説明

2位置切換機構、絞り機構及びシャッター機構

【課題】回転軸方向の長さが短く、それでいて、所望のトルクを得ることが出来る2軸切換機構、絞り機構及びシャッター機構を提供する。
【解決手段】複数のコア部13a〜dを有する鉄芯14と該鉄芯のコア部に巻装されて成るコイルと15a〜dを有するステータ10と、上記ステータを囲んだ状態で回転可能に配置され上記コア部先端に近接し回転方向に交互着磁されたマグネット22を有するロータ20とを備え、回転角度規定手段によって規定される上記ロータの2つの停止位置において、マグネットの分極点24a〜dが上記磁束集中部と最も近接した状態とされるので、上記コイルへの通電方向の切換により上記ロータの回転方向が切り換えられると共に、上記2つの停止位置において、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により、ロータが当該停止位置に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な2位置切換機構、絞り機構及びシャッター機構に関する。詳しくは、絞り羽根やシャッター羽根のように2つの位置の間を移動されると共に移動先の位置で確実に停止且つ保持される部材を駆動する機構を小型に構成すると共に省電力に寄与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる2つの位置の間で位置変更されると共に、それぞれの位置において保持されることを必要とされる位置変更部材がある。例えば、撮像装置におけるシャッター羽根や絞り羽根は、撮影レンズの光路を横切る位置と上記光路から外れた位置との間で位置変更されると共にそれぞれの位置において保持されることが必要である。
【0003】
従来、上記したシャッター羽根や絞り羽根のように、異なる2つの位置への位置切換が可能であると共に当該2つの位置において保持される被制御部材の位置切換と保持を為す機構として、ムービングマグネットあるいはムービングコイルを利用したものが多数提案されている。これら機構は、ムービングマグネットあるいはムービングコイルをこれらと対置されたステータコイル又はステータマグネットとの間の磁気作用により回転させ、該回転力により上記被制御部材を所望の方向へと移動させるものである。そして、移動させた先の位置に保持するためには、ムービングコイル又はステータコイルに同方向の電流を流し続ける必要がある。そして、位置を切り換えるときは、逆方向の電流をコイルに供給し、且つ、保持のために電流供給をし続ける必要がある。このように、切り換えた位置において保持するために電流の供給を必要とするのは、これら機構が搭載されたデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等のバッテリの消耗を早めることになり、極めて不都合である。
【0004】
そこで、特許文献1には、被制御部材を切り換えた先の位置に保持するのに電流供給を必要としない切換機構が示されている。
【0005】
特許文献1に示された切換機構は、円筒状をしたコイル枠の中に円柱状を成し軸方向に沿う2つ割状態に2極着磁されたムービングマグネットを回転自在に配置し、ムービングマグネットから突出した出力ピンをコイル枠に周方向に角度限定された範囲で開口した引き出し窓から外方に突出させ、出力ピンが上記引き出し窓の両端で位置規制される2つの位置の間を移動可能に構成し、上記コイル枠に縦方向、すなわち、ムービングマグネットの軸に沿う方向に巻線を巻回してコイルを形成して成り、さらに、上記引き出し窓の両端に強磁性体から成る保持ピンを配置したものである。
【0006】
従って、上記コイルに一定の方向の電流を通電すると、フレミングの左手の法則による電磁力がムービングマグネットに働き、ムービングマグネットはその移動方向が回転方向に限定されているので、所定の方向に回転し、そして、出力ピンが保持ピンに衝合したところで強制的に回転が停止され、且つ、ムービングマグネットの一部である出力ピンによって保持ピンが着磁され、この保持ピンと出力ピンとの磁気吸引力によってムービングマグネットは当該位置に保持される。また、コイルに先ほどと逆方向の電流が通電されると、ムービングマグネットは先ほどとは逆方向に回転して他方の保持ピンと衝合したところで強制的に回転が停止され、且つ、ムービングマグネットの一部である出力ピンによって保持ピンが着磁され、この保持ピンと出力ピンとの磁気吸引力によってムービングマグネットは当該位置に保持される。
【0007】
