説明

4級ケリドニン及びアルカロイド誘導体類、それらの製造法、及び医薬の製造でのそれらの使用

本発明は、アルカロイド類をアルキル化剤、好ましくはチオテパと反応させ、水または適当な水性溶媒で洗浄することにより未反応のアルキル化剤及び他の水溶性化合物を反応混合物から除去し、反応混合物を強酸、好ましくは塩酸(HCl)で処理し反応生成物の水溶性塩を沈殿させる方法で得られるアルカロイド反応生成物に関する。沈殿した該反応生成物は、少なくとも1種の4級アルカロイド誘導体を含み、予防及び治療、特に免疫または代謝障害及び癌の治療のための薬物として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の開発及び健康管理の分野に属し、ケリドニン(chelidonine)分子中の窒素が4級窒素であるアルカロイドケリドニン及びそれらの誘導体類に関する。本発明はまた、それらの化合物類の製造法、それらの化合物類を含有する組成物、様々な疾病及び身体上の状態の治療のためのそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
アルカロイドケリドニン及びケリドニンを含有する組成物に関しては、代謝障害及び腫瘍を含む、様々な身体上の状態及び疾病においてケリドニンまたは一部のケリドニン誘導体類の治療剤としての使用が当業界に知られている。
【0003】
DE2028330及びUS3865830は、有機溶媒中でケシ科クサノオウ(Chelidonium majus L.、“白屈菜”として知られている)とトリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物とを反応させることにより、チオホスホルアミド−イソキノリン付加物を製造する方法を開示している。
【0004】
AT354644及びAT377988は、抗癌性の燐化合物類との反応によりアルカロイドの燐誘導体類(これらは塩への転換により水溶性を持つ)を製造する方法を開示している。開示された製造方法の不利な点は、反応生成物の水溶性塩への転換が不完全で、反応生成物の殆どが水に不溶になるということである。
【0005】
US5981512は、放射線障害の治療において、AT377988及びAT354644に開示されている物質を使用することについて開示している。
【0006】
前述した特許に記載されている化合物類は、異なる細胞増殖抑制作用及び抗癌作用を有する。アルカロイド類の混合物、特にクサノオウの全アルカロイドの混合物は治療上特に有望で、それらの薬理学的活性は癌治療に関する幾つかの研究で証明されてきた。未反応試薬は、反応の完了後に合成混合物から除去される。トリス(1−アジリジニル)ホルフィン硫化物(今後、“チオテパ”と称する)は、ベンゼン、エーテルまたはクロロフォルムのような有機溶媒に可溶であるため、従来技術によれば、エーテルで反応生成物を洗浄することにより合成混合物から未反応のトリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物を除去した。
【0007】
薬理的に活性のケリドニン誘導体類を製造するための上記の従来技術は、例外なく、可燃性のまたは爆発性の有機溶媒を用いて最終生成物を精製する段階を必要とするが、本発明者によれば、水性溶媒を用いて精製が可能であるばかりでなく、より良い結果を得ることができる。
【発明の開示】
【0008】
本発明の第1の態様は、アルカロイド類、特にケリドニン、オキシケリドニンまたはメトキシケリドニンと、適当なアルキル化剤との反応生成物の斬新な製造法である。その製造法はアルキル化反応の完了後に、水性溶媒、好ましくは水で1回以上洗浄する段階を含む。
【0009】
この方法はまた、広範囲な治療活性と共に低い毒性を有する注射可能な薬学製剤を製造するために、該アルカロイド誘導体類を水溶性塩へ転換させる段階を含む。
【0010】
本発明の第2の態様として、水溶性の反応生成物類、例えばケリドニン誘導体類がある。ここで、最初のアルカロイド分子中の3級窒素は4級窒素へ転換され、4級窒素に対する第4のリガンドは低級アルキル残基、好ましくはメチルまたはエチル残基または置換されたメチルまたはエチル残基、例えばチオテパ残基である。好ましい実施態様によれば、4級ケリドニン誘導体類は標的組織、特に癌組織に選択的に蓄積するなどの特徴を持つ。
【0011】
本発明の更なる態様は、少なくとも1種の4級アルカロイド誘導体類、特に本発明による製造法で得られる4級ケリドニン誘導体類を含む薬学組成物である。
【0012】
本発明はさらに、治療的用途で使用するための薬物としての、4級アルカロイド誘導体類を含む反応生成物類の使用、及び様々な疾病または身体上の状態の治療のための薬学組成物の製造のための上記誘導体類の使用にも関する。
【0013】
本発明の更なる実施態様は特許請求の範囲に記載されている。
【0014】
本発明の製造法は、有機溶媒中のアルカロイドまたはアルカロイド類の混合物を、アルキル化剤、好ましくはそれ自体が治療活性を持つアルキル化剤、例えば少なくとも1つのアジリジン基を含む細胞毒性ホスホルアミド類または燐酸誘導体類と反応させ、次いでその反応生成物を水で洗浄することを含む。水またはそれに相当する水性溶媒、例えばマイルド(mild)塩溶液で洗浄する段階は特に、その後の、水難溶解性または水不溶性の反応生成物類、即ち4級アルカロイド誘導体類を水溶性化合物類、例えば塩類へ転換させる段階を促す。アルキル化剤が細胞毒性物質である場合、それが水溶性であるか、または少なくとも水と接触した後に水溶性成分に分解し、水洗により反応混合物から未反応のアルキル化剤またはその一部を実質的に取り除くことを可能にするのが好ましい。
【0015】
水洗段階は、純粋な有機溶媒、例えばジメチルエーテルの爆発の危険に起因する複雑な安全対策をもはや取る必要がないので、実質的に製造プロセスを単純化することができる。従って、産業規模の製造も問題なく行うことができる。さらに、反応混合物中に存在する不必要な水溶性成分は反応生成物類から分離され、除去される。驚いたことに、水洗段階は、その後の、生成物の水溶性形態への転換段階の効率が、純粋な有機溶媒で洗浄を行った場合に比べ10倍から15倍までに増加するように、反応生成物の構造及び組成に対し有利な効果を与え、従って望ましい最終生成物の収率を著しく改善させる。
