説明

3次元計測装置及び3次元計測方法

【課題】1回の撮影で視野全体の3次元形状について、その特徴を漏れなく計測することができる3次元計測装置及び3次元計測方法を提供する。
【解決手段】 複数方向の複数の直線及び/又は曲線状のレーザラインにより構成されるレーザパタンをレーザ投影手段から計測対象物に投影し、該レーザパタンが投影された計測対象物を異なる方向から撮影して第1の画像及び第2の画像を取得し、この第1の画像及び前記第2の画像からレーザラインを抽出し、第1の画像のレーザライン点に対応する第2の画像のレーザライン点の対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象物にレーザパタンを照射して3次元計測を行うための3次元計測装置及び3次元計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体の3次元形状を求める方法としては、例えば、一本のラインのレーザを計測対象物に投光して、その反射光を計測することにより各点までの距離を計測する方法や計測対象物にパターン光を投光して、計測対象物に投影されたパターンの形状を測定することにより計測対象物の3次元形状を計測する光切断法(例えば、特許文献1参照)等の能動的手法がある。また、計測対象物の形状を計測するために、対象物に縞パターンを投影するとともに、該縞パターンを位相シフトさせながら複数回撮影し、撮影した各縞パターン画像に基づいて、対象物の形状を計測する位相シフト法と呼ばれるものや異なる位置に設けられた基準カメラと参照カメラとの2台以上のカメラで計測対象物を撮影して得られた複数の画像の間で対応する画素を特定し、対応付けられた基準画像上の画素と、参照画像上の画素との位置の差(視差)に三角測量の原理を適用することにより、基準カメラから当該画素に対応する計測対象物上の点までの距離を計測するステレオ法と呼ばれるもの等がある。
【0003】
しかしながら、光切断法では、移動機構が必要となり、計測対象物を計測するのに時間を要するため、動物体の計測を行うのは困難である。また、これの拡張として直交する2本のラインレーザを用いた3次元計測システムもあるが、1本のラインレーザを用いた場合と同様に、計測対象物全体の3次元形状を計測するのに移動機構が必要となる。また、位相シフト法では、縞パターンを位相シフトさせながら計測対象物を複数回撮影する必要があるため、動物体の計測を行うのは困難であるとともに、縞パターンの切り替えが必要となる。また、従来のステレオ法では、計測対象物が白い壁等の特徴がほとんどない対象である場合には、画像間での対応付けを行うことは困難である。
【0004】
そこで、特徴点が少ない計測対象物の画像情報からでも特徴点が抽出できるように、平行な複数のスリット光からなるパターン光を計測対象物に照射して、撮像手段から複数の画像情報を取得するとともに、該画像情報から複数の輝点を特徴点として抽出して、画像情報の特徴点を互いに関連付け、この関連付けられた特徴点に基づいて計測対象物の3次元形状を検出する3次元形状検出装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−292434号公報
【特許文献2】特開2009−069866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2では、平行な複数のスリット光からなるパターン光を用いているため、1方向の平行スリット光では、3次元形状の特徴を必ずしも十分に現せないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、1回の撮影で視野全体の3次元形状について、その特徴を漏れなく計測することができる3次元計測装置及び3次元計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の3次元計測装置は、複数方向の複数の直線及び/又は曲線状のレーザラインにより構成されるレーザパタンを計測対象物に投影するレーザ投影手段と、前記レーザパタンが投影された計測対象物を撮影して第1の画像を取得する第1撮像手段及び該第1撮像手段と異なる方向から前記レーザパタンが投影された計測対象物を撮影して第2の画像を取得する第2撮像手段を有するステレオカメラと、前記第1の画像及び前記第2の画像から前記レーザラインを抽出するレーザライン抽出手段と、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点を求める対応点探索手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の3次元計測装置は、予め前記レーザ投影手段により前記レーザパタンが投影された、平面を有する平面校正ボードを用いて、前記ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系と前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する第1校正手段を備え、前記対応点探索手段は、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記第1校正手段により得られた結果に基づいて前記投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の3次元計測装置は、予め前記レーザ投影手段により前記レーザパタンが投影された、非平面形状を有する非平面校正物体を用いて、前記ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