【特許文献1】特許第3205714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した特許文献1に示された切換機構にあっては、その構造上、所望のトルクを得るためには、ムービングマグネットの軸方向の長さを長くして、コイルによって発生する磁界との間で生じる電磁力を大きくする必要がある。そのため、この切換機構を絞り羽根やシャッター羽根の位置切換機構として使用すると、レンズ鏡筒の上記切換機構部分での光軸方向の長さが大きくなってしまうという問題がある。
【0009】
レンズ鏡筒内の撮影レンズの周囲にはズーミングやフォーカシングに際して移動するレンズ(群)の駆動機構、光学式手振れ補正のための補正レンズの駆動機構等の配置スペースが必要であり、絞り羽根やシャッター羽根の切換機構の光軸方向の長さが長くなると上記した駆動機構と干渉する惧がある。
【0010】
そのため、絞り羽根やシャッター羽根の切換機構は光軸方向の大きさが可能な限り短いスペース内に配置することが望まれる。
【0011】
そこで、本発明は、回転軸方向の長さが短く、それでいて、所望のトルクを得ることが出来る2軸切換機構、絞り機構及びシャッター機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明2軸切換機構は、上記した課題を解決するために、複数のコア部を有する鉄芯と該鉄芯のコア部に巻装されて成るコイルとを有するステータと、上記ステータを囲んだ状態で回転可能に配置され上記コア部先端に近接し回転方向に交互着磁されたマグネットを有するロータとを備え、上記ロータの回転を出力して位置の切り換えを行うように構成され、上記ロータの回転角度を機械的に規定する回転角度規定手段と、上記鉄芯のマグネットとの対向部に形成された磁束集中部とを備え、上記回転角度規定手段によって規定される上記ロータの2つの停止位置において、マグネットの分極点が上記磁束集中部と最も近接した状態とされ、上記コイルへの通電方向の切換により上記ロータの回転方向が切り換えられると共に、上記2つの停止位置において、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により、ロータが当該停止位置に保持されるものである。
【0013】
また、本発明絞り機構及びシャッター機構は、絞り羽根やシャッター羽根の位置を本発明2軸切換機構によって移動させるようにしたものである。
【0014】
従って、回転軸方向の長さを短くしながら、所望のトルクを得られ、且つ、位置保持のための電力供給を必要としない。
【発明の効果】
【0015】
本発明2位置切換機構は、複数のコア部を有する鉄芯と該鉄芯のコア部に巻装されて成るコイルとを有するステータと、上記ステータを囲んだ状態で回転可能に配置され上記コア部先端に近接し回転方向に交互着磁されたマグネットを有するロータとを備え、上記ロータの回転を出力して位置の切り換えを行う2位置切換機構であって、上記ロータの回転角度を機械的に規定する回転角度規定手段と、上記鉄芯のマグネットとの対向部に形成された磁束集中部とを備え、上記回転角度規定手段によって規定される上記ロータの2つの停止位置において、マグネットの分極点が上記磁束集中部と最も近接した状態とされ、上記コイルへの通電方向の切換により上記ロータの回転方向が切り換えられると共に、上記2つの停止位置において、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により、ロータが当該停止位置に保持されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明絞り機構は、入射光を結像面に結像させるレンズの光軸と同軸に位置した光路孔を有する固定部材と、上記光路孔より小さな絞り孔を有し、上記絞り孔を有する一端部が上記光路孔を覆う第1の位置と上記光路孔を覆わない第2の位置との間を移動可能に設けられた絞り羽根と、上記絞り羽根の他端部を回動支点として回動させて上記一端部を上記第1の位置と第2の位置との間を回動させる2位置切換機構とを備え、上記2位置切換機構は、複数のコア部を有する鉄芯と該鉄芯のコア部に巻装されて成るコイルとを有し上記固定部材に固定的に設けられたステータと、上記ステータを囲んだ状態で回転可能に配置され上記コア部先端に近接し回転方向に交互着磁されたマグネットを有するロータとを備えると共に、上記ロータの回転角度を機械的に規定する回転角度規定手段と、上記鉄芯のマグネットとの対向部に形成された磁束集中部とを備え、上記回転角度規定手段によって規定