説明

2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置

【課題】解体作業モードにおいて安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心して高所解体作業及び低所解体作業を行ない、またバックホウ作業モードにおいて低所解体作業よりも広く且つ、深い地下位置に至るまで安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心してバックホウ作業を行うことができる2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は上記目的を達成するために、破砕機8を装着したときの解体作業モードを選択する解体作業モードスイッチ15aと、バケットを装着したときのバックホウ作業モードを選択するバックホウ作業モードスイッチ15bと、ブーム5の下げ角度を検出するとともに該下げ角度を作業モードに応じた設定下げ角度に規制するブーム角度検出スイッチ11と、アーム7の開き角度を検出するとともに該開き角度を作業モードに応じた設定開き角度に規制するアーム角度検出スイッチ12とを有する2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置に関するものであり、特に、高所〜低所の解体作業を安定した転倒限界作業半径内で行い得るとともに低所解体作業よりも大きな転倒限界作業半径内でバックホウ作業を行い得るようにした2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、次のような伸縮ブーム式高所解体機の作業範囲規制装置が知られている。この従来技術は、伸縮ブームと、該伸縮ブームの先端部に俯仰動可能に取り付けられたセカンドブームと、該セカンドブームの先端部に俯仰動可能に取り付けられたアームと、該アームの先端部に取り付けられた解体作業用アタッチメントとしての破砕機とが備えられている。また、伸縮ブームの俯仰角度を検出する伸縮ブーム角度センサ、伸縮ブームの伸縮長さを検出する伸縮長さセンサ及びセカンドブームの俯仰角度を検出するセカンドブーム角度センサが設置されている。
【0003】
そして、高所解体作業時は伸縮ブームを伸長するとともにセカンドブームを開き位置にして高い位置で破砕作業をする。中所解体作業時はセカンドブームを開き位置にしたまま伸縮ブームを収縮して、中間高さ位置で破砕作業をする。さらに、低所解体作業時は伸縮ブームを縮長するとともにセカンドブームを閉じ位置にして、低い位置で破砕作業をする。該低所解体作業時は解体作業用アタッチメントである破砕機が低い位置にあるので、伸縮ブームを伸長すると作業範囲が広がって不安定となるので、伸縮ブームの伸長動作を停止する。またセカンドブームを開くとアームが外側又は上側へ動き、作業範囲が広がって不安定となるので、セカンドブームの開き動作も停止している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−209917号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術においては、低所作業を、解体作業用アタッチメントとして高所解体作業時及び中所解体作業時と同じ破砕機を使用し、伸縮ブームの伸長動作及びセカンドブームの開き動作を停止して低所解体作業のみで行っていた。このため、低所作業が比較的狭い範囲に限定されていた。
【0005】
そこで、解体作業モードにおいては安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心して高所解体作業及び低所解体作業を行ない、またバックホウ作業モードにおいては前記低所解体作業よりも広く且つ、深い地下位置に至るまで安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心してバックホウ作業を行うために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ショベル本体にブームアクチュエータにより俯仰動可能に設置されたブームと、該ブームの先端部にアームアクチュエータにより俯仰動可能に装着されたアームと、該アームの先端部に作業モードに応じて選択して装着されたアタッチメントとを備えた2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置であって、前記アタッチメントとして解体作業用アタッチメントを装着したときの解体作業モードを選択する解体作業モードスイッチと、前記アタッチメントとしてバックホウ作業用アタッチメントを装着したときのバックホウ作業モードを選
