説明

1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物及びその用途

本発明の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物は、(1)エポキシ樹脂と、(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーと、(3)潜在性エポキシ硬化剤と、(4)光ラジカル重合開始剤と、(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物とを含む樹脂組成物であって、該成分(5)が、この樹脂組成物100重量部中に0.001〜5.0重量部の量で含まれていることを特徴としている。
本発明によれば、特に遮光エリアに対する硬化性に優れた1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物を提供することが可能であり、さらに、液晶滴下工法に適用可能で、遮光エリアの硬化性に優れ、かつ接着信頼性、特に高温高湿接着信頼性に優れた、光及び熱併用硬化性の液晶シール剤組成物をも提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物及びその用途に関する。より詳しくは、本発明は、1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物、これからなる液晶シール剤組成物(とくに液晶滴下工法用液晶シール剤組成物)、これを用いた液晶表示パネルの製造方法、ならびに液晶表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップ抵抗やコンデンサ等の電子部品をプリント基板にはんだ付けする際に、1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物を接着剤として使用して電子部品をプリント基板に仮固定する方法が知られている。これは、光硬化型接着剤のみで仮固定する場合の欠点、すなわち、反応の制御可能時間が短く、位置ずれが起こりやすいという欠点を解消するため、樹脂組成物に光硬化性のみだけでなく熱硬化性をも付与し、光照射により増粘させて仮固定の位置決めを確実に行い、仮固定の役割を果たさせた後、熱硬化で完全に硬化させて、耐熱性や接着性を向上させようとするものである。
また、近年、携帯電話をはじめ各種機器の表示パネルとして、軽量、高精細の特徴を有した液晶表示パネルが広く使用されるようになってきている。このような液晶表示パネルの製造方法としては、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性のシール剤組成物を液晶表示用のガラス基板に塗布して、プレキュア処理を行った後、対向基板を貼り合わせて加熱圧締接着し、液晶封入用セルを形成した後、真空中で液晶を注入し、注入後に液晶注入口を封孔するといった方法が従来から広く行われてきた。
【0003】
しかしながら、上述の液晶表示パネルの製造方法では、熱硬化の際の熱歪に起因してセルギャップのバラツキが生じやすく、さらに液晶注入工程に時間を要するため、製造工程時間を短縮し、高精細な小型液晶表示パネルや大型液晶表示パネルの生産性を向上させることが困難であった。
【0004】
これらの問題点を解決する方法として、従来、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを主成分とする光硬化型のアクリル系液晶シール剤、光硬化型のエポキシ系液晶シール剤、ノボラック型エポキシ樹脂の部分アクリル化物又は部分メタクリル化物を主成分とする光硬化と熱硬化とを併用する液晶シール剤などを使用することが提案されている。
【0005】
さらに、これらのうち、光及び熱併用硬化型液晶シール剤に関連して、該シール剤を、電極パターン及び配向膜の施された基板上に真空下で塗布し、さらに該シール剤が塗布された基板、又は対となる基板に液晶を滴下し、液晶滴下後に対向基板を貼り合わせて、第一段階として紫外線照射等により光硬化を行うことで基板の速やかな固定つまりセルギャップ形成を行い、第二段階として圧締治具フリーによる熱硬化によりシール剤を完全硬化させることで、液晶表示パネルを製造する方法が提案されている。例えば、特許文献1に液晶滴下工法なる手段として開示されているが、配線部の遮光エリア部分の信頼性に関して必ずしも満足のいくものでは無かった。
【0006】
特許文献2には、液晶の比抵抗の低下量、液晶の相転移点の変化量に関して値を規定した、光硬化成分と熱硬化成分と光硬化剤とを含有する液晶滴下工法用液晶シール剤組成物が開示されている。しかし、該シール剤組成物の光硬化後のギャップ形成特性、配線部の遮光エリアに対する硬化性については記載されておらず、得られる液晶表示パネルの信頼性が必ずしも充分とは言えなかった。
【0007】
さらに、液晶シール剤組成物には、本来、高温高湿下に長時間放置した場合の接着信頼性、液晶の電気光学特性の維持、液晶の配向乱れを起こさないなどの性能も要求される。
【0008】
また、特許文献3には、1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物と、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエン化合物と、光重合開始剤とからなる光硬化性の液晶注入口封止剤が提案されている。しかし、この光硬化性樹脂組成物は、液晶シール剤組成物として使用するには、接着性、接着信頼性に関して充分とは言えなかった。
【0009】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物であれば、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【特許文献1】特開平9-5759号公報
【特許文献2】特開2001-133794号公報
【特許文献3】特許3048478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特に遮光エリアに対する硬化性に優れた1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物を提供することを課題としている。
また、本発明は、液晶滴下工法に好適に適用できる液晶シール剤組成物を提供することをも課題としている。具体的には、第一段階である光硬化によるセルギャップ形成後のセルギャップ安定性に優れ、第二段階である熱硬化工程の際に液晶に対する汚染を抑制でき、液晶の配向乱れを起こさず、液晶の電気的特性を維持し、かつ接着信頼性、特に高温高湿接着信頼性に優れた、1液型の光及び熱併用硬化性の液晶シール剤組成物を提供することを課題としている。
【0011】
さらに、本発明は、前記液晶シール剤組成物を用いた液晶滴下工法による液晶表示パネルの製造方法および液晶表示パネルを提供することをも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物は、(1)エポキシ樹脂と、(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーと、(3)潜在性エポキシ硬化剤と、(4)光ラジカル重合開始剤と、(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物とを含んでなる樹脂組成物であって、(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物が、この樹脂組成物100重量部中に0.001〜5.0重量部の量で含まれていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物においては、前記成分(1)〜(5)の総重量を100重量部としたとき、成分(1)は1〜60重量部、成分(2)は5〜97.989重量部、成分(3)は1〜25重量部、成分(4)は0.01〜5重量部、成分(5)は0.001〜5.0重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0014】
さらに、前記成分(5)は、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとの反応によって得られたメルカプトエステル類であることが好ましい。
【0015】
本発明の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物は、さらに(6)エポキシ樹脂と、1分子内に少なくとも1つのメタクリロイル基又はアクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物とを、反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る液晶シール剤組成物は、前記1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物からなることを特徴としている。
【0017】
