説明

2次元光素子アレイ

【課題】半導体光素子にキャリアを注入することによって発生した熱の排熱効率を高くして、半導体光素子における、キャリアの再結合によるエネルギーから光への変換効率を高くする。
【解決手段】基板と、基板上の、第1の軸線、および、第1の軸線と所定の角度で交差する第2の軸線のいずれに対しても、所定の周期T1を有する位置に2次元的に配置され、キャリアが注入されて発光する活性層を有する複数の半導体光素子を備え、当該位置の少なくとも一つは、複数の半導体光素子のいずれもが形成されていない非光素子位置である、2次元光素子アレイを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元光素子アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザを備える光素子において、半導体レーザの上面に熱伝導率が高い層を形成することが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特許文献1 特開昭62−274682号公報
特許文献2 特開2008−244431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体レーザでは、注入されたキャリアが、活性層で再結合することによって光を発する。このとき、キャリアが再結合したことによるエネルギーの一部は熱になるので、活性層において熱が発生する。しかし、活性層の温度が高くなると、キャリアの再結合によるエネルギーが光に変換される変換効率が低くなる。そこで、活性層からの排熱効率を高くして、光への変換効率を高くすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、基板と、基板上の、第1の軸線、および、第1の軸線と所定の角度で交差する第2の軸線のいずれに対しても、所定の周期T1を有する位置に2次元的に配置され、キャリアが注入されて発光する活性層を有する複数の半導体光素子を備え、当該位置の少なくとも一つは、複数の半導体光素子のいずれもが形成されていない非光素子位置である、2次元光素子アレイを提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光素子アレイの模式的な上視図である。
【図2】第1の実施形態に係る光素子アレイの模式的な断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る光素子アレイにおける熱の伝達を模式的に示す図である。
【図4】熱伝導度のシミュレーション結果である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る光素子アレイの模式的な上視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る光素子アレイの模式的な上視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る光素子の模式的な上視図である。
【図8】第4の実施形態に係る光素子の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光素子アレイ100の模式的な上視図である。光素子アレイ100は、複数の半導体光素子102、及び、熱伝導部104を備える。複数の半導体光素子102は、X軸及びX軸と所定の角度で交差するY軸のいずれに対しても、所定の周期(T1)を有する位置に、2次元的に形成される。図1に示した光素子アレイ100においては、X軸とY軸とは、互いに60度で交差する。X軸及びY軸のいずれに対しても所定の周期(T1)を有する位置の少なくとも一つは、半導体光素子102が形成されていない、非光素子位置である。
【0009】
非光素子位置は、X軸及びY軸のいずれに対しても、所定の周期(T2)を有して、2次元的に配置される。非光素子位置が配置される周期T2は、半導体光素子102が形成される周期T1のn倍(nは正の整数)である。すなわち、半導体光素子102と非光素子位置との数の比は、m:1以上(mは正の整数)である。
【0010】
非光素子位置には、熱伝導部104が形成される。すなわち、熱伝導部104は、X軸及びY軸のいずれに対しても、所定の周期(T2)を有して、2次元的に配置される。熱伝導部104が配置される周期T2は、半導体光素子102が形成される周期T1のn倍(nは正の整数)である。すなわち、半導体光素子102と非光素子位置との数の比は、m:1以上(mは正の整数)である。一例として、nは3であり、mは8である。
【0011】
図1に示した光素子アレイ100では、正六角形の頂点及び中心の一部に半導体光素子102が形成され、他の一部には、半導体光素子102が形成されず、熱伝導部104が形成される。すなわち、2次元最密充填構造の格子点の一部に半導体光素子102が形成され、他の一部には、半導体光素子102が形成されず、熱伝導部104が形成される。
【0012】
熱伝導部104は、複数の開口部140を有する。熱伝導部104は、正六角形の頂点及び中心に配置された7つの開口部140を有する。当該7つの開口部140は、互いに同じ大きさである。すなわち、当該7つの開口部140は、上端が10μm×10μmの正方形を有する。正六角形の中心に配置された開口部140と、正六角形の頂点の一つに配置された開口部140とを結ぶ直線は、X軸又はY軸と30度の角度を形成する。熱伝導部104においては、開口部140の内壁が露出されるので、表面積が大きくなり、放熱効率が高くなる。
