説明

2輪車

【課題】正常動作時の機動性を損なうことなく、動作異常時に車輪を補助して車体を安定した姿勢に保持できるとともに、走行する車体を効果的に制動できる2輪車を提供する。
【解決手段】2輪車210は、車輪16及び17の接地点よりも走行方向に沿って前方位置及び後方位置において共に路面に接地可能に配置された制動面を有する制動部210を有する。所定の条件を満たす場合に、2輪車210は、制動部210の制動面が路面30から離間された第1の状態から、制動部210の制動面が路面30に当接された第2の状態へと制動面の配置を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助輪を備えた2輪車、並びに車体の移動を制動する車体制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人を乗せて走行する2輪車が知られている。
このような2輪車は、車輪の駆動制御が正常に行われている場合には、自律的に安定して倒立する。
例えば、下記特許文献1には、自律的な安定が損なわれた場合に、車輪を補助する補助輪を備えた2輪車が開示されている。
この補助輪は、自律的な安定が損なわれるなどの動作異常時のみならず、自律して安定が保たれている動作正常時でも常に車輪を補助している。
【0003】
【特許文献1】特開平1−316810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の2輪車のように、動作正常時に補助輪が車輪を補助していると、2輪車の機動性を損なってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するものであり、本発明は、正常動作時の機動性を損なうことなく、動作異常時に車輪を補助して車体を安定した姿勢に保持できる2輪車を提供することを目的とする。
また、走行する車体を効果的に制動できる車体制動装置、並びに当該車体制動装置を用いた2輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様にかかる2輪車は、車体と、第1の車輪および第2の車輪と、制動手段と、制御手段とを有する。前記第1の車輪および第2の車輪は、走行方向に直交した回転軸を中心にそれぞれ回転し、前記直交する方向に沿って前記車体に配設される。前記制動手段は、前記第1及び第2の車輪と路面との接地点よりも前記走行方向に沿って前方位置及び後方位置において共に前記路面に接地可能に配置された制動面を有し、前記路面から前記制動面が離間された第1の状態と、前記路面に前記制動面が当接された第2の状態との間で前記制動面の配置を変化させる。前記制御手段は、所定の条件を満たす場合に、前記制動面が前記第1の状態から前記第2の状態に移行するよう前記制動手段を制御する。
また、本発明の第2の態様にかかる2輪車は、車体と、車体と、第1の車輪および第2の車輪と、制動手段と、制御手段とを有する。前記第1の車輪および第2の車輪は、走行方向に直交した回転軸を中心にそれぞれ回転し、前記直交する方向に沿って前記車体に配設される。前記制動手段は、制動面を有し、前記第1の車輪および前記第2の車輪が走行する路面から前記制動面が離間された第1の状態と、前記路面に前記制動面が当接された第2の状態との間で前記制動面の配置を変化させるとともに、前記第2の状態とされた前記制動面によって停車時の前記車体を倒立状態に支持する。前記制御手段は、所定の条件を満たす場合に、前記制動面が前記第1の状態から前記第2の状態に移行するよう前記制動手段を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正常動作時の機動性を損なうことなく、動作異常時に車輪を補助して車体を安定した姿勢に保持できる2輪車を提供することができる。
また、本発明によれば、走行する車体を効果的に制動できる車体制動装置、並びに当該車体制動装置を用いた2輪車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係わる2輪車について説明する。
第1実施形態
本実施形態は、第1の発明に対応している。
