後に薬物を放出するように設計された時限放出システム;そして第三は、消化管の下部における豊富な腸内細菌を利用したミクロフローラ酵素システム(例えば、結腸部向け放出処方物)である。
【0159】
遅延放出システムの例は、例えば、アクリルまたはセルロースコーティング材料を用い、pH変化で溶解するものである。調製が容易なことから、かかる「腸溶コーティング」に関するたくさんの報告がなされてきた。一般的に、腸溶コーティングは、相当な量の薬物を胃で放出することなく(例えば胃において、10%の放出、5%の放出さらには1%の放出より少ない)、胃を通過し、(おおよそ中性またはアルカリ性の腸液と触れることによって)腸管において十分に崩壊し、腸管の壁を通じて活性薬物の(能動または受動)送達を可能にするものである。
【0160】
腸溶コーティングとしてコーティングが分類されるかを判断するための様々なインビトロ試験が、様々な国の薬局方において公開された。36〜38℃でpH1のHClなどの人工の胃液と接触して、少なくとも2時間原形を保ち、そしてその後pH6.8のKHPO緩衝液などの人工の腸液中で30分以内に崩壊するコーティングが一例である。かかる周知のシステムは、市販の、Behringer, Manchester University, Saale Co.によって報告されたEUDRAGIT材料などである。腸溶コーティングを、以下にさらに論じる。
【0161】
時限放出システム は、Fujisawa Pharmaceutical Co., Ltd.およびPulsincap by R. P. SchererによるTime Erosion System (TES)に代表される。これらのシステムによると、薬物放出の部位は、消化管における製剤の通過の時間によって決められる。消化管における製剤の通過は、胃内容排出時間に主に影響されるので、放出システムも時に腸溶コーティングされる。
【0162】
腸内細菌を利用したシステムは、Ohio University (M. Saffran, et al., Science, Vol. 233: 1081 (1986))のグループおよびUtah University (J. Kopecek, et al., Pharmaceutical Research, 9(12), 1540-1545 (1992))のグループによって報告された、腸内細菌から生成されるアゾ還元酵素による芳香族アゾポリマーの分解を利用するもの;およびHebrew University (PCT出願に基づく未審査公開の日本特許出願番号5-50863)のグループおよびFreiberg University (K. H. Bauer et al., Pharmaceutical Research, 10(10), S218 (1993))のグループによって報告された、腸内細菌のベータ−ガラクトシダーゼによる多糖の分解を利用したものに分類することができる。さらに、Teikoku Seiyaku K. K. (未審査公開の日本特許出願番号4-217924および未審査公開の日本特許出願番号 4-225922)による、キトサナーゼによるキトサン分解を利用したシステムも含まれる。
【0163】
腸溶コーティングは典型的に、必須ではないが、ポリマー材料である。好ましい腸溶コーティング材料は、生体内分解性のポリマー、徐徐に加水分解するポリマーおよび/または徐徐に水に溶解するポリマーを含む。「コーティング量」またはカプセル当たりのコーティング剤の相対量は、一般的に摂取から薬物放出までの期間を定める。いずれのコーティングも、コーティング全体がpH約5未満の胃腸液において溶解しないがpH約5以上で溶解するように、十分な厚さに適用するべきである。
【0164】
pH依存溶解プロファイルを示すアニオン性ポリマーを、本発明の実施における腸溶コーティングとして用いることが出来ると予想される。特定の腸溶コーティング材料の選択は以下の特性に依存する:胃での溶解および分解への耐性;胃内での胃液および薬物/担体/酵素に対する不透性;目的腸部での速やかな溶解および分解の能力;保管の間の物理的および化学的安定性;非毒性;コーティングとしての適用の容易性(基質に優しい);および経済的実用性。
【0165】
好適な腸溶コーティング材料は、セルロースポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリテート(trimellitate)セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム;アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メチルアクリル酸アンモニウム、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、および/またはメタクリル酸エチルから形成されるもの(例えば、商品名をEUDRAGITとして販売されるコポリマー);ビニルポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリビニルアセテート、フタル酸ポリビニルアセテート、クロトン酸ビニルアセテートコポリマー、およびエチレン−ビニルアセテートコポリマー;ならびにセラック(精製ラック)を含むが、これらに限定されない。
【0166】
異なるコーティング材料の組合せを使用してもよい。本明細書における使用のための周知の腸溶コーティング材料は、Rohm Pharma(ドイツ)から商品名EUDRAGITとして市販のアクリル酸ポリマーおよびコポリマーである。EUDRAGITのシリーズE、L、S、RL、RSおよびNEのコポリマーは、有機溶媒中で可溶化されたもの、水性懸濁液、または乾燥粉末として市販されている。EUDRAGITのシリーズRL、NE、およびRSのコポリマーは、胃腸管内で不溶性であるが透過性であり、持続放出(extended release)のために主に使用される。EUDRAGITのシリーズEコポリマーは、胃内で溶解する。EUDRAGITのシリーズL、L-30DおよびSのコポリマーは、胃内では不溶性であり、小腸で溶解し、したがって本明細書において最も好ましい。
【0167】
具体的なメタクリル酸コポリマーは、EUDRAGIT L、特にL-30DおよびEUDRAGIT L 100-55である。EUDRAGIT L-30Dにおいて、エステルに対する遊離のカルボキシル基の比は、およそ1:1である。さらに、コポリマーは、5.5以下のpH、一般的に1.5〜5.5、すなわち、上部消化管において一般的に存在するpHを有する胃腸液中で不溶性であるが、5.5以上のpH、すなわち下部消化管で一般的に存在するpHでは容易に可溶性であるか部分的に可溶性であることが知られている。別の特定のメタクリル酸ポリマーは、EUDRAGIT Sであり、これは、エステルに対する遊離カルボキシル基の比がおよそ1:2であることにおいてEUDRAGIT L-30Dと異なる。EUDRAGIT Sは、5.5より低いpHで不溶性であるが、EUDRAGIT L-30Dとは異なり、小腸においてのような5.5〜7.0の範囲のpHを有する胃腸液中で殆ど溶解しない。
【0168】
コポリマーは、pH7.0以上、すなわち、結腸において一般的に見出されるpHで可溶性である。EUDRAGIT Sを、単独で大腸における薬物送達を提供するためのコーティングとして使用してもよい。あるいは、EUDRAGIT Sは、pH7より低い腸液中で殆ど溶解しないので、活性剤を腸管の多様な区域へ送達するために処方され得る遅延放出組成物を提供するために、pH5.5より高い腸液中で可溶性のEUDRAGIT L-30Dと組み合わせて使用してもよい。EUDRAGIT L-30Dが多く使用されるほど、放出および送達がより近部で始まり、EUDRAGIT Sが多く使用されるほど、放出および送達がより末端で始まる。当業者は、EUDRAGIT L-30DおよびEUDRAGIT Sを、類似のpH可溶性の特徴を有する他の薬学的に受容可能なポリマーで置換してもよいことを理解する。本発明の特定の態様において、好ましい腸溶性コーティングは、ACRYL-EZE(登録商標)(メタクリル酸コポリマー型C;Colorcon,West Point,PA)である。
【0169】
腸溶コーティングは、薬物放出が一般的に予測可能な位置で達成されるような活性剤の徐放を提供する。腸溶コーティングはまた、口腔、咽頭、食道、および胃の上皮および粘膜組織への、ならびにこれらの組織と関連する酵素への、処置剤および担体の暴露を予防する。したがって、腸溶コーティングは、活性剤、担体および患者の内部組織を、所望の送達の部位での薬物放出に先立つ有害な事象から保護することに役立つ。さらに、本発明のコーティングされた材料は、薬物吸収、活性剤保護および安全性の至適化を可能にする。消化管内の多様な領域での活性剤の放出を目的とする多重腸溶コーティングは、さらにより効果的で持続的な改善された消化管を通しての送達を可能にする。
【0170】
コーティングは、胃液の浸透を可能にする孔および亀裂の形成を予防するために、可塑剤を含有してもよく、通常含有する。好適な可塑剤は、クエン酸トリエチル(citroflex 2)、トリアセチン(グリセリルトリアセタート)、クエン酸アセチルトリエチル(citroflec a2)、carbowax 400(ポリエチレングリコール400)、フタル酸ジエチル、クエン酸トリブチル、アセチル化モノグリセリド類、グリセロール、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、およびフタル酸ジブチルを含むが、これらに限られない。特に、アニオン性カルボン酸アクリル酸ポリマーは、通常、およそ10%〜25重量%の可塑剤、特にフタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチルやトリアセチンを含む。コーティングはまた、コーティング材料を可溶化または分散させるために、ならびにコーティングの性能およびコーティングされた製品を改善するために、他のコーティング賦形剤、例えば、粘着低下剤(detackifier)、消泡剤、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)および安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、酸および塩基)を含んでもよい。
【0171】
コーティングは、処置剤(単数または複数)の粒子、処置剤(単数または複数)のタブレット、処置剤(単数または複数)を含有するカプセルなどに、従来のコーティングの方法および設備を用いて適用することができる。例えば、腸溶コーティングコーティング用のパン(pan)、無気噴霧技術、流動床コーティング設備などを用いて、カプセルに適用できる。コーティングされた投与形態を調製するための材料、設備、およびプロセスに関する詳細な情報は、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Liebermanら編(New York: Marcel Dekker, Inc., 1989)およびAnselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 6th Ed.(Media, PA: Williams & Wilkins, 1995)において見出すことができる。コーティングの厚みは、上記の通り、経口投与形態が下部腸管内の所望の局所送達の部位に届くまで完全であり続けることを保証するために十分でなければならない。
【0172】
別の態様において、本発明の処方物を内包する腸溶性コーティングされた浸透圧によって活性化されるデバイスを含む薬物投与形態が提供される。この態様において、薬物含有処方物を、小さい開口部を含む半透性の膜または障壁中にカプセル化する。いわゆる「浸透圧ポンプ」薬物送達デバイスに関して当該分野において公知であるように、半透性膜は、両方向に水を通過させるが、薬物は通過させない。したがって、デバイスが水性の液体に暴露される場合、デバイスの内部と外部との浸透圧の差に起因して、水はデバイス内へ流入する。水がデバイスに流入すると、内部の薬物含有処方物は、開口部を通って外へ「ポンプ」される。水の流入および薬物流出の速度は、デバイスの開口部の組成および大きさによって制御され得る。
【0173】
半透性膜に好適な材料は、ポリビニルアルコール、塩酸ポリビニル、半透性ポリエチレングリコール類、半透性ポリウレタン類、半透性ポリアミド類、半透性スルホン酸ポリスチレン類およびポリスチレン誘導体;半透性ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、半透性ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)、およびセルロース性ポリマー類、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、プロピオン酸セルロース、プロピオン酸セルロースアセテート、ブチル酸セルロースアセテート、三吉草酸セルロース、セルローストリルメート(trilmate)、三パルミチン酸セルロース、三オクタノン酸セルロース、三プロピオン酸セルロース、二コハク酸セルロース、二パルミチン酸セルロース、セルロースジシレート(dicylate)、コハク酸セルロースアセテート、プロピオン酸セルロースアセテートオクタノン酸セルロースアセテート、吉草酸パルミチン酸セルロース、ヘプタン酸セルロースアセテート、セルロースアセトアルデヒドジメチルアセタール、セルロースアセテートエチルカルバメート、セルロースアセテートメチルカルバメート、セルロースジメチルアミノアセテートおよびエチルセルロースを含むがこれらに限定されない。
【0174】
別の態様において、本発明の処方物を内包する持続放出コーティングされたデバイスを含む薬物投与形態を提供する。この態様において、薬物含有処方物を、持続放出性膜またはフィルム中に被包する。膜は、上記の通り半透性である。半透性膜は、コーティングされたデバイス内部に水を通過させて薬物を溶解させる。溶解した薬物溶液は、半透性膜を通って拡散する。薬物放出の速度は、コーティングされたフィルムの厚さに依存し、薬物の放出は、GI管の任意の部分において開始させることができる。かかる膜に好適な膜材料は、エチルセルロースである。