本発明の液晶シール剤組成物は、前記(1)〜(6)成分に加えて(7)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマー、及びこれらと共重合可能なモノマーを共重合させて得られる、環球法による軟化点温度が50〜120℃である熱可塑性ポリマーを含んでも良い。なお、本明細書中、軟化点温度とは、JISK2207に準拠し環球法により測定したものをいう。
【0018】
また、本発明に係る液晶表示パネルの製造方法は、液晶滴下工法において、前記液晶シール剤組成物を用いて、光硬化を行った後、熱硬化を行うことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の液晶表示パネルは、上記液晶表示パネルの製造方法によって製造されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特に遮光エリアに対する硬化性に優れた1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物を提供することが可能であり、さらに、液晶滴下工法に適用可能で、特に、第一段階の光硬化後の硬化物特性に優れ、セルギャップ形成後のセルギャップが安定で、第二段階の熱硬化工程の際に液晶への汚染が抑制され、しかも遮光エリアの硬化性に優れ、かつ接着信頼性、特に高温高湿接着信頼性に優れた、光及び熱併用硬化性の液晶シール剤組成物をも提供することができる。
【0021】
また、本発明によれば、該液晶シール剤組成物を用いて、表示特性、特に配線部の遮光エリアに関わる液晶表示特性に優れた液晶表示パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物及びこれからなる液晶シール剤組成物に関して詳細に説明する。
【0023】
<1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物>
本発明に係る1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物は、(1)エポキシ樹脂と、(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーと、(3)潜在性エポキシ硬化剤と、(4)光ラジカル重合開始剤と、(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物とを含んでなる樹脂組成物であって、(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物を特定量で含有し、さらに、好ましくは(6)エポキシ樹脂と、1分子内に少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基と少なくとも1つ以上のカルボキシル基とを併せ持った化合物とを、反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂を含むものである。
【0024】
まず、これらの各成分について具体的に説明する。
(1)エポキシ樹脂
本発明に使用可能なエポキシ樹脂の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、スピログリコール、グリセリン等で代表される多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応で得られた脂肪族多価グリシジルエーテル化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類及びそれらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物;
【0025】
アジピン酸、イタコン酸などで代表される脂肪族ジカルボン酸と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた脂肪族多価グリシジルエステル化合物;イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等で代表される芳香族ジカルボン酸と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエステル化合物;ヒドロキシジカルボン酸化合物とエピクロルヒドリンとの反応で得られた脂肪族多価グリシジルエーテルエステル化合物、芳香族多価グリシジルエーテルエステル化合物、又は脂環式多価グリシジルエーテル化合物;ポリエチレンジアミン等で代表される脂肪族ジアミンとエピクロルヒドリンとの反応で得られた脂肪族多価グリシジルアミン化合物;ジアミノジフェニルメタン、アニリン、メタキシリレンジアミン等で代表される芳香族ジアミンと、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルアミン化合物;ヒダントインならびにその誘導体とエピクロルヒドリンとの反応で得られたヒダントイン型多価グリシジル化合物;フェノール又はクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ポリイソプレン等のエポキシ化ジエン重合体;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカーボネート;ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル;ウレタン変性エポキシ樹脂;ポリスルフィド変性エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂(CTBN、ATBN等による変性);ポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂;エーテルエラストマー添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂;シリコンゴム変性エポキシ樹脂;アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(1)エポキシ樹脂は、成分(1)および後述する成分(2)〜(5)の総重量を100重量部としたとき、通常1〜60重量部、好ましくは10〜64重量部の量で含まれるように1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物に用いられる。
【0027】
(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマー
本発明に使用可能な(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーとしては以下のものが例示される。
【0028】
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート及び/又はジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート及び/又はトリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート及び/又はトリメタクリレート、又はそのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はトリメタクリレート、又はそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーは、成分(1)(2)および後述する成分(3)〜(5)の総重量を100重量部としたとき、通常5〜97.989重量部、好ましくは10〜84.945重量部の量で含まれるように1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物に用いられる。
【0029】
(3)潜在性エポキシ硬化剤
(3)潜在性エポキシ硬化剤としては、公知のものが使用できるが1液型で粘度安定性が良好な配合物を与えることができる点からは、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン等のアミン系潜在性硬化剤が好ましく挙げられる。これらは単独で用いても組み合わせて使用しても良い。
【0030】
このようなアミン系潜在性硬化剤を使用すると、アミン系潜在性硬化剤が有する活性水素の、前記成分(2)の分子内のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基への熱による求核付加特性が良好となるため、遮光エリアに対する熱硬化性が向上し好ましい。
【0031】
これらのうちでは、アミン系潜在性硬化剤であって、かつ、その融点又は環球法による軟化点温度が100℃以上であるものがより好ましい。アミン系潜在性硬化剤の融点又は環球法による軟化点温度が100℃以上であると、室温での粘度安定性を良好に保持でき、スクリーン印刷やディスペンサー塗布により長時間使用することが可能となる。
【0032】
アミン系潜在性硬化剤であって、かつ、その融点または環球法による軟化点温度が100℃以上である潜在性エポキシ硬化剤の具体例としては、例えば、ジシアンジアミド(融点209℃)等のジシアンジアミド類;アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点120℃)等の有機酸ジヒドラジド;2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチルトリアジン(融点215〜225℃)、2−フェニルイミダゾール(融点137〜147℃)等のイミダゾール誘導体等が好ましく挙げられる。