図1は、本実施形態に係る2輪車10の構成図である。
図1(A)は側面側の構成図、図1(B)は正面側の構成図である。
図1に示すように、2輪車10は、例えば、ステップ台11、第1のモータ12、第2のモータ13、第1の伝達・減速機構14、第2の伝達・減速機構15、第1の車輪16、第2の車輪17、ステー18、ハンドル19、センサ群20、バッテリ21、補助輪駆動部22および車輪駆動部23を有する。
ここで、車輪駆動部23が本発明の駆動制御装置に対応し、第1の車輪16が本発明の第1の車輪に対応し、第2の車輪17が本発明の第2の車輪に対応している。
【0009】
2輪車10では、動作正常時に収納状態(本発明の第2の状態)となり、動作異常時に路面30に向けて飛び出して第1の車輪16および第2の車輪17を補助する状態(本発明の第1の状態)に移行する第1の補助輪41および第2の補助輪60(図3に図示)を有することを特徴としている。
【0010】
図1に示すように、第1の車輪16および第2の車輪17は、路面30とそれぞれ接点35,36で接触している。
ステップ台11は、操車者の重心が移動すると、それに応じて、車軸を中心としてステップ台11は+、−方向に傾く。
本実施形態において、ステップ台11の+方向の傾きは、図1(A)においてステップ台11の進行方向側が図中上方向に上がることをいい、−方向の傾きは、図1(A)において、ステップ台11の進行方向反対側の部分が図中上方向に上がることをいう。
【0011】
ステップ台11には、乗車時にユーザが両足を乗せる。
第1のモータ12および第2のモータ13は、例えば巻線コイルなどを用いた電動機である。
第1のモータ12は、車輪駆動部23からの第1の駆動信号を基に回転力を生じ、これを第1の伝達・減速機構14を介して第1の車輪16の車軸に伝達する。
第2のモータ13は、車輪駆動部23からの第2の駆動信号を基に回転力を生じ、これを第2の伝達・減速機構15を介して第2の車輪17の車軸に伝達する。
【0012】
ステップ台11には、ステー18を介してハンドル19が設けられている。
ハンドル19には、乗車時にユーザの両手が掛けられる。
ステップ台11には、水平方向に対してのステップ台11の傾きを検出する傾きセンサなどのセンサ群20が設けられている。
【0013】
〔センサ群20〕
図2は、図1に示すセンサ群20、補助輪駆動部22および車輪駆動部23、並びに制御部120等を説明するための図である。
補助輪駆動部22および制御部120が本発明の制御手段に対応し、車輪駆動部23が本発明の駆動手段に対応している。
図2に示すように、センサ群20は、例えば、安全監視センサ101、ピッチ角検出センサ102、ロール角検出センサ103およびヨー角検出センサ104を有する。
【0014】
ピッチ角検出センサ102、ロール角検出センサ103およびヨー角検出センサ104は、例えば、ジャイロや、回転角度に応じて抵抗値が変化する回転式可変抵抗器の回転軸に対して重量中心が回転軸からずれた剛性の錘を備えたものである。
安全監視センサ101は、例えば、補助輪の飛び出し機構の不具合を常時監視し、2輪車10の走行の信頼性を確保するために用いられる。
制御部120が、安全監視センサ101からの検出信号を基に、補助輪の飛び出し動作を制御し、表示部による表示や音などにより警報を出力する。
なお、安全監視センサ101、ピッチ角検出センサ102、ロール角検出センサ103およびヨー角検出センサ104の取り付け位置に制限はない。
【0015】
〔バッテリ21〕
バッテリ21は、図2に示すように、補助輪駆動部22、駆動部23および制御部120を含む2輪車10の各構成要素に電力を供給する。
【0016】
〔補助輪駆動部22〕
補助輪駆動部22は、例えば、駆動回路112、駆動回路113、補助輪アクチュエータ114、並びに補助輪アクチュエータ115を有する。
駆動回路112は、制御部120からの制御信号を基に駆動信号を生成し、これを補助輪アクチュエータ114に出力する。
駆動回路113は、制御部120からの制御信号を基に駆動信号を生成し、これを補助輪アクチュエータ115に出力する。
補助輪アクチュエータ114は、後述するように、収納状態(収納位置)から補助状態(補助位置)への第1の補助輪41の移動を駆動する。