【0175】
別の態様において、本発明の処方物を内包する持続放出性デバイスを含む薬物投与形態を提供する。この態様において、薬物含有処方物は、持続放出性ポリマーと均質に混合される。これらの持続放出性ポリマーは、高分子量の水溶性ポリマーであり、水と接触した場合、膨張して、水が内部に拡散して薬物を溶解するためのチャネルを作る。ポリマーが膨張して水に溶解すると、より多くの薬物が溶解のための水に曝される。かかるシステムは、一般的に持続放出性マトリックスと呼ばれる。かかるデバイスに好適な材料は、ヒドロプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルセルロースを含む。
【0176】
別の態様において、本発明の持続放出処方物を内包する腸溶コーティングされたデバイスを含む薬物投与形態が提供される。この態様において、上記の薬物含有生成物は、腸溶性ポリマーでコーティングされる。かかるデバイスは胃においてはいかなる薬物も放出せず、デバイスが腸に到達すると腸溶性ポリマーが初めて溶解して、その後でのみ薬物の放出が開始される。薬物放出は、持続放出性の様式において行われる。
【0177】
腸溶性コーティングされ、浸透圧によって活性化されるデバイスは、従来の材料、方法、および設備を用いて製造することができる。例えば、浸透圧によって活性化されるデバイスは、第一に、医薬的に許容されるソフトカプセル中に、前に記載される本発明の化合物の液体または半固体の処方物を被包することによって作ることができる。この内側のカプセルを、次いで、半透性膜組成物(例えば、セルロースアセテートおよびポリエチレングリコール4000を、好適な溶媒、例えば、塩化メチレン−メタノール混合物中に含む)で、例えば、気圧式装置を使用して、十分に厚い積層、例えば、約0.05mm、が形成されるまでコーティングする。半透性積層カプセルを、次いで、従来の技術を用いて乾燥させる。次いで、所望の直径(例えば、0.99mm)を有する開口部を、例えば機械穿孔、レーザー穿孔、機械断裂、またはゼラチン栓などの腐食可能なエレメントの腐食を用いて、半透性積層カプセルの壁を通して提供する。
【0178】
次いで、浸透圧によって活性化されるデバイスを、上記のように腸溶性コーティングしても良い。液体または半固体の担体ではなくむしろ固体の担体を含有する浸透圧によって活性化されるデバイスについては、内側のカプセルは随意である;即ち、半透性膜は、直接的に担体薬物組成物の周囲に形成することができる。しかしながら、浸透圧によって活性化されるデバイスの薬物含有処方物における使用に好ましい担体は、溶液、懸濁液、液体、非混合性液、エマルジョン、ゾル、コロイドおよび油である。特に好まし担体は、液体または半固体の薬物処方物を含有する腸溶性コーティングされたカプセルに用いられるものを含むが、これらに限定されない。
【0179】
セルロースコーティングは、フタル酸セルロースアセテートおよびセルロースアセテートトリメリテート;メタクリル酸コポリマー類、例えば、メチルアクリル酸から誘導されるコポリマーおよびそれらのエステル類であって、少なくとも約40%のメチルアクリル酸を含むもの;ならびに特にフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースのものを含む。メチルアクリル酸は、分子量100,000ダルトン以上の分子量のものであって、例えば、約1:1の比におけるメチルアクリル酸およびメチルまたはエチルメチルアクリル酸に基づくものを含む。代表的な製品として、Rohm GmbH(ダルムシュタット、ドイツ)から市販されているEndragit L、例えば、L 100-55が挙げられる。代表的なフタル酸セルロースアセテートは、17〜26%のアセチル含有量、および30〜40%のフタル酸含有量を有し、粘度は45〜90cPである。代表的なセルロースアセテートトリメリテートは、17〜26%のアセチル含有量、および25〜35%のトリメリテート含有量を有し、粘度はおよそ15〜20cSである。セルロースアセテートトリメリテートの例は、市販の製品CAT(Eastman Kodak Company、USA)である。
【0180】
フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、典型的には、20,000〜130,000ダルトンの分子量を有し、5〜10%のヒドロキシプロピル含有量、18〜24%のメトキシ含有量、および21〜35%のフタル酸含有量を有する。フタル酸セルロースアセテートの例は、市販の製品CAP(Eastman Kodak、Rochester N.Y.、USA)である。フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの例は、Shin-Etsu Chemical Co. Ltd., Tokyo, Japanから入手可能な6〜10%のヒドロキシプロピル含有量、20-24%のメトキシ含有量、21-27%のフタル酸含有量、84,000ダルトンの分子量を有し、HP50の商品名で販売される市販の製品、ならびに、各々5〜9%、18〜22%および27〜35%の、ヒドロキシプロピル含有量、メトキシ含有量およびフタル酸含有量、ならびに78,000ダルトンの分子量を有し、HP55の商品名で同じ供給者から入手可能な市販の製品である。
【0181】
処置剤を、カプセル中で、コーティングしてまたはコーティングしないで提供してもよい。カプセル材料は、硬質または軟質のいずれであってもよく、当業者に理解されるように、典型的には、ゼラチン、デンプン、またはセルロース性の材料などの無味で容易に投与される水溶性化合物を含有する。カプセルは、好ましくはゼラチン帯などで密封される。例えば、カプセル化医薬剤の調製のための材料および方法を記載するThe Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Edition (Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 1995)を参照。
【0182】
本発明の処置剤(単数または複数)を含有する生成物を、坐剤として形成してもよい。本発明の処置剤(単数または複数)を、処置剤(単数または複数)の相対的放出に好ましい影響を与えるように、坐剤中または坐剤上のどこに位置させてもよい。放出の性質はまた、所望の通り、ゼロ次であっても、一次であっても、またはシグモイドであってもよい。
【0183】
坐剤は、直腸を介する投与のために意図される医薬の固形投与形態である。坐剤は、体腔(約98.6°F)中で融解、軟化、または溶解し、それによって含有される医薬を放出するように配合される。坐剤の基剤は、安定、非刺激性、化学的不活性、および生理学的不活性であるべきである。多数の市販の坐剤は、カカオバター、ココナッツ油、パーム穀粒油などの油性または脂性のベース材料を含み、これらは、しばしば室温で融解または変形し、保冷または他の保存の制限を必要とする。Tanakaらへの米国特許第4,837,214号は、20またはそれより小さいヒドキシル値を有し、8〜18炭素原子を有する脂肪酸のグイセリドを含有する、80〜99重量%のラウリン酸型の脂質を、1〜20重量%の脂肪酸のジグリセリド(エルカ酸が例である)と組み合わせて含む、坐剤の基剤を記載する。これらの型の坐剤の有効期限は、分解に起因して制限される。他の坐剤の基剤は、アルコール、界面活性剤などを含有し、これらは融点を上昇させるが、また、医薬の吸収の低下、および局所粘膜の刺激に起因する副作用をもたらし得る(例えば、Hartelendyらへの米国特許第6,099,853号、 Ahmadらへの米国特許第4,999,342号、およびAbidiらへの米国特許第4,765,978号を参照)。
【0184】
本発明の医薬坐剤組成物において使用される基剤は、一般に、主成分としてトリグリセリド、ココアバター、パーム油、パーム穀粒油、ココナッツ油、ヤシ油(fractionated coconut oil)、ラードおよびWITEPSOL(登録商標)、ラノリンおよび還元ラノリンなどのワックス;VASELINE(登録商標)、スクアレン、スクアランおよび液体パラフィンなどの炭化水素;カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸およびオレイン酸などの長鎖および中鎖の脂肪酸;ラウリルアルコール、セタノールおよびステアリン酸アルコールなどの高級アルコール;ステアリン酸ブチルおよびマロン酸ジラウリルなどの脂肪酸エステル;トリオレインおよびトリステアリンなどの中鎖から長鎖のグリセリンのカルボン酸エステル;グリセリンアセトアセテートなどのグリセリン置換カルボン酸エステル;ならびにマクロゴール類およびセトマクロゴールなどのポリエチレングリコールおよびその誘導体を含む油および脂質を含む。これらは、単独で、または二つ以上の組み合わせのいずれかで使用することができる。所望の場合、本発明の組成物は、坐剤において通常用いられる表面活性剤、着色剤などをさらに含んでもよい。
【0185】
本発明の医薬組成物は、前もって決定された量の活性成分、吸収補助剤および必要に応じて基剤などを、スタラーまたは製粉機において、必要であれば高温で、均質に混合することによって調製することができる。生じる組成物を、例えば、混合物を鋳型で成型(cast)することによって、またはカプセル充填機を用いてゼラチンカプセル中に形成することによって、単位投与形態の坐剤を形成する。
【0186】
本発明による組成物はまた、鼻用スプレー、点鼻剤、懸濁液、ゲル、軟膏、クリームまたは散剤として投与してもよい。組成物の投与はまた、本発明の組成物を含有する鼻用タンポンまたは鼻用スポンジを用いることを含んでもよい。
【0187】
本発明とともに用いることができる経鼻送達システムは、水性製剤、非水性製剤およびこれらの組み合わせを含む多様な形態をとることができる。水性製剤は、例えば、水性ゲル、水性懸濁液、水性リポソーム分散剤、水性エマルジョン、水性マイクロエマルジョンおよびこれらの組み合わせを含む。非水性製剤は、例えば、非水性ゲル、非水性懸濁液、非水性リポソーム分散剤、非水性エマルジョン、非水性マイクロエマルジョンおよびこれらの組み合わせを含む。経鼻送達システムの種々の形態は、pHを維持するための緩衝液、薬学的に受容可能な濃縮化剤、および湿潤剤を含むことができる。緩衝液のpHは、鼻粘膜を越えての処置剤(単数または複数)の吸収を最適化するために選択することができる。
【0188】
非水性鼻用処方物に関して、処方物が哺乳動物の鼻腔に送達された場合に、そこで例えば鼻粘膜と接触する際に選択されたpHの範囲が達成されるように、緩衝剤の好適な形態を選択してもよい。本発明において、組成物のpHは、約2.0〜約6.0に維持されるべきである。組成物のpHが、投与の際にレシピエントの鼻粘膜に著しい刺激を引き起こさないものであることが望ましい。
【0189】
本発明の組成物の粘度は、医薬的に許容される増粘剤を用いることによって、所望のレベルで維持することができる。本発明に従って用いることができる増粘剤は、メチルセルロース、キサンタンゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸類、アラビアゴム、キトサン類、およびこれらの組み合わせを含む。増粘剤の濃度は、選択された剤および所望の粘度に依存する。かかる剤はまた、上記の散剤処方物において使用してもよい。
【0190】
本発明の組成物はまた、粘膜の乾燥を低減または予防するため、およびその刺激を予防するために湿潤剤を含んでもよい。本発明において使用することができる好適な湿潤剤は、ソルビトール、ミネラルオイル、植物油、およびグリセロール;無痛化剤;膜コンディショナー;甘味剤;およびこれらの組み合わせを含む。本組成物中の湿潤剤の濃度は、選択される剤に依存して変化する。
1または2以上の処置剤を経鼻送達システムまたは本明細書中に記載の任意の他の送達システムに組み込んでもよい。
【0191】
局所投与のために処方される組成物は、液体であっても半固体(例えば、ゲル、ローション、エマルジョン、クリーム、軟膏、スプレーまたはエアロゾルが挙げられる)であっても、「有限(finite)」の担体、例えばその形態を保持する非拡散性材料(例えば、貼付剤、生体接着材料、包帯剤または絆創膏を含む)と組み合わせて提供してもよい。それは、水性であっても非水性であってもよい;それは、溶液、エマルジョン、分散剤、懸濁液または任意の他の混合物として処方してもよい。
【0192】
重要な投与の様式として、皮膚、眼または粘膜への局所適用が挙げられる。したがって、典型的なビヒクルは、新体表面への医薬適用または化粧品適用に好適なものである。本明細書において提供される組成物は、患者の身体における多様な領域に局所または局所的に適用することができる。上記のように、局所適用とは、到達可能な身体表面の組織、例えば、皮膚(外側の外皮または被覆物)および粘膜(粘液を産生、分泌および/または含有する表面)に適用することを指すことを意図する。例示的な粘膜表面は、眼、口(口唇、舌、歯茎、頬、舌下および口蓋など)、喉頭、食道、気管支、膣および直腸/肛門の粘膜表面を含む;いくつかの態様においては、好ましくは、口、喉頭、食堂、膣および直腸/肛門である;他の態様においては、好ましくは、眼、喉頭、食道、気管支、鼻腔、および膣および直腸/肛門である。上記のように、本明細書において、局所的投与とは、身体の別々の領域、例えば、関節、軟組織領域(筋肉、腱、靱帯、眼内のまたは他の肉質の内部領域など)、または身体の他の内部領域などへの適用を指す。したがって、本明細書において使用される場合、局所的適用とは、身体の別々の領域への適用を指す。
【0193】
本組成物の局所および/または局所的投与に関して、望ましい効力は、例えば、痛覚過敏部位へ実質的に到達して所望の抗痛覚過敏性の疼痛緩和をもたらすような、本発明の処置剤(単数または複数)の皮膚および/または組織への浸透を含み得る。本組成物の効力は、例えば、中枢性オピオイドによって達成されるものとほぼ同じであってよい。しかし、本明細書において詳細に考察されるように、本発明の処置剤(単数または複数)は血液脳関門を越えないと考えられるので、本発明の処置剤(単数または複数)によって達成される効力は、好ましくは、典型的に中枢性オピエートと関連する望ましくない作用、例えば、呼吸低下、鎮静、および中毒、を伴わずに得ることができる。
