説明

1−(2−ハロビフェニル−4−イル)−シクロプロパンカルボン酸の誘導体の調製方法

本発明は、式(IA)で示される化合物を調製する方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(IA):
【0002】
【化1】

【0003】
の化合物の調製方法に関する。前記化合物は、アルツハイマー病のような神経変性疾患の予防および/または治療に有用である。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病は、アルツハイマー患者の脳実質において細胞外かつ血管周囲の老人斑および細胞内の神経原線維変化がびまん性に存在する組織病理学的観点を特徴とする神経変性疾患である。
【0005】
老人斑は、39−43個のアミノ酸残基を有するβ−アミロイド(βA)、アミノ酸の数に応じてAβ39、Aβ40、Aβ42およびAβ43として知られるタンパクの凝集体から主に構成される。
【0006】
γ−セクレターゼとして知られているアスパルチルプロテアーゼ活性を有する巨大分子/マルチタンパク質酵素複合体との相互作用を通して、β−アミロイドの最も神経毒性のアイソ型、すなわち42個のアミノ酸を含む型(Ab42)の生成を低減させ得る化合物が報告されている。
【0007】
WO2004/074232(特許文献1)は、シクロオキシゲナーゼ酵素活性のような他の重要な代謝プロセスに影響を与えることなくγ−セクレターゼ活性を修飾することができる下記式(I)で示される1−(2−ハロビフェニル−4−イル)−シクロプロパンカルボン酸の誘導体を開示している。
【0008】
【化2】

【0009】
Rは以下に定義され、Xは好ましくはフッ素である。
【0010】
前記化合物の調製の重要な中間工程は、適当なフェニルボロン酸またはそのエステルと3,4−ジハロ−シクロプロパンカルボン酸、好ましくは3−フルオロ−4−ハロ−シクロプロパンカルボン酸との鈴木反応である。
【0011】
WO2004/074232において、3−フルオロ−4−ハロ−シクロプロパンカルボン酸は、3−フルオロ−4−ハロ−トルエンから出発し、四塩化炭素(CCl)中でのラジカル臭素化により対応する臭化ベンジルに変換され、得られた臭化物は3−フルオロ4−ハロフェニルアセトニトリルに変換され、後者は1,2−ジブロモエタンと反応して対応する3−フルオロ−4−ハロ−フェニルシクロプロパンニトリルを得、これが最終的に所望の3−フルオロ−4−ハロ−シクロプロパンカルボン酸に加水分解されて得られる。
【0012】
しかしながら、WO2004/074232に記載の方法は、全収率が低く(12−14%)、産業的利用について厳しい制限を受ける。
【0013】
特に、最後の鈴木カップリング反応は収率が低く、得られる生成物は、収率の損失無く結晶化により精製することが困難である。そのような精製のためにシリカゲルクロマトグラフィーが使用されてきたが、シリカゲルクロマトグラフィーの規模拡大は手間がかかり、大量の溶媒を必要とする。
【0014】
さらに、臭化ベンジル誘導体の調製に用いられるラジカル臭素化工程は、収率に弊害をもたらす大量のビスハロゲン化副生物を与えると共に、毒性の高いCCl、およびオゾン破壊性かつ温室効果を奏するガスを用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2004/074232号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、式(IA)の1−(2−ハロビフェニル−4−イル)−シクロプロパンカルボン酸の誘導体の調製のための方法に関し、ここでハロゲン原子は、前記欠点の全てを有するのではないフッ素である。
【0017】
本発明の目的は、ニトリル誘導体に鈴木反応を行ってから対応するカルボン酸誘導体に加水分解することにより主に達成される。
【0018】
さらに、他の工程、特にラジカル臭素化工程の収率を改良するための異なる条件を導入した。
【0019】
本発明の方法は、特に大規模生産のためにより効率的であると分かり、クロマトグラフィーによる精製工程を要すること無く高い化学的純度で式(IA)で示される化合物の高収率を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の概要)
本発明は、式(IA):
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、Rは、
・ハロゲン原子、好ましくは塩素;
・CF
・CH=CH
・CN;
・CHOH;
・NO
・メチレンジオキシ;
・エチレンジオキシ;
・シクロアルキル、好ましくはC−Cシクロアルキル;
・フェニル;
・ORまたはNHCOR(RはCF、アルケニル、アルキニル、ベンジルおよびフェニルから選択される);
・SR、SORまたはCOR(Rはアルキルである)
から独立して選択される一または二以上の基を表す。)
で示される化合物、およびその医薬的に許容される塩を調製する方法であって、スキーム1による以下の工程を含む方法に関する。
【0023】
(i)式(IV)(式中、X’は塩素、臭素、ヨウ素またはトリフレート基(CFSO)、好ましくは臭化物である)で示される化合物を1,2−ジブロモエタンと反応させて式(V)で示される化合物を形成する工程、
(ii)式(V)で示される化合物を式(VI)(式中、Rは前述のように定義される)で示される化合物とカップリングさせて式(VII)で示される化合物を形成する工程、および
(iii)式(VII)で示される化合物を加水分解して式(I)で示される化合物を得る工程。
【0024】
好ましくは、本発明は、式(IA)(式中、Rは塩素である)で示される化合物を調製する方法を提供する。
【0025】
より好ましくは、本発明は、式:
【0026】
【化4】