【0016】
本発明の製造法は、例えばAT377988の請求項1記載の化合物類を含む抗癌性の燐、特に本発明の図3に示されている燐化合物類、最も好ましくはアジリジン基を有する燐化合物でアルカロイド類をアルキル化させる反応で用いられ得る。
【0017】
本明細書に使われている“ケリドニン(chelidonine)”とは、他に記載がない限りまたは発明の詳細な説明から明確に逸脱しない限り、ケリドニン,オキシケリドニン及びメトキシケリドニンからなる群から選ばれるものまたはその同等物を意味する。
【0018】
本発明による適当な有機溶媒とは、反応に用いられるアルカロイド類が可溶となるいかなる試薬である。これらのアルカロイド類は、例えばモノクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、モノクロロエタン、ジクロロエタン及びトリクロロエタンからなる群から選ばれる溶媒のような、アルキル化反応を促すか或いはそれに寄与する有機溶媒中に溶解され得る。
【0019】
アルカロイド類のアルキル化反応は、高温で、好ましくは溶媒の沸点で起こる。
【0020】
得られた反応生成物は、水で洗浄され、その後水溶性形態へ転換される。これは、HCl気体のような液体または液体状の強酸中に通過させるか、または洗浄した反応生成物の有機溶液にHCl溶液を加えることによる(その間またはその後、塩酸塩が沈殿する)、水溶性塩(特に、塩酸塩)への転換により、AT377988及びAT354644に記載されている製造法に従って行われ得る。このような酸処理により、殆どのアルキル化剤は、アルカロイド類とアルキル化剤から形成された中間反応生成物から分離され、そして修飾アルカロイド誘導体類が残る。この誘導体で、最初の3級窒素原子は4級窒素へ転換され、アルキル化剤に由来する残基または水素残基は第4のリガンドとして上記4級窒素に結合する。上記アルキル化剤に由来する残基は、メチル、エチル、トリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物残基、またはトリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物の一部からなる群から選ばれるのが好ましい。理解を助けるために、下記の化1は本発明の典型的な4級アルカロイド反応生成物(ケリドニンとして例示される)を示す。
【0021】
【化1】

R1=メチル、エチル、トリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物、メチル−R2、エチル−R2(R2はトリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物の一部である)
【0022】
本発明による、沈殿された反応生成物中1つの元素分析の結果から(実施例3参照)、特定の理論に拘るわけではないが、アルキル化反応後反応混合物の酸処理、例えば4級化反応により得られた、アルキル化剤の少なくとも一部またはアルキル化剤の分解化合物類は、沈殿の結晶中である程度咬合するか、或いはある程度結晶に強く付着するので、ジクロロメタン及びエーテルのような有機溶媒で洗浄することによる沈殿の精製が行われ得る。それにもかかわらず、反応生成物は、そのような付加物質の存在下でも完全に作用性を持つことが判明した。
【0023】
反応生成物の水溶性塩は注射溶液として使用するに適している。
【0024】
本発明の1つの実施態様として、その反応は薬局方でチオテパとして知られている、トリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物(CAS 52−24−4番)を用いて行われる。それに類似したものとしては、レデルテパ、オンコ(Onco) チオテパ、TESPA、テスパミン、チオホスファミド、チオ−TEPA、チオトリエチレンホスホルアミド、チィホシル(tifosyl)、トリアジリジニルホスフィン硫化物、N,N’、N”−トリ−1,2−エタンジイルホスホロチオイン トリアミド;N,N’、N”−トリ−1,2−エタンジイルチオホスホルアミド、トリ−(エチレンイミノ)チオホスホルアミド;N,N’、N”−トリエチレンチオホスホルアミド、トリエチレンチオホスホロトリアミド、m−トリエチレンチオホスホルアミド、m−トリス(1−アジリジン−1−イル)ホスフィン硫化物、トリエチレンチオホスホルアミド、トリス(1−アジリジニル)ホスフィン サルファ、トリス(エチレンイミノ)チオ燐酸、TSPA及びWR45312がある。
【0025】
本発明の更なる実施態様によれば、有機溶媒中のアルカロイド類、任意にはクサノオウの全アルカロイド類の抽出物をトリス(1‐アジリジニル)−ホスフィン硫化物(チオテパ)と反応させ、次いで、得られた反応生成物、任意には化合物類の混合物中に存在する反応生成物を水で少なくとも1回洗浄する。チオテパは水中で分解するため、反応後の過剰なチオテパの転換されない残留物は、この手段により、有機相から除去され得る。好ましくは、中間反応生成物、即ちアルキル化剤及びアルカロイド類の間に形成された化合物を含む有機溶液を数回水洗し、毎回水で飽和させる。特に好ましくは、過剰な猛毒性のチオテパが反応生成物から完全に除去されるまで洗浄を繰り返す。
【0026】
また、医薬的使用において不作用に係り、肝臓で肝硬変症を引き起こし得る一部の水溶性毒性アルカロイド類は、水相で合成混合物からそれらを除去するか、或いはそれらの濃度を減少させる。エイムス(Ames)テストにより、本発明により製造された、この実施態様の反応生成物が突然変異誘発性を持たないことが判った。
【0027】
出発原料としてクサノオウからの全アルカロイドの抽出物を用いる場合に、最終反応生成物はアルカロイド類と、チオテパ及びチオテパの分解生成物との高分子量反応生成物を含むアルカロイド類の混合物である。合成プロセスの結果として、アルカロイド類の溶解度は変わる。反応生成物は、未反応のクサノオウのアルカロイド類約60−70%と、トリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物の反応生成物約30−40%の混合物からなる。
