説明

3−(ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−プロポキシベンゼンスルホンアミド誘導体および使用方法

本発明は、新規な3−(ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−プロポキシベンゼンスルホンアミド化合物、その誘導体、その薬理学的に許容できる塩、溶媒和物、および水和物に関する。本発明は、本発明の化合物を含む組成物、および環状グアノシン3’,5’−一リン酸特異的ホスホジエステラーゼ(cGMP特異的PDE)、特にPDE5の阻害剤の投与によって有利に治療される疾患および症状の治療方法におけるこの組成物の使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2006年10月20日に出願された米国特許仮出願第60/853,234号の利益を主張し、その内容を参照によって本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、新規な3−(ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−プロポキシベンゼンスルホンアミド化合物、その誘導体、その薬理学的に許容できる塩、溶媒和物、および水和物に関する。本発明は、本発明の化合物を含む組成物、および環状グアノシン3’,5’−一リン酸特異的ホスホジエステラーゼ(cGMP特異的PDE)、特にPDE5の阻害剤の投与によって有利に治療される疾患および症状の治療方法におけるこの組成物の使用も提供する。
【0003】
3−(1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−6,7−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−N−[2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エチル]−4−プロポキシベンゼンスルホンアミドとして、および3−(1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−3a,6,7,7a−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−N−(2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エチル)−4−プロポキシベンゼンスルホンアミドとしても、さまざまに知られるウデナフィル(Udenafil)は、環状グアノシン一リン酸特異的ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)の活性を調節する。
【0004】
ウデナフィルは、勃起不全に有効な薬剤であることが臨床的に証明されており、韓国では、インポテンスの治療のために市販することが、現在認められている。
【0005】
ウデナフィルは、ヒトの中で肝代謝を受け、主に観察される血中代謝物の生成を担うシトクロムP4503A4(CYP3A4)によるスルホンアミドのN−脱アルキル化を伴う。ラットおよびイヌでも同様であり、側鎖の水酸化およびピラゾールのN−脱アルキル化をもたらす、さらなる酸化が起こる場合もある。
【0006】
ウデナフィルに関連して報告されている副作用としては、軽度から中等度の顔面紅潮および頭痛が挙げられる。加えて、他のPDE5阻害剤は、起こり得る視覚障害と関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウデナフィルの有益な活性にもかかわらず、前述の疾患および症状を治療する新規な化合物への継続的なニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式Iの新規な3−(ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−プロポキシベンゼンスルホンアミド化合物、その誘導体、その薬理学的に許容できる塩、溶媒和、および水和物に関する。本発明は、本発明の化合物を含む組成物、および環状グアノシン3’,5’−一リン酸特異的ホスホジエステラーゼ(cGMP特異的PDE)、特にPDE5の阻害剤の投与によって有利に治療される疾患および症状の治療方法におけるこの組成物の使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(定義)
「改善する」および「治療する」という用語は、同じ意味で用いられ、治療および予防治療の両方を含む。両用語は、疾患(例えば、本願明細書において記載した疾患または障害)の発症または進行を減少、抑圧、減衰、縮小、停止、または安定させることを意味する。
【0010】
「疾患」は、細胞、組織、または臓器の正常機能を損傷するか、または妨げるあらゆる症状または疾患を意味する。
【0011】
天然の同位体存在量の何らかの変動は、合成に使用される化学物質の原材料に応じて、合成化合物において発生することが分かる。したがって、ウデナフィルの調製は、少量の重水素および/または13Cを含有する同位体的同族体(isotopologue)を本質的に含有する。この変動があったとしても、天然で存在する安定水素同位体および炭素同位体の濃度は、本発明の化合物の安定した同位体置換の度合いと比較して小さく、重要ではない。例えば、Wada Eほか,Seikagaku 1994,66:15、Ganes LZほか,Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol 1998,119:725参照。本発明の化合物において、特定の位置が重水素を有すると示される場合、その位置の重水素の存在量は、0.015%である天然の重水素の存在量よりも実質的に大きいと理解される。重水素を有すると示される位置は、通常、当該化合物における重水素として指定された各原子で、少なくとも3000(45%の重水素導入)の最小限の同位体濃縮係数を有する。
【0012】
本願明細書で使用する「同位体濃縮係数」という用語は、特定の同位体同位体存在量と天然存在量との比率を意味する。
【0013】