系と前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する第2校正手段を備え、前記対応点探索手段は、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記第2校正手段により得られた結果に基づいて前記投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の3次元計測方法は、複数方向の複数の直線及び/又は曲線状のレーザラインにより構成されるレーザパタンをレーザ投影手段により計測対象物に投影するレーザ投影ステップと、前記レーザパタンが投影された計測対象物をステレオカメラの第1撮像手段及び第2撮像手段により撮影して第1の画像及び第2の画像を取得するステレオ画像取得ステップと、前記第1の画像及び前記第2の画像から前記レーザラインを抽出するレーザライン抽出ステップと、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点を求める対応点探索ステップと、を含むことを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の3次元計測方法は、予め前記レーザ投影手段により前記レーザパタンが投影された、平面を有する平面校正ボードを用いて、前記ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系と前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する第1校正ステップを備え、前記対応点探索ステップでは、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記第1校正ステップで得られた結果に基づいて前記投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めることを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の3次元計測方法は、予め前記レーザ投影手段により前記レーザパタンが投影された、非平面形状を有する非平面校正物体を用いて、前記ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系と前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する第2校正ステップを備え、前記対応点探索ステップでは、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記第2校正ステップで得られた結果に基づいて前記投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1及び4記載の発明によれば、複数方向の複数の直線及び/又は曲線状のレーザラインにより構成されるレーザパタンを投影した計測対象物を撮影して取得した画像を用いるので、ステレオカメラによる1回の撮影で計測を行うことができ、特徴がほとんどない計測対象物が移動物体の場合であっても精度良く対応付けを行うことができる。
【0015】
請求項2及び5記載の発明によれば、計測対象物の3次元計測の処理を行う前に、予め平面を有する平面校正ボードを用いて、ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系とレーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正しておくので、対応付けの精度を向上させることができる。また、対応点候補のレーザライン点をレーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影してレーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を探索するので、対応点として虚像を確実に排除することができ、より確実に対応付けを行うことができる。
【0016】
請求項3及び6記載の発明によれば、計測対象物の3次元計測の処理を行う前に、平面形状を有していないような非平面校正物体であっても、それを用いて、予めステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系とレーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正しておくことができる。これにより、対応付けの精度を向上させることができる。また、対応点候補のレーザライン点をレーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影してレーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を探索するので、対応点として虚像を確実に排除することができ、より確実に対応付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る3次元計測装置の構成の一例を示す概略模式図である。
【図2】レーザパタンの一例を示す概略模式図である。
【図3】平面校正ボードを用いた校正処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】平面校正ボードを用いた校正の仕方について説明するための概略説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る3次元計測装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】対応点の求め方について説明するための概略説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る3次元計測装置の構成の一例を示す概略模式図である。
