説明

1,3/1,4−シクロヘキサンジメタノール系モノマーおよびポリマー

ポリマーまたはプレポリマーを作るのに有用な化合物混合物であって、該化合物混合物は式I


(式中、RはH、アクリロイル、メタクリロイルまたはビニルであり、Rはアクリロイル、メタクリロイルまたはビニルである。)
の化合物を含み、式Iの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、そして式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量は40モル%未満である。式II


の化合物を含む化合物混合物を製造する方法であって、式IIの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物からなり、そして式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量は25モル%未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シスおよびトランス1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物を主成分とするモノマーおよびポリマーならびに該混合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化(典型的には遊離基紫外線光重合)被膜およびインクは、被膜および印刷産業に広く使用されている。先行技術のシクロヘキサンジメタノールジアクリレート系放射線硬化被膜およびインク配合物は、硬化被膜に優れた最終用途特性(たとえば硬度および強度)を提供するが、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートが室温で固体物質であり、しばしばたいていのアクリル酸エステルに溶解しないので、そのような配合物は使いにくい。エトキシ化またはプロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート系液体被膜およびインク配合物が知られているが、生じる被膜はより不十分な最終用途特性を有する。室温で液体でありかつ生じる被膜に改善された最終用途特性を付与するような配合物が発見されたならば、シクロヘキサンジメタノール化学系被膜およびインク配合物の技術における進歩になるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前述の問題を解決するものである。本発明は、室温で液体であり、かつ優れた硬度、強度、透明度、耐磨耗性、接着性、耐汚染性および耐溶剤性を有する被膜を得るために使用することができる、シクロヘキサンジメタノール系アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの混合物に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施態様において、本発明は、ポリマーまたはプレポリマーを作るのに有用な化合物混合物であって、該化合物混合物は式I
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Rは、H、アクリロイル、メタクリロイルまたはビニルであり、Rはアクリロイル、メタクリロイルまたはビニルである。)
の化合物を含み、式Iの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量は40モル%未満である。
【0007】
別の実施態様において、本発明は、式II
【0008】
【化2】

【0009】
の化合物を含む化合物混合物(ただし式IIの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物からなり、式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量は25モル%未満である。)を製造する方法であって、該方法はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物(ただし該化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量は25モル%超である。)を蒸留して留出留分および残留留分(ただし残留留分はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物であり、式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量は25モル%未満である。)を生成する工程からなることを特徴とする。
【0010】
さらに別の実施態様において、本発明は式III
【0011】
【化3】

【0012】
の単位を含むプレポリマーであって、式IIIの単位はシスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、式IIIの単位のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量が40モル%未満であり、プレポリマーはポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリカーボネートアクリレート、ポリカーボネートメタクリレート、ポリウレタンアクリレートおよびポリウレタンメタクリレートからなる群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1つの実施態様において、本発明は、ポリマーまたはプレポリマーを作るのに有用な化合物混合物であって、該化合物混合物は式I
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、RはH、アクリロイル、メタクリロイルまたはビニルであり、Rはアクリロイル、メタクリロイルまたはビニルである。)
の化合物を含み、式Iの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量が40モル%未満である。好ましくは、式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量は、25モル%未満である。より好ましくは、式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量は、15モル%未満である。好ましくは、式Iの化合物を含む化合物混合物は室温で液体である。式Iの化合物を含む化合物混合物は、限定するものではないが、たとえば、被膜、インク、接着剤およびエラストマーの用途に使用することができる。プレポリマーとは、この実施態様に関しては、後にポリマーを作るために使用される式Iの化合物の誘導体と定義される。
【0016】
式Iの化合物の混合物は、(a)UNOXOL銘柄ジオール(ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)から入手可能なシスおよびトランス−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物)をアクリル化(またはメタクリル化)して室温で液体と固体の混合物である生成物を生成すること、そして(b)固体生成物から液体生成物を分離すること(液体生成物が所望の生成物である。)によって作ることができる。その代わりに、式Iの化合物の混合物は、(a)UNOXOL銘柄ジオール(ダウ・ケミカル社から入手可能なシスおよびトランス−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物)を蒸留して留出留分および残留留分を生成すること、そして(b)残留留分をアクリル化(またはメタクリル化)することによって作ることができる。これらの2つの方法のいずれかのために、シスおよびトランス−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物は、米国特許第6,252,121号明細書の教示に従って作ることができる。式Iを有するビニル誘導体は、水酸化カリウム触媒を使用して、120〜180℃で3〜20バールの圧力で、シスおよびトランス−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物をアセチレンと反応させることによって作ることができる。
【0017】
本発明は、また、式IIの化合物を含む化合物混合物を製造する方法である。
【0018】
【化5】