【0027】
で示される1−(3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−シクロプロパンカルボン酸を調製する方法を提供する。
【0028】
前記化合物は、コードCHF 5074による参照もなされている。
【0029】
本発明は、工程(i)〜(iii)および、一または二以上の医薬的に許容される賦形剤を混合するさらなる工程を含む、医薬組成物を調製する方法にも関する。
【0030】
<定義>
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0031】
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルのような直鎖または分岐鎖C−Cアルキルを意味する。
【0032】
「アルケニル」という用語は、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、イソブテニルまたは直鎖もしくは分岐鎖ペンテニルおよびヘキセニルのような直鎖または分岐C−Cアルケニルを意味する。「アルキニル」という用語は、同様に解すべきである。
【0033】
「シクロアルキル」という用語は、3〜8個の炭素原子を含む環式非芳香族炭化水素基を意味する。その例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが挙げられる。
【0034】
「飽和ヘテロ環式」という用語は、少なくとも4個の炭素原子および、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を有する飽和ヘテロ環式基を意味する。例として、ピペリジルまたはテトラヒドロフリルが挙げられる。
【0035】
「医薬的に許容される塩」という用語は、酸型の主化合物を無機または有機塩基と反応させることにより得られる、ヒトへの用途に承認される塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアンモニウム塩を意味する。
【0036】
(発明の詳細な説明)
本発明は、スキーム1の工程を含んでなる、式(IA)(式中、Rは前述のように定義される)で示される化合物を調製する方法を提供する。
【0037】
【化5】

【0038】
Rがシクロアルキルの場合、アルキル、CF、OHおよびオキソ基から独立して選択される一または二以上の基により置換されていてよい。
【0039】
好ましくは、シクロアルキル基はC−Cシクロアルキルである。
【0040】
Rがフェニルである場合、ハロゲン原子、CF、OCF、OH、アルキルおよび飽和ヘテロ環式基から独立して選択される一または二以上の基により置換されていてよい。
【0041】
飽和ヘテロ環式基は、好ましくは、ピロリジン、イミダゾリジンおよびイソキサゾリジンのような、5〜6個の原子と1もしくは2個の窒素原子または1個の窒素原子および1個の酸素原子とを有する単環式環である。
【0042】
【化6】

