説明

2成分歯牙漂白組成物

2成分の系は再石灰化能力と共に知覚鈍麻効果を持つ。系は非発泡、泡状、または発泡性の組成物とすることができる。系は、少なくとも1種の過酸化物と、少なくとも1種のリン酸イオンの源と、少なくとも1種のゲル化剤と含む第1の成分と、少なくとも1種のカルシウム、ストロンチウム、および/またはそれらの混合物の源とを含む第2の成分とを含む。第2の成分はまた、少なくとも1種のゲル化剤を含んでもよく、組成物は泡状、または発泡性としてもよい。組成物は2室シリンジ(two-compartment syringe)に封入してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連する出願へのクロスリファレンス〕
本出願は、2004年11月9日出願の米国仮特許出願第60/626,407号“Tooth Whitening Compositions”、2004年11月26日出願の第60/631,121号“Whitening System”、2005年1月22日出願の第60/643,309号“Dental Whitening”、および2005年2月15日出願の第60/653,421号“Whitening System Capable of Effective Whitening Action”の便益を主張し、これらの内容は参照により本開示に含まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は歯牙処置組成物の改良に関する。特に、本発明は漂白組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
歯牙は、内側の象牙質層と、獲得被膜と呼ばれる保護膜に覆われた、外側の硬いエナメル質層からなる。エナメル質層は、いくらか孔質の表面を形成するヒドロキシアパタイト結晶からなる。被膜またはエナメル質は、着色または変色の対象となりうる。エナメル質層が多孔性という性質を持つので、着色成分や変色成分がエナメル質に浸透し、歯牙を変色させると考えられている。
【0004】
人の歯に日常的に接する、または触れる物質の多くが歯牙の“着色”、または“白さ”の損失、を起こし得る。特に、食品、タバコ製品、および紅茶やコーヒーといった液体を摂取することで、歯牙の着色が起こる傾向にある。これらの着色または変色物質がエナメル質に浸透し、目に見える歯牙の変色を起こす可能性がある。同時に、そのような食品や飲料には歯牙の脱灰の原因となるものもある。
【0005】
着色の問題を解決する一つの手段が、歯牙漂白である。練り歯磨き、ゲル、粉状といった歯磨剤には、過酸化物、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過炭酸塩および過ホウ酸塩、または過酸化水素を有する複合物を含み、活性酸素もしくは過酸化水素を遊離させる漂白剤を含有するものがある。
【0006】
歯牙漂白で得られる漂白の程度は(1)1日におけるトレーの装着時間の長さ、(2)トレー装着日数、(3)漂白剤に対する歯牙の感受性、および(4)活性過酸化物の濃度に依存する。最大限の漂白のためには、1日約18から20時間程度の処置促進期間をとることが推奨される。
【0007】
漂白組成物の一部については、組成物中の高濃度の漂白剤による長時間の処置後に歯牙の過敏性を引き起こす懸念がある。大半の患者に対しては歯牙の過敏性を増すことはないと思われている組成物で処置をした場合でも、過敏傾向のある患者においては依然として過敏症の原因となりうる。
【0008】
もうひとつの懸念として、Price. et al. (The pH of Tooth-Whitening products, J Can Dent Assoc, 66:421-6,2000)において述べられているように、激しいブラッシングやpHの低い漂白組成物による処置も、さらなる脱灰による歯牙の硬度の減少につながる可能性がある。
【0009】
象牙質の過敏性の軽減を、場合によっては漂白系とは別個の系によって成し遂げるために多くの試みがなされてきた。一方、単一の系で両方の課題に取り組もうとする試みもなされている。同時に、やはり別個の系による歯牙の再石灰化も試みられている。
【0010】
よって、上記すべての問題および/または歯牙に関して起こりうる問題に対する単一の系を用いた策がいまだ求められている。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、漂白、過敏性低減、再石灰化のための単一系を用いた手段に関する。
【0012】
系は、少なくとも1種の過酸化物と、少なくとも1種のリン酸イオンの源と、少なくとも1種のゲル化剤とを含む第1の成分と、少なくとも1種のカルシウム、ストロンチウム、およびそれらの混合物の源と、少なくとも1種のゲル化剤を含む第2の成分とを含む2成分の処置組成物であってもよい。
【0013】
一実施形態において、系は発泡性組成物であってもよい。
【0014】
他の実施形態において、第1の成分は、知覚鈍麻剤をさらに含んでもよい。
【0015】
系はまた、少なくとも1種の過酸化物と、少なくとも1種のリン酸イオンの源と、少なくとも1種のゲル化剤とを含む第1の成分と、少なくとも1種のカルシウム、ストロンチウム、およびそれらの混合物の源と、少なくとも1種のゲル化剤を含む第2の成分とを含む2成分の泡状組成物を含む。
【0016】
系はさらに、少なくとも1種の過酸化物、少なくとも1種のリン酸イオンの源、および少なくとも1種のゲル化剤とを含む第1の成分と、少なくとも1種のカルシウム、ストロンチウム、および/またはその混合物、ならびに少なくとも1種の発泡剤とを含む第2の成分とを含んだ2成分の発泡性組成物を含む。
【0017】
本発明の一実施形態において、第2の成分は、少なくとも1種の過酸化物の源を含んでもよい。
【0018】
本発明の他の実施形態において、第2の成分は、知覚鈍麻剤を含んでもよい。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態において、両成分が知覚鈍麻剤を含んでもよい。
【0020】
本発明のさらに他の実施形態において、第1の成分は、ゲル安定剤をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態において、第1の成分は実質的に乳白色、濁色、不透明、もしくは色つきで、第2の成分は実質的に透明、およびその逆であってもよい。または、両成分が実質的に乳白色、濁色、不透明、もしくは色つきであってもよい。
【0022】
本発明のさらに他の実施形態において、系中の2成分は、混合され、接触を持続させるための歯科用トレーから歯牙に塗布されるようにしてもよい。
【0023】
本発明のさらに他の実施形態において、発泡性の系は、持続性と崩壊性を持つ、半減期が少なくとも約1時間の泡を形成することができる。
【0024】
本発明のさらに他の実施形態において、泡状の系は、持続性と崩壊性を持つ、半減期が少なくとも約1ヵ月の泡とすることができる。
【0025】
本発明の他の実施形態において、系中の2成分は、2筒シリンジ(two barrel syringe)に入れて提供してもよい。一態様において、シリンジは注出用先端部(dispensing tip)を備えてもよい。他の態様において、注出用先端部は起泡用に用いてもよい。さらに他の態様において、先端部はミキサーを含んでもよい。
