説明

2ポイント変調と適応遅延マッチングとを用いるデジタル位相ロックドループ

適応遅延マッチングとともに2ポイント変調をサポートするデジタル位相ロックドループ(DPLL)が記述される。DPLLは、それぞれ、発振器の周波数および/または位相の広帯域および狭帯域の変調をサポートするハイパスおよびローパス変調パスを含む。DPLLは、他の変調パスの遅延と合わせるためにある変調パスの遅延を適応して調整することができる。ある設計において、DPLLは、2つの変調パスのうちの一つに、可変遅延を提供する適応遅延ユニットを含む。適応遅延ユニット内で、遅延計算ユニットは、2つの変調パスに適用される変調する信号と、DPLLにおける位相エラー信号とに基づいて、可変遅延を決定する。補正器は可変遅延の小数部分を提供し、プログラマブル遅延ユニットは可変遅延の整数部分を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
I.分野
本開示は、一般的に電子工学に、特に、2ポイント変調を用いるデジタル位相ロックドループ(DPLL)に関係する。
【0002】
II.背景
DPLLは、発信器の周波数および/または位相を調節するために一般的に使用される回路である。ある一般の適用において、DPLLは、発信器の周波数および/または位相を、正確な周波数を持つ参照信号に固定するために使用されるとしてもよい。
【0003】
別の適用において、DPLLは、変調する信号を用いる発信器の周波数および/または位相を変調するために使用されるとしてもよい。変調する信号の帯域幅がDPLLの閉じたループ帯域幅よりはるかに小さい場合、変調する信号はDPLL内のループフィルタの前に適用されてもよい。しかしながら、変調する信号の帯域幅が閉じたループ帯域幅より広い場合、2ポイント変調が行なわれてもよく、また、変調する信号はDPLLにおける2つの変調パスに適用されてもよい。ある変調パスは、ループフィルタの前に接続されるとしてもよく、狭帯域の変調に使用されてもよい。他の変調パスは、ループフィルタの後に接続されるとしてもよく、広帯域の変調に使用されてもよい。2ポイント変調は、有効にDPLLの帯域幅を増加させるために使用されてもよい。その結果、発振器は、DPLLの通常動作を最小に乱すとともに、広帯域の変調する信号で変調された周波数になりえる。しかしながら、2ポイント変調の性能は、各変調パス用に適用された適切な利得および遅延に依存する。
【概要】
【0004】
適応遅延マッチングとともに2ポイント変調をサポートするDPLLがここに記述される。DPLLは、(i)発振器の周波数および/または位相の広帯域の変調をサポートするハイパス変調パス、および(ii)発振器の周波数および/または位相の狭帯域の変調をサポートするローパス変調パスを含む。DPLLは、他の変調パスの遅延と合わせるためにある変調パスの遅延を適応して調整することができる。適応遅延マッチング/調整は、通常のオペレーションの間に、DPLLで利用可能な1以上の信号に基づく遅延の動的な調整について言及する。
【0005】
ある設計において、DPLLは、2つの変調パスのうちの一つに、可変遅延を提供することができる適応遅延ユニットを含むとしてもよい。ある設計において、適応遅延ユニットは、遅延計算ユニット、補間器、プログラマブル遅延ユニットを含むとしてもよい。遅延計算ユニットは、2つの変調パスに適用される変調する信号と、DPLLにおける位相エラー信号とに基づいて、可変遅延を決定するとしてもよい。可変遅延は、(i)サンプル期間の整数を含む整数部分、および(ii)1サンプル期間の小数を含む小数部分、に分解されるとしてもよい。補間器は可変遅延の小数部分を提供するとしてもよく、プログラマブル遅延ユニットは可変遅延の整数部分を提供するとしてもよい。DPLLは、ローパス変調パスの利得を合わせるために、ハイパス変調パスに対する可変遅延を提供することができる適応スケーリングユニットをさらに含むとしてもよい。
【0006】
本開示の各種の局面および特徴は、さらに以下に詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、2ポイント変調と適応(アダプティブ)遅延マッチングとを用いるDPLLを示す。
【図2】図2は、2ポイント変調と適応遅延マッチングとを用いる2つのDPLLを示す。
【図3】図3は、2ポイント変調と適応遅延マッチングとを用いる2つのDPLLを示す。
【図4】図4は、性能低下対遅延ミスマッチを示す。
【図5】図5は、小数部の遅延を得るための線形補間を示す。
【図6】図6は、適応遅延ユニットを示す。
【図7】図7は、遅延計算ユニットおよび補間器を示す。
【図8】図8は、適応スケーリングユニットを示す。
【図9】図9は、適応遅延マッチングとともに2ポイント変調を実行するための処理を示す。
【図10】図10は、ワイヤレス通信装置のブロック図を示す。
【詳細な説明】
【0008】
「典型的」という用語は、「例、実例、または例証として役立つ」ことを意味するためにここに使用される。「典型的」としてここに説明されるいずれの設計も不可欠ではなく、他の設計よりも好ましくまたは有利として解釈される。
【0009】
図1は、2ポイント変調および適応遅延マッチングを用いるDPLL100の設計のブロック図を示す。2ポイント変調は、また、一般的に、デュアルポート変調と呼ばれる。DPLL100内で、変調する信号fm(t)は、ローパス(低域通過)変調パスおよびハイパス(広域通過)変調パスの両方に提供される。ハイパス変調パスにおいて、適応スケーリングユニット110は、利得を持つ変調する信号を基準化し、基準化された変調する信号fms(t)を提供する。適応遅延ユニット120は、適切な量で基準化された変調する信号を遅らせて、遅延された変調する信号fmd(t)を提供する。ローパス変調パスにおいて、アキュムレータ130は、変調する信号を蓄積し、周波数を位相に変換し、変調位相信号pm(t)を提供する。適応遅延ユニット140は、適切な量で変調位相信号を遅らせて、遅延された変調位相信号pmd(t)を提供する。
【0010】
