説明

2段式過給機付き内燃機関

【課題】高圧段過給機から低圧段過給機への切り替えを円滑に行うことができる2段式過給機付き内燃機関を提供する。
【解決手段】2段直列に接続された高圧段過給機8および低圧段過給機9を有するディーゼルエンジン1において、高圧段過給機8の高圧段タービン8aの入口と出口とを、並列配置された第1、第2バイパス排気管12a,12bを通じて接続し、その各々に第1、第2バルブ14a1,14b1を配置した。そして、その第1、第2バルブ14a1,14b1と、これを開閉するアクチュエータ25のロッド25aとをリンク機構26を介して接続し、第1バルブ14a1の弁開度が予め設定された弁開度以上になると、リンク機構26により第2バルブ14b1が連動して開くようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2段式過給機付き内燃機関に関し、更に詳しくは、高圧段過給機から低圧段過給機への切り替えを円滑に行うことが可能な2段式過給機付き内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
2段式過給機付き内燃機関においては、高圧段および低圧段の容量差のある2つの過給機を直列に設けるとともに、内燃機関の運転状態に応じて適切な過給機を選択可能なようにバイパスを設け、過給システムの作動領域の拡大を図っている。すなわち、低速回転・低負荷運転時には高圧段過給機を使用し、高速回転・高負荷運転時には低圧段過給機を使用するというように、内燃機関の運転状態に応じて高圧段過給機と低圧段過給機とを切り替えて使用している。
【0003】
ところで、2段式過給機付き内燃機関においては、高圧段過給機から低圧段過給機に切り替える際、排気切り替えバルブを使用する前段階として、高圧段過給機の圧縮機の出口圧を用いた正圧駆動方式により高圧段過給機のタービン側のウェイストゲートバルブの開閉を制御している。このため、過渡運転時において、高圧段過給機から低圧段過給機に仕事が円滑に移行する。
【0004】
この正圧駆動方式によりウェイストゲートバルブを制御する際、高圧段過給機の圧縮機の出口圧が予め設定しておいた圧力に達するとウェイストゲートバルブが開き、高圧段過給機から低圧段過給機へと使用領域が切り替わってゆく。
【0005】
高圧段過給機の圧縮機の出口圧は、エンジンの回転速度または負荷(燃料噴射量)が高くなると、それに比例して上昇するため、さらにウェイストゲートバルブを開く必要がある。しかし、ウェイストゲートバルブの有効開口面積に対して高圧段過給機のタービンの入口圧が高くなる(すなわち、排気ガス流量が多くなる)と、ウェイストゲートバルブの前後の圧力が臨界圧力比に達し、ウェイストゲートバルブを通過する排気ガス流量はウェイストゲートバルブの開度とは関係なく一定となる(以下、この状態をチョーク状態という)。このチョーク状態からさらにエンジンの回転速度または負荷が高くなると、ウェイストゲートバルブが配置されるバイパスを通じて低圧段過給機のタービンへと逃がしきれなくなった排気ガスが高圧段過給機のタービンへと流れるため、排気マニホールドの内圧の上昇等が起こる。また、高圧段過給機から低圧段過給機への切り替えが円滑に行われなくなるため、必要な空気量を確保できない。このため、EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス流量を多くすることができないので、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)に関する排気性能が低下する。また、高圧段過給機のタービンの入口圧も増加することから、排気マニホールド内圧が上昇し、燃費等にも悪影響を及ぼす。
【0006】
さらに、エンジンの回転速度または負荷が高くなる条件では、排気切り替えバルブを開くことで、低圧段過給機単体で過給する形態へと切り換えるが、その切り替えに際しても、ウェイストゲートバルブがチョークしていると排気ガス流路および低圧段過給機へと流れる排気ガス流量が大きく変わるため、過渡運転時においては、排気ガスにおけるNOxの排気性能や燃費等に悪影響を及ぼす。
【0007】
一方で、排気切り替えバルブのように電磁可変調整弁(EVRV:Electronic Vacuum Regulation Valve)を使用してウェイストゲートバルブを制御する方法もあるが、この方法では、過渡運転時において応答が追従しないという、ターボラグに対する制御が難しい等の問題がある。
【0008】
これらのことからも、高圧段過給機の圧縮機の出口圧を用いた正圧駆動方式によりウェイストゲートバルブを制御するのが最も良いと考えられるが、この方式では、前述のようにウェイストゲートバルブでチョークが生じる可能性があるため、その改善が必要となる。
【0009】
このチョークの対策として、有効開口面積を大きくすれば良いので、ウェイストゲートバルブの直径を大きくして、ガスの流路を大きくする方法が考えられるが、この方法では、ウェイストゲートバルブにかかる力(排気ガスがウェイストゲートバルブを押す力)がバルブ径に比例して大きくなるため、開弁力の増加が必要となり、アクチュエータのサイズを大きくする必要が生じる等の問題がある。
【0010】