【0028】
3級アルカロイド類は、クサノオウから得られたアルカロイド抽出物の出発成分の主な部分を代表する。例えば、下記の3級アルカロイド類は合成混合物中に出発成分として含まれても良い:ケリドニン、プロトピン、スチロピン、アロクリプトピン、α−ホモケリドニン、ケラミジン、ケラミン、L−スパルテイン、ケリジメリン、ジヒドロサンギナリン、オキシサンギナリン及びメトキシケリドニン。
【0029】
アルキル化反応後、未反応の4級アルカロイド類(例えば、ベルベリン)は水洗により反応混合物から実質的に除去される。一方、未反応の水不溶性アルカロイド類及びアルキル化アルカロイド反応生成物は有機溶媒中に残存する。アルキル化反応に用いられたアルキル化剤及び/または有機溶媒の性質に基づき、得られる中間反応生成物はチオテパに結合している化合物類を含んでも良く、ここで1つのチオテパ分子は1つ、2つまたは3つのケリドニン、オキシ−ケリドニンまたはメトキシ−ケリドニン分子類に結合している。さらに、それはアルキル化アルカロイド誘導体類を含んでも良く、ここでアルカロイド分子、例えばケリドニン、オキシ−ケリドニンまたはメトキシ−ケリドニン分子は、その4級窒素の位置で短鎖の直鎖状のアルキル残基、特にメチルまたはエチル基に結合している。さらにアルキル化された反応化合物が、アルキル化反応後に反応混合物中に存在しても良い。
【0030】
本発明に従い、クサノオウの全アルカロイド類とチオテパとの反応から得られた反応生成物は、類似した製造法(洗浄段階が有機溶媒,例えばジエチルエーテルにより行われる)から得られた反応生成物より良い治療活性を示す。本発明の反応生成物中に存在する少なくとも一部の化合物、特に4級ケリドニン誘導体類は、癌組織に選択的に蓄積し、アポプトシスにより癌細胞を破壊する。(知られている殆どの細胞増殖抑制剤とは対照的に、健康な細胞を攻撃しない)これはそのような製剤を用いる治療に対する良好な許容性、そして遺伝子の配列などに起因する癌の発病の危険度が高い個体で治療的、及び予防的使用に対する全体的な適合性をもたらす。それは取り扱いが簡単で、治療用量で有意な副作用を起こさない。
【0031】
クサノオウの全アルカロイド類とチオテパとを反応させて得られた反応生成物は、代謝の調節で生物学的活性を示し、そして代謝疾病(例えば、骨粗しょう症)ばかりでなく、リューマチ性疾病、アレルギー、ウイルス感染、てんかん、多発性硬化症、はん痕、皮膚腫瘍、手術後の傷害及び放射線障害の治療及び予防にも適している。
【0032】
クサノオウの乾いた根の抽出物は合成のための出発物質として用いられても良い。根は葉または茎より多量のアルカロイド類を含む。
【0033】
驚いたことに、つい最近、唯一のアルカロイド源(source)として、商業的に利用可能なケリドニン、オキシケリドニンまたはメトキシケリドニンで合成を開始する場合に、本発明の製造法(実施例3参照)に従って得られた反応生成物は、実施例1に従ってクサノオウの全アルカロイド類のアルキル化反応から得られる反応生成物に少なくとも類似した治療効果及び活性を示すことが判明した。
【0034】
通常の薬剤学的賦形剤類、特に溶液類、例えば注射溶液類または注入溶液類、または軟膏剤のための賦形剤、圧迫ガーゼ(compress)または懸垂帯の基剤は、本発明により製造された反応生成物を含む薬物類に適している。
【0035】
以下の実施例は本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0036】
A)アルカロイド類の抽出:
a.25gのアルカロイド塩混合物を水中に懸濁し、分液漏斗へ移す。ジクロロメタン100mlを追加した後に、分離漏斗を振とうする。そして有機相を分離し、濾過してガラス瓶に入れる。
【0037】
b.混濁が生じるまで、1NのNaOH(pH8−9)を水相に加える。ジクロロメタン100mlを追加した後に、混合物を振とうする。その後、有機相を分離し、ステップaからのジクロロメタン相と合わせる。このプロセスを例えば3回繰り返す。有機相をろ過し合わせる。
【0038】
c.水相はNaOHを加えpHを10に調整する。ジクロロメタンを追加した後に、混合物を振とうする。その後、有機相を分離、ろ過そして他の有機相と合わせる。水相を今度はNaOHでpHを13に調整し、そして抽出をジクロロメタンで繰り返す。
【0039】
d.合わせた有機相を蒸発させて油性の茶色の物質を得る。
【0040】
B)トリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物との反応:
アルカロイド残留物をジクロロメタン中に溶解させ、そしてトリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物を加える。その混合物を80℃で2時間還流させる。室温に冷却後、反応混合物は透明になる。そしてろ過を行い、ろ過物を分離漏斗の中で、250mlの水で数回、例えば3回以上洗浄する。
【0041】
C)塩化水素との反応
洗浄した溶液をガラスビーカーに移し、かき混ぜ、HClガスで飽和させると塩酸塩錯体(complex)が沈殿する。沈殿生成物をろ過しジエチルエーテルで洗浄、乾燥後、水に溶解する。
【0042】
ラットでは、485m/kgのLD50値が、実施例lによる反応生成物から確定された。マウス及びラットの研究で、本発明の生成物が胸腺のホルモン調節を調整し、胸腺を除去した動物でチモシンに類似した活性を有する物質の合成を引き起こすことを見出した。この結果は用量に依存する。その製剤は動物実験において、末梢血のT−リンパ球の数を、50%まで(処理前4.04±0.43x10/l、 処理後6.24±0.73x10/l)増加させ、進入抗原への体液性免疫反応及び脾臓細胞のナチュラルキラー細胞活性(対照群での71.50±9.10%に対して198.20±17.69%)を調整し、白血球のインターフェロン遊離性を強める。動物実験の結果は臨床での観察によって確認された。したがって、免疫パラメーターでの改善は癌患者の中でも観察された。
【0043】