加算器142は、遅延された変調位相信号からフィードバック信号pfb(t)を引き、位相誤差(エラー)信号pe(t)を提供する。ループフィルタ150は、位相誤差信号をフィルタし、フィルタされた位相誤差信号を提供する。ループフィルタ150は、DPLL100のループダイナミックスをセットし、閉じたループ帯域幅、DPLL100の獲得時間および獲得範囲、位相ノイズ性能、などを決定する。加算器152は、ループフィルタ150からのフィルタされた位相誤差信号と、適応遅延ユニット120からの遅延された変調する信号とを合計し、制御信号を発振器160に提供する。制御信号は、発振器の位相が変調の位相を追うように、発振器160の周波数を調節する。発振器160は、変調する信号によって変調されたその周波数を持つ変調された信号m(t)を提供する。デバイダ170は、変調された信号を周波数に分割し、加算器142にフィードバック信号を提供する。
【0011】
図1は、ハイパス変調パスにおける適応遅延ユニット120およびローパス変調パスにおける適応遅延ユニット140を示す。図1は、また、適応遅延ユニットがハイパスおよびローパス変調パスに配置されることができる可能な場所を示す。図1は、ハイパス変調パスにおいて、適応スケーリングユニット110の後に配置される適応遅延ユニット120を示す。一般的に、適応遅延ユニット120は、適応スケーリングユニット110の前または後のいずれかに配置されるとしてもよい。
【0012】
図1に示される設計において、適応遅延ユニットは、ハイパスおよびローパス変調パスの双方で使用されてもよい。他の設計において、単に、1つの適応遅延ユニットが、1つの変調パスで−典型的には、より短い遅延を持つ変調パスで、使用されてもよい。この適応遅延ユニットは、その変調パスの遅延を変化させることができ、他の変調パスの遅延と調和する。双方の設計について、一旦DPLL100がロックされると、遅延マッチングは、ハイパスおよびローパス変調パス経由で2ポイント変調の影響が、ループフィルタ150の入力でキャンセルされることを可能にしてもよい。DPLL100は、その後、あたかもローパスおよびハイパス変調が適用されないかのように動作してもよい。
【0013】
図1に示されるように、ローパス変調パスに対する変調ポイントは、加算器142の入力にあってもよく、ループフィルタ150の前にある。ハイ変調パスに対する変調ポイントは、加算器152のインプットにあってもよく、ループフィルタ150の後にある。変調する信号の帯域幅は、DPLL100が使用されるための適用によって決定されるとしてもよく、DPLLの閉じたループの帯域幅よりも広くてもよい。ローパス変調パスの帯域幅は、ループフィルタ150によって決定され、所望のノイズフィルタリングおよびループダイナミックスを達成するために比較的狭くてもよい(例えば100KHz未満)。個別のハイパスおよびローパス変調パス経由で変調する信号を適用することによって、DPLL100は、DPLLの閉じたループ帯域幅より広い信号の帯域幅を用いる発振器160を変調することができる。
【0014】
発振器160はデジタルで制御される発振器(DCO)、電圧制御発振器(VCO)、電流制御発振器(ICO)、数値制御発振器(NCO)、または、その周波数が制御信号によって調節されることができるいくつかの他のタイプの発振器としてもよい。発振器160は、foscの名目周波数で動作するとしてもよく、DPLL100が使用される適用によって決定されてもよい。例えば、DPLL100は、ワイヤレス通信装置に使用されてもよく、foscは、何百メガヘルツ(MHz)またはわずかのギガヘルツ(GHz)でもよい。
【0015】
図1は、また、DPLL100における各種の回路ブロックに関連する遅延を示す。ローパス変調パスにおいて、アキュムレータ130は、τ1の遅延を持ち、適応遅延ユニット140は、τLPの変動する遅延を持つ。ハイパス変調パスにおいて、スケーリングユニット110は、τ2の遅延を持ち、適応遅延ユニット120は、τHPの変動する遅延を持つ。発振器160は、τ3の遅延を持ち、デバイダ170は、τ4の遅延を持つ。変調する信号から、ハイパス変調パス経由で、ループフィルタ150までの全体の遅延τHPMは、
τHPM=τ2+τ3+τ4+τHP, 式(1)
のように表現されるとしてもよく、ここで、適応遅延ユニット120が存在しない場合、τHPはゼロと等しいとしてもよい。
【0016】
変調する信号から、ローパス変調パス経由で、ループフィルタ150までの全体の遅延τLPMは、
τLPM=τ1+τLP, 式(2)
のように表現されるとしてもよく、ここで、適応遅延ユニット140が存在しない場合、τLPはゼロと等しいとしてもよい。
【0017】
2つの変調パスの全体の遅延は、τHPM=τLPMのように一致すべきである。もし、適応遅延ユニット120のみがハイパス変調パスにおいて使用される場合、その後、このユニットの遅延は、次のように設定されるとしてもよい:
τHP=τ1−τ2−τ3−τ4, τLP=0について。 式(3)
もし、適応遅延ユニット140のみがローパス変調パスにおいて使用される場合、その後、このユニットの遅延は、次のように設定されるとしてもよい:
τLP=τ2+τ3+τ4−τ1, τHP=0について。 式(4)
図4は、8進の位相偏移キーイング(8−PSK)について、誤差ベクトルの大きさ(EVM)、対、ハイパスおよびローパス変調パスの間の遅延ミスマッチ、のプロット410を示す。EVMは、一般的に、変調性能を測定するために使用される。ミスマッチは、DPLL内部の各種のデジタル回路ブロックを更新するために使用される1クロックのためのサンプル期間の刻みで与えられる。例えば、サンプル期間は、57.6MHzで、1クロックのための17.4ナノ秒(ns)と等しいとしてもよい。図4に示されるように、EVMの低下は、0.2より下のサンプル期間の遅延ミスマッチについて最小としてもよいが、段々により大きくなる遅延ミスマッチについて段々に悪化してもよい。
【0018】
図1に戻って参照すると、発振器160の遅延τ3は、典型的に未知であり、サンプル期間の小数部としてもよい。適応遅延ユニット120または140は、発振器160の遅延を計算するために使用されるとしてもよく、サンプル期間の小数部の解像度を持つとしてもよい。適応遅延ユニット120または140は、また、DPLL100内の他の回路ブロックの遅延を計算するために使用されるとしてもよい。
【0019】
図1は、2ポイント変調および適応遅延マッチングを用いるDPLLのモデルを示す。
【0020】
図1におけるDPLLは、様々な設計で実装されるとしてもよい。
【0021】
