説明

2,7−オクタジエニル誘導体の製造法

1,3−ブタンジ塩含有炭化水素混合物、殊に留分C4を求核性試薬と反応させることによって1−オクタ−2,7−オクタジエニル誘導体を製造する方法。
この場合、使用炭化水素混合物から選択水素化によってアセチレン系不飽和化合物を除去し、引続きテロ重合を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3−ブタンジ塩含有炭化水素混合物、殊にクラックC4を求核性試薬と反応させることによって1−オクタ−2,7−オクタジエニル誘導体の製造法に関する。
【0002】
この場合、1,3−ブタジエン2モルと求核性試薬1モルとから生成されるテロ重合生成物(不飽和アミン、不飽和アルコールおよびそのエステルおよびエーテル)は、有機合成のための出発物質である。酸素含有誘導体は、線状C8アルコールとC8オレフィン、殊に1−オクタノールおよび1−オクテンを製造するための前駆体である。また、1−オクタノールは、例えば可塑剤の製造に使用される。1−オクテンは、ポリエチレンおよびポリプロピレンを変性するために望まれるコモノマーである。
【0003】
オクタジエニル誘導体へのブタジエンと求核性試薬とのテロ重合は、金属錯体、殊にパラジウム化合物によって促進される。
【0004】
テロ重合反応のための例は、なかんずくE. J. Smutay, J.Am. Chem. Soc. 1967, 89, 6793; S. Takahashi, T. Shibano, N. Hagihara, Tetrahedron Lett. 1967, 2451; 欧州特許出願公開第0561779号明細書、米国特許第3499042号明細書、米国特許第3530187号明細書、英国特許第1178812号明細書、オランダ国特許第6816008号明細書、英国特許第1248593号明細書、米国特許第3670029号明細書、米国特許第3670032号明細書、米国特許第3769352号明細書、米国特許第3887627号明細書、英国特許第1354507号明細書、ドイツ連邦共和国特許第2040708号明細書、米国特許第4142060号明細書、米国特許第4146738号明細書、米国特許第4196135号明細書、英国特許第1535718号明細書、米国特許第4104471号明細書、ドイツ連邦共和国特許第2161750号明細書および欧州特許出願公開第0218100号明細書中に記載されている。
【0005】
オクタジエニル誘導体を製造するための使用物質としては、純粋な1,3−ブタジエンまたは1,3−ブタジエン含有炭化水素混合物、例えばクラックC4を使用することができる。
【0006】
1,3−ブタジエンは、分離方法に費用がかかるために、比較的高価な使用物質である。従って、大抵の経済的な1,3−ブタジエン含有炭化水素混合物は、テロ重合のための使用物質として選択することができる。このことは、可能である。それというのも、大抵の随伴物質、例えば飽和炭化水素、例えばn−ブタンまたはイソブタン、またはモノオレフィン、例えばイソブテンおよび線状ブテンは、テロ重合反応において不活性の挙動を取るからである。抑制剤、即ち空時収量または選択性を減少させるかまたは触媒消費量を上昇させる物質だけは、分離されなければならない。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許第19523335号明細書の記載によれば、ナフサ分解物からのC4留分を1,3-ブタジエン含有原料として使用する場合に、アセチレン系化合物およびエダクト中のアレンの濃度をテロ重合のために制限することは、適切なことである。アセチレン系不飽和化合物とアレン系不飽和化合物との総和は、1,3−ブタジエンに対して1質量%を超えるべきではない。前記の妨害成分を除去するために、公知方法が指摘されるが、一定の方法が記載されることもないし、引用されることもない。
【0008】
前記の特許明細書(ドイツ連邦共和国特許第19523335号明細書)が引き合いに出されることにより、ドイツ連邦共和国特許第10149348号明細書、ドイツ連邦共和国特許第10229290号明細書およびドイツ連邦共和国特許第10329042号明細書には、濃度限界を記載することなく、アセチレン系化合物およびアレン系化合物をテロ重合前に除去することは有利であることが指摘される。
【0009】
WO 91−09822には、ナフサ、ガス油またはLPGの分解処理の際に得られるC4混合物からテロ重合前にアセチレン系不飽和化合物を、これが存在する限り選択的水素化によって除去することは有利であることが記載されている。この場合、この場合に使用される水素化法は、明らかにされていない。実施例において、原料は、アセチレンの全含量60ppm未満で使用され、アレンの予定された含量を全く含有しない。
【0010】
アセチレン系化合物の分離は、前記化合物の抽出または水素化によって行なうことができる。アセチレン系化合物(メチルアセチレン(プロピン)、エチルアセチレン(ブチン)、ビニルアセチレン(ブテニン))を水素化によって除去する場合には、高い選択性でアセチレン系化合物を本質的に1,3−ブタジエンおよびモノオレフィンの水素化なしに水素化するような方法が使用される。触媒としては、水素化触媒が使用され、銅、卑金属との組合せでの銅、貴金属との組合せでの銅または元素の周期律表の第VIII副族の金属の金属触媒、例えばパラジウム触媒が使用される。相応する方法は、なかんずく次の特許明細書中に記載されている:米国特許第6576588号明細書、米国特許第6417419号明細書、米国特許第6225515号明細書、米国特許第6015933号明細書、米国特許第6194626号明細書、米国特許第6040489号明細書、米国特許第4493906号明細書、米国特許第4440956号明細書、米国特許第4101451号明細書、米国特許第3912789号明細書、米国特許第3751508号明細書、米国特許第3541178号明細書、米国特許第3327013号明細書、米国特許第3218268号明細書、欧州特許第1217060号明細書、欧州特許第11515790号明細書、欧州特許第1070695号明細書、欧州特許第0273900号明細書、オランダ国特許第6613942号明細書。
【0011】
アレン、殊に1,2−ブタジエンを水素化によって選択的に除去することは、本質的にアセチレン系化合物の選択的な除去よりも困難である。水素化の際の1,2−ブタジエンの反応性は、1,3−ブタジエンの反応性よりも極く僅かに高い。従って、1,2−ブタジエンを1,3−ブタジエン含有炭化水素混合物から水素化によって除去する場合には、1,3−ブタジエン損失を回避することはできない。
【0012】
例えば、WO 98/12160には、アセチレン系化合物と1,2−ブタジエンを1,3−ブタジエン含有炭化水素流からパラジウム触媒を用いる水素化によって反応蒸留塔中で同時に除去するための方法が記載されている。前記のWO 98/12160に記載された実施例1において、塔頂生成物中でアセチレン系化合物の含量が約60%だけ減少され、1,2−ブタジエンの含量が3.2%だけ減少されるとしても、既に1,3−ブタジエンの3%は、水素化によって失われていた。
【0013】
2,7−オクタジエニル誘導体クラックC4から製造する場合には、抑制剤の分離の際に1,3−ブタジエンの一部分が失われ(および)/または抑制剤によって必然的にテロ重合の際に僅かな空時収量または選択性が得られるかまたは高い触媒消費量が示される。
【0014】
従って、分解物C4から出発して、分解物C4中の1,3−ブタジエンに対して2,7−オクタジエニル誘導体の高い収量および/またはテロ重合触媒の僅かな消費量を示す方法を開発するという課題が課された。
【0015】
ところで、意外なことに、2,7−オクタジエニル誘導体への1,3−ブタジエンのテロ重合の際にアセチレン系不飽和化合物は、抑制剤として作用するが、しかし、アレン系不飽和化合物(例えば、1,2−ブタジエン)は、抑制剤としての作用を全く示さないことが見い出された。これは、予想することができなかった。それというのも、公知技術水準、例えばドイツ連邦共和国特許第19523335号明細書の記載において、アレン(例えば、1,2−ブタジエン)の濃度をできるだけ減少させることが指摘されているからである。
【0016】
それに応じて、本発明の対象は、式I
【化1】

〔式中、Xは、基OR1aまたはNR1a1bであり、但し、この場合R1aおよびR1bは、水素、置換されたかまたは置換されていないアルキル基、アリール基またはアシル基である〕で示される化合物を、アレン系不飽和化合物ならびに100質量ppmを上廻るアセチレン系不飽和化合物を有する1,3−ブタジエン含有炭化水素流から、その際に、第1の処理工程でアセチレン系不飽和化合物を除去し、第2の処理工程で1,3−ブタジエンを金属化合物の存在下で活性水素含有化合物または求核性試薬(テロゲン)と反応させることにより、製造する方法であり、この方法は、第1の処理工程で得られかつエダクトして第2の処理工程で使用される炭化水素流が100質量ppm以下のアセチレン系不飽和化合物の含量およびアレン系不飽和化合物の元来の含量の少なくとも75%(相対的)であるアレン系不飽和化合物の含量を有することによって特徴付けられる。