択するバックホウ作業モードスイッチと、前記ブームの下げ角度を検出するとともに該下げ角度を作業モードに応じた設定下げ角度に規制するブーム角度検出スイッチと、前記アームの開き角度を検出するとともに該開き角度を作業モードに応じた設定開き角度に規制するアーム角度検出スイッチとを有する2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、一般的に解体作業用アタッチメントとしては破砕機が適用され、バックホウ作業用アタッチメントとしては前記破砕機よりも軽量のバケットが適用される。破砕機を装着して解体作業モードスイッチが選択操作されると、ブームアクチュエータの作動によるブームの下げ操作が行われるとともにブーム角度検出スイッチよりブームの下げ角度(ブーム最大起伏時からの下げ角度)が検出され該下げ角度検出値が解体作業モードにおける設定下げ角度に達すると前記ブームアクチュエータの作動が自動停止されて、該ブームの下げ角度が設定下げ角度値に規制される。またアームアクチュエータの作動によるアームの開き操作が行われるとともにアーム角度検出スイッチよりアームの開き角度が検出され該開き角度検出値が解体作業モードにおける設定開き角度に達すると前記アームアクチュエータの作動が自動停止されて、該アームの開き角度が設定開き角度値に規制される。このように、ブームの下げ角度及びアームの開き角度がそれぞれ解体作業モードにおける設定下げ角度及び設定開き角度に自動的に規制されて、転倒限界作業半径内で解体作業が行われる。
【0008】
一方、バケットを装着してバックホウ作業モードスイッチが選択操作されると、ブームアクチュエータの作動によるブームの下げ操作が行われるとともにブーム角度検出スイッチよりブームの下げ角度が検出され該下げ角度検出値がバックホウ作業モードにおける設定下げ角度に達すると前記ブームアクチュエータの作動が自動停止されて、該ブームの下げ角度が設定下げ角度値に規制される。またアームアクチュエータの作動によるアームの開き操作が行われるとともにアーム角度検出スイッチよりアームの開き角度が検出され該開き角度検出値がバックホウ作業モードにおける設定開き角度に達すると前記アームアクチュエータの作動が自動停止されて、該アームの開き角度が設定開き角度値に規制される。このように、ブームの下げ角度及びアームの開き角度がそれぞれバックホウ作業モードにおける設定下げ角度及び設定開き角度に自動的に規制されて、解体作業モード時よりも広い転倒限界作業半径内でバックホウ作業が行われる。
【0009】
請求項2記載の発明は、上記解体作業モードスイッチの選択時には、上記アームの開き角度が上記解体作業モードにおける設定開き角度に達すると前記ブームの下げ操作を自動停止させて高所解体作業を実行し、上記アームの開き角度が前記設定開き角度内であれば上記ブームの下げ操作は自動停止せずに低所解体作業を実行する2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、解体作業モードスイッチが選択操作されると、ブームアクチュエータの作動によるブームの下げ操作が行われるとともにアームアクチュエータの作動によるアームの開き操作が行われる。このとき、アーム角度検出スイッチで検出されたアームの開き角度が解体作業モードにおける設定開き角度に達するとブームアクチュエータの作動が自動停止されてブームの下げ角度が設定下げ角度内に規制され、転倒限界作業半径内にて高所解体作業が行われる。また、アーム角度検出スイッチで検出されたアームの開き角度が解体作業モードにおける設定開き角度内であればブームアクチュエータの作動は自動停止されずにブームの下げ操作が行われ、地下位置に至るまでが転倒限界作業半径内となる低所解体作業が行われる。
【0011】
請求項3記載の発明は、上記バックホウ作業モードスイッチの選択時には、上記アームの開き角度が上記バックホウ作業モードにおける設定開き角度に達すると前記アームの開
き操作を自動停止させてバックホウ作業を実行する2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、バックホウ作業モードスイッチが選択操作されると、アームアクチュエータの作動によるアームの開き操作が行われるとともにブームアクチュエータの作動によるブームの下げ操作が行われる。このとき、アーム角度検出スイッチで検出されたアームの開き角度がバックホウ作業モードにおける設定開き角度に達するとアームアクチュエータの作動が自動停止されてアームの開き角度が設定開き角度内に規制され、ブームアクチュエータの作動は停止されずにブームの下げ操作が行われる。これにより低所解体作業時よりも広く且つ、深い地下位置に至るまでが転倒限界作業半径内となるバックホウ作業が行われる。