なお、例えば特許文献1には、高圧段過給機の入口側と低圧段過給機の入口側とを大小径の異なる2つのバイパス排気管で接続し、その各々のバイパス排気管に配置される主副のバイパス弁(上記のウェイストゲートバルブに相当)の開閉を制御することにより、高圧段過給機のタービンに流れる排気ガスの流量を精度良く制御して内燃機関の運転状態に応じて高圧段過給機と低圧段過給機との切り替えを行う技術が開示されている。しかし、この技術では上記したチョーク状態に関する問題が考慮されておらず、その対策のために2つのウェイストゲートバルブを連動して動作することについて考慮がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−138845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高圧段過給機から低圧段過給機への切り替えを円滑に行うことが可能な2段式過給機付き内燃機関を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、燃費を向上させることが可能な2段式過給機付き内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の2段式過給機付き内燃機関は、内燃機関本体側から順に高圧段過給機および低圧段過給機を2段直列に接続した構成を有する2段式過給機付き内燃機関において、前記高圧段過給機の高圧段タービンの入口と出口とを接続するバイパス排気管と、前記バイパス排気管の開閉を行うウェイストゲートバルブ装置とを備え、前記バイパス排気管は、並列に接続された第1バイパス排気管および第2バイパス排気管を有しており、前記ウェイストゲートバルブ装置は、前記第1バイパス排気管に配置された第1バルブと、前記第2バイパス排気管に配置された第2バルブと、前記第1、第2バルブの開閉を行うアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動力伝達体を前記第1バルブおよび前記第2バルブの両方に接続するリンク機構とを備え、前記第1バルブの弁開度が予め設定された弁開度以上になると、前記リンク機構により前記第2バルブが連動して開く制御を行うものである。
【0015】
また、上記の2段式過給機付き内燃機関において、前記リンク機構は、前記アクチュエータの駆動力伝達体の第1方向の運動を、これに交差する第2方向の運動に変換する機構を有するものである。
【0016】
これにより、ウェイストゲートバルブ装置の配置の自由度を向上させることができ、また、ウェイストゲートバルブ装置を全体的にコンパクトに収めることができるので、限られたスペースの中でもウェイストゲートバルブ装置を配置することができ、ウェイストゲートバルブ装置の汎用性を高めることができる。
【0017】
また、上記の2段式過給機付き内燃機関において、前記リンク機構は、前記第1、第2バルブを閉弁する方向に付勢する弾性部材を有する付勢手段と、前記第1バルブを前記付勢手段の第1部材に接続する第1接続体と、前記第1部材を前記アクチュエータの駆動力伝達体に接続する第2接続体と、前記第2バルブを前記付勢手段の第2部材に接続する第3接続体とを備え、前記付勢手段は、前記弾性部材が配置された主軸と、前記主軸に沿って移動可能な状態で配置された前記第1部材と、前記主軸に沿って移動可能な状態で前記第1部材と前記弾性部材との間に配置された前記第2部材とを備え、前記アクチュエータの駆動力が前記第2接続体を通じて前記第1部材に伝えられ、前記第1部材が前記弾性部材の付勢力に抗する方向に移動すると、前記第1部材に接続された前記第1接続体が連動して前記第1バルブが開き、前記第1バルブの弁開度が予め設定された弁開度以上になると、前記第1部材の移動により前記第2部材が前記弾性部材の付勢力に抗する方向に移動し、前記第2部材に接続された前記第3接続体が連動して前記第2バルブが開く制御を行うものである。
【0018】
また、上記の2段式過給機付き内燃機関において、前記アクチュエータは、前記高圧段過給機の高圧段圧縮機の出口側の圧力に応じて駆動されるものである。
【0019】
これにより、高圧段過給機の圧縮機の出口側の圧力に応じて第1、第2バルブの開弁状態を制御することができるので、過渡運転時の制御性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の2段式過給機付き内燃機関によれば、第1バイパス排気管の開口部でチョーク状態になると、第2バイパス排気管の第2バルブが連動して開くことにより、バイパス排気管の有効開口面積を増加できるので、チョーク状態を回避することができる。このため、高圧段過給機側からバイパス排気管を通じて低圧段過給機に流れる排気ガスの流路を確保することができるので、高圧段過給機から低圧段過給機への切り替えを円滑に行うことができる。
【0021】
また、第1、第2バルブの開弁力を増加させないで済むので、第1、第2バルブを駆動するアクチュエータのサイズを増大させることもない。また、第1バルブの動作に第2バルブが連動するので、第1、第2バルブを駆動するアクチュエータを増やす必要もない。したがって、重量の増大を招くこともない。
【0022】
また、本発明の2段式過給機付き内燃機関によれば、高圧段過給機から低圧段過給機への切り替えを円滑に行うことができるので、必要な空気量を確保することができる。その結果、EGR率を増加させることができる。
【0023】
また、高圧段過給機から低圧段過給機への切り替えを円滑に行うことができるので、排気ガスの圧力の上昇を抑制または防止することができる。その結果、燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の2段式過給機付き内燃機関の構成図である。
【図2】図1の2段式過給機付き内燃機関における2段式過給システムのウェイストゲートバルブ装置の構成図である。
【図3】図2のウェイストゲートバルブ装置の開閉時の状態を示した構成図である。
【図4】図2のウェイストゲートバルブ装置のバルブと排気管との関係を模式的に示した断面図である。