【0019】
ただし、式IIの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物からなり、そして式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量は25モル%未満である。該方法は、シスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物(ただし該化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量が25モル%超である。)を蒸留して留出留分および残留留分を生成する工程によって特徴づけられる。ただし、残留留分はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物であり、式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量が25モル%未満である。好ましくは、式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量は15モル%未満である。式IIの化合物は、式Iの化合物の調製において前駆体として使用することができる。
【0020】
式IIの化合物は、式IVの化合物の混合物を調製するために、エトキシ化またはプロポキシ化されることができる。
【0021】
【化6】

【0022】
式中、RはH、アクリロイル、メタクリロイルまたはビニルであり、Rはアクリロイル、メタクリロイルまたはビニルであり、nは1〜10の範囲の整数であり、mは1〜10の範囲の整数であり、RはHまたはメチルであり、RはHまたはメチルである。
【0023】
式IIの化合物は、ジカルボン酸と反応させ、次にアクリル化またはメタクリル化して、ポリエステルアクリレートプレポリマーまたはポリエステルメタクリレートプレポリマーを生成させることができる。式IIの化合物は、ジカーボネートと反応させ、次にアクリル化またはメタクリル化して、ポリカーボネートアクリレートプレポリマーまたはポリカーボネートメタクリレートプレポリマーを生成させることができる。そして、式IIの化合物は、ジイソシアナートと反応させ、次にアクリル化またはメタクリル化して、ポリウレタンアクリレートプレポリマーまたはポリウレタンメタクリレートプレポリマーを生成させることができる。そのようなプレポリマーすべての共通の特徴は式IIIの単位である。
【0024】
【化7】

【0025】
ただし、式IIIの単位は、シスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、式IIIの単位のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量は40モル%未満(好ましくは25モル%未満、より好ましくは15モル%未満)である。
【0026】
本発明のアクリレート、メタクリレート、およびビニルモノマーおよびプレポリマーは、典型的には、過酸化物重合触媒の使用によるような遊離基重合法によって重合される。しかし、本発明のそのようなモノマーおよびプレポリマーは、最も好ましくは、紫外線によって活性化される光開始剤を使用して遊離基光重合法によって重合される。配合物が電子ビーム(EB)放射によって硬化される用途については、光開始剤は重合を開始するためには必要とされない。
【0027】
本発明のモノマーおよびプレポリマーは、充填剤、好ましくは無機ナノ粒子を配合することができ、たとえばコロイドシリカ配合物(たとえばコロイドシリカアクリレート系)を調製するためにコロイドシリカを配合することができる。コロイドシリカアクリレートは、限定するものではないが、たとえば、アクリレート被膜の耐引掻性を高める。コロイドシリカアクリレートは、限定するものではないが、たとえば、米国特許第4,177,315号明細書および米国特許第4,348,462号明細書に開示されている。
【実施例】
【0028】
次の実施例および比較例は、優れた硬度、強度、透明度、耐磨耗性、接着性、耐汚染性および耐溶剤性を有する被膜を得るために、本発明の化合物混合物を使用することができることを示す。別段の言及がない限り、部およびパーセントはすべて質量基準である。
【0029】
実施例1
2.5キログラムのUNOXOL銘柄ジオール(約30質量%のトランス−1,4−ジオール含有量を有するダウ・ケミカル社から入手可能なシスおよびトランス−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物)を、50cmのOldershaw塔(15段)を使用して、123〜134℃および0.7mmHgで分別蒸留する。残留留分をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、約15質量%のトランス−1,4−異性体を含むことが見いだされた。残留物の0.1キログラムを、400ミリリットルのトルエンおよび252グラムのジイソプロピルエチルアミンと混合し、氷浴で冷却する。153グラムの塩化アクリロイルを加え、2時間混合する。その後、混合物を室温に暖め、水(2×300mL)、0.1M−クエン酸(5×300mL)、飽和NaHCO(300mL)、飽和NaCl(300mL)で洗浄し、MgSOで乾燥する。トルエンを減圧で除去し、残留物を60℃および0.7mmHgで乾燥し、粗液体生成物を得る。粗液体生成物は、シリカゲルおよびヘキサン・酢酸エチル(勾配溶離40:1〜10:1)を使用してクロマトグラフィで分離する。シリカゲルカラムからの画分を混ぜ合わせ、重合防止剤MEHQ(100ppm)を加え、溶媒を蒸発させ、残留物を減圧乾燥して、精製液体生成物を得る。精製液体生成物は、NMRおよびガスクロマトグラフィーによって分析したところ、式I
【0030】
【化8】