図2は、デルタ−シグマ変調器(DSM)と適応遅延マッチングとに基づいて2ポイント変調を用いるDPLL200の設計のブロック図である。DPLL200内で、変調する信号fm(t)は、ローパス変調パスとハイパス変調パスとの双方に提供される。ハイパス変調パスにおいて、適応スケーリングユニット210は、可変の利得g(t)を用いて変調する信号を基準化し、基準化された変調する信号fms(t)を提供する。適応遅延ユニット220は、可変のτ(t)で基準化された変調する信号fms(t)を遅延させて、遅延された変調する信号fmd(t)を提供する。ローパス変調パスにおいて、デルタ−シグマ変調器230は、比較的低い入力レートで複数のビット(例えば10ビット以上)の解像度を持つ変調する信号を受け、高い出力レートで同じ解像度を持つが1つまたはいくらかのビットを使用するDSM出力信号を生成する。
【0022】
マルチモジュラス・デバイダ270は、DCO260からの変調された信号m(t)を受け、DSM出力信号によって決定された可変周波数デバイダ係数(ファクタ)によって、変調された信号を周波数に分割し、フィードバック信号pfb(t)を提供する。位相デジタル変換器(PDC)240は、基準(Ref)クロックfrefの位相に対して、フードバック信号の位相を比較し、位相誤差信号Pe(t)を提供する。ループフィルタ250は、位相誤差信号をフィルタし、フィルタされた位相誤差信号を提供する。加算器252は、フィルタされた位相誤差信号と、適応遅延ユニット220からの遅延された変調する信号とを加算し、DCO260に制御信号を提供する。
【0023】
適応スケーリングユニット210は、後述のように、変調する信号と位相誤差信号とに基づいて、ハイパス変調パスに対する利得g(t)を適応的に変化させてもよい。適応遅延ユニット220は、また、後述のように、基準化された変調する信号と位相誤差信号とに基づいて、ハイパス変調パスに対する遅延τ(t)を適応的に変化させてもよい。図2に示される設計において、適応遅延ユニット220だけがハイパス変調パスにおいて使用され、適応遅延ユニットはローパス変調パスにおいて使用されない。他の設計において、適応遅延ユニット220は省略されてもよく、適応遅延ユニットは位相デジタル変換器240の後に挿入されてもよい。
【0024】
基準クロックは、水晶発振器(XO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、または正確な周波数を持ついずれかの他のタイプの発振器に基づいて生成されてもよい。基準クロックの周波数は、DCO260の周波数よりはるかに低くてもよい。例えば、frefは数10MHzでよいのに対して、foscは数GHzでよい。
【0025】
図3は、アキュムレータと適応遅延マッチングとに基づいて2ポイント変調を用いるDPLL300の設計のブロック図を示す。DPLL300内で、変調する信号fm(t)は、ローパス変調パスとハイパス変調パスとの双方に提供される。ハイパス変調パスにおいて、適応スケーリングユニット310は、可変利得g(t)を用いて変調する信号を基準化し、基準化された変調する信号fms(t)を提供する。適応遅延ユニット320は、可変遅延τ(t)で基準化された変調する信号を遅れさせ、遅延された変調する信号fmd(t)を提供する。ローパス変調パスにおいて、アキュムレータ330は、変調する信号を蓄積し、周波数を位相へ変換し、変調する位相信号pm(t)を提供する。
【0026】
位相デジタル変換ユニット340は、基準クロックfrefの位相に対してフィードバック信号ffb(t)の位相を比較し、PDC出力信号を提供する。加算器342は、PDC出力信号と、アキュムレータ330からの変調する位相信号とを合計し、位相誤差信号Pe(t)を提供する。ループフィルタ350は、位相誤差信号をフィルタし、フィルタされた位相誤差信号を提供する。加算器352は、フィルタされた位相誤差信号と、適応遅延ユニット320からの遅延された変調する信号とを合計し、DCO360に制御信号を提供する。デバイダ370は、DCO360から変調された信号を受け、固定係数で変調された信号を周波数に分割し、フィードバック信号を提供する。固定デバイダ係数は、発振周波数foscおよび基準周波数frefに基づいて決定されてもよい。
【0027】
適応スケーリングユニット310は、後述されるように、ハイパス変調パスに対する利得g(t)を適応的に変化させてもよい。適応遅延ユニット320は、また、後述されるように、ハイパス変調パスに対する遅延τ(t)を適応的に変化させてもよい。図3に示される結成において、適応遅延ユニット320だけがハイパス変調パスにおいて使用され、適応遅延ユニットはローパス変調パスにおいて使用されない。他の設計において、適応遅延ユニット320は省略されてもよく、適応遅延ユニットはアキュムレータ330の後に挿入されてもよい。
【0028】
図2および3は、2ポイント変調と適応遅延マッチングとを用いるDPLLの2つの典型的な設計を示す。2ポイント変調と適応遅延マッチングとを用いるDPLLは、また、他の設計で実装されるとしてもよい。DPLL200および300は、すべてまたはほとんどのデジタル回路で実装されるとしてもよい。例えば、図2および3におけるすべての回路ブロックは、あるいはDCO260および360を除き、デジタル回路で実装されるとしてもよい。すべてのデジタル回路ブロックは、あるいはデバイダ270および370を除いて、fsampの適切な周波数で、サンプルクロックに基づいて動作するとしてもよい。デジタル回路ブロックに、または、によって、提供される信号は、その後、fsampのサンプルレートで、サンプルのシーケンスによって構成されるとしてもよい。デジタル回路ブロックは、十分なビット幅および解像度を持つように設計されてもよい。
【0029】
2ポイント変調を用いるDPLLについて、適応遅延マッチングは2つの変調パスの遅延を調和するために実行されるとしてもよい。適応遅延マッチングについて、1つの変調パス(例えば、図2および3に示される設計におけるハイパス変調パス)の遅延は、2つの変調パス間の任意の遅延差(例えば、DCO260または360の遅延における変動による)を計算するために適応的に調節されてもよい。適応遅延調整は、最小2乗平均(least mean square:LMS)アルゴリズム、最小2乗(least square:LS)アルゴリズム、MMSE(minimum mean square error)アルゴリズムなどのような様々な適応アルゴリズムに基づいてもよい。これらの様々な適応アルゴリズムは、Prentice Hall、1996、第3版、「適応フィルタ理論」と題名の付けられた本においてSimon Haykinによって記述される。明確化のために、LMSアルゴリズムに基づく適応遅延調整が後で記述される。