【図5】図2のウェイストゲートバルブ装置の閉弁時の構成図である。
【図6】図5に続くウェイストゲートバルブ装置の開弁動作工程時の構成図である。
【図7】図6に続くウェイストゲートバルブ装置の開弁動作工程時の構成図である。
【図8】図7のウェイストゲートバルブ装置のバルブと排気管との関係を模式的に示した断面図である。
【図9】図7に続くウェイストゲートバルブ装置の開弁動作工程時の構成図である。
【図10】図9のウェイストゲートバルブ装置のバルブと排気管との関係を模式的に示した断面図である。
【図11】図9に続くウェイストゲートバルブ装置の開弁動作工程時の構成図である。
【図12】図11のウェイストゲートバルブ装置のバルブと排気管との関係を模式的に示した断面図である。
【図13】図1の2段式過給機付き内燃機関における低圧段過給機の燃料噴射量に対する吸入空気量の測定結果を示したグラフ図である。
【図14】図1の2段式過給機付き内燃機関における低圧段過給機および高圧段過給機の燃料噴射量に対するコンプレッサ仕事の測定結果を示したグラフ図である。
【図15】図1の2段式過給機付き内燃機関における低圧段過給機および高圧段過給機の燃料噴射量に対する圧力比の測定結果を示したグラフ図である。
【図16】図1の2段式過給機付き内燃機関における低圧段過給機および高圧段過給機の燃料噴射量に対する膨張比の測定結果を示したグラフ図である。
【図17】従来のウェイストゲートバルブ装置の閉弁時の構成図である。
【図18】従来のウェイストゲートバルブ装置の開弁時の構成図である。
【図19】従来のウェイストゲートバルブ装置の開閉動作状態を示した構成図である。
【図20】図17のウェイストゲートバルブ装置を用いた従来の2段式過給機付き内燃機関における低圧段過給機の燃料噴射量に対する吸入空気量の測定結果を示したグラフ図である。
【図21】図17のウェイストゲートバルブ装置を用いた従来の2段式過給機付き内燃機関における低圧段過給機および高圧段過給機の燃料噴射量に対するコンプレッサ仕事の測定結果を示したグラフ図である。
【図22】図17のウェイストゲートバルブ装置を用いた従来の2段式過給機付き内燃機関における低圧段過給機および高圧段過給機の燃料噴射量に対する圧力比の測定結果を示したグラフ図である。
【図23】図17のウェイストゲートバルブ装置を用いた従来の2段式過給機付き内燃機関における低圧段過給機および高圧段過給機の燃料噴射量に対する膨張比の測定結果を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態の2段式過給機付き内燃機関について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は本実施の形態の2段式過給機付き内燃機関の構成図を示している。なお、図中の矢印は空気の流れを示している。
【0027】
本実施の形態の2段式過給機付き内燃機関は、例えばシリンダ内(燃焼室内)において圧縮されて高温になった空気に燃料を供給した時に起こる自己着火をもとにした膨張でシリンダ内のピストンを押し出す構成を有するディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)1である。なお、本発明はディーゼルエンジンに限定されず、ガソリンエンジン等にも適用することもできる。
【0028】
エンジン1は、エンジン本体2と、排気マニホールド3と、吸気マニホールド4と、2段式過給システム5と、EGR(排気再循環:Exhaust Gas Recirculation)システム6と、エアクリーナー7とを有している。
【0029】
2段式過給システム5は、2段直列に配置された高圧段過給機8と低圧段過給機9とを有しているとともに、エンジン1の運転状態に応じて適切な過給機を選択できるように後述のバイパスを設け、過給システムの作動領域の拡大を図っている。すなわち、低速回転・低負荷運転時には高圧段過給機8を使用する一方、高速回転・高負荷運転時には低圧段過給機9を使用するというように、エンジン1の運転状態に応じて高圧段過給機8と低圧段過給機9とを切り替えて使用している。
【0030】
高圧段過給機8は、高圧段タービン8aと高圧段コンプレッサ(圧縮機)8bとを有している。高圧段タービン8aおよび高圧段コンプレッサ8bは、一本の軸の両端に複数枚の羽根が設けられることで形成されており、高圧段タービン8aがエンジン本体2から排気された排気ガスの力を受けて回転駆動すると、その駆動力により高圧段コンプレッサ8bが連動することにより圧縮した空気をエンジン本体2に送り込む。
【0031】
低圧段過給機9は、低圧段タービン9aと低圧段コンプレッサ(圧縮機)9bとを有している。低圧段タービン9aおよび低圧段コンプレッサ9bは、高圧段過給機8と同様に、一本の軸の両端に複数枚の羽根が設けられることで形成されており、低圧段タービン9aがエンジン本体2から排気された排気ガスの力を受けて回転駆動すると、その駆動力により低圧段コンプレッサ9bが連動することにより圧縮した空気をエンジン本体2に送り込む。低圧段タービン9aの容量は、高圧段タービン8aの容量よりも大きく、低圧段コンプレッサ9bの容量は、高圧段コンプレッサ8bの容量よりも大きい。
【0032】
2段過給システム5の排気系は、第1排気管10aと、第2排気管10bと、第3排気管10cと、メインバイパス排気管11と、サブバイパス排気管(バイパス排気管)12と、排気切替バルブ装置13と、ウェイストゲートバルブ装置14とを有している。
【0033】