【0026】
本発明のさらに他の実施形態において、系中の2成分は、成分ごとに別個の隔室を備えた容器に入れて提供してもよい。一態様において、容器は注出用ポンプを備えてもよい。
【0027】
本発明はさらに、漂白および再石灰化のための系を用いた手段に関する。一実施形態において、系は、再石灰化効果を備える過酸化物量の少ない漂白組成物を含んでもよい。他の実施形態において、系は、再石灰化効果に加え過敏性低減効果を持つ過酸化物量の少ない漂白組成物を含んでもよい。さらに他の実施形態において、系は再石灰化効果およびフッ化物処理効果を備える過酸化物量の少ない漂白組成物を含んでもよい。さらに他の実施形態において、系は再石灰化効果、フッ化物処理効果、および抗菌効果を備える過酸化物量の少ない漂白組成物を含んでもよい。他の実施形態において、上述の組み合わせ効果のうちどれを実現してもよい。さらに他の実施形態において、抗歯垢剤、着色防止剤、ビタミン剤、または歯牙・呼気もしくは全般的な健康管理にまで有益なもの、を含むその他の薬剤を含んでもよい。
【0028】
上記の優位性および他の優位性と併せて、本発明を、以下に示す本発明の実施形態の詳細な説明を以って、最もよく理解することができるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に述べる詳細な説明は、本発明の態様に従って提供される、ここに例示する歯牙漂白組成物の説明を意図したものであって、本発明が準備され利用される唯一の形態を表すことを意図したものではない。以下の説明は、本発明による歯牙漂白組成物の特徴およびその準備と利用のためのステップを示すものである。しかし、この歯牙漂白組成物に含まれる同一または同等の成分は、本発明の趣旨および範囲内に含まれるとされる他の実施形態によっても実現できると理解されたい。
【0030】
特に他に定めない限りは、ここで使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術の当業者に共通に理解されるものと同じ意味を有する。ここで述べるものと同様または同等のあらゆる方法、装置、および材料が本発明の実施または試行に使用することができるが、ここでは例示する方法、装置、および材料について説明する。
【0031】
本開示中で言及する刊行物は参照により、例えば、それらの刊行物に記載され、ここに記載する発明との関連で利用される可能性のある組成物および方法を説明および開示する目的を以って、本開示に含まれる。前述・後述の、および本文全体において記載あるいは議論される刊行物は、あくまでそれらが本願の出願日前の開示であるという理由から提示するものである。本開示のいかなる内容も、本発明者たちの発明がそのような先発明の開示に先立つものではない、という容認とは解釈されるべきものではない。
【0032】
本発明による漂白組成物は2成分の系を含み、2成分のうち少なくとも1つは、少なくとも1種の過酸化物を含む。
【0033】
過酸化物を含む方の成分は、例えば、金属イオンを含まない過酸化物を含むことができる。金属イオンを含まない好適な過酸化物の例として、過酸化水素、および過酸化尿素(過酸化カルバミド)、過酸化グリセリル(glyceryl peroxide)、 過酸化ベンゾイルなどを含む有機過酸化物がある。さらに例示すると、過酸化物は過酸化水素、過酸化尿素、およびそれらの混合物を含む。漂白ゲル中に存在する過酸化物の総量は、例えば、ゲルの重量との割合で約0.5%から約45%、さらに例示すると、約1%から約35%の範囲をとる。
【0034】
過酸化水素を使用する際には、通常50%水溶液として用意する。単独で使用される際に、過酸化物ゲル中の過酸化水素水溶液の量は、例えば、約1%から約60%(乾燥重量で0.5%から30%)、さらに例示すると、約2%から40%(乾燥重量で1%から20%)におよぶ。
【0035】
一方、過酸化尿素を使用する際には、単独での使用も可能だが、過酸化水素との組み合わせで用いることが多い。
【0036】
組み合わせて使用する場合、過酸化尿素は通常重量比で約0%から約40%、さらに例示すると、重量比で約0.5%から約35%の量で存在する。同時に、過酸化水素が例えば50%水溶液として用いられ、通常約0.5%から約30%(乾燥重量で0.25%から15%)、さらに例示すると、約1%から30%(乾燥重量で0.5%から15%)の量で存在する。
【0037】
過酸化物の源は、系のいずれか1つ、または両方の成分に含めることができる。第2の成分にも含まれる場合は、両成分に含まれる過酸化物の源の総量が上述の範囲となる。
【0038】
本発明による組成物は、非発泡、泡状、または発泡性の組成物とすることができる。一般的に泡状の組成物は、非発泡の組成物中に存在するものと比べ、同等またはより高濃度の過酸化物を含んでよい。一方、発泡性の組成物は、発泡後の過酸化物の濃度が典型的なゲル中に存在するのと同等またはより高濃度となるよう、未発泡の状態でより高濃度の過酸化物を含んでもよい。発泡性の組成物では、上述した過酸化物の量は、発泡後の状態に含まれるものとしてもよい。
【0039】
非発泡のゲル状の系においては、安定したゲルの生成のため追加成分を足してもよい。追加成分はゲル化剤、ゲル安定剤、湿潤剤を含んでもよく、その他ゲルの安定性を改善するための添加物を、一方または両成分に加えることもできる。
【0040】
漂白ゲルの調製に用いることのできるゲル化剤は、安定したゲルを提供できる量の、例えばセルロースガム、フュームドシリカ、例えばCabot社提供のCAB-O-SILフュームドシリカ、および乳化ろう、例えばCroda社提供のPolawax(乳化ろうNF)またはCrodafos CES (セテアリルアルコール(および)リン酸ジセチル(および)セテス-10リン酸)、およびそれらの混合物を含む。セルロースガムの例として、Hercules社のヒドロキシメチル-プロピルセルロース(hydroxymethyl propylcellulose)、Klucel GFがある。
【0041】
熱、光、および/または化学物質の付加に加え、歯牙漂白において得られる漂白の程度は前述のように、一般的に(1)歯牙が漂白剤に接触している時間の長さ、(2)処置の行われる日数、(3)漂白剤に対する歯牙の感受性、および(4)活性過酸化物の濃度、に依存する。最大限の漂白のためには、前述のように、高濃度の漂白組成物を用いた長時間の処置が一般的に推奨される。
【0042】
過酸化物の漂白活性は、一般的に組成物に含まれる過酸化物の実際の濃度ではなく、活性過酸化物の利用度(availability)によって決定される。過酸化物が溶液中に存在する場合は、利用度は高い。しかし溶液は性質上、患者の歯に塗布した際保持が容易でなく、そして/または、やはり所望の位置に一定の時間定着させておくのが難しいので、作用を持続させるためには扱いにくい。したがって、より長い接触時間を必要とする低濃度の過酸化物溶液は、溶液という環境下では実用的でない。溶液の過酸化物濃度をより高くしても、漂白効果は高くなるが、定着と長時間にわたる接触の問題を解決できないため、やはり溶液という環境には適さない。また、患者の口腔内の軟組織に接触する高濃度の過酸化物溶液は、組織損傷を起こす可能性がある。したがって、組成物を定着させ効果的な漂白作用を維持しつつ組織損傷の可能性が最小限となるよう、非発泡の系について前述したように、さまざまなゲル化剤、増粘剤、粘着促進剤(adhesion promoter)、および/または同様の添加物を使用してもよい。これにより、ペースト状、ゲル状、および同様の形状の、効果的な漂白系が生成される。使用される添加物の中には、組成物の保持と漂白作用に関しては効果的であるが、特に組成物がアクリル酸のポリマー(カルボマー)由来の増粘剤または粘着促進剤、ピロリドン類増粘剤(pyrrolidone analog thickeners)、またはその他を含む場合、活性過酸化物の利用度を低めることにより漂白活性をいくぶん減少させるものがあると推測されている。そのような添加物は、ゲル内でのイオン相互作用および共有結合相互作用による過酸化物の漂白活性の低下を招き、歯牙漂白に望まれる効果に対し不利に働く可能性がある。