【0017】
式Iの化合物は、シス形で存在していてもよいし、トランス形で存在していてもよい。
【0018】
その上、第1の処理工程でアレンの除去が行なわれないことによって、僅かな1,3−ブタジエンは第1の処理工程で意図的にではなく水素化されるかまたは部分水素化され、したがって収量の損失は、使用炭化水素流中の1,3−ブタジエン含量に関連して最少化されてよいことが達成される。
【0019】
更に、本発明による方法は、アレンまたはクムレン、即ち有機合成のための重要な出発物質である、クムレン化された二重結合を有する化合物、例えば1,2−ブタジエンが2つの処理工程で破壊されず、炭化水素流中で存在したままであり、第2の処理工程、テロ重合でテロ重合生成物の後処理の際に分離されうるという利点を有する。
【0020】
以下に、本発明を例示的に記載するが、本発明は、特許請求の範囲及び明細書全体からその特許保護範囲が生ずるものであり、この例示的な記載に制限されるものではない。特許請求の範囲自体も本発明の開示内容に含まれる。
【0021】
一般式I
【化2】

〔式中、Xは、基OR1aまたはNR1a1bであり、この場合R1aおよびR1bは、互いに独立に水素、線状、分枝鎖状または環状のC1〜C22アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C5〜C18アリール基または−CO−アルキル−(C1〜C8)基または−CO−アリール−(C5〜C10)基から選択され、この場合これらの基は、基−CN、−COOH、−COO−アルキル−(C1〜C8)、−CO−アルキル−(C1〜C8)、−アリール−(C5〜C10)、−COO−アリール−(C6〜C10)、−CO−アリール−(C6〜C10)、−O−アルキル−(C1〜C8)、−O−CO−アルキル−(C1〜C8)、−N−アルキル2−(C1〜C8)、−CHO、−SO3H、−NH2、−F、−Cl、−OH、ーCF3、−NO2から選択された置換基を含有していてよく、この場合基R1aおよびR1bは、共有結合により互いに結合されていてよい〕で示される化合物を、アレン系不飽和化合物ならびに100質量ppmを上廻るアセチレン系不飽和化合物を有する1,3−ブタジエン含有炭化水素流から、その際に、第1の処理工程でアセチレン系不飽和化合物を除去し、第2の処理工程で1,3−ブタジエンを金属化合物の存在下で求核性試薬(活性水素含有化合物の求核性試薬、テロゲン)と反応させること(テロ重合工程)により、製造するための本発明による方法は、第1の処理工程で得られかつエダクトして第2の処理工程で使用される炭化水素流が100質量ppm以下のアセチレン系不飽和化合物の含量およびアレン系不飽和化合物の元来の含量の少なくとも75%(相対的)であるアレン系不飽和化合物の含量を有することによって特徴付けられる。
【0022】
本発明による方法によれば、殊にIIaまたはIIb
【化3】

で示される化合物は、1,3−ブタジエンと式III、IVまたはV
1a−O−H (III) (R1a)(R1b)N−H (IV) R1a−COOH (V)
〔式中、R1aおよびR1bは、上記の意味を有する〕で示される求核性試薬との反応によって製造されてよい。
【0023】
特に好ましくは、本発明による方法によれば、XがOR1aまたはNR1a1bを表わし、但し、この場合R1aは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、第三ブチル、n−ブチル、第二ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−メチルフェニル、o−メチルフェニルまたはp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルメチルフェニル、ヒドロジェンカルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニルまたはフェニルカルボニルでありおよび/または
1bが、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、第三ブチル、n−ブチル、第二ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−メチルフェニル、o−メチルフェニルまたはp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルメチルフェニル、ヒドロジェンカルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニルまたはフェニルカルボニルであるような式Iの化合物が製造される。殊に好ましくは、本発明による方法により、R1aが水素、メチル、エチル、フェニルまたはメチルカルボニルである式IIaの化合物が製造される。式IIaおよびIIbの化合物は、シス形で存在していてもよいし、トランス形で存在していてもよい。
【0024】
本発明による方法のための出発物質は、なかんずくアレン系不飽和化合物を100質量ppmを上廻るアセチレン系不飽和化合物の含量と一緒に含有する、1,3−ブタジエンに富んだ炭化水素流である。炭化水素流としては、殊にC4炭化水素留分が使用されてよい。炭化水素流は、特に例えば1,3−ブタジエンと別のC4炭化水素およびC3炭化水素またはC5炭化水素との混合物であってよい。このような混合物は、例えばエチレンおよびプロピレンを生産するための分解(クラック)法で生じ、この場合には、精油所ガス、ナフサ、ガス油、LPG(液化石油ガス)、NGL(天然ガス液)等が反応される。前記処理の際に副生成物として生じるC4留分は、1,3−ブタジエンと共に、モノオレフィン(1−ブテン、シス−ブト−2−エン、トランス−ブト−2−エン、イソブテン)、飽和炭化水素(n−ブタン、イソブタン)、アセチレン系不飽和化合物(エチルアセチレン(ブチン)、ビニルアセチレン(ブテニン)、メチルアセチレン(プロピン))ならびにアレン系不飽和化合物(主に,2−ブタジエン)を含有していてよい。更に、この留分は、微少量のC3炭化水素およびC5炭化水素を含有していてよい。C4留分の組成は、それぞれの分解法、作業パラメーターおよび使用物質に依存する。個々の成分の濃度は、典型的には次の範囲内にある:
【表1】

【0025】
本発明による方法において、好ましくは、35質量%の1,3−ブタジエン含量を有する炭化水素混合物が使用される。
【0026】
使用炭化水素は、しばしば本発明による方法で支障を来しうる酸素化合物、窒素化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、殊に塩素化合物および重金属化合物の痕跡を有しうる。従って、前記物質を最初に分離することは、有利である。支障を来す化合物は、例えば安定剤、例えば第三ブチルブレンツカテキン(TBC)、または二酸化炭素またはカルボニル、例えばアセトンまたはアセトアルデヒドであることができる。
【0027】
この不純物は、例えば殊に水または水溶液での洗浄によって分離することができるかまたは吸着器を介して分離することができる。
【0028】
親水性成分、例えば窒素成分は、水洗浄によって炭化水素混合物から全部または一部分が除去されうる。窒素成分の例は、アセトニトリルまたはN−メチルピロリドン(NMP)である。また、酸素化合物は、一部分が水洗浄により除去されうる。水洗浄は、直接に水で実施されてもよいし、例えば塩、例えばNaHSO3を有することができる水溶液で実施されてもよい(米国特許第3682779号明細書、米国特許第3308201号明細書、米国特許第4125568号明細書、米国特許第3336414号明細書または米国特許第5122236号明細書)。
【0029】
炭化水素混合物が水洗浄後に乾燥工程を進行することは、好ましい。乾燥は、公知技術水準で公知の方法により実施されることができる。溶解された水が存在する場合には、乾燥は、例えば乾燥剤としてのモレキュラーシーブを使用しながら実施されてもよいし、共沸蒸留によって実施されてもよい。自由水は、例えばコアレッサーでの相分離によって分離されてよい。
【0030】