【0033】
(3)潜在性エポキシ硬化剤は、成分(1)〜(3)および後述する成分(4)(5)の総重量を100重量部としたとき、通常1〜25重量部、好ましくは5〜20重量部の量で含まれるように1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物に用いられる。
【0034】
(4)光ラジカル重合開始剤
本発明に使用可能な(4)光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知の材料を使用することが可能である。具体的には、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、アントラキノン類、α−アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(4)光ラジカル重合開始剤は、成分(1)〜(4)および後述する成分(5)の総重量を100重量部としたとき、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部の量で含まれるように1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物に用いられる。
【0035】
(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物
本発明に使用可能な(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物としては、1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物であればよく、特に限定されないが、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとの反応で得られたエステル系チオール化合物であるメルカプトエステル類、脂肪族ポリチオール類、芳香族ポリチオール類、チオール変性反応性シリコンオイル類等が挙げられる。
【0036】
メルカプトエステル類を得るために、好ましく用いられるメルカプトカルボン酸としては、チオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸等が挙げられ、多価アルコールとしては、エタンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0037】
上記メルカプトカルボン酸と多価アルコールとをエステル反応させて得られるメルカプトエステル類としては、たとえば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0038】
脂肪族ポリチオール類としては、デカンチオール、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、ジグリコールジメルカプタン、トリグリコールジメルカプタン、テトラグリコールジメルカプタン、チオジグリコールジメルカプタン、チオトリグリコールジメルカプタン、チオテトラグリコールジメルカプタンのほか、1,4−ジチアン環含有ポリチオール化合物等の環状スルフィド化合物や、エピスルフィド樹脂とアミン等の活性水素化合物の付加反応によって得られるエピスルフィド樹脂変性ポリチオール等が挙げられる。
【0039】
また、芳香族ポリチオールとしては、トリレン−2,4−ジチオール、キシリレンジチオール等が挙げられる。
【0040】
チオール変性反応性シリコンオイル類としては、メルカプト変性ジメチルシロキサン、メルカプト変性ジフェニルシロキサン等が挙げられる。
【0041】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうちでは、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル化反応によって得られるメルカプトエステル類が好適である。
【0042】
(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物は、本発明の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物100重量部中に通常0.001〜5.0重量部、好ましくは0.005〜3.0重量部の量で含まれている。
さらに(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物は、成分(1)〜(5)の総重量を100重量部としたとき、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜3.0重量部の量で含まれるように1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物に用いられることが望ましい。
【0043】
(6)エポキシ樹脂と、1分子内に少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物とを、反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂
本発明の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物には、必要に応じて(6)エポキシ樹脂と、1分子内に少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物とを、反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂を使用することができる。
エステル化するエポキシ樹脂は特に限定されず、前記成分(1)として記載されたエポキシ樹脂を使用することが可能である。これらのエポキシ樹脂を使用してエポキシ基1当量に対して、分子内に少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物を、0.2〜0.9当量、好ましくは0.4〜0.9当量の塩基性触媒下で反応させることにより(6)部分エステル化エポキシ樹脂を得ることができる。
【0044】
分子内に少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−メタクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−アクリロイルオキシプロピルマレイン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(6)部分エステル化エポキシ樹脂は、(6)部分エステル化エポキシ樹脂100重量部に対して、前記(1)エポキシ樹脂と、(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーとの合計量が通常160〜800重量部、好ましくは200〜500重量部となるような量で、本発明の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物に用いることができる。
その他の成分
なお、本発明の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物には、その用途に応じて、後述するように(7)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマー及びこれらと共重合可能なモノマーを共重合させて得られる熱可塑性ポリマー、(8)充填剤、(9)その他の添加剤等を適宜使用することができる。
【0045】
<液晶シール剤組成物>
(1−1)エポキシ樹脂
本発明の液晶シール剤組成物は、前記1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物からなり、前記1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物をそのまま液晶シール剤組成物として用いてもよく、前記1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物にさらに他の成分を加えて液晶シール剤組成物を得てもよい。
本発明の液晶シール剤組成物に使用可能な(1−1)エポキシ樹脂としては、前記(1)エポキシ樹脂が使用できるが、なかでも環球法による軟化点温度が40℃以上の固形エポキシ樹脂が好ましい。該固形エポキシ樹脂としては、その軟化点温度が40℃以上であって常温で固体であればよく、エポキシ樹脂の種類は限定されない。なお、本明細書中、軟化点温度とは、JISK2207に準拠し環球法により測定したものをいう。
該固形エポキシ樹脂の環球法による軟化点温度が40℃以上であると、得られる液晶シール剤組成物の、光硬化後の硬化体のガラス転移温度及び熱硬化後の硬化体のゲル分率が高くなるだけでなく、光及び熱併用硬化後の硬化体のガラス転移温度も高くなるため好ましい。
【0046】