【図8】非平面校正物体を用いた校正処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】非平面校正物体を用いた校正の仕方について説明するための概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の第1の実施形態に係る3次元計測装置1について、図面を参照しつつ説明する。3次元計測装置1は、レーザパタン(格子レーザパタン)Pを投影した計測対象物2を撮影して3次元計測を行うものであって、図1に示すように、計測対象物2にレーザパタンPを投影するためのレーザ投影手段3と、レーザパタンPが投影された計測対象物2を夫々異なる方向から撮影して第1の画像及び第2の画像(ステレオ画像)を取得するための第1撮像手段4a及び第2撮像手段4bを有するステレオカメラ4と、該ステレオカメラ4から入力されるステレオ画像を用いて計測対象物2の3次元計測のための演算処理等を行うコンピュータ5とを備えている。
【0019】
レーザ投影手段3は、図2に示すように複数方向の複数のレーザラインLが交わって格子状に構成されるレーザパタンPを計測対象物2に投影するためのものである。また、このレーザパタンPの中央部には、対応付けを行い易くするために、円形状の模様Tが形成されている。尚、この模様Tは、図2のように円形状に限定されるものではなく、隣り合うレーザラインLを区別し易くするためのものであり、その他の形状であっても良い。
【0020】
レーザ投影手段3は、例えば専用のDOEを用いてレーザパタンPを投影するものであり、レーザパタンPは、予めスライド等にパタンが形成されており、レーザをスライドを介して照射することにより、計測対象物2の表面に図1に示すようにレーザパタンP1が投影される。尚、図2に示すレーザパタンPでは、直線状に形成された複数のレーザラインLを用いて格子状にレーザパタンPを構成しているが、レーザラインLは必ずしも直線である必要はなく、曲線状に形成される複数のレーザラインを用いてレーザパタンPを構成しても良い。また、レーザパタンPは必ずしも格子状である必要はなく、複数方向の複数のレーザラインが交わって構成されるレーザパタンであり、その形状が予め規定されていれば良い。
【0021】
ステレオカメラ4の第1撮像手段4a及び第2撮像手段4bは、それぞれ撮影手段として撮像素子とこの撮像素子の結像面に計測対象物2の像を結像させるレンズとを備えている。撮像素子としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等のイメージセンサが用いられる。この撮像手段4a,4bのレンズには同じものが使用され、視野角及び解像度も略一致するように設定されている。また、第1撮像手段4a及び第2撮像手段4bは、感度が略一致するものが使用される。また、計測対象物2の3次元計測処理を行うにあたっては、事前にステレオカメラ4のキャリブレーションを行うことにより、カメラパラメータを調整しておく。
【0022】
ステレオカメラ4により取得されたステレオ画像データは、コンピュータ5へと入力される。コンピュータ5は、ステレオカメラ4bにより取得されたステレオ画像データを用いて計測対象物2の三次元情報を得るための演算等を行うものであり、CPU(Central Proceessing Unit)6と、ハードディス7と、画像処理部8と、RAM(Random Access Memory)9と、表示部10と、操作部11等を備えている。また、これら各部は、図1に示すように、互いにシステムバス12に接続され、このシステムバス12を介して種々のデータ等が入出力されて、CPU6の制御の下、種々の処理が実行される。
【0023】
ハードディス7では、ステレオカメラ4から入力されるステレオ画像データ等を用いて計測対象物2の3次元計測を行うための処理プログラム等を格納している。尚、本実施形態では、3次元計測を行うための処理プログラムをハードディスク7に格納している例を示しているが、これに代えて、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体(不図示)に格納しておき、この記録媒体から処理プログラムを読み出すように構成することも可能である。
【0024】
画像処理部8は、ハードディスク7に格納される処理プログラムに基づいて、CPU6の制御の下、計測対象物2の3次元計測を行うための演算処理等を行うものである。RAM9は、ハードディスク7から読み出された処理プログラムを一時的に記憶したり、CPU5の作業領域等として用いられるものである。
【0025】
表示部10は、液晶ディスプレイ等から構成されるものであって、第1撮像手段4a及び第2撮像手段4bにより取得した画像等を表示するものである。操作部11は、マウスやキーボード等で構成されており、操作者が種々のデータ及び操作指令等の入力を行うために使用されるものである。
【0026】
以下、この3次元計測装置1による計測対象物2の3次元計測を行う処理の流れについて図3及び図5のフローチャートを用いながら説明する。尚、図3及び図5に示す処理は、ハードディスク7に格納された処理プログラムに従ってCPU6の制御の下、画像処理部8等により実行されるものである。
【0027】