吸着器は、痕跡範囲内で不純物を除去するために使用されてよい。従って、これは、例えば第2の処理工程で既に明らかに活性を減少させながら不純物の痕跡上で反応する貴金属触媒が使用されるので好ましい。しばしば、窒素又は硫黄化合物、しかもTBCも前接続された吸着装置により除去される。吸着剤の例は、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、活性炭、または金属で含浸された粘土である(例えば、米国特許第4571445号明細書またはWO 02/53685)。吸着剤は、多種多様な企業、例えばAlcoa社からSelexsorb(登録商標)の名称で販売されているか、或いはUOP社またはAxens社から、例えば製品シリーズSAS, MS, AA, TG, TGS またはCMGで販売されている。最初に精製されていてよい炭化水素流から、本発明による方法において、第1の工程で炭化水素流がテロ重合工程で使用される前に、アセチレン系不飽和化合物は、100質量ppm以下、有利に50質量ppm以下、特に有利に20質量ppm以下の含量になるまで分離されるかまたは除去される。分離/除去は、例えばアセチレン系不飽和化合物を抽出または水素化することによって行なうことができる。場合によっては存在するメチルアセチレンは、蒸留により除去されてもよい。
【0031】
抽出によるアセチレン系化合物の分離は、長い間、公知であり、後処理工程として、1,3−ブタジエンをクラックC4から取得する大抵の装置の一体型の構成成分である。アセチレン系不飽和化合物をクラックC4から抽出により分離するための方法は、例えばErdoel und Kohle-Erdgas-Petrochemie vereinigt mit Brennstoffchemie 第34巻, 第8号, 1981年8月, 第343〜346頁中に記載されている。前記方法の場合、第1の工程で含水NMPでの抽出蒸留によって、ポリ不飽和炭化水素ならびにアセチレン系不飽和化合物は、モノオレフィンおよび飽和炭化水素と分離される。NMP抽出物から、不飽和炭化水素は、蒸留により分離され、炭化水素留出物から含水NMPでの第2の抽出蒸留によって、4C原子を有するアセチレン系不飽和化合物は、分離される。クラックC4を後処理する場合には、2つの他の蒸留によって、純粋な1,3−ブタジエンは分離され、この場合には、副生成物として、メチルアセチレンおよび,2−ブタジエンが生じる。本発明による方法の範囲内で、本明細書中に記載された多工程法は、第1の処理工程として同様に実施されることができ、この場合には、1,2−ブタジエンの蒸留による分離は、省略される。
【0032】
場合によっては、1,3−ブタジエン含有の流れからのアセチレン系化合物の分離は、例えば抽出剤としての1つ以上のイオン性液体を使用しながら行なうことができる。
【0033】
抽出によって前記の第1の処理工程得られた、1,2−ブタジエンおよびアセチレン系化合物100質量ppm未満を含有する、1,3−ブタジエンを有する炭化水素流は、直接にかまたは後処理後に、有利には直接にエダクトとして第2の処理工程で使用されることができる。
【0034】
特に、使用された炭化水素流からのアセチレン系不飽和化合物の除去は、アセチレン系不飽和化合物を水素化することによって行なわれる。収量の損失、なかんずく1,3−ブタジエンおよび1,2−ブタジエンの収量の損失を回避させるために、水素化法は、極めて選択的でなければならず、即ち線状ブテンへの1,3−ブタジエンまたは,2−ブタジエンの水素化およびブタンへのブテンの水素化は、できるだけ十分に回避されなければならない。アセチレン系化合物をジエンおよびモノオレフィンの存在下で選択的に水素化するためには、例えば銅含有触媒を使用することができる。同様に、元素の周期律表の第VIII副族の貴金属、殊にパラジウムを有する触媒または混合触媒が使用されてよい。特に有利には、銅含有触媒またはパラジウムならびに銅を有する触媒が使用される。
【0035】
選択的な水素化のための方法は、一工程または多工程で実施されてよい。水素化が多工程でかまたは多数の順次に接続された反応器中で実施される場合には、反応器中に異なる触媒を使用することができる(欧州特許第0273900号明細書)。更に、適当な二工程での水素化法は、米国特許第4277313号明細書にも記載されており、この場合、アセチレン系不飽和化合物を有する流れの選択的な水素化には、1,3−ブタジエンを分離するための引続く抽出蒸留が続く。
【0036】
触媒活性および触媒の選択性には、付加的に例えば米国特許第4587369号明細書、米国特許第6194626号明細書および米国特許第6271428号明細書中で使用されているような適当な溶剤/溶媒を添加することによって影響が及ぼされる。更に、水素化は、反応蒸留部中または外部にある反応器を備えた蒸留部中でも実施されることができる。一般に、水素化は、液相中または気相中で実施されることができる。
【0037】
第1の処理工程としての選択的な水素化は、特に0.1〜7MPa、有利に0.3〜5MPaの圧力で実施されることができる。温度は、特に20〜250℃、有利に20〜150℃、特に有利に30〜80℃である(例えば、米国特許第4440956号明細書、米国特許第4126645号明細書および米国特許第6417419号明細書)。水素化を液相中で実施する場合には、水素が完全に溶解して存在し、したがってホットスポッツ(Hot Spots)、ひいては非選択的な水素化の発生が回避されることに注目することは、重要である(米国特許第3912789号明細書)。
【0038】
第1の処理工程の好ましい実施態様において、水素化は、液相中で銅含有触媒に接して実施される。第1の処理工程として実施されることができる水素化のための方法は、例えば米国特許第3912789号明細書および米国特許第6417419号明細書中に記載されている。触媒および選択的な水素化を実施することができるような処理条件に関する正確な詳細は、米国特許第3912789号明細書の記載から確認することができ、この場合この刊行物は、参考のために記載されている。前記方法を本発明による方法の第1の処理工程として使用する場合には、使用炭化水素混合物の組成に応じて、第1の処理工程からの生成物は、高い含量のアレン系不飽和化合物をエダクトして有することができる。即ち、米国特許第3912789号明細書に記載の第1の処理工程を実施することは、アレン系不飽和化合物、殊に1,2−ブタジエンが水素化の際に除去されないだけでなく、前記化合物の含量が生成物流中の元来の炭化水素流の組成に応じてむしろ上昇されうるという利点を有する。
【0039】
従って、本発明による方法の第1の処理工程は、有利に本質的に微粒状の金属銅と10m2/gを上廻る表面積を有するγ−酸化アルミニウム上に支持された微少量の多価活性剤金属との混合物からなる触媒の存在下で実施され、この場合この触媒は、Na2O0.1〜1.5質量%を有する。活性剤金属としては、触媒、例えば銀、白金、パラジウム、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムおよび/またはモリブデンを有することができる。触媒は、活性が弱まった場合には、簡単に、例えば米国特許第3912789号明細書の記載と同様に、例えば触媒を最初に酸素含有ガスと接触させ(焼入し)、引続き酸化された触媒を水素で還元することによって再生させることができる。好ましくは、第1の処理工程は、少なくとも2つの水素化反応器を有し、したがって触媒の再生の場合には、全処理をさらに運転させることができる。
【0040】
第1の処理工程それ自体は、例えば触媒を反応器の反応帯域中に装入し、次にこの反応帯域に炭化水素流を貫流するようにして実施することができる。反応は、10〜150℃、有利に50〜100℃の温度で実施されうる。反応は、それぞれの圧力で実施されることができ、この場合には、特に処理流が均一な液状相中に存在するような圧力が選択される。通常、第1の処理工程は、過圧で実施される。特に、反応は、1013〜2026MPaの圧力で実施される。
【0041】
数体積%までのアセチレン系不飽和化合物を有する、オレフィン系不飽和化合物を有する炭化水素流は、本発明による第1の処理工程の前記実施により、選択的に水素化されうる。特に良好な結果は、0.2体積%以下のアセチレン系不飽和化合物が炭化水素流中に存在する場合に達成される。このような条件下で、炭化水素流は、触媒床の体積に対して1〜5 l*(l*h)-1の速度で触媒床に導通させることができる。更に、詳細は、再度米国特許第3912789号明細書の記載から確認することができる。
【0042】
水素とアセチレン系結合とのモル比は、特に少なくとも1である。特に有利には、第1の処理工程は、水素のモル過剰量で実施される。好ましくは、本発明による方法の第1の処理工程は、1〜2の水素対アセチレン系不飽和化合物のモル比で実施される。
【0043】
選択的な水素化の第1の処理工程は、例えば米国特許第6417419号明細書の記載により実施されてもよい。前記方法の場合にも、銅含有触媒が使用される。本発明による第1の処理工程の前記実施態様の場合、選択的な水素化は、有利に20〜80℃の温度で、有利に1.5〜5.0MPaの圧力および0.5〜10の範囲内の負荷(LHSV)で実施される。特に、選択的な水素化は、水素対アセチレンの比が1〜5であるように多量の水素を添加しながら実施される。
【0044】