【0013】
請求項4記載の発明は、上記解体作業モード及び上記バックホウ作業モードの各選択を解除する解除スイッチを有する2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、解体作業モードとバックホウ作業モードの選択を解除することでブーム及びアームの作動規制が解除されて、該ブーム及びアーム等の分解、組立、点検等を容易に行える姿勢がとれる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、アタッチメントとして解体作業用アタッチメントを装着したときの解体作業モードを選択する解体作業モードスイッチと、アタッチメントとしてバックホウ作業用アタッチメントを装着したときのバックホウ作業モードを選択するバックホウ作業モードスイッチと、ブームの下げ角度を検出するとともに該下げ角度を作業モードに応じた設定下げ角度に規制するブーム角度検出スイッチと、アームの開き角度を検出するとともに該開き角度を作業モードに応じた設定開き角度に規制するアーム角度検出スイッチとを具備させたので、解体作業用アタッチメントとしての破砕機を装着した解体作業モードにおいては、ブームの下げ角度及びアームの開き角度がそれぞれ解体作業モードにおける設定下げ角度内及び設定開き角度内に自動的に規制されて、安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心して解体作業を行うことができる。また、バックホウ作業用アタッチメントとして前記破砕機よりも軽量のバケットを装着したバックホウ作業モードにおいては、ブームの下げ角度及びアームの開き角度がそれぞれバックホウ作業モードにおける設定下げ角度内及び設定開き角度内に自動的に規制されて、安定性が確保され且つ解体作業モード時よりも大きな転倒限界作業半径内で安心してバックホウ作業を行うことができるという利点がある。
【0016】
請求項2記載の発明は、上記解体作業モードスイッチの選択時には、上記アームの開き角度が上記解体作業モードにおける設定開き角度に達すると前記ブームの下げ操作を自動停止させて高所解体作業を実行し、上記アームの開き角度が前記設定開き角度内であれば上記ブームの下げ操作は自動停止せずに低所解体作業を実行するようにしたので、アームの開き角度が解体作業モードにおける設定開き角度に達したときブームの下げ操作を自動停止することで、安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心して高所解体作業を行うことができる。またアームの開き角度が解体作業モードにおける設定開き角度内のときはブームを停止させることなく下げ操作を行うことで、安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心して低所解体作業を行うことができるという利点がある。
【0017】
請求項3記載の発明は、上記バックホウ作業モードスイッチの選択時には、上記アームの開き角度が上記バックホウ作業モードにおける設定開き角度に達すると前記アームの開き操作を自動停止させてバックホウ作業を実行するようにしたので、バックホウ作業モードにおいては、アームの開き角度をバックホウ作業モードにおける設定開き角度内に規制
した状態でブームの下げ操作を行うことで、低所解体作業時よりも広く且つ、深い地下位置に至るまで安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心してバックホウ作業を行うことができるという利点がある。
【0018】
請求項4記載の発明は、上記解体作業モード及び上記バックホウ作業モードの各選択を解除する解除スイッチを具備させたので、ブーム及びアームの作動規制を解除することができて、該ブーム及びアーム等の分解、組立、点検等を容易に行うことができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