他の実施形態では、本発明の化合物は、それぞれの指定の重水素原子に対して、少なくとも3500(それぞれ指定の重水素原子で、52.5%の重水素導入)、少なくとも4000(60%の重水素導入)、少なくとも4500(67.5%の重水素導入)、少なくとも5000(75%の重水素導入)、少なくとも5500(82.5%の重水素導入)、少なくとも6000(90%の重水素導入)、少なくとも6333.3(95%の重水素導入)、少なくとも6466.7(97%の重水素導入)、少なくとも6600(99%の重水素導入)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素導入)の同位体濃縮係数を有する。
【0014】
本発明の化合物において、特定の同位体として特に指定されない任意の原子は、その原子の任意の安定した同位体を表すことを意味する。別段の記載がない限り、位置が具体的に「H」または「水素」と指定される場合、その位置は、その天然存在量同位体組成において水素を有すると理解される。
【0015】
「同位体的同族体」という用語は、その同位体組成だけにおいて、本発明の特定の化合物とは異なる種を指す。
【0016】
本願明細書において使用する「化合物」という用語は、そのいかなる塩、溶媒和物、または水和物を含むことも意図する。
【0017】
本発明の化合物の塩は、酸とアミノ官能基などのその化合物の塩基性基の間で、または、塩基とカルボン酸官能基などのその化合物の酸性基の間で形成される。他の実施形態では、化合物は、薬理学的に許容できる酸付加塩である。
【0018】
本願明細書において使用する「薬理学的に許容できる」という用語は、適切な医学的判断の範囲で、ヒトおよび他の哺乳類の組織に接触させる使用において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などがなく好適で、適度の利益/危険性の比でつり合いの取れている、成分を指す。「薬理学的に許容できる塩」とは、服用者への投与において、直接的にまたは間接的に本発明の化合物を提供できる任意の非毒性の塩を意味する。「薬理学的に許容できる対イオン」は、服用者への投与において塩から放出される場合に非毒性である塩のイオン部分である。
【0019】
薬理学的に許容できる塩を形成するために一般的に使用される酸としては、二硫化水素、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸、ならびに、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、酸性酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、および酢酸などの有機酸、ならびに関連した無機酸および有機酸が挙げられる。このような薬理学的に許容できる塩としては、したがって、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩、および他の塩が挙げられる。一実施形態では、薬理学的に許容できる酸付加塩としては、塩化水素酸および臭化水素酸などの鉱酸から形成されるもの、特にマレイン酸などの有機酸から形成されるものが挙げられる。
【0020】
本願明細書において使用する「水和物」という用語は、非共有結合性の分子間力によって結合された、化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む化合物を意味する。
【0021】
本願明細書において使用する「溶媒和物」という用語は、非共有結合性の分子間力によって結合された、化学量論量または非化学量論量の溶媒(水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2−プロパノールなど)をさらに含む化合物を意味する。
【0022】
本発明の化合物(例えば、式Iの化合物)は、例えば重水素置換や別の方法の結果としての不斉炭素原子を含有してよい。したがって、本発明の化合物は、個別のエナンチオマーか、または2つのエナンチオマーの混合物として存在することができる。したがって、本発明の化合物としては、ラセミ混合物、および他の可能な立体異性体が実質的に含まれない個別のそれぞれの立体異性体の両方を挙げることができる。本願明細書において使用する「他の立体異性体が実質的に含まれない」と言う用語は、25%より少ない他の立体異性体が存在すること、好ましくは10%より少ない他の立体異性体が存在すること、より好ましくは5%より少ない他の立体異性体が存在すること、最も好ましくは2%より少ない他の立体異性体が存在すること、または「X」%より少ない他の立体異性体が存在すること(ここで、Xは0と100を含み、0〜100間の数字である)を意味する。与えられた化合物に対して、個別のエナンチオマーを得る方法、または合成する方法は、当業者に周知であり、最終化合物、または出発物質、または中間体に実施できるものとして、適用してよい。
【0023】
本願明細書において使用する「安定化合物」という用語は、その製造を許容するのに十分な安定性を有し、本願明細書に記載した目的(例えば、治療薬にする製剤、治療用の化合物の生産で使用するための中間体、単離可能な中間体化合物または保存可能な中間体化合物、治療剤に応答する疾患または症状を治療すること)に有用となるように、十分な時間にわたって化合物の完全性を保持する化合物を指す。
【0024】
2H」および「D」はともに重水素を指す。
【0025】
「立体異性体」は、エナンチオマーおよびジアステレオマーの両方を指す。
【0026】
「tert」、「t」および「t−」は、各々第三級を指す。
【0027】
「US」は、米国を指す。
【0028】
「FDA」は米国食品医薬品局を指す。
【0029】
「NDA」は新薬申請を指す。
【0030】
本願明細書全体において、変動要素は概括的に(例えば、「各R」)言及されるかも知れず、または具体的に(例えば、R1、R2、R3など)言及されるかも知れない。別段の記載がない限り、変動要素が概括的に言及される場合、その特定の変動要素の全ての具体的な実施形態を含むことを意味する。
【0031】
(治療用化合物)
本発明は、式Iの化合物
【化1】

(式中、各Y(当てはまる場合には、Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、およびY2cを含む)は、独立して2Hまたは1Hであるが、ただし少なくとも1つのYは2Hである)または、その塩(例えば、薬理学的に許容できる塩)、あるいはその水和物または溶媒和物を提供する。
【0032】
好ましい実施形態は、Y1aおよびY1bが共に2Hである化合物である。