また、固形エポキシ樹脂の数平均分子量は500〜2000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量がこの範囲にあると、該固形エポキシ樹脂の液晶に対する溶解性、拡散性が低く、得られる液晶表示パネルの表示特性が良好であり、また後述する(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーに対する相溶性が良好で好ましい。該固形エポキシ樹脂の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定可能である。該固形エポキシ樹脂としては分子蒸留法などにより高純度化を行ったものを使用することが好ましい。
【0047】
前記環球法による軟化点温度が40℃以上の固形エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類及びそれらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物;フェノール又はクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類等であって、環球法による軟化点が40℃以上のものが具体的な例として挙げられる。
【0048】
より具体的には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂の群から選ばれる少なくとも1つの樹脂又はその混合物であって、環球法による軟化点が40℃以上のものであれば好適に使用可能である。
(1−1)エポキシ樹脂は、成分(1−1)および後述する成分(2−1)〜(5−1)の総重量を100重量部としたときに、通常1〜60重量部の量で含まれるように液晶シール剤組成物に用いられる。
さらに、望ましい態様では、(1−1)エポキシ樹脂は、液晶シール剤組成物100重量部中に、好ましくは5〜40重量部、より好ましくは10〜30重量部の量で含有されるように用いられる。エポキシ樹脂の含有量がこの範囲内であると、液晶シール剤組成物の、光硬化後の硬化体のガラス転移温度及び熱硬化後の硬化体のゲル分率が高くなるだけでなく、光及び熱併用硬化後の硬化体のガラス転移温度(Tg)も高くなり好ましい。
【0049】
さらに、該(1−1)エポキシ樹脂は、後述する(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマー100重量部に対して、20〜200重量部、好ましくは50〜150重量部の量で用いられることが望ましい。成分(2−1)に対する成分(1−1)の割合がこの範囲内であると、光硬化後、ならびに光及び熱硬化後の硬化体のTgが高くなる傾向があり好ましい。
(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマー
本発明の液晶シール剤組成物に使用可能な(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーとしては、前記(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーが使用できるが、なかでも数平均分子量が250〜2000の範囲にあり、かつ、Fedorsの理論溶解度パラメータ(sp値)が10.0〜13.0(cal/cm31/2の範囲にあるものが好ましい。数平均分子量がこの範囲にあると、(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーの、液晶に対する溶解性、拡散性が低く、得られる液晶表示パネルの表示特性が良好であり、また前記成分(1−1)の好ましい態様である固形エポキシ樹脂に対する相溶性が良好である。(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーの数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定可能である。
【0050】
溶解度パラメータ(sp値)の算出方法にはさまざまな手法や計算方法が存在するが、本明細書において用いられる理論溶解度パラメータはFedorsが考案した計算法に基づくものである(日本接着学会誌、vol.22、no.10(1986)(53)(566)など参照)。この計算法では、密度の値を必要としないため、溶解度パラメータを容易に算出することができる。上記Fedorsの理論溶解度パラメータ(sp値)は、以下の式で算出されるものである。
【0051】
(ΣΔel/ΣΔvl)1/2
但し、ΣΔel=(ΔH-RT)、ΣΔvl:モル容量の和
溶解度パラメータ(sp値)が上記範囲内にあると、(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーの液晶に対する溶解性が小さく、液晶に対する汚染が抑制され、得られる液晶表示パネルの表示特性が良好となり好ましい。
【0052】
また、溶解度パラメータが上記範囲にあると、加熱処理の際に(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーのアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基に対する、後述する(3−1)潜在性エポキシ硬化剤や(5−1)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物の活性水素による求核付加反応性、つまり加熱による硬化反応性が良好となり、配線部の遮光エリアに対する硬化性が一層向上するため好ましい。
【0053】
本発明では(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーとして、成分(2)として上述したものを数種類組み合わせて組成物として使用することも可能である。この場合には、これらの組成物全体としての理論溶解度パラメータ(sp値)は、混合される各アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー、あるいはこれらのオリゴマーのモル分率の総和に基づき算出することができる。
【0054】
なお、(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーとして、前記組成物を用いる場合にも、該組成物全体の理論溶解度パラメータが10.0〜13.0(cal/cm31/2の範囲内にあることが好ましい。
【0055】
数平均分子量が250〜2000の範囲にあり、かつ、Fedorsの理論溶解度パラメータ(sp値)が10.0〜13.0(cal/cm31/2の範囲内にある(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(数平均分子量:298、sp値:11.1)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(数平均分子量:352、sp値:12.1)等が挙げられる。
【0056】
(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーは、成分(1−1)(2−1)および後述する成分(3−1)〜(5−1)の総重量を100重量部としたとき、通常5〜97.989重量部の量で含まれるように液晶シール剤組成物に用いられる。
さらに、望ましい態様では、(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーは、液晶シール剤組成物100重量部中に、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは20〜40重量部の量で含まれるように用いられる。
なお、前記(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーは、水洗法などにより、高純度化を行ったものを使用することが好ましい。
(3−1)潜在性エポキシ硬化剤
本発明の液晶シール剤組成物に使用可能な(3−1)潜在性エポキシ硬化剤としては、前記(3)潜在性エポキシ硬化剤が使用できる。
その場合、(3−1)潜在性エポキシ硬化剤は、成分(1−1)〜(3−1)および後述する成分(4−1)(5−1)の総重量を100重量部としたとき、通常1〜25重量部の量で含まれるように液晶シール剤組成物に用いられる。
さらに、望ましい態様では、(3−1)潜在性エポキシ硬化剤は、液晶シール剤組成物100重量部中に、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは5〜15重量部の量で含有されるように用いられる。この範囲内の量で(3−1)潜在性エポキシ硬化剤が含まれていると、得られる液晶表示パネルの接着信頼性が発現され、また、液晶シール剤組成物の粘度安定性も維持できる。
【0057】
なお、本発明に使用される(3−1)潜在性エポキシ硬化剤は、水洗法、再結晶法などにより、高純度化処理を行ったものを使用することが好ましい。
【0058】
(4−1)光ラジカル重合開始剤
本発明の液晶シール剤組成物に使用可能な(4−1)光ラジカル重合開始剤としては、前記(4)光ラジカル重合開始剤が使用できる。