解体作業モードにおいては安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心して高所解体作業及び低所解体作業を行ない、またバックホウ作業モードにおいては前記低所解体作業よりも広く且つ、深い地下位置に至るまで安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心してバックホウ作業を行うという目的を、ショベル本体にブームアクチュエータにより俯仰動可能に設置されたブームと、該ブームの先端部にアームアクチュエータにより俯仰動可能に装着されたアームと、該アームの先端部に作業モードに応じて選択して装着されたアタッチメントとを備えた2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置であって、前記アタッチメントとして解体作業用アタッチメントを装着したときの解体作業モードを選択する解体作業モードスイッチと、前記アタッチメントとしてバックホウ作業用アタッチメントを装着したときのバックホウ作業モードを選択するバックホウ作業モードスイッチと、前記ブームの下げ角度を検出するとともに該下げ角度を作業モードに応じた設定下げ角度に規制するブーム角度検出スイッチと、前記アームの開き角度を検出するとともに該開き角度を作業モードに応じた設定開き角度に規制するアーム角度検出スイッチとを具備することにより実現した。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に従って詳述する。図1は2段折れ式高所解体機を制御系統とともに示す側面図である。まず、本実施例に係る2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置の構成を説明する。
【0021】
図1において、2段折れ式高所解体機1は、下部走行体2a上に上部旋回体2bが旋回可能に搭載されたショベル本体2における前記上部旋回体2b上に作業装置3が取り付けられている。該作業装置3には、前記上部旋回体2b上にブームアクチュエータとしてのブームシリンダ4により俯仰動可能に設置されたブーム5と、該ブーム5の先端部にアームアクチュエータとしてのアームシリンダ6により俯仰動可能に装着されたアーム7と、該アーム7の先端部に作業モードに応じて選択して装着されたアタッチメントとが備えられている。
【0022】
図1の例では、アタッチメントとして解体作業用アタッチメントとしての破砕機8が装着され、該破砕機8がアーム7の先端部にアタッチメントシリンダ9により俯仰動可能に装着されている。後述するように、バックホウ作業モード時には、破砕機8に代えて、バックホウ作業用アタッチメントとしてのバケット10(図5参照)が装着される。
【0023】
上記作業装置3の作業範囲を規制する制御系統は、主として、ブーム5の回動基端部に設けられたブーム角度検出スイッチ11、アーム7の回動基端部に設けられたアーム角度検出スイッチ12、ブームシリンダ4の作動を制御するブーム側コントロールバルブ13、アームシリンダ6の作動を制御するアーム側コントロールバルブ14、並びに前記ブーム側コントロールバルブ13及びアーム側コントロールバルブ14の作動を制御するコントローラ15で構成されている。
【0024】
前記ブーム角度検出スイッチ11及びアーム角度検出スイッチ12は、それぞれ電気信号ライン16a,16bを介して前記コントローラ15に接続されている。ブーム角度検出スイッチ11はポテンショメータが組み合わされていて前記ブーム5の下げ動作に応じた適宜の電圧レベルの下げ角度検出信号を出力し、該ブーム5の下げ角度(ブーム最大起伏時からの下げ角度)がコントローラ15で設定された設定下げ角度に達すると前記下げ角度検出信号の出力をオフする。また、アーム角度検出スイッチ12は、上記と同様に、ポテンショメータが組み合わされていて前記アーム7の開き動作に応じた適宜の電圧レベルの開き角度検出信号を出力し、該アーム7の開き角度がコントローラ15で設定された設定開き角度に達すると前記開き角度検出信号の出力をオフする。
【0025】
なお、ブーム角度検出スイッチ11及びアーム角度検出スイッチ12に代えて、それぞれブーム角度検出センサ及びアーム角度検出センサを使用し、その下げ角度センサ信号及び開き角度センサ信号をコントローラ15側でそれぞれ設定値処理を行ってもよい。
【0026】
前記ブーム側コントロールバルブ13は右行側パイロットポート13a及び左行側パイロットポート13bを備えたパイロット作動式の三位置切換弁であり、その給油ポートには図示しないメインポンプの吐出口が接続され、第1の出力ポート13cはシリンダ作動ライン17aを介してブームシリンダ4のロッド側油室に接続され、第2の出力ポート13dは他のシリンダ作動ライン17bを介してブームシリンダ4のヘッド側油室に接続されている。前記右行側パイロットポート13aには図示しないサブポンプの吐出口がパイロット操作ライン18aにより右行側ソレノイドバルブ19を介して接続され、左行側パイロットポート13bにはサブポンプの吐出口が他のパイロット操作ライン18bにより図示しない左行側ソレノイドバルブを介して接続されている。