予防と免疫の用途のためには、実施例1の製剤を体重70kg当たり約5mgの用量で使用することができる。癌治療の場合、体重20kg当たり製剤5mgを投与することが好ましい。
【実施例2】
【0044】
HLPCフィンガープリント
測定は傾斜(gradient)モードにおけるイオン対逆相クロマトグラフィーと、285nmのDAD検出器を使用したスペクトル測定により実行された。同時に、クロマトグラムは基準アルカロイドを使用した。さらに、HPLC−MSDの分析が行われたが、該アルカロイドのピークから逸脱したピークは見られなかった。
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及び2のHPLCダイアグラムは次の実験データに基づいて得られた:
【0045】
クロマトグラフィーのパラメーター
カラム:LiChrospher 60 RP Select B,5μm, 125x24mm ID
溶離液:A)アセトニトリル200ml+水800ml+ヘキサンスルホン酸 1.5g+85%リン酸0.3ml
B)アセトニトリル900ml+水100ml+ヘキサンスルホン酸1.5g+85%リン酸0.3ml
傾斜(勾配)5 分 isocratically 100% A;
24分で40%Bまで
1分で100%Bまで
5分100%B;
5分100%Aと平衡
検出:285nmの紫外光線
溶離液流量:1ml/分、35分後に止まる
注入量:10μl
試料作成:反応前の抽出(図1):25mgのアルカロイド類を40mlのメタノールで超音波溶解し50mlまでにして精密ろ過膜でろ過する。
反応生成物(図2):反応生成物を塩酸塩に変換し、水に溶かして1mg/mlの濃度とし、pH2.5〜6.5に調整する。
【実施例3】
【0046】
実施例1に記載されている条件に従って、商業的に利用可能な、精製ケリドニン(Sigma)をトリス(1−アジリジニル)ホルフィン硫化物(チオテパ)と反応させた。アルキル化反応段階、洗浄段階、及びHClガスを用いる転換段階の完了後に、最終生成物を以下のようにさらに処理した:
【0047】
HClで処理して水溶性の反応生成物340gを水中に溶解し、飽和に近く濃縮させ、8℃の冷蔵庫の中に放置した。数時間後、自発的に沈殿が起こり、264mgの沈殿物(今後、U−KRSと称する)を収集した。その沈殿物は、205−207℃のより狭い範囲の沸点を持ち(かなり良く結晶化されている生成物であることを示す)、366nmの紫外光線で照射する際に淡青色の蛍光を示す、淡黄色の吸湿性の結晶を含んだ。黄色、オレンジ色、及び赤色の蛍光帯の痕跡も見られた。その生成物は、薄層クロマトグラフィーで、少なくともR>0.1になるように移動した痕跡を除けば、どんな動きも見せずに出発点(R=0)に留まっていた。核磁気共鳴(NMR)スペクトル(図4)から、U−KRSがケリドニン分子に含まれているものに類似した芳香環を含んでいることが明らかになった。UVスペクトル(図5)は、ケリドニンのUVスペクトル(図6)にかなり類似した、148、155、160、205、230及び282nmで最大吸光を示すが、ただU−KRSの場合230nmで、ケリドニンの場合240nmでそれぞれピークを示すというところだけが異なっていた。これは、U−KRSの窒素が4級である一方、ケリドニンの窒素は3級であることを示す。
【0048】
より詳細な分析情報は、図7及び8(U−KRS)及び図9(ケリドニン)に示されている質量分光写真、及び以下の組成(表1)を示すU−KRSの元素分析結果から得られる。
【0049】
全質量に対する白分率(%)で示したU−KRSの元素組成
【表1】

【0050】
以下の実施例は、実施例3に記載されている方法から得られる化合物U−KRSの様々な用途を示す。
【実施例4】
【0051】
抗腫瘍剤U−KRSによるインビトロ細胞成長の選択的阻害
材料及び方法
細胞培養は、8%COを含有する加湿雰囲気下で、37−37.5℃の、茶色瓶内で行われた。融合した培養物は、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)中0.01%トリプシン及び0.2%EDTAの溶液により分離され、1:5から1:25の割合で分配された。
コラゲナーゼ処理を行って臍静脈からヒト内皮細胞を分離した。内皮細胞の培地は、15%熱不活性化ウシ胎児血清、200μg/mlの内皮細胞成長因子及び90μg/mlのへパリンを補充したM199であった。
【0052】
蛍光顕微鏡検査法
細胞を35mmディッシュで成長させ、100μg/mlのU−KRSで30−60分間インキュベートした。その培地を吸入し、細胞をPBSで2回洗浄した。細胞上にカバーガラスを設け、
アルゴンレーザー源を備えた共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用い蛍光を励起させた。その放出光は増倍型光電管チャネル中で検出された。MRC600映像処理ソフトウェアを用い、信号をビデオモニター上に映した。
【0053】
結果
1.20−40μg/mlのU−KRSで、内皮細胞の成長は約55%阻害された。このような濃度はヒト骨肉腫細胞株を死滅させた。2つの細胞タイプのハイブリッドは正常細胞とほぼ同じ感度を示した。
2.自己蛍光のため、U−KRSは細胞内で検出され得る。レーザースキャニング顕微鏡は悪性細胞で高い程度のU−KRSの取り込み率(uptake)を示した。
【実施例5】
【0054】
抗癌剤としてのU−KRS−酸素消費
材料及び方法
マウスでのインビボ実験。5匹の対照動物のうち2匹にそれぞれ50μgのエーリッヒ(Ehrlich)マウス腹水腫瘍サスペンション(それは8日齢の、成体のドナー動物から新たに分離したものである)を腹腔内へ注射した。対照群にはそれ以上処理しなかった。試験群には、腫瘍の移植の直後に、10mgのU−KRS/kg(動物の体重)を腹部に注射した。
【0055】
結果
腹水腫瘍を移植したマウスは、U−KRSの服腔内投与後或いは皮下投与後共に、そのような処置が施されなかった移植動物に比べ、より長い生存期間を示した。
インビトロで電極により腹水腫瘍サスペンションの酸素消費を測定した結果、U−KRSの添加後しばらくは酸素消費が増加したが、その後、U−KRSを含んでいない対照サスペンションと違って酸素消費が迅速に減少した。