【0194】
また、水性ビヒクルを伴う態様を含む特定の好ましい態様において、組成物はまた、2以上のヒドロキシル基を含む化合物であるグリコールを含んでもよい。組成物における使用に特に好ましいグリコールは、プロピレングリコールである。これらの好ましい態様において、グリコールは、好ましくは、組成物の全重量に基づいて0重量%より多くから約5重量%までの濃度で、組成物中に含まれる。さらに好ましくは、組成物は、約0.1重量%から約5重量%未満までのグリコールを含み、約0.5〜約2重量%がさらにより好ましい。なおより好ましくは、組成物は約1重量%のグリコールを含む。
【0195】
関節内投与などの局所的内部投与のため、組成物を、好ましくは、等張性に緩衝化された食塩水などの水性ベースの媒体中で溶液または懸濁液として処方するか、または内部投与のために意図される生体適合性の支持体または生体接着物と組み合わせる。
【0196】
ローションは、例えば、懸濁液、分散剤またはエマルジョンの形態であり得、1または2以上の化合物の有効濃度を含有する。有効濃度は、好ましくは、有効量をもたらすものであり、典型的には、本発明明細書において提供される1または2以上の化合物の約0.1〜50(重量)%またはそれより高い濃度である。ローションはまた、(重量で)1%〜50%の軟化剤およびバランス水(balance water)、好適な緩衝剤、および上記の他の剤を含んでもよい。
【0197】
ヒトの皮膚への適用に適するとして当業者に公知のあらゆる軟化剤を使用することができる。これらは、以下を含むがこれらに限定されない:(a)ミネラルオイル、ワセリン、パラフィン、セレシン、オゾケライト、微結晶ワックス、ポリエチレンおよびペルヒドロスクアラン(perhydrosqualene)を含む、炭化水素の油類およびワックス類。b)ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、水溶性およびアルコール可溶性のシリコーン−グリコールコポリマーを含む、シリコーンオイル類。(c)植物、動物、および海洋の供給源から誘導されるものを含む、トリグリセリドの脂質類および油類。例は、ヒマシ油、紅花油、綿実油、コーン油、オリーブ油、肝油(cod liver oil)、アーモンド油、アボガド油、パーム油、ゴマ油、および大豆油を含むが、これらに限定されない。
【0198】
(d)アセチル化モノグリセリドなどのアセトグリセリドエステル類。(e)エトキシ化モノステアリン酸グリセリルなどのエトキシ化グリセリド類。(f)10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルキルエステル類。脂肪酸のメチル、イソプロピルおよびブチルエステルが、本明細書において有用である。例は、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミスチリン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、イソステアリン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、アジピン酸ジヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチルを含むが、これらに限定されない。(g)10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルエステル類。その例は、ミリスチル酸オレイル、ステアリン酸オレイル、およびオレイン酸オレイルを含むが、これらに限定されない。
【0199】
(h)9〜22個の炭素原子を有する脂肪酸類。好適な例は、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸(hydroxystearic)、オレイン酸、リノレン酸、リシノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸、およびエルカ酸を含むが、これらに限定されない。(i)10〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール類、例えば、非限定的に、ラウリル、ミリスチル、セチル、ヘキサデシル、ステアリル、イソステアリル、ヒドロキシステアリル、オレイル、リシノレイル(ricinoleyl)、ベヘニル(behenyl)、エルシル(erucyl)、および2−オクチルドデシルアルコール類。(j)例えば、1〜50のエチレンオキシド基または1〜50のプロピレンオキシド基またはこれらの混合物が結合しているラウリル、セチル、ステアリル、イソステアリル、オレイル、およびコレステロールアルコールを含むが、これらに限定されない、10〜20個の炭素原子のエトキシ化脂肪族アルコールを含むが、これに限定されない、脂肪族アルコールエステル類。(k)エトキシ化脂肪族アルコールの脂肪酸エステル類などのエーテル−エステル類。
【0200】
(l)以下を含むがこれらに限定されないラノリンおよび誘導体:ラノリン、ラノリン油、ラノリンワックス、ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸、ラノリン酸(lanolate)イソプロピル、エトキシ化ラノリン、エトキシ化ラノリンアルコール類、エトキシ化コレステロール、プロポキシ化ラノリンアルコール類、アセチル化ラノリン、アセチル化ラノリンアルコール、リノレン酸ラノリンアルコール、リシノール酸(ricinoleate)ラノリンアルコール、リシノール酸ラノリンアルコール類のアセテート、エトキシ化アルコール−エステル類のアセテート、ラノリンの水素化分解物、エトキシ化水素分解ラノリン、エトキシ化ソルビトールラノリン、ならびに液体および半固体のラノリン吸収基剤。
【0201】
(m)以下を含むがこれらに限定されない多価アルコール類およびポリエステル誘導体:プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール[M.W.2000〜4000]、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール、グリセロール、エトキシ化グリセロール、プロポキシ化グリセロール、ソルビトール、エトキシ化ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ポリエチレングリコール[M.W.200〜6000]、メトキシポリエチレングリコール350、550、750、2000、5000、ポリ(エチレンオキシド)ホモポリマー類[M.W.100,000〜5,000,000]、ポリアルキレングリコール類および誘導体、ヘキシレングリコール(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)、1,3−ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、エトヘキサジオールUSP(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、C.sub.15〜C.sub.18ビシナルグリコール(vicinal glycol)、ならびにトリメチルオールプロパンのポリオキシプロピレン誘導体。
【0202】
(n)以下を含むがこれらに限定されない多価アルコールエステル類:エチレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ジエチレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール[M.W.200〜6000]、一または二脂肪酸エステル、プロピレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノオレイン酸、ポリプロピレングリコール2000モノステアリン酸、エトキシ化プロピレングリコールモノステアリン酸、グリセリルの一または二脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ脂肪酸エステル、エトキシ化グリセリルモノステアリン酸、1,3−ブチレングリコールモノステアリン酸、1,3−ブチレングリコールジステアリン酸、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル。
【0203】
(o)以下を含むがこれらに限定されないワックスエステル類:蜜蝋、鯨蝋、ミリスチル酸ミリスチル、およびステアリン酸ステアリル、ならびに以下を含むがこれらに限定されない蜜蝋誘導体:蜜蝋とエーテル−エステル類の混合物を形成する多様なエチレンオキシド含有物のエトキシ化ソルビトールとの反応生成物である、ポリオキシエチレンソルビトール蜜蝋。(p)カルナバワックスおよびカンデリラワックスを含むが、これらに限定されない植物ワックス類。(q)レシチンおよび誘導体などのリン脂質類。(r)コレステロールおよびコレステロール脂肪酸エステル類を含むが、これらに限定されない、ステロール類が。(s)脂肪酸アミド、エトキシ化脂肪酸アミド、および固体の脂肪酸アルカンオールアミドなどのアミド類。
【0204】
ローションは、好ましくは、(重量で)1%〜10%、より好ましくは2%〜5%の、乳化剤をさらに含む。乳化剤は、非イオン性、アニオン性またはカチオン性であってよい。十分に非イオン性である乳化剤の例は、10〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、10〜20の炭素原子を有する脂肪族アルコールであって、2〜20モルのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドで濃縮されたもの、アルキル鎖中に6〜12の炭素原子を有するアルキルフェノールであって、脂肪酸部分が10〜20個の炭素原子を含有する2〜20モルのエチレンオキシド、エチレンオキシドの一および二脂肪酸エステル、エチレングリコールの一および二脂肪酸エステルで濃縮されたもの、ジエチレングリコール、分子量200〜6000のポリエチレングリコー、分子量200〜3000のルプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレンソルビタンならびに親水性ワックスエステル類を含むが、これらに限定されない。
【0205】
好適なアニオン性乳化剤は、脂肪酸石鹸、例えば、ナトリウム、カリウム、およびトリエタノールアミンの石鹸であって、脂肪酸部分が10〜20個の炭素原子を含むものを含むが、これらに限定されない。他の好適なアニオン性乳化剤は、アルカリ金属、アンモニウムまたは置換アンモニウムの硫酸アルキル、アルキルアリールスルホネート、およびアルキル部分において10〜30個の炭素原子を有するアルキルエトキシエーテルスルホネートを含むが、これらに限定されない。アルキルエトキシエーテルスルホネートは、1〜50のエチレンオキシド単位を含む。良好なカチオン性乳化剤の中では、四級アンモニウム、モルホリン(morpholinium)化合物およびピリジニウム化合物である。先の段落において記載される軟化剤の特定のものもまた、乳化特性を有する。かかる軟化剤を含有するローションを処方する場合、さらなる乳化剤は必要でないが、組成物に含めてもよい。
【0206】
ローションのバランス(balance)は、水またはCもしくはCアルコール、または水とアルコールとの混合物である。ローションは、単純に全ての成分を共に混合することによって処方する。好ましくは、ロペラミドなどの化合物は、混合物中に溶解、懸濁、またはさもなくば均質に分散させる。
【0207】
かかるローションの他の従来の成分を含んでもよい。かかる添加物の一つは、組成物の1重量%〜10重量%のレベルでの増粘剤である。好適な増粘剤は、架橋されたカルボキシポリメチレンポリマー類、エチルセルロース、ポリエチレングリコール類、トラガカントガム、カラヤガム(gum kharaya)、キサンタンガム、およびベントナイト、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースを含むが、これらに限定されない。
【0208】
クリームは、本発明の処置剤(単数または複数)の有効量を処置される組織へ送達するために有効な濃度、典型的には、約0.1%、好ましくは1%より高くから50%より高くまで、好ましくは約3%と50%との間で、より好ましくは約5%と15%との間で、本発明の処置剤(単数または複数)を含むように処方され得る。クリームはまた、5%〜50%、好ましくは10%〜25%の軟化剤を含み、残りは水または等張性緩衝液などの他の好適な非毒性担体である。ローションに関して上記した軟化剤を、クリーム組成物において使用してもよい。クリームはまた、上記のような好適な乳化剤を含んでもよい。乳化剤は、3%〜50%、好ましくは5%〜20%のレベルで、組成物中に含まれる。
【0209】
溶液または懸濁液として処方されるこれらの組成物は、皮膚に適用してもよく、または、エアロゾルもしくは発泡体として処方してスプレー式(spray-on)として皮膚に適用してもよい。エアロゾル組成物は、典型的に(重量で)25%〜80%、好ましくは30%〜50%の好適な噴霧剤を含む。かかる噴霧剤の例は、塩化、フッ化、および塩化フッ化された低分子炭化水素である。亜酸化窒素、二酸化炭素、ブタン、およびプロパンもまた、噴霧剤ガスとして使用される。これらの噴霧剤は、当該分野において理解されるように、容器の含有物を排出するために好適な量および圧力下において使用される。
【0210】