第1排気管10aは、排気マニホールド3と高圧段タービン8aの入口とを接続し、エンジン本体2からの排気ガスを高圧段タービン8aに送り込む配管である。第2排気管10bは、高圧段タービン8aの出口と低圧段タービン9aの入口とを接続し、高圧段タービン8aからの排気ガスを低圧段タービン9aに送り込む配管である。この第2排気管10bの途中位置には排気切替バルブ装置13が設けられている。第3排気管10cは、低圧段タービン9aの出口からの排気ガスを外部側に流す配管である。
【0034】
メインバイパス排気管11は、排気マニホールド3と第2排気管10b(低圧段タービン9aの入口)とを高圧段タービン8aを介さずに接続する配管であり、その途中位置には、排気切替バルブ装置13が設けられている。
【0035】
排気切替バルブ装置13は、エンジン本体2から排出された排気ガスを、メインバイパス排気管11を通じて低圧段タービン9aに流す時は開き、メインバイパス排気管11の流路を遮断する時は閉じるようになっている。排気切替バルブ装置13のバルブ本体は、空気圧(または真空圧)を用いたアクチュエータにより開閉動作する。
【0036】
サブバイパス排気管12は、第1排気管10aと第2排気管10bとを接続する配管である。すなわち、高圧段タービン8aの上流(入口)側と下流(出口)側とを高圧段タービン8aを介さずに接続する配管である。サブバイパス排気管12の途中位置には、ウェイストゲートバルブ装置14が設けられている。このウェイストゲートバルブ装置14は、高圧段タービン8aの上流(入口)側の圧力が高くなった場合に、ウェイストゲートバルブ装置14のバルブ本体を開いて、排気ガスを、サブバイパス排気管12を通じて高圧段タービンの上流(入口)側から下流(出口)側に直接逃がし、高圧段タービン8aおよび高圧段コンプレッサ8bの過剰な回転を防ぐ機能を有している。
【0037】
このウェイストゲートバルブ装置14のバルブ本体の開閉は、高圧段コンプレッサ8bの出口圧を用いた正圧駆動方式により制御される。すなわち、ウェイストゲートバルブ装置14のバルブ本体を駆動するアクチュエータの入力は、配管15を通じて高圧段コンプレッサ8bの出口と接続されており、その出口圧に応じてアクチュエータは、バルブ本体の開閉駆動を制御する。これにより、高圧段タービン8aおよび高圧段コンプレッサ8bの過剰な回転を防ぐことができる。なお、低圧段タービン9aの入口と出口とを繋ぐサブバイパス排気管を設け、その途中にウェイストゲートバルブ装置を設けても良い。
【0038】
高圧段タービン8aと低圧段タービン9aとの作動の切り替えは、排気切替バルブ装置13およびウェイストゲートバルブ装置14等により行われる。例えば排気切替バルブ13を開くと、高圧段過給機8は、高圧段タービン8aの出入り口の圧力差が無くなるため作動せず、低圧段過給機9のみが作動する。また、排気切替バルブ装置13とウェイストゲートバルブ装置14とを全閉すると、排気マニホールド3から排出される排気ガスは全て高圧段タービン8aに流れて高圧段過給機8が作動する。このとき、低圧段過給機9側にウェイストゲートバルブ装置がある場合、それを全開にすることで、排気ガスが低圧段タービン9aをバイパスするので、低圧段過給機9は作動しない。また、排気切替バルブ装置13を僅かに開き、低圧段過給機9側のウェイストゲートバルブ装置を全閉にすると、高圧段過給機8と低圧段過給機9とが同時に作動する。
【0039】
一方、2段過給システム5の吸気系は、第1吸気管20aと、第2吸気管20bと、第3吸気管20cと、バイパス吸気管21と、吸気切替バルブ装置22とを有している。
【0040】
第1吸気管20aは、エアクリーナー7と低圧段コンプレッサ9bの入口とを接続し、エアクリーナー7により清浄にされた空気を低圧段コンプレッサ9bに流す配管である。第2吸気管20bは、低圧段コンプレッサ9bの出口と高圧段コンプレッサ8bの入口とを接続し、低圧段コンプレッサ9bから高圧段コンプレッサ8bに空気を流す配管である。第3吸気管20cは、高圧段コンプレッサ8bの出口と吸気マニホールド4とを接続し、高圧段コンプレッサ8bから吸気マニホールド4を通じてエンジン本体2に空気を流す配管である。
【0041】
バイパス吸気管21は、第2吸気管20b(低圧段コンプレッサ9bの出口)と、第3吸気管20c(吸気マニホールド4)とを高圧段コンプレッサ8bを介さずに接続する配管である。
【0042】
吸気切替バルブ装置22は、第2吸気管20bと第3吸気管20cとの交点部分に配置されており、高圧段過給機8が作動するときに低圧段過給機9側の流路が閉じ、低圧段過給機9が作動するときに高圧段過給機8側の流路が閉じる。
【0043】
上記したEGRシステム6は、燃焼後の排気ガスの一部を取り出し吸気側へ導き再度吸気させるシステムであり、排気マニホールド3と吸気マニホールド4とを接続する配管6aの途中位置には排気マニホールド3側から順にEGRクーラ6bおよびEGRバルブ6cが接続されている。
【0044】
次に、図2は上記したウェイストゲートバルブ装置14の構成図、図3は図2のウェイストゲートバルブ装置14の開閉時の状態を示した構成図、図4は図2のウェイストゲートバルブ装置14のバルブと排気管との関係を模式的に示した断面図である。なお、図2および図4の矢印A1は排気ガスの流れを示し、図3の矢印B1〜B4はバルブ開閉時のウェイストゲートバルブ装置14の各部の動作方向を示している。
【0045】
本実施の形態のエンジン1の2段式過給システム5においては、図2および図4に示すように、高圧段過給機8側のサブバイパス排気管12が、第1サブバイパス排気管(第1バイパス排気管)12aと、第2サブバイパス排気管(第2バイパス排気管)12bとの2つの排気管を有している。この第1、第2サブバイパス排気管12a,12bは、第1排気管10aと第2排気管10bとの間に並列に接続されている。