【実施例6】
【0056】
げっ歯類でU−KRSによるモルヒネの抗侵害受容作用の改質
材料及び方法
動物:実験は雄アルビノスイス(Albino Swiss)マウス及び雄ウィスター(Wistar)ラットに対し行われた。
処置:マウスに対し20mg/kg、ラットに対し25mg/kgのU−KRSを初期用量として服腔内へ注射した。
実験方法:各々の実験で、4群の動物に1)偽薬、2)モルヒネ、3)U−KRS、4)U−KRS+モルヒネを注射した。
【0057】
結果:
U−KRSとモルヒネを同時に投与すると、麻薬性鎮痛剤の作用が改質された。これらは、潜伏期間の増加から明らかなように、ラットのテール−フリック(tail−flick)テストで抗侵害受容作用を引き起こした。
このような結果は、モルヒネと同時に投与されたU−KRSが、前述したテストで侵害受容反応に対する実験動物の感受性を変化させることを示す。この結果はU−KRSが、癌に用いられる鎮痛剤と互いに作用し得ることを示唆する。
【実施例7】
【0058】
誘導体U−KRSによる、悪性細胞で複蜂性の(bimodal)プログラム細胞死の誘導
材料及び方法
K562赤白血病細胞株を用い、純粋な結晶形態で生成されたU−KRSを水中に1.2mg/mlの濃度で溶解させた。
様々な濃度のU−KRSに露出されたK562細胞中DNAの含量は、ヨウ化プロピジウム及びフローサイトメトリーを用い分析した。
【0059】
結果
この研究の結果は、U−KRSが複蜂性のプログラム細胞死を誘導することを示す。そのうち第1の蜂であるアポプトシスはキニジン感受性Ca2+−依存性K+チャネルにより媒介され;第2の蜂である水疱(blister)細胞死は微小管の形成を防止し、したがって多倍数性の誘導を防止することにより媒介される。
【実施例8】
【0060】
悪性細胞でDNA、RNA及びたんぱく質合成に対するU−KRSの影響
材料及び方法
Hで標識されたチミジン、20μl培地中0.5μCi;ウリジン、20μl培地中0.5μCi;及びロイシン、20μl培地中1.0μCiを、異なるU−KRS濃度を持つ4つのウェル内に2−4時間放置した。その前に、細胞株、モルモットの肝細胞、C1L肝細胞,ヒト扁桃腺細胞、マウスのリンパ種、マウスの骨髄種、ヨシダ細胞、2つのHeLa菌株、EsB−、EB、リンパ種、ZAC/1、P815を、96マイクロタイターウェル中に37℃で24時間成長させた。
WiDr細胞は、1、4、8及び14μg/mlのU−KRS濃度で6時間及び24時間の多少異なる計画でインキュベートした。
【0061】
結果
蛍光分析で、U−KRSは、他の癌細胞域に比べて、癌細胞の核の構成要素により強い親和性を示す。蛍光現象は腫瘍及び転移域でU−KRSの強い、かつ迅速な親和性を明確に示す。テストされた癌細胞株の成長を100%阻害する供与量で処置した正常細胞において毒性効果は一切見られない。
【実施例9】
【0062】
ヒト異種移植片に対するU−KRSの影響
材料及び方法
ヒト腫瘍異種移植片から腫瘍細胞を取り、それを連続的にヌードマウスへ移植した。これらの細胞はインビトロコロニー形成分析に用いられた。腫瘍細胞を様々な濃度の薬物U−KRSと共に少なくとも一週間連続的にインキュベートした。それは6種の異なるタイプに対して行われ、各々の腫瘍に対しコロニー形成が評価された。薬物の効果は百分率T/C(試験群/対照群)として報告された。
【0063】
結果
多くの異なる種類の腫瘍は、U−KRSによりテストされた様々な場合に関連して、U−KRSに感受性を持つ。殺腫瘍性の効果は免疫器具の再生能力に依存するものと見られ、その免疫器具の刺激及び調整はU−KRSにより行われ得る。
【実施例10】
【0064】
ヒト悪性細胞株に対するU−KRSの影響
材料及び方法
4種の悪性細胞株を用いた:1)マウス肉腫;2)乳癌;3)ヒト結腸癌;4)ヒト黒色種。
U−KRS及びPP9AA02誘導体を培地に加えた。
照射後、1つのスライド当たり200個の細胞をプレートし、1週間インキュベートし、その後に染色し、その数を数えた。
【0065】
結果
ここに示されている結果は、U−KRS及びPP9AA02誘導体がヒト悪性細胞株に対し細胞毒性物質として相乗的に作用することを意味する。
【実施例11】
【0066】
ヒト類表皮癌細胞株でU−KRSにより誘導されたG2/Mの阻止(arrest)及びアポプトシス
材料及び方法
一次性のヒトケラチノサイト(keratinocyte)を新生児の皮膚試料から分離した。表皮シートをトリプシンで分解し、遠心分離により単一細胞サスペンションを収集した。
【0067】
結果
U−KRSは用量依存的に細胞サイクルの進行を妨げる。
U−KRS処理はA431及びME180細胞で細胞サイクル分布に影響を与え、アポプトシスを誘導する。
サイクリン類、CDK類及びCDK阻害薬p27の発現は、U−KRSでの処理後に、変化する。
【実施例12】
【0068】
U−KRSの抗転移的効果、及び黒色種B−16を持つマウスの酸素及びエネルギー代謝に対するU−KRSの影響
材料及び方法
実験は133 C57B/6雄マウスで行われた。転移性の黒色種B−16を各々のマウスの右脛筋肉へ移植した。腫瘍移植後10日目に、該動物を2つの群に分けた。1つの群には、目の静脈洞に0.05ml容積で1mg/kg用量のU−KRSを与えた。1日おきに一回、全5回注射した。もう1つの群には、目の静脈洞に滅菌した生理食塩水を同様に与えた。
【0069】
結果
U−KRSを最初に静脈注射した後1日目に、筋肉組織で酸素レジームの指数は著しく向上した。pOレベルのレートは酸素吸入の際に最大まで増加し、pOのレートは吸入の停止後最大レベルから初期レベルまで下がった。試験群の動物で、肝臓ミトコンドリアの酸化的リン酸化の特定の指数はまた、製剤の投与後1日で増加した。悪性過程の進行中に、酸素及び代謝は阻害されるのが判った。U−KRSを5回注射したマウスでは、そのような阻害がそれほど著しくはなかった。対照群の動物の場合、筋肉組織で酸素圧力のレベル及びそこへのO運搬速度は統計的に高かった。得られたデータを一般化すると、B/16黒色種を持つマウスでU−KRSが組織への酸素の運搬を増加させるばかりでなく、生体エネルギー論に基づき悪性過程の破壊的な効果を阻害するという結論に到達することができる。