まず、計測対象物2の3次元計測処理を行うにあたって、レーザ投影手段3がどの位置でどのような姿勢であるかを求めるために、図4に示すような平面校正ボード13を用いて、第1校正手段81によりステレオカメラ4に設定されるステレオカメラ座標系とレーザ投影手段3に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正しておく。このステレオカメラ座標系と投影手段座標系との間の回転及び並進を校正するために用いる平面校正ボード13は、図4に示すように、平面形状を有していれば良く、材質等は特に限定されるものではない。
【0028】
図3のフローチャートに示すように、校正処理を行うにあたって、まずはレーザ投影手段3によりレーザパタンPを平面校正ボード13に投影する(S101)。そして、表面にレーザパタンP1が投影されている平面校正ボード13をステレオカメラ4により撮影することにより、ステレオ画像を取得する(S102)。このようにして取得されたステレオ画像はコンピュータ5へと入力される。尚、このレーザ投影手段3によるレーザパタンPの投影タイミング、及びステレオカメラ4による撮影タイミングは、コンピュータ5のタイミング同期手段(不図示)により同期するように制御されている。
【0029】
次に、画像処理部8内の第1校正手段81では、取得したステレオ画像に基づいて、3次元計測を行って格子交点Mの3次元座標に対して平面フィッティングを行う。平面フィッティングを行うことにより、平面校正ボード13に垂直な軸を含む、平面校正ボード13の3次元座標系が得られる。また、格子交点Mをフィッティング平面に射影することにより、平面校正ボード13の平面における格子交点Mの2次元座標が得られる。そして、下記の数式(1)からステレオカメラ座標系と上記の平面フィッティングによって得られた平面校正ボード13の3次元座標系との間の回転行列RCS及び並進ベクトルtCSを求める(S103)。尚、ここでは3次元計測を行って格子交点Mの3次元座標に対して平面フィッティングを行っているが、格子交点M以外の少なくとも3点以上の平面上に現れる特徴点の3次元座標に対して平面フィッティングを行うようにしても良い。
【数1】

【0030】
次に、平面校正ボード13に投影されているレーザパタンP1とレーザ投影手段3のレーザパタン平面上のレーザパタンPとの対応関係を求める(S104)。具体的には、例えば、まず取得したステレオ画像から平面校正ボード13に投影されている模様T1を抽出し、この点とレーザパタン平面のレーザパタンP上の模様Tとの対応付けを行う。そして、この模様T1を通る2本のレーザラインL1とレーザパタン平面上のレーザラインLとの対応付けを行うことにより、夫々の平面間の対応付けを行うことができる。尚、ここでレーザパタン平面とは、レーザ投影手段3のレーザパタンPが構成されている平面のことであり、この平面はレーザパタンPが形成される際に予め規定されている。
【0031】
そして、下記の数式(2)に表されるように、このステレオカメラ4により取得したステレオ画像に基づいて求めた平面校正ボード13上のレーザパタンP1の格子交点Mの2次元座標と、レーザパタン平面における対応点の2次元座標との間で成り立つホモグラフィ変換行列Hを求め、そのホモグラフィ変換行列から校正ボード座標系と投影手段座標系との間の回転行列Rlpc及び並進ベクトルtlpcを計算する(S105)。尚、ホモグラフィ行列Hは、nが4以上あれば求めることができる。また、数式(2)に示すように、レーザ投影手段3の焦点距離fもホモグラフィ行列Hから同時に求めることができる。
【数2】

【0032】
そして、平面校正ボード13を介して、ステレオカメラ座標系と投影手段座標系との間の回転と並進を校正する(S106)。具体的には、数式(1)を数式(2)に代入することにより、下記の数式(3)が求められる。この数式(3)にステレオカメラ座標系Xにおける3次元座標を代入することにより、対応するレーザパタン平面の2次元座標Xlpc、ylpcを計算することができるようになる。従って、この数式(3)を用いることにより対応点を求めることができる。
【数3】

【0033】
このように計測対象物2の3次元計測処理を行う前に、予め平面校正ボード13を用いて、ステレオカメラ座標系と投影手段座標系との間の回転と並進を校正しておく。そして、その後、図5のフローチャートに示すように計測対象物2の3次元計測を行う。
【0034】
図5に示すように、まず3次元計測装置1は、計測対象物2にレーザ投影手段3によりレーザパタンPを投影する(S201)。そして、この表面にレーザパタンP1が投影された計測対象物2を第1撮像手段4a及び第2撮像手段4b(ステレオカメラ4)により撮影することにより、第1の画像及び第2の画像(ステレオ画像)を取得する(S202)。このようにして取得されたステレオ画像はコンピュータ5へと入力される。
【0035】
次に、画像処理部8内のレーザライン抽出手段82により取得したステレオ画像からレーザラインLを抽出する(S203)。そして、対応点探索手段83では、このように抽出した第1の画像のレーザラインLの1点につき、第2の画像のエピポーラ線に沿って、所定の視差範囲内にある全てのレーザライン点を対応点候補とし、3次元座標算出手段83aにより、この夫々の対応点候補のレーザライン点に対して3次元座標を求める(S204)。図6では、第1の画像のレーザラインLの1点Aにつき、第2の画像のエピポーラ線に沿うレーザライン点A’、B’を対応点候補とし、同様に第1の画像のレーザラインLの1点Bにつき、第2の画像のエピポーラ線に沿うレーザライン点A’、B’を対応点候補としている例を示している。
【0036】