される上記ロータの2つの停止位置において、マグネットの分極点が上記磁束集中部と最も近接した状態とされ、上記コイルへの通電方向の切換により上記ロータの回転方向が切り換えられると共に、上記2つの停止位置において、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により、ロータが当該停止位置に保持され、上記ロータに上記絞り羽根の他端部が固定されたことを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明シャッター機構は、入射光を結像面に結像させるレンズの光軸と同軸に位置した光路孔を有する固定部材と、一端部が上記光路孔を覆う第1の位置と上記光路孔を覆わない第2の位置との間を移動可能に設けられたシャッター羽根と、上記シャッター羽根の他端部を回動支点として回動させて上記一端部を上記第1の位置と第2の位置との間を回動させる2位置切換機構とを備え、上記2位置切換機構は、複数のコア部を有する鉄芯と該鉄芯のコア部に巻装されて成るコイルとを有し上記固定部材に固定的に設けられたステータと、上記ステータを囲んだ状態で回転可能に配置され上記コア部先端に近接し回転方向に交互着磁されたマグネットを有するロータとを備えると共に、上記ロータの回転角度を機械的に規定する回転角度規定手段と、上記鉄芯のマグネットとの対向部に形成された磁束集中部とを備え、上記回転角度規定手段によって規定される上記ロータの2つの停止位置において、マグネットの分極点が上記磁束集中部と最も近接した状態とされ、上記コイルへの通電方向の切換により上記ロータの回転方向が切り換えられると共に、上記2つの停止位置において、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により、ロータが当該停止位置に保持され、上記ロータに上記シャッター羽根の他端部が固定されたことを特徴とする。
【0018】
従って、本発明にあっては、ロータのマグネットがステータを囲む位置にあり、通電により磁石化されるコア部とロータマグネットとの間の磁気吸引力により回転トルクを得るため、大きなトルクを得ることが出来、よって、回転軸方向の長さを長くすること無しに必要なトルクを得ることが出来る。そして、外径形状、すなわち、回転軸に垂直な方向での大きさも小さくすることが出来る。
【0019】
また、ロータの停止位置での保持は、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により為されるため、ロータを停止位置に保持しておくために通電しておく必要がない。
【0020】
請求項2に記載した発明にあっては、上記磁束集中部は鉄心のコア部のマグネットに対向した面にマグネットに向かって突出した突起であるので、磁束を効率的に集中させることが出来ると共に、磁束集中部の形成が容易で、且つ、低コストである。
【0021】
請求項3及び請求項4に記載した発明にあっては、上記回転角度規定手段は、ロータに突設された係合突起とステータにロータの回転方向に延びて形成され上記係合突起が摺動自在に係合する溝とによって構成されているので、特別な部品を必要とせずに低コストで回転角度規定手段を構成することが出来ると共に、ロータの回転を所望の位置で確実に停止させることが出来る。
【0022】
請求項5に記載した発明にあっては、上記鉄心は回転方向に等間隔で配列された偶数個のコア部を備え、上記マグネットは回転方向に同じ幅で配列された上記コア部の個数と同じ個数の着磁領域を有し、上記偶数個のコア部には一本の巻線が交互に巻方向を変えて巻装されているので、コイルへの通電構造及び通電方式を単純化することが出来、低コストで構成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明2位置切換機構、絞り機構及びシャッター機構を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
先ず、図1乃至図9を参照して2位置切換機構について説明する。
【0025】
2位置切換機構1はステータ10とロータ20を備える。
【0026】