【0070】
以下の実施例はU−KRSの免疫−調整特性及び代謝−調節特性を説明する。これらの特性は、U−KRSが、特にアレルギー反応、ウイルス疾病(HIV、肝炎A、B及びC、大腸菌、インフルエンザ)、骨粗しょう症、多発関節炎、乾癬及び他の疾病または身体の状態の治療に適するようにする。
【実施例13】
【0071】
U−KRSによる大食細胞の殺腫瘍活性の向上
材料及び方法
BALB/cマウスは,実験室で近親交配(brother/sister mating)により維持された。皮下注射により腫瘍D1 DMBA/3を通常的にBALB/cに移植させた。腫瘍は移植後5日に明らかになった。
【0072】
皮下腫瘍移植後5日目に、U−KRSを用いるインビボ処置を開始した。3つの投与経路、即ち静脈、服腔、及び皮下を用いた。それぞれ少なくとも10匹のマウスからなる3つの全試験群には、PBS0.15ml中5.0μのU−KRSを投与した。その投与量は予備実験に基づき選ばれた。
【0073】
結果
処置したマウスで、腫瘍の成長速度は著しく減少した。U−KRSを投与したマウスでは該薬物に関するいかなる副作用も見られなかった。
【実施例14】
【0074】
正常のヒトリンパ球の表現型に対するU−KRSのインビトロ効果
材料及び方法
この研究は10名の健康な志願者の抹消血から分離したリンパ球に対して行われた。その細胞は、フィコル−パーク(Ficoll−Paque)濃度勾配遠心分離で分離された。細胞の生存度は、0.1%トリパンブルー染色により、95%であることが判った。
全T−細胞、T−ヘルパー細胞及びT−サプレッサー細胞に対するモノクローナル抗体を用い、免疫蛍光法によりリンパ球の分集団を定量した。次いで、その細胞を、FITC/接合ウサギF/ab/2断片抗−マウスIgGで処理し、PBSで洗浄し、ポリビニル−アルコール及びグリセロールを用いスライド上に置いた。対照製剤では、モノクローナル抗体の代わりにPBSまたは正常マウス血清を用いた。
【0075】
結果
T−細胞の分集団に対するU−KRSの直接的な影響の可能性を示す本研究により、U−KRSが癌患者で細胞性免疫に対する優れた免疫刺激物質になり得るということを確認した。
【実施例15】
【0076】
ヒト抹消血の単球(単核細胞)に対するU−KRSの細胞分裂誘起特性
材料及び方法
抹消血単核細胞。血液を同容積のPBS(pH7.5で、1mMのEDTAを含む)で希釈し、ヒストパーク(Histopaque)1077上に層状にした。そのチューブを2000rpmで30分間遠心分離した。リンパ球を含む界面層を収集し、RPMI組織培地で3回洗浄した。
【0077】
結果
細胞をU−KRSで短時間前処理しても、それはPHA細胞分裂誘起特性に対し強力な上昇効果をもたらし、その結果PHAを単独で使用した場合に比べ著しく高い細胞刺激指数を示すことが判明した。さらに、細胞をPHAで短時間処理することが、その細胞分裂誘起効果を奏するのにいつも肝要であることも判った。
その研究は、U−KRSで処理した悪性の発展段階で、患者の循環性リンパ球が著しく増加することを示す。
【実施例16】
【0078】
U−KRSによる、インビボで免疫効果器細胞の細胞溶解活性及び腫瘍成長阻害の調整
材料及び方法
腫瘍細胞:肥胖細胞腫P815及びAKR白血病AKIL細胞株を、ペニシリン及びストレプトマイシンを含む9.0%ウシ胎児血清を補充したDMEM培地中に維持させた。
【0079】
結果
本インビトロ研究は、U−KRSが、同種異系免疫化されたマウスから得られた脾性のリンパ球の溶解活性を48倍まで増加させる、効果的な生物学的反応調整剤であることを示す。IL−2で処理した脾細胞及び服腔の滲出液リンパ球の溶解活性はまた、細胞により媒介される溶解分析媒質にU−KRSを加えることにより著しく増加した。
U−KRSがまた脾のリンパ球の細胞溶解活性を強めるという結果は、インビボで観察されたU−KRSの治療効果が免疫効果器細胞の細胞溶解活性を刺激することにより媒介されることを示す。
【実施例17】
【0080】
インビトロ及びインビボで免疫学的血液パラメーターに対するU−KRSの影響
材料及び方法
この研究では96匹のウィスターラットを用いた。初期年齢は雄及び雌ラット共に16週であった。
用量0.01から20μg/mlでの刺激指数を評価するために、U−KRS及びPHAをTリンパ球上で#Hチミジンテストにより試験した。
【0081】
結果
U−KRSは、造血及び免疫系の異なるサブセットを刺激する。この実験では、特定の幹細胞を刺激した場合、或いは赤血球形成系の一般的な活性化の場合に起こり得る徴候として、網状赤血球増加症が誘導される。絶対的な白血球数での変化がないことが判れば、U−KRSの作用により、強力な調整特性(例えば、異なるサブセットの転位)がこの実験で起こると仮定しても良いだろう。
これらの実験で得られたものに類似した刺激が、癌細胞でのアポプトシスを含めて、インビトロで見られた。
【実施例18】
【0082】
マウスでオバルブミン抗原性及び抗オバルブミンIgE抗体反応に対するU−KRSの阻害効果
材料及び方法
オバルブミンにより誘導された感作を阻害するU−KRSの能力を、BALB/c及びF1(BALB/c x C57B1/6J)マウスでテストした。U−KRSは抗原(オバルブミン)及びアジュバント(明礬)との混合物の形態でマウスへ導入され、マウスの感作を妨げ、より低い抗−OA IgE抗体反応で応答し、並びに感作されたマウスの腹膜腔から分離した肥満細胞からの、抗原により誘導された、ヒスタミンの放出を減少させた。アナフィラキシーで抗原性odオバルブミン(OA)に対するU−KRSの効果は、ラットに対し異種性の手動的皮膚のアナフィラキシー反応でテストした。
【0083】
結果
その結果は、U−KRSとの混合物で製造されたOAが、異種のPCA反応でラットの肥満細胞の表面に付着されかつマウスで自生のOAに対し生成された、抗−OAIgE抗体と反応する能力が減少したことを示す。その結果は、OAのU−KRS前処理が、その抗原性、及び自生のIgE分子に対し生成された抗−OAIgE抗体類と反応する能力に影響を及ぼし得ることを示唆する。
【実施例19】
【0084】