【0030】
LMSアルゴリズムは、位相誤差信号pe(t)の平均2乗誤差(MSE)を最小化することを試みてもよく、
【数1】

【0031】
のように、表されてもよい。ここで、pref(t)は、基準位相信号であり、基準クロックの位相であり、
fb(t,τ)は、遅延τの関数のような、デバイダからのフィードバック信号であり、
E[ ]は、期待オペレーションを表す。
【0032】
MSEを最小化するために、遅延は、適応的に、次のように更新されてもよい:
τ(t)=τ(t−1)+Δτ(t)
=τ(t−1)+μ・fms(t)・p 式(6)
ここで、μは、適応(アダプテーション)ステップサイズであり、
Δτ(t)は、サンプル期間tに対する遅延アップデート値であり、
τ(t)は、サンプル期間tに対する遅延である。
【0033】
より大きい適応ステップサイズは、その最終の値への遅延τ(t)のより速い収束(コンバージェンス)を結果として得るが、より多くのジッタを結果として得るとしてもよい。反対に、より小さな適応ステップサイズは、より遅い収束を結果として得るが、より少ないジッタを結果として得てもよい。適切な適応ステップサイズは、収束レートとジッタとの間のトレードオフに基づいて選択されてもよい。適応ステップサイズは、また、変えられてもよい。例えば、より大きい適応ステップサイズは、獲得のために使用されるとしてもよく、より小さい適応ステップサイズは、収束後トラッキングに使用されるとしてもよい。
【0034】
式(6)に示されるように、遅延τ(t)は、適応ステップサイズμ、基準化された変調する信号fms(t)、及び位相エラー信号pe(t)に依存する量Δτ(t)によって更新されてもよい。遅延アップデート値を計算する際の増加を避けるために、遅延は、適応的に、次のように更新されるとしてもよい:
τ(t)=τ(t−1)+μ・sign[fms(t)]・pe(t), 式(7)
ここで、sign[fms(t)]は、基準化された変調する信号の符号(サイン)である。適応ステップサイズは、2の累乗であるとして選択されてもよい。この場合、遅延アップデート値は、(i)適応ステップサイズによって決定された特定のビット数によるビットシフトpe(t)すること、および(ii)fms(t)がゼロより少ない場合にビットシフトpe(t)されたものの符号を反転すること、によって得られるとしてもよい。
【0035】
遅延τ(t)は、サンプル期間の刻みで与えられ、整数部分と小数部分へ分解されてもよい。τ(t)の整数部分は、遅延のサンプル期間の整数を提供することができるプログラマブル遅延ユニットで得られるとしてもよい。τ(t)の小数部分は、1つのサンプル期間の小数部である遅延を提供することができる補間器で得られるとしてもよい。
【0036】
任意の与えられた遅延τについて、ここでτは、正または負の値でもよく、基準化された変調する信号fms(t)は、τによって遅延され、遅延された変調する信号fmd(t)=fms(t−τ)を得る。τの整数部分は、fms(t−τ)に最も近い基準化された変調する信号において1つのサンプルを選択することによって求められるとしてもよい。τの小数部分は、fms(t−τ)の両サイドの配置される2以上のサンプルを補間することによって求められるとしてもよい。
【0037】
ある設計において、線形補間は、小数部の遅延を求めるために使用されるとしてもよい。簡略のために、以下の記述は、−1≦τ(t)≦1、および3つの周波数変調サンプルf(t−1)、f(t)およびf(t+1)が利用可能であり、f(t)は現在のサンプル、f(t−1)は前/より古いサンプル、f(t+1)は次/将来のサンプルであると仮定する。これらの3つのサンプルは、基準化された変調信号を遅らせることおよびf(t+1)としてこの信号の最新のサンプルを使用することによって求められるとしてもよい。
【0038】
小数の遅延を求めるための線形補間は、次のように実行されるとしてもよい:
【数2】

【0039】
図5は、小数の遅延を求めるための式(8)に基づく線形補間を示す。3つの周波数変調サンプルf(t−1)、f(t)およびf(t+1)は、3つの黒点によって示され、最良フィット曲線510によって連結されている。断続直線520は、f(t−1)とf(t)とについて2つの点を連結し、式(8)の上半分に基づいて生成される。線520は、0≦τ(t)≦1の場合に、線形補間のために使用されることができる。断続直線530は、f(t)とf(t+1)とについて2つの点を連結し、式(8)の下半分に基づいて生成される。線530は、−1≦τ(t)≦0の場合に、線形補間のために使用されることができる。
【0040】
式(8)の設計は、τ(t)の正および負の値の双方について、fmd(t)を計算するために2つの掛け算を使用する。掛け算の数は、以下のように、式(8)の項を再整理することにより、1つに減らすことができる:
【数3】

【0041】
式(9)は式(8)と等価である。しかしながら、τ(t)とのたった1つの掛け算がfmd(t)の計算に使用される。
【0042】
式(8)および(9)は、小数の遅延を求めるために線形補間を使用する。また、式(8)および(9)は、例えば、2次の補間、スプライン補間など、高階の補間で得られてもよい。
【0043】
図6は、図2の適応遅延ユニット220と図3の適応遅延ユニット320に使用されることができる、適応遅延ユニット600の設計のブロック図を示す。適応遅延ユニット600内では、遅延計算ユニット610は、基準化された変調する信号fms(t)および位相エラー信号pe(t)を受け、例えば、式(6)または(7)に示されるように、それぞれのサンプル期間に対する遅延τ(t)を計算する。プログラマブル遅延ユニット620は、基準化された変調する信号およびユニット610からの遅延の整数部分を受け、サンプル期間の整数によって基準化された変調する信号を遅らせる。補間器630は、プログラマブル遅延ユニット620からの出力信号およびユニット610からの遅延の小数部分を受ける。補間器630は、例えば、式(8)または(9)に示されるように、小数遅延を求めるための補間を実行し、遅延された変調する信号fmd(t)を提供する。
【0044】