【0031】
(式中、Rはアクリロイルであり、Rはアクリロイルである。)
の化合物を含む化合物混合物であり、式Iの化合物はシスおよびトランス1,3および1,4置換シクロヘキサンの混合物からなり、式Iの化合物のトランス1,4置換シクロヘキサン含有量が約13.6質量%であった。
【0032】
精製液体生成物100部に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社(Ciba)製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が193N/mm、ビッカース硬度(フィッシャースコープ(Fischerscope)H100C動的押込試験装置(microindentation)によって測定)が18.6、モジュラスが4.84GPa、光透過率が91%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.15%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度が3H、およびASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が100摩擦超の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0033】
精製液体生成物100部に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ポリカーボネート基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が180N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.61%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がHB、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が200摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が5B、ASTM試験D1044による耐磨耗性(CS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベール(Taber)サイクル後の曇り度変化)が18.9%、およびASTM試験D1308による耐薬品および汚染性点数(0点は汚染なしを示し、5点は最大汚染を示す。)が水道水、エタノール、酢、黒染料、希カセイソーダ、黄からし、ベータダインおよびアンモニア水でそれぞれ0、1、0、0、0、0、0および0の厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0034】
実施例2
実施例1の精製液体生成物および脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(サイテック社(Cytec)製EBECRYL 8402)の質量比50:50の配合物100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ポリカーボネート基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が151N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.63%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がB、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が100摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が5B、およびASTM試験D1044による耐磨耗性(CS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベールサイクル後の曇り度変化)が14.1%の厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0035】
実施例3
0.1キログラムのUNOXOL銘柄ジオール(トランス−1,4−ジオール含有量が約30質量%のダウ・ケミカル社から入手可能なシスおよびトランス−1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物)を、400ミリリットルのトルエンおよび252グラムのジイソプロピルエチルアミンと混合し、氷浴で冷却する。153グラムの塩化アクリロイル物を加え、2時間混合する。その後、混合物を室温に暖め、固相を除去するためにろ過する。濾液を、水(2×300mL)、0.1M−クエン酸(5×300mL)、飽和NaHCO(300mL)、飽和NaCl(300mL)で洗浄し、MgSOで乾燥する。トルエンは減圧において除去し、残留物を60℃および0.7mmHgで乾燥して、約180gの粗液体生成物を得る。粗液体生成物を、ヘキサン・酢酸エチル(勾配溶離40:1〜10:1)およびシリカゲルを使用してクロマトグラフィで分離する。シリカゲルカラムからの画分を混ぜ合わせ、重合防止剤MEHQ(100ppm)を加え、溶媒を蒸発させ、残留物は減圧乾燥して、液相と固相からなる138グラムの精製生成物の生成させ、液相と固相を濾過によって分離する。精製液体生成物は、NMRおよびガスクロマトグラフィーによって分析したところ、式I
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、RおよびRはアクリロイルである。)
の化合物を含む化合物混合物であり、式Iの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、そして式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量は約6.1質量%であった。
【0038】
その固相は、NMRおよびガスクロマトグラフィーによって分析したところ、式I
【0039】
【化10】