【0027】
ブーム側コントロールバルブ13は、中立位置では給油ポートと第1、第2の出力ポート13c,13d間はブロック状態である。右行側ソレノイドバルブ19が開いて右行側パイロットポート13aにパイロット圧が入力したときの右行側位置では給油ポートを介してメインポンプの吐出口がブームシリンダ4のロッド側油室に連通し、左行側ソレノイドバルブが開いて左行側パイロットポート13bにパイロット圧が入力したときの左行側位置では給油ポートを介してメインポンプの吐出口がブームシリンダ4のヘッド側油室に連通する。前記右行側ソレノイドバルブ19におけるソレノイド19aは電気信号ライン20aを介してコントローラ15に接続されている。
【0028】
上記のように、右行側ソレノイドバルブ19におけるソレノイド19aに、コントローラ15から前記設定下げ角度値に対応した設定励磁信号が入力すると、該設定励磁信号が入力している間、右行側ソレノイドバルブ19が開いてブーム側コントロールバルブ13が右行し、ブームシリンダ4のロッド側油室にメインポンプから作動油が供給される。これにより該ブームシリンダ4が縮長してブーム5の下げ角度が設定下げ角度値に規制される。したがって、ブーム側コントロールバルブ13における右行側ソレノイドバルブ19はブーム5の下げ角度を設定下げ角度値に規制するブーム下げ角度規制ソレノイドバルブとして機能する。
【0029】
前記アーム側コントロールバルブ14は、上記ブーム側コントロールバルブ13とほぼ同様に構成されており、右行側パイロットポート14a及び左行側パイロットポート14bを備えたパイロット作動式の三位置切換弁であり、その給油ポートには図示しないメインポンプの吐出口が接続され、第1の出力ポート14cはシリンダ作動ライン21aを介してアームシリンダ6のヘッド側油室に接続され、第2の出力ポート14dは他のシリンダ作動ライン21bを介してアームシリンダ6のロッド側油室に接続されている。前記右行側パイロットポート14aには図示しないサブポンプの吐出口がパイロット操作ライン22aにより右行側ソレノイドバルブ23を介して接続され、左行側パイロットポート1
4bにはサブポンプの吐出口が他のパイロット操作ライン22bにより図示しない左行側ソレノイドバルブを介して接続されている。
【0030】
アーム側コントロールバルブ14は、中立位置では給油ポートと第1、第2の出力ポート14c,14d間はブロック状態である。右行側ソレノイドバルブ23が開いて右行側パイロットポート14aにパイロット圧が入力したときの右行側位置では給油ポートを介してメインポンプの吐出口がアームシリンダ6のヘッド側油室に連通し、左行側ソレノイドバルブが開いて左行側パイロットポート14bにパイロット圧が入力したときの左行側位置では給油ポートを介してメインポンプの吐出口がアームシリンダ6のロッド側油室に連通する。前記右行側ソレノイドバルブ23におけるソレノイド23aは電気信号ライン20bを介してコントローラ15に接続されている。
【0031】
上記のように、右行側ソレノイドバルブ23におけるソレノイド23aに、コントローラ15から前記設定開き角度値に対応した設定励磁信号が入力すると、該設定励磁信号が入力している間、右行側ソレノイドバルブ23が開いてアーム側コントロールバルブ14が右行し、アームシリンダ6のヘッド側油室にメインポンプから作動油が供給される。これにより該アームシリンダ6が伸長してアーム7の開き角度が設定開き角度値に規制される。したがって、アーム側コントロールバルブ14における右行側ソレノイドバルブ23はアーム7の開き角度を設定開き角度値に規制するアーム開き角度規制ソレノイドバルブとして機能する。
【0032】
前記コントローラ15には、前記作業装置3に解体作業用アタッチメントとしての破砕機8を装着したときの解体作業モードを選択する解体作業モードスイッチ15a、バックホウ作業用アタッチメントとしてのバケット10を装着したときのバックホウ作業モードを選択するバックホウ作業モードスイッチ15b、並びに前記解体作業モード及び前記バックホウ作業モードの各選択を解除する解除スイッチ15cが備えられている。そしてコントローラ15は、ブーム5の下げ角度及びアーム7の開き角度を作業モードに応じた設定下げ角度及び設定開き角度にそれぞれ設定するとともに、該設定下げ角度値に対応した設定励磁信号及び設定開き角度値に対応した設定励磁信号を出力し、各ソレノイドバルブ19,23を介してブーム側コントロールバルブ13及びアーム側コントロールバルブ14の作動をそれぞれ制御する。