好適に調製された溶液および懸濁液はまた、代表的には、眼および粘膜に適用することができる。溶液、特に眼科での使用のために意図されるものは、0.01%〜10%の等張性溶液として、約5〜7のpHで、適当な塩を用いて処方され、好ましくは、本明細書中の1または2以上の化合物を、約0.1%、好ましくは1%より高くから50%またはそれ以上までの濃度で含む。好適な眼科用溶液は、公知である(例えば、代表的な眼科用の洗浄溶液および局所適用のための溶液を記載する米国特許第5,116,868号を参照)。かかる溶液は、約7.4に調節されたpHを有し、例えば、90〜100mMの塩化ナトリウム、4〜6mMの二塩基リン酸カリウム、4〜6mMの二塩基リン酸ナトリウム、8〜12mMのクエン酸ナトリウム、0.5〜1.5mMの塩化マグネシウム、1.5〜2.5mMの塩化カルシウム、15〜25mMの酢酸ナトリウム、10〜20mMのD.L.−ナトリウム、β−ヒドロキシブチレート、および5〜5.5mMのグルコースを含む。
【0211】
ゲル組成物は、単純に、好適な増粘剤を先に記載した溶液または懸濁液の組成物に混合することによって処方することができる。好適な増粘剤の例は、ローションと関連して先に記載した。
ゲル化組成物は、本発明の処置剤の有効量を含み、典型的には、約0.1〜50重量%またはそれ以上の間の濃度での本明細書において提供される1または2以上の化合物;約5%〜75%、好ましくは10%〜50%の前記のような有機溶媒;0.5%〜20%、好ましくは1%〜10%の増粘剤;バランス(balance)は、水または他の水性もしくは非水性担体、例えば、有機性液体、または担体の混合物などである。
【0212】
処方物は、定常状態血漿レベルを作るために構築して準備してもよい。定常状態血漿レベル濃度は、当業者に公知であるように、HPLC技術を用いて測定することができる。定常状態は、薬物アベイラビリティの速度が循環からの薬物除去の速度と等しい場合に達成される。典型的な処置設定において、本発明の処置剤(単数または複数)は、周期的投与レジメンまたは一定注入レジメンを用いてのいずれかで、患者に投与される。血漿における薬物の濃度は、投与の開始の直後に上昇する傾向があり、細胞および組織中への分布によって、代謝によってまたは排出によって薬物が循環から除去されるにつれて、時間とともに低下する傾向がある。
【0213】
定常状態は、平均薬物濃度が長期間一定であり続ける場合に得られる。間欠的投与の場合において、薬物濃度周期のパターンは、用量間の各間期において同一に繰り返され、平均濃度は一定であり続ける。一定注入の場合において、平均薬物濃度は、一定であり続け、変動は非常に小さい。定常状態の達成は、血漿中の薬物の濃度を、周期が用量ごとに同一に繰り返されることを検証できるように、少なくとも一周期の投与に渡って測定することによって決定する。典型的には、間欠的投与レジメンにおいて、定常状態の維持は、別の用量の投与の直前での一周期の連続的なトラフでの薬物濃度を決定することによって検証することができる。濃度の変動が低い一定注入レジメンにおいて、定常状態は、任意の2回の薬物濃度の連続測定によって検証することができる。
【0214】
図8は本発明のキットを示す。キット10は、オピオイドタブレットを含むバイアル12を含む。キット10は、胃でR−MNTXを即座に放出するように構成および整えられたペレットを含むR−MNTXタブレットを含むバイアル14も含む。キットは、便秘である被験体またはペンぴまたは胃腸不動の症状を有する被験体にタブレットを投与するための使用説明書20も含む。使用説明書は、R−MNTXがS−MNTXの存在しない純粋なR−MNTXであることを示す証印、例えば文章を含む。
【0215】
本発明のある側面において、キット10は、任意にまたは代替え的に医薬製剤バイアル16、および医薬製剤希釈剤バイアル18を含むことができる。医薬製剤のための希釈剤を含むバイアルは任意的である。希釈剤バイアルは、R−MNTXの濃縮液または凍結乾燥粉末でありえるものを希釈するために、生理食塩水などの希釈剤を含む。使用説明書は、特定量の濃縮医薬製剤と特定量の希釈剤を混合するための指示を含むことができ、それによって注射または注入のための最終処方物を調製する。使用説明書20は、有効量のR−MNTXで患者を処置するための指示を含むことが出来る。調製物を含む容器は、この容器がボトル、隔膜を有するバイアル、隔膜を有するアンプル、輸液バッグなどであれ、調製物が高圧蒸気滅菌処理さもなければ殺菌された場合に色を変える従来のマークなどのさらなる証印を含むことができる。
【0216】
本発明は、その適用を、以下の記載に記述されるまたは図に示される説明の詳細および構成要素の配列に限定されない。本発明は、他の態様および多様な方法において実施および実行されることが可能である。また、本明細書において使用される語法および専門用語は、説明のためのものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書における、「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」およびそれらの変化形は、以下に列挙される事項およびそれらの等価物ならびにさらなる事項を包含することを意味する。
【0217】

例1
R−およびS−MNTXのHPLC分析
HPLC分析を、以下の方法を用いた、Varian Starソフトウェアによって制御されるVarian ProStar HPLCで行った:
HPLC方法I
カラム: Luna C18(2)、150×4.6mm、5μ
流速: 1mL/分
検出: UV@230nm
【0218】
【表2】

【0219】
移動相A=0.1%水性TFA
移動相B=0.1%メタノールTFA
TFA=トリフルオロ酢酸
【0220】
HPLC方法II
クロマトグラフィーの条件およびパラメーター:
分析カラムの説明:Phenomenex Inertsil ODS-3 150x4.6mm、5μm;
カラム温度:50.0℃;流速:1.5mL/分;注入量:20μL;検出波長:280nm 移動層:A=水:MeOH:TFA(95:5:0.1%;v/v/v) B=水:MeOH:TFA(35:65:0.1%;v/v/v)
分析時間:50分
定量限界:0.05%
検出限界0.02%
【0221】
【表3】

【0222】
移動相A(水:MeOH:TFA::95:5:0.1%,v/v/v)
移動相B(水:MeOH:TFA::35:65:0.1%,v/v/v)
MeOH=メタノールTFA=トリフルオロ酢酸
【0223】
R−MNTXの合成および精製を、上記のHPLCプロトコルを用いて観測した。S−MNTXは、上記のHPLC条件を用いて、R−MNTXから区別する。標準物質として用いるための真の(authentic)S−MNTXは、本明細書に記載のプロトコルを用いて製造されてもよい。典型的なHPLC流出入において、S−MNTXは、R−MNTXが溶出する約0.5分前に溶出する。S−MNTXの保持時間はおよそ9.3分である;R−MNTXの保持時間は約9.8分である。
【0224】
図2に図解するように、MNTXのS体およびR体は、HPLCクロマトグラムにおいてはっきりと区別することができる。図3は、0.1重量%の真のS体を99.5重量%の真のR体に加えた混合物のHPLCクロマトグラムである。図4は、1.0重量%の真のS体を99.0重量%の真のR体に加えた混合物のクロマトグラムである。図5は、3.0重量%の真のS体を98.0重量%の真のR体に加えた混合物のクロマトグラムである。これは、出願人らが、高純度R−MNTXを3−O−保護−ナルトレキソンから合成し精製するための立体選択的なプロトコルについて考案し試験することを、初めて可能にした。
【0225】
例2
R−MNTXの立体選択的合成
例2の合成スキームを図6に示す。
一般:全ての無水反応を炉乾(130℃)ガラス製品において、乾燥窒素(N)の雰囲気下で行った。全ての市販の試薬および溶媒は、さらなる精製なしに使用した。核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、Varian GeminiまたはVarian Mercury 300 MHzスペクトロメータのいずれかを用いて得た。質量スペクトルは、Finnigan LCQで測定した。HPLC純度は、Waters 717 AutosamplerおよびWaters 996 Photodiode Array Detectorを用いて測定した。
【0226】
3−O−イソブチリル−ナルトレキソン(2)。
化合物(1)(1.62g,4.75mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF)(120mL)溶液へ、0℃でトリエチルアミン(NEt3)(1.4mL,10mmol)を加えた。反応物を15分間、0℃で撹拌した後、塩化イソブチリル(1.05mL,10mmol)を滴下で加えた。反応混合物を0℃で1時間、そして室温で18時間撹拌し、飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO)(aq)(70mL)および30mlのHOでクエンチした。反応物を塩化メチレン(CHCl)(2x200mL)で抽出した。抽出物を混ぜ合わせ、塩水(130ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム(NaSO)(50g)で乾燥し、真空内で濾過し濃縮した。粗製品をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(カラムサイズ40X450mm,シリカゲルを40X190mm充填したもの)(9.8:0.2→9.6:0.4→9.4:0.6CHl2/MeOH)で精製し、化合物(2)(1.5g76.8%)を白色固体として得た。
【0227】
H NMR(300M Hz,CDCl)δ6.82(d,J=8.0Hz,1H),6.67(d,J=8.0Hz,1H),4.69(s,1H),3.21(d,J=6.0Hz,1H),3.12−2.96(m,2H),2.93−2.82(m,1H),2.71(dd,J=4.5Hz,1H),2.62(dd,J=6.2Hz,1H),2.48−2.28(m,4H),2.19−2.10(m,1H),1.93−1.86(m,1H),1.68−1.59(m,2H),1.34(d,J=0.8Hz,3H,CH−イソブチリル),1.31(d,J=0.8Hz,3H,CH−イソブチリル),0.90−0.83(m,1H,CH−シクロプロピル),0.60−0.54(m,2H,CH−シクロプロピル),0.18−0.13(m,2H,CH2−シクロプロピル).13CNMR(75.5MHz,CDCl)δ207.6(CO),174.7(COO/Pr)147.8,132.8,130.1,130.0,122.8,119.2,90.5,70.0,61.9,59.2,50.6,43.4,36.1,33.8,31.2,30.7,22.9,19.0,18.9,9.4,4.0,3.8.MS[M+H]:412.
【0228】
3−O−イソブチリル−N−メチルナルトレキソンヨウ化物塩(3)。
化合物(2)(689mg,1.67mmol)をスパチュラでガラス圧力容器へ移動した。容器をマニホールドにおいて5分間窒素で穏やかにパージし、高真空で真空にした。真空が一定となったとき場合、容器の下部を液体窒素に浸した。ヨウ化メチル(973mg,6.85mmol)をマニホールド上の別のフラスコへ窒素雰囲気中に分注し、液体窒素で凍結した。凍結ヨウ化メチル容器を高真空下で真空にした。主マニホールドチャンバーを高真空ポンプから分離した。ヨウ化メチルを周辺温度まで加温させ、液体窒素冷却した3−O−イソブチリル−ナルトレキソンに主チャンバーを介して昇華させた。
【0229】
昇華が完了すると、窒素をガラス圧力容器へゆっくりと浸出させた。そして容器を密封し、マニホールドから外し、88〜90℃で17時間油槽で加熱した。窒素を容器に流れ込ませる前に、容器を周辺温度まで冷却させた。そして容器を高真空下で真空にし、不反応ヨウ化メチルの残留物を取り除き、白色固体を得た。固体のサンプルをH NMR分析のために取り除いた。これは優れた生成物への変換を示した。生成物の薄層クロマトグラフィー(TLC)[ジクロロメタン/メタノール9:1(v/v),順相シリカ,UV検出]は、出発材料(2)(R=0.8)の痕跡および拡散領域(R=0〜0.4)を示した。
【0230】
固体をジクロロメタン/メタノール(4:1、最小体積)に溶解し、シリカゲルカラム(超高純度シリカゲル、ジクロロメタン中に22g、床寸法:200mmx20mm内径)に適用した。カラムは以下のように溶出した:
ジクロロメタン/メタノール98:2(300ml)
ジクロロメタン/メタノール97:3(300ml)
ジクロロメタン/メタノール94:6(200ml)
ジクロロメタン/メタノール92:8(400ml)
【0231】
分画をTLC[ジクロロメタン/メタノール9:1(v/v),順相シリカ,UV検出]で分析した。主成分のみを含んでいる分画(R=0.4)を混ぜ合わせてメタノールで共にリンスし、濃縮し、867mgの白色固体を得た。これは3−O−イソブチリル−ナルトレキソンに基づいて91%の収率を表す。H NMRは一貫している。
【0232】
N−メチルナルトレキソン臭化物/ヨウ化物塩(4)。
化合物(3)(862mg,1.56mmol)をメタノール(13ml)に溶解した。この混合物に滅菌水(11.5ml)を加え、続けて48%水性臭化水素酸(1.5ml)を加えた。得られた混合物を窒素下で撹拌し、油槽で64〜65°Cで6.5時間加熱した。(メタノールに分散した)反応混合物のサンプルのTLC分析は、残留した出発材料(3)(R=0.4)を示さず、R=0〜0.15での材料への変換を示した。混合物を22〜25℃のバスを有する回転型蒸発器で、およそ1mlの油性液体が残るまで濃縮した。アセトニトリル(10ml)を加え、混合物を再濃縮した。10mlのアセトニトリルを用いて、これを更に3回繰り返し、ジンジャー色のクリスプな発泡体(590mg,86%粗収率)を得た。
【0233】
アニオン交換樹脂カラムの調製。
30gのAG 1−X8樹脂を中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)カラム(20mm内径)に、100mlの水を用いて充填し、樹脂スラリーを作った。樹脂床を1.0N水性臭化水素酸(200ml)で、次いで滅菌水で、水性溶出液のpHがpH6〜7になるまで洗浄した。およそ1.5Lの水が必要であった。
