説明

1モータ二重出力式掘削機の制御方法及び装置

【課題】 1モータ二重出力式掘削機において、外側軸のトルク制御を安価に行い、高トルクによるケーシング、リーダ、ベースマシン等の破損防止を可能とする。
【解決手段】 外側軸の排土カップリングを2重構造として、その上部側と下部側間に旋回ベアリング等を挿入して摺動自在とし、トルク伝達を荷重計又はトルクを計測できる水平油圧シリンダ(油圧を逃がすリリーフ弁付)等を介して行わせ、検出したトルクを無線でトルク設定コントロールボックスへ送信し、設定トルクを超える負荷が掛かったとき、警報を出すと共に停止信号を出し機械衝撃による破壊防止を図ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎工事に用いられる1モータ二重出力式掘削機の外側トルク制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二重出力式掘削機は、ケーシングからなる外側オーガと外側オーガ内に貫挿されたオーガスクリューからなる内側オーガとからなり、各々の出力を各々独立したモータで行う2モータ方式と両出力を1モータで兼ねる方式とがある。
【0003】
2モータ方式は、運転管理はし易いが、ケーシングの上端に装着されるモータ重量が1モータの場合より取り付け部材を含めかなり大きくなり、安定性に欠けるためリーダ長を短くせざるをえないといった欠点がある(特許文献1参照)。
【0004】
図4に例示した1モータの場合は、比較的軽量でリーダ長を大きく取れる特徴はあるが、出力側が二出力であるため負荷状態によっては、内側軸、あるいは外側軸の片側に全出力が流れる場合があり、絶えず変化する負荷の分配率を求めることが不可能であった(特許文献2参照)。
【0005】
そのため、モータ及び減速機の保護だけなら、入力モータ監視による制御で事足りるが、二出力の内、外側軸は一般的にトルクが高く、全出力が外側軸に集中して流れるとその高トルクによってケーシング、リーダ、ベースマシン等を破損させることがあった。
【0006】
また、従来負荷トルクは電流値などで検出していたが、インバータを使用したときは、周波数を変えると電流値も変化するので、真のトルクを検出することが困難であった。
【特許文献1】 特開昭59−8898
【特許文献2】 特開2000−320281
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、1モータ方式において上記問題点を解消する装置及び方法を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決する手段として本発明は、外側軸の排土カップリングを2重構造として、その上部側と下部側間に旋回ベアリング等を挿入して摺動自在とし、トルク伝達を荷重計又はトルクを計測できる水平油圧シリンダ等を介して、行わせる装置にある。
【0009】
また、本発明は、外側軸のトルクは、荷重計又は上記水平油圧シリンダの圧力を計測することにより検出し、検出したトルクを無線でトルク設定コントロールボックスへ送信し、設定トルクを超える負荷が掛かったときに停止信号を出してモータを停止させる制御方法にある。
【0010】
更に、本発明は、設定トルクを超える負荷が掛かったときに、警報を出すと共に機械衝撃による破壊防止の緩衝方法として、上記シリンダに油圧を逃がすリリーフ弁を取り付けたことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価にトルク制御が行なえ、高トルクによるケーシング、リーダ、ベースマシン等の破損を防止できる。
【0012】
また、外側軸のトルクの計測が可能なことから、特殊杭の捻じ込み施工トルクにより杭支持力算定データも取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明を実施するに用いるモータ二重出力式掘削機(オーガ)の一実施形態を示す全体構成図であり、オーガ1はベースマシン15のリーダマスト25に側方を固着支持され、上端を昇降ウィンチで巻き取り可能としたワイヤー26によりシーブ27を介して昇降自在に吊下されており、下端外側回転軸3には排土カップリング6を介し、ケーシング5が装着され、また、下端内側回転軸2にはその先端に掘削ヘッド8を有するスクリュー7が装着され、内側回転軸2に内蔵されている送水管経由掘削ヘッド8から水吐出が行えるようになっている。そして、排土カップリング6には後述の検出トルクを無線伝送するための無線送信機14が取り付けられており、その無線信号をベースマシン15側に取り付けられている無線受信機14で受け、それがトルク表示、トルク設定コントロールボックス17に電送表示され、更にモータ制御盤16を介してオーガモータ4への指示にフィードバックされるようになっている。
【0015】
オーガ1の外側回転軸3下端に取り付けられる2重構造の排土カップリング6の構造は、図2に示した如く、その上部側と下部側とがその間に挿入された旋回ベアリング12を介して摺動自在となっており、また、水平油圧シリンダ9、9の両端にアッパーピン23、23及びロワーピン24、24を介して、上部側のアッパーフランジ10と下部側のロワーフランジ11が揺動自在に接合されている。
【0016】