【0043】
市販の式(IV)(X’は、塩素、臭素、ヨウ素およびCFSO基(トリフレート)からなる群より選択される)で示される化合物を、出発材料として用いることができる。
【0044】
好ましくは、前記化合物(X’は臭素である)を出発材料として用いる。
【0045】
第一の工程(工程i)において、式(IV)で示される化合物を1,2−ジブロモエタンと反応させて式(V)(X’は前述のように定義される)で示される化合物を形成する。
【0046】
エタノールもしくはアセトニトリルまたはそれらと水との混合物のような有機溶媒中で工程(i)を行うことが有利である。
【0047】
好ましくは、前記シクロプロパン化工程は、濃NaOHおよびテトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)またはテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)の存在下に相間移動触媒反応として行われる。NaOHの濃度は30〜50%w/vが有利であり得る。
【0048】
工程(i)の温度は、約20℃〜約50℃に維持するのが好ましい。
【0049】
通常、式(V)で示される化合物、好ましくは4−ブロモ−3−フルオロフェニルシクロプロパンニトリルが、80%を超える収率、好ましくは90%以上の収率で得られる。
【0050】
任意に、得られた化合物を、標準的手順によるプロセスの以下の工程で用いる前に結晶化によりさらに精製してよい。
【0051】
第二の工程(工程ii)において、式(V)で示される化合物を式(VI)(Rは、ハロゲン原子、好ましくは塩素;CF;CH=CH;CN;CHOH;NO;メチレンジオキシ;エチレンジオキシ;シクロアルキル;フェニル;ORまたはNHCOR(ここで、Rは、CF、アルケニル、アルキニル、ベンジルおよびフェニルからなる群より選択される);SR、SORおよびCOR(ここで、Rはアルキルである)から独立して選択される一または二以上の基を表す。)で示されるフェニルボロン酸と反応させる。
【0052】
好ましくは、鈴木反応または宮浦−鈴木反応として知られている反応を、式(V)で示される化合物としての4−ブロモ−3−フルオロ−フェニルシクロプロパンニトリルおよび式(VI)で示される化合物としての3,4−ジクロロ−フェニルボロン酸を用いて行う。
【0053】
パラジウム触媒に依存する前記反応は、ボロン酸の代わりにアルキルボロン酸エステルを用いて行うこともできる。
【0054】
例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh)]、パラジウム炭素(Pd/C)としても知られている活性炭上パラジウム、アルミナ上パラジウム、またはPd(OCOCHとPPhとの混合物のようなパラジウム触媒を触媒として用いることが有利である。
【0055】
工程(ii)は、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジオキサンおよびそれらと水との混合物のような有機溶媒の存在下に行うことが有利である。有機溶媒は組み合わせて用いてもよい。
【0056】
好ましくは、Pd(PPh)、またはPd(OCOCH)とPPhとの混合物を用いる場合、N−メチルピロリドン(NMP)、またはジオキサン/水の2:1混合物の存在下に反応を行う。
【0057】
あるいは、Pd/Cを用いる場合、好ましい溶媒はエタノールである。
【0058】
工程(ii)は、1〜4当量の塩基の存在下に行うことが有利である。
【0059】
有利に用いてよい塩基としては、NaCO、KCO、KPO、CsCO、NaOHおよびKOHが挙げられる。好ましい塩基は、NaCO、KCOまたはKPOである。
【0060】
任意に、トリフェニルホスフィン(P(Ph))、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)またはNaIのような添加剤を、反応媒体に添加してよい。
【0061】
通常、反応は80℃〜140℃の温度、好ましくは110℃で行われる。
【0062】
工程(ii)は、化合物(V)に対して等モル量のまたは僅かに過剰モル量の化合物(VI)を用いて行うことが有利である。
【0063】
通常、式(VI)で示される化合物は、60%を超える、好ましくは70%を超える、より好ましくは80%を超える収率で得られる。
【0064】
式(VI)で示される化合物は、好ましくは、3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ−4−シアノメチル−ビフェニルである。
【0065】
工程(ii)の好ましい条件は:
溶媒:NMP;
塩基:4当量の粉末状KPO
触媒:Pd(OCOCH)とPPhとの1:2w/w混合物、および
温度:110℃である。
【0066】
これらの条件において、3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ−4−シアノメチル−ビフェニルは、90%を超える収率で得られる。
【0067】
任意に、得られた化合物を、標準的手順によるプロセスの以下の工程において用いる前に結晶化によりさらに精製してよい。
【0068】
第三の工程(工程iii)において、式(VII)で示される化合物が、良く知られた方法により加水分解されて式(IA)で示される所望の化合物が得られる。好ましくは、加水分解は、メタノールと水との混合物中、強塩基、好ましくはKOHの存在下において還流下に行われる。
【0069】
通常、式(IA)で示される化合物、好ましくは1−(3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−シクロプロパンカルボン酸は、65%を超える収率で得られる。
【0070】
式(IA)で示される化合物は、種々の良く知られた技術により洗浄、濾過および単離してよい。
【0071】
前記化合物は、標準的手順に従って結晶化によりさらに精製してよく、クロマトグラフィーにより最終的に精製することなく、高い化学的純度、例えば95%を超える化学的純度で得られる。
【0072】
n−ヘプタンとイソプロピルアルコールとの混合物からの結晶化が、特に好ましい。
【0073】
得られた化合物(IA)を、種々の既知の技術に従って対応する医薬的に許容される塩にさらに変換してよい。
【0074】
別の態様において、工程(ii)の反応のための溶媒としてNMPを用いる場合、中間体化合物(VII)を単離することなく、塩基性水溶液中での直接沈殿によりアルカリ塩としての式(IA)で示される化合物を得ることができる。
【0075】
これは、工程(II)の全ての不純物が、水相中で塩化され得る基を含まないことが分かったので、可能である。
【0076】
このことにより、全プロセスの収率が増す。
【0077】
アルカリ塩を、既知の方法に従って遊離酸型に変換することができる。
【0078】
全収率は、通常、少なくとも30%、好ましくは40%以上、より好ましくは50%を超える。
【0079】
特定に局面において、本発明の方法は、スキーム2に従って市販の化合物(II)から出発して化合物(IV)を調製する工程をさらに含んでよい。
【0080】
【化7】