【0033】
他の実施形態は、Y2a、Y2b、およびY2cが各2Hである化合物である。
【0034】
他の実施形態は、全てのYが2Hである化合物である。
【0035】
また他の実施形態では、化合物は、表1(以下)に示す化合物のうちのいずれか1つから選択される。
【0036】
表1:式Iの化合物の例
表1
【表1】

【0037】
他の一連の実施形態では、上述の実施形態のいずれか1つにおいて重水素として指定されない任意の原子は、その天然の同位体存在量で存在する。
【0038】
式Iの化合物の合成は、通常の技量の合成化学者によって、容易に実現できる。関連の手順および中間体は、例えば、米国特許第6,583,147号明細書および同第6,844,436号明細書に開示されている。
【0039】
このような方法は、対応する重水素含有、ならびに必要に応じて他の同位体を含有する試薬および/または中間体を利用して、本願明細書に示す化合物を合成するか、または同位体の原子を化学構造へ導入するために、当該分野で公知の標準的な合成手順を引き出すことによって実施できる。一部の中間体は、精製(例えば、濾過、蒸留、昇華、結晶化、粉末化、固相抽出、およびクロマトグラフィー)して、または精製せずに使用することができる。
【0040】
(合成の例)
式Iの3−(ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−プロポキシベンゼンスルホンアミド化合物を合成するために好都合な方法を、スキーム1に示す。
【化2】

スキーム1
【0041】
合成の例としてスキーム1に示すように、酸10は、塩酸化物20に変換され、次にアミド化の条件下(例えば、トリエチルアミン(TEA)、ジメチルアノピリジン(DMAP))において、アミン30と反応させ、アミド40が生成される。クロロスルホン酸を用いた40のスルホン化で、スルホニルクロリド50が生成され、続いて(例えばジクロロメタン中で)アミン60との反応で、化合物70が生成される。次の塩基促進による閉環反応(例えば、還流するt−ブタノール中でカリウムt−ブトキシドを用いて)、式Iの化合物が得られる。
【0042】
上に示した特定の方法および化合物は、限定を意図したものではない。本願明細書のスキームにおける化学構造には、同一の変動要素名(つまり、R1、R2、R3など)で識別されていても、識別されていなくても、本願明細書の化合物の式の対応する位置の化学基の記述(部分、原子、など)と整合してここに定義される変動要素が描かれている。他の化合物の合成に使用するための化合物構造における化学基の適合性は、当業者の知識の範囲にある。本願明細書のスキームにおいて明確に示されないルートの範囲内にあるものを含む、式Iの化合物およびその合成前駆体のさらなる合成方法は、当業者の化学者らの手法の範囲にある。反応条件を最適化する方法、および必要に応じて、競合する副生成物を最小化する方法は当該分野で公知である。本願明細書で引用した合成の引用文献に加えて、反応スキームおよび手順は、例えば、SciFinder(登録商標)(米国化学会のCAS部門)、STN(登録商標)(米国化学会のCAS部門)、CrossFire Beilstein(登録商標)(Elsevier MDL)などの市販の構造検索可能な検索データベースソフトウェア、あるいはグーグル(登録商標)などのインターネット検索エンジンまたは米国特許商標庁のテキストデータベースなどのキーワードデータベースを用いて、当業者によって決定されてよい。
【0043】
本願明細書に記載された方法は、本願明細書に具体的に記載された工程の前か後に、本願明細書の化合物の合成を最終的に可能にするために、好適な保護基を付加または除去する工程をさらに含んでもよい。さらに、様々な合成工程は、所望の化合物を得るために、別の順序または順番で実施されてもよい。適用できる化合物を合成するのに有用な合成化学変換および保護基方法論(保護および脱保護)は、当該分野で公知であり、例えば、Larock R, Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);Greene TWほか, Protective Groups in Organic Synthesis,第3版、John Wiley and Sons(1999);Fieser Lほか, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);およびPaquette L編集, Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、ならびにこれらのこれらに続く版に記載されているものが挙げられる。
【0044】
本発明によって想定される置換基および変動要素の組み合わせは、安定化合物の形成をもたらすものだけである。
【0045】
(組成物)
本発明は、有効量の式Iの化合物(例えば、本願明細書のいずれかの式を含む)あるいは当該化合物の薬理学的に許容できる塩、溶媒和物または水和物と、許容できる担体と、を含む発熱物質を含まない組成物も提供する。好ましくは、本発明の組成物は、薬理学的な用途(「医薬組成物」)のために処方され、したがって担体は薬理学的に許容できる担体である。この担体は、製剤の他の成分と適合するという意味で「許容できる」ものあり、薬理学的に許容できる担体の場合、薬剤に使用する量においては、その服用者に無害である。
【0046】
本発明の医薬組成物に使用してよい薬理学的に許容できる担体、アジュバント、およびビヒクルとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物などの緩衝物質、水、硫酸プロタミン、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースとした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコール、および羊毛脂を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の医薬組成物としては、経口投与、経直腸投与、経鼻投与、局所投与(口腔投与および舌下投与を含む)、膣内投与、または非経口投与(皮下投与、筋肉投与、静脈内投与、および皮内投与を含む)に好適なものが挙げられる。一部の実施形態では、本願明細書の式の化合物は、(例えば、経皮パッチ、またはイオン導入法の技術を用いて)経皮投与される。他の製剤は、例えば、錠剤、持続放出性カプセルなどの単位用量の剤形として、およびリポソームとして、提供されることが好都合であるかも知れず、薬学分野で周知の任意の方法で調製されてもよい。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company,ペンシルバニア州,フィラデルフィア(第17版 1985)参照。