補助輪アクチュエータ115は、後述するように、収納状態から補助状態への第2の補助輪60の移動を駆動する。
【0017】
〔車輪駆動部23〕
車輪駆動部23は、例えば、駆動回路110および駆動回路111を有する。駆動回路110は、制御部120からの制御信号を基に駆動信号を生成し、これを第1のモータ12に出力する。
駆動回路111は、制御部120からの制御信号を基に駆動信号を生成し、これを第2のモータ13に出力する。
【0018】
〔制御部120〕
制御部120は、例えば、操車者によるハンドル19等の操作に応じた回転信号を基に、2輪車10が上記操作に応じた回転を行うように、駆動回路110,111に出力する制御信号を生成して、第1の車輪16および第2の車輪17の回転を制御する。
【0019】
また、制御部120は、センサ群20の各センサからの検出信号を入力し、この検出信号を基に、駆動回路110,111,112,113に出力する駆動信号を生成する。
具体的には、制御部120は、センサ群20の各センサからの検出信号を基に2輪車10の異常を検出し、その結果を基に、駆動回路110,111,112,113に出力する駆動信号を生成する。
制御部120は、例えば、以下の場合に、異常を検出する。
(1)操車者によって図示しない非常停止スイッチが押された場合。
(2)バッテリ21の電圧が規定値より低下した場合。
(3)駆動回路110,111,112,113、センサ群20、第1のモータ12、第2のモータ13、補助輪アクチュエータ114および補助輪アクチュエータ115と、制御部120との間で通信異常が発生した場合。
(4)第1のモータ12および第2のモータ13の定格トルクを越える負荷が規定時間以上(例えば5秒以上)加わった場合。
(5)駆動回路110,111,112,113内の放熱器に設置されたサーミスタセンサの検出温度が規定値を超えた場合。
(6)駆動回路110および駆動回路111からの駆動信号と、第1のモータ12および第2のモータ13の回転角度検出出力とが所定の基準値以上が乖離した場合。
【0020】
(7)制御部120で所定時間内に演算結果が出力されない場合や、制御部120が所定の記憶データを参照出来ない等によるエラーが生じた場合。
(8)2輪車10が停止もしくは走行状態において、ピッチ角検出センサ102の検出信号が示すステップ台11のピッチ角が、正常とみなされる角度(例えば±3°)を超えた場合。この場合は、ステップ台11に転倒の危険があるとみなされる。
(9)2輪車10が停止もしくは走行状態において、ヨー角検出センサ104の検出信号が示すステップ台11のヨー角が、正常とみなされる角度(例えば±10°)を超えた場合。この場合は、ステップ台11に転倒の危険があるとみなされる。
(10)2輪車10が停止もしくは走行状態において、ロール角検出センサ103の検出信号が示すステップ台11のロール角速度が、正常とみなされる速度(例えば遠心力0.3G)を越えた場合。この場合は、操車者が振り落とされるとみなされる。
(11)安全監視センサ101による安全装置に故障や不具合が認められた場合。
【0021】
図3は、図1に示す2輪車10の補助輪駆動に係わる構成を示す2輪車10の側面側の構成図である。
図3に示すように、2輪車10は、第1の補助輪41および第2の補助輪60を備えている。
【0022】
〔第1の補助輪41〕
先ず、図3に示す第1の補助輪41の周辺、並びに手動レバー26の周辺の構成を説明する。
図4は、図3に示す第1の補助輪41の周辺、並びに手動レバー26の周辺の構成を説明するための図である。
【0023】
図3および図4に示すように、ステップ台11には、動作正常時において、第1の補助輪41および第2の補助輪42が収容されている。すなわち、第1の補助輪41および第2の補助輪42は、路面30に接触していない。
第1の補助輪41の回転軸は、筒状のステー18内に設けられた軸部44の一端に固定され、第1の補助輪41は当該回転軸を中心に回転する。
軸部44の他端は、コイルバネ45の一端に固定されている。軸部44は、コイルバネ45によって、第1の補助輪41を路面30に向けて移動させる向きに付勢されている。