図7は、図6の遅延計算ユニット610および補間器630の設計のブロック図を示す。この設計において、遅延計算ユニット610は、式(7)を実現する。遅延計算ユニット610内で、ユニット710は、基準化された変調する信号を受け、各サンプル期間におけるこの信号の符号(例えば+1または−1)を提供する。乗算器712は、位相エラー信号に利得g1を掛け、ユニット714は、乗算器712の出力をいっぱいにする。乗算器716は、ユニット714の出力にユニット710からの基準化された変調する信号の符号を掛ける。乗算器718は、乗算器716の出力に利得g2を掛け、各サンプル期間の遅延アップデート値Δτ(t)を提供する。加算器720は、前の遅延値τ(t−1)に遅延アップデート値を合計し、現在のサンプル期間に対する現在の遅延値τ(t)を提供する。レジスタ722は、現在の遅延値を格納し、次のサンプル時期に、加算器720にこの値を提供する。
【0045】
図7に示される設計において、適応ステップサイズμは、2つの利得g1およびg2を用いて実現され、所望の解像度を提供する場合にハードウェアを単純化してもよい。それぞれの利得は、2のべき乗でもよく、乗算器712および718はビットシフト器を用いて実現されてもよい。それぞれのビットシフト器は、対応する利得によって決定される特定のビット数によってそれぞれの入力値をシフトすることができる。ビットシフト器716は、単に、ユニット714の出力の符号を転換(フリップ)するとしてもよい。レジスタ722は、遅延における小さい変化を蓄積するために、十分なビット数(例えば10ビットより多い)を持つとしてもよい。加算器720の出力の所定数の最大有効ビット(MSB)(例えば3〜5のMSB)は、遅延τ(t)として提供されてもよい。
【0046】
図7に示される設計において、補間器630は、式(9)を実現する。補間器630は、(i)もし適応遅延ユニット600がプログラマブル遅延ユニット620を含まなければ、基準化された変調する信号、または、(ii)もしそれが存在するなら、プログラマブル遅延ユニット620からの中間の変調する信号、を受けるとしてもよい。補間器630内では、基準化されたまたは中間の変調する信号は、直列に連結されている2つの遅延ユニット730aおよび730bに提供される。各遅延ユニット730は、1サンプル期間の遅延を提供する。ユニット732は、現在の遅延値τ(t)を受け、もしτ(t)≧0の場合は論理ハイ(1)を提供し、他の場合には論理ロー(0)を提供する。多重化装置742は、2つの入力で前のサンプルf(t−1)および次のサンプルf(t+1)を受け、もしτ(t)≧0ならば前のサンプルを提供し、他の場合には次のサンプルを提供する。加算器744は、多重化装置742の出力から現在の電流f(t)を引き、式(9)における角括弧内の量を提供する。ユニット734は、現在の遅延値を受け、絶対遅延値|τ(t)|を提供する。乗算器746は、絶対遅延値に加算器744の出力を掛けて、デルタ値を提供する。加算器748は、デルタ値とサンプルf(t)とを合計し、現在のサンプルを、遅延された変調する信号fmd(t)に提供する。
【0047】
図7は、それぞれ、式(7)および(9)に基づいて、遅延計算ユニット610および補間器630の特定の設計を示す。また、遅延計算ユニット610および補間器630は、他の方法で実装されてもよい。例えば、遅延計算は、LMSではない適応アルゴリズムに基づいてもよい。補間は、線形補間の代わりに、高階の補間に基づいてもよい。
【0048】
図8は、適応スケーリングユニット800の設計のブロック図を示し、図2における適応スケーリングユニット210および図3における適応スケーリングユニット310のために使用されることができる。この設計において、ハイパス変調パスのための利得g(t)は、以下のように、LMSアルゴリズムにしたがって、変調する信号fm(t)および位相エラー信号pe(t)に基づいて適応して決定される:
g(t)=g(t−1)+γ・fm(t)・pe(t), 式(10)
ここで、γは、最終値への利得の収束レートを決定する適応係数である。LMSアルゴリズムに基づく利得g(t)の計算は、2005年6月21日に発行され、「フォワード利得適応モジュールを持つ位相ロックドループ」と題名が付けられた、米国特許番号6,909,331にさらに詳細に記述される。
【0049】
適応スケーリングユニット800内で、乗算器812は、変調する信号に位相エラー信号を掛ける。乗算器814は、適応係数γを用いて乗算器812の出力を基準化する。アキュムレータ816は、乗算器814の出力を蓄積し、利得g(t)を提供する。乗算器818は、変調する信号に利得を掛けて、基準化された変調する信号を提供する。
【0050】
一般に、装置(例えば集積回路、ワイヤレス通信装置など)は、第1および第2の変調パスによって2ポイント変調を行なうことができ、第2の変調パスの遅延と合わせるために第1の変調パスの遅延を適応して調整することができる、DPLLを含むとしてもよい。第1および第2の変調パスのうちの一つは、オシレータの周波数の広帯域の変調をサポートするハイパス変調パスとしてもよい。第1および第2の変調パスのうちの一つは、発信器の周波数の狭帯域の変調をサポートするローパス変調パスとしてもよい。ある設計において、DPLLは、図2および3に示されるように、適応して、ハイパス変調パスの遅延を調整してもよい。他の設計において、DPLLは、適応して、ローパス変調パスの遅延を調整してもよい。
【0051】
DPLLは、各種の遅延を第1の変調パスに提供することができる適応遅延ユニットを含むとしてもよい。ある設計において、適応遅延ユニットは、例えば図6に示されるように、遅延計算ユニット、補間器、およびプログラマブル遅延ユニットを含むとしてもよい。遅延計算ユニットは、例えば、式(6)または(7)に示されるように、第1および第2の変調パスに適用される変調する信号およびDPLL内の位相エラー信号に基づいて可変の遅延を決定するとしてもよい。ある設計において、遅延計算ユニットは、例えば、式(7)に示されるように、位相エラー信号、変調する信号の符号、適応ステップサイズに基づいて遅延アップデート値を決定するとしてもよい。次に、遅延計算ユニットは、遅延アップデート値を用いて可変の遅延を更新するとしてもよい。適応遅延ユニットは、(上述のような)LMSアルゴリズム、LSアルゴリズム、MMSEアルゴリズムなどにしたがって、可変遅延を決定するとしてもよい。
【0052】