【0013】
当該7つの開口部140は、同じ大きさではなく、互いに異なる大きさでもよい。例えば、当該7つの開口部140は、正六角形の中心に配置された開口部140が、正六角形の頂点に配置された開口部140より大きくてもよく、あるいは、小さくてもよい。また、正六角形の中心に配置された開口部140と、正六角形の頂点の一つに配置された開口部140とを結ぶ直線は、X軸又はY軸と平行であってもよい。さらに、熱伝導部104に配置される開口部140の数は7つに限られず、また、開口部140の配置は正六角形に限られない。
【0014】
図1に示した光素子アレイ100においては、半導体光素子102が形成される周期(T1)が70μmであり、熱伝導部104が形成される周期(T2)が210μmである。すなわち、熱伝導部104が形成される周期(T2)は、半導体光素子102が形成される周期(T1)の3倍(T2=T1×3)である。つまり、格子点の間隔が210μmの2次元最密充填構造に、半導体光素子102及び熱伝導部104が形成される。
【0015】
図1に示した光素子アレイ100においては、一つの熱伝導部104、当該一つの熱伝導部104からX軸方向にT2だけ離れて形成された熱伝導部104、及び、当該一つの熱伝導部104からY軸方向にT2だけ離れて形成された熱伝導部104で形成される正三角形の中心に、半導体光素子102が一つ形成され、当該正三角形の三辺上に、それぞれ、半導体光素子102が二つずつ形成される。これにより、熱伝導部104は、互いに隣接せず、半導体光素子102に隣接して形成される。
【0016】
光素子アレイ100の外周部を除いて、半導体光素子102の3/4(75%)が熱伝導部104に隣接する。光素子アレイ100の外周部より外側には、半導体光素子102及び熱伝導部104が形成されないので、光素子アレイ100の外周部においては、熱伝導部104に隣接する半導体光素子102の比率が異なりうる。このとき、熱伝導部104を形成せずに、半導体光素子102をすべての格子点に形成する場合より、半導体光素子102の数が11%減少する。しかし、熱伝導部104を形成したことにより、半導体光素子102で発する熱の排熱効率が高くなるので、それぞれの半導体光素子102における光への変換効率が11%以上高くなる。したがって、光素子アレイ100の発光効率は、熱伝導部104が形成されない場合より、高くなる。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る光素子アレイ100の、図1のA−A'における、模式的な断面図である。半導体光素子102は、基板110、下部DBR層112、バッファ層114、n型コンタクト層116、活性層118、電流狭窄層120、p型スペーサ層126、p型コンタクト層128、絶縁層130、p側電極132、n側電極134、誘電体層136、及び、上部DBR層138を備える。基板110は、例えば、半絶縁性のGaAs基板で形成され、(100)表面を有する。
【0018】
下部DBR層112は、基板110上に化合物半導体で形成される。下部DBR層112は、高屈折率の化合物半導体及び低屈折率の化合物半導体を積層して形成される。下部DBR層112は、例えば、GaAs層とAl0.9Ga0.1As層とのペアを、34ペア繰り返し積層して形成される。下部DBR層112は、例えば、5μmの厚さである。バッファ層114は、下部DBR層112上に形成される。バッファ層114は、例えば、アンドープのGaAsで形成される。アンドープとは、半導体に導電性を与える不純物を意図的に添加されていないことをいう。
【0019】
n型コンタクト層116は、バッファ層114上に、n型の導電性を有する化合物半導体で形成される。n型コンタクト層116は、一例としてn型GaAsで形成される。n型コンタクト層116は、n側電極134との間でオーミック接合を形成して、n側電極134から注入されたキャリアを、活性層118に効率よく注入する。
【0020】
活性層118は、n型コンタクト層116上に、化合物半導体で形成される。活性層118は、例えば、n型コンタクト層116上にGaAsで形成された障壁層と、障壁層上にInGaAsで形成された量子井戸層とが、交互に積層されて、形成される。このとき、活性層118は、3層の量子井戸層と、4層の障壁層を有し、活性層118の最上層が障壁層である。n側電極134及びp側電極132から注入されたキャリアが、活性層118で再結合して光を発する。
【0021】
活性層118上に電流狭窄層120が形成される。電流狭窄層120は、絶縁体で形成された電流狭窄部124及び導電性を有する半導体で形成された電流注入部122を有する。電流注入部122の外周を取り囲んで、電流狭窄部124が形成される。例えば、上面から見て、電流注入部122は活性層118の中心を含む円形に形成され、電流狭窄部124は電流注入部122の外側に接して円形に形成される。一例として、電流注入部122がAlAsで形成され、電流狭窄部124がAlで形成される。電流注入部122が形成された領域の下方の活性層118には、p側電極132からキャリアが注入され、電流狭窄部124が形成された領域の下方の活性層118には、p側電極132からキャリアが注入されない。p側電極132から活性層118にキャリアが注入される領域は、電流狭窄層120によって調整される。
【0022】