また、ステー18内で、コイルバネ45の他端は、連結部48の一端に支持されている。
【0024】
また、軸部44には、補助輪アクチュエータ114側に凹部46が設けられている。
凹部46内には、動作正常時において、凸部47が嵌め込まれている。これにより、コイルバネ45の付勢力(弾性力)による軸部44の移動がロックされている。
凸部47は、動作異常時において、図5に示すように、補助輪アクチュエータ114によって、凹部46から外れる位置に移動し(図4中右向きに移動し)、上記ロックを解除する。これにより、コイルバネ45の付勢力によって軸部44が移動し(図4中下向きに移動し)、第1の補助輪41が路面30に接触する。
すなわち、第1の補助輪41が飛び出す。
【0025】
図4に示すように、連結部48の他端は、回転軸50、連結部(リンクシャフト)51および回転軸52を介して、手動レバー26に連結している。
操車者が、図6中矢印の向きに手動レバー26を引くと、回転軸50および回転軸52が回転すると共に連結部51が移動し、連結部51の先端が連結部48を、第1の補助輪41が路面30に向かう方向(図6中下向き)に押圧する。
これにより、軸部44の凹部46内に凸部47が嵌め込まれた状態(ロック状態)で、連結部48、コイルバネ45、軸部44、補助輪アクチュエータ114および第1の補助輪41が一体となって、図6中下向きに移動し、第1の補助輪41が路面30に接触する。すなわち、第1の補助輪41が飛び出す。
ステー18の操作による第1の補助輪41の飛び出し動作は、例えば、操車者が何らかの異常事態を検出した場合の他、2輪車10の停車時に第1の補助輪41をスタンドとして機能させる場合にも行われる。
【0026】
また、センサ56は、例えば、図2に示す安全監視センサ101として機能し、軸部44の移動による磁力の変化を検出することで、軸部44の移動を検出する。具体的には、センサ56は、軸部44の移動を検出することで、第1の補助輪41が路面30に向けて飛び出したか否かを検出する。
センサ56は、検出信号を制御部120に出力する。
【0027】
〔第2の補助輪60〕
次に、図3に示す第2の補助輪60の周辺の構成を説明する。
図7は、図3に示す第2の補助輪60の周辺の構成を説明するための図である。
図7に示すように、第2の補助輪60は、回転軸61を中心に回転する。
回転軸61は、アーム62の一端に固定されている。
アーム62の他端は、ステップ台11に固定された回転軸63を中心に回転する。
アーム62の連結部64は、コイルバネ65の一端に固定されている。
なお、連結部64は、アーム62に固定されたリンクアームに取り付けられていてもよい。
コイルバネ65の他端は、ステップ台11に固定された固定部66に固定されている。
アーム62は、動作正常時において、図7に示す回転位置(本発明の第2の状態)にあり、アーム62の一部を構成する凸部67が、凸部68と係合して、コイルバネ65の付勢力によるアーム62の回転がロックされている。これにより、第2の補助輪60は、路面30には接触しない、すなわち収納状態になっている。
【0028】
補助輪アクチュエータ115は、動作異常時に、凸部67との係合を外す向き、図7中左向きに凸部68を移動する。
これにより、凸部67と凸部68との係合が外れ、コイルバネ65の付勢力により、アーム62が図7中矢印の向きに回転して、図8に示すように、路面30に向けて第2の補助輪60が飛び出す。
このとき、アーム62が、ステップ台11に固定されたストッパーピン69に当たり、所定の角度で固定される。当該所定の角度は、例えば、路面30の垂線に対して、アーム62の回転軸63と回転軸61との中心がずれており、上方より第2の補助輪60に負荷が掛かった場合、アーム62に生ずる回転モーメントをストッパーピン69で受けるように規定される。
なお、上述した第1の補助輪41および第2の補助輪60は、上述したように路面30に向けて飛び出した後に、上述した正常状態の位置に手動で復帰される。
【0029】
本発明は、例えば、図9に示すように、図7および図8に示す第2の補助輪60およびその周辺要素を含む第2の補助輪機構70と同じ構成の第2の補助輪機構70aを、図4〜図6に示す構成に第1の補助輪41の構成に代えて、2輪車10の進行方向側に設けてもよい。