ステータ10は、ステータベース11と該ステータベース11上に固定されたステータコイル12とから成り、ステータコイル12は複数、本実施の形態では4個の放射状に突出したコア部13a、13b、13c、13dが周方向に等間隔に形成されて成る鉄芯14の各コア部13a、13b、13c、13dに一本のコイル用巻線が順次巻装されて、4個のコイル15a、15b、15c、15dが形成されて成る。コイル用巻線は隣接するコア部13、13で逆向きになるように巻装される。例えば、コア部13a、13cに順方向に巻装された場合は、コア部13b、13dには逆方向に巻装される。従って、コイル15a〜15dに通電されると、コア部13a、13cと13b、13dとで、着磁方向が逆になる。例えば、コア部13a、13cがN極に着磁される方向に通電された場合は、コア部13b、13dはS極に着磁される。
【0027】
そして、上記コア部13a〜13dの外周面の両端寄りの位置には磁束集中部として、小突起13a′、13a″、13b′、13b″、13c′、13c″、13d′、13d″が外方へ向けて突出している。そして、これら小突起13a′と13a″との間の間隔、小突起13b′と13b″との間の間隔、小突起13c′と13c″との間の間隔、小突起13d′と13d″との間の間隔は、30゜の角度に相当する間隔とされている。
【0028】
上記ステータベース11の中心部には軸受用ボス16が突設されており、該軸受用ボス16が上記鉄芯14の中心部に貫設された取付孔14aに圧入された状態で鉄芯14がステータベース11に固定される。
【0029】
上記ステータベース11の上記軸受用ボス16を挟んでほぼ反対側の位置に所定の長さに亘って延びるスリット状の規制溝17、17が形成されている。該規制溝17、17は軸受用ボス16を中心とする円弧状に形成され、その形成範囲は、例えば、軸受用ボス16を中心とする角度でほぼ45°とされている。
【0030】
ロータ20はロータケース21とロータマグネット22と回転軸23とから成る。ロータケース21は上端が閉塞した軸方向の長さが短い筒状をしており、上面部21aの中心部に回転軸23の上端部が圧入状に固定されている。ローターケース21の周面部21bの下縁のうち互いにほぼ反対側に位置した部分には係合突起21c、21cが下方へ突出されている。
【0031】
ロータケース21の内周面には環状をしたロータマグネット22が固定されている。ロータマグネット22は回転方向に同じ幅で配列された4つのの着磁領域22a、22b、22c、22dに区分され、それぞれの区分は交互に異なる極性に着磁されている。例えば、着磁領域22a、22cがN極に、着磁領域22b、22dがS極に、それぞれ着磁されている。
【0032】
そして、上記回転軸23の下端部がステータベース11の軸受用ボス16の上端に開口した軸受孔16aに回転自在に内嵌されている。これによって、ロータ20はステータ10に回転自在に支持され、ロータマグネット22はステータ10のコア部13、13、・・・の外周面に近接して配置される。また、ロータケース21に形成された係合突起21c、21cはステータベース11に形成された規制溝17、17に摺動可能に係合されている。従って、ロータ20は上記係合突起21c、21cが規制溝17、17の両端に衝合する範囲で回動できる。例えば、係合突起21c、21cが回転方向に15°の角度に相当する幅を有しているとすると、ロータ20は30゜の範囲で回転可能となる。
【0033】
そして、ロータ20の回転限度において、各コア部13(a〜d)の一方の磁束集中部13(a〜d)′又は13(a〜d)″がロータマグネット22の分極点、すなわち、着磁領域22(a〜d)の境界点に最も近接した状態となる。
【0034】
すなわち、図8(a)に示したように、ロータ20が回転可能範囲の反時計回り方向側端に位置した状態(ロータ20の係合突起21c、21cが規制溝17、17の反時計回り方向側の端部に衝合してそれ以上の反時計回り方向への回転を阻止されている状態)では、コア部13aの反時計回り方向側の磁束集中部13a′が着磁領域22aと22bとの間の分極点24aに最も近接し、コア部13bの反時計回り方向側の磁束集中部13b′が着磁領域22bと22cとの間の分極点24bに最も近接し、コア部13cの反時計回り方向側の磁束集中部13c′が着磁領域22cと22dとの間の分極点24cに最も近接し、コア部13dの反時計回り方向側の磁束集中部13d′が着磁領域22dと22aとの間の分極点24dに最も近接し、そして、これら磁束集中部13(a〜d)′と分極点24(a〜d)との間に最も磁束25が集中した状態となり、ロータ20はその位置で安定し、時計回り方向へ回転することがない。すなわち、ロータ20は反時計回り方向側の停止位置に保持される。なお、図8及び図9において、各コア部13(a〜d)とロータマグネット22との間に引かれた線25は両者の間の磁束を示す。
【0035】