座標変換手段83bでは、この求められたレーザライン点の3次元座標を夫々投影手段座標系に座標系を変換する(S205)。そして、射影手段83cでは、投影手段座標系に変換したレーザライン点を図6に示すように、レーザパタン平面に射影する(S206)。具体的には、第1校正手段81により求められた数式(3)に対応点候補の3次元座標Xを代入することにより、対応するレーザパタン平面への射影点の座標が求められる。
【0037】
対応点判定手段83dでは、このようにして求められた射影点がレーザパタン平面のレーザパタンP上にあるか否かを判定する(S207)。対応点判定手段83dにより射影点がレーザパタンP上にあると判定された場合(S207:YES)には、その対応点候補を受け入れ、その結果を出力する(S208)。
【0038】
一方、対応点判定手段83dにより射影点がレーザパタン上にないと判定された場合(S207:NO)には、他の対応点候補が残っているか否かを判断し(S209)、他の対応点候補が残っていると判断した場合(S209:YES)には、その対応点候補について数式(3)を用いて、レーザパタン平面へ射影した点の座標を求め(S206、S207)、その射影点がレーザパタン平面のレーザパタンP上にあるか否かを再度判定する(S207)。この処理を対応点が見つかるまで繰り返し行うことにより、対応点を探索する。図6に示す例では、第1の画像におけるレーザラインL上の点Aについては、AA’をレーザパタン平面に射影した場合に、レーザパタンPと合致しているので、第2の画像におけるA’が対応点として受け入れられ、B’は拒否される。また、第1の画像におけるレーザラインL上の点Bについては、BB’をレーザパタン平面に射影した場合に、レーザパタンPと合致しているので、第2の画像におけるB’が対応点として受け入れられ、A’は拒否される。このような処理を行うことにより、対応点として虚像等の誤った対応点が選ばれることを防止することができ、精度良く対応付けを行うことができる。
【0039】
本実施形態では、第1の画像のレーザライン点に対応する第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、この3次元座標を第1校正手段81により得られた数式(3)に基づいて投影手段座標系に変換してレーザパタン平面に射影した夫々の射影点がレーザパタンP上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めているが、その他の従来公知の対応付け処理を行うように構成しても良い。
【0040】
次に第2の実施形態に係る3次元計測装置1aについて図7〜9を用いて意説明する。図7に示すように、3次元計測装置1aは第1実施形態に係る3次元計測装置1と略同様の構成を備えるものであり、第1校正手段81の代わりに第2校正手段81aを備えるものである。従って、第1実施形態に係る3次元計測装置1と同様の構成等については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
3次元計測装置1aでは、図9に示すように、平面校正ボード13の代わりに非平面形状を有する非平面校正物体14を用いて、第2校正手段81aによりステレオカメラ座標系と投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する。この非平面校正物体14は、図9に示すように曲面形状を有した物体に限られるものではなく、平面形状を折り曲げたようなものを用いることも可能である。
【0042】
以下、この非平面校正物体14を用いた第2校正手段81aによる校正処理の流れについて図8のフローチャートを用いながら説明する。校正処理を行うにあたって、まずはレーザ投影手段3によりレーザパタンPを非平面校正物体14に投影する(S301)。そして、表面にレーザパタンP1が投影されている非平面校正物体14をステレオカメラ4により撮影することにより、ステレオ画像を取得する(S302)。
【0043】
次に、画像処理部8内の第2校正手段81aでは、取得したステレオ画像に基づいて、非平面校正物体18に投影されたレーザパタンP1の格子交点Mの3次元計測を行う(S303)。そして、非平面校正物体14に投影されているレーザパタンP1とレーザ投影手段3のレーザパタン平面上のレーザパタンPとの対応関係を求める(S304)。
【0044】
そして、S303の処理により計測されたレーザパタンP1の格子交点Mの3次元座標と、レーザパタン平面における対応点の2次元座標との間で成り立つ射影行列Pを下記の数式(4)を用いて計算する(S305)。
【数4】

【0045】
この射影行列Pから数式(5)に示すように、ステレオカメラ座標系と投影手段座標系との間の回転行列Rlpsと並進ベクトルtlpsを求める(S306)。尚、射影行列Pは、数式(4)のnが6以上あれば求めることができる。
【数5】

【0046】
そして、数式(4)に数式(5)を代入することにより、下記の数式(6)が求められる。この数式(6)にステレオカメラ座標系Xにおける3次元座標を代入することにより、対応するレーザパタン平面の2次元座標Xlpc、ylpcを計算することができるようになる。従って、この数式(6)を用いることにより対応点を求めることができる。
【数6】

【0047】
このように、第2校正手段81aによる処理により、平面校正ボード13の代わりに非平面形状を有する非平面校正物体14を用いて、ステレオカメラ座標系と投影手段座標系との間の回転及び並進を校正することも可能である。
【0048】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る3次元計測装置及び3次元計測方法は静的又は動的計測対象物の3次元計測を高精度に行うための技術として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a 3次計測装置