【0033】
次に、上述のように構成された2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置の作用を「高所解体作業(1)」、「高所解体作業(2)」、「低所解体作業」及び「バックホウ作業」の順に説明する。
【0034】
(a)「高所解体作業(1)」(図2)
図2は解体作業モードにおいてブーム最大起伏及びアーム最大開き状態での高所解体作業姿勢を示す側面図である。高所解体作業(1)は、破砕機8を装着して解体作業モードスイッチ15aを選択操作し、ブーム5はA線で示す最大起伏時状態に規制する。またアーム7は最大開き角度B状態として破砕機8が高い位置において破砕作業をする。ブーム5を最大起伏時A線よりも下げて、下げ角度を大きくすると破砕機8の作業半径が広がり過ぎて不安定となる。
(b)「高所解体作業(2)」(図3)
図3は解体作業モードにおいてブーム下げ規制状態で且つ最大作業半径での高所解体作業姿勢を示す側面図である。高所解体作業(2)は、破砕機8を装着して解体作業モードスイッチ15aを選択操作し、ブームシリンダ4の作動によるブーム5の下げ操作を行うとともにアームシリンダ6の作動によるアームの開き操作を行う。このとき、アーム角度検出スイッチ12で検出されたアーム7の開き角度が解体作業モードにおける設定開き角度Bに達するとブームシリンダ4の作動がコントロラ15により自動停止されてブーム
5の下げ角度が設定下げ角度Bに規制される。これにより、最大作業半径をA線で示す転倒限界作業半径として該半径A内で破砕機8による高所解体作業(2)が行われる。
(c)「低所解体作業」(図4)
図4は解体作業モードにおいてアーム開き規制状態での低所解体作業姿勢を示す側面図である。低所解体作業は、破砕機8を装着して解体作業モードスイッチ15aを選択操作し、ブームシリンダ4の作動によるブーム5の下げ操作を行うとともにアームシリンダ6の作動によるアームの開き操作を行う。このとき、アーム角度検出スイッチ12で検出されたアーム7の開き角度が解体作業モードにおける設定開き角度B内であればブームシリンダ4の作動は自動停止させずにブーム5の下げ操作を行う。これにより、A線で示す転倒限界作業半径内で地下位置C点に至るまでが転倒限界作業範囲となる低所解体作業が行われる。
(d)「バックホウ作業」(図5)
図5はバックホウ作業モードにおいてアーム開き規制状態でのバックホウ作業姿勢を示す側面図である。バックホウ作業は、破砕機8よりも軽量のバケット10を装着してバックホウ作業モードスイッチ15bを選択操作し、アームシリンダ6の作動によるアーム7の開き操作を行うとともにブームシリンダ4の作動によるブーム5の下げ操作を行う。このとき、アーム角度検出スイッチ12で検出されたアーム7の開き角度がバックホウ作業モードにおける設定開き角度Bに達するとアームシリンダ6の作動がコントローラ15により自動停止されてアーム7の開き角度が設定開き角度Bに規制される。このアーム7側の規制状態でブームシリンダ4の作動は停止させずにブーム5の下げ操作を行う。これにより前記低所解体作業時よりも広いA線で示す転倒限界作業半径内で且つ、前記低所解体作業時における地下位置C点よりも深い地下位置C点に至るまでが転倒限界作業範囲となるバックホウ作業が行われる。
【0035】
上述したように、本実施例に係る2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置においては、アタッチメントとして破砕機8を装着した解体作業モードにおいてアーム7の開き角度が解体作業モードにおける設定開き角度に達したときブーム5の下げ操作を自動停止することで、安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心して高所解体作業を行うことができる。
【0036】
上記と同様に、アタッチメントとして破砕機8を装着した解体作業モードにおいてアーム7の開き角度が解体作業モードにおける設定開き角度内のときにブーム5を停止させることなく下げ操作を行うことで、安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心して低所解体作業を行うことができる。
【0037】
アタッチメントとして破砕機8よりも軽量のバケット10を装着したバックホウ作業モードにおいてアーム7の開き角度をバックホウ作業モードにおける設定開き角度内に規制した状態でブーム5の下げ操作を行うことで、低所解体作業時よりも広く且つ、深い地下位置に至るまで安定性が確保された転倒限界作業半径内で安心してバックホウ作業を行うことができる。