また、図9(a)に示したように、ロータ20が回転可能範囲の時計回り方向側端に位置した状態(ロータ20の係合突起21c、21cが規制溝17、17の時計回り方向側の端部に衝合してそれ以上の時計回り方向への回転を阻止されている状態)では、コア部13aの時計回り方向側の磁束集中部13a″が着磁領域22aと22bとの間の分極点24aに最も近接し、コア部13bの時計回り方向側の磁束集中部13b″が着磁領域22bと22cとの間の分極点24bに最も近接し、コア部13cの時計回り方向側の磁束集中部13c″が着磁領域22cと22dとの間の分極点24cに最も近接し、コア部13dの時計回り方向側の磁束集中部13d″が着磁領域22dと22aとの間の分極点24dに最も近接し、そして、これら磁束集中部13(a〜d)″と分極点24(a〜d)との間に最も磁束25が集中した状態となり、ロータ20はその位置で安定し、反時計回り方向へ回転することがない。すなわち、ロータ20は時計回り方向側の停止位置に保持される。
【0036】
次に、図8及び図9を参照して、2位置切換機構1の動作について説明する。
【0037】
先ず、図8を参照して、ロータ20が移動範囲の反時計回り方向側の端部から時計回りに回転させる場合について説明する。図8(a)は、ロータ20が移動範囲の反時計回り方向側の端部に位置している状態を示す。この状態から、一の方向への電流をコイル15(a〜d)に流すと、コア部13a、13cがS極に、また、コア部13b、13dがN極に着磁される。従って、コア部13aと着磁領域22aとの間で、コア部13bと着磁領域22bとの間で、コア部13cと着磁領域22cとの間で、コア部13dと着磁領域22dとの間で、磁気吸引力が働き、それによって、ロータ20が時計回り方向に回転する(図8(b)参照)。
【0038】
そして、ロータ20の係合突起21c、21cがステータ10の規制溝17、17の時計回り方向側の端部に衝合すると、ロータ20はそれ以上の時計回り方向への回転を停止され、且つ、各コア部13(a〜d)の時計回り方向側の磁束集中部13a″が分極点24aに、磁束集中部13b″が分極点24bに、磁束集中部13c″が分極点24cに、磁束集中部13d″が分極点24dに、それぞれ最も近接することによって、上記停止された位置に保持される(図8(c)参照)。
【0039】
図9(a)に示す、ロータ20が移動範囲の時計回り方向側の端部に位置した状態から、上記一の方向と反対方向である他の方向の電流をコイル15(a〜d)に流すと、コア部13a、13cがN極に、また、コア部13b、13dがS極に着磁される。従って、コア部13aと着磁領域22bとの間で、コア部13bと着磁領域22cとの間で、コア部13cと着磁領域22dとの間で、コア部13dと着磁領域22aとの間で、磁気吸引力が働き、それによって、ロータ20が反時計回り方向に回転する(図9(b)参照)。
【0040】
そして、ロータ20の係合突起21c、21cがステータ10の規制溝17、17の反時計回り方向側の端部に衝合すると、ロータ20はそれ以上の反時計回り方向への回転を停止され、且つ、各コア部13(a〜d)の反時計回り方向側の磁束集中部13a′が分極点24aに、磁束集中部13b′が分極点24bに、磁束集中部13c′が分極点24cに、磁束集中部13d′が分極点24dに、それぞれ最も近接することによって、上記停止された位置に保持される(図9(c)参照)。
【0041】
次に、上記2位置切換機構1を使用した絞り機構及びシャッター機構の実施の形態を図10及び図11を参照して説明する。
【0042】
絞り機構2においては、入射光を結像面に結像させる撮影レンズ30の光軸xと同軸に位置した光路孔41を有する固定部材40を上記光軸xと垂直を成すように配置されている。なお、撮影レンズ30は絞り機構2近辺のもののみを示しており、レンズホルダ31に複数のレンズ32、32、・・・が保持されて成る。
【0043】
そして、2位置切換機構1のステータベース11を上記固定部材40に固定する。なお、固定部材40をステーベース11として、該固定部材40に軸受用ボス16及び規制溝17、17を形成して、ここに、ステータコイル12及びロータ20を組み付けるようにしても良いことは勿論である。
【0044】
以上のように、固定部材40に固定された2位置切換機構1のロータ20に絞り羽根50を取り付ける。絞り羽根50は一端部に上記光路孔41より径の小さい絞り孔51が形成されており、他端部52が2位置切換機構1のロータ20に接着等適宜の手段によって固定される。そして、2位置切換機構1のロータ20が上記した2つの位置の間で回転されることによって、絞り羽根50は図10に実線で示す第1の位置と2点鎖線で示す第2の位置との間で回動され、且つ、それぞれの位置で保持される。