【0030】
以下、2輪車10の動作例を説明する。
〔第1の動作例〕
当該動作例では、2輪車10に異常が発生した場合を説明する。
図2に示す制御部120が、センサ群20の各センサからの検出信号、あるいは図示しない非常停止スイッチの押下などを基に、2輪車10の動作異常を検出すると、第1の補助輪41および第2の補助輪60の飛び出しを指示する制御信号を駆動回路112および駆動回路113にそれぞれ出力する。
駆動回路112および駆動回路113は、当該制御信号を制御部120から入力すると、補助輪アクチュエータ114および補助輪アクチュエータ115に駆動信号を出力する。
補助輪アクチュエータ114が、駆動回路112からの駆動信号を基に、図5に示すように、凸部47を凹部46から外れる位置に移動し(図4中右向きに移動し)、凹部46と凸部47とのロックを解除する。
これにより、コイルバネ45の付勢力によって軸部44が移動し(図5中下向きに移動し)、第1の補助輪41が路面30に接触する。すなわち、第1の補助輪41が飛び出す。
【0031】
また、補助輪アクチュエータ115が、駆動回路113からの駆動信号を基に、図8に示すように、凸部67との係合を外す向き(図7中左向き)に凸部68を移動する。
これにより、凸部67と凸部68との係合が外れ、コイルバネ65の付勢力により、アーム62が図7中矢印の向きに回転して、図8に示すように、路面30に向けて第2の補助輪60が飛び出す。
また、制御部120は、例えば、駆動回路110および駆動回路111に停止を指示する制御信号を出力する。これにより、第1のモータ12および第2のモータ13による第1の車輪16および第2の車輪17の駆動が停止する。
【0032】
上述したように、2輪車10は、制御部120が2輪車10の異常を検出すると、第1の補助輪41および第2の補助輪42を自動的に路面30に向けて飛び出させる。
そのため、2輪車10が転倒することを防止し、2輪車10を安全に停止させる事が可能である。
また、2輪車10によれば、動作正常時には、第1の補助輪41および第2の補助輪60が収納状態になっており、路面30に接触していないため、2輪車10の機動性が失われる事がない。
また、2輪車10の動作異常状態から動作正常状態に復帰した場合には、例えば、第1の補助輪41および第2の補助輪60を手動で格納することができる。
【0033】
〔第2の動作例〕
当該動作例では、2輪車10が正常状態である場合を説明する。
第1の車輪16および第2の車輪17が回転しない状態においては、傾き角度θが零となる場合以外に安定点は存在しない。しかしながら、この安定点は不安定平衡点であるので、少しでも傾き角度θが零以外の値からずれるとステップ台11は車軸を中心として路面に接するまで回転する。
【0034】
次に、第1のモータ12および第2のモータ13によって第1の車輪16および第2の車輪17が回転駆動されると、モータを構成するロータとステータの両者は他の一方に対して相対的に回転運動をする。
回転ロータ型のモータにおいては、ステータはモータを覆う外部の一部をなし、外囲部はステップ台11に固定され、モータの回転は外囲部に対する相対運動として生じる。
したがって、モータの回転軸に負荷が結合されている場合においては、この負荷の大きさに応じて、ステップ台11を+、―に傾けるモータ反作用力が生じる。
このときの負荷の大きさは、路面30を第1の車輪16および第2の車輪17が転がる場合の転がり摩擦力を第1のモータ12および第2のモータ13の回転軸において換算した値である。
ステップ台11は1枚の剛性の高い板で構成されているので、ステップ台11に加わるモータ反作用力は第1のモータ12および第2のモータ13によるモータ反作用力の合成力となる。
【0035】
一方、ステップ台11に乗った操車者が重心の位置を変化すると、車軸を中心としてステップ台11に重心位置と車軸とを結ぶ線(重心回転軸)の距離と重力加速度の重心回転軸と直交する成分との積に応じる大きさの回転力が、ステップ台11を車軸の回りに生じる。