【0043】
泡状とすることが、上述の添加物を使用せずに定着性を高める手段となりうる。泡状の組成物はまた、活性過酸化物の活性をいくらか妨げてしまうような可能性のある添加物を多量に含むことなく長時間の接触を可能にし、漂白活性をさらに高めることができる。泡は、同量またはより多量の活性成分、およびより少量の非活性成分を含むよう調合してもよい。所定の体積で考えて、ゲル化剤、増粘剤、粘着促進剤などの非活性成分の量が、無発泡の状態と比較して、発泡した状態においてより少ない量となるようにしてもよい。理論に拘束されることは意図しないが、空気がゲル化剤、増粘剤、粘着促進剤、またはそれらの混合物のような非活性成分の機能を果たし必要な定着性を与えながらも、非発泡のゲルの定着性のために必要とされる量の他の非活性成分と比べ、空気分子が同じ程度まで活性過酸化物の利用度を妨げることは通常ない、と推測されている。したがって、泡状の組成物はゲル化剤、増粘剤、粘着促進剤あるいは同様の非活性成分をより多く含む組成物と同じ定着性を持つが、過酸化物の存在する濃度が同じ場合でも、漂白作用のための活性過酸化物の利用度がより多くなる。つまり泡状とすることにより、実質的にゲル化剤の代わりに気泡を利用して定着性を作り出すことができる。
【0044】
このように、本発明による泡状または発泡性の組成物は、溶液の場合における問題を起こすことなく、必要に応じて漂白活性の度合いを高めることができる。泡状の組成物は使用中、定着の問題なく扱いやすいだけでなく、活性過酸化物の利用度を妨げないためより高濃度の活性過酸化物を供給することができる。同時に、目に見えない隙間に浸透したりして溝を埋めることにより、歯牙の前面だけでなく歯間の表面にも効果的な漂白作用をもたらすことができる。したがって、目下他の漂白系には与えられていないあらゆる利点が、泡状とすることにより提供できる可能性がある。
【0045】
泡にすると、一般的に、無発泡の状態よりも表面張力が低くなるので、単分子の厚さの膜程度にまで薄く広がることができ、同時に表面積がより大きくなることにより、無発泡の状態と比べ、同量の漂白組成物でもより広範囲を覆うことができる。表面張力を低下させる能力によって、着色汚れの除去を容易にすることもできる。
【0046】
毛管作用の力と表面張力のため、発泡させた泡自体が良好な湿潤剤でもあり、上述のようにより小さな隙間に漂白溶液を浸透させることができる。また、様々な大きさと形の泡が分布することにより、ごく微小な箇所への迅速な浸透が可能となる。このように、泡とするによって、活性過酸化物分子をさらに深く浸透させることが可能となる。
【0047】
さらに、活性過酸化物が発泡物中の気泡に内包されると推測される。気泡が崩壊すると、内部の活性過酸化物が放出され、漂白作用を発揮する。
【0048】
本発明による泡状または発泡性の組成物は、例えば上述のようにエナメル小柱の間を流れ、従来到達できなかった範囲へ確実により多くの成分を供給できるといった、非発泡のゲルに優る利点を持つだけでなく、家庭用という設定においてもより持続した作用をもたらすことができる。
【0049】
家庭用には、漂白組成物と単数または複数の歯牙の表面との接触を持続させ、漂白効果をもたらすために、トレーが通常用いられる。当技術分野における組成物には、組成物およびトレーをも所定の位置に維持するために、接着力の大きい添加物が通常用いられる。泡状にすれば、当技術分野で用いられている接着促進用添加物を用いなくとも、同じように接触を持続させることが可能となる。また、泡状にすることにより、歯牙あるいはトレーにかかる圧力をより均等に分散させることができる。さらに、泡状の組成物は密度が低いため重力に引きずられることがなく、接触を持続させるためにはより扱いやすい。このように、泡状とすることで、漂白作用を助長するだけでなく、容易な塗布、到達の難しい部分への浸透、維持および除去を促進することができる。さらにまた、活性過酸化物が発泡物中の気泡に内包され、そのような気泡は、時間の経過に伴い気泡が崩壊して歯牙に作用する活性漂白成分を定量的に供給することにより、制御漂白手段(controlled whitening devices)として機能すると推測される。
【0050】
実施形態によっては、ゲルの製造過程で泡状の組成物をつくり、そのまま包装してもよい。泡の生成は、何らかの撹拌または泡立動作、発泡剤の使用、およびそれらの組み合わせによって行うことができる。そのように生成した泡は、保存期間が例えば少なくとも約1ヵ月の、長持続性のものとしてもよい。
【0051】
他の実施形態においては、組成物を発泡性として、使用の直前に泡が生成されるように発泡剤を含ませてもよい。発泡剤の中には、ゲルがより大きな表面積に広がるようにして、固体表面への接着力を高めるのにも役立つものがある。
【0052】
さらに他の実施形態においては、発泡剤を用いて、または発泡剤を用いずに、使用の直前に撹拌によって泡を生成してもよい。
【0053】
したがって、組成物によっては、少なくとも1種の発泡剤を含む。様々な種類の発泡剤が適しており、異なった方法で泡を生成することができる。好適な発泡剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性、カチオン性、またはそれらの混合物などの何らかの界面活性剤を含むことができる。
【0054】
これらのうち泡の生成を促進するものとしないものがある。その起泡性によってのみ有用な界面活性剤もあれば、起泡せず乳化剤または湿潤剤としてのみ作用するものもある。また、発泡を減少させる働きをするものすらある。界面活性剤の機能は、属する種類によって決定されるとは限らない。
【0055】
アニオン性界面活性剤は、アルキル基の炭素原子数が約8から約12であるアルキル硫酸の水溶性塩(アルキル硫酸ナトリウム等)、炭素原子数約8から約20である脂肪酸のスルホン化モノグリセリド(sulfonated monoglyceride)の水溶性塩、およびそれらの混合物を含むが、これに限定されるものではない。アニオン性界面活性剤の例として、ラウリル硫酸ナトリウム、ココナッツモノグリセリドスルホン酸ナトリウム(sodium coconut monoglyceride sulfonates)、リン脂質、ラウリルサルコシン酸ナトリウムなどのサルコシン酸塩、タウリン酸塩、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、およびドデシルベンゼン硫酸ナトリウムがある。このようなアニオン性界面活性剤の多くが米国特許第3,959,458号に開示されており、その内容全体が参照により本開示に含まれる。
【0056】