電流狭窄層120上に、p型の導電性を有する化合物半導体で、p型スペーサ層126が形成される。p型スペーサ層126上に、p型の導電性を有する化合物半導体で、p型コンタクト層128が形成される。p型コンタクト層128におけるドーパントの濃度は、p型スペーサ層126におけるドーパントの濃度より高い。p型スペーサ層126及びp型コンタクト層128は、一例として、炭素を添加したGaAsで形成される。例えば、p型スペーサ層126におけるドーパントの濃度は、1×1018cm−3以上で、2×1019cm−3より小さく、p型コンタクト層128におけるドーパントの濃度は2×1019cm−3以上である。p型コンタクト層128及びp型スペーサ層126は、p側電極132との間でオーミック接合を形成して、p側電極132から注入されたキャリアを、活性層118に効率よく注入する。
【0023】
活性層118、電流狭窄層120、p型スペーサ層126、及び、p型コンタクト層128は、上面から見て円形のメサ構造を有する。活性層118、電流狭窄層120、p型スペーサ層126、及び、p型コンタクト層128のメサ構造を、上面から見たときの直径は、例えば、40μmである。また、n型コンタクト層116は、上面から見て、活性層118、電流狭窄層120、p型スペーサ層126、及び、p型コンタクト層128より、大きい直径を有するメサ構造を有する。すなわち、n型コンタクト層116のメサ構造の側面は、活性層118のメサ構造の側面の外側に形成される。
【0024】
n型コンタクト層116、活性層118、電流狭窄層120、p型スペーサ層126、及び、p型コンタクト層128を覆って絶縁層130が形成される。すなわち、絶縁層130は、p型コンタクト層128の上面及び側面、p型スペーサ層126の側面、電流狭窄層120の側面、活性層118の側面、並びに、n型コンタクト層116の上面及び側面上に形成される。
【0025】
絶縁層130上であって、電流注入部122の上方で、絶縁層130が除去されている。絶縁層130は、例えば、窒化ケイ素で形成される。絶縁層130が除去されている領域は、電流注入部122の上方を含み、かつ、電流注入部122より大きい。絶縁層130が除去された領域であって、p型コンタクト層128上に誘電体層136が形成される。誘電体層136は、電流注入部122の上方に形成される。誘電体層136は、電流注入部122より大きい領域に形成される。
【0026】
p型コンタクト層128上の絶縁層130が除去された領域で、誘電体層136の外側にp側電極132が形成される。p側電極132は、一部がp型コンタクト層128に接する。また、p側電極132は、絶縁層130上から、絶縁層130上に連続して形成される。また、p側電極132は、n側電極134が形成されていない領域で、p型コンタクト層128、p型スペーサ層126、電流狭窄層120、及び、活性層118の側面に形成された絶縁層130上に形成され、さらに、n型コンタクト層116上の絶縁層130上に連続して形成される。p側電極132は、n型コンタクト層116の側面を超えて絶縁層130上に形成される。これにより、p側電極132への配線が容易になる。
【0027】
誘電体層136及びp側電極132上に、上部DBR層138が形成される。上部DBR層138は、高屈折率の誘電体層及び低屈折率の誘電体層を積層して形成される。上部DBR層138は、一例として、窒化ケイ素及び酸化ケイ素が、交互に、それぞれ10層〜12層積層されて形成される。上部DBR層138は、p側電極132より小さく形成され、p側電極132の一部が上部DBR層138から露出する。
【0028】
n型コンタクト層116上の一部で絶縁層130が除去される。絶縁層130が除去された領域で、n型コンタクト層116上にn側電極134が形成される。n側電極134及びp側電極132から注入されたキャリアは、活性層118で再結合する。活性層118は、下部DBR層112及び上部DBR層138に挟まれるので、活性層118におけるキャリアの再結合で発した光は、下部DBR層112と、誘電体層136を含む上部DBR層138との間で反射を繰り返し、半導体光素子102がレーザ発振する。
【0029】
熱伝導部104は、開口部140及び金属層142を有する。開口部140が形成される領域には、半導体光素子102が形成されていない。すなわち、熱伝導部104が形成される領域では、基板110上に下部DBR層112、バッファ層114、及び、絶縁層130が形成される。
【0030】
開口部140は、絶縁層130、バッファ層114、及び、下部DBR層112を貫通して、基板110の一部を除去して形成される。開口部140は、テーパー形状を有する。開口部140の側面は、例えば、光素子アレイ100の断面における垂直方向に対して、5度〜50度の角度を有する。
【0031】
開口部140の内壁に、金属層142が金属で形成される。金属層142を形成する金属は、熱伝導度が、100W/m・K以上である。これにより、金属層142は、絶縁層130、バッファ層114、及び、下部DBR層112の側面上に形成される。また、金属層142は、基板110の一部が除去された領域で、基板110の表面上に形成される。金属層142は、一例として、銀で形成される。金属層142の厚さは、例えば0.4μmである。開口部140の上端は、一例として、上面から見て、10μm×10μmの四角形である。開口部140の深さは、例えば、1μm以上、20μm以下である。金属層142は、厚さ0.4μmと比較的薄くても、十分な放熱性が得られる。金属層142が厚さ0.4μmと比較的薄いと、基板110、下部DBR層112、バッファ層114などの半導体材料に対して、金属層142が及ぼす歪が小さくなり、基板110、下部DBR層112、バッファ層114などの半導体材料中に結晶欠陥が発生しにくい。これにより、光素子アレイ100の信頼性が高くなる。
【0032】