【0048】
このような調製方法は、1つ以上の副成分を構成する担体のような成分を、投与されるべき分子と一緒にする工程を含む。通常、組成物は、活性成分を、液体担体、リポソーム、または微粉化した固体担体あるいはその両方と、均一におよび密に一緒にすることによって、および必要に応じて製品を成形することによって調製される。
【0049】
一部の実施形態では、この化合物は経口投与される。経口投与に好適な本発明の組成物は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル剤、サシェ剤、または錠剤などの個別の単位として、粉剤または顆粒剤として、水性液体または非水性液体中の液剤または懸濁剤として、水中油型乳濁液として、油中水型乳濁液として、リポソームに詰められて、またはボーラスとしてなどで、提供されてもよい。軟ゼラチンカプセルは、化合物の吸収速度を有益に速くできる場合がある懸濁剤を含有するのに有用である。
【0050】
経口用途の錠剤の場合、一般に使用される担体としては、乳糖およびトウモロコシでんぷんが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も、通常添加される。カプセル剤形の経口投与に有用な希釈剤としては、乳糖および乾燥トウモロコシでんぷんが挙げられる。水系懸濁剤が経口投与される場合、活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と混合される。必要に応じて、一部の甘味料、および/または矯味矯臭剤、および/または着色料を添加してもよい。
【0051】
経口投与に好適な組成物としては、風味ベースの成分、一般的にはショ糖およびアカシアまたはトラガカントを含む薬用ドロップ、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアなどの不活性ベース中に活性成分を含むトローチが挙げられる。
【0052】
非経口投与に好適な組成物としては、酸化防止剤、緩衝剤、細菌発育抑制剤、および意図する服用者の血液に対して製剤を等張にする溶質を含有してもよい水系無菌注入液および非水系無菌注入液、ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含んでもよい水系無菌注入液および非水系無菌懸濁液が挙げられる。この製剤は、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルなどの、1回の用量または複数回の用量の容器で提供されてもよく、使用する直前に、例えば注入用の水などの無菌液体担体の添加だけを必要とする凍結乾燥(冷凍乾燥)状態で保管されてもよい。即席注入剤および即席注入懸濁液は、無菌粉剤、無菌顆粒剤、および無菌錠剤から調製されてもよい。
【0053】
このような注入液は、例えば、無菌の注入可能な水系懸濁液または油性懸濁液の剤形であってもよい。この懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤(例えばTween80など)および懸濁化剤を使用して、当該分野で公知の技術にしたがって調製されてもよい。無菌の注入可能な調剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のように、非毒性の非経口で許容できる希釈剤または溶媒中の無菌の注入可能な液剤または懸濁剤であってもよい。許容できるビヒクルおよび溶媒のうち、使用可能なものは、マンニトール、水、リンガー液、および生理食塩液である。加えて、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として、従来から使用されている。この目的で、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激不揮発性油を使用してもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬理学的に許容できる油がそうであるように、注入液の調製に有用であり、特にそのポリオキシエチレン化したそのバージョンが有用である。これらの油剤または油懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有してもよい。
【0054】
本発明の医薬組成物は、経直腸投与用の坐薬という剤形で投与されてもよい。これらの組成物は、本発明の化合物と、室温で固体であるが直腸温では液体であり、したがって直腸で溶け活性成分を放出する好適な非刺激性の賦形剤とを混合することによって調製できる。このような物質としては、ココアバター、蜜ロウ、およびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の医薬組成物は、鼻エアロゾルまたは鼻孔吸入によって投与されてもよい。このような組成物は、医薬製剤分野において周知の技術にしたがって調製され、ベンジルアルコールまたは他の好適な保存料、生物学的利用能を高める吸収促進剤、フッ化炭素、および/あるいは当該分野で公知の他の可溶化剤または分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製されてもよい。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されたRabinowitz JDおよびZaffaroni ACの米国特許第6,803,031号明細書を参照。