その場合、(4−1)光ラジカル重合開始剤は、成分(1−1)〜(4−1)および後述する成分(5−1)の総重量を100重量部としたとき、通常0.01〜5重量部の量で含まれるように液晶シール剤組成物に用いられる。
さらに、望ましい態様では、(4−1)光ラジカル重合開始剤は、液晶シール剤組成物100重量部中に、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部の量で含まれるように用いられる。0.01重量部以上の量とすることにより光照射による硬化性を与え、5重量部以下とすることにより、液晶シール剤組成物の塗布安定性が良好で、光硬化の際に均質な硬化体を得ることができる。
(5−1)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物
本発明の液晶シール剤組成物に使用可能な(5−1)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物としては、前記(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物が使用できるが、なかでも数平均分子量が300〜2000の範囲内にあるものが望ましい。数平均分子量が上記範囲であると、液晶に対する溶解性、拡散性が低く、得られる液晶表示パネルの表示特性が良好である。(5−1)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定可能である。
【0059】
(5−1)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物は、成分(1−1)〜(5−1)の総重量を100重量部としたとき、通常0.001〜5.0重量部の量で含まれるように液晶シール剤組成物に用いられる。
さらに、望ましい態様では、成分(5−1)は、液晶シール剤組成物100重量部中に、好ましくは0.01〜5.0重量部、より好ましくは0.05〜3.0重量部の量で含有される。成分(5−1)の含有量が上記範囲内であると、配線部の遮光エリアに対する硬化性が充分であるとともに、成分(1−1)のエポキシ樹脂との間で好ましくない反応が生じることがなく、粘度安定性が良好となるため好ましい。
(6−1)エポキシ樹脂と、1分子内に少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物とを、反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂
本発明の液晶シール剤組成物には、上記成分(1−1)〜(5−1)に加えて必要に応じて、(6−1)エポキシ樹脂と、1分子内に少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物とを、反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂を、使用することができる。
本発明の液晶シール剤組成物に使用可能な(6−1)部分エステル化エポキシ樹脂としては、前記(6)部分エステル化エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0060】
前記(6)部分エステル化エポキシ樹脂は、樹脂骨格内にエポキシ基とアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を併せ持っているので、液晶シール剤組成物中の(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマー、及び、(1−1)エポキシ樹脂との相溶性を向上させることができ、これによって光硬化後の硬化体のガラス転移温度(Tg)を上昇させ、かつ、接着信頼性を発現させることが可能となる。
さらに、前記(6)部分エステル化エポキシ樹脂のなかでも、1分子内に少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物として、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−メタクリロイルオキシプロピルマレイン酸を用いたものがより好ましい。
【0061】
これらのように分子内に少なくとも1つのメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基を併せ持った化合物を、エポキシ樹脂と反応させて得られた部分エステル化エポキシ樹脂を液晶シール剤組成物に使用した場合、光硬化後の硬化体のガラス転移温度(Tg)が高くなる傾向にあり、ガラス基板の合わせずれが抑制されるのでより好ましい。
【0062】
(6−1)部分エステル化エポキシ樹脂を、本発明にかかる液晶シール剤組成物に用いる場合には、液晶シール剤組成物100重量部中に、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは10〜20重量部の量で含有されることが望ましい。
さらに、該(6−1)部分エステル化エポキシ樹脂は、(6−1)部分エステル化エポキシ樹脂100重量部に対して、(1−1)エポキシ樹脂と、(2−1)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーとの合計量が160〜800重量部、好ましくは200〜500重量部となるように液晶シール剤組成物中に含まれることが望ましい。
【0063】
(6−1)部分エステル化エポキシ樹脂が、成分(1−1)と(2−1)との関係で、この範囲内の量で含まれていると、光硬化後の硬化体のガラス転移温度(Tg)が高く、かつ熱硬化後の硬化体のゲル分率も高くなる傾向にある。
【0064】
なお、(6−1)部分エステル化エポキシ樹脂は、水洗法などにより、高純度化処理を行ったものを使用することが好ましい。
【0065】
(7)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマー及びこれらと共重合可能なモノマーを共重合させて得られる軟化点温度が50〜120℃である熱可塑性ポリマー
本発明の液晶シール剤組成物には、前記成分(1−1)〜(5−1)に加えて、成分(6−1)と共にあるいは単独で(7)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマー及びこれらと共重合可能なモノマーを共重合させて得られる熱可塑性ポリマーを使用しても良い。
その軟化点温度は50〜120℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは60〜80℃である。該熱可塑性ポリマーの軟化点温度がこの範囲にあると以下の点で有利である。すなわち、得られる液晶シール剤組成物を加熱した際にこの熱可塑性ポリマーが溶融し、この液晶シール剤組成物中に含まれる成分、例えば前記(1−1)エポキシ樹脂、および、前記(2−1)のアクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーと相溶する。そして、相溶した熱可塑性ポリマーが膨潤することにより、液晶シール剤組成物の、加熱による硬化前の粘度低下を抑制することができる。そして、液晶への液晶シール剤組成物の成分の染み出し、液晶への成分拡散を抑制することが可能となる。
【0066】
前記(7)熱可塑性ポリマーは、好ましくは粒子形状を有しており、非架橋型、架橋型のいずれであってもよく、さらに架橋型のコア層と非架橋型のシェル層とからなるコアシェル構造を有する複合型であってもよい。
【0067】
また、この(7)熱可塑性ポリマーは、液晶シール剤組成物中で良好な分散性を確保する点からは、平均粒径が通常0.05〜5μmであり、好ましくは0.07〜3μmの範囲である。なお、本明細書中、平均粒径とは、コールターカウンター法による質量基準の粒度分布から求めたモード径を意味する。
【0068】
このような(7)熱可塑性ポリマーとしては、すでに公知のものを任意に選定し使用することが可能であるが、具体的には、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーを通常30〜99.9重量%、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは60〜80重量%の量で、これらと共重合可能なモノマーを通常0.1〜70重量%、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%の量で共重合させてポリマー粒子を含むエマルションの形態で得ることができる。
【0069】
前記アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどの単官能アクリル酸エステルモノマー;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどの単官能メタクリル酸エステルモノマーが挙げられる。これらのうちでは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートが好ましい。これらは、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
【0070】