【0040】
(式中、RおよびRはアクリロイルである。)
の化合物を含む化合物混合物であり、式Iの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、そして式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量は約52質量%であった。
【0041】
精製液体生成物100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が198N/mm、ビッカース硬度が19、モジュラスが4.94GPa、光透過率が91%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.08%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度が3H、およびASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が100摩擦超の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0042】
比較例1
Sartomer SR238銘柄モノマー(ヘキサンジオールジアクリレート)100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が114N/mm、ビッカース硬度が10.5、モジュラスが2.78GPa、光透過率が90.8%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.07%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がH、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が100摩擦超、およびASTM試験D1308による耐汚染性点数(ポリカーボネート基板上の35マイクロメートルの被膜について)が水道水、エタノール、酢、黒染料、希カセイソーダ、黄からし、ベータダインおよびアンモニア水でそれぞれ0、0、0、2、0、1、0および1の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0043】
ポリカーボネート試験基板上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させて、厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜を生成させたときは、その被膜は、ユニバーサル硬度が104N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.67%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がHB、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が200摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が5B、ASTM試験D1044によるCS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベールサイクル後の耐磨耗性が20.0%であった。
【0044】
比較例2
Sartomer SR306銘柄モノマー(トリプロピレングリコールジアクリレート)100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が116N/mm、ビッカース硬度が8.78、モジュラスが3.07GPa、光透過率が91.1%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.06%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がB、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が100摩擦超、およびASTM試験D1308による耐汚染性点数(ポリカーボネート基板上の35マイクロメートルの被膜について)が水道水、エタノール、酢、黒染料、希カセイソーダ、黄からし、ベータダインおよびアンモニア水でそれぞれ1、2、1、3、2、1、0および1の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0045】
ポリカーボネート試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させて、厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜を生成させたときは、その被膜は、ユニバーサル硬度が105N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.68%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度が2B、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が200摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が1B、ASTM試験D1044によるCS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベールサイクル後の耐磨耗性が36.8%であった。
【0046】
比較例3
Sartomer SR508銘柄モノマー(ジプロピレングリコールジアクリレート)100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が156N/mm、ビッカース硬度が12.4、モジュラスが4.34GPa、光透過率が91.0%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.05%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がH、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が100摩擦超、およびASTM試験D1308による耐汚染性点数(ポリカーボネート基板上の35マイクロメートルの被膜について)が水道水、エタノール、酢、黒染料、希カセイソーダ、黄からし、ベータダインおよびアンモニア水でそれぞれ0、1、0、2、1、1、0および1の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0047】
ポリカーボネート試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させて、厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜を生成させたときは、その被膜は、ユニバーサル硬度が142N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.62%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度が2B、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が200摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が0B、ASTM試験D1044によるCS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベールサイクル後の耐磨耗性が26.6%であった。
【0048】
比較例4
Sartomer SR9003銘柄モノマー(プロポキシネオペンチルグリコールジアクリレート)100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が61.1N/mm、ビッカース硬度が4.9、モジュラスが1.62GPa、光透過率が91.6%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.06%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がB、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が50摩擦、およびASTM試験D1308による耐汚染性点数(ポリカーボネート基板上の35マイクロメートルの被膜について)が水道水、エタノール、酢、黒染料、希カセイソーダ、黄からし、ベータダインおよびアンモニア水でそれぞれ2、2、0、4、1、1、0および4の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0049】
ポリカーボネート試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させて、厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜を生成させたときは、その被膜は、ユニバーサル硬度が74.3N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.63%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度が2B、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が200摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が1B、ASTM試験D1044によるCS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベールサイクル後の耐磨耗性が47.1%であった。
【0050】
比較例5
Sartomer CD580銘柄モノマー(エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート)100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が36.4N/mm、ビッカース硬度が2.98、モジュラスが0.92GPa、光透過率が91.1%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.04%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がB、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が100摩擦超、およびASTM試験D1308による耐汚染性点数(ポリカーボネート基板上の35マイクロメートルの被膜について)が水道水、エタノール、酢、黒染料、希カセイソーダ、黄からし、ベータダインおよびアンモニア水でそれぞれ0、1、1、4、1、2、2および3の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0051】
ポリカーボネート試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させて、厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜を生成させたときは、その被膜は、ユニバーサル硬度が49.1N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.60%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度が3B、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が200摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が0B、ASTM試験D1044によるCS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベールサイクル後の耐磨耗性が32.5%であった。
【0052】
比較例6
Sartomer CD581銘柄モノマー(エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート)100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が18.9N/mm、ビッカース硬度が2.81、モジュラスが0.39GPa、光透過率が91.3%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.02%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がB未満、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験は30摩擦、およびASTM試験D1308による耐汚染性点数(ポリカーボネート基板上の35マイクロメートルの被膜について)が水道水、エタノール、酢、黒染料、希カセイソーダ、黄からし、ベータダインおよびアンモニア水でそれぞれ2、1、0、5、2、2、5および2の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0053】
ポリカーボネート試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させて、厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜を生成させたときは、その被膜は、ユニバーサル硬度が9.32N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.63%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度が3B、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が200摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が0B、ASTM試験D1044によるCS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベールサイクル後の耐磨耗性が36.8%であった。
【0054】
比較例7
Sartomer CD582銘柄モノマー(プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート)100部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製IRGACURE 184銘柄光開始剤)5部を混合し、ガラス試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させたところ、ユニバーサル硬度が16.9N/mm、ビッカース硬度が1.81、モジュラスが0.38GPa、光透過率が91.5%、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.08%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度がH、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が30摩擦、およびASTM試験D1308による耐汚染性点数(ポリカーボネート基板上の35マイクロメートルの被膜について)が水道水、エタノール、酢、黒染料、希カセイソーダ、黄からし、ベータダインおよびアンモニア水でそれぞれ1、2、2、5、1、2、1および3の厚さ10マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜が得られた。
【0055】
ポリカーボネート試験基板の上に塗布し、紫外線を照射することによって硬化させて、厚さ35マイクロメートル(±2マイクロメートル)の被膜を生成させたときは、その被膜は、ユニバーサル硬度が6.80N/mm、ASTM試験D1003/D1044による初期曇り度が0.60%、ASTM試験D3363による鉛筆硬度が3B、ASTM試験D5402によるMEK摩擦試験が200摩擦超、ASTM試験D3359による接着性が0B、ASTM試験D1044によるCS−10Fホイールおよび1000グラム荷重での100タベールサイクル後の耐磨耗性が50.8%であった。
【0056】
結論
結論として、本発明はその好ましい実施態様によって上に記述したが、それはこの開示の精神および範囲の中で変更することができる。したがって、本出願は、ここに開示された一般的な原理を用いて、本発明のいかなる変形、使用または改作をも包含するように意図される。それにより、本出願は、本発明が属する技術分野における既知または慣習的な実施の中に来るものとして、そして特許請求の範囲内に入るものとして、そのような本開示からの逸脱を包含するように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーまたはプレポリマーを作るのに有用な化合物混合物であって、該化合物混合物は式I
【化1】