補間器は、可変遅延の小数部分に、−1サンプル期間と+1サンプル期間との間にある小数部分を提供するとしてもよい。ある設計において、補間器は、例えば、式(8)または(9)に示されるように、(i)正の小数遅延に対する現在のサンプルおよび過去のサンプル、または、(ii)負の小数遅延に対する現在のサンプルおよび将来のサンプル、に基づいて、線形補間を行なうとしてもよい。プログラマブル遅延ユニットは、可変遅延の整数部分に、サンプル期間の整数を含む整数部分を提供してもよい。
【0053】
DPLLは、さらに、ローパス変調パスの利得を合わせるために、ハイパス変調パスに対して可変利得を提供することができる、適応スケーリングユニットを含むとしてもよい。適応スケーリングユニットは、例えば式(10)に示されるように、DPLLにおける変調する信号および位相エラー信号に基づいて可変利得を決定してもよい。
【0054】
2ポイント変調は、各種の設計で実装されるとしてもよい。ハイパス変調パスは、例えば図2および3に示されるように、変調する信号を基準化し、基準化された変調する信号を提供するスケーリングユニットを含むとしてもよい。ある設計において、ローパス変調パスは、例えば図2に示されるように、変調する信号を受け、DPLLにおける周波数デバイダ比率を変化させるために使用される出力信号を提供するデルタ−シグマ変調器を含むとしてもよい。別の設計では、ローパス変調パスは、例えば図3に示されるように、変調する信号を蓄積し、変調する位相信号を提供するアキュムレータを含むとしてもよい。2ポイント変調は、また、他の設計で実装されてもよい。
【0055】
図9は、適応遅延マッチングを用いて2ポイント変調を行なうプロセス900の設計を示す。変調する信号は、2ポイント変調をサポートするDPLLの第1の変調パスに適用されるとしてもよい(ブロック912)。変調する信号は、また、DPLLの第1の変調パスに適用されるとしてもよい(ブロック914)。第1の変調パスの遅延は、第2の変調パスの遅延を合わせるために適応して調整されるとしてもよい(ブロック916)。第1および第2の変調パスは、それぞれ、ハイパスおよびローパス変調としてもよく、または、それぞれ、ローパスおよびハイパス変調パスとしてもよい。ハイパス変調パスの利得は、ローパス変調パスの利得に合わせるために適応して調整されるとしてもよい(ブロック918)。
【0056】
ブロック916のある設計において、第1の変調パスに対する可変遅延は、DPLLにおける変調する信号および位相エラー信号に基づいて、決定されるとしてもよい。ある設計において、遅延アップデート値は、例えば式(7)に示されるように、位相エラー信号、変調する信号の符号、適応ステップサイズに基づいて、決定されるとしてもよい。その後、可変遅延は、遅延アップデート値を用いて更新されるとしてもよい。可変遅延の小数部分は、補間によって提供されるとしてもよい。可変遅延の整数部分は、プログラマブル遅延ユニットによって提供されるとしてもよい。
【0057】
ここに記述される2ポイント変調および適応遅延マッチングを用いるDPLLは、通信、計算、ネットワーキング、パーソナルエレクトロニクスなどのような、様々なアプリケーションに使用されてもよい。例えば、DPLLは、ワイヤレス通信装置、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ハンドヘルド装置、ゲーム装置、計算装置、ラップトップ・コンピュータ、家電デバイス、パーソナルコンピュータ、コードレス電話機などにおいて使用されてもよい。ワイヤレス通信装置におけるDPLLの典型的な使用が下記に述べられる。
【0058】
図10は、ワイヤレス通信システムのためのワイヤレス通信装置1000の設計のブロック図を示す。ワイヤレス装置1000は、携帯電話、ターミナル、ハンドセット、ワイヤレスモデムなどでもよい。ワイヤレス通信システムは、符号分割多元接続(CDMA)システム、グローバル移動体通信システム(GSM(登録商標))システム、直交周波数分割多元接続(OFDMA)システムなどでもよい。
【0059】
ワイヤレス装置1000は、受信パスおよび送信パスによって双方向通信を提供可能である。受信パスにおいて、基地局(図示せず)によって送信された信号は、アンテナ1010によって受信され、受信機1012に提供される。受信機1012は、条件を設定し、受信された信号をデジタル化し、さらに処理するためにモジュール1020にサンプルを提供する。送信パスにおいて、送信機1016は、モジュール1020から送信されるべきデータを受け、データを処理および条件を設定し、基地局に対してアンテナ1010経由で送信される変調された信号を生成する。受信機10120および送信機1016は、CDMA、GSM、OFDMAなどをサポートするとしてもよい。
【0060】
モジュール1020は、例えば、モデム・プロセッサ1022、縮小命令セットコンピュータ/デジタルシグナルプロセッサ(RISC/DSP)1024、コントローラ/プロセッサ1026、メモリ1028、入出力(I/O)回路1030、およびDPLL1032のような、各種の処理、インタフェース、メモリ装置を含む。モデムプロセッサ1022は、例えば、エンコーディング、変調、復調、デコーディングなど、データ送受信のための処理を実行するとしてもよい。RISC/DSP1024は、ワイヤレス装置1000のための汎用的および特定化された処理を行なってもよい。コントローラ/プロセッサ1026は、モジュール1020内の各種ユニットのオペレーションを導くとしてもよい。メモリ1028は、モジュール1020内の各種のユニットに対するデータおよび/または命令を記憶することができる。I/O回路1030は、外部のI/O装置1040と通信することができる。DPLL1032は、モジュール1020内の処理ユニットに対するクロックを発生させるとしてもよい。
【0061】
DPLL1014は、周波数のダウンコンバージョンおよび/または復調のために受信機1012によって使用される受信局部発信器(LO)信号を発生させるとしてもよい。DPLL1018は、周波数のアップコンバージョンおよび/または変調のために送信機1016によって使用される送信LO信号を発生させるとしてもよい。DPLLおよび/または1018は、図2におけるDPLL200、図3のDPLL300、または、2ポイント変調(TPM)および適応遅延マッチング(ADM)を用いるいずれかの他のDPLLによって実装されるとしてもよい。基準発振器102は、DPLL1014、1018および/または1032のための正確な基準クロックを発生させることができる。基準発振器1042は、XO、VCXO、TCXOなどでもよい。