【0045】
上記絞り機構2にあっては、絞り羽根50が第2の位置に保持されることによって、光路孔41が全開された開放絞りとなり、絞り羽根50が第1の位置に保持されることによって、開放絞りより小径に絞られた状態となる。従って、撮影時の被写体の明るさ、露光時間等の露出ファクターの如何に応じて絞り羽根50を第1の位置に保持した状態と第2の位置に保持した状態とを適宜に選択して撮影を行うことができる。
【0046】
上記した固定部材40にはもう一つの2位置切換機構1が固定され、この2位置切換機構1を使用してシャッター機構3が構成される。
【0047】
シャッター機構3の2位置切換機構1のロータ20にはシャッター羽根60が固定される。シャッター羽根60は一端部61が上記光路孔41を閉塞する第1の位置と光路孔41を閉塞しない第2の位置(図10に図示した状態)との間で回転され、且つ、それぞれの位置で保持されるように、他端部62が2位置切換機構1のロータ20に固定される。
【0048】
そして、露光時やフォーカシング時以外の時はシャッター羽根60が第1の位置に保持され、撮像素子の焼き付き等を防止し、露光時には、第2の位置に所定時間(露光時間)保持した後、第1の位置へと移動させる。
【0049】
上記したように、本発明2位置切換機構1にあっては、回転軸方向の大きさを小さく構成することが出来るので、レンズ鏡筒(図示せず)内で光路孔41を中心にして光軸x方向に僅かなスペースがあれば配置することが出来、ズーミングやフォーカシング用の駆動機構等との干渉の惧が少ない。また、絞り羽根50やシッター羽根60を第1の位置及び第2の位置に保持するのに電力を供給し続ける必要が無く、省電力化が出来る。
【0050】
なお、上記した実施の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
小型化、特に撮影レンズの光軸方向の小型化が必要な撮像装置等に使用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図2乃至図9と共に本発明2位置切換機構の実施の形態を示すものであり、本図は垂直断面図である。
【図2】水平断面図である。
【図3】図4と共にステータを示すものであり、本図は平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図6及び図7と共にロータを示すものであり、本図は底面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図5のVII矢視図である。
【図8】図9と共に動作を説明する概略水平断面図であり、本図は一の方向への回転及び回転した先での保持の様子を示すものである。
【図9】他の方向への回転及び回転した先での保持の様子を示すものである。
【図10】図11と共に絞り機構及びシャッター機構を示すものであり、本図は概略正面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…2位置切換機構、10…ステータ、13(a〜d)…コア部、13(a〜d)′…磁束集中部、13(a〜d)″…磁束集中部、14…鉄芯、15(a〜d)…コイル、17…規制溝(溝)(回転角度規定手段)、20…ロータ、21c…係合突起(回転角度規定手段)、22…ロータマグネット(マグネット)、22(a〜d)…着磁領域、24(a〜d)…分極点、2…絞り機構、30…撮影レンズ、40…固定部材、41…光路孔、50…絞り羽根、51…絞り孔、52…他端部、3…シャッター機構、60…シャッター羽根、61…一端部、62…他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア部を有する鉄芯と該鉄芯のコア部に巻装されて成るコイルとを有するステータと、上記ステータを囲んだ状態で回転可能に配置され上記コア部先端に近接し回転方向に交互着磁されたマグネットを有するロータとを備え、上記ロータの回転を出力して位置の切り換えを行う2位置切換機構であって、
上記ロータの回転角度を機械的に規定する回転角度規定手段と、
上記鉄芯のマグネットとの対向部に形成された磁束集中部とを備え、
上記回転角度規定手段によって規定される上記ロータの2つの停止位置において、マグネットの分極点が上記磁束集中部と最も近接した状態とされ、