更に、アセチレン系不飽和化合物を選択的に水素化するために第1の処理工程として使用可能な方法は、例えば欧州特許第1070695号明細書、米国特許第6225515号明細書、米国特許第6015933号明細書および米国特許第6194626号明細書、殊に米国特許第6040489号明細書に記載されており、これらの刊行物は、本発明の開示内容に属する。前記方法の場合、1,3−ブタジエンを有する流れは、水素および溶剤と一緒に、触媒を有する触媒抽出蒸留ユニット中に導入され、この場合この触媒は、アセチレン系不飽和化合物の水素化に適している。溶剤中に僅かに良好に溶解されているブタンおよびブテンは、塔頂流として留去され、蒸留ユニットから除去される。溶剤中に良好に溶解されているブタジエンおよびアセチレンは、溶剤と一緒に、触媒抽出蒸留ユニット中に存在する反応帯域に運ばれる。反応帯域中でアセチレンは、水素化生成物に変換される。ブタジエンではない水素化生成物は、前記ユニット中で行なわれる抽出蒸留によってブタジエンと分離される。溶剤およびブタジエンを有する流れは、前記ユニットから抽出流として除去され、ストリッパー塔に供給され、このストリッパー塔中で溶剤は、ブタジエンと分離される。更に、1,2−ブタジエンと1,3−ブタジエンへのブタジエンの蒸留による分離は、行なわれない。
【0045】
触媒としては、前記方法(米国特許第6040489号明細書)で殊に上記の保護権利で使用される触媒、殊に触媒組成物は、銅、元素の周期律表の第VIII副族の1つ以上の金属またはその混合物を無機酸化物担持材料と一緒に有することができる。前記材料と共に、他の活性剤金属は、存在していてよい。好ましい触媒は、1つの組成を有し、この組成は、アルミニウム支持体上の銀、白金、パラジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンの群からの1つ以上の金属で活性化された銅を有する。特に好ましい触媒は、1つの組成を有し、この組成は、γ−酸化アルミニウム上、殊に150〜250m2/gのBET表面積を有する酸化アルミニウム上に分散された銅、ニッケル、マンガンおよびコバルトを有する。
【0046】
選択的な水素化は、特に1〜5の水素対アセチレンのモル比、有利に1〜3の比、特に有利に2までの比で実施される。反応帯域は、前記方法の場合には、特に30〜100℃、有利に32〜83℃、特に有利に約50〜約80℃の温度で実施される。この場合、温度は、作業圧力に依存し、この作業圧力は、触媒抽出蒸留ユニット中で、特に0.1379MPa〜1.379MPa、有利に0.1379MPa〜3.447MPaである。前記の抽出蒸留ユニット中の別の位置、殊に前記ユニットの頭部での温度は、150℃までかまたはそれ以上を達成することができる。
【0047】
溶剤は、飽和炭化水素に対する親和力よりも高い不飽和炭化水素の対する親和力を有するように選択される。適当な溶剤は、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、フルフラール、N−メチルピロリドン、ホルミルモルホリン、ヘキサンおよびアセトニトリルである。
【0048】
ストリッパー塔は、特に約0.1034〜約0.3447MPaの圧力および約30〜約200℃の温度で運転される。ブタジエンは、塔頂部生成物として得ることができる。溶剤を有する塔底留分は、場合によっては実施される後処理後に触媒抽出蒸留ユニット中に返送されることができる。
【0049】
更に、詳細または第1の処理工程として使用される前記方法に対する変法は、米国特許第6040489号明細書の記載から確認することができる。
【0050】
更に、類似した水素化法法およびそのパラメーターは、欧州特許第1070695号明細書、米国特許第6225515号明細書、米国特許第6015933号明細書および米国特許第6194626号明細書の記載から確認することができ、この場合には、米国特許第6417419号明細書から、殊に触媒の組成についてのさらなる詳細を確認することができる。
【0051】
記載された水素化条件の場合には、銅触媒は、活性を失い、規則的に再生されなければならないことは、公知である。再生のためには、種々の方法が刊行物中に記載されており(米国特許第3912789号明細書、米国特許第6225515号明細書および米国特許第6194626号明細書)、この場合には、殊に2つの反応器を交互に使用することが記載されている。従って、第1の処理工程は、少なくとも2つの水素化反応器を有し、したがって触媒の再生の場合には、全処理をさらに運転させることができる。欧州特許第1070695号明細書および米国特許第6225515号明細書中に記載されているように、再生は、再生されるべき触媒を含む反応器が触媒再生条件で水素および溶剤と接触されることによって行なうことができる。この場合、温度は、32〜260℃であり、圧力は、1034〜3447MPaであり、溶剤のLHSVは、0.5〜10h-1である。その上、相次ぐ再生の間の時間は、水素化中に炭化水素流と溶剤とを同時に計量供給することによって延長することができる(欧州特許第1070695号明細書、米国特許第6271428号明細書および米国特許第6194626号明細書)。触媒は、再生のために高められた温度でも酸化剤で処理されてよく、この場合には、酸化剤として有利に酸素、殊に空気酸素が使用される。触媒の前記再生(焼入れ)は、銅触媒のために米国特許第3912789号明細書および米国特許第3897511号明細書中に記載されており、パラジウム触媒のために米国特許第4551443号明細書中に記載されている。
【0052】
第1の処理工程は、反応器中または多数の反応器中で実施されてよく、この場合これらの反応器は、一列にかまたは平行に接続されていてよい。本発明による方法の第1の処理工程で平行にか、一列にかまたは組み合わせて運転される多数の反応器または反応器床を使用する場合には、水素の供給は、それぞれの反応器/反応器床で1つ以上の供給点で行なうことができる(米国特許第4704492号明細書、米国特許第4126645号明細書、米国特許第4704492号明細書または米国特許第6417419号明細書)。種々の供給点への全水素量の分配は、水素化の高められた選択性を生じることができる。この概念は、例えば刊行物の米国特許第4704492号明細書の対象であり、この場合この刊行物は、本発明の開示内容のために挙げられている。
【0053】
第1の処理工程で反応しなかった水素は、公知方法による工程後に全部または一部分が分離されてもよいし、C4炭化水素と一緒に第2の処理工程に供給されてもよい。水素の分離は、例えばガス発生容器中で行なうことができるかまたは排ガス流として蒸留の範囲内で行なうことができる。
【0054】
1,3−ブタジエンおよび1,2−ブタジエンの損失を極めて僅かになるように維持するために、アセチレン系不飽和化合物は、特に完全には水素化されない。この理由から、第1の処理工程から得られる炭化水素流は、特にアセチレン系不飽和化合物0〜1質量ppm、有利に少なくとも0.1質量ppm、特に有利に少なくとも0.5質量ppmを含有する。水素化の程度は、処理パラメーター、例えば触媒の選択、反応器中での反応混合物の滞留時間、反応温度、および使用される水素の量および/または圧力を適当に選択することによって調節されることができ、この場合適当なパラメーターは、簡単な予備試験によって算出することができる。
【0055】
第1の処理工程から得られる炭化水素流中でのアレン系不飽和化合物(例えば、1,2−ブタジエン)の含量は、使用物質に依存して、例えば0.05〜2質量%の範囲内にあってよい。第1の処理工程で得られる炭化水素流中でのアレン系不飽和化合物(例えば、1,2−ブタジエン)の含量は、特にアレン系不飽和化合物の元来の含量の少なくとも80%(相対的)、有利に少なくとも85%(相対的)、特に有利に少なくとも90%(相対的)、殊に有利に少なくとも95%(相対的)である。
【0056】
1,3−ブタジエン含量は、出発炭化水素流中での濃度に依存して入口濃度の範囲内にある。1,3−ブタジエンへのブテニンへの水素化によって、1,3−ブタジエン含量は、存在するブテニン量に相応して高めることができる。同時に、1,3−ブタジエンの僅かな部分は、水素化によって失われてもよいし、副反応で、例えば高沸点物(緑油)へ変換されてもよい。特許保護が請求された方法において、ブタジエン含量は、第1の処理工程後に特に第1の処理工程の1,3−ブタジエン入口濃度を最大で10%(絶対)上廻り、最小で10%(絶対)下廻る範囲内、有利に第1の処理工程の1,3−ブタジエン入口濃度を5%(絶対)上廻り、5%(絶対)下廻る範囲内にある。
【0057】
水素化搬出物は、水素化中に生成された、微少量の高沸点物(緑油)を含有することができる。第1の処理工程の水素化搬出物として得られる炭化水素流からの高沸点物を第2の処理工程(テロ重合)への供給前に分離することは、好ましい。高沸点物は、例えば4または5個を上廻る炭素原子を有する化合物からなることができ、この場合処理中に生成される化合物(緑油)は、主に5個を上廻る炭素原子を有する。5個の炭素原子を有する成分は、主に原料の不純物として処理中に導入されるが、しかし、選択的に緑油の分離部の範囲内で一緒に分離されてもよいし、全部または一部分がC4流れ中に残留されてもよい。高沸点物は、テロ重合前に、例えば蒸留によって分離されることができる。特に、水素化搬出物、即ち第1の処理工程の処理生成物は、直接に、即ち高沸点物の分離なしに、エダクトとして第2の処理工程(テロ重合)で使用される。