非イオン性界面活性剤は、親水性部分と疎水性部分を含む化合物(アルキレンオキシド基(性質上親水性)と、性質上脂肪族またはアルキル化芳香族である疎水性有機化合物との縮合によって生成できる)を含んでもよいが、これに限定されるものではない。好適な非イオン性界面活性剤の例として、低粘度のポロクサマー類(商品名Pluronicで販売)、低粘度のヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類(商品名Tweensで販売)、脂肪族アルコールエトキシラート類、アルキルフェノール類のポリエチレンオキシド縮合物、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物とエチレンオキシドとの縮合から誘導される生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド類、長鎖第三級ホスフィンオキシド類、長鎖ジアルキルスルホキシド類、およびそれらの混合物を含む。
【0057】
両性界面活性剤としては、脂肪族部分が長鎖または分岐で、脂肪族置換基の1つが約8から約18の炭素原子を有し、かつ1つがアニオン性の親水性化置換基を有する、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ベタイン、具体的にはコカミドプロピルベタイン、およびそれらの混合物を含む、脂肪族第二級および第三級アミン誘導体があるが、これに限定されるものではない。
【0058】
これら非イオン性および両性界面活性剤の多くが米国特許第4,051,234号に開示されており、その内容全体が参照により本開示に含まれる。
【0059】
本発明において、例示された界面活性剤は、発泡性の組成物中に用いられた場合、起泡能力を持つだけでなく湿潤剤として作用する能力も持つものである。
【0060】
実際には、何らかの非対称分子が水に溶解すると、少なくとも弱い界面活性剤ができる。そのような弱い界面活性剤は、通常効果的な発泡剤とはならない可能性があるが、起泡用の注出手段を用いればその効果を向上させることができる。本発明で用いられる非対称分子は、上記の非イオン性界面活性剤のうちいくつかのように、親水性部分と疎水性部分を持つものを含む。そのような分子の一方の側はつまり性質上極性を持ち、水に溶けるが、もう一方の側は無極性であり、水を避ける。水中で、界面活性剤分子は極性を持つ側を水分子に向け、無極性の側が無極性分子を誘引できるようにした。本発明による泡状または発泡性の組成物においては、無極性の側が歯面の着色汚れの浮上を促進し、水で洗い流すことを可能にする、と推測されている。
【0061】
発泡剤の量は、例えば発泡性の組成物の重量比で約0.1%から約5%、さらに例示すれば、重量比で約0.5%から約3%、またさらに例示すれば、重量比で約1%未満という範囲をとってもよい。
【0062】
さらに他の発泡剤は、酸と塩基の反応生成物を含んでもよい。反応生成物は、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ金属重炭酸塩、または重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムもしくは炭酸カルシウムのようなアルカリ土類金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属重炭酸塩を含む。使用する量は、例えば重量比で約1%から約10%、さらに例示すれば、約3%から約7%、またさらに例示すれば、組成物の重量に対して約3.5%から5.5%の範囲をとってもよい。使用する量は、必要な泡の量にもよる。このように、発泡剤の量を変えることにより、生成される泡の量もそれに応じて変化させることができる。
【0063】
一般的に、酸と塩基の比率は、例えば、重量比で約1:0.5から1:25、さらに例示すれば約1:1から1:4の範囲をとる。好適な酸は、水溶性のカルボン酸、リン酸、硝酸、および/もしくは硫酸のような強酸を含む。
【0064】
また、発泡剤はガス状物質でもよい。ガス状物質は、不活性ガス、または塩基性の過酸化水素溶液と酸性の溶液の混合により生成されるガスであってもよい。
【0065】
漂白作用は活性過酸化物が歯牙と接触した際に起こる為、例えば泡を使用直前に生成するならば、泡はそれほど長時間持続するものでなくてもよい。活性成分が気泡に内包されると推測するならば、泡は持続するものとし、もたらされる液体の量、つまり泡状物質中の気泡の崩壊による活性過酸化物の放出が制御され、バランスの取れているようにしてもよい。したがって、例示された組成物は発泡性であるだけでなく、より長い持続性と、崩壊性を持つ泡を生成する能力も備えるものである。
【0066】
発泡性の組成物から生成される泡の半減期は一般的に、例えば、約1から10時間、さらに例示すれば約2から5時間である。泡の半減期が2時間であるということは、生成から約2時間の間に50%の気泡が崩壊し内包されていた漂白剤が放出される、または泡の体積が50%減少し、約4時間の間に気泡の75%が崩壊している、または泡の体積が75%減少するということを意味する。
【0067】
泡の崩壊時間または半減期は多くの要因によって決まる。例えば、生成される泡の量が多いほど崩壊時間は長くなる。また、増粘剤および/または他の不活性成分の粘度が低いほど崩壊時間は短くなる。崩壊時間は、組成物中の他の添加物で、例えば界面活性剤や防腐剤などの界面活性をもつものの性質、および環境にも依存する。例えば、より乾燥した環境では気泡の崩壊がより速くなる可能性がある。
【0068】
泡状の組成物においては、崩壊性を持つ泡を容器に封入した際の半減期は一般的に非常に長くなっており、例えば少なくとも1ヶ月、さらに例示すれば、少なくとも3ヶ月である。使用中、発泡物中の気泡の崩壊は、水または溶媒の周囲への流出、および患者の口腔内の唾液などの状況によって促進される。包装は、包装または容器が開封され、中身が空気と接触した後に泡状の組成物が所望の保存期間を有するよう設計してもよい。使い捨て包装を設計してもよい。
【0069】
例えば、低粘度のゲル化剤または増粘剤を用いてもよい。それらが活性過酸化物の利用度を、高粘度のゲル化剤と同じ程度妨げる可能性は低い。粘度は例えば、通常約10,000センチポイズ未満、さらに例示すれば、約8,000センチポイズ未満、またさらに例示すれば、約5,000センチポイズ未満である。
【0070】
好適な発泡剤は、主要発泡剤として少なくともラウリル硫酸ナトリウムをいくらか含む発泡性の界面活性剤を含む。
【0071】
上述のように、持続性、つまり製品が残存する能力はあらゆる漂白用組成物において望ましい性質のひとつである。一方、容易に洗い流せる性質が製品に望まれているのであれば、発泡性の界面活性剤の使用は想定されない。しかしながら、一般的に漂白組成物は、持続性と洗い流しの容易さの双方を備えていることが望まれる。それが望まれている場合、起泡用の注出用先端部、または起泡用のミキサーを含む注出用先端部である“泡立てポンプ”において生成した泡を用いてもよい。そのような起泡手段によっても、例えば0.5%未満といった最小限の界面活性剤を用いながら、望ましい性質を備えた泡を生成することができる。同時に、所望の効果をもたらすために、他の発泡剤を添加するなどして添加物を組み合わせることも選択できる。
【0072】
