説明

6価クロム定量用の前処理方法及び6価クロムの定量方法

【課題】 固体試料に含まれる6価クロム量を正確に測定できる前処理方法、及び、その前処理方法を用いた6価クロムの定量方法を提供する。
【解決手段】 鉄板の表面に亜鉛でメッキを行い、亜鉛メッキ面にクロメート処理が施された試料1を、濃度1%の水酸化ナトリウム水溶液2を収容した容器3内に入れる(a)。この容器3をホットプレート4上に載置し、60℃〜70℃で2時間加熱する(b)。この加熱処理中に、試料1に含まれる6価クロムが水酸化ナトリウム水溶液2に溶出する。加熱処理後、室温で放冷して試料溶液5を得る(c)。吸光光度法、ICP発光法または原子吸光法により、試料溶液5内の6価クロム量を測定して、試料1に含まれる6価クロムを定量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体試料に含まれる6価クロムを定量するための前処理方法、及び、その前処理方法を用いた6価クロムの定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの各種機器に使用される鉄材の表面が亜鉛,アルミニウム,マグネシウムなどの金属でメッキされ、さらにその金属表面がクロメート処理されることが多い。クロメート処理では、金属表面にゲル状のクロムの水和酸化物(xCr2 3 ・yCrO3 ・zH2 O)を形成して、金属の防錆機能を発揮する。また、鉄材の表面に直接クロメート処理を施す場合もある。通常使用されている鉄製ネジなども、クロメート処理したものが使われている。
【0003】
近年、環境問題の関心が高まり、人体及び環境に有害とされる金属の使用量規制がなされている。この使用量が規制される金属の1つとして6価クロムがある。よって、クロメート処理された試料の6価クロムの含有量を測定することが重要である。
【0004】
しかしながら、一般的な酸分解法を用いた場合、酸の種類による化学変化(酸化・還元反応)によって容易に、3価クロム(Cr3+)が6価クロム(Cr6+)に酸化されたり、6価クロム(Cr6+)が3価クロム(Cr3+)に還元されたりするため、クロムの全量を測定することは可能であったが、6価クロムの量を選択的に測定することはできなかった。
【0005】
一方、水による溶出では、クロメート処理された固体中の6価クロムが一部しか水に溶けないため、良好な定量精度が得られない。なお、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis:電子分光)法での定量は可能であるが、装置コストが高く、装置の取扱いに専門的知識が必要であるため、一般的な使用には適さない。
【0006】
アルカリ溶液を用いて試料中の6価クロムを溶出させ、溶出させた6価クロムを吸光光度法によって定量する手法が提案されている(特許文献1参照)。この手法の概要は、以下の通りである。直径18mmの鉄板の表面をクロメート処理した試料を、5%のアルカリ溶液(水酸化ナトリウム水溶液または炭酸ナトリウム水溶液)を収容した容器に入れ、その容器を40℃〜50℃で加熱して6価クロムを溶出させ、溶出させた6価クロムの黄色を反応容器と一体となった10cmのセルを使った420nmの波長の光線による吸光光度分析を連続的に行うことにより、6価クロムを定量する。
【0007】
図7は、特許文献1において検出する吸光度の経時変化を示すグラフである。下地の金属(鉄)により還元反応が起こって、6価クロムが3価クロムに変化するため、吸光光度法にて6価クロム自身の色である黄色に吸収される420nmの波長の光線を連続的に検出し、最も大きな吸収を示した時点(図中A)での6価クロムの濃度を試料中の6価クロムの濃度としている。
【特許文献1】特開2003−172696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示された方法では、6価クロムが3価クロムに還元されることを前提として6価クロムを定量している。このような方法では、試料全体から均一に6価クロムが溶出されることはあり得ないので、反応が遅い部分では6価クロムが溶出し、反応が速い部分では下地の金属(例えば鉄)による還元反応が起こる。よって、図7のAで示した時点が6価クロム量に対応しているとは限らないため、安定した測定を行えないという問題がある。また、下地の金属(例えば鉄)が溶けることにより、その金属特有の色(例えば鉄では茶色)にアルカリ溶液が着色されるため、420nmの波長の光線の吸収に干渉をきたす。この結果、正確な6価クロム量を測定できないという問題がある。
【0009】