前記アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、具体的には、たとえば、アクリルアミド類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの酸モノマー;スチレン、スチレン誘導体などの芳香族ビニル化合物;1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどの共役ジエン類;ジビニルベンゼン、ジアクリレート類などの多官能モノマーなどが挙げられる。これらは、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
【0071】
これらのうち、前記(7)熱可塑性ポリマーが非架橋型の場合には、前記アクリルアミド類、前記酸モノマーおよび前記芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーを用いることが好ましい。また、前記(7)熱可塑性ポリマーが、架橋型および複合型の場合には、これらのうち、前記共役ジエン類または前記多官能モノマーのいずれかを必須とし、さらに必要に応じて、前記アクリルアミド類、前記酸モノマーおよび前記芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーを使用することができる。
【0072】
この(7)熱可塑性ポリマーは、非架橋型、架橋型のいずれであってもよく、さらに架橋型のコア層と非架橋型のシェル層とからなるコアシェル構造を有する複合型であってもよいが、これらのうちでは、複合型のコアシェル構造を有する略球状粒子であることが好ましい。
【0073】
該コアシェル構造を形成するコア層は、前記アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーおよびこれらと共重合可能なモノマーを共重合させて得られるエラストマーからなる。
【0074】
すなわち、前記コア層は、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーを通常30〜99.9重量%の量で、それと共重合可能なモノマーを通常0.1〜70重量%の量で共重合させて得られたエラストマーからなることが好ましい。
【0075】
前記コア層に用いられる、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、前記共役ジエン類または前記多官能モノマーのいずれかを必須とし、さらに必要に応じて、前記アクリルアミド類、前記酸モノマーおよび前記芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーを使用することができる。
【0076】
なお、この場合、前記シェル層は、前述したアクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーおよびこれらと共重合可能なモノマーを共重合させてなり、該アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、前記アクリルアミド類、前記酸モノマーおよび前記芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーを用いることが好ましい。
【0077】
このように、前記(7)熱可塑性ポリマーとして、微架橋構造を付与した架橋型のコア層のまわりに、非架橋型のシェル層を設けた、コアシェル構造を有する略球状粒子を用いることにより、さらに前記(7)熱可塑性ポリマーに、液晶シール剤組成物中で応力緩和剤としての役割を果たさせることができる。
【0078】
また、本発明では、このようにして形成した前記(7)熱可塑性ポリマーの粒子表面を微架橋して使用することが好ましい。前記(7)熱可塑性ポリマーの粒子表面を微架橋する方法としては、前記(7)熱可塑性ポリマーの粒子表面に存在するエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基などを金属架橋させて、アイオノマー架橋させる方法が好ましく挙げられる。
【0079】
このように前記(7)熱可塑性ポリマーの粒子表面に微架橋構造を付与することにより室温下でエポキシ樹脂および溶剤等に容易に溶解しなくなり、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0080】
前記(7)熱可塑性ポリマーを使用する場合には、該成分(7)は、本発明にかかる液晶シール剤組成物100重量部中に、好ましくは2〜40重量部、より好ましくは5〜25重量部の量で含有される。前記(7)熱可塑性ポリマーの含有量がこの範囲であると、シール外観が良好で、液晶シール剤組成物の成分の液晶への染み出し、拡散を抑制しまた、樹脂粘度の上昇を抑え作業性を維持することが可能である。
【0081】
(8)充填剤
さらに、本発明の液晶シール剤組成物には(8)充填剤を配合しても良い。この(8)充填剤としては、通常、電子材料分野で使用可能なのものであればいずれでもよい。具体的には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化珪素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、アスベスト粉、石英粉、雲母、ガラス繊維等の無機充填剤が挙げられる。また、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、これらを構成するモノマーと該モノマーと共重合可能なモノマーとを共重合させた共重合体(前記(7)熱可塑性ポリマーを除く)等の公知の有機充填剤も使用可能である。また、前記(8)充填剤を、エポキシ樹脂やシランカップリング剤等でグラフト化変性させたのち使用することも可能である。
【0082】
本発明で用いる充填剤の最大粒径はレーザー回折法で10μm以下、好ましくは6μm以下、更に好ましくは4μm以下である。充填剤の最大粒子径値が上記値以下であると、液晶セル製造時のセルギャップの寸法安定性が一層向上するため好ましい。
【0083】
前記充填剤を使用する場合には、前記充填剤は、液晶シール剤組成物100重量部中に、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは10〜30重量部の量で含まれていることが望ましい。充填剤の含有量が上記範囲内であれば、液晶シール剤組成物のガラス基板上への塗布安定性が良好であり、さらに、光硬化性も良好となるためセルギャップ幅の寸法安定性が向上する。
【0084】
(9)その他の添加剤
本発明では、更に本発明の目的を損なわない範囲内の量で、熱ラジカル発生剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等の添加剤の使用が可能である。また、所望のセルギャップを確保するためスペーサー等を配合しても良い。
【0085】
1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物、液晶シール剤組成物の調製方法
本発明の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物および液晶シール剤組成物の調製方法には、それぞれ特に限定はなく、上記各成分を常法により混合して得ることができる。混合は、例えば、双腕式攪拌機、ロール混練機、2軸押出機、ボールミル混練機等のすでに公知の混練機械を介して行えば良く、最終的に真空脱泡処理後にガラス瓶やポリ容器に密封充填され、貯蔵、輸送されて良い。
【0086】
1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物、液晶シール剤組成物の物性
1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物および液晶シール剤組成物の硬化前の粘度は、それぞれ特に限定されないが、E型粘度計による25℃粘度が30〜1000Pa・sの範囲が好ましく、100〜500Pa・sの範囲がより好ましい。
【0087】
またE型粘度計のローター番号を同一とする、例えば、毎分10回転のズリ速度から求められた5rpm粘度値と毎分1回転のズリ速度から求めた0.5rpm粘度値との比(0.5rpm粘度値/5rpm粘度値)であらわされるチクソ指数には、特に制約は無いが、好ましくは1〜5の範囲であることが望ましい。
【0088】
<液晶表示パネルおよびその製造方法>
本発明の液晶表示パネルは、前述のようにして得られた液晶シール剤組成物を用いて、液晶滴下工法により製造される。具体的な製造方法の一例を以下に説明する。
【0089】
予め設定したギャップ幅のスペーサーを本発明の液晶シール剤組成物に混合する。さらに対になる液晶セル用ガラス基板を用い、一方の液晶セル用ガラス基板上に該液晶シール剤組成物をディスペンサーにて枠型に塗布する。貼り合わせ後のパネル内部容量に相当する液晶材料をその枠内に精密に滴下する。他方のガラスを対向させ、加圧下で紫外線を1000〜18000mJの量を照射してガラス基板を貼り合わせる。さらにその後、無加圧のまま110℃〜140℃の温度で1〜3時間加熱して充分に硬化させ液晶表示パネルを形成する。
【0090】