開口部140は、例えば以下のようにして、エッチングで形成される。絶縁層130上にフォトリソグラフィーでドライエッチング用のレジストが形成される。次に、絶縁層130がRIEエッチングで除去される。ドライエッチング用のレジストが除去され、ウェットエッチング用のレジストが、絶縁層130が除去されていない領域で、絶縁層130上に、フォトリソグラフィーによって形成される。バッファ層114、及び、下部DBR層112、並びに、基板110の一部が、ウェットエッチングで除去される。ウェットエッチングは、リン酸及び過酸化水素水で行われる。さらに、水酸化アンモニウム及び過酸化水素水でウェットエッチングが行われて、開口部140がテーパー形状にされる。次に銀が蒸着されて、開口部140が形成される。ウェットエッチング用のレジストが除去される。
【0033】
活性層118でキャリアが再結合するときに、再結合により放出されたエネルギーの一部は熱になる。また、電流狭窄層120付近は、比較的電気抵抗が大きくジュール熱が発生する。このように活性層118及び電流狭窄層120付近で発した熱は、活性層118の周辺へと伝達される。このとき、活性層118から周辺への熱の伝達が早いほど、活性層118の温度が低くなる。活性層118の温度が低いほど、キャリアの再結合によって放出されたエネルギーが光に変換される変換効率が高くなる。光素子アレイ100においては、熱伝導部104により、半導体光素子102で発生する熱の排熱効率が高くなり、半導体光素子102の活性層118の温度上昇を抑えることができる。これにより、一部の半導体光素子102が熱伝導部104で置き換えられて、半導体光素子102の総数が減少しても、熱伝導部104の寄与により、ここの半導体光素子102の光変換効率が上昇し、光素子アレイ100の発光効率は、熱伝導部104が形成されない場合より高くなる。
【0034】
熱伝導部104を備える光素子アレイ100は、個々の半導体光素子102の光変換効率が上昇している。これにより、熱伝導部を設けない光素子アレイに比べ、同じ光出力密度を得るのに必要な投入電力が小さい。したがって、個々の半導体光素子102の活性層118の温度が低いという特徴を有する。光素子アレイ100を長期間にわたり駆動すると、活性層118などの半導体材料中に結晶欠陥が発生し、遂には発光を停止するという劣化が生じることがある。そして、結晶欠陥の発生は、温度が高いほど促進される。したがって、熱伝導部104を設けた光素子アレイ100は、熱伝導部104を設けない光素子アレイに比べ、劣化が抑えられ、長寿命である。
【0035】
図3は、第1の実施形態に係る光素子アレイ100における熱の伝達を、模式的に示す断面図である。図3においては、半導体光素子102と、その間に形成された熱伝導部104を示した。また、図3では、半導体光素子102を簡略化して、下部DBR層112、絶縁層130、及び、電流注入部122のみを示して、他の構成要素を省略した。
【0036】
電流注入部122の下方で、活性層118に注入されたキャリアが再結合し、光と熱が放出される。放出された熱は、半導体光素子102の上方向、側面方向、及び、下方向に伝達されて放熱される。最も放熱効率が高いのは、下方向及び斜め下方向である。これは、基板110、下部DBR層112、バッファ層114、n型コンタクト層116が化合物半導体で結成され、化合物半導体は、空気より熱伝導率が大きいからである。したがって、半導体光素子102で発生した熱により、半導体光素子102からn型コンタクト層116、バッファ層114、及び、下部DBR層112まで、下方向及び斜め下方向に、図3の矢印のように、温度勾配ができる。これは、図3の矢印の方向に放熱されることを意味する。また、基板110では、下方向に温度勾配ができ、放熱される。これは、基板110では半導体光素子102で発生した熱が、断面における横方向には、拡散しなくなるからである。
【0037】
半導体光素子102同士が隣接せず、熱伝導部104が設けられた領域では、半導体光素子102同士が隣接する領域より、半導体光素子102で発生した熱が、断面における横方向に拡散しやすいので、排熱効率が高くなる。さらに、熱伝導部104の熱伝導率は、半導体又は絶縁体で形成された領域の熱伝導率より高いので、熱伝導部104によって、半導体光素子102で発生した熱の、断面における横方向への拡散が促進される。これにより、半導体光素子102の活性層118の温度が低くなり、光への変換効率が高くなる。
【0038】
図4は、半導体光素子102において発熱する発熱領域150から、熱伝導部104の上端より100μm下側の領域までの、熱伝導度のシミュレーション結果を示す。図4のグラフには、熱伝導部104に開口部140及び金属層142のいずれも形成されない場合の熱伝導度を破線で示し、金属層142の熱抵抗を一点鎖線で示した。図4のグラフに示した熱伝導度は、発熱領域150から基板110の表面に平行に熱伝導部104に向かって熱拡散し、金属層142が設けられている場合には金属層142を介して熱拡散して、その後、熱伝導部104から基板の表面に垂直に、基板の裏面に向かって熱拡散する経路の熱伝導度である。図4の上側に、熱伝導度のシミュレーションに用いた熱拡散の経路を模式的に示した。
【0039】
開口部140は直径10μm、深さ10μmの穴形状とした。半導体光素子102において発熱する領域の直径を10μm、当該発熱する領域の側面と、熱伝導部104の側面との距離を30μmとした。図4に示すグラフの横軸が金属層142の厚さを示し、縦軸は熱伝導度を示す。n型コンタクト層116、バッファ層114、下部DBR層112及び基板110の熱伝導度を50W/Kとし、また、金属層142は銀で形成された場合を想定し、金属層142の熱伝導度を400W/Kとした。