再石灰化効果のためには、アモルファスカルシウム化合物を用いることができる。アモルファスカルシウム化合物、例えばアモルファスリン酸カルシウム(ACP)、アモルファスフッ化リン酸カルシウム(ACPF)、アモルファス炭酸リン酸カルシウム(ACCP)、アモルファス炭酸リン酸カルシウム(ACCP)、アモルファスフッ化炭酸リン酸カルシウム(ACCPF)を歯牙の再石灰化に用いることができる。これらのアモルファス化合物は米国特許第5,037,639、 5,268,167、 5,437,857、 5,562,895、 6,000,341、 6,056,930号に開示されており、各々の開示内容は参照によって全体が本開示に含まれる。
【0073】
アモルファスカルシウム化合物に加えて、アモルファスストロンチウム化合物、例えばアモルファスリン酸ストロンチウム(ASP)、アモルファスフッ化リン酸ストロンチウム(ASPF)、アモルファスリン酸ストロンチウムカルシウム(ASCP)、アモルファス炭酸リン酸ストロンチウムカルシウム(ASCCP)、アモルファスフッ化炭酸リン酸ストロンチウム(ASCPF)、アモルファスフッ化炭酸リン酸ストロンチウムカルシウム(ASCCPF)を、上述のように再石灰化に用いてもよい。これらの化合物は米国特許第5,534,244号に開示されており、その内容は、参照によって全体が本開示に含まれる。
【0074】
上記の化合物のうちいくつかは、歯のフッ化物処理にも利用できる。上のすべてのアモルファス化合物、またはアモルファス化合物を形成する溶液は、歯の組織上または組織内に適用されると、虫歯、歯根の露出、および象牙質過敏性のような歯牙の欠陥を防止、および/または修復する。
【0075】
例えば、漂白系の第1の成分がリン酸イオンの源を含み、第2の成分がカルシウムまたはストロンチウムの源を含んでもよい。
【0076】
例えば、リン酸イオンの源は、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、およびそれらの混合物を含んでもよい。上述したように、第2の成分は、例えばカルシウムまたはストロンチウムの源を含んでもよく、2つのゲル組成物が混合された際それがリン酸イオンと結合し、各種アモルファスリン酸カルシウム、および/またはアモルファスリン酸ストロンチウムを生成する。
【0077】
リン酸イオンの源は、例えば重量比で約0.2%から約5%、さらに例示すれば、約0.2%から約4%含んでもよい。
【0078】
第2の成分中のカルシウム、ストロンチウム、またはその組み合わせの源は、例えばカルシウム塩、ストロンチウム塩、もしくはその組み合わせ、さらに例示すれば硝酸カルシウムのようなカルシウム塩で、例えば、重量比約0.25%から約1.5%、さらに例示すれば、約0.3%から約1%の量を含むことができる
【0079】
実施上は、可能な限りまたは使用できる限りのリン酸塩を用いてよい。ただし、リン酸二水素ナトリウムが重量比で約4%を超える量で含まれると、ゲルの安定性に影響を及ぼす可能性がある。
【0080】
驚くべきことに、上述の範囲において存在する第1の成分中のリン酸塩成分は、ゲルの安定化の作用も持つ。より高濃度になると、その安定化効果は徐々に減少する。
【0081】
また、リン酸塩はさらに第1の成分のpH調整の作用も持つ。系のpHは、例えば約5から約8、さらに例示すれば、約5.5から約6.5とすることができる。
【0082】
驚くべきことに、組成物中のアモルファスカルシウム塩および/またはアモルファスストロンチウム塩は過敏性低減剤としての作用も持つ。実際に、本発明の発明者たちは、アモルファスリン酸カルシウムのもたらす知覚鈍麻効果は、後述のものを含む通常用いられる典型的な知覚鈍麻剤以上、さもなくば少なくとも同程度であることを発見した。したがって、アモルファスカルシウム塩またはアモルファスストロンチウム塩を含むことにより、従来の知覚鈍麻剤の代替とできる可能性がある。
【0083】
追加の知覚鈍麻剤を用いてもよい。追加するとすれば、好適な知覚鈍麻剤は硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸リチウムのようなアルカリ硝酸塩、および塩化カリウム、重炭酸カリウムのような他のカリウム塩を含む。
【0084】
知覚鈍麻剤の比率は、例えば重量比約5%以下、さらに例示すれば、重量比約4%以下、さらにまた例示すれば、重量比約3%以下とすることができる。
【0085】
知覚鈍麻剤は系の両成分に含むことができ、上述の範囲は両成分中の合計を表すものとできる。例えば、知覚鈍麻剤をそれぞれの成分中にほぼ同量含んでもよい。
【0086】
驚くべきことに、知覚鈍麻剤はゲルの安定化の作用も持つ。
【0087】
さらに、湿潤剤、香料、着色料、抗歯垢剤、着色防止用化合物、pH調整剤、軟化剤、防腐剤等の添加剤、酸化防止剤、キレート剤、浸透圧調整剤(tonicity modifiers)(例えば塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトールもしくはブドウ糖)、展着剤(spreading agents)、および水溶性の潤滑剤、例えばプロピレングリコール、グリセロール、またはポリエチレングリコール。それぞれの濃度は当業者が容易に決定できる。これらのうちいくつかは、泡状または発泡性の系への使用が想定される。
【0088】
この発明性ある組成物への使用が想定される湿潤剤は水、ポリオール類、例えばグリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリセロール類、プロピレングリコール類、部分的に加水分解された水素化多糖類(hydrogenated partially hydrolyzed polysaccharides)等を含む。単一の湿潤剤、または組み合わせも想定される。これらは一般的に、例えば処方における約85%以下、さらに例示すれば、約15%から約75%含んでよい。発泡性の組成物には、湿潤剤が上述の範囲においてより高いほうで含まれる傾向がある。
【0089】
上述のように、過酸化物量の少ない組成物を想定してもよい。このような過酸化物量の少ない組成物は、家庭においてより長時間にわたって使用し、口腔の健康または全般的健康に有益な、その他多くの物質の媒介として用いてもよい。そのような組成物はまた、歯科での漂白処置の後、効果を維持するために用いてもよい。さらに、長時間の使用に用いられる再石灰化組成物は、単数または複数の損傷した歯牙、重度の虫歯、あるいは骨の減少に対しても有益である。
【0090】
一実施形態において、系は再石灰化効果を持つ過酸化物量の少ない漂白組成物を含んでもよい。他の実施形態において、系は再石灰化効果に加え過敏性低減効果を持つ過酸化物量の少ない漂白組成物を含む。さらに他の実施形態において、系は再石灰化効果およびフッ化物処理効果を持つ過酸化物量の少ない漂白組成物を含んでもよい。さらに他の実施形態において、系は再石灰化効果、フッ化物処理効果、および抗菌効果を持つ過酸化物量の少ない漂白用組成物を含んでもよい。
【0091】
さらなる実施形態において、いかなる所望の効果の組み合わせを実現してもよい。またさらなる実施形態において、抗歯垢剤、着色防止剤、ビタミン剤、または歯牙、呼気、または全般的ヘルスケアにすら有益なその他の薬剤を含んでもよい。
【0092】
過酸化物の含有量は、上記の範囲において低い方、例えば約0.5から約5%、さらに例示すれば、約0.5から約3%であってもよい。組成物は泡状でも非発泡でもよい。