【0046】
第1、第2サブバイパス排気管12a,12bの開口面積は同じである。この開口面積を同じとすることにより、部品の共通化ができ、コストを低減することができる。ただし、第1、第2サブバイパス排気管12a,12bの開口面積を変えても良い。第1サブバイパス排気管12aの開口面積の方が第2サブバイパス排気管12bの開口面積よりも大きい場合、運転条件等により排気ガス流量が多くなり、圧力が高くなる場合がある。この場合、開口部分にかかる力が大きくなり、ウェイストゲートバルブの開閉がスムーズに行えない可能性がある。このため、第1、第2サブバイパス排気管12a,12bの開口面積を変える場合には、第2サブバイパス排気管12bの開口面積を第1サブバイパス排気管12aの開口面積よりも大きくすることが好ましい。
【0047】
また、ウェイストゲートバルブ装置14は、図2および図3に示すように、第1ウェイストゲートバルブ部14aと、第2ウェイストゲートバルブ部14bと、アクチュエータ25と、リンク機構26とを有している。
【0048】
第1ウェイストゲートバルブ部14aは、第1バルブ14a1と、これを支持する第1支持部14a2とを有し、第2ウェイストゲートバルブ部14bは、第2バルブ14b1と、これを支持する第2支持部14b2とを有している。第1バルブ14a1は、第1サブバイパス排気管12aの開口部に配置され、第2バルブ14b1は、第2サブバイパス排気管12bの開口部に配置されており、各々の開口部の開閉を行う。第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bの構成(寸法、形状、材料など)は全く同じである。
【0049】
アクチュエータ25は、第1バルブ14a1および第2バルブ14b1を開閉するための駆動源である。図2および図3では、アクチュエータ25が、第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bが並ぶ方向(図2および図3の上下方向)に沿うように縦長に配置されている場合が例示されている。
【0050】
アクチュエータ25は、正圧駆動方式により制御される。すなわち、アクチュエータ25の入力には配管15を通じて高圧段コンプレッサ15の出口が接続されており、アクチュエータ25は、その高圧段コンプレッサ8bの出口の空気圧に応じて駆動する。これにより、高圧段コンプレッサ8bの出口の空気圧に応じて第1バルブ14a1および第2バルブ14b1の開弁状態を制御できるので、過渡運転時の制御性を向上させることができる。
【0051】
また、アクチュエータ25の内部には、ダイアフラムが図2および図3の上下方向に移動可能な状態で設置されている。このダイアフラムはスプリングにより図2および図3の上方向に付勢されている。一方、高圧段コンプレッサ8bの出口から配管15を通じてアクチュエータ25に入力された空気圧がアクチュエータ25のスプリングのセット力を超えると、ダイアフラムが図2および図3の下方向に動き、ダイアフラムに接続されたロッド25aが図2および図3の下方向に駆動する。
【0052】
このようなアクチュエータ25のロッド25aは、リンク機構26を介して第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bの両方に接続されており、アクチュエータ25の駆動力は、ロッド25aからリンク機構26を介して第1バルブ14a1および第2バルブ14b1に伝えられる。
【0053】
リンク機構26は、アクチュエータ25と第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bとの間に配置され、アクチュエータ25のロッド25aの第1方向(図2および図3の上下方向)の運動を、これに交差する第2方向(図2および図3の左右方向)の運動に変換する機構を有している。アクチュエータ25と第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bとの間にリンク機構26を介在させずアクチュエータ25と第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bとを直接接続する場合は、アクチュエータ25を第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bの配置方向に対して交差するように横長に配置することになる。しかし、この場合、車両のスペースの関係でウェイストゲートバルブ装置14を配置することができない場合が生じる。これに対してウェイストゲートバルブ装置14では、リンク機構26を設けたことにより、車両内でのウェイストゲートバルブ装置14の配置の自由度を向上させることができる。また、アクチュエータ25のロッド25aとリンク機構26の第1〜第3リンク26a〜26cとを交差するように配置することができるので、ウェイストゲートバルブ装置14を全体的にコンパクトに収めることができる。したがって、車両内の限られたスペースの中でもウェイストゲートバルブ装置14を配置することができ、ウェイストゲートバルブ装置14の汎用性を高めることができる。
【0054】
リンク機構26は、上記した第1リンク(第1接続体)26a、第2リンク(第2接続体)26bおよび第3リンク(第3接続体)26cを有している他、スプリング部(付勢手段)26dを有している。
【0055】