【0038】
解除スイッチ15cによりブーム5及びアーム7の作動規制を解除することができて、該ブーム5及びアーム7等の分解、組立、点検等を容易に行うことができる。
【0039】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図は本発明の実施例に係る2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置を示すものである

【図1】2段折れ式高所解体機を制御系統とともに示す側面図。
【図2】解体作業モードにおいてブーム最大起伏及びアーム最大開き状態での高所解体作業姿勢を示す側面図。
【図3】解体作業モードにおいてブーム下げ規制状態で且つ最大作業半径での高所解体作業姿勢を示す側面図。
【図4】解体作業モードにおいてアーム開き規制状態での低所解体作業姿勢を示す側面図。
【図5】バックホウ作業モードにおいてアーム開き規制状態でのバックホウ作業姿勢を示す側面図。
【符号の説明】
【0041】
1 2段折れ式高所解体機
2 ショベル本体
3 作業装置
4 ブームシリンダ(ブームアクチュエータ)
5 ブーム
6 アームシリンダ(アームアクチュエータ)
7 アーム
8 破砕機(解体作業用アタッチメント)
9 アタッチメントシリンダ
10 バケット(バックホウ作業用アタッチメント)
11 ブーム角度検出スイッチ
12 アーム角度検出スイッチ
13 ブーム側コントロールバルブ
14 アーム側コントロールバルブ
15 コントローラ
15a 解体作業モードスイッチ
15b バックホウ作業モードスイッチ
15c 解除スイッチ
16a,16b 電気信号ライン
17a,17b シリンダ作動ライン
18a,18b パイロット操作ライン
19 右行側ソレノイドバルブ
20a,20b 電気信号ライン
21a,21b シリンダ作動ライン
22a,22b パイロット操作ライン
23 右行側ソレノイドバルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベル本体にブームアクチュエータにより俯仰動可能に設置されたブームと、該ブームの先端部にアームアクチュエータにより俯仰動可能に装着されたアームと、該アームの先端部に作業モードに応じて選択して装着されたアタッチメントとを備えた2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置であって、
前記アタッチメントとして解体作業用アタッチメントを装着したときの解体作業モードを選択する解体作業モードスイッチと、前記アタッチメントとしてバックホウ作業用アタッチメントを装着したときのバックホウ作業モードを選択するバックホウ作業モードスイッチと、前記ブームの下げ角度を検出するとともに該下げ角度を作業モードに応じた設定下げ角度に規制するブーム角度検出スイッチと、前記アームの開き角度を検出するとともに該開き角度を作業モードに応じた設定開き角度に規制するアーム角度検出スイッチとを有することを特徴とする2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置。
【請求項2】
上記解体作業モードスイッチの選択時には、上記アームの開き角度が上記解体作業モードにおける設定開き角度に達すると前記ブームの下げ操作を自動停止させて高所解体作業を実行し、上記アームの開き角度が前記設定開き角度内であれば上記ブームの下げ操作は自動停止せずに低所解体作業を実行することを特徴とする請求項1記載の2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置。
【請求項3】
上記バックホウ作業モードスイッチの選択時には、上記アームの開き角度が上記バックホウ作業モードにおける設定開き角度に達すると前記アームの開き操作を自動停止させてバックホウ作業を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置。
【請求項4】
上記解体作業モード及び上記バックホウ作業モードの各選択を解除する解除スイッチを有することを特徴とする請求項1,2又は3記載の2段折れ式高所解体機の作業範囲規制装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−174197(P2009−174197A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14217(P2008−14217)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】