2 計測対象物
3 レーザ投影手段
4 ステレオカメラ
4a 第1撮像手段
4b 第2撮像手段
81 第1校正手段
81a 第2校正手段
82 レーザライン抽出手段
83 対応点探索手段
13 平面校正ボード
14 非平面校正物体
P レーザパタン(格子レーザパタン)
L レーザライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数方向の複数の直線及び/又は曲線状のレーザラインにより構成されるレーザパタンを計測対象物に投影するレーザ投影手段と、
前記レーザパタンが投影された計測対象物を撮影して第1の画像を取得する第1撮像手段及び該第1撮像手段と異なる方向から前記レーザパタンが投影された計測対象物を撮影して第2の画像を取得する第2撮像手段を有するステレオカメラと、
前記第1の画像及び前記第2の画像から前記レーザラインを抽出するレーザライン抽出手段と、
前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点を求める対応点探索手段と、を備えることを特徴とする3次元計測装置。
【請求項2】
予め前記レーザ投影手段により前記レーザパタンが投影された、平面を有する平面校正ボードを用いて、前記ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系と前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する第1校正手段を備え、
前記対応点探索手段は、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記第1校正手段により得られた結果に基づいて前記投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めることを特徴とする請求項1記載の3次元計測装置。
【請求項3】
予め前記レーザ投影手段により前記レーザパタンが投影された、非平面形状を有する非平面校正物体を用いて、前記ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系と前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する第2校正手段を備え、
前記対応点探索手段は、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記第2校正手段により得られた結果に基づいて前記投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めることを特徴とする請求項1記載の3次元計測装置。
【請求項4】
複数方向の複数の直線及び/又は曲線状のレーザラインにより構成されるレーザパタンをレーザ投影手段により計測対象物に投影するレーザ投影ステップと、
前記レーザパタンが投影された計測対象物をステレオカメラの第1撮像手段及び第2撮像手段により撮影して第1の画像及び第2の画像を取得するステレオ画像取得ステップと、
前記第1の画像及び前記第2の画像から前記レーザラインを抽出するレーザライン抽出ステップと、
前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点を求める対応点探索ステップと、を含むことを特徴とする3次元計測方法。
【請求項5】
予め前記レーザ投影手段により前記レーザパタンが投影された、平面を有する平面校正ボードを用いて、前記ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系と前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する第1校正ステップを備え、
前記対応点探索ステップでは、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記第1校正ステップで得られた結果に基づいて前記投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めることを特徴とする請求項4記載の3次元計測方法。
【請求項6】
予め前記レーザ投影手段により前記レーザパタンが投影された、非平面形状を有する非平面校正物体を用いて、前記ステレオカメラに設定されるステレオカメラ座標系と前記レーザ投影手段に設定される投影手段座標系との間の回転及び並進を校正する第2校正ステップを備え、
前記対応点探索ステップでは、前記第1の画像のレーザライン点に対応する前記第2の画像のレーザラインの対応点候補の3次元座標を夫々求め、該3次元座標を前記第2校正ステップで得られた結果に基づいて前記投影手段座標系に変換して前記レーザパタンが構成されているレーザパタン平面に射影した夫々の射影点が前記レーザパタン上にあるか否かを判定することにより、対応点を求めることを特徴とする請求項4記載の3次元計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−58076(P2012−58076A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201605(P2010−201605)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(301021658)株式会社三次元メディア (15)
【Fターム(参考)】