上記コイルへの通電方向の切換により上記ロータの回転方向が切り換えられると共に、上記2つの停止位置において、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により、ロータが当該停止位置に保持される
ことを特徴とする2位置切換機構。
【請求項2】
上記磁束集中部は鉄心のコア部のマグネットに対向した面にマグネットに向かって突出した突起である
ことを特徴とする請求項1に記載の2位置切換機構。
【請求項3】
上記回転角度規定手段は、ロータに突設された係合突起とステータにロータの回転方向に延びて形成され上記係合突起が摺動自在に係合する溝とによって構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の2位置切換機構。
【請求項4】
上記回転角度規定手段は、ロータに突設された係合突起とステータにロータの回転方向に延びて形成され上記係合突起が摺動自在に係合する溝とによって構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の2位置切換機構。
【請求項5】
上記鉄心は回転方向に等間隔で配列された偶数個のコア部を備え、上記マグネットは回転方向に同じ幅で配列された上記コア部の個数と同じ個数の着磁領域を有し、上記偶数個のコア部には一本の巻線が交互に巻方向を変えて巻装されている
ことを特徴とする請求項1に記載の2位置切換機構。
【請求項6】
入射光を結像面に結像させるレンズの光軸と同軸に位置した光路孔を有する固定部材と、上記光路孔より小さな絞り孔を有し、上記絞り孔を有する一端部が上記光路孔を覆う第1の位置と上記光路孔を覆わない第2の位置との間を移動可能に設けられた絞り羽根と、上記絞り羽根の他端部を回動支点として回動させて上記一端部を上記第1の位置と第2の位置との間を回動させる2位置切換機構とを備え、
上記2位置切換機構は、複数のコア部を有する鉄芯と該鉄芯のコア部に巻装されて成るコイルとを有し上記固定部材に固定的に設けられたステータと、上記ステータを囲んだ状態で回転可能に配置され上記コア部先端に近接し回転方向に交互着磁されたマグネットを有するロータとを備えると共に、
上記ロータの回転角度を機械的に規定する回転角度規定手段と、
上記鉄芯のマグネットとの対向部に形成された磁束集中部とを備え、
上記回転角度規定手段によって規定される上記ロータの2つの停止位置において、マグネットの分極点が上記磁束集中部と最も近接した状態とされ、
上記コイルへの通電方向の切換により上記ロータの回転方向が切り換えられると共に、上記2つの停止位置において、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により、ロータが当該停止位置に保持され、
上記ロータに上記絞り羽根の他端部が固定された
ことを特徴とする絞り機構。
【請求項7】
入射光を結像面に結像させるレンズの光軸と同軸に位置した光路孔を有する固定部材と、一端部が上記光路孔を覆う第1の位置と上記光路孔を覆わない第2の位置との間を移動可能に設けられたシャッター羽根と、上記シャッター羽根の他端部を回動支点として回動させて上記一端部を上記第1の位置と第2の位置との間を回動させる2位置切換機構とを備え、
上記2位置切換機構は、複数のコア部を有する鉄芯と該鉄芯のコア部に巻装されて成るコイルとを有し上記固定部材に固定的に設けられたステータと、上記ステータを囲んだ状態で回転可能に配置され上記コア部先端に近接し回転方向に交互着磁されたマグネットを有するロータとを備えると共に、
上記ロータの回転角度を機械的に規定する回転角度規定手段と、
上記鉄芯のマグネットとの対向部に形成された磁束集中部とを備え、
上記回転角度規定手段によって規定される上記ロータの2つの停止位置において、マグネットの分極点が上記磁束集中部と最も近接した状態とされ、
上記コイルへの通電方向の切換により上記ロータの回転方向が切り換えられると共に、上記2つの停止位置において、マグネットと鉄芯の磁束集中部との間の磁気吸引力により、ロータが当該停止位置に保持され、
上記ロータに上記シャッター羽根の他端部が固定された
ことを特徴とするシャッター機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−50699(P2006−50699A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225262(P2004−225262)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】