【0234】
N−メチルナルトレキソン臭化物(5)。
発泡体(4)(597mg)を水(6ml)/メタノール(2ml)中に分散した。いくらかの暗色の油が溶解せずに残った。透明な上清を調製したアニオン交換樹脂カラムに静かに注ぎ込み適用した。残留物をメタノール(0.2ml)/水(3ml)で2度洗浄した。脱離液をカラムに適用した。カラムを4.2Lの滅菌水で溶出し、〜20mlの画分を集めた。N−メチルナルトレキソン塩の存在を液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)によって検出した。N−メチルナルトレキソンの大部分は、最初の1.5Lの溶出液にあり、TLC(4:1ジクロロメタン/メタノール,順相シリカ)により、そのうち最初の600mlが最も純粋な材料を含んでいた。最初の600mlの溶出液を混ぜ合わせ、回転型蒸発器で濃縮し、白みがかったガラスを得た。水槽を〜35度に保持した。蒸発させながら溶出液の泡立ちを制御するために、注意が必要であった。
【0235】
N−メチルナルトレキソン臭化物(5)の調製。メタノールからの再結晶。
残留物を、窒素下のメタノール(60ml)中で還流の直下まで加温し、そしてガラスシンターを通して、少量の不溶性材料を取り除いた。この濾液を窒素の流束中でにおよそ10mlまでブローダウンさせ、そして氷/水中で窒素下で冷却した。いくらかの白色沈殿物が形成したが、明らかに大量の固体が溶液に残った。次いで、混合物を蒸発によって濃縮し、わずかに色づいたゴムを得た。これをメタノール(3mlx2)を用いて砕いた。粉砕の合間に、メタノールを注意深くピペットで注いだ。白色残留物をメタノール(60ml)に溶解し、ガラスシンターを通して濾過した。濾液をおよそ1mlまで濃縮し、さらにメタノール(1ml)の一部を加えて、固体を砕いた。脱離液を前述のように静かに注いだ。固体を乾燥し、白色固体、バッチA(178.0mg)を得た。HPLC分析は、97.31%のR−MNTX、および2.69%のS−MNTXを示した。
【0236】
メタノール中の全ての濾液/脱離液を混ぜ合わせ、濃縮し、白色ガラスを得た。この残留物をメタノール(3mlx2)を用いて砕き、前述のように注意深く脱離液を取り除いた。残留物をメタノール(50ml)に溶解し、ガラスシンターを通して濾過した。濾液を濃縮し、およそ1mlの溶液を得て、さらにメタノール(1ml)の一部を加えて、固体を砕いた。前述のように脱離液を静かに注ぎ、残留物をさらにメタノール(2ml)を用いて砕いた。脱離液を静かに注ぎ、残留物を乾燥し、白色固体、バッチB(266.0mg)を得た。バッチBのHPLC分析は、97.39%のR−MNTX、および2.61%のS−MNTXを示した。バッチAおよびBは共に全収率436.8mg(64%)を示した。H NMRは一貫している。MS[M+H]:356。
【0237】
バッチAおよびBで実証されたように、メタノールからの再結晶は、高率のR−MNTXの生成物をもたらす。14CH−標識材料を用いて、同じ条件下で行われた反応において、メタノールからの再結晶前の粗反応混合物の組成物は94.4%のR−MNTXおよび4.7%のS−MNTXであることが分かった。メタノールからの再結晶は、98.0%のR−MNTXおよび1.5%のS−MNTXを含む生成物をもたらした。メタノールからの2度目の再結晶は、98.3%のR−MNTXおよび1.2%のS−MNTXをもたらした。
【0238】
当然のことながら、当該合成プロトコルは、少ない率のS体のみを有する、94%より多いR体をもたらすと考えられる。合成スキーム1を用いて、実質的に純粋な材料を、クロマトグラフィーカラム、調製HPLCまたは再結晶でさらに処理することが可能である。イオン交換に続いての1回の再結晶において、R体の純度は98%より高かった。2度目の再結晶は、98.3%のR−MNTXをもたらした。1〜4の間のどこかの(あるいは6、または10もの)回数の、さらなる再結晶および/またはクロマトグラフィーが、99.95%以上のR体を保証し、存在する場合にはS体の痕跡を消すと考えられる。
【0239】
例3
R−MNTXの立体選択的合成
例3に関する合成スキームを図7に示す。例3において、保護基に関してGoldbergらの教示した方法に従った。Goldbergらの好ましい保護基であるアセチルを、イソブチリルの代わりに保護基として用いた。反応は例2に記載した通りに行った。驚くべきことに、図7に示したスキームを用いて、2(O−アセチル−ナルトレキソン)の生成の間にアセチル保護基が落ちる傾向があることを見出した。これは純粋な中間体2を得ることを困難にする。アセチル基を用いての中間体2の収率は、たったの36.3%であり、図7に示したスキームを商業的スケールアップに不適切にした。対照的に、イソブチリルを保護基として用いると(図6)、中間体2(3−O−イソブチリル−ナルトレキソン)は精製の間かなり安定し、76.8%の収率をもたらした。
【0240】
例4
R−MNTXの医薬処方物の製造方法
製造方法を以下のように要約できる:
1.必要な量の注射のための水をステンレス製タンクに加える(〜80%または最終容量)。
2.タンクにキレート剤を加え、溶解するまで撹拌する。
3.タンクに緩衝剤を加え、溶解するまで撹拌する。
4.タンクにR−MNTXを加え、溶解するまで撹拌する。
5.タンクに等張剤を加え、溶解するまで撹拌する。
6.溶液のpHをpH3.25に調製する。
7.注射用蒸留水を加えて、必要な量まで容積を増加させる。
8.材料を供給圧力容器に移動する。
9.滅菌ステンレス製圧力容器へ無菌濾過する。
10.ボトル/バイアルへ充填し、窒素でパージし、そしてボトル/バイアルに栓をする。
11.充填したバイアルを高圧蒸気殺菌法で殺菌する。
【0241】
使用する賦形剤の厳密な量
エデト酸2ナトリウム=0.75mg/ml 工程2で加える
クエン酸ナトリウム=0.199mg/ml 工程3で加える
クエン酸=0.35mg/ml 工程3で加える
塩化ナトリウム=8.5mg/ml 工程5で加える
賦形剤の添加の順序を上に記載する。工程2〜5はいかなる順序で行ってもよい。
【0242】
全ての賦形剤および薬物を加えたとき、工程6、溶液のpHを酸の添加によって調整する。緩衝剤を溶液において用いる場合、pH調整は必須でなくてもよい。
処方の間、温度または撹拌速度に細目はない。処方の間の温度は80℃までの高さあり得る。
【0243】
例5
R−MNTXの医薬処方物の好ましい製造方法
R−MNTX溶液の100mlの20mg/ml溶液の好ましい製造方法は以下の通りである:
1.注射のための80mlの水をステンレス製タンクに加える(〜80%または最終容量)。
2.タンクに75mgのエデト酸2ナトリウム、キレート剤、を加え、溶解するまで撹拌する。
3.タンクに19.9mgのクエン酸ナトリウムおよび35mgのクエン酸を(緩衝剤として)加え、溶解するまで撹拌する。
4.タンクに2000mgのR−MNTXを加え、溶解するまで撹拌する。
5.タンクに850mgの塩化ナトリウム、等張剤、を加え、溶解するまで撹拌する。
6.必要であれば溶液のpHを調製する。
7.注射用蒸留水を加えて、100mlまで容積を増加させる。
8.材料を供給圧力容器に移動する。
9.0.22ミクロンフィルターを用いて滅菌ステンレス製圧力容器へ無菌濾過する。
10.充填し、窒素でパージし、そしてボトル/バイアルに栓をする。
11.充填したバイアルを高圧蒸気殺菌法で殺菌する。
【0244】
例6
R−MNTXの皮下処方物の調製
低クエン酸塩/EDTA処方物のための処方を以下に示す:
成分 mg/mL
R−MNTX 30mg
塩化ナトリウム 4mg
クエン酸 0.0875mg
クエン酸三ナトリウム 0.0496mg
エデト酸2ナトリウム 0.75mg
注射用水 1gまで適量
この溶液のpHは3.5であり、高圧蒸気殺菌工程に耐えることができる。
【0245】
例7
R−MNTXの凍結乾燥医薬処方物の製造方法
凍結乾燥サイクルをR−MNTXの凍結乾燥製剤の調製のために用いた。40ミリグラムのR−MNTXを、32mgの凍結防止剤、マンニトールと混合し、注射用水を用いて、1mlまで十分量にする。
【0246】
1.室温(20〜25℃)でチャンバーに入れる。
2.棚温度を、−45℃まで、1.0℃/分で下げる。
3.棚温度を−45に120分保つ。
4.冷却器が−50℃より低い場合、チャンバーを100〜125mtまで真空にする。
5.棚を−20℃まで、0.5℃/分で一定の比率で上昇(ramp)させる。
6.−20℃に16時間保つ。
7.棚を+27℃まで、0.1℃/分で一定の比率で上昇させる。
8.最低8時間保持する。チャンバーの圧力を全サイクルにわたって100〜125mtに保持する。
9.無菌濾過した窒素を用いて、チャンバーを11.0PSIA+または−1.0に戻し、そして閉鎖物を設置し(2”Hg)、そして取り外すためにNで大気圧まで流出させる。凍結乾燥および再構成後の溶液のpHは5.0である。
【0247】
このように、本発明の少なくとも1つの態様のいくつかの側面を説明したので、様々な変更、修正、および改良が容易に当業者に思い浮かぶことが十分理解できる。かかる変更、修正、および改良は、本開示の一部であることを意図し、本発明の精神および範囲ないであることを意図する。したがって、前述の記載および描写は、ほんの一例である。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】R−MNTXおよびS−MNTXの臭化物塩の化学構造を提供する。
【図2】S−およびR−MNTXの混合物における、MNTXのR体およびS体の分離を示すクロマトグラムである。
【図3】およそ0.1%のS−MNTX異性体を添加した、R−MNTXのクロマトグラムである。
【図4】およそ1.0%のS−MNTX異性体を添加した、R−MNTXのクロマトグラムである。
【図5】およそ3.0%のS−MNTX異性体を添加した、R−MNTXのクロマトグラムである。
【図6】好ましいヒドロキシル保護基を用いた、R−MNTXの合成のための反応スキームを示す。
【図7】好ましいヒドロキシル保護基を用いた、R−MNTXの合成のための別の反応スキームを示す。
【図8】本発明のキットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R−MNTXを含む組成物であって、0.02%の検出限界および0.05%の定量限界において、HPLCによって検出可能なS−MNTXが存在しない前記組成物。
【請求項2】
組成物中に存在するMNTXが、塩のカチオンであり、アニオンと対になっている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アニオンが、ハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸または有機荷電アニオン種である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
アニオンがハロゲン化合物であり、該ハロゲン化合物が臭化物、塩化物、ヨウ化物またはフッ化物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ハロゲン化合物が臭化物である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
MNTXを含む組成物であって、該組成物におけるMNTXの少なくとも99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%までもが、窒素についてR立体配置であり、該MNTXがMNTXの臭化物塩でない、前記組成物。
【請求項7】
組成物に存在するMNTXが、塩のカチオンであり、アニオンと対になっている、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
アニオンが、ハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸または有機アニオン種である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物におけるMNTXの少なくとも99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%までもが窒素についてR立体配置であるMNTX、および
1または2以上の緩衝剤、キレート剤、凍結防止剤、潤滑剤、防腐剤、酸化防止剤または結合剤
を含む組成物。
【請求項10】
組成物におけるMNTXの少なくとも99.85%が窒素についてR立体配置であり、ここで該組成物が0.02%の検出限界および0.05%の定量限界においてHPLCによって検出可能なS−MNTXを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物におけるMNTXの少なくとも99.85%が窒素についてR立体配置である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
組成物に、0.02%の検出レベルおよび0.05%の定量レベルにおいて、HPLCによって検出可能なS−MNTXが存在しない、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
組成物に存在するMNTXが、塩のカチオンであり、アニオンと対になっている、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
アニオンが、ハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸または有機アニオン種である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】

【化1】

式中、Rはヒドロキシル保護基である、
の単離された3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項16】