【0081】
化合物(IV)を得るために、式(II)(X’は、塩素、臭化物、ヨウ素およびCFSO基(トリフレート)からなる群より選択される)で示される化合物を、ラジカル臭素化に付して式(III)で示される化合物を形成する。
【0082】
触媒量の過酸化ベンゾイル[PhCO)]および溶媒としてのアセトニトリルの存在下にN−ブロモスクシンイミド(NBS)を用いてラジカル臭素化を行うことが有利である。
【0083】
通常、反応は、溶媒還流温度で行われる。
【0084】
好ましくは、二臭素化産物の形成を最少にするために、僅かに過剰の、好ましくは化合物(II)の1モル当量に対して1.05モル当量のNBSを用いて、0.04当量のPhCOOOの存在下に、前記工程を行う。
【0085】
通常、式(III)で示される化合物、好ましくは3−フルオロ−4−ブロモ−ベンジルブロミドが、85%を超える、好ましくは90%を超える収率で得られる。
【0086】
標準的手順による結晶化によりさらに精製されていてもよい式(III)で示される化合物を、次に、シアン化ナトリウムまたは他の適切な塩を用いて式(IV)で示される対応するニトリル誘導体に変換する。
【0087】
エタノールまたはアセトニトリルのような有機溶媒、好ましくはエタノール中において、温度を約20℃〜約60℃、好ましくは約40℃〜約50℃に維持して、前記変換を行うことが有利である。
【0088】
モル過剰量のシアン化ナトリウム、有利には化合物(III)の1当量に対して1.2モル当量〜1.0モル当量のシアン化ナトリウム、好ましくは、1.05モル当量のシアン化ナトリウムを用いて反応を行うことが好ましい。
【0089】
通常、式(IV)で示される化合物、好ましくは4−ブロモ−3−フルオロ−ベンジルニトリルが、50%を超える収率で得られる。
【0090】
任意に、前述した工程に付する前の得られた化合物(IV)を、標準的手順による結晶化によりさらに精製してよい。
【0091】
従って、本発明は、式(IA)(Rは前述のように定義される)で示される化合物および医薬的に許容されるその塩を調製する方法であって、スキーム2による以下の工程を含んでなる方法にも関する。
【0092】
(i)式(II)(式中、X’は塩素、臭素、ヨウ素またはトリフレート基(CFSO)、好ましくは臭化物である)で示される化合物をラジカル臭素化に付して式(III)で示される化合物を形成する工程;
(ii)式(III)で示される化合物を式(IV)で示される対応するニトリル誘導体に変換する工程;
(iii)式(IV)で示される化合物を1,2−ジブロモエタンと反応させて、式(V)で示される化合物を形成する工程;
(iv)式(V)で示される化合物を、式(VI)(式中、Rは前述のように定義される)で示される化合物とカップリングさせて、式(VII)で示される化合物を形成する工程、および
(v)式(VII)で示される化合物を加水分解して式(IA)で示される化合物を得る工程。
【0093】
本発明の方法により得られる式(IA)で示される化合物を、アルツハイマー病のような神経変性疾患の治療および/または予防のための医薬組成物の調製において用いることができる。
【0094】
前記医薬組成物、好ましくは経口用途の医薬組成物は、式(IA)で示される少なくとも一種の化合物を、医薬的に許容される賦形剤および/またはキャリア、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences Handbook, XVII Ed., Mack Pub.,N.Y.,U.S.A.に記載のものと混合して含む。
【実施例】
【0095】
本発明を以下の実施例においてさらに詳しく説明する。
【0096】
(実施例1)
4−ブロモ−3−フルオロベンジルブロミド(III)の調製
4−ブロモ−3−フルオロトルエン(21.5g、0.114モル)をアセトニトリル(200ml)中に含む溶液にN−ブロモスクシンイミド(NBS;21.2g、0.119モル)を加える。混合物を還流し、過酸化ジベンゾイル(1.4g、0.004モル)を加え、3時間還流し、次に、室温に冷却し、水で抽出する。水相を廃棄し、有機相を塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下に濃縮して油状物(27.1g、収率90%)を得る。