尚、図3に示したように、前記水平油圧シリンダ9、9には、油圧供給管(図示せず)、リリーフ弁21、21、・・、圧力変換機18、18、・・、信号変換機19、19が付設されており、バッテリーを有する信号変換機19、19から無線送信機13を経て、信号がベースマシン15側の無線受信機14送られ、そこからトルク設定コントロールボックス17に電送され、トルクが表示されると共に、設定トルク以上になった場合、警報を鳴らし、モータ制御盤16へオーガ内モータ4の停止信号を送るようになっている。
【0017】
次に上記実施形態の作用を図1、図2、図3を参照して説明する。
【0018】
まず、 オーガ1とケーシング5の間に取り付けられた排土カップリング6のリリーフ弁21、21、・・のリリーフ圧を上限トルクに見合った圧に設定すると共に、トルク設定コントロールボクッス17のトルクを所定トルク(上限)より少し低めに設定する。
【0019】
次にベースマシン15を所定場所に移動し、先端ヘッド8をワイヤー26にて降下接地後、モータ4を駆動して内外軸2,3を回転させ、ケーシング5の埋入を開始する。
【0020】
このとき、外側の回転力は外側回転軸3から、排土カップリング6のアッパーフランジ10に伝達され、アッパーフランジ10と水平油圧シリンダ9、9とを揺動自在に接合するアッパーピン23、23を経て、水平油圧シリンダ9、9の他端とロワーフランジ11を揺動自在に接合するロワーピン24、24を経て、排土カップリング6のアッパーフランジ10側とロワーフランジ11側とがその間に挿入した旋回ベアリング12を介して摺動自在となっているロワーフランジ11側に伝達され、更に排土カップリング6の下端に接続されたケーシング5へ伝達され、ケーシング5が回転する。
【0021】
そして、ケーシング5にかかる回転トルクは、オーガ1側に固定されているアッパーフランジ10と摺動自在のロワーフランジ11との間に挿入された水平油圧シリンダ9、9を介して伝達されるので、水平油圧シリンダ9、9のピストンはその力により揺動させることになる。この揺動を圧力変換18し、その圧力差を信号変換器19にて信号化して無線送信器13にて、ベースマシン15の無線受信器14で受け、それをコントロールボックス17に送りトルク変換して表示させることにより、施工中のケーシング5にかかるトルクを監視することができる。
【0022】
ところで、ケーシング5の埋入途中ケーシング5にかかる回転トルクが、硬質地盤に遭遇する等の理由によりコントロールボクッス17のトルク設定値に達した場合、警報ブザーが鳴ると共にモータ4はモータ制御盤16への停止信号により自動停止するので、ケーシング、リーダ、ベースマシン等の破損防止が図られる。
【0023】
このような事態が生じた場合、オペレータは掘削ヘッド8からの吐出水量を増加させる等の負荷軽減措置を行い、施工を再開する。
【0024】
また、このような事態が生じたとき、コントロールボクッス17のトルク設定が上限トルクより少し低めに設定されているので、リリーフ弁21、21、・・は働かないが、ケーシング5にかかるトルク変化が急激に起こりモータ4の停止信号が間に合わず、上限トルクに達した場合、リリーフ弁21、21、・・が働き衝撃を緩衝する二重安全機構になっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明における全体構成図。
【図2】 本発明における1モータ二重出力式掘削機のオーガ部に取り付けられた、排土カップリング部の一実施形態を示す内部構造図。
【図3】 本発明におけるトルク制御システム説明図。
【図4】 従来の1モータ二重出力式掘削機のオーガ部と排土カップリング部の内部構造図。
【符号の説明】
【0026】
1 二重出力式オーガ
2 内側回転軸
3 外側回転軸
4 モータ
5 ケーシング
6、6’ 排土カップリング
7 スクリュー
8 ヘッド
9 油圧シリンダ
10 アッパーフランジ
11 ロワーフランジ
12 旋回ベアリング
13 無線送信機
14 無線受信機
15 ベースマシン
16 モータ制御盤
17 トルク表示、トルク設定コントロールボクッス
18 圧力変換器
19 信号変換機
20 バッテリー
21 リリーフ弁
22 旋回ベアリング
23 アッパーピン
24 ロワーピン
25 リーダマスト
26 ワイヤー
27 シーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1モータ二重出力式掘削機において、外側軸の排土カップリングを2重構造として、その上部側と下部側間に旋回ベアリング等を挿入して摺動自在とし、トルク伝達を荷重計又はトルクを計測できる水平油圧シリンダ等を介して行わせることを特徴とする排土カップリング装置。
【請求項2】
1モータ二重出力式掘削機において、外側軸のトルクを、荷重計又は上記水平油圧シリンダの圧力を計測することにより検出し、検出したトルクを無線でトルク設定コントロールボックスへ送信し、設定トルクを超える負荷が掛かったときに停止信号を出し、モータを停止させることを特徴とする制御方法。
【請求項3】
前記設定トルクを超える負荷が掛かったとき、警報を出すと共に上記シリンダに油圧を逃がすリリーフ弁を設け、機械衝撃による破壊防止を図ることを特徴とする請求項2の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−107361(P2007−107361A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326657(P2005−326657)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】