【0058】
場合によっては、別の源からの1,3−ブタジエン流は、第1の処理工程からの搬出物と混合されてよく、この混合物は、テロ重合に使用されることができ、この場合テロ重合に供給される、全体流中でのアセチレン系不飽和化合物の濃度は、100ppm以下である。これは、1,3−ブタジエンが抽出蒸留によって取得されるようなブタジエン装置中で生じる流れであることができる。
【0059】
既に上記されたように、テロ重合工程に供給される炭化水素混合物は、有利に50質量ppm以下、特に有利に20質量ppmのアセチレン系不飽和化合物含量を有する。
【0060】
本発明による方法においてテロ重合工程で第1の処理工程からの炭化水素流と共に使用される求核性試薬は、有利に式III、IVおよびV
【化4】

〔式中、R1aおよびR1bは、互いに独立に水素、線状、分枝鎖状または環状のC1〜C22アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C5〜C18アリール基または−CO−アルキル−(C1〜C8)基または−CO−アリール−(C5〜C10)基から選択され、この場合これらの基は、基−CN、−COOH、−COO−アルキル−(C1〜C8)、−CO−アルキル−(C1〜C8)、−アリール−(C5〜C10)、−COO−アリール−(C6〜C10)、−CO−アリール−(C6〜C10)、−O−アルキル−(C1〜C8)、−O−CO−アルキル−(C1〜C8)、−N−アルキル2−(C1〜C8)、−CHO、−SO3H、−NH2、−F、−Cl、−OH、−CF3、−NO2から選択された置換基を含有していてよく、この場合基R1aおよびR1bは、共有結合により互いに結合されていてよい〕で示される化合物である。特に有利には、求核性試薬として、R1aおよびR1bが、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、第三ブチル、n−ブチル、第二ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−メチルフェニル、o−メチルフェニルまたはp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルメチルフェニル、ヒドロジェンカルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニルまたはフェニルカルボニルであるような化合物が使用される。
【0061】
特に、この化合物は次の通りである:
水、アンモニア、
モノアルコールおよびフェノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールまたは2,7−オクタジエン−1−オール、フェノール、
ジアルコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールおよび1,3−ブタンジオール、
ヒドロキシ化合物、例えばα−ヒドロキシ酢酸エステル、
第1アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、2,7−オクタジエニルアミン、ドデシルアミン、エチレンジアミンまたはヘキサンメチレンジアミン、
第2アミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルアニリン、ビス(2,7−オクタジエニル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンまたはヘキサメチレンイミンまたは
カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロパン酸、ブテン酸、イソブテン酸、安息香酸、1,2−ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)。
【0062】
特に好ましくは、求核性試薬としてテロ重合工程において、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、オクテノール、オクタジエノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、イソノナノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、n−ブタン酸、イソブタン酸、安息香酸、フタル酸、フェノール、ジメチルアミン、メチルアミン、アンモニアおよび/または水が使用される。好ましくは、求核性試薬としてメタノールが使用される。
【0063】
求核性試薬は、テロ重合反応により得ることができるとしても、直接に使用されてもよいし、原位置で形成されてもよい。即ち、例えば2,7−オクタジエン−1−オールは、水およびブタジエンからテロ重合触媒の存在で原位置で形成されることができ、2,7−オクタジエニルアミンは、アンモニアおよび1,3−ブタジエンから同様に形成されることができ、他の場合も可能である。
【0064】
テロ重合反応での求核性試薬対1,3−ブタジエンの比のためには、テロゲン中の活性水素原子の数を配慮することができる。即ち、例えばメタノールは、1個の活性水素原子を有し、エチレングリコールは、2個の活性水素原子を有し、メチルアミンは、2個の活性水素原子を有し、他の場合も同様である。
【0065】
1,3−ブタジエンと反応することができる求核性試薬の活性水素原子1モル当たり、テロ重合反応において、1,3−ブタジエン0.001モル〜10モルが使用される。液相での反応の実施の場合には、活性水素1モル当たり1,3−ブタジエン0.1モル〜2モルの割合が特に有利である。
【0066】
テロ重合のための触媒としては、金属のパラジウム(Pd)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)または白金(Pt)の錯体、殊に金属カルベン錯体が使用される。好ましくは、パラジウム化合物、殊にパラジウムカルベン錯体がテロ重合工程での触媒として使用される。
【0067】
触媒として使用される金属錯体中の配位子は、例えば三価の燐化合物またはカルベンである。好ましくは、ヘテロ原子によって安定化された少なくとも1つのカルベンを配位子として有する金属錯体が触媒として使用される。この種の配位子の例は、なかんずく刊行物のドイツ連邦共和国特許第10128144号明細書、ドイツ連邦共和国特許第10149348号明細書、ドイツ連邦共和国特許第10148722号明細書、ドイツ連邦共和国特許第10062577号明細書、欧州特許第1308157号明細書およびWO 01/66248中に記載されている。前記の刊行物および殊に前記の刊行物に記載された配位子は、本発明の開示内容に属する。更に、活性の錯体は、なお他の配位子を有することができる。
【0068】
適当なカルベン配位子は、殊に構造式VI〜IX
【化5】

を有する化合物である:
基R2〜R7は、構造式VI〜IX中で次の意味を有する:
2、R3:同一かまたは異なるa)線状、分枝鎖状の置換されたかまたは置換されていない、1〜24個の炭素原子を有する環状または脂環状のアルキル基、
またはb)置換されたかまたは置換されていない、6〜24個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール基、
またはc)置換されたかまたは置換されていない、4〜24個の炭素原子および基N、O、Sからの少なくとも1つのヘテロ原子を有する単環式または多環式複素環、
4、R5、R6、R7:同一かまたは異なる水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール−、−CHO−、−CO−アルキル、−CO−アリール、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32、この場合アルキル基は、1〜24個の炭素原子を含み、アリール基およびヘテロアリール基は、5〜24個の炭素原子を含み、基R4およびR5は、橋かけ脂肪族または芳香族の環の一部分であってもよい。
【0069】
2およびR3は、殊に
1〜24個の炭素原子を有する線状、分枝鎖状の環状または脂環状アルキル基、
6〜24個の炭素原子を有する単環式または多環式アリール基または
元素の窒素、酸素および硫黄から選択された少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環式または多環式の環を表わし、