スプリング部26dは、アクチュエータ25と第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bとの間であって、第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bの隣接間中央に対応する位置に設置されている。第1、第2ウェイストゲートバルブ部14a,14bは、このスプリング部26dを境に対称になるように配置されている。これにより、第1、第2バルブ14a1,14b1の開閉制御を容易にすることができる。
【0056】
このスプリング部26dは、付勢軸(主軸)26d1と、スプリング(弾性部材)26d2と、第1部材26d3と、第2部材26d4とを有している。
【0057】
スプリング26d2は、例えばコイルばねからなり、その内径内に付勢軸26d1が挿入された状態で付勢軸26d1に設置されている。
【0058】
第1、第2部材26d3,26d4は、それぞれ中空状に形成されており、その中空内に付勢軸26d1が挿入された状態で、かつ、付勢軸26d1に沿って移動可能な状態で付勢軸26d1に設置されている。
【0059】
第1部材26d3には、第1リンク26aおよび第2リンク26bの各々の一端が回動可能な状態で接続されている。第1リンク26aの他端は、第1ウェイストゲートバルブ部14aの第1支持部14a2において、第2支持部14b2の向かい側端部に回動可能な状態で接続されている。一方、第2リンク26bの他端は、アクチュエータ25のロッド25aの先端に回動可能な状態で接続されている。
【0060】
第2部材26d4は、第1部材26d3とスプリング26d2との間に設置されている。この第2部材26d4には、第3リンク26cの一端が回動可能な状態で連結されている。この第3リンク26cは、第1、第2リンク26a,26bに対して交差するように配置されている。第3リンク26cの他端は、第2ウェイストゲートバルブ部14bの第2支持部14b2において、第1支持部14a2の向かい側端部に回動可能な状態で接続されている。
【0061】
このようなウェイストゲートバルブ装置14の第1、第2バルブ14a1,14b1はスプリング26d2の付勢力により押さえつけられ図2に示すように閉弁している。この状態から図3に示すように、アクチュエータ25のロッド25aが矢印B1に示すように図3の下方向に移動すると、これに接続された第2リンク26bの一端が下方に引っ張られる結果、第2リンク26bの他端に接続された第1部材26d3が矢印B2に示す左方向に移動する。これにより、第1部材26d3に接続された第1リンク26aが矢印B2に示す左方向に引っ張られるので、これに接続された第1バルブ14a1の端部が矢印B3に示す回転方向に移動する結果、第1バルブ14a1が開く。そして、第1バルブ14a1の弁開度が予め設定された弁開度以上になると、リンク機構26によって第2バルブ14b1が連動して開く。すなわち、第2部材26d4が第1部材26d3により矢印B2の方向に押されて移動することにより、第2部材26d4に接続された第3リンク26cが矢印B2に示す左方向に引っ張られるので、これに接続された第2バルブ14b1の端部が矢印B4に示す回転方向に移動する結果、第2バルブ14b1が開く。ここでは、第1サブバイパス排気管12aで上記したチョーク状態が起きる時またはその直前あるいはその直後に、第2サブバイパス排気管12bが開き始めるように設定されている。これにより、サブバイパス排気管12の有効開口面積を増加できるので、チョーク状態を回避することができる。このため、高圧段過給機8の高圧段タービン8aからサブバイパス排気管12を通じて低圧段過給機9の低圧段タービン9aに流れる排気ガスの流路を確保することができるので、高圧段過給機8から低圧段過給機9への切り替えを円滑に行うことができる。
【0062】
次に、ウェイストゲートバルブ装置14の開閉動作について図5〜図12を参照しながら説明する。
【0063】
まず、図5は、高圧段コンプレッサ8bの出口圧がウェイストゲートバルブ装置14の予め設定された開弁圧よりも低く、第1、第2バルブ14a1,14a2が閉じており第1、第2サブバイパス排気管12a,12bを完全に塞いでいる状態を示している。サブバイパス経路は、排気ガスの圧力を利用して閉じられており、漏れの無い構造とされている。
【0064】
続いて、図6に示すように、高圧段コンプレッサ8bの出口圧がウェイストゲートバルブ装置14の予め設定された開弁圧よりも高くなり始め、ロッド25aが図6の矢印B1に示す下方に移動し始める。これにより、ロッド25aに接続された第2リンク26bの一端も下方に引っ張られるので第2リンク26bの他端に接続された第1部材26d3が付勢軸26d1に沿って図6の矢印B2に示す左方向に移動し始める。このため、第1部材26d3に接続された第1リンク26aの一端が図6の左方向に引っ張られるので第1バルブ14a1が矢印B3に示すように動き始め、第1バルブ14a1が徐々に開き始める。この時、第2バルブ14b1は静止しており閉じている。
【0065】
続いて、図7および図8に示すように、高圧段コンプレッサ8bの出口圧がさらに高くなり、ロッド25aが図6の矢印B1に示す下方にさらに移動することにより、第2リンク26bの一端がさらに下方に引っ張られ、第1部材26d3が図6の矢印B2に示す左方向にさらに移動するため、第1バルブ14a1の開度が大きくなる。この時も第2バルブ14b1は静止しており閉じている。
【0066】