【0093】
組成物に含まれるアモルファスカルシウム塩および/またはアモルファスストロンチウム塩が過敏性低減剤としても作用するが、上述のカリウム塩および同様のものなど、追加の知覚鈍麻剤をさらなる効果のため加えてもよい。
【0094】
有用なフッ化物処理剤は、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化アンモニウム、フッ化錫(II)や、フッ化亜鉛アンモニウム、フッ化錫アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化コバルトアンモニウムのようなフッ化金属塩、および水溶性フッ化水素アミンを含む。一般的に、フッ化ナトリウムおよびフッ化錫(II)である。
【0095】
アモルファスカルシウム塩およびアモルファスストロンチウム塩にはフッ化物処理剤としても有用なものがあり、アモルファスフッ化リン酸カルシウム(ACPF)、アモルファスフッ化炭酸リン酸カルシウム(ACCPF)(米国特許弟5,037,639、5,268,167、5,437,857、5,562,895、6,000,341、6,056,930に開示されており、各々の開示内容は参照によって全体が本開示に含まれる)、アモルファスフッ化リン酸ストロンチウム(ASPF)、アモルファスフッ化炭酸リン酸ストロンチウム(ASCPF)、アモルファスフッ化炭酸リン酸ストロンチウムカルシウム(ASCCPF)(米国特許第5,534,244に開示されており、その内容は参照によって全体が本開示に含まれる)を含む。これらの化合物は再石灰化効果とフッ化物処理効果の両方を持つ。
【0096】
有用な抗菌剤は、例えば、フェノール類およびサリチル酸アミド類、ならびに、例えば塩化亜鉛、塩化銅、塩化錫(II)および硝酸銀のような塩の形態をとる亜鉛イオン、銅イオン、銀イオン、および錫(II)イオン等の金属イオンの源、を含む。それらもまた使用するときには少量とする。
【0097】
泡状または発泡性の形態において、泡状にすることの利点は上述してきたような過酸化物量の少ない漂白組成物においても実現される。
【0098】
本発明による歯牙漂白組成物を包装するにあたっては、使用前に2成分の分離しておくために都合のよいいかなる方法を利用してもよい。例えば、単一の容器を隔室で仕切り、2成分を別個の隔室に封入し、同時に注出して歯牙への塗布前に混合してもよい。または、2成分を2つの別個の容器に封入し、各容器から注出して使用直前に混合してもよい。包装の例は米国特許第5,819,988、6,065,645、6,394,314、6,564,972、および6,698,622号に開示されており、参照により本開示に含まれる。
【0099】
本発明の典型的な一実施形態において、2成分は2筒シリンジの別個の区画に入れて提供することができる。本発明の他の典型的な実施形態において、2成分は、成分ごとに別個の隔室を有する単一の容器に入れて提供することができる。
【0100】
ここに記載されるすべての包装方法において、シリンジまたは2室容器は、注出用先端部、またはミキサーを有する注出用先端部を備えてもよい。ミキサーはダイナミックミキサーでもスタティックミキサーでもよい。スタティックミキサーの例は、参照によって本開示に含まれる、米国特許第5,819,988、6,065,645、6,394,314、6,564,972、6,698,622号に同じく開示されているものを含む。ダイナミックミキサーの例は、参照によりその内容が本開示に含まれる、米国特許第6,443,61号、および6,457,609号、ならびに米国特許公開第2000/0190082号に開示されているものを含む。
【0101】
そのような注出用先端部もしくはミキサーは起泡に用いてもよい。または、シリンジもしくは容器が注出用ポンプを備えてもよい。
【0102】
使用直前に、シリンジまたは容器を作動させることにより2成分が1:2から5:1の割合(第1の成分対第2の成分)で混合される。例えば、ゲルあるいは泡を1:1の割合で混合することができる。混合した漂白ゲルもしくは泡は歯牙に直接、または歯牙漂白用トレーを用いて歯面に塗布する。本発明は、各成分中に存在する構成要素の割合の相違によって、成分の他の組み合わせも考慮する。
【0103】
驚くべきことに、リン酸イオンの源、および、カルシウム、ストロンチウム、またはその混合物の源といったアモルファス化合物の成分を除いて、2成分はほぼ同じ活性成分を含むことができる。典型的な実施形態において2成分が混合されると、2つの源が結合してリン酸カルシウムを生成する。それを歯牙に塗布すると、上述の米国特許第5,037,639、 5,268,167、 5,460,803、 5,534,244、5,562,895、 6,000,341、 6,056,930に記載のように、リン酸カルシウムが歯面に沈殿してヒドロキシアパタイトと混じりあい、歯牙のエナメル質の再石灰化を助長する。たとえ過酸化物の源および他の活性成分が両成分に含まれていても、アモルファスカルシウム化合物および/またははアモルファスストロンチウム化合物の活性は妨げられない。結果として、製造効率が改善できる。
【0104】
また、2成分を視覚的に区別するために、第1の成分を実質的に乳白色、濁色、不透明、もしくは色つきとし、第2の成分を実質的に透明とする、またはその逆としてもよい。さらに、両方を実質的に乳白色、濁色、不透明、あるいは色つきとし、その度合いや色で区別してもよい。
【0105】
ほとんどの乳白剤(opacifying agent)は過酸化物の安定性を減少させる傾向がある。例えば、TiO2またはZnO2は過酸化物の分解を引き起し、本来の目的に対する効果を弱める可能性がある。驚くべきことに、CaCO3は、EDTA塩を用いて安定化したマイカとTiO2の混合物と同様に、効果的な顔料であることがわかっている。それらはともに過酸化物の安定性に影響することなく、第1の成分を白色とすることができた。同じ効果を持つ他の乳白剤の使用も想定される。
【0106】
本発明を以下の例によりさらに説明する。Bの成分をキッチンエイドミキサー(Kitchenaide mixer)において、Hercules Incorporated、Aqualon Division、Hercules Plaza (Wilmington, DE)から入手可能なヒドロキシメチル-プロピルセルロース(hydroxymethyl propylcellulose)と、乳化ろうがプロピレングリコール中に分散するまで混合した。次に、Cの成分を加える前に、Aの成分を加え混合した。その後、Cの香料とシリカを、増粘した分散液中に分散するまで適度に混合しながら添加した。最後に、もし使用する場合は、Timica Extralarge Sparkle 110S(Englehard Corporation, Iselin, NJから入手可能な二酸化チタン/マイカ)を加え真空下で混合し、全ての空気/泡を取り除いた。一方、泡状の組成物を生成する際には、そのような泡の除去作業は必要なく、同時にさらなる泡生成のための撹拌が行われる。また、発泡性の組成物には発泡剤が添加される。泡状の組成物も発泡性の組成物も、より少ない量のゲル化剤、増粘剤および/またはその他の非活性成分を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