【0056】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が、局所投与によって容易に到達できる範囲または器官を含む場合に特に有用である。皮膚への局所投与のために、この医薬組成物は、担体に懸濁または溶解された活性成分を含有する好適な軟膏剤を用いて処方されるべきである。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、鉱油(mineral oil)、鉱油(liquid petroleum)、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウ、および水が挙げられるが、これらに限定されない。他には、この医薬組成物は、担体に懸濁または溶解された活性化合物を含有する好適なローション剤またはクリームを用いて処方できる。好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、直腸の坐薬製剤によって、または好適なかん腸製剤として、下部消化管に局部的に投与されてもよい。局部的な経皮パッチおよびイオン導入法による投与も、本発明に含まれる。
【0057】
主題の治療成分の投与は、関心部位に投与するように、局所的であってよい。関心部位に主題の組成物を提供するためには、注射、カテーテル、トロカール、噴出装置(projectile)、プルロニックゲル(Pluronic gel)、ステント、持続した薬物放出をもたらすポリマー、または内部到達をもたらす他の装置の使用などのさまざまな方法を使用することができる。
【0058】
したがって、また他の実施形態によれば、本発明の化合物は、人工器官、人工弁、代用血管、ステント、またはカテーテルなどの、移植可能な医療装置を被覆するための組成物に導入されてもよい。好適な被覆物および被覆された移植可能な装置の一般的な調製物は、当該分野において公知であり、米国特許第6,099,562号明細書、同第5,886,026号明細書、および同第5,304,121号明細書に例示されている。この被覆物は、一般的に、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびこれらの混合物などの生体適合性のポリマー材料である。この被覆物は、必要に応じて、フルオロシリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはこれらの組み合わせの好適な上塗りによってさらに被覆し、組成物に制御放出特性を与えてもよい。浸潤装置の被覆物は、本願明細書で使用される薬理学的に許容できる担体、アジュバント、またはビヒクルの定義の範囲内に含まれる。
【0059】
他の実施形態によれば、本発明は、移植可能な医療装置を被覆する方法であって、この装置を上に記載した被覆組成物に接触させる工程を含む方法を提供する。この装置の被覆が哺乳類への移植の前に実施されることは、当業者には明らかである。
【0060】
他の実施形態によれば、本発明は、移植可能な薬物放出装置に含侵させる方法であって、この薬物放出装置を本発明の化合物または組成物に接触させる工程を含む方法を提供する。移植可能な薬物放出装置としては、生分解性ポリマーカプセルまたはカプセル(bullet)、非分解性で拡散性のポリマーカプセルおよび生分解性ポリマーウエハが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
他の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物で被覆され、したがって、この化合物が薬理学的に活性化する、移植可能な医療装置を提供する。
【0062】
他の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物を含侵させているか、あるいはこの化合物または組成物を含有し、したがって、この化合物がこの装置から放出され、この化合物が薬理学的に活性化する、移植可能な薬物放出装置を提供する。
【0063】
患者から取り出すことによって器官または組織に到達可能な場合、このような器官または組織は本発明の組成物を含有する媒体に侵漬されてもよいし、本発明の組成物が器官に塗布されてもよいし、本発明の組成物が他の任意の好都合な方法で塗布されてもよい。
【0064】
他の実施形態では、本発明の組成物は、第2の治療剤をさらに含む。この第2の治療剤は、ウデナフィルと同じ作用機序を有する化合物を投与した場合に有利な特性を有することが知られているか、または有利な特性を示す任意の化合物または治療剤、つまり、PDE5阻害剤化合物とともに投与した場合に有利な特性を有することが知られているか、または有利な特性を示す任意の化合物または治療剤から選択されてもよい。このような薬剤としては、PDE5阻害剤化合物、より具体的にはウデナフィルとの併用に有用であるとされている薬剤が挙げられる。
【0065】
第2の治療剤は、勃起不全、良性前立腺過形成、および肺動脈高血圧症から選択される疾患または症状の治療または予防に有用な薬剤であることが好ましい。第2の薬剤の例としては、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤およびアンジオテンシンII受容体アンタゴニストが挙げられる。
【0066】
他の実施形態では、本発明は、本発明の化合物および上述の第2の治療剤が互いに関与する、本発明の化合物および第2の治療剤のうちの1つ以上の個別の剤形を提供する。本願明細書で使用する「互いに関与する」という用語は、個別の剤形が一緒に包装されているか、または互いにくっついており、したがって、個別の剤形は一緒に市販され(互いに24時間より短い時間内に順次または同時に)投与されるという意図が容易に明らかになることを意味する。
【0067】
本発明の医薬組成物において、本発明の化合物は有効量で存在する。本願明細書で使用する「有効量」という用語は、適切な投与計画で投与された場合に、治療される障害の重症度、期間もしくは進行を縮小または改善するのに十分な量、治療される障害の進行を防ぐのに十分な量、治療される障害の退縮をもたらすのに十分な量、あるいは他の治療の予防効果または治療効果を高めるかもしくは向上させるのに十分な量を指す。
【0068】
動物とヒトに対する(体表面の1平方メートル当たりのミリグラムに基づいた)投与量の相関関係は、Freireichほか、 (1996)Cancer Chemother.Rep 50:219に記載されている。体表面積は、患者の身長および体重からおおよそ決定されてよい。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals,ニューヨーク州,アーズリー,1970,537を参照。
【0069】
一実施形態では、本発明の化合物の有効量は、約50mg〜約150mg、または約10mg〜約300mg、または約5mg〜約500mg、または約1mg〜約1000mgの範囲に及ぶことができる。
【0070】