続いて、図9および図10に示すように、エンジン1の回転速度および負荷が高くなり高圧段コンプレッサ8bが仕事を行うと高圧段コンプレッサ8bの出口圧がさらに高くなり、第1バルブ14a1の開度が一定値以上に大きくなる。そして、第1サブバイパス排気管12aでチョーク状態も起き始める。すると、第1バルブ14a1の移動が第1リンク26aを介して第1部材26d3に伝えられ、第1部材26d3が図9の矢印B2に示す左方向に移動して第2部材26d4を矢印B2に示す左方向に押す。これにより、第2部材26d4に接続された第3リンク26cが左側に引っ張られるので、スプリング26d1により押さえられていた第2バルブ14b1が、図9の矢印B4に示すように次第に動き始め、図10に示すように開き始める。
【0067】
続いて、図11および図12に示すように、チョーク状態からさらにエンジンの回転、負荷が高くなり、高圧段コンプレッサ8bの出口圧がさらに高くなると、第1バルブ14a1の開度がさらに大きくなり、第1部材26d3と第2部材26d4とが一体となって動作する。すなわち、第1、第2部材26d3,26d4が一体となって図11の矢印B2に示す左方向に移動することにより、第1、第2バルブ14a1,14b1が、図11の矢印B3,B4に示す回転方向に同時に作動し、図12に示すように開く。
【0068】
このように本実施の形態のエンジン1においては、第1サブバイパス排気管12aの開口部でチョーク状態になっても、第2サブバイパス排気管12bが開くことで、排気ガスが低圧段タービン9aへと円滑に流れる。
【0069】
次に、比較のため従来の高圧段過給機側のウェイストゲートバルブ装置について図17〜図19を参照しながら説明する。
【0070】
図17〜図19は、従来の正圧駆動方式のウェイストゲートバルブ装置70の構成図である。図17はバルブ閉弁時の状態、図18はバルブ開弁時の状態、図19はバルブ開閉動作時の状態をそれぞれ示している。矢印A7は排気ガスの流れを示し、矢印B7はバルブの動作方向を示している。
【0071】
従来は、高圧段過給機側のサブバイパス排気管が1つなので、ウェイストゲートバルブ装置70のバルブ70aも1つである。バルブ70aは、サブバイパス排気管を開閉する部分であり、バルブ支持体70bに支持されている。バルブ支持部70bは、ロッド70cに直接接続され、これを通じてアクチュエータ70dと接続されている。アクチュエータ70dの入力側には、配管70eを通じて高圧段コンプレッサ71の出口が接続されている。アクチュエータ70dは、高圧段コンプレッサ71の出口圧に応じてロッド70cを往復駆動することでバルブ70aを開閉する。
【0072】
次に、図17で示した従来のウェイストゲートバルブ装置70の開閉動作による圧力、仕事等の推移を図20〜図23に示す。矢印Dはウェイストゲートバルブ装置70の開弁開始を示し、矢印Eは高圧段タービン側のサブバイパス排気管でのチョーク状態の発生を示している。また、符号L0は低圧段過給機側の測定結果を示し、符号H0は高圧段過給機側の測定結果を示している。
【0073】
従来方式では、高圧段タービン側のサブバイパス排気管でチョーク状態が起き、高圧段コンプレッサから低圧段コンプレッサへと仕事が切り替わらない。また、高負荷または高回転条件で高圧段過給機を使用することは、高圧段過給機を効率の悪い条件で使用していることを示している。このため、エンジン本体2に必要な空気を導入できなくなり、排気ガス中におけるNOx等の排気性能が低下する。また、高圧段タービンの入口圧も増加するため、排気マニホールドの内圧が上昇し、燃費に対しても悪影響を及ぼす。
【0074】
これに対して、本実施の形態のエンジン1におけるウェイストゲートバルブ装置14の開閉動作による圧力、仕事等の推移を図13〜図16に示す。矢印Fは高圧段タービン側の第1サブバイパス排気管12aでのチョーク状態の発生と、第2ウェイストゲートバルブ部14bの開弁開始とを示している。また、符号L1は本実施の形態のエンジン1の低圧段過給機9側の測定結果を示し、符号H1は本実施の形態のエンジン1の高圧段過給機8側の測定結果を示している。
【0075】
このウェイストゲートバルブ装置14では、チョーク状態を回避できるので、符号L1,H1で示すように、高圧段コンプレッサ8bから低圧段コンプレッサ9bへと仕事を円滑に切り替えることができる。また、高負荷または高回転条件における高圧段過給機8の使用を回避でき、低圧段過給機9を効率の良い条件で過給できる。
【0076】
このように本実施の形態のエンジン1によれば、第1バイパス排気管12aの開口部でチョーク状態になると、第2バルブ14b1が連動して第2バイパス排気管12bが開くことにより、サブバイパス排気管12の有効開口面積を増加させることができるので、チョーク状態を回避することができる。このため、高圧段過給機8側からサブバイパス排気管12を通じて低圧段過給機8に流れる排気ガスの流路を充分に確保することができるので、高圧段過給機8から低圧段過給機9への切り替えを円滑に行うことができる。また、排気切替バルブ装置13のバルブを開くことにより、低圧段過給機9への切り替えも円滑に行うことができる。
【0077】
また、1つのサブバイパス排気管の開口面積を大きくするわけではないので、ウェイストゲートバルブ装置14の開弁力を増加させる必要もない。このため、ウェイストゲートバルブ装置14を駆動するアクチュエータ25のサイズを増大させる必要もない。また、第1バルブ14a1の動作に第2バルブ部14b1が連動するので、サブバイパス排気管を増やしバルブを増やしたからといって、アクチュエータ25の数を増やす必要もない。したがって、車両の重量増大を招くこともない。また、アクチュエータ25の制御が難しくなることもない。
【0078】