(式中、RはH、アクリロイル、メタクリロイルまたはビニルであり、Rはアクリロイル、メタクリロイルまたはビニルである。)
の化合物を含み、式Iの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、そして式Iの化合物のトランス1,4−置換シクロヘキサン含有量は40モル%未満であることを特徴とする化合物混合物。
【請求項2】
式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量が25モル%未満であることを特徴とする請求項1に記載の化合物混合物。
【請求項3】
式Iの化合物のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量が15モル%未満であることを特徴とする請求項1に記載の化合物混合物。
【請求項4】
該化合物混合物が室温で液体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物混合物。
【請求項5】
コロイド無機ナノ粒子または無機充填剤をさらに含む、耐引掻性被膜を作るのに有用な請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物混合物。
【請求項6】
式II
【化2】

の化合物を含む化合物混合物(ただし式IIの化合物はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物からなり、式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量は25モル%未満である。)を製造する方法であって、該方法はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物(ただし前記化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量が25モル%超である。)を蒸留して留出留分および残留留分(ただし残留留分はシスおよびトランス−1,3−および1,4−メタノール置換シクロヘキサンの混合物であり、式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量は25モル%未満である。)を生成する工程からなることを特徴とする方法。
【請求項7】
式IIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量が15モル%未満であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式III
【化3】

の単位を含むプレポリマーであって、式IIIの単位がシスおよびトランス−1,3−および1,4−置換シクロヘキサンの混合物からなり、式IIIの単位のトランス−1,4−置換シクロヘキサン含有量が40モル%未満であり、該プレポリマーがポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリカーボネートアクリレート、ポリカーボネートメタクリレート、ポリウレタンアクリレートおよびポリウレタンメタクリレートからなる群から選択されることを特徴とするプレポリマー。
【請求項9】
式IIIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量が25モル%未満であることを特徴とする請求項8に記載のプレポリマー。
【請求項10】
式IIIの化合物のトランス−1,4−メタノール置換シクロヘキサン含有量が15モル%未満であることを特徴とする請求項8に記載のプレポリマー。

【公表番号】特表2009−525382(P2009−525382A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553231(P2008−553231)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/046696
【国際公開番号】WO2007/092071
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】