【0097】
(実施例2)
4−ブロモ−3−フルオロフェニルアセトニトリル(IV)の調製
4−ブロモ−3−フルオロベンジルブロミド(27g、0.1モル)をエタノール(200ml)中に含む溶液にNaCN(5.4g、0.11モル)を加え、3時間還流する。混合物を真空下に濃縮し、得られる残渣を水に取り込み、次に、酢酸エチルで抽出する。有機相を塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下に濃縮して暗色油状物(12.1g、収率56%)を得る。
【0098】
(実施例3)
4−ブロモ−3−フルオロフェニルシクロプロパンニトリル(V)の調製
4−ブロモ−3−フルオロフェニルアセトニトリル(1g、4.6ミリモル)をトルエン(4ml)中に含む溶液に、1,2−ジブロモエタン0.6ml(7ミリモル)、50%NaOH水溶液(4ml)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(0.32g、1ミリモル)を加える。混合物を室温で攪拌下に4時間維持し、次に、水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。有機相を回収し、溶媒を真空下に除去して褐色固形物を得、これをシリカゲルクロマトグラフィー精製に付して、固体状態のオレンジ色乃至黄色の生成物を得る(1g、収率90%)。
【0099】
(実施例4)
1−(3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−シクロプロパンニトリル(VI)の調製
不活性雰囲気下のフラスコ内で、3,4−ジクロロフェニルボロン酸(374mg、1当量)、Pd(OAc)(44mg、0.1当量)、PPh(105mg、0.2当量)および細メッシュKPO(1.6g、4当量)を、4−ブロモ−3−フルオロフェニルシクロプロパンニトリル(470mg、1当量)に加える。
【0100】
予め脱気したN−メチルピロリドン(NMP)5mLを、室温で加える。
【0101】
反応混合物を110℃で2時間加熱して完了(19F NMRでモニター)させ、次に、酢酸エチルで希釈し、水で洗う。
【0102】
有機相を回収し、溶媒を蒸発させてバラ色乃至紫色の粉末(700mg)を得る。固形物に、水:アセトンの1:1v/v混合物(40ml)を加え、次に、懸濁液を攪拌下に加熱還流して溶液を得る。アセトンの蒸発後、固形の明るい紫色の生成物を得る(560mg、収率95%)。
【0103】
(実施例5)
1−(3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−シクロプロパンカルボン酸(IA)の調製
1−(3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−シクロプロパンニトリル(14.3g、0.047モル)を、メタノール(143ml)と水(71.5ml)との混合物に溶解し、水酸化カリウム(35.1g、0.563モル)を滴下し、混合物を48時間還流する。
【0104】
反応混合物を冷却し、36%水性塩化水素(57ml)を水(57ml)中に含む溶液に20〜25℃で注ぐ。懸濁液を攪拌し濾過し、固形物を水で繰り返して洗い、真空下に40℃で乾燥する。粗生成物を還流下の2−プロパノール(178ml)に溶解し、溶液に活性炭(0.3g)を加え、還流下に攪拌し、濾過し、濃縮し、n−ヘプタン(116ml)を加える。温かい溶液を0〜5℃に冷却し、結晶化した固形物を濾過し、2−プロパノールで洗い、減圧下に40℃で乾燥する。
【0105】
化合物1−(3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−シクロプロパンカルボン酸を白色粉末として得る(10.3g、収率68%)。
【0106】
HPLC−UV純度(255nm):99.8%
H NMR(DMSO−d6, 300MHz):12.51(bs,1H);7.78(m,2H);7.54(m,2H);7.30(m,2H);1.48(m,2H);1.22(m,2H)
MS(ESI, 40 V):323(M);279
融点:199〜200℃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IA):
【化1】