ヒドロキシル保護基が、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニル、シリルエーテル類、2−テトラヒドロピラニルエーテル類および炭酸アルキル類からなる群から選択される、請求項15に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項17】
Rがアセチルでない、請求項15に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項18】
Rがイソブチリルである、請求項15に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項19】
塩が、アニオンXと対の、カチオンである、請求項15に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項20】
アニオンが、ハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸または有機アニオン荷電種である、請求項19に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項21】
ハロゲン化合物が、臭化物、ヨウ化物、塩化物またはフッ化物である、請求項20に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項22】
ハロゲン化合物が臭化物である、請求項20に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項23】
ハロゲン化合物がヨウ化物である、請求項20に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項24】
ハロゲン化合物が塩化物である、請求項20に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項25】
ハロゲン化合物がフッ化物である、請求項20に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項26】
有機アニオン荷電種がスルホン酸またはカルボン酸である、請求項20に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項27】
スルホン酸が、メシレート、ベシレート、トシレートまたはトリフレートである、請求項26に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項28】
カルボン酸が、ギ酸、酢酸、クエン酸またはフマル酸である、請求項26に記載の3−O−保護−R−MNTX塩。
【請求項29】
請求項15〜28のいずれかに記載の3−O−保護−R−MNTX塩および医薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項30】
R−MNTXの立体選択的合成方法であって;
(a)3−O−保護−ナルトレキソンをメチル化剤でメチル化して3−O−保護−R−MNTX塩を生じること、および
(b)R−MNTXを生じるための、3−ヒドロキシル保護基の除去、
を含む前記方法。
【請求項31】
3−O−保護−R−MNTX塩のヒドロキシル保護基が、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニル、シリルエーテル類、2−テトラヒドロピラニルエーテル類および炭酸アルキル類からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
R−MNTXが、塩のカチオンであり、アニオンXと対になっている、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
アニオンが、ハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸または有機アニオン荷電種である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
ハロゲン化合物が、臭化物、ヨウ化物、塩化物またはフッ化物である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ハロゲン化合物が臭化物である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
ハロゲン化合物がヨウ化物である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ハロゲン化合物が塩化物である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
ハロゲン化合物がフッ化物である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
有機アニオン荷電種がスルホン酸またはカルボン酸である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
スルホン酸が、メシレート、ベシレート、トシレートまたはトリフレートである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
カルボン酸が、ギ酸、酢酸、クエン酸またはフマル酸である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
アニオンを異なるアニオンで交換することを更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
メチル化剤が、求核攻撃を受けやすいメチル基、および脱離基を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
メチル化剤が、ハロゲン化メチル、硫酸ジメチル、硝酸メチルおよびスルホン酸メチルからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ハロゲン化メチルが、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチルおよびフッ化メチルからなる群から選択される請求項44に記載の方法。
【請求項46】
スルホン酸メチルが、メチルメシレート、メチルベシレート、メチルトシレートおよびメチルトリフレートからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
3−ヒドロキシル保護基の除去が、酸による触媒作用を受ける、請求項30に記載の方法。
【請求項48】
酸が、硫酸、塩酸または臭化水素酸からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
3−ヒドロキシル保護基を除去するための加水分解が、塩基によって触媒される、請求項30に記載の方法。
【請求項50】
塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
メチル化が、約>70℃〜約100℃の温度範囲で行われる、請求項30〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
メチル化が、80℃〜約90℃の温度範囲で行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
メチル化が、約88℃の温度で行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
メチル化反応を約1時間〜24時間行う、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
メチル化反応を約5時間〜16時間行う、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
メチル化反応を約10時間行う、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
少なくとも1つの精製法を用いた、R−MNTXの精製を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項58】
精製技術がクロマトグラフィーである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
クロマトグラフィーが逆相クロマトグラフィーである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
クロマトグラフィーが順相クロマトグラフィーである、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
順相クロマトグラフィーがアルミナを用いる、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
順相クロマトグラフィーがシリカゲルを用いる、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
精製技術が再結晶である、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
3−O−保護−ナルトレキソンが、メチル化の前に精製される、請求項30に記載の方法。
【請求項65】
3−O−保護−R−MNTXが、保護基の除去の前に精製される、請求項30に記載の方法。
【請求項66】
ハロゲン化R−MNTXの立体選択的合成方法であって、
(a)3−O−保護−ナルトレキソンをメチル化剤でメチル化してハロゲン化3−O−保護−R−MNTXを生じること、および
(b)ハロゲン化R−MNTXを生じるための、3−ヒドロキシル保護基の除去、
を含む前記方法。
【請求項67】
ハロゲン化合物が、臭化物、ヨウ化物、塩化物またはフッ化物である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
メチル化剤が、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチルおよびフッ化メチルからなる群から選択される、ハロゲン化メチルである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
ハロゲン化R−MNTXを精製することを更に含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
ハロゲン化合物を異なるハロゲン化合物で交換することを更に含む、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
ハロゲン化合物が、臭化物、ヨウ化物、塩化物またはフッ化物である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ハロゲン化合物がヨウ化物であり、異なるハロゲン化合物が臭化物である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
ハロゲン化R−MNTXを精製することを更に含む、請求項66〜72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
3−O−保護−ナルトレキソンが精製形態である、請求項66に記載の方法。
【請求項75】
ヒドロキシル保護基をナルトレキソンに添加することにより、3−O−保護−ナルトレキソンを合成する、請求項66に記載の方法。
【請求項76】
有機溶媒の存在下で、ヒドロキシル保護基を添加する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
ナルトレキソンではない三級アミンの存在下で、ヒドロキシル保護基を添加する、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
有機溶媒および三級アミンの両方の存在下で、ヒドロキシル保護基を添加する、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
ハロゲン化3−O−保護−R−MNTXのヒドロキシル保護基が、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニル、シリルエーテル類、2−テトラヒドロピラニルエーテル類および炭酸アルキル類からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項80】
保護基の除去の前に、ハロゲン化3−O−保護−R−MNTXを精製する、請求項66に記載の方法。
【請求項81】
R−MNTX臭化物塩の立体選択的合成方法であって、
(a)3−O−保護−ナルトレキソンをメチル化剤でメチル化して3−O−保護−R−MNTXヨウ素塩を生じること;
(b)3−ヒドロキシル保護基の除去してR−MNTX臭化物/ヨウ化物塩を生じるための、臭化水素酸による加水分解;および
(c)R−MNTX臭化物/ヨウ化物塩をアニオン交換(臭化物型)に通してR−MNTX臭化物塩を生じること、
を含む前記方法。
【請求項82】
メチル化剤がヨウ化メチルである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
保護基の除去の前に、3−O−保護−R−MNTXヨウ化物塩を精製する、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
R−MNTX臭化物塩の精製を更に含む、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
R−MNTX臭化物塩が98%以上の純度を有する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
R−MNTXを再結晶によって精製する、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
再結晶の溶媒がメタノールである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
R−MNTXをクロマトグラフィーによって精製する、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