用いられる液晶セル用基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板が挙げられる。なお、前記した基板群では当然のこととして酸化インジウムで代表される透明電極やポリイミド等で代表される配向膜その他無機質イオン遮蔽膜等が必要部に施工されてなるいわゆる液晶セル構成用ガラス基板又は同プラスチック基板が用いられる。
【0091】
液晶セル用基板に液晶シール剤組成物を塗布する方法には特に限定はなく、例えば、スクリーン印刷塗布方法又はディスペンサー塗布方法などで行って良い。
【0092】
液晶材料にも制約は無く、例えばネマチック液晶が好適である。
【0093】
本発明の液晶表示パネルを適用することが可能な液晶表示素子としては、例えば、エムシャツト(MSchadt)とダブリュヘルフリッヒ(WHelfrich)らが提唱したTN型 (Twisted Nematic)の液晶素子あるいはSTN型(Super Twisted Nematic
)の液晶素子、又は、クラーク(NAClark)とラガウェル(S T Lagerwall)により提唱された強誘電型液晶素子、また薄膜トランジスター(TFT)を各画素に設けた液晶表示素子等が好ましい例として挙げられる。
【0094】
以下、代表的な実施例により本発明を詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。なお、例中に記載の%および部は、それぞれ重量%、重量部を意味する。
【0095】
また、下記例中で用いた原材料ならびに実施した試験方法は以下のとおりである。
【0096】
<使用原材料等>
(1)エポキシ樹脂
前記成分(1)のエポキシ樹脂として、o−クレゾールノボラック型固形エポキシ樹脂(日本化薬社製「EOCN−1020−75」;環球法による軟化点温度 75℃、GPCによる数平均分子量 1100)を使用した。
(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこ
れらのオリゴマー
前記成分(2)のアクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーとして、ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製「ビスコート#300」;sp値 11.1、数平均分子量 298)を、トルエン及び超純水を用いた希釈−洗浄方法を3回繰り返して、高純度化処理して使用した。
(3)潜在性エポキシ硬化剤
潜在性エポキシ硬化剤として、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(味の素ファインテクノ社製「アミキュアVDH-J」;融点 120℃)、及び、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(四国化成社製「キュアゾール2MA−OK」;融点220℃)を使用した。
(4)光ラジカル重合開始剤
光ラジカル重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製「イルガキュア184」)を使用した。
(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物
1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物として、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(丸善ケミカル社製「3TP−6」;数平均分子量 399)を使用した。
(6)エポキシ樹脂と、1分子内に少なくとも1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物とを、反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂
前記成分(6)として、以下の合成例1によって合成された部分エステル化樹脂を使用した。
【0097】
[合成例1]部分エステル化エポキシ樹脂の合成
攪拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた500mlの四つ口フラスコにビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成社製「エポトートYDF−8170C」)160gを入れ、メタクリル酸43g、トリエタノールアミン0.2gを添加混合し、乾燥エア気流下、110℃、5時間加熱攪拌してメタクリロイル基含有部分エステル化エポキシ樹脂を得た。得られた材料を超純水にて3回洗浄処理を繰り返した。
(7)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマー及びこれらと共重合可能なモノマーを共重合させて得られる軟化点温度が50〜120℃である熱可塑性ポリマー
前記成分(7)の熱可塑性ポリマーとして、下記合成例2に従って合成した熱可塑性ポリマーを使用した。
【0098】
[合成例2]前記成分(7)の熱可塑性ポリマーの合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1000mlの四つ口フラスコにイオン交換水400g、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1.0gを仕込み65℃まで昇温した。過硫酸カリウム0.4gを添加した後、次いでホモジナイザーで乳化したt−ドデシルメルカプタン1.2g、n−ブチルアクリレート156g、ジビニルベンゼン4.0g、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム3.0g、イオン交換水200gからなる混合溶液を4時間で連続滴下した。滴下後2時間反応を継続させた後、メチルメタクリレート232gを一括で添加した後、1時間反応を継続させ、次いでアクリル酸8gを1時間で連続添加した。65℃一定で2時間反応を継続させた後冷却した。水酸化カリウムにてpH=7に中和して固形分40.6重量%のエマルション溶液を得た。このエマルション溶液の1,000gを噴霧乾燥器にかけて、0.1%以下の水分含有量からなる高軟化点粒子約400gを得た。得られた高軟化点粒子の軟化点温度は80℃であった。なお、該高軟化点粒子をN−4コールターカウンターにて粒子径を測定した結果、平均粒径は180nmであった。
(8)充填剤
充填剤として、超高純度シリカ(アドマテックス社製「SO−E1」;平均粒径0.3μm)を使用した。
(9)添加剤
添加剤として、シランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM403」)を選定使用した。
<試験方法>
(i)粘度安定性テスト
樹脂組成物のE型粘度計による25℃初期粘度を測定した後、該樹脂組成物100部をポリエチレン製容器に入れて密封し、−10℃/30日経過後の同粘度値をE型粘度計により測定した。その結果を、密封前の25℃粘度値を100とし−10℃/30日経過後の同粘度値の変化率で表す。10%未満の変化率であった場合に貯蔵安定性が良好の意味で記号Aで、また10〜50%の変化率であった場合を貯蔵安定性がやや問題の意味で記号Bで、50%を超える変化があった場合を貯蔵安定性不良の意味で記号Cで例中に記載した。
(ii)熱硬化後の硬化体ゲル分率測定
樹脂組成物を、約120μm厚に塗布し、オーブンにて窒素雰囲気中120℃、60分加熱処理し、得られた100μm厚の熱硬化後の硬化体1.0gをソックスレーによる抽出法により、抽出溶媒としてメタノール100gを使用して、3時間還流抽出後、抽出後の硬化体を105℃、3時間乾燥させ抽出前後の硬化体の重量変化により次式に従って熱硬化後の硬化体のゲル分率を算出した。
【0099】
熱硬化後の硬化体ゲル分率(%)={(メタノール抽出、乾燥後の硬化体重量)/(メタノール抽出前の硬化体重量)}×100
熱硬化後の硬化体ゲル分率が、75%を超えるものを熱硬化性(遮光部硬化性)が良好の意味で記号Aで、また60〜75%であった場合を熱硬化性(遮光部硬化性)がやや問題の意味で記号Bで、60%未満であった場合を熱硬化性(遮光部硬化性)不良の意味で記号Cで例中に記載した。
(iii)光及び熱併用硬化後の樹脂組成物接着強度測定
樹脂組成物100重量部に対して5μmのガラスファイバーを1重量部添加したものを、25mm×45mm厚さ5mmの無アルカリガラス上に直径1mmの円状にスクリーン印刷し、対となる同様のガラスを十字に貼り合わせて、荷重をかけながら東芝製紫外線照射装置を使用し、100mW/cm2の紫外線照射照度で2000mJの照射エネルギーで光硬化を行い、さらに、上記光硬化後の接着試験片をオーブンにて窒素雰囲気中120℃、60分加熱処理し、得られた試験片を引っ張り試験機(モデル210;インテスコ社製)を使用し、引っ張り速度2mm/分で平面引張り強度を測定し、この値を接着強度(MPa)とした。
(iv)高温高湿保管後の接着信頼性テスト
上記(iii)光及び熱併用硬化後の樹脂組成物接着強度測定と同様にして接着試験片を作成し、得られた接着試験片を温度60℃、湿度95%の高温高湿試験機に保管し、250時間保管後に得られた試験片を引っ張り試験機(モデル210;インテスコ社製)を使用し、引っ張り速度2mm/分で平面引張り強度を測定した。