【0113】
【表7】

【0114】
【表8】

【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

【0117】
【表11】

【0118】
【表12】

【0119】
【表13】

【0120】
【表14】

【0121】
【表15】

【0122】
【表16】

【0123】
【表17】

【0124】
【表18】

【0125】
【表19】

【0126】
【表20】

【0127】
【表21】

【0128】
【表22】

【0129】
【表23】

【0130】
【表24】

【0131】
【表25】

【0132】
【表26】

【0133】
【表27】

【0134】
【表28】

【0135】
【表29】

つまり、上述の例における第1の成分の構成要素は下記の範囲にわたる。
50%過酸化水素溶液は、例えば、約2%から約15%、さらに例示すれば、約4%から約12%、過酸化尿素は、例えば、約3%から約20%、さらに例示すれば、約4%から約17.0%、Cabosil EH-5のようなエアロゾルは、例えば、約2%から約5%、さらに例示すれば、約4.5%、グリセリンは、例えば、約5%から約25%、さらに例示すれば、約6%から約20.0%、Klucel GFのようなゲル化剤は、例えば、約1%から約40%、さらに例示すれば、約2%から約38%、Polawax NFは、例えば、約5%から約10%、さらに例示すれば、約5%から約7%、プロピレングリコールは、例えば、約5%から15%、さらに例示すれば、約7%から約13%、二酸化チタンとマイカのtimica Blend(“Englehard”)は、例えば、約0.2%から約1%、さらに例示すれば、約0.25%から約0.75%である。本発明から逸脱しない他の範囲を用いてもよい。
【0136】
【表30】