有効用量は、当業者により認識されるように、治療される疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の性別、年齢、および全体的な健康状態、賦形剤の使用法、他の薬剤の使用などの他の治療との併用の可能性、および担当医の判断によっても変化する。例えば、有効用量を選択するための案内は、ウデナフィルの処方情報を参照することで特定できる。
【0071】
第2の治療剤を含む医薬組成物についての第2の治療剤の有効量は、単剤治療法において、その薬剤だけを使用する場合に通常使用される用量の約20%〜100%の間である。有効量は、通常の単剤治療用量の約70%〜100%の間であることが好ましい。これらの第2の治療剤の通常の単剤治療投与は、当該分野において周知である。例えば、Wellsほか編集、 Pharmacotherapy Handbook,第2版,Appleton and Lange,コネティカット州,スタンフォード(2000);PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,デラックス版,Tarascon Publishing,カリフォルニア州,ロマリンダ(2000)を参照。これら各々の参考文献の内容全体を、参照によって、本願明細書に援用する。
【0072】
上で言及した第2の治療剤の一部は、本発明の化合物と相乗的に作用することが予想される。これが生じる場合、第2の治療剤および/または本発明の化合物の有効用量は、単剤治療において必要とされる量よりも減らされる。これは、第2の治療剤または本発明の化合物のどちらかの中毒性副作用の最小化、有効性の相乗的向上、投与または使用の容易性の向上、および/あるいは化合物の調製または処方の総合的な費用の削減に優位性を有する。
【0073】
(治療方法)
他の実施形態では、本発明は、細胞におけるPDE5活性の調節方法を提供し、この調節方法は、細胞を、本願明細書の式Iの化合物のうちの1つ以上に接触させる工程を含む。
【0074】
他の実施形態によれば、本発明は、ウデナフィルによって有益に治療される疾患を患っているか、またはこれを起こしやすい状態にある患者の治療方法を提供し、この治療方法は、本発明の化合物または組成物の有効量を当該患者に投与する工程を含む。このような疾患としては、勃起不全、良性前立腺過形成、および肺動脈高血圧症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
特定の一実施形態では、本発明の方法は、勃起不全、良性前立腺過形成、または肺動脈高血圧症から選択される疾患または症状を患っているか、またはこれを起こしやすい状態にある患者を治療するために使用される。
【0076】
他の特定の実施形態では、本発明の方法は、勃起不全を患っているか、またはこれを起こしやすい状態にある患者を治療するために使用される。
【0077】
本願明細書において記載した方法は、患者が、特定の記載された治療が必要であると識別された患者である方法も含む。このような治療を必要とする患者の識別は、患者の判断または医療専門家の判断であってよく、主観的(例えば、意見)にも、または客観的(例えば、試験や診断法によって測定できる)にもなり得る。
【0078】
他の実施形態では、上述の治療方法のうちのいずれかが、第2の治療剤のうちの1つ以上を当該患者に併用投与するさらなる工程を含む。第2の治療剤は、PDE5阻害剤、特にウデナフィルとの併用投与に有用であることが知られる任意の第2の治療剤から選択されてよい。第2の治療剤の選択は、治療される特定の疾患または症状にもよる。本発明の方法において使用してもよい第2の治療剤の例は、本発明の化合物および第2の治療剤を含む併用組成物での使用について上に記載したものである。
【0079】
特に、本発明の併用療法は、次の症状、勃起不全、良性前立腺過形成、および肺動脈高血圧症の治療のために、式Iの化合物および第2の治療剤を併用投与する工程を含む。
【0080】
本願明細書で使用する「併用投与」という用語は、第2の治療剤が、1つの剤形(上述したように、本発明の化合物および第2の治療剤を含む本発明の組成物など)の一部として、または複数の個別の剤形として、本発明の化合物と一緒に投与されてもよいという意味である。あるいは、さらなる薬剤が、本発明の化合物の投与の前に、本発明の化合物の投与に続いて、または本発明の化合物の投与の後に投与されてもよい。このような併用療法において、本発明の化合物および第2の治療剤はともに、従来の方法で投与される。本発明の化合物と第2の治療剤の両方を含む本発明の組成物を患者に投与することは、同じ治療剤、他の任意の第2の治療剤、または本発明の任意の化合物を、当該患者に、治療期間の別の時間に、別途投与することを除外しない。
【0081】
有効量のこれらの第2の治療剤は当業者に周知であり、投与の案内は、本願明細書で引用した特許公報および特許公開公報、ならびに、Wellsほか編集、 Pharmacotherapy Handbook,第2版,Appleton and Lange,コネティカット州,スタンフォード(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,デラックス版,Tarascon Publishing,カリフォルニア州,ロマリンダ(2000)ならびに他の医療文献において見出せるかも知れない。しかしながら、第2の治療剤の最適な有効量の範囲を決定することは、十分に当業者の視野の範囲内である。
【0082】
本発明の一実施形態では、第2の治療剤が被験体に投与される場合、本発明の化合物の有効量は、第2の治療剤が投与されない場合の本発明の化合物の有効量よりも少なくなる。他の実施形態では、第2の治療剤の有効量は、本発明の化合物が投与されない場合の第2の治療剤の有効量よりも少なくなる。このようにして、どちらか一方の薬剤の多用量に関連した好ましくない副作用は、最小化される場合がある。他の潜在的な利点(投与計画の向上および/または薬物費用の削減が挙げられるが、これらに限定されない)は、当業者に明らかである。
【0083】
また他の態様では、本発明は、患者における上に記載の疾患、障害またはその症状の治療または予防のための薬剤の、単一組成物または個別の剤形としての製造において、式Iの化合物の単独の使用または上述の第2の治療剤のうちの1つ以上との併用を提供する。本発明の他の態様は、本願明細書において記載したその疾患、障害、または症状の患者における治療または予防に使用する式Iの化合物である。