モータ反作用力と、この回転力の大きさとが等しい場合は、ステップ台11の傾き角度θは維持されるので、搬送装置が路面と接触をすることがない。また、第1のモータ12および第2のモータ13は、回転し続けるので2輪車10は移動し続ける。
このときの、2輪車10が進行方向に移動する向きに第1のモータ12および第2のモータ13が回転をすると、トルク反作用は、ステップ台11の傾きθを増加させる方向に働く。
そして、ステップ台11の傾き角度θが正方向に増加し続け、最後にはステップ台11と路面30とが接触するに至る。ここで、ステップ台11の傾き角度θをセンサ群20で検出して第1のモータ12および第2のモータ13のトルク反作用を弱めるように調整すれば、ステップ台11の傾き角度θは減少する。
【0036】
逆に、ステップ台11の傾き角度θが負の場合に、第1のモータ12および第2のモータ13のトルクに変化がなければ、ステップ台11の傾き角度θは負の方向に増加し続け、最後にはステップ台11と路面30とが接触する。
ここで、第1のモータ12および第2のモータ13のトルクを上げると、トルク反作用も増加してステップ台11の傾き角度θは減少する。第1のモータ12および第2のモータ13のトルクを上げることは、モータの回転数を上げることであるので、第1の車輪16および第2の車輪17の回転数も上がり、2輪車10の走行速度は速くなる。
本実施形態では、駆動部23が、ステップ台11の傾き角度θを基に、第1のモータ12および第2のモータ13のトルクを制御することで、2輪車10を安定した姿勢に保持する。
【0037】
第2実施形態
当該実施形態は、第2の発明および第3の発明に対応した実施形態である。
上述した第1実施形態では、動作正常時から動作異常時への移行したときに、第1の補助輪41および第2の補助輪60を路面30に向けて飛び出させて、2輪車10の姿勢を安定に保持する場合を例示した。
本実施形態では、動作正常時から動作異常時に移行したときに、制動面を有する制動手段を路面に向けて飛び出させて、路面30を安定した姿勢で停止させる場合を説明する。
なお、本実施形態の2輪車は、例えば、第1実施形態の構成を全て有している。なお、本発明では、第1実施形態の構成のうち、第1の補助輪41および第2の補助輪42に係わる構成を有していなくてもよい。
【0038】
図10は、本実施形態の2輪車210に設けられた制動機構を説明するための図である。
図10に示すように、2輪車210には、制動手段として、ソリ形状の制動部211を有している。
図10は、制動部211が飛び出して路面30に接触している状態を示している。
【0039】
図11は、制動部211の構成を説明するための図であり、図11(A)は正面(ステップ台11の上方から見た)図、図11(B)は図11(A)に示す矢印Aの側から見た側面図、図11(C)は図11(A)に示す矢印Bの側から見た側面図である。
図12(A)は図11(A)に示す制動用ベース80付近の拡大図、図12(B)は図11(B)に示す制動用ベース80付近の拡大図である。
【0040】
例えば、図12に示す駆動機構、並びに制動部211が本発明の制動手段に対応し、図2に示す制御部120が本発明の制御手段に対応している。
【0041】
図12に示すように、ステップ台11に固定された制動用ベース80内に、コイルバネ81,82、第1の移動体83、第2の移動体84が収容されている。
なお、本実施形態の制動機構は、例えば、ステップ台11の第1の車輪16と第2の車輪17との間に設けられている。
コイルバネ81および82の一端は、それぞれ制動用ベース80あるいはステップ台11に固定された固定部85に固定されている。
また、コイルバネ81の他端は第1の移動体83に固定され、コイルバネ82の他端は第2の移動体84に固定されている。
第1の移動体83にはロッド95の一端が回転自在に取り付けられ、第2の移動体84にはロッド96の一端が回転自在に取り付けられている。
また、ロッド95の他端は、制動部211の回転軸97を介して制動部211の一端に連結されている。
ロッド96の他端は、制動部211の回転軸98を介して制動部211の他端に連結されている。
【0042】
制動用ベース80あるいはステップ台11には、ソレノイドバルブ90,91が固定されている。