【0137】
【表31】

【0138】
【表32】

【0139】
【表33】

【0140】
【表34】

【0141】
【表35】

【0142】
【表36】

【0143】
【表37】

【0144】
【表38】

【0145】
【表39】

【0146】
【表40】

【0147】
【表41】

【0148】
【表42】

【0149】
【表43】

【0150】
【表44】

【0151】
【表45】

【0152】
【表46】

【0153】
【表47】

【0154】
【表48】

【0155】
【表49】

【0156】
【表50】

【0157】
【表51】

【0158】
【表52】

【0159】
【表53】

【0160】
【表54】

【0161】
【表55】

【0162】
【表56】

【0163】
つまり、上述の例における第2の成分の構成要素は下記の範囲にわたる。
50%過酸化水素溶液は、例えば、約2%から約15%、さらに例示すれば、約4%から約12%、過酸化尿素は、例えば、約3%から約15%、さらに例示すれば、約5%から約12.0%、Cabosil EH-5のようなエアロゾルは、例えば、約2%から約10%、さらに例示すれば、約4%から約6%で、発泡性または泡状の組成物においてはより少ない範囲で含まれ、グリセリンは、例えば、約5%から約25%、さらに例示すれば、約9%から約22%、Klucel GFのようなゲル化剤は、例えば、約25%から約50%、さらに例示すれば、約30%から約45%、Polawax NFは、例えば、約1%から約10%、さらに例示すれば、約1%から約7%、プロピレングリコールは、例えば、約5%から約15%、さらに例示すれば、約7%から約13%である。本発明から逸脱することなく他の範囲を訴え(sued)てもよい。
【0164】
上述のいずれかの組成物によって生成された泡は、ゲル化剤および同様の構成要素が上の例と同じ量含まれる限り、極めて長時間にわたる、例えば8時間を超える持続性を持つ。第2の成分としての組成物の中には、組成物の粘度が低いため、それにより生成された泡が第1の成分としての組成物によって生成された泡より固くないものもあった。
【0165】
本発明を、付随する例示および具体例を参照して説明してきたが、添付の請求項に記載したような本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の変更が可能であると想定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の過酸化物と、少なくとも1つのリン酸イオンの源と、少なくとも1つのゲル化剤とを含む第1の成分と、
少なくとも1種のカルシウム、ストロンチウム、またはそれらの混合物の源と、少なくとも1種のゲル化剤とを含む第2の成分と、
を含むことを特徴とする2成分の漂白系。
【請求項2】
前記第2の成分は、知覚鈍麻剤、抗菌剤、フッ化物処理剤、ビタミン剤、着色防止剤、抗歯垢剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の2成分の系。
【請求項3】
前記第1の成分は、実質的に不透明もしくは色つきであり、前記第2の成分は実質的に透明であるか、またはその逆であることを特徴とする、請求項1または2記載の2成分系の系。
【請求項4】
前記2成分は、混合され、接触を持続させるための歯科用トレーから歯牙に塗布されるように用いられることを特徴とする、請求項1、2または3記載の2成分の系。
【請求項5】
前記漂白ゲル中に存在する過酸化物は重量比約0.5%から重量比約45%におよぶことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の2成分の系。
【請求項6】
前記第1の成分中のリン酸イオンの源は、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または5記載の2成分の系。
【請求項7】
前記第1の成分中のリン酸イオンの源は、重量比約0.2%から約5%の量で存在することを特徴とする、請求項6記載の2成分の系。
【請求項8】
前記第2の成分中のカルシウム、ストロンチウム、またはその組み合わせの源は、カルシウム塩、ストロンチウム塩、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1または5記載の2成分の系。
【請求項9】
前記第2の成分中のカルシウムの源は、硝酸カルシウムを含むことを特徴とする、請求項8記載の2成分の系。
【請求項10】
前記第2の成分中のカルシウム、ストロンチウム、またはそれらの組み合わせの源は、重量比約0.25%から約1.5%の量で含まれることを特徴とする、請求項8記載の2成分の系。
【請求項11】
前記第1の成分中のリン酸イオンの源は、前記第2の成分のカルシウム、ストロンチウム、またはその組み合わせと結合し、様々なアモルファスリン酸カルシウムおよび/またはアモルファスリン酸ストロンチウムを生成することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の系。
【請求項12】
前記知覚鈍麻剤は、硝酸カリウムを含むことを特徴とする、請求項3記載の2成分系の系。
【請求項13】
硝酸カリウムは重量比約5%まで存在することを特徴とする、請求項15記載の2成分の系。
【請求項14】
前記第1の成分が知覚鈍麻剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の2成分の系。
【請求項15】
前記系は、発泡性であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の系。
【請求項16】
前記系は、2室容器(two-compartment container)に封入されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分系の系。
【請求項17】
前記容器は、2筒シリンジを含むことを特徴とする、請求項16記載の2成分の系。
【請求項18】
請求項16または17記載の2成分系の系であって、注出用先端部、ポンプ、ミキサー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される注出手段をさらに備えることを特徴とする2成分の系。
【請求項19】
前記シリンジは、注出用先端部、ポンプ、ミキサー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、起泡用に構成される注出手段をさらに備えることを特徴とする、請求項17または18記載の2成分の系。
【請求項20】
前記系は、少なくとも1種の発泡剤を含むことを特徴とする、請求項15記載の2成分の系。
【請求項22】
少なくとも1種の過酸化物と、少なくとも1種のリン酸イオンの源と、少なくとも1種のゲル化剤とを含む第1の成分と、
少なくとも1種のカルシウム、ストロンチウム、またはそれらの混合物の源と、少なくとも1つの発泡剤とを含む第2の成分と、
を含む2成分の漂白系であって、
生成される泡の半減期は、少なくとも約1時間であることを特徴とする漂白系。
【請求項23】
前記第1の成分中のリン酸イオンの源は、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項22記載の泡状または発泡性の系。
【請求項24】
前記第1の成分中のリン酸イオンの源は、重量比約0.2%から約5%の量で存在することを特徴とする、請求項22または23記載の泡状または発泡性の2成分の系。
【請求項25】
前記第2の成分中のカルシウム、ストロンチウム、またはその組み合わせの源は、カルシウム塩、ストロンチウム塩、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項22、23または24に記載の泡状または発泡性の2成分系の系。
【請求項26】
前記第2の成分中のカルシウム、ストロンチウム、またはそれらの組み合わせの源は、重量比約0.25%から約1.5%の量で含まれることを特徴とする、請求項25記載の泡状または発泡性の2成分系の系。
【請求項27】
前記発泡剤は、界面活性剤、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属重炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩およびアルカリ土類金属重炭酸塩、ガス、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項22から26のいずれかに記載の泡状または発泡性の2成分の系。
【請求項28】
前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項27記載の泡状または発泡性の2成分の系。
【請求項29】
前記界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、親水性成分および疎水性成分を含む組成物、リン脂質、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項27または28記載の泡状または発泡性の2成分の系。
【請求項30】
請求項22から29のいずれかに記載の泡状または発泡性の2成分の系であって、知覚鈍麻剤、抗菌剤、フッ化物処理剤、ビタミン剤、着色防止剤、抗歯垢剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分をさらに含むことを特徴とする系。
【請求項31】
前記泡状の系は、半減期が少なくとも約1ヵ月であることを特徴とする、請求項22から30のいずれかに記載の泡状または発泡性の2成分の系。

【公表番号】特表2008−519772(P2008−519772A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540419(P2007−540419)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040906
【国際公開番号】WO2006/073559
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(300057780)ディスカス デンタル インプレッションズ インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】