【0084】
(診断法およびキット)
本発明の化合物および組成物は、溶液中または血漿などの生体試料中のウデナフィルの濃度の測定方法、ウデナフィルの代謝の検査方法、および他の分析的研究方法における試薬としても有用である。
【0085】
一実施形態によれば、本発明は、溶液中または生体試料中のウデナフィルの濃度の測定方法を提供し、この測定方法は、
a)既知濃度の式Iの化合物を、生体試料の溶液に添加する工程と、
b)式Iの化合物からウデナフィルを識別する測定装置にその溶液または生体試料を置く工程と、
c)検出された量の式Iの化合物を、その生体試料または溶液に添加された既知濃度の式Iの化合物に関連付けるために、測定装置を較正する工程と、
d)この較正された測定装置で、生体試料中のウデナフィルの量を測定する工程と、
e)式Iの化合物について得られた検出量と濃度との間の相関を用いて、試料の溶液中のウデナフィルの濃度を決定する工程と、を含む。
【0086】
式Iの対応する化合物からウデナフィルを識別できる測定装置としては、同位体存在量だけが互いに異なる2つの化合物を識別できる任意の測定装置が挙げられる。測定装置の例としては、質量分析計、NMR分光計、またはIR分光計が挙げられる。
【0087】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物の代謝安定性の評価方法を提供し、この評価方法は、ある時間にわたって、この式Iの化合物を代謝酵素源に接触させる工程と、その時間の後に、式Iの化合物の量を、式Iの化合物の代謝産物と比較する工程と、を含む。
【0088】
関連する実施形態では、本発明は、この式Iの化合物を投与した後、患者における式Iの化合物の代謝安定性を評価する方法を提供する。この方法は、被験体へ式Iの化合物を投与した後のある時間において、患者からの血清、尿または糞便試料を入手する工程と、式Iの化合物の量を、血清、尿または糞便試料における式Iの化合物の代謝産物と比較する工程とを含む。
【0089】
本発明は、勃起不全、良性前立腺過形成、および肺動脈高血圧症を治療するために使用するキットも提供する。これらのキットは、(a)式Iの化合物、またはその塩、水和物もしくは溶媒和物を含み、容器に入っている医薬組成物と、(b)勃起不全、良性前立腺過形成、または肺動脈高血圧症を治療するための医薬組成物の使用方法を説明する説明書とを含む。
【0090】
容器は、この医薬組成物を保持できる任意の容器あるいは他の密封されたまたは密封可能な器具であってよい。例としては、瓶、アンプル、各区分もしくはチャンバがこの組成物の1回の用量を含む、区分されたホルダーを有するボトルすなわち多室型のホルダーを有するボトル、各区分がこの組成物の1回の用量を含む分けられた薄片の包み、またはこの組成物の1回の用量を分配するディスペンサーが挙げられる。容器は、当該分野で公知の任意の従来の形状または形態で、例えば、紙もしくはダンボール箱、ガラスもしくはプラスチックの瓶またはジャー、再封可能な袋(例えば、異なる容器に入れるために錠剤の「詰め替え」を保管するため)、または治療のスケジュールに従ってパックの外に押し出す個々の用量を入れたブリスターパックなどの薬理学的に許容できる材料で作られた容器であってよい。使用する容器は、関連する具体的な剤形に応じることができ、例えば従来のダンボール箱は、一般に液体懸濁液を保持するためには使用されない。1回の用量の剤形を市場に出すために、単一のパッケージにおいて、複数の容器を一緒に使うことができることは、実用的である。例えば、錠剤は瓶に入れられ、次にこの瓶が箱の中に入れられてもよい。一実施形態では、容器はブリスターパックである。
【0091】
本発明のこのキットは、医薬組成物の単位用量を投与または測定する装置も含んでよい。このような装置としては、この組成物が吸入可能な組成物である場合の吸入器、この組成物が注入可能な組成物である場合の注射器および針、この組成物が経口液体組成物である場合の注射器、スプーン、ポンプ、または目盛りを有する容器もしくは有しない容器、あるいはキットに存在する組成物の剤形に適した任意のほかの測定装置もしくは送達装置を挙げてもよい。
【0092】
一部の実施形態では、本発明のキットは、本発明の化合物との併用投与に使用する、上に列挙された治療剤のうちの1つなどの第2の治療剤を含む医薬組成物を、容器の別の器に含んでもよい。
【0093】
(代謝安定性の評価)
一部の体外肝代謝調査は、これまでに次の参考文献、Obach,RS, Drug Metab Disp, 1999,27:1350;Houston,JBほか, Drug Metab Rev, 1997,29:891;Houston,JB,Biochem Pharmacol, 1994,47:1469;Iwatsubo,Tほか, Pharmacol Ther, 1997,73:147;およびLave,Tほか, Pharm Res, 1997,14:152において説明されており、これらの各々の内容全体は本願明細書に援用される。
【0094】
(ミクロソーム分析)
式Iの化合物の代謝安定性を、貯蔵した肝ミクロソーム培養を用いて検査した。フルスキャンLC−MS分析を実施し、主な代謝産物を検出した。貯蔵したヒト肝ミクロソームにさらした検査化合物の試料を、HPLC−MS(またはMS/MS)検出を用いて分析した。代謝安定性を測定するために、多重反応モニタリング(MRM)を使用して、検査化合物の消失を測定した。代謝産物の検出のために、主な代謝産物を検出するサーベイスキャンとして、Q1フルスキャンを使用した。
【0095】
(実験手順)
ヒト肝ミクロソームを、商用供給源(例えば、Absorption Systems L.P.(ペンシルバニア州、エクストン))から入手した。この培養混合物を、以下のとおりに調製した。
【0096】
反応混合物組成物
【表2】

【0097】
(肝ミクロソームとの検査化合物の培養)
この反応混合物、負の補助因子を調製した。一定量の反応混合物(補助因子を有しない)を、37℃で、3分間にわたり、振動水槽中で培養した。さらに一定量の反応混合物を、陰性対照として調製した。検査化合物を、1μMの最終濃度で、反応混合物および陰性対照の両方に添加した。一定量の反応混合物を、純粋な有機溶媒(検査化合物ではない)を添加することによって、ブランク対照として調製した。補助因子を添加(陰性対照には添加しない)することによって、反応を開始させ、37℃の振動水槽中で培養した。一定量(200μL)を、複数時点(例えば、0分後、15分後、30分後、60分後、および120分後)において、3つの試料を取り出し、800μLの氷冷50/50アセトニトリル/dH2Oと合わせ、反応を停止させた。陽性対照、テストステロン、プロプラノロール、およびウデナフィルを、別の反応で、検査化合物と同時に各々実施した。