(式中、Rは、
ハロゲン原子;
CF
CH=CH
CN;
CHOH;
NO
メチレンジオキシ;
エチレンジオキシ;
シクロアルキル;
フェニル;
ORまたはNHCOR(ここで、RはCF、アルケニル、アルキニル、ベンジルおよびフェニルから選択される);
SR、SORまたはCOR(ここで、Rはアルキルである)
から独立して選択される一または二以上の基を表す。)
で示される化合物、およびその医薬的に許容される塩を調製する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(i)式(IV):
【化2】

(式中、X’は塩素、臭素、ヨウ素およびトリフレート基(CFSO)から選択される)で示される化合物を1,2−ジブロモエタンと反応させて式(V):
【化3】

で示される化合物を形成する工程、
(ii)式(V)で示される化合物を式(VI):
【化4】

(式中、Rは前述のように定義される)で示される化合物とカップリングさせて式(VII):
【化5】

で示される化合物を形成する工程、および
(iii)式(VII)で示される化合物を加水分解して式(IA)で示される化合物を得る工程。
【請求項2】
X’がブロミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(IA)で示される化合物を単離し結晶化する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、活性炭上パラジウム、アルミナ上パラジウム、およびPd(OCOCHとトリフェニルホスフィン(PPh)との混合物、から選択されるパラジウム触媒の存在下に工程(ii)を行う、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記パラジウム触媒が、Pd(OCOCHとPPhとの1:2w/w混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(i)式(II):
【化6】

(X’は、前述のように定義される)
で示される化合物をラジカル臭素化に付して式(III):
【化7】

で示される化合物を形成する工程、および
(ii)式(III)で示される化合物を式(IV)で示される対応するニトリル誘導体に変換する工程
をさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記臭素化工程が、溶媒としてアセトニトリルを使用し、触媒量の過酸化ベンゾイルの存在下にN−ブロモスクシンイミドを用いて行うことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(IA)で示される化合物が1−(3’,4’−ジクロロ−2−フルオロ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−シクロプロパンカルボン酸である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1の工程(i)〜(iii)および、一または二以上の医薬的に許容される賦形剤を混合するさらなる工程を含んでなる、医薬組成物を調製する方法。

【公表番号】特表2013−501010(P2013−501010A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523221(P2012−523221)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004481
【国際公開番号】WO2011/015287
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(304037234)シエシー ファルマセウティチィ ソシエタ ペル アチオニ (24)
【Fターム(参考)】