【0062】
ここに記述される2ポイント変調および適応遅延マッチングを用いるDPLLは、集積回路(IC)、アナログIC、無線周波数IC(RFIC)、混成信号IC、特定用途向け集積回路(ASIC)、プリント回路板(PCB)、電子装置などに実装されることができる。また、DPLLは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、NチャネルMOS(NMOS)、PチャネルMOS(PMOS)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、バイポーラCMOS(BiCMOS)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ガリウム砒素(GaAs)などのような、様々なICプロセス技術で作り上げられてもよい。
【0063】
ここに記述されるDPLLを実装する装置は、スタンド・アロンの装置でもよく、あるいは大型装置の一部でもよい。装置は、(i)スタンドアロンIC、(ii)データおよび/または命令を記憶するためのメモリICを含むとしてもよい1以上のICのセット、(iii)RF受信機(RFR)またはRF送信機/受信機(RTR)のようなRFIC、(iv)移動局モデム(MSM)のようなASIC、(v)他の装置内に埋め込まれるとしてもよいモジュール、(vi)受信機、携帯電話、ワイヤレス装置、ハンドセット、またはモバイル装置、(vii)その他、でもよい。
【0064】
1以上の典型的な設計において、記述された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装されるとしてもよい。もしソフトウェアで実装される場合には、機能は、コンピュータ可読媒体の1以上の命令またはコードで格納または送信されてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体と、ある場所から他の場所へコンピュータプログラムの転送を促進する任意の媒体を含む通信媒体との両方を含む。記憶媒体は、コンピュータによってアクセスすることができるあらゆる利用可能な媒体としてもよい。限定ではなく例として、そのようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROMまたは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置、または、命令またはデータ構造の形式で所望のプログラムコードを運びまたは記憶するために使用可能であり、コンピュータによってアクセスされることができる任意の他の媒体、を含むことができる。また、どのような接続であっても、適切にコンピュータ可読媒体と名付けられる。例えば、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、または、赤外線、無線、マイクロ波のようなワイヤレス技術を使用して、ソフトウェアがウェブサイト、サーバまたは他のリモートソースから送信される場合、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、または、赤外線、無線、マイクロ波のようなワイヤレス技術は、媒体の定義に含まれる。ここで使用されるようなディスク(Disk)およびディスク(Disc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザーディスク(登録商標)、光ディスク、ディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスクおよびブルーレイ・ディスクを含み、diskは、通常、データを磁気的に再生し、discは、レーザを用いて光学的にデータを再生する。また、上記の組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0065】
本開示の以上の記述は、どのような当業者であっても、本開示を製造または使用することが可能に提供されている。本開示の各種の変更は、当業者に容易に理解されるだろう。ここに定義された包括的な原理は、本開示の範囲から外れることなく、他の変化に適用されてもよい。本開示は、ここに記述された例と設計とに対する限定を意図するものではないが、ここで開示された原理および新しい特徴と一致する最も広い範囲で与えられる。
【0066】
請求項は次のとおりである:

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の変調パスにより2ポイント変調を実行し、前記第2の変調パスの遅延を合わせるために前記第1の変調パスの遅延を適応して調整する動作を行なうデジタル位相ロックドループ(DPLL)、を具備する装置。
【請求項2】
前記DPLLは、前記第1の変調パスに対して可変遅延を提供する動作を行なう適応遅延ユニットを具備する、請求項1の装置。
【請求項3】
適応遅延ユニットは、前記第1および第2の変調パスに適用される変調する信号に基づいて、前記可変遅延を決定する動作を行なう遅延計算ユニットを具備する、請求項2の装置。
【請求項4】
前記遅延計算ユニットは、さらに前記DPLLにおける位相エラー信号に基づいて、前記可変遅延を決定する、請求項3の装置。
【請求項5】
前記遅延計算ユニットは、前記位相エラー信号、前記変調する信号の符号、適応ステップサイズに基づいて遅延アップデート値を決定し、前記遅延アップデート値を用いて前記可変遅延を更新する、請求項4の装置。
【請求項6】
前記適応遅延ユニットは、最小2乗平均(LMS)アルゴリズム、最小2乗(LS)アルゴリズム、または、最小2乗誤差(MMSE)アルゴリズムにしたがって、前記可変遅延を決定する、請求項2の装置。
【請求項7】
前記適応遅延ユニットは、前記可変遅延の小数部分を提供する動作を行なう補間器を具備し、前記小数部分はマイナス1サンプル期間とプラス1サンプル期間との間である、請求項2の装置。
【請求項8】
前記補間器は、正の小数の遅延について、現在のサンプルと過去のサンプルとに基づいて、および、負の小数の遅延について、前記現在のサンプルと将来のサンプルとに基づいて、線形補間を実行する、請求項7の装置。
【請求項9】