初期骨粗しょう症に対するU−KRS治療の効果
材料及び方法
卵巣摘出術による初期骨粗しょう症を持つ雌ラットにU−KRSを30mg/kgの用量で1日おきに6ヶ月間腹腔内投与した。U−KRSの投与は外科手術後2日目に開始した。U−KRSを用いる長期治療の末期に、すべてのラットに対し、両方の上腕骨の力をテストし、そしてラット大たい骨の幾つかのパラメーターを測定した。
【0085】
結果
その結果は、上腕骨の機械的強度の減少及び卵巣摘出術により誘発された大たい骨での幾つかの変化が、6ヶ月間のU−KRS治療により予防されたことを示す。
【実施例20】
【0086】
細菌である大腸菌(E.coli)及び黄色ブドウ球菌(S.aureus)、及びインフルエンザウイルスに対するU−KRS製剤の影響
材料及び方法
インフルエンザウイルス菌株APR8/HON1/34を雌鶏のエンブリオ上で培養した。
現在臨床的に用いられている大腸菌及び黄色ブドウ球菌株209Pを用いた。U−KRS製剤シリーズ290614
【0087】
結果
この研究では、感染されたマクロ生物体でU−KRS製剤の抗−感染作用の存在を確認した。そのような作用は、これらのマイクロ生物体で感染された細胞またはマイクロ生物体の2次的分解に起因する、宿主免疫系の幾つかのエレメントの刺激を通じて働く。
【実施例21】
【0088】
インフルエンザウイルスに対するU−KRSの生物学的活性
材料及び方法
Aタイプのウイルス、ポート−チャルメルス(Port−Chalmers)1/73培養物、抗原性H3N2変種。
このウイルスに、エンブリオ当たり1、10及び100EID50を注射した。U−KRSをハンクス溶液中に溶解させた。
【0089】
結果
U−KRSが、感染プロセスの発展を妨げる作用を持つことを確認した。
【実施例22】
【0090】
照射の効果に対するU−KRSの作用
材料及び方法
16/20g体重のCBA/J雄マウス
マウスに対し、6.0Gyから7.5Gyまでの用量で短期間全身カンマ−照射を行った。CEGO装置を用いて蓄積線量8.75Gyで長期照射を行った。
U−KRSは0.1、1.4及び12mg/kg(体重)の用量で服腔内投与した。
【0091】
結果
照射の効果を改質させるU−KRSの能力は、0.1から12mg/kgの薬物投与量を用い、CBA/Jマウスで研究された。U−KRSは、照射用量5.00から7Gyでマウスの生存率を50―60%まで増加させたが、7.5Gyの用量ではいかなる効果も見られなかった。薬物用量の変更は、照射の結果に影響を及ぼさなかった。
本研究の主な成果は、U−KRSが予防及び治療に適用された場合に、照射の効果を改質することができるということにある。
【実施例23】
【0092】
イオン化放射線に対するU−KRSの効果
材料及び方法
乳癌、結腸直腸の腺癌、神経膠芽細胞腫及び膵臓腺癌の細胞株。U−KRS製剤。
細胞生存に対するU−KRSの効果を、0.2μG MLの濃度でテストした。その露出時間は1、3及び24時間で、その後細胞をリン酸塩/緩衝塩水で洗浄し、新しい培地を加えた。
【0093】
結果
U−KRSで処理した場合、クローン原性の細胞生存において、特異の時間及び用量に依存する減少が見られた。テストを行った、すべての4つのヒト腫瘍の細胞株は、24時間インキュベートしたヒト線維芽細胞に比べて、クローン原性の生存が100倍までより高く割合で減少した場合を含めて、U−KRSに対し異なる感受性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、クサノオウの根の特徴的な全アルカロイド組成物のHPLCダイアグラムを示す。
【図2】図2は、実施例1による製剤のHPLCフィンガープリントを示す。
【図3】図3は、適切な試薬として選択されたリン誘導体を示す。
【図4】図4は、反応生成物であるU−KRSの核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図5】図5は、反応生成物であるU−KRSのUVスペクトルを示す。
【図6】図6は、ケリドニン塩酸塩のUVスペクトルを示す。
【図7】図7は、反応生成物であるU−KRSの質量スペクトルの第1のセクションを示す。
【図8】図8は、より高い解像度での、反応生成物U−KRSの質量スペクトルの第2のセクションを示す。
【図9】図9は、ケリドニン塩酸塩の質量スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上のアルカロイドとアルキル化剤との反応を通じて得られた一種以上のアルカロイド誘導体を含むアルカロイド反応生成物であって、最初の上記誘導体中の3級窒素は4級の形態で存在し、第4のリガンドとして、該アルキル化剤に由来する残基または水素残基がその4級窒素に結合しており、好ましくは、その残基がメチル、エチル及びトリス(1−アジリジニル)ホルフィン硫化物残基からなる群、またはトリス(1−アジリジニル)ホルフィン硫化物の一部から選ばれるアルカロイド反応生成物。
【請求項2】
前記一種以上のアルカロイド誘導体が、水溶性塩、好ましくは塩酸塩の形態で存在することを特徴とする請求項1記載のアルカロイド反応生成物。
【請求項3】
前記一種以上のアルカロイドが、草本、クサノオウ中に存在する一種以上のアルカロイド、好ましくはクサノオウの幾つかのアルカロイド類または全アルカロイド類の混合物であることを特徴とする請求項1または2記載のアルカロイド反応生成物。
【請求項4】
前記アルカロイドが、ケリドニン、プロトピン、スチロピン、アロクリプトピン、ホモケリドニン、サンギナリン、ケラミジン、ケラミン、L−スパルテイン及びオキシケリドニンからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のアルカロイド反応生成物。
【請求項5】
ケリドニン、オキシケリドニンまたはメトキシケリドニンが、唯一のアルカロイド源として存在することを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のアルカロイド反応生成物。
【請求項6】
未反応の3級アルカロイド類、未反応のアルキル化剤、及びアルキル化剤の分解生成物からなる群から選ばれる一種以上の化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のアルカロイド反応生成物。