【0040】
図4に示されるように、金属層142の厚さを0.3μm以上とすると、熱伝導部104に開口部140及び金属層142のいずれもが形成されない場合より、熱伝導部104に開口部140及び金属層142を形成した場合の方が、熱伝導度が高い。したがって、金属層142の厚さが0.3μm以上であれば、熱伝導部104の表面の温度が低くなる。これにより、発熱領域150から基板110の裏面に向かう熱の拡散経路が、基板の表面に垂直な直線に対してなす角度が大きくなる。したがって、金属層142の厚さは0.3μm以上が好ましい。また、金属層142は、厚さ0.4μmと比較的薄くても、十分な放熱性が得られる。金属層142の厚さが0.4μm以下であれば、基板110、下部DBR層112、バッファ層114などの半導体材料に対して、金属層142が及ぼす歪が小さくなり、基板110、下部DBR層112、バッファ層114などの半導体材料中に結晶欠陥が発生しにくく、光素子アレイ100の信頼性が高くなる。したがって、金属層142の厚さは0.4μm以下が好ましい。
【0041】
金属層142が開口部140の内壁に形成された例を説明したが、金属層142はこれに限られない。例えば、金属層142は、開口部140全体に埋め込まれて形成されてもよい。これにより、熱伝導部104の放熱効率が高くなる。
【0042】
以上、熱伝導部104が形成される例を説明したが、熱伝導部104は形成されなくてもよい。すなわち、光素子アレイ100の、予め定められた周期の位置の一部に半導体光素子102が形成され、他の一部には、半導体光素子102及び熱伝導部104のいずれもが形成されなくてもよい。半導体光素子102が形成されていない部分では、半導体光素子102同士の間隔が広くなるので、活性層118で発生した熱が、当該部分に半導体光素子102が形成される場合より、効率よく排熱される。
【0043】
以上、半導体光素子102が、X軸及びY軸のいずれに対しても、同じ周期T1で形成された例を示したが、これに限られない。例えば、半導体光素子102が形成される位置は、X軸及びY軸に対して、それぞれ異なる周期を有してもよい。また、非光素子位置及び熱伝導部104が、X軸及びY軸のいずれに対しても、同じ周期T2で形成された例を示したが、これに限られない。例えば、非光素子位置及び熱伝導部104は、X軸及びY軸に対して、それぞれ異なる周期で設けられてもよい。
【0044】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る光素子アレイ200の模式的な上視図である。図5において図1と同一の符号を付した要素は、図1において説明した要素と同一の機能および構成を有する。光素子アレイ200は、複数の半導体光素子102、及び、熱伝導部104を備える。図5のA−A'断面は、図2に示した構造を有する。すなわち、熱伝導部104は、開口部140を有し、開口部140の内壁に金属層142が形成される。複数の半導体光素子102及び熱伝導部104の配置は、図1に示した光素子アレイ100における配置と同様である。
【0045】
複数の半導体光素子102は、X軸及びX軸と所定の角度で交差するY軸のいずれに対しても、所定の周期(T1)を有する位置に形成される。図1に示した光素子アレイ100においては、X軸とY軸とは、互いに60度で交差する。X軸及びY軸のいずれに対しても所定の周期(T1)を有する位置の少なくとも一つは、半導体光素子102が形成されていない、非光素子位置である。非光素子位置は、X軸及びY軸のいずれに対しても、所定の周期(T2)を有して、2次元的に配置される。非光素子位置が配置される周期T2は、半導体光素子102が形成される周期T1のn倍(nは正の整数)である。すなわち、半導体光素子102と非光素子位置との数の比は、m:1以上(mは正の整数)である。非光素子位置には、熱伝導部104が形成される。すなわち、熱伝導部104は、X軸及びY軸のいずれに対しても、所定の周期(T2)を有して、2次元的に配置される。熱伝導部104が配置される周期T2は、半導体光素子102が形成される周期T1のn倍(nは正の整数)である。すなわち、半導体光素子102と非光素子位置との数の比は、m:1以上(mは正の整数)である。一例として、nは3であり、mは8である。
【0046】
図5に示した光素子アレイ200では、正六角形の頂点及び中心の一部に半導体光素子102が形成され、他の一部には、半導体光素子102が形成されず、熱伝導部104が形成される。すなわち、2次元最密充填構造の格子点の一部に半導体光素子102が形成され、他の一部には、半導体光素子102が形成されず、熱伝導部104が形成される。
【0047】
熱伝導部104は、上面から見て、半導体光素子102の直径以上の大きさの開口部140を有する。ここで半導体光素子102の直径とは、活性層118、電流狭窄層120、p型スペーサ層126、及び、p型コンタクト層128のメサ構造上の、上面から見た直径をいう。熱伝導部104は、上面から見て六角形であり、当該六角形の対抗する辺の距離が、半導体光素子102の直径以上である。
【0048】
図5に示した光素子アレイ200においては、半導体光素子102が形成される周期(T1)が70μmであり、熱伝導部104が形成される周期(T2)が210μmである。すなわち、熱伝導部104が形成される周期(T2)は、半導体光素子102が形成される周期(T1)の3倍(T2=T1×3)である。つまり、格子点の間隔が210μmの2次元最密充填構造に、半導体光素子102及び熱伝導部104が形成される。