420nmの波長光による吸収分析は感度が悪く、通常1cmセルでの定量下限は5ppm程度である。よって、10cmのセルを使用した場合、分析可能な濃度は0.5ppmである。直径18mmの試料を測定する際には、5μg/cm2 が限度であって、これより少量の6価クロムは測定できないという問題がある。また、6価クロムに代えて3価クロムでクロメート処理された試料中の6価クロムの定量は濃度が低いため行えないという問題もある。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、正確な6価クロム量を安定的に測定できる6価クロム定量用の前処理方法、及び、その前処理方法を用いた6価クロムの定量方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、6価クロムの濃度が低くても精度良く6価クロム量を測定できる6価クロム定量用の前処理方法、及び、その前処理方法を用いた6価クロムの定量方法を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、3価クロムでクロメート処理された試料中の6価クロム量を測定できる6価クロム定量用の前処理方法、及び、その前処理方法を用いた6価クロムの定量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る6価クロム定量用の前処理方法は、試料に含まれる6価クロムを定量するための前処理方法において、前記試料を濃度0.1%〜2.5%の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、前記試料が入れられた前記水酸化ナトリウム水溶液を加熱して前記試料から6価クロムを溶出させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る6価クロムの定量方法は、試料に含まれる6価クロムを定量する方法において、前記試料を濃度0.1%〜2.5%の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、前記試料が入れられた前記水酸化ナトリウム水溶液を加熱して前記試料から6価クロムを溶出させ、6価クロムを溶出させた前記水酸化ナトリウム水溶液に6価クロムの存在下で発色する発色剤を注入して吸光光度法で6価クロムの量を測定することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る6価クロムの定量方法は、試料に含まれる6価クロムを定量する方法において、前記試料を濃度0.1%〜2.5%の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、前記試料が入れられた前記水酸化ナトリウム水溶液を加熱して前記試料から6価クロムを溶出させ、6価クロムを溶出させた前記水酸化ナトリウム水溶液に3価鉄を加えた後にアルカリ性にすることにより水酸化鉄と共に3価クロムの水酸化物を沈殿させて、6価クロムの量を測定することを特徴とする。また、本発明に係る6価クロムの定量方法は、上記6価クロムの定量時に、沈殿を含まない濾液に対してICP(Inductively Coupled Plasma)発光法または原子吸光法により前記6価クロムの量を測定することを特徴とする。
【0016】
例えば、下地金属として還元性が強い亜鉛を含む試料の場合、5%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液では加熱すると6価クロム(Cr6+)が容易に3価クロム(Cr3+)に還元され、6価クロムが減少する(図7参照)。試料が入れられた水酸化ナトリウム水溶液を加熱した際に還元反応が起こらないようにするためには、水酸化ナトリウム水溶液の濃度及び加熱温度の条件が重要である。本発明では、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.1%〜2.5%とし、加熱温度を60℃〜70℃とする。このような条件によれば、還元反応が起こらない状態で、6価クロムをほぼ完全に試料から溶出させることができ、正確な6価クロム量の測定を安定的に行える。
【0017】
図8は、本発明において検出する吸光度の経時変化を示すグラフである。時間の経過と共に6価クロムの溶出量が増加していき、図中Bで示した時点で全ての6価クロムが溶出される。その後、時間が経過しても本発明では6価クロムから3価クロムへの還元反応が起こらないため、6価クロムの量は減少せず、一定の値を維持する。よって、特許文献1のように連続的に吸光度を検出してそのピーク値(図7のA)を求めるような処理は不要であり、図8のB以降であればいつでも正確な6価クロムの量を安定的に測定できる。
【0018】
本発明にあっては、6価クロムを溶出させた水酸化ナトリウム水溶液に発色剤(例えばジフェニールカルパジド)を注入し、所定の波長(ジフェニールカルパジドの場合には543nm)の光線を用いた吸光光度法にて、6価クロムの量を測定する。よって、420nmの黄色の吸収と比べて約1000倍高感度であって、0.005ppmまでの測定が可能となる。