純度をC18逆相カラムを用いたHPLCによって決定する、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
細孔のサイズが5ミクロンである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
カラムがLuna C18(2)である、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
請求項81〜88のいずれかに記載の方法によって製造される、R−MNTX臭化物塩。
【請求項93】
請求項1〜14のいずれかに記載の組成物および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項94】
医薬組成物が、腸溶コーティング、持続放出性処方物または凍結乾燥製剤を含む、請求項93に記載の医薬組成物。
【請求項95】
医薬処方物が、梱包された単位投与量である、請求項93に記載の医薬組成物。
【請求項96】
梱包された単位投与量が、溶液である、請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項97】
オピオイドを更に含む、請求項93に記載の医薬組成物。
【請求項98】
オピオイドが、アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェニルオキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボメタジルアセテート、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルフィン、モルフィン6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、トラマドールおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項97に記載の組成物。
【請求項99】
オピオイドまたはオピオイドアンタゴニストでない少なくとも1つの医薬剤を更に含む、請求項93に記載の医薬組成物。
【請求項100】
少なくとも1つの医薬剤が、抗ウイルス剤、抗感染症薬、抗癌剤、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、抗炎症剤、運動亢進剤、5HTアゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアゴニスト、胆汁酸塩捕捉剤、バルク形成剤、アルファ2−アドレナリン作動性アゴニスト、ミネラルオイル、抗うつ剤、生薬、制吐剤、止痢剤、緩下剤、便軟化剤、繊維または造血促進剤である、請求項99に記載の医薬組成物。
【請求項101】
抗炎症剤が、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)、腫瘍壊死因子阻害薬、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、ミコフェノール酸、モフェチル、アザチオプリン、タクロリムス、ステロイド類、スルファサラジン、オルサラジン、メサラミンおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項100に記載の組成物。
【請求項102】
請求項15〜28のいずれかに記載の化合物および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項103】
経口投与のために腸溶性にコーティングされた、請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を含む、医薬組成物
【請求項104】
凍結乾燥処方物中に請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項105】
持続放出性処方物中に請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項106】
オピオイドを更に含む、請求項102に記載の医薬組成物。
【請求項107】
オピオイドが、アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェニルオキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボメタジルアセテート、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルフィン、モルフィン6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、トラマドールおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項106に記載の医薬組成物。
【請求項108】
オピオイドまたはオピオイドアンタゴニストでない少なくとも1つの医薬剤を更に含む、請求項102に記載の医薬組成物。
【請求項109】
少なくとも1つの医薬剤が、抗ウイルス剤、抗感染症剤、抗癌剤、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、抗炎症剤、運動亢進剤、5HTアゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアゴニスト、胆汁酸塩捕捉剤、バルク形成剤、アルファ2−アドレナリン作動性アゴニスト、ミネラルオイル、抗うつ剤、生薬、制吐剤、止痢剤、緩下剤、便軟化剤、繊維または造血促進剤である、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項110】
抗炎症剤が、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)、腫瘍壊死因子阻害薬、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、ミコフェノール酸、モフェチル、アザチオプリン、タクロリムス、ステロイド類、スルファサラジン、オルサラジン、メサラミンおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項109に記載の組成物。
【請求項111】
オピオイドによって誘導される副作用を処置または予防する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を、該副作用を処置または予防するために効果的な量で投与する事を含む、前記方法。
【請求項112】
慢性的にオピオイド類を投与される患者における、オピオイド誘導性の副作用を予防または処置する方法であって、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を、該患者における該副作用を予防または処置するために十分な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項113】
副作用が、便秘、免疫抑制,胃腸運動の阻害、胃内容排出の阻害、吐き気、嘔吐、不完全排便、膨満、腹部膨満、胃食道逆流増加、低血圧、徐脈、胃腸機能障害、掻痒、不快、および尿閉からなる群から選択される、請求項111または112に記載の方法。
【請求項114】
手術によりもたらされる疼痛のためにオピオイドを受ける患者を処置する方法であって、該患者に、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を、胃腸運動、胃内容排出または便秘の軽減を促進させるために効果的な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項115】
内因性オピオイド誘導性の胃腸機能不全を処置または予防する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、請求項1〜14に記載の組成物を、内因性オピオイド誘導性の胃腸機能障害を処置する有効量で投与することを含む、前記方法。
【請求項116】
胃腸機能障害が、胃腸運動、便秘および術後腸機能障害の抑制からなる群から選択される、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
突発性便秘を予防または処置する方法であって、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を、該突発性便秘を予防または処置するために効果的な量で、患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項118】
過敏性腸症候群を処置する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を、該過敏性腸症候群の少なくとも1つの症状を改善するために効果的な量で、投与することを含む、前記方法。
【請求項119】
少なくとも1つの過敏性腸症候群治療剤の投与を更に含む、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
過敏性腸症候群治療剤が、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、非ステロイド性またはステロイド性抗炎症剤、運動亢進剤、5HTアゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアゴニスト、胆汁酸塩捕捉剤、バルク形成剤、アルファ2−アドレナリン作動性アゴニスト、ミネラルオイル、抗うつ剤、生薬、止痢剤およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
便通を必要とする患者において、便通を誘発する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物を、便通を誘発するために効果的な量で投与することをふくむ、前記方法。
【請求項122】
術後腸機能障害を予防または処置する方法であって、かかる予防または処置を必要とする患者に、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を、術後腸機能障害の少なくとも1つの症状を予防または改善するために効果的な量で、投与することを含む、前記方法。
【請求項123】
術後腸機能障害が、遅発性胃内容排出または胃腸運動の阻害である、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
オピオイド誘導性の副作用を処置または予防する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を該副作用を処置または予防するために効果的な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項125】
患者が、オピオイドを急性的または慢性的に受けている、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
副作用が、便秘、免疫抑制、胃腸運動の阻害、胃内容排出の阻害、吐き気、嘔吐、不完全排便、膨満、腹部膨満,胃食道逆流増加、低血圧、徐脈、胃腸機能障害、掻痒、不快、および尿閉からなる群から選択される、請求項124または125に記載の方法。
【請求項127】
オピオイド誘導性の副作用が便秘である、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
オピオイド誘導性の副作用が胃腸運動の阻害または胃内容排出の阻害である、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
オピオイド誘導性の副作用が吐き気または嘔吐である、請求項126に記載の方法。
【請求項130】
オピオイド誘導性の副作用が掻痒である、請求項126に記載の方法。
【請求項131】
オピオイド誘導性の副作用が不快である、請求項126に記載の方法。
【請求項132】
オピオイド誘導性の副作用が尿閉である、請求項126に記載の方法。
【請求項133】
手術によりもたらされる疼痛のためにオピオイドを受ける患者を処置する方法であって、該患者に、請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を、胃腸運動、胃内容排出または便秘の軽減を促進するために効果的な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項134】
化合物を経口投与する、請求項124に記載の方法。
【請求項135】
化合物を非経口的に投与する、請求項124に記載の方法。
【請求項136】
化合物を皮下投与する、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
化合物を静脈内投与する、請求項135に記載の方法。
【請求項138】
内因性オピオイド誘導性の胃腸障害を処置または予防する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、請求項15〜28の化合物を、内因性オピオイド誘導性の胃腸障害を処置するための有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項139】
胃腸障害が、胃腸運動、便秘および術後腸機能障害の抑制からなる群から選択される、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
突発性便秘を予防または処置する方法であって、請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を、突発性便秘を予防または処置するために効果的な量で患者に、投与することを含む、前記方法。
【請求項141】
過敏性腸症候群を処置する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を、過敏性腸症候群の少なくとも1つの症状を改善するために効果的な量で投与することを含む、前記方法。.