【0049】
図5に示した光素子アレイ200においては、一つの熱伝導部104、当該一つの熱伝導部104からX軸方向T2だけ離れて形成された熱伝導部104、及び、当該一つの熱伝導部104からY軸方向にT2だけ離れて形成された熱伝導部104で形成される正三角形の中心に、半導体光素子102が一つ形成され、当該正三角形の三辺上に、それぞれ、半導体光素子102が二つずつ形成される。これにより、熱伝導部104は、互いに隣接せず、半導体光素子102に隣接して形成される。
【0050】
光素子アレイ100の外周部を除いて、半導体光素子102の3/4(75%)が熱伝導部104に隣接する。光素子アレイ100の外周部より外側には、半導体光素子102及び熱伝導部104が形成されないので、光素子アレイ100の外周部においては、熱伝導部104に隣接する半導体光素子102の比率が異なりうる。このとき、熱伝導部104を形成せずに、半導体光素子102をすべての格子点に形成する場合より、半導体光素子102の数が11%減少する。しかし、熱伝導部104を形成したことにより、半導体光素子102で発する熱の排熱効率が高くなるので、それぞれの半導体光素子102における光への変換効率が11%以上高くなる。したがって、光素子アレイ100の発光効率は、熱伝導部104が形成されない場合より、高くなる。
【0051】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る光素子アレイ300の模式的な上視図である。図6において図1と同一の符号を付した要素は、図1において説明した要素と同一の機能および構成を有する。図6のA−A'断面は、図2に示した構造を有する。複数の半導体光素子102は、X軸及びX軸と所定の角度で交差するY軸のいずれに対しても、所定の周期(T1)を有する位置に形成される。図6に示した光素子アレイ300においては、X軸とY軸とは、互いに60度で交差する。X軸及びY軸のいずれに対しても所定の周期(T1)を有する位置の少なくとも一つは、半導体光素子102が形成されていない、非光素子位置である。非光素子位置は、X軸及びY軸のいずれに対しても、所定の周期(T2)を有して、2次元的に配置される。非光素子位置が配置される周期T2は、半導体光素子102が形成される周期T1のn倍(nは正の整数)である。すなわち、半導体光素子102と非光素子位置との数の比は、m:1以上(mは正の整数)である。非光素子位置には、熱伝導部104が形成される。すなわち、熱伝導部104は、X軸及びY軸のいずれに対しても、所定の周期(T2)を有して、2次元的に配置される。熱伝導部104が配置される周期T2は、半導体光素子102が形成される周期T1のn倍(nは正の整数)である。すなわち、半導体光素子102と非光素子位置との数の比は、m:1以上(mは正の整数)である。一例として、nは3であり、mは2である。
【0052】
図6に示した光素子アレイ300では、正六角形の頂点及び中心の一部に半導体光素子102が形成され、他の一部には、半導体光素子102が形成されず、熱伝導部104が形成される。すなわち、2次元最密充填構造の格子点の一部に半導体光素子102が形成され、他の一部には、半導体光素子102が形成されず、熱伝導部104が形成される。
【0053】
熱伝導部104は、複数の開口部140を有する。熱伝導部104は、正六角形の頂点及び中心に配置された7つの開口部140を有する。当該7つの開口部140は、上端が10μm×10μmの正方形を有する。正六角形の中心に配置された開口部140と、正六角形の頂点の一つに配置された開口部140とを結ぶ直線は、X軸又はY軸と30度の角度を形成する。熱伝導部104においては、開口部140の内壁が露出されるので、表面積が大きくなり、放熱効率が高くなる。
【0054】
当該7つの開口部140は、同じ大きさではなく、正六角形の中心に配置された開口部140が、正六角形の頂点に配置された開口部140より大きくてもよく、あるいは、小さくてもよい。また、正六角形の中心に配置された開口部140と、正六角形の頂点の一つに配置された開口部140とを結ぶ直線は、X軸又はY軸と平行であってもよい。さらに、熱伝導部104に配置される開口部140の数は7つに限られず、また、開口部140の配置は正六角形に限られない。
【0055】
図6に示した光素子アレイ300においては、半導体光素子102が形成される周期(T1)が70μmであり、熱伝導部104が形成される周期(T2)が210μmである。すなわち、熱伝導部104が形成される周期(T2)は、半導体光素子102が形成される周期(T1)の3倍(T2=T1×3)である。つまり、格子点の間隔が210μmの2次元最密充填構造に、半導体光素子102及び熱伝導部104が形成される。
【0056】
図6に示した光素子アレイ300においては、一つの熱伝導部104、当該一つの熱伝導部104からX軸方向T2だけ離れて形成された熱伝導部104、及び、当該一つの熱伝導部104からY軸方向にT2だけ離れて形成された熱伝導部104で形成される正三角形の中心に、熱伝導部104が形成され、当該正三角形の三辺上に、それぞれ、半導体光素子102が二つずつ形成される。これにより、熱伝導部104は、互いに隣接せず、半導体光素子102に隣接して形成される。
【0057】
図6に示した光素子アレイ300において、2次元最密充填構造の格子点に半導体光素子102と熱伝導部104とが、交互に形成される。すなわち、正六角形の頂点に半導体光素子102が配置され、中心に熱伝導部104が配置される。このとき、一つの熱伝導部104は、6つの半導体光素子102に隣接する。また、一つの半導体光素子102は、三つの熱伝導部104、及び、三つの半導体光素子102に隣接する。