ソレノイドバルブ90は、例えば、図2に示す制御部120からの制御信号を基に、凸部92を第1の移動体83の移動経路に出入させる。
具体的には、ソレノイドバルブ90は、動作正常時に、凸部92を第1の移動体83の移動経路内に位置させ、コイルバネ81の付勢力によって固定部85に向けて付勢された第1の移動体83(図12中点線)の固定部85に向けての移動をロックする。
また、ソレノイドバルブ90は、動作異常時に、凸部92を第1の移動体83の移動経路の外側に位置させる。これにより、後述する第2の移動体84の移動による作用と共に、連動コイルバネ81の付勢力によって第1の移動体83が固定部85に向けて移動し(図12中実線)、図11(B),(C)に示すように、ソリ211の制動面211aを路面30に接触させる。
【0043】
ソレノイドバルブ91は、例えば、図2に示す制御部120からの制御信号を基に、凸部93を第2の移動体84の移動経路に出入りさせる。
具体的には、ソレノイドバルブ91は、動作正常時に、凸部93を第2の移動体84の移動経路内に位置させ、コイルバネ82の付勢力によって固定部85に向けて付勢された第2の移動体84(図12中点線)の固定部85に向けての移動をロックする。
また、ソレノイドバルブ91は、動作異常時に、凸部93を第2の移動体84の移動経路の外側に位置させる。これにより、前述した第1の移動体83の移動による作用と共に、連動コイルバネ82の付勢力によって第2の移動体84が固定部85に向けて移動し(図12中実線)、図11(B),(C)に示すように、ソリ211の制動面211aを路面30に接触させる。
【0044】
なお、上述した制動機構は、ステップ台11の下部にコンパクトに収納され、正常状態では、図示しない手動スイッチによってソレノイドバルブ90,91を駆動して凸部92,93によるロックを解除することで、スタンドとしても機能する。
上述した制動機能は、手動にて凸部92,93によるロックを解除して制動部211をステップ台11に向けて持ち上げ、さらに凸部92,93によるロックをかけることで、収納状態に復帰する。
ロッド95,96として、高剛性のバネ鋼系の材質のものを使用することで、衝撃を受けたときの衝撃吸収をし、かつ折れを回避できる。
【0045】
以下、2輪車210に異常が発生した場合の動作例を説明する。
図2に示す制御部120が、センサ群20の各センサからの検出信号、あるいは図示しない非常停止スイッチの押下などを基に、2輪車10の動作異常を検出すると、制動部211の飛び出しを指示する制御(駆動信号)信号をソレノイドバルブ90,91にそれぞれ出力する。
そして、ソレノイドバルブ90,91は、制御部120からの制御信号を基に、凸部92,93を第1の移動体83および第2の移動体84の移動経路の外側に位置させる。
連動コイルバネ81,82の付勢力によって第1の移動体83および第2の移動体84が固定部85に向けて移動し、図11(B),(C)に示すように、ソリ211の制動面211aが路面30に接触する。
そのため、制動面211aと路面30との間の摩擦力により、2輪車210が減速して停止する。
【0046】
上述したように、2輪車210は、動作異常時に制動部211を路面30に向けて接触させることで、2輪車210を瞬時に停止させることができる。
【0047】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
例えば、第1実施形態において、補助輪の位置、並びに個数は任意である。
また、第2実施形態において、2輪車以外の車両に制動部211、並びにその移動機構を設けてもよい。また、制動部211の制動面211aの形状等は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る2輪車の構成図である。
【図2】図2は、図1に示すセンサ群、補助輪駆動部および車輪駆動部、並びに制御部を説明するための図である。
【図3】図3は、図1に示す2輪車の補助輪駆動に係わる構成を示す2輪車の側面側の構成図である。
【図4】図4は、図3に示す第1の補助輪の周辺、並びに手動レバーの周辺の構成を説明するための図であり、第1の補助輪が収納された状態の図である。