【0019】
本発明にあっては、6価クロムを溶出させた水酸化ナトリウム水溶液に3価鉄を加え、例えばアンモニア水を加えてアルカリ性にして、水酸化鉄と共に3価クロムを水酸化物として沈殿させた後、例えばICP発光法または原子吸光法にて6価クロムを定量する。よって、試料に対して0.02〜0.04μg/cm2 の測定が可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、試料を0.1%〜2.5%の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、その水酸化ナトリウム水溶液を加熱して6価クロムを溶出させるようにしたので、還元反応が起きない状態で、6価クロムをほぼ完全に試料から溶出させることができ、この結果、試料内の正確な6価クロム量を安定的に測定することができる。また、6価クロムから3価クロムに還元されないため、3価クロムでクロメート処理された試料中の6価クロムの定量も行える。
【0021】
また、本発明では、6価クロムを溶出させた水酸化ナトリウム水溶液に6価クロムの存在下で発色する発色剤を注入して吸光光度法で6価クロムの量を測定するようにしたので、従来の吸光光度法による黄色の吸収に比べて大幅に測定感度を向上することができる。
【0022】
更に、本発明では、6価クロムを溶出させた水酸化ナトリウム水溶液に3価鉄を加えた後にアルカリ性にすることにより水酸化鉄と共に3価クロムの水酸化物を沈殿させて、6価クロムの量を測定するようにしたので、試料に含有された6価クロムが少量であってもその量を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態について具体的に説明する。図1は、本発明の6価クロムを定量するための前処理方法の手順を示す概略図である。以下では、定量対象の固体の試料1として、鉄板の表面に亜鉛でメッキを行い、亜鉛メッキ面にクロメート処理を施したものを使用する場合を例として説明する。
【0024】
まず、この試料1を、濃度1%の水酸化ナトリウム水溶液2を50ミリリットル収容した容器3内に入れる(図1(a))。そして、この容器3をホットプレート4上に載置し、60℃〜70℃で1〜2時間加熱する(図1(b))。この加熱処理中に、試料1に含まれる6価クロムが水酸化ナトリウム水溶液2に溶出する。加熱処理後、室温で放冷して試料溶液5を得る(図1(c))。
【0025】
図2は、試料1の部分断面図である。Feからなる基材11上にZnからなるメッキ層12があり、さらにその上にxCr2 3 ・yCrO3 ・zH2 Oからなるクロメート層13がある。クロメート層13のメッキ層12側は、Znの還元性によって、6価クロムが存在しないCr2 3 ・nH2 O層13aとなっている。または、メッキ層12とクロメート層13との界面がZnCr2 3 層となっている。
【0026】
特許文献1のように5%である高濃度の水酸化ナトリウム水溶液の場合、加熱するとこれらのCr2 3 ・nH2 O層13aまたはZnCr2 3 層を越えて、水酸化ナトリウム水溶液がメッキ層12まで容易に浸潤して、6価クロムの還元が促進される。これに対して、本発明では1%程度の低濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いるため、これらのCr2 3 ・nH2 O層13aまたはZnCr2 3 層がバリアとなって、水酸化ナトリウム水溶液のメッキ層12への浸潤が抑制され、6価クロムの還元は起こらない。よって、特許文献1のように各試料毎に6価クロムのピーク値を検出する必要がないため、試料1を収容した多数の容器3をホットプレート4上に並べて処理を行うことができ、一度に多数の試料の6価クロムの定量を行えて、その処理効率の向上を図れる。
【0027】
このような前処理にて得られた試料溶液5を用いて、以下のような(測定法1)または(測定法2)により6価クロムを定量する。
【0028】
(測定法1)
試料溶液5に発色剤としてジフェニールカルパジドを注入し、波長543nmの光線を用いた吸光光度法にて、6価クロムの量を測定する。6価クロムの還元が起こらないため、吸光度の経時変化は図8のようになる。よって、図8のB以降であればいつでも正確な6価クロムの量を安定的に測定できる。この測定方法では、感度が0.005ppmである。
【0029】
なお、ジフェニールカルパジドに代わる発色剤として、酸性状態の試料溶液5に過酸化水素水を加えてもよい。この場合には、青色の過クロム酸が生成されるため、波長580nmの光線を用いた吸光光度法により、6価クロムの量が感度0.5ppm以上で測定可能である。
【0030】