【0058】
半導体光素子102の3/4(75%)の全部が熱伝導部104に隣接する。このとき、熱伝導部104を形成せずに、半導体光素子102をすべての格子点に形成する場合より、半導体光素子102の数が1/3だけ減少する。しかし、熱伝導部104を形成したことにより、半導体光素子102で発する熱の排熱効率が高くなるので、それぞれの半導体光素子102における光への変換効率が50%以上高くなる。したがって、光素子アレイ100の発光効率は、熱伝導部104が形成されない場合より、高くなる。
【0059】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る光素子400の模式的な上視図である。図7において図1と同一の符号を付した要素は、図1において説明した要素と同一の機能および構成を有する。光素子400は、半導体光素子402及び熱伝導部104を備える。半導体光素子402は、ストライプ導波路型レーザである。この場合、熱伝導部104は、半導体光素子402の両側に、半導体光素子402の導波路に沿って、複数形成される。
【0060】
熱伝導部104を上面から見たときの中心から、半導体光素子402の導波路の側面までの距離は、例えば、15μmである。また、隣接する熱伝導部104同士の、上面から見たときの中心同士の距離は、例えば、15μmである。開口部140は、例えば、上面から見て一辺が10μmの正方形である。
【0061】
図8は、第4の実施形態に係る光素子400の、図7のB−B'における、模式的な断面図である。図8において図2と同一の符号を付した要素は、図2において説明した要素と同一の機能および構成を有する。半導体光素子402は、基板110、下部クラッド層412、活性層118、上部クラッド層414、p型コンタクト層128、p側電極132、n側電極134、埋め込み層416、電流阻止層418、及び、絶縁層130を備える。熱伝導部104は、開口部140及び金属層142を備える。
【0062】
開口部140は、絶縁層130、電流阻止層418、埋め込み層416、及び、下部クラッド層412を貫通し、かつ、基板110の一部が除去されて形成される。金属層142は、絶縁層130、電流阻止層418、埋め込み層416、下部クラッド層412、及び、基板110の側面上、並びに、開口部140における基板110の上面に形成される。
【0063】
半導体光素子402は、下部クラッド層412の一部、活性層118、及び、上部クラッド層414がストライプ状のメサ構造を有し、埋め込み層416及び電流阻止層418に埋め込まれている。すなわち、活性層118および上部クラッド層414は、光素子400において、p側電極132の下側の領域以外で除去されている。また、活性層118及び上部クラッド層414が除去された領域で、下部クラッド層412は、厚さ方向に一部が除去されて、他の領域より膜厚が薄い。
【0064】
下部クラッド層412の一部、活性層118、及び、上部クラッド層414が除去された領域では、下部クラッド層412上に埋め込み層416が形成されている。埋め込み層416は、下部クラッド層412、活性層118及び上部クラッド層414の側面を覆って形成される。すなわち、埋め込み層416の厚さは、活性層118および上部クラッド層414と接する領域において、活性層118の厚さ、上部クラッド層414の厚さ、及び、除去された下部クラッド層412の深さの合計と等しい。
【0065】
埋め込み層416の厚さは、活性層118および上部クラッド層414と接する領域以外の領域で、活性層118の厚さ、上部クラッド層414の厚さ、及び、除去された下部クラッド層412の深さの合計より薄い。したがって、埋め込み層416の上面は、活性層118および上部クラッド層414と接する領域の近傍で、傾斜した面を有する。電流阻止層418は、埋め込み層416上に形成され、電流阻止層418の上面は、上部クラッド層414の上面と同一の平面内にある。
【0066】
例えば、第4の実施形態に係る光素子400において、基板110は、面方位が(100)のn−InP基板を使用する。基板110上に、下部クラッド層412は、n−InGaAsPで形成される。活性層118は、下部クラッド層412上に形成された障壁層と、障壁層上に形成された量子井戸層とが交互に積層されて形成される。障壁層は、例えば、下部クラッド層412及び上部クラッド層414とは異なる組成を有するInGaAsPで形成される。量子井戸層は、下部クラッド層412、上部クラッド層414及び障壁層とは異なる組成を有するInGaAsPで、形成される。このとき、活性層118は、7層の量子井戸層と、8層の障壁層を有し、活性層118の最上層が障壁層である。
【0067】
活性層118上に、p−InGaAsPで上部クラッド層414が形成される。上部クラッド層414上に、p型コンタクト層128は、p−InGaAsで形成される。下部クラッド層412と活性層118の間、および、活性層118と上部クラッド層414の間に単層または複数層のInGaAsPで構成される導波層が形成されてもよい。導波層のInGaAsPの組成は、光閉じ込めの設計に合わせて適宜調整される。埋め込み層416はp−InPで形成される。電流阻止層418は、例えば、n−InPで形成される。半導体光素子402において、p型コンタクト層128は、上部クラッド層414上、及び、電流阻止層418上に形成される。p型コンタクト層128上であって、埋め込み層416及び電流阻止層418の上方の領域で、絶縁層130が形成される。基板110の裏面にn側電極134が形成され、p型コンタクト層128の一部に接してp側電極132が形成される。n側電極134及びp側電極132から注入されたキャリアが、活性層118で再結合して光を発する。ストライプ状の導波路の両端部は、へき開によりミラーとして形成され、両端のミラー間で光が反射を繰り返し、半導体光素子402はレーザ発振する。