前記適応遅延ユニットは、前記可変遅延の整数部分を提供する動作を行なうプログラマブル遅延ユニットを具備し、前記整数部分はサンプル期間の整数を具備する、請求項2の装置。
【請求項10】
前記第1の変調パスはハイパス変調パスであり、前記第2の変調パスはローパス変調パスであり、前記DPLLは前記ハイパス変調パスの遅延を適応して調整する、請求項1の装置。
【請求項11】
前記第1の変調パスはローパス変調パスであり、前記第2の変調パスはハイパス変調パスであり、前記DPLLは前記ローパス変調パスの遅延を適応して調整する、請求項1の装置。
【請求項12】
前記第1および第2の変調パスのうちの一つはハイパス変調パスであり、前記第1および第2の変調パスのうちの他の一つはローパス変調パスである、請求項1の装置。
【請求項13】
前記DPLLは、前記ローパ変調パスの利得を合わせるために前記ハイパス変調パスに対して可変利得を提供する動作を行なう適応スケーリングユニットを具備する、請求項12の装置。
【請求項14】
前記適応スケーリングユニットは、前記ハイパスおよびローパス変調パスに適用される変調する信号と、前記DPLLにおける位相エラー信号とに基づいて、前記可変利得を決定する、請求項13の装置。
【請求項15】
前記ハイパス変調パスは、変調する信号を基準化し、基準化された変調する信号を提供する動作を行なうスケーリングユニットを具備し、前記ローパス変調パスは、前記変調する信号を受け、DPLLにおける周波数デバイダ係数を変化させるために使用される出力信号を提供する動作を行なうデルタ−シグマ変調器を具備する、請求項12の装置。
【請求項16】
前記ハイパス変調パスは、変調する信号を基準化し、基準化された変調する信号を提供する動作を行なうスケーリングユニットを具備し、前記ローパス変調パスは、前記変調する信号を蓄積し、変調する位相信号を提供する動作を行なうアキュムレータを具備する、請求項12の装置。
【請求項17】
前記装置は集積回路である、請求項1の装置。
【請求項18】
前記装置はワイヤレス通信装置である、請求項1の装置。
【請求項19】
デジタル位相ロックドループ(DPLL)の第1および第2の変調パスにより2ポイント変調を実行し、前記第2の変調パスの遅延を合わせるために前記第1の変調パスの遅延を適応して調整する動作を行なうプロセッサ、を具備する装置。
【請求項20】
2ポイント変調をサポートするデジタル位相ロックドループ(DPLL)の第1の変調パスに、変調する信号を適用することと、
前記DPLLの第2の変調パスに、前記変調する信号を適用することと、
前記第2の変調パスの遅延を合わせるために前記第1の変調パスの遅延を適応して調整することと、
を具備する方法。
【請求項21】
前記第1の変調パスの遅延を前記適応して調整することは、前記変調する信号と、前記DPLLにおける位相エラー信号とに基づいて、前記第1の変調パスに対する可変遅延を決定することを具備する、請求項20の方法。
【請求項22】
前記可変遅延を決定することは、
前記位相エラー信号と、前記変調する信号の符号と、適応ステップサイズとに基づいて遅延アップデート値を決定することと、
前記遅延アップデート値を用いて前記可変遅延を更新することと、
を具備する、請求項21の方法。
【請求項23】
前記第1の変調パスの遅延を前記適応して調整することは、補間を用いて前記可変遅延の小数部分を提供し、前記小数部分はマイナス1サンプル期間とプラス1サンプル期間との間である、請求項21の方法。
【請求項24】
前記第1の変調パスの遅延を前記適応して調整することは、プログラマブル遅延ユニットを用いて前記可変遅延の整数部分を提供し、前記整数部分はサンプル期間の整数を具備する、請求項21の方法。
【請求項25】
ローパス変調パスの利得を合わせるためにハイパス変調パスの利得を適応して調整することをさらに具備し、前記第1および第2の変調パスのうちの一つは前記ハイパス変調パスであり、前記第1および第2の変調パスのうちの他の一つは前記ローパス変調パスである、請求項20の方法。
【請求項26】
2ポイント変調をサポートするデジタル位相ロックドループ(DPLL)の第1の変調パスに、変調する信号を適用するための手段と、
前記DPLLの第2の変調パスに、前記変調する信号を適用するための手段と、
前記第2の変調パスの遅延を合わせるために前記第1の変調パスの遅延を適応して調整するための手段と、
を具備する装置。
【請求項27】
前記第1の変調パスの遅延を適応して調整するための前記手段は、前記変調する信号と、前記DPLLにおける位相エラー信号とに基づいて、前記第1の変調パスに対する可変遅延を決定するための手段を具備する、請求項26の装置。
【請求項28】
前記第1の変調パスの遅延を適応して調整するための前記手段は、補間を用いて前記可変遅延の小数部分を提供するための手段を具備し、前記小数部分はマイナス1サンプル期間とプラス1サンプル期間との間である、請求項27の装置。
【請求項29】
ローパス変調パスの利得を合わせるためにハイパス変調パスの利得を適応して調整するための手段をさらに具備し、前記第1および第2の変調パスのうちの一つは前記ハイパス変調パスであり、前記第1および第2の変調パスのうちの他の一つは前記ローパス変調パスである、請求項26の装置。
【請求項30】
少なくとも一つのコンピュータに、2ポイント変調をサポートするデジタル位相ロックドループ(DPLL)の第1の変調パスに、変調する信号を適用させるためのコードと、
前記少なくとも一つのコンピュータに、前記DPLLの第2の変調パスに、前記変調する信号を適用させるためのコードと、
前記少なくとも一つのコンピュータに、前記第2の変調パスの遅延を合わせるために前記第1の変調パスの遅延を適応して調整させるためのコードと、
を具備するコンピュータ可読媒体を具備する、コンピュータプログラムプロダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−511881(P2012−511881A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540867(P2011−540867)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/067354
【国際公開番号】WO2010/068679
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】