(測定法2)
鉄共沈法により、3価クロムと6価クロムとを分別する。試料溶液5を硫酸酸性にした後、3価の鉄(例えば、塩化第2鉄溶液、硫酸第2鉄溶液など)を加えてよく撹拌する。次いで、アンモニア水を加えて、水酸化鉄(Fe(OH)3 )と共に3価クロムの水酸化物(Cr(OH)3 )を沈殿させる。そして、その濾液について、ICP発光法または原子吸光法にて6価クロムを定量する。また、全クロム量も定量できる。
【0031】
本発明では、水酸化ナトリウム水溶液2の濃度を1%、加熱温度を60℃〜70℃としたので、下地の金属(鉄,亜鉛)による還元反応が起こることなく、試料1に含まれる6価クロムがほぼ完全に水酸化ナトリウム水溶液2に溶出され、試料1中の全ての6価クロムを含む試料溶液5を得ることができる。そして、この試料溶液5を用いて定量分析を行うので、試料1に含まれる正確な6価クロムを安定的に測定することが可能である。
【0032】
以下、本発明に係る定量方法を用いた例(本発明例)、及び、特許文献1に記載された従来の方法を用いた例(従来例)における具体的な6価クロムの定量評価結果について説明する。なお、下記図3及び図4における試料は何れも、鉄板の表面に亜鉛でメッキを行い、亜鉛メッキ面にクロメート処理を施したものである。
【0033】
図3は、6価クロムの定量評価結果の一例を示す図表である。図3において、A−1,A−2及びA−3は、同一の試料から切り出した試料片(寸法:5cm×3.2cm)である。A−1は、濃度5%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた従来例を表し、A−2及びA−3は、濃度2%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた本発明例を表している。また、B−1及びB−2は、同一の試料から切り出した試料片(寸法:5cm×3.2cm)であり、何れも濃度1%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた本発明例を表している。
【0034】
従来例A−1では、還元反応が起こって、6価クロムの正確な定量を行えなかった。これに対して、本発明例A−2及びA−3並びにB−1及びB−2では、加熱時間の如何に拘わらず、6価クロムの安定した定量を行えている。本発明例A−2及びA−3とB−1及びB−2とを比較した場合、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を1%としたB−1及びB−2の方が、Znの溶出量から考えると、還元の影響をほとんど受けずに、6価クロムのより正確な定量を行えた。
【0035】
図4は、6価クロムの定量評価結果の他の例を示す図表である。図4において、C−1,C−2及びC−3は、同一の試料から切り出した試料片(寸法:5cm×3cm)である。C−1は、薬品として蒸留水を用いた対照例を表し、C−2は、濃度5%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた従来例を表し、C−3は、濃度2%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた本発明例を表している。また、D−1及びD−2は、同一の試料から切り出した試料片(寸法:5cm×3cm)であり、D−1は、濃度2%の水酸化ナトリウムと濃度2%の炭酸ナトリウムとの混合水溶液を用いた比較例を表し、D−2は、濃度1%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた本発明例を表している。
【0036】
対照例C−1では6価クロムがほとんど溶出されていなく、従来例C−2及び比較例D−1では何れも還元反応が起こって、6価クロムの正確な定量を行えなかった。これに対して、本発明例D−2では、還元反応が起こらず、6価クロムの正確な定量を行えた。なお、本発明例C−3では、本発明例D−2に比べて6価クロムの定量精度が少し劣っていた。これは、還元反応が激しい元素として知られている亜鉛の強還元性のために本発明例C−3では、Znの溶出量から考えて、6価クロムの還元が少し起こったことに起因すると考えられる。
【0037】
このように、1%または2%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた本発明では、試料に含まれる正確な6価クロムを安定的に測定できた。使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を変化させて種々の定量評価を行った結果、下地の金属の種類(還元性の強弱)にもよるが、使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度は0.1%〜2.5%にて本発明の効果(6価クロムの還元を抑制)を発揮でき、好ましくは0.5%〜2.0%、より好ましくは1%前後である。