【0068】
p型コンタクト層128上の、絶縁層130が形成されていない領域にp側電極132が形成される。すなわち、p側電極132は、活性層118及び上部クラッド層414が形成された領域の上方に形成される。p側電極132は、絶縁層130が形成されていない領域を超えて、絶縁層130の端部の一部上に形成される。p側電極132の幅は、活性層118及び上部クラッド層414の幅より広い。ここで幅とは、活性層118における光路の方向、及び、活性層118の厚さ方向に垂直な方向の長さをいう。埋め込み構造により、p側電極132およびn側電極134から活性層118にキャリアが効率よく注入される。
【0069】
p側電極132及びn側電極134から注入されたキャリアが活性層118で再結合して発光するときに、熱が発生する。熱伝導部104に形成された金属層は、第1の実施形態、第2の実施形態、または、第3の実施形態と同様の構成であり、下部クラッド層412に比べ熱伝導に優れている。したがって、活性層118で発生した熱は、熱伝導部104により効率よく放熱されるので、半導体光素子402が発振しているときの、活性層118の温度は、熱伝導部104が形成されない場合より低い。これにより、半導体光素子402の光変換効率が高くなる。これらの半導体光素子402を長期間にわたり駆動すると、活性層118などの半導体材料中に結晶欠陥が発生し、遂には発光を停止するという劣化が生じることがある。そして、結晶欠陥の発生は、温度が高い程、促進される。したがって、熱伝導部104を備える半導体光素子402は、熱伝導部104を備えない半導体光素子に比べ、劣化が抑えられ、長寿命である。
【0070】
以上、複数の熱伝導部104が、半導体光素子402の両側に、半導体光素子402の導波路に沿って、形成された例を説明したが、熱伝導部104はこれに限られない。例えば、熱伝導部104、半導体光素子402の両側に形成された、半導体光素子402の導波路に平行な溝であってもよい。
【0071】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0072】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0073】
100 光素子アレイ、102 半導体光素子、104 熱伝導部、110 基板、112 下部DBR層、114 バッファ層、116 n型コンタクト層、118 活性層、120 電流狭窄層、122 電流注入部、124 電流狭窄部、126 p型スペーサ層、128 p型コンタクト層、130 絶縁層、132 p側電極、134 n側電極、136 誘電体層、138 上部DBR層、140 開口部、142 金属層、150 発熱領域、200 光素子アレイ、300 光素子アレイ、400 光素子、402 半導体光素子、412 下部クラッド層、414 上部クラッド層、416 埋め込み層、418 電流阻止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の、第1の軸線、および、前記第1の軸線と所定の角度で交差する第2の軸線のいずれに対しても、所定の周期T1を有する位置に2次元的に配置され、キャリアが注入されて発光する活性層を有する複数の半導体光素子を備え、
前記位置の少なくとも一つは、前記複数の半導体光素子のいずれもが形成されていない非光素子位置である、2次元光素子アレイ。
【請求項2】
前記複数の半導体光素子は、前記活性層を挟む下DBR層及び上DBR層とをさらに有する面発光レーザ素子である、
請求項1に記載の2次元光素子アレイ。
【請求項3】
前記非光素子位置に形成された、前記下DBR層より熱伝導率が高い熱伝導部をさらに備える、
請求項2に記載の2次元光素子アレイ。
【請求項4】
前記熱伝導部は所定の周期T2で形成される、
請求項3に記載の2次元光素子アレイ。
【請求項5】
前記熱伝導部は、内壁が露出される複数の開口部を有する、
請求項3または4に記載の2次元光素子アレイ。
【請求項6】
前記複数の開口部は、互いに同じ大きさである、
請求項5に記載の2次元光素子アレイ。
【請求項7】
前記複数の開口部は、互いに異なる大きさである、
請求項5に記載の2次元光素子アレイ。
【請求項8】
前記所定の周期T2は、前記所定の周期T1のn倍(nは正の整数)である、
請求項4から7のいずれか一項に記載の2次元光素子アレイ。
【請求項9】
前記複数の半導体光素子と前記熱伝導部の数の比は、m:1(mは正の整数)である、
請求項4から7のいずれか一項に記載の2次元光素子アレイ。
【請求項10】
前記複数の半導体光素子は、いずれも、前記非光素子位置に隣接するように形成される、
請求項1から8のいずれか一項に記載の2次元光素子アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−45854(P2013−45854A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181958(P2011−181958)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】