したがって、このようなエンジン1によれば、高圧段過給機8から低圧段過給機9への切り替えを円滑に行うことができるので、エンジン本体2内に効率的に空気を導入することができ、より多くの空気をエンジン本体2内に導入することができる(すなわち、必要な空気量を確保することができる)。ここで、同じ量の燃料を噴射すると燃料と空気との割合が変わり、必要以上の空気がエンジン本体2内へと導入されるので、その多くなった空気の代わりにEGRガスを導入する。その結果、EGR率を増加させることができる。これにより、エンジン本体2内の新気中の酸素量を減らさずに、EGRガス量を多くでき(EGR率を増加させることができ)、結果としてNOxを低減することができる。
【0079】
また、高圧段過給機8から低圧段過給機9への切り替えを円滑に行うことができるので、排気ガスの圧力の上昇を抑制または防止することができる。その結果、車両の燃費を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の2段式過給機付き内燃機関は、ウェイストゲートバルブ装置の第1バルブの弁開度が予め設定された弁開度以上になると、ウェイストゲートバルブ装置の第2バルブが連動して開くことで、高圧段過給機から低圧段過給機への切り替えを円滑に行うことができるので、自動車搭載用等の2段式過給機付き内燃機関に利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 ディーゼルエンジン(2段式過給機付き内燃機関)
2 エンジン本体
5 2段式過給システム
8 高圧段過給機
8a 高圧段タービン
8b 高圧段コンプレッサ(高圧段圧縮機)
9 低圧段過給機
9a 低圧段タービン
9b 低圧段コンプレッサ(低圧段圧縮機)
10a 第1排気管
10b 第2排気管
10c 第3排気管
12 サブバイパス排気管(バイパス排気管)
12a 第1サブバイパス排気管(第1バイパス排気管)
12b 第2サブバイパス排気管(第2バイパス排気管)
13 排気切替バルブ装置
14 ウェイストゲートバルブ装置
14a 第1ウェイストゲートバルブ部
14a1 第1バルブ
14b 第2ウェイストゲートバルブ部
14b1 第2バルブ
15 配管
20a 第1吸気管
20b 第2吸気管
20c 第3吸気管
25 アクチュエータ
25a ロッド(駆動力伝達体)
26 リンク機構
26a 第1リンク(第1接続体)
26b 第2リンク(第2接続体)
26c 第3リンク(第3接続体)
26d スプリング部(付勢手段)
26d1 付勢軸(主軸)
26d2 スプリング(弾性部材)
26d3 第1部材
26d4 第2部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関本体側から順に高圧段過給機および低圧段過給機を2段直列に接続した構成を有する2段式過給機付き内燃機関において、
前記高圧段過給機の高圧段タービンの入口と出口とを接続するバイパス排気管と、
前記バイパス排気管の開閉を行うウェイストゲートバルブ装置とを備え、
前記バイパス排気管は、並列に接続された第1バイパス排気管および第2バイパス排気管を有しており、
前記ウェイストゲートバルブ装置は、
前記第1バイパス排気管に配置された第1バルブと、
前記第2バイパス排気管に配置された第2バルブと、
前記第1、第2バルブの開閉を行うアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動力伝達体を前記第1バルブおよび前記第2バルブの両方に接続するリンク機構とを備え、
前記第1バルブの弁開度が予め設定された弁開度以上になると、前記リンク機構により前記第2バルブが連動して開く制御を行う2段式過給機付き内燃機関。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記アクチュエータの駆動力伝達体の第1方向の運動を、これに交差する第2方向の運動に変換する機構を有する請求項1記載の2段式過給機付き内燃機関。
【請求項3】
前記リンク機構は、
前記第1、第2バルブを閉弁する方向に付勢する弾性部材を有する付勢手段と、
前記第1バルブを前記付勢手段の第1部材に接続する第1接続体と、
前記第1部材を前記アクチュエータの駆動力伝達体に接続する第2接続体と、
前記第2バルブを前記付勢手段の第2部材に接続する第3接続体とを備え、
前記付勢手段は、
前記弾性部材が配置された主軸と、
前記主軸に沿って移動可能な状態で配置された前記第1部材と、
前記主軸に沿って移動可能な状態で前記第1部材と前記弾性部材との間に配置された前記第2部材とを備え、
前記アクチュエータの駆動力が前記第2接続体を通じて前記第1部材に伝えられ、前記第1部材が前記弾性部材の付勢力に抗する方向に移動すると、前記第1部材に接続された前記第1接続体が連動して前記第1バルブが開き、前記第1バルブの弁開度が予め設定された弁開度以上になると、前記第1部材の移動により前記第2部材が前記弾性部材の付勢力に抗する方向に移動し、前記第2部材に接続された前記第3接続体が連動して前記第2バルブが開く制御を行う請求項1または2記載の2段式過給機付き内燃機関。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記高圧段過給機の高圧段圧縮機の出口側の圧力に応じて駆動される請求項1〜3のいずれか1項に記載の2段式過給機付き内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−281271(P2010−281271A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135792(P2009−135792)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】