【0098】
全ての試料を、LC−MS(またはMS/MS)を用いて分析した。LC−MRM−MS/MS法を、代謝安定性の分析に使用した。さらに、Q1フルスキャンLC−MS法を、ブランクマトリクスおよび検査化合物培養試料に対して実施した。このQ1スキャンは、代謝産物である可能性があるものを表わす可能性のある、いずれの試料の特有のピークも識別するサーベイスキャンとしての機能を果たす。これらの潜在的な代謝産物の質量は、Q1スキャンから測定できる。
【0099】
(SUPERSOMES(商標)分析)
さまざまなヒトシトクロムP450特異的SUPERSOMES(商標)を、Gentest社(米国、マサチューセッツ州、ウォバーン)から購入した。100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中の25pmolのSUPERSOMES(商標)、2.0mM NADPH、3.0mM MgCl、および1μMの式Iまたは式IIの化合物を含有する1.0mLの反応混合物を、37℃で、3つの試料を培養した。陽性対照に、式Iの化合物の代わりに、1μMのウデナフィルを含有させた。陰性対照には、GenTest社(米国、マサチューセッツ州、ウォバーン)から購入したControl Insect Cell Cytosol(ヒト代謝酵素を欠く昆虫細胞ミクロソーム)を使用した。各試料から一定量(50μL)を取り出し、さまざまな時点(例えば、0分後、2分後、5分後、7分後、12分後、20分後、および30分後)において、多ウェルプレートのウェルに入れ、50μLの氷冷アセトニトリルと内部標準としての3μMのハロペリドールを、一定量の各々に添加し、反応を停止させた。
【0100】
取り出した一定量を含有するプレートを、−20℃の冷凍庫に15分間にわたって置き、冷却した。冷却後、100μLの脱イオン水を、プレートの全てのウェルに添加した。次に、プレートを、10分間、遠心分離機で、3000rpmで回転させた。上澄みの一部(100μL)を取り出し、新しいプレートに置き、質量分析法を用いて分析した。
【0101】
さらなる説明がなくとも、当業者は、前述の説明および実施例を用いて、本発明の化合物を製造および利用でき、請求項に係る方法を実施することができると考えられる。前述の説明および実施例は、単に、一部の好ましい実施形態の詳細説明を提供するものであることを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な改良物および同等物を作ることができることは、当業者に明らかである。上に記載または引用した全ての特許公報、学術論文、および他の文献を、参照によって本願明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

(式中、各Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、およびY2cは、独立して2Hまたは1Hであるが、ただし少なくとも1つのYは2Hである)またはその塩、あるいはその水和物または溶媒和物。
【請求項2】
1aおよびY1b2Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
2a、Y2b、およびY2cが各々2Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
各Yが2Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
以下の表に記載の群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【表1】

【請求項6】
重水素として指定されない任意の原子が、その天然の同位体存在量で存在する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩と、許容できる担体とを含む、発熱物質を含まない組成物。
【請求項8】
前記組成物が薬理学的な投与のために処方されたものであり、かつ前記担体が薬理学的に許容できる担体である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
勃起不全、良性前立腺過形成、および肺動脈高血圧症から選択される疾患または症状の治療または予防に有用な第2の治療剤をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
細胞におけるPDE5活性の調節方法であって、細胞を請求項1に記載の化合物に接触させる工程を含む方法。
【請求項11】
勃起不全、良性前立腺過形成、および肺動脈高血圧症から選択される疾患または症状を患っているか、またはこれを起こしやすい状態にあるヒトの治療方法であって、それを必要とする前記ヒト患者に、請求項8に記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項12】
前記患者が勃起不全を患っているか、またはこれを起こしやすい状態にある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
勃起不全、良性前立腺過形成、および肺動脈高血圧症から選択される疾患または症状の治療または予防に有用な第2の治療剤を、それを必要とする前記患者に併用投与する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2010−507593(P2010−507593A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533595(P2009−533595)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/082157
【国際公開番号】WO2008/070313
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509049012)コンサート ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】