【請求項7】
図4のNMRスペクトル、図5のUVスペクトル、図7及び8の質量スペクトル及び表1の元素分析からなる群から選ばれる、少なくとも1つの分析結果により特徴付けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか記載のアルカロイド反応生成物。
【請求項8】
請求項11から22のいずれか記載の方法で得られる、請求項1から7のいずれか記載のアルカロイド反応生成物。
【請求項9】
天然のケリドニンが、下記の化1に示される4級の形態で存在するケリドニン誘導体。
【化1】

(ここで、4級窒素に対する第4のリガンドR1として、水素、またはメチルまたはエチル残基が存在する。)
【請求項10】
水溶性形態、好ましくは強酸との塩、もっとも好ましくは塩酸塩の形態で存在することを特徴とする請求項9記載のケリドニン誘導体。
【請求項11】
請求項1のアルカロイド反応生成物の製造方法であって、
a)化学構造中に3級窒素を有する一種以上のアルカロイド及び有機溶媒を含む反応混合物、及びアルキル化剤を提供し、有機溶媒の存在下で上記一種以上のアルカロイドとアルキル化剤との反応を通じてアルキル化反応を実行し、該3級アルカロイド窒素でアルキル化が起こるため、その3級窒素が4級窒素へ転換された、1種以上の反応生成物を形成する段階;
b)上記反応の完了後に、得られる反応混合物を、水性溶媒または水で1回以上洗浄し、反応混合物中に存在する水溶性化合物を除去する段階;及び
c)洗浄した該反応混合物を、気体または液体状の強酸、好ましくは気体状の塩化水素または塩酸溶液で処理し、残存する1種以上の反応生成物を水溶性形態、特に水溶性塩へ転換させる段階
を含む製造方法。
【請求項12】
前記段階c)で、酸処理中またはその後に反応生成物が沈殿し、その後、該沈殿物を有機溶媒から分離し、任意には、好ましくは有機溶媒を用いてその沈殿物をさらに精製することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記アルキル化反応が、高温、特に溶媒の沸点で行われることを特徴とする請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
草本、クサノオウ中に存在する一種以上のアルカロイド、好ましくはクサノオウの幾つかのアルカロイド類または全アルカロイド類の混合物が、アルカロイド源としても用いられることを特徴とする請求項11から13のいずれか記載の方法。
【請求項15】
前記アルカロイドが、ケリドニン、プロトピン、スチロピン、アロクリプトピン、ホモケリドニン、サンギナリン、ケラミジン、ケラミン、L−スパルテイン及びオキシケリドニンからなる群から選ばれることを特徴とする請求項11から14のいずれか記載の方法。
【請求項16】
ケリドニン、オキシケリドニンまたはメトキシケリドニンを、唯一のアルカロイド源として使用することを特徴とする請求項11から15のいずれか記載の方法。
【請求項17】
前記アルキル化剤が、生理活性剤、好ましくは細胞毒性剤であることを特徴とする請求項11から16のいずれか記載の方法。
【請求項18】
前記アルキル化剤が、水溶性であるか、または水と接触すると水溶性成分に分解することを特徴とする請求項11から17のいずれか記載の方法。
【請求項19】
前記有機溶媒が、アルキル化反応を促すかまたはそれに寄与し、好ましくは、モノクロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、モノクロロエタン、ジクロロエタン及びトリクロロエタンからなる群から選ばれることを特徴とする請求項11から18のいずれか記載の方法。
【請求項20】
前記アルキル化剤が、トリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物(CAS 52−24−4番)であることを特徴とする請求項11から19のいずれか記載の方法。
【請求項21】
前記反応生成物が、ケリドニン、オキシケリドニン及びメトキシケリドニンからなる群から選ばれる一種以上の化合物を含み、該化合物が、4級窒素原子を持ち、第4のリガンドとして、アルキル化剤に由来する残基または水素残基が上記4級窒素原子に結合しており、その残基が、好ましくは、メチル、エチル及びトリス(1−アジリジニル)−ホスフィン硫化物残基からなる群から選ばれることを特徴とする請求項11から20記載の方法。
【請求項22】
前記トリス(1−アジリジニル)ホスフィン硫化物が、アルキル化剤として用いられ、前記残基が、該アルキル化剤の一部であり、任意には酸処理に起因して形成された分解生成物であることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
薬物または医薬としての、請求項1から10のいずれか記載の反応生成物の使用。
【請求項24】
ウイルス感染、癌、免疫障害、代謝障害及び放射線障害からなる群から選ばれる疾病または身体上の状態の治療または予防用薬学組成物の製造のための、請求項1から10のいずれか記載の反応生成物の使用。
【請求項25】
前記疾病が、アレルギー、骨粗しょう症、皮膚腫瘍、インフルエンザウイルス感染、リューマチ性疾病、はん痕、手術後の傷害、てんかん及び多発性硬化症からなる群から選ばれることを特徴とする請求項24記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−520763(P2006−520763A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504683(P2006−504683)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002637
【国際公開番号】WO2004/082698
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(502159125)
【氏名又は名称原語表記】NOWICKY, Wassyl
【Fターム(参考)】