【図5】図5は、図3に示す第1の補助輪の周辺、並びに手動レバーの周辺の構成を説明するための図であり、第1の補助輪が路面に向けて飛び出した状態の図である。
【図6】図6は、図3に示す第1の補助輪の周辺、並びに手動レバーの周辺の構成を説明するための図であり、手動レバーを引いた場合の図である。
【図7】図7は、図3に示す第2の補助輪の周辺の構成を説明するための図であり、第2の補助輪が収納された状態の図である。
【図8】図8は、図3に示す第2の補助輪の周辺の構成を説明するための図であり、第2の補助輪が路面に向けて飛び出した状態の図である。
【図9】図9は、図3に示す2輪車の変形例を説明するための図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態の2輪車に設けられた制動機構を説明するための図である。
【図11】図11は、制動部211の構成を説明するための図であり、図11(A)は正面(ステップ台の上方から見た)図、図11(B)は図11(A)に示す矢印Aの側から見た側面図、図11(C)は図11(A)に示す矢印Bの側から見た側面図である。
【図12】図12(A)は図11(A)に示す制動用ベース付近の拡大図、図12(B)は図11(B)に示す制動用ベース付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0049】
10 2輪車、11 ステップ台、12 第1のモータ、13 第2のモータ、14 第1の伝達・減速機構、15 第2の伝達・減速機構、16 第1の車輪、17 第2の車輪、18 ステー、19 ハンドル、20 センサ群、21 バッテリ、22 補助輪駆動部、23 車輪駆動部、41 第1の補助輪、60 第2の補助輪、120 制御部、210 2輪車、211 制動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
走行方向に直交した回転軸を中心にそれぞれ回転し、前記直交する方向に沿って前記車体に配設された第1の車輪および第2の車輪と、
前記第1及び第2の車輪と路面との接地点よりも前記走行方向に沿って前方位置及び後方位置において共に前記路面に接地可能に配置された制動面を有し、前記路面から前記制動面が離間された第1の状態と、前記路面に前記制動面が当接された第2の状態との間で前記制動面の配置を変化させる制動手段と、
所定の条件を満たす場合に、前記制動面が前記第1の状態から前記第2の状態に移行するよう前記制動手段を制御する制御手段と、
を備える2輪車。
【請求項2】
車体と、
走行方向に直交した回転軸を中心にそれぞれ回転し、前記直交する方向に沿って前記車体に配設された第1の車輪および第2の車輪と、
制動面を有し、前記第1の車輪および前記第2の車輪が走行する路面から前記制動面が離間された第1の状態と、前記路面に前記制動面が当接された第2の状態との間で前記制動面の配置を変化させるとともに、前記第2の状態とされた前記制動面によって停車時の前記車体を倒立状態に支持する制動手段と、
所定の条件を満たす場合に、前記制動面が前記第1の状態から前記第2の状態に移行するよう前記制動手段を制御する制御手段と、
を備える2輪車。
【請求項3】
前記制動面は、前記第1及び第2の車輪と前記路面との接地点よりも前記走行方向の前後に亘って延在し、前記制動面の前記走行方向の長さは、前記第1の車輪および前記第2の車輪の直径と同等である、請求項1又は2に記載の2輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−290718(P2008−290718A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185962(P2008−185962)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【分割の表示】特願2003−9959(P2003−9959)の分割
【原出願日】平成15年1月17日(2003.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】