【0038】
図5は、濃度1%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた本発明例における6価クロムの定量評価結果を示す図表である。E1〜E5は、同一の試料から切り出した試料片(寸法:5.6cm×3.3cm,総表面積:37cm2 )である。使用した試料は、鉄板の表面に亜鉛でメッキを行い、亜鉛メッキ面に6価クロムでクロメート処理を施したものである。全ての試料において、6価クロムを正確に定量できた。
【0039】
図6は、濃度1%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた本発明例における6価クロムの定量評価結果を示す図表である。F1〜F4及びG1〜G4は、それぞれ同一の試料から切り出した試料片(寸法:5.6cm×3.3cm,総表面積:37cm2 )である。使用した試料は、鉄板の表面に亜鉛でメッキを行い、亜鉛メッキ面に3価クロムでクロメート処理を施したものである。
【0040】
使用量に規制がある6価クロムを用いる6価クロメート処理に代わって、3価クロムを用いる3価クロメート処理が広く行われるようになってきた。3価クロメート処理された試料内にも6価クロムは存在することが、図6の定量結果から分かり、本発明では、3価クロメート中の6価クロムを測定できる。なお、6価クロムの含有率は、各試料片について試料から切り出された部位に応じてばらつきが見られるが、平均した場合、全クロムに対する割合は、0.4%〜1%であった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の6価クロムを定量するための前処理方法の手順を示す概略図である。
【図2】試料の部分断面図である。
【図3】6価クロムの定量評価結果の一例を示す図表である。
【図4】6価クロムの定量評価結果の他の例を示す図表である。
【図5】6価クロメート処理された試料に対する6価クロムの定量評価結果を示す図表である。
【図6】3価クロメート処理された試料に対する6価クロムの定量評価結果を示す図表である。
【図7】特許文献1において検出する吸光度の経時変化を示すグラフである。
【図8】本発明において検出する吸光度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1 試料
2 水酸化ナトリウム水溶液
3 容器
4 ホットプレート
5 試料溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる6価クロムを定量するための前処理方法において、前記試料を濃度0.1%〜2.5%の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、前記試料が入れられた前記水酸化ナトリウム水溶液を加熱して前記試料から6価クロムを溶出させることを特徴とする6価クロム定量用の前処理方法。
【請求項2】
試料に含まれる6価クロムを定量する方法において、前記試料を濃度0.1%〜2.5%の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、前記試料が入れられた前記水酸化ナトリウム水溶液を加熱して前記試料から6価クロムを溶出させ、6価クロムを溶出させた前記水酸化ナトリウム水溶液に6価クロムの存在下で発色する発色剤を注入して吸光光度法で6価クロムの量を測定することを特徴とする6価クロムの定量方法。
【請求項3】
試料に含まれる6価クロムを定量する方法において、前記試料を濃度0.1%〜2.5%の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、前記試料が入れられた前記水酸化ナトリウム水溶液を加熱して前記試料から6価クロムを溶出させ、6価クロムを溶出させた前記水酸化ナトリウム水溶液に3価鉄を加えた後にアルカリ性にすることにより水酸化鉄と共に3価クロムの水酸化物を沈殿させて、6価クロムの量を測定することを特徴とする6価クロムの定量方法。
【請求項4】
沈殿を含まない濾液に対してICP発光法または原子吸光法により前記6価クロムの量を測定することを特徴とする請求項3記載の6価クロムの定量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−64475(P2006−64475A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245810(P2004−245810)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】