【0100】
そして、高温高湿保管前の接着強度に対する接着強度保持率が50%を超えるものを高温高湿保管後の接着信頼性が良好であるとして記号Aで、また30〜50%であった場合を高温高湿保管後の接着信頼性がやや問題であるとして記号Bで、30%未満であった場合を熱硬化性(遮光部硬化性)不良であるとして記号Cで例中に記載した。
(v)液晶表示パネル表示特性テスト
透明電極及び配向膜を付した40mm×45mmガラス基板(EHC社製、RT−DM88PIN)上に、樹脂組成物100重量部に対して5μmのガラスファイバーを1重量部添加したものを、ディスペンサー(ショットマスター;武蔵エンジニアリング社製)にて0.5mmの線幅、20μmの厚みで35mm×40mmの枠型に描画し、貼り合わせ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社製)を、ディスペンサーを使用し枠内に精密に滴下し、さらに対となるガラス基板を減圧下で貼り合わせ、荷重をかけ固定した後、東芝製紫外線照射装置を使用し、100mW/cm2の紫外線照射照度で2000mJの照射エネルギーで光硬化を行い、さらに窒素雰囲気下で、120℃、60分加熱処理した後、両面に偏光フィルムを貼り付け、液晶表示パネルを得た。
【0101】
得られた液晶表示パネルを、直流電源装置を用い5Vの印加電圧で駆動させた際の液晶シール剤(硬化後の樹脂組成物)近傍の液晶表示機能が駆動初期から正常に機能するか否かでパネル表示特性の評価判定を行った。
【0102】
該判定方法は、シール際まで液晶表示機能が発揮出来ている場合を表示特性が良好であるとして記号Aで、シール際の近傍の0.5mm以内が正常に液晶表示されない場合をやや表示特性が劣るとして記号Bで、またシール際の近傍0.5mmを超えて表示機能の異常を見た場合を表示特性が著しく劣るとして記号Cと表示した。
(vi)液晶表示パネル遮光エリアの表示特性テスト
透明電極及び配向膜を付した40mm×45mmガラス基板(EHC社製、RT−DM88PIN)上に、樹脂組成物100重量部に対して5μmのガラスファイバーを1重量部添加したものを、ディスペンサー(ショットマスター;武蔵エンジニアリング社製)にて0.5mmの線幅で35mm×40mmの枠型に描画し、貼り合わせ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社製)をディスペンサーを使用し枠内に精密に滴下し、さらに対となるガラス基板を減圧下で貼り合わせ、荷重をかけ固定した後、上基板のシール部分をアルミテープで、UV光が直接あたらないようにシール上部分に被覆を行い、東芝製紫外線照射装置を使用し、100mW/cm2の紫外線照射照度で500mJの照射エネルギーで光硬化し、120℃、60分加熱処理した後、遮光エリアを付した液晶表示パネルを作成し、アルミテープを剥がした後、両面に偏光フィルムを貼り付け、前記と同様に液晶表示パネルのシール際の表示機能の観察を行った。
【0103】
判定方法は、シール際まで液晶表示機能が発揮出来ている場合を表示特性が良好であるとして記号Aで、シール際の近傍の0.5mm以内が正常に液晶表示されない場合をやや表示特性が劣るとして記号Bで、またシール際の近傍0.5mmを超えて表示機能の異常を見た場合を表示特性が著しく劣るとして記号Cと表示した。
【0104】
[実施例1]
成分(1)25部を、成分(2)30部に加熱溶解させて均一溶液とし、成分(3)として1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(アミキュアVDH−J)6部及び2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(キュアゾール2MA−OK)1部を、成分(4)を1部、さらに、成分(7)を15部、成分(5)を1部、成分(8)を20部、成分(9)を1部加え、ミキサーで予備混合し、次に3本ロールで固体原料が5μm以下になるまで混練し、混練物を真空脱泡処理して樹脂組成物(P1)を得た。
【0105】
なお、該樹脂組成物(P1)のE型粘度計による25℃初期粘度は250Pa・sであった。
【0106】
この樹脂組成物(P1)について上記(i)〜(vi)の試験を行った。結果を表2に示す。
【0107】
[実施例2、3、4]
それぞれ表1の処方に従って配合したほかは、実施例1と同様にして、樹脂組成物(P2)、(P3)、(P4)を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0108】
[比較例1]
成分(5)および(6)を使用せず、表1の処方に従って配合したほかは、実施例1と同様にして、樹脂組成物(C1)を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0109】
[比較例2]
成分(5)を10部使用して、表1の処方に従って配合したほかは、実施例1と同様にして、樹脂組成物(C2)を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0110】
[比較例3]
成分(1)(3)(6)を使用せず、成分(2)のアクリロイル基に対して成分(5)のチオール基が1:1のモル比となるように使用し、表1の処方に従って配合したほかは、実施例1と同様にして、樹脂組成物(C3)を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
表2の結果から明らかなように、実施例の樹脂組成物P1〜P4は、粘度安定性が良好であり、また熱硬化後の硬化体のゲル分率が高いため、光及び熱併用硬化後の接着特性、高温高湿保管後の接着信頼性、及び、液晶表示パネル表示特性、遮光エリアの表示特性に優れることが確認された。したがって、これらの樹脂組成物は液晶シール剤組成物として好適に使用できることがわかる。
【0114】
一方、比較例1の樹脂組成物C1は接着性、高温高湿接着信頼性に劣り、また、液晶表示パネルの表示特性が劣っており、液晶シール剤組成物として好ましくないことがわかる。また、比較例2の樹脂組成物C2は貯蔵安定性が不良であり、上記(ii)〜(vi)の試験項目を実施することができなかった。
【0115】
また、比較例3の樹脂組成物C3は、接着性に劣り、熱硬化後のゲル分率が低いため、表示特性、遮光エリアの表示特性が劣っており、液晶シール剤組成物として好ましくないことがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)エポキシ樹脂と、(2)アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーと、(3)潜在性エポキシ硬化剤と、(4)光ラジカル重合開始剤と、(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物とを含んでなる樹脂組成物であって、
(5)1分子内に2個以上のチオール基を有する化合物が、この樹脂組成物100重量部中に0.001〜5.0重量部の量で含まれていることを特徴とする1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(1)〜(5)の総重量を100重量部としたとき、成分(1)が1〜60重量部、成分(2)が5〜97.989重量部、成分(3)が1〜25重量部、成分(4)が0.01〜5重量部、成分(5)が0.001〜5.0重量部の量で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(5)が、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとの反応によって得られたメルカプトエステル類であることを特徴とする請求項1に記載の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(6)エポキシ樹脂と、1分子内に少なくとも1つのメタクリロイル基又はアクリロイル基と少なくとも1つのカルボキシル基とを併せ持った化合物とを、反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の1液型の光及び熱併用硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする液晶シール剤組成物。
【請求項6】
液晶滴下工法において、請求項5に記載の液晶シール剤組成物を用いて、光硬化を行なった後、熱硬化を行うことを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された液晶表示パネルの製造方法によって製造されたことを特徴とする液晶表示パネル。


【国際公開番号】WO2005/052021
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515786(P2005−515786)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017482
【国際出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】