前記環は、場合によっては−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール−、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−アリール−、−アルキル−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32の群から選択された他の置換基を有する。置換基の基アルキルは、1〜24個の炭素原子を有し、置換基の基アリールは、5〜24個の炭素原子を有する。
【0070】
基R4、R5、R6および/またはR7は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、−H、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール−、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−アリール、−アルキル、−アルケニル、−アリル、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32の群からの少なくとも1つの置換基を有し、この場合アルキル基は、1〜24個、有利に1〜20個の炭素原子を有していてよく、アルケニル基は、2〜24個の炭素原子を有していてよく、アリル基は、3〜24個の炭素原子を有していてよく、単環式または多環式アリール基は、5〜24個の炭素原子を有していてよい。
【0071】
基R4〜R6は、例えば(CH2)−または(CH)−基により互いに共有結合されていてよい。
【0072】
酸性の水素原子を有する置換基は、プロトンの位置に金属イオンまたはアンモニウムイオンを有していてもよい。
【0073】
基R2およびR3は、なかんずく少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環式または多環式環を表わす。これらは、例えば5員および6員のヘテロアルカン、ヘテロアルケンおよびヘテロ芳香族化合物、例えば1,4−ジオキサン、モルホリン、γ−ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾールおよびオキサゾールに由来する基である。次表中には、この種の基R2およびR3の具体的な例が記載されている。この中には、それぞれ5環の複素環への結合点が示されている。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
特に好ましくは、基R2およびR3は、置換されたかまたは置換されていないフェニル基、例えば2,4,6−トリメチルフェニルまたは2,6−ジイソプロピルフェニルを表わす。特に好ましくは、基R4、R5、R6およびR7は、水素、メチル、FまたはClを表わす。
【0077】
金属カルベン錯体それ自体は、テロ重合反応に使用されてもよいし、原位置で前記反応中に形成されてもよい。前記反応混合物中で触媒を製造する場合には、多くの場合に、相応する構造の第四級アンモニウム塩は、塩基と反応され、カルベンに変わり、その際に少なくとも部分量は、溶液中に存在する金属に配位結合される。
【0078】
テロ重合反応のための溶剤としては、一般に装入される求核性試薬が反応条件で液体として存在する場合に、装入される求核性試薬が使用される。しかし、別の溶剤使用されてもよい。この場合、装入される溶剤は、十分に不活性である。反応条件下で固体として存在する求核性試薬を使用する場合または反応条件下で固体として生じた生成物の場合、溶剤を添加することは、好ましい。適当な溶剤は、なかんずく脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素および芳香族炭化水素、例えばC3〜C20−アルカン、低級アルカン(C3〜C20)の混合物、シクロヘキサン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、アルケンおよびポリエン、ビニルシクロヘキセン、1,3,7−オクタトリエン、クラックC4留分からのC4炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレン;極性溶剤、例えば第3アルコールおよび第2アルコール、アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド、ニトリル、例えばアセトニトリルおよびベンゾニトリル、ケトン、例えばアセトン、メチルイソブチルケトンおよびジエチルケトン;カルボン酸エステル、例えば酢酸エチルエステル、エーテル、例えばジプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、メチルオクチルエーテル、メチル第三ブチルエーテル、エチル第三ブチルエーテル、3−メトキシオクタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびポリプロピレングリコールのアルキルエーテルおよびアリールエーテル、および別の極性溶剤、例えばスルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよび水である。また、イオン性液体、例えばイミダゾリウム塩またはピリジニウム塩は、溶剤として使用されてよい。溶剤は、単独で使用されてもよいし、種々の溶剤の混合物として使用されてもよい。
【0079】
テロ重合反応が実施される温度は、特に10〜180℃の範囲内、有利に30〜120℃の範囲内、特に有利に40〜100℃の範囲内にある。反応圧力は、特に1〜300バール、有利に1〜120バール、特に有利に1〜64バール、殊に有利に1〜20バールである。
【0080】
全質量に対して触媒金属のppm(質量)で形式的に記載された触媒の濃度は、0.01ppm〜1000ppm、有利に0.5〜100ppm、特に有利に1〜50ppmである。
【0081】
カルベン対金属の比[モル/モル]は、特に0.01:1〜250:1、有利に1:1〜100:1、特に有利に1:1〜50:1である。カルベン配位子と共に、なお他の配位子、例えば燐配位子、例えばトリフェニルホスフィンは、反応混合物中に存在していてよい。
【0082】
しばしば、テロ重合反応を塩基の存在下で実施することは、好ましい。有利には、7未満のpKb値を有する塩基性成分、殊にアミン、アルコラート、フェノラート、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩の群から選択された化合物が使用される。
【0083】
塩基性成分としては、例えば脂環式および/または開鎖状であってよいアミン、例えばトリアルキルアミン、アミド、脂肪族カルボン酸および/または芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩、例えばアセテート、プロピオネート、ベンゾエートまたは相応するカーボネート、炭酸水素塩、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素のアルコラート、有利にリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、セシウムのホスフェート、燐酸水素塩および/または水酸化物、アンモニウム化合物およびホスホニウム化合物が適している。添加剤として、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素の水酸化物、ならびに一般式III、IVまたはVによる求核性試薬の金属塩は、好ましい。
【0084】
有利には、0.01モル%〜10モル%(オレフィンに対して)、有利に0.1モル%〜5モル%、殊に有利に0.2モル%〜1モル%の塩基性成分が使用される。
【0085】
テロ重合は、連続的または非連続的に作業されてよく、一定の反応器型の使用に限定されるものではない。反応が実施されうる反応器の例は、攪拌釜型反応器、攪拌釜型カスケード、流動管およびループ型反応器である。種々の反応器の組合せ、例えば後接続された流動管を備えた攪拌釜型反応器も可能である。
【0086】
テロ重合は、高い空時収量を得るために、1,3−ブタジエンが完全に反応されるまでは実施されない。変換率を最大95%、有利に88%に制限することは、好ましい。
【0087】
第2の処理工程からの搬出物は、例えば主にテロ重合生成物、副生成物、"不活性のC4炭化水素"、1,3−ブタジエンの残留量、求核性試薬の残留量および触媒系(触媒金属、配位子、塩基等)またはその連続生成物および場合によっては添加された溶剤から形成されていてよい。また、1,2−ブタジエンは、この搬出物中に存在する。
【0088】
テロ重合の搬出物中に存在するアレン、殊に,2−ブタジエンは、例えば蒸留によってテロ重合搬出物から分離されてよい。
【0089】
しかし、第2の処理工程の搬出物は、一般に公知の工業的方法、例えば蒸留または抽出により分離されてもよい。例えば、次の留分への蒸留による分離を行なうことができる:
n−ブタン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエンおよび場合によっては全部かまたは部分的に求核性試薬を含有するC4留分、
目的生成物(2,7−オクタジエニル誘導体)を有する留分、
副生成物を有する留分および/または
触媒を有する留分および
場合によっては求核性試薬を有する留分および/または
場合によっては溶剤留分。
【0090】
求核性試薬を有する留分、溶剤を有する留分ならびに触媒を有する留分は、それぞれ全部または一部分が第2の処理工程に返送されてもよいし、後処理に供給されてもよい。
【0091】
式Iの目的生成物は、それ自体として使用されるかまたは別の物質のための前駆体として使用される。例えば、目的生成物の1−メトキシオクタジ−2,7−エンから2個の二重結合の水素化および引続くメタノール分離によって、1−オクテンは、製造されることができる。
【0092】
1つの好ましい実施態様において、本方法は、第2の処理工程の残留搬出物のC4留分を分離する第3の処理工程を含む。この場合、分離の際に得られた、C4炭化水素の留分は、殊に1つ以上のC4成分の求核性試薬の間で形成される場合になお求核性試薬の一部分を含有することができる。この種の共沸物を形成する求核性試薬の例は、水およびメタノールである。
【0093】
4留分は、種々の方法で後処理されることができる。一面で、1,2−ブタジエンは、最初にC4留分から、例えば蒸留および/または抽出蒸留により分離されることができ、他の使用に供給されることができる。他面、C4留分は、選択的な水素化に供給されることができ、この場合には、ジエンが除去され、即ち1,3−ブタジエンおよび1,2−ブタジエンの残基は、1−ブテンおよび2−ブテンに変換される。この種の水素化は、公知技術水準から公知であり、例えば米国特許第5475173号明細書、ドイツ連邦共和国特許第3119850号明細書およびF. Nierlich, F. Obenhaus, Erdol & Kohl, Erdgas, Petrochemie (1986) 39, 73-78中に記載されている。この水素化は、工業的に一工程ならびに多工程で実施される。好ましくは、水素化は、液相中で不均一系パラジウム担持触媒で行なわれる。C4留分中に場合によっては存在する求核性試薬は、必要に応じて、水素化前または水素化後に公知方法により分離されてよい。水中で易溶性の求核性試薬(例えば、メタノール)は、例えば水洗浄により除去されることができる。C4流の乾燥のために、なかんずく乾燥塔は、有効であることが証明された。こうして得られた、十分に1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエンおよび求核性試薬を含有しないC4炭化水素の混合物(ブタジエン含量特に5000ppm未満)は、十分に市販のラフィネートIに対応し、公知方法に相応してラフィネートIと同様にさらに加工されてもよいし、後加工されてもよい。例えば、第三ブチルアルコールの製造のために、ジイソブテン(またはイソオクタン)、メチル−第三ブチルエーテル、エチル−第三ブチルエーテル、1−ブテンまたはC4−ジオリゴマーおよびオリゴマーが使用されてよい。
【0094】
第2の処理工程で求核性試薬としてメタノールまたはエタノールを使用する場合には、求核性試薬を除去するのではなく、水素化の搬出物を直接にエーテル化に供給するオプションがもたらされ、この場合アルコールは、C4流中に含有されているイソブテンと反応し、メチル−第三ブチルエーテルまたはエチル−第三ブチルエーテルに変わる。また、この反応は、公知技術水準の方法により、多くの場合にイオン交換の触媒反応下で行なわれる。イソブテンの完全な変換のためには、場合によっては付加的なアルコールを供給しなければならない。
【0095】
次の実施例は本発明を更に詳説するが、明細書及び特許請求の範囲から生じる特許保護範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1:銅含有触媒での選択的水素化
水素化装置は、14mmの直径および2mの長さの寸法を有する注入される細流床型反応器を含み、外部に循環路を備えていた。この反応器は、電気的に加熱され、したがって反応は、断熱的に実施されることができた。触媒の体積は、0.307 lであった。触媒としては、銅−亜鉛触媒が使用された。Degussa社の型H9016のZnOペレット上のCu6%。入口温度は、30℃であり、反応器中の圧力は、水素で10バールに加圧された。C4炭化水素混合物の全供給量は、1853kgであった。選択的水素化は、英国特許第1066765号明細書の記載に関連して実施された。選択的水素化による生成物の組成は、第1表から確認することができる。4時間の試験時間後、ビニルアセチレンおよび1−ブチンの含量は、零に減少されており、1,3−ブタジエンおよび1,2−ブタジエンの含量は、本質的に変化しないことを明らかに確認することができる。
【0097】
実施例2:1,3−ブタジエン含有C4炭化水素混合物とメタノールとのテロ重合
テロ重合に対する一般的な作業方法
100mlの揺動型管中で、保護ガス下にパラジウムアセチルアセトネート55.9mg(0.18ミリモル)および1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウム−o−クレソラート(kresolat)−o−クレゾール0.393g(0.75ミリモル)をメタノール50g(1.56モル)中に溶解した。Buechi社の3リットルのオートクレーブ中で、水浴中で40℃に昇温されたo−クレゾール6.72g(0.06モル)およびナトリウムメタノラート3.47g(0.06モル)をメタノール115g(3.59g)およびトリプロピレングリコール100g(0.52モル)中に溶解した。引続き、ガス圧ノズルを用いて、C4炭化水素混合物550gをオートクレーブ中に圧入した(C4貯蔵瓶中での質量損失による量測定)。このオートクレーブを撹拌下に反応温度に昇温させ、パラジウム含有溶液をオートクレーブ内容物に添加し、反応をオンラインガスクロマトグラフィーにより追跡した。反応時間は、14時間であった。
【0098】
GC分析:
GC(第1のカラム:DB-WAX/Al2O3、第2のカラム:DB-Wax/HP-5MS;初期温度:50℃、最大温度:200℃、初期時間:1分間、平衡時間:3分間;温度プログラム:15℃/分で50℃から200℃へ、進行時間:11分間;注入:220℃、一定の流れ)。tR(C4−炭化水素)=2.762分、
R(メタノール)=3.152分、tR(1,7−オクタジエン)=3.866分、tR(トランス−1,6−オクタジエン)=3.958分、tR(シス−1,6−オクタジエン)=4.030分、tR(シス−1,3,7−オクタトリエン)=4.291分、tR(トランス−1,3,7−オクタトリエン)=4.292分、tR(ビニルシクロヘキセン)=4.448分、tR(イソブタン)=4.552分、tR(n−ブタン)=4.822分、tR(3モード)=5.523分、tR(トランブテン)=6.116分、tR(1−ブテン)=6.240分、tR(イソブテン)=6.412分、tR(シス−ブテン)=6.616分、tR(1モード)=6.650分、tR(1,2−ブタジエン)=6.900分、tR(1,3−ブタジエン)=7.526分。2,7−オクタジエニル−1−メチルエーテル(=1モード)、1,7−オクタジエン−3−メチルエーテル(=3モード)。
【0099】
実施例2.1:
本発明による本実施例において、実施例1からのC4炭化水素混合物を使用した。
【0100】
実施例2.2:
本発明による本実施例において、1,3−ブタジエン43.53質量%、イソブタン1.95質量%、n−ブタン4.79質量%、トランス−ブテン4.58質量%、1−ブテン17.20質量%、イソブテン24.55質量%、シス−ブテン3.15質量%、1,2−ブタジエン0.1質量%を有する、アセチレン不含およびアレン含有のC4炭化水素混合物を使用した。
【0101】
比較例2.3:
比較例において、1,3−ブタジエン43.19質量%、イソブタン1.73質量%、n−ブタン6.86質量%、トランス−ブテン5.12質量%、1−ブテン14.80質量%、イソブテン24.56質量%、シス−ブテン3.57質量%を有する、アセチレン含有およびアレン含有のC4炭化水素混合物を使用した。
【0102】
比較例2.4:
比較例において、1,3−ブタジエン43.19質量%、イソブタン1.73質量%、n−ブタン6.86質量%、トランス−ブテン5.12質量%、1−ブテン14.80質量%、イソブテン24.56質量%、シス−ブテン3.57質量%、ビニルアセチレン0.0015質量%および1−ブチン0.0012質量%を有する、アセチレン含有およびアレン不含のC4炭化水素混合物を使用した。
【0103】
比較例2.5:
この比較例において、1,3−ブタジエン43.53質量%、イソブタン1.95質量%、n−ブタン4.79質量%、トランス−ブテン4.58質量%、1−ブテン17.20質量%、イソブテン24.55質量%、シス−ブテン3.15質量%、1,2−ブタジエン0.11量%、ビニルアセチレン0.0017質量%および1−ブチン0.0010質量%を有する、アセチレン含有およびアレン含有のC4炭化水素混合物を使用した。
【0104】
実施例2.1〜2.5の結果は、第2表から確認することができる。比較例2.3は、アレンが触媒性能に影響を及ぼさないことを示す。比較例2.4および2.5は、同様にアレンが触媒作用に対して影響を及ぼさないことを示す。触媒作用は、実際に若干遅延されて開始されるが、しかし、それにも拘わらず同様の高い選択率で100%の変換率が達成される。
【0105】
【表4】

【0106】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

〔式中、Xは、基OR1aまたはNR1a1bであり、この場合R1aおよびR1bは、互いに独立に水素、線状、分枝鎖状または環状のC1〜C22アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C5〜C18アリール基または−CO−アルキル−(C1〜C8)基または−CO−アリール−(C5〜C10)基から選択され、この場合これらの基は、基−CN、−COOH、−COO−アルキル−(C1〜C8)、−CO−アルキル−(C1〜C8)、−アリール−(C5〜C10)、−COO−アリール−(C6〜C10)、−CO−アリール−(C6〜C10)、−O−アルキル−(C1〜C8)、−O−CO−アルキル−(C1〜C8)、−N−アルキル2−(C1〜C8)、−CHO、−SO3H、−NH2、−F、−Cl、−OH、ーCF3、−NO2から選択された置換基を含有していてよく、この場合基R1aおよびR1bは、共有結合により互いに結合されていてよい〕で示される化合物を、アレン系不飽和化合物ならびに100質量ppmを上廻るアセチレン系不飽和化合物を有する、1,3−ブタジエン含有炭化水素流から、その際に第1の処理工程でアレン系不飽和化合物を除去し、第2の処理工程で1,3−ブタジエンを金属化合物の存在下で求核性試薬と反応させる(テロ重合工程)ことにより、製造する方法において、第1の処理工程で得られ、エダクトとして第2の処理工程で使用される炭化水素流が100質量ppm以下のアセチレン系不飽和化合物の含量およびアレン系不飽和化合物の元来の含量の少なくとも75%であるアレン系不飽和化合物の含量を有することを特徴とする、式Iの化合物の製造法。
【請求項2】
式IIaまたはIIb
【化2】

で示される化合物を、1,3−ブタジエンと式III、IVまたはV
1a−O−H (III) (R1a)(R1b)N−H (IV) R1a−COOH (V)
〔式中、R1aおよびR1bは、請求項1記載の意味を有する〕で示される求核性試薬との反応によって製造する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
炭化水素流としてC4炭化水素留分を使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
アセチレン系不飽和化合物を抽出によって分離する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
アセチレン系不飽和化合物を水素化によって除去する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水素化の際に銅含有触媒を使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
水素化の際にパラジウム含有触媒を使用する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
第1の処理工程の水素化搬出物として得られる炭化水素流から第2の処理工程(テロ重合)への供給前に4または5個を上廻る炭素原子を有する化合物を分離する、請求項5から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第1の処理工程の処理生成物として得られた炭化水素流を直接、エダクトとして第2の処理工程で使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1の処理工程の処理生成物として得られた炭化水素流をブタジエン装置からのブタジエン流と混合し、この混合物を第2の処理工程で使用する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
テロ重合工程に供給される炭化水素混合物中で、アセチレン系不飽和化合物の含量は、50質量ppm未満である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
テロ重合工程に供給される炭化水素混合物中で、アセチレン系不飽和化合物の含量は、20質量ppm未満である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
求核性試薬として第2の処理工程で、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、オクテノール、オクタジエノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、イソノナノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、n−ブタン酸、イソブタン酸、安息香酸、フタル酸、フェノール、ジメチルアミン、メチルアミン、アンモニアまたは水を使用する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
金属カルベン錯体をテロ重合触媒として第2の処理工程で使用する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
パラジウムカルベン錯体をテロ重合触媒として第2の処理工程で使用する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
アレン系不飽和化合物を蒸留によりテロ重合搬出物から分離する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
第2の処理工程の搬出物からC4留分を分離し、この留分からジエンを選択的水素化によって除去する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
水素化C4留分、例えばラフィネートIを後処理する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
式I中のXがOR1aまたはNR1bを表わし、この場合
1aは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、第三ブチル、n−ブチル、第二ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−メチルフェニル、o−メチルフェニルまたはp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルメチルフェニル、ヒドロジェンカルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニルまたはフェニルカルボニルであり、および
1bは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、第三ブチル、n−ブチル、第二ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−クレシル、o−クレシルまたはp−クレシル、ナフチル、2,4−ジ−第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルメチルフェニル、ヒドロジェンカルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニルまたはフェニルカルボニルである、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−511577(P2008−511577A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528842(P2007−528842)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054135
【国際公開番号】WO2006/024614
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】