【請求項142】
少なくとも1つの過敏性腸症候群治療剤を患者に投与することを更に含む、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
過敏性腸症候群治療剤が、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、非ステロイド性またはステロイド性抗炎症剤、運動亢進剤、5HTアゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアンタゴニスト、5HTアゴニスト、胆汁酸塩捕捉剤、バルク形成剤、アルファ2−アドレナリン作動性アゴニスト、ミネラルオイル、抗うつ剤、生薬、止痢剤およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
便通を必要とする患者において、便通を誘発する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を、便通を誘発するために効果的な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項145】
術後腸機能障害を予防または処置する方法であって、かかる予防または処置を必要とする患者に、請求項15〜28のいずれかに記載の化合物を、術後腸機能障害の少なくとも1つの症状を予防または改善するために効果的な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項146】
術後腸機能障害が、遅発性胃内容排出または胃腸運動の阻害である、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
請求項1〜14のいずれかに記載の組成物を含む、患者管理注射デバイス。
【請求項148】
請求項15〜28に記載の化合物を含む、患者管理注射デバイス。
【請求項149】
請求項93の医薬製剤および使用説明書を含む密封容器を含むパッケージを含むキット。
【請求項150】
医薬製剤が40mg/mLのR−MNTXを含む、請求項149に記載のキット。
【請求項151】
医薬製剤が30mg/mLのR−MNTXを含む、請求項149に記載のキット。
【請求項152】
オピオイドを更に含む、請求項149に記載のキット。
【請求項153】
オピオイドまたはオピオイドアンタゴニストでない少なくとも1つの医薬剤を更に含む、請求項149に記載のキット。
【請求項154】
請求項102の医薬製剤および使用説明書を含む密封容器を含むパッケージを含むキット。
【請求項155】
医薬製剤が40mg/mLの3−0−保護−R−MNTX塩を含む、請求項154に記載のキット。
【請求項156】
医薬製剤が30mg/mLの3−0−保護−R−MNTX塩を含む、請求項154に記載のキット。
【請求項157】
オピオイドを更に含む、請求項154に記載のキット。
【請求項158】
オピオイドまたはオピオイドアンタゴニストでない少なくとも1つの医薬剤を更に含む、請求項154に記載のキット。
【請求項159】
請求項95または104に記載の医薬組成物であって、40mg/mlの濃度で水中で再構成された該組成物が、pH2〜6を有する、前記組成物。
【請求項160】
凍結防止剤を更に含む、請求項95または104に記載の医薬組成物。
【請求項161】
凍結防止剤がポリオールである、請求項160に記載の医薬組成物。
【請求項162】
凍結防止剤がマンニトールである、請求項160に記載の医薬組成物。
【請求項163】
請求項95または104に記載の医薬組成物であって、30mg/mlの濃度で水中で再構成された該医薬組成物が、pH2〜6を有する、前記組成物。
【請求項164】
3−O−保護−ナルトレキソンをメチル化剤でメチル化して3−O−保護−R−MNTX塩を生じることを含む、3−O−保護−R−MNTX塩の立体選択的合成方法。
【請求項165】
3−O−保護−ナルトレキソンのヒドロキシル保護基が、イソブチリル、2−メチルブチリル、tertブチルカルボニル、シリルエーテル類、2−テトラヒドロピラニルエーテル類、および炭酸アルキル類からなる群から選択される、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
3−O−保護−R−MNTX塩が、ハロゲン化合物、硫酸、リン酸、硝酸または有機アニオン荷電種であるアニオンを含む、請求項164に記載の方法。
【請求項167】
ハロゲン化合物が、臭化物、ヨウ化物、塩化物またはフッ化物である、請求項166に記載の方法。
【請求項168】
有機アニオン荷電種が、スルホン酸またはカルボン酸である、請求項166に記載の方法。
【請求項169】
スルホン酸が、メシレート、ベシレート、トシレートまたはトリフレートである、請求項168に記載の方法。
【請求項170】
カルボン酸が、ギ酸、酢酸、クエン酸またはフマル酸である、請求項168に記載の方法。
【請求項171】
アニオンを異なるアニオンで変換することを更に含む、請求項166に記載の方法。
【請求項172】
メチル化剤が、求核攻撃を受けやすいメチル基、および脱離基を含む、請求項164に記載の方法。
【請求項173】
メチル化剤が、ハロゲン化メチル、硫酸ジメチル、硝酸メチルおよびスルホン酸メチルからなる群から選択される、請求項164に記載の方法。
【請求項174】
ハロゲン化メチルが、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチルおよびフッ化メチルからなる群から選択される、請求項173に記載の方法。
【請求項175】
スルホン酸メチルが、メチルメシレート、メチルベシレート、メチルトシレートおよびメチルトリフレートからなる群から選択される、請求項173に記載の方法。
【請求項176】
メチル化が約>70℃〜約100℃の温度範囲で行われる、請求項164〜175のいずれかに記載の方法。
【請求項177】
メチル化が80℃〜約90℃の温度範囲で行われる、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
メチル化が、約88℃の温度で行われる、請求項177に記載の方法。
【請求項179】
メチル化反応を約1時間〜24時間行う、請求項176に記載の方法。
【請求項180】
メチル化反応を約5時間〜16時間行う、請求項179に記載の方法。
【請求項181】
メチル化反応を約10時間行う、請求項180に記載の方法。
【請求項182】
少なくとも1つの精製技術を用いた、3−O−保護−R−MNTX塩の精製を更に含む、請求項164に記載の方法。
【請求項183】
精製技術がクロマトグラフィーである、請求項182に記載の方法。
【請求項184】
クロマトグラフィーが逆相クロマトグラフィーである、請求項183に記載の方法。
【請求項185】
クロマトグラフィーが順相クロマトグラフィーである、請求項183に記載の方法。
【請求項186】
順相クロマトグラフィーがアルミナを用いる、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
順相クロマトグラフィーがシリカゲルを用いる、請求項185に記載の方法。
【請求項188】
精製技術が再結晶である、請求項182に記載の方法。
【請求項189】
3−O−保護−ナルトレキソンが、メチル化の前に精製される、請求項164に記載の方法。
【請求項190】
以下の工程を含む、R−MNTXの合成方法、
(a)R−MNTXを含む第1の組成物を得ること、
(b)クロマトグラフィー、再結晶またはこれらの組合せにより、該第1の組成物を精製すること、
(c)S−MNTXを標準物質として、精製された第1の組成物のサンプルのHPLCを行うこと、
(d)サンプル中のS−MNTXの有無を測定すること。
【請求項191】
精製が、多重再結晶工程または多重クロマトグラフィー工程を含む、請求項190に記載の方法。
【請求項192】
0.02の検出限界および0.05%の定量限界のHPLCによる測定される精製された第1の組成物から、S−MNTXが、0.4%、0.3%、0.2%、0.15%、0.1%、0.05%より少ないかまたは無くなるまで、精製を行う、請求項190に記載の方法。
【請求項193】
次いで精製された第1の組成物を梱包することを更に含む、請求項192に記載の方法。
【請求項194】
梱包された第1組成物におけるS−MNTXのレベルを示す証印を、梱包された第1組成物に、またはそれと共に提供する、請求項193に記載の方法。
【請求項195】
R−MNTXを含む組成物、および該組成物におけるS−MNTXのレベルを表す該パッケージ上のまたは該パッケージ内に含まれる証印を含む、パッケージ。
【請求項196】
組成物中のS−MNTXのレベルが、0.4%、0.3%、0.2%、0.15%、0.1%、0.05%より低いかまたは存在しない、請求項195に記載のパッケージ。
【請求項197】
パッケージが、R−MNTXと一緒に混合された1または2以上の緩衝剤、キレート剤、防腐剤、凍結防止剤、潤滑剤、防腐剤、酸化防止剤および結合剤を更に含む、請求項196に記載のパッケージ。
【請求項198】
医薬製品を製造する方法であって、
S−MNTXを0.4%、0.3%、0.2%、0.15%、0.1%、0.05%より低いレベルで含むかまたは組成物中にS−MNTX存在しないことを理由として、R−MNTXの組成物を選択すること、および
該組成物を、患者への投与のための単位投与量または複数単位投与量に処方すること、
を含む、前記方法。
【請求項199】
選択された組成物の処方の前に、選択されたR−MNTXの組成物を、1または2以上の緩衝剤、キレート剤、凍結防止剤、潤滑剤、防腐剤、酸化防止剤または結合剤と組み合わせることをさらに含む、請求項198に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−542287(P2008−542287A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513707(P2008−513707)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/020233
【国際公開番号】WO2006/127899
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(505377108)プロジェニックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】